説明

泡沫処理装置

【課題】放水路の海水面上から泡沫を除去するとともに、泡沫成分を容易に処理することができる泡沫処理装置を提供する。
【解決手段】発電設備で用いられ排出された使用済海水が流れる放水路10に設置される泡沫処理装置1であって、放水路10を流れる使用済海水の水面WLに浮遊する泡沫Bを回収する泡沫回収部2と、泡沫回収部2により回収された泡沫Bが流入する泡沫回収槽3と、泡沫回収槽3に流入した泡沫Bを消泡する消泡部4と、泡沫回収槽3から消泡された泡沫Bに含まれる泡沫成分、および、泡沫とともに泡沫回収槽3に流入した使用済海水を放水路10の底面近傍に戻す放出部6と、が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭焚き、原油焚き及び重油焚き等の発電プラントに適用される排煙脱硫装置の廃水処理に関し、特に、海水法を用いて脱硫する排煙脱硫装置の排水から泡沫を除去する泡沫処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭や原油等を燃料とする発電プラントにおいて、ボイラから排出される燃焼排気ガス(以下、「ボイラ排ガス」と呼ぶ。)は、ボイラ排ガス中に含まれている二酸化硫黄(SO)等の硫黄酸化物(SOx)を除去してから大気に放出される。このような脱硫処理を施す排煙脱硫装置の脱硫方式としては、石灰石石膏法、スプレードライヤー法及び海水スクラバー法が知られている。
【0003】
このうち、海水スクラバー法を採用した排煙脱硫装置(以下、「海水脱硫装置」と表記する。)は、吸収剤として海水を使用する脱硫方式である。この方式では、たとえば略円筒のような筒形状を縦置きにした脱硫塔(吸収塔)の内部に海水及びボイラ排ガスを供給することにより、海水を吸収液として湿式ベースの気液接触を生じさせて硫黄酸化物を除去している。
【0004】
上述した脱硫塔内で吸収剤として使用した脱硫後の海水や、発電プラントの冷却に用いられた海水(使用済海水)は外海に放水される。使用済海水は、放水路(Seawater Oxidation Treatment System;SOTS)内を流れて排水される際、放水路の底面に設置したエアレーションノズルから微細なエアレーション気泡を流出させるエアレーションによって脱炭酸(爆気)される。
このように、放水路における微細なエアレーション気泡を流出させるエアレーションを実施し、使用済海水の脱炭酸を行う領域は、エアレーションエリアと呼ばれている。
【0005】
上述した脱炭酸により使用済海水のpH値の調整を行うと、微細なエアレーション気泡や、海水中に含まれる有機物等の泡沫成分の相互作用により、放水路内を流れる使用済海水の水面上に泡沫が発生する。この泡沫は放水路から使用済海水とともに周囲の海域へそのまま放出されて容易に消えない。そのため、この泡沫は外海を漂い景観上好ましくないという問題があった。
【0006】
さらに、海水スクラバー法を採用しない排煙脱硫装置であっても、海水性状等によっては発泡問題が発生する可能性があるという問題があった。
【0007】
上述の問題を解決するために、放水路内を流れる使用済海水から泡沫を除去する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このように使用済海水から泡沫を除去することにより、泡沫による景観上の問題は解決される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平5−22092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の技術のように、使用済海水から泡沫を除去する方法では、除去した泡沫に含まれる泡沫成分の処分が困難であるという問題があった。
例えば、泡沫成分を泡沫から分離してパウダー状またはスラリー状とし、発電プラントの灰捨て場に捨てる処分方法も考えられる。ところが、ボイラで燃焼させる燃料によっても泡沫成分が異なる為、泡沫成分も不明であり、且つ泡沫から泡沫成分を分離する方法、つまりフィルタによる分離方法や、遠心力による分離方法が確立されておらず、泡沫から泡沫成分を容易に分離できないという問題があった。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、放水路の海水面上から泡沫を除去するとともに、泡沫成分を容易に処理することができる泡沫処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の泡沫処理装置は、発電設備で用いられ排出された使用済海水が流れる放水路に設置される泡沫処理装置であって、前記水路を流れる前記使用済海水の水面に浮遊する泡沫を回収する泡沫回収部と、該泡沫回収部により回収された泡沫が流入する泡沫回収槽と、該泡沫回収槽に流入した泡沫を消泡する消泡部と、前記泡沫回収槽から消泡された泡沫に含まれる泡沫成分、および、前記泡沫とともに前記泡沫回収槽に流入した前記使用済海水を前記放水路の底面近傍に戻す放出部と、が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、放水路を流れる使用済海水の水面から泡沫回収槽に回収された泡沫は消泡部により消泡され、その泡沫成分は、泡沫回収槽の使用済海水とともに放水路の底面近傍に戻される。そのため、泡沫成分を粉末やスラリーとして使用済海水から分離する方法と比較して、容易に泡沫成分を処理することができる。
なお泡沫成分は、もともと海水中に含まれる有機物等を主成分とするため、泡沫成分を放水路に戻しても放水路を流れる使用済海水は環境基準に抵触することがない。
【0013】
上記発明においては、前記泡沫回収槽には、前記泡沫とともに流入した前記使用済海水を攪拌する攪拌部が設けられていることが望ましい。
【0014】
本発明によれば、泡沫回収槽に流入した使用済海水を攪拌することにより、泡沫成分が泡沫回収槽に沈殿することがない。言い換えると、攪拌部により攪拌された泡沫成分は、放出部により使用済海水とともに放水路に戻されるため、泡沫回収槽の底面に沈殿しにくくなる。
一般に、泡沫回収槽の使用済海水を攪拌しない場合には、沈殿した泡沫成分により泡沫回収槽の利用可能な容積が減少するため、沈殿した泡沫成分を除去する作業が必要になる。それに対して、本発明の泡沫処理装置では、泡沫成分が泡沫回収槽の底面に沈殿しないため、沈殿した泡沫成分を除去する作業が不要、または、作業を行う頻度を低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の泡沫処理装置によれば、放水路を流れる使用済海水の水面から泡沫回収槽に回収された泡沫を消泡部により消泡し、その泡沫成分を泡沫回収槽の使用済海水とともに放水路の底面近傍に戻すため、放水路の海水面上から泡沫を除去するとともに、泡沫成分を容易に処理することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る泡沫処理装置の構成を説明する上面視図である。
【図2】図1の泡沫処理装置の構成の概略を説明する模式図である。
【図3】図1の泡沫回収部の構成を説明する模式図である。
【図4】図3のガイド部の構成を説明する断面視図である。
【図5】図2の泡沫回収槽、消泡部および攪拌部の配置を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の一実施形態に係る泡沫処理装置について、図1から図5を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る泡沫処理装置の構成を説明する上面視図である。図2は、図1の泡沫処理装置の構成の概略を説明する模式図である。
本実施形態の泡沫処理装置1は、たとえば海水を吸収剤として使用する排煙脱硫装置から排出された脱硫後の海水である使用済海水の水面WLに浮遊する泡沫Bを分離除去して処理するものであって、放水路10を流れる使用済海水の水面WLに浮遊する泡沫Bを処理するものである。
泡沫処理装置1には、図1および図2に示すように、泡沫回収部2と、泡沫回収槽3と、消泡部4と、攪拌部5と、放出部6と、が主に設けられている。
【0018】
放水路10は、図1に示すように、壁面11により囲まれた流路であって、排煙脱硫装置から排出された使用済海水を外海に放出する流路である。放水路10には、使用済海水の脱炭酸を行う領域であるエアレーションエリア12A,12B,12Cが設けられている。
なお、エアレーションエリア12A,12B,12Cの構成としては、公知な構成を用いることができ、特に限定するものではない。
【0019】
図3は、図1の泡沫回収部の構成を説明する模式図である。
泡沫回収部2は、図1から図3に示すように、使用済海水の水面WLを浮遊する泡沫Bを放水路10から回収するものである。
泡沫回収部2には、ガイド部21と、泡沫保持部22と、トロリ23と、ガイドプレート14とが主に設けられている。
【0020】
図4は、図3のガイド部の構成を説明する断面視図である。
ガイド部21は、トロリ23が往復動する軌道であるとともに、泡沫保持部22を支持するものでもある。
ガイド部21には、図3および図4に示すように、一対の梁状部材21Aと、トロリレール21Bと、が設けられている。
【0021】
一対の梁状部材21Aは、放水路10を横断して延び、放水路10の壁面11の上端をつなぐものであるとともに、互いに平行に延びるコンクリートで形成されたものである。
トロリレール21Bは、梁状部材21Aの上面に配置されたステンレス鋼(SUS)などの金属から形成された板状の部材である。トロリレール21Bの上にはトロリ23が配置され、トロリ下部に設置されたレーキ23Bが泡沫を掻きあげてガイドプレート14上を滑り上る構造とされている。
【0022】
その一方で、使用済海水の流れにおける下流側(図3の下側)に配置されたガイド部21における梁状部材21Aの下面には泡沫保持部22が配置されている。
ガイド部21における泡沫回収槽3側(図2の右側)の端部は、放水路10から泡沫回収槽3に向かって突出されている。
【0023】
その一方で、放水路10の壁面11における一対のガイド部21の間には、開口部13およびガイドプレート14が設けられている。
【0024】
開口部13は、放水路10を流れる泡沫Bが泡沫回収槽3に流入する部分であって、他の部分と比較して壁面11の高さが低くなっている部分である。開口部13にはガイドプレート14が設けられている。
【0025】
ガイドプレート14は、放水路10を流れる泡沫Bを泡沫回収槽3に流入させる際に、泡沫Bと使用済海水とを分離するものである。さらにガイドプレート14は、開口部13に設けられた傾斜壁面であって、放水路10から泡沫回収槽3に向かって上方に傾斜する面を構成するものである。
なおガイドプレート14は、その上端が放水路10を流れる使用済海水の最大水位(たとえば満潮時の水位)よりも高くなるように配置されている。
【0026】
泡沫保持部22は、放水路10の使用済海水とともに下流に向かって流れる泡沫Bを、トロリ23が往復動する領域の下方に保持する膜状または板状のものである。そのため泡沫保持部22の下端は、少なくとも放水路10を流れる使用済海水の水面WLに到達しているものである。
なお、泡沫保持部22としては、カーテンウォールや、泡寄せ浮体や、オイルフェンスなどの公知のものを用いることができる。
【0027】
トロリ23は、ガイド部21の上を往復動することにより、泡沫保持部22により保持された泡沫を泡沫回収槽3に回収するものである。
トロリ23には、トロリ本体23Aと、レーキ23Bと、が主に設けられている。
【0028】
トロリ本体23Aはレーキ23Bを保持するものであり、トロリ本体23Aに設けられた車輪によりガイド部21のトロリレール21B上を往復動するものである。トロリ本体23Aの移動には、電動機などの公知の駆動力を発生させるものが用いられる。
【0029】
レーキ23Bは、トロリ本体23Aとともに往復動することにより、放水路10を流れる泡沫Bを泡沫回収槽3に回収するものである。レーキ23Bは、膜状または板状に形成されたものであって、上端がトロリ本体23Aに取り付けられ、下端が少なくとも放水路10を流れる泡沫Bに届くように配置されたものである。
【0030】
さらにレーキ23Bは開口部13に近づく方向に移動する際には泡沫Bを掻き集め、開口部13から離れる方向に移動する際には泡沫Bを掻き集めないように構成されている。
具体的には、レーキ23Bは上下方向の中央近傍で、開口部13側に向かって2つに折れ曲がるように構成されている。開口部13に近づく方向に移動する際には、レーキ23Bはまっすぐに延び、レーキ23Bの下端によって泡沫Bが掻き集められる。その一方で、開口部13から離れる方向に移動する際には、レーキ23Bは中央付近で開口部13方向に折れ曲がるため、レーキ23Bの下端によって泡沫Bが掻き集められない。
【0031】
あるいは、レーキ23Bを折れ曲がり可能な構成とする代わりに、レーキ23Bを開口部13方向に弾性変形可能な構成としてもよく、特に限定するものではない。
【0032】
図5は、図2の泡沫回収槽、消泡部および攪拌部の配置を説明する模式図である。
泡沫回収槽3は回収された泡沫Bが流入するものであり、この内部で回収された泡沫Bが消泡されるものである。
泡沫回収槽3には、図2および図5に示すように、消泡を行う第1領域31と、消泡および攪拌を行う第2領域32と、が主に設けられている。
【0033】
第1領域31は、泡沫回収部2により回収された泡沫Bが最初に流入する領域である。
第1領域31は、放水路10に隣接する位置であって、かつ、開口部13とも隣接する位置に配置されている。さらに第1領域31は第2領域32と比較して面積が小さく、かつ、深さが浅く構成されている。第1領域31には、消泡部4の消泡スプレー41が配置されている。
【0034】
第2領域32は、第1領域31に流入した泡沫Bおよび使用済海水が流入する領域であって、第1領域31で消泡された泡沫Bの泡沫成分や、消泡されなかった泡沫Bが流入する領域である。
第2領域32は、第1領域31に隣接する位置であって、開口部13、第1領域31、第2領域32の順に並ぶように配置されている。第2領域には、消泡部4の消泡スプレー41、および、攪拌部5が配置されている。
【0035】
消泡部4は、泡沫回収槽3に回収された泡沫Bを消泡するものである。
消泡部4には、図2および図5に示すように、消泡スプレー41と、消泡ポンプ42と、が主に設けられている。
【0036】
消泡スプレー41は、泡沫Bに対して使用済海水を上方から散布することにより泡沫Bを消泡するものである。消泡スプレー41には消泡ポンプ42から使用済海水が供給されている。消泡スプレー41は、泡沫回収槽3における第1領域31および第2領域32の上方に配置されている。
なお、消泡スプレー41の構成としては公知の構成を用いることができ、特に限定するものではない。
【0037】
消泡ポンプ42は、放水路10から取得した使用済海水を消泡スプレー41に供給するものである。本実施形態では、2台の消泡ポンプ42が設けられている例に適用して説明する。このようにすることで、一方の消泡ポンプ42を用いて使用済海水を消泡スプレー41に供給するとともに、他方の消泡ポンプ42を予備とすることができる。
なお、消泡すべき泡沫Bの量が変化した場合に、稼働させる消泡ポンプ42の台数を変えることにより対応してもよく、特に限定するものではない。
消泡ポンプ42の入口側(上流側)には、基本的に全開か全閉とされる消泡用流量弁43が設けられ、出口側(下流側)には、ポンプに流入または流出する使用済海水の流量を調節する消泡用流量弁43が設けられている。
【0038】
攪拌部5は、消泡された泡沫Bの泡沫成分が泡沫回収槽3の底面に沈殿することを防止するものである。攪拌部5は泡沫回収槽3の第2領域32に配置されており、本実施形態では6台の攪拌部5が設けられている例に適用して説明する。
攪拌部5には、図2に示すように、回転部51と、攪拌モータ52と、が主に設けられている。
【0039】
回転部51は、泡沫回収槽3の第2領域32における使用済海水を攪拌し、泡沫Bの泡沫成分が沈殿することを防止するものである。
回転部51には棒状の軸部と、軸部に対して直交して延びる攪拌子と、が設けられている。回転部51の軸部は攪拌モータ52と回転駆動力が伝達可能に接続され、回転部51の軸部および攪拌子は攪拌モータ52により回転駆動されるものである。
【0040】
攪拌モータ52は回転部51を回転駆動させるものである。本実施形態では回転部51と攪拌モータ52とが1対1で配置されている例に適用して説明する。
なお、回転部51と攪拌モータ52との数の割合は、1対1であってもよいし、それ以上でも以下であってもよく、特に限定するものではない。
【0041】
放出部6は、消泡された泡沫Bの泡沫成分を泡沫回収槽3から放水路10に戻すものである。放出部6には、図2に示すように、放出流路61と、放出ポンプ62と、が主に設けられている。
【0042】
放出流路61は、泡沫回収槽3の第2領域32と、放水路10の底面近傍の領域とをつなぐ流路である。放出流路61には、放出ポンプ62が配置されている。
【0043】
放出ポンプ62は、泡沫回収槽3における第2領域32の使用済海水および泡沫成分を、放出流路61を介して放水路10に戻すものである。本実施形態では2台の放出ポンプ62が設けられている例に適用して説明する。このようにすることで、一方の放出ポンプ62を用いて使用済海水および泡沫成分を放水路10に戻すとともに、他方の放出ポンプ62を予備とすることができる。
なお、放水路10に戻す使用済海水および泡沫成分の量が変化した場合に、稼働させる放出ポンプ62の台数を変えることにより対応してもよく、特に限定するものではない。
放出ポンプ62の入口側(上流側)には、基本的に全開か全閉とされる放出用流量弁63が設けられ、出口側(下流側)には、ポンプに流入または流出する使用済海水の流量を調節する放出用流量弁63が設けられている。
【0044】
次に、上記の構成からなる泡沫処理装置1における作用について図1から図5を参照しながら説明する。
たとえば排煙脱硫装置から排出された使用済海水は放水路10に流入し、図1に示すように、エアレーションエリア12A,12B,12Cにおいて脱炭酸が行われる。脱炭酸が行われた使用済海水の水面WLには泡沫Bが形成され、泡沫Bは使用済海水とともに下流(図1の下側)に向かって流れる。
【0045】
下流に向かって流れる泡沫Bは、図2および図3に示すように、泡沫保持部22により泡沫回収部2の下方でせき止められる。
せき止められた泡沫Bは、ガイド部21に沿って放水路10を横断する方向に往復動するトロリ23によって泡沫回収槽3に回収される。
【0046】
具体的には、トロリ本体23Aがガイド部21に沿って泡沫回収槽3に向かって移動すると、トロリ本体23Aから下方に延びるレーキ23Bによって、せき止められた泡沫Bは泡沫回収槽3に向かってかき寄せられる。
レーキ23Bが開口部13に設けられた傾斜壁面14に到達すると、トロリ本体23Aの移動に伴いレーキ23Bの下端は傾斜壁面14の壁面に沿って上方に持ち上げられる。このとき、泡沫Bはレーキ23Bにより保持される一方、使用済海水はレーキ23Bと傾斜壁面14との隙間を下方に向かって流れ落ちる。つまり、泡沫Bと使用済海水とが分離される。
レーキ23Bが傾斜壁面14の泡沫回収槽3側の端部を通過すると、レーキ23Bにより保持されていた泡沫Bは泡沫回収槽3に落下する。
【0047】
トロリ23は、ガイド部21の泡沫回収槽3側の端部に到達すると、進行方向を反転させて泡沫回収槽3から離れる方向への移動を開始する。このとき、レーキ23Bは折れ曲がることにより傾斜壁面14を容易に乗り越えることができる。さらに、放水路10の上を移動する際にも、レーキ23Bが折れ曲がることにより泡沫Bを泡沫回収槽3から離れる方向にかき集めることが防止される。
【0048】
泡沫回収槽3に落下した泡沫Bは、最初に第1領域31に導かれ、その次に第2領域32に導かれる。
第1領域31および第2領域32では消泡スプレー41から泡沫Bに使用済海水が散布され、泡沫Bが消泡される。
【0049】
消泡スプレー41から散布される使用済海水は、消泡ポンプ42により放水路10から供給されたものである。本実施形態では、2台の消泡ポンプ42のうち1台が運転されている例に適用して説明する。この場合、運転される消泡ポンプ42の上流側および下流側に配置された消泡用流量弁43が開かれ、停止される消泡ポンプ42の上流側および下流側に配置された消泡用流量弁43は閉じられている。
【0050】
そのため、使用済海水は開かれている消泡用流量弁43および運転されている消泡ポンプ42を介して消泡スプレー41に供給される。
なお、図2では、開かれている消泡用流量弁43を白抜きで表し、閉じられている消泡用流量弁43を黒塗りで表している。
【0051】
泡沫Bには海水中に含まれる有機物等の泡沫成分が含まれており、泡沫Bが消泡されると泡沫成分は泡沫回収槽3内の使用済海水に混入する。
第2領域32では、使用済海水が攪拌部5により攪拌されているため、泡沫成分も使用済海水とともに攪拌される。
【0052】
つまり、電力が供給されることにより攪拌モータ52は回転駆動力を発生し、回転部51を回転駆動させる。回転部51が回転駆動されると、軸部の下端に配置された攪拌子も使用済海水中で回転される。これにより第2領域32における使用済海水に流れ、例えば上下方向に循環する流れが発生し、使用済海水よりも比重が重い泡沫成分は使用済海水中に均等に分散することになる。
【0053】
第2領域32の使用済海水、および、それに含まれる泡沫成分は、放出部6の放出流路61および放出ポンプ62を介して、放水路10の底面近傍の領域に戻される。
本実施形態では、2台の放出ポンプ62のうち1台が運転されている例に適用して説明する。この場合、運転される放出ポンプ62の上流側および下流側に配置された放出用流量弁63が開かれ、停止される放出ポンプ62の上流側および下流側に配置された放出用流量弁63は閉じられている。
【0054】
そのため、使用済海水は開かれている放出用流量弁63および運転されている放出ポンプ62を介して消泡スプレー41に供給される。
なお、図2では、開かれている放出用流量弁63を白抜きで表し、閉じられている放出用流量弁63を黒塗りで表している。
【0055】
なお、放出ポンプ62および放出用流量弁63は、泡沫回収槽3に配置された使用済海水の水位を測定するレベルセンサ64の測定値に基づいて制御されている。
また、消泡ポンプ42、放出ポンプ62、消泡用流量弁43および放出用流量弁63が、泡沫回収槽3に配置された使用済海水の水位を測定するレベルセンサ64の測定値に基づいて制御されていてもよく、特に限定するものではない。
【0056】
上記の構成によれば、放水路10を流れる使用済海水の水面WLから泡沫回収槽3に回収された泡沫Bは消泡部4により消泡され、その泡沫成分は、泡沫回収槽3の使用済海水とともに放水路10の底面近傍に戻される。そのため、泡沫成分を粉末やスラリーとして使用済海水から分離する方法と比較して、容易に泡沫成分を処理することができる。
なお泡沫成分は、もともと海水中に含まれる有機物等を主成分とするため、泡沫成分を放水路10に戻しても放水路10を流れる使用済海水は環境基準に抵触することがない。
【0057】
攪拌部5を用いて泡沫回収槽3に流入した使用済海水を攪拌するため、泡沫成分が泡沫回収槽3に沈殿することがない。言い換えると、攪拌部5により攪拌された泡沫成分は、放出部6により使用済海水とともに放水路10に戻されるため、泡沫回収槽3の底面に沈殿しにくくなる。
一般に、泡沫回収槽3の使用済海水を攪拌しない場合には、沈殿した泡沫成分により泡沫回収槽3の利用可能な容積が減少するため、沈殿した泡沫成分を除去する作業が必要になる。それに対して、本実施形態の泡沫処理装置1では、泡沫成分が泡沫回収槽3の底面に沈殿しないため、沈殿した泡沫成分を除去する作業が不要、または、作業を行う頻度を低減することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 泡沫処理装置
2 泡沫回収部
3 泡沫回収槽
4 消泡部
5 攪拌部
6 放出部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電設備で用いられ排出された使用済海水が流れる放水路に設置される泡沫処理装置であって、
前記水路を流れる前記使用済海水の水面に浮遊する泡沫を回収する泡沫回収部と、
該泡沫回収部により回収された泡沫が流入する泡沫回収槽と、
該泡沫回収槽に流入した泡沫を消泡する消泡部と、
前記泡沫回収槽から消泡された泡沫に含まれる泡沫成分、および、前記泡沫とともに前記泡沫回収槽に流入した前記使用済海水を前記放水路の底面近傍に戻す放出部と、
が設けられていることを特徴とする泡沫処理装置。
【請求項2】
前記泡沫回収槽には、前記泡沫とともに流入した前記使用済海水を攪拌する攪拌部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の泡沫処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−115675(P2011−115675A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272762(P2009−272762)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】