説明

油性固形化粧料

【課題】植物由来の固形状油のみからなる固形状油と有機色素を配合して油性固形化粧料を調製すると経時保存安定性が悪くなり、形状保持性向上のために添加される植物由来の固形状油の添加効果も損なわれるようになるという欠点を改善することにある。
【解決手段】融点が70℃以上で、炭素数16〜34の脂肪酸、炭素数22〜36のアルコールからなるワックスエステルを90%以上含む植物由来の固形状油を含有することを特徴とし、植物由来の固形状油及び液状油を含む油分、並びに有機色素を含有する油性固形化粧料。さらに、これらに加えてキャンデリラワックスを含有することを特徴とし、このキャンデリラワックスの成分中の炭化水素含有量が60%以上であることを特徴とする油性固形化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状保持性等の経時保存安定性、使用感、化粧仕上がり感に優れる油性固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、口紅やマスカラ等の油性固形化粧料には、各種固形状油が用いられている。植物由来の固形状油は、油性固形化粧料の形状保持、塗布感の心地よさ(肌なじみ)等の使用感の向上等のために好まれて配合されている(特許文献1、2、3、4参照)。
【0003】
さらに、固形状油として植物由来の固形状油のみを配合して調製された油性固形化粧料は、肌なじみがよく、滑らかでのびのよい感触が得られる。これらの感触はさらに配合される液状油等全ての油分を植物由来のものにするとさらによくなる。
【0004】
また、それらの化粧料には、着色成分として有機色素が配合され、製品に鮮やかな色を与え、製品の外観、塗布時の色合いを調整するにあたり重要な働きを果たしている。
【0005】
しかしながら、固形状油として植物由来のもののみを含有した油性固形化粧料は経時保存安定性に問題があらわれやすく、さらに、有機色素を配合すると形状保持性の効果も損なわれるようになる。これらの問題点は油分の全てを植物由来のものにするとさらに悪化する。
【0006】
油性固形化粧料の安定性改善技術については、いくつか開示されているが(特許文献5、6、7参照)、その効果は充分でなく、またこれらは塗布後の皮膚が粉っぽい感触(乾燥感)となったり化粧仕上がり感が悪い等満足されるものではない。
【0007】
【特許文献1】特開2004−224707号公報
【特許文献2】特開2004−238381号公報
【特許文献3】特開平10−182500号公報
【特許文献4】特開2002−179524号公報
【特許文献5】特開平6−299190号公報
【特許文献6】特開平7−179718号公報
【特許文献7】特開平10−17432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、油性固形化粧料に植物由来の固形状油のみを配合して油性固形化粧料を調製すると経時保存安定性が悪くなり、形状保持性向上のために添加される植物由来の固形状油の添加効果も損なわれるようになるという欠点を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、植物由来の固形状油に融点が70℃以上で、炭素数16〜34の脂肪酸、炭素数22〜36のアルコールからなるワックスエステルを90%以上含む植物由来の固形状油を用いることで、植物由来の固形状油を用いた油性固形成分の結晶化状態を改善し、油性固形化粧料の形状保持性等の経時保存安定性がよくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、少なくとも融点が70℃以上で、炭素数16〜34の脂肪酸、炭素数22〜36のアルコールからなるワックスエステルを90%以上含む植物由来の固形状油を含有することを特徴とした油性固形化粧料である。
【0011】
さらに有機色素を配合した際の経時保存安定性の悪化に効果を示す油性固形化粧料である。
【0012】
並びに液状油分、半固形状油分、固形状油分の全てが植物由来の油分であることを特徴とする油性固形化粧料である。
【0013】
さらに、植物由来の固形状油として、融点が70℃以上で、炭素数16〜34の脂肪酸、炭素数22〜36のアルコールからなるワックスエステルを90%以上含む植物由来の固形状油に加えて、キャンデリラワックスを含有することを特徴とする油性固形化粧料である。さらに好ましくは、キャンデリラワックス成分中の炭化水素含有量は60%以上であることが望ましい。
【0014】
本発明においては、全ての油分について植物由来のものを用いた場合、特に高度に悪化する問題点を効果的に解決するもので、油分の全てを植物由来の油分を用いて調製された油性固形化粧料に本発明を適用することが本発明の好ましい態様となる。
【0015】
本発明において、液状、半固形状、固形状、固形等の用語は常温での状態を示す。なお、液状油、半固形状油、固形状油、油性固形化粧料等はそれぞれ当業者で認識されているものであり、例えば固形状油としては、融点45℃以上のものが一般的であり、好ましくは55℃以上のものである。
【0016】
本発明において、植物由来の物質とは、植物からの抽出物のような、いわゆる植物由来のものであり、これには植物抽出物そのもの以外に、例えば植物抽出物を水素添加するとか精製するような植物抽出物を変性したものや、前記植物抽出物や前記植物抽出物の変性物同士を反応させた化合物や、あるいは前記植物抽出物や前記植物抽出物の変性物をそれら以外の化合物と反応させた化合物の一部が植物由来のものに含まれる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、固形状油として植物由来のもののみを用いて調製した油性固形化粧料に見られる経時保存安定性が悪くなるという欠点が改善され、有機色素添加による形状保持性の効果が損なわれることもない。本発明の油性固形化粧料は、形状保持性等の経時保存安定性、使用感、化粧仕上がり感等に優れたものであり、その商品価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳述する。
【0019】
本発明において用いられる固形状油は、植物由来のものである。
【0020】
本発明において用いられる融点が70℃以上で、炭素数16〜34の脂肪酸、炭素数22〜36のアルコールからなるワックスエステルを90%以上含む植物由来の固形状油について説明する。
【0021】
本発明に用いられる少なくとも融点が70℃以上で、炭素数16〜34の脂肪酸、炭素数22〜36のアルコールからなるワックスエステルを90%以上含む植物由来の固形状油として、一般に市販されているものとしてはライスワックスがあげられる。ライスワックスとは、米ぬかから抽出される米ぬか油を精製する際に、脱ロウまたはウィンタリング工程で精製される粗ロウを精製したものである。一般に粗ロウはガム質、リン脂質などを含むので、これを除去するとともに、脱臭、脱色を行い良質のワックスとしたものである。
【0022】
このライスワックスの主な成分は、高級脂肪酸と高級アルコールのエステルであるが、この他に不けん化物、少量の遊離脂肪酸および若干の炭化水素などを含む。
【0023】
本発明に用いられるライスワックスの市販品の例としては、例えば、ライスワックスNC1720、ライスワックスF-1(G)、ライスワックスF-1、ライスワックスNO.1(以上、株式会社セラリカ野田製)、精製ライスワックスS−100、精製ライスワックスR−100(以上、横関油脂工業株式会社製)等が挙げられる。
【0024】
本発明で用いるライスワックスは、酸価 13以下、ケン化価 75〜150、ヨウ素価15以下に調整されたものを用いることが原料の調達の面から好ましく、調製される油性固形化粧料も安定なものが得られる。本発明に用いられるライスワックスの含有量は、油性固形化粧料全量中0.1〜20質量%が好ましい。ライスワックスをこの範囲で含有することにより、本発明の目的を充分に達成することができる。前記ライスワックスの含有量は1〜15質量%の範囲がさらに好ましい。
【0025】
本発明においては、固形状油としてライスワックス以外に他の植物由来の固形状油をさらに配合することができる。
【0026】
配合し得る他の植物由来の固形状油としては、通常化粧料に用いられる植物由来の固形状油であれば特に制限されず、例えば、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ核油、モクロウ、硬化ヒマシ油等の固体油脂、綿ロウ、カルナウバロウ(ワックス)、ベイベリーロウ、ヌカロウ、硬化ヌカロウ、サトウキビロウ等のロウ類、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の高級脂肪酸、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
【0027】
本発明においては、植物由来の固形状油のうち、植物抽出物そのもの及び植物抽出物の変性物を用いた場合、特に高度に悪化する問題点を効果的に解決するので、前記固形状油を用いて調製された油性固形化粧料に本発明を適用することが本発明の好ましい態様となる。
【0028】
本発明においては植物由来の固形状油の含有量が油性固形化粧料全量中5〜30質量%であることが好ましい。
【0029】
本発明において用いられる液状油としては、通常化粧料に用いられる液状油であり、特に限定されないが、例えば、植物由来の液状油として大豆油、ブドウ種子油、ゴマ油、小麦胚芽油、アボガド油、オリーブ油、植物性スクワラン、ホホバ油、ココナッツ油、コメヌカ油、ピーナッツ油、ヒマシ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、ヒマワリ油、パーム油、アルモンド油、ローズヒップ油、アプリコット油、サザンカ油、ツバキ油、月見草油、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル等の植物由来のトリグリセライド、ダイマージオールまたはダイマー酸のエステル、炭化水素類、イソノナン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル等の高級アルコールの脂肪酸エステル、高級アルコールのオキシ酸エステル、トリカプリル酸グリセリル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール等の多価アルコールの脂肪酸エステル、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類等が挙げられる。
【0030】
前記本発明に係る液状油は、1種または2種以上が任意に選択されて配合される。
【0031】
本発明においては、前記本発明に係る液状油として植物由来のものを用いた場合、特に高度に悪化する問題点を効果的に解決する。植物由来の前記本発明に係る液状油を用いた系に本発明を適用することが好ましい態様となる。本発明においては、植物由来の前記本発明に係る液状油のうち、植物抽出物そのもの及び植物抽出物の変性物を用いて調製された油性固形化粧料に本発明を適用することが、さらに好ましい態様である。
【0032】
本発明に用いられる前記本発明に係る液状油の含有量は、油性固形化粧料全量中10〜80質量%が好ましい。前記液状油をこの範囲で含有することにより、本発明の目的を充分に達成することができる。前記液状油の含有量は、油性固形化粧料全量中15〜70質量%の範囲が特に好ましい。
【0033】
本発明においては、さらに半固形状油を配合することができる。半固形状油としては、通常化粧料に用いられる半固形状油を用いることができ、例えば、植物由来の半固形状油として、ステアリン酸硬化ヒマシ油、イソステアリン酸硬化ヒマシ油、トリ(カプリル・カプリン・ミリスチン・ステアリン酸)グリセリル、シア脂、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸ジヒドロコレステリル、リシノレイン酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、ダイマージリノール酸ジ(フィトステリル・イソステアリル・セチル・ステアリル・ベヘニル)エステル、水添野菜油等が挙げられる。半固形状油は必要に応じて1種または2種以上が用いられる。
【0034】
本発明においては、半固形状油も含めて全ての油分を植物由来のものを用いた場合、特に高度に悪化する問題点を効果的に解決するので、植物由来の油分を用いて調製された油性固形化粧料に本発明を適用することが本発明の好ましい態様となる。
【0035】
半固形状油を配合する場合、その含有量は油性固形化粧料全量中1〜40質量%であることが好ましい。半固形状油をこの範囲で含有することにより、半固形状油の添加効果を充分に発揮することができる。半固形状油の含有量は、油性固形化粧料全量中3〜30質量%の範囲が特に好ましい。
【0036】
本発明において用いられる有機色素としては、通常化粧料に用いられる有機色素であり、特に限定されないが、例えば、赤色227号、赤色2号、赤色102号、黄色203号、黄色5号、黄色4号、緑色204号、青色2号、赤色104号(1)、青色1号、赤色201号、赤色202号、赤色223号、赤色226号、赤色228号、赤色230号等が挙げられる。有機色素は、1種または2種以上が任意に選択されて配合される。
【0037】
本発明に用いられる有機色素の含有量は、油性固形化粧料全量中0.1〜10質量%であることが好ましい。前記有機色素をこの範囲で含有することにより、本発明の目的を充分に達成することができる。
【0038】
本発明においては、キャンデリラワックスを含有することが好ましく、さらに好ましくは、天然キャンデリラワックス中に約10〜15%含有されるワックスエステル含有量を前記炭化水素含有量60%以上の範囲で3〜8%に調整されたものを用いることが原料の調達の面から好ましく、調製される油性固形化粧料も安定する。この場合の炭化水素含有量は60〜90%の範囲が好ましい。
【0039】
なお、天然のキャンデリラワックス中には、樹脂分が10〜15%程度含有されているが、本発明においては樹脂含有量を少なくしたキャンデリラワックスを用いることが好ましく、これにより保存安定性がさらに優れるようになる。キャンデリラワックスの樹脂含有量はキャンデリラワックス中5%以下に押えることが好ましい。さらに好ましくは、2%以下である。下限は0であることが好ましいが、0.1%が実際的である。
【0040】
本発明においては、さらに、天然キャンデリラワックス中に存在する、遊離アルコール、遊離脂肪酸の含有量を押えるとさらによい。これにより保存安定性がさらに優れるようになる。遊離アルコール、遊離脂肪酸は、それぞれキャンデリラワックス中10%以下に押えることが好ましい。
【0041】
本発明に用いられる前記キャンデリラワックスの含有量は、油性固形化粧料全量中0.1〜20質量%が好ましい。キャンデリラワックスをこの範囲で含有することにより、本発明の目的を充分に達成することができる。前記キャンデリラワックスの含有量は1〜15質量%の範囲がさらに好ましい。
【0042】
本発明においては、前記成分の他に通常の化粧料に使用されるパール剤、白色顔料、体質顔料、無機顔料、酸化防止剤、防腐剤、多価アルコール類、香料、美容成分、無機物で覆われた有機粉体等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択して用いることができる。
【0043】
本発明の油性固形化粧料は常法に従って製造することができ、その形態としては特に限定されず、広く各種化粧品基剤として利用できる。例えば、口紅、リップクリーム、フェースカラー、ファンデーション、頬紅、アイカラー、アイシャドウ等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。配合量は特に断りのない限り質量%である。実施例の説明に先立ち本発明で用いた効果試験方法、評価基準などについて説明する。
【0045】
[経時保存安定性(形状保持性等)]
試験試料(油性固形化粧料)を、40℃(湿度85%)に保持された恒温槽、50℃に保持された恒温槽、−5℃で8時間保持した後に、20℃(湿度85%)で4時間保持し、次いで40℃(湿度85%)で8時間保持し、さらに20℃(湿度85%)で4時間保持するというサイクルで内部の雰囲気が変化する恒温槽(サイクルの恒温槽)の3つの恒温槽それぞれに1ヶ月保存された試験試料につき、状態の変化の有無を下記の基準に従って評価した。
【0046】
(評価基準)
○:いずれの恒温槽に保存された試験試料も変化がみられなかった。
△:40℃、50℃、サイクルの恒温槽のいずれか1つで変化が見られた。
×:40℃、50℃、サイクルの恒温槽のいずれか2つ以上で変化が見られた。
【0047】
[使用感・化粧仕上がり感]
試験試料(油性固形化粧料)を皮膚に塗布したときの塗布感の心地よさ(肌なじみ)、塗布の滑らかさ、皮膚上でののびのよさ等の使用感、塗布後の皮膚の乾燥感のなさ等の化粧仕上がり感について、10名の女性パネルに、皮膚に塗布した時の肌なじみ、塗布の滑らかさ、試験試料の皮膚上でののびのよさを下記の評価基準に従って評価してもらい、評価の結果は、下記の判断基準に基づいて3ランクに分けた。
【0048】
(評価基準)
肌なじみ :悪い 0←1←2→3→4 良い(なじむ)
塗布の滑らかさ:悪い 0←1←2→3→4 良い(滑らか)
のびのよさ :悪い 0←1←2→3→4 良い(のびる)
乾燥感のなさ :乾燥感がある 0←1←2→3→4 乾燥感がない(粉っぽい感触がなく、しっとりしている)
0:非常に 1:割合 2:どちらともいえない 3:割合 4:非常に
【0049】
(判断基準)
○:10名の評価の平均値が3以上4以下
△:10名の評価の平均値が1以上3未満
×:10名の評価の平均値が0以上1未満
【0050】
(実施例1、比較例1〜3)
表1に示す処方のリップスティック(油性固形化粧料)を以下の方法で調製した。成分1〜11を加熱溶解した後、混合分散し、リップスティックバルクを得た。次いで、該リップスティックバルクを85℃で溶解し、金型に流し込み、冷却し、金型からリップスティックを取り出し、容器に装着してリップスティックを得た。
【0051】
【表1】

【0052】
表1中、
注1;精製キャンデリラワックスNC1630(炭化水素含有量60%以上)(樹脂含有量2%以下)(株式会社セラリカ野田製)
注2;キャンデリラワックス特号(炭化水素含有量60%以下)(樹脂含有量2%以上)(株式会社セラリカ野田製)
注3;ライスワックスNO.1(株式会社セラリカ野田製)
【0053】
実施例1及び比較例1〜3の評価結果を表2に示した。
【0054】
【表2】

【0055】
表2から明らかなように、ライスワックスとキャンデリラワックスを配合した実施例1のリップスティックは、経時保存安定性(形状保持性)に優れ、使用感、化粧仕上がり感の良いものであることが分かる。さらに、実施例1のリップスティックは、形状保持性、使用感の向上の効果が発揮されていることが分かる。なお、本実施例においては、油分の全てを植物由来のものを用いて調製されている。
【0056】
一方、比較例1〜3のリップスティックにおいて、本発明のライスワックスを配合しないリップスティック(比較例1)、キャンデリラワックスを配合しないリップスティック(比較例2)は、いずれも本発明の効果を発揮し得ないものであった。なお、本発明の範囲外のキャンデリラワックスを配合したリップスティック(比較例3)は、経時安定性の評価がやや低いものの、比較例1とほぼ同様に本発明の効果は得られるものであった。
【0057】
以下、常法に従って製造した種々の処方の本発明油性固形化粧料を実施例として示す。なお、上記の効果試験をこれらにおいて行ったところ、いずれも優れた結果が得られた。

【0058】
〔実施例2〕 リップスティック
成分 配合量(質量%)
キャンデリラワックス(注1) 5.0
水素添加ホホバエステル(注2) 1.0
ライスワックスF−1(注3) 10.0
トリイソステアリン酸ポリグリセリル 19.7
トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 35.0
ホホバ油 5.0
イソステアリン酸硬化ひまし油 20.0
黄色4号 1.0
赤色202号 3.0
酸化防止剤 0.1
防腐剤 0.1
香料 0.1
【0059】
注1:精製キャンデリラワックスNC1630(炭化水素含有量60%以上)(樹脂含有量2%以下)(株式会社セラリカ野田製)
注2:FLORAESTERS70(INTERNATIONAL FLORA TECHNOLOGIES製)
注3:ライスワックスF−1(株式会社セラリカ野田製)
【0060】
〔実施例3〕 スティックファンデーション
成分 配合量(質量%)
キャンデリラワックス(注1) 10.0
ライスワックスF−1(注2) 5.0
ステアリン酸硬化ひまし油(注3) 5.0
マカデミアナッツ油(注4) 4.0
植物性スクワラン 23.7
ホホバ油 8.0
シリコーン処理酸化鉄 1.7
シリコーン処理酸化チタン 8.0
シリコーン処理タルク 8.3
シリコーン処理マイカ 23.0
赤色202号 1.0
紫外線吸収剤 2.0
酸化防止剤 0.1
防腐剤 0.1
香料 0.1
【0061】
注1:精製キャンデリラワックスNC1630(炭化水素含有量60%以上)(樹脂含有量2%以下)(株式会社セラリカ野田製)
注2:ライスワックスF−1(株式会社セラリカ野田製)
注3:キャストライドMS(ナショナル美松株式会社製)
注4:NIKKOL マカデミアンナッツ油(日本サーファクタント工業株式会社製)
【0062】
〔実施例4〕 フェースカラー
成分 配合量(質量%)
ホホバ油 29.2
キャンデリラワックス(注1) 3.0
ライスワックスNC−1720(注2) 2.0
オリーブ油(注3) 0.5
植物性スクワラン(注4) 16.0
マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル(注5) 4.0
シリコーン処理酸化チタン 12.0
シリコーン処理タルク 9.5
シリコーン処理マイカ 14.5
シリコーン処理酸化鉄 4.0
黄色5号 0.7
赤色202号 1.3
紫外線吸収剤 3.0
酸化防止剤 0.1
防腐剤 0.1
香料 0.1
【0063】
注1:精製キャンデリラワックスNC1630(炭化水素含有量60%以上)(樹脂含有量2%以下)(株式会社セラリカ野田製)
注2:ライスワックスNC−1720(株式会社セラリカ野田製)
注3:クロピュアOL(クローダジャパン株式会社製)
注4:フィトスクワラン(ソフィム社製)
注5:YOFCO MAS(日本精化株式会社製)

【0064】
〔実施例5〕 リップスティック
成分 配合量(質量%)
キャンデリラワックス(注1) 8.0
キャンデリラワックス(注2) 1.0
キャンデリラワックス(注3) 1.0
ライスワックスF−1(G) (注4) 2.0
カルナウバワックス 2.0
植物性スクワラン(注5) 14.4
ホホバ油 15.0
ヒマワリ油 6.0
トリイソステアリン酸グリセリル 16.0
ダイマージリノール酸ジ(フィトステリル・イソステアリル
・セチル・ステアリル・ベヘニル)エステル 16.0
マカデミアナッツ油脂肪酸ジヒドロコレステリル 14.0
黄色4号 1.8
赤色202号 2.0
赤色201号 0.5
酸化防止剤 0.1
防腐剤 0.1
香料 0.1
【0065】
注1:精製キャンデリラワックスNC1630(炭化水素含有量60%以上)(樹脂含有量2%以下)(株式会社セラリカ野田製)
注2:精製キャンデリラワックスCG−7(炭化水素含有量60%以上)(樹脂含有量10%以下)(横関油脂工業株式会社製)
注3:精製キャンデリラワックスMD−21(炭化水素含有量80%以上)(樹脂含有量10%以下)(横関油脂工業株式会社製)
注4:ライスワックスF−1(G) (株式会社セラリカ野田製)
注5:フィトスクワラン(ソフィム社製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が70℃以上で、炭素数16〜34の脂肪酸、炭素数22〜36のアルコールからなるワックスエステルを90%以上含む植物由来の固形状油を含有することを特徴とする油性固形化粧料。
【請求項2】
さらに、有機色素を含有することを特徴とする請求項1記載の油性固形化粧料。
【請求項3】
並びに液状油分、半固形状油分、固形状油分の全てが植物由来の油分であることを特徴とする請求項1又は2記載の油性固形化粧料
【請求項4】
さらに植物由来の固形状油として、請求項1の固形状油に加えてキャンデリラワックスを含有することを特徴とする請求項1又は2、3記載の油性固形化粧料。
【請求項5】
前記請求項4のキャンデリラワックス成分中の炭化水素含有量が60%以上であることを特徴とする油性固形化粧料

【公開番号】特開2007−112727(P2007−112727A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303806(P2005−303806)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(390041036)株式会社日本色材工業研究所 (37)
【Fターム(参考)】