波長変換光源装置及び波長変換方法
【目的】波長変換に用いる非線形結晶の寿命を長くすることが可能な波長変換光源装置を提供することを目的とする。
【構成】本発明の一態様の波長変換光源装置100は、基本波20を発生する基本波光源10と、基本波20の照射を受けて前記基本波20を通過させ、前記基本波20の波長を変換する非線形結晶14と、前記非線形結晶14が配置され、前記非線形結晶14中を通過する前記基本波20の通過経路が変更されるように、前記非線形結晶14を位相整合条件が乱されない平面内で連続移動させるy軸ステージ30及びx軸ステージ34と、を備えたことを特徴とする。
【構成】本発明の一態様の波長変換光源装置100は、基本波20を発生する基本波光源10と、基本波20の照射を受けて前記基本波20を通過させ、前記基本波20の波長を変換する非線形結晶14と、前記非線形結晶14が配置され、前記非線形結晶14中を通過する前記基本波20の通過経路が変更されるように、前記非線形結晶14を位相整合条件が乱されない平面内で連続移動させるy軸ステージ30及びx軸ステージ34と、を備えたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換光源装置及び波長変換方法に係り、例えば、半導体製造に用いる試料となる物体のパタン欠陥を検査するパタン検査用の照明光等の紫外領域の光を発生させる光源装置および波長変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。これらの半導体素子は、回路パタンが形成された原画パタン(マスク或いはレチクルともいう。以下、マスクと総称する)を用いて、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパタンを露光転写して回路形成することにより製造される。よって、かかる微細な回路パタンをウェハに転写するためのマスクの製造には、微細な回路パタンを描画することができるパタン描画装置を用いる。かかるパタン描画装置を用いてウェハに直接パタン回路を描画することもある。パタン描画装置については、電子ビームやレーザビームを用いて描画する装置の開発が試みられている。
【0003】
そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパタンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになろうとしている。歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パタンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるマスクのパタン欠陥があげられる。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパタン寸法の微細化に伴って、パタン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査するパタン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0004】
一方、マルチメディア化の進展に伴い、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)は、500mm×600mm、またはこれ以上への液晶基板サイズの大型化と、液晶基板上に形成されるTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)等のパタンの微細化が進んでいる。従って、極めて小さいパタン欠陥を広範囲に検査することが要求されるようになってきている。このため、このような大面積LCDのパタン及び大面積LCDを製作する時に用いられるフォトマスクの欠陥を短時間で、効率的に検査するパタン検査装置の開発も急務となってきている。
【0005】
ここで、従来のパタン検査装置では、リソグラフィマスク等の試料上に形成されているパタンを撮像した光学画像と、設計データ、あるいは試料上の同一パタンを撮像した光学画像と比較することにより検査を行うことが知られている。例えば、パタン検査方法として、同一マスク上の異なる場所の同一パタンを撮像した光学画像同士を比較する「die to die検査」や、パタン設計されたCADデータをマスクにパタンを描画する時に描画装置が入力するための装置入力フォーマットに変換した描画データを検査装置に入力して、これをベースに参照画像を生成して、それとパタンを撮像した測定データとなる光学画像とを比較する「die to database検査」がある。かかる検査装置における検査方法では、試料はステージ上に載置され、ステージが動くことによって光束が試料上を走査し、検査が行われる。試料には、照明装置及び照明光学系によって光束が照射される。試料を透過あるいは反射した光は光学系を介して、センサ上に結像される。センサで撮像された画像は測定データとして比較回路へ送られる。比較回路では、画像同士の位置合わせの後、光学画像と参照画像とを適切なアルゴリズムに従って比較し、一致しない場合には、パタン欠陥有りと判定する。
【0006】
ここで、上述したような微細なパタンの欠陥を検査するパタン検査装置の照明光としては、紫外領域の光が必要となる。かかる紫外光を発生させるには非線形結晶に基本波を通過させて波長変換させ、より波長が短い光を発生させる波長変換光源装置が必要となる。
【0007】
しかし、非線形結晶に長時間紫外線を照射し続けると非線形結晶の表面に光学損傷が生じて、波長変換出力が低下してしまう。そのため、従来、光学損傷が結晶表面に生じたことを確認した時点で非線形結晶への照射位置をずらすことが行われている。
【0008】
図11は、従来の照射位置のずらし方を説明するための概念図である。図11では、波長変換用の非線形結晶80への基本波の照射面を示している。図11において、スポットサイズ82は、照射される基本波のエネルギーの86%を含むサイズを示している。また、領域84は、スポットサイズの2倍の径であり、照射される基本波のエネルギーの99.7%を含むサイズを示している。基本波をある1点に長時間照射し続けると、スポットサイズ82のみならずそれより広い領域84全体がすべて上述した光学損傷が生じてしまう。そのため、かかる領域84内に基本波を通過させても波長変換出力が低下してしまうことになる。
【0009】
図12は、従来の波長変換出力と時間との関係を示す図である。上述したように、基本波をある1点に長時間照射し続けると、波長変換出力が低下してしまうことになる。図12に示すように、かかる例では照射開始から除所に波長変換出力が経時的に低下してしまうことがわかる。そのため、図11に示したように、結晶全体を位相整合状態に保存したまま、10時間ごとに平行移動させ、劣化の影響がない部位まで変移させて、使用していた。このように、従来、例えば10時間毎に基本波の照射位置を変更して波長変換出力を元に戻し、また、かかる表面が劣化するまで照射し続けることを繰り返していた。従って、図12に示したように、従来、例えば10時間ごとに出力が復帰するような鋸の歯状の出力特性を示していた。連続照射時間は、非線形結晶の種類等に応じてことなり、例えば、24時間毎に照射位置を移動する例などもあり得る。
【0010】
また、従来から波長変換用の非線形結晶のマウントに、移動手段(結晶シフター機能)を設けて、結晶劣化部から光路を外す手法は知られており、例えば、DUV光源製品には、結晶シフターが組み込まれているものもある(例えば、非特許文献1参照)。また、出力パワーとビーム形状の変化を抑制するために結晶中の光路を変える提案がある(例えば、特許文献1参照)が、本質的な機能は、まったく同一である。
【0011】
非線形結晶80として、例えば、5mm角のKTPを使用した場合、端部は使用できないので、有効断面は、4mm角となる。そして、基本波の広がり角を0.5mrad(全角)とし、集光レンズの焦点距離を250mmとすると、KTP上のスポットサイズは直径0.125mmとなる。そして、上述した光学損傷が生じてしまっている結晶劣化の影響のない部分まで結晶を平行移動するには、実際にはスポットサイズ82の3倍の平行移動が必要であった。すなわち、10時間ごとに0.375mmの移動をさせる必要があった。4mm角の有効面では、たて、よこ11点の結晶移動が可能であり、これらの点すべてを用いた場合、図11に示したように、10時間ごとに出力復帰させる場合には、1210時間(約50日間)結晶を使用し続けると、その結晶は交換せざるを得ないことになる。
【0012】
そして、かかる使用後の結晶表面を発明者等が観察した際、各点ごとの使用痕が観察され、表面に劣化による影響層が形成されたことがわかった。これにより全点を使用した場合、その結晶は交換せざるを得ないこともわかった。
【0013】
以上のように、従来は、基本波のスポットサイズよりさらに大きい領域以上の定期的なステップ移動により、劣化した箇所を避けて、性能低下を防ぐものであった。しかし、このような運用によると、長時間同一場所を基本波が照射し、波長変換光が発生するので、使用箇所が光学的損傷を生じ、またその照射痕が残り、結晶表面からその影響層部がスポットサイズ以上となる不良表面が発生していた。そのため、1回の連続照射により広い範囲で使用できなくなり、照射位置を移動させるにも使用できる箇所が結晶表面の面積により制限されることになるという問題があった。また、それぞれの箇所の経時的劣化により、移動後出力特性が経時的に変化することが、問題となっていた。
【0014】
その他、非線形結晶については、上述した結晶表面の光学的損傷を与える前であれば、ある条件下でアニール処理を行うことで結晶の劣化を修復する技術が文献に開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−252570号公報
【特許文献2】特許第4109869号公報
【非特許文献1】2001年コヒレントレーザカタログ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明は、上述した問題点を克服し、波長変換に用いる非線形結晶の寿命を長くすることが可能な波長変換光源装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様の波長変換光源装置は、
基本波を発生する基本波光源と、
前記基本波の照射を受けて前記基本波を通過させ、前記基本波の波長を変換する非線形結晶と、
前記非線形結晶が配置され、前記非線形結晶中を通過する前記基本波の通過経路が変更されるように、前記非線形結晶を位相整合条件が乱されない平面内で連続移動させる移動部と、
を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の他の態様の波長変換光源装置は、
基本波を発生する基本波光源と、
前記基本波の照射を受けて前記基本波を通過させ、前記基本波の波長を変換する非線形結晶と、
前記非線形結晶が配置され、前記非線形結晶中を通過する前記基本波の通過経路が変更されるように、前記非線形結晶を位相整合条件が乱されない平面内で1回につき前記基本波のスポットサイズ以下の距離だけ移動させる移動部と、
を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一態様の波長変換方法は、
基本波を非線形結晶に照射して、前記基本波を通過させることで前記基本波の波長を変換する工程と、
前記基本波が前記非線形結晶に照射されている間、前記非線形結晶中を通過する前記基本波の通過経路が変更されるように、前記非線形結晶を位相整合条件が乱されない平面内で連続移動させる工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の他の態様の波長変換方法は、
基本波を非線形結晶に照射して、前記基本波を通過させることで前記基本波の波長を変換する工程と、
前記基本波が前記非線形結晶に照射されている間、前記非線形結晶中を通過する前記基本波の通過経路が変更されるように、前記非線形結晶を位相整合条件が乱されない平面内で1回につき前記基本波のスポットサイズ以下の距離だけ移動させる工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、波長変換出力の経時低下が始まる前であって非線形結晶の表面に光学損傷を与える前に基本波の照射位置を移動させることができる。また、照射位置の移動の際、先の照射により生じた結晶内部の劣化を修復することができる。その結果、非線形結晶の寿命を大幅に延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における波長変換光源装置の構成を示す概念図である。図1において、波長変換光源装置100は、基本波光源10、集光レンズ12、非線形結晶14、コリメータレンズ16、ヒートシンク18、y軸ステージ30、y軸モータ32、x軸ステージ34、x軸モータ36、及び制御回路38を備えている。基本波光源10は、内部に図示しない共振器を有している。よって、図1に示す波長変換光源装置100は、共振器外波長変換を行う光源装置の一例となる。基本波光源10、y軸モータ32、及びx軸モータ36は、制御回路38により制御される。また、y軸ステージ30及びx軸ステージ34内にヒートシンク18が構成され、ヒートシンク18内に非線形結晶14が配置される。ヒートシンク18は、使用する結晶の温度を熱伝導がよく、温度一定化を可能にする。例えば、ペルチエ素子上にヒーターが組み込まれた銅ブロックに結晶をマウントする。このように、銅ブロック上に結晶素子を載せてもよいし、光路を確保し、結晶を銅のすり割り形状のブロックに埋め込み、かつ同ブロックにヒーターを埋め込んでも好適である。或いはヒーターの代わりに水路を設けても好適である。また、非線形結晶14として、KTPを用いて、第二高調波として波長532nmのコヒレント光を発生させる場合、銅ブロックの温度は100℃程度に制御されると好適である。
【0022】
基本波光源10は、基本波20を発生する。そして、かかる基本波光源10から出力された基本波20を、集光レンズ12で2倍高調発生の位相整合条件に設置された波長変換用の非線形結晶14に照射する。そして、非線形結晶14は、基本波20の照射を受けて基本波20を通過させ、その際、基本波20の波長を変換して、2倍高調波22を発生させる。そして、発生した2倍高調波22をコリメータレンズ16で平行光に戻し、外部に出力する。これにより波長変換された紫外光を得ることができる。
【0023】
基本波光源10として、例えば、平均出力100W、パルス幅100ns、繰り返し周波数5kHzのNd:YAGレーザを用いると好適である。かかるレーザを用いた場合、2倍高調波出力として波長532nmの光が50W得られた。かかる波長変換用の非線形結晶14としてKTP結晶を用いることができる。
【0024】
その他、非線形結晶14として、例えば、CLBOを用いた場合には、Nd:YAGレーザの2倍高調波を基本波20とした、532nmの2倍高調波による266nm光の発生をさせても好適である。或いは、非線形結晶14として、BBOを用いた場合には、アレキサンドライトレーザの3倍高調発生、すなわちアレキサンドライトレーザの2倍高調波と基本波との和周波の発生等を行っても好適である。
【0025】
ここで、非線形結晶14にそのまま基本波20を照射し続けると、上述したように結晶表面に光学損傷による劣化が生じて、波長変換出力が経時的に低下してしまう。そこで、実施の形態1では、以下のように非線形結晶14への基本波20の照射位置を移動させる。すなわち、非線形結晶14中を通過する基本波20の通過経路が変更されるように、非線形結晶14を位相整合条件が乱されない平面内で連続移動させる。或いは、非線形結晶14を位相整合条件が乱されない平面内で1回につき基本波20のスポットサイズ以下の距離だけステップ移動させる。移動は、制御回路38により制御されたy軸モータ32の駆動によりy軸ステージ30がy軸方向に、x軸モータ36の駆動によりx軸ステージ34がx軸方向にそれぞれ非線形結晶14を移動させる。よって、y軸ステージ30及びx軸ステージ34は非線形結晶14を移動させる移動部の一例となる。ここでは、光軸方向をz軸として、z軸に直交する方向をx、y軸とする。
【0026】
ここで、発明者等は、非線形結晶14を連続的に移動させることにより、上述したように結晶表面の光学損傷が生じないことを見出した。また、同様に、波長変換出力の経時低下がないことを見出した。この現象は、非線形結晶14を所定の期間毎に1回につき基本波20のスポットサイズ以下の距離だけステップ移動させた場合にも同様であることを見出した。
【0027】
図2は、実施の形態1における照射位置の移動の仕方を説明するための概念図である。まず、ある1点に基本波20が照射されると、かかる照射によるスポットサイズ40aのさらに中心部に非線形結晶14内部の光路欠陥44aが生じる。かかる光路欠陥44aは、結晶表面に生じる光学損傷と異なり物理的なクラック等の傷痕が生じるわけではなく、電子欠陥或いはカラーセンター発生等と想定される。すなわち、基本波20のエネルギーの86%を含むスポットサイズ40aより小さい範囲で結晶内部の光路欠陥44aが生じる。言い換えれば、基本波20のエネルギー強度分布46aのトップ付近、すなわち、エネルギー強度が非常に高くなる部分にまず結晶内部の光路欠陥44aが生じる。ましてや、照射される基本波のエネルギーの99.7%を含む領域42aにまで初めから結晶内部の光路欠陥44aが生じるものではない。この段階ではまだ波長変換出力の経時低下が始まってはいない。そして、この状態からさらに照射をし続けると結晶内部の光路欠陥44であっても波長変換出力の経時低下が始まることが想定される。そして、さらに、照射をし続けて閾値を超えると、光路欠陥44aが生じた箇所を基点に結晶表面の光学損傷が起こると共に加速度的に結晶表面の光学損傷が広がり、従来のようなスポットサイズの2倍以上の領域まで使用不能になってしまう。そこで、実施の形態1では、まだ、波長変換出力の経時低下が始まる前であって結晶表面の光学損傷に至る前の段階で非線形結晶14への基本波20の照射位置をずらすことで使用不能な領域が加速度的に拡散してしまうことを防止する。これにより、波長変換出力の経時低下を起こさないようにすると共に非線形結晶14表面の使用不能になる面積を小さくすることができる。
【0028】
さらに、発明者等は、非線形結晶14の種類や非線形結晶14の製造過程での諸条件によっては、結晶内部に生じた光路欠陥44aの部位が基本波20のエネルギー強度分布46bのトップ付近より小さいエネルギーの照射を受けると光路欠陥44aが修復されることを見出した。すなわち、従来のように照射位置を大きく移動させるのではなく、移動後の位置が基本波20のスポットサイズ以下の位置となるように移動させる。これにより、移動前の照射により生じた光路欠陥44aが移動後の基本波のエネルギーの99.7%を含む領域42b内に留まることになる。これにより、光路欠陥44aが生じた部位が、光路欠陥44aが生じるエネルギーよりも弱いエネルギーの照射を受けることになる。かかる弱いエネルギーの照射により結晶内部の光路欠陥44aを修復することができる。かかる弱いエネルギーの照射による修復現象は、セルフアニールの効果であると考えられる。
【0029】
以上のように、一度劣化した結晶について、劣化の度合いが結晶表面に光学的損失を与えるほどの劣化ではない場合、劣化後のアニールにより出力特性の復帰が認められたことを示している。すなわち、光学的な損傷を与える以前に、吸収発生などを引き起こす結晶欠陥(光路欠陥)を、初期のうちに基本波20或いは波長変換光の照射により、アニールし修復するものであると考えられる。また、この現象は、KTPによるNd:YAGレーザの2倍高調波発生だけでなく、他の非線形結晶による波長変換でも有効であることを発明者等は確かめている。
【0030】
そして、修復に用いるエネルギーは、光路欠陥44aが生じるエネルギーよりも弱いエネルギーであればよく、基本波20のエネルギーの86%を含むスポットサイズ40a内の位置であっても照射されるエネルギーが光路欠陥44aを生じさせるエネルギーよりも弱いエネルギーであれば構わない。かかる修復に用いるエネルギーの値は、非線形結晶14の種類や製造過程での諸条件等によって異なり、それぞれに適当な範囲を設定すればよい。その結果を基に、かかる修復効果が得られるように、1ステップの移動距離およびステップ待機期間や連続移動の際の移動速度を設定すればよい。例えば、ステップ移動時の単位距離が、1μmから15μmまでの値であると好適である。
【0031】
また、移動後の中心部でも同様に結晶内部の光路欠陥44bが生じることになるが、さらに次の移動によりかかる光路欠陥44bも同様に修復されることになる。以上のように光路欠陥44aを修復できれば、非線形結晶14を従来のように結晶表面の光学損傷による理由で交換する必要が無くなる。
【0032】
ここで、図示しない反射率1%の部分反射鏡を第二高調波の出力側に設置して波長変換出力をモニタしても好適である。そして、波長変換後の出力のモニタ値を、制御回路38が入力し、波長変換後の出力に経時低下が現れた場合、非線形結晶14の移動スピードを加速してもよい。発明者等の実験によれば、非線形結晶14のある部位に関してそれまでの結晶移動速度では波長変換出力の1%/時間の低下が見られた場合、移動速度を2倍にすることで、かかる波長変換出力の低下が防ぐことができた。この移動速度は、出力低下傾向がなくなるまで速度を可変させることで最適な速度を見つけるというアルゴリズムを採用することで、制御することができる。以上のように、波長変換出力の観察値を用いて、移動速度を設定しても好適である。
【0033】
図3は、実施の形態1における波長変換出力と時間との関係を示す図である。図1に示した構成において、非線形結晶14の移動を、10分ごとに非線形結晶14が設置されたステージをパルスモーターの単位駆動距離0.002mmずつ継続して移動させた結果、図3における出力経時特性に示されるように、非線形結晶14として用いたKTPによる波長変換出力の経時的低下はほとんど認められなかった。このとき、KTP表面には、使用痕が観察されなかった。
【0034】
図4は、実施の形態1における非線形結晶表面での照射位置の経路(軌跡)の一例を示す図である。上述した結晶内部の光路欠陥44が修復可能な非線形結晶14を用いた場合、図4に示すように、結晶設置ステージを制御して、基本波20の照射位置の移動経路24が、例えば、楕円状のような端部のない閉じた経路(軌跡)とすることで非線形結晶14の同じ位置を複数回波長変換に用いることができる。その結果、非線形結晶14の寿命を大きく延ばすことができる。また、例えば、非線形結晶14を連続移動させる場合、急激な角度で曲がることは困難であるので基本波20の照射位置の移動経路24が楕円状のような曲線を含むようにすると連続移動を容易にすることができる。
【0035】
ここで、発明者等の実験によれば、図4に示したように楕円状の経路で常に結晶を移動させたところ、結晶劣化は認められなかった。結晶劣化による出力低下ではなく、励起光源等他の要因での故障と同じレベルになり、KTPは消耗部品ではなくなった。
【0036】
図5は、実施の形態1における非線形結晶表面での照射位置の経路(軌跡)の他の例を示す図である。上述した結晶内部の光路欠陥44が修復可能ではない非線形結晶14を用いた場合、結晶設置ステージを制御して、基本波20の照射位置の移動経路26が、図5に示すように、例えば、曲線を含む一筆書き状の経路になるようにすると好適である。上述したように、例えば、非線形結晶14を連続移動させる場合、急激な角度で曲がることは困難であるので基本波20の照射位置の移動経路24が曲線を含むようにすると連続移動を容易にすることができる。また、実施の形態1では、結晶内部の光路欠陥44が修復可能ではない非線形結晶14を用いた場合であっても、従来のように非線形結晶14表面の使用不能の箇所がスポットサイズの2倍とはなっていない。そのため、波長変換に用いることができる非線形結晶14表面の面積を従来よりも大きくすることができる。よって、使用した箇所を再度使用しない場合であっても従来よりも非線形結晶14の寿命を延ばすことができる。
【0037】
実施の形態2.
実施の形態1では、共振器外波長変換を行う光源装置について説明したが、これに限るものではない。実施の形態2では、共振器内波長変換を行う構成について説明する。以下に説明する内容以外は実施の形態1と同様である。
【0038】
図6は、実施の形態2における波長変換光源装置の構成を示す概念図である。図6において、波長変換光源装置100は、レーザ活性媒質60、高反射ミラー62,66、出力結合ミラー64、非線形結晶14、ヒートシンク18、y軸ステージ30、y軸モータ32、x軸ステージ34、x軸モータ36、及び制御回路38を備えている。共振器長で配置された高反射ミラー62と出力結合ミラー64とで共振器を構成する。また、レーザ活性媒質60、高反射ミラー62,66、及び出力結合ミラー64とで基本波光源を構成する。そして、非線形結晶14は、共振器を構成する高反射ミラー62と出力結合ミラー64の間に配置されている。よって、図6に示す波長変換光源装置100は、共振器内波長変換を行う光源装置の一例となる。レーザ活性媒質60からふく射光を発生され、高反射ミラー66を介して高反射ミラー62と出力結合ミラー64の間で共振し、ふく射光を誘導放出光21にする。そして、誘導放出光21は、2倍高調発生の位相整合条件に設置された非線形結晶14に照射される。そして、非線形結晶14は、基本波となる誘導放出光21の照射を受けて誘導放出光21を通過させ、その際、誘導放出光21の波長を変換して、2倍高調波23を発生させる。そして、発生した2倍高調波23の一部が出力結合ミラー64から出力される。これにより波長変換された紫外光を得ることができる。
【0039】
かかる共振器内波長変換を行なう場合でも、実施の形態1と同様、非線形結晶14にそのまま誘導放出光21を照射し続けると、上述したように結晶表面に光学損傷による劣化が生じて、波長変換出力が経時的に低下してしまう。そこで、実施の形態2でも、実施の形態1と同様、非線形結晶14への誘導放出光21の照射位置を移動させる。すなわち、非線形結晶14中を通過する誘導放出光21の通過経路が変更されるように、非線形結晶14を位相整合条件が乱されない平面内で連続移動させる。或いは、非線形結晶14を位相整合条件が乱されない平面内で1回につき誘導放出光21のスポットサイズ以下の距離だけステップ移動させる。移動の仕方や速度等は実施の形態1と同様である。
【0040】
以上のように、共振器内波長変換を行なう場合でも、実施の形態1と同様の非線形結晶の移動をさせることで、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0041】
実施の形態3.
上述した実施の形態1では、図4,5に示したような移動経路になるように非線形結晶の移動をさせることを説明した。また、これは実施の形態2でも同様である。しかしながら、非線形結晶14の均質性において、結晶育成上および波長変換素子としての結晶加工研磨の影響で、一部の部位に、図4に示すように、波長変換特性の低下した劣化箇所50となる部位があることも判明した。かかる劣化箇所50を考慮せずに照射位置の移動経路を設定してしまうと照射位置の移動経路24上にかかる劣化箇所50が位置してしまうこともあり得る。劣化箇所50に基本波を照射してしまうと波長変換出力が低下してしまうことになる。
【0042】
そこで、実施の形態3では、波長変換特性の低下した劣化箇所50が照射位置の移動経路上に含まれないようにする構成について説明する。
【0043】
図7は、実施の形態3における波長変換光源装置の構成を示す概念図である。図7において、波長変換光源装置100は、図6の構成に、プローブ光出射ユニット70(プローブ光源の一例)、平行平板72、及び散乱光検出モニタ74をさらに備えた点と、高反射ミラー66の代わりにプローブ光導入ミラー67を備えた点以外は、図6と同様である。プローブ光導入ミラー67は、共振器内にあるため、ふく射光、誘導放出光21及び2倍高調波23を共振器内の光軸上に反射することは言うまでもない。
【0044】
実施の形態3では、プローブ光71を非線形結晶14に照射して、波長変換出力が低下する非線形結晶14の劣化箇所50を特定する。プローブ光出射ユニット70から発生させられたプローブ光71は、平行平板72を通って、共振器内のプローブ光導入ミラー67を通過して、非線形結晶14に照射される。そして、非線形結晶14を移動させた際に、プローブ光71が劣化箇所50に照射されるとプローブ光71が散乱し、散乱光を散乱光検出モニタ74が検出する。このように、散乱光を散乱光検出モニタ74で散乱光を検出した箇所を劣化箇所50とすることで波長変換特性の低下した劣化箇所50を特定することができる。
【0045】
プローブ光71は、共振器の発振とは無関係な波長のレーザ光を用いると異常を検出しやすい。すなわち、活性物質としてNdをドープしたYAGを用いて1064nmで基本波が発振し、532nm光が第2高調波として発生するものであり、非線形結晶14をKTPとすると、プローブ光71として630nmのレーザダイオード出力とすることができる。レーザダイオードの発光部と、出力のコリメータ部を一体として図7のプローブ光出射ユニット70とすればよい。
【0046】
第1の手法として、波長変換光源装置100で基本波の波長変換を行う前に、使用時よりも高速で非線形結晶14が配置されたステージを動かし、プローブ光71で非線形結晶14表面を走査する。そして、非線形結晶14からのプローブ光71の出力光を用いて異常点の有無を調べ、劣化箇所50が避けられるように、ステージ制御をプログラムする。例えば、図4に示したような楕円軌跡を形成する場合において、異常点を避けるように、劣化箇所50に移動する前に楕円長径、短径を変化させても良い。また、円状の軌跡を使用する場合には、運用時には劣化箇所50を避けるように円弧状の軌跡の半径相当を変化させ、運用時に安定な波長変換を行わせることが可能である。さらに、一部の波長変換出力が他の部分よりも低下する部位に軌跡が重なる場合、その影響を最小限にするために、かかる部位についてのみ、結晶移動速度を速めてもよい。発明者等の実験により結晶移動速度を速めることで、その影響を最小限にできることもわかった。
【0047】
よって、プローブ光の走査により予め非線形結晶14の劣化箇所50を特定しておき、その上で、照射位置の移動経路上に含まれないように、図4に示すような楕円軌道にすると好適である。これにより、より安定な波長変換を行わせしめ、安定な出力を得ることができる。
【0048】
また、例えば楕円軌跡を経路とする場合において、波長変換光源装置100で基本波の波長変換を行う前に、プローブ光71の走査により予め非線形結晶14の劣化箇所50を特定しておき、劣化箇所50の部位に移動する前に楕円長径、短径を変化させても良い。
【0049】
上述した第1の手法により、非線形結晶14の照射面全面にプローブ光71を走査させて、波長変換光源装置100で基本波の波長変換を行う前に、予め、非線形結晶14の劣化箇所50を全て特定しておいてもよいが、これに限るものではない。第2の手法として、波長変換光源装置100で基本波の波長変換を行ないながらリアルタイムで非線形結晶14の劣化箇所50を特定してもよい。
【0050】
第2の手法では、図7に示すように、プローブ光71の光軸を基本波光軸よりも先行させる軌道を取るためにオフセットさせる。そして、平行平板72の姿勢を制御することで常にプローブ光71が基本波の照射位置の先行位置に位置するように制御する。そして、先行したプローブ光71により散乱光が発生し、散乱光を散乱光検出モニタ74で検知された場合、該当箇所を波長変換光軸が通過しないように、楕円軌道の長径、または半径を変化させてしまう。
【0051】
図8は、実施の形態3における照射位置の経路の一例を示す図である。図8に示すように、先行するプローブ光71により非線形結晶14への基本波の照射位置の経路28上に非線形結晶14の劣化箇所50があることが検知された際には、劣化箇所50を避けるように経路29を変更する。この変化は、制御回路38により制御されたy軸モータ32の駆動によりy軸ステージ30がy軸方向に、x軸モータ36の駆動によりx軸ステージ34がx軸方向にそれぞれ非線形結晶14を移動させることで制御することができる。このような動作により、散乱が発生した部位を避けることができる。
【0052】
かかる例では、新たに、結晶異常部位を光源運転中に探索するため、結晶利用箇所を共振器内光軸が通過する以前にプローブビームを設け、プローブビームで異常と判断された部位を避けるように、図8に示すように軌跡を変化させ、波長変換光源を運転し続けるものである。図7の例では、共振器内の折り曲げミラー裏面から波長の異なるプローブビームを導入したものである。
【0053】
また、図7と同様の構成で、プローブ光による干渉計を組み透過波面を確認しながら異常部位を避けるようにしても好適である。なお、このようなアルゴリズムは、結晶異常部位の領域が、図8に示されるように点在する場合に特に有効である。
【0054】
以上のように、プローブ光で劣化箇所を事前に特定することで、波長変換出力の低下を避けることができる。
【0055】
実施の形態4.
実施の形態3では、共振器内波長変換を行う光源装置にプローブ光で劣化箇所を事前に特定する機能を搭載した場合について説明したが、これに限るものではない。実施の形態4では、共振器外波長変換を行う構成にプローブ光で劣化箇所を事前に特定する機能を搭載した構成について説明する。以下に説明する内容以外は実施の形態1と同様である。
【0056】
図9は、実施の形態4における波長変換光源装置の構成を示す概念図である。図9において、波長変換光源装置100は、図1の構成に、プローブ光出射ユニット70(プローブ光源の一例)、平行平板72、プローブ光導入ミラー76及び散乱光検出モニタ74をさらに備えた点以外は、図1と同様である。
【0057】
実施の形態4でも、実施の形態3と同様、プローブ光71を非線形結晶14に照射して、波長変換出力が低下する非線形結晶14の劣化箇所50を特定する。プローブ光出射ユニット70から発生させられたプローブ光71は、平行平板72を通って、プローブ光導入ミラー67で反射して、非線形結晶14に照射される。そして、非線形結晶14を移動させた際に、プローブ光71が劣化箇所50に照射されるとプローブ光71が散乱し、散乱光を散乱光検出モニタ74が検出する。このように、散乱光検出モニタ74で散乱光を検出した箇所を劣化箇所50とすることで波長変換特性の低下した劣化箇所50を特定することができる。プローブ光導入ミラー67は、基本波20を非線形結晶14側に通過させることは言うまでもない。
【0058】
図9に示した構成にしても、実施の形態3で説明した第1と第2の手法の両方とも同様に用いることができる。よって、実施の形態4でも、実施の形態3と同様、プローブ光で劣化箇所を事前に特定することで、波長変換出力の低下を避けることができる。
【0059】
上述した実施の形態3,4において、散乱光検出モニタ74で散乱光を検出することで劣化箇所50を特定する場合について説明したが、光学的に同軸上に部分反射ミラーを設置して、プローブビームの結晶透過率変化や、ビーム変移を検出して異常部位を判別することもできる。
【0060】
図10は、プローブ光を用いた異常検出の手法を説明するための波長変換光源装置の構成の一部を示す概念図である。非線形結晶14の出力側に部分反射ミラー75を配置して、プローブ光71の一部を反射させる。そして、検出器78でプローブ光71の結晶透過率変化をモニタし、結晶透過率が変化した箇所を劣化箇所50とすることで波長変換特性の低下した劣化箇所50を特定することができる。
【0061】
或いは、部分反射ミラー75として、ブリュースタ配置の透明板を設置する。このブリュースタ配置は、基本波の発振器に対してP偏光に設置され、共振器損失は無視できるほど大きい。一方、プローブ光として、このブリュースタ配置に対してS偏光とすることで、15%と高い反射率を得ることができて、プローブ光71を検出器78に導入する。検出器78として、位置センサをもちいるとビームの遷移が判別でき既述の屈折率異常点を検出することができ、この検出器78をパワーモニタとすることで、透過パワーの変化を検出することができ、非線形結晶の透過率のモニタとすることができる。そして、屈折率異常点となった箇所を劣化箇所50とすることで波長変換特性の低下した劣化箇所50を特定することができる。
【0062】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、図6,7において、出力結合ミラー64を、左端のミラーとしたが、これを高反射鏡とし、プローブ光導入ミラー67,76に出力結合を兼ねさせる構成でも、構わないことは、言うまでもない。
【0063】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0064】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパタン検査装置或いはパタン検査装置用の照明装置は、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施の形態1における波長変換光源装置の構成を示す概念図である。
【図2】実施の形態1における照射位置の移動の仕方を説明するための概念図である。
【図3】実施の形態1における波長変換出力と時間との関係を示す図である。
【図4】実施の形態1における非線形結晶表面での照射位置の経路(軌跡)の一例を示す図である。
【図5】実施の形態1における非線形結晶表面での照射位置の経路(軌跡)の他の例を示す図である。
【図6】実施の形態2における波長変換光源装置の構成を示す概念図である。
【図7】実施の形態3における波長変換光源装置の構成を示す概念図である。
【図8】実施の形態3における照射位置の経路の一例を示す図である。
【図9】実施の形態4における波長変換光源装置の構成を示す概念図である。
【図10】プローブ光を用いた異常検出の手法を説明するための波長変換光源装置の構成の一部を示す概念図である。
【図11】従来の照射位置のずらし方を説明するための概念図である。
【図12】従来の波長変換出力と時間との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
10 基本波光源、12 集光レンズ、14,80 非線形結晶、16 コリメータレンズ、18 ヒートシンク、20 基本波、21 誘導放出光、22,23 2倍高調波、24,26 移動経路、30 y軸ステージ、32 y軸モータ、34 x軸ステージ、36 x軸モータ、38 制御回路、40,82 スポットサイズ、42,84 領域、44 光路欠陥、46 エネルギー強度分布、50 劣化箇所、60 レーザ活性媒質、62,66 高反射ミラー、64 出力結合ミラー、67,76 プローブ光導入ミラー、70 プローブ光出射ユニット、72 平行平板、74 散乱光検出モニタ、75 部分反射ミラー、78 検出器、100 波長変換光源装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換光源装置及び波長変換方法に係り、例えば、半導体製造に用いる試料となる物体のパタン欠陥を検査するパタン検査用の照明光等の紫外領域の光を発生させる光源装置および波長変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。これらの半導体素子は、回路パタンが形成された原画パタン(マスク或いはレチクルともいう。以下、マスクと総称する)を用いて、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパタンを露光転写して回路形成することにより製造される。よって、かかる微細な回路パタンをウェハに転写するためのマスクの製造には、微細な回路パタンを描画することができるパタン描画装置を用いる。かかるパタン描画装置を用いてウェハに直接パタン回路を描画することもある。パタン描画装置については、電子ビームやレーザビームを用いて描画する装置の開発が試みられている。
【0003】
そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパタンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになろうとしている。歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パタンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるマスクのパタン欠陥があげられる。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパタン寸法の微細化に伴って、パタン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査するパタン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0004】
一方、マルチメディア化の進展に伴い、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)は、500mm×600mm、またはこれ以上への液晶基板サイズの大型化と、液晶基板上に形成されるTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)等のパタンの微細化が進んでいる。従って、極めて小さいパタン欠陥を広範囲に検査することが要求されるようになってきている。このため、このような大面積LCDのパタン及び大面積LCDを製作する時に用いられるフォトマスクの欠陥を短時間で、効率的に検査するパタン検査装置の開発も急務となってきている。
【0005】
ここで、従来のパタン検査装置では、リソグラフィマスク等の試料上に形成されているパタンを撮像した光学画像と、設計データ、あるいは試料上の同一パタンを撮像した光学画像と比較することにより検査を行うことが知られている。例えば、パタン検査方法として、同一マスク上の異なる場所の同一パタンを撮像した光学画像同士を比較する「die to die検査」や、パタン設計されたCADデータをマスクにパタンを描画する時に描画装置が入力するための装置入力フォーマットに変換した描画データを検査装置に入力して、これをベースに参照画像を生成して、それとパタンを撮像した測定データとなる光学画像とを比較する「die to database検査」がある。かかる検査装置における検査方法では、試料はステージ上に載置され、ステージが動くことによって光束が試料上を走査し、検査が行われる。試料には、照明装置及び照明光学系によって光束が照射される。試料を透過あるいは反射した光は光学系を介して、センサ上に結像される。センサで撮像された画像は測定データとして比較回路へ送られる。比較回路では、画像同士の位置合わせの後、光学画像と参照画像とを適切なアルゴリズムに従って比較し、一致しない場合には、パタン欠陥有りと判定する。
【0006】
ここで、上述したような微細なパタンの欠陥を検査するパタン検査装置の照明光としては、紫外領域の光が必要となる。かかる紫外光を発生させるには非線形結晶に基本波を通過させて波長変換させ、より波長が短い光を発生させる波長変換光源装置が必要となる。
【0007】
しかし、非線形結晶に長時間紫外線を照射し続けると非線形結晶の表面に光学損傷が生じて、波長変換出力が低下してしまう。そのため、従来、光学損傷が結晶表面に生じたことを確認した時点で非線形結晶への照射位置をずらすことが行われている。
【0008】
図11は、従来の照射位置のずらし方を説明するための概念図である。図11では、波長変換用の非線形結晶80への基本波の照射面を示している。図11において、スポットサイズ82は、照射される基本波のエネルギーの86%を含むサイズを示している。また、領域84は、スポットサイズの2倍の径であり、照射される基本波のエネルギーの99.7%を含むサイズを示している。基本波をある1点に長時間照射し続けると、スポットサイズ82のみならずそれより広い領域84全体がすべて上述した光学損傷が生じてしまう。そのため、かかる領域84内に基本波を通過させても波長変換出力が低下してしまうことになる。
【0009】
図12は、従来の波長変換出力と時間との関係を示す図である。上述したように、基本波をある1点に長時間照射し続けると、波長変換出力が低下してしまうことになる。図12に示すように、かかる例では照射開始から除所に波長変換出力が経時的に低下してしまうことがわかる。そのため、図11に示したように、結晶全体を位相整合状態に保存したまま、10時間ごとに平行移動させ、劣化の影響がない部位まで変移させて、使用していた。このように、従来、例えば10時間毎に基本波の照射位置を変更して波長変換出力を元に戻し、また、かかる表面が劣化するまで照射し続けることを繰り返していた。従って、図12に示したように、従来、例えば10時間ごとに出力が復帰するような鋸の歯状の出力特性を示していた。連続照射時間は、非線形結晶の種類等に応じてことなり、例えば、24時間毎に照射位置を移動する例などもあり得る。
【0010】
また、従来から波長変換用の非線形結晶のマウントに、移動手段(結晶シフター機能)を設けて、結晶劣化部から光路を外す手法は知られており、例えば、DUV光源製品には、結晶シフターが組み込まれているものもある(例えば、非特許文献1参照)。また、出力パワーとビーム形状の変化を抑制するために結晶中の光路を変える提案がある(例えば、特許文献1参照)が、本質的な機能は、まったく同一である。
【0011】
非線形結晶80として、例えば、5mm角のKTPを使用した場合、端部は使用できないので、有効断面は、4mm角となる。そして、基本波の広がり角を0.5mrad(全角)とし、集光レンズの焦点距離を250mmとすると、KTP上のスポットサイズは直径0.125mmとなる。そして、上述した光学損傷が生じてしまっている結晶劣化の影響のない部分まで結晶を平行移動するには、実際にはスポットサイズ82の3倍の平行移動が必要であった。すなわち、10時間ごとに0.375mmの移動をさせる必要があった。4mm角の有効面では、たて、よこ11点の結晶移動が可能であり、これらの点すべてを用いた場合、図11に示したように、10時間ごとに出力復帰させる場合には、1210時間(約50日間)結晶を使用し続けると、その結晶は交換せざるを得ないことになる。
【0012】
そして、かかる使用後の結晶表面を発明者等が観察した際、各点ごとの使用痕が観察され、表面に劣化による影響層が形成されたことがわかった。これにより全点を使用した場合、その結晶は交換せざるを得ないこともわかった。
【0013】
以上のように、従来は、基本波のスポットサイズよりさらに大きい領域以上の定期的なステップ移動により、劣化した箇所を避けて、性能低下を防ぐものであった。しかし、このような運用によると、長時間同一場所を基本波が照射し、波長変換光が発生するので、使用箇所が光学的損傷を生じ、またその照射痕が残り、結晶表面からその影響層部がスポットサイズ以上となる不良表面が発生していた。そのため、1回の連続照射により広い範囲で使用できなくなり、照射位置を移動させるにも使用できる箇所が結晶表面の面積により制限されることになるという問題があった。また、それぞれの箇所の経時的劣化により、移動後出力特性が経時的に変化することが、問題となっていた。
【0014】
その他、非線形結晶については、上述した結晶表面の光学的損傷を与える前であれば、ある条件下でアニール処理を行うことで結晶の劣化を修復する技術が文献に開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−252570号公報
【特許文献2】特許第4109869号公報
【非特許文献1】2001年コヒレントレーザカタログ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明は、上述した問題点を克服し、波長変換に用いる非線形結晶の寿命を長くすることが可能な波長変換光源装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様の波長変換光源装置は、
基本波を発生する基本波光源と、
前記基本波の照射を受けて前記基本波を通過させ、前記基本波の波長を変換する非線形結晶と、
前記非線形結晶が配置され、前記非線形結晶中を通過する前記基本波の通過経路が変更されるように、前記非線形結晶を位相整合条件が乱されない平面内で連続移動させる移動部と、
を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の他の態様の波長変換光源装置は、
基本波を発生する基本波光源と、
前記基本波の照射を受けて前記基本波を通過させ、前記基本波の波長を変換する非線形結晶と、
前記非線形結晶が配置され、前記非線形結晶中を通過する前記基本波の通過経路が変更されるように、前記非線形結晶を位相整合条件が乱されない平面内で1回につき前記基本波のスポットサイズ以下の距離だけ移動させる移動部と、
を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一態様の波長変換方法は、
基本波を非線形結晶に照射して、前記基本波を通過させることで前記基本波の波長を変換する工程と、
前記基本波が前記非線形結晶に照射されている間、前記非線形結晶中を通過する前記基本波の通過経路が変更されるように、前記非線形結晶を位相整合条件が乱されない平面内で連続移動させる工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の他の態様の波長変換方法は、
基本波を非線形結晶に照射して、前記基本波を通過させることで前記基本波の波長を変換する工程と、
前記基本波が前記非線形結晶に照射されている間、前記非線形結晶中を通過する前記基本波の通過経路が変更されるように、前記非線形結晶を位相整合条件が乱されない平面内で1回につき前記基本波のスポットサイズ以下の距離だけ移動させる工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、波長変換出力の経時低下が始まる前であって非線形結晶の表面に光学損傷を与える前に基本波の照射位置を移動させることができる。また、照射位置の移動の際、先の照射により生じた結晶内部の劣化を修復することができる。その結果、非線形結晶の寿命を大幅に延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における波長変換光源装置の構成を示す概念図である。図1において、波長変換光源装置100は、基本波光源10、集光レンズ12、非線形結晶14、コリメータレンズ16、ヒートシンク18、y軸ステージ30、y軸モータ32、x軸ステージ34、x軸モータ36、及び制御回路38を備えている。基本波光源10は、内部に図示しない共振器を有している。よって、図1に示す波長変換光源装置100は、共振器外波長変換を行う光源装置の一例となる。基本波光源10、y軸モータ32、及びx軸モータ36は、制御回路38により制御される。また、y軸ステージ30及びx軸ステージ34内にヒートシンク18が構成され、ヒートシンク18内に非線形結晶14が配置される。ヒートシンク18は、使用する結晶の温度を熱伝導がよく、温度一定化を可能にする。例えば、ペルチエ素子上にヒーターが組み込まれた銅ブロックに結晶をマウントする。このように、銅ブロック上に結晶素子を載せてもよいし、光路を確保し、結晶を銅のすり割り形状のブロックに埋め込み、かつ同ブロックにヒーターを埋め込んでも好適である。或いはヒーターの代わりに水路を設けても好適である。また、非線形結晶14として、KTPを用いて、第二高調波として波長532nmのコヒレント光を発生させる場合、銅ブロックの温度は100℃程度に制御されると好適である。
【0022】
基本波光源10は、基本波20を発生する。そして、かかる基本波光源10から出力された基本波20を、集光レンズ12で2倍高調発生の位相整合条件に設置された波長変換用の非線形結晶14に照射する。そして、非線形結晶14は、基本波20の照射を受けて基本波20を通過させ、その際、基本波20の波長を変換して、2倍高調波22を発生させる。そして、発生した2倍高調波22をコリメータレンズ16で平行光に戻し、外部に出力する。これにより波長変換された紫外光を得ることができる。
【0023】
基本波光源10として、例えば、平均出力100W、パルス幅100ns、繰り返し周波数5kHzのNd:YAGレーザを用いると好適である。かかるレーザを用いた場合、2倍高調波出力として波長532nmの光が50W得られた。かかる波長変換用の非線形結晶14としてKTP結晶を用いることができる。
【0024】
その他、非線形結晶14として、例えば、CLBOを用いた場合には、Nd:YAGレーザの2倍高調波を基本波20とした、532nmの2倍高調波による266nm光の発生をさせても好適である。或いは、非線形結晶14として、BBOを用いた場合には、アレキサンドライトレーザの3倍高調発生、すなわちアレキサンドライトレーザの2倍高調波と基本波との和周波の発生等を行っても好適である。
【0025】
ここで、非線形結晶14にそのまま基本波20を照射し続けると、上述したように結晶表面に光学損傷による劣化が生じて、波長変換出力が経時的に低下してしまう。そこで、実施の形態1では、以下のように非線形結晶14への基本波20の照射位置を移動させる。すなわち、非線形結晶14中を通過する基本波20の通過経路が変更されるように、非線形結晶14を位相整合条件が乱されない平面内で連続移動させる。或いは、非線形結晶14を位相整合条件が乱されない平面内で1回につき基本波20のスポットサイズ以下の距離だけステップ移動させる。移動は、制御回路38により制御されたy軸モータ32の駆動によりy軸ステージ30がy軸方向に、x軸モータ36の駆動によりx軸ステージ34がx軸方向にそれぞれ非線形結晶14を移動させる。よって、y軸ステージ30及びx軸ステージ34は非線形結晶14を移動させる移動部の一例となる。ここでは、光軸方向をz軸として、z軸に直交する方向をx、y軸とする。
【0026】
ここで、発明者等は、非線形結晶14を連続的に移動させることにより、上述したように結晶表面の光学損傷が生じないことを見出した。また、同様に、波長変換出力の経時低下がないことを見出した。この現象は、非線形結晶14を所定の期間毎に1回につき基本波20のスポットサイズ以下の距離だけステップ移動させた場合にも同様であることを見出した。
【0027】
図2は、実施の形態1における照射位置の移動の仕方を説明するための概念図である。まず、ある1点に基本波20が照射されると、かかる照射によるスポットサイズ40aのさらに中心部に非線形結晶14内部の光路欠陥44aが生じる。かかる光路欠陥44aは、結晶表面に生じる光学損傷と異なり物理的なクラック等の傷痕が生じるわけではなく、電子欠陥或いはカラーセンター発生等と想定される。すなわち、基本波20のエネルギーの86%を含むスポットサイズ40aより小さい範囲で結晶内部の光路欠陥44aが生じる。言い換えれば、基本波20のエネルギー強度分布46aのトップ付近、すなわち、エネルギー強度が非常に高くなる部分にまず結晶内部の光路欠陥44aが生じる。ましてや、照射される基本波のエネルギーの99.7%を含む領域42aにまで初めから結晶内部の光路欠陥44aが生じるものではない。この段階ではまだ波長変換出力の経時低下が始まってはいない。そして、この状態からさらに照射をし続けると結晶内部の光路欠陥44であっても波長変換出力の経時低下が始まることが想定される。そして、さらに、照射をし続けて閾値を超えると、光路欠陥44aが生じた箇所を基点に結晶表面の光学損傷が起こると共に加速度的に結晶表面の光学損傷が広がり、従来のようなスポットサイズの2倍以上の領域まで使用不能になってしまう。そこで、実施の形態1では、まだ、波長変換出力の経時低下が始まる前であって結晶表面の光学損傷に至る前の段階で非線形結晶14への基本波20の照射位置をずらすことで使用不能な領域が加速度的に拡散してしまうことを防止する。これにより、波長変換出力の経時低下を起こさないようにすると共に非線形結晶14表面の使用不能になる面積を小さくすることができる。
【0028】
さらに、発明者等は、非線形結晶14の種類や非線形結晶14の製造過程での諸条件によっては、結晶内部に生じた光路欠陥44aの部位が基本波20のエネルギー強度分布46bのトップ付近より小さいエネルギーの照射を受けると光路欠陥44aが修復されることを見出した。すなわち、従来のように照射位置を大きく移動させるのではなく、移動後の位置が基本波20のスポットサイズ以下の位置となるように移動させる。これにより、移動前の照射により生じた光路欠陥44aが移動後の基本波のエネルギーの99.7%を含む領域42b内に留まることになる。これにより、光路欠陥44aが生じた部位が、光路欠陥44aが生じるエネルギーよりも弱いエネルギーの照射を受けることになる。かかる弱いエネルギーの照射により結晶内部の光路欠陥44aを修復することができる。かかる弱いエネルギーの照射による修復現象は、セルフアニールの効果であると考えられる。
【0029】
以上のように、一度劣化した結晶について、劣化の度合いが結晶表面に光学的損失を与えるほどの劣化ではない場合、劣化後のアニールにより出力特性の復帰が認められたことを示している。すなわち、光学的な損傷を与える以前に、吸収発生などを引き起こす結晶欠陥(光路欠陥)を、初期のうちに基本波20或いは波長変換光の照射により、アニールし修復するものであると考えられる。また、この現象は、KTPによるNd:YAGレーザの2倍高調波発生だけでなく、他の非線形結晶による波長変換でも有効であることを発明者等は確かめている。
【0030】
そして、修復に用いるエネルギーは、光路欠陥44aが生じるエネルギーよりも弱いエネルギーであればよく、基本波20のエネルギーの86%を含むスポットサイズ40a内の位置であっても照射されるエネルギーが光路欠陥44aを生じさせるエネルギーよりも弱いエネルギーであれば構わない。かかる修復に用いるエネルギーの値は、非線形結晶14の種類や製造過程での諸条件等によって異なり、それぞれに適当な範囲を設定すればよい。その結果を基に、かかる修復効果が得られるように、1ステップの移動距離およびステップ待機期間や連続移動の際の移動速度を設定すればよい。例えば、ステップ移動時の単位距離が、1μmから15μmまでの値であると好適である。
【0031】
また、移動後の中心部でも同様に結晶内部の光路欠陥44bが生じることになるが、さらに次の移動によりかかる光路欠陥44bも同様に修復されることになる。以上のように光路欠陥44aを修復できれば、非線形結晶14を従来のように結晶表面の光学損傷による理由で交換する必要が無くなる。
【0032】
ここで、図示しない反射率1%の部分反射鏡を第二高調波の出力側に設置して波長変換出力をモニタしても好適である。そして、波長変換後の出力のモニタ値を、制御回路38が入力し、波長変換後の出力に経時低下が現れた場合、非線形結晶14の移動スピードを加速してもよい。発明者等の実験によれば、非線形結晶14のある部位に関してそれまでの結晶移動速度では波長変換出力の1%/時間の低下が見られた場合、移動速度を2倍にすることで、かかる波長変換出力の低下が防ぐことができた。この移動速度は、出力低下傾向がなくなるまで速度を可変させることで最適な速度を見つけるというアルゴリズムを採用することで、制御することができる。以上のように、波長変換出力の観察値を用いて、移動速度を設定しても好適である。
【0033】
図3は、実施の形態1における波長変換出力と時間との関係を示す図である。図1に示した構成において、非線形結晶14の移動を、10分ごとに非線形結晶14が設置されたステージをパルスモーターの単位駆動距離0.002mmずつ継続して移動させた結果、図3における出力経時特性に示されるように、非線形結晶14として用いたKTPによる波長変換出力の経時的低下はほとんど認められなかった。このとき、KTP表面には、使用痕が観察されなかった。
【0034】
図4は、実施の形態1における非線形結晶表面での照射位置の経路(軌跡)の一例を示す図である。上述した結晶内部の光路欠陥44が修復可能な非線形結晶14を用いた場合、図4に示すように、結晶設置ステージを制御して、基本波20の照射位置の移動経路24が、例えば、楕円状のような端部のない閉じた経路(軌跡)とすることで非線形結晶14の同じ位置を複数回波長変換に用いることができる。その結果、非線形結晶14の寿命を大きく延ばすことができる。また、例えば、非線形結晶14を連続移動させる場合、急激な角度で曲がることは困難であるので基本波20の照射位置の移動経路24が楕円状のような曲線を含むようにすると連続移動を容易にすることができる。
【0035】
ここで、発明者等の実験によれば、図4に示したように楕円状の経路で常に結晶を移動させたところ、結晶劣化は認められなかった。結晶劣化による出力低下ではなく、励起光源等他の要因での故障と同じレベルになり、KTPは消耗部品ではなくなった。
【0036】
図5は、実施の形態1における非線形結晶表面での照射位置の経路(軌跡)の他の例を示す図である。上述した結晶内部の光路欠陥44が修復可能ではない非線形結晶14を用いた場合、結晶設置ステージを制御して、基本波20の照射位置の移動経路26が、図5に示すように、例えば、曲線を含む一筆書き状の経路になるようにすると好適である。上述したように、例えば、非線形結晶14を連続移動させる場合、急激な角度で曲がることは困難であるので基本波20の照射位置の移動経路24が曲線を含むようにすると連続移動を容易にすることができる。また、実施の形態1では、結晶内部の光路欠陥44が修復可能ではない非線形結晶14を用いた場合であっても、従来のように非線形結晶14表面の使用不能の箇所がスポットサイズの2倍とはなっていない。そのため、波長変換に用いることができる非線形結晶14表面の面積を従来よりも大きくすることができる。よって、使用した箇所を再度使用しない場合であっても従来よりも非線形結晶14の寿命を延ばすことができる。
【0037】
実施の形態2.
実施の形態1では、共振器外波長変換を行う光源装置について説明したが、これに限るものではない。実施の形態2では、共振器内波長変換を行う構成について説明する。以下に説明する内容以外は実施の形態1と同様である。
【0038】
図6は、実施の形態2における波長変換光源装置の構成を示す概念図である。図6において、波長変換光源装置100は、レーザ活性媒質60、高反射ミラー62,66、出力結合ミラー64、非線形結晶14、ヒートシンク18、y軸ステージ30、y軸モータ32、x軸ステージ34、x軸モータ36、及び制御回路38を備えている。共振器長で配置された高反射ミラー62と出力結合ミラー64とで共振器を構成する。また、レーザ活性媒質60、高反射ミラー62,66、及び出力結合ミラー64とで基本波光源を構成する。そして、非線形結晶14は、共振器を構成する高反射ミラー62と出力結合ミラー64の間に配置されている。よって、図6に示す波長変換光源装置100は、共振器内波長変換を行う光源装置の一例となる。レーザ活性媒質60からふく射光を発生され、高反射ミラー66を介して高反射ミラー62と出力結合ミラー64の間で共振し、ふく射光を誘導放出光21にする。そして、誘導放出光21は、2倍高調発生の位相整合条件に設置された非線形結晶14に照射される。そして、非線形結晶14は、基本波となる誘導放出光21の照射を受けて誘導放出光21を通過させ、その際、誘導放出光21の波長を変換して、2倍高調波23を発生させる。そして、発生した2倍高調波23の一部が出力結合ミラー64から出力される。これにより波長変換された紫外光を得ることができる。
【0039】
かかる共振器内波長変換を行なう場合でも、実施の形態1と同様、非線形結晶14にそのまま誘導放出光21を照射し続けると、上述したように結晶表面に光学損傷による劣化が生じて、波長変換出力が経時的に低下してしまう。そこで、実施の形態2でも、実施の形態1と同様、非線形結晶14への誘導放出光21の照射位置を移動させる。すなわち、非線形結晶14中を通過する誘導放出光21の通過経路が変更されるように、非線形結晶14を位相整合条件が乱されない平面内で連続移動させる。或いは、非線形結晶14を位相整合条件が乱されない平面内で1回につき誘導放出光21のスポットサイズ以下の距離だけステップ移動させる。移動の仕方や速度等は実施の形態1と同様である。
【0040】
以上のように、共振器内波長変換を行なう場合でも、実施の形態1と同様の非線形結晶の移動をさせることで、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0041】
実施の形態3.
上述した実施の形態1では、図4,5に示したような移動経路になるように非線形結晶の移動をさせることを説明した。また、これは実施の形態2でも同様である。しかしながら、非線形結晶14の均質性において、結晶育成上および波長変換素子としての結晶加工研磨の影響で、一部の部位に、図4に示すように、波長変換特性の低下した劣化箇所50となる部位があることも判明した。かかる劣化箇所50を考慮せずに照射位置の移動経路を設定してしまうと照射位置の移動経路24上にかかる劣化箇所50が位置してしまうこともあり得る。劣化箇所50に基本波を照射してしまうと波長変換出力が低下してしまうことになる。
【0042】
そこで、実施の形態3では、波長変換特性の低下した劣化箇所50が照射位置の移動経路上に含まれないようにする構成について説明する。
【0043】
図7は、実施の形態3における波長変換光源装置の構成を示す概念図である。図7において、波長変換光源装置100は、図6の構成に、プローブ光出射ユニット70(プローブ光源の一例)、平行平板72、及び散乱光検出モニタ74をさらに備えた点と、高反射ミラー66の代わりにプローブ光導入ミラー67を備えた点以外は、図6と同様である。プローブ光導入ミラー67は、共振器内にあるため、ふく射光、誘導放出光21及び2倍高調波23を共振器内の光軸上に反射することは言うまでもない。
【0044】
実施の形態3では、プローブ光71を非線形結晶14に照射して、波長変換出力が低下する非線形結晶14の劣化箇所50を特定する。プローブ光出射ユニット70から発生させられたプローブ光71は、平行平板72を通って、共振器内のプローブ光導入ミラー67を通過して、非線形結晶14に照射される。そして、非線形結晶14を移動させた際に、プローブ光71が劣化箇所50に照射されるとプローブ光71が散乱し、散乱光を散乱光検出モニタ74が検出する。このように、散乱光を散乱光検出モニタ74で散乱光を検出した箇所を劣化箇所50とすることで波長変換特性の低下した劣化箇所50を特定することができる。
【0045】
プローブ光71は、共振器の発振とは無関係な波長のレーザ光を用いると異常を検出しやすい。すなわち、活性物質としてNdをドープしたYAGを用いて1064nmで基本波が発振し、532nm光が第2高調波として発生するものであり、非線形結晶14をKTPとすると、プローブ光71として630nmのレーザダイオード出力とすることができる。レーザダイオードの発光部と、出力のコリメータ部を一体として図7のプローブ光出射ユニット70とすればよい。
【0046】
第1の手法として、波長変換光源装置100で基本波の波長変換を行う前に、使用時よりも高速で非線形結晶14が配置されたステージを動かし、プローブ光71で非線形結晶14表面を走査する。そして、非線形結晶14からのプローブ光71の出力光を用いて異常点の有無を調べ、劣化箇所50が避けられるように、ステージ制御をプログラムする。例えば、図4に示したような楕円軌跡を形成する場合において、異常点を避けるように、劣化箇所50に移動する前に楕円長径、短径を変化させても良い。また、円状の軌跡を使用する場合には、運用時には劣化箇所50を避けるように円弧状の軌跡の半径相当を変化させ、運用時に安定な波長変換を行わせることが可能である。さらに、一部の波長変換出力が他の部分よりも低下する部位に軌跡が重なる場合、その影響を最小限にするために、かかる部位についてのみ、結晶移動速度を速めてもよい。発明者等の実験により結晶移動速度を速めることで、その影響を最小限にできることもわかった。
【0047】
よって、プローブ光の走査により予め非線形結晶14の劣化箇所50を特定しておき、その上で、照射位置の移動経路上に含まれないように、図4に示すような楕円軌道にすると好適である。これにより、より安定な波長変換を行わせしめ、安定な出力を得ることができる。
【0048】
また、例えば楕円軌跡を経路とする場合において、波長変換光源装置100で基本波の波長変換を行う前に、プローブ光71の走査により予め非線形結晶14の劣化箇所50を特定しておき、劣化箇所50の部位に移動する前に楕円長径、短径を変化させても良い。
【0049】
上述した第1の手法により、非線形結晶14の照射面全面にプローブ光71を走査させて、波長変換光源装置100で基本波の波長変換を行う前に、予め、非線形結晶14の劣化箇所50を全て特定しておいてもよいが、これに限るものではない。第2の手法として、波長変換光源装置100で基本波の波長変換を行ないながらリアルタイムで非線形結晶14の劣化箇所50を特定してもよい。
【0050】
第2の手法では、図7に示すように、プローブ光71の光軸を基本波光軸よりも先行させる軌道を取るためにオフセットさせる。そして、平行平板72の姿勢を制御することで常にプローブ光71が基本波の照射位置の先行位置に位置するように制御する。そして、先行したプローブ光71により散乱光が発生し、散乱光を散乱光検出モニタ74で検知された場合、該当箇所を波長変換光軸が通過しないように、楕円軌道の長径、または半径を変化させてしまう。
【0051】
図8は、実施の形態3における照射位置の経路の一例を示す図である。図8に示すように、先行するプローブ光71により非線形結晶14への基本波の照射位置の経路28上に非線形結晶14の劣化箇所50があることが検知された際には、劣化箇所50を避けるように経路29を変更する。この変化は、制御回路38により制御されたy軸モータ32の駆動によりy軸ステージ30がy軸方向に、x軸モータ36の駆動によりx軸ステージ34がx軸方向にそれぞれ非線形結晶14を移動させることで制御することができる。このような動作により、散乱が発生した部位を避けることができる。
【0052】
かかる例では、新たに、結晶異常部位を光源運転中に探索するため、結晶利用箇所を共振器内光軸が通過する以前にプローブビームを設け、プローブビームで異常と判断された部位を避けるように、図8に示すように軌跡を変化させ、波長変換光源を運転し続けるものである。図7の例では、共振器内の折り曲げミラー裏面から波長の異なるプローブビームを導入したものである。
【0053】
また、図7と同様の構成で、プローブ光による干渉計を組み透過波面を確認しながら異常部位を避けるようにしても好適である。なお、このようなアルゴリズムは、結晶異常部位の領域が、図8に示されるように点在する場合に特に有効である。
【0054】
以上のように、プローブ光で劣化箇所を事前に特定することで、波長変換出力の低下を避けることができる。
【0055】
実施の形態4.
実施の形態3では、共振器内波長変換を行う光源装置にプローブ光で劣化箇所を事前に特定する機能を搭載した場合について説明したが、これに限るものではない。実施の形態4では、共振器外波長変換を行う構成にプローブ光で劣化箇所を事前に特定する機能を搭載した構成について説明する。以下に説明する内容以外は実施の形態1と同様である。
【0056】
図9は、実施の形態4における波長変換光源装置の構成を示す概念図である。図9において、波長変換光源装置100は、図1の構成に、プローブ光出射ユニット70(プローブ光源の一例)、平行平板72、プローブ光導入ミラー76及び散乱光検出モニタ74をさらに備えた点以外は、図1と同様である。
【0057】
実施の形態4でも、実施の形態3と同様、プローブ光71を非線形結晶14に照射して、波長変換出力が低下する非線形結晶14の劣化箇所50を特定する。プローブ光出射ユニット70から発生させられたプローブ光71は、平行平板72を通って、プローブ光導入ミラー67で反射して、非線形結晶14に照射される。そして、非線形結晶14を移動させた際に、プローブ光71が劣化箇所50に照射されるとプローブ光71が散乱し、散乱光を散乱光検出モニタ74が検出する。このように、散乱光検出モニタ74で散乱光を検出した箇所を劣化箇所50とすることで波長変換特性の低下した劣化箇所50を特定することができる。プローブ光導入ミラー67は、基本波20を非線形結晶14側に通過させることは言うまでもない。
【0058】
図9に示した構成にしても、実施の形態3で説明した第1と第2の手法の両方とも同様に用いることができる。よって、実施の形態4でも、実施の形態3と同様、プローブ光で劣化箇所を事前に特定することで、波長変換出力の低下を避けることができる。
【0059】
上述した実施の形態3,4において、散乱光検出モニタ74で散乱光を検出することで劣化箇所50を特定する場合について説明したが、光学的に同軸上に部分反射ミラーを設置して、プローブビームの結晶透過率変化や、ビーム変移を検出して異常部位を判別することもできる。
【0060】
図10は、プローブ光を用いた異常検出の手法を説明するための波長変換光源装置の構成の一部を示す概念図である。非線形結晶14の出力側に部分反射ミラー75を配置して、プローブ光71の一部を反射させる。そして、検出器78でプローブ光71の結晶透過率変化をモニタし、結晶透過率が変化した箇所を劣化箇所50とすることで波長変換特性の低下した劣化箇所50を特定することができる。
【0061】
或いは、部分反射ミラー75として、ブリュースタ配置の透明板を設置する。このブリュースタ配置は、基本波の発振器に対してP偏光に設置され、共振器損失は無視できるほど大きい。一方、プローブ光として、このブリュースタ配置に対してS偏光とすることで、15%と高い反射率を得ることができて、プローブ光71を検出器78に導入する。検出器78として、位置センサをもちいるとビームの遷移が判別でき既述の屈折率異常点を検出することができ、この検出器78をパワーモニタとすることで、透過パワーの変化を検出することができ、非線形結晶の透過率のモニタとすることができる。そして、屈折率異常点となった箇所を劣化箇所50とすることで波長変換特性の低下した劣化箇所50を特定することができる。
【0062】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、図6,7において、出力結合ミラー64を、左端のミラーとしたが、これを高反射鏡とし、プローブ光導入ミラー67,76に出力結合を兼ねさせる構成でも、構わないことは、言うまでもない。
【0063】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0064】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパタン検査装置或いはパタン検査装置用の照明装置は、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施の形態1における波長変換光源装置の構成を示す概念図である。
【図2】実施の形態1における照射位置の移動の仕方を説明するための概念図である。
【図3】実施の形態1における波長変換出力と時間との関係を示す図である。
【図4】実施の形態1における非線形結晶表面での照射位置の経路(軌跡)の一例を示す図である。
【図5】実施の形態1における非線形結晶表面での照射位置の経路(軌跡)の他の例を示す図である。
【図6】実施の形態2における波長変換光源装置の構成を示す概念図である。
【図7】実施の形態3における波長変換光源装置の構成を示す概念図である。
【図8】実施の形態3における照射位置の経路の一例を示す図である。
【図9】実施の形態4における波長変換光源装置の構成を示す概念図である。
【図10】プローブ光を用いた異常検出の手法を説明するための波長変換光源装置の構成の一部を示す概念図である。
【図11】従来の照射位置のずらし方を説明するための概念図である。
【図12】従来の波長変換出力と時間との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
10 基本波光源、12 集光レンズ、14,80 非線形結晶、16 コリメータレンズ、18 ヒートシンク、20 基本波、21 誘導放出光、22,23 2倍高調波、24,26 移動経路、30 y軸ステージ、32 y軸モータ、34 x軸ステージ、36 x軸モータ、38 制御回路、40,82 スポットサイズ、42,84 領域、44 光路欠陥、46 エネルギー強度分布、50 劣化箇所、60 レーザ活性媒質、62,66 高反射ミラー、64 出力結合ミラー、67,76 プローブ光導入ミラー、70 プローブ光出射ユニット、72 平行平板、74 散乱光検出モニタ、75 部分反射ミラー、78 検出器、100 波長変換光源装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本波を発生する基本波光源と、
前記基本波の照射を受けて前記基本波を通過させ、前記基本波の波長を変換する非線形結晶と、
前記非線形結晶が配置され、前記非線形結晶中を通過する前記基本波の通過経路が変更されるように、前記非線形結晶を位相整合条件が乱されない平面内で連続移動させる移動部と、
を備えたことを特徴とする波長変換光源装置。
【請求項2】
基本波を発生する基本波光源と、
前記基本波の照射を受けて前記基本波を通過させ、前記基本波の波長を変換する非線形結晶と、
前記非線形結晶が配置され、前記非線形結晶中を通過する前記基本波の通過経路が変更されるように、前記非線形結晶を位相整合条件が乱されない平面内で1回につき前記基本波のスポットサイズ以下の距離だけ移動させる移動部と、
を備えたことを特徴とする波長変換光源装置。
【請求項3】
前記基本波光源は、共振器を有し、
前記非線形結晶は、前記共振器内に配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の波長変換光源装置。
【請求項4】
前記基本波光源は、共振器を有し、
前記非線形結晶は、前記共振器外に配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の波長変換光源装置。
【請求項5】
前記非線形結晶に照射される基本波の照射位置の移動経路が曲線を含むように、前記非線形結晶は移動させられることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の波長変換光源装置。
【請求項6】
前記非線形結晶に照射される基本波の照射位置の移動経路が端部のない閉じた経路となるように、前記非線形結晶は移動させられることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の波長変換光源装置。
【請求項7】
前記非線形結晶の移動速度は、波長変換出力が低下しない速度であることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の波長変換光源装置。
【請求項8】
前記基本波とは波長が異なるプローブ光を発生させるプローブ光源をさらに備え、
前記非線形結晶は、前記非線形結晶に照射される基本波の照射位置の先行位置に前記プローブ光の照射を受け、
前記非線形結晶を通過したプローブ光を用いて、波長変換出力が低下する前記非線形結晶の劣化箇所を避けるように、前記非線形結晶は移動させられることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の波長変換光源装置。
【請求項9】
基本波を非線形結晶に照射して、前記基本波を通過させることで前記基本波の波長を変換する工程と、
前記基本波が前記非線形結晶に照射されている間、前記非線形結晶中を通過する前記基本波の通過経路が変更されるように、前記非線形結晶を位相整合条件が乱されない平面内で連続移動させる工程と、
を備えたことを特徴とする波長変換方法。
【請求項10】
基本波を非線形結晶に照射して、前記基本波を通過させることで前記基本波の波長を変換する工程と、
前記基本波が前記非線形結晶に照射されている間、前記非線形結晶中を通過する前記基本波の通過経路が変更されるように、前記非線形結晶を位相整合条件が乱されない平面内で1回につき前記基本波のスポットサイズ以下の距離だけ移動させる工程と、
を備えたことを特徴とする波長変換方法。
【請求項11】
プローブ光を前記非線形結晶に照射して、波長変換出力が低下する前記非線形結晶の劣化箇所を特定する工程をさらに備え、
前記非線形結晶に照射される基本波の照射位置が前記非線形結晶の劣化箇所を避けるように、前記非線形結晶は移動させられることを特徴とする請求項9又は10記載の波長変換方法。
【請求項1】
基本波を発生する基本波光源と、
前記基本波の照射を受けて前記基本波を通過させ、前記基本波の波長を変換する非線形結晶と、
前記非線形結晶が配置され、前記非線形結晶中を通過する前記基本波の通過経路が変更されるように、前記非線形結晶を位相整合条件が乱されない平面内で連続移動させる移動部と、
を備えたことを特徴とする波長変換光源装置。
【請求項2】
基本波を発生する基本波光源と、
前記基本波の照射を受けて前記基本波を通過させ、前記基本波の波長を変換する非線形結晶と、
前記非線形結晶が配置され、前記非線形結晶中を通過する前記基本波の通過経路が変更されるように、前記非線形結晶を位相整合条件が乱されない平面内で1回につき前記基本波のスポットサイズ以下の距離だけ移動させる移動部と、
を備えたことを特徴とする波長変換光源装置。
【請求項3】
前記基本波光源は、共振器を有し、
前記非線形結晶は、前記共振器内に配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の波長変換光源装置。
【請求項4】
前記基本波光源は、共振器を有し、
前記非線形結晶は、前記共振器外に配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の波長変換光源装置。
【請求項5】
前記非線形結晶に照射される基本波の照射位置の移動経路が曲線を含むように、前記非線形結晶は移動させられることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の波長変換光源装置。
【請求項6】
前記非線形結晶に照射される基本波の照射位置の移動経路が端部のない閉じた経路となるように、前記非線形結晶は移動させられることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の波長変換光源装置。
【請求項7】
前記非線形結晶の移動速度は、波長変換出力が低下しない速度であることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の波長変換光源装置。
【請求項8】
前記基本波とは波長が異なるプローブ光を発生させるプローブ光源をさらに備え、
前記非線形結晶は、前記非線形結晶に照射される基本波の照射位置の先行位置に前記プローブ光の照射を受け、
前記非線形結晶を通過したプローブ光を用いて、波長変換出力が低下する前記非線形結晶の劣化箇所を避けるように、前記非線形結晶は移動させられることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の波長変換光源装置。
【請求項9】
基本波を非線形結晶に照射して、前記基本波を通過させることで前記基本波の波長を変換する工程と、
前記基本波が前記非線形結晶に照射されている間、前記非線形結晶中を通過する前記基本波の通過経路が変更されるように、前記非線形結晶を位相整合条件が乱されない平面内で連続移動させる工程と、
を備えたことを特徴とする波長変換方法。
【請求項10】
基本波を非線形結晶に照射して、前記基本波を通過させることで前記基本波の波長を変換する工程と、
前記基本波が前記非線形結晶に照射されている間、前記非線形結晶中を通過する前記基本波の通過経路が変更されるように、前記非線形結晶を位相整合条件が乱されない平面内で1回につき前記基本波のスポットサイズ以下の距離だけ移動させる工程と、
を備えたことを特徴とする波長変換方法。
【請求項11】
プローブ光を前記非線形結晶に照射して、波長変換出力が低下する前記非線形結晶の劣化箇所を特定する工程をさらに備え、
前記非線形結晶に照射される基本波の照射位置が前記非線形結晶の劣化箇所を避けるように、前記非線形結晶は移動させられることを特徴とする請求項9又は10記載の波長変換方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−128119(P2010−128119A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301840(P2008−301840)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(305008983)アドバンスド・マスク・インスペクション・テクノロジー株式会社 (105)
【出願人】(597036581)株式会社メガオプト (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(305008983)アドバンスド・マスク・インスペクション・テクノロジー株式会社 (105)
【出願人】(597036581)株式会社メガオプト (15)
【Fターム(参考)】
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