説明

波長分離素子、波長分離素子の製造方法及び光モジュール

【課題】波長分離素子の各ポートのアイソレーションを改善する手段を得る。
【解決手段】多重化された光を波長帯毎に分離し、分離した波長帯の光を別々の出射ポー
トから出射させる波長分離素子であって、多重化した光を、第1の方向に透過させる波長
帯λ1の光と、反射させる波長帯λ2、λ3の光とに分離する第1のフィルターと、第1
のフィルターによって反射された波長帯λ2、λ3の光を、第2の方向に透過させる波長
帯λ3の光と、反射させる波長帯λ2の光とに分離する第2のフィルターと、第2のフィ
ルターによって反射された波長帯λ2の光を、透過させる第3及び第4のフィルターと、
を備え、第1のフィルターは、第2のフィルターから反射されて再度入射する波長帯λ2
の光を、第3の方向に透過させる特性を有し、第3及び第4のフィルターは第3の方向に
透過した光のうち、波長帯λ2の光を透過させる特性を有するように波長分離素子を構成
する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長分離素子、その製造方法及び光モジュールに関し、特に波長分離素子の
特性を改善すると共に、波長分離素子の改良した製造方法と、改善した波長分離素子を用
いた光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信需要の増大に対応すべく、高速で大容量通信に適した波長分割多重(WDM
)方式等の高密度波長多重通信システムの導入が行われている。1本の光ファイバに波長
の異なる光信号を多重化するWDM(Wavelength Division Multiplexing)方式のデータ
伝送容量は、1波長当たりのデータ伝送速度と多重化する波長の数とによって決まる。
【0003】
特許文献1には、WDM方式に用いられる波長分離素子及び光モジュールが開示されて
いる。図10は、波長分離素子50の構成を示す図であって、波長分離素子50は2つの
フィルター51、52を有し、フィルター51、52は夫々石英やガラス等の光透過部材
51a、52aの片面に、例えばSiO2、TiO2等の多層膜を形成したフィルター膜5
1b、52bを備えている。フィルター51、52の配置は、フィルター膜51bの法線
方向を座標軸(図中右下)のX軸に対して45°、フィルター膜52bの法線方向をY軸
方向から角度θ2(6°)傾け、フィルター膜51b、52b同士が対面するようにフィ
ルター51、52を配置する。そして、フィルター膜51bの波長特性は、多重化した光
(波長帯λ1、λ2、λ3)の入射角が45度のとき、波長帯λ1(1260nm〜13
60nm)の光を透過し、波長帯λ2α(1480nm〜1560nm)以上の光を反射
し、入射角が33度のとき、波長帯λ2(1480nm〜1500nm)までの光を透過
し、それ以上の波長を反射するように構成されている。一方、フィルター膜52bの波長
特性は、波長帯λ2までの光を反射し、波長帯λ3(1539nm〜1620nm)以上
の光を透過するように構成されている。
【0004】
波長分離素子50のフィルター51に、フィルター膜51bの法線に対し45度の角度
で多重化された光(波長帯λ1、λ2、λ3)を入射させると、フィルター膜51bは波
長帯λ1の光を透過し、波長帯λ2、λ3の光を反射する。フィルター膜51bで反射さ
れた光(波長帯λ2、λ3)は、フィルター膜52bの法線に対し、角度θ2(6°)で
入射し、波長帯λ3の光は透過し、波長帯λ2の光は反射される。フィルター膜52bで
反射された光(波長帯λ2)は、フィルター膜51bの法線に対し、角度θ3(=45°
−2×θ2=33°)で入射し、フィルター51bを透過する。このように、波長分離素
子50は多重化された光(波長帯λ1、λ2、λ3)を、夫々の波長帯λ1、λ3、λ2
に分離し、夫々の方向a、b、cに出射する機能を有している。
逆に、a、b、cの方向から波長帯λ1、λ3、λ2の光を入射させると、光路53か
ら多重化された光(波長帯λ1、λ2、λ3)を得ることができる。
【0005】
図11は、図10の光透過部材の形とは異なるものの、他の構成は図10の形態と同様
に構成された波長分離素子54である。例えば、ガラスを立方体に加工した後、図中f−
f線で分割して光透過部材55a、56aを形成する。分割面のいずれか一方の面にフィ
ルター膜55bを設け、分割面を再度接合してキューブ状のプリズムとする。フィルター
膜55bによる光の反射方向であって、光が出射する光透過部材56aの面にフィルター
膜56bを形成する。そして、波長分離素子54の光の入射光路にフェルールで保持され
た光ファイバを接着する。フィルター膜55b、56bは、図10に示したフィルター膜
51b、52bと同様に、SiO2、TiO2等の多層膜で形成されたもので、その波長特
性も同様である。この波長分離素子54の作用は、図10に示した波長分離素子50と同
様である。
【0006】
一方、2つの直角三角柱形状のプリズムの傾斜面同士を接合し、一体化した光学デバイ
ス(ビームスプリッタ)の製造方法が特許文献2に開示されている。図12はビームスプ
リッタの製造工程のフロー図である。図13(a)、(b)及び図14(a)乃至(f)
は、ビームスプリッタの製造方法を説明するための工程図である。図13(a)に示すガ
ラス平板60は、板ガラス61の上面に偏光分離膜62を形成すると共に、下面にマッチ
ング膜63を形成した構成を備えている。このように全く同一の構成を備えたガラス平板
60を複数枚使用して、積層体を形成する。図13(b)は治具64を用いて45度の傾
斜角度でガラス平板60を積層する状態を示している。治具64は水平な板状のベース6
4aと、このベース64aから45度傾斜させて固定した傾斜側壁64bとからなり、偏
光分離膜62を上向きにしたガラス平板60をベース64aに順次積層する。この際、ガ
ラス平板60の一端を傾斜側壁64bに沿って整列させることにより、各ガラス平板60
が面方向に等距離ずつずれた階段状の積層体65が形成される。つまり、正面形状が略平
行四辺形の積層体となる。ガラス平板60同士の接着はUV硬化型の光学接着剤で行う。
【0007】
次に、図14(a)に示すように接着剤により一体化された積層体65を破線の45度
の傾斜角度に沿って、ワイヤーソー等を用い所定のピッチの複数の平行な切断面65aに
て切断すると、図14(b)に示すような積層分割体66が得られる。図14(c)は切
断された積層分割体66を水平に置いたものであり、該積層分割体66の上下面(切断面
)を鏡面研磨すると共に、各面に反射膜をコーティングする。積層分割体66の両端部の
鋭角状に突出している部分を先に切断するか、図14(d)に示すように積層分割体66
を整合状態で積層して、積層体67を形成し、仮止めした上で切断してもよい。仮止めし
た複数の積層分割体66を、上記切断面65aと直交する切断面67aに沿って、ワイヤ
ーソーにより仮止めした積層分割体66を切断すると、図14(e)に示すビームスプリ
ッタの連結体68となる。そして、切断面を鏡面研磨し、同図(e)の破線68aに沿っ
てビームスプリッタ連結体を切断すると同図(f)に示すビームスプリッタ69が得られ
ることが、特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開2005−164971公報
【特許文献2】特開2000−143264公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1(図11等)に開示された波長分離素子にあっては、各出力
ポートのアイソレーションが悪いという問題があった。また、出力ポートのアイソレーシ
ョンを改善すべく、SiO2、TiO2等の多層膜を蒸着して、アイソレーションを30d
B以上改善するためには、通常60層から100層程度の多層膜を形成する必要があり、
製品の歩留まりが悪いという問題があった。また、薄膜の内部応力により接着面の剥がれ
や、信頼性が劣化するおそれもあった。
また、特許文献1には波長分離素子の構成は示されてはいるものの、その製造方法は開
示されていないという問題があった。
また、特許文献2にはビームスプリッタの製造方法は開示されているが、これを応用し
ても波長分離素子の製造方法を容易には想致できないという問題があった。
本発明の目的は、改善された波長分離素子と、波長分離素子の改良された製造方法と、
光モジュールとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アイソレーションを改善した波長分離素子と、その製造方法と、改良した波
長分離素子を用いて光モジュールを実現するため、多重化された波長帯λ1、λ2、λ3
の光を波長帯毎に分離し、分離した波長帯の光を別々の出射ポートから出射させる波長分
離素子であって、前記多重化した波長帯λ1、λ2、λ3の光を、第1の方向に透過させ
る波長帯λ1の光と、反射させる波長帯λ2、λ3の光とに分離する第1のフィルターと
、前記第1のフィルターによって反射された波長帯λ2、λ3の光の方向に設け、前記第
1のフィルターによって反射された波長帯λ2、λ3の光を、第2の方向に透過させる波
長帯λ3の光と、反射させる波長帯λ2の光とに分離する第2のフィルターと、前記第2
のフィルターによって反射された光の方向に設け、前記第2のフィルターによって反射さ
れた波長帯λ2の光を、透過させる第3フィルターと、を備え、前記第1のフィルターは
、前記第2のフィルターから反射されて再度入射する波長帯λ2の光を、入射角に応じて
第3の方向に透過させる特性を有し、前記第3のフィルターは、前記第1のフィルターを
第3の方向に透過した光のうち、波長帯λ2のみの光を透過させる特性を有する波長分離
素子であることを特徴とする。このように波長分離素子を構成すると、従来例比べて第3
の方向のポート(bポート)のアイソレーションが30dB以上改善される。従来例でア
イソレーションを30dB以上改善するには、60層から100層程度の多層膜を形成す
る必要があり、この多層膜の歩留まり、品質に問題があった。矩形平板状の光透過部材の
両面にフィルター膜を形成することにより、多層膜を分割させることができるので、一面
当たり多層膜数も半減でき、上記の問題も解決する。
【0010】
多重化された波長帯λ1、λ2、λ3の光を波長帯毎に分離し、分離した波長帯の光を
別々の出射ポートから出射させる波長分離素子であって、前記多重化した波長帯λ1、λ
2、λ3の光を、第1の方向に透過させる波長帯λ1の光と、反射させる波長帯λ2、λ
3の光とに分離する第1のフィルターと、前記第1のフィルターによって反射された波長
帯λ2、λ3の光の方向に設け、前記第1のフィルターによって反射された波長帯λ2、
λ3の光を、第2の方向に透過させる波長帯λ3の光と、反射させる波長帯λ2の光とに
分離する第4のフィルターと、前記第4のフィルターによって反射された光の方向に設け
、前記第4のフィルターによって反射された波長帯λ2の光を、透過させる第3のフィル
ターと、を備え、前記第1のフィルターは、前記第4のフィルターから反射されて再度入
射する波長帯λ2の光を、入射角に応じて第3の方向に透過させる特性を有し、前記第3
のフィルターは、前記第1のフィルターを第3の方向に透過した光のうち、波長帯λ3の
光を反射し、波長帯λ2の光のみを透過させる特性を有し、前記第4のフィルターは、前
記第2の方向に透過した光のうち、波長帯λ2の光を反射し、波長帯λ3以上の波長の光
を透過させる特性を有しする波長分離素子であることを特徴とする。
このように構成すると、第2、第3ポート(c、bポート)にフィルターを付加したで
、第2、第3ポートのアイソレーションは大幅に改善される。例えば、従来例では、第2
ポートの波長帯λ3の透過損失は0.3dB以下、波長帯λ2の透過損失は30dB程度
であったが、上記のように構成すると第2ポートの波長帯λ3の透過損失は0.4dBか
ら0.5dB程度であり、波長帯λ2の透過損失は60dB以上であった。
【0011】
2つの直角三角柱形状のプリズムの斜面同士を互いに接合して形成した直方体状の接合
面に前記第1のフィルターのフィルター膜を、直方体状のうち一方の出射面に前記第2の
フィルターのフィルター膜を、形成し、他方の出射面に、板状の光学部材の両面にそれぞ
れ第3の1及び第3の2のフィルター膜を形成した前記第3のフィルターを接合した上記
に記載の波長分離素子である。
この構成例が実用に供される構成例であり、従来例比べて第3の方向のポート(bポー
ト)のアイソレーションが30dB以上改善されるという効果ある。
【0012】
2つの三角柱形状のプリズムの斜面同士を互いに接合して形成した直方体状の接合面に
前記第1のフィルターのフィルター膜を形成し、前記直方体状のプリズムの一方の出射面
に、板状の光学ガラス板の両面にそれぞれ第4の1及び第4の2のフィルター膜を形成し
た第4のフィルターを接合し、前記直方体状のプリズムの他方の出射面に、板状の光学部
材の両面にそれぞれ第3の1及び第3の2のフィルター膜を形成した第3のフィルターを
接合した、上記に記載の波長分離素子である。
この構成例が実用に供される構成例であり、従来例比べて第2ポートの波長帯λ3の透
過損失は0.1dB程度大きくなるが、波長帯λ2の透過損失は60dB以上と大きくな
るという効果ある。
【0013】
多重化された波長帯λ1、λ2、λ3の光を波長帯毎に分離し、分離した波長帯の光を
別々の出射ポートで検出する受光素子を設けた光モジュールであって、上記に記載の波長
分離素子を用いた光モジュールであることを特徴とする。本発明の波長分離素子を用いて
光モジュールを構成することにより、ノイズ特性の優れた光モジュールが得られるという
効果がある。
【0014】
2つのプリズムの傾斜面同士を接合した波長分離素子の製造方法であって、矩形の平板
状光学部材に第1のフィルター膜を形成する工程と、前記第1のフィルター膜が形成され
た矩形の平板状光学部材を、複数枚接着剤を介して積層すると共に、各平板状光学部材の
端縁を結ぶ平面と平板状光学部材の板面との間の角度が39度の傾斜角度となるように、
平板状光学部材の面方向位置を順次ずらして階段状に積層する積層体形成工程と、前記積
層体形成工程において一体化された積層体を、前記39度の傾斜角度に沿った所定ピッチ
の複数の平行な切断面にて複数の積層分割体に切断する切断工程と、前記切断工程により
形成された各積層分割体の切断面を鏡面加工する鏡面加工工程と、前記各積層分割体の鏡
面加工した一方の面に第2のフィルター膜を形成する工程と、前記第2のフィルター膜を
形成した積層分割体を、第1のフィルター膜が整合状態で積層されるように、各積層分割
体間を仮止め材にて仮止めする仮止め工程と、仮止め材にて仮止めされた複数の積層分割
体を、前記切断工程における切断面と直交する切断面にて切断して仮止め積層体を形成す
る分断工程と、前記分断工程により得られた仮止め積層体の切断面を鏡面加工する鏡面加
工工程と、前記仮止め積層体を前記切断面と直交する方向に所定の間隔にて切断すること
により、複数の波長分離素子が仮止め材を介して直列に連結された波長分離素子連結体を
形成する工程と、前記波長分離素子連結体を構成する仮止め材を溶解除去して個々の波長
分離素子に分離する分離工程と、から成る波長分離素子の製造方法であることを特徴とす
る。
この波長分離素子の製造方法を採用することにより、小型で性能の良い波長分離素子を
安価に供給できるという効果がある。
【0015】
2つのプリズムの傾斜面同士を接合した波長分離素子の製造方法であって、矩形の平板
状光学部材に第1のフィルター膜を形成する工程と、前記第1のフィルター膜が形成され
た矩形の平板状光学部材を、複数枚接着剤を介して積層すると共に、各平板状光学部材の
端縁を結ぶ平面と平板状光学部材の板面との間の角度が39度の傾斜角度となるように、
平板状光学部材の面方向位置を順次ずらして階段状に積層する積層体形成工程と、前記積
層体形成工程において一体化された積層体を、前記39度の傾斜角度に沿った所定ピッチ
の複数の平行な切断面にて複数の積層分割体に切断する切断工程と、前記切断工程により
形成された各積層分割体の切断面を鏡面加工する鏡面加工工程と、前記各積層分割体の鏡
面加工した一方の面に第2のフィルター膜を形成する工程と、矩形の平板状光学部材の両
面にそれぞれ第3及び第4のフィルター膜を形成する工程と、前記第3及び第4のフィル
ター膜を形成した平板状光学部材を、前記第2のフィルター膜を形成した積層分割体に接
合する工程と、前記第3及び第4のフィルター膜を形成した平板状光学部材を接合した積
層分割体を、第1のフィルター膜が整合状態で積層されるように、各積層分割体間を仮止
め材にて仮止めする仮止め工程と、仮止め材にて仮止めされた複数の積層分割体を、前記
切断工程における切断面と直交する切断面にて切断して仮止め積層体を形成する分断工程
と、前記分断工程により得られた仮止め積層体の切断面を鏡面加工する鏡面加工工程と、
前記仮止め積層体を前記切断面と直交する方向に所定の間隔にて切断することにより、複
数の波長分離素子が仮止め材を介して直列に連結された波長分離素子連結体を形成する工
程と、前記波長分離素子連結体を構成する仮止め材を溶解除去して個々の波長分離素子に
分離する分離工程と、から成る波長分離素子の製造方法であることを特徴とする。
この波長分離素子の製造方法を採用することにより、小型で性能の良く、アイソレーシ
ョンが改良された波長分離素子を安価に供給できるという効果がある。
【0016】
2つのプリズムの傾斜面同士を接合した波長分離素子の製造方法であって、矩形の第1
の平板状光学部材に第1のフィルター膜を形成する工程と、前記第1のフィルター膜が形
成された矩形の平板状光学部材を、複数枚接着剤を介して積層すると共に、各平板状光学
部材の端縁を結ぶ平面と平板状光学部材の板面との間の角度が39度の傾斜角度となるよ
うに、平板状光学部材の面方向位置を順次ずらして階段状に積層する積層体形成工程と、
前記積層体形成工程において一体化された積層体を、前記39度の傾斜角度に沿った所定
ピッチの複数の平行な切断面にて複数の積層分割体に切断する切断工程と、前記切断工程
により形成された各積層分割体の切断面を鏡面加工する鏡面加工工程と、矩形の第2の平
板状光学部材の両面にそれぞれ第3及び第4のフィルター膜を形成する工程と、前記第3
及び第4のフィルター膜を形成した第2の平板状光学部材を、前記積層分割体の一方の面
に接合する工程と、矩形の第3の平板状光学部材の両面にそれぞれ第5及び第6のフィル
ター膜を形成する工程と、前記第5及び第6のフィルター膜を形成した第3の平板状光学
部材を、前記積層分割体の他方の面に接合する工程と、前記第5及び第6のフィルター膜
を形成した第3の平板状光学部材を接合した積層分割体を、第1のフィルター膜が整合状
態で積層されるように、各積層分割体間を仮止め材にて仮止めする仮止め工程と、仮止め
材にて仮止めされた複数の積層分割体を、前記切断工程における切断面と直交する切断面
にて切断して仮止め積層体を形成する分断工程と、前記分断工程により得られた仮止め積
層体の切断面を鏡面加工する鏡面加工工程と、前記仮止め積層体を前記切断面と直交する
方向に所定の間隔にて切断することにより、複数の波長分離素子が仮止め材を介して直列
に連結された波長分離素子連結体を形成する工程と、前記波長分離素子連結体を構成する
仮止め材を溶解除去して個々の波長分離素子に分離する分離工程と、から成る波長分離素
子の製造方法であることを特徴とする。
この波長分離素子の製造方法を採用することにより、小型で性能の良く、アイソレーシ
ョンが改良された波長分離素子を安価に供給できるという効果がある
【0017】
前記仮止め工程の前に、各積層分割体の両端縁に位置する鋭角部を所要量切断除去する
工程を介在させたことを特徴とする上記に記載の波長分離素子の製造方法である。この製
造方法を採用することにより、鋭角部が破壊した粉末による鏡面研磨面の不良が激減する
という効果がある。
【0018】
前記接着剤としてUV接着剤を用いたことを特徴とする上記に記載の波長分離素子の製
造方法である。この製造方法を採用することにより、接着方法が簡単になり、硬化が容易
であるのと、硬化時間が短縮されるという効果がある。
【0019】
前記仮止め材としてパラフィンを用いたことを特徴とする上記に記載の波長分離素子の
製造方法である。この方法を採用することにより、仮止めと分離とが容易になり、しかも
材料が安価であるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る
第1の実施例の波長分離素子の構成を示す図であって、波長分離素子1は第1のフィルタ
ー2と、第2のフィルター3と、第3のフィルター4と、を備えている。波長分離素子1
の入射面にフェルール6に保持された光ファイバ5が接合される。第1のフィルター2は
、ガラスを直方体状に加工した後、図1のF−F’線に沿って分割し、光透過部材2a、
3aを形成し、分割面のいずれか一方の面にフィルター膜2bを形成し、分割面を接着剤
を用いて再度接合して直方体状のプリズムとする。光透過部材2aとフィルター膜2bと
で第1のフィルター2を形成する。フィルター膜2bによる光の反射方向であって、光り
が出射する光透過部材3aの面にフィルター膜3bを形成し、光透過部材3aとフィルタ
ー膜3bで第2のフィルターを形成する。第3のフィルター4は矩形平板状の、例えば厚
さ0.5mm程度の光透過部材4aの両面にそれぞれフィルター膜4b、4cを形成して
なる。該第3のフィルター4を光透過部材2aの面で、フィルター膜3bと対向する面に
接着剤を用いて接合して、波長分離素子1を構成する。
波長分離素子1の入射面に、フェルール6で保持された光ファイバ5の中心を接合し、
接着剤で固定して用いる。
【0021】
フィルター2、3、4のフィルター膜2b、3b、4b、4cは、周知のようにSiO
2、TiO2等の薄膜を交互に積層した多層膜からなる。フィルター膜2bの波長特性は、
多重化した光(波長帯λ1、λ2、λ3)がフィルター膜2bの法線方向に対して入射角
45度で入射したとき、波長帯λ1(1260nm〜1360nm)の光を透過し、波長
帯λ2α(1480nm〜1560nm)以上の光を反射する。また、フィルター膜2b
に入射角33度で入射したときは、波長帯λ2(1480nm〜1500nm)までの光
を透過し、それ以上の波長を反射するように構成されている。一方、フィルター膜3bの
波長特性は、波長帯λ2までの光を反射し、波長帯λ3(1539nm〜1620nm)
以上の光を透過するように構成されている(1.49/1.55LWPF)。ここで、1
.49/1.55LWPF(Long Wave Pass Filter)と記述した場合は、1.49μm
(1480nm〜1500nm)の波長帯の光は反射され、1.55μm(1539nm
〜1620nm)の波長帯の光は透過することを表している。同様に、1.49/1.5
5SWPF(Short Wave Pass Filter)は、1.49μm(1480nm〜1500nm
)の波長帯の光は透過され、1.55μm(1539nm〜1620nm)の波長帯の光
は反射されることを表している。
また、フィルター膜4bの波長特性は、波長帯λ2までの光を透過し、波長帯λ3の光
を反射するように構成され(1.49/1.55SWPF)、フィルター膜4cの波長特
性は波長帯λ1の光を反射し、波長帯λ2以上の光を透過するように構成されている(1
.31/1.49LWPF)。つまり、フィルター膜4bと4cとで波長帯λ2(148
0nm〜1500nm)の光のみを透過するバンドパスフィルターを形成していることに
なる(1.49WPF)。
【0022】
図1に示すように、フィルター膜2bの法線方向に対し光ファイバ5から多重化された
波長帯λ1、λ2、λ3の光が、入射角θ1(45度)で入射すると、波長帯λ1の光は
フィルター膜2bを透過し、第1の方向のaポートに出射し、波長帯λ2、λ3の光は反
射される。反射された波長帯λ2、λ3の光は、フィルター膜3bの法線方向に対し角度
θ2(6度)で入射し、波長帯λ3の光はフィルター膜3bを透過し、第2の方向のbポ
ートに出射し、波長帯λ2の光はフィルター膜3bの法線に対し角度θ2(6度)で反射
される。反射された波長帯λ2の光はフィルター膜2bの法線方向に対し、入射角θ3(
=θ1−2・θ2=33度)で入射することになり、フィルター膜2bを透過して、フィ
ルター4に入射する。第3のフィルター4のフィルター膜4bにより波長帯λ3以上の波
長の光は反射され、波長帯λ2以下の波長の光のみが透過される。更に、フィルター膜4
cにより波長帯λ1の光は反射され、波長帯λ2以上の波長の光のみが透過されて、bポ
ートの方向に出射する。フィルター4を付加することにより、bポートのアイソレーショ
ンが大幅に改善されることになる。
【0023】
図1に示した第1の実施例のように波長分離素子を構成すると、従来例の図11の比べ
てbポートのアイソレーションが30dB以上改善される。従来例のように、フィルター
2の光透過部材2aの波長帯λ2の出射面に、SiO2、TiO2等の多層膜を蒸着して、
アイソレーションを30dB以上改善するには、通常60層から100層程度の多層膜を
形成する必要があり、この多層膜の歩留まりが問題であった。また、薄膜の内部応力によ
り接着面の剥がれや信頼性の劣化のおそれもあった。第1の実施例のように矩形平板状の
光透過部材4aの両面にフィルター膜4b、4cを形成することにより、SiO2、Ti
2等の多層膜を両面に分割させることができるので、多層膜の総数も一面当たり半減で
き、多層膜の歩留まりも良く、また多層膜が両面に均等に分割されるので、光透過部材4
aの反りが生じることもない。
【0024】
図2は、本発明に係る第2の実施例の波長分離素子の構成を示す図であって、波長分離
素子7が図1の構成と異なる点は、フィルター膜2bによる光の反射方向であって、光り
が出射する光透過部材3aの面にはフィルター膜を形成せず、その代わり、その面に第4
のフィルター8を接着剤を用いて接合した点である。第4のフィルター8は矩形平板状の
、例えば厚さ0.5mm程度の光透過部材8aの両面にそれぞれフィルター膜8b、8c
を形成してなる。フィルター膜8bの波長特性は、波長帯λ2までの光を反射し、波長帯
λ3より長い波長の光を透過するように構成され(1.49/1.55LWPF)、フィ
ルター膜8cの波長特性は、同様に波長帯λ2までの光を反射し、波長帯λ3以上の光を
透過するように構成されている(1.49/1.55LWPF)。このように、0.5m
m程度の薄い光透過部材8aの両面にフィルター膜8b、8cを形成することにより、多
層膜を両面に分割して、光透過部材8aに反りが生じないようにしている。
第2の実施例の波長分離素子7の構成では、b、c両ポートにフィルター4、8を付加
してあるので、b、c両ポートのアイソレーションは大幅に改善される。
例えば、図11に示した従来例では、cポートの波長帯λ3の透過損失は0.3dB以
下、波長帯λ2の透過損失は30dB程度であったが、第2の実施例ではcポートの波長
帯λ3の透過損失は0.4dBから0.5dB程度であり、波長帯λ2の透過損失は60
dB以上であった。
【0025】
波長分離素子を用いることにより、波長多重化された光を波長帯毎に分離して出射させ
ることができると共に、所定の波長帯の光を合成して入射させることもできる。図3は本
発明に係る第3の実施例の光モジュール10の構成を示すブロック図であって、図1又は
2で説明した波長分離素子11と、光ファイバ12と、該光ファイバ12を保持するフェ
ルール13と、光検出用の受光素子(PD)14、15と、レーザダイオード(LD)1
6と、を備えている。光ファイバ12は各波長帯λ1、λ2、λ3の光を伝送し、波長分
離素子11は波長帯λ2の光をb方向に出射させ、波長帯λ3の光をc方向から出射させ
る。また、a方向から波長帯λ1の光を入射させる。受光素子(PD)14、15はそれ
ぞれb方向、c方向に出射した波長帯λ2、λ3の光を検出することができる。光ファイ
バ12の端部には固定用のフェルール13が設けられている。そして、受光素子(PD)
14、15と、レーザダイオード(LD)16と、フェルール13とは、それぞれ筐体1
7の適切な位置に取り付けられている。
【0026】
図4は従来の波長分離素子54の構成を示す図であるが、この波長分離素子の改良した
製造方法の第1の実施例について説明する。波長分離素子54の幾何学的な構成は、図4
の右下のX、Y、Z直角座標(Z軸は紙面垂直方向)を基準にして、フィルター55のフ
ィルター膜55bはX軸より45度傾けて配置し、フィルター56の反射膜56bはX軸
方向より角度θ2(6°)傾けて配置されるので、フィルター膜55bと56bとのなす
角度θ5は39度となる。波長分離素子54の入射面とY軸とのなす角度θ4は6度とす
る。
図5は、図4に示す波長分離素子54の製造工程のフロー図であり、図6(a)、(b
)、図7(a)乃至(f)は波長分離素子54の製造方法を説明するための工程図である

【0027】
図6(a)に示すガラス平板20は、両面が鏡面加工された板ガラス21の一方の面に
フィルター膜(SWPF、図4の55bに相当)22を形成した構成を備えている。この
ように全く同一の構成を備えたガラス平板20を複数枚使用して、積層体を形成する。図
6(b)は治具24を用いて39度の傾斜角度でガラス平板20を積層する状態を示して
いる。治具24は水平な板状のベース24aと、このベース24aから39度傾斜させて
固定した傾斜側壁24bとからなり、フィルター膜(SWPF)22を上向きにしたガラ
ス平板20をベース24aに順次積層する。この際、ガラス平板20の一端を傾斜側壁2
4bに沿って整列させることにより、各ガラス平板20が面方向に等距離づつずれた階段
状の積層体25が形成される。この状態が図5の(3)の工程である。つまり、正面形状
が略平行四辺形の積層体となる。ガラス平板20同士の接着はUV硬化型の光学接着剤で
行う。
【0028】
次に、図7(a)に示すように接着剤により一体化された積層体25を破線の傾斜角3
9度に沿って、ワイヤーソー等を用い所定のピッチの複数の平行な切断面25aにて切断
すると、図7(b)に示すような積層分割体26が得られる。この状態が図5の(4)の
工程に相当する。図7(c)は切断された積層分割体26を水平に置いた状態であり、積
層分割体26の両端部の鋭角状に突出している部分を先に切断するか、あるいは、積層分
割体26を積層し、仮止めした上で切断してもよい。この状態が図5の(5)に相当する
。該積層分割体26の上下面(切断面)を鏡面研磨し、洗浄した後、一方の面にフィルタ
ー膜(LWPF、図4の56bに相当)蒸着する。この状態が図5の(6)、(7)に相
当する。図7(d)に示すように複数の積層分割体26を仮止めする際に、各積層分割体
26を整合状態で積層し、積層体27を形成する。この際、積層分割体26に予めパラフ
ィンを塗布しておくことにより仮止めする。図7(a)の切断面25aと直交する切断面
27aに沿って、仮止めした積層体27をワイヤーソーで切断すると、図7(e)に示す
波長分離素子の連結体28となる。そして、切断面を鏡面研磨し、図7(e)の破線28
aに沿って波長分離素子連結体28を切断すると、同図(f)に示す波長分離素子29が
分離されて得られる。
【0029】
次に、図1に示した本発明の波長分離素子1に係る製造方法の実施例2について説明す
る。波長分離素子1が、図4に示した波長分離素子54と異なる点は、フィルター55の
波長帯λ2の出射面に、図1に示すようにフィルター4を、接着剤を用いて接合固定した
点である。フィルター4は、例えば厚さ0.5mm程度の矩形平板状の光透過部材4aの
両面に、それぞれフィルター膜4b、4cを形成してフィルター4を形成する。従って、
波長分離素子1の製造方法は、図8(a)に示す製造工程のフロー図のようになる。図5
に示した製造工程フロー図と、工程(7)まで同じ工程となるが、工程(8)では、図8
(b)に示すように、まず例えば厚さ0.5mm程度の両面鏡面加工した矩形平板状の光
透過部材31の両面に、それぞれフィルター膜32(1.49/1.55SWPF)と、
フィルター膜33(1.31/1.49LWPF)を形成して、フィルター30を形成す
る工程と、図8(c)に示すように形成したフィルター30を、工程(7)の工程で上面
にフィルター膜を形成した積層分割体26の下面に、接着剤にて接合する工程と、が追加
されることになる。
【0030】
また、図2に示した本発明に係る波長分離素子7に関する製造方法の実施例3について
説明する。波長分離素子7が図1に示した波長分離素子1と異なる点は、フィルター3の
波長帯λ3の出射面に設けたフィルター膜3bの代わりに、両面鏡面加工した矩形平板状
の、例えば厚さ0.5mm程度の光透過部材8aの両面に、それぞれフィルター膜8b(
1.49/1.55LWPF)、フィルター膜8c(1.49/1.55LWPF)を形
成したフィルター8を、光透過部材3aの波長帯λ3の光の出射面に、接着剤を用いて接
合する点である。
従って、波長分離素子7の製造方法は、図9(a)に示す製造工程のフロー図のように
なる。つまり、図8に示した製造工程フロー図と、工程(6)まで同じ工程となるが、工
程(7)では鏡面研磨した積層分割体26の面にフィルター膜の形成は行わないで洗浄の
みとする。工程(8)においてフィルター30を形成する工程は、図8の製造工程フロー
図と同様であり、図9の(b)に示す。
そして、図9(c)に示す様に、例えば厚さ0.5mm程度の両面鏡面加工した矩形平
板状の光透過部材35の両面に、それぞれフィルター膜36(1.49/1.55LWP
F)と、フィルター膜37(1.49/1.55LWPF)を形成して、フィルター34
を形成する。そして、図9(a)に示す製造工程フロー図の工程(7)の積層分割体26
の下面に、フィルター30を、上面にフィルター34を接着剤にて接合固定する工程と、
が追加されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施例の波長分離素子の構造を示した概略構成図。
【図2】本発明の第2の実施例の波長分離素子の構造を示した概略構成図。
【図3】本発明の第3の実施例の光モジュールの構成を示したブロック図。
【図4】本発明の波長分離素子の製造方法を説明するための図。
【図5】本発明の波長分離素子の第1の製造方法を説明するための製造工程のフロー図。
【図6】(a)(b)は本発明の波長分離素子の製造方法を説明するための工程図。
【図7】(a)〜(f)は本発明の波長分離素子の製造方法を説明するための工程図。
【図8】(a)は本発明の波長分離素子の第2の製造方法を説明するための製造工程のフロー図、(b)、(c)は工程図。
【図9】(a)は本発明の波長分離素子の第3の製造方法を説明するための製造工程のフロー図、(b)、(c)、(d)は工程図。
【図10】従来の波長分離素子の作用を説明するための図。
【図11】従来の波長分離素子の構造を示す概略図。
【図12】従来の光学デバイスの製造方法を説明するための製造工程のフロー図。
【図13】(a)(b)は従来の波長分離素子の製造方法を説明するための工程図。
【図14】(a)〜(f)は従来の波長分離素子の製造方法を説明するための工程図。
【符号の説明】
【0032】
1、7、11 波長分離素子、2、3、4、8 フィルター、2a、3a、4a、8a
光透過部材、2b、3b、4b、4c、8b、8c フィルター膜、5、12 光ファ
イバ、6、13 フェルール、10 光モジュール、14、15 受光素子(PD)、1
6 レーザダイオード(LD)、17 筐体、a、b、c ポート、λ1、λ2、λ3
波長帯、F、F’ 分割面、20 ガラス平板、21 板ガラス、22 フィルター膜、
24 治具、24a ベース、24b 傾斜側壁、25、27 積層体、25a、27a
、28a 切断面、26 積層分割体、28 波長分離素子の連結体、29 波長分離素


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重化された波長帯λ1、λ2、λ3の光を波長帯毎に分離し、分離した波長帯の光を
別々の出射ポートから出射させる波長分離素子であって、
前記多重化した波長帯λ1、λ2、λ3の光を、第1の方向に透過させる波長帯λ1の
光と、反射させる波長帯λ2、λ3の光とに分離する第1のフィルターと、
前記第1のフィルターによって反射された波長帯λ2、λ3の光の方向に設けられ、前
記第1のフィルターによって反射された波長帯λ2、λ3の光を、第2の方向に透過させ
る波長帯λ3の光と、反射させる波長帯λ2の光とに分離する第2のフィルターと、
前記第2のフィルターによって反射された光の方向に設けられ、前記第2のフィルター
によって反射された波長帯λ2の光を透過させる第3フィルターと、を備え、
前記第1のフィルターは、前記第2のフィルターから反射されて再度入射する波長帯λ
2の光を、入射角に応じて第3の方向に透過させる特性を有し、
前記第3のフィルターは、前記第1のフィルターを第3の方向に透過した光のうち、波
長帯λ2のみの光を透過させる特性を有することを特徴とする波長分離素子。
【請求項2】
多重化された波長帯λ1、λ2、λ3の光を波長帯毎に分離し、分離した波長帯の光を
別々の出射ポートから出射させる波長分離素子であって、
前記多重化した波長帯λ1、λ2、λ3の光を、第1の方向に透過させる波長帯λ1の
光と、反射させる波長帯λ2、λ3の光とに分離する第1のフィルターと、
前記第1のフィルターによって反射された波長帯λ2、λ3の光の方向に設けられ、前
記第1のフィルターによって反射された波長帯λ2、λ3の光を、第2の方向に透過させ
る波長帯λ3の光と、反射させる波長帯λ2の光とに分離する第4のフィルターと、
前記第4のフィルターによって反射された光の方向に設けられ、前記第4のフィルター
によって反射された波長帯λ2の光を透過させる第3のフィルターと、を備え、
前記第1のフィルターは、前記第4のフィルターから反射されて再度入射する波長帯λ
2の光を入射角に応じて第3の方向に透過させる特性を有し、
前記第3のフィルターは、前記第1のフィルターを第3の方向に透過した光のうち波長
帯λ3の光を反射し、波長帯λ2の光のみを透過させる特性を有し、
前記第4のフィルターは、前記第2の方向に透過した光のうち、波長帯λ2の光を反射
し、波長帯λ3以上の波長の光を透過させる特性を有しすることを特徴とする波長分離素
子。
【請求項3】
2つの直角三角柱形状のプリズムの斜面同士を互いに接合して形成した直方体状の接合
面に前記第1のフィルターのフィルター膜を、直方体状のうち一方の出射面に前記第2の
フィルターのフィルター膜を、形成し、
他方の出射面に、板状の光学部材の両面に夫々第3の1及び第3の2のフィルター膜を
形成した前記第3のフィルターを接合した請求項1に記載の波長分離素子。
【請求項4】
2つの三角柱形状のプリズムの斜面同士を互いに接合して形成した直方体状の接合面に
前記第1のフィルターのフィルター膜を形成し、
前記直方体状のプリズムの一方の出射面に、板状の光学ガラス板の両面に夫々第4の1
及び第4の2のフィルター膜を形成した第4のフィルターを接合し、
前記直方体状のプリズムの他方の出射面に、板状の光学部材の両面に夫々第3の1及び
第3の2のフィルター膜を形成した第3のフィルターを接合した請求項2に記載の波長分
離素子。
【請求項5】
多重化された波長帯λ1、λ2、λ3の光を波長帯毎に分離し、分離した波長帯の光を
別々の出射ポートで検出する受光素子を設けた光モジュールであって、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の波長分離素子を用いたことを特徴とする光モジュ
ール。
【請求項6】
2つの三角柱形状のプリズムの傾斜面同士を接合した波長分離素子の製造方法であって

矩形の平板状光学部材に第1のフィルター膜を形成する工程と、
前記第1のフィルター膜が形成された矩形の平板状光学部材を、複数枚接着剤を介して
積層すると共に、各平板状光学部材の端縁を結ぶ平面と平板状光学部材の板面との間の角
度が39度の傾斜角度となるように、平板状光学部材の面方向位置を順次ずらして階段状
に積層する積層体形成工程と、
前記積層体形成工程において一体化された積層体を、前記39度の傾斜角度に沿った所
定ピッチの複数の平行な切断面にて複数の積層分割体に切断する切断工程と、
前記切断工程により形成された各積層分割体の切断面を鏡面加工する鏡面加工工程と、
前記各積層分割体の鏡面加工した一方の面に第2のフィルター膜を形成する工程と、
前記第2のフィルター膜を形成した積層分割体を、第1のフィルター膜が整合状態で積
層されるように、各積層分割体間を仮止め材にて仮止めする仮止め工程と、
仮止め材にて仮止めされた複数の積層分割体を、前記切断工程における切断面と直交す
る切断面にて切断して仮止め積層体を形成する分断工程と、
前記分断工程により得られた仮止め積層体の切断面を鏡面加工する鏡面加工工程と、
前記仮止め積層体を前記切断面と直交する方向に所定の間隔にて切断することにより、
複数の波長分離素子が仮止め材を介して直列に連結された波長分離素子連結体を形成する
工程と、
前記波長分離素子連結体を構成する仮止め材を溶解して個々の波長分離素子に分離する
分離工程と、から成ることを特徴とする波長分離素子の製造方法。
【請求項7】
2つの三角柱形状のプリズムの傾斜面同士を接合した波長分離素子の製造方法であって

矩形の平板状光学部材に第1のフィルター膜を形成する工程と、
前記第1のフィルター膜が形成された矩形の平板状光学部材を、複数枚接着剤を介して
積層すると共に、各平板状光学部材の端縁を結ぶ平面と平板状光学部材の板面との間の角
度が39度の傾斜角度となるように、平板状光学部材の面方向位置を順次ずらして階段状
に積層する積層体形成工程と、
前記積層体形成工程において一体化された積層体を、前記39度の傾斜角度に沿った所
定ピッチの複数の平行な切断面にて複数の積層分割体に切断する切断工程と、
前記切断工程により形成された各積層分割体の切断面を鏡面加工する鏡面加工工程と、
前記各積層分割体の鏡面加工した一方の面に第2のフィルター膜を形成する工程と、
矩形の平板状光学部材の両面に夫々第3及び第4のフィルター膜を形成する工程と、
前記第3及び第4のフィルター膜を形成した平板状光学部材を、前記第2のフィルター
膜を形成した積層分割体に接合する工程と、
前記第3及び第4のフィルター膜を形成した平板状光学部材を接合した積層分割体を、
第1のフィルター膜が整合状態で積層されるように、各積層分割体間を仮止め材にて仮止
めする仮止め工程と、
仮止め材にて仮止めされた複数の積層分割体を、前記切断工程における切断面と直交す
る切断面にて切断して仮止め積層体を形成する分断工程と、
前記分断工程により得られた仮止め積層体の切断面を鏡面加工する鏡面加工工程と、
前記仮止め積層体を前記切断面と直交する方向に所定の間隔にて切断することにより、
複数の波長分離素子が仮止め材を介して直列に連結された波長分離素子連結体を形成する
工程と、
前記波長分離素子連結体を構成する仮止め材を溶解して個々の波長分離素子に分離する
分離工程と、から成ることを特徴とする波長分離素子の製造方法。
【請求項8】
2つの直角三角形状のプリズムの傾斜面同士を接合した波長分離素子の製造方法であっ
て、
矩形の第1の平板状光学部材に第1のフィルター膜を形成する工程と、
前記第1のフィルター膜が形成された矩形の平板状光学部材を、複数枚接着剤を介して
積層すると共に、各平板状光学部材の端縁を結ぶ平面と平板状光学部材の板面との間の角
度が39度の傾斜角度となるように、平板状光学部材の面方向位置を順次ずらして階段状
に積層する積層体形成工程と、
前記積層体形成工程において一体化された積層体を、前記39度の傾斜角度に沿った所
定ピッチの複数の平行な切断面にて複数の積層分割体に切断する切断工程と、
前記切断工程により形成された各積層分割体の切断面を鏡面加工する鏡面加工工程と、
矩形の第2の平板状光学部材の両面に夫々第3及び第4のフィルター膜を形成する工程
と、
前記第3及び第4のフィルター膜を形成した第2の平板状光学部材を、前記積層分割体
の一方の面に接合する工程と、
矩形の第3の平板状光学部材の両面に夫々第5及び第6のフィルター膜を形成する工程
と、
前記第5及び第6のフィルター膜を形成した第3の平板状光学部材を、前記積層分割体
の他方の面に接合する工程と、
前記第5及び第6のフィルター膜を形成した第3の平板状光学部材を接合した積層分割
体を、第1のフィルター膜が整合状態で積層されるように、各積層分割体間を仮止め材に
て仮止めする仮止め工程と、
仮止め材にて仮止めされた複数の積層分割体を、前記切断工程における切断面と直交す
る切断面にて切断して仮止め積層体を形成する分断工程と、
前記分断工程により得られた仮止め積層体の切断面を鏡面加工する鏡面加工工程と、
前記仮止め積層体を前記切断面と直交する方向に所定の間隔にて切断することにより、
複数の波長分離素子が仮止め材を介して直列に連結された波長分離素子連結体を形成する
工程と、
前記波長分離素子連結体を構成する仮止め材を溶解除去して個々の波長分離素子に分離
する分離工程と、から成ることを特徴とする波長分離素子の製造方法。
【請求項9】
前記仮止め工程の前に、各積層分割体の両端縁に位置する鋭角部を所要量切断除去する
工程を介在させたことを特徴とする請求項6、7又は8に記載の波長分離素子の製造方法

【請求項10】
前記接着剤としてUV接着剤を用いたことを特徴とする請求項6、7、8又は9に記載
の波長分離素子の製造方法。
【請求項11】
前記仮止め材としてパラフィンを用いたことを特徴とする請求項6、7、8、9又は1
0に記載の波長分離素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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