説明

油脂組成物

【課題】本発明は、コレステロール低下作用等の優れた生理活性を有する四環性トリテルペンアルコールを安定に高濃度で溶解状態で含有し、かつ米飯等の毎日摂取する食材に使用可能な組成物の提供。
【解決手段】次の成分(A)及び(B):
(A)24−メチレンシクロアルタノール及びシクロブラノールから選ばれる四環性トリテルペンアルコール、及び
(B)ジアシルグリセロールを5質量%以上含有する油脂
を含有する油脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米等の食品に使用するための油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ステロールは、植物及び動物に含まれる3位にヒドロキシ基を有するステロイドの総称である。動物性ステロールの代表例はコレステロールであり、植物性ステロールにはβ−シトステロール、スチグマステロール及びカンペステロール等の炭素数28又は29の4−デスメチルステロールと、シクロアルテノール、24−メチレンシクロアルタノール及びシクロブラノール等の炭素数30又は31の四環性トリテルペンアルコールに分けられる。これらの植物ステロールのうち、4−デスメチルステロールは、コレステロール低下作用等を有することが知られている(特許文献1)。
【0003】
一方、四環性トリテルペンアルコールは、米ぬか油等に含まれていることが知られており、コレステロール低下作用、脂質吸収抑制作用を有することが知られている(非特許文献1、特許文献1)。
【0004】
しかしながら、これらの四環性トリテルペンアルコールは、室温では結晶析出を引き起こし、油脂中に多量に溶解状態で含有させることができないという欠点がある。そこで、四環性トリテルペンアルコールだけでなく、オリザノールとフィトステロールとを併用して食用油脂中に溶解させる技術(特許文献2)が知られている。
【0005】
これらの四環性トリテルペンアルコールの生理作用を効率的に得るには、カプセルや錠剤等の形態で摂取するよりも、日常の食事の際に無理なく摂取できるのが好ましい。そのためには、毎日摂取する食材に含有させるのが効率的であり、米飯やパン等の主食に含有させるのが最も好ましい。かかる要請より、植物ステロールをコーン油に添加し、炊飯した米飯が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−224309号公報
【特許文献2】特開2006−257064号公報
【特許文献3】特開2003−310183号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】動脈硬化 Vol. 13, No.2, June(1985)273-278
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、植物ステロールのうち、24−メチレンシクロアルタノール及びシクロブラノールを油脂に溶解し、米飯へ添加する技術を検討したが、これらの植物ステロールはトリグリセリドには溶解性が低く、低濃度でしか配合することができなかった。このため、植物ステロールを高容量配合した油脂組成物を生米に添加して炊飯すると、米飯咀嚼時にざらつきが感じられた。一方、また、植物ステロールを低濃度でトリグリセリド菜種油に溶解して炊飯調理すると、油っぽさも感じ易くなり、食味を損ねるという欠点が認められた。
従って、本発明の課題は、コレステロール低下作用等の優れた生理活性を有する四環性トリテルペンアルコールを、安定に高濃度に溶解状態で含有し、米飯等の毎日摂取する食材に使用可能な組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明者は、四環性トリテルペンアルコールの生理作用を効率良く発揮させる油脂組成物について検討したところ、ジアシルグリセロールを5質量%以上含有する油脂に四環性トリテルペンアルコールを配合することにより、四環性トリテルペンアルコールを高濃度に溶解することができ、安定な油脂組成物が得られることを見出した。さらに、当該油脂組成物を用いて米飯を調製したところ、全く意外にも米飯に良好な柔らかさと粘りを付与できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B):
(A)24−メチレンシクロアルタノール及びシクロブラノールから選ばれる四環性トリテルペンアルコール、及び
(B)ジアシルグリセロールを5質量%以上含有する油脂
を含有する油脂組成物を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、上記の油脂組成物が添加された生米又は米飯を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、コレステロール低下作用等の優れた生理作用を有する四環性トリテルペンアルコールを高濃度に含有し、かつ安定に分散可能な油脂組成物を提供することができる。また、該油脂組成物を使用することにより、適度な柔らかさと良好な粘りを持つ米飯を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に用いられる(A)四環性トリテルペンアルコールは、24−メチレンシクロアルタノール及びシクロブラノールから選ばれる炭素数30又は31のトリテルペンアルコールをいう。これらの炭素数30又は31のトリテルペンアルコールは、β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール等の炭素数28又は29の4−デスメチルステロールとは明確に相違する。また、各種植物ステロールのフェルラ酸エステルであるγ−オリザノールとも明確に相違する。これらの炭素数30又は31のトリテルペンアルコールは、米油、或いはトリテルペンアルコールを含有する油脂、及び油脂加工品からの抽出、γ−オリザノールの加水分解等によって得ることができる。当該炭素数30又は31のトリテルペンアルコール含有組成物の市販品としては、オリザトリテルペノイド−P(オリザ油化株式会社)等が挙げられる。これらは24−メチレンシクロアルタノール及びシクロブラノールのうちの1種を含むものでもよいが、2種の混合物であってもよい。また、本発明の油脂組成物には、前記成分(A)以外のトリテルペンアルコール、例えばシクロアルテノールを含有していてもよい。
【0014】
(A)四環性トリテルペンアルコールのうち、コレステロール低下作用の点で24−メチレンシクロアルタノール及び/又はシクロブラノールを含有するのが好ましく、特に24−メチレンシクロアルタノールを含有するのが好ましい。
【0015】
本発明に用いられる(B)油脂は、ジアシルグリセロールを5質量%以上含有する。油脂中のジアシルグリセロール含有量が5質量%以上であれば、(A)四環性トリテルペンアルコールが十分量溶解するとともに、本発明油脂組成物を添加して得られた米飯に良好な柔らかさと粘りを付与できる。(B)油脂中のより好ましいジアシルグリセロール含有量は5質量%以上であり、さらに好ましくは10〜98質量%、さらに好ましくは20〜98質量%、さらに好ましくは50〜98質量%、特に好ましくは55〜98質量%である。当該(B)油脂中のジアシルグリセロール以外の成分はトリグリセリド、モノアシルグリセロールである。モノアシルグリセロールの含有量は2質量%以下、特に1.5質量%以下が好ましい。
【0016】
(B)油脂中のジアシルグリセロールは、構成脂肪酸が炭素数8〜22の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸からなるのが好ましい。さらに、本発明の油脂組成物は一般の食用油脂と同様に使用できることから、用いるジアシルグリセロールは、構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸が55質量%以上、特に70質量%以上であることが好ましい。特に、オレイン酸20〜65質量%、リノール酸15〜65質量%から構成される不飽和脂肪酸が好ましい。
【0017】
ジアシルグリセロールを含有する油脂(B)は、(1)油脂とグリセリンとでエステル交換反応をするか、又は(2)脂肪酸とグリセリンを用いてエステル化反応することにより得られる。これらの反応は、アルカリ(土類)金属の水酸化物触媒による化学的反応又は酵素による反応のどちらでもよい。工業的に高純度のジアシルグリセロールを製造する場合は、(1)の方法による化学的反応では、着色等の油脂の劣化を招きやすいので、(2)の方法による酵素反応が好ましい。
【0018】
原料脂肪酸としては、(1)油脂を250〜260℃で水蒸気分解し、分解物を蒸留処理して得られる脂肪酸、(2)油脂を200〜240℃で水蒸気分解して得られる部分加水分解物、(3)油脂を20〜70℃で酵素法により分解して得られる部分加水分解物が使用できる。尚、何れの方法においても、油脂100質量部に対し水を20〜180質量部加えて分解反応を行う。
このようにして得られる脂肪酸を用い、1,3位選択的リパーゼの存在下、脱水条件下でエステル化反応をすることにより、80質量%以上の高純度の、変色の少ない淡色(ロビボンド法にて10R+Y値が20以下)のジアシルグリセロール(トリグリセリド20質量%未満、モノグリセリド5質量%未満)を収率よく得ることができる。
また、本発明に使用する油脂(B)の原料は、一般的な食用油脂であれば特に限定されず、天然の動植物油脂の他、それらにエステル交換、水素添加、分別等を施した加工油脂が挙げられる。好ましくは、大豆油、ナタネ油、米糠油、コーン油、パーム油等の植物油及びそれらの加工油脂が用いられる。
【0019】
本発明油脂組成物においては、成分(A)の安定性、本発明油脂組成物を用いて得られる米飯の味の点から、成分(A)を、成分(B)100質量部に対し1〜30質量部含有するのが好ましく、さらに5〜25質量部、特に10〜20質量部含有するのが好ましい。
また、油脂組成物中の成分(A)の含有量は、1〜30質量%が好ましく、5〜25質量%がより好ましく、7〜20質量%がさらに好ましく、10〜20質量%が特に好ましい。
【0020】
本発明の油脂組成物は、成分(B)中に成分(A)を溶解又は分散させることにより、得ることができる。
【0021】
本発明の油脂組成物は、さらに(C)乳化剤を含有するものが好ましい。乳化剤を含有することにより、水への分散性が高まり、米及び米飯に均一に付着させることができ、より高い効果を得ることができる。乳化剤としては油脂に対して相溶性を有するものであれば特に制限はないが、卵蛋白、大豆蛋白、乳化蛋白、これらの蛋白質より分離される蛋白質、これらの蛋白質の(部分)分解物等の各種蛋白質類;グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル;およびレシチンあるいはその酵素分解物等が挙げられ、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルが好ましく、食味上、ポリグリセリン脂肪酸エステルがさらに好ましい。
油脂組成物中の(C)乳化剤の含有量は、1〜30質量%が好ましく、5〜25質量%が好ましく、10〜25%が特に好ましい。
【0022】
本発明の油脂組成物は、さらに(D)水を含有する、乳化型油脂組成物であることが好ましい。
乳化型油脂組成物中の(C)乳化剤の含有量は0.1〜5質量%が好ましく、さらに1〜3質量%が好ましい。水の含有量は、80〜99質量%が好ましく、さらに85〜95質量%が好ましい。水の含有量は、80〜99質量%が好ましく、さらに85〜95質量%が好ましい。
【0023】
かかる乳化型油脂組成物中の成分(A)の含有量は、米飯のやわらかさ及び粘りの観点より0.1〜2.0質量%が好ましく、0.5〜1.9質量%がより好ましく、0.8〜1.5質量%がさらに好ましい。
また、成分(B)の含有量は、1〜10質量%が好ましく、さらに3〜9質量%が好ましく、特に5〜8質量%であるのが、米飯の油っぽさ等、食味食感の点から好ましい。
【0024】
本発明の油脂組成物には、一般の食用油脂と同様に、保存性及び風味安定性を目的に、抗酸化剤を50〜2000ppm含有せしめることが好ましい。抗酸化剤としては、天然抗酸化剤、トコフェロール、アスコルビルパルミテート、アスコルビルステアレート、BHT、BHA及びリン脂質等から選ばれる1種以上が挙げられ、天然抗酸化剤、トコフェロール、アスコルビルパルミテート及びリン脂質等から選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0025】
また、本発明の油脂組成物には、さらに増粘剤、呈味料、香味料、着色料等を含有させることができる。ここで増粘剤としては、キサンタンガム、ジェランガム、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム等の増粘多糖類、デンプン類等が用いられる。呈味料としては食塩、糖、食酢、調味剤等が挙げられる。増粘剤の含有量は0.01〜0.2質量%、さらに0.1〜0.15質量%が好ましい。
【0026】
本発明の油脂組成物は、米飯用油脂組成物として用いるのが好ましい。
米飯用油脂組成物として用いる場合、成分(A)、すなわち24−メチレンシクロアルタノール及びシクロブラノールから選ばれる四環性トリテルペンアルコールに替えて、成分(A’)として、シクロアルテノール、24−メチレンシクロアルタノール及びシクロブラノールから選ばれる四環性トリテルペンアルコールを用いることができる。
【0027】
油脂組成物中の成分(A’)の含有量は、1〜30質量%が好ましく、5〜25質量%がより好ましく、7〜20質量%がさらに好ましく、10〜20質量%が特に好ましい。
成分(A’)は、成分(B)100質量部に対し2〜50質量部含有するのが好ましく、さらに10〜40質量部、特に15〜35質量部含有するのが好ましい。
また、(C)乳化剤を含有することが好ましく、さらに(D)水を含有する、乳化型油脂組成物であることが好ましい。
【0028】
本発明の油脂組成物を、米飯用油脂組成物として用いる場合、例えば、油脂組成物をあらかじめ生米に適用しておくという実施態様が挙げられる。生米への適用は、塗布、噴霧等、通常の手段を用いることができる。本発明の油脂組成物を適用された生米を炊飯する際には、常法に従えばよいが、洗米において油脂組成物の流出を防ぐために、無洗米に適用しておくのが好ましい。
また、炊飯の際に油脂組成物を均一に分散せしめるために、油脂組成物には上記(C)乳化剤を含有するものが好ましい。
【0029】
また、本発明の油脂組成物を、米飯用油脂組成物として用いる場合、炊飯の際の水加減後に添加するという実施態様も可能である。この場合は無洗米のみならず、通常の精米に対しても適用することができる。この場合、炊飯の際に油脂組成物を均一に分散せしめるために、油脂組成物には上記(C)乳化剤を含有するものが好ましく、さらに(D)水を含有し、乳化型油脂組成物の形態のものが分散性がさらに良好になるという観点より、特に好ましい。
【0030】
本発明油脂組成物を用いて米飯を製造するには、例えば生米100質量部当たり本発明の乳化型油脂組成物1〜20質量部、より好ましくは5〜15質量部を添加して、常法に従って炊飯すればよい。
炊飯の際の加水比は、特に1.3〜1.8質量倍、さらに1.4〜1.6質量倍が好ましい。ここで、生米には、無洗米も含まれる。また、無洗米を本発明油脂組成物で表面処理しておき、炊飯時に通常通りに炊飯してもよい。なお、ここで加水比は、生米の質量に対する、本発明の油脂組成物と水の合計量の比を指す。
【0031】
本発明の油脂組成物を用いて得られた米飯は、生米基準で成分(A)を、好ましくは0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.02〜0.3質量%、さらに好ましくは0.05〜0.2質量%含有する。
また、本発明の油脂組成物を用いて得られた米飯は、ざらつきがなく、食味も向上している。さらに、食味の指標とされる良好な柔らかさ及び粘りを有し、味も良好である。
さらに、四環性トリテルペンアルコールによるコレステロール低下作用、食後の血糖抑制作用、食後のG1P抑制作用等が得られ、またジアシルグリセロールによる体脂肪燃焼促進作用が期待される。
【実施例】
【0032】
次に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。
【0033】
(四環性トリテルペンアルコール含有製剤)
24−メチレンシクロアルタノールを42質量%、シクロブラノールを5質量%、カンペステロールを14質量%、シクロアルテノールを39質量%含有する、オリザトリテルペノイドP(オリザ油化株式会社)を用いた。
【0034】
(ジアシルグリセロールの調製方法)
菜種油を分解して得られた脂肪酸(脂肪酸組成;パルミチン酸4.1%、ステアリン酸1.9%、オレイン酸61.2%、リノール酸19.3%、リノレン酸10.0%)とグリセリンを用いて、1、3位選択リパーゼの存在下、エステル化反応を行い、ジアシルグリセロールを合成した。さらに、蒸留操作で遊離脂肪酸を除去し、さらに245℃、30分間、圧力260Pa、水蒸気3wt%対油/Hrで減圧水蒸気脱臭を行い、ジアシルグリセロールを主成分とする脱臭油を調製した。脱臭油の組成は、遊離脂肪酸0.1%、モノグリセリド1.2%、ジグリセリド83.7%、トリグリセリド15.0%であり、脱臭油中の不飽和脂肪酸含有量は94.5%、オレイン酸含有量は37.3%、リノール酸含有量は48.0%であった。
【0035】
(炊飯米食味評価方法)
炊飯直後に釜内で解した後、小皿に移し、食味評価を行った。
(評価基準)
粘り
5点:粘りがある
4点:やや粘りがある
3点:粘りがやや足りない
2点:粘りが弱い
1点:粘りが非常に弱い
ざらつき
5点:ざらつきが感じられない
4点:ざらつきがほとんど感じられない
3点:ざらつきが感じられる
2点:ざらつきが強く感じられる
1点:ざらつきが非常に強く感じられる
油っぽさ
5点:油っぽさが感じられない
4点:油っぽさがほとんど感じられない
3点:油っぽさが感じられる
2点:油っぽさが強く感じられる
1点:油っぽさが非常に強く感じられる
柔らかさ/硬さ
5点:良好な柔らかさ
4点:やや良好な柔らかさ
3点:柔らかさがやや足りない
2点:やや硬い
1点:硬い
異味
5点:異味がしない
4点:やや異味がしない
3点:やや異味を感じる
2点:異味を感じる
1点:非常に異味が強い
【0036】
実施例1
(油脂組成物の調製)
150mlのガラス容器に乳化剤(サンソフトA−181E:太陽化学(株)、ポリグリセリンステアリン酸エステル)を2.8g計り取り、さらに、オリザトリテルペノイドPを1.5g、油脂としてジアシルグリセロールを10%含有する菜種油9.4gを添加し、95℃水熱浴で溶解させた。その後、溶解液に95℃の水を90g添加し、ウルトラディスパーサー(LK−22型、ヤマト科学(株))を用い、95℃にて回転数9,000回/分で1分間分散した後、さらに回転数12,000回/分で10分間分散を行った。95℃で1時間保温し、その後、1℃/分で30℃になるまで冷却を行い、乳化型油脂組成物を製造した。
【0037】
(炊飯方法)
米(魚沼産こしひかり;パールライス)150gを炊飯器(RC−5JX型、(株)東芝)の釜に入れ、イオン交換水で6回洗米し、イオン交換水を222.6g、乳化型油脂組成物を22.5g(加水比1.5)を添加、計量し、25℃で30分間浸漬を行った。浸漬後、炊飯器をセットし、炊飯した。炊飯直後に釜内で解した後、小皿に移し、食味評価を行った。
【0038】
実施例2
実施例1において、ジアシルグリセロール濃度が84%である油脂を使用する以外は実施例1と同様にして油脂組成物を調製し、これを添加して炊飯し、評価を行った。
【0039】
実施例3
実施例1において、オリザトリテルペノイドPを2.2g、ジアシルグリセロールを25%含有する菜種油8.7gを使用して油脂組成物を調製した以外は実施例1と同様にして油脂組成物を調製し、これを添加して炊飯し、評価を行った。
【0040】
実施例4
実施例3において、ジアシルグリセロール濃度が84%である油脂を使用する以外は実施例3と同様にして油脂組成物を調製し、これを添加して炊飯し、評価を行った。
【0041】
比較例1
実施例3において、油脂として菜種油を使用する以外は実施例3と同様にして油脂組成物を調製し、これを添加して炊飯し、評価を行った。
【0042】
実施例5
実施例1において、オリザトリテルペノイドPを3.3g、ジアシルグリセロールを10%含有する菜種油7.7gを添加し油脂組成物を調製し、また、炊飯時に乳化液を2.4g添加する以外は、実施例1と同様にして、油脂組成物を調製し、これを添加して炊飯し、評価を行った。
【0043】
実施例6
実施例5において、ジアシルグリセロール濃度が84%である油脂を使用する以外は実施例5と同様にして油脂組成物を調製し、これを添加して炊飯し、評価を行った。
【0044】
比較例2
実施例5において、油脂として菜種油を使用する以外は実施例5と同様にして油脂組成物を調製し、これを添加して炊飯し、評価を行った。
【0045】
実施例7
実施例1において、オリザトリテルペノイドPを3.3g、ジアシルグリセロールを10%含有する菜種油7.7gを添加し油脂組成物を調製し、また、炊飯時に乳化液を30.0g添加した以外は実施例1と同様にして油脂組成物を調製し、これを添加して炊飯し、評価を行った。
【0046】
実施例8
実施例7において、ジアシルグリセロール濃度が84%である油脂を使用する以外は実施例7と同様にして油脂組成物を調製し、これを添加して炊飯し、評価を行った。
【0047】
比較例3
実施例7において、油脂として菜種油を使用する以外は実施例7と同様にして油脂組成物を調製し、これを添加して炊飯し、評価を行った。
【0048】
得られた結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1から明らかなように、(A)四環性トリテルペンアルコールと(B)ジアシルグリセロールを含有する油脂とを含有する油脂組成物を添加して炊飯された米飯は、食味が良好であり、かつ良好な柔らかさを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)24−メチレンシクロアルタノール及びシクロブラノールから選ばれる四環性トリテルペンアルコール、及び
(B)ジアシルグリセロールを5質量%以上含有する油脂
を含有する油脂組成物。
【請求項2】
成分(A)を、成分(B)100質量部に対し1〜30質量部含有する請求項1記載の油脂組成物。
【請求項3】
食用油脂組成物である請求項1又は2記載の油脂組成物。
【請求項4】
さらに(C)乳化剤及び(D)水を含有し、乳化型である、請求項1〜3のいずれか1項記載の油脂組成物。
【請求項5】
次の成分(A’)及び(B):
(A’)シクロアルテノール、24−メチレンシクロアルタノール及びシクロブラノールから選ばれる四環性トリテルペンアルコール、及び
(B)ジアシルグリセロールを5質量%以上含有する油脂
を含有する、米飯用油脂組成物。
【請求項6】
さらに(C)乳化剤及び(D)水を含有し、乳化型である、請求項5項記載の米飯用油脂組成物。
【請求項7】
請求項5又は6記載の米飯用油脂組成物が添加された生米。
【請求項8】
請求項5又は6記載の米飯用油脂組成物が添加された米飯。

【公開番号】特開2011−115112(P2011−115112A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277223(P2009−277223)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】