説明

油種モニタ

【課題】簡易かつ安価な構成であるにも拘わらず、反射部の劣化を極力低減するとともに測定性能を向上させ、長期間にわたり安定した油種識別を実現する油種モニタを提供することにある。
【解決手段】近赤外光を油を介して反射部206へ入射し、反射部206で反射した近赤外光を受光して油の油種を識別する油種モニタであって、この反射部206は、透明体206aの一方の面に凹面の反射面206dを設けて両面を透過面206bと反射面206dとし、さらに透過面206bを油との接触面とし、また、反射面206dを油との非接触面とすることで、透過面206bでの汚れの付着防止を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レギュラーガソリン、ハイオクタンガソリン、灯油、軽油等の油種を識別する油種モニタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
油種モニタは、例えば、パイプラインや油槽所で異種の油を時系列的に輸送する場合や別々のタンクに仕分けして貯蔵する場合に用いられたり、または、タンカーや貨車による石油製品の受入基地において誤った送油が行われていないかを監視する場合に用いられる。
【0003】
このような油種を識別する油種モニタとして、例えば、2種類の油種が混在した場合にその油種及び割合を求めるガスクロマトグラフ装置を用いることがあった。
ガスクロマトグラフ装置は、測定対象である油を気化させてから化合物の同定・定量を行う分析装置であり、石油化学等の分野で広く用いられている。
【0004】
また、油種を識別する他の油種モニタとして、例えば軽油・灯油・レギュラーガソリン・ハイオクタンガソリンを対象とし、音波や光の透過率や吸光度を用いて識別する装置がある。特に、近赤外光(NIR:Near Infra-red light)を用いた識別法は、化学物質が特定の波長の光、特に可視および赤外領域の近赤外光を吸収する点に着目し、波長に対する近赤外光の特定の波長が吸光される度合いである吸光度を得て、この波長別の吸光度によって軽油・灯油・レギュラーガソリン・ハイオクタンガソリンを判別する、というものである。特に、レギュラーガソリンとハイオクタンガソリンとの識別が可能であり、加えて小電力の光源・検出器を用いることができる。
【0005】
このような近赤外光の吸光度測定を利用する測定装置の従来技術として、例えば、特許文献1(特開平4−335139号公報,発明の名称:監視装置)が開示されている。
特許文献1に記載された従来技術は、油種モニタそのものではないが、苛性ソーダの濃度や、水とアセトンのような溶媒混合物の成分比の監視を行うことを目的とする装置である。特に近赤外光を発光させた後に、測定対象内へ入射および反射させた戻り光を吸光させた近赤外光を得て、分析するというものである。
【0006】
【特許文献1】特開平4−335139号公報(段落番号0034〜0038,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来技術のうち、ガスクロマトグラフ装置では油種及び複数の油種の割合を正確に割り出せるため、正確なモニタリングを可能としているが、油種および割合についての結果がでるまでに時間を要し、迅速性に欠ける面があった。
【0008】
また、特許文献1による従来技術の測定装置では、光ファイバロッドが収められたプローブが直接パイプライン内へ導入されるとともに、検出部では光は測定対象である流体自体に入射され、対向配置された反射鏡であるステンレス鋼製鏡によって反射される構成となっている。このことから、ステンレス鋼製鏡が長時間にわたり流体に曝された状態でいると、汚れたりミスト等の異物がステンレス鋼製鏡の鏡面に付着し、反射率が低下する等の悪影響が出る恐れがある。従来技術では経年変化により測定性能が著しく低下するという問題があった。また、特に反射鏡を凹面にすると凹面内に異物が溜まってしまうおそれがあり、このような構成を採用することができず、設計の自由度が乏しいという問題もあった。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、簡易かつ安価な構成であるにも拘わらず、反射部の劣化を極力低減するとともに測定性能を向上させ、長期間にわたり安定した油種識別を実現する油種モニタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る油種モニタは、
近赤外光の発光素子を含み、近赤外光を発光する発光部と、
近赤外光を透過させる透過部と、
油に接するように配置され、油を介して入射された透過部からの近赤外光を反射面により反射させて再度透過部まで到達させる反射部と、
該透過部を経て到達した近赤外光を受光して検出を行う分光光度計と、
前記分光光度計から得られた信号を処理する信号処理部とを備え、吸光度の変化により油種を識別する油種モニタであって、
前記反射部は、透明体の一方の面に反射面を設けて両面を透過面と反射面として、透過面を油との接触面とし、また、反射面を油との非接触面とする、
ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2に係る油種モニタは、
請求項1に記載の油種モニタにおいて、
前記反射部は前記透明体の透過面が凸面または平面であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項3に係る油種モニタは、
請求項1または請求項2に記載の油種モニタにおいて、
前記反射部は前記反射面が凹面であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項4に係る油種モニタは、
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の油種モニタにおいて、
前記反射部と前記透過部との間に設けられる検出空間部を有し、該反射部、検出空間部および透過部が同一直線上にあるような検出部を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項5に係る油種モニタは、
請求項4に記載の油種モニタにおいて、
前記検出部は、検出空間部と連通する流入部と、
検出空間部と連通する流出部と、を備え、
流入部と流出部とを通じてこの検出空間部を流れる油を識別対象とすることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項6に係る油種モニタは、
請求項4に記載の油種モニタにおいて、
前記検出部は、その検出空間部が開放空間であって、この検出空間部を流れる油を識別対象とすることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項7に係る油種モニタは、
請求項4〜請求項6の何れか1項に記載の油種モニタにおいて、
前記検出部は、
検出部本体と、
検出部本体に前記反射部を固定する固定部と、
前記反射部と前記固定部とを外界から封止するように前記検出部本体に固定される蓋部と、
を備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項8に係る油種モニタは、
請求項7に記載の油種モニタにおいて、
前記反射部、前記固定部および前記蓋部は、検出部本体に対して着脱可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上の本発明によれば、簡易かつ安価な構成であるにも拘わらず、固形物等の測定を妨げるものが中央付近に溜まりにくくして反射部の劣化を極力低減するとともに分析性能を向上させ、長期間にわたり安定した油種識別を実現する油種モニタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態の油種モニタについて、図を参照しつつ説明する。図1は本形態の油種モニタの斜視外観図である。
油種モニタ1は、本体ケース100、本体ケース下部101、検出部200(以下フローセルと記載する)を備えている。このような油種モニタ1は、フローセル200内に油種を識別する油を通流させた状態でモニタリングを行うものである。後述するが、パイプやチューブによりフローセル200内に油を通流させたり、あるいは、輸送管(パイプライン)内にフローセル200を配置して直接的に油を通流させる。
【0020】
続いて各部について説明する。まず本体ケース100の構成について説明する。図2は本形態の油種モニタの構造図である。本体ケース100は、図1,図2に示すように、本体ケース下部101、通信用コネクタ102、表示部103、発光素子104、分光光度計105、光ファイバ106、ファイバ端部107、入射光用光ファイバ108、反射光用光ファイバ109、信号処理部110を備える。この本体ケース100は、少なくとも内部を油から効果的に保護する機能を有していれば良く、形状は、図に示すように側面視略T字型としたり、また、材質は鋳物等を採用している。
【0021】
続いて本体ケース下部101の構成について説明する。本体ケース下部101は、図1,図3に示すように、レンズ111、透過部112、端部取付部113、ホルダ114、ねじ部115、シール部116、シール部117、封止部118を備える。この本体ケース下部101は、少なくとも内部を油から効果的に保護する機能を有していれば良く、材質は鋳物等を採用することができる。
【0022】
続いてフローセル200の構成について説明する。図4は、フローセルの内部構成の説明図である。フローセル200は、図1,図2,図3,図4に示すように、フローセル本体201(検出部本体)、油流入用ジョイント202、油流出用ジョイント203、透過部204、検出空間部205、反射部206、ジョイント接続部207、挿通部208、ねじ部209、固定部210、シール部211、シール部212、固定部213、シール部214、蓋部215を備えている。
【0023】
続いて、油種モニタ1の機械的構成および組み立てについて説明する。
本体ケース100の内部には、図2で示すように、表示部103、発光素子104、分光光度計105、光ファイバ106、ファイバ端部107、入射光用光ファイバ108、反射光用光ファイバ109、信号処理部110が配置されている。構造としては光ファイバ106がファイバ端部107に固定された状態である。二個の通信用コネクタ102は、図1で示すように、本体ケース101の外側に配置されている。
【0024】
図3に本体ケース100の本体ケース下部101とフローセル200を示す。ホルダ114の内部にはレンズ111が固定されるとともに、さらにレンズ111の下部に透過部112(透明ガラス)がホルダ114で押さえつけられるようにして本体ケース下部101に固定される。また、光ファイバ106の終端に接続されたファイバ端部107が、端部取付部113に固定される。この端部取付部113がレンズ111の挿通孔を覆うようにホルダ114に取り付けられる。そしてホルダ114が本体ケース下部101に取り付けられる。ここまでは光ファイバ106が余裕ある長さとすれば、取付が容易である。なお、本体ケース下部101は本体ケース100に固定されている。
【0025】
そして、このような本体ケース下部101には、図3で示すように、フローセル200が固定される。フローセル本体201には、図3,図4で示すように、透過部204、検出空間部205、反射部206、挿通部208、固定部210、シール部211、シール部212、固定部213、シール部214、蓋部215が取り付けられる。取付構造としては透過部204が挿通部208内を挿通され、シール部211によりシールされた状態で配置され、周囲にねじ部210bが設けられた固定部210を上側から螺挿して透過部204を固定している。同様に、反射部206がシール部212によりシールされた状態で、周囲にねじ部213bが設けられた固定部213を下側から螺挿して反射部206を固定している。そしてフローセル本体201がシール部214によりシールされた状態で、内周囲にねじ部215aが設けられた蓋部215を下側から螺挿して反射部206を封止している。また、フローセル本体201も本体ケース下部101から簡単に着脱可能であり、内部の固定部210や透過部204も脱着可能としている。同様に蓋部215もフローセル本体201から簡単に着脱可能であり、内部の固定部213や反射部206も脱着可能としている。このような構成を採用したため、透過部204や反射部206のクリーニングをすぐに行うことができメンテナンス性が良い。
【0026】
このようなフローセル200は、図3で示すように、シール部117を介在させてからフローセル200のねじ部209を本体ケース下部101のねじ部115に螺挿して固定し、さらに封止部118により封止および締め付けを行いつつ固定する。
【0027】
このような油種モニタ1は、パイプやチューブによりフローセル200内に油を通流させる場合には、図1,図4で示すように、円柱状の空間である検出空間部205と連通する油流入用ジョイント202(本発明の流入部の一例である)や油流出用ジョイント203(本発明の流出部の一例である)を取り付け、また、パイプライン内にフローセル200を配置して直接的に油を導入する場合には、図3で示すように、ジョイント接続部207のみの状態とする。これら油流入用ジョイント202や油流出用ジョイント203とを通じて(またはジョイント接続部207を通じて)この検出空間部205を流れる油を識別対象とする。
【0028】
続いて、油種モニタ1による光学系について図を参照しつつ説明する。図5は反射部の説明図であり、図5(a)は透過面が凸面の反射部の説明図、図5(b)は透過面が平面の反射部の説明図である。図6は反射部による反射光の説明図であり、図6(a)は平面の反射面による反射光の説明図、図6(b)は凹面の反射面による反射光の説明図である。
【0029】
図2に示すように、発光素子104は、近赤外光の発光素子やドライバ等を含む構成であって信号処理部110によりON/OFF制御されるようになされており、モニタリング時にのみ発光して近赤外光を発生する。そして、近赤外光は入射光用光ファイバ108を通過して光ファイバ106へ到達し、ファイバ端部107へ到達する。ここに図2,図3,図4に示すように、ファイバ端部107、レンズ111、固定部210の孔部210a、透過部204、検出空間部205、反射部206は略同一直線状に配置されており、後述するが、近赤外光は、ファイバ端部107からさらにレンズ111、固定部210の孔部210a、透過部204を経て検出空間部205内へ入射して、この空間部内の油を透過した後に反射部206へ到達する。
【0030】
レンズ111は近赤外光を例えば平行光などに整形する機能を有する。透過部204は両側平面のガラス製の透明板であり、検出空間部205内の油を上側に流入させないようにしているものであり近赤外光をそのまま透過させる。この場合、固定部210の孔部210aも透過する。近赤外光は検出空間部205内へ入射し、空間部内の油を透過する。この場合、後述するが近赤外光の吸光度が変化する。油を透過した近赤外光は反射部206へ到達する。
【0031】
反射部206は、図5(a)で示すように、透明体206a、反射面206dを備える。透明体206aはその両面を凸面206b,206cとして形成する。透明体206aは両面凸レンズであり光軸方向が入射光・反射光の光軸方向と一致する。両面の凸面の曲率半径Rは何れも250mm〜500mmとすることが好ましい。一方の凸面を透過面206bとし、他方の凸面に反射面206dを形成する。反射面206dは透明体に直接形成した例えばアルミ蒸着膜である。このような反射面206dは、凹面として形成される。凹面の曲率半径Rも250mm〜500mmとすることが好ましい。この反射部206では透過面206bから入射した近赤外光が、反射面206dの凹面側にて反射して、再度透過面206bから出射する。
【0032】
このような反射部206は、特に油に接する透過面206bを凸面としたため、固形物等の測定を妨げるもの、例えば油カスやミスト等による汚れ(以下単に汚れという)は中央付近(光軸付近)では付着するおそれもなく、近赤外光は汚れが付きにくい中央付近を通過することになり、長期間にわたる使用を可能としている。少なくとも透過面206b上には凹部がないため、汚れが中央付近に溜まることがなくこれにより悪影響を与えるおそれが殆ど無い。また、蓋部215により封止されて油に接しない面に反射面206dを配置したため、反射面206dを汚れにくくしており、この点でも長期間にわたる使用を可能としている。
【0033】
また、他の反射部206は、図5(b)で示すように、透明体206e、反射面206hを備える。透明体206eはその一方の面を平面206fとして形成し、透明体206eの他方の面を凹面206gとして形成する。透明体206eは片面凸レンズであり光軸方向が入射光・反射光の光軸方向と一致する。凸面の曲率半径Rは250mm〜500mmとすることが好ましい。平面206fを透過面206fとし、他方の凸面206gに反射面206hを形成する。反射面206hは透明体に直接形成した例えばアルミ蒸着膜である。このような反射面206hは、凹面として形成される。凹面の曲率半径Rも250mm〜500mmとすることが好ましい。この反射部206では透過面206fから入射した近赤外光が、反射面206hの凹面側にて反射して、再度透過面206fから出射する。
【0034】
このような反射部206は、特に油に接する透過面206fを平面とした。これは凸面ほどではないが、やはり汚れは中央付近(光軸付近)では付着するおそれも小さくなり、近赤外光は汚れが付きにくい中央付近を通過することになり、長期間にわたる使用を可能としている。少なくとも透過面206f上には凹部がないため、汚れが中央付近に溜まることがなくこれにより悪影響を与えるおそれが殆ど無い。また、蓋部215により封止されて油に接しない面に反射面206hを配置したため、反射面206hを汚れにくくしており、この点でも長期間にわたる使用を可能としている。
【0035】
また、従来では図6(a)で示すように、発散傾向を有する近赤外光の入射光が反射部300の平面による反射面301で反射すると、さらに近赤外光が発散するため、ファイバ端部107まで到達する光が少なくなって反射光の強度が低下するが、本形態では、従来では不可能であった凹面による反射面を採用したため、図6(b)で示すように、広がる傾向を有する近赤外光の入射光が反射部206の凹面による反射面206dで反射すると、平行光(もしくは弱い収束光)として反射されるため、反射光の強度の低下を防止する。このように下面を適度なR状の曲面(曲率半径R:250mm〜500mm)としたことによって、反射光を平行光(もしくは弱い収束光)にすることができる。これは図5(a)で示す両側凸面の反射部206のみならず、図5(b)で示す片側凸面の反射部206でも奏しうる効果である。これらのような反射光が検出空間部205、透明体204、固定部210の孔部210a、レンズ111、ファイバ端部107と透過して光ファイバ106や反射光用光ファイバ109へ到達し、さらに分光光度計105へ受光されることになる。
【0036】
続いて、油種モニタによる油種識別について図を参照しつつ説明する。
まず、図2で示すように、油流入用ジョイント202を介して下側から検出空間部205内に油を流入させ、上側の油流出用ジョイント203から油を流出させている。下側から上側へ流れるため、油が反射部206付近で滞留しないようにして反射部206に汚れが付着しないようにしている。
【0037】
発光部から発せられた近赤外光は、検出空間部205内の油を透過して、反射部206で反射して再度油を透過する。これにより近赤外光の吸光度が変化する。この近赤外光は光ファイバ106、反射光用光ファイバ109を経て分光光度計105に受光される。分光光度計105では、近赤外領域の波長(約800〜1100〔nm〕)を検出可能としており、該受光された光から波長毎の光に分光されたスペクトルが得られ、フローセル200内の油を透過した近赤外光の透過光スペクトルを測定する。信号処理部110は、このような分光光度計105の出力信号を処理する。
【0038】
信号処理部110は、透過スペクトルを表す出力データを得て、対数演算等の周知の方法により、透過スペクトルを吸光度スペクトルを表すデータに変換する。吸光度スペクトルは油のメーカーに関わらずほぼ一定である。そしてこの吸光度スペクトルを表すデータに基づいてサンプルの油種(レギュラーガソリン、ハイオクタンガソリン、灯油、軽油)を識別する識別データを生成する。この識別データを生成した信号処理部110は、例えば、通信用コネクタ102に接続される通信ケーブルを介して通信可能になされた外部装置(例えば監視用コンピュータ)へこの識別データを通信して出力したり、または、表示部103を介してレギュラーガソリン、ハイオクタンガソリン、灯油、軽油の何れであるかを、例えばLEDや液晶ディスプレイなどにより表示する。さらにはこれらの処理を共に行うようにしても良い。
【0039】
このような本形態による油種モニタ1によれば、特に反射部206は、透明体の一方の面に反射面を設けて両面をそれぞれ透過面と反射面とし、透過面を油との接触面とし、また、反射面を油との非接触面としたため、従来技術のように反射面に汚れが付着するような事態の発生を防止する。特に反射部は透明体の透過面が凸面または平面として凹面ではないようにしたため汚れを付着しにくくしている。特に透過面が凸面の場合は、中央では汚れが付着しにくくなっている。また、反射部の反射面が適度なR状の曲面となるように調整・選択された凹面とすれば、反射光を平行光または弱い収束光として、反射光の強度低下を防止することができる。
【0040】
続いて他の実施形態の油種モニタについて、図を参照しつつ説明する。図7は他の実施形態の油種モニタの外観図である。図8は検出部の説明図であり、図8(a)は検出部の内部構造図、図8(b)は反射部の説明図である。
【0041】
油種モニタ2は、本体ケース100、本体ケース下部101、フランジ400、検出部500を備えている。このような油種モニタ2は、フランジ400により送油管3に取付られ、この送油管3内に検出部500を配置して検出部500の外側面に形成された検出空間部511に油種を識別する油を通流させてからモニタリングを行うものである。なお、この油種モニタ2の本体ケース100、本体ケース下部101の構成は、先に図1〜図6を用いて説明した油種モニタ1の本体ケース100、本体ケース下部101の構成と同じであり、同じ符号を付すとともに重複する説明を省略するものとし、相違点となるフランジ400、検出部500について説明する。
【0042】
フランジ400は、例えば本体ケース下部101に取り付けられており、送油管3に油種モニタ2を直接接続できるようにする。この場合、図7で示すように、送油管3の軸方向(油の流れる方向)から見て、検出部500の検出空間部511が開放されているように配置すれば良い。
検出部500は、上側は先に図3,図4を用いて説明した本体ケース下部101との取付構造を有するが、下側は図8(a)で示すような形態となる。検出部500は、検出部本体501、挿通部502、固定部503、透過部504、シール部505,506、反射部507、固定部508、シール部509、蓋部510、検出空間部511を備える。
【0043】
この検出部本体501は、少なくとも内部を油から保護する機能を有していれば良く、形状は、図に示すように検出空間部が一部に形成された筒状としたり、また、材質は鋳物等を採用することができる。取付構造としては透過部504が挿通部502内を挿通され、シール505によりシールされた状態で、周囲にねじ部503bが設けられた固定部503を上側から螺挿して透過部504を固定している。同様に、反射部507がシール506によりシールされた状態で、周囲にねじ部508bが設けられた固定部508を下側から螺挿して反射部507を固定している。
【0044】
反射部507は、図8(b)で示すように、透明体507a、反射面507dを備える。透明体507aはその両面を凸面507b,507cとして形成する。透明体507aは両面凸レンズであり光軸方向が入射光・反射光の光軸方向と一致する。両面の凸面の曲率半径Rは何れも250mm〜500mmとすることが好ましい。一方の凸面を透過面507bとし、他方の凸面507cに反射面507dを形成する。反射面507dは透明体に直接形成した例えばアルミ蒸着膜である。このような反射面507dは、凹面として形成される。凹面の曲率半径Rも250mm〜500mmとすることが好ましい。
【0045】
このような反射部507は、特に油に接する透過面507bを凸面としたため、中央付近では汚れやが付着するおそれもなく、近赤外光は汚れが付きにくい中央付近を通過することとなり、長期間にわたる使用を可能としている。少なくとも透過面507b上には凹部がないため、汚れが溜まるおそれが少なく悪影響を与えるおそれがない。また、蓋部510により封止されて油に接しない面に反射部507dを配置したため、反射部507dを汚れにくくしており、この点でも長期間にわたる使用を可能としている。なお、透過面が先に図5(b)を用いて説明したように平面の反射部を用いることも可能であるが、長期的なメンテナンスフリーを実現するためには、図8(b)で示すような両凸面の反射部507を使用することが好ましい。
【0046】
そして検出部本体501がシール部509によりシールされた状態で、内周囲にねじ部510aが設けられた蓋部510を下側から螺挿して反射部507を封止している。
また、検出部本体501も本体ケース下部101から簡単に着脱可能であり、内部の固定部503や透過部504も脱着可能としている。同様に蓋部510も検出部本体501から簡単に着脱可能であり、内部の固定部508や反射部507も脱着可能としている。このような構成を採用したため、透過部504や反射部507のクリーニングをすぐに行うことができメンテナンス性が良い。このような検出部500では検出空間部511を開放空間とし、この検出空間部511を流れる油を識別対象としている。
なお、光学系・信号処理系は図1〜図6を用いて説明した油種モニタ1と同様であり、重複する説明を省略する。
【0047】
このような本形態による油種モニタ2によれば、特に反射部は、透明体の一方の面に反射面を設けて両面を透過面と反射面とし、透過面を油との接触面とし、また、反射面を油との非接触面としたため、従来技術のように透過面に汚れが付着するような事態の発生を防止する。そして、反射部の反射面が適度なR状の曲面となるように調整・選択された凹面とすれば、反射光を平行光または収束光として、反射光の強度低下を防止する。
【0048】
さらにまた、反射部は透明体の透過面が凸面または平面として形成したため汚れを付着しにくくしている。特に凸面の場合は、中央では汚れが付着しにくくなっている。
このような検出部500では開放空間である検出空間部511を流れる油に対して入射光や反射光が通過することとなるが、それでも反射部507を改良しているため、従来技術と比較しても長期的なメンテナンスが不要となった。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明を実施するための最良の形態の油種モニタの斜視外観図である。
【図2】本発明を実施するための最良の形態の油種モニタの構造図である。
【図3】本体ケース下部およびフローセルの内部構成の説明図である。
【図4】フローセルの内部構成の説明図である。
【図5】反射部の説明図であり、図5(a)は透過面が凸面の反射部の説明図、図5(b)は透過面が平面の反射部の説明図である。
【図6】反射部による反射光の説明図であり、図6(a)は平面の反射面による反射光の説明図、図6(b)は凹面の反射面による反射光の説明図である。
【図7】他の実施形態の油種モニタの外観図である。
【図8】検出部の説明図であり、図8(a)は検出部の内部構造図、図8(b)は反射部の説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1:油種モニタ
100:本体ケース
101:本体ケース下部
102:通信用コネクタ
103:表示部
104:発光素子
105:分光光度計
106:光ファイバ
107:ファイバ端部
108:入射光用光ファイバ
109:反射光用光ファイバ
110:信号処理部
111:レンズ
112:透過部(透明ガラス)
113:端部取付部
114:ホルダ
115:ねじ部
116:シール部
117:シール部
118:封止部
200:フローセル(検出部)
201:フローセル本体
202:油流入用ジョイント
203:油流出用ジョイント
204:透過部
205:検出空間部
206:反射部
206a:透明体
206b:透過面(凸面)
206c:凸面
206d:反射面(凹面)
206e:透明体
206f:透過面(平面)
206g:凸面
206h:反射面(凹面)
207:ジョイント接続部
208:挿通部
209:ねじ部
210:固定部
210a:孔部
210b:ねじ部
211:シール部
212:シール部
213:固定部
213a:孔部
213b:ねじ部
214:シール部
215:蓋部
215a:ねじ部
400:フランジ
500:フローセル
501:検出部本体
502:挿通部
503:固定部
503a:孔部
503b:ねじ部
504:透過部
505:シール部
506:シール部
507a:透明体
507b:透過面(凸面)
507c:凸面
507d:反射面(凹面)
508:固定部
508a:孔部
508b:ねじ部
509:シール部
510:蓋部
510a:ねじ部
511:検出空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外光の発光素子を含み、近赤外光を発光する発光部と、
近赤外光を透過させる透過部と、
油に接するように配置され、油を介して入射された透過部からの近赤外光を反射面により反射させて再度透過部まで到達させる反射部と、
該透過部を経て入射した近赤外光を受光して検出を行う分光光度計と、
前記分光光度計から得られた信号を処理する信号処理部とを備え、吸光度の変化により油種を識別する油種モニタであって、
前記反射部は、透明体の一方の面に反射面を設けて両面を透過面と反射面として、透過面を油との接触面とし、また、反射面を油との非接触面とする、
ことを特徴とする油種モニタ。
【請求項2】
請求項1に記載の油種モニタにおいて、
前記反射部は前記透明体の透過面が凸面または平面であることを特徴とする油種モニタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の油種モニタにおいて、
前記反射部は前記反射面が凹面であることを特徴とする油種モニタ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の油種モニタにおいて、
前記反射部と前記透過部との間に設けられる検出空間部を有し、該反射部、検出空間部および透過部が同一直線上にあるような検出部を備えることを特徴とする油種モニタ。
【請求項5】
請求項4に記載の油種モニタにおいて、
前記検出部は、検出空間部と連通する流入部と、
検出空間部と連通する流出部と、を備え、
流入部と流出部とを通じてこの検出空間部を流れる油を識別対象とすることを特徴とする油種モニタ。
【請求項6】
請求項4に記載の油種モニタにおいて、
前記検出部は、その検出空間部が開放空間であって、この検出空間部を流れる油を識別対象とすることを特徴とする油種モニタ。
【請求項7】
請求項4〜請求項6の何れか1項に記載の油種モニタにおいて、
前記検出部は、
検出部本体と、
検出部本体に前記反射部を固定する固定部と、
前記反射部と前記固定部とを外界から封止するように前記検出部本体に固定される蓋部と、
を備えることを特徴とする油種モニタ。
【請求項8】
請求項7に記載の油種モニタにおいて、
前記反射部、前記固定部および前記蓋部は、検出部本体に対して着脱可能であることを特徴とする油種モニタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−71733(P2010−71733A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237756(P2008−237756)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】