説明

波長スプリッタ

【課題】素子規模を小さくしつつ、素子の特性の低下が抑制されるWGM共振器を用いる波長スプリッタの提供。
【解決手段】導波路と、ウィスパリングギャラリーモードによる共振器、を複数備える、波長スプリッタであって、前記複数の共振器のうち、一部の複数の共振器それぞれが、TE又はTMのいずれかの伝播モードであって第1の波長を有する第1の光、の共振条件を満たし、該一部の複数の共振器は、前記導波路と前記第1の光の共振結合をするとともに、前記導波路より順に並んで、1本の結合共振器型光導波路を形成するとともに、前記複数の共振器のうち、一部の複数の共振器それぞれが、TE又はTMのいずれかの伝播モードであって第2の波長を有する第2の光、の共振条件を満たし、該一部の複数の共振器は、前記導波路と前記第2の光の共振結合をするとともに、前記導波路より順に並んで、他の1本の結合共振器型光導波路を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィスパリングギャラリーモードによる共振器(Resonator)を用いた波長スプリッタに関する。
【背景技術】
【0002】
ウィスパリングギャラリーモード(Whispering Gallery Mode:以下、WGMと記す)とは、ディスクやリングなどの共振器内部で発生する共振現象である。WGMによる共振器(WGM共振器)の外部との境界は、一般に、円形状である。幾何光学におけるWGMとは、境界内部を光が全反射し、境界内部を伝播する共振現象である。円形状の境界の半径をr、光の波長をλ、WGM共振器の外部に対する比屈折率をnとすると、共振条件は、円周が波長の整数倍、すなわち、2πr=m(λ/n)で表すことができる。
【0003】
ここで、mは共振モード数となる整数である。幾何光学におけるWGMとは、mは十分に大きい値をとる。幾何光学によるWGM共振器を用いた波長フィルタについては、例えば、特許文献1に、記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2006−515081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
mの値が大きい場合には、WGM共振器の内部で共振する光は、円形状である境界の接線に隣接して反射されるので、光の全反射とみなす、幾何光学近似がなりたつが、mの値が小さくなると、WGM共振器の素子の規模を小さくできるものの、光の散乱効果が大きくなり、幾何光学近似は成り立たなくなる。
【0006】
mの値が1以上で、幾何光学近似がもはや成立しないmの値以下である領域を、粒子径と同程度の波長によるミー(Mie)散乱より、ミー領域とする。ミー領域におけるWGMの共振条件は、後述する通り、ミー理論から導かれる。逆に言えば、ミー理論から導かれる共振条件が成り立つ領域を、ミー領域としてもよい。
【0007】
ミー領域におけるWGM共振器において、光が波長程度まで外部ににじみ出るエバネッセント波(Evanescent Wave)が発生し、mの値がより小さくなるほど、エバネッセント波が増加する。非共振状態にある光にもエバネッセント波が発生するので、1個のWGM共振器において、共振する光以外の波長の光も侵入しやすく、また、放出されやすくなるので、WGM共振器を用いて波長スプリッタを構成する場合、幾何光学近似が成り立つWGM共振器と比較して、消光比が低下し、素子としての特性は低下する。
【0008】
本発明は、このような課題を鑑みて、素子規模を小さくしつつ、素子の特性の低下が抑制されるWGM共振器を用いる波長スプリッタの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するために、発明に係る波長スプリッタは、外部より入力する光を伝播する導波路と、前記導波路の側方に、互いに離間して配置される、ウィスパリングギャラリーモードによる共振器、を複数備える、波長スプリッタであって、前記複数の共振器のうち、一部の複数の共振器それぞれが、TEモード又はTMモードのいずれかの伝播モードであって第1の波長を有する第1の光、の共振条件を満たし、該一部の複数の共振器は、前記導波路と前記第1の光の共振結合をするとともに、前記導波路より順に並んで、1本の結合共振器型光導波路を形成するとともに、前記複数の共振器のうち、一部の複数の共振器それぞれが、TEモード又はTMモードのいずれかの伝播モードであって第2の波長を有するとともに、前記第1の光とは、波長又は伝播モードの、いずれか又は両方が異なる、第2の光、の共振条件を満たし、該一部の複数の共振器は、前記導波路と前記第2の光の共振結合をするとともに、前記導波路より順に並んで、他の1本の結合共振器型光導波路を形成する、ことを特徴とする。
【0010】
(2)上記(1)に記載の波長スプリッタであって、前記1本の結合共振器型光導波路と、前記他の1本の結合共振器型光導波路は、前記導波路より順に並ぶ複数の共振器を、ともに含んでいてもよい。
【0011】
(3)上記(1)に記載の波長スプリッタであって、前記1本の結合共振器型光導波路を形成する、前記一部の複数の共振器と、前記他の1本の結合共振器型光導波路を形成する、前記一部の複数の共振器は、互いに異なっていてもよい。
【0012】
(4)上記(1)に記載の波長スプリッタであって、前記第1の光と前記第2の光は、波長が等しく、伝播モードが互いに異なっていてもよい。
【0013】
(5)上記(1)に記載の波長スプリッタであって、前記各共振器は、外部に対する比屈折率がnであって、外部との境界が半径rの円形状となる断面を持つ共振部を有し、波長λの光に対して、共振モード数mとして、前記共振条件は、TEモードにあっては、下記数式1を満たし、
【数1】


TMモードにあっては、下記数式2を満たしていてもよい。
【数2】


ただし、波数kは、k=2π/λで定義され、Jは第1種ベッセル関数であり、H(1)は第1種ハンケル関数である。
【0014】
(6)上記(5)に記載の波長スプリッタであって、前記1本の結合共振器型光導波路と、前記他の1本の結合共振器型光導波路は、前記導波路より順に並ぶとともに、複数の共振器を、ともに含み、順に並ぶ該複数の共振器のうち、前記導波路側と反対側に位置する分岐共振器において、第1の光に対する共振モード数はmであり、第2の光に対する共振モード数はmであり、前記1本の結合共振器型光導波路において、前記導波路より数えて、前記分岐共振器の中心と該分岐共振器の1つ前の共振器の中心とを結ぶ直線と、前記分岐共振器の中心と該分岐共振器の1つ先の共振器の中心とを結ぶ直線と、のなす角は、π/mの整数倍であり、前記他の1本の結合共振器型光導波路において、前記導波路より数えて、前記分岐共振器の中心と該分岐共振器の1つ前の共振器の中心とを結ぶ直線と、前記分岐共振器の中心と該分岐共振器の1つ先の共振器の中心とを結ぶ直線と、のなす角は、π/mの整数倍であってもよい。
【0015】
(7)上記(1)に記載の波長スプリッタであって、前記共振部は、前記円形状となる断面を有する円柱形状であってもよい。
【0016】
(8)上記(1)に記載の波長スプリッタであって、前記共振部は、前記円形状となる断面を赤道面に有する球状であってもよい。
【0017】
(9)上記(1)に記載の波長スプリッタであって、前記共振部は、前記円形状となる断面を有するトロイド形状であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、素子規模を小さくしつつ、素子の特性の低下が抑制されるWGM共振器を用いる波長スプリッタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る波長スプリッタの全体斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る波長スプリッタの内部の構造を示す概略図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る波長スプリッタ主要部の上面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る波長スプリッタに対するシミュレーションより得られる波長スペクトルを示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る波長スプリッタ主要部の上面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る波長スプリッタに対するシミュレーションより得られる波長スペクトルを示す図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る共振器の形状を表す概略図である。
【図8】本発明の第5の実施形態に係る波長スプリッタ主要部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る波長スプリッタ1について、以下に詳細な説明をする。
【0021】
図1は、当該実施形態に係る波長スプリッタ1の全体斜視図である。図1に示す通り、波長スプリッタ1は、躯体2の側面に、入力端子3と、出力端子4a及び出力端子4b(図示せず)を備えている。入力端子3及び出力端子4a,4bには、光ファイバなどが接続され、入力端子3を介して、躯体2内部に設けられる入力導波路11や、出力導波路13a,13bと光学的に接続される。
【0022】
図2は、当該実施形態に係る波長スプリッタ1の内部の構造を示す概略図である。図2(a)は、波長スプリッタ1の図1に示す断面の断面図の一部であり、図2(b)は、波長スプリッタ1主要部の一部についての斜視図である。
【0023】
図2(a)に示す通り、入力導波路11やディスク共振器12は、高屈折率層7に形成される。高屈折率層7は、下地層6と低屈折率層8との間に形成されている。高屈折率層7とは、低屈折率層8より屈折率が高い物質からなり、ここでは、シリコン(Si)であるが、SiNなどであってもよい。低屈折率層8は、高屈折率層7より屈折率が低い物質からなり、ここでは、シリカ(SiO)とするが、例えば、空気などの気体であってもよい。下地層6は、SiOからなる。下地層6は、Siなどの基板5上に形成されている。
【0024】
図2(b)に示す通り、入力導波路11は、断面が矩形状であり、直線上に延伸している。ディスク共振器12は、入力導波路11の一方側に設けられ、円盤形状を有している。すなわち、断面が円形状であり、入力導波路11の厚さと同程度の厚みをする円柱形状である。ディスク共振器12は、ミー領域におけるWGM共振器(WGM resonator)である。
【0025】
図3は、当該実施形態に係る波長スプリッタ1主要部の上面図である。入力端子3と光学的に接続される入力導波路11と、出力端子4a,4bと光学的にそれぞれ接続される出力導波路13a,13bと、入力導波路11と出力導波路13a,13bとの間に配置される6個のディスク共振器12とが、下地層6上に形成されている。なお、前述の通り、各ディスク共振器12は、WGM共振器であり、ディスク共振器12とディスク共振器12の間が、共振結合されることによって、光が伝播し、それによって、複数のディスク共振器12が、結合共振器型光導波路(Coupled Resonator Optical Waveguide:以下、CROWと記す)を形成している。
【0026】
図3に示す通り、図中下側に、入力導波路11が図中横方向に延伸している。入力導波路11の図中左側は、入力端子3と光学的に接続しており、入力光が、入力導波路11の図中左側から入射し、入力導波路11にて、外部より入力する光を図中右方向へ伝播し、入力導波路11の図中右端より外部へ出射する。図中上側に、2本の出力導波路13が、図中横方向に延伸している。出力導波路13aの図中左側は、出力端子4aと光学的に接続しており、出力光が、出力導波路13aの図中上側へ出射する。同様に、出力導波路13bの図中右側は、出力端子4b(図示せず)と光学的に接続しており、出力光が、出力導波路13bの図中右側へ出射する。入力光と出力光が、図3には、それぞれ矢印で表されている。
【0027】
ディスク共振器12は、前述の通りWGM共振器であり、WGM共振器において、共振器の半径rは光の波長λに対して、ミー理論から導かれる所定の条件を満たしている。
【0028】
ミー理論から導かれる所定の条件について説明する。共振器は、外部に対する比屈折率がnであって、外部との境界が半径rの円形状となる断面を持つ共振器部を有し、波長λの光に対して、共振モード数mとして、境界面に対して電場が垂直であるTEモードにあっては、WGMの共振条件は、下記数式1を満たしている。
【数1】

【0029】
ただし、波数kは、k=2π/λで定義され、Jは、第1種ベッセル関数であり、H(1)は、第1種ハンケル関数である。
【0030】
また、境界面に対して電場が平行であるTMモードにあっては、WGMの共振条件は、下記数式2を満たしている。
【0031】
【数2】

【0032】
外部より、第1の光と第2の光を含む光が、入力端子3を介して入力され、入力導波路11を伝播する。第1の光とは、TEモード又はTMモードのいずれかの伝播モードであって、第1の波長λを有している。同様に、第2の光とは、TEモード又はTMモードのいずれかの伝播モードであって、第2の波長λを有している。なお、第1の光と第2の光とは、波長又は伝播モードの、いずれか又は両方が異なっている。すなわち、第1の光と第2の光とが、波長も等しく(λ=λ)、かつ、伝播モードも同じである、ということはない。なお、例えば、波長λの光とは、光のスペクトルの強度が強い波長が波長λであり、半値幅が波長λと波長λとの差|λ−λ|に対して十分に狭い光を指す。
【0033】
図3には、入力導波路11の側方に、互いに離間して配置される6個のディスク共振器12が示されいる。図中左上に並ぶ2個のディスク共振器12は、第1の光の共振条件は満たすが、第2の光の共振条件を満たしておらず、以下、λディスク共振器12aと記す。図中右上に並ぶ2個のディスク共振器12は、第2の光の共振条件は満たすが、第1の光の共振条件を満たしておらず、以下、λディスク共振器12bと記す。図中真ん中に並ぶ2個のディスク共振器12は、第1の光の共振条件も第2の光の共振条件もともに満たしており、以下、λディスク共振器12cと記す。
【0034】
2個のλディスク共振器12cと、2個のλディスク共振器12aとの4個のディスク共振器12は、すべて第1の光の共振条件を満たしており、入力導波路11より順に並ぶ、1本の結合共振器型光導波路(CROW)を形成している。該1本のCROWを、第1のCROW21とする。第1のCROW21は、入力導波路11より順に並ぶ4個のディスク共振器12からなり、順に、第1のλディスク共振器12c、第2のλディスク共振器12c、第1のλディスク共振器12a、第2のλディスク共振器12aとする。
【0035】
第1のλディスク共振器12cは、入力導波路11の近傍に配置されており、入力導波路11と第1のλディスク共振器12cは、第1の光の共振結合をするので、入力導波路11を伝播する第1の光が、第1のλディスク共振器12cへ伝播し、第1のCROW21を構成する隣り合うディスク共振器間にも、第1の光の共振結合をするので、第1のCROW21を、入力導波路11から順に、第1の光が伝播する。すなわち、入力導波路11から見て、第1の光は、図中上方向に伝播し、第2のλディスク共振器12cから、図中左上方向に、2個のλディスク共振器12aを順に伝播する。
【0036】
第2のλディスク共振器12aは、出力導波路13aの近傍に配置されており、第2のλディスク共振器12aと出力導波路13aは、第1の光の共振結合をするので、第1CROW21を伝播する第1の光が、出力導波路13aに伝播し、出力導波路13aを図中上方向へ伝播して、出力端子4aを介して外部へ出力する。
【0037】
2個のλディスク共振器12cと、2個のλディスク共振器12bとの4個のディスク共振器12は、すべて第2の光の共振条件を満たしており、入力導波路11より順に並ぶ、他の1本の結合共振器型光導波路(CROW)を形成している。該他の1本のCROWを、第2のCROW22とする。第1のCROW21と同様に、第2のCROW22は、入力導波路11より順に並ぶ4個のディスク共振器12からなり、順に、第1のλディスク共振器12c、第2のλディスク共振器12cが並んでおり、さらに並ぶ2個のλディスク共振器12bを、第1のλディスク共振器12b、第2のλディスク共振器12bとする。
【0038】
第1のCROW21と同様に、第2のCROW22において、入力導波路11から出力導波路13bへ、順に、第2の光が伝播する。すなわち、入力導波路11から見て、第2の光は、図中上方向に伝播し、第2のλディスク共振器12cから、図中右上方向に、2個のλディスク共振器12bを順に伝播して、出力導波路13bに伝播し、出力導波路13bを図中右方向へ伝播して、出力端子4bを介して外部へ出力する。
【0039】
当該実施形態に係る波長スプリッタ1の特徴は、第1のCROW21と、第2のCROW22とが、入力導波路11より順に並ぶ2個のλディスク共振器12cを、ともに含んでいるところにある。すなわち、λディスク共振器12cは、第1の光及び第2の光の共振条件をともに満たしているので、第1の光及び第2の光が、ともに、入力導波路11より、第2のλディスク共振器12cへ、順に伝播する。第2のλディスク共振器12cから第1のλディスク共振器12aへは、第1の光のみが伝播する。同様に、第2のλディスク共振器12cから第1のλディスク共振器12bへは、第2の光のみが伝播する。第2のλディスク共振器12cより先は、第1の光と第2の光がそれぞれに分波(スプリット)するので、第2のλディスク共振器12cは、分岐共振器と呼んでもよい。
【0040】
ここで、第1の光のみが、第2のλディスク共振器12cから第1のλディスク共振器12aへ伝播すると説明したが、実際には、前述のエバネッセント波が発生するので、第2の光も一部伝播する。すなわち、第2のλディスク共振器12cから第1のλディスク共振器12aのみの共振結合では、分波が不十分である。しかし、第2の光は、第1のλディスク共振器12aへ伝播しても、共振条件を満たしていないので、第1のλディスク共振器12aにおいて減衰し、さらに、第2のλディスク共振器12aへ伝播において、さらに減衰し、第2の光は急速に減衰する。
【0041】
本発明に係る波長スプリッタ1の特徴は、入力光が入力され、伝播する入力導波路11より第1の光を、出力側へ伝播する、第1のCROW21と、同様に、第2の光を伝播する、第2のCROW22を、備える点にある。例えば、第1のCROW21は、第1の光の共振条件を満たしているので、第1の光は、第1のCROW21を出力側へ伝播する。これに対して、共振条件を満たしていない光は、第1のCROW21を伝播するにつれて、急速に減衰していく。
【0042】
さらに、当該実施形態に係る波長スプリッタ1において、第1のCROW21及び第2のCROW22は、入力導波路11より順に複数の共振器を、ともに含んでいるので、該複数の共振器を、第1の光及び第2の光がともに伝播していくが、該複数の共振路に続いて、第1のCROW21は、第1の光の共振条件を満たすが、第2の光の共振条件を満たさない共振器を含んでいるので、該共振器において、第2の光は減衰する。第2のCROW22についても、同様である。
【0043】
なお、本発明に係る波長スプリッタ1において、光は、入力導波路から、CROWへ伝播している。すなわち、基板5の平面に平行な面をxy平面とすると、光の伝播方向は、xy平面に平行な方向のいずれかであり、導波路の側面から、共振器の側面へ伝播している。この場合、導波路の側面と共振器の側面との間、及び、共振器の側面と共振器の側面との間が、共振器や導波路の屈折率より低い屈折率の物質で満たされているのがよい。それゆえ、導波路と共振器、共振器と共振器との間に、低屈折率層8が配置されている。
【0044】
光がxy平面の方向へ伝播するには、xy平面に垂直な方向(例えば、図2(a)の上下方向)に対して、光が閉じ込められているのが望ましい。よって、下地層6も、共振器や導波路の屈折率より低い屈折率の物質からなるのが望ましい。
【0045】
さらに、WGMには、反時計回りに回転するモードと、時計回りに回転するモードがある。入力導波路11に入力される光は、図3の右向きに伝播しており、第1の第1のλディスク共振器12cは、入力導波路11と共振結合をすることによって、共振するので、第1のλディスク共振器12cにおいては、反時計回りに回転するモードが支配的となる。その後、順に、ディスク共振器12間の共振結合によって、CROWを光が伝播するので、例えば、第1のCROW21において、第2のλディスク共振器12cにおいては、時計回り、第1のλディスク共振器12aにおいては、反時計回りに、第2のλディスク共振器12aにおいては、時計回りに、それぞれ回転するモードが支配的である。第2のλディスク共振器12aが、主に、時計回りに回転して共振しているので、出力導波路13aは、上方向に延伸するよう配置されている。また、第2のλディスク共振器12aの外部の光の強度分布や、出力導波路13bとの共振結合の強さなどから、出力導波路13aの配置を決めるとよい。他の出力導波路13についても、同様である。
【0046】
次に、当該実施形態に係る波長スプリッタ1の製造方法について説明する。Siからなる基板5上に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、SiOを積層し、下地層6を形成する。さらに、下地層6上に、CVD法によって、Siを所定の厚さに積層し、高屈折率層7を形成する。公知のリソグラフィ工程とエッチング工程によって、高屈折率層7を図3に示す形状に加工することにより、高屈折率層7に、入力導波路11,ディスク共振器12,出力導波路13を形成する。さらに、SiOをCVD法によって積層し、低屈折率層8を形成する。
【0047】
以上により、波長スプリッタ1主要部が製造され、躯体2に収納するとともに、入力端子3,出力端子4と光学的に接続することにより、波長スプリッタ1が完成する。
【0048】
次に、発明者らが行った高精度シミュレーション結果について説明する。ミー領域における光の伝播は非常に複雑であるが、Nonstandard Finite Difference Time Domain(以下、NS−FDTD)アルゴリズムを用いて、高精度なシミュレーションが可能となった。
【0049】
第1及び第2の光の波長は、それぞれ、λ=1300nm,λ=1550nmとし、3種類のλディスク共振器12a,λディスク共振器12b,λディスク共振器12cそれぞれの半径は、TEモードの光についての共振条件である数式(2)を近似的に満たすものであり、順に、r=1310.52nm,r=1562.54nm,r=1214.08nmとした。λディスク共振器12aの半径rは、波長λに対して共振モード数mが12となり、波長λに対して共振条件を満たしていない。λディスク共振器12bの半径rは、波長λに対して共振モード数mが12となり、波長λに対しては共振条件を満たしていない。λディスク共振器12cの半径rは、波長λに対して共振モード数mが11でありこれをmとし、波長λに対して共振モード数mが9であり、これをmとする。
【0050】
なお、ここで、ディスク共振器間の間隔であるが、同じ半径のディスク共振器間の間隔は、半径の0.2倍とし、異なる半径のディスク共振器間の半径は、2つのディスク共振器の半径の平均の0.2倍としている。
【0051】
図3に示す角度θ,θについては、θ=3π/11,θ=3π/9としている。ここで、第1のCROW21を伝播する光は、まず、入力導波路11より、図3の図中上向きに、第2のλディスク共振器12cまで伝播し、その後、向きを反時計回りに、θ回転して、第2のλディスク共振器12aへ、図3の図中左上向きに伝播する。すなわち、角度θは、第1及び第2のλディスク共振器12cの中心を結ぶ直線と、第2のλディスク共振器12cの中心と第1のλディスク共振器12aの中心を結ぶ直線と、のなす角度である。ここで、第1のCROW21において、入力導波路11より順に数えると、第1のλディスク共振器12cは、分岐共振器である第2のλディスク共振器12cの1つ前の共振器であり、第1のλディスク共振器12aは、分岐共振器である第2のλディスク共振器12cの1つ先の共振器である。
【0052】
角度θについても、同様であり、角度θは、第1及び第2のλディスク共振器12cの中心を結ぶ直線と、第2のλディスク共振器12cの中心と第1のλディスク共振器12bの中心を結ぶ直線と、のなす角度である。
【0053】
また、シミュレーションにおいて、光源31を、図3に示す通り、入力導波路11より最初に伝播する第1のλディスク共振器12cの内部に設定した。観測点を、出力端子4a側については、出力導波路13aに隣接する第2のディスク共振器12aの外部にあって、光の強度の強い位置とし、出力端子4b側については、出力導波路13bに隣接する第2のディスク共振器12bの外部にあって、光の強度の強い位置とした。なお、比屈折率nは、低屈折率層8のSiOの絶対屈折率(1.45)に対する高屈折率層7のSiの絶対屈折率(3.5)、すなわち、3.5/1.45とした。シミュレーションにおける計算グリッド空間は5nmごとに、14μm×12μmの範囲で、時間ステップをを220(波長周期でおよそ2400)として、シミュレーションを行った。
【0054】
図4は、当該実施形態に係る波長スプリッタ1に対するシミュレーションより得られる波長スペクトルを示す図である。図4(a)は、第2のλディスク共振器12aの外部に設けられる観測点における波長スペクトルを、図4(b)は、第2のλディスク共振器12bの外部に設けられる観測点における波長スペクトルを、それぞれ表している。
【0055】
図4(a)に示す波長スペクトルにおいて、波長λ(=1550nm)の振幅が、波長λ(=1300nm)の振幅より、消光比26.3dBと十分に小さくなっており、図4(b)に示す波長スペクトルにおいて、波長λの振幅が、波長λの振幅より、消光比29.1dBと、十分に小さくなっており、波長スプリッタとして、機能していることが示されている。これらは、一般的な波長スプリッタに求められる消光比の基準を満たしている。
【0056】
ここでは、角度θ,θについては、θ=3π/11,θ=3π/9としているが、これは、第2のλディスク共振器12cの外部における光の強度分布に基づいている。すなわち、光の強度分布が強い方向を考慮して、第2のλディスク共振器12cにおける第1の光及び第2の光の共振モード数m,mに対して、θがπ/mの整数倍、θがπ/mの整数倍となるのが、望ましい。
【0057】
さらに、WGM共振器間の間隔について、説明する。前述の通り、ミー領域におけるWGM共振器には、エバネッセント波が発生しており、WGM共振器において、共振する光以外の波長の光も侵入しやすく、また、放出されやすくなっている。それゆえ、共振器と共振器を接触させる、又は、十分に近づけると、所望の光の共振結合は増加するが、所望の光以外の光の結合も発生してしまう。対して、共振器と共振器の間を広げると、所望の光以外の光の結合は急速に低下するものの、所望の光の共振結合も低下してしまう。
【0058】
それゆえ、共振器と共振器間の間隔は、共振器の半径の10%以上30以下となるのが望ましく、共振器の半径の20%とするのが、さらに望ましい。
【0059】
以下、共振器を製造する製造工程における、共振器の作製誤差について、説明する。TEモード及びTMモードのいずれの伝搬モードの光に対しても、半径rの作製誤差Δrと、比屈折率nの作製誤差Δnと、共振する光の波長λの誤差Δλは、下記数式3の関係がある。
【0060】
【数3】

【0061】
数式3によると、最近のリソグラフィ工程における作製誤差Δrは、Δr≒5nm程度であり、Δn=0とすると、光の波長λの誤差ΔλはΔλ≒7nm程度となる。Δnの値が大きくなると、それに応じて、波長λの誤差Δλも大きくなる。数式3を用いることにより、CROWの製造工程における、共振器の作製誤差が見積もることが出来る。
【0062】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る波長スプリッタ1の基本的な構成は、第1の実施形態に係る波長スプリッタ1と同じである。第1の実施形態に係る波長スプリッタ1との主な違いは、CROWの配置にある。
【0063】
図5は、当該実施形態に係る波長スプリッタ1主要部の上面図である。第1の実施形態に係る波長スプリッタ1と同様に、外部より第1の光と第2の光を含む光が、入力端子3に入力される。図5に示すλディスク共振器12aは、図3に示すλディスク共振器12aと同様に、第1の光の共振条件は満たすが、第2の光の共振条件を満たしておらず、図5に示すλディスク共振器12bは、同様に、第2の光の共振条件は満たすが、第1の光の共振条件は満たしていない。
【0064】
3個のλディスク共振器12aは、すべて第1の光の共振条件を満たしており、入力導波路11より順に並ぶ、1本の結合共振器型光導波路(CROW)を形成している。該1本のCROWを、第1のCROW21とする。3個のλディスク共振器12bは、すべて第2の光の共振条件を満たしており、入力導波路11より順に並ぶ、他の1本の結合共振器型光導波路(CROW)を形成している。該他の1本のCROWを、第2のCROW22とする。第1のCROW21において、入力導波路11から出力導波路13aへ、順に、第1の光が伝播し、第2のCROW22において、入力導波路11から出力導波路13bへ、順に、第2の光が伝播する。ここで、入力導波路11から光の伝播方向に沿って、第1のCROW21において、順に、第1のλディスク共振器12a、第2のλディスク共振器12a、第3のλディスク共振器12aとし、第2のCROW22において、順に、第1のλディスク共振器12b、第2のλディスク共振器12b、第3のλディスク共振器12bとする。
【0065】
外部より、第1の光と第2の光を含む光が、入力端子3を介して入力され、入力導波路11を伝播する。入力導波路11から、出力導波路13aへ、第1のCROW21を、第1の光のみが伝播する。厳密には、第2の光も一部伝播するが、各λディスク共振器12aにおいて減衰し、さらに、間においてさらに減衰する。同様に、入力導波路11から、出力導波路13bへ、第2のCROW22を、第2の光のみが伝播する。そして、出力導波路13aを第1の光が図中左方向へ伝播して、出力端子4aを介して外部へ出力し、出力導波路13bを第1の光が図中右方向へ伝播して、出力端子4aを介して外部へ出力する。
【0066】
当該実施形態に係る波長スプリッタ1は、第1のCROW21を形成する3個のλディスク共振器12aと、第2のCROW22を形成する3個のλディスク共振器12bは、互いに異なっている。すなわち、第1のCROW21を形成する3個のディスク共振器12は、すべて第1の光の共振条件を満たしているが、第2の光の共振条件を満たしておらず、第2のCROW22を形成する3個のディスク共振器12は、すべて第2の光の共振条件を満たしているが、第1の光の共振条件を満たしていない。
【0067】
よって、第2の光の一部が、第1のCROW21に伝播しても、第2の光は急速に減衰し、同様に、第1の光の一部が、第2のCROW22に伝播しても、第1の光は急速に減衰し、消光比は向上しており、波長スプリッタとしての特性が向上している。
【0068】
次に、第1の実施形態と同様に、発明者らが行った高精度シミュレーション結果について説明する。
【0069】
第1及び第2の光の波長は、それぞれ、λ=1400nm,λ=1550nmとし、2種類のλディスク共振器12a,λディスク共振器12bそれぞれの半径は、TEモードの光についての共振条件である数式(2)を近似的に満たすものであり、順に、r=1307.43nm,r=1447.51nmとした。λディスク共振器12aの半径rは、波長λに対して共振モード数mが11となり、波長λに対して共振条件を満たしていない。λディスク共振器12bの半径rは、波長λに対して共振モード数mが11となり、波長λに対しては共振条件を満たしていない。
【0070】
なお、ここで、ディスク共振器間の間隔を、それぞれ半径の0.2倍とし、入力導波路11とディスク共振器間の間隔も、それぞれの半径の0.2倍としている。
【0071】
また、シミュレーションにおいて、光源31を、図5に示す通り、入力導波路11の図中左側に設定した。また、観測点を、出力端子4a側については、出力導波路13aに隣接する第3のλディスク共振器12aの外部にあって、光の強度の強い位置とし、出力端子4b側については、出力導波路13bに隣接する第3のλディスク共振器12bの外部にあって、光の強度の強い位置とした。なお、第1の実施形態と同様に、比屈折率nは、3.5/1.45とし、シミュレーションにおける計算グリッド空間は5nmごとに、12μm×12μmの範囲で、時間ステップを220(波長周期でおよそ2400)として、シミュレーションを行った。
【0072】
図6は、当該実施形態に係る波長スプリッタ1に対するシミュレーションより得られる波長スペクトルを示す図である。図6(a)は、第3のλディスク共振器12aの外部に設けられる観測点における波長スペクトルを、図6(b)は、第3のλディスク共振器12bの外部に設けられる観測点における波長スペクトルを、それぞれ表している。なお、シミュレーションは、時間ステップを220(波長周期でおよそ2400)としている。
【0073】
図6(a)に示す波長スペクトルにおいて、波長λ(=1550nm)の振幅が、波長λ(=1400nm)の振幅より、消光比21.5dBと十分に小さくなっており、図6(b)に示す波長スペクトルにおいて、波長λの振幅が、波長λの振幅より、消光比24.5dBと、十分に小さくなっており、波長スプリッタとして、機能していることが示されている。これらは、一般的な波長スプリッタに求められる消光比の基準を満たしている。
【0074】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る波長スプリッタ1の基本的な構成は、第1又は第2の実施形態に係る波長スプリッタ1と同じである。第1又は第2の実施形態に係る波長スプリッタ1との主な違いは、CROWの共振条件にある。
【0075】
当該実施形態に係る波長スプリッタ1において、第1の光と第2の光は、波長が等しく、伝播モードが互いに異なっている。すなわち、第1の光の波長λと第2の光の波長λ
は等しく(λ=λ)、第1の光の伝播モードがTEモードであるならば、第2の光の伝播モードがTMモードとなる。
【0076】
幾何光学におけるWGMにおいて、同じ波長λの光の場合、TEモードとTMモードで、共振条件に差異がなかったのに対して、当該実施形態に係る波長スプリッタ1において、同じ波長であって伝播モードが異なる、第1の光と、第2の光を分波することにより、1つの波長に、TEモードとTMモードに対応した2種類の情報を含めることが出来る。
【0077】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る波長スプリッタ1の基本的な構成は、第1乃至第3のいずれかの実施形態に係る波長スプリッタ1と同じである。第1乃至第3のいずれかの実施形態に係る波長スプリッタ1との主な違いは、CROWを構成する共振器の構造にある。
【0078】
第1乃至第3の実施形態に係る共振器は、下地層6上に形成されるディスク共振器12であり、ディスク共振器12の形状は、断面が円形状であり、入力導波路11の厚さと同程度の厚みをする円柱形状である。これに対して、当該実施形態に係る共振器18は、他の形状となっている。
【0079】
図7は、当該実施形態に係る共振器18の形状を表す概略図である。図7(a)に示す共振器18は、薄いディスク共振器が共振部として、共振部が円錐台形状のポストの上に配置されている形状をしている。すなわち、共振部は、円形状となる断面を有しており、共振部は円柱形状をしている。
【0080】
図7(b)に示す共振器18は、球形状をしており、球の赤道面での断面が共振部となっている。該共振部が共振状態にあるとは、該断面において、所定の光が共振条件を満たしている場合を言う。共振器18は、図に示す通り、該赤道面の近傍に延伸する導波路17と共振結合することも出来るし、球形状の共振器18が複数並び、赤道面にある共振部間で、共振結合することも出来る。
【0081】
図7(c)に示す共振器18は、共振部がトロイド形状をしており、共振部がポストの上に配置されている。共振部のトロイド形状を、外縁が最も大きくなる断面で切ると、円形状となっている。該共振部が共振状態にあるとは、該断面において、所定の光が共振条件を満たしている場合を言う。共振器18は、図に示す通り、該断面の近傍に延伸する導波路17と共振結合することも出来るし、トロイド形状の共振部を有する共振器18が複数並び、共振部の該断面間で、共振結合することも出来る。
【0082】
図7(a)に示す共振器18は、Q値が非常に高い、高Q値の共振器であり、CROWを伝播する際に生じる光の伝搬損失を軽減することが出来る。図7(b)及び図7(c)に示す共振器18は、Q値が更に高い、超高Q値の共振器であり、伝搬損失をさらに軽減することが出来る。
【0083】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態に係る波長スプリッタ1の基本的な構成は、第1乃至第4のいずれかの実施形態に係る波長スプリッタ1と同じである。第1乃至第4の実施形態において、第1の光と第2の光を分波する波長スプリッタ1について説明したが、2種類の光の分波に限定されることはない。
【0084】
図8は、当該実施形態に係る波長スプリッタ1主要部の上面図である。図5に示す波長スプリッタ1において、第1の光を伝播する第1のCROW21と、第2の光を伝播する第2のCROW22とが備えられているのに対して、図8に示す波長スプリッタ1は、さらに、第3の光を伝播する第3のCROW23と、第4の光の伝播する第4のCROW24とを、さらに備える。ここで、第3の光及び第4の光は、それぞれ、TEモード又はTMモードのいずれかの伝播モードであって、第3及び第4の波長λ,λを有している。また、第1乃至第4の光のうち、いずれの2つの光も、波長及び伝播モードがともに等しい場合はないものとする。
【0085】
また、例えば、第1のCROW21を伝播する第1の光と、第2のCROW22を伝播する第2の光において、波長λが等しくて、一方の伝播モードがTEモードで、他方の伝搬モードがTMモードである場合、第1のCROW21では、TEモードの光を、第2のCROW22では、TMモードの光を、分波することが出来、これらを所定の条件の下、合成することにより、偏波無依存性に戻すことも出来る。
【0086】
以上、本発明について、詳細な説明を行った。ミー領域におけるWGM共振器は、幾何光学におけるWGM共振器より、素子の規模を軽減することが出来る代わりに、消光比が低下してしまうところ、CROWを形成することにより、共振状態にある光を分波することが出来ている。さらに、CROWは、伝搬方向に対して自由度高く、形状を作ることが出来るので、CROW自体を回路の導波路として用いることにより、柔軟な素子の設計やレイアウトが可能となる。
【符号の説明】
【0087】
1 波長スプリッタ、2 躯体、3 入力端子、4 出力端子、5 基板、6 下地層、7 高屈折率層、8 低屈折率層、11 入力導波路、12 ディスク共振器、12a λディスク共振器、12b λディスク共振器、12c λディスク共振器、13 出力導波路、17 導波路、18 共振器、21 第1のCROW、22 第2のCROW、23 第3のCROW、24 第4のCROW、31 光源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部より入力する光を伝播する導波路と、
前記導波路の側方に、互いに離間して配置される、ウィスパリングギャラリーモードによる共振器、を複数備える、波長スプリッタであって、
前記複数の共振器のうち、一部の複数の共振器それぞれが、TEモード又はTMモードのいずれかの伝播モードであって第1の波長を有する第1の光、の共振条件を満たし、該一部の複数の共振器は、前記導波路と前記第1の光の共振結合をするとともに、前記導波路より順に並んで、1本の結合共振器型光導波路を形成するとともに、
前記複数の共振器のうち、一部の複数の共振器それぞれが、TEモード又はTMモードのいずれかの伝播モードであって第2の波長を有するとともに、前記第1の光とは、波長又は伝播モードの、いずれか又は両方が異なる、第2の光、の共振条件を満たし、該一部の複数の共振器は、前記導波路と前記第2の光の共振結合をするとともに、前記導波路より順に並んで、他の1本の結合共振器型光導波路を形成する、
ことを特徴とする、波長スプリッタ。
【請求項2】
請求項1に記載の波長スプリッタであって、
前記1本の結合共振器型光導波路と、前記他の1本の結合共振器型光導波路は、前記導波路より順に並ぶ複数の共振器を、ともに含んでいる、
ことを特徴とする、波長スプリッタ。
【請求項3】
請求項1に記載の波長スプリッタであって、
前記1本の結合共振器型光導波路を形成する、前記一部の複数の共振器と、
前記他の1本の結合共振器型光導波路を形成する、前記一部の複数の共振器は、互いに異なっている、
ことを特徴とする、波長スプリッタ。
【請求項4】
請求項1に記載の波長スプリッタであって、
前記第1の光と前記第2の光は、波長が等しく、伝播モードが互いに異なる、
ことを特徴とする、波長スプリッタ。
【請求項5】
請求項1に記載の波長スプリッタであって、
前記各共振器は、外部に対する比屈折率がnであって、外部との境界が半径rの円形状となる断面を持つ共振部を有し、
波長λの光に対して、共振モード数mとして、前記共振条件は、TEモードにあっては、下記数式1を満たし、
【数1】


TMモードにあっては、下記数式2を満たしている、
【数2】

ことを特徴とする、波長スプリッタ。
ただし、波数kは、k=2π/λで定義され、Jは第1種ベッセル関数であり、H(1)は第1種ハンケル関数である。
【請求項6】
請求項5に記載の波長スプリッタであって、
前記1本の結合共振器型光導波路と、前記他の1本の結合共振器型光導波路は、前記導波路より順に並ぶとともに、複数の共振器を、ともに含み、
順に並ぶ該複数の共振器のうち、前記導波路側と反対側に位置する分岐共振器において、第1の光に対する共振モード数はmであり、第2の光に対する共振モード数はmであり、
前記1本の結合共振器型光導波路において、前記導波路より数えて、前記分岐共振器の中心と該分岐共振器の1つ前の共振器の中心とを結ぶ直線と、前記分岐共振器の中心と該分岐共振器の1つ先の共振器の中心とを結ぶ直線と、のなす角は、π/mの整数倍であり、
前記他の1本の結合共振器型光導波路において、前記導波路より数えて、前記分岐共振器の中心と該分岐共振器の1つ前の共振器の中心とを結ぶ直線と、前記分岐共振器の中心と該分岐共振器の1つ先の共振器の中心とを結ぶ直線と、のなす角は、π/mの整数倍である、
ことを特徴とする、波長スプリッタ。
【請求項7】
請求項1に記載の波長スプリッタであって、
前記共振部は、前記円形状となる断面を有する円柱形状である、
ことを特徴とする、波長スプリッタ。
【請求項8】
請求項1に記載の波長スプリッタであって、
前記共振部は、前記円形状となる断面を赤道面に有する球状である、
ことを特徴とする、波長スプリッタ。
【請求項9】
請求項1に記載の波長スプリッタであって、
前記共振部は、前記円形状となる断面を有するトロイド形状である、
ことを特徴とする、波長スプリッタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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