説明

治療装置

【課題】温熱を用いた癌の治療技術であって、癌や腫瘍を治療するのに必要な条件を正確に設定することが可能な治療技術を実行することが出来る装置の提供。
【解決手段】患者から抽出された間葉系幹細胞(例えば、脂肪由来の幹細胞:MSCs)を培養する培養装置(1)と、培養装置(1)により培養された間葉系幹細胞を所定の温度(例えば43℃)で所定時間(例えば45分間)加熱(高温処理)する加熱装置(2)と、加熱された間葉系幹細胞(HS−MSCs)の上清(濾過された濾液、或いは、静置した上澄み)を回収する上清回収装置(3)と、上清回収装置(3)により回収された上清を生理食塩水により希釈する希釈装置(4)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に癌の治療技術に適用される装置に関する。より詳細には、本発明は、温熱を用いた癌の治療技術に適用される装置に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の治療については、従来から、種々提案されている。
温熱療法もその一つであり、腫瘍が存在する組織の温度を40℃〜43℃にまで上昇することにより、癌細胞を破壊することが出来る。そして、温熱療法を化学療法や放射線治療と組み合わせることにより、癌細胞の発生、増殖を抑制することが可能になる。
【0003】
しかし、温熱療法は、どのようなメカニズムによって腫瘍を支持する機能を持つ間質細胞に影響を及ぼし、癌細胞を破壊し、癌細胞の発生を抑制し、或いは増殖を抑制するのかについては、現時点では不明な点が多い。
そして、温熱療法と癌細胞の破壊や、癌細胞の抑制との関連が明瞭でないため、どの様な癌や腫瘍に温熱療法が有効であるのか、腫瘍が存在する組織の加熱時間をどの程度設定すれば良いのか等、温熱療法によって癌や腫瘍を治療するのに必要な条件を正確に設定することが困難であった。
そのため、温熱療法は、癌の治療方法としては、副次的な位置に留まっているのが実情である。
【0004】
その他の従来技術としては、例えば、癌の病巣部位の凍結と解凍を交互に行い、癌を死滅させる凍結療法を施術するに際して、施術における労力を軽減し、且つ、正確で効率的な治療を実現するために、施術に用いられる侵入具の侵入方向、回転角度、進行ルートの何れかを決定する治療装置が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、係る従来技術は、癌の治療に関する技術ではあるが、上述した温熱療法における問題点を解消するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−167100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、温熱を用いた癌の治療技術であって、癌や腫瘍を治療するのに必要な条件を正確に設定することが可能な治療技術を実行することが出来る装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は種々研究の結果、脂肪由来の幹細胞(MSCs)或いは羊水由来の幹細胞を40℃〜43℃まで加熱する高温処理を行い、高温処理が為された前記幹細胞(HS−MSCs)の上清を癌細胞ラインに投与すると、癌細胞或いは腫瘍細胞の生存率が減少し、当該癌細胞或いは腫瘍細胞の核が凝縮して、抗癌細胞(例えば、sub−G1細胞)の増加が促進されることに着目した。
【0008】
本発明の治療装置は、患者から抽出された間葉系幹細胞(例えば、脂肪由来の幹細胞:MSCs)を培養する培養装置(100)と、培養装置(100)により培養された間葉系幹細胞を所定の温度(例えば43℃)で所定時間(例えば45分間)加熱(高温処理)する加熱装置(200)と、加熱された間葉系幹細胞(HS−MSCs)の上清(濾過された濾液、或いは、静置した上澄み)を回収する上清回収装置(300)と、上清回収装置(300)により回収された上清を生理食塩水により希釈する希釈装置(400)を備えていることを特徴としている。
【0009】
本発明において、前記希釈装置(400)は、生理食塩水と前記上清との混合溶液を、間葉系幹細胞を抽出した患者(例えば、肺癌その他の疾病を有する患者P)に投与する点滴の点滴容器(500)に充填する充填機構(440)を有しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
上述する構成を具備する本発明によれば、患者(P)から抽出された間葉系幹細胞(例えば、脂肪由来の幹細胞:MSCs)を培養装置(100)で培養し、培養された間葉系幹細胞(MSCs)を、加熱装置(200)で所定の温度(例えば43℃)で所定時間(例えば45分間)加熱(高温処理)することにより、患者から抽出された間葉系幹細胞(MSCs)は、繊維芽細胞上の状態から、いびつな細胞形態へと変化する。
この加熱により変性したいびつな細胞形態の間葉系幹細胞(HS−MSCs)は、当該幹細胞表面のタンパク質が変性し、当該変性したタンパク質が抗癌作用を奏する。
すなわち、間葉系幹細胞(MSCs)は通常、癌組織の間質細胞として、癌細胞の増殖や浸潤に対して促進的に作用するが、間葉系幹細胞(MSCs)に加熱処理を施すことにより、癌細胞の成育を抑制するサイトカイン類が放出され、その結果癌細胞の増殖は阻害される。
そして、加熱処理によって抗癌機能を獲得した加熱間葉系幹細胞(HS−MSCs)の上清を回収し、当該上清を生理食塩水によって希釈し、再び患者(P)の体内に点滴することにより、患者(P)の体内からは、癌細胞が徐々に消滅していく。
特に肺癌の場合には、点滴により上清(高温処理された間葉系幹細胞の上清)を患者(P)に投与すると、肺には投与された成分が集中するので、癌抑制の効果が良好に発揮される。
【0011】
本発明によれば、生理食塩水は人体に無害であり、また、上清(高温処理された間葉系幹細胞の上清)は、点滴で当該上清を投与された患者(P)から摘出した間葉系幹細胞(例えば、脂肪由来の幹細胞:MSCs)を培養したものを高温処理しているので、点滴により患者(P)の体内に投与されても、拒絶反応の問題が生じることがなく、安全である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の概要を示すブロック図である。
【図2】実施形態における培養装置を示すブロック図である。
【図3】レーダーチャートの一例を示す図である。
【図4】培養装置の変形例を示すブロック図である。
【図5】実施形態における加熱装置を示すブロック図である。
【図6】実施形態における上清回収装置を示すブロック図である。
【図7】実施形態における希釈装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態の概要を示している。
実施形態に係る治療装置は、肺癌の治療装置であり、図1では全体を符号600で示している。
【0014】
図1において、治療装置600は、培養装置100、加熱装置200、上清回収装置300、希釈装置400、第1のマニピュレータ(ロボットハンド)M1、第2のマニピュレータM2、第3のマニピュレータM3を備えている。
【0015】
治療装置600を用いた癌治療では、先ず、肺癌患者Pから脂肪由来の幹細胞(MSCs)を公知の手段(例えば腹腔鏡下手術等)によって摘出する。
そして、摘出した脂肪由来の幹細胞(MSCs)を、培養装置100により培養する。
【0016】
培養装置100で培養された幹細胞は、培養容器(例えば、図2におけるシャーレ1)ごと、加熱装置200に移動される。
培養された幹細胞を培養容器1ごと培養容器100から加熱装置200へ移動するに際しては、明確には図示されていないが、第1のマニプュレータM1を用いて行なわれる。
【0017】
第1のマニプュレータM1により、培養容器1ごと幹細胞を加熱装置200へ移動したならば、加熱装置200において幹細胞の培養容器1が載置された空間は、所定の温度(例えば、43℃)まで加熱される。
加熱については、いわゆる「ハイパーサーミア療法」で用いられる加熱方法と同様な方法で行なうことが出来る。図示の実施形態では、温度管理が容易な電磁誘導加熱(IH加熱)により、加熱装置200内が加熱される。
図5を参照して後述するが、加熱装置200はタイマ204(図1では図示せず)を具備している。
【0018】
加熱装置200内の空間(培養容器1は載置されている空間)が所定温度(例えば43℃)まで昇温されたならば、タイマ204による計時を開始する。培養容器1は載置されている空間が所定温度(例えば43℃)となった状態を、所定時間(例えば45分間)だけ保持するためである。
タイマ204により所定時間の経過が計時されたならば、前記空間(培養容器1は載置されている空間)の温度を常温まで降温する。
これにより、培養容器1内の幹細胞が所定温度(例えば43℃)まで加熱された状態が、所定時間(例えば45分間)だけ保持されるのである。
【0019】
加熱装置200により加熱され、高温処理が為された前記幹細胞(HS−MSCs)は、第2のマニピュレータM2により、培養容器1(図2参照)から上清回収装置300に移動される。
上清回収装置300においては、高温処理が為された前記幹細胞(HS−MSCs)から上清(濾過された液体、或いは、上澄み)が回収される。
上清回収装置300の詳細については、図6を参照して後述する。
【0020】
上清回収装置300では、HS−MSCsの上清が抽出されて、上清回収容器330(図6参照)に充填される。上清が充填された上清回収容器330は、第3のマニピュレータM3により、希釈装置400へ移動される。
HS−MSCsから上清を回収した残存物(沈殿或いは固相)は、上清回収装置300における残存物排出機構320(図6参照)により、上清回収装置300から排出されて、図示しない廃棄物処理装置により処理される。
図示しない廃棄物処理装置は、残存物、残存物から発生した気相物質や微粒子が大気中に拡散しない態様で、当該残存物を処理(例えば焼却処理)する。
【0021】
希釈装置400では、上清回収装置300で抽出された(HS−MSCsの)上清が生理食塩水により希釈される。
希釈割合は、例えば、前記上清70ccに対して、生理食塩水が250ccである。
希釈装置400の詳細については、図7を参照して後述する。
【0022】
生理食塩水により希釈された上清は、希釈装置400の充填機構440(図7参照)により、点滴容器500に充填される。
そして、生理食塩水により希釈された上清は、脂肪由来の幹細胞を摘出した患者Pに点滴容器500から点滴することにより、当該患者Pに投与される。
ここで、点滴容器500から点滴される生理食塩水と上清との混合物は、点滴がされる患者Pから摘出された脂肪由来の幹細胞を培養して得られたものであるので、当該患者Pに投与されたとしても、拒絶反応を生じる恐れがない。
【0023】
図2は、図1で示す培養装置100の詳細を示している。
図2において、培養装置100は、培養容器1、8個のセンサ(臭気センサ:図2では明示せず)、第2のコントロールユニット10、表示装置MTを備えている。
培養容器1の内部には、8個のセンサを配置したセンサ基盤20と、幹細胞C(図示を省略)及び培地30が収容されている。
8個の臭気センサの各々は、対応する増幅器4及びA/D変換器5を介して、第2のコントロールユニット10のインタフェースI/Fに接続されている。
8個の臭気センサは、検出する対象の臭い(すなわち、分子レベルの微粒子)が全て異なっている。
第2のコントロールユニット10は、インタフェースI/F、計測結果合成手段12、記憶手段13、比較手段14、判定手段15を備えている。
【0024】
第2のコントロールユニット10では、8個の臭気センサの検出信号を処理して、計測結果合成手段12により図形パターン(レーダーチャート)を作成する。図形パターン(レーダーチャート)は、図3で例示するように、8個の臭気センサの各々の検出信号出力を同一平面状の8本の軸上にプロットし、隣接する軸上のプロット同士を直線で結んで形成される図形である。
そして、判定手段15により、記録されている幹細胞が正常な場合における図形パターンと、臭気センサの検出信号を処理して作成された図形パターンとを比較して、培養されている幹細胞が異常な状態(活性の低下や、多分化能の喪失等の不都合が生じている状態)にあるか否かを判定する。
判定手段15による判定の手法としては、公知のパターン認識技術を適用することが出来る。
【0025】
図4は、図1で示す培養装置100の変形例に係る培養装置を示している。
図4において、全体を符号101で示す培養装置は、培養容器1、水分供給装置2、培地製造機構3、光照射装置4A、特定の波長の音を伝播する音源5A、光処理装置6、香料添加装置7、湿度センサ8、9、制御手段である第3のコントロールユニット10A、水供給ラインLw1〜Lw3、La、Lbとを有している。
【0026】
培養装置101は、培養容器1内に培養するべき幹細胞Cの栄養源となる培地50を製造し、培養容器1内に充填された培地50及び培養容器1に対して水分供給装置2及び水供給ラインLw1〜Lw3、La、Lbにより水分を供給する。
そして、培養中の幹細胞の活性を高めるため、光照射装置4Aにより培養容器1内の培地50に対して特定の波長の光(例えば、青色光)を照射する。或いは、音源5Aにより培養容器1内に特定の波長の音(例えば、クラシック音楽)を伝播する。
また、水分供給装置2に内蔵されたろ過装置により純水を製造し、光処理装置6により製造された純水に対して光エネルギーを作用させる。そして、光エネルギーを作用させた水に、香料添加装置7により香料(いわゆる機能性香料)を添加する。ここで、香料(いわゆる機能性香料)は、培養するべき幹細胞の活性に寄与する香料が選択される。
【0027】
図5は、加熱装置200の詳細構成を示している。
図5において、加熱装置200は、加熱容器210、加熱部220、温度センサ202、臭気センサ203、タイマ204を備えている。
図5では、温度管理が容易な電磁誘導加熱(IH加熱)により、加熱容器210内が加熱される。
加熱部220は、加熱対象載置部221と電磁誘導コイル222を備えており、電磁誘導コイル222に通電すると、いわゆる電磁誘導によって、導電体製の板状部材である加熱対象載置部221内に渦電流が生じる。そして、この渦電流により加熱対象載置部221が発熱し、加熱対象載置部221に載置した培養容器1内の幹細胞が加熱される。
【0028】
上述したように、加熱装置200は、加熱容器210内が所定温度(例えば43℃)まで昇温された状態を、所定時間(例えば45分間)だけ保持する必要がある。そのため、容器210内が所定温度まで昇温されたならば、タイマ204による計時を開始する。そして、タイマ204により所定時間の経過が計時されたならば、加熱装置200による加熱を終了して、容器210内の温度を常温まで降温する。
これにより、加熱容器210内が所定温度(例えば43℃)まで昇温された状態を、所定時間(例えば45分間)だけ保持することが出来る。
【0029】
ここで、加熱装置200の臭気センサ203は、脂肪由来幹細胞が高温処理されて、表面のタンパク質が変性したときに、当該変性したタンパク質の臭気を検知するように構成されている。
上述した様に、癌細胞の縮小等は、高温処理されて変性した脂肪由来幹細胞の表面のタンパク質による作用効果と考えられる。そのため、加熱装置200による高温処理或いは加熱に際しては、脂肪由来幹細胞の表面のタンパク質が変性する程度まで行なう必要がある。
【0030】
ここで、加熱容器210内を所定温度(43℃)に加熱した状態を所定時間に亘って維持したとしても、脂肪由来幹細胞の表面のタンパク質が変性しなければ、所定の効果が得られない可能性が存在する。
これに対して、変性したタンパク質の臭気を検知する臭気センサ203を設けることにより、タンパク質の変性を検出する様に構成すれば、加熱装置200による加熱により、タンパク質が変性した旨を確認することが可能となる。
そのため、明確には図示されていないが、加熱容器210内を所定温度(43℃)に加熱した状態を所定時間に亘って維持しても、臭気センサ203により変性したタンパク質の臭気を検知出来ない場合には、加熱部220を制御して、加熱容器210内の温度を上昇する様に構成されている。
【0031】
図6は、上清回収装置300の詳細構成を示している。
図6において、上清回収装置300は、投入ホッパ310、残存物排出機構320、上清回収容器330を備えている。
残存物排出機構320は、フィルタ(例えば、メッシュサイズが0.2μm)321、フィルタ反転アーム322、フィルタ反転モータ323を有している。
フィルタ反転アーム322は、一端がフィルタ321に接続し、他端が反転モータ323の回転軸に直交するように接続されている。
【0032】
上清回収に際して、加熱装置200により加熱され、高温処理が為され培地を含む幹細胞(HS−MSCs)は、第2のマニピュレータM2(図1参照)により培養容器1から移動して、上清回収装置300の投入ホッパ310に投入される。
投入ホッパ310に投入された培地を含む幹細胞(HS−MSCs)が適量に達すると、投入ホッパ310底部に設けられた図示しない下蓋が開き、残存物排出機構320のフィルタ321内に投入される。
そして、所定時間が経過するとフィルタ321内に投入された幹細胞(HS−MSCs)や培地がフィルタ321で濾過される。そして、その濾過された上清(濾過された液体、或いは、上澄み)が回収容器330に回収される。
【0033】
一方、フィルタ321を透過しなかった残存物(沈殿物或いは固相)は、反転モータ323が反転することにより、自重によりフィルタ321から落下し、図示しない廃棄物処理装置へ移動する。
ここで、残存物排出機構320は、フィルタを反転する機構を有するタイプに限定されない。
また、図示はされていないが、高温処理された脂肪由来の幹細胞(HS−MSCs)を攪拌機で攪拌し静置した後に、上澄みを上清として採取してもよい。
【0034】
図7において、全体を符号400で示す希釈装置は、上清貯留容器410、生理食塩水貯蔵容器420、制御手段である第4のコントロールユニット430、混合・希釈ラインLc、充填機構440を備えている。
混合・希釈ラインLcは、ラインLc1、ラインLc2、ラインLc3を有している。
【0035】
ラインLc1は、一端が上清貯留容器410と接続され、他端が合流点GでラインLc2と合流している。
ラインLc2は、一端が生理食塩水貯蔵容器420と接続され、他端が合流点GでラインLc1と合流している。
ラインLc3は合流点Gと充填機構440とを連通している。
ラインLc1、ラインLc2は合流点Bで合流して、ラインLc3を流れる間に、いわゆる「ラインミキシング」により上清と生理食塩水とが均一に混合され、以って、上清が生理食塩水によって均一に希釈される。
なお、充填機構440については、従来公知の機構或いは市販品を用いることが出来る。
【0036】
ラインLc1には、流量制御弁432が介装され、ラインLc2には、流量制御弁434が介装されている。
流量制御弁432は、制御信号ラインS1により第4のコントロールユニット430と接続し、流量制御弁434は、制御信号ラインS2により第4のコントロールユニット430と接続している。
流量制御弁432、434を第4のコントロールユニット430で制御することにより、上清と生理食塩水とは所定の希釈割合(例えば、上清70ccに対して、生理食塩水250cc)で混合・希釈される。
【0037】
生理食塩水により希釈された上清は、充填機構440により点滴容器500に充填される。
ここで、上清を生理食塩水により希釈するには、図7で示すようなラインミキシング方式に限定されるものではない。上清と生理食塩水とを混合する混合用機器(例えば、図示しないミキサ等)を別途用意して、混合、希釈することも可能である。
【0038】
次に、図示の実施形態を用いた実験例について、説明する。
[実験例]
肺癌患者から、間葉系幹細胞として脂肪由来の幹細胞(MSCs)を抽出し、図示の培養装置100により培養する。
脂肪由来幹細胞の培養量は、後述の様に高温処理を行なった後に、上清70ccを抽出できる以上の量であり、且つ、少なくとも係る上清70ccが30日に亘って確保出来る程度の量である。
【0039】
培養された脂肪由来幹細胞を、図示の加熱装置200により、43℃の温度環境を45分間に亘って保持して、高温処理を行なった。
実験例では行なわれていないが、高温処理が完了した時点で、脂肪由来幹細胞の表面に存在するタンパク質が変性したことを示す臭気が発生したことを、タンパク質変性臭気検出センサにより確認することが好ましい。
【0040】
高温処理がされた脂肪由来幹細胞を、上清回収装置300において、メッシュのサイズが0.2μmのフィルタ321で濾過することにより、70ccの上清を回収した。
回収された70ccの上清を、希釈装置400により生理食塩水250ccで希釈した。
そして、上清70ccと生理食塩水250ccとの混合液を、脂肪由来の幹細胞(MSCs)を抽出した患者Pに、点滴により、1日に1回ずつ投与した。
投与期間を30日過ぎた時点で、30名の肺癌患者Pの内、28名の患者において、肺癌の縮小が観察された。
係る実験結果により、図示の実施形態に係る治療装置600は、肺癌の治療に有効であることが確認された。
【0041】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
例えば、本明細書では、特に癌の治療について説明されているが、図示の実施形態に係る治療装置は、筋無力症、パーキンソン病の治療にも有効である。
そして、図示の実施形態では、肺癌患者の治療を例示しているが、肺癌以外の癌の治療について、図示の実施形態に係る装置は有効に用いることが出来る。
【符号の説明】
【0042】
1・・・培養容器
2・・・水供給装置
3・・・培地製造機構
4・・・増幅器
4A・・・光照射装置
5・・・A/D変換器
5A・・・音源
6・・・光処理装置
7・・・香料添加装置
8、9・・・水分含有率検知センサ
10・・・培養装置の制御手段/第2のコントロールユニット
10A・・・変形例における培養装置の制御手段/第3のコントロールユニット
12・・・計測結果合成手段
13・・・記憶手段
14・・・比較手段
15・・・判定手段
20・・・センサ基盤
30・・・培地
100・・・培養装置
200・・・加熱装置
202・・・温度センサ
203・・・臭気センサ
204・・・タイマ
220・・・加熱部
300・・・上清回収装置
320・・・残存物排出機構
400・・・希釈装置
410・・・上清貯留容器
420・・・生理食塩水貯蔵容器
430・・・制御手段/第4のコントロールユニット
440・・・充填機構
500・・・点滴容器
C・・・幹細胞
MT・・・画像出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者から抽出された間葉系幹細胞を培養する培養装置と、培養装置により培養された間葉系幹細胞を所定の温度で所定時間加熱する加熱装置と、加熱された間葉系幹細胞の上清を回収する上清回収装置と、上清回収装置により回収された上清を生理食塩水により希釈する希釈装置を備えることを特徴とする治療装置。
【請求項2】
前記希釈装置は、生理食塩水と前記上清との混合溶液を、間葉系幹細胞を抽出した患者に投与する点滴の容器に充填する充填機構を有している請求項1の治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−121890(P2011−121890A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280004(P2009−280004)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(501048930)株式会社シームス (34)
【Fターム(参考)】