説明

波浪発電装置

【課題】
構造が簡略で、製造コストの低い波浪発電装置を提供する。
【解決手段】
フロート2と、該フロート2に対し回転可能な回転軸4と、該回転軸4に固設された翼部10と、前記回転軸4の回転により発電する発電機7とを有し、前記翼部10は、前記回転軸4からその径方向外側に突出する本体部11と、該本体部11から前記回転軸4を中心とする周方向の一方に突出するとともに可撓性を有する可撓部12を有し、波浪による水面の変位に伴って、前記翼部10が浮上又は沈降する際に、前記可撓部12が水の抵抗により撓むことにより、前記回転軸4が回転し、前記発電機7において発電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波浪発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水面に浮遊するブイに吊り下げられ、該ブイの波高変動に伴い、海中を上下移動する水車を備え、該水車が上下移動する際に、水車が回転することにより、発電する波浪発電装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−261677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術の波浪発電装置においては、水車軸に対し回転可能に設けた翼を設け、該翼の上下方向にばねを設け、翼に力が加わっていない際には水平となり、水車が上下方向に移動する際に、水の抵抗により翼が翼軸を中心として傾くことにより、水車が常に一定方向に回転するようになっている。
【0005】
前記のような構造のため、構造が複雑であり、製造コストが高くなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、前記従来技術と比較して構造が簡略で、製造コストの低い波浪発電装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、フロートと、該フロートに対し回転可能な回転軸と、該回転軸に固設された翼部と、前記回転軸の回転により発電する発電機とを有し、
前記翼部は、前記回転軸からその径方向外側に突出する本体部と、該本体部から前記回転軸を中心とする周方向の一方に突出するとともに可撓性を有する可撓部を有し、
波浪による水面の変位に伴って、前記翼部が浮上又は沈降する際に、前記可撓部が水の抵抗により撓むことにより、前記回転軸が回転し、前記発電機において発電することを特徴とするものである。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記回転軸に、はずみ車を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は、翼部は可撓部を有し、翼部が浮上又は沈降する際に、前記可撓部が水の抵抗により撓んで、回転軸が回転するようにしたことにより、前記従来技術のように回転軸に対して翼を回転可能に備える必要がなくなるとともに、翼を付勢するバネ部材が不要となることで、構造を簡略化でき、製造コストを低くするとともに、装置全体をコンパクトに形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の波浪発電装置の概略部分断面図。
【図2】図1の錘、ワイヤー、アンカーを省略した翼部を示すもので、(a)は上面図、(b)は斜視図。
【図3】図1の波浪発電装置が上昇する際の翼部の形状を示す図で、(a)は側面図、(b)は錘、ワイヤー、アンカーを省略した斜視図。
【図4】図1の波浪発電装置が下降する際の翼部の形状を示す図で、(a)は側面図、(b)は錘、ワイヤー、アンカーを省略した斜視図。
【図5】翼部の他例を示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態を図に基づいて説明する。
本発明の波浪発電装置1は、フロート2を有する。以下において、波浪発電装置1を、海上に設置した状態を基に説明し、フロート2側を上側、後述する翼部10側を下側として説明する。
【0012】
前記フロート2の中心部には貫通穴2aが、上下方向に形成され、該貫通穴2aには軸受け2bが設けられている。
【0013】
前記フロート2の上面には、ケース3の下端が固設されている。前記フロート2は、他の波浪発電装置1や図示しない浮き部材等と連結することにより、それ自体が回転しにくいようになっている。
【0014】
前記軸受け2bには回転軸4が、前記フロート2に対して回転可能に挿通され、該回転軸4の上端は前記ケース3内に位置し、後述する発電機7によりケース3に対して回転可能に支持されている。回転軸4の軸方向の長さは任意に設定され、該回転軸4に付設される後述する翼部10が波浪の影響を受けにくい海水中に位置する長さに設定することが好ましい。前記回転軸4には、逆回転防止部材5が設けられ、該逆回転防止部材5により前記回転軸4は一定方向のみ回転できるようになっている。この逆回転防止部材5として、本実施例においてはラチェット機構を用いた。前記ケース3内の回転軸4には、はずみ車6が設けられている。
【0015】
また、回転軸4は、発電機7に連結され、該発電機7は支持部材3aを介してケース3に固設され、前記発電機7は回転軸4の回転により発電するようになっている。発電機7には、図示しないバッテリー等の蓄電部材が接続されている。
【0016】
上記構造により、前記回転軸4は、フロート2とともに、上下移動するとともに、上下方向の軸を中心としてフロート2に対して回転可能に設けられている。
【0017】
回転軸4の下部には、翼部10が固設され、該翼部10の回転とともに回転軸4が回転するようになっている。該翼部10は、図2に示すように、前記回転軸4からその径方向外側に突出する本体部11と、該本体部11から前記回転軸4を中心とする周方向の一方に突出し、かつ、その先部を自由端とするとともに、上下方向に可撓性を有する2個の可撓部12を備えている。
【0018】
前記本体部11には、補強部材11aが固設され、本体部11が、翼部10の浮上又は沈降する際の水の抵抗により変形しにくいようになっている。本体部11と可撓部12とは一体に形成され、本実施例においては、金属製の板状部材を切り出して形成した。可撓部12は、可撓性を有するが、翼部10の浮上又は沈降する際の水の抵抗により曲折しない部材であれば任意の素材、例えば、金属、硬質樹脂材等の板状部材で構成することができ、その板厚みは均一としてもよいし、本体部11を厚く可撓部12を薄く形成してもよい。
【0019】
回転軸4の下端には、図1に示すように、回転軸4に対して自由回転可能な錘15を取り付け、該錘15にはワイヤー16を介してアンカー17が取り付けられている。
【0020】
次に、前記波浪発電装置1による発電方法について説明する。
前記波浪発電装置1を、図1に示すように、フロート2が海水面Wに浮き、錘15により、翼部10が水中に位置するように設置する。この状態で、波浪により海水面Wが上下に変位すると、翼部10も水中を上昇(浮上)・下降(沈降)する。翼部10が水中を上昇(浮上)すると図3に示すように、水の抵抗により翼部10の可撓部12の先端が下方に向くように撓み、回転軸4が図3(b)の矢印A方向に回転する。また、翼部10が下方に移動(沈降)すると図4に示すように、水の抵抗により翼部10の可撓部12の先端が上方に向くように撓み、回転軸4が図4(b)の矢印A方向に回転する。このように、翼部10が上方に移動しても、下方に移動しても、回転軸4は同じA方向に回転する。また、前記回転軸4に、はずみ車6を設けたことにより、はずみ車6の慣性力により、翼部10の上下動が止まった後においても、前記回転軸4の回転を継続させることができる。この回転軸4の回転により、発電機7が発電するようになっている。
【0021】
本発明の波浪発電装置1は、例えば、ボートや小型船舶等に搭載し、通信等の非常用の電源として用いることができ、波浪発電装置1を、ワイヤー等でボート等に繋ぎ、流れ止めができる場合には、前記ワイヤー16及びアンカー17は設けなくても良い。
【0022】
本発明の波浪発電装置1は、上記のように、翼部10を本体部11と可撓部12で構成し、可撓部12の撓みにより翼部10を回転するようにしたことにより、前記従来技術のように回転軸に対して翼を回転可能に備えるとともに、翼を付勢するバネ部材が不要となることで、構造を簡略化でき、製造コストを低くするとともに、装置全体をコンパクトに形成することができる。
【0023】
なお、翼部10の可撓部12の数及び形状は任意に形成することができ、例えば、図5に示すように、3個の可撓部12と本体部11を一体に形成してもよい。なお、この場合の補強部材11aは、本体部11に適応した形状となり、図2(a)の補強部材とは異なる形状となる。
【符号の説明】
【0024】
1 波浪発電装置
2 フロート
4 回転軸
7 発電機
10 翼部
11 本体部
12 可撓部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロートと、該フロートに対し回転可能な回転軸と、該回転軸に固設された翼部と、前記回転軸の回転により発電する発電機とを有し、
前記翼部は、前記回転軸からその径方向外側に突出する本体部と、該本体部から前記回転軸を中心とする周方向の一方に突出するとともに可撓性を有する可撓部を有し、
波浪による水面の変位に伴って、前記翼部が浮上又は沈降する際に、前記可撓部が水の抵抗により撓むことにより、前記回転軸が回転し、前記発電機において発電することを特徴とする波浪発電装置。
【請求項2】
前記回転軸に、はずみ車を設けたことを特徴とする請求項1記載の波浪発電装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−113266(P2013−113266A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262378(P2011−262378)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(593132021)
【Fターム(参考)】