説明

治療ターゲティングのための酸不安定リンカーを介するPEGおよびポリシアルリソソーム酵素のコンジュゲート

治療糖タンパク質のリガンド装飾ポリマーコンジュゲートを作製する方法を記述する。糖タンパク質の特異的組織へのターゲティングは、高分子量ポリマー、例えば、PEG、ポリシアル酸などを用いて天然の糖および他の表面決定基をマスキングし、続いて、これを標的特異的リガンドにより装飾することにより改善される。いくつかの態様では、そのようなコンジュゲート中の酸不安定リンカーまたは迅速に分解可能なマスキング基により、例えば、リソソーム中で見られる条件下で、糖タンパク質からのポリマーの細胞内放出が可能になる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はタンパク質治療薬、より詳細には、リガンド装飾ポリマーとコンジュゲートされた補充リソソーム酵素およびリソソーム貯蔵障害の治療のためのそのようなコンジュゲートの使用により例示されるように、体内で組織特異的ターゲティングが達成され、続いて、作用部位で生物学的に活性な治療薬の細胞内放出が起きる、そのような治療薬と他の分子部分とのコンジュゲーション(conjugation)に関する。
【0002】
本出願は、2005年4月6日に出願された、参照により全体が本明細書に組み入れられる、米国特許仮出願第60/668,920号について優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
治療タンパク質の体内の選択組織への組織特異的ターゲティングは、癌ならびに多くの後天性および遺伝性疾患を含む多くの医学的状態において用途が見出されている。例えば、リソソーム貯蔵障害と呼ばれる疾患のクラスでは、リソソーム中に存在する1つまたは複数の酵素の遺伝性欠乏により、細胞内でそれらの酵素の基質の蓄積が起きる。体内の異なる細胞内での基質の発現および蓄積の組織特異的パターンのために、これらの疾患は、疾患により変動する組織/器官特異的症状となる。これらの疾患は、酵素補充療法(ERT)と呼ばれる方法である、患者において欠乏した酵素の活性バージョンの静脈内投与により治療できることがわかっている。しかしながら、ERTの効率は異なる疾患間で大きく変動する。この変動の理由は完全には理解されていないが、最も大きく影響を受ける組織に対する特異ターゲティングの欠如によるものだと一般に考えられている。
【0004】
ほとんどのリソソームタンパク質は、高マンノース型、複合型またはハイブリッド型の、1つまたは複数のN-またはO-結合オリゴ糖側鎖を含む糖タンパク質である。これらの糖残基に特異的な多くの受容体が存在し、とりわけ、マンノース、ガラクトース(アシアロ糖タンパク質受容体、ASGPR)およびマンノース-6-リン酸(カチオン-非依存性マンノース-6-リン酸受容体、CIMPR)に対するものが挙げられる。これらの受容体は少なくとも部分的に、投与タンパク質の細胞への取り込みを媒介する。しかしながら、これらの受容体の体内組織内での分布(例えば、肝細胞上で発現されるASGPR、マクロファージおよび肝臓のクッパー細胞などの細網内皮系の細胞上のマンノース受容体ならびに内皮細胞および他の細胞型上で広く発現されるCIMPR)はタンパク質を、最も強く影響される組織にターゲティングするように最適化されていない。いくつかの場合では、リモデリングと呼ばれる過程によるオリゴ糖鎖の一部または全ての修飾および/または除去により、都合よく、タンパク質の最終的な生体内分布が改善され、より特異的に、タンパク質が所望の細胞型をターゲティングする(例えば、Furbush et al., Biochimica et Biophysica Acta 673 :425-434 (1981)(非特許文献1)を参照されたい、これは、組換えグルコセレブロシダーゼ、イミグルセラーゼ(Cerezyme(登録商標)、Genzyme Corporation, Cambridge, MA)に対する糖リモデリングについて記述する)。しかしながら、糖側鎖の完全な除去はしばしば逆効果である。糖側鎖はまたしばしば、タンパク質の溶解性および/または細胞内安定性に必要であるからである。
【0005】
ERTで遭遇する別の困難はいくつかの治療タンパク質の強い免疫原性であり、患者の免疫系がしばしばそのようなタンパク質を異物と認識し、中和免疫応答を開始する。このように、治療タンパク質の免疫系への曝露を減少させる手段もまた望ましい。
【0006】
ポリエチレングリコール(PEG)などのポリマーとの共有結合性コンジュゲーションでは一般に、抗体、インターフェロンおよびエフェクター分子などの多くの治療薬の血清半減期が増加するが、免疫原性もまた減少する。リソソームタンパク質の場合、循環中で、投与したリソソームタンパク質の高い濃度を維持することは同様に、それらのバイオアベイラビリティを増加させると予測されるが、これらのタンパク質とPEGのコンジュゲーション(「PEG化」)だけでは効果的であると考えられない。これは一部には、酵素安定性に対する血漿中の状態、特に、上昇したpHの有害作用、ならびに、PEG、中性親水性ポリマーが様々な受容体系に対する糖タンパク質の相対親和性に影響を与えること、およびタンパク質に何らかの新規組織指向性を導入することができないことによるものである。このように、細胞、とりわけ、体内で基質が蓄積した組織中の細胞のリソソームへの取り込みを促進する別の手段が非常に望ましい。いくつかの場合では、これは、特定の組織型に対するポリマー自体の親和性により達成させることができる(例えば、治療薬を腎臓にターゲティングするためのPVP-DMManポリマーコンジュゲートが、Kamada et al., Nat. Biotech. (2003) 21:399-404(非特許文献2)において記述されている)。また、リガンドをコンジュゲート中に導入し、組織特異的受容体との相互作用を促進し、取り込みを媒介することにより達成される可能性もある。最も簡単な場合では、そのようなリガンドは選択した受容体に対する抗体により表される。しかしながら、より大きなタンパク性リガンド、例えば抗体はそれ自体、免疫原性となりえ、このように、病院でかなりの難問を提供する。さらに、治療タンパク質と高分子量ポリマーとのコンジュゲーションは、細胞中の作用部位でのタンパク質の活性を妨害する可能性がある。例えば、リソソーム酵素、特に糖脂質に作用するものの多くは、酵素活性のためにサポシンと呼ばれるクラス由来の補助因子を必要とすることがわかっている。サポシンは、基質の糖頭部基を触媒部位に提示するのを助けると考えられている。このように、高分子量ポリマーの酵素へのコンジュゲーションは、サポシンとの相互作用を妨害し、これにより、治療薬の効率を低下させることにより、酵素活性に影響する可能性がある。したがって、作用部位で酵素からポリマーを除去するための手段が望ましい。
【0007】
他方、酵素補充療法の効力の低下の一因となる別の因子は、リソソーム内のリソソームタンパク質の不安定さであり、このため、繰り返し投与する必要がある。例えば、Cerezyme(登録商標)(グルコセレブロシダーゼ)は一般に、ターゲティング細胞により取り込まれた後その活性が喪失するため、ゴーシェ病患者に、隔週で投与される。活性の喪失は、少なくとも部分的には、タンパク質へのリソソームプロテアーゼの作用によるものであり、PEGなどのポリマーを付加すると、タンパク質のタンパク質分解に対する耐性が増加させることができる。このように、ある状況の下では、ポリマーはリソソーム環境においてタンパク質を保護する追加の機能を果たす可能性があり、これにより、活性タンパク質のより良好なリソソーム内安定性が提供される。そのような戦略は、投与頻度を減少させるのに効果的である可能性がある。
【0008】
ペプチドまたは単糖もしくはオリゴ糖などの低分子量リガンドを、治療タンパク質をターゲティングさせるために使用してもよい。しかしながら、そのようなリガンドはしばしば、同族受容体による効果的な取り込みを媒介するために巨大分子上に複数のコピー、「多価ディスプレイ」と呼ばれる状況で存在しなければならない。現在市販されているヘテロ二官能性PEG(例えば、各末端に異なる化学物質を含む線形分子)を使用して三元コンジュゲートを生成してもよいが、複数のPEG分子の付着によることを除き、多価ディスプレイを提供しない。しかし、重い修飾ではしばしば酵素活性に悪影響がある。
【0009】
そのため、体内での標的特異的送達を可能にし、細胞内取り込みされても十分生物学的に活性であるタンパク質療法を提供することが引き続き必要である。
【0010】
【非特許文献1】Furbush et al., Biochimica et Biophysica Acta 673 :425-434 (1981)
【非特許文献2】Kamada et al., Nat. Biotech. (2003) 21:399-404
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
本発明は、治療糖タンパク質、マスキング部分、およびターゲティング部分の三元コンジュゲートを提供する。本発明のコンジュゲートは下記を含み:
(1)治療糖タンパク質(G)、
(2)第1のリンカー(L1)を介して、糖タンパク質のオリゴ糖側鎖に共有結合されているマスキング部分(M)、および
(3)第2のリンカー(L2)を介して、マスキング部分に共有結合されているターゲティング部分(T)、
ここで、糖タンパク質は、リソソーム条件下でコンジュゲートから放出される。
【0012】
別の態様では、コンジュゲートは、下記を含み:
(1)治療糖タンパク質(G)、
(2)第1のリンカー(L1)を介して、糖タンパク質のアミノ酸残基に共有結合されているマスキング部分(M)、および
(3)第2のリンカー(L2)を介して、マスキング部分に共有結合されているターゲティング部分(T)、
ここで、糖タンパク質は、リソソーム条件下でコンジュゲートから放出される。
【0013】
いくつかの態様では、治療糖タンパク質はリソソーム酵素、例えば、表2に列挙したリソソーム酵素であり、特に、グルコセレブロシダーゼ、α-ガラクトシダーゼA、酸α-グルコシダーゼ、または酸スフィンゴミエリナーゼを含む。いくつかの態様では、治療糖タンパク質はグルコセレブロシダーゼまたはα-ガラクトシダーゼAである。
【0014】
いくつかの態様では、L1および/またはL2は1つまたは複数の不安定基、例えば、ヒドラゾンおよび/またはジスルフィド基など、を含み、これにより、細胞の作用部位、例えば、リソソーム内で生物学的に活性な糖タンパク質が放出される。
【0015】
いくつかの態様では、マスキング部分は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリメタクリレート(PMA)、ポリシアル酸(PSA)、ヒアルロン酸(HA)、ヒドロキシアルキルデンプン(HAS)、アルブミン、およびデキストランからなる群より選択されるポリマーである。
【0016】
本発明は、本発明のコンジュゲートを作製および使用する方法をさらに包含する。コンジュゲートは、例えば、表2に列挙したリソソーム貯蔵障害の治療のための、例えば、薬学的組成物として使用することができる。いくつかの態様では、リソソーム貯蔵障害はファブリー、ゴーシェ、ポンペまたはニーマン-ピックB病である。
【0017】
配列の簡単な説明
(表1)配列リストに現れる配列

*CF-カルボキシフルオレセイン;**k-(D)リジン
【0018】
発明の詳細な説明
三元コンジュゲート
本発明は下記を含む三元コンジュゲートを提供し:
(1)治療糖タンパク質(G)、
(2)第1のリンカー(L1)を介して糖タンパク質に共有結合されている少なくとも1つのマスキング部分(M)、および
(3)第2のリンカー(L2)を介してマスキング部分に共有結合されている少なくとも1つのターゲティング部分(T)、
ここで、治療糖タンパク質は、リソソーム条件下でコンジュゲートから放出され、これにより細胞の作用部位、例えば、リソソーム内で生物学的に活性な糖タンパク質が得られる。
【0019】
1つの態様では、コンジュゲートは下記を含み:
(1)治療糖タンパク質(G)、
(2)第1のリンカー(L1)を介して糖タンパク質のオリゴ糖側鎖に共有結合されている少なくとも1つのマスキング部分(M)、および
(3)第2のリンカー(L2)を介してマスキング部分に共有結合されている少なくとも1つのターゲティング部分(T)、
ここで、治療糖タンパク質は、リソソーム条件下でコンジュゲートから放出され、これにより細胞の作用部位、例えば、リソソーム内で生物学的に活性な糖タンパク質が得られる。
【0020】
別の態様では、コンジュゲートは下記を含み:
(1)治療糖タンパク質(G)、
(2)第1のリンカー(L1)を介して糖タンパク質のアミノ酸残基に共有結合されている少なくとも1つのマスキング部分(M)、および
(3)第2のリンカー(L2)を介してマスキング部分に共有結合されている少なくとも1つのターゲティング部分(T)、
ここで、治療糖タンパク質は、リソソーム条件下でコンジュゲートから放出され、これにより細胞の作用部位、例えば、リソソーム内で生物学的に活性な糖タンパク質が得られる。
【0021】
「生物学的に活性な」という用語は、インビボまたはインビトロで生体系内の分子により実行される1つの機能または機能の組(または、その機能の要因となる効果)を示す。生物学的活性は、例えば、実施例で記述されるように、酵素活性または阻害活性により評価してもよい。
【0022】
治療糖タンパク質の放出は、作用部位で、L1、M、またはそれらの両方が分解した結果、起きる可能性がある。任意で、L2もまた、作用部位で分解可能な場合がある。
【0023】
いくつかの態様では、三元コンジュゲートは、細胞内の作用部位で迅速に分解可能である。「迅速に分解可能」という用語は、50%、60%、70%、80%、90%まで、または実質的に全ての糖タンパク質が、リソソーム条件下で、48時間以内にコンジュゲートから放出されることを意味する。(時間は、被験体への投与時間から、または細胞内取り込みの時間から測定することができる)。そのような態様では、コンジュゲートの半減期(投与した糖タンパク質の50%が放出される時間)は48時間未満、例えば、約6、12、18、24、30、36、42、および46時間である。コンジュゲートは、マスキング部分もしくはリンカー、またはその両方のため、迅速に分解可能である。
【0024】
「リソソーム条件」という用語は、リソソーム内の条件を示す。リソソームは細胞小器官であり、適当な条件下で単離されると、1つまたは複数のリソソーム加水分解酵素活性を示す。リソソーム単離手順は例えば、Bonifacino et al. (eds.) Current Protocols in Cell Biology, John Wiley & Sons, Inc., 2002, section 3.6.において記述されている。一般に、リソソーム条件は、インビトロで再現される可能性があり、実施例で示されるように、約4.5〜5.5のpHおよび還元環境を含む。
【0025】
別の態様では、三元コンジュゲートは細胞内の作用部位で徐々に分解可能である。「徐々に分解可能」という用語は、リソソーム条件下で約48時間後にコンジュゲートから、糖タンパク質の50%、40%、30%、20%。10%未満が放出される、または実質的に糖タンパク質が放出されないことを意味する。そのような態様では、コンジュゲートの半減期は48時間を超え、例えば、50、96、168、216、240、360、または480時間である。コンジュゲートは、マスキング部分もしくはリンカー、またはその両方のため、徐々に分解可能とすることができる。
【0026】
本発明の三元コンジュゲートは最大で20ものマスキング部分(M)を含んでもよく、各々が独立して少なくとも1つの、および最大で20ものターゲティング部分(T)に結合される。一般に、本発明のコンジュゲートまたはその一部は下記化学式を有し:
G(L1-M(L2-T)n)m (I)
式中、nおよびmは整数であり;ならびに、互いに独立に1≦n≦20かつ1≦m≦20である。nおよび/またはmは例えば、2〜16、4〜12、1〜8、または2〜4から選択してもよい。例えば、特別なコンジュゲート分子は2つのマスキング部分Mを含んでもよく、2つのマスキング部分のうちの1つは4つのターゲティング部分を含み、もう一方のマスキング部分は12のターゲティング部分を含んでもよい。制限するものではなく、説明目的のためだけに、図1はmマスキング部分および各マスキング部分に関連する様々な数(qm)のターゲティング部分を含む仮説コンジュゲート分子の構造概略図を提供する(リンカーは図面から省略する)。マスキング部分Mは同じか、または異なってもよく;リンカーL1は同じか、または異なってもよく;ターゲティング部分Tは同じか、または異なってもよい。さらに、結合されたL2-TまたはTを有する、平均して少なくとも1つのマスキング部分が存在する限り、結合されたL2-TまたはTを有さない1つまたは複数のマスキング部分が存在する可能性がある。同様に、Mを有さない1つまたは複数のL1が存在する可能性がある。このように、コンジュゲート組成物中のターゲティング部分の数のマスキング部分の数に対する比率は、1未満、例えば、0.1としてもよい。同様に、コンジュゲート組成物中のGの数1つあたりのマスキング部分の数の比率は1未満、例えば0.1としてもよい。n?2の態様は、ターゲティング部分の「多価ディスプレイ」という別の利点を提供する可能性があり、これにより、いくつかの条件下での細胞内取り込みの増強が可能になる場合がある。
【0027】
糖タンパク質
「治療糖タンパク質」という用語は、糖タンパク質が細胞内に送達されると、治療効果、例えば、患者の症状の予防、発症の遅延、または寛解が達成され、またはそうでなければ、所望の生物学的結果、例えば、基質蓄積の減少、細胞増殖の減少、アポトーシス誘導、などによる小器官、細胞、組織、または器官機能の改善が生じるような、1つまたは複数のO-および/またはN-結合オリゴ糖側鎖を有するタンパク質を示す。いくつかの態様では、治療糖タンパク質は非ウイルス性糖タンパク質、例えば抗体である。治療糖タンパク質の1つのクラスは、治療される患者に欠如している酵素である。そのような酵素の例としては、表2に列挙したリソソーム加水分解酵素などのリソソーム酵素が挙げられる。いくつかの態様では、治療糖タンパク質はα-ガラクトシダーゼA、酸β-グルコシダーゼ(グルコセレブロシダーゼ)、酸α-グルコシダーゼまたは酸スフィンゴミエリナーゼである。いくつかの態様では、治療糖タンパク質はα-ガラクトシダーゼA、または酸β-グルコシダーゼ(グルコセレブロシダーゼ)である。
【0028】
(表2)リソソーム貯蔵障害および対応する糖タンパク質

*グルコシルセラミド系スフィンゴ糖脂質の蓄積に起因する疾患
【0029】
治療糖タンパク質は、2つまたはそれ以上のサブユニットを含んでもよく(例えば、2つの45kDaのサブユニットのホモ二量体であるα-ガラクトシダーゼA)、これらのサブユニットの1つまたは複数は少なくとも1つのオリゴ糖鎖を有する。
【0030】
ターゲティング部分
ターゲティング部分は、治療糖タンパク質が所望の標的に十分特異的に送達されるように、ターゲティング細胞型、組織、または器官に基づき選択される。ターゲティング部分の例としては、下記が挙げられる:
(1)伝達ペプチド、例えば、R9(SEQ ID NO:6)(Mitchell et al., J. Peptide Res. (2000)56:318-325;Wender et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (2000)97:13003-13008)、K9(SEQ ID NO:4)(Shen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (1978) 75:1872-76;米国特許第4,701,521号)、Tat(SEQ ID NO:2)(Mann et al., EMBO J. (1991)10:1733-39;Fawell et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (1994)91:664-668;Schwarze et al., Science (1999) 285:1569-72)、SynB1-SynB6およびそれらの配列変異体(Roussele et al., Mol. Pharmacol. (2000) 57:679-686;Day et al., J. Immunol. (2003) 170:1498-1503、アンテナペディア(Derossi et al., Trends in Cell Biol. (1998) 8:84-87)、VP22(Elliott et al., Cell(1997) 88:223-233)など;
(2)天然受容体リガンド、例えば、インスリン受容体を介してターゲティングするためのインスリン(米国特許第4,749,570号)、カチオン非依存性マンノース6-リン酸受容体(CIMPR)を介してターゲティングするためのインスリン様成長因子II(IGF-II)(米国特許出願公開番号第2003/0082176号)、およびLDLR-関連タンパク質(LRP)を介してターゲティングするための受容体関連タンパク質(RAP)(Prince et al. J. Biol. Chem. (2004) 279:35037-35046)、および脳をLDL受容体ファミリーのメンバーを介してターゲティングするためのメラノトランスフェリン(Demeule et al. J. Neurochem. (2002))など;
(3)ファージディスプレイ選択ペプチドリガンド、例えば、脳をターゲティングするためのSp8ca(WO01/90139)、筋肉をターゲティングするためのASSLNIA(SEQ ID NO:8)(米国特許第6,399,575号)、脂肪組織をターゲティングするためのCKGGRAKDC(SEQ ID NO:9)(Kolonin et al., Nature Med. (2004) 10:625-32)、筋肉または脳をターゲティングするためのGETRAPL(SEQ ID NO:10)(米国特許第6,399,575号);および脳をトランスフェリン受容体を介してターゲティングするためのTHRPPMWSPVWP(SEQ ID NO:7)(Lee et al., Eur. J. Biochem. (2001) 268:2004-2012)など;
(4)内在性タンパク質のフラグメント、例えば、超低密度リポタンパク質(VLDL)受容体を介してターゲティングするための組織因子経路阻害剤(TFPI)(Hembrough et al., Blood (2004) 103:3374-3380)など;
(5)受容体に対する抗体、例えば、抗トランスフェリン受容体抗体OX26(Frieden et al., J. Pharm. Exp. Ther.(1996) 278:1491-98;Schnyder et al., Biochem. J. (2004) 377:61-7)および脳をターゲティングするための他の抗トランスフェリン受容体抗体(Friden et al. 1996;Zhang et al., Mol. Therapy (2003) 4:1-8;抗インスリン受容体抗体83-14hIRMab (Zhang et al., Mol. Therapy (2003) 7:1-8);抗Fc44抗体(WO02/057445;Muruganandam et al., FASEB J. (2002) 16:240-242)など;
(6)小分子、例えば、骨をターゲティングするためのビスホスホネートなど;ならびに
(7)非内在性タンパク質およびそれらのフラグメント、例えば、心臓および肺ならびに血液脳関門中の細胞表面に存在するヘパリン結合上皮増殖因子前駆体(HB-EGF)をターゲティングするための、ジフテリア毒素CRM197(Gaillard PJ, et al. Expert Opin. Drug Deliv. 2005 2(2):299-309;Abraham et al. BBRC (1993) 190:125-133)など。
【0031】
追加のターゲティング部分を、例えば、Cabilly (ed.), Combinatorial Peptide Library Protocols, 1st ed., Humana Press, 1998;Jung (ed.), Combinatorial Peptide and Nonpeptide Libraries:A Handbook, 1997, John Wiley & Sons;およびAntibodies; A Laboratory Manual, Harlow et al. (eds.) Cold Spring Harbor Laboratory, 1988;およびBorrebaeck (ed.) Antibody Engineering, 2nd ed., 1995, Oxford University Pressに記述されているように、作製することができる。
【0032】
マスキング部分
マスキング部分を使用して、糖タンパク質のオリゴ糖側鎖が、その同族受容体により認識されないようにマスキングする。例えば、マスキング部分は、糖タンパク質がその同族受容体に結合するのを、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%またはそれ以上だけ、減少させる(または完全にブロックする)のに十分なサイズまたは嵩高さを有するべきである。糖タンパク質-受容体の減少またはブロックを測定するための適した方法を実施例で示す。
【0033】
マスキング部分の例としては下記が挙げられる:
(1)非天然由来の生体適合性ポリマー、例えば、ポリアルキレンオキシド、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、およびポリメタクリレート(PMA)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアクリルアミド、α,β-ポリ(N-ヒドロキシエチル)-DL-アスパルトアミド(PHEA、Cavallaro et al., J. Drug Target. (2004) 12:593-605)、ポリ(ビニルピロリドン-コ-ジメチル無水マレイン酸)(ポリ(VP-コ-DMMAn)Kamada et al., Nature Biotechnology (2003) 21:399-404)、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルイミド)(HMPA、Etrych et al., J. Controlled Release (2001) 73:89-102)。
(2)ポリアニオン多糖、例えば、ポリシアル酸(PSA)(例えば、コロミニン酸(colomininic acid)、ヒアルロン酸(HA)、および硫酸デキストラン;ならびにヒドロキシアルキルデンプン(例えば、ヒドロキシメチルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、など)。
(3)タンパク性ポリマー、例えば、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、免疫グロブリン(IgG))。
【0034】
いくつかの態様では、マスキング部分はリソソーム条件下で迅速に分解可能である。マスキング部分に関して使用される場合、「迅速に分解可能」という用語は、48時間以内に50%、60%、70%、80%、90%までの、または実質的に全ての糖タンパク質がコンジュゲートから放出されるように、マスキング部分が分解され、これにより、細胞の活性部位で生物学的に活性な糖タンパク質が得られることを意味する。そのような態様では、放出の半減期は48時間未満であり、例えば、約6、12、18、24、30、36、42、および46時間である。迅速に分解可能なマスキング部分は例えば、PSAまたはHAから合成してもよい。
【0035】
別の態様では、マスキング部分はリソソーム条件下で「徐々に分解可能」であり、すなわち、分解に対しより耐性があり、細胞の作用部位で生物学的に活性な糖タンパク質をより長期にわたり供給する。マスキング部分に関して使用されると、「徐々に分解可能」という用語は、リソソーム条件下で約48時間後にコンジュゲートから糖タンパク質の50%、40%、30%、20%、10%未満が放出される、または実質的に糖タンパク質が放出されないようにマスキング部分が分解されることを意味する。そのような態様では、放出の半減期は48時間を超え、例えば、50、96、168、216、240、360、または480時間である。徐々に分解可能なマスキング部分は、例えば、PEG、PVP、またはヒドロキシルエチルデンプンから合成してもよい。
【0036】
マスキング部分は、例えば、0.5〜100、1〜50、または10〜20kDaの分子量を有してもよい。マスキング部分は、糖タンパク質およびターゲティング部分へのコンジュゲーションのための1つまたは複数の(例えば、2〜40、2〜20、2〜10、3、4、または5)の官能基を含んでもよい。例えば、マスキング部分がPEGである場合、PEGはペンダントまたはスター型配置の複数のアームを含んでもよく、例えば、ペンダント8-もしくは16-アームPEG、またはスター型配置4-もしくは6-アームPEG、または、例えば、Funhoff et al., J. Control. Release (2005) 102:711-724;Lecolley et al. Chem. Comm. (2004) 18:2026-2027において記述されているような、PEG基を含むブロックコポリマーである。
【0037】
リンカー
リンカーL1およびL2は、マスキング部分をそれぞれ、糖タンパク質およびターゲティング部分に共有結合させるように機能する。いくつかの態様では、L1および/またはL2はそれぞれ不安定基を含み、これにより、治療糖タンパク質がリソソーム条件下でコンジュゲートから放出させることができ、このため、細胞内の作用部位で生物学的に活性な糖タンパク質が得られる。
【0038】
いくつかの態様では、L1および/またはL2はリソソーム条件下で迅速に分解可能である。リンカーに関して使用されると、「迅速に分解可能」という用語は、48時間以内にコンジュゲートから50%、60%、70%、80%、90%までの、または実質的に全ての糖タンパク質が放出され、これにより細胞の作用部位で生物学に活性な糖タンパク質が得られるように、リンカーが分解されることを意味する。そのような態様では、放出の半減期は48時間未満であり、例えば、約6、12、18、24、30、36、42、および46時間である。迅速に分解可能なリンカーとしては、例えば、ヒドラゾンおよびジスルフィドが挙げられる。
【0039】
別の態様では、L1および/またはL2はリソソーム条件下で「徐々に分解可能」であり、すなわち、L1および/またはL2は分解に対しより耐性があり、細胞の作用部位で生物学的に活性な糖タンパク質をより長く供給する。リンカーに関して使用されると、「徐々に分解可能」という用語は、リソソーム条件下で約48時間後に、コンジュゲートから50%、40%、30%、20%、10%未満の糖タンパク質が放出される、または、実質的に糖タンパク質が放出されないようにリンカーが分解されることを意味する。そのような態様では、放出の半減期は48時間を超え、例えば、50、96、168、216、240、360、または480時間である。
【0040】
リンカーL1およびL2はそれぞれ独立して、好ましくは、アルキル(例えば、1〜6つの炭素)、カルボニル、ヒドラゾン、ジスルフィド、ヘテロアリール、およびアミドから選択されるが、さらに、アルキル、カルボニル、チオカルボニル、エーテル、チオエーテル、エステル、ジスルフィド、アミノ、アミド、イミノ、チオアミド、スルホンアミド、スルフィド、ヒドラゾン、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロシクリルから選択されてもよい。これらの基のいずれも、非置換であるか、またはアルデヒド、アルコキシ、アミド、アミノ、アリール、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、スルホネート、スルホニル、またはチオールなどの1つもしくは複数の官能基により置換されてもよい。いくつかの態様では、アルキルはカルボン酸またはそのエステルで置換される。別の態様では、エーテルはポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレンオキシドなどのポリエーテルである。
【0041】
いくつかの態様では、L1および/またはL2は式(IIa)のヒドラゾン基を含む:

【0042】
別の態様では、L1および/またはL2は式(IIb)のジスルフィド基を含む:

【0043】
いくつかの態様では、L1および/またはL2は式(III)〜(VIII)から選択されるヒドラゾン含有基を含み:

式中、Arはアリール、ヘテロアリール、またはピリジルであり、例えば、下記などである:

【0044】
いくつかの態様では、L1は0、1、または2の式(II)のヒドラゾン基および0または1のジスルフィド基を含んでもよく、一方、同じコンジュゲートにおいて、L2は0または1のヒドラゾンおよび0または1のジスルフィド基を含んでもよい。様々な特定の態様の例を表3で提供する。いくつかの態様では、例えば、L1およびL2はそれぞれ独立して、1、2またはそれ以上のヒドラゾン基およびさらに、ジスルフィドを含む。
【0045】
(表3)リンカーL1およびL2における不安定基の数および型の例

*(0、0、0、0)の場合、Mはリソソーム条件下で分解可能なマスキング部分であり;全ての他の場合には、これは任意である。
【0046】
例えば、リンカーL1およびL2はそれぞれ独立して、式(XIII)〜(XVIII)から選択される基を含んでもよく:


式中、pは整数である:2≦p≦12。
【0047】
いくつかの態様では、コンジュゲートは(XIX)〜(XXIII)に示される式を有する:

【0048】
別の態様では、コンジュゲートは(XXIV)〜(XXVIII)に示される式を有し:

式中、pおよびqは整数であり;ならびに、互いに独立に2≦p≦12かつ2≦q≦12である。
【0049】
コンジュゲートの作製方法
式(I)および(XVII)〜(XVI)を有するものを含む本発明のコンジュゲートの作製方法は、(a)第1の官能基および第2の官能基を含むマスキング部分を提供する工程、(b)マスキング部分の第1の官能基を治療糖タンパク質のオリゴ糖側鎖と反応させる工程、および(b)第2の官能基をターゲティング部分と反応させる工程を含む。
【0050】
マスキング部分は、単一型の官能基を含んでもよく、またはヘテロ官能性、すなわち、少なくとも2つの異なる型の官能基を含んでもよい。例えば、マスキング部分は、ヒドラジド、ヒドラジン、アミン、ヒドロキシル、カルボン酸、エステル、チオール、マレイミド、アクリレート、およびビニルスルホンから選択されるどれか1つ、どれか2つ、またはそれ以上を有するPEGであってもよい。
【0051】
いくつかの態様では、本発明のコンジュゲートの作製方法は、(a)糖タンパク質Gのオリゴ糖側鎖をマスキング部分Mと反応させ、糖タンパク質-マスキング部分コンジュゲートを形成させる工程、および(b)ターゲティング部分Tを糖タンパク質-マスキング部分コンジュゲートと反応させ三元コンジュゲートG(L1-M(L2-T)n)mを形成させる工程を含む。また、ターゲティング部分Tを最初にマスキング部分Mと反応させ、「リガンド装飾」マスキング部分を形成させてもよく、その後、これを糖タンパク質Gのオリゴ糖側鎖と反応させ、三元コンジュゲートG(L1-M(L2-T)n)mを形成させる。
【0052】
いくつかの態様では、過剰モル量のマスキング部分(リガンド装飾された、またはされていない)を活性化糖タンパク質と反応させる(例えば、1、2、5、または10モル当量過剰)。
【0053】
糖タンパク質の活性化
いくつかの態様では、糖タンパク質のオリゴ糖側鎖上の結合部位に反応基を導入することによりコンジュゲーション前に、糖タンパク質を活性化させる。例えば、活性化糖タンパク質は、結合部位に求電子官能基、例えば、アルデヒド基、を有してもよく、一方、マスキング部分(リガンド装飾された、またはされていない)は求電子基に対し反応性のある求核官能基(例えば、チオール基)を有する。活性化糖タンパク質はさらに、オリゴ糖に共有結合されるアダプター分子を組み入れることにより、求核官能基(例えば、チオール基)を有するように修飾してもよく、一方、マスキング部分(リガンド装飾された、またはされていない)は求電子官能基(例えば、チオール反応性基)を有するように作製することができる。チオール反応性基はアリールまたはヘテロアリールジスルフィド(例えば、ピリジルジスルフィド)とすることができる。例えば、アダプター分子、例えば、ニプシルエチルアミン(NEA;例えば、米国特許第6,749,685号を参照されたい)またはグリオキシルニプシルエチルアミド(GNEA)をマスキング部分と反応させ、ピリジルジスルフィドを形成させてもよい。別の態様では、チオール反応性基はアリールまたはヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、酢酸ビニル、またはマレイミドとすることができる。
【0054】
糖タンパク質活性化は、シアル酸および/または他の残基を酸化することにより(例えば、過ヨウ素酸塩を使用して)、または最初に末端シアル酸基の除去(「トリミング」)によりガラクトース残基を露出させ(例えば、ノイラミニダーゼなどの酵素を使用して)、その後に露出したガラクトースを酸化し、アルデヒドで官能化した糖タンパク質を生成させることにより(例えば、ガラクトースオキシダーゼ(GAO)などの酵素を使用して)のいずれかにより達成されうる。
【0055】
ヒドラゾン基の組み入れ
いくつかの態様では、アルデヒドをマスキング部分M(例えば、図2および実施例1を参照されたい)またはアダプター分子(例えば、図4および実施例7を参照されたい)と反応させるが、この場合、マスキング部分およびアダプター分子は反応性ヒドラジン基、例えばヒドラジドを有する。アルデヒド基を有する活性化糖タンパク質を約5.5(例えば、5〜6)のpHの緩衝液に交換させ、ヒドラジドと反応させる。例えば、図2で示すように、ヒドラジドPEG(HzPEG;例えば、SunBioから市販)を使用して、ヒドラゾン-含有コンジュゲートを形成させる。別の態様では、アダプター分子はチオールを含む。例えば、図4に示されるように、アダプター分子3-(2-ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド(PDPH)は保護チオールを含む。ヒドラジド基を有する同様のアダプター分子、例えば、S-アセチルチオアセトイミドグルタミン酸ヒドラジド(SATAGH、N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート(SATA)をグルタミン酸y-ヒドラジド(SATA;Duncan et al.,Anal. Biochem. (1983)132:68-73)を反応させることにより形成させる)を使用することができる。その後、例えばアニオン交換またはサイズ排除クロマトグラフィーにより、生成物を未反応PEGまたはアダプターから精製する。
【0056】
ジスルフィド基の組み入れ
治療糖タンパク質およびマスキング部分(リガンド装飾されているか、いないかに関係なく)を付着させる1つの方法は、(a)保護チオールを有するアダプター分子を用いて活性化糖タンパク質のオリゴ糖側鎖に保護チオールを組み入れる工程;(b)チオールを脱保護し、これをマスキング部分上のチオール反応性基と反応させる工程を含む。例えば、図4に示すように、糖タンパク質を最初に、保護チオールを有するアダプター分子、例えばPDPHと反応させる。また、保護チオール基を有するアダプター分子は、SATAをグルタミン酸ヒドラジドと反応させてSATAGHを形成させることにより調製してもよく、これを、その後、糖タンパク質と反応させてもよい。アダプターチオール基をその後脱保護し(例えば、トリス-カルボキシエチルホスフィン(TCEP)によるジスルフィドの還元により、またはチオアセテートをヒドロキシルアミンで処理することにより)チオールを露出させ、これをその後、チオール反応性基を有するPEGと反応させてもよい。
【0057】
マスキング部分上のチオール反応性基は、例えば、ジスルフィドであってもよい。いくつかの態様では、ジスルフィドを、アダプター分子を用いてPEGに組み入れてもよい。例えば、HzPEGをGNEAと反応させてGNEA-PEGを形成させることができる(図3)。また、チオール反応性PEGは、NEAを、カルボン酸基を有するPEGと反応させることにより作製することができる(図4)。得られたコンジュゲートは精製し(例えば、イオン交換クロマトグラフィーによる)、さらにチオール基(例えば、ペプチド中のシステイン)を含むターゲティング部分と反応させてもよく、最終三元糖タンパク質/マスキング部分/ターゲティング部分コンジュゲートが得られる。
【0058】
ヒドラゾンおよびジスルフィド基の組み入れ
前の2つの段落で記述した方法は、例えば、反応性ヒドラジドおよび保護チオールの両方を含むアダプター分子を使用することにより、ヒドラゾンおよびジスルフィドの両方を有するリンカーを提供することができる。例えば、図4に示すように、糖タンパク質を、保護チオール基およびヒドラジド基の両方を有するアダプター分子PDPHと反応させる。また、PDPHの代わりに、SATAGHなどの同様のアダプター分子を使用することができる。Duncan et al., Anal. Biochem. (1983) 132, 68-73により示されるように、SATA中の保護アセチル基は、選択的条件下でヒドロキシルアミンにより放出させることができチオールが露出し、これは、NEAの20%未満の加水分解が直接ヒドロキシルアミン攻撃から起きる条件下でNEAと反応させることができる。
【0059】
図4で示したような別の態様では、安定化ヒドラジン基、例えば、ピリジルヒドラジドなど(および任意でチオール反応性基)を含むアダプター分子を使用して糖タンパク質をマスキング部分にコンジュゲートさせる。そのようなアダプター分子の例としては、例えば、米国特許第5,206,370号;同第5,420,285号;同第5,753,520号;および同第5,769,778号および欧州特許第384,769号において記述されているような、HydraLink(商標)試薬(SoluLink Biosciences)が挙げられる。例えば、PEG-アミンを、ピリジルヒドラジン(スクシニミジル4-ヒドラジノニコチナートアセトンヒドラゾン、「SANH」)のN-ヒドロキシスクシンイミドまたはテレフタル酸ヒドラジド(スクシニミジル4-ヒドラジドテレフタレート塩酸塩、「SHTH」)と反応させ、PEG-ピリジルヒドラジンまたはPEG-テレフタル酸ヒドラジドを生成させることができる。PEG-ピリジルヒドラジンまたは-テレフタル酸ヒドラジドをガラクトースオキシダーゼ処理糖タンパク質と反応させ、ヒドラゾンを得ることができる。または、チオール反応性基は、最初にSANHまたはSHTHをNEAと反応させることにより安定化ヒドラジンに組み入れてもよい。得られた生成物を、反応性カルボニルを含むマスキング部分、例えばポリアニオン多糖(例えば、PSA)と反応させて、ヒドラゾンを形成させてもよい。
【0060】
糖タンパク質/マスキング部分コンジュゲートをその後、ターゲティング部分とさらに反応させる。いくつかの態様では、ターゲティング基を、図3で示したようにヒドラゾン結合を介して、マスキング部分にコンジュゲートさせることができる。また、ターゲティング部分がN-末端セリンまたはトレオニンを含むペプチドである場合、ペプチドは、過ヨウ素酸ナトリウムにより酸化してもよく、グリオキシルペプチド誘導体が得られる。ヒドラジンを含む糖タンパク質/マスキング部分コンジュゲートは、例えば、PEG-アミンをSANHまたはSHTHと反応させ、続いて、ガラクトースオキシダーゼ処理糖タンパク質と反応させることにより作製してもよい。グリオキシルペプチド誘導体をその後、糖タンパク質/マスキング部分コンジュゲート上のピリジルヒドラジンまたは安息香酸ヒドラジド基と反応させてもよく、ターゲティング部分がヒドラゾン基を介して結合されている三元コンジュゲートが得られる。別の態様では、チオール(例えば、ペプチド中のシステイン)を有するターゲティング部分を、チオール反応性基、例えば図4で示すように、アダプター分子中のジスルフィド基と反応させることができる。
【0061】
糖タンパク質のアミノ酸残基とのコンジュゲーション
多くの場合、マスキング部分のオリゴ糖へのコンジュゲーションにより、オリゴ糖の高程度のマスキング、ならびに受容体結合およびクリアランスの高程度の阻害が得られる。しかしながら、当業者であれば認識されるように、糖タンパク質の三次元構造のグリコシル化部位の分布は常に、重要なオリゴ糖決定因子を受容体結合からマスキングするための最適位置を提供するとは限らない場合がある。例えば、高マンノースオリゴ糖は、ユニークに位置付けされ、上記のコンジュゲーション化学の影響を受けやすい複合オリゴ糖の部位からかなり離れた位置にある可能性がある。
【0062】
したがって、別の態様では、本発明のコンジュゲートの作製方法は、(a)第1の官能基および第2の官能基を含むマスキング部分を提供する工程、(b)マスキング部分の第1の官能基を治療糖タンパク質のアミノ酸残基と反応させる工程、および(c)第2の官能基をターゲティング部分と反応させる工程を含む。
【0063】
糖タンパク質のオリゴ糖側鎖を介して本発明のコンジュゲートを形成するための上記方法を使用して、糖タンパク質のアミノ酸残基を介するコンジュゲートを形成させてもよい。
【0064】
さらに、いくつかの態様では、本発明のコンジュゲートの作製方法は、(a)糖タンパク質Gのアミノ酸残基をマスキング部分Mと反応させ、糖タンパク質-マスキング部分コンジュゲートを形成させる工程、および(b)ターゲティング部分Tを糖タンパク質-マスキング部分コンジュゲートと反応させ、三元コンジュゲートG(L1-M(L2-T)n)mを形成させる工程を含む。また、ターゲティング部分Tを、最初に、マスキング部分Mと反応させ、「リガンド装飾」マスキング部分を形成させてもよく、その後、糖タンパク質Gのアミノ酸残基と反応させ、三元コンジュゲートG(L1-M(L2-T)n)mを形成させる。
【0065】
いくつかの態様では、アミノ酸上に反応基を導入することによりコンジュゲーション前にアミノ酸残基を活性化させる。例えば、糖タンパク質のアミノ酸を活性化させ、求核官能基を有するようにしてもよく、一方、マスキング部分は求電子官能基を有してもよい。いくつかの態様では、アミノ酸残基に共有結合されたアダプター分子を導入することにより糖タンパク質を修飾して求核官能基(例えば、チオール)を有するようにしてもよく、一方、マスキング部分は、求電子官能基(例えば、チオール反応性基)を有するようにすることができる。別の態様では、アミノ酸残基を活性化し、求電子官能基を有するようにしてもよく、一方、マスキング部分は求核基を有してもよい。
【0066】
いくつかの態様では、過剰モル量のマスキング部分(リガンド装飾された、またはされていない)を糖タンパク質のアミノ酸残基または活性化アミノ酸残基と反応させる(例えば、1、2、5、または10モル当量過剰)。
【0067】
1つの態様では、マスキング部分が結合されているアミノ酸残基はリジンである。リジンはアダプター分子により修飾されてもよく、反応基、例えばチオールが導入される。例えば、リジン残基をチオール化試薬、例えばイミノチオラン(Traut試薬)、またはN-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート(SATA、Duncan、R.J.S. et al.(1983) Anal. Biochem. 132、68-73)と反応させてもよい。1つの態様では、チオール化試薬はスペーサを含み、例えば、S-アセチル-dPEG(商標)NHSエステル(dPEG(商標)SATA)およびS-アセチル-dPEG(商標)8NHSエステル(dPEG(商標)8SATA)などのPEGリンカーを含むSATA-型試薬である(Quanta Biodesign)。チオール(必要であれば、脱保護後)を、チオール反応性マスキング部分と反応させ、糖タンパク質-マスキング部分コンジュゲートを形成させてもよい。例えば、チオール修飾アミノ酸残基をNEA-PEGと反応させてもよく、ジスルフィド結合糖タンパク質-マスキング部分コンジュゲートが形成される(図4B)。そのようなジスルフィド結合コンジュゲート中の糖タンパク質は、リソソームの強い還元環境で、マスキング部分からの放出を受けやすい。
【0068】
1つの態様では、チオール化試薬はSATAである。別の態様では、チオール化試薬は、PEGリンカーを含むSATA-型試薬であり、ここで、PEGリンカーは2と12の間のエチレングリコール単位の長さ、または4と8の間のエチレングリコール単位の長さであり、例えば、それぞれ、dPEG(商標)4 SATAまたはdPEG(商標)8 SATAである。
【0069】
チオール修飾アミノ酸残基とチオール反応性マスキング部分との反応後、得られたコンジュゲートは、例えば、イオン交換クロマトグラフィーにより精製してもよい。その後、コンジュゲートをチオール含有ターゲティング部分と反応させ、三元コンジュゲートを形成させてもよい。ターゲティング部分は、システイン残基を含むペプチドまたはタンパク質としてもよい。ターゲティング部分がシステイン残基を含まない場合、タンパク質またはペプチド配列に導入してもよく、またはチオールを糖タンパク質に対し記述したように化学コンジュゲーションにより導入してもよい。三元コンジュゲートはサイズ排除クロマトグラフィーまたは他の手段により精製してもよい。
【0070】
ヘテロ二官能性マスキング部分の使用
本発明の三元コンジュゲートを作製するさらに別の方法は、ヘテロ二官能性マスキング部分、例えば、求核剤、例えば、アルデヒド反応性基を第1の官能基として、求電子剤、例えばチオール反応性基を第2の官能基として含むマスキング部分の使用を含む。そのような方法は、(a)ヘテロ二官能性マスキング部分を糖タンパク質の酸化オリゴ糖側鎖上のアルデヒド基と反応させる工程および(b)ターゲティング部分のチオール基をマスキング部分上のチオール反応性基と反応させる工程を含む(例えば、図3を参照されたい)。
【0071】
いくつかの態様では、ヘテロ二官能応性マスキング部分は、2つまたはそれ以上のアルデヒド反応性基、例えば、ヒドラジド基を有するマスキング部分(例えば、図3のHzPEG)から調製される。図3に示すように、ヒドラジド官能化PEGを、ヒドラジド反応性グリオキシルアルデヒドおよびチオール反応性官能基を含む分子、例えばGNEAと反応させ、ヒドラジド基およびチオール反応性基を含むヘテロ二官能性PEGを形成させる。このヘテロ二官能性PEGをガラクトースオキシダーゼの存在下、ノイラミニダーゼ処理糖タンパク質と反応させ、PEGが露出したタンパク質オリゴ糖へのヒドラゾン結合を介して結合されたコンジュゲートを生成させる。この生成物を精製し、その後、フリーのチオールを含むペプチドに結合させる。
【0072】
コンジュゲートの使用
本発明のコンジュゲートは、哺乳動物(例えば、ヒトおよび非ヒト動物)の治療のための薬学的組成物中の治療薬として使用することができる。必要であれば、コンジュゲートの治療効果を、実施例で記述したような、適したアッセイ法および/またはインビボ動物モデルを使用して試験してもよい(例えば、Jeyakumar et al., Neuropath. Appl. Neurobiol. (2002) 28:343-357;Mizukami et al., J. Clin. Invest. (2002) 109:1215-1221;Raben et al., J. Biol. Chem. (1998)273(30):19086-92;Marshall et al. Mol. Ther. (2002) 6(2):179-89;Ohshima et al. Proc. Nat. Acad. Sci. (1997) 94(6):2540-4;Horinouchi et al. Nat. Genet. (1995)10(3):288-93;McEachern et al. J. Gene Med.(2006 Mar. 10)(紙出版前の電子出版)に記述されている)。細胞培養アッセイまたは動物研究から得られたデータを、ヒトにおいて使用するための用量範囲を製剤化する際に使用することができる。1つの動物モデルにおいて達成される治療的に有効な用量を、ヒトを含む別の動物で使用するために、当技術分野で公知の変換係数(例えば、Equivalent Surface Area Dosage factor)を使用して変換することができる(例えば、Freireich et al. (1966) Cancer Chemother. Reports, 50(4):219-244を参照されたい)。
【0073】
薬学的組成物は、本発明のコンジュゲートおよび1つまたは複数の適した薬学的賦形剤を含む。様々な薬学的賦形剤製剤が周知である(例えば、Physicians' Desk Reference (PDR)2003, 57th ed., Medical Economics Company, 2002;およびGennado et al. (eds.), Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 20th ed, Lippincott, Williams & Wilkins, 2000を参照されたい)。
【0074】
本発明のコンジュゲートを使用して、表2に列挙したリソソーム貯蔵障害を含む様々な疾患および障害を治療または予防してもよい。これらの疾患を治療する1つのアプローチは、コンジュゲートを使用した酵素補充療法である。いくつかの態様では、コンジュゲートを使用してファブリー、ゴーシェ、ポンペまたはニーマン-ピックB病を治療してもよい。
【0075】
ファブリー病は、多組織効果を有する、希な、遺伝性リソソーム貯蔵障害である。ファブリー病患者は、セラミドトリヘキソシダーゼとしても公知のリソソーム酵素α-ガラクトシダーゼA(α-gal)における遺伝子欠陥を有する。この欠陥により、末端α-ガラクトシル残基を有する脂質を分解することができないか、またはその能力が減少する。十分なα-galが存在しないと、これらの脂質、特にグロボトリアオシルセラミド(GL-3;Gb3、セラミドトリヘキソシド、およびCTHとしても公知)が、全身の多くの細胞型のリソソーム中で次第に蓄積する。腎臓内皮細胞中でのGL-3蓄積は、腎疾患に関与している可能性がある。
【0076】
ゴーシェ病は遺伝性のリソソーム貯蔵障害である。ゴーシェ病では、酵素酸β-グルコシダーゼ(グルコセレブロシダーゼ)の欠損により、単球-マクロファージ系のリソソーム内で脂質グルコセレブロシドの蓄積が生じる。ゴーシェ細胞として公知の、偏在性核を有する脂質を貪食した細胞が蓄積し、骨髄および内臓中の健康な正常細胞にとって代わり、骨格劣下、貧血、肝脾腫、および臓器不全を含む多くの症状を引き起こす。希な場合では、ゴーシェ細胞は脳および神経系に影響する。
【0077】
ポンペ病は、衰弱性で、進行性の、しばしば致命的なリソソーム貯蔵障害である。ポンペ病を持って生まれた人々は、酸α-グルコシダーゼの遺伝性欠失を有する。酸α-グルコシダーゼは、リソソーム内に保存される複雑な糖分子であるグリコーゲンの分解を助ける。ポンペ病では、酸α-グルコシダーゼ活性が著しく減少しているか、機能しないか、または存在しない可能性があり、リソソーム中にグリコーゲンが過剰に蓄積することとなる。最終的には、リソソームはグリコーゲンで詰まり、正常な細胞機能が妨害され、筋肉機能が損傷される。複数の組織の細胞中にグリコーゲンが蓄積されるが、心臓および骨格筋が通常最も重篤な影響を受ける。患者は典型的には進行性の筋衰弱および呼吸困難を経験するが、疾患の進行速度は、発症年齢および臓器障害の程度によって大きく変動する可能性がある。
【0078】
ニーマン-ピックB病は、酸スフィンゴミエリナーゼ(ASM)と呼ばれるリソソーム酵素をコードする遺伝子の突然変異により引き起こされるリソソーム貯蔵障害である。これらの突然変異により、ASM酵素が、脂肪様物質を代謝するのに十分な量で存在しない。ニーマン-ピックB病患者では、脂肪様物質、例えばスフィンゴミエリンおよびコレステロールが体組織および器官中に蓄積し、機能不全が起きる。疾患の臨床症状は、脾臓、肝臓、および肺などの組織において発現され、より程度は低いが、骨髄およびリンパ節で発現される。
【0079】
本発明のコンジュゲートは、非経口(例えば、皮下、静脈内、髄内、関節内、筋内、または腹腔内)、経皮、および経口(例えば、カプセル、懸濁液、または錠剤形態)を含む任意の送達経路を介して投与してもよい。コンジュゲートはまた、神経系への直接投与により(例えば、脳への直接注入、脳室内、髄腔内)投与してもよい。望ましい場合、複数の経路を同時に使用することができる。
【0080】
本発明のコンジュゲートは、単独で、または他の薬剤、例えば、抗ヒスタミン薬または免疫抑制剤と併せて投与してもよい。「と併せて」という用語は、薬剤をコンジュゲートと大体同時に投与することを意味する。薬剤は同時に投与することができ、またはコンジュゲートの投与から短時間以内(例えば、24時間以内)で投与することができる。
【0081】
治療的有効量の本発明のコンジュゲートは、疾患効果の性質および程度によって、一定間隔で投与してもよい。治療的有効量は、一定間隔で投与されると、例えば、疾患に関連する症状を寛解し、疾患の発症を予防または遅延させ、および/または疾患の症状の重篤度または頻度を低下させることにより、疾患を治療するのに十分な用量である。有効用量は、インビトロおよびインビボデータから導き出した用量反応曲線から推定することができる。疾患の治療において治療的に有効な量は、疾患効果の性質および程度に依存し、標準臨床技術によっても決定することができる。適当な治療的有効量は、投与経路および疾患の重症度に依存し、各患者の状況に基づき、治療する臨床医により決定されるべきである。有効量は、個人の要求によって、時間と共に変動する可能性がある(例えば、増加または減少する)。
【0082】
最も一般的には、タンパク性化合物を、疾患の性質および程度によって一定間隔で設定して外来患者に投与する。本明細書で使用されるように「一定間隔」での投与は、治療的に有効な用量を周期的に投与することを示す。間隔は標準臨床技術により決定することができる。例えば、コンジュゲートは毎日、毎週、隔週、毎月、隔月、またはより長い間隔で投与される。単一個体に対する投与は、固定した間隔である必要はなく、個体の要求によって、時間と共に変動させることができる。
【0083】
実施例
実施例1:α-ガラクトシダーゼのジヒドラジドPEGコンジュゲートの調製
50mM リン酸ナトリウムpH7中の組換えヒトα-ガラクトシダーゼA(α-Gal)1mgを、Arthrobacter(商標)ノイラミダーゼ20mU/mgで一晩中処理した。100μL中の生成物の一部(0.5mg)を、10% w/v 10kDaジヒドラジドPEG(Sunbio)100μLおよび0.2M コハク酸ナトリウムpH5.5(最終pH〜5.8)25μLと共に一晩中37℃で、1mg/mL組換えダクティリウム・デンドロイデスガラクトースオキシダーゼ9μLを用いてインキュベートした。生成物を10mM リン酸ナトリウムpH7に対し透析し、同じ緩衝液で平衡化したDEAE Sepharose(商標)カラム(Pharmacia)に適用し、0〜0.5MのNaClを含む10mMリン酸塩pH7のグラジエントで溶離した。ピーク画分を濃縮し、50kDa MWCO遠心限外濾過装置(Amicon)を用いて0.05Mリン酸ナトリウムpH7中に交換させた。一部分を4〜12% SDSポリアクリルアミドゲル(NuPAGE(商標)、Invitrogen)上で、中性pH MOPS/SDS緩衝液を用いて200Vで1時間流し、ゲルはCoomassie(商標)ブルーで染色した。これにより、ゲル移動度により評価されるように、大体等量のモノおよびジPEG化生成物が証明された。
【0084】
実施例2:ヒドラジドPEGコンジュゲート安定性のpH依存性
実施例1で記述したように調製したDEAE Sepharose(商標)精製ジヒドラジドコンジュゲートのアリコート(4μL、〜2μg)を一晩中、pH7.0と5.0との間の50mM緩衝液(ホスフェート、スクシネート、シトレート、またはアセテートのいずれか)45μL中で、14時間、37℃でインキュベートし、その後、Microcon(商標)50遠心限外濾過装置(Amicon)上で10分間、4℃で濃縮した。保持体積を収集し、それぞれの一部分を、実施例1で記述したようにSDSポリアクリルアミドゲル(NuPAGE(商標)、Invitrogen)上で流した。図5に示すように、pH7でインキュベートすると、PEG化材料の80%を超えるものがPEG化形態で保持され(インキュベートしていない対照と比較して)、一方、溶液のpHを減少させると、PEG化材料の量が減少した。pH5.5では、最初のPEG化材料の10%未満が残存した。フリーのα-ガラクトシダーゼの対応する増加が見られた。
【0085】
実施例3:インビトロでのαGalのCIMPRへの結合に対するPEG化の影響
各々が10kDa分子量を有し、プロピオニルヒドラジド基がランダムな位置でPEG主鎖に組み入れられた、4-アームデンドリマー(「スター」)ヒドラジドPEG(Hz4PEG)または8-アームヒドラジドPEG(Hz8PEG)のいずれか(SunBio)にコンジュゲートさせたα-ガラクトシダーゼの2つの調製物を、コンジュゲーション段階のPEG濃度を0.5または10%w/vのいずれかとすることを除き、実施例1で記述したように調製した。精製したコンジュゲートを、表面プラズモン共鳴(Biacore)により、精製カチオン-非依存性マンノース-6-リン酸受容体(CIMPR)への結合に対し評価した。コンジュゲートまたは非修飾α-ガラクトシダーゼを希釈し、20μL/分でBiacoreフローセルを横切って接線方向にポンピングした。CIMPRの可溶形態(膜アンカー配列の欠如)を、NHS化学を使用してセルの光学面上の活性化デキストランコート表面にコンジュゲートさせた。3分後に同じ溶液に曝露させた受容体のない対照セルにより生成したRUより低いRU(共鳴単位)で表した結合(屈折率の変化により評価)を、コンジュゲート濃度に対してプロットした。データ(図6)により、10% w/v 4-アーム(Hz4)PEGとの酵素の事前コンジュゲーションにより、受容体への結合の最大阻止が得られることが示された。修飾していないα-ガラクトシダーゼと同じRU変化を生成させるには、約10倍高い濃度のPEGコンジュゲートが必要であった。
【0086】
実施例4:ファブリーマウスにおけるHzPEG/α-ガラクトシダーゼコンジュゲートのインビボ取り込み
実施例1で記述したのと同様の様式で調製したα-ガラクトシダーゼAの6-アームスターヒドラジドPEG(20kDa、SunBio)とのコンジュゲートを、1mg/kg体重で、4月齢α-ガラクトシダーゼノックアウトマウスの尾静脈中に注入し、様々な間隔で血液試料(〜100μL)を取り出した。別の組のマウスに、未修飾α-ガラクトシダーゼを注入し、または100mg/kg酵母マンナン(Sigma)と酵素を同時注入しマンノース受容体による取り込みを一時的にブロックした。血清を調製し、図7に示されるように、α-ガラクトシダーゼB活性を抑制するために0.12M N-アセチルガラクトサミンの存在下、基質として4-メチルウンベリフェリル-α-ガラクトシド(4MU-D-αGal、Sigma)を使用する希釈およびアッセイ法により循環中に残存する酵素量を決定した。マンナン同時注入により、濃度-時間曲線下の面積が2倍増加し、一方、PEGコンジュゲーションにより6倍増加した。循環中のより長いPEGコンジュゲートの半減期は、約4時間であった。
【0087】
同じ実験におけるマウスを8時間後に屠殺し、コンジュゲートの体内分布を、0.15% Triton(商標)X-100、14.5mM クエン酸、30mMリン酸ナトリウムpH4.4中で調製した組織の10%w/vホモジネートに対する酵素アッセイ法により、4MU-D-αGalを基質として使用して決定した。ホモジネートにおける活性を、BCAアッセイ法(Pierce)により決定したタンパク質量に対し正規化した。図8に示したデータから、PEGコンジュゲートにより肝臓での取り込みが著しく減少することが示された。8時間後であっても、かなりの量の回復活性が血清中に依然として存在した。
【0088】
肝臓の一部を4%中性緩衝ホルマリン中で一晩中、4℃で固定し、パラフィン中に埋め込み、切片化した。パラフィンを載置した切片から除去した。切片は、2.5μg/mLのヒトα-ガラクトシダーゼに対するモノクローナル抗体を用いて染色し、ヤギ抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ二次抗体により、基質としてジアミノベンジジンを用いて視認可能とした。切片をメイヤーズヘマトキシリンで対比染色した。未修飾対照酵素は、クッパー細胞の強い染色を示し、肝細胞はいくらか染色されたが、PEG化酵素を用いるとクッパー細胞の染色は実質的に減少し、肝細胞は同様の程度まで染色された。
【0089】
実施例5:ヘテロ二官能性PEGとのαGalコンジュゲートの調製
93% DMSOに溶解したニプシルエチルアミン(NEA)27mg、EDC 76mg、N-ヒドロキシスクシンイミド40mgおよびt-BOC-トレオニン37.4mgをイミダゾール pH6 35mMと一晩中、50℃で反応させることにより前駆体(BTNEA)を得た。生成物をC18カラム逆相クロマトグラフィーにより (Higgins Targa)、0.1% TFA(10分)、続いて0〜50%のアセトニトリル(1%/分)を含む0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)のグラジエントで溶離し、精製した。46分で溶離した生成物を収集し、乾燥させた。生成物はNEAに類似する吸光度ピークを示し(270,353nm cf.NEAでは268,345nm)、これはTCEPで還元するとシフトした(258,308nm cf.NEAでは256,312nm)。DMSO 100μLに溶解した生成物を、TFA 24μLの添加により非ブロック化し、50℃で15時間インキュベートし、同じ条件下(保持時間26分)、C18逆相クロマトグラフィーにより精製した。ピークを収集し、乾燥させ、その後、DMSOに溶解した。非ブロック化材料を、25mM NaIO4を含む0.05M HEPESで緩衝させた50% DMSO pH7.4と15分間、室温で反応させることにより酸化させ、C18クロマトグラフィーにかけた(生成物GNEAは31.8分で溶離)。
【0090】
プロピオン酸ヒドラジド基がランダムに挿入された8-アーム 20kDa MWヒドラジドペンダントPEG(SunBio、1.5μmol)を、1.6μmol GNEAを含む50% DMSO、0.025M スクシネートpH5.6(総0.42mL)と一晩中、37℃で反応させた。反応物を冷10mMリン酸ナトリウムpH7で0.8mLまで希釈し、同じ緩衝液に対し、その後、水に対し透析させた。生成物を回収し、凍結乾燥させ、還元、および346nmでの吸光度により(1.05mol:mol PEG)NEA量を決定した。
【0091】
ノイラミニダーゼ処理αGal(0.23mg)を、10% GNEA-PEGを含む50mMスクシネートpH5.5と、組換えガラクトースオキシダーゼ7.5μgの存在下、一晩中37℃で反応させた。生成物を実施例1のように、10mM リン酸ナトリウムpH7 10mLで希釈し、DEAE Sepharose(商標)カラム上で精製させた。
【0092】
精製したGNEA PEGコンジュゲートの一部(25μg)をSEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3の蛍光標識したペプチド4.25nmolと一晩中4℃で反応させ、遠心限外濾過装置(Centricon(商標)50、Amicon(商標)Corp)上で水ひにより未反応遊離ペプチドから精製した。最終生成物は、495nmおよび280nmでの吸光度から決定されるように、1コンジュゲートあたり2.1および1.6ペプチドを含んだ(それぞれ、SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:3)。実施例8で記述したような細胞取り込み実験では、培地中、SEQ ID NO:2のペプチドを用いて調製したコンジュゲートと一晩中インキュベートした後、ライセート活性の有意の増加は見られなかった。対照的に、同等の量のノイラミニダーゼ-処理αGalと共にインキュベートすると、ライセート中のαGal活性は10倍を超える活性増加を示した。
【0093】
実施例6:チオール反応性PEGの調製
ペンダントプロピオン酸基が共重合により導入されている16-アームPEG(SunBio、5.25μmol)をニプシルエチルアミン(NEA)126μmol、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド(EDC)420μmol、N-ヒドロキシスクシンイミド168μmolと、50%ジメチルスルホキシド1.6mL、0.1MイミダゾールpH6中で一晩中、50℃で反応させると、2相混合物が得られた。追加の0.1Mイミダゾール(1.5mL)を添加し、混合物をさらに3時間50℃でインキュベートした。生成物を水に対する広範な透析により精製した。350nmでの吸光度により決定したPEGのNEA量は9.3NEA/PEGであった。このように調製したPEGのうちの少量(<10%)を、10mMリン酸ナトリウムpH7緩衝液中でDEAE-Sepharose(商標)により結合させた。この成分を、コンジュゲーション反応で使用する前に、DEAE Sepharose(商標)上を通過させることによりNEAPEGから除去した。
【0094】
実施例7:ヒドラジド/チオールを用いたαGalのペプチド-PEGコンジュゲート
□-ガラクトシダーゼのアリコート(1.16mg、50mMリン酸ナトリウムpH7 0.25mLに溶解)を、20mU/mgのArthrobacter(商標)ノイラミニダーゼにより一晩中、37℃で処理した。その後、生成物を0.2M スクシネート(pH 5.4) 0.125mL、組換えダクティリウムガラクトースオキシダーゼ46.5μg、および50mM 3-(2-ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド(PDPH、Pierce)0.05mLと合わせ、最終体積0.5mLとし、一晩中37℃でインキュベートした。その後、生成物を一晩中、冷50mMリン酸ナトリウムpH7に対し透析した。生成物(2.3mg/mL)を10mMトリス-カルボキシエチルホスフィン(TCEP、Pierce)と反応させ、コンジュゲートPDPHから10分間、室温で、チオールを露出させ、続いて、冷脱ガス緩衝液を用いて50kDa MWCO遠心限外濾過装置(Centricon(商標)、Amicon(商標))で3ラウンド、脱塩した。その後、生成物を、実施例6で記述したように調製した1%(w/v)のチオール-反応性16-アームペンダントNEA-PEGと同じ緩衝液中で、一晩中、4℃で反応させた。反応物を10mM リン酸ナトリウム pH7に対し透析し、同じ緩衝液で平衡化させたDEAE Sepharose(商標)カラム上にロードし、0.25M NaClを含む50mMホスフェートpH7で溶離した。溶出液を、遠心限外濾過装置で50mMリン酸ナトリウムpH7中に交換させた。アリコート(それぞれ、20μgタンパク質)をFAM-またはビオチン-標識ペプチド(SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、およびSEQ ID NO:6)(それぞれ、3.75nmol)と、一晩中、50mM リン酸ナトリウムpH7中、最終体積50μLとで反応させ、同じ緩衝液を使用して50kDa MWCO遠心限外濾過装置上で脱塩することにより精製した。生成物は、最初のα-ガラクトシダーゼの比活性の38〜56%を示した。蛍光標識したペプチドを用いて調製したコンジュゲートは、タンパク質1つあたり1.8と8.5の間のペプチドを含んだ。過程の図表示を図4に示す。
【0095】
実施例8:インビトロでのαGalコンジュゲートのペプチド媒介細胞取り込み
実施例7で調製したペプチドコンジュゲート(基質としてp-ニトロフェニル-α-D-ガラクトシドを使用すると、それぞれ、0.1nmol/分の活性)を、不死化野生型マウス線維芽細胞系(TME7、Munier-Lehmann et al., J. Biol. Chem. (1996) 271:15166-15174)と共に24-ウエルプレートにおいて、取り込み培地(5%仔ウシ血清、3% BSAおよび25mM HEPES pH6.7を有するDMEM/F12)0.5mL中、24時間、37℃の、5% CO2を有するインキュベータ内でインキュベートした。培地のいくつかには、2mMマンノース-6-リン酸(M6P)が補充され、カチオン非依存性M6P受容体による取り込み、この細胞系による未修飾酵素の取り込みの主経路、が抑制される。細胞を3度、PBS pH6.5で洗浄し、プロテアーゼ阻害剤(Roche)を有する0.5×PBS pH6.5、1% Triton(商標)X-100を用いて溶解させ、氷浴スラリー中で短い超音波処理を実施した。ライセート中での活性を実施例4で記述したように決定した。ライセート中に存在する活性を、図3で示したBCAアッセイ法(Pierce)により決定されるようにタンパク質量に対し正規化した。酵素の内部移行を、同様の条件下、不溶性着色生成物(X-α-Gal)を生成する基質を用いてコンジュゲートに曝露させた細胞を染色することにより証明した。これは、R9(SEQ ID NO:6)、Tat(SEQ ID NO:2)、およびk9(SEQ ID NO:5)ペプチドコンジュゲートに曝露された細胞の核ではなく、細胞質での強い染色を示し、細胞関連活性が内部移行され、細胞の表面に結合されなかったことが示される。
【0096】
実施例9:リソソーム疾患糖タンパク質のヒドラゾン-結合コンジュゲートの調製におけるチオエステルの使用
1μmolのグルタミン酸γヒドラジドを、1時間10μmolのアセトンとDMSO中、室温でインキュベートすることによりアセトンケタールに変換させる。その後、2μmolのN-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート(SATA、Pierce Chemical Co.)を添加し、一晩中室温でインキュベーションを続ける。生成物、S-アセチルチオアセトアミドグルタミン酸ヒドラジド(SATAGH)を、20mMギ酸アンモニウムpH7中、QAE Sephadex(商標)上でアニオン交換クロマトグラフィーにより、0.5Mギ酸アンモニウムpH7までのグラジエントを用いて溶離して精製する。アミド生成物に対応するA215ピークを収集し、凍結乾燥させる。カーゴ糖タンパク質を、20mU/mgアルスロバクターノイラミニダーゼにより50mMクエン酸ナトリウムpH6中、一晩中消化させることにより別に脱シアル酸化し、その後、同じ緩衝液中、10μg/mg組換えガラクトースオキシダーゼで一晩中、処理する。酸化糖タンパク質に、5mM SATAGHを25mMスクシネートpH5.5中で添加し、混合物を室温で3時間インキュベートする。ヒドラゾンコンジュゲートをCentricon(商標)YM-30フィルタ上での限外濾過または25mM EDTA、25mMホスフェートpH7.2に対する透析により精製する。10倍モル過剰の多アームNEA-PEGをその後、0.2Mヒドロキシルアミンと共に添加し、チオールを脱保護し、混合物を一晩中室温でインキュベートし、ジスルフィド結合PEG付加物を生成させた。
【0097】
実施例10:α-ガラクトシダーゼのポリシアル酸コンジュゲートを生成するためのピリジルヒドラジドの使用
ポリシアル酸PSA(コロミン酸、平均MW30kDa)1gを0.1N NaOHに100mg/mlで溶解し、37℃で4時間インキュベートすることにより脱アシル化する。酢酸を0.1Mまで添加することにより生成物を中和し、混合物をクロロホルム:メタノール(3:1)で抽出する。酢酸ナトリウムを水相に(0.2Mまで)添加し、PSAを3体積のエタノールで沈殿させ、その後、高速遠心分離にかける(10,000gで20分)。ペレットを85%エタノールで洗浄し、真空で乾燥させる。乾燥ペレットを水で溶解し100mg/mlとする。別に、ニプシルエチルアミンに結合されたピリジルヒドラジンを含むリンカーを、アセトン-5-スクシンイミジルオキシカルボニル)-ピリジン-2-イルヒドラゾン(SANH)(EMD Biosciences)100μmolをニプシルエチルアミン150μmolと一晩中室温で、DMSO 1mL中で反応させることにより生成させる。脱アシル化ポリシアル酸100mg(〜3.3μmol)に、0.1M酢酸ナトリウムpH5 5mL中の10μmol SANH-NEA生成物を添加し、混合物を一晩中室温でインキュベートし、ヒドラゾンを形成させる。生成物をPBS、その後水に対し透析し、その後、前のようにエタノールで沈殿させる。ペレットを85%エタノールで洗浄し、真空で乾燥させ、最後に、水に再溶解し100mg/mLとする。この材料を、実施例7で記述したように調製したαGalの還元PDPHコンジュゲートとコンジュゲートさせる。生成物を、50kDa MWCO膜を用いた透析濾過により未コンジュゲートPSAから精製し、50mMリン酸ナトリウムpH7中に交換させる。
【0098】
実施例11.PEG-rhα-Galコンジュゲートの合成
Fabrazyme(登録商標)(組換えヒトα-ガラクトシダーゼ)を5mg/mLで、25:1のモル過剰のNHS dPEG(商標)8 SATA(Quanta Biodesign)と、2時間25℃で、50mMリン酸Na pH7中で反応させた。100倍モル過剰のTris HCl pH7により30分間反応物をクエンチし、生成物を透析により精製した。これにより、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBSA、Pierce)を用いたアッセイによる、酵素のフリーのリジン量の減少により決定されるように、90kDaホモ二量体あたり4.8の保護(S-アセチル)チオール基が生成した。その後、コンジュゲートを50mM塩酸ヒドロキシルアミン、2.5mM EDTA、50mMリン酸Na pH7.2中、開始材料として実施例6で記述したペンダント16-アームPEGの代わりに6-アームスター20kDaカルボン酸末端PEG(SunBio)を使用することを除き実施例6のように調製した、30倍モル過剰の6-アーム(スター)20kDa NEA-PEGの存在下でインキュベートした。25℃で2時間後、反応物を、50mMリン酸Na pH7、2.5mM EDTA中に緩衝液交換し、一晩中25℃でインキュベートした。生成物はSDS PAGEによると100% PEG化形態であった。生成物をDEAE Sepharose上でのアニオン交換クロマトグラフィーにより、10mMリン酸Na pH7中の反応生成物を適用し、同じ緩衝液で洗浄し、0.25Mリン酸Na pH7で溶離して、精製した。その後、生成物を50mMリン酸Na pH7中に透析させた。
【0099】
ジフテリア毒素CRM197のSATA-dPEG4-コンジュゲートを別に、10倍モル過剰のNHS SATA-dPEG4-NHS(Quanta Biodesign)をCRM197 (List Biological Laboratories)と、10mMリン酸Na pH7.4中で2時間、25℃で反応させることにより生成させ、同じ緩衝液に対する限外濾過により精製した。2倍モル過剰のSATA-dPEG4-CRM197コンジュゲートをその後、スター-NEA-PEG-α-Galコンジュゲートと50mM塩酸ヒドロキシルアミン、2.5mM EDTA、50mMリン酸Na pH7.2中で2時間25℃でインキュベートし、CRM197上のリンカー導入チオールを脱保護した。その後、混合物を2.5mM EDTA、50mMリン酸Na pH7中に緩衝液交換し、一晩中25℃で、同じ緩衝液中でインキュベートし、カップリング反応を完了させた。生成物を、50mMリン酸Na pH7中、Superdex 200樹脂上でサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。PEG化生成物は、フリーの酸ガラクトシダーゼまたはCRM197を有さない単一HMWピークとして溶離した。還元すると、SDS PAGE分析により、約1:1比での酸ガラクトシダーゼサブユニットに対するCRM197の存在が示された。
【0100】
実施例12.CRM PEG-α-Galコンジュゲートのベロ細胞取り込み
実施例11のように調製したCRMコンジュゲートまたはCRMのないスターPEG-α-Galコンジュゲート(5μg/mL)を、別々のアリコート0.5mL取り込み培地(10mM HEPES pH6.7で緩衝化したベロ細胞成長培地)に添加し、ベロ細胞に加える。カチオン非依存性マンノース-6-リン酸(M6P)により媒介される取り込みをブロックするために、2mM M6Pをいくつかのウエルの培地に添加する。追加の対照ウエルでは、フリーのCRM197をコンジュゲートの10倍過剰で添加し、別のウエルはコンジュゲートを受けず、α-ガラクトシダーゼ活性の内在レベルを評価する。プレートを37℃、5% CO2のインキュベータ内に一晩中入れた。細胞層を3度、1mL PBSで洗浄し、1/2×PBS pH6.5、1% Triton X-100、1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(“Complete”、Roche)を用いて溶解させる。その後、ライセートを、BCAアッセイ(Pierce)により得られた総タンパク質量に対し正規化した4-MU-α-ガラクトシダーゼ基質(Sigma)を用いて酸α-ガラクトシダーゼ活性に対しアッセイする。タンパク質を受けない対照ウエルにおける活性(内在活性)を、タンパク質を受けたウエルの活性から減算し、取り込みを決定する。マスキング程度は、PEG化および/またはCRMコンジュゲーション無し、および有りの培地中のM6Pに対し感受性のある取り込み量から決定される。CRM依存性取り込みは、過剰CRMを含むウエルで観察された取り込み量を差し引いたCRMコンジュゲートを含むウエルで観察されたα-ガラクトシダーゼ取り込みから決定する。
【0101】
本開示で引用した全ての出版物および特許は、参照により、全体が組み入れられる。参照により組み入れられた材料がこの開示と矛盾し、または一致しない限りでは、本開示が優先する。実施例は全て説明のために提供したものにすぎず、限定するものではない。さらに、明確に示されていなければ、または文脈上他の意味に解すべき場合を除き、反応パラメータを示す数は全て近似である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の非制限的態様の構造図である。G、M、およびTはそれぞれ、糖タンパク質、マスキング部分、およびターゲティング部分を示す。リンカーL1およびL2は図示していない。
【図2】ヒドラジド-PEGに治療糖タンパク質をコンジュゲートさせるためのスキームを示した図である。糖タンパク質上の末端シアル酸を、ノイラミニダーゼを用いた処理により除去する。露出させた末端ガラクトース残基をその後、ダクティリウム・デンドロイデス(Dactylium dendroides)ガラクトースオキシダーゼを用いた処理により、酸化しアルデヒドとする。また、アルデヒドは、過ヨウ素酸ナトリウムを用いた酸化により導入してもよい。その後、生成物を約pH5.5の緩衝液中に交換させ、ヒドラジドPEGと反応させ、ヒドラゾンコンジュゲートを形成させる。生成物を未反応PEGから精製する(例えば、アニオン交換またはサイズ排除クロマトグラフィーによる)。
【図3】ヘテロ二官能性PEGを用いてペプチド-PEG-糖タンパク質コンジュゲートを生成させるためのスキームを示した図である。ヘテロ二官能性PEGは、ヒドラジド官能性PEGを、チオール反応性官能基(ニプシルエチルアミン、「NEA」)に結合されたヒドラジド反応性グリオキシルアルデヒドを含むアダプタ分子(グリオキシル-ニプシルエチルアミド、「GNEA」)と反応させることにより生成させる。このPEGを、ガラクトースオキシダーゼの存在下、ノイラミニダーゼ処理タンパク質と反応させ、PEGが露出したタンパク質オリゴ糖へのヒドラゾン結合を介して結合したコンジュゲートを生成させる。この生成物を精製し、その後、フリーのチオールを含むペプチドに結合させる。
【図4A】チオール/ヒドラジド化学を使用したペプチド-PEG-糖タンパク質コンジュゲートの生成を示した図である。アルデヒド基を、図1に示すように、過ヨウ素酸塩またはガラクトースオキシダーゼ(GAO)を用いた処理により糖タンパク質上で生成させる。GAO-処理タンパク質をヒドラジドおよび保護チオールを含むリンカー、例えば3-(2-ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド(PDPH)と反応させる。リンカーをその後、還元し(例えば、トリス-カルボキシエチルホスフィン、TCEPを用いて)、チオールを露出させ、その後、チオール反応性部分を有するPEGと反応させる。得られたコンジュゲートを精製し(例えば、イオン交換クロマトグラフィーによる)、システイン部分を含むペプチドと反応させると、最終三元ペプチド/PEG/糖タンパク質コンジュゲートが得られる。
【図4B】アミノ酸残基を介する糖タンパク質のコンジュゲーションを示した図である。アミノ酸残基、この図ではリジンをS-アセチル-dPEG(商標)pNHSエステルと反応させ、糖タンパク質上にチオール基を導入する。アセチル保護チオールをヒドロキシルアミンで脱保護し、NEA-PEGと反応させ、ジスルフィド結合NEA-PEG/糖タンパク質コンジュゲートを生成させる。保護チオールを有するターゲティング部分、例えば、S-アセチル-dPEG(商標)qNHSエステルで修飾したタンパク質を脱保護し、NEA-PEG/糖タンパク質コンジュゲートと反応させ、最終三元タンパク質/PEG/糖タンパク質コンジュゲートを生成させる。
【図5】α-ガラクトシダーゼAとの、ペンダントヒドラジドPEGコンジュゲートのpH-依存性解離を示す図である。平均8のプロピオン酸ヒドラジド基を有するペンダントヒドラジドPEGを、図1で記述したように、ガラクトース酸化α-ガラクトシダーゼとコンジュゲートさせる。コンジュゲートは、実施例2で記述したように、アニオン交換クロマトグラフィーにより精製し、様々なpHの緩衝液中に交換し、一晩中37℃でインキュベートした。インキュベートしていない対照に対するPEG化形態のタンパク質の量を、クマシー染色ゲルSDS-PAGEの濃度測定により決定した。
【図6】PEG-糖タンパク質コンジュゲートのカチオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体(CIMPR)との相互作用に対するBIAcore(商標)分析結果を示す図である。CIMPRへの未修飾α-ガラクトシダーゼまたはガラクトシダーゼコンジュゲート結合の程度(RUで表す)を、デキストランコートチップ上の固定した可溶性CIMPRを用いて決定した。2つのヒドラジドPEG(10kDa MW、SunBio)を使用して、図1に示したスキームによりコンジュゲートを調製した:(1)4-アームスター型PEG(デンドリマー、Hz4PEG)および(2)8-アームペンダントPEG(Hz8PEG)。どちらも、PEG末端で(Hz4PEG)、またはランダム共重合により内部で(Hz8PEG)、ヒドラジド基により官能化される。これにより、未修飾α-ガラクトシダーゼで得られるのと同じ程度の受容体結合を得るには、10倍高い濃度のHz4-PEGコンジュゲートが必要であることが示される。
【図7】ファブリーマウスにおいて静脈内投与したα-ガラクトシダーゼおよびPEG-α-ガラクトシダーゼコンジュゲートを用いた薬物動態研究結果を示した図である。タンパク質を注入する前に、初期血液サンプルを取り出した(0時間にプロットした)。タンパク質を1mg/kg体重で、尾静脈により注入し、0.5、1、2、4、および8時間に血液を取り出した。血清を調製し、実施例4で記述したように4MU基質を用いてガラクトシダーゼ活性に対しアッセイした。
【図8】ファブリーマウスにおけるα-ガラクトシダーゼ(Fabrazyme(登録商標))またはPEG-Fabrazyme(登録商標)コンジュゲートの体内分布を示す図である。タンパク質を1mg/kg体重で注入し、注入後8時間で器官を収集した。ガラクトシダーゼ活性を、実施例4で記述したように4MU基質を用いて決定した。
【図9】様々なペプチド-PEG-α-ガラクトシダーゼコンジュゲートの細胞内取り込みレベルを示す図である。実施例7で記述したように調製したNEA-PEGコンジュゲートを、記述したように様々なペプチド(SEQ ID NO:2〜6)と結合させ、カチオン非依存性マンノース-6-リン酸(M6P)受容体を発現するマウスの線維芽細胞と共に一晩中インキュベートした。2つの場合において、2mMのフリーのM6Pを培地に、ペプチドコンジュゲートと共に添加した(「+M6P」)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)治療糖タンパク質(G)、
(2)第1のリンカー(L1)を介して、糖タンパク質のオリゴ糖側鎖に共有結合されているマスキング部分(M)、および
(3)第2のリンカー(L2)を介して、マスキング部分に共有結合されているターゲティング部分(T)
を含むコンジュゲートであって、
糖タンパク質が、リソソーム条件下でコンジュゲートから放出される、コンジュゲート。
【請求項2】
G(L1-M(L2-T)n)mを含み、互いに独立に、1≦n≦20かつ1≦m≦20である、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項3】
糖タンパク質が、酵素および抗体から選択される非ウイルス性タンパク質である、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項4】
酵素がリソソーム酵素である、請求項3記載のコンジュゲート。
【請求項5】
リソソーム酵素が、α-ガラクトシダーゼA、酸セラミダーゼ、酸α-L-フコシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、酸β-ガラクトシダーゼ、イズロネート-2-スルファターゼ、α-L-イズロニダーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、酸α-マンノシダーゼ、酸β-マンノシダーゼ、アリールスルファターゼB、アリールスルファターゼA、アリールスルファターゼA、N-アセチルガラクトサミン-6-スルフェートスルファターゼ、酸スフィンゴミエリナーゼ、酸α-グルコシダーゼ、β-ヘキソサミニダーゼB、ヘパランN-スルファターゼ、α-N-アセチルグルコサミニダーゼ、アセチル-CoA:α-グルコサミニデン-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン-6-スルフェートスルファターゼ、α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ、シアリダーゼ、β-グルクロニダーゼ、およびβ-ヘキソサミニダーゼAからなる群より選択される、請求項4記載のコンジュゲート。
【請求項6】
リソソーム酵素が、酸α-グルコシダーゼおよび酸スフィンゴミエリナーゼから選択される、請求項5記載のコンジュゲート。
【請求項7】
リソソーム酵素が、α-ガラクトシダーゼAおよびグルコセレブロシダーゼから選択される、請求項5記載のコンジュゲート。
【請求項8】
マスキング部分が、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリメタクリレート(PMA)、ポリシアル酸(PSA)、ヒアルロン酸(HA)、アルブミン、免疫グロブリン(IgG)、デキストラン硫酸、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアクリルアミド、α,β-ポリ(N-ヒドロキシエチル)-DL-アスパルトアミド(PHEA)、ポリ(ビニルピロリドン-コ-ジメチル無水マレイン酸)(ポリ(VP-コ-DMMAn)、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルイミド)(HMPA)およびヒドロキシアルキルデンプン(HAS)からなる群より選択されるポリマーである、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項9】
PEGがスター-PEGまたはペンダント-PEGである、請求項8記載のコンジュゲート。
【請求項10】
マスキング部分が、リソソーム条件下で分解可能であり、これにより糖タンパク質の放出が可能となる、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項11】
ターゲティング部分が、受容体結合ペプチド、受容体に対する抗体、または天然受容体リガンドである、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項12】
リンカーL1およびL2の少なくとも1つが、リソソーム条件下で糖タンパク質の放出を可能とする不安定基を含む、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項13】
不安定基を含むリンカーがL1である、請求項12記載のコンジュゲート。
【請求項14】
不安定基が酸に不安定である、請求項12記載のコンジュゲート。
【請求項15】
酸不安定基が、ヒドラゾン、イミノ、エステル、およびアミドから選択される、請求項14記載のコンジュゲート。
【請求項16】
酸不安定基が、ヒドラゾン基である、請求項14記載のコンジュゲート。
【請求項17】
L1およびL2の少なくとも1つが、下記から選択されるヒドラゾン含有基を含む、請求項16記載のコンジュゲート:

式中、Arはアリールまたはヘテロアリールである。
【請求項18】
L1およびL2の少なくとも1つが、下記から選択されるヒドラゾン含有基を含む、請求項17記載のコンジュゲート:


【請求項19】
L1およびL2の少なくとも1つが、酸不安定基およびジスルフィドを含む、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項20】
酸不安定基が、ヒドラゾン、イミノ、エステル、およびアミドから選択される、請求項19記載のコンジュゲート。
【請求項21】
酸不安定基がヒドラゾン基である、請求項19記載のコンジュゲート。
【請求項22】
L1およびL2の少なくとも1つが、下記から選択される基を含む、請求項19記載のコンジュゲート:


【請求項23】
下記から選択される式を含む、請求項1記載のコンジュゲート:


【請求項24】
下記から選択される式を含む、請求項23記載のコンジュゲート:


【請求項25】
(1)治療糖タンパク質(G)、
(2)その同族受容体によりオリゴ糖側鎖認識部をマスキングするための、第1のリンカー(L1)を介して糖タンパク質に共有結合されている、第1の手段、および
(3)コンジュゲートを特定の組織または器官にターゲティングするための第2の手段であって、第1の手段は第2のリンカー(L2)を介して第1の手段に共有結合されている、第2の手段
を含むコンジュゲートであって、
糖タンパク質が、リソソーム条件下でコンジュゲートから放出される、コンジュゲート。
【請求項26】
請求項1記載のコンジュゲートおよび薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項27】
(i)第1の官能基および第2の官能基を含むマスキング部分を提供する工程、
(ii)第1の官能基を糖タンパク質の糖側鎖と反応させる工程、および
(iii)第2の官能基をターゲティング部分と反応させる工程
を含む、請求項1記載のコンジュゲートの作製方法。
【請求項28】
哺乳動物に請求項1記載のコンジュゲートを投与する段階を含む、哺乳動物におけるリソソーム貯蔵障害を治療する方法。
【請求項29】
(1)治療糖タンパク質(G)、
(2)第1のリンカー(L1)を介して、糖タンパク質に共有結合されているマスキング部分(M)、および
(3)第2のリンカー(L2)を介して、マスキング部分に共有結合されているターゲティング部分(T)
を含むコンジュゲートであって、
糖タンパク質が、リソソーム条件下でコンジュゲートから放出される、コンジュゲート。
【請求項30】
G(L1-M(L2-T)n)mを含み、互いに独立に、1≦n≦20かつ1≦m≦20である、請求項29記載のコンジュゲート。
【請求項31】
糖タンパク質が、酵素および抗体から選択される非ウイルス性タンパク質である、請求項29記載のコンジュゲート。
【請求項32】
酵素がリソソーム酵素である、請求項31記載のコンジュゲート。
【請求項33】
リソソーム酵素が、α-ガラクトシダーゼA、酸セラミダーゼ、酸α-L-フコシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、酸β-ガラクトシダーゼ、イズロネート-2-スルファターゼ、α-L-イズロニダーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、酸α-マンノシダーゼ、酸β-マンノシダーゼ、アリールスルファターゼB、アリールスルファターゼA、アリールスルファターゼA、N-アセチルガラクトサミン-6-スルフェートスルファターゼ、酸スフィンゴミエリナーゼ、酸α-グルコシダーゼ、β-ヘキソサミニダーゼB、ヘパランN-スルファターゼ、α-N-アセチルグルコサミニダーゼ、アセチル-CoA:α-グルコサミニデン-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン-6-スルフェートスルファターゼ、α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ、シアリダーゼ、β-グルクロニダーゼ、およびβ-ヘキソサミニダーゼAからなる群より選択される、請求項32記載のコンジュゲート。
【請求項34】
リソソーム酵素が、α-ガラクトシダーゼAおよびグルコセレブロシダーゼから選択される、請求項33記載のコンジュゲート。
【請求項35】
マスキング部分が、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリメタクリレート(PMA)、ポリシアル酸(PSA)、ヒアルロン酸(HA)、アルブミン、免疫グロブリン(IgG)、デキストラン硫酸、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアクリルアミド、α,β-ポリ(N-ヒドロキシエチル)-DL-アスパルトアミド(PHEA)、ポリ(ビニルピロリドン-コ-ジメチル無水マレイン酸)(ポリ(VP-コ-DMMAn)、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルイミド)(HMPA)およびヒドロキシアルキルデンプン(HAS)からなる群より選択されるポリマーである、請求項29記載のコンジュゲート。
【請求項36】
PEGがスター-PEGまたはペンダント-PEGである、請求項35記載のコンジュゲート。
【請求項37】
マスキング部分が、リソソーム条件下で分解可能であり、これにより糖タンパク質の放出が可能となる、請求項29記載のコンジュゲート。
【請求項38】
ターゲティング部分が、非内在性タンパク質、受容体結合ペプチド、受容体に対する抗体、または天然受容体リガンドである、請求項29記載のコンジュゲート。
【請求項39】
リンカーL1およびL2の少なくとも1つが、リソソーム条件下で糖タンパク質の放出を可能とする不安定基を含む、請求項29記載のコンジュゲート。
【請求項40】
不安定基が酸に不安定である、請求項39記載のコンジュゲート。
【請求項41】
酸不安定基が、ヒドラゾン、イミノ、エステル、およびアミドから選択される、請求項40記載のコンジュゲート。
【請求項42】
酸不安定基が、ヒドラゾン基である、請求項41記載のコンジュゲート。
【請求項43】
不安定基が、ジスルフィドである、請求項39記載のコンジュゲート。
【請求項44】
(1)治療糖タンパク質(G)、
(2)第1のリンカー(L1)を介して、糖タンパク質のアミノ酸残基に共有結合されているマスキング部分(M)、および
(3)第2のリンカー(L2)を介して、マスキング部分に共有結合されているターゲティング部分(T)、
を含むコンジュゲートであって、
糖タンパク質が、リソソーム条件下でコンジュゲートから放出される、コンジュゲート。
【請求項45】
G(L1-M(L2-T)n)mを含み、互いに独立に、1≦n≦20かつ1≦m≦20である、請求項44記載のコンジュゲート。
【請求項46】
糖タンパク質が、酵素および抗体から選択される非ウイルス性タンパク質である、請求項44記載のコンジュゲート。
【請求項47】
酵素がリソソーム酵素である、請求項46記載のコンジュゲート。
【請求項48】
リソソーム酵素が、α-ガラクトシダーゼA、酸セラミダーゼ、酸α-L-フコシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、酸β-ガラクトシダーゼ、イズロネート-2-スルファターゼ、α-L-イズロニダーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、酸α-マンノシダーゼ、酸β-マンノシダーゼ、アリールスルファターゼB、アリールスルファターゼA、アリールスルファターゼA、N-アセチルガラクトサミン-6-スルフェートスルファターゼ、酸スフィンゴミエリナーゼ、酸α-グルコシダーゼ、β-ヘキソサミニダーゼB、ヘパランN-スルファターゼ、α-N-アセチルグルコサミニダーゼ、アセチル-CoA:α-グルコサミニデン-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン-6-スルフェートスルファターゼ、α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ、シアリダーゼ、β-グルクロニダーゼ、およびβ-ヘキソサミニダーゼAからなる群より選択される、請求項47記載のコンジュゲート。
【請求項49】
リソソーム酵素が、α-ガラクトシダーゼAおよびグルコセレブロシダーゼから選択される、請求項48記載のコンジュゲート。
【請求項50】
アミノ酸残基がリジン残基である、請求項44記載のコンジュゲート。
【請求項51】
マスキング部分が、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリメタクリレート(PMA)、ポリシアル酸(PSA)、ヒアルロン酸(HA)、アルブミン、免疫グロブリン(IgG)、デキストラン硫酸、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアクリルアミド、α,β-ポリ(N-ヒドロキシエチル)-DL-アスパルトアミド(PHEA)、ポリ(ビニルピロリドン-コ-ジメチル無水マレイン酸)(ポリ(VP-コ-DMMAn)、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルイミド)(HMPA)およびヒドロキシアルキルデンプン(HAS)からなる群より選択されるポリマーである、請求項44記載のコンジュゲート。
【請求項52】
PEGがスター-PEGまたはペンダント-PEGである、請求項51記載のコンジュゲート。
【請求項53】
マスキング部分が、リソソーム条件下で分解可能であり、これにより糖タンパク質の放出が可能となる、請求項44記載のコンジュゲート。
【請求項54】
ターゲティング部分が、非内在性タンパク質、受容体結合ペプチド、受容体に対する抗体、または天然受容体リガンドである、請求項44記載のコンジュゲート。
【請求項55】
リンカーL1およびL2の少なくとも1つが、リソソーム条件下で糖タンパク質の放出を可能とする不安定基を含む、請求項44記載のコンジュゲート。
【請求項56】
不安定基が、ジスルフィドである、請求項54記載のコンジュゲート。
【請求項57】
リンカーL1およびL2の少なくとも1つが、下記から選択されるジスルフィドを含む、請求項56記載のコンジュゲート:

式中、2≦p≦12である。
【請求項58】
不安定基が酸に不安定である、請求項55記載のコンジュゲート。
【請求項59】
酸不安定基が、ヒドラゾン、イミノ、エステル、およびアミドから選択される、請求項58記載のコンジュゲート。
【請求項60】
酸不安定基が、ヒドラゾン基である、請求項59記載のコンジュゲート。
【請求項61】
L1およびL2の少なくとも1つが、下記から選択される基を含む、請求項60記載のコンジュゲート:

式中、Arはアリールまたはヘテロアリールである。
【請求項62】
下記式を含む、請求項56記載のコンジュゲート:

式中、互いに独立に、2≦p≦12かつ2≦q≦12である。
【請求項63】
不安定基が、ジスルフィドを含む、請求項12記載のコンジュゲート。
【請求項64】
リンカーL1およびL2の少なくとも1つが、下記から選択されるジスルフィドを含む、請求項63記載のコンジュゲート:

式中、2≦p≦12である。
【請求項65】
請求項44記載のコンジュゲートおよび薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項66】
(i)第1の官能基および第2の官能基を含むマスキング部分を提供する工程、
(ii)第1の官能基を糖タンパク質のアミノ酸残基と反応させる工程、および
(iii)第2の官能基をターゲティング部分と反応させる工程
を含む、請求項44記載のコンジュゲートの作製方法。
【請求項67】
哺乳動物に請求項44記載のコンジュゲートを投与する段階を含む、哺乳動物におけるリソソーム貯蔵障害を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−535842(P2008−535842A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505495(P2008−505495)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/012698
【国際公開番号】WO2006/108052
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(593119583)ジェンザイム・コーポレイション (17)
【氏名又は名称原語表記】Genzyme Corporation
【Fターム(参考)】