説明

波長多重光伝送装置、波長多重光伝送システム、波長多重光伝送方法

【課題】矩形に近いスペクトルを持つ光信号を高密度に配置した、周波数利用効率が極限までに高い光波長多重信号を、波長ごとに分離・合波・スイッチング・ルーティングすることに適した、光波長多重伝送装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る光波長多重伝送装置は、波長スペクトル上で隣接する透過帯域の平坦部分が重なり合うように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ通信において、高密度に波長多重された光信号を波長帯域毎に選択して光ファイバ伝送路へ出力する波長選択スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一本の光ファイバ中に波長の異なる複数の光信号を多重化して情報を伝送する波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)光伝送方式は、光ファイバ通信を大容量化するために極めて有効な手法である。
【0003】
可変光波長挿入分岐器(ROADM:Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)、または波長選択スイッチ(WSS:Wavelength Selective Switch)は、WDM信号を運ぶ光ファイバネットワーク中の各ノードに配置される光スイッチの一種である。ROADMは、主として光ファイバ中を伝送するWDM信号中から必要な波長のみの信号を分岐(ドロップ)して受信したり、WDM信号に本ノードから送出される波長信号を挿入(アッド)したりするために用いられる技術、またはデバイスや装置の総称である。WSSは、さらに高度な波長選択とルーティング機能を加えた波長多重信号のスイッチング技術であり、入力光ファイバ回線中の波長多重信号から任意個数の信号波長を選択して任意の複数の出力ファイバのいずれかに出力したり、逆に複数の入力ファイバ中の波長多重信号から任意の波長の光信号を抽出して出力ファイバに出力したりすることができる。
【0004】
このような光スイッチング技術は、光ネットワークの成長や地域ごとのトラフィック量の変化に応じて波長回線をフレキシブルに設定することや、耐障害性やトラフィックの収容効率の高いリング型やメッシュ型のネットワークを実現することに不可欠な技術として、その利便性が着目されている。以下、本明細書では上記ROADM技術やWSS技術をまとめて波長選択スイッチ(WSS)と呼ぶものとする。
【0005】
以上、光波長多重伝送の代表的な方式を例示した。次に、WSS技術の対象となる波長多重伝送技術について説明する。
【0006】
図1は、波長多重された光信号の波長スペクトル例を示す図である。図1(1)は従来の波長多重伝送の光信号スペクトルを示している。ch1〜ch6は、それぞれが2.5〜100ギガビット/秒等の高速の情報信号で変調された光信号のチャネルであり、各光信号は高速の変調によってそれぞれ数〜数10ギガヘルツの幅に広がったスペクトルとなる。λ1〜λ6は、各チャネルの中心波長(もしくは中心周波数)であり、その絶対波長および間隔は、ITU(International Telecommunication Union)の下で波長グリッドとして標準化された配置が用いられる。
【0007】
図1中のGは波長グリッドの間隔である。一般的な波長グリッドとしては、例えば200GHz、100GHz、50GHz、25GHz間隔のものが用いられている。各光チャネルは隣接チャネルとスペクトルが重なると干渉による劣化を引き起こすため、グリッド間隔Gは各信号のスペクトル幅(図中のb4やb5)よりも広く取られ、チャネル間には十分な隙間(例えばチャネル間隔の10〜20%程度)が設けられている。特に上記のWSSやROADMによって波長分離をする際には、この隙間の部分を利用して波長が分離される。
【0008】
一方、光ネットワークで伝送される情報量は年々増加を続け、近年の高速光ファイバ伝送では1波長あたりの伝送速度が100ギガビット/秒を超える超高速信号の利用が検討されている。さらに長距離伝送に利用できる波長帯域には制限があるため、限られた波長(周波数)帯域に多くの情報を詰め込み、周波数利用効率を向上させる、光多値伝送などの高効率変調方式の適用が検討されている。このような技術の例としては、例えば下記非特許文献1に記載されている技術が挙げられる。
【0009】
非特許文献1では、16値の多値変調と偏波多重技術によって1シンボルに8ビットの情報を詰め込み、高感度で波長・偏波選択性のあるコヒーレントホモダイン受信器を用いて高効率伝送を実施する。
【0010】
図1(2)〜(4)は、図1(1)よりも周波数利用効率を向上させた光変調方式の波長スペクトル例を示している。通常の光信号は、図1(1)のように波長の中心で強度が強く、中心から離れるほど強度が下がる丸みを帯びた形状(例えば、レイズドコサイン型)の光スペクトルを持つ。このようなスペクトルでは信号のスペクトル幅(ch4の場合、図1中のb4)の内部で中心から離れた周波数成分の利用効率が低下することが知られている。理想的には図1(2)のような矩形のスペクトル形状の光信号を用いることにより規定の帯域幅により多くの情報を詰め込むことができる。さらにチャネル間の隙間を無くすことによって、限界まで周波数利用効率を向上することができる。
【0011】
現実には完全に矩形のスペクトル形状の光信号を生成することは難しいが、図1(3)のように擬似的に矩形に近い信号を得る手法として、変調信号にナイキストフィルタリングを加える手法がある。また図1(4)のようにチャネルの所定の帯域内に複数のサブキャリアを設け、これらをそれぞれ光多値変調することによっても、帯域内のスペクトル強度を一定に近づけ、周波数利用効率を向上させることができる。またデジタル信号処理を用いて複数の低速直交キャリアを生成するOFDM(直交周波数多重変調、図1(5))によっても同様の効果を発揮できる。これらのどの変調を用いた場合も、隣接する波長チャネル間隔を最小限としてチャネルを密に配置することによって、さらに情報伝送効率を向上することができる。
【0012】
以上、光信号を波長多重する基本方式について説明した。次に、従来の波長選択スイッチを用いた波長多重信号の分離について説明する。
【0013】
図2は、従来の波長選択スイッチノード100の構成を示す図である。波長選択スイッチノード100は、従来の波長選択スイッチを搭載したネットワークノードである。波長選択スイッチノード100は、一本の入力光ファイバ回線101から入力された波長多重信号を、2本の出力光ファイバ回線103−1と103−2へ、波長チャネル毎に任意に分離して出力する機能を持つ。なお、一般には光ファイバ回線は上りと下りが対になって用いられるが、本発明の説明においては特に方向性に問題は生じないため、一方向の信号伝送のみを考慮して説明する。
【0014】
図3は、従来の光信号と波長選択スイッチノード100の透過帯域との関係を示す図である。入力光ファイバ回線101から入力された波長多重信号102が、チャネル1〜6(波長λ1〜λ6)の6波長の信号から成ると想定し、その光スペクトルを図3(1)に示す。図3に示す例では、波長多重信号102のうちチャネル3、4の信号が分離されて出力光ファイバ回線103−1に、またチャネル5、6の光信号が分離されて出力光ファイバ回線103−2に出力されるものとする。
【0015】
従来の波長選択スイッチは、液晶MEMSスイッチと空間回折格子などによって構成され、波長グリッドの境界(グリッド境界)を境目に、波長グリッドに対応した波長間隔で各出力ファイバへの透過特性を切り替える機能を持つ。そこで出力光ファイバ回線103−1に対しては、波長λ3および波長λ4のグリッド(帯域B4、B5に相当)において入力光が透過するように、すなわち透過帯域を図3(2)のように設定する。これにより、図3(3)のように波長チャネル3および4を出力波長多重信号104−1として出力光ファイバ回線103−1に出力することができる。
【0016】
同様に出力光ファイバ回線103−2に対しては、波長λ5および波長λ6のグリッドで入力光が透過するように設定すると、透過特性は図3(4)のようになる。これにより、波長チャネル5および6が出力波長多重信号104−2として、出力光ファイバ回線103−2に出力される。
【0017】
隣接チャネルであるチャネル4とチャネル5を分離する効果は、チャネル4を透過させる透過特性(図3(2))チャネル5を透過させる透過特性(図3(4))それぞれの急峻な傾斜部分(肩の部分)の作用によって得られる。そのため、波長を正しく分離するには、透過特性の傾斜部分がちょうどグリッド境界に重なる必要がある。
【0018】
図3(2)と図3(3)の2つの透過特性を重ねて表示すると図3(6)のようになる。V4は、波長チャネル4の中心波長(λ4)から波長チャネル5側に測定した出力光ファイバ回線103−1への透過特性の幅である。V5は、波長チャネル5の中心波長(λ5)から波長チャネル4側に測定した出力光ファイバ回線103−2への透過特性の幅である。透過帯域の特性形状がほぼ平坦である部分(損失0.5〜1dB程度)の範囲を測定対象とした。
【0019】
図3(6)において、2つの透過特性は両チャネル間に傾斜部を持ち、V4とV5の和は両チャネルのチャネル間隔(λ5−λ4)より小となる。このため、従来の波長選択スイッチでは隣接チャネルの光信号の透過帯域の平坦部分(V4とV5の矢印の範囲)が互いに重なることは無い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】"Spectrally Efficient Long-Haul Optical Networking Using 112-Gb/s Polarization-Multiplexed 16-QAM", JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, VOL. 28, NO. 4, FEBRUARY 15, 2010, pp.547-556
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上記のような従来の波長選択スイッチは、図1(2)〜(5)のように波長間隔を密に配置し、隣接チャネル同士が近接して波長帯域の間隔がほぼゼロとなった超高密度波長多重信号の波長を分離する際に、光信号のスペクトルの一部が欠損してしまう課題がある。
【0022】
図4は、超高密度波長多重信号の波長スペクトルの一部が欠損している様子を示す図である。波長選択スイッチノードの構成は、図2で説明した波長選択スイッチノード100と同じものを想定する。
【0023】
図4(1)は、矩形にスペクトル整形され、チャネル間隔を密に配置した波長多重光信号の例である。図2〜図3で説明した例と同様に、出力光ファイバ回線103−1に対して、波長λ3および波長λ4のグリッド(帯域B4、B5)の光信号が透過するよう透過帯域を設定する。この場合、図4(2)に示すように透過帯域の傾斜部がチャネル3、チャネル4の光信号の一部に重なってしまう。このため図4(3)に示すように、チャネル3の信号スペクトルの短波長側、チャネル4の信号スペクトルの長波長側に出力信号スペクトルの欠損が生じてしまう。この状況は、図4(4)に示すように出力光ファイバ回線103−2へ出力される出力波長多重信号104−2についても同様であり、透過帯域の傾斜部に重なるチャネル5の短波長側に出力波長スペクトルの欠損を生じる。
【0024】
上記のようなスペクトルの欠損は、理論上は波長選択スイッチの透過帯域の傾斜を鋭くして矩形に近いスペクトル形状が得られるようなフィルタリングを実現できれば解消できるが、現実には困難である。波長選択スイッチはMEMS等の空間光スイッチや導波路などの光デバイスで実現されており、製造精度や集積度の向上に制限があるため、急峻な高次の光フィルタ特性の実現が困難だからである。また構造的に温度や圧力などの外乱の影響を受けやすいという問題がある。
【0025】
例えば、波長グリッドの間隔(図4(2)ではB4,B5)を50GHzとする。チャネル3とチャネル4の間の光スペクトル間隔は送信信号を生成する方法によって決まる。高速のデジタル信号処理、サブキャリア生成、電気段の矩形フィルタリングなどの高速電気信号処理を組み合わせれば、数100MHz〜1GHz程度のスペクトル間隔を容易に実現できる。一方で、波長選択スイッチは上記の課題に起因して、透過帯域特性の傾斜部は透過帯域の5〜10%程度(2.5〜5GHz)の幅までしか急峻にすることができない。さらに波長選択スイッチは長期安定性や温度安定性に問題があり、波長精度1GHz以下を実現することは困難である。このため、将来実現される高密度に配置された光信号スペクトルを、波長選択スイッチ技術で分離することは困難である。
【0026】
本発明は上記のような課題に鑑みてなされたものであり、矩形に近いスペクトルを持つ光信号を高密度に配置した、周波数利用効率が極限までに高い光波長多重信号を、波長ごとに分離・合波・スイッチング・ルーティングすることに適した、光波長多重伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明に係る光波長多重伝送装置は、波長スペクトル上で隣接する透過帯域の平坦部分が重なり合うように構成されている。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る光波長多重伝送装置によれば、高密度に近接して配置された波長多重光信号を、波長毎に任意の光ファイバ伝送路に選択・抽出して伝送する際に、光スペクトルの欠損を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】波長多重された光信号の波長スペクトル例を示す図である。
【図2】従来の波長選択スイッチノード100の構成を示す図である。
【図3】従来の光信号と波長選択スイッチノード100の透過帯域との関係を示す図である。
【図4】超高密度波長多重信号の波長スペクトルの一部が欠損している様子を示す図である。
【図5】実施形態1に係る波長選択スイッチノード100−1〜100−2およびこれらを用いた波長多重光ネットワークの構成図である。
【図6】入力信号102−1の波長スペクトルと波長選択スイッチノード100−1の透過帯域を示す図である。
【図7】実施形態2に係る波長選択スイッチノード100の構成図である。
【図8】実施形態2における光信号と波長選択スイッチノード100の透過帯域との関係を示す図である。
【図9】実施形態3に係る波長選択スイッチノード100の構成図である。
【図10】実施形態3における光信号スペクトルと波長選択スイッチノード100の透過帯域との関係を示す図である。
【図11】実施形態3において、チャネル3の出力先ポートを切り替えた後の光信号スペクトルと波長選択スイッチノード100の透過帯域との関係を示す図である。
【図12】実施形態4に係る波長選択スイッチノード100の構成図である。
【図13】実施形態4における光信号スペクトルと波長選択スイッチノード100の透過帯域との関係を示す図である。
【図14】光信号スペクトルと従来の波長選択スイッチノードの透過帯域との関係を示す図である。
【図15】サブグリッド境界が信号チャネルの中心波長に合致する従来の波長選択スイッチを用いた例を示す。
【図16】サブグリッド境界が信号チャネルの中心波長に合致せず、チャネルが3つの波長グリッドにまたがっている例を示す。
【図17】実施形態6に係る波長選択スイッチノード100の構成図である。
【図18】実施形態6における光信号スペクトルと波長選択スイッチノード100の透過帯域との関係を示す図である。
【図19】実施形態6に係る波長選択スイッチノード100が用いる波長管理情報の例を示す図である。
【図20】図19で説明した波長管理情報の状態遷移表の例を示す図である。
【図21】実施形態6における波長管理情報の別構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<実施の形態1>
図5は、本発明の実施形態1に係る波長選択スイッチノード100−1〜100−2およびこれらを用いた波長多重光ネットワークの構成図である。図中には複数の光ノード106−1〜106−3と、本実施形態1に係る波長選択スイッチノード100−1、100−2が配置されている。
【0031】
光ノード106−1中には、高スペクトル密度光送信器107−1〜107−6が配置されている。高スペクトル密度光送信器107−1〜107−6の出力信号である矩形に近い信号スペクトルを持つチャネル1〜チャネル6の光信号は、光結合器115において後述の図6(1)のように隣接チャネル同士の間隔が極めて小となるように近接して波長多重され、波長多重された入力信号102−1として入力光ファイバ回線101を介して波長選択スイッチノード100−1に入力される。
【0032】
波長選択スイッチノード100−1は、波長多重された入力信号102−1のうち、チャネル1、2、5、6の4つの波長成分を抽出した出力波長多重信号104−2を出力光ファイバ回線103−2に出力する。出力波長多重信号104−2は光ノード106−2に入力され、その内部で光スプリッタ114−1によって4つに分離される。コヒーレント光受信器109−1、109−2、109−3、109−4はそれぞれチャネル1、2、5、6の成分を抽出して受信する。
【0033】
波長選択スイッチノード100−1は、波長多重された入力信号102−1のうち、チャネル3、4の2つの波長成分を抽出した出力波長多重信号104−1を出力光ファイバ回線103−1に出力する。出力波長多重信号104−1は波長選択スイッチノード100−2に入力される。
【0034】
波長選択スイッチノード100−2は、出力波長多重信号104−1と、波長選択スイッチノード100−3から受信したチャネル2成分を含む入力信号102−2とを結合し、チャネル2〜4の3つの波長成分を抽出した出力波長多重信号104−3を出力する。出力波長多重信号104−3は光ノード106−3に入力され、その内部で光分岐回路114−2によって3つに分離される。コヒーレント光受信器109−5、109−6、109−7はそれぞれチャネル2、3、4の成分を抽出して受信する。
【0035】
図6は、入力信号102−1の波長スペクトルと波長選択スイッチノード100−1の透過帯域を示す図である。図6(1)に示すように、入力信号102−1は隣接するチャネル同士の波長スペクトル間隔が略ゼロとなるように近接して波長多重されている。ここでいう略ゼロとは、例えば透過帯域の傾斜部分がいずれのチャネル成分も含まないようにすることができない程度に、隣接する波長スペクトル間隔が近接していることである。
【0036】
図6(2)は、入力光ファイバ回線101から出力光ファイバ回線103−1に対する波長選択スイッチノード100−1の透過特性を示す図である。本特性は、従来の波長選択スイッチの光透過特性(図4(2))よりも透過幅が十分に広く設定されているため、矩形に近いスペクトルの信号が隣接して配置されているケースでも、図4(3)のように透過信号であるチャネル3、チャネル4の光スペクトルに欠損を生じることが無く、透過信号の劣化を引き起こさない。その代わり、図6(3)に示すように、出力光にはチャネル3、チャネル4のみならず、チャネル2の一部、チャネル5の一部も残留光として混入してしまう。これらはチャネル3、4と極めて近接して配置されるため、波長フィルタリングなどでは分離することが困難である。
【0037】
そこで本発明において、光ノード106−3は、極めて高い周波数選択性を持つコヒーレント受信器を用いてチャネル3、チャネル4を受信する。図6(3)にはチャネル3を受信するコヒーレント受信器の局発光の波長配置が点線で示されている。
【0038】
コヒーレント受信器は、受信光を内部で生成した局発光と干渉させることにより、局発光周囲の光電界スペクトルをそのまま受信器内の電気信号に変換する機能を持つ。このため、受信器内部における受信電気信号のスペクトルは図6(4)のようにチャネル3を中心とした光信号スペクトルの複製である(図6(4)の横軸は周波数としたため左右反転しているが、特に影響はない)。受信器内部では受信信号をAD変換し、デジタル数値列に変換することにより、複雑なデジタル信号処理を実施することができる。
【0039】
具体的には、矩形に近い高次のデジタルローパスフィルタを用いて図6(4)の周波数±bの範囲の信号のみを抽出することにより、チャネル2の残留光や隣接チャネルであるチャネル4の漏れ込みを無くし、チャネル3の信号成分のみを抽出・受信することができる。チャネル4も同様にコヒーレント受信することができる。上記構成により、信号の欠落や残留光混入の影響を低減することができる。
【0040】
図6(5)は、入力光ファイバ回線101から出力光ファイバ回線103−2に対する波長選択スイッチノード100−1の透過特性を示す図である。本透過特性も、従来の波長選択スイッチの光透過特性(図4(4))よりも透過幅が十分に広く設定されており、図4(4)のようにチャネル5の光スペクトルに欠損を生じ無いように設定されている。その結果、出力信号のスペクトルは図6(6)のようになり、チャネル5の短波長側にはチャネル4の残留光が生じるが、その影響も周波数選択性の高いコヒーレント受信器を用いて受信することによって抑制することができる。
【0041】
次に、単に透過帯域を信号スペクトル幅より広く設定することと、本実施形態1に係る波長選択スイッチノード100−1の構成との間の差異について説明する。
【0042】
従来の波長選択スイッチも、図6で説明したものと同様に、所望の信号帯域よりも透過帯域を広くし、透過させたいチャネルに隣接するチャネルも同じ出力ファイバ回線に出力させるように設定することができる。例えば、図4(2)の例では、透過させるチャネル3〜4が欠損しないようにするためには、これらチャネルに隣接するチャネル2とチャネル5の波長も出力光ファイバ回線103−1に出力されるように、透過特性の設定を切り替えればよいように思われる。
【0043】
しかしながら、単に透過特性を所望チャネルに隣接するチャネルへ拡張するのみでは、今度はチャネル2、チャネル5の波長スペクトルが欠損した状態で出力光ファイバ回線103−1に出力されるに過ぎず、チャネル欠損の問題が本質的に解決されたわけではない。したがって、従来の波長選択スイッチにおける透過帯域を単に拡張するのみでは、信号を無劣化で受信することもできないし、出力ファイバ回線を他のファイバ回線に切り替えることもできない。透過帯域を拡張することに加えて、拡張することによって欠損したチャネルの光信号については、欠損分と同時に別の経路から出力することが必要である。
【0044】
本発明に係る波長選択スイッチノード100−1は、上記検討に鑑み、隣接チャネルであるチャネル2とチャネル5それぞれの波長スペクトルまたはその一部を図6(3)のように出力光ファイバ回線103−1に出力するとともに、チャネル2および5の信号も無劣化かつ自由に任意の出力ファイバ回線に出力するものである。
【0045】
上記機能を実現するためには、チャネル毎の波長選択スイッチの透過帯域幅(図6(2)のW4の2倍)が信号スペクトルまたはグリッド幅(b4またはB4)を上回っているだけでは不十分である。これに加えて、各チャネルの光スペクトルを隣接チャネルの一部を含めて任意の出力ポートに重複して出力できるよう保証する必要がある。このためには図6(7)に示すように、隣接チャネルの透過帯域が互いに重複する関係が必須となる。具体的には、出力光ファイバ回線103−1に対するチャネル4の中心波長λ4からチャネル5側へ向かう側のチャネル4の透過帯域幅(W4)と、出力光ファイバ回線103−2に対するチャネル5の中心波長λ5からチャネル4へ向かう側のチャネル5の透過帯域幅(W5)との和が、λ4とλ5の間の間隔(λ5−λ4)よりも大となる、すなわちW4+W5>λ5−λ4を満たすことが必要である。
【0046】
図6で説明した隣接する透過帯域同士の関係は、図6(1)で例示した波長多重光信号の他、合分波される波長多重光信号が図1(3)〜図1(5)に例示するように隣接チャネル間の間隔が極めて密となるように配置された高密度波長多重信号であり、通常の波長選択スイッチでは分離することが困難な場合においても有効である。
【0047】
<実施の形態1:まとめ>
以上のように、本実施形態1に係る波長選択スイッチノード100−1は、波長スペクトル上で隣接する透過帯域の平坦部分が重なり合うように構成されている。また、出力波長多重信号104−1にはチャネル4の光信号とチャネル5の残留光がともに含まれ、出力波長多重信号104−2にはチャネル5の光信号とチャネル4の残留光がともに含まれている。すなわち、波長選択スイッチノード100−1は、隣接するチャネルを含むように透過帯域を拡張するのみならず、透過帯域が重なっている部分をそれぞれの出力先に同時に出力することができる。これにより、高密度に波長多重化された光信号を欠損させることなくスイッチングすることができる。
【0048】
なお本実施形態1では、上記の高密度波長多重は、各高スペクトル密度光送信器107−1〜6から個別に出力されたチャネル1〜6の光信号を波長選択性の無い光結合器(光カプラ)115で合成して生成している。また光信号を分離する際には、波長選択性の無い光分岐回路(光スプリッタ)114−1や114−2を用いて光信号の複製を作成し、ここからコヒーレント光受信器109−1〜109−7を用いて所望の光チャネルを抽出・受信する構成を示した。これらの合波・分波方式は、本発明の波長選択スイッチノードの概念や構成とは独立な部分であり、適宜必要に応じた構成を取ってかまわない。例えば、ひとつの高スペクトル密度光送信器の内部に複数の光源を配置し、チャネル1〜チャネル6のような高密度波長多重を一括して出力する広帯域マルチキャリア光多値送信器を用いてもかまわない。また各受信器は、適宜これらを個別の独立した波長チャネルとして、もしくは複数の波長を束ねたマルチキャリア信号として一括受信する構成を取ってもかまわない。以下の実施形態でも同様である。
【0049】
また後述の実施形態でも述べるが、波長選択スイッチノード100−1を通過するすべての光信号が上記のような高密度波長多重信号である必要はなく、その一部ないしは大部分が信号スペクトル間に十分な隙間を持つ従来の波長多重信号であってもかまわない。本発明の波長分離方式は、そのうち従来の波長選択スイッチでは分離が困難となるほどチャネル間隔が近接している部分にのみ適用してもかまわない。
【0050】
また図5では各光ノードの模式的配置図を示したが、これは光伝送装置である光ノードの機能のみを示すものである。例えばこれらの装置は必要に応じて同じ装置の筐体内部に配置されていてもよいし、数10kmから数1000km離れたネットワークノード、局社、ビル内などに配置されていてもかまわない。また図5では示していないが、このような長距離伝送を実現する場合には、光ファイバ回線の途中に複数の光増幅中継器などが配置されるのが一般的であり、必要に応じてこれらの光増幅中継器や他の機能を持つ光伝送装置を追加しても本発明の効果には影響が無い。
【0051】
<実施の形態2>
図7は、本発明の実施形態2に係る波長選択スイッチノード100の構成図である。本図は、実施形態1で説明した波長選択スイッチノード100−1の具体的な構成例に相当する。
【0052】
波長選択スイッチノード100は、一本の入力光ファイバ回線101から入力された入力信号102−1を2本の出力光ファイバ回線103−1、103−2に任意に振り分けて出力する1:2の構成を有する。波長選択スイッチノード100の内部には2つの波長選択スイッチ110−1、110−2が配置され、両者の協調動作により波長選択スイッチノード100の機能を実現している。
【0053】
入力信号102−1は、光分岐回路114によって2つに分岐され、波長選択スイッチ110−1、110−2それぞれの入力ポート111−1、111−2に入力される。
【0054】
波長選択スイッチ110−1、110−2はともに1:2構成である。波長選択スイッチ110−1の出力ポート112−1と波長選択スイッチ110−2の出力ポート113−1は光結合器115−1で結合され、各出力が加算されて出力光ファイバ回線103−1に出力される。波長選択スイッチ110−1の出力ポート112−2と波長選択スイッチ110−2の出力ポート113−2は光結合器115−2によって結合され、各出力が加算されて出力光ファイバ回線103−2に出力される。
【0055】
本実施形態2では、2つの波長選択スイッチ110−1と110−2をチャネル1から順に交互に利用することによって、図6(7)のように異なる出力光ファイバ回線に対する透過特性が互いに重複する特性を得ている。具体的には、チャネル1と2については波長選択スイッチ110−1が担当し、チャネル3と4については波長選択スイッチ110−2が担当し、チャネル5と6については再び波長選択スイッチ110−1が担当している。担当を交互に割り当てている理由は、後述の図8で改めて述べる。
【0056】
図8は、本実施形態2における光信号と波長選択スイッチノード100の透過帯域との関係を示す図である。図8(1)は、波長多重された入力信号102−1の波長スペクトル例である。本例では6つの信号チャネルのうち、チャネル2とチャネル3は帯域狭窄と高密度チャネル配置を用いない従来の光信号であり、またチャネル6は本発明の対象となる帯域狭窄された光信号であるが、他の波長(チャネル1、4、5)に比べてスペクトル幅の狭い信号となっている。波長選択スイッチノード100は、従来の周波数選択スイッチに比べて透過帯域の幅が広いため、従来の光信号が高密度多重化された光信号と混在している場合にも利用できる。
【0057】
図8(2)において、まず波長選択スイッチ110−2がチャネル3、4の光信号を出力ポート113−2に切り出し、同時に波長選択スイッチ110−1は出力ポート112−2に対する同波長帯(本例では波長λ2〜λ5の範囲)の出力を遮断する。図8(2)中の点線は、出力ポート113−2に対する波長選択スイッチ110−2の透過特性である。透過帯域幅を各チャネル帯域より広めに設定することによって、チャネル3、4の光信号を欠損無く抽出することができる。
【0058】
両スイッチの出力光は、光結合器115−2で加算されて出力光ファイバ回線103−2に出力されるが、波長範囲λ2〜λ5では波長選択スイッチ110−1の出力光が遮断されているため、波長選択スイッチ110−2から出力された図8(2)に示すチャネル3と4の光信号がそのまま出力波長多重信号104−2として出力される。
【0059】
なお、出力波長多重信号104−2にはチャネル5とチャネル2の残留光が含まれるが、これらは実施形態1と同様にコヒーレント受信器を用いて電気的に除去してもよいし、改めて従来の波長選択スイッチや狭帯域フィルタなどを用いて残留光を除去して所望のチャネルのみを抽出してもよい。
【0060】
また図8(2)に示すチャネル3のように、透過帯域のいずれか一方の端に偏って配置されたチャネルについては、隣接するスペクトルとの間の間隔が十分に広い場合には、チャネル3が配置されている側の透過帯域幅を従来の波長選択スイッチの透過帯域幅と同程度の幅に設定し、隣接チャネル間の間隔が十分に大きいことを利用してチャネル3を残留光なく切り出すようにしてもよい。
【0061】
出力光ファイバ回線103−1に対してチャネル1、2、5、6を切り出す際には、もう一方の波長選択スイッチ110−1を利用する。図8(3)は、波長選択スイッチ110−1の透過特性のうちチャネル5と6に関する部分と信号スペクトルのみを示す。チャネル1、2については説明を省くがその作用は同一である。
【0062】
波長選択スイッチ110−1は、チャネル5と6の信号スペクトルの欠損を生じさせないよう、出力ポート112−1に対する透過帯域が十分に広く設定されている。一方、波長選択スイッチ110−2は同波長帯(本例では波長λ4から長波長側)における出力ポート113−2に対する出力信号を遮断する。これにより、チャネル5とチャネル6(およびチャネル1、2)を含む出力波長多重信号104−1が出力光ファイバ回線103−1に出力される。図8(3)に示すチャネル4の残留光については、図8(2)の場合と同様にしてその影響を除去することができる。
【0063】
チャネルを担当する波長選択スイッチをチャネル1から順に交互に割り当てている理由は、透過帯域の傾斜部によって欠損が生じたチャネルを他の出力光ファイバ回線から出力するためである。例えば図8(2)において、波長選択スイッチ110−2の出力はチャネル5が欠損した状態である。これを補うため、もう一方の波長選択スイッチ110−1がチャネル5をその透過帯域内で欠損無く出力する必要がある。
【0064】
<実施の形態2:まとめ>
以上のように、本実施形態2に係る波長選択スイッチノード100において、波長選択スイッチ110−1は短(もしくは長)波長側の透過帯域を切り出し、波長選択スイッチ110−2は長(もしくは短)波長側の透過帯域を切り出す。各波長選択スイッチノードがチャネルを交互に分担することにより、実施形態1で説明したように、同時に2つの出力光ファイバ回線に対し、互いに重複した広い透過帯域を設定して信号スペクトルの欠損を避けることができる。なおこのような波長選択スイッチノード100の内部構成は、本発明の基本概念を実現するための一例であり、他の構成によって同様の機能を実現することを否定するものではない。
【0065】
<実施の形態3>
図9は、本発明の実施形態3に係る波長選択スイッチノード100の構成図である。本実施形態3における波長選択スイッチノード100は、2つの波長選択スイッチ110−1と110−2を用いて、3つの出力ファイバ回線103−1、103−2、103−3に任意の光信号を切り出して出力する、1:3構成を実現したものである。
【0066】
波長選択スイッチ110−1と110−2は、1:3構成の波長選択スイッチである。両スイッチの出力ポートを2本ずつ対にして光結合器115−1、115−2、115−3で結合し、それぞれ3本の出力光ファイバ回線103−1、103−2、103−3に出力する。入力光ファイバ回線101にはチャネル1〜6の光信号が入力されており、出力光ファイバ回線103−1、103−2、103−3には、それぞれ波長チャネル2と6、4と5、1と3が切り出されて出力されるものとする。
【0067】
図10は、本実施形態3における光信号スペクトルと波長選択スイッチノード100の透過帯域との関係を示す図である。本実施形態3において、本発明の機能を実現する方法はいくつか存在するが、以下では波長帯域が連続する複数チャネルの光信号を一本の出力ファイバ回線へ切り出す際に、2つの波長選択スイッチ110−1と110−2を短波長側から交互に利用する例を示す。波長選択スイッチを交互に割り当てる理由は、実施形態2で説明したものと同様である。
【0068】
まず波長選択スイッチ110−1は、最短波長のチャネル1を出力ポート112−3に切り出し、波長選択スイッチ110−2は出力ポート113−3に対する同波長帯域の出力を遮断する。これによって出力光ファイバ回線103−3には図10(4)のようにチャネル1が切り出される。
【0069】
波長選択スイッチ110−2は、次に短波長側のチャネル2を切り出し、これを出力ポート113−1に透過させる。波長選択スイッチ110−1は、出力ポート112−1に対する同波長帯の出力を遮断する。これにより、図10(2)のようにチャネル2の光信号を出力光ファイバ回線103−1に切り出す。
【0070】
以下同様に、チャネル3の切り出しは再び波長選択スイッチ110−1が担当し、またチャネル4、5の切り出しは波長選択スイッチ110−2が担当する。このように短波長側から順に交互に異なる光スイッチを用いてチャネルを切り出すことにより、3つの出力光ファイバ回線103−1、103−2、103−3にそれぞれ図10(2)(3)(4)のように所望の光信号をスペクトル欠損無しに分離・出力することができる。
【0071】
なお本実施形態は1:3の構成を示したが、内部の波長選択スイッチ110−1、110−2に1:N構成の波長選択スイッチを用い、N個の2:1光結合器115−1〜Nを用いることにより、本実施形態3で説明した構成を容易に1:N出力に拡張することができる。
【0072】
<実施の形態4>
実施形態3で説明した波長選択スイッチノード100の課題のひとつとして、スイッチング経路を変更する、すなわちある特定チャネルの光信号の出力先となる出力光ファイバ回線を他の出力光ファイバ回線に変更すると、切り替えに無関係な他のチャネルにも切り替え(ブロッキング)が発生してしまう点である。
【0073】
図11は、実施形態3において、チャネル3の出力先ポートを切り替えた後の光信号スペクトルと波長選択スイッチノード100の透過帯域との関係を示す図である。図11では、チャネル3の光信号が出力光ファイバ回線103−3に出力されている図9〜図10の状態から、出力光ファイバ回線103−1に出力される状態に切り替えられている。
【0074】
図10の状態において、チャネル3の出力先を出力光ファイバ回線103−3から出力光ファイバ回線103−1へ切り替える場合、チャネルの連続性の観点から、隣接するチャネル2と3は波長選択スイッチ110−2が担当し、これらチャネルを同時に出力光ファイバ回線103−1に透過させることになる。この様子を図11(2)に示す。
【0075】
チャネル3を波長選択スイッチ110−2が担当する結果、波長選択スイッチ110−2の出力においてチャネル4が欠損する。そのため、チャネル4は波長選択スイッチ110−1が担当する必要がある。隣接するチャネル5も同様である。これにともない波長選択スイッチ110−1の出力においてチャネル6が欠損するので、チャネル6は波長選択スイッチ110−2が担当する必要がある。
【0076】
以上の結果、チャネル4〜チャネル6については、担当する波長選択スイッチがチャネル3の出力先を切り替える前から変更する必要がある。このような切り替えが生じると、スイッチ切り替えの過渡状態においてチャネル4〜6の光信号に瞬断や干渉が発生し、回線品質が大きく劣化が生じてしまう。本発明の実施形態4では、このような出力先変更にともなう信号瞬断や干渉を回避する構成例を説明する。
【0077】
図12は、本実施形態4に係る波長選択スイッチノード100の構成図である。本実施形態4に係る波長選択スイッチノード100は、3つの1:1波長選択スイッチ110−1、110−2、110−3を備える。光分岐回路114は、入力信号102−1を3つに分離して波長選択スイッチ110−1、110−2、110−3にそれぞれ入力する。各出力ポート112、113、116は、直接3つの出力光ファイバ回線103−1、103−2、103−3にそれぞれ結合されている。各波長選択スイッチ110−1、110−2、110−3は、それぞれ異なる出力光ファイバ回線103−1、103−2、103−3への光信号の切り出しを担当する。
【0078】
図13は、本実施形態4における光信号スペクトルと波長選択スイッチノード100の透過帯域との関係を示す図である。入力されたチャネル1〜6の光信号のうち、チャネル2、6を出力光ファイバ回線103−1へ、チャネル4、5を出力光ファイバ回線103−2へ、チャネル1、3を出力光ファイバ回線103−3へ出力する。
【0079】
各波長選択スイッチは、それぞれ接続された出力光ファイバ回線に出力されるチャネルの切り出しを担当する。この様子を図13(2)〜(4)に示す。例えば波長選択スイッチ110−2は、信号チャネル4、5より広めに透過帯域が設定されており、これらチャネルを出力光ファイバ回線103−2に切り出す。これにより、チャネル4〜5を欠損させることなく切り出すことができる。
【0080】
図13に示す構成によれば、異なる出力光ファイバ回線への波長切り出しを異なる波長選択スイッチが実施するため、透過帯域を重複させ、高密度波長多重信号の分離においても信号スペクトルの欠損を防ぐことができる。さらには、出力光ファイバ回線毎に1つの波長選択スイッチを設けているので、チャネルの出力先を切り替える際にもチャネルの瞬断や干渉が生じないようにすることができる。
【0081】
なお図13では、チャネル6のみ信号スペクトル幅または波長グリッド幅の狭い帯域狭窄光信号である例を示しているが、切り出す光信号ごとに選択波長幅を変更することにより、このような光信号も問題なく分離することができる。
【0082】
<実施の形態5>
本発明の実施形態5では、従来の波長選択スイッチを利用して、本発明に係る波長選択スイッチを実現する方法について説明する。
【0083】
本発明に係る波長選択スイッチは、選択した光信号を各光信号の割り当て帯域(またはグリッド)よりも十分に広く切り出す必要がある。これに対し従来の波長選択スイッチは、指定した光信号(例えばチャネル2)を切り出す際には、グリッド境界を境目にしてチャネル2を含む波長帯域を切り出すため、透過帯域が狭く、そのままでは本発明に係る波長選択スイッチとして利用することはできない。
【0084】
図14は、光信号スペクトルと従来の波長選択スイッチノードの透過帯域との関係を示す図である。本図は、波長グリッド幅が光信号の割り当て帯域と同じである従来の波長選択スイッチを用いて、実施形態4の図13で説明した波長選択スイッチ110−1を実現する例である。
【0085】
波長選択スイッチ110−1は、切り出し対象であるチャネル(図14ではチャネル2とチャネル6)の両側隣接チャネル(チャネル2に隣接するチャネル1とチャネル3、およびチャネル6に隣接するチャネル5)を、切り出し対象であるチャネルと同一のポートに切り替えればよい。この結果、チャネル1、3、5はそのまま出力光ファイバ回線103−1に残留光として出力されてしまうが、切り出し対象チャネルであるチャネル2、チャネル6の光信号にはスペクトル欠損が生じることはない。同様に、チャネル2とチャネル4を切り出す場合には、チャネル1、2、3、4、5のすべてを同時に透過させればよい。
【0086】
しかしながら上記の例では、チャネルを切り出す際に隣接チャネルがほぼそのまま残留光として帯域を占有してしまうため、出力光ファイバ回線の周波数利用効率が大きく低下し、光増幅器の出力に無駄が発生する。さらには、隣接チャネルからのクロストークが過大となる可能性があるなど、実用上も問題が多い。
【0087】
そこで本実施形態5では、図15〜図16に示すように、波長切り替え単位の狭い従来の波長選択スイッチを利用して、本発明の波長選択スイッチ110−1の機能を実現することを図る。図15〜図16いずれも、チャネル割り当て帯域の1/2幅のサブグリッド毎にチャネル切り替えできる波長選択スイッチを想定している。
【0088】
図15は、サブグリッド境界が信号チャネルの中心波長に合致する従来の波長選択スイッチを用いた例を示す。図15(2)は、透過帯域の設定例である。例えば、サブグリッドg3、g6、g7が出力光ファイバ回線に透過するように透過帯域を設定すると、チャネル2の長波長側およそ右半分の光信号とチャネル4の大部分が透過するような透過帯域が得られる。このような波長切り替え単位の狭い従来の波長選択スイッチを利用すると、図14の場合に比べ、波長選択スイッチノード110−1の周波数利用効率を大幅に向上することができる。
【0089】
図15(3)は、チャネル2、6を出力光ファイバ回線103−1に切り出す様子を示している。具体的には、サブグリッドg0、g1、g2、g3、およびg9、g10、g11が出力光ファイバ回線103−1へ透過するように、波長選択スイッチの透過帯域を切り替えればよい。これにより波長選択スイッチ110−1の透過帯域幅をチャネル2、6の光信号の欠損が生じないように十分に大とすることができる。
【0090】
図15に示す透過帯域の構成では、チャネル2を出力光ファイバ回線103−1に出力する際には、隣接するチャネル1、チャネル3を一部含むサブグリッドg0、g3上の光信号も同じ出力光ファイバ回線103−1に出力する必要がある。図14のように隣接するチャネル1、チャネル3をほぼそのまま同時出力する例に比べると、図15では同時出力するチャネルがサブグリッド以下の範囲内に留まっているので、残留光の占める波長帯域やその強度が図14のおよそ1/2となり、その分だけ周波数利用効率を向上させることができる。
【0091】
図16は、サブグリッド境界が信号チャネルの中心波長に合致せず、チャネルが3つの波長グリッドにまたがっている例を示す。図16において、例えばチャネル2、6を出力光ファイバ回線103−1に切り出す場合、中心波長を含むサブグリッドとその両側のサブグリッドが出力光ファイバ回線103−1へ透過するように、波長選択スイッチ110−1の透過帯域を切り替えればよい。
【0092】
チャネル2を抽出する場合、抽出するチャネルのスペクトル成分を含むサブグリッドに加え、その両側の隣接チャネルのスペクトル成分を含むサブグリッド上の光信号を透過させればよい。具体的には、抽出する光信号のみを含むサブグリッドg2、g11に加え、その両側の隣接チャネルと抽出する光信号の双方を含むサブグリッドg1、g3およびg10、g12を透過状態に設定すればよい。
【0093】
図16に示す構成によれば、各チャネルにおいて信号割り当て帯域の1.5倍弱の透過帯域が得られ、信号スペクトルの欠損を避けることができる。このように本例では前述の図14、図15に比べてさらに周波数利用効率を向上し、残留光の量を低減することができる。
【0094】
なお、図15〜図16で説明したようなサブグリッド毎に波長を選択する従来の波長選択スイッチは、実施形態4で説明した波長選択スイッチノードに限らず、その他の実施形態で説明した波長選択スイッチノードを構成するために用いることもできる。
【0095】
<実施の形態5:まとめ>
以上のように、本実施形態5によれば、既存の波長選択スイッチを利用して、実施形態1〜4で説明した波長選択スイッチノードを安価かつ簡易に構成し、実用性を高める効果がある。
【0096】
<実施の形態6>
図17は、本発明の実施形態6に係る波長選択スイッチノード100の構成図である。本実施形態6にかかる波長選択スイッチノード100は、監視光120を用いて波長帯域の管理を実施する。
【0097】
波長選択スイッチノード100は、一本の入力光ファイバ回線101−4に入力される入力信号102−1を、3本の出力光ファイバ回線103−1、103−2、103−3に振り分ける1:3の構成を有する。波長選択スイッチノード100の主構成は、実施形態4で説明したものと同一であり、各出力光ファイバ回線に接続された3つの波長選択スイッチ110−1、110−2、110−3を適宜切り替えることによって波長選択が実施される。
【0098】
入力光ファイバ回線101−4には上流の装置から伝送された監視光120−4が伝送されている。監視光120−3は、監視光分波回路121によって分離され、監視光受信器128で受信される。監視情報処理解路123は、監視光受信器128が受信した監視信号を受け取り、通常の監視情報の処理に加えて、後述する波長管理処理を実施する。具体的には、波長回線ごとに抽出した信号波長、挿入した信号波長、残留光の有無などについての情報を更新し、これを新たな監視情報124−1、124−2、124−3として出力する。これらの監視情報は、それぞれ監視光送信器127−1、127−2、127−3で監視光に変換され、監視光合波回路122−1、122−2、122−3で出力波長多重信号104−1、104−2、104−3に合波された後に、3つの出力光ファイバ回線103−1、103−2、103−3にそれぞれ出力され、下流の光伝送装置に伝達される。
【0099】
波長選択スイッチノード100はさらに、波長選択スイッチノード100に近接して配置されたトランスポンダ収容装置125が出力する波長多重光信号を光結合器115−3によって挿入する構成を有する。トランスポンダ収容装置125については後述する。
【0100】
図18は、本実施形態6における光信号スペクトルと波長選択スイッチノード100の透過帯域との関係を示す図である。本図は、トランスポンダ収容装置125がチャネル3〜4を挿入する様子を示している。
【0101】
図18(1)は、入力信号102−1の光スペクトルである。波長選択スイッチノード100は、光分岐回路114−1によって入力信号102−1を3つに分割し、そのうちひとつが波長選択スイッチ110−3に入力される。波長選択スイッチ110−3は、図18(2)に示すようにチャネル1、6の光信号を選択・透過させる。
【0102】
トランスポンダ収容装置125内には、2台の高スペクトル密度光送信器107−1と107−2が配置されている。これらはそれぞれチャネル3(波長λ3)、チャネル4(波長λ4)の光信号を出力する。両光信号を光結合器115−4で加算することにより、両光信号をほとんど波長の隙間なく近接して多重化することができる。多重されたチャネル3、4の光信号は入力光ファイバ回線101−3を経由して、波長選択スイッチノード100に入力される。
【0103】
光結合器115−3は、出力ポート116から得られるチャネル1、6の信号にチャネル3、4の信号を加算・挿入する。その結果、図18(3)のようにチャネル1、3、4、6を合成した新しい波長多重信号が得られる。
【0104】
図17において、波長選択スイッチノード100からトランスポンダ収容装置125に向かう光信号(ドロップ光)の経路は示されていないが、例えば出力ファイバ回線103−1をトランスポンダ収容装置125の光受信器に接続することにより、トランスポンダ収容装置125において任意の波長を切り出し、任意の波長の光信号を挿入する波長アッド・ドロップ構成が実現できる。
【0105】
図17に示した構成では、アッド光の接続は入力光ファイバ回線101−3に限られているが、他の入力光ファイバ回線101−1、101−2には別のトランスポンダ収容装置や光波長選択スイッチノードからの光ファイバ回線を接続しても構わない。また、トランスポンダ収容装置125と入力光ファイバ回線101−1、101−2、101−3の途中に1:3構成の波長選択スイッチノードを配置し、アッド光を波長毎に3つの入力光ファイバ回線101−1、101−2、101−3のいずれかに任意に振り分けできるようにしてもよい。
【0106】
以上、本実施形態6に係る波長選択スイッチノード100の構成を説明した。次に監視光120について説明する。
【0107】
入力光ファイバ回線101−4、出力光ファイバ回線103−1、103−2、103−3中には、波長多重信号光の他に、別波長の監視光120−1〜120−4が波長多重されて伝送されている。この監視光120120−1〜120−4は、装置間の制御情報の伝送を担っている。制御情報としては、上流の装置内のレーザ電流・装置温度などの状態監視情報、信号断や装置故障などの警報や故障信号、信号波長数などの情報、光信号帯域の利用状況(チャネルが使用中であるか否か、残留光があるか否かなど)などがある。
【0108】
通常の光伝送装置で用いられる監視光の波長λcは、例えば1500〜1530nm、1600nm帯などである。信号波長と重複していなければ監視光の波長に特段の制限は無く、また監視光以外の別の通信手段を用いて帯域管理を実施しても構わない。特に各波長選択スイッチノードの構成、性能、切替アルゴリズムなどが確定している場合には、集中管理サーバにおいて、各波長選択スイッチノードの切替状態と切替に伴う波長グリッドの利用状況をすべて把握し、アッド光として利用する波長をすべて管理サーバが指定する構成を採用することもできる。
【0109】
波長管理を行う理由について説明する。波長選択スイッチノード100は、選択・抽出した信号チャネルに隣接する帯域外の残留光を同時に出力するため、残留光の有無を考慮して各波長グリッドの利用可否を判定する必要がある。そのため本実施形態6では、チャネルの利用状況や残留光の有無を監視することとしている。
【0110】
例えば、図18(2)の光信号の空き波長に新しい光信号を加算する際には、信号光のある波長λ1、λ2を中心とする波長グリッドだけでなく、残留光のある波長λ2、波長λ5のグリッドを利用することも避ける必要がある。このような各チャネルの利用状況を管理するため、監視光120−1〜120−4を利用する。
【0111】
図19は、本実施形態6に係る波長選択スイッチノード100が用いる波長管理情報の例を示す図である。本状法は、監視光120−3によって伝送される管理情報の一部として下流のノードに送信され、または必要に応じて別の情報回線によって他のノードや光伝送装置に送信される。
【0112】
図19(1)は、図17〜図18においてチャネル3、4をアッドしない場合の波長管理情報例であり、各波長チャネルの信号の有無、残留光の有無が記載されている。このうち、チャネル2および5については残留光の有無に加え、残留光がチャネルの長波長側ないしは短波長側のどちらに発生しているのかの情報まで記載している。これにより、後段の波長選択スイッチノードの状態に応じて、残留光の状態変化をより詳細に管理することが可能になる。
【0113】
図19に示す波長管理情報は、監視情報伝送回線129によってトランスポンダ収容装置125に伝達される。波長設定回路126は、受け取った図19(1)の波長管理情報に基づき、空き波長(本例ではチャネル3、チャネル4)を判定し、高スペクトル密度光送信器107−1、107−2の出力波長をλ3、λ4に設定して出力する。このようにすることにより、残留光や信号光とアッド光が干渉することを避けることができる。
【0114】
図19(2)は、アッド光を挿入した後の更新された波長管理情報である。本管理情報は出力波長多重信号104−3の波長利用情報を表しており、監視光120−3によって出力光ファイバ回線103−3の下流の光伝送装置に伝送される。
【0115】
図20は、図19で説明した波長管理情報の状態遷移表の例を示す図である。以下、図20にしたがって波長管理情報の状態遷移を説明する。
【0116】
図20(1)は、ある回線のチャネルiの信号を非透過設定とした場合、その回線のチャネルiの状態がどのように変化するかを示す状態遷移表である。図19(2)(3)のように波長の挿入や抽出を実施した場合には、その回線に対する波長管理情報は本図のように更新すればよい。本図では、単に波長選択スイッチの切替状態を示すだけでなく、実際にそのチャネルの光信号が存在するものと仮定した。
【0117】
例えば図20(1)において、もともとチャネルiの光信号が存在しなければ、隣接チャネルの状態に関わらずチャネルiの信号に残留光も信号光も生じることは無い。これに対し、チャネルiの光信号が波長選択スイッチノード100において非透過とされ、かつ短波長側のチャネルi−1の光信号が透過状態に設定される場合(例えば図13(2)の出力光ファイバ回線103−1におけるチャネル3の状況)、短波長側の透過帯域が広く設定され、その結果チャネルiの光信号の短波長側の成分が残留し、チャネルiの短波長側に残留光が生じる(図の斜線部)。
【0118】
図20(2)は、チャネルi+1の信号光が透過される場合の状態遷移表である。上記の仮定では、光チャネルiを透過させるのはチャネルiが存在する場合のみと仮定したため、原則としてチャネルiが信号有りの場合のみを考慮すればよい。この場合の出力状態は信号有りとなる。仮にチャネルiがその他の状態であったとしても、チャネルiが透過状態に設定されれば透過帯域幅はチャネルiよりも十分に広く取られるため、出力状態は元のチャネルiの状態と同一になる。
【0119】
図20(3)は、チャネルiをアッドした場合の状態変化を示す。この場合の出力状態は、常に信号有りに変化する。
【0120】
図20に示すように、本実施形態6に係る波長選択スイッチノード100は、残留光の有無や変化などを含むチャネル利用状況を詳細に管理することができるので、空き波長を効率的に利用することができる。
【0121】
図21は、本実施形態6における波長管理情報の別構成例を示す図である。本図は、実施形態4の図16のように、サブグリッドごとに透過帯域を設定する場合における波長管理情報の例を示す。
【0122】
図21では、サブグリッドによって既に帯域が細かく分割されており、サブグリッド中には信号の一部が常に存在するため、グリッド内に含まれる信号が信号光であるのか残留光であるのかを区別をする必要はなく、サブグリッドが単に使用中か空いているかを管理すれば十分である。したがって、より効率的かつ簡易にチャネルの使用状況を管理することができる。
【0123】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0124】
100:波長選択スイッチノード
101、101−1〜101−4:入力光ファイバ回線
102:入力信号
103−1〜103−3:出力光ファイバ回線
104−1〜104−3:出力波長多重信号
106−1〜106−3:光ノード
107−1〜107−6:高スペクトル密度光送信器
109−1〜109−7:コヒーレント光受信器
110−1〜110−3:波長選択スイッチ
111−1〜111−2:波長選択スイッチの入力ポート
112−1〜112−3:波長選択スイッチの出力ポート
113−1〜113−3:波長選択スイッチの出力ポート
114、114−1、114−2:光分岐器
115、115−1、115−2、115−3、115−4:光結合器
116:波長選択スイッチの出力ポート
120−1、120−2、120−3、120−4:監視光
121:監視光分波回路
122−1、122−2、122−3:監視光合波回路
123:監視光情報処理回路
124−1、124−2、124−3:監視情報
125:トランスポンダ収容装置
126:波長設定回路
127−1、127−2、127−3:監視光送信器
128:監視光受信器
129:監視情報伝送回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長スペクトル上の波長帯域が前記波長スペクトル上において波長帯域間隔が略ゼロで互いに隣接している第1および第2の光信号を波長多重化して光ファイバ伝送路を介して伝送する光波長多重伝送装置であって、
前記第1および第2の光信号のうちいずれかを選択して第1および第2の前記光ファイバ伝送路のうちいずれかに分配する波長選択スイッチノードを備え、
前記波長選択スイッチノードは、
前記第1光信号を前記第1光ファイバ伝送路に出力する際の第1透過帯域の透過帯域幅が、前記第1光信号の波長スペクトル幅または割当周波数幅より大きくなり、かつ前記第2光信号を前記第2光ファイバ伝送路に出力する際の第2透過帯域の透過帯域幅が、前記第2光信号の波長スペクトル幅または割当周波数幅より大きくなるように、前記分配を実施し、
前記第1透過帯域の中心波長から前記第2透過帯域へ向かう側の終端までの前記第1透過帯域の透過帯域幅と、前記第2透過帯域の中心波長から前記第1透過帯域へ向かう側の終端までの前記第2透過帯域の透過帯域幅との和が、前記第1光信号の中心波長から前記第2光信号の中心波長までの波長スペクトル幅よりも大きくなるように構成されている
ことを特徴とする光波長多重伝送装置。
【請求項2】
前記波長選択スイッチノードは、
前記第1光信号の出力経路または出力状態を透過状態と遮断状態の間で切り替える際に、前記第2光信号の出力経路または出力状態に変化または瞬断を生じないように構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の光波長多重伝送装置。
【請求項3】
第1および第2の前記波長選択スイッチノードを備え、
前記第1波長選択スイッチノードは、
前記第1光信号を前記第1光ファイバ伝送路に分配するとともに前記第2光信号を前記第1光ファイバ伝送路に対して出力しないように遮断し、
前記第2波長選択スイッチノードは、
前記第2光信号を前記第2光ファイバ伝送路に分配するとともに前記第1光信号を前記第2光ファイバ伝送路に対して出力しないように遮断する
ことを特徴とする請求項2記載の光波長多重伝送装置。
【請求項4】
前記波長選択スイッチノードは、
前記第1光ファイバ伝送路と1:1で接続された第1波長選択スイッチと、
前記第2光ファイバ伝送路と1:1で接続された第2波長選択スイッチと、
前記光信号を前記波長選択スイッチと同数に分岐させて分岐光をそれぞれ各前記波長選択スイッチに入力する光分岐回路と、
を備え、
前記第1波長選択スイッチは、前記第1光信号を抽出して前記第1光ファイバ伝送路に出力し、
前記第2波長選択スイッチは、前記第2光信号を抽出して前記第2光ファイバ伝送路に出力する
ことを特徴とする請求項2記載の光波長多重伝送装置。
【請求項5】
前記波長選択スイッチノードは、
前記光信号より狭い波長スペクトル幅を有する波長グリッド単位で透過帯域を切り替えることができるように構成されており、
前記第1光信号を前記第1光ファイバ伝送路に出力する際に、前記第2光信号の波長スペクトル成分を含む前記波長グリッド内の前記光信号を前記第1光ファイバ伝送路に併せて出力し、
前記第2光信号を前記第2光ファイバ伝送路に出力する際に、前記第1光信号の波長スペクトル成分を含む前記波長グリッド内の前記光信号を前記第2光ファイバ伝送路に併せて出力する
ことを特徴とする請求項1記載の光波長多重伝送装置。
【請求項6】
前記波長選択スイッチノードは、
前記光信号より狭い波長スペクトル幅を有する波長グリッド単位で透過帯域を切り替えることができるように構成されており、
前記第1光信号の波長スペクトル成分を含み前記第2光信号の波長スペクトル成分を含まない前記波長グリッド内の前記光信号を前記第1光ファイバ伝送路に出力し、
前記第2光信号の波長スペクトル成分を含み前記第1光信号の波長スペクトル成分を含まない前記波長グリッド内の前記光信号を前記第2光ファイバ伝送路に出力し、
前記第1光信号の波長スペクトル成分と前記第2光信号の波長スペクトル成分をともに含む前記波長グリッド内の前記光信号を前記第1光ファイバ伝送路と前記第2光ファイバ伝送路に同時に出力する
ことを特徴とする請求項1記載の光ファイバ伝送装置。
【請求項7】
前記波長選択スイッチノードは、
前記第1光信号を抽出する第1波長選択スイッチと、
前記第2光信号を抽出する第2波長選択スイッチと、
前記光信号を分岐させて分岐光をそれぞれ各前記波長選択スイッチに入力する光分岐回路と、
前記第1波長選択スイッチが出力する出力光信号と前記第2波長選択スイッチが出力する出力光信号を結合して前記第1光ファイバ伝送路に出力する第1光結合器と、
前記第1波長選択スイッチが出力する出力光信号と前記第2波長選択スイッチが出力する出力光信号を結合して前記第2光ファイバ伝送路に出力する第2光結合器と、
を備え、
前記第1波長選択スイッチは、抽出した前記第1光信号を前記第1光結合器に出力し、
前記第2波長選択スイッチは、抽出した前記第2光信号を前記第2光結合器に出力する
ことを特徴とする請求項1記載の光波長多重伝送装置。
【請求項8】
前記波長選択スイッチノードは、
前記光ファイバ伝送路の下流ノードに対して監視情報を伝送し、または上位ノードから受信した監視情報をネットワーク監視ノードに対して転送する情報回線を、前記光ファイバ伝送路上に備えており、
波長帯域毎の光信号の有無および残留光の有無についての監視情報を、前記情報回線を用いて前記下流ノードまたは前記ネットワーク監視ノードに対して送信する
ことを特徴とする請求項1記載の光波長多重伝送装置。
【請求項9】
前記波長選択スイッチノードは、
前記光ファイバ伝送路の下流ノードに対して監視情報を伝送し、または上位ノードから受信した監視情報をネットワーク監視ノードに対して転送する情報回線を、前記光ファイバ伝送路上に備えており、
前記光信号より狭い波長スペクトル幅を有する波長グリッド毎の光信号の有無および残留光の有無についての監視情報を、前記情報回線を用いて前記下流ノードまたは前記ネットワーク監視ノードに対して送信する
ことを特徴とする請求項1記載の光波長多重光伝送装置。
【請求項10】
前記波長選択スイッチノードは、
前記光ファイバ伝送路の上流ノードまたはネットワーク監視ノードから、前記光ファイバ伝送路における波長帯域毎または前記光信号より狭い波長スペクトル幅を有する波長グリッド毎の光信号の有無および残留光の有無についての監視情報を受け取り、
前記監視情報に基づき、前記光信号が占有する波長帯域において、他の光信号または残留光が存在しないことを確認した後に、前記光ファイバ伝送路に前記光信号を挿入する
ことを特徴とする請求項1記載の光波長多重光伝送装置。
【請求項11】
前記第1および第2の光信号を送信する送信器と、
請求項1記載の光波長多重伝送装置と、
前記光波長多重伝送装置が出力する光信号を受信する受信器と、
を有することを特徴とする光波長多重伝送システム。
【請求項12】
前記送信器は、
前記第1および第2の光信号のうち少なくともいずれかを、略矩形のスペクトル形状を持つ光信号、ナイキストフィルタリングを施した光多値変調信号、複数の光キャリアをそれぞれ情報信号によって変調したマルチキャリア信号、または光OFDM信号のいずれかとして送信し、
前記受信器は、
前記光波長多重伝送装置が出力する光信号を、前記光信号と等価な波長スペクトルを有する電気信号に変換し、前記電気信号に含まれる特定の波長帯域内の信号のみを選択的に受信する
ことを特徴とする請求項11記載の光波長多重伝送システム。
【請求項13】
前記受信器は、
コヒーレント検波を用いて前記光波長多重伝送装置が出力する光信号を受信する
ことを特徴とする請求項12記載の光波長多重伝送システム。
【請求項14】
波長スペクトル上の波長帯域が前記波長スペクトル上において波長帯域間隔が略ゼロで互いに隣接している第1および第2の光信号を波長多重化して光ファイバ伝送路を介して伝送する光波長多重伝送方法であって、
前記第1および第2の光信号のうちいずれかを選択して第1および第2の前記光ファイバ伝送路のうちいずれかに分配する波長選択スイッチングステップを有し、
前記波長選択スイッチングステップでは、
前記第1光信号を前記第1光ファイバ伝送路に出力する際の第1透過帯域の透過帯域幅が、前記第1光信号の波長スペクトル幅または割当周波数幅より大きくなり、かつ前記第2光信号を前記第2光ファイバ伝送路に出力する際の第2透過帯域の透過帯域幅が、前記第2光信号の波長スペクトル幅または割当周波数幅より大きくなるように、前記分配を実施し、
前記分配を実施する際に、前記第1透過帯域の中心波長から前記第2透過帯域へ向かう側の終端までの前記第1透過帯域の透過帯域幅と、前記第2透過帯域の中心波長から前記第1透過帯域へ向かう側の終端までの前記第2透過帯域の透過帯域幅との和が、前記第1光信号の中心波長から前記第2光信号の中心波長までの波長スペクトル幅よりも大きくなるようにする
ことを特徴とする光波長多重伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−106187(P2013−106187A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248677(P2011−248677)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】