説明

油性ボールペン用インキ組成物

【課題】本発明の課題は、油性ボールペン用インキ組成物において、書き味が良好であり、かつ、ボール座の摩耗抑制することが可能な油性ボールペン用インキ組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、前記課題を解決するために、油性ボールペン用インキ組成物において、少なくとも着色剤と、有機溶剤と、芳香環を有する陰イオン性界面活性剤および/または陽イオン性界面活性剤の造塩体と、を含有することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油性ボールペン用インキ組成物に関し、さらに詳細としてはインキ組成物中に、陰イオン性界面活性剤および/または陽イオン性界面活性剤を含有する油性ボールペン用インキ組成物に関するものである。
【0002】
従来より、油性ボールペン用インキ組成物において、潤滑性に優れ、滑らかな書き味を有する目的で、様々な界面活性剤を用いた油性ボールペン用インキ組成物が多数提案されている。
【0003】
このような油性ボールペン用インキ組成物としては、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤を用いたものとしては、特開平6−248217号公報「ボールペン用インキ組成物」、特開平9−151354「油性ボールペン用インキ組成物」等に、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】「特開平6−248217号公報」
【特許文献2】「特開平9−151354号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2のような各種の界面活性剤を用いた場合、ある程度書き味を向上しつつ、ボール座の摩耗を抑制することはできるが、十分に満足できるものではなかった。
【0006】
本発明の目的は、書き味が良好で、かつ、ボール座の摩耗抑制することが可能な油性ボールペン用インキ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、
「1.少なくとも着色剤と、有機溶剤と、芳香環を有する陰イオン性界面活性剤および/または陽イオン性界面活性剤の造塩体と、を含有することを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
2.前記造塩体の含有量が、0.1〜20.0質量%であることを特徴とする第1項または第2項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
3.前記陽イオン性界面活性剤がアンモニウム塩であることを特徴とする第1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
4.前記陰イオン性界面活性剤が、アルキルベンゼンスルホン酸および/又はその塩であることを特徴とする第1項ないし第3項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
5.前記アンモニウム塩が、芳香環を有する4級アンモニウム塩であることを特徴とする第2項ないし第4項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
6.前記4級アンモニウム塩が、ベンゾキソニウム化合物、アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物、アルキルジエチルベンジルアンモニウム化合物の中から少なくとも1種以上を選択することを特徴とする第5項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
7.前記油性ボールペン用インキ組成物に、オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンのうち少なくとも1種以上を含有することを特徴とする第1項ないし第6項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
8.20℃、剪断速度500sec−1におけるインキ粘度が、10〜5000mPa・sであることを特徴とする第1項ないし第7項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。」とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、書き味が良好で、かつ、ボール座の摩耗抑制することが可能な油性ボールペン用インキ組成物を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の特徴は、油性ボールペン用インキ組成物中に芳香環を有する陰イオン性界面活性剤および/または陽イオン性界面活性剤の造塩体を含有することである。
【0010】
陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤は、ボールとチップ本体との潤滑性を高め、滑らかな筆感を得ることができ、書き味を向上することが可能である。しかし、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤は、水溶性が強いため、油性インキ組成物中では、有機溶剤に溶解しずらいので、単独で用いることが難しい。そこで、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤は、それぞれ造塩体として油性ボールペン用インキ組成物に含有することが肝要である。
【0011】
陰イオン性界面活性剤と中和するには、様々な方法があるが、陽イオン性界面活性剤を用いて、中和反応させることで、より安定した造塩体を作成することができる。そのため、陰イオン性界面活性剤と陽イオン性界面活性剤との造塩体を用いることが好ましい。また、同様に、陽イオン性界面活性剤と中和するには、様々な方法があるが、陰イオン性界面活性剤を用いて、より安定した造塩体を作成することができるため、より好ましい。
【0012】
但し、全ての陰イオン性界面活性剤および/または陽イオン性界面活性剤の造塩体が、書き味が良好で、かつ、ボール座の摩耗を抑制するものではない。本発明者は、鋭意研究した結果、陰イオン性界面活性剤および/または陽イオン性界面活性剤の造塩体にベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などの芳香環を有すると、書き味が良好で、かつ、ボール座の摩耗を抑制することが可能となることが解った。これは、金属に吸着し易い潤滑膜を形成することで、ボールとチップ本体間の金属接触を抑制する効果があり、潤滑性を向上して、書き味が良好で、かつ、ボール座の摩耗を抑制するものと推測する。
【0013】
上記のように、本発明は、芳香環を有する陰イオン性界面活性剤および/または陽イオン性界面活性剤の造塩体を使用する必要がある。
【0014】
陰イオン性界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸
-ホルムアルデヒド縮合物、アルカンスルホン酸、オレフィンスルホン酸、N−メチル-N-アシルタウリン、アルキル硫酸エステル、アルキルリン酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、脂肪酸および/又はそれらの塩などが挙げられる。これらの陰イオン性界面活性剤は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0015】
また、ベンゼン環、ナフタレン環、 アントラセン環などの芳香環を有する陰イオン性界面活性剤は、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸-ホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸および/又はそれらの塩などが挙げられる。また、書き味を考慮すれば、アルキルベンゼンスルホン酸および/又はその塩が好ましく、さらにアンモニウム塩と反応して生成する造塩体の経時安定性を考慮すれば、特にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(R-CH-SONa、R;アルキル基)が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルオキシドスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0016】
アルキルベンゼンスルホン酸および/又はその塩の具体例は、ネオぺレックスGS、ネオぺレックスG-15、ネオぺレックスG-25、ネオぺレックスG-65、ネオペレックスNo.6Fパウダー(花王(株)社製)、アデカホープHAN−40、アデカホープSAN−40PD(旭電化工業(株)社製)、ライポンLS−250、ライポンLS−625、(ライオン(株)社製)等が挙げられる。
【0017】
また、陽イオン性界面活性剤としては、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム塩などが挙げられる。その中でも、陽イオン性界面活性剤については、より経時安定性の良好である造塩体を作成するには、4級アンモニウム塩が有効である。
【0018】
また、4級アンモニウム塩としては、ベンゾキソニウム化合物(Benzoxonium)、アルキルベンジルジメチルアンモニウム化合物、ラウリルトリメチルアンモニウム化合物、ステアリルトリメチルアンモニウム化合物、セチルトリメチルアンモニウム化合物、ジステアリルジメチルアンモニウム化合物などが挙げられる。これらの4級アンモニウム塩は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0019】
また、その中でも芳香環を有する4級アンモニウム塩は、ベンゾキソニウム化合物(Benzoxonium)、アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物として、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム化合物、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウム化合物、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム化合物、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム化合物、ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物、アルキルジエチルベンジルアンモニウム化合物としては、ドデシルジエチルベンジルアンモニウム化合物などが挙げられ、書き味、経時安定性を考慮すれば、ベンゾキソニウム化合物(Benzoxonium)が最も好ましい。
【0020】
芳香環を有する4級アンモニウム塩は、具体的には、カチオンM−100、カチオンF−35R、同−40E、同−50、同−50E、カチオンS−100(日本油脂(株)社製)等が挙げられる。
【0021】
また、芳香環を有する陰イオン性界面活性剤および/または陽イオン性界面活性剤の造塩体の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1質量%より少ないと、所望の潤滑性が得られないおそれがあり、20.0質量%を越えると、インキ経時が不安定性になるおそれがあるため、インキ組成物全量に対し、0.1〜20.0質量%が好ましい。より好ましくは、インキ組成物全量に対し、0.5〜10.0質量%であり、最も好ましくは、2.0〜8.0質量%である。
【0022】
また、前記造塩体にエチレンオキサイド(CH2CH2O)を有する有機アミンと併用すると、より潤滑効果が得られ易い。そのため、有機アミンとして、エチレンオキサイド
(CH2CH2O)を有するオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンを用いる方が好ましい。これ等は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0023】
オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンとしては、具体的には、ナイミーンL−201、ナイミーンL−202、同L−207、同S−202、同S−204、同S−210、同T2-206、同S−210、同DT−203、同DT−208、ナイミーンL−207、同T 2-206、同DT−208(日本油脂(株))等が挙げられる。
【0024】
また、有機アミンの含有量は、潤滑性や経時安定性を考慮すると、インキ組成物全量に対し、0.1〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは、1.0〜5.0質量%である。
【0025】
本発明の油性ボールペン用インキ組成物のインキ粘度は、特に限定されるものではないが、20℃、剪断速度500sec−1におけるインキ粘度が10mPa・s未満の場合には、筆跡に滲みやインキ垂れ下がりの影響が出やすいため、また、20℃、剪断速度500sec−1におけるインキ粘度が5,000mPa・sを超えると、筆記時のボール回転抵抗が大きくなり、書き味が重くなる傾向がある。そのため、20℃、剪断速度500sec−1におけるインキ粘度は、10〜5,000mPa・sが好ましい。より好ましくは、50〜3、000mPa・sであり、最も好ましくは、ボール座の摩耗を抑制する効果が顕著である100〜1、500mPa・sである。
【0026】
本発明に用いる着色剤については、染料、顔料があるが、染料については、油溶性染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料などや、それらの各種造塩タイプの染料等が採用可能である。
【0027】
染料について、具体的には、バリファーストブラック1802、バリファーストブラック1805、バリファーストブラック1807、バリファーストバイオレット1701、バリファーストブルー1601、バリファーストブルー1605、バリファーストブルー1621、バリファーストレッド1320、バリファーストレッド1355、バリファーストレッド1360、バリファーストイエロー1101、バリファーストイエロー1151、ニグロシンベースEXBP、ニグロシンベースEX、BASE OF BASIC DYES ROB−B、BASE OF BASIC DYES RO6G−B、BASE OF BASIC DYES VPB−B、BASE OF BASIC DYES VB−B、BASEOF BASIC DYES MVB−3(以上、オリエント化学工業(株)製)、アイゼンスピロンブラック GMH−スペシャル、アイゼンスピロンバイオレット C−RH、アイゼンスピロンブルー GNH、アイゼンスピロンブルー 2BNH、アイゼンスピロンブルー C−RH、アイゼンスピロンレッド C−GH、アイゼンスピロンレッド C−BH、アイゼンスピロンイエロー C−GNH、アイゼンスピロンイエロー C−2GH、S.P.T.ブルー111、S.P.T.ブルーGLSH−スペシヤル、S.P.T.レッド533、S.P.T.オレンジ6、S.B.N.バイオレット510、S.B.N.イエロー510、S.B.N.イエロー530、S.R.C−BH(以上、保土谷化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0028】
また、顔料については、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ギオキサジン系、メタリック顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。これらの染料および顔料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。着色剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、1.0〜50.0質量%が好ましい。
【0029】
本発明に用いる有機溶剤としてはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3―メトキシブタノール、3―メトキシー3―メチルブタノール等のグリコールエーテル類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール等のグリコール類、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノ−ル、イソブタノール、t−ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコール等のアルコール類、フェニルセロソルブ等のセロソルブ類等、油性ボールペン用インキとして一般的に用いられる有機溶剤が例示でき、これらを1種又は2種以上用いることができる。有機溶剤の含有量は、着色剤の溶解性、筆跡乾燥性、にじみ等を考慮すると、インキ組成物全量に対し、5.0〜50.0質量%が好ましい。
【0030】
また、その他として、着色剤の経時安定性や潤滑性を向上させるために、有機酸や界面活性剤として、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、リシノール酸、ラウリル酸、リン酸エステル系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤等を、顔料分散剤として、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂等を、粘度調整剤として、ケトン樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン等の樹脂や有機酸アマイド、架橋型アクリル酸重合体などの擬塑性付与剤を、また、着色剤安定剤、可塑剤、キレート剤、水などを適宜用いても良い。これらは、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
【0031】
次に芳香環を有する陰イオン性界面活性剤および/または陽イオン性界面活性剤の造塩体の作成方法を説明する。
配合例1
まず、ビーカーに水を100g、アルキルベンゼンスルホン酸Naを30g秤量し、加温した後、ディスパー攪拌機を用いて溶解させた後、ベンゾキソニウム化合物19.5gを秤量し、攪拌後、濾紙を用い濾過を行って、造塩体を得た。
【0032】
次に実施例を示して本発明を説明する。
実施例1の油性ボールペン用インキ組成物は、着色剤として、染料、有機溶剤として、ベンジルアルコール、潤滑剤として、芳香環を有する陰イオン性界面活性剤と陽イオン性界面活性剤との造塩体(配合1で作製したもの)、安定剤としてオレイン酸、ポリオキシエチレンアルキルアミン(ナイミーンL207:日油株式会社製)、樹脂としてポリビニルピロリドン(PVP K−90:アイエスピー・ジャパン株式会社製)、ケトン樹脂(ハイラック110H:日立化成株式会社製)を採用し、これを所定量秤量して、60℃に加温した後、ディスパー攪拌機を用いて完全溶解させ、油性ボールペン用インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。尚、ティー・エイ・インスツルメント株式会社製AR-G2(ステンレス製40mm2°ローター)を用いて20℃の環境下で剪断速度500s-1にてインキ粘度を測定したところ、160mPa・sであった。
【0033】
実施例1
染料(スピロンブラック−GMH−S) 15.0質量%
染料(バリーファ−スト バイオレット1701) 15.0質量%
有機溶剤(ベンジルアルコール) 60.7質量%
造塩体(配合例1で作製したもの) 5.0質量%
安定剤(オレイン酸) 1.0質量%
安定剤(ポリオキシエチレンアルキルアミン) 1.0質量%
樹脂(ポリビニルピロリドン) 0.3質量%
樹脂(ケトン樹脂) 2.0質量%
【0034】
配合例2〜7
表1に示すように、各成分を変更した以外は、配合例1と同様な方法で配合例2〜7の造塩体を作成し、該造塩体を実施例と比較例に用いた。
【表1】

【0035】
実施例2〜6及び8〜9
表2に示すように、各成分を変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2〜6及び8の油性ボールペン用インキ組成物を得た。表2に測定、評価結果を示す。
実施例7
表2に示すように、各成分を変更した以外は、水以外の各成分を実施例1と同様な手順で行い、室温冷却後水を添加しディスパー攪拌にて油性ボールペン用インキ組成物を得た。

【表2】

【0036】
比較例1〜7
表3に示すように、各成分を変更した以外は、実施例1と同様の手順で、配合し、比較例1〜7の油性ボールペン用インキ組成物を得た。表3に測定、評価結果を示す。

【表3】

【0037】
試験及び評価
実施例1〜9及び比較例1〜7で作製した油性ボールペン用インキ組成物を、インキ収容筒(ポリプロピレン)に、ボール径がφ0.7mmのボールを回転自在に抱持したボールペンチップ(ステンレス綱線)を装着したボールペン用レフィルに充填し、筆記試験用紙として筆記用紙JIS P3201を用いて以下の試験及び評価を行った。
【0038】
書き味:手書きによる官能試験を行い評価した。
非常に滑らかなもの ・・・◎
滑らかなもの ・・・○
やや重いもの ・・・△
重いもの ・・・×
【0039】
耐摩耗試験:荷重200gf、筆記角度70°、4m/minの走行試験機にて筆記試験後のボール座の摩耗を測定した。
ボール座の摩耗が2μm未満であり、筆記可能なもの ・・・◎
ボール座の摩耗が2μm以上、5μm未満であり、筆記可能なもの ・・・○
ボール座の摩耗が5μm以上、10μm未満であり、筆記不良になってしまうもの ・・・△
ボール座の摩耗が10μm以上であり、筆記不能になってしまうもの ・・・×
【0040】
溶解安定性:造塩体及び界面活性剤を添加後の溶解安定性を顕微鏡観察にて評価した。
未溶解及び析出物がないもの ・・・◎
未溶解及び析出物が若干確認されたが、筆記性能に問題がないもの ・・・○
未溶解及び析出物が若干確認され、筆記性能が悪いもの ・・・×
【0041】
実施例1〜9では、書き味、耐摩耗試験、溶解安定性ともに良好な性能が得られた。
【0042】
比較例1〜4では、インキ配合6〜7で作製した芳香環を持たない造塩体を用いているため、書き味が重いか、耐摩耗試験において、ボール座の摩耗がひどく、筆記不良または筆記不能になった。
【0043】
比比較例5では、シリコン系の界面活性剤を用いているため、書き味が重いく、さらに、耐摩耗試験において、ボール座の摩耗がひどく、筆記不良または筆記不能になった。
【0044】
比較例6では、陰イオン性界面活性剤を単独でもちいたため、溶解安定せず、析出物が確認された。さらに、書き味が重いく、耐摩耗試験において、ボール座の摩耗がひどく、筆記不良または筆記不能になった。
【0045】
比較例7では、陽イオン性界面活性剤を単独でもちいたため、溶解安定せず、析出物が確認された。さらに、書き味が重かった。
【0046】
また、インキの垂れ下がりを防止するため、ボールペンチップ先端に回転自在に抱持したボールを、コイルスプリングにより直接又は押圧体を介してチップ先端縁の内壁に押圧して、筆記時の押圧力によりチップ先端縁の内壁とボールに間隙を与えインキを流出させる弁機構を具備し、チップ先端の微少な間隙も非使用時に閉鎖することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は油性ボールペン用インキ組成物に関し、さらに詳細としては、少なくとも着色剤と、有機溶剤と、芳香環を有する陰イオン性界面活性剤および/または陽イオン性界面活性剤の造塩体と、を含有することを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物を用いることで、書き味が良好で、かつ、ボール座の摩耗抑制することが可能な油性ボールペン用インキ組成物を提供することができる。そのため、キャップ式、ノック式等、ボールペンとして広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着色剤と、有機溶剤と、芳香環を有する陰イオン性界面活性剤および/または陽イオン性界面活性剤の造塩体と、を含有することを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
【請求項2】
前記造塩体の含有量が、0.1〜20.0質量%であることを特徴とする請求項1に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
【請求項3】
前記陽イオン性界面活性剤が、アンモニウム塩であることを特徴とする請求項1または2に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
【請求項4】
前記陰イオン性界面活性剤が、アルキルベンゼンスルホン酸および/又はその塩であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
【請求項5】
前記アンモニウム塩が、芳香環を有する4級アンモニウム塩であることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
【請求項6】
前記4級アンモニウム塩が、ベンゾキソニウム化合物、アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物、アルキルジエチルベンジルアンモニウム化合物の中から少なくとも1種以上を選択することを特徴とする請求項5に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
【請求項7】
前記油性ボールペン用インキ組成物に、オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンのうち少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
【請求項8】
20℃、剪断速度500sec−1におけるインキ粘度が、10〜5000mPa・sであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。

【公開番号】特開2011−137107(P2011−137107A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298811(P2009−298811)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】