説明

波力発電装置

【課題】波力発電装置の運転に必要な動作に多くの電力を消費することなく、波力によって発電した電力を有効に取り出すことができる波力発電装置を提供する。
【解決手段】バネ4を介して浮体2の内部に取り付けられて、水面の変動に応じて往復直線運動するウェイト3と、ウェイト3の往復直線運動に基づいて駆動されて発電する発電機8とを備えた波力発電装置1において、ウェイト3は、シリンダ9内に収容され、その往復直線運動に基づいてシリンダ9内の空気を圧縮するピストンとして用いられ、シリンダ9には、ウェイト3によって圧縮された圧縮空気をシリンダ9外に取り出す圧縮空気吐出配管12,13が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波力発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
波力発電装置としては、二つの物体を上下方向に互いに相対運動させて発電機を駆動するものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−535560号公報
【特許文献2】特表2009−518568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現実に波力発電装置を適性に運転させるためには、摺動摩擦部分の冷却を考慮する必要があり、また、各種アクチュエータの駆動、制御回路への電力供給といった制御用エネルギーを確保する必要がある。しかし、このような波力発電装置の運転に必要な動作を電力用いて実現することとすると、波力によって発電した電力を自らが消費することになり、正味の発電量が低下してしまう。また、浮体に太陽電池や2次電池を設置して必要電力を賄うことも考えられるが、海上でのメンテナンスが必要となるとともに、機器構成が複雑となるため好ましくない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、波力発電装置の運転に必要な動作に多くの電力を消費することなく、波力によって発電した電力を有効に取り出すことができる波力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の波力発電装置は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる波力発電装置は、バネを介して浮体の内部に取り付けられて、水面の変動に応じて往復直線運動する振動体と、該振動体の往復直線運動に基づいて駆動されて発電する発電機とを備えた波力発電装置において、前記振動体は、シリンダ内に収容され、その往復直線運動に基づいて該シリンダ内の流体を圧縮するピストンとして用いられ、前記シリンダには、前記振動体によって圧縮された圧縮流体を該シリンダ外に取り出す圧縮流体取出部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
浮体は水面の変動に応じて振動し、この振動をバネを介して振動体に伝達し、これにより振動体は所定の周期にて往復直線運動を行う。そして、この振動体の往復直線運動に基づいて発電機が駆動され、発電が行われる。
本発明では、往復直線運動を行う振動体をシリンダ内に収容し、その往復直線運動に基づいてシリンダ内の流体を圧縮するピストンとして振動体を用いることとした。そして、振動体によって圧縮された圧縮流体をシリンダ外に取り出す圧縮流体取出部をシリンダに設けることとした。これにより、圧縮流体取出部から得た圧縮流体を、波力発電装置の運転に必要な動作の駆動源として用いることができる。
なお、振動体によって圧縮される流体としては、典型的には空気である。
【0008】
さらに、本発明の波力発電装置は、前記圧縮流体取出部から得られた圧縮流体を、内部機器の冷却用流体として用いることを特徴とする。
【0009】
圧縮流体取出部から得られた圧縮流体を、内部機器の冷却用流体として用いることとしたので、内部機器の耐久性を向上させることができ、海上での高いメンテナンス費用を低減することができる。
内部機器としては、例えば、発電機、ベアリング、摺動摩擦部等の発熱部が挙げられる。
【0010】
さらに、本発明の波力発電装置は、前記圧縮流体取出部から得られた圧縮流体を用いて増圧された油圧を得るブースタを備え、該ブースタによって得られた油圧によって駆動される油圧機器を備えていることを特徴とする。
【0011】
圧縮流体を用いてブースタによって増圧された油圧を得て、この油圧によって駆動される油圧機器を設けることとした。このように、振動体の往復直線運動に伴い得られた圧縮流体を動力源として油圧機器を駆動するので、油圧を得るために油圧ポンプ等によって不必要に電力を消費することがなく、波力発電装置によって得られた電力を有効に外部へと出力することができる。
油圧機器としては、例えば油圧制御弁 等が挙げられる。
【0012】
さらに、本発明の波力発電装置は、前記圧縮流体取出部には、圧縮流体を貯留するリザーバタンクが接続されていることを特徴とする。
【0013】
圧縮流体をリザーバタンクに貯留することとした。これにより、所定量の圧縮流体を蓄積できるので、安定した圧縮流体の供給が可能となる。
【0014】
さらに、本発明の波力発電装置は、前記圧縮流体取出部から導かれた圧縮流体によって回転するタービンと、該タービンによって駆動されて発電するタービン用発電機とを備えていることを特徴とする。
【0015】
圧縮流体によってタービンを回転させ、このタービンによって駆動されて発電するタービン用発電機を設けることとした。これにより、振動体によって得られる電力だけでなく、タービンによっても電力を得ることができる。例えば、タービン用発電機は、制御、照明用などの系内設備用電源といった補助電源として用いることができる。
また、タービンを浮体内に設けることとすれば、タービンに海水が飛散することがないので、海水による腐食の影響を避けることができる。
【0016】
さらに、本発明の波力発電装置は、前記振動体の質量に対して、質量を付加する付加質量体を備えていることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る波力発電装置によれば、振動体の質量をm、付加質量体の質量をΔmとした場合、周波数fnは下式(1)から求められることになる。すなわち、周波数fnを従来の波力発電装置と同じ値に設定した場合、バネ定数kを高くすることができる。これにより、バネを短くすることができ、波力発電装置を小型化することができる。
また、付加質量体の質量を適宜調整することにより振動体の質量を小さくすることができ、さらに波力発電装置を小型化することができる。
【0018】
【数1】

【0019】
なお、本発明の発電機は、振動体の往復直線運動に基づいて駆動されて発電するものであればよく、発電機に伝達される駆動力は振動体から直接得てもよく(例えばリニア発電機)、あるいは間接的に他の機構を介して得ても良く、さらには、付加質量体を介して駆動力を得ても良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、往復直線運動を行う振動体をシリンダ内に収容し、その往復直線運動に基づいてシリンダ内の流体を圧縮するピストンとして振動体を用いることとし、振動体によって圧縮された圧縮流体をシリンダ外に取り出す圧縮流体取出部をシリンダに設けることとしたので、圧縮流体取出部から得た圧縮流体を、波力発電装置の運転に必要な動作の駆動源として用いることができる。したがって、電池や油圧ポンプ等を省略でき、波力によって発電した電力を有効に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる波力発電装置の概略構成を示した縦断面図である。
【図2】図1の波力発電装置の振動モデルを示した図である。
【図3】図1の波力発電装置の変形例を示した縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態にかかる波力発電装置の概略構成を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る波力発電装置について説明する。
[第1実施形態]
図1には、第1実施形態にかかる波力発電装置の概略構成が示されている。
波力発電装置1は、海洋の水面7上に上部が露出して浮かぶ箱形の浮体2を備えている。浮体2内には、バネ4を介して浮体2内に取り付けられたウェイト(振動体)3と、ウェイト3に対して回転するボールネジ軸5と、ボールネジ軸5に固定されたイナーシャディスク(付加質量体)6と、ボールネジ軸5によって駆動されて発電する発電機8とを備えている。
【0023】
ウェイト3は、質量mとされ、シリンダ9内にピストンとして作用するように収容されている。シリンダ9は、浮体2の底面2aとベースプレート10との間に立設されており、その内部は密閉空間となっている。ウェイト3は、波力による水面7の上下動によって生じる浮体2の上下振動を得て、所定の固有周波数にて上下方向に往復直線運動するようになっている。往復直線運動する際に、ウェイト3は、シリンダ9の内周面に形成したガイド(図示せず)によって、回転せずに上下動するようになっている。ウェイト3は、シリンダ9内に収納された上下のバネ4によって、浮体2に対して相対運動可能なように支持されている。
【0024】
ボールネジ軸5は、下方の主要部がシリンダ9内に収容され、ウェイト3の往復直線運動によって、その軸線回りに回転するようになっている。ボールネジ軸5の他端は、ベースプレート10から上方へ突出しており、この突出部にイナーシャディスク6が固定されている。
【0025】
イナーシャディスク6は、質量Δmとされ、例えば取付け取り外しが可能となっている。また、波力の状況に応じて、異なる質量を有するイナーシャディスク6に交換できるようになっていると好ましい。
【0026】
発電機8は、ボールネジ軸5の上端に設けられ、ボールネジ軸5の回転によって一方向またはその反対方向に回転させられることにより電力を発生するものである。
【0027】
ウェイト3を挟んだシリンダ9の上部および下部には、シリンダ9の上部空間9aおよび下部空間9bのそれぞれに連通するように、これら空間9a,9b内の空気を取り出す圧縮空気吐出配管(圧縮流体取出部)12,13が接続されている。圧縮空気吐出配管12,13には、それぞれ、逆止弁12a,13aが設けられている。空気吐出配管12,13の他端には、それぞれ、リザーバタンク15,16が接続されている。逆止弁12a,13aにより、空間9a,9b内の空気がリザーバタンク15,16の方向へのみ流れ、リザーバタンク15,16には、圧縮された空気が貯留されるようになっている。
【0028】
圧縮空気吐出配管12,13の近傍には、シリンダ9の外部から空気を取り入れる空気吸入配管17,18が設けられている。空気吸入配管17,18には、それぞれ、逆止弁17a,18aが設けられている。これら逆止弁17a,18aは、浮体2内のシリンダ9内の空間9a,9b以外(外部)の空気が、シリンダ9内の空間9a,9bの方向へのみ流れ、シリンダ内に空気を吸入する。
【0029】
ウェイト3が上方向へ変位すると、シリンダ9の上部空間9a内の圧力が上昇して空気圧が所定値以上になると、空気吐出配管12の開閉弁12aが開き、圧縮空気はリザーバタンク15内へと導かれる。このとき、シリンダ9の下部空間9bには、空気吸入配管18及び開閉弁18aを介してシリンダ9外から空気が導入され、ウェイト3の上方向への変位を妨げないようになっている。
一方、ウェイト3が下方向へ変位すと、シリンダ9の下部空間9b内の圧力が上昇して空気圧が所定値以上になると、空気吐出配管13の開閉弁13aが開き、圧縮空気はリザーバタンク16内へと導かれる。このとき、シリンダ9の上部空間9aには、空気吸入配管17及び開閉弁17aを介してシリンダ9外から空気が導入され、ウェイト3の下方向への変位を妨げないようになっている。
【0030】
以上のようにして得られたリザーバタンク15,16内の圧縮空気は、各種用途に利用することができる。
例えば、発電機、ベアリング、摺動摩擦部等の発熱部となる内部機器の冷却用流体として用いることができる。さらに、海水との熱交換によって圧縮空気を冷却しておけば、冷却効果を向上させることができる。特に、本実施形態の波力発電装置1は、浮体2内の密閉空間内に各種機器が設置され、熱が内部に籠もり浮体2外へと放熱し難いため有効である。
また、リザーバタンク15,16から得られた圧縮空気を用いてブースタによって油圧を増圧し、浮体2内に設けた油圧制御弁等の油圧機器に対して油圧を供給することとしても良い。
【0031】
上述の構成とされた波力発電装置1は、波の振動が浮体2に入力されると、ウェイト3が適宜チューニングされた固有振動数で上下方向に振動する。そして、この振動による往復直線運動に基づいて発電機8を駆動し発電させることによって電力を取り出すようになっている。
【0032】
次に、図2を用いて、本実施形態の波力発電装置1の動作原理について説明する。
図2には、図1に示した波力発電装置1の振動系モデルが示されている。
同図において各記号は以下の通りである。
zm : ウェイト3の変位
zb : 浮体2の変位
mm : ウェイト3の質量
mb : 浮体2の質量
k : 浮体2−ウェイト3間バネ定数
kb : 浮力バネ定数
c : 浮体2−ウェイト3間の減衰定数(例えば発電機8)
cb : 造波減衰定数
cf : イナーシャディスク6の減衰定数
I : イナーシャディスク6の慣性モーメント
mba : 付加水質量
Ff : 波外力
【0033】
運動方程式は、下式のように表される。
【数2】

【0034】
ここでイナーシャディスク6の回転角θは下式(5)のように表されるので、式(4)は下式(6)のように変形できる。
【数3】

【0035】
そして、式(6)を式(3)に代入すると、下式となる。
【数4】

ここで、
【数5】

と置くと、下式となる。
【数6】

式(7)を式(2)に代入すると、下式となる。
【数7】

式(8)を整理すると、下式となる。
【数8】

式(7)の左辺および中辺を用いて整理すると、下式となる。
【数9】

式(9)及び式(10)を用いてマトリクス表示すると、下式のようになる。
【数10】

ここで、
【数11】

と置くと、下式となる。
【数12】

【0036】
以上の通り、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
往復直線運動を行うウェイト3をシリンダ9内に収容し、その往復直線運動に基づいてシリンダ9内の空気を圧縮するピストンとしてウェイト3を用いることとした。そして、ウェイト3によって圧縮された圧縮空気をシリンダ9外に取り出す圧縮空気吐出配管12,13をシリンダ9に設けることとした。これにより、圧縮空気吐出配管12,13から得た圧縮空気を、波力発電装置1の運転に必要な動作の駆動源として用いることができる。したがって、電池や油圧ポンプ等を省略でき、波力によって発電した電力を有効に取り出すことができる。
特に、本実施形態では、圧縮空気をリザーバタンク15,16に貯留することとしたので、所定量の圧縮空気を蓄積できる、安定した圧縮空気の供給が可能となる。
また、リザーバタンク15,16から得られた圧縮空気を、内部機器の冷却用流体として用いることとしたので、内部機器の耐久性を向上させることができ、海上での高いメンテナンス費用を低減することができる。
また、圧縮空気を用いてブースタによって増圧された油圧を得て、この油圧によって油圧制御弁等の油圧機器を駆動することとした。このように、ウェイト3の往復直線運動に伴い得られた圧縮空気を動力源として油圧機器を駆動するので、油圧を得るために油圧ポンプ等によって不必要に電力を消費することがなく、波力発電装置1によって得られた電力を有効に外部へと出力することができる。
【0037】
また、図2を用いて説明したように、式(11)及び式(12)からわかるように、イナーシャディスク6による付加質量(Δm)はウェイト3に付加される質量となる。これより、先に示した式(1)から分かるように、同じ固有振動数を得るとき、付加質量(Δm)を付加すれば、バネ定数を増加できる。すなわち、硬く短いバネ4を使うことができる。これにより、波力発電装置1を小型化することができる。
また、イナーシャディスク6による付加質量体の質量を適宜調整することによりウェイト3の質量を小さくすることができ、さらに波力発電装置を小型化することができる。
【0038】
また、本実施形態に係る波力発電装置1によれば、ボールネジ軸5に取り付けられたイナーシャディスク6によりボールネジ軸5に慣性力が付与されることになるので、ボールネジ軸5の慣性モーメントを大きくすることができ、付加質量効果を向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態は、図3に示すように変形することもできる。図3に示すように、波力発電装置1’は、浮体2内に、2セットの発電部を設ける。具体的には、浮体2の上部に、図1に示したようにウェイト3’が上下方向に往復直線運動を行うように、発電機8’、ウェイト3’、ボールネジ軸5’、シリンダ9’、リザーバタンク15’,16’を設ける。そして、浮体2の下部に、ウェイト3”が水平方向(同図において左右方向)に往復直線運動を行うように、発電機8”、ウェイト3”、ボールネジ軸5”、シリンダ9”、リザーバタンク15”,16”を設ける。
このように、上下方向に往復直線運動するウェイト3’を利用して発電するだけでなく、水平方向に往復直線運動するウェイト3”を利用して発電をすることができるので、浮体2の鉛直方向のヒーブ運動だけでなく、ロールやピッチに基づく水平方向運動をも利用することができる。これにより、更なる発電量の増大を図ることができる。
【0040】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図4を用いて説明する。
本実施形態は、ウェイト3が往復直線運動を行い発電機8にて発電する構成は第1実施形態と同様なので、同一符号を付しその説明を省略する。本実施形態の波力発電装置20は、ウェイト3の動作によって得られた圧縮空気を用いてタービン22を回転させて発電させる点で第1実施形態と異なる。
シリンダ9の上部空間9aおよび下部空間9bのそれぞれに連通するように、これら空間9a,9b内の空気を取り出す圧縮空気吐出配管(圧縮流体取出部)24,25が接続されている。圧縮空気吐出配管24,25には、それぞれ、開閉弁24a,25aが設けられている。これら開閉弁24a,25aは、空間9a,9b内の空気が所定圧以上になったときに開とされるように制御される。空気吐出配管24,25には、それぞれ、タービン用ダクト27の上端側および下端側に接続されている。タービン用ダクト27は、上端および下端が大きな流路断面積を有し、上下方向における中央部に近づくほど徐々に流路断面積が減少する形状となっている。流路断面積が減少して流路が絞られた中央位置には、タービン22が設置されている。タービン22は、例えばウエルズタービンのような往復流型タービンが用いられる。タービン22は、回転軸29に取り付けられており、この回転軸29によって伝達された回転力によって浮体2の下端に設置したタービン用発電機30が発電するようになっている。
【0041】
タービン用発電機30は、例えば、制御、照明用などの系内設備用電源といった補助電源として用いられる。もちろん、タービン用発電機30の出力が大きい場合には、系外へと電力を供給しても良い。
【0042】
ウェイト3が上方向へ変位すると、シリンダ9の上部空間9a内の圧力が上昇して空気圧が所定値以上になると、空気吐出配管24の開閉弁24aが開き、圧縮空気はタービン用ダクト27の上方空間27aへと導かれる。タービン用ダクト27の上方空間27aへと流れ込んだ圧縮空気は、下方へと流れ、流路断面積の減少に伴い増速された後にタービン22に衝突し、タービン22を回転駆動する。タービン22の回転力は回転軸29に伝達され、発電機30を駆動する。タービン22を回転させて通過した空気は、タービン用ダクト27の下方空間27bを流れ、空気吸入配管25及び開閉弁25aを介してシリンダ9の下部空間9bへと流れ込み、ウェイト3の上方向への変位を妨げないようになっている。
一方、ウェイト3が下方向へ変位すると、シリンダ9の下部空間9b内の圧力が上昇して空気圧が所定値以上になると、空気吐出配管25の開閉弁25aが開き、圧縮空気はタービン用ダクト27の下方空間27bへと導かれる。タービン用ダクト27の下方空間27bへと流れ込んだ圧縮空気は、上方へと流れ、流路断面積の減少に伴い増速された後にタービン22に衝突し、タービン22を回転駆動する。タービン22の回転力は回転軸29に伝達され、発電機30を駆動する。タービン22を回転させて通過した空気は、タービン用ダクト27の上方空間27aを流れ、空気吸入配管24及び開閉弁24aを介してシリンダ9の上部空間9aへと流れ込み、ウェイト3の下方向への変位を妨げないようになっている。
【0043】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
圧縮空気によってタービン22を回転させ、このタービンによって駆動されて発電するタービン用発電機30を設けることとしたので、ウェイト3によって得られる電力だけでなく、タービン22によっても電力を得ることができる。そして、タービン用発電機30は、制御、照明用などの系内設備用電源といった補助電源として用いることができるので、発電機8によって発電した電力を用いる必要がない。
また、タービン22を浮体2内に設けることとしたので、タービン22に海水が飛散することがないので、海水による腐食の影響を避けることができる。
【0044】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜必要に応じて変形・変更実施可能である。
上述した各実施形態では、ウェイトによって圧縮される流体を空気として説明したが、窒素等の他の流体であっても良い。
また、第1実施形態にて説明したリザーバタンク15,16と、第2実施形態で説明したタービン22とを組み合わせても良い。
上述した各実施形態では、ウェイト3が上下方向に往復直線運動し、ボールネジ軸5が回転する変換機構を一具体例として挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ラック(振動体)が上下方向に往復直線運動し、このラックによりピニオン(回転体)が回転させられるようなものであってもよい。この場合、ピニオンに、発電機の回転軸に取り付けられたギア(歯車)およびフライホイール(付加質量体)が噛合することになる。
また、発電機8は、ウェイト3の往復直線運動をボールネジ軸5を介して得た駆動力を利用するものに限定されるものではなく、振動体(ウェイト)の往復直線運動に基づいて駆動されて発電するものであればよい。例えば、発電機に伝達される駆動力は振動体から直接得てもよく(例えばリニア発電機)、あるいは間接的に他の機構を介して得ても良く、さらには、付加質量体を介して駆動力を得ても良い。
【符号の説明】
【0045】
1,1’,20 波力発電装置
2 浮体
3 ウェイト(振動体)
4 バネ
8 発電機
9 シリンダ
12,13,24,25 圧縮空気吐出配管(圧縮流体取出部)
15,16 リザーバタンク
22 タービン
30 タービン用発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バネを介して浮体の内部に取り付けられて、水面の変動に応じて往復直線運動する振動体と、
該振動体の往復直線運動に基づいて駆動されて発電する発電機と、
を備えた波力発電装置において、
前記振動体は、シリンダ内に収容され、その往復直線運動に基づいて該シリンダ内の流体を圧縮するピストンとして用いられ、
前記シリンダには、前記振動体によって圧縮された圧縮流体を該シリンダ外に取り出す圧縮流体取出部が設けられていることを特徴とする波力発電装置。
【請求項2】
前記圧縮流体取出部から得られた圧縮流体を、内部機器の冷却用流体として用いることを特徴とする請求項1に記載の波力発電装置。
【請求項3】
前記圧縮流体取出部から得られた圧縮流体を用いて増圧された油圧を得るブースタを備え、
該ブースタによって得られた油圧によって駆動される油圧機器を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の波力発電装置。
【請求項4】
前記圧縮流体取出部には、圧縮流体を貯留するリザーバタンクが接続されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の波力発電装置。
【請求項5】
前記圧縮流体取出部から導かれた圧縮流体によって回転するタービンと、
該タービンによって駆動されて発電するタービン用発電機と、
を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の波力発電装置。
【請求項6】
前記振動体の質量に対して、質量を付加する付加質量体を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の波力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−215120(P2012−215120A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80749(P2011−80749)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】