説明

治療方法

本発明は、対象においてリンパ管内皮細胞の増殖及び/又は遊走を阻害する方法及びリンパ管新生を阻害する方法に関するものであって、前記方法は、対象に又は前記対象に由来するリンパ管内皮細胞に、コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチド又は断片の有効量、これらの誘導体又は変異体の有効量、これらをコードするポリヌクレオチドの有効量、あるいはNC1ドメインポリペプチドの発現又は産生を増加させることができる薬剤の有効量を投与することを含む。異常なリンパ管内皮細胞活性に伴う疾患及び病態を治療又は予防する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、リンパ系の細胞、特にリンパ管内皮細胞の活性をモジュレートする方法に関する。より具体的には、本発明は、リンパ管内皮細胞の増殖及び/又は遊走を阻害する方法並びに腫瘍により誘発された(tumor-induced)リンパ管新生(lymphangiogenesis)を含むリンパ管新生を阻害する方法に関する。従って、本発明の実施態様は、異常な(aberrant)リンパ管内皮細胞活性に伴う疾患及び病態の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において引用される全ての特許、特許出願及び刊行物の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本明細書中への任意の参考文献の引用も、この参考文献が本出願に対する「従来技術」として利用可能であることの了解であると解釈されるべきではない。更に、本明細書中における任意の従来刊行物(又はこれに由来する情報)又は公知の任意の事柄の参照は、従来刊行物(又はこれに由来する情報)又は公知の事柄が、本明細書が関連する試みの分野における共通一般知識の一部を形成するという同意又は了解、あるいは示唆の任意の形態と解釈されず、そして、解釈すべきではない。
【0004】
癌は、身体のいかなる器官においても生じ得る。多くの例において、新生物がこの起源器官(organ of origin)に制限される場合、癌は、有効に管理及び治療することができることが多く、潜在的には、既存の治療及び/又は腫瘍塊の外科的切除を介して患者を治癒することができる。残念ながら、多くの癌は、体内の他の部位に拡散又は転移し、癌転移は癌患者の主な死因である。癌転移が生じる機序及び経路の決定は、抗癌治療のための新規治療ターゲットの同定及び開発において顕著に重要であることは明らかである。
【0005】
癌細胞は、例えば、周辺組織の直接浸潤、血流を介する拡散(血行性転移)及びリンパ系を介する拡散(リンパ行性転移)の種々の機序により体内で拡散し得る。固形腫瘍の場合、リンパ管を介する局所リンパ節への転移は、これらの拡散において共通のステップである。この臨床的関連にかかわらず、驚くべきことに、リンパ系を介して転移をもたらす機序についてはほとんど知られていない。
【0006】
目下、種々の癌、特に固形腫瘍は、リンパ管新生、すなわちリンパ系の新たな管の形成を活性化又は誘導することができることが知られている。例えば、成長因子VEGF−C及びVEGF−Dは、リンパ管新生及び腫瘍におけるリンパ行性転移を促進することが示されている(Stacker et al.Nature Med.7,186-191,2001)。腫瘍により誘発されたリンパ管新生は、リンパ節への腫瘍の拡散を促進し得る。リンパ節への腫瘍の拡散は、多くのタイプの癌において重要な予後指標であり、疾患を撲滅する試みにおいて所属リンパ節を排出させる外科的及び放射線治療の根拠となる。しかしながら、腫瘍がリンパ節に拡散すると、癌を完全に消滅させることがほとんどできなくなることが多い。癌の拡散の可能性を最小化又は消滅させることが好ましく、従って、リンパ管新生のモジュレーションは抗癌剤のための特に魅力的なターゲットを表す。
【0007】
リンパ脈管構造はまた、免疫及び間質液のホメオスタシスの維持において重要な役割を担う。リンパ液の蓄積は、正常なリンパ機能への変化から生じる。リンパ管新生は、腫瘍によるこの誘導に加え、種々の他の障害、例えば浮腫、肺線維症、関節リウマチ、喘息、移植拒絶、乾癬及び創傷修復の悪化にも関与する。更に、異常なリンパ系機能により、腫瘍、例えばリンパ管腫及びカポジ肉腫が生じ得る。
【0008】
異常なリンパ管新生及び/又は異常なリンパ管内皮細胞活性に伴う疾患及び病態の治療に有効な治療オプション及び予防オプションの必要性が残されている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、コラーゲンタイプIVのα5鎖のNC1ドメイン(本明細書においてはラムスタチン(lamstatin)とも称される)及びコラーゲンタイプIVのα3鎖のNC1ドメイン(タムスタチンとしても公知)が、リンパ管内皮細胞内で驚くべき活性を有するという本発明者らの驚くべき知見を基礎とする。細胞増殖及び遊走は、ラムスタチン及びタムスタチンの存在下で阻害される。重要なことに、これらのポリペプチドは、新たなリンパ管形成も阻害する。
【0010】
本発明の第1の観点によれば、対象においてリンパ管内皮細胞の増殖及び/又は遊走を阻害する方法であって、対象に又は前記対象に由来するリンパ管内皮細胞に、コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチド又は断片の有効量、これらの誘導体又は変異体の有効量、これらをコードするポリヌクレオチドの有効量、あるいはNC1ドメインポリペプチドの発現又は産生を増加させることができる薬剤の有効量を投与することを含む、前記方法が提供される。
【0011】
或る実施態様において、コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチドは、コラーゲンタイプIVのα5鎖のNC1ドメイン(ラムスタチン)であり得る。ラムスタチンは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むことができる。ラムスタチンは、配列番号2に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによりコードされることができる。
【0012】
或る実施態様において、コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチドは、コラーゲンタイプIVのα3鎖のNC1ドメイン(タムスタチン)であり得る。タムスタチンは、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むことができる。タムスタチンは、配列番号4に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによりコードされることができる。
【0013】
断片は、アミノ酸配列VCNFASRNDYSYWLSTP(配列番号5)又はこの変異体を含むことができる。
【0014】
本発明の第2の観点によれば、リンパ管新生を阻害する方法であって、対象又は前記対象に由来する細胞又はリンパ組織に、コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチド又は断片、これらの誘導体又は変異体、これらをコードするポリヌクレオチド、あるいはNC1ドメインポリペプチドの発現又は産生を増加させることができる薬剤を投与することを含む、前記方法が提供される。
【0015】
リンパ管新生は、腫瘍により誘発されたリンパ管新生であり得る。例示的な実施態様において、腫瘍は肺腺癌である。癌転移は、投与ステップ後に低減させることができる。
【0016】
本発明の第3の観点によれば、異常なリンパ管内皮細胞活性に伴う疾患又は病態を治療又は予防する方法であって、対象に又は前記対象に由来するリンパ管内皮細胞に、コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチド又は断片の有効量、これらの誘導体又は変異体の有効量、これらをコードするポリヌクレオチドの有効量、あるいはNC1ドメインポリペプチドの発現又は産生を増加させることができる薬剤の有効量を投与することを含む、前記方法が提供される。
【0017】
疾患又は病態は、異常な、過剰な、又はそうでなければ異常に調節されたリンパ管新生に伴うものであり得る。疾患又は病態は、例えば、腫瘍により誘発されたリンパ管新生、癌転移、線維症、リンパ管平滑筋肉腫症(LAM)、関節リウマチ、喘息、移植拒絶、乾癬、創傷修復の悪化、リンパ管腫又はカポジ肉腫から選択することができる。線維症は、肺線維症であり得る。
【0018】
本発明の第4の観点によれば、リンパ管内皮細胞増殖及び/又は遊走の阻害、リンパ管新生の阻害のための、あるいは異常なリンパ管内皮細胞活性に伴う疾患又は病態の治療又は予防のための、コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチド又は断片、これらの誘導体又は変異体、これらをコードするポリヌクレオチド、あるいはNC1ドメインポリペプチドの発現又は産生を増加させることができる薬剤の使用が提供される。
【0019】
本発明の第5の観点によれば、リンパ管内皮細胞増殖及び/又は遊走の阻害、リンパ管新生を阻害するか、あるいは異常なリンパ管内皮細胞活性に伴う疾患又は病態を治療又は予防する医薬の製造のための、コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチド又は断片、これらの誘導体又は変異体、これらをコードするポリヌクレオチド、あるいはNC1ドメインポリペプチドの発現又は産生を増加させることができる薬剤の使用が提供される。
【0020】
本明細書においては更に、コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチド又は断片、これらの誘導体又は変異体、これらをコードするポリヌクレオチド、あるいはNC1ドメインポリペプチドの発現又は産生を増加させることができる薬剤を、適当な薬剤学的に許容可能な担体及び/又は希釈剤と場合により一緒に含む医薬組成物が提供される。
【0021】
本発明の第6の観点によれば、リンパ管新生を促進する方法であって、対象又は前記対象に由来する細胞又はリンパ組織に、コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチド又は断片の阻害剤、これらの誘導体又は変異体の阻害剤、これらをコードするポリヌクレオチドの阻害剤を投与することを含む、前記方法が提供される。
【0022】
対象は、リンパ管新生の悪化を特徴とし、又はそうでなければこの悪化に伴う病態を罹患し得る。病態は、浮腫であり得る。浮腫は、リンパ浮腫、手術により誘発された浮腫又は腫瘍により誘発された浮腫であり得る。
【0023】
本明細書においては更に、コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチド又は断片、これらの誘導体又は変異体、これらをコードするポリヌクレオチドの阻害剤を、好適な薬剤学的に許容可能な担体及び/又は希釈剤と場合により一緒に含む医薬組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の実施態様を、非限定的な例としてのみ、以下の図面を参照しながら説明する。
【図1】細胞生存率(cell viability)に対するラムスタチンの細胞特異的効果。種々の濃度のラムスタチンによる(A)線維芽細胞(3567)、(B)上皮細胞(A549)及び(C)リンパ管内皮細胞(HMVEC−LLy)の72時間の処理。細胞生存率は、MTTにより計測した。非細胞毒性経路(non-cytotoxic pathway)を示す、最大濃度における細胞活性に着目されたい。n=3。p<0.05。
【図2】A.リンパ管内皮細胞に対するラムスタチンの抗増殖効果。1の閾値細胞指数(C1>4最大、72時間後に記録)に達するのに要した時間(分)を示す。10μg/mLのラムスタチンにより処理した細胞は、ビヒクル対照における細胞数と比較可能な細胞数に達するのに2倍の時間量を要した。線形傾向は、ANOVA事後検定(post text)から確認し、p=0.0002であった。**p<0.01。B.インビトロでのリンパ管内皮細胞接着に対するラムスタチンの効果。種々の濃度のラムスタチンによる処理の55分後の細胞接着の低減を示す。
【図3】BGM−2培地中での24時間後のMatrigel上でのHMVEC−LLyによる管形成。タムスタチン(A)、ラムスタチン(B)及びコンセンサスペプチドCP17(C)は、形成される管様構造物の数を濃度関連的に低減させた。CP17濃度をμMとして挙げ、最大濃度は、タムスタチンとラムスタチンのいずれかの約25倍の濃度に等しい。n=2、Kruskal−Wallisにおいてp<0.05且つ**p<0.05である。
【図4】24時間後のVEGFD勾配に対するHMVEC−LLyの遊走。A.VEGFDの濃度増加は、リンパ管内皮細胞を濃度関連的に誘引する。B.VEGFD特異的遮断融合受容体(R3−FC)の添加は、42000RFUから15000RFU未満へ遊走を縮小させた。ラムスタチンは同じく強力であり(10000RFU)、タムスタチンは同様の傾向を示した。n=1。
【図5】ラムスタチン(10μg/ml)、ペプチドCP17(5μM)又はビヒクル(1nMのEDTA、pH3.5)の存在下での、HMVEC−LLy細胞に対するインテグリンβ3(A)、β1(B)及びα5(C)の結合。インテグリンの結合は、インテグリンβ3、β1及びα5に特異的なモノクローナル抗体を使用して測定した。
【図6】増加濃度のラムスタチン(A〜C)又はタムスタチン(D〜F)によるLAM小結節細胞の処理。小結節細胞は、小結節内のこれらの位置に従って分離した;中間層(A及びD)、中央(B及びE)及び外側層(C及びF)。観察された細胞生存率の最大低減は、ラムスタチン及びタムスタチンの存在下で、小結節細胞において>50%であった。n=6(異なる継代物からの3回の個々の検定)。
【図7】小結節細胞をラムスタチンにより5時間処理した場合の、管状構造物の長さ及び平方ピクセル当たりの管の数。管の長さ(A)については、2個の細胞間又は細胞集塊間の直線的な連結部である10個の管状構造物を写真ごとに計測した。管状構造物の数(B)を計算するため、写真を既知区域の9個のセグメントに分割し、1セグメント当たりの管の数を計数した。
【図8】(A)10又は100μg/mLのラムスタチン又はビヒクル(1nMのEDTA、pH3.0)のみにより処理した担腫瘍マウスのホールマウント染色した耳のLyVe−1染色の平均強度。(B)10又は100μg/mLのラムスタチン又はビヒクルのみにより処理した担腫瘍マウスのホールマウント染色した耳のPECAM染色の平均強度。
【図9】(A)Matrigelのみ、(B)腫瘍細胞+ビヒクルのみ、(C)腫瘍細胞+10μg/mLのラムスタチン又は(D)腫瘍細胞+100μg/mLのラムスタチンを受容したマウスのホールマウント染色した耳の共焦点顕微鏡画像。各組の画像について、上段左パネルは腫瘍細胞を示し、上段右パネルはPECAMについての染色を示し、下段左パネルはLyVe−1についての染色を示し、下段右パネルは、他の3種のパネルの重複画像である。
【図10】ビヒクル(1nMのEDTA、pH3.0)のみと比較した10又は100μg/mLのラムスタチン(A及びB)、あるいはビヒクル(1nMのEDTA、pH3.0)のみと比較した5又は50μMのCP17(C及びD)により処理した担腫瘍マウスのホールマウント染色した耳において計測したリンパ管形態。管形態は、Image Jソフトウエアを使用してブランチ(A及びC)又はループ(B及びD)の数として測定した。
【0025】
対象となる明細書は、本明細書中の配列表に提示された、プログラムPatentIn Version 3.4を使用して作成されたアミノ酸及びヌクレオチド配列情報を含む。アミノ酸及びポリヌクレオチド配列は、配列識別番号(配列番号)により言及される。配列番号は、配列識別子<400>1(配列番号1)、<400>2(配列番号2)などのように数字が対応する。具体的には、ヒトラムスタチンのアミノ酸配列は配列番号1に提供され、コードヌクレオチド配列は配列番号2に提供される。ヒトタムスタチンのアミノ酸配列は配列番号3に提供され、コードヌクレオチド配列は配列番号4に提供される。配列番号5は、ラムスタチン及びタムスタチンの例示的な機能性ペプチド断片のアミノ酸配列を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0026】
以下の本明細書及び特許請求の範囲にわたり、文脈が特に要求しない限り、語「含む(comprise)」並びに変形、例えば「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」は、記載された実在物又はステップ、あるいは実在物又はステップの群を包括するが、任意の他の実在物又はステップ、あるいは実在物又はステップの群を除外するものでないことを意味すると理解される。
【0027】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書においては、1つ又は1つ超(すなわち、少なくとも1つ)の冠詞の文法的目的語を指すために使用される。例として「要素(an element)」は、1種の要素又は1種超の要素を意味する。
【0028】
リンパ管新生に関して本明細書において使用される用語「異常な(abnormal)」は、不所望な、又は不適切に調節されたリンパ管新生を意味する。従って、異常なリンパ管新生は、正常に調節されるリンパ管新生に対して上方調節されるか又は過剰であるか、あるいは、正常に調節されるリンパ管新生に対して下方調節されるか、悪化するか又は抑制されることがある。それぞれの場合、リンパ管新生の変化又は異常は、定量的、一時的及び/又は空間的であり得る。すなわち、上方調節されるか又は過剰なリンパ管新生の場合、例えば、リンパ管新生は、異常に高いレベルにおいて生じるか、リンパ管新生が通常生じない時間において生じるか、及び/又はリンパ管新生が通常生じない組織又は位置において生じ得る。同様に、悪化又は抑制されたリンパ管新生の場合、組織又は身体のリンパ管新生を誘導又は開始する能力は、リンパ管新生が十分なレベルにおいて生じ得ないほど、かつ/又は正常な健常状態を維持するのに必要とされる状況(時間及び/又は位置)において生じ得ないほど悪化し得る。当業者は、リンパ管内皮細胞活性に関する用語「異常な(aberrant)」が同様の範囲を有することを認識する。典型的には、「異常な」活性は、異常な、過剰な、又はそうでなければ不所望な細胞増殖及び/又は遊走を指す。
【0029】
本明細書に関して、タンパク質、ポリペプチド又はポリヌクレオチドに関する用語「活性」は、タンパク質、ポリペプチド又はポリヌクレオチドにより、核酸配列とこの断片のいずれかにより、あるいはタンパク質又はポリペプチド自体又はこれらの任意の断片により発揮される任意の細胞機能、作用、効果又は影響を意味する。
【0030】
本明細書において使用されるとおり、異常なリンパ管新生又は異常なリンパ管内皮細胞活性「に伴う」疾患又は病態に関して使用される用語「に伴う」は、疾患又は病態が、異常なリンパ管新生又は異常なリンパ管内皮細胞活性から生じ得るか、これらをもたらし得るか、これらを特徴とし得るか、又はそうでなければこれらに伴うことを意味する。従って、疾患又は病態と異常なリンパ管新生又は異常なリンパ管内皮細胞活性との関連は、直接的又は間接的であり、そして、一時的及び/又は空間的に分離することができる。
【0031】
本明細書において使用されるとおり、用語「有効量」は、この意味の範囲内で、所望の効果を提供するために薬剤又は化合物のこの非毒性であるが十分な量又は用量を含む。必要とされる正確な量又は用量は、例えば、治療される種、対象の年齢及び全身状態、治療される病態の重症度、投与される特定の薬剤並びに投与方式などの要因に応じて対象ごとに変動する。従って、正確な「有効量」を規定することはできない。しかしながら、あらゆる所与の場合について、適切な「有効量」は、当業者が定型的な実験のみを使用して決定することができる。
【0032】
本明細書において使用されるとおり、用語「発現」は、文脈に応じて、ポリペプチド又はタンパク質の発現、あるいはポリヌクレオチド又は遺伝子の発現を指すことができることを理解される。ポリヌクレオチドは、コード性又は非コード性(例えば、miRNA)であり得る。ポリヌクレオチドの発現は、例えばRNA転写産物レベルの産生を計測することにより測定することができる。タンパク質又はポリペプチドの発現は、例えばポリペプチドと結合する(1種以上の)抗体を使用する免疫アッセイにより測定することができる。
【0033】
本明細書において使用される用語「阻害する(inhibiting)」並びにこの変形、例えば「阻害」及び「阻害する(inhibits)」は、規定の事象、活性又は機能の完全な阻害を必ずしも意味しない。むしろ、阻害は、所望の効果を生成するのに十分な程度及び/又は時間であり得る。阻害は、事象、活性又は機能の防止、遅延、低減又はそうでなければ妨害であり得る。このような阻害は、大規模及び/又は事実上一時的であり得る。特定の文脈において、用語「阻害」及び「予防」並びにこれらの変形は、交換可能に使用することができる。
【0034】
本明細書に関して、用語「阻害剤」は、ラムスタチン又はタムスタチンの発現と活性のいずれか又は両方を、直接的又は間接的に阻害することができる任意の薬剤又は作用を指す。従って、阻害剤は、ラムスタチン又はタムスタチンポリペプチド、対応するmRNA又は遺伝子に直接的又は間接的に働くことができるか、あるいはラムスタチン−又はタムスタチン−関連経路の任意の1種以上の構成要素の直接的又は間接的阻害を介して作用することができる。このような構成要素は、ラムスタチン又はタムスタチンの活性前、活性と同時に、又は活性の結果として活性化されるか、阻害されるか、又はそうでなければモジュレートされる分子であり得る。従って、阻害剤は、転写、翻訳、転写後又は翻訳後プロセシングを防止するか、あるいは、そうでなければラムスタチン又はタムスタチンあるいはラムスタチン−又はタムスタチン−関連経路の構成要素の活性を何らかの形で直接的又は間接的作用を介して阻害するように働くことができる。阻害剤は、例えば、核酸、ペプチド、任意の他の好適な化合物又は分子、あるいはこれらの任意の組合せであり得る。ラムスタチン又はタムスタチン、あるいはラムスタチン−又はタムスタチン−関連経路の構成要素の活性の間接的悪化において、阻害剤は、ラムスタチン又はタムスタチン、あるいはラムスタチン−又はタムスタチン−関連経路の構成要素を調節するか、又はラムスタチン又はタムスタチン、あるいはラムスタチン−又はタムスタチン−関連経路の構成要素による調節又はモジュレーションにそれ自体供される分子の活性に影響を及ぼすことができると理解される。
【0035】
本明細書において使用されるとおり、用語「ラムスタチン」は、コラーゲンタイプIVの非コラーゲン(NC1)ドメインのα5鎖を指す。用語「タムスタチン」は、コラーゲンタイプIVの非コラーゲン(NC1)ドメインのα3鎖を指す。それぞれの場合、用語「ラムスタチン」及び「タムスタチン」は、典型的には、ヒトにおいて見出されたこれらのポリペプチド又はこの誘導体、断片もしくは変異体を指す。しかしながら、他の種からのヒトラムスタチン及びタムスタチンのホモログも企図され、本開示により包含されることは、当業者により理解される。
【0036】
本明細書において使用されるとおり、用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合により一緒に結合しているアミノ酸から構成されるポリマーを意味する。用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書において交換可能に使用されるが、本発明の目的のため、「ポリペプチド」は、完全長タンパク質の一部を構成することができる。本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド塩基又は既知の類似体もしくは天然ヌクレオチドの一本鎖又は二本鎖ポリマー又はこれらの混合物を指す。本明細書においていくつかの文脈において、用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸分子」は、交換可能に使用される。
【0037】
本明細書において使用される用語「対象」は哺乳動物を指し、ヒト、霊長類、家畜動物(例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ロバ)、実験室試験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット)、愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ)及び捕獲野性動物(例えば、キツネ、カンガルー、シカ)を含む。典型的には、哺乳動物はヒト又は実験室試験動物である。よりいっそう典型的には、哺乳動物はヒトである。
【0038】
本発明において使用されるとおり、用語「治療する」、「治療」、「予防する」及び「予防」は、形はどうあれ、病態又は症候を軽減するか、病態又は疾患の確立を防止するか、あるいは、病態又は疾患又は他の不所望な症候の進行を防止するか、妨害するか、遅延させるか、あるいは逆行させる、任意の及び全ての使用を指す。従って、用語「治療する」及び「予防する」などは、これらの最も広い文脈において考慮すべきである。例えば、治療は、患者が完全回復するまで治療されることを必ずしも意味しない。複数の症候を示すか又は特徴とする病態において、治療又は予防は、前記症候の全てを必ずしも軽減しない、防止しない、妨害しない、遅延しない、又は逆行させないが、前記症候の1種以上を防止し、妨害し、遅延させ、又は逆行させることができる。
【0039】
コラーゲンタイプIVファミリーの分子は、ヒトにおいて3種の染色体上で対でコードされる6種のアイソフォームを含む(collVα1及びα2については13q34、collVα3及びα4については2q36.2、collVα5及びα6についてはXq22.3)。コラーゲンIV分子は、7sドメインに続くヘリカルドメイン及び非コラーゲン(NC)ドメインから構成される。肺において、コラーゲンネットワークは、7S及びNCドメインを介して他のコラーゲン小線維に連結する3種のコラーゲンIV分子の小線維へのアラインメントにより形成される。collVα1(アレステン)、collVα2(カンスタチン)及びcollVα3(タムスタチン)のNCドメインは、小線維から開裂されると異なる機能性を示すことが確立されている。タムスタチンの場合、この効果は抗血管新生であり、増殖する内皮細胞内でアポトーシスを誘導する。今日、collVα5の機能の理解は、困難なままである。
【0040】
本明細書において例示されるとおり、コラーゲンタイプIVのα5及びα3鎖のNC1ドメイン(本明細書においては、それぞれラムスタチン及びタムスタチンと称される)が、リンパ管内皮細胞内で驚くべき活性を有することを見出した。細胞増殖及び遊走は、ラムスタチン及びタムスタチンの存在下で阻害される。重要なことに、これらのポリペプチドは、リンパ管形成も阻害する。従って、これらの知見は、リンパ管新生の出現率及び/又は重症度を阻害するか、又は低減させる方法の開発を可能にした。癌治療に関して、例えば、これらの知見は、これらが癌転移の発生の最小化又は低減を対象とする補助治療レジメンを提供するという点で非常に価値がある。従って、本明細書に開示の知見により、癌の進行及び拡散を低減させる新規治療及び予防方法の設計が可能になった。
【0041】
本発明の或る観点は、対象においてリンパ管内皮細胞の増殖及び/又は遊走を阻害する方法であって、対象に又は前記対象に由来するリンパ管内皮細胞に、コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチド又は断片の有効量、これらの誘導体又は変異体の有効量、これらをコードするポリヌクレオチドの有効量、あるいは、NC1ドメインポリペプチドの発現又は産生を増加させることができる薬剤の有効量を投与することを含む、前記方法を対象とする。
【0042】
本発明の別の観点は、リンパ管新生を阻害する方法であって、対象又は前記対象に由来する細胞又はリンパ組織に、コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチド又は断片、これらの誘導体又は変異体、これらをコードするポリヌクレオチド、あるいは、NC1ドメインポリペプチドの発現又は産生を増加させることができる薬剤を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0043】
本発明の別の観点は、異常なリンパ管内皮細胞活性に伴う疾患又は病態を治療又は予防する方法であって、対象に又は前記対象に由来するリンパ管内皮細胞に、コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチド又は断片の有効量、これらの誘導体又は変異体の有効量、これらをコードするポリヌクレオチドの有効量、あるいは、NC1ドメインポリペプチドの発現又は産生を増加させることができる薬剤の有効量を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0044】
本発明の実施態様は、リンパ管内皮細胞内でラムスタチン、タムスタチン又はこれらの誘導体、断片又は変異体の量をモジュレートすることにより、リンパ管新生をモジュレートする方法を提供する。リンパ管新生が過剰な又は調節されない状況においては、ラムスタチン、タムスタチンあるいはこれらの誘導体、断片又は変異体の量及び/又は活性の増加は、リンパ管新生を阻害する。リンパ管新生が不十分な又は抑制される状況においては、ラムスタチン、タムスタチンあるいはこれらの誘導体、断片又は変異体の量及び/又は活性の低下は、リンパ管新生を促進又は誘導する。ラムスタチン又はタムスタチンの量の増加又は低下は、正常な内因性レベルに関連し得る。「正常な内因性レベル」への言及は、リンパ管新生が正常に調節される対象のリンパ管内皮細胞内で発現されるラムスタチン又はタムスタチンのレベルへの言及と理解すべきである。この「正常なレベル」は、個体のコホート間の差に起因して、非常に均一な別々のレベルとは対照的なレベルの範囲に対応する可能性が高いことが当業者により認識される。「コホート」は、治療を受けている対象の特徴でもある1つ以上の特性を特徴とするコホートを意味する。これらの特性は、限定されるものではないが、例えば、年齢、性別又は種族を含む。従って、本明細書における正常な内因性レベルに関するラムスタチンレベルのモジュレートへの言及は、治療される個体と同一のコホートの代表例である正常個体について測定することができた別々のラムスタチンレベルに関して、又は異なるコホートの範囲からの個体集団に対応する個体集団により発現されるラムスタチンレベル範囲に対応する定義されたラムスタチンレベル範囲に関してラムスタチンレベルを増加又は低下させることへの言及である。
【0045】
本明細書において詳述されるとおり、本発明の実施態様は、異常なリンパ管内皮細胞活性及び/又は異常なリンパ管新生に伴う疾患又は病態の治療又は予防に適用可能である。このような疾患及び病態は、限定されるものではないが、腫瘍により誘発されたリンパ管新生、癌転移、線維症(例えば、肺線維症)、リンパ管平滑筋肉腫症(LAM)、関節リウマチ、喘息、移植拒絶、乾癬又は創傷修復の悪化を含む。腫瘍又は癌は、例えば、甲状腺癌、食道癌、胃癌、乳癌、子宮頸癌、肺癌、膵癌、子宮内膜癌、卵巣癌、胆嚢癌、前立腺癌、結腸癌及び頭頸部癌を含む、リンパ系内で生じ、又はリンパ系を介して拡散することが知られている任意のタイプのものであり得る。本開示の範囲は、いかなる具体的な腫瘍又は癌タイプへの言及によっても限定されるものではない。或る例示的な実施態様において、腫瘍は肺腺癌である。
【0046】
治療又は予防的治療レジメンに関して認識されるとおり、一般に、リンパ管新生又はリンパ管内皮細胞増殖もしくは遊走の発生を下方調節することが求められている。しかしながら、例えば、補助治療、予防的治療の有効性についてのスクリーニング用の系又はそうでなければリンパ系の、もしくはリンパ系に関する疾患及び病態の継続中の分析を容易にする系を提供するアウトカムを容易にするため、いくつかの状況において、例えば、インビトロモデル又は動物モデルにおいて、リンパ管新生又はリンパ管内皮細胞増殖又は遊走の発生を、誘導又は上方調節することが望ましい場合がある。この目的のため、対象リンパ組織の内因性ラムスタチン又はタムスタチンレベルを低下させることによりこのアウトカムを達成することができる。このことは、例えば、病態、例えば、浮腫(例えば、リンパ浮腫、手術により誘発された浮腫又は腫瘍により誘発された浮腫)の治療において望ましい場合がある。
【0047】
本発明の方法は、インビトロ又はインビボのいずれでも実施することができると理解すべきである。方法は、典型的には、所望の臨床アウトカムを達成するためにインビボで個体を治療的又は予防的に治療するためのものであるが、このことにかかわらず、本発明の方法がインビトロ環境、例えば上記詳述した文脈における環境に適用されることが望ましい場合があると理解すべきである。リンパ管形成及び発達の検出並びに本明細書に開示の薬剤のリンパ管新生阻害能の測定は、当業者に公知の任意の好適な手段により実施することができる。例として、リンパ管内皮細胞特異的マーカー、例えば、LyVe−1を、好適な標識抗体を使用して検出することができる。
【0048】
本明細書において定義されるとおり、ラムスタチンへの言及は、この分子の全ての形態並びにこれらの機能性誘導体及びホモログへの言及と理解すべきである。このことは、例えば、対象のラムスタチンmRNAの代替スプライシングから生じ得る任意のアイソフォームあるいはこれらのタンパク質の機能性変異体又は多型変異体を含む。同一範囲の解釈は、用語タムスタチンに適用することができる。
【0049】
本発明の実施態様は、ラムスタチンもしくはタムスタチン又はこれらの誘導体、変異体もしくはホモログの投与を企図する。ラムスタチン又はタムスタチンは、ヒトに由来し得、それぞれ配列番号1もしくは3に記載のアミノ酸配列を含むことができるか、あるいは、それぞれ配列番号2もしくは4に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによりコードさせることができる。ラムスタチン又はタムスタチンは、ポリペプチド又はポリヌクレオチドとして投与することができる。本発明はまた、ヒトラムスタチン及びタムスタチンの誘導体、変異体及びホモログの使用を企図する。
【0050】
ポリヌクレオチドは、天然、組換え又は合成のものであるか、好適な源からの精製により得ることができるか、あるいは標準的な組換えDNA技術、例えば、当業者に周知のもの及び例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(この開示は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載のものにより産生させることができる。ラムスタチン又はタムスタチンをコードするポリヌクレオチドが投与される場合、ポリヌクレオチドは、典型的には、ベクター中において、細胞によるコード配列の発現を提供することができる好適な調節配列に機能的に結合して存在する。用語「(1種以上の)調節配列」は、プロモーター及びエンハンサー並びに他の発現調節シグナルを含む。これらは、発現ベクターが設計される細胞と適合するように選択することができる。哺乳動物プロモーター、例えば、β−アクチンプロモーター及びミオシン軽鎖プロモーターを使用することができる。しかしながら、他のプロモーターを導入して同一効果を達成することができる。これらの代替的プロモーターは、一般に、当業者に知られている。
【0051】
例としてラムスタチンを考慮すると、ラムスタチンの「誘導体」は、天然源と非天然源のいずれかからの機能性断片、部分、一部又は変異体を含む。非天然源は、例えば、組換え又は合成源を含む。「組換え源」は、対象分子が回収される細胞源が、遺伝的に変化していることを意味する。この組換え源は、例えば、その特定の細胞源による産生の速度及び容量を増加させるか又はそうでなければ向上させるために、生じさせることができる。部分又は断片は、例えば、当業者に周知の合成又は組換え手段により産生させることができる分子の機能的に活性な領域を含む。例えば、好適な誘導体は、ペプチド断片、例えば、本明細書においてCP17と称される、配列番号5に記載の配列を含むペプチド断片であり得る。
【0052】
誘導体は、アミノ酸の挿入、欠失又は置換から誘導することもできる。アミノ酸挿入誘導体は、アミノ及び/又はカルボキシル末端融合体並びに単一又は複数のアミノ酸の配列内挿入物を含む。挿入アミノ酸配列変異体は、1個以上のアミノ酸残基がタンパク質における所定部位中に導入されている変異体であるが、得られる生成物の好適なスクリーニングによりランダム挿入も可能である。欠失変異体は、配列からの1個以上のアミノ酸の除去を特徴とする。置換アミノ酸変異体は、配列中の少なくとも1個の残基が除去され、異なる残基がその場所に挿入された変異体である。アミノ酸配列への付加物は、上記詳述した他のペプチド、ポリペプチド又はタンパク質との融合物を含む。
【0053】
本明細書において使用される用語「変異体」は、実質的に同様の配列を指す。一般に、ポリペプチド配列変異体は、共通の定性的生物学的活性を有する。変異体は、任意の形態をとり得、天然又は非天然に生じたものであり得る。変異体ポリペプチド配列は、1個以上のアミノ酸の付加、欠失又は置換を含む、本明細書に開示の配列の誘導体であり得る。例えば、本明細書に開示のヒトラムスタチン及びタムスタチン配列の変異体は、配列番号1又は3に記載のアミノ酸配列に対して約70%の配列同一性を有することができる。変異体は、配列番号1又は3に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。用語「変異体」は、任意の好適な手段により本明細書に開示の配列から改変されたポリペプチド配列を包含する。
【0054】
本明細書において使用されるとおり、「ホモログ」は、分子が本発明の方法に従って治療される種以外の種に由来することを意味する。例えば、治療される種以外の種が、治療を受けている対象により天然に産生されたラムスタチンと同様の及び好適な機能的特徴を示すラムスタチンの形態を産生することが見出されている場合に、このホモログを生じさせることができる。
【0055】
同様に、本明細書において使用される誘導体、断片、変異体及びホモログという用語は、ヌクレオチド配列に適用することもできる。
【0056】
本発明の特定の実施態様は、ラムスタチン又はタムスタチンの発現及び/又は活性を阻害するか又は低減させることができる1種以上の薬剤の投与を企図する。このような阻害剤は、ラムスタチン又はタムスタチンの発現に直接的又は間接的に影響を及ぼすことができ、そして、ラムスタチン又はタムスタチンの遺伝子又はmRNA(前駆体又は成熟メッセージ)あるいはポリペプチドを含むこれらの任意の産物のレベルにおいて作用することができる。阻害剤は、遺伝子又はこの機能性断片(例えば、プロモーター領域)の転写及び/又は翻訳をモジュレートするタンパク質性あるいは非タンパク質性分子であるか、あるいは、代替遺伝子又は遺伝子産物がラムスタチン又はタムスタチンの発現を直接的又は間接的にモジュレートする代替遺伝子又はこの機能性部分の転写及び/又は翻訳をモジュレートするタンパク質性あるいは非タンパク質性分子であり得る。阻害剤は、アンタゴニストであり得る。アンタゴニストは、ラムスタチン又はタムスタチンがこれらの正常な生物学的機能を実施するのを遮断し、阻害し、又はそうでなければ防止することができる任意の化合物であり得る。本発明の目的のため、用語「アンタゴニスト」は、ポリペプチド活性及び発現の阻害剤を指すために以下使用される。
【0057】
種々の好適なアンタゴニストを用いることができ、本発明の範囲は、任意の1種の特定の分子又は化合物の選択により限定されるものではない。好適なアンタゴニストは、遺伝子又はmRNAの転写又は翻訳を防止する抗体、例えば、モノクローナル抗体及びアンチセンス核酸を含む。発現のモジュレーションは、抗原、RNA、リボソーム、DNAザイム、アプタマー、抗体又はコサプレッションにおける使用に好適な分子を利用して達成することもできる。
【0058】
好適な抗体は、限定されるものではないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、単鎖、Fab断片及びFab発現ライブラリーを含む。抗体は、ラムスタチン又はタムスタチンポリペプチドの、あるいはこれらの断片又は類似体のアンタゴニストとして作用することができる。好ましくは、抗体は、ポリペプチドの別々の領域又は断片から調製される。好適な抗体を生成する方法は、当業者により容易に認識される。例えば、好適なモノクローナル抗体は、開示が参照により本明細書に組み込まれるAntibodies-A Laboratory Manual,Harlow and Lane,eds.,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.(1988)に記載のハイブリドーマ技術を使用して調製することができる。
【0059】
本発明に従って使用される好適なアンチセンス構築物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(siRNA)及び触媒アンチセンス核酸構築物を含む。好適なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、当業者に周知の方法により調製することができる。典型的には、オリゴヌクレオチドは、自動化合成装置により化学的に合成される。当業者は、アンチセンスオリゴヌクレオチドが標的配列に対して100%の配列相補性を示すことを必要としないことを容易に認識する。100%未満の相補性が存在する一方、オリゴヌクレオチドがこの標的についての特異性を保持し、この標的に対するアンタゴニスト活性を保持するように、1個以上の塩基変化をなすことができる。好適なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドがデオキシリボース又はリボース環に代えてモルホリン環を含み、ホスフェート基ではなくホスホロジアミデート基を介して結合しているモルホリノを含む。
【0060】
RNA干渉(RNAi)として公知の代替アンチセンス技術、例えば、Chuang et al.(2000)PNAS USA 97:4985参照)を、当分野において公知の方法(例えば、Hammond et al.(2000)Nature 404:293-296;Bernstein et al.(2001)Nature 409:363-366;Elbashir et al(2001)Nature411:494-498;WO99/49029及びWO01/70949、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)に従って使用して核酸分子の発現又は活性を阻害することができる。RNAiは、小分子干渉RNA分子(siRNA)による特異的RNAの破壊による選択的な転写後遺伝子サイレンシングの手段を指す。siRNAは、一本鎖が不活性化すべきメッセージと同一である二重鎖RNAの開裂により生成される。一本鎖が標的転写物の特異的領域と同一である二重鎖RNA分子を合成し、直接導入することができる。あるいは、細胞内に提供されるとdsRNAに変換される、対応するdsDNAを用いることができる。RNAiにおいて使用される好適な分子を合成する方法及び転写後遺伝子サイレンシングを達成する方法は、当業者に公知である。
【0061】
ラムスタチン又はタムスタチンの発現又は活性を阻害する更なる手段は、ラムスタチン又はタムスタチンのmRNA転写物を開裂させることができる触媒アンチセンス核酸構築物、例えば、リボザイムを導入することを含むことができる。リボザイムは、リボザイム触媒部位をフランキングする標的に対する配列相補性の2種の領域により特定の配列を標的とし、前記配列とアニールする。結合後、リボザイムは標的を部位特異的に開裂させる。ラムスタチン又はタムスタチンのmRNA配列を特異的に認識し、開裂させるリボザイムの設計及び試験は、当業者に周知の技術により達成することができる(例えば、Lieber and Strauss,(1995)Mol.Cell.Biol.15:540-551、この開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0062】
所望により、本発明に従って使用される薬剤は、ペプチド、ポリペプチド又は他のタンパク質性もしくは非タンパク質性分子を含む他の化合物に融合させることができる。例えば、薬剤を分子に融合させて気道組織への局在化を容易にすることができる。
【0063】
《医薬組成物》
薬剤は、1種以上の薬剤学的に許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤を含むことができる医薬組成物の形態で本発明に従って投与することができる。このような組成物は、任意の便利な、又は好適な経路で、例えば、非経口、経口、経鼻又は局所経路により投与することができる。適切な濃度の所望の薬剤が治療すべき体内の部位に直接送達されることが要求される状況において、投与は、全身性でなく局部性であり得る。局部投与は、極めて高い局所濃度の所望の薬剤を要求される部位に送達する可能性を提供し、従って、所望の治療又は予防効果を達成する一方、身体の他の器官がその化合物に曝露されることを回避し、これにより副作用を潜在的に減少させるのに好適である。
【0064】
任意の特定の個体のための本発明の組成物の具体的な用量レベルは、例えば、用いられる具体的な薬剤の活性、治療すべき個体の年齢、体重、全身健康状態及び食事、投与時間、排泄速度並びに任意の他の治療又は療法との組合せを含む種々の要因に依存することが理解される。単回又は複数回投与を、担当医により選択される用量レベル及びパターンを用いて実施することができる。広範囲の用量が適用可能であり得る。患者を考慮すると、例えば、1日当たり体重1kg当たり約0.1mgから約1mgの薬剤を投与することができる。投薬レジメンは、最適な治療応答を提供するように調整することができる。例えば、いくつかに分割した用量を、毎日、毎週、毎月又は他の好適な時間間隔で投与することができるか、あるいはこの用量は、状況の危急により示されるとおり比例的に低減させることができる。
【0065】
薬剤学的に許容可能な担体又は希釈剤の例は、脱塩水又は蒸留水;生理食塩水;植物由来油、例えば、ピーナッツ油、紅花油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、胡麻油、ラッカセイ油又はココナツ油;ポリシロキサン、例えば、メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサン及びメチルフェニルポリシロキサンを含むシリコーン油;揮発性シリコーン;鉱油、例えば、流動パラフィン、軟パラフィン又はスクアラン;セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はヒドロキシプロピルメチルセルロース;低級アルカノール、例えば、エタノール又はイソプロパノール;低級アラルカノール;低級ポリアルキレングリコール又は低級アルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール又はグリセリン;脂肪酸エステル、例えば、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル;ポリビニルピリドン;寒天;カラギーナン;トラガカントゴム又はアラビアガム及びワセリンである。典型的には、1種以上の担体は、組成物の10重量%から99.9重量%を形成する。
【0066】
注射による使用に好適な医薬形態は、無菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液及び無菌注射液もしくは分散液の即時調剤のための無菌粉末を含む。配合物は、製造及び貯蔵の条件下において安定でなければならず、微生物、例えば、細菌及び真菌の汚染作用に対して保存しなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、これらの好適な混合物及び植物油を含有する溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、コーティング、例えば、レシチンの使用、分散液の場合においては要求される粒径の維持及び界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどを使用することにより防止することができる。多くの場合、等張化剤、例えば、砂糖又は塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の吸収は、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中で使用することにより延長させることができる。
【0067】
無菌注射液は、上記列挙した種々の他の成分を有する適切な溶媒中に、要求量の活性化合物を取り込み、必要に応じて濾過滅菌を行うことにより調製される。一般に、分散液は、基本分散媒及び上記列挙した成分からの要求される他の成分を含有する無菌ビヒクル中に、種々の無菌活性成分を取り込むことにより調製される。無菌注射液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、事前に無菌濾過したこの溶液から活性成分及び任意の追加の所望の成分の粉末を生じさせる真空乾燥及び凍結乾燥技術である。
【0068】
活性成分が好適に保護される場合、活性成分を、例えば、不活性希釈剤又は吸収性食用担体とともに経口投与することができるか、硬又は軟シェルゼラチンカプセル中に封入することができるか、錠剤に圧縮することができるか、あるいは食料品に直接取り込むことができる。経口治療投与については、活性化合物を賦形剤とともに取り込み、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁液、シロップ剤、オブラート剤などの形態で使用することができる。このような組成物及び製剤は、少なくとも1重量%の活性化合物を含有すべきである。もちろん、組成物及び製剤の割合は変えることができ、単位重量の約5から約80%であり得ることが都合良い。このような治療に有用な組成物中の活性化合物の量は、好適な投与量が得られるような量である。本発明による好ましい組成物又は製剤は、経口単位剤形が約0.1μgから2000mgの活性化合物を含有するように調製される。
【0069】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などは、以下に列記される:結合剤、例えば、ガム、アラビアガム、トウモロコシデンプン又はゼラチン;賦形剤、例えば、リン酸二カルシウム;崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸など;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム;構成要素を含有することができ、また、以下の:甘味剤、例えば、スクロース、ラクトース又はサッカリン;香味剤、例えば、ペパーミント、ウィンターグリーン油又はチェリーフレーバリングを添加することができる。単位剤形がカプセル剤である場合、この単位剤形は、上記タイプの材料に加えて液体担体を含有することができる。種々の他の材料をコーティングとして提供し、又はそうでなければ投薬単位の物理的形態を改変するために提供することができる。例えば、錠剤、丸剤又はカプセル剤は、シェラック、砂糖又はこれらの両方によりコーティングすることができる。シロップ剤又はエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチルパラベン及びプロピルパラベン、着色料及びフレーバリング、例えば、チェリー又はオレンジフレーバーを含有することができる。もちろん、任意の単位剤形の調製において使用されるいかなる材料も、医薬的に純粋で、使用量において実質的に無毒性であるべきである。更に、(1種以上の)活性化合物は、徐放性製剤及び配合物中に取り込むことができる。
【0070】
本発明は、本明細書に記載の薬剤を、所望の治療又は予防アウトカムを容易にすることができる他の好適な薬剤と併用投与する組合せ療法を企図する。例えば、癌に関しては、継続中の抗癌療法、例えば、化学療法又は放射線療法を維持する一方、本発明の実施態様に従って薬剤を用いて腫瘍血管新生及び/又は腫瘍転移を阻害するか又は低減させることが求められる場合がある。「併用投与する」は、同一又は異なる経路を介する同一の配合物又は2種の異なる配合物における同時投与、あるいは同一又は異なる経路による連続投与を意味する。「連続」投与は、2種のタイプの分子の投与間に数秒、数分、数時間又は数日の時間差があることを意味する。これらの分子は、任意の順序で投与することができる。
【0071】
本発明はまた、本発明の方法に従って使用されるのに好適なキットを提供する。このようなキットは、例えば、ラムスタチン又はタムスタチン、あるいはこれらをコードする核酸分子を検出するための薬剤及び(1種以上の)薬剤による検出を容易にするために有用な試薬を含む生物試料をアッセイするための診断キットを含むことができる。例えば、生物試料を受容するための更なる手段を含めることもできる。(1種以上の)薬剤は、任意の好適な検出分子であり得る。本発明によるキットは、本発明の方法を実施するために要求される他の構成要素、例えば、緩衝液及び/又は希釈剤を含むこともできる。キットは、典型的には、種々の構成要素を収容するための容器及びキット構成要素を本発明の方法において使用するための取扱説明書を含む。
【0072】
当業者は、本明細書に記載の発明が、具体的に記載されたもの以外の種々の変形及び改変を受け得ることを認識する。本発明は、全てのこのような変形及び改変を含むと理解すべきである。本発明はまた、個々に、又は集合的に本明細書に言及され、又は示されるステップ、特徴、組成物及び化合物の全て並びに前記ステップ又は特徴の任意の2つ以上の任意の及び全ての組合せを含む。
【0073】
本発明を、以下の非限定的な実施例を参照して更に説明する。
【実施例】
【0074】
《実施例1 − リンパ管内皮細胞生存率及び増殖》
今日、コラーゲンタイプIVのα5鎖のNC1ドメイン(ラムスタチン)の(1つ以上の)機能の理解は、困難なままである。対照的に、コラーゲンタイプIVのα3鎖のNC1ドメイン(タムスタチン)についての役割は同定されている。タムスタチンは、例えば、抗血管新生性であること、増殖内皮細胞内でアポトーシスを誘導すること及びリモデリングを受けた気道組織内で下方調節されることが示されている(例えば、同時係属中の国際特許出願PCT/AU2007/000106参照、この開示は、参照することにより全体として本明細書中に組み込まれる)。
【0075】
ラムスタチンの機能を見出すため、ヒト初代リンパ管内皮細胞(HMVEC−LLy細胞)を種々の濃度のラムスタチンに曝露し、MTTアッセイを実施した。比較として、市販のタムスタチンを使用した。具体的には、細胞生存率を評価するため、1ウェル当たり4×10個のHMVEC−LLy細胞を100μlの完全EBM−2培地(バレットキットを有する、Lonza)中で播種し、37℃、5%のCOにおいて2時間インキュベートした。この期間後、ラムスタチン、タムスタチン及び各ビヒクル(1nMのEDTA、pH3.0)を完全EBM−2中で段階希釈物として別個のプレート中で調製し、添加した。細胞を、24時間成長させてから、MTT(PBS中1mg/mL)を添加した。6時間の更なるインキュベーション後、細胞を10%のSDS/0.01MのHClにより一晩溶解させ、翌日にプレートリーダー中で570nmにおいて計測した。リンパ細胞は、ラムスタチンのみにより24時間後に細胞生存率の低減を示し、このことは、このNCドメインがリンパ系に関するこの主要な機能に影響を与え得ることを示す(データ示さず)。
【0076】
この見かけの細胞特異的効果を更に説明するため、線維芽細胞、上皮細胞及びリンパ細胞(HMVEC−LLy)を、増加濃度のラムスタチンにより処理した。MTTアッセイを上記のとおり実施した。繊維芽細胞及び上皮細胞を完全DMEM中で72時間成長させてからMTTを添加した。図1に示すとおり、リンパ管内皮細胞のみが、72時間後に細胞生存率(MTT)の低下に応答した。ベースライン活性が最大濃度のラムスタチンにおいて計測され、このことは、観察された効果が細胞毒性経路ではなく細胞停止又は抗増殖効果に類似することを示唆する。抗増殖効果と細胞毒性効果とを差異化するため、細胞を、種々の濃度のラムスタチンにより処理して72時間後に計数した。10μg/mLのラムスタチンの濃度において、抗増殖効果が観察された(データ示さず)。生細胞(トリパンブルー排除)が、全ての処理群において見られ、このことは、細胞毒性効果がないことを示唆する。
【0077】
HMVEC−LLy細胞をラムスタチンにより処理し、xCellgenixシステム(Roche)を使用して細胞接着及び増殖をリアルタイムで計測した。このシステムは、細胞により媒介されるインピーダンスを表す細胞指数因子を計測する。ウェルボトム上の金電極がこのインピーダンスを計測し、ボトムへの細胞接着が多ければ、インピーダンス(細胞指数)が高くなる。この計測により、処理後の早期事象、例えば、剥離(例えば、細胞死を介するもの)又は増殖の阻害及び細胞数の低減を検出することが可能になる。
【0078】
Xcellgenix金コーティングマイクロタイタ−プレートに、1ウェル当たり5×10個の細胞(HMVEC−LLy)を播種し、100μLの完全EBM−2中で24時間インキュベートしてから処理した。新たな培地中で、ラムスタチン又はビヒクル(1nMのEDTA、pH3.0)の段階希釈物を調製した。細胞培養物の上澄みを除去し、100μLの新たな段階希釈ラムスタチンにより置き換えた。プレートをXcellgenixレコーダー中に固定し、インピーダンスのシグナルを5分間隔において6時間記録し、続いて60分毎に記録した。
【0079】
図2に示すとおり、10μg/mLのラムスタチンにより処理した細胞は、細胞数がビヒクル対照における細胞数に達するのに2倍の時間量を要した。更に、種々の濃度のラムスタチンにより処理して55分後に細胞接着の低減が観察された。
【0080】
《実施例2 − インビトロリンパ管形成及び細胞遊走》
ラムスタチン、タムスタチン及び本明細書においてCP17と称されるペプチド断片の存在下でのHMVEC−LLy細胞による管形成をアッセイした。
【0081】
管状構造物の形成を評価するため、48ウェルプレートを130μLのMatrigel(商標)(BD Bioscience)によりコーティングし、37℃において45分間にわたり凝固させた。完全EBM−2(500μL)中の2×10個のHMVEC−LLy細胞を1ウェル当たりに播種し、30分間接着させてからラムスタチン、タムスタチン、CP17又はビヒクルをウェルに添加した。写真は、Kodak Digital Cameraにより2時間毎に撮影した。管形成は24時間においてピークを示し、この時間において管状構造物を更に分析して長さ(ピクセル)及び高倍率視野(HPF)面積(px)当たりの管の数を測定した。HPFを均等なサイズの9個の領域に分割し、領域当たりの管を計数した。平均及びSEMを計算し、プロットした。
【0082】
図3に提供するデータは、新たなリンパ管形成(リンパ管新生)の阻害におけるラムスタチン、タムスタチン及びこれらの機能性ペプチド断片の役割を示唆する。
【0083】
VEGF−Dは、リンパ管新生及び腫瘍におけるリンパ行性転移を促進することが示されている(Stacker et al.Nature Med.7,186-191,2001)。従って、本発明者らは、HMVEC−LLy細胞の、VEGF−D勾配に対して遊走する能力を調査した。
【0084】
FluoroBlok BioCoat 24ウェルインサート(BD Bioscience)に、0.1%のBSA、1%の抗生物質及び25mMのHEPESを有する750μLのDMEM中4×10個のHMVEC−LLy細胞を播種し、1時間インキュベートした。ボトムウェルを、種々の濃度のラムスタチン、タムスタチン、CP17又はビヒクルの他に10ng/mLのVEGF−D(R&D Systems)を有するか又は有さない500μLの培地(上記のもの)により満たした。更に、トップウェルに、ボトムウェル濃度に適合するように阻害剤をローディングした。製造業者の取扱説明書に従って、細胞を24時間遊走させてからボトムの培地を除去した。次いで、遊走細胞を有するトランスウェルの下面を、HANKS緩衝液により2回洗浄し、4μg/mLのカルセイン(HANKS)溶液中に37℃において90分間配置した。シグナルは、ボトム読取式蛍光マイクロプレートリーダーにより485/515nm(励起/発光)において読み取った。
【0085】
図4Aに示すとおり、VEGFDの濃度増加は、リンパ管内皮細胞を濃度関連的に誘引する。VEGFD特異的遮断融合受容体(R3−FC)の添加により、予期されたとおり遊走が縮小した(図4B)。ラムスタチンは、細胞遊走の遮断において同じく強力であり(図4B)、タムスタチンは同様の傾向を示した。興味深いことに、ラムスタチンとタムスタチンの両方が細胞遊走を顕著に阻害することが示されたが、ペプチドCP17に曝露した細胞において同一の効果は観察されなかった。
【0086】
《実施例3 − ラムスタチンへのインテグリンの結合》
細胞外マトリックス中での周囲細胞又は分子への細胞の接着は、インテグリンと呼ばれる細胞表面受容体により媒介される。本発明者らは、インビトロでのラムスタチン及びペプチドCP17へのリンパ管内皮細胞の結合に関与するインテグリンの固有性を調査した。
【0087】
インテグリンα5抗体(MAB1956Z;MAB1953Z)、インテグリンβ1抗体(MAB2253Z)及びインテグリンβ3抗体(MAB1957Z)(全てMillipore, USA)を、96ウェル組織培養プレート(Nunc, USA)に、10μg/mLの濃度において、無菌コーティング緩衝液(50mMのNa2CO3、50mMのNaHCO3、pH9.6)中で4℃において一晩コーティングした。次いで、プレートを無菌1%BSA/PBSにより37℃において1時間ブロッキングし、EBM−2MV(Lonza, Basel, Switzerland)により2回洗浄した。MMVEC−LLy細胞を、培養フラスコから、非酵素的剥離溶液(Trevigen, Maryland, USA)により慎重に取り出し、EBM−2(Lonza, Basel, Switzerland)により2回洗浄した。容量を50000個の細胞/100μLの細胞濃度に調整し、組換えラムスタチン(10μg/ml)、CP17(5μM)又はビヒクル(1nMのEDTA、pH3.5)のみによる処理のためにアリコートに分割した。次いで、細胞を抗体コーティングプレートに移し、37℃において1時間インキュベートした。次いで、ウェルをHANKSにより2回洗浄して未結合細胞を除去し、4%のパラホルムアルデヒド(PBS中)により室温において15分間固定した。次いで、ウェルを、Olympus CK2顕微鏡に取り付けられたOlypmus CAMEDIA C−4000カメラにより写真撮影した。写真を25個のセグメントに分割し、5個の中央付近の四半分の細胞を計数し、平均化した。図5に示すとおり、インテグリンβ1(図5B)及びα5(図5C)に対するモノクローナル抗体は、ラムスタチン及びCP17への細胞結合を顕著に阻害した一方、インテグリンβ3に対するモノクローナル抗体(図5A)は、結合に対する効果を有さなかった。これらの結果は、インテグリンβ3ではなく、インテグリンβ1及びα5が、ラムスタチンへのリンパ管内皮細胞の結合に関与していることを実証する。同様のアプローチを使用して、本発明者らは、インテグリンα4がHMVEC−LLy細胞の表面上で発現しないことを観察した(データ示さず)。
【0088】
本発明者らは、ラムスタチン、タムスタチン及びペプチドCP17へのリンパ管内皮細胞(HMVEC−LLy細胞)のインビトロ結合を媒介する優勢なインテグリン(インテグリンα5及びβ1)が、ラムスタチン、タムスタチン及びペプチドCP17への臍静脈内皮細胞(HUVEC)の結合に関与するインテグリンと異なることを見出した(データ示さず)。これらのデータは、他の内皮細胞と比較してリンパ系の内皮細胞内でのラムスタチン及びタムスタチンについての根本的に異なる役割及び活性が媒介される機序を示唆する。
【0089】
《実施例4 − リンパ管平滑筋肉腫症(LAM)及びラムスタチン》
リンパ管平滑筋肉腫症(LAM)は、平滑筋細胞の異常増殖に伴うと考えられる肺の疾患である。このLAMは、肺内での特徴的なLAM小結節の形成の基礎をなす。これらの肺小結節は、肺の嚢胞性破壊、再発性肺気胸及び肺機能の着実な減少に関与する。
【0090】
本発明者らは、細胞がLAM小結節に由来するLAM患者から肺細胞を単離した。これらの細胞を、小結節内でのこれらの局在に従って、小結節の中間層、中央細胞及び外側小結節細胞と命名した。次いで、これらの細胞をラムスタチン又はタムスタチンにより処理し、細胞生存率を72時間後に計測した。MTT生存率アッセイを実施例1に上記のとおり実施した。図6に示すとおり、ラムスタチンは、高濃度(例えば、10μg/mL)と低濃度(1.25〜2.5μg/mL)との両方において全ての小結節細胞タイプの細胞生存率の低減に有効であった。タムスタチンも、高濃度において細胞生存率の低減に有効であった。
【0091】
次いで、本発明者らは、LAM小結節細胞内での管形成を分析し、外側小結節細胞のみが擬管形成に応答することを見出した。管形成についてのアッセイは、実施例2に上記のとおり実施した。播種してから2、3、4、5及び24時間後に写真を撮影した。播種後にラムスタチンを直接添加して先の管形成を阻害した。管形成は5時間においてピークを示し、24時間後には管状構造物は観察されなかった(処理と未処理の両方)(データ示さず)。各写真についての管の長さ及び平方ピクセル当たりの管状構造物の数を、図7に示す通り求めた。5時間において、管の長さと管の数の両方により計測された管形成は、ラムスタチンにより顕著に阻害された。
【0092】
《実施例5 − 腫瘍により誘発されたリンパ管新生のインビボ阻害》
緑色蛍光タンパク質(GFP)タグ化肺腺癌細胞(LNM35 AAV−GFP)をNOD/SCIDマウスの耳の皮膚の2層間に注射した、マウス耳腫瘍栓モデルを利用した1×10個の腫瘍細胞を、ビヒクル(1nMのEDTA、pH3.0)又は10μg/mLと100μg/mLのいずれかのラムスタチンが濃縮された50μLの成長因子不含Matrigel(商標)培地中に包埋した。マウスを3つのグループに分割した。
【0093】
グループ1(n=9):各マウスの一方の耳に腫瘍細胞+10μg/mLのラムスタチンを注射し;他方の耳に腫瘍細胞+ビヒクル対照を注射した。
グループ2(n=9):各マウスの一方の耳に腫瘍細胞+100μg/mLのラムスタチンを注射し;他方の耳に腫瘍細胞+ビヒクル対照を注射した。
グループ3(n=3):各耳にMatrigel(商標)のみを注射した。
【0094】
注射は、少なくとも25μLが注射されるようなシングルショットであった。注射して12日後、麻酔及び頸椎脱臼により屠殺した。耳をホールマウント染色のために切除した。各耳からの皮膚のフラップを慎重に分離し、固定し、リンパ管内皮細胞特異的マーカーLyVe−1(抗ウサギAlexafluor 647を使用して検出されるウサギポリクローナル抗LyVe−1抗体)、又は、血管内皮細胞特異的マーカーPECAM(抗マウスAlexafluor 594により検出されるCD31ラット抗マウス抗体クローンMEC13.3(Pharmingen))のいずれかについて染色した。腫瘍細胞をGFP発現の検出により可視化した。共焦点顕微鏡を使用して耳の代表的な領域の画像を得、LyVe−1又はPECAM染色を定量した。
【0095】
図8Aに示すとおり、LyVe−1染色の平均強度は、腫瘍細胞+ラムスタチン注射の場合(10μg/mLと100μg/mLのラムスタチンの両方)に顕著に低減した(ビヒクルのみと比較して約60%だけ)。対照的に、10μg/mL又は100μg/mLのラムスタチンの存在下で腫瘍細胞の付近においてPECAM染色の明らかな低減は観察されなかった(図8B)。これらの結果は、インビボにおいて腫瘍付近におけるラムスタチンのリンパ管内皮細胞特異的阻害効果を示す。
【0096】
これらのデータは、腫瘍周囲のリンパ管形成及び血液脈管の外観検査により支持される(図9)。Matrigel(商標)培地のみを受容したマウスの場合、血液及びリンパ脈管が平滑な末端を有し、互いに伸長又は接続する先端を有さずに正常に発達することが観察された(図9A)。腫瘍により誘発された血液脈管発達は、図9Bに示す。結びつき、相互接続された、いくつかの可視的な先端を有するリンパ管の細いネットワークが観察された。10μg/mLのラムスタチンを注射した動物において、リンパ管の数及びリンパ管の拡張の低減が観察された(図9C)。100μg/mLのラムスタチンを注射した動物において、10μg/mLのラムスタチンを受容した動物と比較してリンパ管ネットワーク密度の更なる低減が観察され、試験体につき強い腫瘍により誘発されたリンパ脈管を示す領域はほとんどなかった(図9D)。観察されたリンパ脈管発達の明確な変化とは対照的に、ラムスタチンは、腫瘍周囲の血液脈管の発達に対する認識可能な効果を有さなかった(図9B〜9D)。
【0097】
LyVe−1ホールマウント染色マウス耳切片を使用して、本発明者らは、リンパ管形成の形態を更に調査した。具体的には、共焦点画像をImage Jソフトウエア(www.sbweb.nih.gov/ij/)にロードし、5×5グリッドを重ね、管をブランチ形成及びループ形成について試験した。リンパネットワークの機能性はこの成熟性に基づき、一般に、腫瘍がかなり未熟なネットワーク形成を誘導することが認められる。管の再接続(ループとして計測)及びブランチ形成の増加(ブランチとして計測)は、例えば、腫瘍により誘発された未熟な管の徴候である(例えば、Shayan et al.Growth Factors 25,417-425,2007参照)。
【0098】
ブランチは、再結合することなく分離する2本の明確に識別可能な管と定義した。ループは、同一焦点面における小さい円形の管構造物と定義した。ブランチ又はループを、画像ごとに別個に計数し、各処理群について平均値を計算した。ラムスタチン(図10A及び10B)とCP17(図10C及び10D)の両方により、ベースラインレベルに対してブランチ及びループの数が顕著に低減した。これらの結果は、ラムスタチン及びこのペプチドCP17が、過剰なリンパ管新生に関して腫瘍の効果を逆行させることができることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象においてリンパ管内皮細胞の増殖及び/又は遊走を阻害する方法であって、
対象に又は前記対象に由来するリンパ管内皮細胞に、コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチド又は断片の有効量、これらの誘導体又は変異体の有効量、これらをコードするポリヌクレオチドの有効量、あるいは、NC1ドメインポリペプチドの発現又は産生を増加させることができる薬剤の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチドが、コラーゲンタイプIVのα5鎖のNC1ドメイン(ラムスタチン)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ラムスタチンが、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ラムスタチンを、配列番号2に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによりコードさせる、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチドが、コラーゲンタイプIVのα3鎖のNC1ドメイン(タムスタチン)である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
タムスタチンが、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
タムスタチンを、配列番号4に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによりコードさせる、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
断片が、アミノ酸配列VCNFASRNDYSYWLSTP(配列番号5)又はこの変異体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
リンパ管新生を阻害する方法であって、対象あるいは前記対象に由来する細胞又はリンパ組織に、コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチド又は断片、これらの誘導体又は変異体、これらをコードするポリヌクレオチド、あるいは、NC1ドメインポリペプチドの発現又は産生を増加させることができる薬剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項10】
対象が、過剰な又はそうでなければ異常に調節されたリンパ管新生に伴う疾患又は病態を罹患しているか又は罹患しやすい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
リンパ管新生が、腫瘍により誘発されたリンパ管新生である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
癌転移を、投与ステップ後に低減させる、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
異常なリンパ管内皮細胞活性に伴う疾患又は病態を治療又は予防する方法であって、対象に又は前記対象に由来するリンパ管内皮細胞に、コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチド又は断片の有効量、これらの誘導体又は変異体の有効量、これらをコードするポリヌクレオチドの有効量、あるいは、NC1ドメインポリペプチドの発現又は産生を増加させることができる薬剤の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項14】
疾患又は病態が、異常な、過剰な、又はそうでなければ異常に調節されたリンパ管新生に伴う、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
疾患又は病態が、例えば、腫瘍により誘発されたリンパ管新生、癌転移、線維症、リンパ管平滑筋肉腫症(LAM)、関節リウマチ、喘息、移植拒絶、乾癬、創傷修復の悪化、リンパ管腫又はカポジ肉腫から選択される、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
線維症が肺線維症である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
リンパ管新生の阻害、リンパ管内皮細胞増殖及び/又は遊走の阻害のための、あるいは、異常なリンパ管内皮細胞活性に伴う疾患又は病態の治療又は予防のための、コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチド又は断片、これらの誘導体又は変異体、これらをコードするポリヌクレオチド、あるいはNC1ドメインポリペプチドの発現又は産生を増加させることができる薬剤の使用。
【請求項18】
リンパ管新生を阻害、リンパ管内皮細胞増殖及び/又は遊走を阻害するか、あるいは、異常なリンパ管内皮細胞活性に伴う疾患又は病態を治療又は予防する医薬の製造のための、コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチド又は断片、これらの誘導体又は変異体、これらをコードするポリヌクレオチド、あるいはNC1ドメインポリペプチドの発現又は産生を増加させることができる薬剤の使用。
【請求項19】
リンパ管新生を促進する方法であって、対象又は前記対象に由来する細胞又はリンパ組織に、コラーゲンタイプIV由来性NC1ドメインポリペプチド又は断片の阻害剤、これらの誘導体又は変異体の阻害剤、これらをコードするポリヌクレオチドの阻害剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項20】
対象が、リンパ管新生の悪化を特徴とする病態、又はそうでなければリンパ管新生の悪化に伴う病態を罹患する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
病態が浮腫である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
浮腫が、リンパ浮腫、手術により誘発された浮腫又は腫瘍により誘発された浮腫である、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−529438(P2012−529438A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514292(P2012−514292)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000710
【国際公開番号】WO2010/141985
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511300592)シーアールシー フォー アズマ アンド エアウェイズ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】CRC for Asthma and Airways Ltd
【Fターム(参考)】