説明

治療用途

【課題】本明細書は、治療が必要な対象にEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬を投与することによって、多発性硬化症などの神経変性疾患を治療する方法に関する。
【解決手段】拮抗薬は可溶性EphA4若しくはEphA4結合性エフリン又はその機能性変異体、例えばEphA4-Fc若しくはエフリンA5-Fcであってよい。拮抗薬はEphA4若しくはEphA4リガンド又はEphA4若しくはEphA4リガンドをコードしている核酸に結合してその活性を下方制御する核酸、ポリペプチド、ペプチド又は有機分子であってよい。併用療法をも開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、治療的神経保護及び神経再生分子に関する。特に、本明細書は、多発性硬化症(MS)及びMSの変形などの神経変性疾患の臨床的進行を改善する治療分子に関する。
【背景技術】
【0002】
主題明細書中の参考文献の書誌詳細は本明細書の最後にも列挙する。
神経系、特に中枢神経系は、疾患又は損傷後に再生する能力に限界を示し、多くの場合破滅的結果をもたらす。神経系は研究が集中している分野であり、今や脊髄傷害の哺乳動物モデルで急性脊髄傷害の少なくともいくつかの形態をある程度修復できることで当技術分野ではいくらか楽観しているようである。
神経再生プロセスでは多数の異なった分子、細胞及び機構が関与している。これらは、Horner及びGage, Nature. 407(6807): 963-970, 2000によって精査された。ここで特に関連するのは、Eph及びエフリン(Ephrin)受容体-リガンドチームである。とりわけヒト、マウス及びニワトリでは、4つの系統群のEphとエフリンが同定されている。EphA受容体(そのメンバーは現在10である)は、GPI連結膜分子であるグループAのエフリンリガンド(6メンバー)に結合し、EphB受容体(6メンバー)は、膜貫通分子であるエフリンBリガンド(3メンバー)に結合する。結合は乱交雑であり、ほとんどのEphA受容体がほとんどのエフリンAリガンドに結合し、ほとんどのEphB受容体がほとんどのエフリンBリガンドに結合する。2つの例外は、エフリンB2及びエフリンB3にも結合するEphA4と、エフリンA5に結合するEphB2である。
【0003】
膜貫通Eph受容体の細胞内ドメインは、膜近傍ドメインで膜に連結しているキナーゼドメインを含む。キナーゼドメインのカルボキシ側は、SAMドメインとカルボキシ末端PDZ結合ドメインを含む。細胞外タンパク質は2つのフィブロネクチンIII型リピート、システインリッチ領域及びアミノ末端エフリン結合ドメインを含む。エフリンBリガンドは細胞外Eph結合ドメイン、短いカルボキシ尾部を含む細胞内タンパク質及びカルボキシ末端PDZ結合ドメインを有する。EphB-エフリンB複合体が結晶化されており、その構造は、相互作用のモジュレーターの計算構造を基礎とした同定用に利用可能である。受容体とリガンドとの間の高親和性結合部位は15個のアミノ酸長ループを含み、Eph結合ドメイン中のG-HループがEph受容体の間隙中に挿入される。低親和性の相互作用部位は、とりわけ2つのEph-エフリン複合体間の結合を助長するようである。受容体の相互作用とクラスター化が、細胞質ドメインにおける残基のリン酸化によって媒介されるシグナル経路の活性化をもたらし、受容体のキナーゼ活性を促進する。二方向性のシグナル伝達が起こり、細胞に結合したEph受容体への細胞ベースのエフリン結合が、エフリン又はEph受容体のいずれかでのシグナル伝達を誘導しうる。Eph/エフリン相互作用の拮抗薬は、一般的にメンバー間の高親和性又は低親和性の相互作用、ひいては受容体又はリガンドの活性化を遮断するように設計される。
【0004】
Ephは最初は胚発生と関連して研究され、Ephがいくつかの神経系にとって重要な軸索ガイド分子であることが分かった。これらの系では、特定細胞に結合したEph/エフリン分子の相補的発現勾配は、それら分子の適切な標的との関連で成長する軸索を効果的に誘引又は拒絶する。現在、可溶形の作用などのEph/エフリン相互作用は、神経系、細胞系及び免疫系などのいくつかの異なる系の発生、維持及び修復に種々の様式で関与すると考えられている(Wilkinson, Nat Rev Neurosci. 2(3): 155-164, 2001, Pasquale, Nat Rev Mol Cell Biol. 6(6): 462-75, 2005 and Horner and Gage, 2000 (上記)参照)。多くの研究が、急性脊髄傷害又は脊髄の半側切断後の神経組織及び反応性アストロサイトにおけるEph及びエフリンの下方制御を示した。成人のこれら受容体の再発現は、急性傷害後の神経の再生を調節するのに重要であると仮定された(Goldshmit et al., 2004 (上記), Goldshmit et al., Brain Res Brain Res Rev 52: 327-45, 2006)。可溶性リガンドを用いてアストロサイト上のEphA4を遮断すると、in vitroで示されるように、軸索の再成長に対するEphA4のいずれの直接的抑制作用をも減らす(Goldshmit et al., 2004 (上記))。
Eph及びエフリンのポリペプチドを用いて、Eph受容体の活性化をそれらの化学量論に応じて促進又は遮断することができる。Eph受容体の活性化にはエフリン-Fcリガンドのクラスター化又はエフリンリガンドの膜付着が必要であり、クラスター化しない場合、それらはEph受容体の活性化及び下流細胞応答を遮断する(Goldshmit et al., 2004 (上記); Davis et al., Science 266: 816-9, 1994; Ohta et al.,. Mech Dev 64: 127-35, 1997; Stein et al., Genes Dev 12: 667-78, 1998)。
いくつかの研究は、可溶性Eph-Fcリガンドがin vivoで、特に腫瘍成長の抑制という脈絡の中で有効であることを示した(Brantley et al., Oncogene 21: 7011-26, 2002; Cheng et al., Neoplasia 5: 445-56, 2003, Dobrzanski et al., Cancer Res 64: 910-9, 2004)。
【0005】
神経系におけるEph受容体の役割について行われた相当量の研究にもかかわらず、CNS疾患、特にMS及びそのモデル条件、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)においてEph/エフリン発現の何らかの調節又は役割があるか分からない。
MSはCNSの炎症性脱髄性神経変性疾患である。MSは、若年成人における神経性能力障害の最も一般的な原因であり、長年にわたる永久的な重大な神経性能力障害につながる。
何年間もMSは主に、CNS内の局所性病変における軸索の脱髄(相対的な軸索防御を伴う)によって特徴づけられる炎症性脱髄性疾患とみなされた。軸索の病理学も注目されたが(Barnes et al., Brain 114: 1271-80, 1991)、MS病変に相当な軸索の損傷及び損失があることが最近になってやっと明らかになった(Trapp et al., N Engl J Med 338: 278-85, 1998; Trapp et al., Curr Opin Neurol 12: 295-302, 1999)。現在は広く、軸索の損失が、MSの続発性又は慢性進行段階で観察される不可逆性の永久的能力障害の原因であると考えられている(Bjartmar et al., J Neurol Sci 206: 165-71, 2003)。組織学的解析(Trapp et al., 1998 (上記); Ferguson et al., Brain 120: 393-9, 1997; Kornek et al., Am J Pathol 157: 267-76, 2000)及びヒトMS患者の脳の画像診断(De Stefano et al., Brain 121(Pt 8): 1469-77, 1998; Gonen et al., Neurology 54: 15-9, 2000)で示されるように、軸索の損失は疾患の初期の再発-寛解段階で起こり、かつ病変内の炎症の程度と関係があることも明白である。さらに、軸索損失はミエリン損失の非存在下で、正常に見える白質内で(Bjartmar et al., Neurology 57:1248-52, 2001)、及び灰白質の皮質病変内で(Kidd et al., Brain 122 17-26, 1999; Peterson et al., Ann Neurol 50: 389-400, 2001)起こりうる。これら及び関連する知見は、軸索損失の度合を臨床スコアと相関させたEAEモデルの解析と共に(Wujek et al., J Neuropathol Exp Neurol 61: 23-32, 2002)、MSの慢性的進行段階の開始が軸索の完全性損失の許容限界と関係があるという仮設を導いた(Bjartmar et al, 2003 (上記))。MSの再発-寛解段階では、脱髄病変の再ミエリン化が起こるが、損傷しているいずれの軸索もが再生できることを示唆する証拠はほとんどない。この点でEAEのMOGモデルは相当な軸索損失(多くの領域で>40%)を生じさせるので有用なツールである(Lo et al., J Neurophysiol 90: 3566-71, 2003; Wu et al., Neuroimage 37: 1138-47, 2007)。
【0006】
MS及びEAEにおいて、病理学的特徴の1つはアストロサイトの活性化によって形成される、脱髄プラーク内のグリア性瘢痕の発生である(Raine et al., Lab Invest 31: 369-80, 1974; Smith et al., Brain Res 264: 241-53, 1983)。CNS損傷後、アストロサイトが活性化されて肥大性かつ増殖性になって、グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)の発現を増やす。アストロサイトは、さまざまな可溶性因子及び細胞外基質分子をも生じさせる。EphA4は、EphA7、A6、A3及びA1と共にヒトMS組織内のアストロサイト上でも発現される。しかし、この発現が単に傷害の結果なのか又は再生の証拠なのか或いはその両者なのか分からない(Sobel, Brain Pathol. 15(1): 35-45, 2005)。
従って、アストロサイトのグリオーシスとMS及びEAEとの関連が長い間受け入れられていた。しかし、このグリオーシスがMS及びAEAの臨床的進行及び病理で何らかの役割を果たすかどうか不明である。実際には、いくつかの研究がグリオーシスにはこれらの条件で有益な側面があることを示唆している。例えば、GFAPヌルマウスのEAEは、より重篤な臨床結果をもたらした(Liedtke et al., Am J Pathol 152: 251-9, 1998)。
従って、神経変性疾患を特徴づける分子機構及び細胞事象についての調査の結果、上方制御されるか又は下方制御されて、神経損傷を引き起こすか又は修復するときに関与しうる複雑な分子/細胞の経路の理解を高めた。しかし、これらの調査は、今までのところ、治療についての今後の方向に関する結論の余地がほとんどなかった。神経変性疾患の新規治療が要望されている。神経保護組成物が種々多様な適用のために求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
歴史的に、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)のマウスモデルは、多発性硬化症(MS)の組織病理学及び神経病理学の特異的特徴を再現し、MSにおける推定上の調節薬の治療効果の有用な指標を与えることが分かっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、驚くべきことに実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の臨床経過がEphA4ノックアウトマウスではそれほどひどくないこと、及びEAEのコントロールに比べてEAEのEphA4ノックアウトマウスでは軸索損傷が減少することが判明した。
図1及び2に示すように、EphA4欠失マウスは、コントロールEAEマウスに比べて有意に少ない四肢脱力及び軸索損傷を示した。従って、EphA4又はEphA4結合リガンド(以後、「EphA4リガンド」)を拮抗することによって多発性硬化症(MS)及び多発性硬化症の変形等の神経変性疾患(NDD)の臨床経過を改善し、そうでなくても減弱することを提案する。
特に断らない限り、この明細書の各実施形態は変更すべきところは変更して、あらゆる他の実施形態に適用するものとする。
一実施形態では、本発明は、対象のMS等の神経変性疾患(NDD)の治療方法であって、前記対象にEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬を投与する工程を含む方法を企図する。特定の実施形態では、前記拮抗薬が前記疾患の臨床的進行を軽減する。
関連実施形態では、本発明は、対象のMS等の神経変性疾患(NDD)の治療で使うEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬を企図する。特定の実施形態では、前記拮抗薬が前記疾患の臨床的進行を軽減する。
同様の実施形態では、本発明は、対象のMS等のNDDの治療用薬物の製造におけるEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬の使用を広く提供する。特定の実施形態では、前記拮抗薬が前記疾患の臨床的進行を軽減する。「製造」は、薬物の選択及び設計を包含する。
別の同様の実施形態では、本発明は、対象のMS等のNDDの治療で使うEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬を含む医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、前記拮抗薬が前記疾患の臨床的進行を軽減する。例えば、前記拮抗薬は、前記対象の神経組織の機能若しくは完全性を保護するか又は前記対象で起こる神経損傷の速度、発生又は量を減少させうる。
【0009】
さらに別の実施形態では、本発明は、対象のMS等のNDDの治療方法であって、以下の工程:
i) 前記対象由来の生体サンプルを軸索損傷についてスクリーニングする工程;及び
ii) 前記対象の神経組織の機能若しくは完全性を保護するか又は前記対象で起こる神経損傷の速度、発生若しくは量を減少させるのに十分な条件下でEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬を投与する工程
を含む方法を企図する。
上記実施形態において、前記対象はNDDの危険があってよく、又はNDDの臨床徴候を示していてよい。
一部の実施形態では、NDDはMS又はMSの変形である。この明細書で「MS」との言及はMS及びMSの変形を包含する。
一部の実施形態では、前記疾患の臨床的進行を軽減するのに十分な時間及び条件下で前記拮抗薬を投与する。一部の実施形態では、前記対象がより少ない神経損傷又はより少ない進行性神経機能障害を示し、或いは示す可能性がある。一部の実施形態では、前記神経機能障害が四肢脱力である。一部の実施形態では、前記進行性神経機能障害を軽減するために有効な量の拮抗薬を供給する。
一部の実施形態では、前記拮抗薬は、対象の神経組織の機能若しくは完全性を保護するか又は対象で起こる神経損傷の速度、発生若しくは量を減少させる。
用語「損傷」には、細胞の完全性の損失又は機能の損失を示す神経(軸索)の変化が含まれる。この用語は、細胞の死、変性及びフラグメント化を包含する。一部の実施形態では、この用語は、神経の伝導性若しくは反応性の低下又は脱髄に拡張される。広く認められ、また本明細書で述べるいずれの手順によっても神経損傷を評価することができる。
一部の実施形態では、前記拮抗薬は、MS等のNDDの慢性的進行段階中に、対象の神経組織の機能若しくは完全性を保護するか又は対象で起こる軸索損傷の速度、発生若しくは量を減少させる。一部の実施形態では、投与は臨床症状の発生時若しくは発生前又は臨床症状の再発の発生前若しくは発生時である。
一部の実施形態では、前記拮抗薬を神経組織又は神経組織に隣接して投与する。一部の実施形態では、脳、脊髄又は視神経に局所投与する。
一部の実施形態では、前記対象がヒト等の哺乳動物である。
一部の実施形態では、前記拮抗薬を投与して、1日毎又は1日おき又は1週間毎に約1mg/kg〜100mg/kgを全身に供給するか或いは局所送達では、より少ない量を供給する。
【0010】
EphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬は技術上周知であり、「解説」及び「実施例」でさらに詳述する。
一部の実施形態では、前記拮抗薬がEphA4に結合してそのレベル又は活性を下方制御する。典型的実施形態では、前記拮抗薬は、EphA4に結合してそのレベル又は活性を下方制御するエフリンであり、その可溶形又は機能性変異体若しくは類似体も含まれる。好適なエフリンはエフリンAエフリン、例えばエフリンA1、A2、A3、A4、A5、A6、又はエフリンBエフリン、例えばエフリンB2若しくはB3である。一部の実施形態では、エフリンはA4、A5、B2又はB3である。エフリンは単量体、二量体、四量体又は多量体であってよい。一部の実施形態では、可溶性エフリンはFc若しくはHis融合タンパク質である。特にFc融合を企図する。
他の実施形態では、前記拮抗薬がEphA4結合性エフリン分子に結合してそのレベル又は活性を抑制する。典型的実施形態では、前記拮抗薬がEphA4受容体、例えば可溶性EphA4受容体ポリペプチド又はその機能性変異体若しくは類似体である。一部の実施形態では、前記EphA4が単量体、二量体、四量体又は多量体である。一部の実施形態では、前記EphA4受容体がEphA4-Fc又はHis融合タンパク質である。特にFc融合を企図する。
他の実施形態では、前記拮抗薬がアンチセンス又は抑制性RNA分子である。
一部の実施形態では、前記拮抗薬がタンパク質、ポリペプチド又はペプチド、例えば、構造固定ペプチド(stapled peptide)若しくはペプチド模倣薬であるが、これに限定されない。他の実施形態では、前記拮抗薬が(典型的に小型又は中型)有機分子、例えば、医薬的に許容しうる小型有機分子のライブラリーに由来する分子であるが、これに限定されない。
一部の実施形態では、前記拮抗薬が、EphA4又はEphA4リガンドに結合する抗体又は抗体の抗原結合性フラグメント又はアプタマーである。
【0011】
本発明は、EphA4シグナル伝達を標的にしてMS又は他のNDDの臨床徴候、例えば神経損傷を軽減し、かつ該疾患の免疫若しくは炎症成分の改善で使う免疫調節薬若しくは免疫抑制薬若しくは抗炎症薬又は手順をも与えるような併用療法をさらに提供する。
従って、本発明は、EphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬と共に少なくとも1種の他の治療薬又は手順を投与する工程を含む、MS等のNDDの治療方法を企図する。同様の実施形態では、本発明は、EphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬と共に、MS等のNDDの治療で使う少なくとも1種の他の治療薬又は手順を提供する。別の関連実施形態では、本発明は、少なくとも1種の他の治療薬又は手順と共に投与する、MS等のNDDの治療で使うEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬を提供する。同様に、本発明は、EphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬と共に投与する、MS等のNDDの治療で使う少なくとも1種の治療薬又は手順を提供する。一部の実施形態では、前記拮抗薬は前記疾患の臨床的進行を軽減する。「共に」との言及は、逐次投与又は同時投与を包含する。
別の態様では、本発明は、対象の神経組織の機能若しくは完全性を保護するため又は対象の神経損傷の速度、発生若しくは量を減少させるための組成物の製造におけるEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬の使用を提供する。一部の実施形態では、前記対象は神経損傷と関連する状態を有するか又は有する危険がある。
同様の実施形態では、対象の神経組織の機能若しくは完全性を保護するため又は対象の神経損傷の速度、発生若しくは量を減少させるための方法であって、前記対象にEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬を投与する工程を含む方法を提供する。一部の実施形態では、前記対象は神経損傷と関連する状態を有するか又は有する危険がある。
同様に、対象の神経組織の機能若しくは完全性を保護するため又は対象の神経損傷の速度、発生若しくは量を減少させるために使うEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬を提供する。一部の実施形態では、前記対象は神経損傷と関連する状態を有するか又は有する危険がある。
同様に、対象の神経組織の機能若しくは完全性を保護するため又は対象の神経損傷の速度、発生若しくは量を減少させるために使うEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬を含む医薬組成物を企図する。一部の実施形態では、前記対象は神経損傷と関連する状態を有するか又は有する危険がある。
【0012】
医薬的に許容しうる担体及び/又は希釈剤を用いて医薬組成物を調製する。
EphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬をMS等のNDDの治療で使うための使用説明書と共に含む医療キットをも提供する。
本発明は、対象のMS等のNDDを治療するための治療プロトコルであって、順番に、前記対象由来の生体サンプルを軸索損傷についてスクリーニングする工程、神経損傷を軽減するのに十分であると提案されている時間及び条件下でEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬を投与する工程を含む治療プロトコルをさらに提供する。一部の実施形態では、治療後に前記対象を軸索損傷について再スクリーニングする。一部の実施形態では、これとは別に又はこれに加えて、前記対象由来のサンプルを試験して、1種以上の条件、例えば自己免疫性、炎症又は脱髄などの状態を決定する。一部の実施形態では、前記拮抗薬を神経損傷の前に投与して神経損傷を予防する。
別の実施形態では、本発明はいずれの1種以上のEph又はエフリン調節薬をもMS等のNDDの臨床的進行を軽減する能力についてスクリーニングする工程を備える。一部の実施形態では、「実施例」で実証するように、対象の神経組織の機能若しくは完全性を保護するか又は対象の軸索損傷の速度、発生若しくは量を減少させる能力について薬剤を試験する。
他の実施形態では、MS等のNDDの治療用薬剤を同定するためのスクリーンであって、EphA4又はEphA4リガンドの機能活性を有するポリペプチドのレベル又は活性を調節する能力についてのスクリーニング薬を含むスクリーンを提供する。
上記概要は、いかなる場合にも本発明の全ての実施形態の排他的制限ではなく、かつそのように考えるべきでない。
いくつかの図面は色の表現又は構成要素を含む。図面のカラーバージョンは、要請に応じて特許権者から又は妥当な特許庁から入手可能である。特許庁から得る場合には手数料が課されることがある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】EphA4ノックアウトマウスがEAEのひどくない臨床経過を示すことを示すグラフ表示であり、疾患の発症と重症度は該疾患の非常に初期の段階では遺伝子型間で同様だったが、その後の経過は有意に異なり、EphA4ノックアウトマウスが到達した最大臨床等級はコントロールより低かったことを示す(それぞれn=10)。
【図2】EAEのEphA4ノックアウトマウスが、EAEの軸索損傷がEAEの野生型マウスより低いことを示唆する低レベルのホスホ-ニュロフィラメント-Hの傾向を示すことを示すELISAデータのグラフ表示である。
【図3a】等級3のMOG誘発EAEのC57BL/6マウス由来の骨髄をGFAPとEphA4発現に備えて免疫染色したEAE病変部位周辺のEphA4の発現を示す写真表示であり、一次EphA4抗体の非存在下で明白なバックグラウンドが存在しないことを示す。
【図3b】等級3のMOG誘発EAEのC57BL/6マウス由来の骨髄をGFAPとEphA4発現に備えて免疫染色したEAE病変部位周辺のEphA4の発現を示す写真表示であり(2つのアストロサイトを矢印で表し、病変をアスタリスクで示す)、これらのマウス由来のGFAP発現アストロサイトも現われたことを示す。
【図3c】図3bと同様の写真表示であり、EphA4発現を観察できることを示す。
【図3d】図3bと3cを併合し、かつ核を示すためにDAPIをプラスした写真表示であり、矢じりの部位の赤色及び緑色の染色によって示されるように、EAEの全てのGFAP陽性アストロサイト上でEphA4が発現することを示す。
【図4】IP注射後に傷害部位でエフリンA5-FcがCNSに入ることを示す写真表示である(マウスを4日間(A)PBS又は(B)エフリンA5-Fcで処理した)。
【図5】単量体エフリンA5-Fcがアストロサイト上のEphA4のリン酸化を遮断することを示す写真表示であり(基礎条件下で又はIFNγと共にアストロサイトを単量体(遮断)又は多量体(活性化)エフリンA5-Fcでin vitro処理した)、単量体エフリンA5-Fcは両条件下でEphA4のリン酸化を抑制したことを示す。
【図6】EphA4並びにEphA4結合性エフリンFc及びHis融合タンパク質のアミノ酸配列の図式表示である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔表の簡単な発明〕
表1は、本明細書で提供するSEQ ID NOの解説を提供する。
表2は、アミノ酸の細分類を提供する。
表3は、典型的なアミノ酸置換を提供する。
表4は、本発明で企図した非天然アミノ酸のリストを提供する。
表5は、略語のリストを提供する。
【0015】
〔実施形態の詳細な論考〕
(概括)
本明細書で使用する略語については表5で定義する。
特に断らない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、この発明が属する技術分野の当業者が一般的に解釈する意味と同一の意味を有する。本明細書で述べる物質及び方法と同様又は等価ないずれの物質及び方法を用いても本発明を実施又は試験することができる。開業医は当技術分野の定義及び用語並びに当業者に既知の他の方法について特にSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd ed.). Cold Spring Harbour Laboratory, Cold Spring Harbour, NY, 1989, Coligan et al., Current Protocols In Protein Science, John Wiley & Sons, Inc., 1995-1997, 特に第1、5及び6章並びにAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 47, John Wiley & Sons, New York, 1999を参考にする。
この明細書全体を通じて、その文脈が別の意味を必要としない限り、「含む」又は「含むこと」などの変形は、言及した要素若しくは整数又は要素若しくは整数の群を包含することを意味するが、他の要素若しくは整数又は要素若しくは整数の群のいずれをも排除するものでないと解釈する。
配列識別子番号(SEQ ID NO:)でヌクレオチド及びアミノ酸配列を表す。SEQ ID NO:は数的に配列識別子<400>1、<400>2等に相当する。配列識別子の概要を表1に提供する。特許請求の範囲の後に配列表を提供する。
【0016】
本明細書では、用語「ポリペプチド」、「タンパク質」及び「ペプチド」を相互交換可能に使用する。
本明細書で使用する場合、その文脈が明白に別の意味を指示しない限り、単数形「1]("a"、"an")及び「その」("the")は複数の態様を包含する。従って、例えば、「1つの細胞」は単一細胞のみならず、2つ以上の細胞を包含し;「1種の薬剤」は1種の薬剤のみならず、2種以上の薬剤をも包含するなどである。
用語「遺伝的物質」、「遺伝的形態」、「核酸」、「ヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」は、RNA、cDNA、ゲノムDNA、合成形態及び混合重合体、センス鎖及びアンチセンス鎖を包含し、かつ当業者には容易に分かるように、化学的又は生化学的に修飾されていてもよく、或いは非天然又は誘導体化ヌクレオチド塩基を含みうる。このような修飾として、例えば、標識、メチル化、1つ以上の天然ヌクレオチドの、類似体による置換(例えばモルフォリン環)、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電結合(例えばメチルホスホナート、ホスホトリエステル、ホスホアミダート、カルバマート等)、荷電結合(例えばホスホロチオアート、ホスホロジチオアート等)、ペンダント成分(例えばポリペプチド)、挿入剤(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤、アルキル化剤及び修飾結合(例えばα-アノマー核酸など)が挙げられる。指定配列に水素結合及び他の化学的相互作用を介して結合する能力においてポリヌクレオチドを模倣する合成分子も含まれる。このような分子は技術上周知であり、例えば、該分子の主鎖内でペプチド結合がリン酸結合と置き換わっている分子が挙げられる。
用語「遺伝子」はその最も広い意味で使用され、遺伝子のエキソンに相当するcDNAを包含する。本明細書で「遺伝子」との言及は、以下のものを含むものとも解釈する:転写及び/又は翻訳制御配列及び/又はコード領域及び/又は非翻訳配列(すなわちイントロン、5'-及び3'-非翻訳配列)から成る古典的ゲノム遺伝子;又は遺伝子のコード領域(すなわちエキソン)並びに5'-及び3'-非翻訳配列に相当するmRNA若しくはcDNA。
「単離された」という表現は、その天然状態で通常それに随伴する成分を実質的又は本質的に含まない物質を意味する。例えば、「単離されたポリヌクレオチド」は、本明細書で使用する場合、天然に存在する状態でそれに隣接する配列から単離されたポリヌクレオチド、例えば、DNAフラグメント(通常、該フラグメントに隣接する配列から取り除かれた)を意味する。或いは、「単離されたペプチド」又は「単離されたポリペプチド」などは、本明細書で使用する場合、ペプチド又はポリペプチドの、その天然の細胞環境から、及び該細胞の他成分との会合からのin vitro単離及び/又は精製を意味する。限定ではなく、単離された組成物、複合体、ポリヌクレオチド、ペプチド、又はポリペプチドは、精製によって単離された天然の配列を表すことがあり、或いは組換え又は合成手段で生成された配列を表すことがある。
本明細書におけるいずれの参考文献の引用も、該参考文献が本出願に対する「先行技術」として有効であるという承認として解釈すべきでない。
主題発明は、薬剤の特定のスクリーニング手順に限定されない。薬剤の特有の処方及び種々の医療的方法論は変化しうる。本明細書で使用する学術用語は、個々の実施形態を記述するという目的のためだけのものであり、限定的であることを意図しない。
「治療」又は「治療する」との言及は、目的が神経変性疾患の臨床徴候の重症度を少なくとも軽減するか又は該疾患の臨床的進行を遅延若しくは減弱させることである治療工程のみならず予防手段をも包含する。理論に拘泥されたくないが、本明細書に記載の実験結果は、EphA4機能の低減が、神経組織の機能又は完全性を保護し、或いは軸索損傷の速度、発生又は量を減少させて良い臨床結果に寄与することを示唆している。
【0017】
(実施形態)
一実施形態では、本発明は、対象のMS等の神経変性疾患(NDD)の治療方法であって、前記対象にEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬を投与する工程を含む方法を企図する。
用語「拮抗薬」は、標的分子のレベル又は活性を下方制御する薬剤、活性剤、調節薬、医薬、化合物、薬理学的活性剤、薬物、分子などを表すため、広い文脈で使用される。この文脈では、「活性」は、標的分子の1つ以上の生物学的機能を包含する。一部の実施形態では、標的がEph又はエフリンポリペプチド分子である。技術上周知なように、これら分子の活性には、とりわけ、その機能的能力をもたらす細胞内シグナル伝達活性、酵素活性及び結合活性が含まれる。シグナル伝達活性には、例えば、細胞内因子の発現、リン酸化又は結合若しくは立体構造の変化によって媒介される細胞応答を誘発するためのシグナルの細胞内伝達が含まれ;酵素活性には、キナーゼ又は他の触媒活性が含まれ;結合活性には、相補性Eph、エフリン或いは複合体を形成するか又はEph若しくはエフリンに結合する他の分子への低中程度又は高度の親和性の結合が含まれる。技術上周知なように、一部の実施形態では、結合が抑制性であり、他の実施形態では、結合が活性化及び受容体/リガンドシグナル伝達をもたらす。これらの機能は容易に評価及び定量化される。機能性ドメイン、例えば傍核膜ドメイン、PDZドメイン又はSAMドメイン、GPIアンカー、フィブロネクチンリピート及びシステインリッチドメインの活性もEph及びエフリンの機能活性の調節に影響力がある。Eph/エフリン又は他のリガンドのレベル若しくは活性のモニタリング方法は技術上周知である。例えば、EphA4受容体結合アッセイ、例えばDavis et al., 1994 (上記)、Murai et al., Mol Cell Neurosci. 24(4): 1000-1011, 2004又はPubChem Bioassay AID No. 689(「EphA4受容体拮抗薬の化学的抑制薬のHTS発見のための比色分析(Colorimetric assay for HTS discovery of chemical inhibitors of EphA4 receptor antagonists)」)に記載のアッセイを用いていくつかの拮抗薬を同定することができる。適切なEphA4拮抗薬及びEphA4リガンド拮抗薬は、EphA4リガンドのEphA4への結合を抑制することができる。同様に、例えばDavis et al., 1994 (上記)に記載のEphA4受容体リン酸化アッセイを用いて、他の拮抗薬を同定することができる。適切なEphA4拮抗薬及びEphA4リガンド拮抗薬は、EphA4リガンドにさらされると、EphA4のリン酸化を抑制しうる。機能アッセイ、例えばMurai et al., 2004 (上記)の神経堤移動アッセイを用いてもいくつかの拮抗薬を同定しうる。適切なEphA4拮抗薬及びEphA4リガンド拮抗薬はin vitro又はin vivoでEphA4の機能を抑制しうる。コンピュータによる方法を用いてもいくつかの拮抗薬を同定することができる。例えば、EphA4受容体の高親和性エフリン結合チャネルの結晶構造はQin et al., J Biol Chem. 283(43): 29473-29484, 2008から分かる。この構造を適切なEphA4拮抗薬及びEphA4リガンド拮抗薬の理論的設計のために使用できる。
【0018】
一部の実施形態では、転写又は翻訳のレベルを減じることによって、例えば、プロモーター又はエンハンサー活性を抑制することによって、メチル化によって、或いは今や当技術分野で日常的である同時抑制、アンチセンス又は抑制性RNA戦略などの遺伝子サイレンシングを利用して、標的ポリペプチドのレベル又は活性を低減することができる。従って、本発明は、EphA4又はEphA4リガンドのレベルを間接的に調節する必要がある場合、例えば、遺伝子療法、又は遺伝子の機能の抑制若しくは促進、又は当業者に既知の遺伝子サイレンシング構築物又はアンチセンス若しくは抑制性RNAオリゴヌクレオチドの利用による、核酸分子又は核酸分子を含むベクターの使用を包含する。転写又は翻訳などの遺伝子の機能の調節又はモニタリング方法は技術上周知である。例えば、Fu et al., Nature Neuroscience 10: 67-76, 2007にはEphA4の発現の調節又はモニタリング方法が開示されている。
用語「対象」は、本明細書で使用する場合、温血動物、特に哺乳動物、さらに特に低等霊長類を含めた霊長類、なおさらに特に本発明の医療用途から利益を得られるヒトを意味する。ヒト又は非ヒト動物又は胚であるかにかかわらず、対象を個体、対象、動物又は患者と称することがある。一部の実施形態では、対象は哺乳動物、例えばヒトである。一部の実施形態では、対象は治療が必要な対象である。
特定の「Eph」、「Eph結合性リガンド」又は「エフリン」のレベル又は活性の調節又は軽減との言及には、これら分子の全てのポリペプチド形態、例えば他の種由来の相同体形態、又は天然に存在する形態に対する言及が含まれる。これらの分子を拮抗薬と称することには、相同体、及び天然に存在する形態、単離された形態、合成形態、又は組換え形態、類似体、並びにそれらの一部、例えば活性を保持する機能性フラグメント又はドメイン及び機能的な変異形態が含まれる。
【0019】
一部の実施形態では、対象はNDDの危険があるか又はNDDの1つ以上の臨床症状を示す。対象は、例えば、遺伝的に、臨床的に若しくは生理学的に実証可能なNDDを発症する危険又は可能性を有していてよい。例えば、MSの早期の臨床症状として、15〜50歳の対象における視神経炎が挙げられる。
神経変性疾患(NDD)にはCNS及び/又はPNS組織の当該疾患が含まれ、以下のものが挙げられる:末梢性神経障害、運動神経疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリック病)、顔面神経麻痺、アルツハイマー病、パーキンソン病、癲癇、多発性硬化症、ハンチントン舞踏病、ダウン症候群、低酸素症-虚血性脳症、偶発的レビー小体病(incidental Lewy bodies)、アミロイド血管症、外傷性脊髄軟化症、及びメニエール病。末梢神経障害は、抹消神経を冒す神経変性疾患であり、多くの場合、運動、感覚、感覚運動、若しくは自律的な機能障害の1つ又は組合せとして現われる。末梢神経障害は、例えば後天的であってよく、全身病から起こることがあり、或いは毒性因子、例えば神経毒薬、例えば抗腫瘍薬、又は産業若しくは環境汚染物質によって誘発されうる。末梢性感覚神経障害は末梢性感覚神経の変性を特徴とし、その変性は特発性であってよく、例えば、糖尿病の結果として起こることもあり(糖尿病性神経障害)、癌の細胞分裂阻害薬物療法、アルコール中毒、後天性免疫不全症候群(AIDS)、又は遺伝的素因の結果として起こりうる。遺伝的に後天的な末梢性神経障害として、例えばレフサム病(Refsum's disease)、クラッベ病(Krabbe's disease)、異染性白色ジストロフィー(Metachromatic leukodystrophy)、ファブリー病(Fabry's disease)、デジェリン・ソッタス(Dejerine-Sottas)症候群、無βリポタンパク質血症(Abetalipoproteinemia)、及びシャルコー・マリー・トゥース(Charcot-Marie-Tooth)(CMT)病(腓骨筋萎縮症(Proneal Muscular Atrophy)又は遺伝性運動感覚神経障害(HMSN)としても知られる)が挙げられる。末梢性神経障害は通常、感覚神経と運動神経に共に作用して感覚及び運動の混合神経障害を引き起こすが、純粋な感覚神経障害及び純粋な運動神経障害も知られている。一部の実施形態では、NDDの症状が数ヶ月又は数年にわたって発症し、この場合は慢性又は進行性と呼ばれる。
【0020】
一部の実施形態では、神経変性疾患が脱髄、炎症及び自己免疫の1つ以上と関連する。脱髄、炎症及び自己免疫と関連する疾患の例は、多発性硬化症とその変形又はギラン・バレー症候群(GBS)とその変形である。
一部の実施形態では、神経変性疾患が多発性硬化症又はMSの変形である。MSの変形として、マールブルグ病(Marburg's variant)、シルダー病(Schilder's disease)、バロ(Balo)の同心円硬化症及びデビック病(Devic's disease)が挙げられる。例示実施形態では、疾患(状態)が多発性硬化症である。
一部の実施形態では、疾患の臨床的進行を軽減するのに十分な時間及び条件下で拮抗薬を投与する。一部の実施形態では、対象がより少ない神経損傷又はより少ない進行性神経機能障害を示し、或いは示す可能性がある。一部の実施形態では、前記神経機能障害が四肢脱力である。一部の実施形態では、進行性神経機能障害を軽減するのに有効な量の拮抗薬を供給する。
一部の実施形態では、拮抗薬は対象の神経組織の機能若しくは完全性を保護するか又は対象で起こる神経損傷の速度、発生若しくは量を減少させる。
一部の実施形態では、MS等のNDDの臨床症状の進行を緩和するか又は遅延させるのに十分な「有効量」で拮抗薬を供給する。
NDDを治療する文脈の「有効量」とは、一部の対象で治療効果を示す際に、単一用量で又は連続若しくは遅延放出システムの一部として有効であることが分かった、対象にとって活性な投与の当該量を意味する。有効量は、対象の健康及び身体状態、使用する組成物の処方、医療状況の評価、並びに他の関連因子によって変わるだろう。該量は日常の試験を通じて決定できる比較的広い範囲内に収まると予想される。
主題の拮抗薬を含む医薬組成物は、個々の事情によって決まる量で投与されると、治療的活性を示すと考えられる。量の変動は、例えば、ヒト又は動物によって、また選択した薬剤によって決まる。拮抗薬は典型的に、効果を生じるのに十分な濃度で生物学的に利用できる薬剤である。広範な用量が適用可能である。対象を考慮して、例えば、1日毎又は1日おき又は1週間毎又は1ヶ月毎に体重1kg当たり約0.1mg〜0.9mg(すなわち、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg及び0.9mgなどを含む)、約15mg〜35mg、約1mg〜30mg又は5〜50mg、又は10mg〜100mgの薬剤を投与してよい。治療抗体は、典型的に約1〜20mg/kgの用量で投与されるが、この量を超えるか又はそれ未満の用量が上記範囲内で考慮される。投与計画を調整して、最適な治療応答をもたらすことができる。例えば、数回に分けた用量を毎日、毎週、毎月又は他の適宜な時間間隔で投与してよく、或いは状況の要求で示されるように比例的に該用量を減らしてよい。
一部の実施形態では、拮抗薬を全身に毎日又は毎週約1mg〜100mg/kg与え、或いは局所送達ではより少ない量を与える。
通常、MS等のNDDの臨床徴候の進行を緩和するか又は遅延させるのに十分な時間及び条件下で投与する。臨床徴候は治療すべき神経変性疾患によるが、認識力、感覚又は運動能力の低下という徴候が挙げられる。共通の臨床徴候として、視神経炎、横断性脊髄炎、脳幹又は小脳の欠陥が挙げられる。
【0021】
簡便な方法、例えば経口、静脈内(水溶性の場合)、腹腔内、筋肉内、皮下、経内、くも膜下腔内又は座剤経路又は移植(例えば遅延放出分子を用いて)によって薬剤を投与することができる。全身又は局所投与でよいが、全身投与がより簡便である。全身との言及には、静脈内、腹腔内、皮下注射、点滴並びに経口、直腸及び鼻経路によるか又は有利な吸入による投与が含まれる。他の考えられる投与経路は、パッチ、細胞伝達、移植、舌下、眼内、局所又は経皮による。疾患の重症度又は段階及び血液脳関門の完全性によっては、適宜の拮抗薬が血液脳関門を横断する必要がある。一部の実施形態では、薬剤をPNS又はCNS、脳幹、又は小脳に直接投与する。
医薬組成物は通常の医薬配合法に従って便利に調製される。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Mack Publishing, Company, Easton, PA, U.S.A., 1990を参照されたい。本組成物は、活性薬又は活性薬の医薬的に許容しうる塩を含有しうる。これらの組成物は、1種の活性物質に加えて、医薬的に許容しうる賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤又は技術上周知の他の物質を含んでよい。該物質は、無毒であるべきで、かつ活性成分の効力を妨害すべきでない。担体は、投与、例えば静脈内、経口又は非経口に望ましい製剤の形態によって種々多様な形態を取りうる。
「医薬的に許容しうる担体」及び/又は希釈剤は、その他の点で望ましくなくない、すなわち、それ自体で又は活性薬と実質的な副反応を引き起こしそうもない物質で構成される医薬ビヒクルである。担体として、全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌薬、抗真菌薬、緊張性の調整薬、吸収率又は浄化率を増減する薬剤、pHを維持するための緩衝剤、キレート剤、膜又は関門横断(crossing)剤が挙げられる。医薬的に許容しうる塩は、その他の点でも望ましくなくない塩である。医薬的に許容しうる無毒塩、例えば酸付加塩又は金属錯体の形態で、薬剤又は薬剤を含む組成物を投与することができる。
【0022】
経口投与のため、化合物を固体又は液体製剤、例えばカプセル剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤、散剤、懸濁剤又は乳剤に調製することができる。経口剤形の組成物を調製す際には、例えば、経口液体製剤(例えば、懸濁剤、エリキシル剤及び液剤など)の場合には水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤、懸濁剤などの通常の医薬媒体;又は経口固体製剤(例えば、散剤、カプセル剤及び錠剤など)の場合にはデンプン、糖、希釈剤、顆粒化剤、潤沢剤、結合剤、崩壊剤などの担体のいずれをも利用しうる。投与の容易さのため、錠剤及びカプセル剤が最も有利な経口剤形を代表し、この場合は、当然に固体医薬担体を使用する。錠剤は、結合剤、例えばトラガカントガム、コーンスターチ又はゼラチン;崩壊剤、例えばアルギン酸;及び潤沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムを含んでよい。所望により、錠剤を標準的手法で糖コーティング又は腸溶性コーティングしてよい。活性薬をカプセルに包んで胃腸管を安定して通過させることができる。例えば、国際特許出願第WO96/11698号を参照されたい。非経口投与のためには、化合物を医薬担体に溶解し、溶液又は懸濁液として投与することができる。好適な担体の例示は、水、食塩水、デキストロース溶液、フルクトース溶液、エタノール、又は動物、植物若しくは合成起源の油である。担体が他の成分、例えば、保存剤、懸濁剤、可溶化剤、緩衝剤などを含んでもよい。
非経口投与のためには、拮抗薬を担体に溶解し、溶液又は懸濁液として投与することができる。薬剤をくも膜下腔内投与する場合、薬剤を脳脊髄液に溶解してもよい。経粘膜又は経皮送達では(パッチ送達を含む)、拮抗薬を送達するため、技術上周知の適切な浸透剤を使用する。吸入のためには、乾燥散剤エアロゾル、液体送達システム、空気ジェット噴霧器、噴霧剤システム等のいずれかの便利なシステムを用いて送達する。例えば、エアロゾル又はミストの形態で製剤を投与することができる。持続性送達又は徐放形式で薬剤を送達してもよい。例えば、持続性送達が可能な生分解性ミクロスフェア又はカプセル剤又は他の高分子構造を製剤に含めてよい。製剤を修飾して、薬物速度論及び体内分布を変えることができる。薬物速度論の一般的考察については、例えば、Remington'sを参照されたい。一部の実施形態では、リポソーム又はミセル等の脂質単分子膜又は二分子膜に製剤を組み入れてよい。
【0023】
技術上周知の標的療法を用いて拮抗薬を送達することができ、さらに詳細には、一定の型の細胞、例えばニューロン、オリゴデンドロサイト、アストロサイトに送達することができる。標的法は、拮抗薬が容認できないほど毒性であるか、或いは薬用量が別のやり方では高すぎるか又は他の部位には妥当でない場合に役立つだろう。これとは別に、標的法は、血液脳関門を横断するのを助けうる。投与した拮抗薬への神経系の接近性を高めるためのいくつかの戦略が技術上周知である(Misra et al., J Pharm Sci 6: 252-273, 2003)。
一部の実施形態では、神経組織に又は神経組織に隣接して拮抗薬を投与する。一部の実施形態では、脳、脊髄又は視神経に局所投与する。
投与する活性薬の実際の量及び投与の速度と時間経過は、疾患の性質と重症度によって決まるだろう。治療の処方、例えば薬用量、タイミング等についての決定は一般的な開業医又は専門家の責任の範囲内であり、典型的に個々の患者の状態、送達部位、投与方法及び開業医にとって周知の他の因子を考慮する。手法及びプロトコルの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences (上記)で見つかる。
調製しうる持続放出製剤は適宜安定した拮抗薬を長期間投与するため特に便利である。持続放出製剤の例として、拮抗薬を含有する固体疎水性ポリマーの半浸透性基質が挙げられ、この基質は成形品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形態である。持続放出基質の例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは100日にわたって分子を放出できるが、一定のヒドロゲルは、より短時間でタンパク質を放出する。小さい(約200〜800Å)単層タイプで、脂質含量が約30%超えのコレステロールであるリポソームを使用することができ、最適療法に合わせてコレステロールの比率を選択する。
スルフヒドリル残基を修飾すること、酸性溶液から凍結乾燥すること、含水率を調節すること、適切な添加剤を使用すること及び特有のポリマー基質組成物を開発することによって、拮抗薬の安定化を達成することができる。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)基などの他の要素を付着によってなど、技術上周知の手法を用いて拮抗薬のin vivo半減期を延ばすことができる。
【0024】
本発明は、さらに併用療法、例えばEphA4シグナル伝達を標的にしてMS等のNDDの臨床徴候、例えば神経損傷を軽減し、かつ該疾患の免疫又は炎症成分の改善に使う免疫調節若しくは免疫抑制若しくは抗炎症薬又は手順をも与える療法を提供する。
本発明は、さらに併用療法、例えばEphA4シグナル伝達を標的にしてMS又は他のNDDの臨床徴候、例えば神経損傷を軽減し、かつ該疾患の免疫又は炎症成分の改善に使う免疫調節若しくは免疫抑制若しくは抗炎症薬又は手順をも与える療法を提供する。当技術分野で使用する免疫調節薬として、β-インターフェロン、酢酸グラチラマー及びナタリズマブが挙げられ、併用療法ではこれらを考慮する。
従って、本発明は、EphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬を少なくとも1種の他の治療薬又は手順と共に投与する工程を含む、MS等のNDDの治療方法を企図する。同様の実施形態では、本発明は、MS等のNDDの治療で使うEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬と共に少なくとも1種の他の治療薬又は手順を提供する。別の関連実施形態では、本発明は、少なくとも1種の他の治療薬又は手順と共に投与する、MS等のNDDの治療で使うEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬を提供する。同様に、本発明は、EphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬と共に投与する、MS等のNDDの治療で使う少なくとも1種の治療薬又は手順を提供する。一部の実施形態では、拮抗薬は疾患の臨床的進行を軽減する。「共に」との言及は、逐次投与又は同時投与を包含する。
一部の実施形態では、抗炎症薬及び標的疾患の治療のために現在使用されている他の活性化合物と併用して拮抗薬を投与する。該化合物として、免疫調節薬、例えば酢酸グラチラマー及びナタリズマブ、コルチコステロイド、例えばプレドニソロン、非ステロイド性抗炎症薬、例えばアスピリン、イブプロフェン、及びCOX-2抑制薬、疾患修飾性抗リウマチ薬、例えばメトトレキセート、レフルノミド、サルファサラジン、アザチオプリン、シクロスポリン、ヒドロキシクロロキン、及びD-ペニシラミン;及び生物学的応答調節物質、例えばサイトカイン(例えば、IFNβ)又はサイトカイン抑制薬が挙げられる。
【0025】
用語「神経損傷」又は「軸索(ニューロン)損傷」には、細胞死(アポトーシス)、細胞変性、細胞フラグメント化、及び神経の伝導性又は応答性の低下が含まれる。一部の実施形態では、ニューロン損傷は急性又は慢性的な脱髄病変内で起こるが、損傷が有髄軸索内で起こりこともある。特定の実施形態では、軸索損傷のマーカーを臨床的進行と関連づけすることができる。特に、コントロールに比べて低レベルの軸索損傷は、主題の拮抗薬がMS等のNDDにおける臨床的進行を軽減するのに十分に軸索を損傷から保護できることを示唆する。
神経機能障害はCNS又はPNS機能障害である。一部の実施形態では、神経機能障害がMS等のNDDの臨床的進行と関連する脊髄機能、認知運動若しくは感覚機能又は視神経機能の機能障害である。
一部の実施形態では、神経機能障害が四肢脱力である。一部の実施形態では、進行性神経機能障害を軽減するのに有効な量の拮抗薬を供給する。
一部の実施形態では、拮抗薬は、対象の神経組織の機能若しくは完全性を保護するか又は対象で起こる神経損傷の速度、発生又は量を減少させる。
用語「損傷」には、細胞の完全性の損失又は機能の損失を示す神経(軸索)の変化が含まれる。この用語は、細胞の死、変性及びフラグメント化を包含する。一部の実施形態では、この用語は、神経の伝導性若しくは応答性の低下又は脱髄に拡張される。
一部の実施形態では、拮抗薬は、MS等のNDDの慢性的進行段階中に、対象の神経組織の機能若しくは完全性を保護するか又は対象で起こる軸索損傷の速度、発生若しくは量を減少させる。一部の実施形態では、投与は臨床症状の発生時若しくは発生前又は臨床症状の再発の発生前若しくは発生時である。
【0026】
一部の実施形態では、本発明は、対象のMS等のNDDの治療方法であって、以下の工程:
i) 前記対象由来の生体サンプルを軸索損傷についてスクリーニングする工程;及び
ii) 前記対象の神経組織の機能若しくは完全性を保護するか又は前記対象で起こる神経損傷の速度、発生若しくは量を減少させるのに十分な条件下でEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬を投与する工程
を含む方法を企図する。
一部の実施形態では、前記拮抗薬を神経組織に又は神経組織に隣接して投与する。神経組織は、脳、CNS又は脊髄内にあってよいが、これに限定されない。一部の実施形態では、脳、脊髄又は視神経に局所投与する。
一部の実施形態では、前記対象がヒト等の哺乳動物である。
一部の実施形態では、拮抗薬がEphA4に結合してそのレベル又は活性を下方制御する。典型的実施形態では、拮抗薬は、EphA4に結合してそのレベル又は活性を下方制御するエフリンであり、その可溶形又は機能性変異体若しくは類似体が含まれる。Eph受容体拮抗薬である可溶性エフリンは技術上周知であり、例えば、Gale et al., Neuron. 17(1): 9-19, 1996 and Davis et al., 1994 (上記)に記載されている。これらのエフリンは、典型的に如何なる膜アンカー及び/又は膜貫通ドメインをも含まないので、膜と結合しないという点で可溶形態を有する。他の形態は、効果を生じるのに十分な濃度で生物学的に利用できるという点で可溶性でありうる。これらの形態には、例えば、膜アンカー又は膜貫通ドメインを有するが、シグナル伝達能を欠いている形態が含まれる。これらの形態にはミセル又はタンパク質リポソーム形態が含まれる。本発明で使うのに適したエフリンは、エフリンAエフリン、例えばA1、A2、A3、A4、A5、A6、又はエフリンBエフリン、例えばエフリンB2若しくはB3である。一部の実施形態では、エフリンがA4、A5、B2又はB3である。エフリンは単量体、二量体、四量体又は多量体であってよい。一部の実施形態では、可溶性エフリンはFc又はHis融合タンパク質である。特にFc融合を企図する。
【0027】
他の実施形態では、拮抗薬がEphA4結合性エフリン分子に結合してそのレベル又は活性を抑制する。典型的実施形態では、拮抗薬はEph受容体、例えば可溶性Eph受容体ポリペプチド又はその機能性変異体若しくは類似体である。この場合もやはり、可溶性Eph受容体は、例えばBrantley et al., 2002 (上記)に記載されているように技術上周知である。これらのEph受容体は、典型的に如何なる膜アンカー及び/又は膜貫通ドメインをも含まないので、膜と結合しないという点で可溶形態を有する。他の形態は、効果を生じるのに十分な濃度で生物学的に利用できるとい点で可溶性でありうる。これらの形態には、例えば、膜アンカー又は膜貫通ドメインを有するが、シグナル伝達能を欠いている形態が含まれる。これらの形態にはミセル又はタンパク質リポソーム形態が含まれる。典型的に、拮抗薬はEphA4受容体、例えば可溶性EphA4受容体ポリペプチド又はその機能性変異体若しくは類似体である。一部の実施形態では、EphA4は単量体、二量体、四量体又は多量体である。一部の実施形態では、EphA4受容体はEphA4-Fc又はHis融合タンパク質である。特にFc融合を企図する。
一部の実施形態では、拮抗薬がタンパク質、ポリペプチド又はペプチド、例えば構造固定ペプチド若しくはペプチド模倣薬であるがこれに限定されない。種々のペプチド拮抗薬が技術上周知である。本発明ではこれら及び他の適切なペプチド拮抗薬を使用することができる。例えば、Murai et al., 2004 (上記)に記載の拮抗薬を使用してよい。ペプチド拮抗薬の同定方法は、例えば、Koolpe et al., J Biol Chem., 280(17): 17301-17311, 2005に開示されている。他の実施形態では、拮抗薬は(典型的に小型又は中型)有機分子、例えば、医薬的に許容しうる小型有機分子のライブラリーに由来する分子であるが、これに限定されない。種々の有機分子拮抗薬が技術上周知である。Noberini et al., J Biol Chem., 283(43): 29461-29472, 2008を参照することができ、この文献では小型分子拮抗薬が開示されている。また、小型分子拮抗薬の選択及び精製方法を開示しているKolb et al., Proteins,73(1): 11-18, 2008; Chrencik et al., Structure, 14(2): 321-330, 2006; and Chrencik et al., J Biol Chem., 282(50): 36505-36513, 2007をも参照されたい。これら及び他の適切な有機分子拮抗薬を本発明で使用しうる。例えば、Qin et al. 2008 (上記)に記載の拮抗薬を使用してよい。
【0028】
単離された組換え又は合成ポリペプチドは、技術上周知の方法によって、例えば、発現系を含む、遺伝的に操作した宿主細胞から調製される。開業医は、当技術分野の定義及び用語並びに当業者に既知の他の方法について、特にSambrook et al., 1989 (上記)及びAusubel et al., 1999 (上記)を参考にする。
EphA4及びEphA4結合性エフリンのヌクレオチド及びアミノ酸配列は、電子的に入手しやすいデータベースで適切な受入番号のもとに開示されている。例えばSambrook et al., 1989 (上記)に示され、実施例で記載されているような、種々のよく理解されている日常的手法のいずれによっても、発現系内に適切なヌクレオチド配列を挿入して、適切な宿主細胞内で発現させることができる。組換え培養又は他の生物源から、一般的にクロマトグラフィー又はろ過を含む日常的方法によって、ポリペプチドを回収及び精製することができる。
EphA4又はエフリンポリペプチドをコードするDNAを組換えでヒトIgG重鎖のFc領域との融合タンパク質として発現させることができる。例えば、エフリンA5-Fc、エフリンA3-Fc又はエフリンB3-Fc融合タンパク質を組換えで発現させることによって、エフリンA4、A5又はエフリンB3の可溶形を調製する。細胞外ドメインは該タンパク質の可溶形を与えるが、リガンド結合ドメイン(アミノ酸20〜274)又は機能性フラグメント又は変異体を含む該ドメインのいずれの部分(例えばヒトEphA4のアミノ酸20〜546)をも考慮する。発現したらシグナルペプチドを切断してよく、図6にはシグナルペプチドを示さない。EphA4のマウス及びヒト相同体は98.2%のアミノ酸配列同一性を共有した(536/546)。融合タンパク質のFc部は、クロマトグラフィーを用いるタンパク質の精製を容易にし、融合相手の機能、安定性、半減期、構造又は溶解性を増強する。IgG1由来のマウスFcは補体及びエフェクター機能を欠くが、ヒト相同体は作用又は活性を妨げうるこれらの機能を有する。従って、Fcを修飾するか又はエフェクター細胞を妨げない異なったIgGイソ型を利用してよい。典型的実施形態では、IgG4イソ型を利用する。Eph又はエフリンは必要に応じて単量体、二量体、四量体又は多量体の形態で使用してよい。
一部の実施形態では、必要な場合、核酸分子及び核酸分子を含むウイルス又は他のベクターを用いて、EphA4又はEphA4リガンド遺伝子の拮抗薬を送達するか又はサイレンシングを誘発する。DNA(gDNA、cDNA)、RNA(センスRNA、アンチセンスRNA、mRNA、tRNA、rRNA、低分子干渉RNA(SiRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、piwi相互作用性(piwi-interacting)RNA(PiRNA)、マイクロRNA(miRNA)、核小体低分子RNA(SnoRNA)、核内低分子(SnRNAs)リボザイム、アプタマー、DNAザイム又は他のリボヌクレアーゼ型複合体などの核酸を都合よく使用する。真核生物内でDNA又はRNAを産生可能なキメラ又は融合構築物を生成する方法が当技術分野で開示されている。
【0029】
一部の実施形態では、拮抗薬は、EphA4又はEphA4リガンドに結合する抗体又は抗体の抗原結合性フラグメント又はアプタマーである。
本明細書で使用する用語「抗体」は、所望の結合機能及び遮断機能を示す全抗体、又はそのフラグメント、例えば、F(ab')2、Fab、Fab'、Fv、VH若しくはVKフラグメント、一本鎖抗体、多量体単一特異性抗体若しくはそのフラグメント、又は二特異性若しくは多特異性抗体又はその抗原結合性フラグメントを包含する。結合との言及は、該フラグメントが、治療的に役に立つのに十分な親和性及び特異性で抗原に結合することを意味する。さらに、結合して、細胞内シグナル伝達などの標的活性を遮断する能力を求めて抗体又はそのフラグメントを選択する。本明細書で使用する抗体はポリクロナール又はモノクロナール抗体であってよい。抗体はいずれの免疫グロブリンクラスに属していてもよく、例えばIgG、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgM又はIgA抗体であってよい。抗体は動物、例えば哺乳動物起源のものであってよく、例えばマウス、ラット又はヒト抗体であってよい。或いは、抗体はキメラ抗体であってよい。本明細書では、キメラ抗体という用語を用いて異なる動物種由来の部分を含有するいずれの抗体をも意味する。特定の非限定例は、マウス由来の可変部及びヒト由来の抗体定常部を有する当該抗体である。1つ以上のCDR配列がマウス由来であり、かつ可変部と定常部の残りの部分がヒト免疫グロブリン由来である抗体は、一般的に「ヒト化」抗体と記述される。抗体の抗原結合性フラグメントは、EphA4又はEphA4リガンドへの所望の結合性を示すのに十分な可変部の全て又は一部又は複数の部分を含む。
【0030】
モノクロナール及びポリクロナール抗体の調製方法は当業者には周知であり、例えば、Harlow and Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988の第5章と第6章に記載されている。例えば、通常の免疫化及び組換えDNA手法で本発明の抗体を調製することができる。従って、例えば、標的タンパク質又はそのフラグメントで免疫化した動物の血清からポリクロナール抗体を得ることができる。マウスポリクロナール抗体を得たい場合、いずれかの適切な宿主、例えばBALB/cマウスに免疫原を注入し、血清を収集し、その血清から抗体を回収すればよい。モノクロナール抗体は、このように免疫化し、かつ適切な「不死の」B-腫瘍細胞に融合した動物の脾臓細胞由来のハイブリドーマから得られる。各場合、標準的な精製及び/又は濃縮技術を利用して、例えばクロマトグラフィーで、タンパク質Aを用いて、又は本発明のタンパク質若しくはそのフラグメントを使用する他のアフィニティークロマトグラフィーによって、血清又はハイブリドーマから抗体を回収することができる。
適切な抗体を発現する細胞系、例えばハイブリドーマを得たら、CDRをコードする配列を含めた所望の抗体をコードする可変部遺伝子を同定することができる。ここから、該抗体の重鎖又は軽鎖の可変ドメインをコードするDNA配列を少なくとも含み、必要に応じて重鎖及び/又は軽鎖の残部をコードする他のDNA配列を含有する1種以上の複製可能な発現ベクターを調製し、かつ該抗体の産生が起こるであろう適切な細胞系、例えば、マウスNSO系などの非産生性骨髄腫細胞系を形質転換することによってキメラ抗体を得ることができる。このようにして抗体を産生させる特定の方法は一般的に周知であり、日常的に使用されている。抗体の産生には、動物への注入による免疫反応の刺激のみならず、合成抗体の製造、特異的結合分子のための組換え免疫グロブリンライブラリーのスクリーニング又はリンパ球集団のin vitro刺激などの類似プロセスも含まれる。
【0031】
抗体は標的が細胞外部から近づきうる結合部位を有する場合に特に有用な薬剤である。このように、薬剤は細胞膜と交差するか又は細胞膜を完全に横断する必要がない。EphA4又はエフリンポリペプチドに特異的な抗体を例えば、拮抗薬として直接使用することができる。技術上周知の方法を用いて抗体を生成することができ、抗体としては例えば、ポリクロナール、モノクロナール、キメラ、ヒト化、単鎖、Fabフラグメント、及びFab発現ライブラリーから産生されたフラグメントが挙げられる。
一部の実施形態では、本発明の抗体はCDRグラフト化抗体である。本明細書で使用する「CDRグラフト化抗体」という用語は、重鎖及び/又は軽鎖が、アクセプター抗体(例えば、ヒト抗体)の重鎖及び/又は軽鎖可変部のフレームワーク中にグラフト化された、ドナー抗体(例えば、マウスモノクロナール抗体)由来の1つ以上のCDRを含む抗体分子を意味する。CDRグラフト化抗体の構築については、欧州特許出願EP-A-0239400に完全に記載されており、この公報は参照によって本明細書に引用したものとする。どのフレームワーク残部を変える必要があるかを選択するためのいくつかの基準は、参照によって本明細書に引用したものとする国際特許出願WO90/07861に記載されている。
細胞内伝達能のある抗原結合剤、又はその機能的に活性なフラグメントとしてはラクダ及びラマ抗体、scFv抗体、細胞内抗体又はナノボディ、例えばscFv細胞内抗体及びVHH細胞内抗体などの抗体も挙げられる。Harmsen and De Haard, Appl. Microbiol. Biotechnol. 77(1): 13-22, 2007; Tibary et al., Soc. Reprod. Fertil. Suppl. 64: 297-313, 2007; Muyldermans, J. Biotechnol. 74: 277-302, 2001;及びその中で引用されている文献に記載されているように、このような抗原結合剤を作製することができる。一実施形態では、タンパク質-タンパク質相互作用を妨害できるscFv細胞内抗体を本発明で使用する。その製造方法については、例えば、Visintin et al., J. Biotechnol, 135:1-15, 2008 and Visintin et al, J. Immunol. Methods, 290(1-2): 135-53, 2008を参照されたい。
【0032】
本発明で使うため、調節剤はConstantini et al., Cancer Biotherm. Radiopharm. 23(1): 3-24, 2008で開示されている配列のような細胞浸透性ペプチド配列又は核局在性ペプチド配列を含んでよい。
一部の実施形態では、EphA4受容体の形成、発現又は活性を下方調節する薬剤はEphA4ポリペプチド又はそのコード配列から誘導され、或いはその変異体又は類似体である。従って、例えば、薬剤はα-らせんであり、細胞浸透性であり、かつタンパク質-タンパク質相互作用を妨害できる炭化水素構造固定ペプチド又は微小タンパク質であってよい(例えば、Wilder et al., ChemMedChem. 2(8): 1149-1151, 2007を参照されたい:精査のためにはHenchey et al., Curr Opin Chem Biol. 12(6):692-697, 2008参照)。
一部の実施形態では、EphA4又は結合リガンド、エフリン、例えばエフリンA又はBエフリン;エフリンA4、A5、B2若しくはB3又は他のEphA4リガンド遺伝子又はその関連変形又はその変異体の公表されているヌクレオチド配列を有する核酸分子から薬剤を誘導する。変異体には、これらの分子の天然に存在する形態又はその全体若しくは一部にわたるその相補性形態と、中程度又は高度のストリンジェンシーの条件下で選択的ハイブリダイゼーションが達成されるように十分に類似しているか、或いは少なくとも約15個のヌクレオチドを含む比較ウィンドウにわたって天然拮抗薬ポリペプチド配列を定義するヌクレオチド配列と約60%〜90%又は90%〜98%の配列同一性を有する、核酸分子が含まれる。好ましくは、ハイブリダイゼーション領域は約12〜約18個以上の核酸塩基長さである。好ましくは、特定のヌクレオチド配列と参照配列との間の同一性パーセントは少なくとも約80%、又は85%、さらに好ましくは約90%以上の類似性、例えば約95%、96%、97%、98%、99%以上である。80%〜100%の同一性パーセントが包含される。ヌクレオチド配列の長さは、その提案された機能によって決まる。例えば、低分子干渉RNAは一般的に約20〜24個のヌクレオチドの長さであり、優勢な陰性機能を与えるために設計された分子は完全長又は実質的に完全長の分子が必要なことがある。既に述べたように、相同体も包含される。用語「相同体」(複数を含む)は広く、他の腫由来のものも含めた機能的及び構造的に関連する分子を意味する。相同体とオルソログが変異体の例である。
【0033】
本明細書では、「ハイブリダイゼーション」という表現を用いて、DNA-DNAハイブリッド又はDNA-RNAハイブリッドを生じさせるための相補性ヌクレオチド配列の対合を表す。相補性塩基配列は、塩基対合則で関連づけられる当該配列である。DNAでは、AがTと対合し、CがGと対合する。RNAでは、UがAと対合し、CがGと対合する。この点で、本明細書で使用する用語「マッチ」及び「ミスマッチ」は、相補性核酸鎖中の対合ヌクレオチドのハイブリダイゼーションの可能性を表す。上述した古典的なA-T及びG-C塩基対のようなマッチしたヌクレオチドは効率的にハイブリダイズする。ミスマッチは、効率的にハイブリダイズしないヌクレオチドの他の組合せである。本発明では、対合の好ましい機構は、オリゴマー化合物の鎖の相補性ヌクレオシド又はヌクレオチド塩基(核酸塩基)間の水素結合を含む。この水素結合は、ワトソン-クリック、フーグスティーン又は逆フーグスティーン水素結合であってよい。例えば、アデニンとチミンは、水素結合の形成を介して対合する相補性核酸塩基である。当業者には周知なように、ハイブリダイゼーションは可変環境下で起こりうる。
本明細書で使用する「ストリンジェンシー」という表現は、ハイブリダイゼーション中の温度及びイオン強度条件、並びに一定の有機溶媒の存否を表す。ストリンジェンシーが高いほど、配列間で観察される相補性の度合が高いだろう。
本明細書で使用する「ストリンジェントな条件」又は「中程度又は高度のストリンジェンシーの条件」は、高率の相補性塩基を有する、好ましくは完全な相補性を有するポリヌクレオチドだけがハイブリダイズする温度及びイオン条件を表す。必要なストリンジェンシーはヌクレオチド配列依存性であり、ハイブリダイゼーション中に存在する種々の成分によって決まり、ヌクレオチド類似体を使用すると大きく変化する。一般に、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度及びpHで特定配列の熱融点(Tm)より約10℃〜20℃低くなるように選択される。Tmとは、標的配列の50%が相補性プローブとハイブリダイズするときの温度(規定されたイオン強度及びpH下)である。
【0034】
当然のことながら、ポリヌクレオチドは、少なくとも低度のストリンジェンシー条件下、好ましくは少なくとも中程度のストリンジェンシー条件下、さらに好ましくは高度のストリンジェンシー条件下で標的配列とハイブリダイズする。本明細書で低度のストリンジェンシー条件との言及は、42℃でのハイブリダイゼーションのための少なくとも約1%v/v〜少なくとも約15%v/vのホルムアミド及び少なくとも約1M〜少なくとも約2Mの塩、並びに42℃で洗浄するための少なくとも約1M〜少なくとも約2Mの塩を包含する。低度のストリンジェンシー条件は、65℃でのハイブリダイゼーションのための1%のウシ血清アルブミン(BSA)、1mM EDTA、0.5M NaHPO4(pH 7.2)、7% SDS、並びに室温で洗浄するための(i)2xSSC、0.1% SDS;又は(ii)0.5% BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO4(pH 7.2)、5% SDSをも包含しうる。中程度のストリンジェンシー条件は、42℃でのハイブリダイゼーションのための少なくとも約16%v/v〜少なくとも約30%v/vのホルムアミド及び少なくとも約0.5M〜少なくとも約0.9Mの塩、並びに42℃で洗浄するための少なくとも約0.5M〜少なくとも約0.9Mの塩を包含する。中程度のストリンジェンシー条件は、65℃でのハイブリダイゼーションのための1%のウシ血清アルブミン(BSA)、1mM EDTA、0.5M NaHPO4(pH 7.2)、7% SDS、並びに42℃で洗浄するための(i)2xSSC、0.1% SDS;又は(ii)0.5% BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO4(pH 7.2)、5% SDSをも包含しうる。高度のストリンジェンシー条件は、42℃でのハイブリダイゼーションのための少なくとも約31%v/v〜少なくとも約50%v/vのホルムアミド及び少なくとも約0.01M〜少なくとも約0.15Mの塩、並びに42℃で洗浄するための少なくとも約0.01M〜少なくとも約0.15Mの塩を包含する。高度のストリンジェンシー条件は、65℃でのハイブリダイゼーションのための1% BSA、1mM EDTA、0.5M NaHPO4(pH 7.2)、7% SDS、並びに65℃超えの温度で洗浄するための(i)0.2xSSC、0.1% SDS;又は(ii)0.5% BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO4(pH 7.2)、1% SDSをも包含しうる。他のストリンジェントな条件は技術上周知である。当業者は、種々の因子を操作してハイブリダイゼーションの特異性を最適化できることを認めるだろう。最終洗浄液のストリンジェンシーの最適化は、高度のハイブリダイゼーションを確実にするために役立ちうる。詳細な例のため、Ausubelら(上記)の2.10.1〜2.10.16ページ及びSambrookら(1989)(上記)のセクション1.101〜1.104を参照されたい。
【0035】
2つ以上のポリヌクレオチド又はポリペプチド間の配列関係を記述するために使用する用語として、「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセンテージ」及び「実質的な同一性」が挙げられる。「参照配列」は、少なくとも12、頻繁には15〜18、多くの場合少なくとも25の単量体単位であり、単量体単位はヌクレオチドとアミノ酸残基を含めた長さである。2つのポリヌクレオチドをそれぞれ(1)2つのポリヌクレオチド間で同様の配列(すなわち、完全ポリヌクレオチド配列の一部のみ)、及び(2)2つの配列間で異なる配列を含みうるので、2つ(又は3つ以上)のポリヌクレオチド間の配列の比較は典型的に、配列類似性の局所領域を同定して比較するための「比較ウィンドウ」にわたって2つのポリヌクレオチドの配列を比較することによって行われる。「比較ウィンドウ」は、2つの配列を最適に整列させた後に、同数の隣接位置の参照配列と配列を比較する、少なくとも6、通常は約50〜約100、さらに通常は約100〜150の隣接位置の概念的セグメントを意味する。比較ウィンドウは、2つの配列の最適なアラインメントのため、参照配列(付加又は欠失を含まない)に比べて約20%以下の付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含んでよい。アルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Drive Madison, WI, USAのGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)のコンピュータによる実行によって、又は検査と、選択した種々の方法のいずれかで作成した最良アラインメント(すなわち、比較ウィンドウにわたって最高のパーセンテージの相同性をもたらす)とによって、比較ウィンドウを整列させるための配列の最適アラインメントを導くことができる。また、例えば、Altschul et al., Nucleic Acids Research 25:3389-3402, 1997によって開示されているプログラムのBLASTファミリーに言及することができる。配列解析の詳細な考察は、Unit 19.3 of Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Inc, Chapter 15, 1994-1998で見つかる。
【0036】
一部の実施形態では、本発明は、完全長ポリペプチド又は1つ以上のこれら分子の生物学的に活性な部分若しくはペプチド、例えば構造固定ペプチドの、拮抗薬としての使用を企図する。生物学的に活性な部分又はペプチドは、目標の拮抗薬の活性に寄与する1つ以上の結合ドメイン、例えばリガンド又は受容体結合ドメインを含む。一部の実施形態では、ペプチド拮抗薬はG-Hループを遮断して、eph及びエフリン結合ドメイン間の高い又は中程度の親和性の結合を阻止する。他の結合ドメインを図6に示す。完全長ポリペプチドの生物学的に活性な部分又はペプチド、例えば構造固定ペプチドは、例えば4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、80、90、100、120、150、300、350、400、450、500、550、600〜約640又は約700、800、900、1000、1200、又はそれ以上のアミン酸残基の長さであるポリペプチド又はペプチドであってよい。典型的に、リガンド/受容体結合部分は、約150〜300のアミノ酸残基である。例を図6に示す。
例示拮抗薬のアミノ酸配列は、表1に示すようにSEQ ID NO:2〜10で提示される。
【0037】
「変異体」拮抗薬ポリペプチドとして、可溶性EphA4、エフリンA又はエフリンB、例えばエフリンA4、A5、B2又はB3等の天然タンパク質から、該天然タンパク質のN-末端及び/又はC-末端への1つ以上のアミノ酸の欠失(切断)若しくは付加;該天然タンパク質の1つ以上の部位における1つ以上のアミノ酸の欠失若しくは付加;又は該天然タンパク質の1つ以上の部位における1つ以上のアミノ酸の置換によって誘導されたタンパク質が挙げられる。本発明が包含する変異体タンパク質は生物学的に活性、すなわち、それらは引き続きEphA4又はエフリン媒介シグナル伝達の抑制薬となる。変異体には、膜アンカー及び/又は膜貫通ドメインを欠いている可溶形が含まれる。拮抗薬変異体は、それらがEphA4又はその細胞結合リガンドの生物学的活性を抑制又は拮抗することに基づいて選択される。該変異体は、例えば、遺伝的多型性から又は人為操作よって生じうる。天然ポリペプチドの生物学的に活性な変異体は、デフォルトパラメーターを用いて現代の配列アラインメントプログラムで決定した場合、該天然タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも40%、50%、60%、70%、一般的に少なくとも75%、80%、85%、好ましくは約90%〜95%以上、さらに好ましくは約98%以上の配列類似性を有するであろう。拮抗薬ポリペプチドの生物学的に活性な変異体は、一般的に100、50又は20個ほどのアミノ酸残基だけ、好適には1〜15個ほどの少しのアミノ酸残基だけ、1〜10個ほど、例えば6〜10個、5個ほど、4、3、2、又は1個さえのアミノ酸残基だけ当該ポリペプチドと異なってよい。
一例では、Aasheim et al., Blood, 95(1): 221-230, 2000にエフリン-A4の機能的に活性なスプライス変異形が開示されている。スプライス変異体は、エキソンIVの最初の部分のオープンリーディングフレームの3'末端で146個のヌクレオチドを欠いている。この結果、カルボキシ末端が変化し、GPI-シグナル配列がない。cDNAでトランスフェクトされたCOS細胞は可溶性エフリン-A4を生成した。
アミノ酸の置換、欠失、切断、及び挿入などの種々の方法でEphA4又はEphA4結合性エフリンシグナル伝達拮抗薬ポリペプチド又はペプチドを変えることができる。このような操作方法は当技術分野で一般的に知られている。例えば、コード化DNAに突然変異を導入することによって、エフリンB又はエフリンAポリペプチドのアミノ酸配列変異体を調製することができる。突然変異誘発及びヌクレオチド配列変更の方法は技術上周知である。例えば、Kunkel, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 488-492, 1985; Kunkel et al., Methods in Enzymol., 154: 367-382, 1987; 米国特許第4,873,192号; Watson et al., Molecular Biology of the Gene, Fourth Edition, Benjamin/Cummings, Menlo Park, Calif., 1987;及びこれらの中で引用されている文献を参照されたい。問題のタンパク質の生物学的活性に影響を与えない適切なアミノ酸置換についてのガイダンスは、Dayhoffらのモデル(Natl. Biomed. Res. Found, 5: 345-358, 1978)で見つかる。Fc融合のような融合タンパク質が特に提案されている。該融合タンパク質は、典型的に連鎖配列を含む。
【0038】
点突然変異又は切断によって作製された組合せライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングする方法、及び選択した特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングする方法は技術上周知である。該方法は、ポリペプチドの組合せ突然変異誘発によって作製された遺伝子ライブラリーの迅速スクリーニングに適用可能である。ライブラリー中の機能突然変異体の頻度を増強する技術である再帰的アンサンブル突然変異誘発(recursive ensemble mutagenesis)(REM)をスクリーニングアッセイと併用して、有用なポリペプチド変異体を同定することができる(Arkin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 7811-7815, 1992; Delgrave et al., Protein Engineering, 6: 327-331, 1993)。あるアミノ酸を類似特性を有する別のアミノ酸と交換する等の保存的置換が望ましいだろう。
変異体ポリペプチドはその配列に沿って、参照アミノ酸配列と比較した場合、種々の位置に保存的アミノ酸置換を含んでよい。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似側鎖を有するアミノ酸残基と置き換わる置換である。類似側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野で定義されている。残基の側鎖置換基について環式又は非環式、及び芳香族又は非芳香族の自明の分類として、並びに小型か大型として、アミノ酸残基をさらに細分類することができる。残基が、カルボキシル炭素を含めて、さらなる極性置換基が存在するという条件で全部で4個以下の炭素原子を含む場合に残基は小型とみなされる。さらなる極性置換基が存在しない場合は全部で3個以下の炭素原子を含む場合に残基は小型とみなされる。小型残基は、当然、常に非芳香族性である。アミノ酸残基は、それらの構造によって2つ以上のクラスに分類される。天然に存在するタンパク質アミノ酸について、このスキームに従う細分類を表2に示す。
【0039】
保存的アミノ酸置換には、側鎖に基づくグループ化も含まれる。アミノ酸の変化が機能拮抗薬をもたらすかどうか、その標的に結合し、EphA4媒介シグナル伝達、受容体活性化、リン酸化などを抑制するときのその活性を分析することによって容易に決定することができる。容易に評価できる活性は当業者に既知であり、例えば、異核種単一量子コヒーレンス(heteronuclear single quantum coherence)(HSQC)スペクトルを観察する核磁気共鳴分光法(NMR)によって検出される結合又は二量体化若しくはオリゴマー化を決定するためのアッセイ、Biacore、動態、アフィニティー及びプルダウン解析が挙げられる。下表3に典型的置換という表題で保存的置換を示す。さらに好ましい置換を好ましい置換という表題で示す。本発明の範囲に含まれるアミノ酸置換は、一般に、(a)該置換の領域内のペプチド主鎖の構造、(b)標的部位における該分子の電荷若しくは疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持することに及ぼすその効果が有意には異ならない置換を選択することによって達成される。置換を導入した後、変異体を生物学的活性についてスクリーニングする。
当業者は、拮抗薬を修飾して活性、安定性、或いは必要な場合には、内在性若しくは導入された輸送分子又は担体を用いて血液脳関門を横断する能力を増強することができる。
一部の実施形態では、エフリン又はEphポリペプチドの類似体は、安定性と活性が増強しているか又は好ましくない薬理学的特性が低減している。生体膜、血液脳関門を横断する能力又は特異的基質とだけ相互作用する能力を向上させるために類似体を設計することもできる。従って、類似体は、親分子の一部の機能属性を保持しうるが、修飾された特異性を有してよく、或いは本文脈では、すなわち、対象に投与するために有用な新しい機能を達成することができる。この明細書で企図するポリペプチド薬の類似体は、限定するものではないが、側鎖の修飾、ペプチド、ポリペプチド若しくはタンパク質合成中の非天然アミノ酸及び/又はその誘導体の組込み及び架橋剤の使用並びにタンパク質性分子又はそれらの類似体に対して構造的制約を課す他の方法を包含する。
ペプチド合成中に非天然アミノ酸及び誘導体を組み込む例として、限定するものではないが、ノルロイシン、4-アミノ酪酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、t-ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、2-チエニルアラニン及び/又はアミノ酸のD-異性体の使用が挙げられる。本明細書で企図する非天然アミノ酸のリストを表4に示す。
架橋剤を用いて、例えば、ホモ-二官能性架橋剤、例えば(CH2)nスペーサー基(n=1〜n=6)を有する二官能性イミドエステル、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル並びに通常アミノ反応成分、例えばN-ヒドロキシスクシンイミド及び別の基特異性反応成分、例えばマレイミド又はジチオ成分(SH)又はカルボジイミド(COOH)を含むヘテロ-二官能性試薬を用いて3D構造を安定化することができる。さらに、例えば、Cα及びNα-メチルアミノ酸の組込み並びにアミノ酸のCα及びCβ原子間への二重結合の導入によって、ペプチドを構造的に制約することができる。
【0040】
別の態様では、本発明は、対象の神経組織の機能若しくは完全性を保護するか又は対象の神経損傷の速度、発生又は量を減少させるための組成物の製造におけるEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬の使用を提供する。神経組織として、CNS及びPNS組織、脳、脊髄、視神経などが挙げられる。一部の実施形態では、対象は神経損傷に関連する状態を有するか又は有する危険がある。
同様の実施形態では、対象の神経組織の機能若しくは完全性を保護するか又は対象の神経損傷の速度、発生又は量を減少させるための方法であって、前記対象にEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬を投与する工程を含む方法を提供する。一部の実施形態では、対象は神経損傷に関連する状態を有するか又は有する危険がある。
同様に、対象の神経組織の機能若しくは完全性を保護するか又は対象の軸索損傷の速度、発生又は量を減少させるのに使うEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬を提供する。一部の実施形態では、対象は神経損傷に関連する状態を有するか又は有する危険がある。
同様に、対象の神経組織の機能若しくは完全性を保護するため又は対象の軸索損傷の速度、発生又は量を減少させるために使うEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬を含む医薬組成物を企図する。一部の実施形態では、対象は神経損傷に関連する状態を有するか又は有する危険がある。
神経損傷は、軸索の切断、ニューロンの変性、又は脱髄をもたらす疾患又は障害から起こりうる。神経損傷を生じさせる条件の例として、外傷病変(例えば物理的傷害又は外科手術、及び圧縮傷害によって引き起こされた);虚血性病変(例えば大脳又は脊髄の閉塞及び虚血);悪性病変;感染病変(例えば膿腫から又はヒト免疫不全ウイルスによる感染、ライム病、肺結核、梅毒、又はヘルペス感染に付随して起こる);変性病変、例えば本明細書で言及する変性病変(例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病又は筋萎縮性側索硬化症に付随);栄養疾患又は障害に付随する病変(例えばビタミンB12欠乏、葉酸欠乏、ウェルニッケ病(Wernicke disease)、タバコ-アルコール弱視、マルキアファーヴァ・ビニャミ病(Marchiafava-Bignami disease)及びアルコール性小脳変性);全身病に付随する神経病変(例えば糖尿病、全身性エリテマトーデス、癌又はサルコイドーシスに付随);毒性物質によって引き起こされた病変(例えばアルコール、鉛又は神経毒);及び他の脱髄病変(例えばヒト免疫不全ウイルス関連ミエロパシー、種々の病因の横行ミエロパシー、進行性多巣性白質脳症(multifocal leukoencepholopathy)及び橋中心髄鞘崩壊症(central pontine myelinolysis))が挙げられる。
【0041】
本明細書述べる拮抗薬を本明細書で述べるNDD疾患の治療で使うための使用説明書と共に含む医療キットをも提供する。EphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬をMS等のNDDの治療の神経保護用の使用説明書と共に含む医療キットをも提供する。
本発明は、対象のMS等のNDDを治療するための治療プロトコルであって、順番に、前記対象由来の生体サンプルを軸索損傷についてスクリーニングする工程、さらなる神経損傷を軽減するのに十分であると提案されている時間及び条件下でEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬を投与する工程、及び軸索損傷について前記対象を再スクリーニングする工程を含む治療プロトコルをさらに提供する。一部の実施形態では、これとは別に又はこれに加えて、自己免疫性、炎症又は脱髄の証拠について前記サンプルを試験する。
「サンプル」との言及は、標的核酸分子又はポリペプチドが含むか、又は含む可能性のあるいずれの生体液、細胞、組織、器官又はその一部をも意味する。この用語は、個体中に存在するサンプルのみならず、個体から得られたか又は誘導されたサンプルをも包含する。例えば、サンプルは生検で得られた検体の病理組織切片、或いは組織培養に置かれたか又は組織培養に適応させた細胞であってよい。サンプルは、細胞レベル以下のフラクション又は抽出物、或いは精製若しくは粗製核酸又はポリペプチド標本であってよい。
【0042】
同様に、本発明の診断方法で使用できる親和性結合形式の種々の態様が知られている。親和性結合法は、一般的な実験室マニュアル、例えばHarlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1999に記載されている。
免疫親和性を利用する1つのアッセイでは、神経変性マーカーに結合する磁気性抗体を用いて該マーカーを付け、高Tc超伝導量子干渉装置を用いて遊離抗体と結合抗体、ひいてはマーカーの存在又はレベルを測定する。リポソーム免疫移動、液相競合ストリップイムノアッセイについては例えば、Glorio-Paulet et al., J Agric Food Chem 48 (5):1678-1682, 2000に記載されている。
別の実施形態では、本発明はMS疾患などのNDDの臨床的進行を軽減する能力について、いずれの1つ以上のEph又はエフリン調節薬をもスクリーニングする方法を提供する。
他の実施形態では、MS等のNDDの治療用の薬剤を同定するためのスクリーンであって、EphA4又はEphA4リガンドの機能活性を有するポリペプチドのレベル又は活性を調節する能力のスクリーニング剤を含むスクリーンを提供する。
【0043】
天然産物、組合せ合成有機又は無機化合物、ペプチド/ポリペプチド/タンパク質、核酸分子から拮抗薬を開発することができる。適切な薬剤をスクリーニング又は試験するため、これら全てを含むライブラリー又はファージ又は他の表示技術が利用可能である。天然産物として、サンゴ、土壌、植物、又は海洋若しくは南極環境由来の当該産物が挙げられる。小型有機分子のライブラリーを作製し、この技術分野の当業者に既知の高処理能力技術を用いてスクリーニングすることができる。例えば、米国特許第5,763,623号及び米国特許出願第20060167237号を参照されたい。組合せ合成は、共通又はサブセットの親構造の異なる置換を有する大多数の関連化合物が合成される非常に有用なアプローチを提供する。該化合物は通常オリゴマーでなく、例えば、鎖長、環の大きさ若しくは数又は置換が変化しているが、基本構造及び機能の点で類似している。仮想ライブラリーをも企図し、これらを構築して化合物をコンピュータシミュレーションによって(例えば、米国公開第20060040322号参照)、又は技術上周知のin vitro若しくはin vivoアッセイで試験することができる。試験に適した小型分子のライブラリーは技術上利用可能である(例えば、Amezcua et al., Structure (London) 10: 1349-1361, 2002参照)。タンパク質-タンパク質相互作用を破壊できる細胞内抗体について試験するために酵母菌SPLINT抗体ライブラリーが利用可能である(Visintin et al., (上記)参照)。分子ライブラリーの好適な合成方法の例は例えば以下の文献で見つかる:DeWitt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6909, 1993; Erb et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 11422, 1994; Zuckermann et al., J. Med. Chem. 37: 2678, 1994; Cho et al., Science 261: 1303, 1993; Carrell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2059, 1994; Carell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2061, 1994; and Gallop et al., J. Med. Chem. 37: 1233, 1994。
【0044】
従って、生物学的ライブラリー;空間的に取り扱える平行固相又は液相ライブラリー;逆重畳積分を必要とする合成ライブラリー法;「一ビーズ一化合物」ライブラリー法;及びアフィニティークロマトグラフィー選択を利用する合成ライブラリー法などの技術上周知の組合せライブラリー法の多数のアプローチのいずれを使用しても薬剤を得ることができる。生物学的ライブラリーアプローチはペプチドライブラリーに適するが、他の4つのアプローチはペプチド、非ペプチドオリゴマー又は化合物の小型分子ライブラリーに適用できる(Lam, Anticancer Drug Des. 12: 145, 1997; 米国特許第5,738,996号; 及び米国特許第5,807,683号)。化合物のライブラリーは、例えば、溶液中(例えばHoughten, Bio/Techniques 13: 412-421, 1992)、又はビーズ(Lam, Nature 354: 82-84, 1991)、チップ(Fodor, Nature 364: 555-556, 1993)、細菌(米国特許第5,223,409号)、胞子(米国特許第5,571,698号;第5,403,484号;及び第5,223,409号)、プラスミド(Cull et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1865- 1869, 1992)又はファージ(Scott and Smith, Science 249: 386-390, 1990; Devlin, Science 249: 404-406, 1990; Cwirla et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 6378-6382, 1990)上に現われうる。
本発明を以下の非限定例でさらに説明する。
【実施例】
【0045】
実施例1:可溶性EphA4受容体の生成
哺乳動物細胞内での一過性トランスフェクションによって、組換えマウスEphA4マウスFc(mEphA4mFc)又はヒトEphA4ヒトFc(hEphA4hFc)融合タンパク質を産生させた。細胞培養のため、InvitrogenからFreeStyle(商標)293-F細胞及び哺乳動物発現ベクターpcDNA3.1を得た。細胞をFreeStyle(商標)発現培地(Invitrogen)内で培養した。全ての組織培養培地をペニシリン/ストレプトマイシン/ファンギゾン試薬(Invitrogen)で補充し、細胞を8%のCO2の雰囲気のインキュベーター内で37℃にて維持した。
FreeStyle(商標)293-F細胞を使用するmEphA4mFc又はhEphA4hFcをコードする発現プラスミド(図6参照)の一過性トランスフェクションを293fectinトランスフェクション試薬(Invitrogen)を用いて製造業者の使用説明書に従って行った。1×106の生存細胞/mlの最終濃度で細胞(1000ml)をトランスフェクトし、Cellbag 2L(GE Healthcare)内で5日間37℃にて8%のCO2の雰囲気で2/10 Wave Bioreactorシステム2/10又は20/50(GE Healthcare)上でインキュベートした。8°の角度で毎分35回揺り動かす培養条件だった。トランスフェクションの4時間後、Pluronic F68(Invitrogen)を最終濃度0.1%v/vまで加えた。トランスフェクションの24時間後、細胞培養をTryptone N1(Organotechnie, France)で最終濃度0.5%v/vまで補充した。細胞培養上清を2500rpmの遠心分離で収集してから0.45μMのフィルター(Nalgene)に通した後、精製した。
マウスEphA4マウスFc及びヒトEphA4ヒトFcをコードするcDNA発現プラスミドを作製した。マウスIgG1Fcに融合したマウスEphA4(mEphA4mFc)、及びヒトIgG4Fcに融合したヒトEphA4(hEphA4hFc)をコードする合成遺伝子をそれぞれGenScript Corporation(Piscataway, New Jersey)及びGeneart AG(Regensburg, Germany)で構築した。各タンパク質のN末端の直前にコザック配列(GCCACC)を導入して翻訳開始を増した。マウスEphA4遺伝子、マウスIgG1Fc遺伝子、ヒトEphA4遺伝子及びヒトIgG4Fc遺伝子のコドン使用法をホモサピエンス遺伝子のコドンバイアスに適合させた。NheI制限酵素切断部位をcDNAの5'末端に導入し、XhoI制限酵素切断部位を3'末端に導入して、合成cDNAをNheI-XhoI消化pcDNA3.1中に連結した。cDNAをNheI及びXhoIで消化させてpcDNA3.1中に連結した。Qiagen Maxi又はGigaキットを用いて製造業者の使用説明書に従ってプラスミドDNAの大規模調製を行った。Big Dye Terminator v3.1 Cycle Sequencing及びApplied Biosystems Automated Sequencerを用いて両鎖を配列決定することによって、プラスミド構築物のヌクレオチド配列を検証した。
mEphA4mFc又はhEphA4hFcタンパク質のタンパク質発現の解析のため、mEphA4mFc又はhEphA4hFcをコードする発現構築物のトランスフェクションからの培養上清の一定分量20μlを4〜20%のTris-Glycine SDSポリアクリルアミドゲル上で電気泳動させ、クーマシーブルー試薬で染色することによって可視化した。mEphA4mFc又はhEphA4hFcタンパク質を含有する細胞培養上清を2500rpmの遠心分離で収集し、0.45μMのフィルター(Nalgene)に通した後、精製した。
精製のため、標的フローろ過を用いてEphA4Fcを含有する条件培地を濃縮した。濃縮培地をアフィニティークロマトグラフィーでタンパク質Aを用いて精製した。イオン交換クロマトグラフィーで内毒素を除去した。サイズ排除クロマトグラフィーを用いて凝集体を除去した。すなわち、他の分子量種由来のFc結合二量体EphA4タンパク質を分離した。1.3mg/mlに等価である、280で1.0の吸光度単位に基づいてタンパク質の定量化を行った。純度は、SDS-PAGE及びクーマシーブルー染色によるタンパク質の可視化を基礎とした。
【0046】
実施例2:アッセイ
炎症性浸潤の度合の組織学的解析に基づく疾患の重症度は、報告されているように脊髄の切片毎の炎症性湿潤巣の面積を基礎とする(Butzkueven et al., Glia 53: 696-703, 2006)。簡単には、一部の実施形態では、DAPI染色切片の総炎症性病変面積を、同一切片内で脊髄の総面積当たりの全ての炎症性湿潤巣の面積の合計百分率として計算する。マウス毎に15〜20の切片で計数を行う。半定量的尺度を用いて切片を格付けする(Soilu-Hanninen et al., J Neurosci Res 59: 712-721, 2000)。0は炎症性細胞なし;1は数個の炎症性細胞があり;2は中程度の血管周囲細胞浸潤(perivascular cuffing);3は濃厚な炎症性細胞浸潤、実質性壊死である。切片毎の病変数を定量化する。
試験対象で免疫細胞の免疫組織化学解析を行う。広範なT細胞(CD4、CD8、T細胞受容体)、B細胞(CD19)及び骨髄細胞(CD11b、IBA1)マーカーを調査することができる。いずれの集団も変化する場合には、さらに特異的な亜集団マーカーを利用する。脾臓細胞及びリンパ球のFACS解析でもこれらのマーカーを用いて、EAE誘発後又は拮抗薬投与後のEphA4-/-マウスの免疫学的状態に顕著な差異が存在するかどうかを決定する。
腰髄後角白質及び視神経切片で成熟及び未熟オリゴデンドロサイト数を定量化する。成熟オリゴデンドロサイト密度の比較のため、マウス抗-CC1抗体(APC Ab-7、Oncogene Research Products, Germany)で免疫染色した切片内又はトランスジェニックPLP-dsRed系に交雑させたマウス由来の切片内で成熟オリゴデンドロサイトの数を数える。PLP-発現(成熟)オリゴデンドロサイトは、マーカーdsRedを発現し;これらのマウスはC57BL/6バックグラウンド上にいる。ウサギ抗-NG2抗体(Chemicon)でオリゴデンドロサイト前駆体を標識する。オリゴデンドロサイトのアポトーシスの解析のため、TMR In Situ Cell Death Detectionキット(Roche)を用いて製造業者の使用説明書に従って切片をTUNEL標識する(Butzkueven et al., 2002 (上記))。切片をCC-1抗体で共染色する。DAPIを使用する核のフラグメント化又は凝縮によってTUNEL陽性細胞のアポトーシスを確認する。動物毎に脊髄と視神経について、5つの100μm離れた10μmの切片で切片毎にアポトーシス細胞の総数とアポトーシスオリゴデンドロサイトの数を数える。Mann Whitney U-試験を利用して統計上の意義を評価する。文献に記載されているように(Butzkueven et al., 2006 (上記))、切片のLuxolファストブルー染色を利用して疾患の経過にわたって脱髄及び再ミエリン化の程度を評価する。
【0047】
例えば、βアミロイド前駆体タンパク質(βAPP)の免疫染色並びにタウの過剰リン酸化及び凝集によって、軸索損傷を評価することができる。最近役に立った軸索の指標であるAPP陽性軸索終末球及び回転楕円体は、急性MS病変、慢性活性病変の活性境界内で検出されうるが、慢性不活性病変内での検出は低度であり(Kornek et al., 2000 (上記); Ferguson et al., 1997 (上記))、リン酸化したタウの免疫染色はMS/EAEプラーク内の軸索損傷の領域を明らかにする(Schneider et al. J Biol Chem. 279(53): 55833-95583, 2004)。一部の方法では、樹脂包埋切片のメチレンブルー染色及び規定脊髄領域内の軸索の数と面積の自動定量化を基礎とした画像解析(Image Pro)を都合よく使用する。後索を動物間の比較領域として使用する。一部の実施形態では、血液中のホスホ-NFのELISAベース解析が軸索損傷の正確なマーカーである。Gresle et al., J Neurosci Res. 86(16): 3548-3555, 2008によって精査されたように、マウスの神経炎症性の文脈では、ホスホ-NF-Hのレベルは軸索損失と非常に関係がある。ヒトでは、MS対象の再発の際にCSFのpNF-Hレベルが上昇したので、このレベルが臨床的に妥当なマーカーの可能性がある。より高いレベルは、三年の期間にわたる続発性進行経過へのより速い転換とも関連し、再発後の不十分な臨床結果を予測するものだった。
【0048】
視神経の軸索損失は、臨床症状の発生前のEAEのMOGモデルで報告されており(Hobom et al., Brain Pathol 14: 148-157, 2004)、EAEモデルの臨床症状の発生前である6日時点から組織を調べる(Butzkueven et al., 2002 (上記))。試験対象由来の切片をリン酸化したタウ及びβAPPに備えて免疫染色し、H&Eで逆染色してプラーク領域を強調する。腰髄及び視神経の縦断面及び横断面内のプラーク及び隣接の正常に見える白質(normal appearing white matter)(NAWM)内のβAPP終末球/回転楕円体の数を数える。脊髄内及び視神経全体のプラーク内及びプラークに隣接する総軸索密度をこれら組織のメチレンブルー染色した断面積の自動計数によって決定する。動物毎に各組織の少なくとも5つの50μm離れた切片を計数し、結果を1mm2当たりの軸索の平均密度として表す。Mann Whitney U-試験で統計的意義を評価する。
【0049】
プラーク内及び隣接NAWM内のグリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)陽性アストロサイトを免疫染色してその数を数えて、試験経過中の各時点で1mm2当たりのアストロサイトとして表す。画像解析(NIH Image J)を利用して、フィールド内のピクセルの総数の百分率としてフィールド毎のGFAP染色の量を決定する(図3のように)。GFAP染色した組織のデジタル画像をマウス1匹当たり組織毎に少なくとも5つの切片(10μm)中、病変内とその周囲の複数(5〜10)部位で高倍率(×100)にて取る。GFAP発現レベルのいずれの差異をも調べるため、脊髄のホモジネートをウェスタン解析用に加工する。NIH Image Jソフトウェアを用いるオートラジオグラムで濃度測定を行って、GFAPバンドの相対的レベルを決定し、β-アクチンレベルに正規化する。
野生型マウスの疾患の経過にわたってEphA4発現のレベルを測定する。脊髄と視神経の切片をEphA4に備えて免疫染色する。脊髄組織内でEphA4発現及びリン酸化のレベルをも測定する。腰髄組織をホモジナイズし、ウェスタン解析用に一定分量のライセートを採取する。残りを抗-EphA4抗体による免疫沈降法で使用し、次いでホスホチロシン及びEphA4発現について精査する。
【0050】
実施例3:EphA4の欠乏がMSモデルの疾患の進行と機能的結果を変える
(EAEの誘発及び臨床評価)
EphA4がEAEの重症度及び進行において果たす役割を明らかにし、EphA4を遮断することがMS治療の可能性をもたらすかどうかを決定するため、EphA4-/-(Dottori et al., Proc Natl Acad Sci U S A 95: 13248-53, 1998)及び野生型マウスのEAEの臨床経過及び重症度、並びに病理学的及び組織学的特徴を調査した。
EphA4-/-(Dottori et al., 1998 (上記))マウスはC57BL/6バックグラウンドに戻し交配されているので、EAEのMOGモデルをこれらのマウスと共に使用する。C57BL/6マウスは、MOG 35-55(MEVGWRSPFSRVVHLYRNGK(SEQ ID NO:1))ペプチド(Butzkueven et al., 2002 (上記); Slavin et al., Autoimmunity 28:109-20, 1998; Gold et al., (上記))を利用するか又はMOG特異性T細胞の受動転移によるEAEの誘発を受けやすい。C57BL/6バックグラウンドに基づいたEAEの両MOGモデルの臨床経過は、CNS全体で、特に脊髄及び視神経内での免疫細胞の浸潤及び限局性脱髄によって特徴づけられる慢性的進行形の傾向がある。
EAEの疾患の重症度を1ヶ月まで毎日、さらなる同齢集団について3ヶ月までの間、以下の標準的な5点の対麻痺尺度を用いて評価した:0は臨床症状なし;1は毛皮ラッフリング(fur ruffling)又は遠位尾部脱力;1.5は尾部無緊張症又はわずかな後肢麻痺;2は完全な尾部麻痺;2.5は完全な尾部麻痺及び一方又は両方の後肢に作用する部分的な麻痺;3は完全な後肢麻痺;3.5は仰向けに置かれたときに正しい位置に戻れない;4は両後肢の完全な麻痺及び前肢脱力又は瀕死の状態;及び5は死亡。4等級に達したマウスを倫理委員会の要件に従って殺し、組織学のためCNS組織を採取する。このモデルを用いた臨床症状の発生は典型的にほぼ10〜12日である(Butzkueven et al., 2002 (上記))。
n=10のEphA4-/-マウス及びn=10のコントロールの野生型同腹仔を用いる研究を行った(図1参照)。両同齢集団で同様に臨床徴候の発生が始まったが、疾患は野生型マウスの方が重症であり、平均臨床等級は2.3±0.3に達したが(最大等級=4;60%の最大限に達した等級は2.5以上)、EphA4ヌルマウスは平均1.7±0.2に達した(最大等級が2.75;60%の最大限に達した等級は1.5以下)。従って、EphA4-/-マウスではEAEの臨床経過はそれほど重症でない。
【0051】
実施例4:EphA4-/-及び野生型マウスにおけるEAEに冒された組織の免疫組織学的特徴
実施例1で述べたマウス由来の骨髄切片の解析は、DAPI(図示せず)並びに小グリア細胞マーカーCD11b及びIBA1(図示せず)で評価した場合、野生型及びEphA4ノックアウトの両マウスで典型的な炎症性浸潤を示した。切片毎の病変の数にも外側白質内のDAPI核の数にも有意な差異はなかった。
血液中のホスホ-神経線維のレベルを、疾患の重症度と良い関連性を示す軸索損傷の代理マーカーとして評価し、軸索損傷の組織学的特徴をも評価した(Gresle et al, 2008 (上記))。EphA4ノックアウトマウスはホスホ-NFのレベル減少を示し、該マウスの軸索損傷が軽減したことを示唆している(図2参照)。
【0052】
実施例5:EphA4はEAE病変のアストロサイト上で発現される
アストロサイトのグリオーシスはMS病変の特徴である。EphA4がEAE病変のアストロサイト上で発現されるかを評価するため、MOG35-55ペプチド(Butzkueven et al., 2002 (上記))の投与で実験的にEAEを誘発したC57BL/6マウス由来の脊髄切片をEphA4及びグリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)発現に備えて免疫染色した。EphA4は等級3のEAEのマウスの脊髄内の病変周囲の全てのグリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)陽性、ひいては反応性アストロサイト上で発現された(図3)。
【0053】
実施例6:CNS損傷後のEphA4のブロッカー
CNS傷害後、並びにMS及びEAE病変内では、血液脳関門が破られるので、このことがCNS損傷の部位だけに拮抗薬が近づく経路をもたらす。EphrinA5-Fcの存在を検出するため、傷害された脊髄の切片を、ビオチン標識した抗-ヒトIgG、次いでベクターABCキット及びDABを用いて免疫染色した。PBS処理した脊髄は標識を示さなかったが、EphrinA5-Fc処理した脊髄は病変部位で標識を示した。このことは、EphrinA5-Fcは血液脳関門を横断し、実質に入ることができたことを示唆している(図4)。EAE病変内で血液脳関門が破られるので、EphA4ブロッカーのIP注射によるEAEの治療は、該病変で冒されたCNS領域に特異的にこれらの分子を送達するための実行可能な方法であろう。
【0054】
実施例7:アストロサイトに非複合型エフリンA5-Fcを加えると、IFNγ誘発EphA4活性化を遮断する
新生皮質から培養した野生型アストロサイトを、エフリンA5-Fcの活性化形を生じさせるため抗ヒトIgGFcと複合化したか又はEphA4の活性化を遮断する非複合型のままのエフリンA5-Fcで処理した。基礎条件下及びサイトカインに応答した場合のEphA4活性化に及ぼす効果を評価した。基礎条件下で複合型(ポリ)エフリンA5-FcはEphA4のリン酸化を増加させた。重要なことに、基礎条件下とIFNγに応答した場合の両方で非複合型(モノ)エフリンA5-FcはEphA4のリン酸化を減少させた(図5)。従って、ニューロンの成長円錐応答を制御することに加え、EphA4シグナル伝達の調節はアストロサイトにも直接効果を及ぼす。
【0055】
実施例8:さらなる研究
実施例1で述べたようにMOGによってEAEを誘発したC57BL/6マウスに可溶性EphrinA5-Fc又はEphA4-Fc等のEphA4遮断薬を投与する。実施例2のアッセイを用いて、臨床的疾患の発生前、発生中、発生後のEphA4拮抗薬の効果、例えば臨床的重症度、炎症性浸潤及びオリゴデンドロサイトの生存などに及ぼす効果を評価する。
一部の実施形態では、Eph-ヒトIgGFc組換えタンパク質とエフリン-ヒトIgGFc組換えタンパク質を両方とも発現するCHO細胞トランスフェクタント系を使用する(Coulthard et al., Growth Factors 18: 303-17, 2001)。可溶性エフリンA5-Fc又はEphA4-Fcタンパク質をこれらの系から生成する。放射標識したエフリンA5を用いた研究では、IP注射されたエフリンA5の65%が迅速に組織中に一掃され、試験した全ての組織内で同様の取込みである。しかし、血液からのクリアランスは相対的に遅く、注射された用量の5%が24時間の循環で残存する。このことは1日の投与計画が有効な循環抑制薬を維持できるであろうことを示唆している。そのままの非クラスター化エフリンA5-Fc又はEphA4-FcをEAE罹患動物で試験する。
IP注射されたEphrinA5-Fcが脊髄傷害のCNS損傷部位でCNS実質に入り、そこで血液脳関門を破壊するという予備データを考慮して、EAEの最初の研究はこの投与経路を利用する。ヒト-IgGに備えて免疫染色することによってCNS実質中への侵入を評価する。可溶制エフリンはEAE病変部位で血液脳関門を横断すると予測されるが、接近が不十分な場合、第4脳室内に挿入したカテーテルと共にミニ浸透性注入ポンプ(Alzet)を使用し、該ポンプを皮膚下に移植する。
最初の研究は、脊髄研究で有効であることが分かっている、500μg/日/マウスのエフリンA5-Fc又はEphA4-Fcの単回IP注射を利用する。疾患の誘発から、解析用に組織を採取するまで拮抗薬を投与する。一部の実施形態では、疾患の臨床症状の発生前か又はEAEの誘発前に投与する。その後の研究は、臨床症状の発生までか又は軸索損傷の評価後に投与を遅らせる等、治療開始のタイミングを改善する。必要に応じて用量を最適化する。
【0056】
本明細書で引用したあらゆる特許、特許出願、及び刊行物の開示は、参照によってその内容全体が本明細書に取り込まれる。
本明細書全体を通じて、その目標は、本発明をいずれか1つの実施形態又は特有集団の特徴に限定することなく、本発明の好ましい実施形態を記述することだった。従って、当業者は、本開示に照らして、本発明の範囲から逸脱することなく、例示された特定の実施形態に種々の修正及び変更を加えられることを理解するだろう。全てのこのような修正及び変更は、添付の特許請求の範囲内に包含されるものとする。
【0057】
表1
配列識別子の概要

【0058】
表2
アミノ酸の細分類

【0059】
表3
典型的及び好ましいアミノ酸置換

【0060】
表4
非伝統的アミノ酸のコード
______________________________________________________________________________
非伝統的 コード 非伝統的 コード
アミノ酸 アミノ酸
______________________________________________________________________________
α-アミノ酪酸 Abu L-N-メチルアラニン Nmala
α-アミノ-α-
メチルブチラート Mgabu L-N-メチルアルギニン Nmarg
アミノシクロプロパン- Cpro L-N-メチルアスパラギン Nmasn
カルボキシラート L-N-メチルアスパラギン酸 Nmasp
アミノイソ酪酸 Aib L-N-メチルシステイン Nmcys
アミノノルボルニル- Norb L-N-メチルグルタミン Nmgln
カルボキシラート L-N-メチルグルタミン酸 Nmglu
シクロヘキシルアラニン Chexa L-Nメチルヒスチジン Nmhis
シクロペンチルアラニン Cpen L-N-メチルイソロイシン Nmile
D-アラニン Dal L-N-メチルロイシン Nmleu
D-アルギニン Darg L-N-メチルリジン Nmlys
D-アスパラギン酸 Dasp L-N-メチルメチオニン Nmmet
D-システイン Dcys L-N-メチルノルロイシン Nmnle
D-グルタミン Dgln L-N-メチルノルバリン Nmnva
D-グルタミン酸 Dglu L-N-メチルオルニチン Nmorn
D-ヒスチジン Dhis L-N-メチルフェニルアラニン Nmphe
D-イソロイシン Dile L-N-メチルプロリン Nmpro
D-ロイシン Dleu L-N-メチルセリン Nmser
D-リジン Dlys L-N-メチルスレオニン Nmthr
D-メチオニン Dmet L-N-メチルトリプトファン Nmtrp
D-オルニチン Dorn L-N-メチルチロシン Nmtyr
D-フェニルアラニン Dphe L-N-メチルバリン Nmval
D-プロリン Dpro L-N-メチルエチルグリシン Nmetg
D-セリン Dser L-N-メチル-t-ブチルグリシン Nmtbug
D-スレオニン Dthr L-ノルロイシン Nle
D-トリプトファン Dtrp L-ノルバリン Nva
D-チロシン Dtyr α-メチル-アミノイソブチラート Maib
D-バリン Dval α-メチル-γ-アミノブチラート Mgabu
D-α-メチルアラニン Dmala α-メチルシクロヘキシルアラニン Mchexa
D-α-メチルアルギニン Dmarg α-メチルシクロペンチルアラニン Mcpen
D-α-メチルアスパラギン Dmasn α-メチル-α-ナフチルアラニン Manap
D-α-メチルアスパルタート Dmasp α-メチルペニシラミン Mpen
D-α-メチルシステイン Dmcys N-(4-アミノブチル)グリシン Nglu
D-α-メチルグルタミン Dmgln N-(2-アミノエチル)グリシン Naeg
D-α-メチルヒスチジン Dmhis N-(3-アミノプロピル)グリシン Norn
D-α-メチルイソロイシン Dmile N-アミノ-α-メチルブチラート Nmaabu
D-α-メチルロイシン Dmleu α-ナフチルアラニン Anap
D-α-メチルリジン Dmlys N-ベンジルグリシン Nphe
D-α-メチルメチオニン Dmmet N-(2-カルバミルエチル)グリシン Ngln
D-α-メチルオルニチン Dmorn N-(カルバミルメチル)グリシン Nasn
D-α-メチルフェニル
アラニン Dmphe N-(2-カルボキシエチル)グリシン Nglu
D-α-メチルプロリン Dmpro N-(カルボキシメチル)グリシン Nasp
D-α-メチルセリン Dmser N-シクロブチルグリシン Ncbut
D-α-メチルスレオニン Dmthr N-シクロヘプチルグリシン Nchep
D-α-メチルトリプトファン Dmtrp N-シクロヘキシルグリシン Nchex
D-α-メチルチロシン Dmty N-シクロデシルグリシン Ncdec
D-α-メチルバリン Dmval N-シクロドデシルグリシン Ncdod
D-N-メチルアラニン Dnmala N-シクロオクチルグリシン Ncoct
D-N-メチルアルギニン Dnmarg N-シクロプロピルグリシン Ncpro
D-N-メチルアスパラギン Dnmasn N-シクロウンデシルグリシン Ncund
D-N-メチルアスパルタート Dnmasp N-(2,2-ジフェニルエチル)グリシン Nbhm
D-N-メチルシステイン Dnmcys N-(3,3-ジフェニルプロピル)グリシン Nbhe
D-N-メチルグルタミン Dnmgln N-(3-グアニジノプロピル)グリシン Narg
D-N-メチルグルタマート Dnmglu N-(1-ヒドロキシエチル)グリシン Nthr
D-N-メチルヒスチジン Dnmhis N-(ヒドロキシエチル))グリシン Nser
D-N-メチルイソロイシン Dnmile N-(イミダゾリルエチル))グリシン Nhis
D-N-メチルロイシン Dnmleu N-(3-インドリルエチル)グリシン Nhtrp
D-N-メチルリジン N-メチル-γ-アミノブチラート Nmgabu
N-メチルシクロヘキシル Dnmlys
アラニン Nmchexa D-N-メチルメチオニン Dnmmet
D-N-メチルオルニチン Dnmorn N-メチルシクロペンチルアラニン Nmcpen
N-メチルグリシン Nala D-N-メチルフェニルアラニン Dnmphe
N-メチルアミノ
イソブチラート Nmaib D-N-メチルプロリン Dnmpro
N-(1-メチルプロピル)
グリシン Nile D-N-メチルセリン Dnmser
N-(2-メチルプロピル)
グリシン Nleu D-N-メチルスレオニン Dnmthr
D-N-メチル
トリプトファン Dnmtrp N-(1-メチルエチル)グリシン Nval
D-N-メチルチロシン Dnmtyr N-メチルa-ナフチルアラニン Nmanap
D-N-メチルバリン Dnmval N-メチルペニシラミン Nmpen
γ-アミノ酪酸 Gabu N-(p-ヒドロキシフェニル)グリシン Nhtyr
L-t-ブチルグリシン Tbug N-(チオメチル)グリシン Ncys
L-エチルグリシン Etg ペニシラミン Pen
L-ホモフェニルアラニン Hphe L-α-メチルアラニン Mala
L-α-メチルアルギニン Marg L-α-メチルアスパラギン Masn
L-α-メチル
アスパルタート Masp L-α-メチル-t-ブチルグリシン Mtbug
L-α-メチルシステイン Mcys L-メチルエチルグリシン Metg
L-α-メチルグルタミン Mgln L-α-メチルグルタマート Mglu
L-α-メチルヒスチジン Mhis L-α-メチルホモフェニルアラニン Mhphe
L-α-メチルイソロイシン Mile N-(2-メチルチオエチル)グリシン Nmet
L-α-メチルロイシン Mleu L-α-メチルリジン Mlys
L-α-メチルメチオニン Mmet L-α-メチルノルロイシン Mnle
L-α-メチルノルバリン Mnva L-α-メチルオルニチン Morn
L-α-メチルフェニル
アラニン Mphe L-α-メチルプロリン Mpro
L-α-メチルセリン Mser L-α-メチルスレオニン Mthr
L-α-メチル
トリプトファン Mtrp L-α-メチルチロシン Mtyr
L-α-メチルバリン Mval L-N-メチルホモフェニルアラニン Nmhphe
N-(N-(2,2-ジフェニル
エチル) Nnbhm N-(N-(3,3-ジフェニルプロピル) Nnbhe
カルバミルメチル)グリシンカルバミルメチル)グリシン
1-カルボキシ-1-(2,2-ジフェニル- Nmbc
エチルアミノ)シクロプロパン
______________________________________________________________________________
【0061】
表5
略語のリスト

【0062】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療が必要な対象の神経変性疾患(NDD)の治療方法であって、前記対象にEphA4拮抗薬又はEphA4リガンド拮抗薬を投与する工程を含む方法。
【請求項2】
前記拮抗薬がEphA4に結合してそのレベル又は活性を下方制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記拮抗薬が可溶性エフリン又はその機能性変異体若しくは類似体である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記拮抗薬が可溶性エフリンA5、可溶性エフリンB2又は可溶性エフリンB3である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記拮抗薬が、EphA4に結合してそのレベル又は活性を下方制御する抗体又は抗原結合性フラグメントである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記拮抗薬がEphA4結合性エフリンに結合してそのレベル又は活性を下方制御する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記拮抗薬が可溶性EphA4又はその機能性変異体若しくは類似体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記可溶性EphA4がEphA4-Fcである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記拮抗薬が、EphA4結合性エフリンに結合してそのレベル又は活性を下方制御する抗体又は抗原結合性フラグメントである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記拮抗薬が、EphA4若しくはEphA4リガンド又はEphA4若しくはEphA4リガンドをコードしている核酸に結合してそのレベル又は活性を下方制御する核酸、ポリペプチド、ペプチド又は有機分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記拮抗薬を少なくとも1種の他の治療薬又は手順と共に投与する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記拮抗薬が前記疾患の臨床的進行を軽減する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象がNDDの危険があるか又はNDDの臨床徴候を示している、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記神経変性疾患が多発性硬化症(MS)又はその変形である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、前記対象由来の生体サンプルを軸索損傷についてスクリーニングする工程を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が、より少ない神経損傷若しくはより少ない進行性神経機能障害を示すか又は示す可能性がある、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記拮抗薬が、前記対象の神経組織の機能若しくは完全性を保護するか又は前記対象で起こる神経損傷の速度、発生若しくは量を減少させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記拮抗薬が、MS等のNDDの慢性進行段階中に、前記対象の神経組織の機能若しくは完全性を保護するか又は前記対象で起こる神経損傷の速度、発生若しくは量を減少させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記神経機能障害が四肢脱力である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記投与が、NDDの1つ以上の臨床症状の発生前若しくは発生時又はNDDの1つ以上の臨床症状の再発の発生前若しくは発生時である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
脳、脊髄、又は視神経に局所投与する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−285413(P2010−285413A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−157308(P2009−157308)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2008年12月12日 http://www.sallyiayconferences.com.au/ans2009/index.htmlにおける発表
【出願人】(509060039)ザ ユニヴァーシティー オブ メルボルン (6)
【出願人】(509185893)ハワード フローリー インスティテュート (1)
【Fターム(参考)】