説明

治療におけるアポトーシスを増加させるための有糸分裂の阻害剤

有糸分裂阻害剤によって誘導された有糸分裂停止の状態にある病原性細胞を持つ患者に、該細胞のアポトーシスを増加させるべく投与するための有糸分裂の阻害剤。一様態において、本発明は、有糸分裂阻害剤によって誘導された有糸分裂停止の状態にある病原性細胞を持つ患者に、該細胞のアポトーシスを増加させるべく投与するための有糸分裂の阻害剤に関する。本発明の別の様態は、’161 KSP阻害剤によって誘導された有糸分裂停止の状態にある病原性細胞を持つ患者に、該細胞のアポトーシスを増加させるべく投与するための’161 KSP阻害剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有糸分裂阻害剤によって誘導された有糸分裂停止の状態にある病原性細胞(pathogenic cell)を持つ患者に、該細胞のアポトーシスを増加させるべく投与するための有糸分裂の阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
有糸分裂の阻害剤(有糸分裂阻害剤もしくは抗有糸分裂薬とも呼ばれる)は、疾患の処置にとって重要な治療薬であり、抗痛風および抗菌薬、ならびに再狭窄の処置だけでなく、癌の処置にも用いられる。これらの有糸分裂の阻害剤による治療法は、細胞がもはや分裂しないように有糸分裂を中断させる。癌では有糸分裂の阻害剤が癌の増殖を停止させて、アポトーシスもしくは有糸分裂の終了とそれに続く細胞死に導くことができる。
【0003】
多くの有糸分裂の阻害剤が知られている。いくつかの有糸分裂の阻害剤は、抗チューブリン剤である。抗チューブリン剤は、有糸分裂に必要なタンパク質であるチューブリンに作用する。抗チューブリン剤は、ビンカアルカロイド類、タキサン類およびエポチロン類を含む。癌治療薬としては、チューブリン以外を標的とする有糸分裂の阻害剤も研究されてきた。異なった有糸分裂の阻害剤は、細胞周期の異なった部分、および時には有糸分裂以外の他の機能に影響を及ぼす。例えば、抗チューブリン剤は、増殖細胞および最終分化細胞における有糸分裂以外の細胞骨格機能に影響を及ぼすことができる。末梢神経毒性が、チューブリン剤に関係づけられてきた。かくして、様々な有糸分裂の阻害剤は、様々な毒性を持つことがありうる。
【0004】
ビンカアルカロイド類は、微小管の重合を阻害し、それによって有糸分裂を阻害する。ビンカアルカロイドは、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンを含む。ビンブラスチンは、ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、乳癌および精巣癌を含む、いくつかの種類の癌を処置するために用いられてきた。ビンクリスチンは、リンパ腫、乳癌、肺癌および急性リンパ芽球性白血病を含む、いくつかの種類の癌を処置するために用いられてきた。ビンブラスチンおよびビンクリスチンも、いくつかの主な固形腫瘍の緩和療法に用いられてきた(非特許文献1を参照。)ビンデシンは、白血病、リンパ腫、黒色腫、乳癌および肺癌を含む、いくつかの種類の癌を処置するために用いられてきた。ビノレルビンは、乳癌および非小細胞肺癌を含む、いくつかの種類の癌を処置するために用いられてきた。
【0005】
タキサン類は、微小管を安定化し、それによって細胞の微小管機能を不活性化して細胞分裂を阻害する。タキサン類は、パクリタキセル(アブラキサン(登録商標)を含む)およびドセタキセルを含む。パクリタキセルは、肺癌、卵巣癌、乳癌および進行した形態のカポジ肉腫を含む、いくつかの種類の癌を処置するために用いられてきた。ドセタキセルは、乳癌、卵巣癌および非小細胞肺癌を含む、いくつかの種類の癌を処置するために用いられてきた。新しいタキサン類、例えばBMS275183(非特許文献2を参照)も開発中である。
【0006】
さらに、コルヒチンは、抗チューブリン剤として作用する有糸分裂の阻害剤である。コルヒチンは、微小管の重合を阻害することによって有糸分裂を阻害する。コルヒチンは、痛風を処置するために用いられている。
【0007】
エポチロン類は、パクリタキセルに耐性のある癌細胞系統に活性を持つ微小管安定化用化学療法剤の一種である(非特許文献3を参照)。エポチロン類は、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンD、およびエポチロン類似体のイクサベピロンを含む。イクサベピロンは、現在利用しうる化学療法剤にもはや反応しない侵襲性の強い転移性もしくは局所進行性乳癌の処置に関して承認されている。
【0008】
ドラスタチンおよびドラスタチン類似体は、有糸分裂の阻害剤である。これらの化合物は、ドラスタチン10、ドラスタチン15、シンサドチン(あるいはSYN−DまたはILX651;非特許文献4を参照)、LU103793およびセマドチンを含む。
【0009】
オーロラA、オーロラBおよびオーロラCを含めて、オーロラキナーゼは、有糸分裂において作用するセリン/スレオニンキナーゼである。オーロラキナーゼは、有糸分裂の阻害剤として標的にされてきた。オーロラAは、有糸分裂前期に作用を有し、正しく作用するためにセントロソームを必要とする。オーロラBは、紡錘体がセントロメアに付着するときに作用する。オーロラキナーゼ阻害剤は、AZD−1152、CYC−116、AS−703569(またはR−763)、MLN−8054、PHA−739358、AT−9283、SNS−314、AZD−1152−HQPA、MLN−8237、KW−2449、PF−3814735、ENMD−2076(またはENMD−981693)、PHA−739385、MK−0457(またはVX−680)およびMK−5108(またはVX−689)を含む。さらに詳しくは、非特許文献5を参照。
【0010】
polo様キナーゼ1(「Plk1」)、polo様キナーゼ2(「Plk2」)、polo様キナーゼ3(「Plk3」)およびpolo様キナーゼ4(「Plk4」)を含めて、polo様キナーゼ類(「Plk」)は、紡錘体の形成および変化、ならびに有糸分裂の間のCDK/サイクリン複合体の活性化に関与する。polo様キナーゼは類、有糸分裂の阻害剤として標的にされてきた。polo様キナーゼ阻害剤は、ON−01910Na(またはON−1910NaあるいはOnc−01910)、BI−2536を含む(参照:非特許文献6)、およびGSK−461364(またはGSK−461364A))。
【0011】
キネシンは、モータータンパク質の一種である。有糸分裂キネシンは、紡錘体の組み立ておよび作用に不可欠な酵素である。有糸分裂キネシンは、有糸分裂の全フェーズにおいて不可欠な役割を果たす。有糸分裂の間に、キネシンは、微小管を紡錘体の双極構造中へ組織化する。有糸分裂キネシンの阻害は、紡錘体の形成異常または機能障害を生じさせて、しばしば細胞周期停止とアポトーシス(細胞死)とをもたらす。
【0012】
同定された有糸分裂キネシンのうちにキネシン紡錘体タンパク質(「KSP:kinesin spindle protein」)がある。有糸分裂の間に、KSPは、紡錘体の微小管と結合する。KSPの阻害は、前中期における紡錘極の分離を妨げて単極紡錘体を作り出し、有糸分裂を停止させてプログラム細胞死を誘導する。ヒトKSPは、HsEg5とも呼ばれる。
【0013】
特許文献1は、2−(3−アミノプロピル)−5−(3−フルオロフェニル)−N−(2−メトキシエチル)−N−メチル−2−フェニル−l,3,4−チアジアゾール−3(2H)−カルボキサミド(以下、「化合物1」)、2−(3−アミノプロピル)−5−(3−フルオロフェニル−N−メトキシ−N−メチル−2−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−3(2H)−カルボキサミド(以下、「化合物2」)、2−(3−アミノプロピル)−5−(2,5−ジフルオロフェニル)−N−メトキシ−N−メチル−2−フェニル−1,3,4− チアジアゾール−3(2H)−カルボキサミド(以下、「化合物3」)、(S)−2−(3−アミノプロピル)−5−(2,5−ジフルオロフェニル)−N−メトキシ−N−メチル−2−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−3(2H)−カルボキサミド(以下、「化合物4」)、(R)−2−(3−アミノプロピル)−5−(2,5−ジフルオロフェニル)−N−メトキシ−N−メチル−2−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−3(2H)−カルボキサミド(以下、「化合物5」)、および2−(3−アミノプロピル)−5−(2,5−ジフルオロフェニル)−N−ヒドロキシ−N−メチル−2−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−3(2H)−カルボキサミド(以下、「化合物6」)を含む、化合物について記載する。化合物1、2、3、4、5および6(集合的に「’161 KPS阻害剤」)は、KSP阻害剤である。
【0014】
KSP阻害剤は、イスピネシブ(またはSB−715992あるいはCK−0238273;2008 ASCO Poster:”A Phase I−II Open−Label Trial of Ispinesib on an Alternating Dosing Schedule in Chemotherapy−Naive Patients with Locally Advanced or Metastatic Breast Cancer(MBC).”www.cytokinetics.com/pdf/ASCO2008A.pdfを参照)、‘161 KPS阻害剤、AZD−4877、CRx−026、SB−743921(SB−921)、MK−0731、EMD−534085およびARQ−621を含む。イスピネシブは、広範囲にわたる腫瘍タイプでテストされ、ヒト臨床試験も進んでいる。
【0015】
有糸分裂の間に作用する他のモータータンパク質のうちでセントロメア関連タンパク質E(「CENP−E」)用の低分子阻害剤も記載されている。CENP−Eは、モータータンパク質であり(非特許文献7)、有糸分裂キネシンの一種として分類することができる。CENP−E阻害剤は、GSK−295(またはGSK−923295)を含む。
【0016】
疾患を処置するための治療薬として、多くの有糸分裂の阻害剤がテストされてきた。いくつかの有糸分裂の阻害剤は、24時間注入を含めて毎週1日の、隔週1日の、毎月1日のいずれかのスケジュールで投与されてきた。有糸分裂の阻害剤を1用量投与するだけでは、細胞がアポトーシスに至るかまたは有糸分裂を終えて細胞死に至るために十分長く、細胞を有糸分裂停止のままに保つことができない。同様に、いくつかの有糸分裂の阻害剤は、週2回、週3回または月3回投与されてきた。より長期間にわたる数用量の投与により、患者が許容しうる用量がしばしば低下するために、個々の用量が生物学的に有効なレベルに到達することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0100161号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Wood,Kenneth W.,et al.”Past and future of the mitotic spindle as an oncology treatment.” Current Opinion in Pharmacology.Vol.1,Issue 4(August 1,2001):pp370−377
【非特許文献2】2006 EJC Poster:Broker,L.E.,et al.”The novel oral taxanes BMS275183 has a favorable activity and toxicity profile in a twice weekly schedule;Preliminary findings from an extended Phase 1 trial.” EJC Suppl.2006 Abstract 644,p.194
【非特許文献3】Denduluri,Neelima,et al.”Phase II trial of ixabepilone, an epothilones B analog,given daily for three days every three weeks, in metastatic breast cancer.” Invest.New Drugs.25(August 25,2006):pp63−67
【非特許文献4】2004 ASCO Abstract No.3068,Hammond,L.A.,et al.”Phase(Ph)1 evaluation of the dolastatin analogue synthadotin(SYN−D;ILX651):Pooled data analysis of three alternate schedules in patients(prs) with advanced solid tumors.” J.Clin.Oncology.2004 Suppl.Abstract 3068 14s(2004)
【非特許文献5】Gautschi,Oliver,et al.”Aurora Kinases as Anticancer Drug Targets.” Clin.Cancer Res.14(6)(March 15,2008):pp.1639−48
【非特許文献6】Steegmaier,Martin,et al.”BI 2536,a Potent and Selective Inhibitor of Polo−like Kinase 1,Inhibits Tumor Growth In Vivo.” Current Biology.17(February 20,2007):pp.316−322
【非特許文献7】Chan,G.K.T.,et al.”Characterization of the Kinetochore Binding Domain of CENP−E Reveals Interactions with the Kinetochore Proteins CENP−F and hBUBR1." J.Cell Biology.Vol.143,No.1(October 5,1998):pp.49−63
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
驚くべきことに、病原性細胞を持つ哺乳動物に有糸分裂の阻害剤の第1の用量を投与し、細胞が有糸分裂停止に至った後、その第1の用量から1または2日後に該有糸分裂の阻害剤の第2の用量を投与すると、アポトーシスの増加、もしくは有糸分裂の終了とそれに続く細胞死が増加することがわかった。
【0020】
一様態において、本発明は、有糸分裂阻害剤によって誘導された有糸分裂停止の状態にある病原性細胞を持つ患者に、該細胞のアポトーシスを増加させるべく投与するための有糸分裂の阻害剤に関する。
【0021】
本発明の別の様態は、’161 KSP阻害剤によって誘導された有糸分裂停止の状態にある病原性細胞を持つ患者に、該細胞のアポトーシスを増加させるべく投与するための’161 KSP阻害剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、アポトーシスのウォッシュアウト実験を示す。
【図2】図2は、インビトロのHT−29細胞におけるカスパーゼ3/7の経時的な活性を示す。
【図3】図3は、インビトロのRPMI 8226細胞におけるカスパーゼ3/7の経時的な活性を示す。
【図4】図4は、2つの異なった投薬スケジュールについての、様々な時点でのヌードマウスの皮下HT−29異種移植片における単極紡錘体の量を示す。
【図5】図5は、2つの異なった投薬スケジュールについての、様々な時点でのヌードマウスの皮下HT−29異種移植片における単極紡錘体の量を示す。
【図6】図6は、2つの異なった投薬スケジュールについての、様々な時点でのヌードマウスの皮下HT−29異種移植片におけるアポトーシス細胞のパーセンテージを示す。
【図7】図7は、2つの異なった投薬スケジュールについての、様々な時点でのヌードマウスの皮下HT−29異種移植片におけるアポトーシス細胞のパーセンテージを示す。
【図8】図8は、様々な投薬量についての、24時間および48時間でのヌードマウスの皮下HT−29異種移植片における単極紡錘体および双極紡錘体を持つ細胞のパーセンテージを示す。
【図9】図9は、様々な投薬量についての、24時間および48時間でのヌードマウスの皮下HT−29異種移植片におけるアポトーシス細胞のパーセンテージを示す。
【図10】図10は、皮下HT−29異種移植片を持つヌードマウスにおける腫瘍増殖阻害(「TGI:tumor growth inhibition」)実験を示す。
【図11】図11は、皮下HT−29異種移植片を持つヌードマウスにおけるTGI実験を示す。
【図12】図12は、皮下HT−29異種移植片を持つヌードマウスにおけるTGI実験を示す。
【図13】図13は、皮下HT−29異種移植片を持つヌードマウスにおけるTGI実験を示す。
【図14】図14は、皮下HT−29異種移植片を持つヌードマウスにおけるTGI実験を示す。
【図15】図15は、皮下HT−29異種移植片を持つヌードマウスにおけるTGI実験を示す。
【図16】図16は、皮下HT−29異種移植片を持つヌードマウスにおけるTGI実験を示す。
【図17】図17は、異なった投薬スケジュールについての、様々な時点でのSCID−beigeマウスの皮下RPMI 8226異種移植片における単極紡錘体のパーセンテージを示す。
【図18】図18は、異なった投薬スケジュール後についての、様々な時点でのSCID−beigeマウスにおける皮下RPMI 8226異種移植片におけるアポトーシス細胞のパーセンテージを示す。
【図19】図19は、異なった投薬スケジュールについての、様々な時点でのSCID−beigeマウスにおける皮下RPMI 8226異種移植片における双極紡錘体のパーセンテージを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のいくつかの実施形態が次に詳細に言及される。本発明は、列挙される実施形態と併せて記載されるが、当然のことながら、本発明をそれらの実施形態に限定することは意図されない。逆に、本発明は、本特許請求の範囲に規定されるように本発明の範囲内に含むことができるすべての代替物、修正物および等価物に及ぶことが意図される。当業者は、本発明を実施する際に用いることができた本明細書に記載されるものと同様もしくは等価な多くの方法および材料を認識する。本発明は、決して記載される方法および材料に限定されるものではない。組み込まれる文献および同様の資料の1つ以上が、以下に限定されないが定義される用語、用語の使用法、記載される技術などを含めて本出願に相違または矛盾する場合、本出願が優先される。
【0024】
定義
用語「癌」および「癌の」は、制御されない細胞増殖を典型的に特徴とする哺乳動物における生理的状態を指すかまたは記述する。「腫瘍」は、1つ以上の癌細胞を備える。癌の例は、以下には限定されないが、癌、リンパ腫、芽腫、肉腫および白血病またはリンパ系悪性疾患を含む。かかる癌のより詳細な例は、扁平上皮癌(例えば、上皮の扁平上皮癌)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(「NSCLC:non−small cell lung cancer」)、肺腺癌および肺扁平上皮癌を含む肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、消化器癌を含む胃癌(gastric cancer)または胃癌(stomach cancer)、膵癌、膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney cancer)または腎臓癌(renal cancer)、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫を含む皮膚癌、頭頸部癌、多発性骨髄腫および急性骨髄性白血病を含む。
【0025】
用語「処置する」または「処置」は、治療手段、予防手段(prophylactic measure)、緩和手段または予防手段(preventative measure)を指す。本発明の目的のために有益かまたは望ましい臨床結果は、以下には限定されないが、検出できるかまたは検出できないかに関わらず、症状の軽減、疾患の範囲の縮小、安定化した(すなわち、悪化しない)病状、疾患進行の遅延または緩徐化、病状の改善または緩和、および(全体か一部かに関わらず)軽快を含む。「処置」は、処置を受けない場合に予想される生存と比較して、生存が延長されることを意味することもできる。処置を必要とする人々は、すでに病状または障害を持つ人々、ならびに病状または障害を持つ傾向にある人々、あるいは病状または障害を予防すべき人々を含む。
【0026】
治療におけるアポトーシス増加のための有糸分裂の阻害剤
本発明は、有糸分裂阻害剤によって誘導された有糸分裂停止の状態にある病原性細胞を持つ患者に、該細胞のアポトーシスを増加させるべく投与するための有糸分裂の阻害剤を提供する。
【0027】
細胞に有糸分裂の阻害剤を投与すると、細胞は有糸分裂停止に至る。しかしながら、有糸分裂停止は、必ずしも、細胞をアポトーシスに導くわけではないし、抗腫瘍効果をもたらすわけでもない。(例えば:Shi,Jue,et al.”Cell Type Variation in Responses to Antimitotic Drugs that Target Microtubules and Kinesin−5.” Cancer Research.68(9)(May 1,2008):pp.3269−76;および2002 AACR Poster:”A Pharmacodynamic marker of mitosis demonstrates the anti−mitotic activity of SB−715992, an inhibitor of the mitotic kinesin KSP.”www.cytokinetics.com/pdf/AACR_2002_Poster_1336.pdfを参照)。細胞は、アポトーシス・ピークの前にある期間にわたって停止したままでなくてはならないことがわかった(図1を参照)。アポトーシスに必要とされる期間は、細胞タイプおよび腫瘍のタイプの間で変化しうる(図2および3を参照)。また、1用量の代わりに2用量を投与すると、生物学的効果の期間が延び(図4および5を参照)、有糸分裂の阻害剤の場合、アポトーシスの期間が延びその規模が増大する(図6および7を参照)。従って、有糸分裂の阻害剤を用いてアポトーシスを増加させるためには、適切な期間にわたって有効に細胞を停止したままに保つことが必要である。
【0028】
細胞に有糸分裂の阻害剤を投与すると、有糸分裂を妨げる。例えば、KSP阻害剤を投与すると、単極紡錘体の量が増加する。しかしながら、所望の生物学的反応を達成するには、その阻害剤のある最小量が投与されなくてはならない(図8を参照)。それゆえ、有糸分裂の阻害剤の投与が有効であるためには、阻害剤の生物学的有効用量を達成しなくてはならない。KSP阻害剤の生物学的有効用量は、停止した単極紡錘体の出現をもたらす阻害剤の用量である。これらは、免疫組織化学的手法によって確かめることができる(図4、5および8を参照)。他の有糸分裂の阻害剤の生物学的有効用量は、それらの標的プロファイルと矛盾しない有糸分裂異常をもたらす。
【0029】
有糸分裂の阻害剤の投与が生物学的有効用量に到達しない場合、然るべき生物学的反応を生じない。また、阻害剤の投与が十分長く細胞を停止したままに保てなければ、細胞がアポトーシスに至り得ない。従って、有糸分裂の阻害剤を用いてアポトーシスを有効に増加させるためには、意図された生物学的効果(すなわち、有糸分裂停止)を得るべく有糸分裂の阻害剤が少なくとも生物学的有効用量で投与されること、および細胞を停止したままに保ってアポトーシスを誘導すべく十分長い期間にわたって投薬されることが必要である(図4〜9とおよび17〜19を参照)。
【0030】
有糸分裂の阻害剤を2日に分けて分割用量として投与すると、同じ総用量を1日に与えるのに比べて効力があり得ることがわかった(図16を参照)。
【0031】
分裂阻止(mitotic block)後に、細胞が急速にアポトーシスに至る腫瘍では(図3を参照)、有糸分裂停止(図17を参照)もしくはアポトーシス(図18を参照)と、分割された用量スケジュールにおける腫瘍増殖を阻害する効果の向上とが直接に相関しないこともありうる(図16を参照)。かかる場合には、有糸分裂停止した細胞はより少なく観察され、アポトーシスは、急速な細胞死を反映して、腫瘍中でもはや検出できない。しかしながら、有糸分裂において正常な周期にある細胞を示唆する双極紡錘体を持つ細胞の量は、効果の向上と逆相関し得る(図19を参照)。かかる場合、双極紡錘体を持つ細胞が少ないほど分裂阻止はより完全であり、その阻止を回避して細胞周期に戻る細胞がより少ないことを示唆する。
【0032】
本発明の一実施形態は、有糸分裂阻害剤によって誘導された有糸分裂停止の状態にある病原性細胞を持つ患者に、該細胞のアポトーシスを増加させるべく投与するための有糸分裂の阻害剤を提供する。
【0033】
本発明の別の実施形態は、’161 KSP阻害剤によって誘導された有糸分裂停止の状態にある病原性細胞を持つ患者に、該細胞のアポトーシスを増加させるべく投与するための’161 KSP阻害剤を提供する。
【0034】
本発明は、有糸分裂停止を誘導するために投与された有糸分裂の阻害剤と同じ有糸分裂の阻害剤を、アポトーシスを増加させるべく投与することを対象とする。
【0035】
本発明は、細胞分裂によって生じた、あるいは有糸分裂を阻害することによって処置された病原性細胞を処置するために役立つ。有糸分裂の阻害剤は、過剰増殖性疾患および痛風を含む様々な疾患を処置するために用いることができる。過剰増殖性疾患は、癌、自己免疫疾患、関節炎、移植片拒絶、炎症性腸疾患、または医学的手技後に誘導された増殖を含む。
【0036】
ある実施形態において、本発明は、病原性癌細胞に対するアポトーシスの増加を提供する。より具体的には、病原性癌細胞は、以下には限定されないが、軟部組織癌:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫および奇形腫;肺:気管支原性癌(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨腫様過誤腫(chondromatous hamartoma)、中皮腫:胃腸:食道(扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(管腺癌(ductal adenocarcinoma)、膵島細胞腺腫、グルカゴン産生腫瘍、ガストリン産生腫瘍、カルチノイド腫瘍、VIP産生腫瘍)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);尿生殖路:腎臓(腺癌、ウイルムス腫瘍[腎芽細胞腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱および尿道(扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(精上皮腫、奇形腫、胚性癌腫、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、腺腫様腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝細胞腫(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;骨:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫瘍脊索腫、骨軟骨腫(osteochronfroma)(骨軟骨外骨腫症(osteocartilaginous exostosis))、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫(chondromyxofibroma)、類骨骨腫および巨細胞腫瘍;神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形性神経膠芽細胞腫、乏突起神経膠腫、神経鞘腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科系:子宮(子宮内膜癌)、子宮頸部(子宮頸癌、前腫瘍子宮頸部異形成)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、未分類の癌]、顆粒膜・包膜細胞腫瘍、セルトリ・ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、陰門(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、腟(明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫]、卵管(癌);血液系:血液および骨髄(骨髄性白血病[急性および慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄形成異常症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、ほくろ異形成母斑(moles dysplastic nevi)、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;および副腎:神経芽細胞腫、を含む。本明細書に示される用語「癌細胞」は、上記のように確認された状態のいずれか1つを患う細胞を含む。
【0037】
ある実施形態において、本発明は、病原性癌細胞のアポトーシスを増加させるために役立ち、病原性癌細胞は、固形腫瘍細胞である。固形腫瘍細胞は、皮膚の癌の腫瘍細胞、乳房の癌の腫瘍細胞、脳の癌の腫瘍細胞、子宮頸癌の腫瘍細胞および精巣癌の細胞などを含む。ある実施形態において、固形腫瘍は、乳癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、膵癌、膀胱癌、唾液腺癌(腺様嚢胞癌)、食道癌、中皮腫癌、および混合小細胞肺癌/非小細胞肺癌から選択される。
【0038】
ある実施形態において、本発明は、病原性癌細胞のアポトーシスを増加させるために役立ち、病原性癌細胞は、血液系腫瘍細胞である。血液系腫瘍細胞は、リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫の細胞などを含む。ある実施形態において、本発明は、病原性癌細胞のアポトーシスを増加させるために役立ち、病原性癌細胞は、リンパ腫、白血病および多発性骨髄腫の細胞から選択される。さらなる実施形態において、本発明は、病原性癌細胞のアポトーシスを増加させるために役立ち、病原性癌細胞は、進行した骨髄性白血病、または再発性もしくは難治性の多発性骨髄腫の細胞である。さらなる実施形態において、本発明は、病原性癌細胞のアポトーシスを増加させるために役立ち、病原性癌細胞は、再発性または難治性の多発性骨髄腫の細胞である。
【0039】
有糸分裂の阻害剤投与におけるアポトーシスの増加を探求する場合、多くの変数(variable)が存在する。特に、有糸分裂の阻害剤では、生物学的に有効であるように、十分長い期間にわたって、かつ十分な曝露レベルで投与が続く必要がある。
【0040】
病原性細胞における有糸分裂停止を誘導するために、有糸分裂の阻害剤の第1の投与が行われる。この第1の投与を1日目に、と言う。その後、有糸分裂の阻害剤の第2の投与が2日目に、かまたは3日目に提供される場合、アポトーシスの増加が生じうる。あるいは、第2の用量は、第1の用量の24から48時間以内である。本方法のこの様態は、病原性細胞のアポトーシスの増加を可能にする。なぜなら、生物学的有効用量を達成するために十分多く阻害剤が投薬され、意図された生物学的効果が得られる、すなわち、細胞が、有糸分裂停止のままに保たれるだけでなく、アポトーシスもしくは細胞死に導く有糸分裂の終了を促進するために十分長く有糸分裂停止のままに保たれるからである。
【0041】
この第2の用量のタイミングは、正確に第1の用量の24から48時間後である必要はない。これは、第2の用量が第1の用量の1日かまたは2日後に投与されるべきことを都合よく言ったに過ぎない。従って、第2の用量は、第1の用量のおよそ24から48時間後に投与される。この第2の用量は、第1の用量の12から60時間後に投与することもできる。
【0042】
有糸分裂の阻害剤の第2の用量を投与する場合、連続した日々に投与することは、より多くの便宜を患者に与える。処置方法に関する患者コンプライアンスを向上させるために、患者にとって便利な投薬スケジュールを持つことが好ましい。治療薬が静脈内注射によって患者に投与される場合には、追加の用量は、注射を受けるために追加的に病院または医者を訪問することが必要となりうるので、これが特に当てはまる。
【0043】
ビンカアルカロイド、タキサン、エポチロン、ドラスタチンおよびドラスタチン類似体、オーロラキナーゼ、polo様キナーゼ、および有糸分裂キネシン阻害剤を含めて、多くのタイプの有糸分裂の阻害剤が知られている。
【0044】
有糸分裂の阻害剤は、ビンカアルカロイド、タキサン、エポチロン、ドラスタチンおよびドラスタチン類似体、オーロラキナーゼ阻害剤、polo様キナーゼ阻害剤、および有糸分裂キネシン阻害剤からなる群から選択することができる。
【0045】
有糸分裂の阻害剤は、有糸分裂キネシン阻害剤であってもよい。有糸分裂キネシン阻害剤は、CENP−E阻害剤またはKSP阻害剤であってもよい。
【0046】
有糸分裂の阻害剤は、KSP阻害剤であってもよい。
【0047】
有糸分裂の阻害剤は、GSK−295、イスピネシブ、’161 KSP阻害剤、AZD−4877、CRx−026、SB−743921(SB−921)、MK−0731、EMD−534085およびARQ621からなる群から選択することができる。
【0048】
有糸分裂の阻害剤は、イスピネシブ、’161 KSP阻害剤、AZD−4877、CRx−026、SB−743921(SB−921)、MK−0731、EMD−534085およびARQ621からなる群から選択することができる。
【0049】
有糸分裂の阻害剤は、イスピネシブ、’161 KSP阻害剤およびAZD−4877からなる群から選択することができる。
【0050】
有糸分裂の阻害剤は、’161 KSP阻害剤からなる群から選択することができる。有糸分裂の阻害剤は、化合物1とすることもできる。有糸分裂の阻害剤は、化合物2とすることもできる。有糸分裂の阻害剤は、化合物3とすることもできる。有糸分裂の阻害剤は、化合物4とすることもできる。有糸分裂の阻害剤は、化合物5とすることもできる。有糸分裂の阻害剤は、化合物6とすることもできる。
【0051】
有糸分裂の阻害剤は、SU−6668、AZD−1152、CYC−116、AS−703569、MLN−8054、R763、PHA−739358、AT−9283、SNS−314、AZD−1152−HQPA、MLN−8237、KW−2449、PF−3814735、ENMD−2076、PHA−739385、MK−0457、MK−5108、ON−01910Na、BI−2536、GSK−461364、イスピネシブ、’161 KSP阻害剤、AZD−4877、CRx−026、SB−743921(SB−921)、MK−0731、EMD−534085、ARQ621およびGSK−295からなる群から選択することができる。
【0052】
有糸分裂の阻害剤は、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、アブラキサン(登録商標)、コルヒチン、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンD、イクサベピロン、ドラスタチン10、ドラスタチン15、シンサドチン、LU103793、セマドチン、SU−6668、AZD−1152、CYC−116、AS−703569、MLN−8054、R763、PHA−739358、AT−9283、SNS−314、AZD−1152−HQPA、MLN−8237、KW−2449、PF−3814735、ENMD−2076、PHA−739385、MK−0457、MK−5108、ON−01910Na、BI−2536、GSK−461364、GSK−295、イスピネシブ、’161 KSP阻害剤、AZD−4877、CRx−026、SB−743921(SB−921)、MK−0731、EMD−534085、ARQ621およびGSK−295からなる群から選択することができる。
【0053】
有糸分裂の阻害剤は、ビンカアルカロイドであってもよい。ビンカアルカロイドは、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンからなる群から選択することができる。
【0054】
有糸分裂の阻害剤は、タキサンであってもよい。有糸分裂の阻害剤は、パクリタキセル、アブラキサン(登録商標)およびドセタキセルからなる群から選択することができる。
【0055】
有糸分裂の阻害剤は、コルヒチンであってもよい。
【0056】
有糸分裂の阻害剤は、エポチロンであってもよい。有糸分裂の阻害剤は、エポチロンA、エポチロンBエポチロンDおよびイクサベピロンからなる群から選択することができる。
【0057】
有糸分裂の阻害剤は、ドラスタチンまたはドラスタチン類似体であってもよい。有糸分裂の阻害剤は、ドラスタチン10、ドラスタチン15、シンサドチン、LU103793およびセマドチンからなる群から選択することができる。
【0058】
有糸分裂の阻害剤は、オーロラキナーゼ阻害剤であってもよい。有糸分裂の阻害剤は、SU−6668、AZD−1152、CYC−116、AS−703569、MLN−8054、R763、PHA−739358、AT−9283、SNS−314、AZD−1152−HQPA、MLN−8237、KW−2449、PF−3814735、ENMD−2076、PHA−739385、MK−0457およびMK−5108からなる群から選択することができる。
【0059】
有糸分裂の阻害剤は、polo様キナーゼ阻害剤であってもよい。有糸分裂の阻害剤は、ON−01910Na、BI−2536およびGSK−461364からなる群から選択することができる。
【0060】
有糸分裂の阻害剤は、CENP−E阻害剤であってもよい。有糸分裂の阻害剤は、GSK−295であってもよい。
【0061】
上記のように、所望の生物学的効果に到達するためには、有糸分裂の阻害剤の適切な量が投与されなくてはならない。かくして、有糸分裂の阻害剤を投与することによってアポトーシスを増加させるために、所望の生物学的効果に到達する少なくとも最小量、もしくは生物学的有効用量を投与することになる。しかしながら、この量は、容認できない副作用が生物学的効果の恩恵を上回るほど多くあってはならない。従って、有糸分裂の阻害剤を投与することによってアポトーシスを増加させることは、最大許容投与量(「MTD:maximum tolerated dose」)以下を投与することになる。有糸分裂の阻害剤のそれぞれの投与は、生物学的有効用量と最大許容投与量との間にある。
【0062】
最大許容投与量は、容認できる発生率の用量制限毒性(「DLT:dose−limiting toxicity」)を生じる最高用量として定義される。容認できない率のDLTを生じる用量は、許容されないものと見做される。典型的に、特定のスケジュールについてのMTDは、フェーズ1の臨床試験において確立される。これらは、通常、齧歯動物で強い毒性用量の1/10(「STD 10(:severe toxic dose 10)」)の安全な開始用量(mg/mベース)からスタートし、患者3人のコホートを得て、より高い上昇ステップほど益々相対的な増分が減少する修正フィボナッチ数列(例えば、100%、65%、50%、40%、その後30%から35%の用量増加)に従って、用量を上昇させることによって患者で行われる。患者3人のコホートにおいて、許容されない用量に到達するまで用量の上昇が続けられる。容認できる比率のDLTを生じる用量レベルの、次に低い用量レベルがMTDであると見做される。
【0063】
また、有糸分裂の阻害剤のMTDは、阻害剤、種、製剤および投薬スケジュールに依存して変化する。例えば、7、14、21または28日間にわたる期間において、1日目にのみ、対、1および2日目に、対、1から3日目における有糸分裂の阻害剤の投与は、すべて異なったMTDを持ちうる。しかしながら、上記のように、有糸分裂の阻害剤を用いてアポトーシスを増加させるためには、生物学的に有効なものとするのに十分多量に、かつ細胞を有糸分裂停止のままに保つように十分長く阻害剤を投与することが必要である。1日目にのみの投与は、生物学的有効用量に到達し得るが、細胞におけるアポトーシスを増加させるには十分長くない可能性がある。代わりに、1から3日目の有糸分裂の阻害剤の投与は、十分長くてもよいが、生物学的有効用量に到達するには十分には投与され得ず、従ってアポトーシスが増加しない。これは、3日間にわたる投薬のMTDが生物学的有効用量より低いことに起因することもありうる。
【0064】
典型的には、癌のような病原性細胞を処置するときには、処置における最大の恩恵が達成され得るように、特定の化合物のMTDが患者に投与される。従って、本発明の一実施形態は、有糸分裂の阻害剤によって誘導された有糸分裂停止の状態にある病原性細胞を持つ患者に、該細胞のアポトーシスを増加させるべく投与するための有糸分裂の阻害剤を提供し、有糸分裂の阻害剤は、最大許容投与量で投与される。
【0065】
本発明の別の実施形態は、’161 KSP阻害剤によって誘導された有糸分裂停止の状態にある病原性細胞を持つ患者に、最大許容投与量で投与される、該細胞のアポトーシスを増加させるべく投与するための、’161 KSP阻害剤を提供する。
【0066】
癌のような病原性細胞を処置するときには、第1のサイクルが完了した後に、かかる処置がもはや必要ないかまたは有効でなくなるまで次に追加のサイクルが投与されうるように、投薬サイクルが設定される。サイクルの長さを決定する要因の1つは、副作用の回復または軽減(subsiding)を可能にすることである。薬学的組成物もしくは治療薬、特に有糸分裂の阻害剤を投与した後に、患者が副作用を経験することがある。副作用のタイプに依存して、副作用の回復または軽減が必要なことがありうる。この副作用の回復または軽減は、時間を要する場合があり、それゆえ第2のサイクルが開始されうる前のサイクルの長さを調節し得る。
【0067】
有糸分裂の阻害剤、特にKSP阻害剤の副作用の1つは、急性好中球減少症である。好中球減少症は、白血球の一種である好中球 顆粒球の数が異常に少ないことを特徴とする血液系疾患である。一般に、有糸分裂の阻害剤(またはKSP阻害剤)からこのタイプの副作用を経験した患者は、その阻害剤の追加の用量なしに時間が経つにつれて回復するか、あるいは好中球減少症が軽減する。
【0068】
KSP阻害剤の単回投与後に、多くの患者は、サイクルの14日目から21日目までに副作用から回復するか、または副作用が軽減する。
【0069】
本発明は、有糸分裂阻害剤によって誘導された有糸分裂停止の状態にある病原性細胞を持つ患者に、該細胞のアポトーシスを増加させるべく投与するための有糸分裂の阻害剤を提供し、上記サイクルは、副作用の回復または軽減が達成されることを可能にする。
【0070】
第1の用量は、有糸分裂停止を誘導する。本発明は、第1の用量の1日または2日後に投与される第2の用量を用いてアポトーシスの増加を提供する。本発明は、第1および第2の用量投与を含むサイクルが14から21日間であることを提供する。これは、2または3週間を言うのに都合のいい方法であり、必ずしも正確に14から21日間である必要はない。従って、サイクルは、およそ14日間から21日間である。サイクルは、11日間から24日間であってもよい。サイクルは14日間、または11日間から17日間までであってもよい。サイクルは同じく21日間、または18日間から24日間までであってもよい。
【0071】
本発明の別の実施形態は、’161 KSP阻害剤によって誘導された有糸分裂停止の状態にある病原性細胞を持つ患者に、該細胞のアポトーシスを増加させるべく投与するための’161 KSP阻害を提供する。ある実施形態において、’161 KSP阻害剤は、化合物1である。ある実施形態において、’161 KSP阻害剤は、化合物2である。ある実施形態において、’161 KSP阻害剤は、化合物3である。ある実施形態において、’161 KSP阻害剤は、化合物4である。ある実施形態において、’161 KSP阻害剤は、化合物5である。ある実施形態において、’161 KSP阻害剤は、化合物6である。ある実施形態において、病原性細胞は、癌細胞である。ある実施形態において、病原性細胞は、血液系腫瘍細胞である。ある実施形態において、病原性細胞は、リンパ腫の細胞、白血病の細胞および多発性骨髄腫の細胞から選択される。ある実施形態において、病原性細胞は、固形腫瘍細胞である。ある実施形態において、病原性細胞は、皮膚の細胞、乳房の細胞、脳のの細胞、子宮頸癌の細胞および精巣癌の細胞の腫瘍細胞から選択される。ある実施形態において、固形腫瘍細胞は、乳癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、膵癌、膀胱癌、唾液腺癌(腺様嚢胞癌)、食道癌、中皮腫癌、および混合小細胞肺癌/非小細胞肺癌から選択される。ある実施形態において、阻害剤は、最大許容投与量で投薬される。
【0072】
本発明の別の実施形態は、’161 KSP阻害剤によって誘導された有糸分裂停止の状態にある病原性細胞を持つ患者に、阻害剤は、最大許容投与量で投与される、該細胞のアポトーシスを増加させるべく投与するための、’161 KSP阻害剤を提供する。ある実施形態において、’161 KSP阻害剤は、化合物1である。ある実施形態において、’161 KSP阻害剤は、化合物2である。ある実施形態において、’161 KSP阻害剤は、化合物3である。ある実施形態において、’161 KSP阻害剤は、化合物4である。ある実施形態において、’161 KSP阻害剤は、化合物5である。ある実施形態において、’161 KSP阻害剤は、化合物6である。ある実施形態において、病原性細胞は、癌細胞である。ある実施形態において、病原性細胞は、血液系腫瘍細胞である。ある実施形態において、病原性細胞は、リンパ腫の細胞、白血病の細胞および多発性骨髄腫の細胞から選択される。ある実施形態において、病原性細胞は、固形腫瘍細胞である。ある実施形態において、病原性細胞は、皮膚の細胞、乳房の細胞、脳のの細胞、子宮頸癌の細胞、および精巣癌の細胞の腫瘍細胞から選択される。ある実施形態において、固形腫瘍細胞は、乳癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、膵癌、膀胱癌、唾液腺癌(腺様嚢胞癌)、食道癌、中皮腫癌、および混合小細胞肺癌/非小細胞肺癌から選択される。
【実施例】
【0073】
本発明を例示するために、次の実施例が含まれる。しかしながら、これらの実施例は、本発明を限定するものではなく、本発明を実施する方法を支持し、かつ示唆することのみが意図されることを理解すべきである。
【0074】
(実施例1)
アポトーシスのウォッシュアウト
ビヒクル対照(DMSO)または10nMの化合物4のいずれかを用いて処理されたHT−29細胞が、同じ96ウェル組織培養プレート中に播種された。8または24時間後に、アポトーシスの誘導を阻止できたかどうか決定するために、化合物4がHT−29細胞から除去されて、新鮮な増殖培地で置換された。反応生成物の発光としてカスパーゼ3/7活性が、CaspaseGlo 3/7試薬(Promega)およびルミノメーターを用いて、指示された時間に測定された。値は、DMSOで処理された細胞のカスパーゼ3/7活性で除した、化合物4で処理された細胞のカスパーゼ3/7活性として報告される。図1に結果が示される。
【0075】
(実施例2)
化合物4を用いた連続的な処理後のHT−29におけるアポトーシス
ビヒクル対照(DMSO)または100nM、10nM、1nM、または0.1nMの化合物4のいずれかを用いて連続的に処理されたHT−29細胞が、同じ96ウェル組織培養プレートに播種された。発光性の反応生成物としてカスパーゼ3/7活性が、CaspaseGlo 3/7試薬(Promega)およびルミノメーターを用いて、指示された時間に測定された。値は、DMSOで処理された細胞のカスパーゼ3/7活性で除した、化合物4で処理された細胞のカスパーゼ3/7活性として報告される。データは、4つの独立した実験からの平均値および標準偏差値を含む。図2に結果が示される。
【0076】
(実施例3)
RPMI 8226におけるアポトーシス
ビヒクル対照(DMSO)、10nMの化合物4、または10nMのビンクリスチンのいずれかを用いて処理されたRPMI 8226細胞が、同じ96ウェル組織培養プレートに播種された。発光性の反応生成物としてカスパーゼ3/7活性が、CaspaseGlo 3/7試薬(Promega)およびルミノメーターを用いて、指示された時間に測定された。値は、DMSOで処理された細胞のカスパーゼ3/7活性で除した、薬物で処理された細胞のカスパーゼ3/7活性として報告される。データは、4つの独立した実験からの平均値および標準偏差値を含む。図3に結果が示される。
【0077】
(実施例4)
単極紡錘体の存続期間およびアポトーシスの規模(HT−29異種移植片)
雌のヌードマウスに、PBS 100μL中の5×10個のHT−29細胞を皮下移植した。10日後に、腫瘍が測定されて、マウスは、各群における平均腫瘍容積がおよそ240mmの3つの群に無作為に分けられた。化合物4が投薬の直前にノーマルセーラインに溶解された。化合物4に対するMTDが20mg/kgであると決定された。投与容量は、10mL/kgであった。投薬は、1日目にビヒクルのみ;および化合物4を1日目に20mg/kg;ならびに1お日目よび3日目に20mg/kgであった。投薬後の様々な時点(24、48、72、96、120および144時間)において、CO吸入によりマウスを安楽死させ、腫瘍が採取されて、直ちにホルマリンに入れられた。ビヒクル対照群のサンプルは、投薬の24時間後および72時間後に収集された。1日目の群のサンプルは、その投薬の24、48、72および96時間後に収集された。1日目および3日目の群のサンプルは、第1の投薬の72、96、120および144時間後に収集された。腫瘍組織のパラフィンブロックが標準的な手順で調製された。単極紡錘体の視覚化は、切断切片をマウス抗ヒトαチューブリン1次抗体(clone B−7,Santa Cruz Biotechnology)、続いてAlexafluor 488(Invitrogen)に結合したヤギ抗マウス2次抗体を用いて染色することによって行われた。細胞をカウントするために、Hoechst 33342を用いて核が染色された。各サンプルの3つの40X領域における紡錘体構造が、螢光顕微鏡を用いて手作業でカウントされた。同じく各サンプルの3つの40X領域におけるTUNEL陽性細胞を手作業でカウントすることによって、アポトーシスが数量化された(RocheからのIn Situ Cell Death Detection Kit,APを用いたTUNEL染色)。図4および6に結果が示される。
【0078】
(実施例5)
単極紡錘体の存続期間およびアポトーシスの規模(HT−29異種移植片)
実施例5の方法は、投薬が、1日目にビヒクルのみ;および化合物4を1日目に8mg/kg;ならびに1日目および3日目に8mg/kgであったこと以外、実施例4と同じである。ビヒクル対照群のサンプルは、投薬の24時間後および72時間後に収集された。1日目の群のサンプルは、その投薬の24、48、72および96時間後に収集された。1日目および3日目の群のサンプルは、第1の投薬の72、96、120および144時間後に収集された。図5および7に結果が示される。
【0079】
(実施例6)
分裂阻止およびアポトーシス(HT−29)
雌のヌードマウスに、PBS 100μL中の3×10個のHT−29細胞を皮下移植した。14日後に、腫瘍が測定されて、マウスは、各群における平均腫瘍容積がおよそ300mmの3つの群に無作為に分けられた。投薬は、ビヒクルのみ;ならびに化合物4を5、10、20および30mg/kgであった。すべてのサンプルは、投薬の24時間後および48時間後に収集された。すべての他の方法は、実施例4を記載された通りであった。図8および9に結果が示される。
【0080】
(実施例7)
様々な投薬スケジュールにおける腫瘍増殖阻害(HT−29)
雌のヌードマウスに、PBS 100μL中の4×10個のHT−29細胞を皮下移植した。13日後に、腫瘍が測定されて、マウスは、各群における平均腫瘍容積がおよそ210mmの8つの群に無作為に分けられた。化合物4が投薬の直前にノーマルセーラインに溶解されて、毎日4mg/kgの用量を、隔日に8mg/kgの用量を、および4日毎に16mg/kgの用量を、12日間にわたって10mL/kgの容量で腹腔内に投与された。動物の体重および腫瘍容積は、(電子キャリパーを用いて)週2回測定された。腫瘍容積は、式:容積=(幅×長さ)/2を用いて計算された。図10に結果が示される。
【0081】
(実施例8)
様々な投薬スケジュールにおける腫瘍増殖阻害(HT−29)
雌のヌードマウスに、PBS 100μL中の5×10個のHT−29細胞を皮下移植した。11日後から14日後に、腫瘍が測定されて、マウスは、各群における平均腫瘍容積がおよそ230mmの7つの群に無作為に分けられた。化合物4が投薬の直前にノーマルセーラインに溶解されて、10mL/kgの容量で腹腔内に投与された。投薬は、1日目および2日目にビヒクルのみ;ならびに化合物4を1日目に20mg/kg;1日目および2日目に20mg/kg;1日目および3日目に20mg/kg;1、2および3日目に5mg/kg;1、2および3日目に10mg/kg;1、2、3,4および5日目に10mg/kg;1日目および2日目に10mg/kg;ならびに1日目および3日目に10mg/kgであった。動物の体重および腫瘍容積は、(電子キャリパーを用いて)週2回測定された。腫瘍容積は、式:容積=(幅×長さ)/2を用いて計算された。1、2、3、4および5日目における10mg/kgの投薬は、許容されなかった(20%超の重量減少および/または一部のマウスの死亡)。図11〜15に結果が示される。
【0082】
(実施例9)
様々な投薬スケジュールにおける腫瘍増殖阻害(RPMI 8226)
雌のSCID−beigeマウスに、50%マトリゲルを含むPBS 100μL中の1×10個のRPMI 8226細胞を皮下移植した。25日後に、腫瘍が測定されて、マウスは、各群における平均腫瘍容積がおよそ225mmの7つの群に無作為に分けられた。化合物4が投薬の直前にノーマルセーラインに溶解されて、10mL/kgの容量で腹腔内に投与された。投薬は、1日目にビヒクルのみ;ならびに化合物4を1日目に20mg/kg;1日目および2日目に10mg/kg;1日目および3日目に10mg/kg;ならびに1、5および9日目に20mg/kgであった。動物の体重および腫瘍容積は、(電子キャリパーを用いて)週2回測定された。腫瘍容積は、式、容積=(幅×長さ)/2を用いて計算された。図16に結果が示される。
【0083】
(実施例10)
単極紡錘体、双極紡錘体の存続期間およびアポトーシスの規模(RPMI 8226)
雌のSCID−beigeマウスに、50%マトリゲルを含むPBS 100μL中の1×10個のRPMI 8226細胞を皮下移植した。31日後に、腫瘍が測定されて、マウスは、各群における平均腫瘍容積がおよそ210mmの3つの群に無作為に分けられた。化合物4が投薬の直前にノーマルセーラインに溶解された。投与容量は、10mL/kgであった。投薬は、1日目にビヒクルのみ;ならびに化合物4を1日目に10mg/kg;1日目に20mg/kg;1日目および2日目に10mg/kg;ならびに1日目および3日目に10mg/kgであった。投薬後の様々な時間(24、48、72および96時間)に、CO吸入によりマウスを安楽死させ、腫瘍が採取されて、直ちにホルマリンに入れられた。ビヒクル対照群のサンプルは、投薬の48時間後に収集された。1日目における10mg/kgのサンプルは、投薬の24時間後および48時間後に収集された。1日目における20mg/kgのサンプルは、投薬の24、48および72時間後に収集された。1日目および2日目における10mg/kgのサンプルは、第1の投薬の48時間後および72時間後に収集された。1日目および3日目における10mg/kgのサンプルは、第1の投薬の72時間後および96時間後に収集された。腫瘍組織のパラフィンブロックが、標準的な手順で調製された。単極紡錘体の視覚化は、切断面をマウス抗ヒトαチューブリン1次抗体(clone B−7,Santa Cruz Biotechnology)、続いてAlexafluor 488(Invitrogen)に結合したヤギ抗マウス2次抗体を用いて染色することによって行われた。細胞をカウントするために、Hoechst 33342を用いて核が染色された。各サンプルの3つの40X領域における紡錘体構造が、螢光顕微鏡を用いて手作業でカウントされた。同じく各サンプルの3つの40X領域におけるTUNEL陽性細胞を手作業でカウントすることによって、アポトーシスが数量化された(RocheからのIn Situ Cell Death Detection Kit,APを用いたTUNEL染色)。図17、18と19に結果が示される。
【0084】
(実施例11)
フェーズ1研究におけるMTDの決定
様々な固形腫瘍を持つ年齢中央値が66歳(40〜79歳の範囲)の合計13人の患者が、ヒト・フェーズ1臨床試験に登録された(“Phase 1 Safety and Pharmacokinetic Study of ARRY−520 in Solid Tumors.” http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00462358を参照)。処置された固形腫瘍は、乳癌(2)、結腸直腸癌(2)、非小細胞肺癌(2)、膵癌(2)、膀胱癌、唾液腺癌(腺様嚢胞癌)、食道癌、中皮腫癌、および混合小細胞肺癌/非小細胞肺癌であった。化合物4が、IV使用のためのタイプ1透明ガラスバイアルに含まれる凍結乾燥粉末として、投与のために提供された。投与された用量レベルは、2週毎の1日目および2日目に、化合物4が1.25および1.6mg/m/日であった。MTDは、1.25mg/m/日(サイクル当たりの累積用量2.5mg/m)と決定され、グレード3の低ナトリウム血症、食欲不振、ASTの増加および発熱性好中球減少症のDLTを伴った。
【0085】
“A Phase 1/2 Study of ARRY−520 in Patients With Relapsed or Refractory Multiple Myeloma.” http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00821249も参照。
【0086】
本発明は、列挙された実施形態と併せて記載されたが、当然のことながら、本発明をそれらの実施形態に限定することは意図されない。逆に、本発明は、本特許請求の範囲によって規定されるように、本発明の範囲内に含まれうるすべての代替物、変更物および等価物を含むことが意図される。かくして、上の記載は、本発明の原則を単に例示するものと見做される。
【0087】
単語「備える(comprise)」、「備えた(comprising)」、「含む(include)」、「含んだ(including)」、および「含む(includes)」は、本明細書および以下の請求項に用いられるときに、提示される特徴、整数、成分、または工程の存在を指定することが意図されるが、1つ以上の他の特徴、整数、成分、工程またはそれらの群の存在または追加を除外するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
’161 KSP阻害剤によって誘導された有糸分裂停止の状態にある病原性細胞を持つ患者に投与して、該細胞のアポトーシスを増加させるための’161 KSP阻害剤。
【請求項2】
有糸分裂停止を誘導した前記阻害剤と同じである、請求項1に記載の阻害剤。
【請求項3】
前記’161 KSP阻害剤は、化合物1である、請求項1または2に記載の阻害剤。
【請求項4】
前記’161 KSP阻害剤は、化合物2である、請求項1または2に記載の阻害剤。
【請求項5】
前記’161 KSP阻害剤は、化合物3である、請求項1または2に記載の阻害剤。
【請求項6】
前記’161 KSP阻害剤は、化合物4である、請求項1または2に記載の阻害剤。
【請求項7】
前記’161 KSP阻害剤は、化合物5である、請求項1または2に記載の阻害剤。
【請求項8】
前記’161 KSP阻害剤は、化合物6である、請求項1または2に記載の阻害剤。
【請求項9】
前記病原性細胞は、癌細胞である、請求項1から8のいずれかに記載の阻害剤。
【請求項10】
前記病原性細胞は、血液系腫瘍細胞である、請求項1から9のいずれかに記載の阻害剤。
【請求項11】
前記病原性細胞は、リンパ腫の細胞、白血病の細胞および多発性骨髄腫の細胞から選択される、請求項1から10のいずれかに記載の阻害剤。
【請求項12】
前記病原性細胞は、固形腫瘍細胞である、請求項1から9のいずれかに記載の阻害剤。
【請求項13】
前記病原性細胞は、皮膚の癌の腫瘍細胞、乳房の癌の腫瘍細胞、脳の癌の腫瘍細胞、子宮頸癌の腫瘍細胞および精巣癌の細胞から選択される、請求項1から9または12のいずれかに記載の阻害剤。
【請求項14】
前記病原性細胞は、乳癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、膵癌、膀胱癌、唾液腺癌(腺様嚢胞癌)、食道癌、中皮腫癌、および混合小細胞肺癌/非小細胞肺癌から選択される、請求項1から9または12のいずれかに記載の阻害剤。
【請求項15】
前記阻害剤は、最大許容投与量で投与するためのものである、請求項1から14のいずれかに記載の阻害剤。
【請求項16】
化合物4によって誘導された有糸分裂停止の状態にある病原性細胞を持つ患者に、最大許容投与量で投与される、該細胞のアポトーシスを増加させるべく投与するための化合物4。
【請求項17】
前記病原性細胞は、癌細胞である、請求項16に記載の化合物4の投与。
【請求項18】
前記病原性細胞は、血液系腫瘍細胞である、請求項16または17に記載の化合物4の投与。
【請求項19】
前記病原性細胞は、リンパ腫の細胞、白血病の細胞および多発性骨髄腫の細胞から選択される、請求項16から18のいずれかに記載の化合物4の投与。
【請求項20】
前記病原性細胞は、固形腫瘍細胞である、請求項16から19のいずれかに記載の化合物4の投与。
【請求項21】
前記病原性細胞は、皮膚の癌の腫瘍細胞、乳房の癌の腫瘍細胞、脳の癌の腫瘍細胞、子宮頸癌の腫瘍細胞および精巣癌の細胞から選択される、請求項16から18または20のいずれかに記載の化合物4の投与。
【請求項22】
前記病原性細胞は、乳癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、膵癌、膀胱癌、唾液腺癌(腺様嚢胞癌)、食道癌、中皮腫癌、および混合小細胞肺癌/非小細胞肺癌から選択される、請求項16から18または20のいずれかに記載の化合物4の投与。
【請求項23】
前記最大許容投与量は、1.25mg/m/日である、請求項16から22のいずれかに記載の化合物4の投与。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2012−505924(P2012−505924A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532305(P2011−532305)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/061106
【国際公開番号】WO2010/045624
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(504344509)アレイ バイオファーマ、インコーポレイテッド (87)
【Fターム(参考)】