説明

波長調節可能な表面プラズモン共振センサ

本発明は、プローブ領域の組成の変化を検出し、画像化し、そして特徴付けする方法、装置および装置コンポーネントを提供するものである。より詳しくは、本発明は、検出面、好ましくは、表面プラズモン形成を支える導電性薄膜よりなる検出面の近傍に位置するプローブ領域の屈折率の変化を検出する方法および装置を提供する。さらに、本発明は、プローブ領域に表面プラズモンを発生させると共に、プローブ領域の1つ以上の表面プラズモン共振曲線および/または表面プラズモン共振画像を生成することによってプローブ領域の組成の特徴付けを行う方法および装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
表面プラズモン共振(SPR)顕微鏡法は、表面プラズモン(SP)の励起を利用して検出面近傍のプローブ領域の化学的・物理的変化を検出する技術である。金属薄膜の表面に生じる極薄膜の厚さおよび屈折率に関する特徴付けを行う高感度手段を提供するSPR技術に基づいた種々のセンサが開発されている。近年、SPセンサは、種々の生体物質の化学的性質および物理的性質の特徴付けを行い、かつ結合事象をリアルタイムで探査するために、手広く開発されている。例えば、SPセンサは、一連の表面の形態・構造を特徴付けし、タンパク質間、タンパク質とDNAとの間およびタンパク質と小分子との間の相互作用の動態および動力学を探査し、抗体−抗原結合を監視し、またDNAハイブリダイゼーション過程の特徴付けを行うために成功裏に使用されている。
【0002】
表面プラズモンは、表面プラズモン波またはプラズモンポラリトンとしても知られており、導電性薄膜または半導性薄膜と誘電体試料層との間の界面と平行に伝播する電荷密度波である。SPは、入射フォトンからの放射エネルギーを金属のような導電性材料または半導体材料中に存在する自由電子の振動モードに結合することによって発生する。SPは、導電層(または半導電層)の表面に高度に局在化しており、SPの電界強度は、SPが伝播する平面に直角な方向に指数関数的に減衰する。SPの空間分布は、SPの強度が導体(または半導体)−誘電体試料層間界面におけるその値のe−1に減衰する距離に相当する特性減衰長によって定量的に説明することができる。減衰長(L)は次式によって与えられる:
【0003】
【化3】

式中、Reは括弧内の量の実部を表し、kspは表面プラズモン波動ベクトルであり、kは導体(または半導体)近傍の誘電体試料層の波動ベクトルである。誘電体試料層が水よりなり、導電性薄膜が金よりなる場合、波長が約632.8nm(ナノメートル)の光における減衰長は約83.1nmに等しい。SPは、高度に局在化しているという性質があるために、検出面に非常に近い(≦約300nm)検出領域で起こる屈折率の非常に小さな変化を検出するのに最適な存在となっている。
【0004】
従来のSPR法では、SPは、入射光ビームの全反射時に発生するエバネッセント電磁波によって励起される。クレッチュマン−レーテル(Kretschmann−Raether)幾何学によれば、エバネッセント電磁波は、高屈折率の誘電体層と低屈折率の誘電体層との間に置かれた金属薄膜(約50nm)を透過してSPを励起し、SPは低屈折率の誘電体層に近い金属薄膜の表面と平行に伝播する。入射励起光と表面プラズモンとの間に波動ベクトルマッチング条件を達成するには、プリズムが必要である。所与の誘電体試料において、ある波長を持ちある角度で入射するフォトンは、金属層を透過して金属−誘電体試料間界面の表面プラズモンを励起するエバネッセント波を生じさせる。したがって、反射光の強度が低下し、これをSP発生を示す信号として監視することができる。他方、オットーSPR構成の場合は、金属層とプリズムが空隙によって分離され、SPは、近い金属薄膜のプリズムに近い側が励起される。オットーSPR構成の欠点は、空隙を非常に薄くかつ一定の厚さに保つことが実験的に困難ということである。最後に、他のSPR法では、表面プラズモンは、光が金属薄膜内層を有する光ファイバまたはウェーブガイドに沿って伝播する際にエバネッセント場によって作り出される。
【0005】
全反射を介してのSPの励起は、入射光の波動ベクトル(すなわち、入射光ビームの波長および入射角の両方)に従属する共振現象である。さらに、SPの励起は、放射エネルギーを導体中に存在する自由電子の振動モードに結合するために使用される高屈折率の誘電体試料層、低屈折率の誘電体試料層および導電性薄膜(または半導性薄膜)の屈折率および厚さに従属する。SPの分散方程式は次式で与えられる:
【0006】
【化4】

式中、kは自由空間波動ベクトル(k=ω/c)、εおよびεは、それぞれ、導電性薄膜(または半導性薄膜)および低屈折率誘電体試料層の複素誘電率、ωは角振動数(角周波数)である。SPを励起する共振条件は、入射波動ベクトルの平行成分(kpar)が表面プラズモン波動ベクトル(ksp)と等しくなければならないということである:
par=ksp (III)
入射波動ベクトルの平行成分は、光が入射する媒体の屈折率n、入射角θ、および入射光ビームの波長λの関数として、SPの形成に関する次式により表される:
【0007】
【化5】

式IIおよびIVを式IIIに代入すると、入射光ビームの入射角および波長によって表面プラズモン形成の共振条件を表す次の関係式が得られる:
【0008】
【化6】

上式Vから明らかなように、所与の金属薄膜の膜厚および誘電体層の屈折率の集合に関して、共振条件は、入射光ビームの入射角かまたは波長の変動あるいはこれらの両方の変動によって満たされる。
【0009】
SPの分散関係式、すなわち上記の方程式IIを導き出すには、表面プラズモン発生が行われるために満足されなければならないさらに2つの条件が明らかに存在する。第一に、SPはp偏光されており、そのためにp偏光入射光によってしか励起することができない。第二には、SPは反対極性符号の実誘電率を持つ媒体で形成された界面でしか支えられない。
【0010】
前出の式II〜Vによって示されるように、金属薄膜近傍の誘電体試料層の屈折率の変化は、SP発生の共振条件を変化させる。この共振条件の変化を、入射光ビームの入射角または波長あるいはこれらの両方の関数として反射光ビームの強度を測定することにより、直接監視することができる。共振条件満足の結果として、金属薄膜と低屈折率誘電体層との界面における入射光ビームの放射エネルギーのSPへの転換により、反射光ビーム強度の急激な減衰が起こる。SPは、その空間的局在性の故に、光ルミネッセンス性物質を励起するためにも使用されてきた。詳しく言うと、SPからのエネルギーが、蛍光または光ルミネッセンスをもたらす電子遷移励起を生じさせるようにして、光ルミネッセンス性物質に結合される。検出面との光伝達関係が得られる位置に別途の検出器を設けて、SPR過程によって送り込まれる物質の蛍光の強度を測定することができる。減衰反射率SPR法とSPR誘起蛍光法の組合せによって、センサ表面で起こる化学的・物理的変化の特徴付けを行う高感度手段が得られるということが実証されている。
【0011】
SPRに基づくセンサは、SPRの共振条件が金属(または半導体)薄膜の近傍に位置する低屈折率誘電体試料層の屈折率の変化に従属することを利用する。通常のセンシング技術への応用においては、SP形成の共振条件の変化をリアルタイムで監視し、金属(または半導体)薄膜の近傍の検出面で起こる化学的変化または物理的変化と直接関連づけることが行われる。SPRに基づくセンサでは、検出面の化学的性質または物理的性質を処理、操作することによって材料および化合物の選択検出も可能になる。これらの用途においては、検出しようとする特定の物質の存在下で屈折率が変化するように、検出面を選択結合特性を示す材料で被覆することもできる。例えば、検出面は、特定の抗体に対する抗原で被覆することによってその抗体に対して反応性を持つようにすることができる。これらの原理を用いて、SPR検知技術は、これまで、BIAcore,Inc.社製のセンサおよびスクリーニング装置を含む市販の多くの生物学的センシングデバイスに成功裏に組み込まれている。
【0012】
一般に、SPRの光学的構成は、(1)電磁放射源、(2)第1の屈折率を有する光透過性構成材、(3)該光透過性構成材の該第1の屈折率より小さい第2の屈折率を有する誘電体試料層(またはプローブ領域)、(4)該光透過性構成材と該誘電体試料層(プローブ領域)との間に位置する導電性薄膜または半導性薄膜、および(5)検出器よりなる。この構成においては、入射光ビームは、光透過性構成材と導電性薄膜との間の界面で全反射を起こすような入射角度で透明領域を透過する。その反射光ビームを集光し、その強度を時間の関数として測定できる検出器へ導く。前出の式II〜Vで簡単に説明した共振条件が満たされると、放射エネルギーは、導電性薄膜または半導性薄膜と誘電体試料層との間の界面でSPに変換され、その結果、反射した入射光ビームの強度に測定可能な減少が生じる。
【0013】
SPRに基づくセンサは、いくつかの異なる光学的構成を用いることが可能である。光学的構成の例としては、下記の文献に記載されたものがあり、これらの文献は、本願と相反しない程度において、参照により全面的に本願に援用される:Rothenhausler,B.およびW.Knoll(1988年)、「表面プラズモン顕微鏡法(Surface−plasmon microscopy)」、Letters to Nature332(14);615−617;Hickel,W.およびW.Knoll(1990)、「脂質層の表面プラズモン顕微鏡法による研究(Surface plasmon microscopy of lipid layers)」、Thin Solid Films187:349−356;Hickel,W.およびW.Knoll(1991)、「ラングミュア−ブロジェット多層集成体の時間・空間分解表面プラズモンによる光学的研究(Time and spatially resolved surfaceplasmon optical investigation of the photodesorption of Langmuir−Blodgett multilayer assemblies)」、Thin Solid Films 199:367−373;de Bruijn,H.E.、R.P.H.Kooyman他(1992)、「表面プラズモン共振センサ用の金属および波長の選択;若干の考察(Choice of metal and wave length for surface−plasmon resonance sensors;some considerations)」、Applied Optics 31(4):440−442,de Bruijn,H.E.、R.P.H.Kooyman他(1993)、「表面プラズモン共振顕微鏡法、物体の回転による分解能の向上(Surface plasmon resonance microscopy;improvement of the resolution by rotation of the object)」、Applied Optics 32(13):2426−2430;Berger,C.E.H.、R.P.H.Kooyman他(1994)、「表面プラズモン顕微鏡法における分解能(Resolution in surface plasmon microscopy)」、Review of Scientific Instruments 65(9):2829−2837および;Brockman,J.M.、B.P.Nelson他(2001)、「極薄膜の表面プラズモン共振撮像測定(Surface plasmon resonance imaging measurements of ultrathin organic films)」、Annual Reviews of Physical Chemistry 51(1):41−47。
【0014】
SPRのセンシング技術への応用において最も一般的な構成では、実質的に単色光のコヒーレント入射光ビームの角度変調が用いられる。この技術では、入射角度を意図的に変化させて、実質的に単色光のコヒーレント入射ビームから得られる反射光ビームの強度を測定することにより表面プラズモン共振曲線を生成する。SP共振条件が満足されていれば、反射光ビーム強度対入射角度曲線の最小値に対応する入射光ビーム強度の測定可能な減衰が得られる。この最小値に対応する角度は、共振角度(θsp)と呼ばれ、導電層の表面近傍における屈折率に従属して変化する。導電層近傍の検出領域における物質の吸着または結合は、検出領域の屈折率を変化させ、θspの値に測定可能なずれを生じさせる。したがって、θspのずれを定量化することによって、検出領域における物質の組成および濃度の変化を観察し、特徴付けする高感度の手段がもたらされる。例えば、いくつかの研究によって、検出領域における共振角度のずれとタンパク質濃度との間には線形相関が存在するということが実証されている。
【0015】
角度変調SPR技術の有効性は実証されているにもかかわらず、これらの光学的構成には、いくつかの実際的制約がある。第一に、角度変調に基づく光学的構成は、入射光ビームの入射角度を選択可能に調節するための複雑な光学素子回転アセンブリを使用する必要がある。通常、このような回転アセンブリは、光源とビーム整形光学系と偏光光学系の組合せの回転および/または集光光学系と検出器の組合せ回転を可能にする。このような複雑な回転アセンブリを要する光学的構成は、高価であり、スペース的に制約され、また頻繁な保守およびアラインメント作業を必要とするので、好ましくない。第二には、複雑な光学素子回転アセンブリを使用すると、振動および周囲温度・圧力の変動によって生じる光学的アラインメント不良に計器がより影響されやすくなる。最後に、レーザのようなコヒーレント光源を角度変調SPR技術で使用すると、望ましくない反射光ビーム成分の光干渉が生じる。このような光干渉は、干渉縞を発生させ、これがSPR技術によって得られる像の光学的品質を大きく減じるので、好ましくない。
【0016】
SPRのセンシングセンシング技術への応用に共通するもう一つの光学的構成として、波長変調方式がある。波長変調方式の光学的構成においては、入射角を固定し、入射光ビームの波長を意図的に変化させた際の反射光ビームの強度を監視する。これらの技術では、入射光ビームの波長を意図的に変化させて、反射光ビームの強度を測定することにより表面プラズモン共振曲線を生成する。反射光ビーム強度対波長曲線の最小値に対応する波長は、共振波長(λsp)と呼ばれ、共振条件の満足点を指示すると共に、導電層の表面近傍の検出領域における屈折率に従属して変化する。したがって、λspのずれを定量化することによって、検出領域における物質の組成および濃度の変化を観察し、特徴付けする高感度の手段がもたらされる。SPR波長変調技術は、一般に、一定の入射角度を使用し、したがって、かさばる光学素子回転アセンブリを必要としない。
【0017】
SPRのセンシングセンシング技術へのもう一つの応用は、SPR撮像(イメージング)技術であって、入射光ビームの反射率の空間差を時間の関数として測定するようにした技術である。この技術においては、SPの励起に単色平行光ビームを使用し、プローブ領域に対応する反射光を電荷結合素子またはカメラのような二次元アレイ検出器によって監視する。測定した反射光強度の二次元分布を観察することによって、プローブ領域における組成の差をリアルタイムで監視する。プローブエリアの一定の領域に吸収または結合された物質の厚さおよび屈折率がSPの共振条件を満たして、効率的なSP形成をもたらすことが起こり得る。したがって、その場合、これらの領域は減衰した反射光強度を呈することになる。これに対して、プローブエリアの他の領域は、SPの共振条件を満たさない屈折率を持つ吸収または結合された物質よりなり、その結果効率的なSP形成が行われないことが起こり得る。そのために、これらの領域は高い入射光ビームの反射率を呈することになる。異なる化学的・物理的性質を有する領域にこのような反射率の差があることによって、プローブエリア全体の特徴を示す像が得られる。SPRシステムの撮像角度または波長を変えることによって、プローブエリアにおける領域間の最大のコントラストを得ることができる。
【0018】
Brockman,J.M.、B.P.Nelson他(2001)「極薄有機膜の表面プラズモン共振撮像測定(Surface plasmon resonance imaging measurements of ultrathin organic films)」、Annual Reviews of Physical Chemistry51(1):41−47には、SPR撮像技術により生成される像の質および感度を改善するという光学的構成が記載されている。これらの著者は、平行白色光源、偏光子、プリズム−金薄膜試料アセンブリ、狭帯域干渉フィルタおよび電荷結合素子(CCD)カメラからなる光学的構成を開示している。この文献には、異なる波長の励起光を通す5つの異なる干渉フィルタに対応した5つのSPR画像が説明されている。著者等は、適切な透過特性を持つ干渉フィルタを選択することによってSPR画質を最適化することが可能であると述べているが、開示された方法は、異なる干渉フィルタの手作業による取外しおよび装着によって時間のかかる画質調整作業を繰り返し行う必要がある。著者等の方法は、基本的に、角度走査法によってプローブ領域における試料の最適コントラストを得るという考え方に基づいている。その上、光干渉フィルタの取り出しおよび装着の都度、励起および検出のための光学機構のアラインメント作業が必要になる。さらに、上記文献の開示事実は、離散的な検出波長選択を可能にする光学的構成に限定されており、励起波長または検出波長を連続値域にわたって同調できるようにする手段をもたらすものではない。最後に、これらの文献開示の方法では、試料がCCDカメラによっては検出されない波長を持つかなり高い強度の光に曝されるが、このような光はSPR画像形成には寄与せず、プローブ領域の物質を損傷することが起こり得る。
【0019】
以上の説明から、角度変調SPR、特に複雑な回転アセンブリを持つ角度変調SPRの光学的構成を使用しないで導電性薄膜(または半導性薄膜)にSPを発生させる方法および装置がまぎれもなく必要とされているということは理解されよう。さらに、連続同調可能なインコヒーレント(非干渉性)光源を有する波長変調SPRセンシングおよび/または撮像のための方法および装置が必要とされている。最後に、光干渉の問題が解消され、感度および分解能が改善された同調可能なSPR測定器も必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の要約)
本発明は、プローブ領域の組成の変化を検出し、画像化し、そして特徴付けする方法、装置および装置コンポーネントを提供するものである。より詳しくは、本発明は、検出面、好ましくは、SP形成を支える導電性薄膜よりなる検出面の近傍に位置するプローブ領域の屈折率の変化を検出する方法および装置を提供する。さらに、本発明は、プローブ領域に表面プラズモンを発生させると共に、プローブ領域の1つ以上の表面プラズモン共振曲線および/または表面プラズモン共振画像を生成することによってプローブ領域の組成の特徴付けを行う方法および装置を提供する。本発明の方法および装置は、分子やイオンのような化学種のプローブ領域、特に選択された結合親和性および/または他の選択された化学的性質または物理的性質を持つプローブ領域への吸着、吸収または結合を検出し、特徴付けするために使用することができる。さらに、本発明は、SP形成に必要なSPRの発生および/またはSP共振波長の変化を時間の関数として、特に物理変化および/または化学変化を経るプローブ領域との関連において検出することができる波長同調可能なSPRセンシングデバイスおよび撮像デバイスを提供するものである。本発明の波長同調可能なSPRセンシングデバイスは、検出面に接触したあるいは検出面近傍の溶液中の種を検出するために使用することができる。
【0021】
本発明の目的は、角度変調を必要としない同調可能なSPRセンシングデバイスおよび撮像デバイス、特に従来の角度変調SPRの光学的構成におけるような入射角を変えるための複雑な光学素子回転アセンブリを必要としないデバイスを提供することにある。本発明のもう一つの目的は、光干渉の発生を最小限に抑えることができる方法および装置、特にSPR画質を低下させ、SPR検出測定値を不明瞭にする干渉縞やスペックルの発生をなくすることができる方法および装置を提供することにある。本発明のさらにもう一つの目的は、蛍光ラベリングあるいは放射性ラベリングプロセスのような検出前ラベリングプロセスを必要としない原子、分子、イオンまたは原子、分子およびイオンの集団のような物質を検出する方法および装置を提供することにある。
【0022】
本発明は、一態様において、プローブ領域の屈折率の変化を検出し、監視し、そして特徴付けする波長同調可能な表面プラズモン共振センサする。本発明の波長同調可能な表面プラズモン共振センサは、選択調整可能な波長分布を持つ励起光および/または検出光をもたらす。一例の波長同調可能な表面プラズモン共振センサは、インコヒーレント多色光源、偏光子、SPR光学アセンブリ、検出器および選択調整可能な波長セレクタよりなる。これらの実施例では、多色光源は、偏光子およびSPR光学アセンブリとの光伝達関係をもって配設される。光源より発生した光は、入射光伝播軸沿いに伝播して偏光子に導かれ、これを透過して、選択された偏光方向を持つ光、好ましくは十分にp偏光またはs偏光された光を生じる。本発明における好ましい偏光子は、p偏光方向とs偏光方向を持つ入射光を容易に切り換えられる手段をもたらす偏光子である。選択された偏光方向を持つ光をSPR光学アセンブリに入射するように導く。一実施例において、SPR光学アセンブリは、誘電体層、誘電体試料層および該誘電体層と該誘電体試料層との間に設けられた導電層よりなる。導電膜(導電層)近傍の誘電体試料層はプローブ領域をなす。本発明の実施例のSPRセンサは、さらに、多色光源とSPR光学アセンブリとの間に配設されていて該SPR光学アセンブリに導かれた光ビームを平行光線にするための1つ以上のコリメーション光学素子を有する。
【0023】
SPR光学アセンブリを全反射になる入射角で照光すると、反射光伝播軸沿いに伝播する光が生じる。いくつかの構成例では、入射光伝播軸沿いに伝播する光または反射光伝播軸沿いに伝播する光を、光源と検出器との間の光路に配設した選択調整可能な波長セレクタに通す。一実施例においては、選択調整可能な波長セレクタは、プローブ領域近傍の導電層の表面に表面プラズモンを発生させるよう選択された透過波長分布を持つ光を透過させる。反射光伝播軸沿いに伝播する光を検出器で検出することにより、プローブ領域の屈折率が検出される。任意態様として、反射光伝播軸に沿って伝播する光を集光素子で集光し、検出器に集中させることによって、検出感度および分解能を改善することも可能である。
【0024】
一実施例において、本発明は、SPR光学アセンブリから反射された入射光のp偏光波の反射率を定量化する手段を提供する。一実施例では、SPR光学アセンブリを偏光子の選択調整によりp偏光波およびs偏光波で交番照光する。SPR光学アセンブリをSPの共振条件を満たす波長を有するp偏光波で照光すると、放射エネルギーがSPに変換され、これによって反射p偏光波の強度が低下する。s偏光波はSP形成につながらないので、反射p偏光波の強度低下は、SPR光学アセンブリの交番照光より得られる検出されたp偏光波およびs偏光波強度を十分にp偏光およびs偏光された光ビームの強度と比較することによって、反射率で特徴付けすることが可能である。
【0025】
本発明においては、選択調整可能な波長セレクタは、SPの共振条件を特徴付けし、SP形成に必要な共振波長を測定するのに有用な波長同調機能性を提供する。さらに、本発明の選択調整可能な波長セレクタは、SPR法によりプローブ領域の屈折率の変化を検出するのに、角度変調を行う必要がない。本発明のこの態様との関連において、波長同調とは、入射光および/または検出光をSPの共振条件を満足する形で、またSP励起がもたらされる形で選択的に変化させることを意味する。SPの共振条件はプローブ領域の屈折率に従属するので、本発明の波長同調可能なSPRセンサは、組成、結合親和性および反応性のようなプローブ領域の物理的・化学的性質を検出し、監視する手段を提供す。
【0026】
好ましい波長セレクタは、選択調整可能な透過波長分布が得られる波長セレクタである。本発明における光の透過波長分布は、中心波長、帯域幅および波長強度分布特性図によって特徴付けすることができる。本発明の波長セレクタのいくつかの例では、透過波長分布の中心波長を連続値にわたって選択的に調整可能である。本発明においては、波長セレクタを透過する光の中心波長、帯域幅および/または波長強度分布特性図は、SPR検出測定の感度または分解能を高めるように選択することができる。別の態様として、波長セレクタを透過する光の波長分布の中心波長、帯域幅および/または波長強度分布特性図を選択することによってSPR画質を改善する(すなわち、プローブ領域の異なる部分内における最適屈折率コントラストを得る)ことも可能である。
【0027】
SP形成を観察し、SPの共振条件を特徴付けし、あるいはSP共振波長を測定するために、本発明のSPRセンサいくつかの例では、SPR光学アセンブリから反射された光の強度低下を監視する。本発明の選択調整可能な波長セレクタは、検出される光の波長を調整する手段をもたらす。これによって、共振波長を正確に測定することが可能となり、また反射光強度を波長セレクタを透過する光の波長の関数として測定することによりSP共振曲線の特徴付けを行うことも可能になる。検出された光の波長を選択的に調整できることによって、本発明のこの波長同調可能なSPRセンサという機能が得られる。したがって、本発明の選択調整可能な波長セレクタは、多色光源から検出器に至る平行光線の光路内の任意の位置に配設することができる。一実施例においては、選択調整可能な波長セレクタは、多色光源とSPR光学アセンブリとの間に配設されて、SPR光学アセンブリに導かれて検出される励起光の波長分布の選択調整が行えるようになっている。もう一つの実施例では、この選択調整可能な波長セレクタは、SPR光学アセンブリと検出器との間に配設されて、検出器に導かれて検出される波長分布の選択調整が行えるようになっている。また、本発明のいくつかの実施例は、上記のセレクタに加えて、多色光源と検出器間の光路沿いの任意の位置に配設された選択調整可能な波長セレクタを具有する。選択調整可能な波長セレクタを光源とSPR光学アセンブリとの間に配設することの一つの利点は、検出器により検出される波長を持った光にしかSPR光学アセンブリが曝されないことである。光学アセンブリに導かれる光の強度の低下は、照光による光学アセンブリの温度上昇を回避する上において有利である。このような光学アセンブリの温度変化は、プローブ領域の屈折率を変化させ、SPR検出測定値および画像を不明瞭にする原因になり得る。
【0028】
本発明で使用可能な選択調整可能な波長セレクタは、選択された透過波長分布を透過させ、他の光波長の透過を実質的に阻止することができる任意のデバイスまたはデバイスコンポーネントで構成することができる。本発明の一実施例においては、波長セレクタは、入射面に対して直角な(また、入射光伝播軸あるいは反射光伝播軸に対して直角な回転軸の回りに回転調整可能な光干渉フィルタである。この実施例では、光干渉フィルタの回転が、光干渉フィルタを透過する光の波長分布、特に透過波長分布の中心波長を選択的に調整する。本発明における選択調整可能な波長セレクタの例としては、光干渉フィルタ、エタロン、ファブリ−ペロのエタロン、モノクロメータ、スペクトロメータ(分光計)、プリズム、格子および線形可変干渉フィルタを使用することができるが、これらに限定されるものではない。好ましい選択調整可能な波長セレクタは、共振波長を測定するのに必要な中心波長域にわたって実質的に同じ正味透過率をもたらす波長セレクタである。また、好ましい選択調整可能な波長セレクタは、s偏光波およびp偏光波に関して透過特性が十分に特徴付けされた波長セレクタである。離散型波長操作方式では、波長同調を用いて、プローブ領域の異なる部分の最適コントラストをもたらすSPを発生させることができる。波長走査型操作方式では、SPR測定値または画像を取り込みながら透過波長分布の中心波長を連続的に変化させることができる。
【0029】
本発明のSPRセンサで選択調整可能な波長セレクタを使用することによって、励起光、検出光あるいはこれらの両方の波長分布について同調をとることが可能になる。本発明の装置および方法によれば、励起光、検出光またはこれらの両方の波長分布について、あるいは十分な波長帯、好ましくは少なくとも60nmにわたって、より好ましくは数100nmの波長帯にわたって連続的に同調をとることが可能になる。本発明のこの特質によってもたらされる波長同調機能性により、SPR共振条件の変化を時間の関数として検出し、特徴付けすることが可能になる。SPR共振条件の変化は、プローブ領域の屈折率と直接関連づけることができる。したがって、本発明の選択調整可能な波長セレクタによりもたらされる波長同調機能性よって、物理的・化学的特性の正確な定量化が可能になる。さらに、波長同調機能性によって、本発明のSPRセンサは広いダイナミックレンジを得ることができる。特に、本発明の波長同調可能なSPRセンサおよび撮像デバイスを使用すると、屈折率、厚さおよび化学組成が異なる非常に広範にわたる物質を検出し、特徴付けすることができる。さらに、本発明のSPRセンサで選択調整可能な波長セレクタを使用することにより、SPR共振条件の変化を検出する、または共振波長あるいは共振波長の分布を測定するのに角度変調を行う必要がなくなる。角度変調SPRによる光学的構成を使用しないことは、これらの構成は、通常、スペース的制約があり、高価であり、また振動や周囲の圧力および温度の変化に起因するアラインメント不良に敏感である複雑な回転光学アセンブリを必要とするので、得るところが少なくない。さらに、複雑な回転アセンブリを有する光学幾何条件が省かれることは、このようなアセンブリは頻繁な較正およびアラインメント作業を必要とするという点で、有利である。
【0030】
本発明における非干渉性の多色光源の使用にはいくつかの利点がある。第一に、インコヒーレント(非干渉性)光源の使用によって、励起光ビームおよび反射光ビームより発生する光ビーム成分の光干渉の問題が回避される。光干渉作用は、干渉縞およびスペックルの形成によってSPR検出測定値および画像を大きく損ねる可能性がある。さらに、ハロゲンランプのようなインコヒーレント光源は安価であり、光強度に高い再現性があり、光学的アラインメントが容易である。
【0031】
本発明の方法および装置は、どのようなSPR光学アセンブリの構成に幅広く適用可能である。本発明で使用可能なSPR光学アセンブリのいくつかの例は、クレッチュマン光幾何学またはオットー光幾何学に従い配置構成されたプリズムと接触する金属薄膜および誘電体試料層よりなる。あるいは、本発明のセンサに、ウェーブガイド、光ファイバデバイス、光学格子あるいはこれらの光学素子の任意の組合せよりなるSPR光学アセンブリを使用することも可能である。
【0032】
本発明の方法および装置では、SPを発生させることができる任意の波長の光を使用することができる。電磁スペクトルの近赤外域の波長(約800nm〜約1,200nm)を持つ光は、より周波数の高い可視光を使用する技術と比べてより高い屈折率感度が得られるので、一部のSPRの撮像用途においては、このような近赤外域の光を用いることが望ましい。さらに、探査中のプローブ領域中に可視域の光を吸収する種が含まれているある種の用途においては、近赤外線を使用すると有利な場合がある。いくつかの実施例では、本発明のSPRセンサおよび/または撮像デバイスで使用する光の波長は、約845nm〜約857nmの範囲にわたって選択する。
【0033】
本発明の波長同調可能なSPRセンサは、種々の異なる動作モードで動作させることができる。SPRの動作モードは、いろいろな種類のSPR測定、これらの本発明の装置のいろいろな機能的態様およびこれらの装置を使用するいろいろな方法に対応する。本発明のSPRセンサのいくつかの例は、複数の動作モードで動作することができる。
【0034】
一つの動作モードにおいて、本発明のSPRセンサはSP形成を生じる共振波長分布を測定することができる。一実施例においては、選択調整可能な波長セレクタを調整することによって、SP共振曲線を生成するよう検出光の波長分布を意図的に変化させる。本発明の方法および装置により生成される好ましいSP共振曲線は、波長セレクタを透過する光の波長分布における反射率対中心波長の二次元プロットである。共振条件はプローブ領域の屈折率に強く従属するので、共振波長または共振波長分布の定量化により、プローブ領域の組成に関する情報が得られる。
【0035】
もう一つの動作モードにおいては、本発明のSPRセンサは、SP形成に必要な共振波長または共振波長分布の変化を監視することができる。共振波長分布の変化を監視することは、化学種のプローブ領域の部分への結合による変化のようなプローブ領域で起こる屈折率および組成の変化に関する情報が得られるので有益である。一実施例においては、SPRセンサは、SPの形成および反射光の減衰をもたらす透過波長分布の選択を行うことによって波長同調させる。反射光の強度および/または反射率を、観察期間にわたり時間の関数として監視する。プローブ領域の屈折率および化学組成の変化に対応する共振条件の変化を、反射光の強度および/または反射率の変化を測定することによって観察し、特徴付けする。別の態様として、本発明のSPRセンサは、いろいろな観察期間および/またはいろいろな実験条件に対応する複数の共振曲線を生成することによって、共振波長または共振波長分布の変化を測定することができる。測定された共振波長または共振波長分布のずれは、プローブ領域で起こる組成の対応する変化と直接関連づけることができる。これらの実施例における選択調整可能な波長セレクタの使用は、共振波長または共振波長分布のずれを正確に定量化するのに効果的である。
【0036】
もう一つの動作モードでは、本発明の波長同調可能なSPRセンサは、SPR撮像デバイスとして動作することができる。この実施例においては、SPRセンサは、電荷結合素子または二次元ダイオードアレイのような二次元検出器を用いることができる。一実施例においては、1つ以上のSPを励起することができる波長分布を持つp偏光ビームをSPR光学アセンブリに導き、反射光強度の第1の二次元分布を測定する。この反射光強度の二次元分布はプローブ領域の画像をなす。いくつかの実施例では、本発明の光源と波長セレクタの組合せは波長従属性の透過強度を生じるので、反射p偏光波の強度分布を正規化して最適SPR画像を得なければならない。この効果を相殺する本発明の方法では、s偏光ビームをSPR光学アセンブリに導き、反射光強度の第2の二次元分布を測定する。p偏光方向とs偏光方向の切り換えは、好ましくは、多色光源とSPR光学アセンブリとの間に配設された偏光子を調節することによって行う。第1と第2の二次元反射光強度分布の比較によって、プローブ領域を特徴づけるSPR画像が生成される。本発明の方法および装置により生成される好ましいSPR画像は、測定反射率の二次元分布よりなる。一実施例においては、SPR画像は、本発明で使用する波長セレクタのs偏光およびp偏光透過特性、特に回転角度の関数として変化する透過特性の差が補正される。選択調整可能な波長セレクタを本発明のSPR撮像デバイスで使用することは、改善された光学的品質および鮮鋭度を持つ画像が得られるよう選択された透過波長分布を持つ光を透過するのに効果的である。さらに、本発明のSPR撮像デバイスおよび方法は、光反射領域と減衰反射領域との間に高コントラストを呈する画像を生成することができる。
【0037】
もう一つの態様において、本発明は、プローブ領域における化学種間の化学的または物理的相互作用を検出し特徴づける方法を提供する。特に、本発明のSPRセンサは、フローセルまたはフローリアクタのようなリアクタに作用関係をもって結合された誘電体試料層を持ち、原子、分子あるいはイオンのような化学種を効果的に誘電体試料層およびプローブ領域に導入できるものを使用することが可能である。いくつかのリアクタの例は、プローブ領域と接触する他の送給媒体(delivery medium)の溶液中に化学種の流れを作り出すことができる。プローブ領域は、選択結合親和性、化学反応性および/または物理的性質のような選択された化学的性質および/または物理的性質を呈するような形に構成することができる。例えば、第2のプローブ領域は、リアクタ表面に生体ポリマーのような1つ以上のターゲット化学種が固定されたリアクタよりなる構成とすることができる。一実施例においては、薄膜導電層の検出面を選択的親和性、反応性、結合性または他の化学的性質および/または物理的性質がえられるように化学修飾する。カルボキシメチル化デキストランのような選択された材料を導電層の表面に直接被着すると、タンパク質またはオリゴヌクレオチドのようなバイオポリマー(生体高分子)の本発明の検出面との共有結合が助長される。これらの実施例においては、1つ以上の相互作用種をリアクタに導入することによって、ターゲット種と相互作用種との間に結合、化学反応または物理的相互作用が起こり得、これによってプローブ領域の屈折率が変化する。本発明のSPRセンサを使用してプローブの屈折率の変化を検出することができ、これによってターゲット化学種と相互作用種との化学的あるいは物理的相互作用の性質を特徴づけることができる。
【0038】
一実施例において、SPRセンサは、相互作用種の導入前に、プローブ領域の屈折率に対応する少なくとも1つの基準測定値を生成する。相互作用種をリアクタに導入してプローブ領域中のターゲット種と相互作用させる。SPRセンサが少なくとも1つの分析測定値を生成し、これを基準測定値と比較することによって該プローブ領域の屈折率の変化を検出する。一実施例においては、分析測定値を繰り返し取得して互いに比較することにより、屈折率の変化を時間の関数として特徴づける。このような変化を、相互作用種とターゲット種との間の相互作用の化学的・物理的特質と関連づけることができる。本発明のいくつかの実施例の方法は、ターゲット種と相互作用種との間の相互作用を特徴づける結合親和性、速度定数、平衡定数および熱力学的パラメータを測定することができる。
【0039】
本発明のSPRセンシング・撮像の方法および装置は、屈折率を変化させることができるほとんどすべての物質を検出し、特徴づける用途に適用可能である。詳しく言うと、本発明の方法は、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、糖タンパク質、DNA、RNA、多糖類および脂質並びにこれらの集集団のような生体ポリマーを含む(ただしこれらに限定されない)化学種を検出するのに特に有用である。本発明の方法および装置の長所は、時間がかかり、高価で、ラベリングした化学種の化学的性質および/または物理的性質に大きく影響する可能性がある検出前化学ラベリングプロセスを必要としない高感度の検出方法がもたらされるということである。本発明のセンシングおよび撮像方法の他の長所は、非常に高い時間分解能、約100fM(フェムトメートル)までの高感度が得られ、また非常に少量の試料しか必要としないということである。
【0040】
本発明は、SPの形成が関与する任意の測定技術または他のプロセスに適用可能な方法および装置を提供する。特に、本発明の装置の波長同調機能性は効率的なSP励起をもたらす。例えば、本発明の波長同調可能なSPデバイスは、SPRプローブ領域における光ルミネッセンス性物質の効果的励起を達成するために使用することができる。一実施例においては、本発明の装置を使用して、プローブ領域における化学種、特にプローブ領域に結合された化学種の蛍光遷移または燐光遷移を励起することができるSPを発生させる。これらの装置には、このような蛍光物質との光伝達関係をもって配置されていてSP誘起蛍光の強度を定量化することができる第2の検出器を設けることが可能である。別の態様として、本発明の波長同調可能なSPデバイスによれば、エネルギーを反応領域の物質に伝達して化学的または物理的変化を誘起する手段が得られる。
【0041】
もう一つの態様において、本発明は、下記のステップからなるプローブ領域の屈折率を検出する方法を提供する:(i)多色光源からの光を偏光子に通すことによって、入射光伝播軸沿いに伝播する光を発生させるステップ;(ii)誘電体層、誘電体試料層および該誘電体層と該誘電体試料層との間にある導電層からなる光学アセンブリへ該光を導くことによって、反射光伝播軸沿いに伝播する光を発生させるステップで、該導電層近傍の該誘電体試料層の部分がプローブ領域をなすステップ;(iii)該光を該光源と検出器との間の光路中に配設された選択調整可能な波長セレクタに通すステップ;(iv)該光を該検出器で検出することによって、プローブ領域の屈折率を検出するステップ;および(v)該誘電体試料層と接触する該導電層の表面に表面プラズモンを発生させるように選択される波長分布を持つ光を透過させるよう該選択調整可能な波長セレクタを調整するステップ。
【0042】
もう一つの態様において、本発明は、下記のステップからなるプローブ領域の画像を生成する方法を提供する:(i)多色光源からの光を偏光子に通すことによって、入射光伝播軸沿いに伝播する光を発生させるステップ;(ii)誘電体層、誘電体試料層および該誘電体層と該誘電体試料層との間に位置する導電層からなる光学アセンブリへ該光を導くことによって、反射光伝播軸沿いに伝播する光を発生させるステップで、該導電層近傍の該誘電体試料層の部分がプローブ領域をなすステップ;(iii)該光を該光源と検出器との間の光路中に配設された選択調整可能な波長セレクタに通すステップ;(iv)該光を該検出器で検出することによって、該プローブ領域の該画像を生成するステップ;および(vi)該誘電体試料層と接触する該導電層の表面に表面プラズモンを発生させるように選択される波長分布を持つ光を透過させるよう該選択調整可能な波長セレクタを調整するステップ。
【0043】
もう一つの態様において、本発明は、下記のステップからなるプローブ領域の屈折率の変化を検出する方法を提供する:(i)多色光源からの光を偏光子に通すことによって、入射光伝播軸沿いに伝播する光を発生させるステップ;(ii)誘電体層、誘電体試料層および該誘電体層と該誘電体試料層との間に位置する導電層からなる光学アセンブリへ該光を導くことによって、反射光伝播軸沿いに伝播する光を発生させるステップで、該導電層近傍の該誘電体試料層の部分がプローブ領域をなすステップ;(iii)該光を該光源と検出器との間の光路中に配設された選択調整可能な波長セレクタに通すステップで、該誘電体試料層と接触する該導電層の表面に表面プラズモンを発生させるように選択される波長分布を持つ入射光を透過させるよう該選択調整可能な波長セレクタを調整するステップ;(iv)該光を該検出器で検出することによって、少なくとも1つの基準測定値を生成するステップ;(v)該光を該検出器で検出することによって、少なくとも1つの分析測定値を生成するステップ;および(vi)該基準測定値と該分析測定値とを比較して該プローブ領域の屈折率の変化を検出するステップ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
(発明の詳細な説明)
添付図面において、同じ参照番号は同じ構成要素を指示し、2つ以上の図面に同じ参照番号が書かれている場合、それらの番号は同じ構成要素を指す。また、以下の説明において、用語は下記の定義に従うものとする。
【0045】
「化学種」とは、一般に、また広義に、中性かイオン化しているかを問わず、1つ以上の原子、分子および/または巨大分子の集まりを指す。特に、本発明において化学種に言及するとき、それはバイオポリマーを含む意味で用いられるが、これに限定されるものではない。液体試料の化学種は、酸、塩基、分子、イオン、錯体および溶媒和形を含め、種々の形で存在し得る。また、化学種としては、分子の非共有結合形集団も含まれる。さらに、化学種には、生体分子、すなわち、生体ポリマーを含めて生物源から得られる分子が含まれ、これらのいずれかあるいはすべては、上に掲げた形のものでも、あるいは2つ以上の分子の集団として存在するものでもよい。
【0046】
「透過波長分布」とは、光干渉フィルタ、モノクロメータあるいはスペクトロメータのような波長セレクタを透過する異なる波長を持つ光の強度の二次元分布を意味する。透過波長分布は、透過波長の中心波長、帯域幅および強度分布特性図によって特徴づけることができる。本発明においては、検出器によって検知された光の透過波長分布は、光源および選択調整可能な波長セレクタの光学特性の組合せによって測定する。一実施例では、SPR光学アセンブリに導かれる光および/または検出器により検出される光の透過波長分布は、実質的にガウス強度分布および最大強度の光の波長に対応する中心波長を持つ。本発明の波長同調可能なSPRセンサおよび撮像デバイスは、選択調整可能な透過波長分布を持つ励起光および/または検出光を生じさせる。
【0047】
「中心波長」は光の透過波長分布の一つの特性である。いくつかの実施例では、中心波長は透過波長分布における中間点の波長を意味する。他のいくつかの実施例においては、中心波長は、波長分布において最大強度を持つ透過波長を指す。また、他のいくつかの実施例では、中心波長は透過波長分布における平均波長を指す。中心周波数は、通常、ガウスまたはローレンツ強度分布特性を持つ波長分布の場合で、透過波長分布中の最大強度を持つ波長に相当する。
【0048】
「光源」とは、電磁放射を発生することができる装置または材料あるいは電磁放射を発生することができる複数の装置または材料を指す。本発明における好ましい光源は、電磁スペクトルの近赤外域(約800nm〜1,200nm)の光を発生することができる。SPR撮像およびセンシング用途における光干渉作用を回避するのに有用な一実施例の場合、本発明の光源は、インコヒーレント光を発生する。本発明の方法および装置で使用可能な光源としては、ハロゲンランプ、発光ダイオード、蛍光ランプ、タングステン電球、灰色体光源および黒体光源がある。
【0049】
「帯域幅」は光の透過波長分布の一つの特性である。帯域幅は、透過波長分布の強度分布曲線の半値幅、すなわち最大透過率の2分の1に等しい透過率における全幅によって定義することができる。本発明のいくつかの実施例においては、検出光の帯域幅は、主として、光干渉フィルタのような選択調整可能な波長セレクタの透過特性によって決まる。本発明の選択調整可能な波長セレクタのいくつかの例の透過帯域は約1nm〜約100nmの範囲、また一部の実施例でより好ましくは約1〜約20nmの範囲にわたって選択する。大きな帯域幅(>10nm)を特徴とする透過波長分布が得られる波長セレクタは信号対雑音比を大きくするのに役立ち、いくつかの実施例では、このような波長セレクタを使用する。
【0050】
「導電層」とは、金属のような導体材料、または半導体材料よりなる層を意味する。導電層は表面プラズモンの形成を支え、本発明では検出面として使用される。本発明における好ましい導電層は、薄い(<50nm)金層または銀層である。
【0051】
「誘電体試料層」とは、表面プラズモンをその上に有する導電層の表面近傍にある誘電体層を言う。本発明の誘電体試料層は、導電層の検出面に近接するプローブ領域を含む。本発明のプローブ領域は、表面プラズモンをその上に有する導電層の表面(検出面)の近傍にあって表面プラズモンの誘電体試料層中への減衰長によって定義される深さを持つある容積の部分よりなる。本発明のSPRセンサおよび撮像デバイスは、プローブ領域の屈折率の変化を検出し、監視し、そして特徴づけることができる。誘電体試料層およびプローブ領域は、物質を誘電体試料層および/またはプローブ領域に導入するためにフローセルおよび/またはフローリアクタと作用関係をもって接続することができる。これらの実施例では、フローセルまたはフローリアクタの流れ条件を選択することによって、誘電体試料層およびプローブ領域の組成を調整することができる。別の態様として、誘電体試料層およびプローブ領域は、スタティックセルおよび/またはスタティックリアクタと作用関係をもって接続することもできる。
【0052】
「選択調整可能な波長セレクタ」とは、波長セレクタを透過する光の波長分布を選択することができる装置、装置コンポーネントあるいは光学素子の組合せを言う。また、「選択調整可能な波長セレクタ」とは、波長セレクタの透過を阻止される光の波長分布を選択することができる装置、装置コンポーネントあるいは光学素子の組合せをも意味する。本発明の選択調整可能な波長セレクタは、中心波長、帯域幅および強度分布特性によって特徴づけられる透過波長分布を透過させることができる。本発明の選択調整可能な波長セレクタの例としては、光干渉フィルタ、エタロン、ファブリ−ペロのエタロン、光ファイバ干渉計フィルタ、光ファイバデバイス、光ファイバ・ファブリ−ペロフィルタ、モノクロメータ、スペクトロメータ、回折格子および/またはプリズム、スリットあるいはこれらの組合せを用いることができる。本発明の光干渉フィルタのいくつかの例は、入射光ビーム軸または反射光ビーム軸に直角な回転軸の回りの回転によって透過波長分布を選択的に調整することができる。
【0053】
「表面プラズモン共振センサ」または「SPRセンサ」は同義語として用いられ、表面プラズモンの励起を利用してプローブ領域の屈折率の変化を監視し、検出し、あるいは特徴づける何らかの装置または装置コンポーネントを意味する。一実施例においては、SPRセンサは、表面プラズモンがその上に局在する検出面に近接するプローブ領域の屈折率の変化を検出する。SPRセンサのいくつかの例は、プローブ領域の屈折率および/または組成に対応するプローブ領域の画像を生成することができるSPR撮像デバイスよりなる。別の態様として、本発明のSPRセンサは、導電層の1つ以上の表面に近接する光ルミネッセンス性物質を励起することができる表面プラズモンを発生する。
【0054】
「SPR光学アセンブリ」とは、放射エネルギーを表面プラズモンに結合することができる光学素子の任意の組合せを言う。一実施例において、本発明のSPR光学アセンブリは、クレッチュマンの光学的構成またはオットーの光学的構成をなすよう配設された誘電体層、誘電体試料層および導電層よりなる。あるいは、SPR光学アセンブリは、ウェーブガイド、光ファイバデバイスまたは回折格子で構成することもできる。本発明のSPR光学アセンブリは、プリズム、金薄膜、銀薄膜、半導体薄膜、フローリアクタ、スタティックリアクタ、マイクロ流体デバイス、流体チャンネル、光学的アラインメントシステム、回転ステージを含むいくつかの光学素子あるいはこれらの光学素子の任意の組合せで構成することができる。
【0055】
「傾斜角度」は、回転位置の一つの特性である。いくつかの実施例においては、傾斜角度は、入射光伝播軸または反射光伝播軸に関する垂直入射に対しての光干渉フィルタの相対回転方位を指す。詳しくは、傾斜角度は、入射光伝播軸または反射光伝播軸に対して測定した光干渉フィルタのような光学素子の表面の角偏移を言う。本発明の光干渉フィルタ表面のいくつかの例は、0°〜約60°、より好ましくは0°〜約35°の範囲の傾斜角度に配向することができる。
【0056】
以下の説明においては、発明の明確な本質の完全な説明を図るために本発明の装置、装置コンポーネントおよび方法の具体的な細部について数多く記載する。しかしながら、この技術分野の当業者にとって、本発明がこれらの具体的な細部説明なしでも実施可能であることは自明であろう。
【0057】
本発明は、検出面に近接するプローブ領域の屈折率および組成の変化を検出する方法、装置および装置コンポーネントを提供する。特に、一定入射角度でSPR状態を検出しSP共振曲線を生成することができる検出波長同調可能なSPRセンシングデバイスおよび撮像デバイスを提供する。さらに、本発明は、誘電体試料層のプローブ領域のSPR画像を生成する方法および装置を提供する。
【0058】
図1は、多色光源とSPR光学アセンブリとの間に選択調整可能な波長セレクタを設けた本発明のSPR撮像デバイスを図解した概略側面図である。図示例のSPR撮像デバイス100は、偏光子130との光伝達関係にある多色光源110、光干渉フィルタ140、SPR光学アセンブリ150および二次元検出器155よりなる。図1に示すように、図示例のSPR撮像デバイス100には、任意態様として、光源110と偏光子130との間に位置するレンズ175およびピンホール177よりなるコリメーション光学素子170を設けることができる。さらに、SPR撮像デバイスには、任意態様として、光学アセンブリ150と検出器155との間に位置する集光・撮像光学素子158を設けることができる。
【0059】
光源110からの入射光160は、コリメーション光学素子170によって平行光線となり、入射光伝播軸180に沿って伝播する。入射光160は、入射光軸180と交わる位置にあって入射光160の偏光状態を選択することができる偏光子130を透過する。偏光子130は、好ましくは、入射光160について実質的にp偏光方向またはs偏光方向を選択することができ、またその選択されるp偏光方向とs偏光方向を高速で切り換えることができるものである。変更後の入射光160の選択された透過波長分布は、入射光伝播軸180と交わる位置にある光干渉フィルタ140を透過する。図1の実施例においては、光干渉フィルタ140は入射光伝播軸180に直角な回転軸の回りに選択回転可能である(図1は全体的構成を示す概略図であり、光干渉フィルタ140の回転軸は図示していないが、図の紙面に直角な方向を有する)。図1には、光干渉フィルタ140の2つの異なる回転方位(回転位置)が示されている。この実施例では、透過光の波長分布は光干渉フィルタ140の回転によって選択可能に調整することができる。一実施例では、光干渉フィルタ140は、フィルタ面の入射光伝播軸に対する角度を選択的に変えられるよう、したがって、フィルタを通過する光の波長が変えられるように回転ステージ(図1では図示省略)上に取り付ける。したがって、光干渉フィルタ140の回転位置は、光学アセンブリ150へ導かれた後検出器155によって検出される光の波長分布を決定する。
【0060】
選択された波長200を持つ光は、プリズム210、薄膜導電層220、およびクレッチュマンの光学的構成をなすよう配設された誘電体試料層230よりなるSPR光学アセンブリ150に導かれる。本発明の好ましい薄膜導電層220は、厚さが約30nm〜約60nmの金層または銀層である。好ましい誘電体試料層230はプローブ領域270を有し、このプローブ領域は、フローセル、スタティックセル、フローセルリアクタまたはスタティックセルリアクタのような物質を薄膜導電層220の表面に近接するプローブ領域270に導入することができるリアクタまたはセルに作用関係をもって結合されている。SPR光学アセンブリ150を全反射を生じさせる入射角で照光すると、反射光伝播軸250に沿って伝播する光240が発生し、この光が二次元検出器155によって検出される。任意態様として、光学アセンブリ150からの光を検出器による検出前に集光・合焦素子(collection and focusing element)158により集光することによって検出感度および分解能を高めることも可能である。
【0061】
SPR共振条件を満足する波長を持つ光の少なくとも一部は、光学アセンブリ150によって反射されない。むしろ、この放射エネルギーは、誘電体試料層230と接触する導電層220の表面よりなる検出面260でSPに変換される。放射エネルギーの表面プラズモンへの転換を制御する共振条件は、検出面260に近接するプローブ領域270の屈折率に大きく従属する。光学アセンブリ150によって検出器155に反射される光150の検出によって、どの光の波長がSPに変換されたか、またこの変換プロセスの大きさを特徴づけることができる。図1に示すように、本発明のSPRセンサおよび撮像デバイスの好ましい光学幾何条件は、SPR光学アセンブリの照光時に、入射光ビームの全反射が生じるように選択される一定入射角が得られる条件である。しかしながら、本発明には、入射角が選択調整可能な実施例も含まれる。これらの実施例は、角度および波長とも同調可能なSPRセンサおよび撮像デバイスに相当する。
【0062】
図2は、別の態様の光学的構成を有するSPR撮像デバイス300の実施例を示す。この光学的構成においては、光干渉フィルタ140は反射光伝播軸250と交わる位置に配設されている。図1に示す光学的構成と同様に、光干渉フィルタは回転軸の回りに選択回転可能である。図示例のSPR撮像デバイス300では、光干渉フィルタ140は、反射光伝播軸250に直角な回転軸の回りに選択回転可能である(図2は全体的構成を示す概略図であり、光干渉フィルタ140の回転軸は図示していないが、図の紙面に直角な方向を有する)。この実施例においては、透過光の波長分布は光緩衝フィルタ140回転によって選択調整可能である。一実施例では、光干渉フィルタ140は、フィルタ面の入射光伝播軸に対する角度を選択的に変えられるよう、したがって、フィルタを通過する光の波長が変えられるように回転ステージ(図2では図示省略)上に取り付ける。したがって、光緩衝フィルタ140の回転位置は、検出器155により検出される光の波長分布を決定する。図2に示すように、SPR撮像デバイス300は、任意態様として、光源110と光学アセンブリ150との間にカットオフフィルタ302を設けることができる。一実施例において、カットオフフィルタ302は、波長が700nmより短い光の強度を低下させて入射光による光学アセンブリ150の加熱を最小限に抑えるための700nm<のロングパスフィルタおよび/または1,000nm>のショートパスフィルタである。
【0063】
SPR画像を生成するには、p偏光波を透過させるように偏光子130を調整し、特定のプローブ領域の組成および屈折率に対するSPの共振条件を満たす波長分布を有する光を透過させるよう光緩衝フィルタ140を調整する。検出器155は、光学アセンブリ150から反射された光を検出することによって、p偏光波に対応する反射光強度の第1の二次元分布を生じさせる。いくつかの実施例では、反射したp偏光波の二次元分布はプローブ領域のSPR画像をもたらす。光源と波長によって変化する強度を持つ波長セレクタ組合せを使用する場合、反射率によって画像を算出するために、反射p偏光波の光強度測定値の正規化が必要である。p偏光波に対応する反射光強度を反射率に変換するには、偏光子130を調整してs偏光波を透過させ、s偏光波に対応する反射光強度の第2の二次元分布を生じさせる。反射率によるプローブ領域の画像は、各画素位置におけるp偏光強度とs偏光強度との比を取ることによって得られる。
【0064】
フィルタの回転角度が大きくなると、干渉フィルタの偏光従属性透過効果が顕著になる。詳しく言うと、同じ干渉フィルタを透過したp偏光波に比べて、透過s偏光波の強度が低下し、その中心波長が短波長側にずれる。その結果、フィルタの回転角度が大きい場合は、正規化画像にはこの効果に対する補正係数が参入されていなければならない。撮像角度の補正係数は、表面プラズモン発生がないときにフィルタを透過するp偏光波およびs偏光波の強度を測定することによって簡単に求めることができる。(p偏光波の強度)/(s偏光波の強度)の比自体を用いて干渉フィルタの偏光従属性透過効果を補正することができる。例えば、屈折率の各測定値を透過光分布の中心波長に対応するp偏光波強度対s偏光波強度の比で割ることによって偏光従属性透過効果を補正することができる。一実施例においては、(p偏光波強度)/(s偏光波強度)の形の補正係数をいくつかの異なる撮像角度で測定し、そのデータをある3次多項式に当てはめることにより、その系の補正曲線を生成する。次に、この補正曲線を用いて任意の透過波長分布に関する補正係数を得る。
【0065】
図3は、入射光伝播軸180または反射光伝播軸250に関する垂直入射に対しての複数の相対回転方位を示す光緩衝フィルタ140の拡大図である。具体的に言うと、第1の傾斜角度350および第2の傾斜角度360に対応する回転方位を示す。第1の傾斜角度350は第2の傾斜角度360より小さい。図3に示すように、本発明のいくつかの実施例との関連で言うと、傾斜角度は、入射光伝播軸または反射光伝播軸に直角となるように置かれた光干渉フィルタの角方位に対して測定した角偏移を指す。別の言い方をすると、傾斜角度は90°からフィルタ面によって定義される平面の法線と入射光ビーム軸との間の角度を引いた角度である。一実施例においては、光干渉フィルタは中心波長、帯域幅および波長強度分布特性によって特徴づける波長分布を持つ光を透過させる。
【0066】
好ましい帯域幅は約1nm〜約30nmの範囲、また好ましい波長強度分布は実質的にガウス分布形またはローレンツ分布形である。光干渉フィルタのいくつかの例は、約60nm幅の範囲、より好ましくは約100nm幅の範囲にわたって同調可能な中心周波数を有する。
【0067】
一実施例においては、光緩衝フィルタ140の回転によって透過波長分布の中心波長が短波長側へずれる。光干渉フィルタがファブリ−ペロのエタロンよりなる一実施例では、光干渉フィルタの中心波長は次式で与えられる:
【0068】
【化7】

式中、λcenterは透過波長分布の中心波長、θtiltは傾斜角度、λcenter(0)は反射または入射光伝播軸に関する垂直入射での中心波長、nは光干渉フィルタの屈折率である。ファブリ−ペロのエタロンよりなる光干渉フィルタの場合、nはフィルタの半波長厚層である。
【0069】
本発明のSPRセンサおよび撮像デバイスで使用可能な光干渉フィルタは、半値幅で約10nmの垂直入射(フィルタ面の法線と入射光軸との間の角度)における帯域幅を有する。図4は、約850nm(塗りつぶした菱形)と約880nm(菱形)の垂直入射中心波長を持つ2つの干渉フィルタの中心波長を傾斜角度の関数としてプロットしたグラフを示す。図4に示すように、光緩衝フィルタを透過する中心波長は、0°から35°の範囲の傾斜角度の変動に対して約65nm偏移する。この中心波長の変動は式VIを用いて得た予測値と一致した。この波長の強度分布は、傾斜角度約35°までは実質的にガウス分布に従っている。しかしながら、ガウス強度分布の幅は、フィルタを0°から約20°まで変化させる間に約4%大きくなる。傾斜角度が約20°を超えると、強度分布の幅はさらに20%ほど角度伴ってより急速に増大する。
【0070】
3層SPRモデルを用いて、剥き出しの金層上の水(約850nmの光で屈折率が1.328)を基底として約5×10−5〜約3×10−3の範囲で屈折率が変動する試料を最適撮像するのに必要な波長同調範囲を推定した。これらの計算の結果、SP共振波長の予測変化を特徴づけるための最適波長帯は約845nm〜約857nmであるということが示された。この波長帯の幅は15nmより小さく、したがって、単一の光干渉フィルタにより得られる波長偏移範囲で容易にカバーすることができる。
【0071】
本発明のSPRセンサおよび撮像デバイスは、独立型(スタンドアロン型)の測定器として実施することが可能である。別の態様として、本発明のSPRセンサおよび撮像デバイスは、他の装置に組み込むこともできるし、あるいは測定器の装置コンポーネントとして使用することもできる。本発明のセンサは、リアクタ、フローセル、スタティックセル、フローセルリアクタ、スタティックリアクタ、マイクロ流体デバイス、生体系分析装置、分子間相互作用を特徴づけるための計測器、および薬剤スクリーニング機器と結合することができる。本発明のセンサおよび撮像デバイスに作用関係をもって結合されたフローセルは、化学種をプローブ領域に送給するのに有用である。例えば、本発明のSPRセンサをマイクロ流体送給デバイスと組み合わせて、物質をプローブ領域に導入ために使用することができる。一実施例において、本発明のセンサの検出面はマイクロ流体フローセルの1つの壁体をなす。SPR検出測定は、液体が表面上を連続的に流れる状態でも、静的流れ状態でも行うことができる。マイクロ流体フロー方式を使用することは、プローブ領域への試料送給の時点および持続時間を正確な制御が可能となるので、効果的である。
【0072】
本願で引用するすべての文献は、本願で参照することにより、本願の開示内容と相反することのない程度において全面的に本願に援用する。当業者にとっては、本願中に具体的に記載した以外の方法、装置、装置の構成要素、材料、手順および技術を、本願で広義に開示した発明の実施に無理な実験を行うこともなく適用できるということは自明であろう。本願中に具体的に記載した以外の方法、装置、装置の構成要素、材料、手順および技術で、当技術分野で周知のものと機能的に等価なものはすべて、本発明の範囲に包括される。
【実施例】
【0073】
(実施例1:一例のSPRセンサの特徴付け)
本発明のSPRセンサが、プローブ領域の屈折率の変化を検出できるということを、実験研究および計算に基づく研究によって実証した。詳しくは、本発明の目的は、プローブ領域の屈折率の変化を高感度で検出し、特徴づけることができるSPRセンサを提供することにある。さらに、本発明の目的は、大きなダイナミックレンジが得られ、幅広い屈折率を持つ物質を探査することができるSPRセンサを提供することにある。
【0074】
上記目的を達成するため、一例のSPRセンサの検出感度およびダイナミックレンジを計算手法によってモデル化し、低濃度スクロース溶液の屈折率を監視することにより評価した。これらの研究で使用したSPRセンサはクレッチュマン構成に基づくもので、図5に示す。多色光源は、マルチファイバ光導波路(米国ニュージャージー州バリントン、Edmund IndustrialOptics社製)に結合された150W石英ハロゲンランプ(米国マサチューセッツ州 ローレンス、Dolan−Jenner社製)である。光源からの光は、色消しレンズ(米国ニュージャージー州バリントン、Edmund Industrial Optics社製)によって集光され、ピンホール(100μm、同Edmund Industrial Optics社製)に合焦される。第2の色消しレンズ(同Edmund Industrial Optics社製)は、ピンホールからの光を厚め、平行光線ビームを形成する。この拡大平行光線ビームは偏光子(同Edmund Industrial Optics社製)に通される。偏光子は、p偏光およびs偏光画像を都合に応じて取り込むことができるように、モータ駆動回転ステージ(米国カリフォルニア州アービン、Newport Corporation社製)に搭載されている。光は、次いで、近赤外域における狭帯域(10nmFWHM(半値幅))の動作波長を選択して試料の屈折率範囲の最適コントラストを得るための干渉フィルタ(上記Edmund Industrial Optics社製)を通る。このフィルタは、平行光線となった光源からのビームに対するフィルタ面の角度が変えられるように、したがってフィルタを透過する光の波長を変えられるように、モータ駆動回転ステージ(上記Newport Corporation社製)に搭載されている。垂直入射から35°の傾斜角度にわたってフィルタを回転させると、フィルタを透過する波長が短波長側に約70nmだけ変動する。
【0075】
SPR光学アセンブリは、プリズム、金薄膜およびフローリアクタよりなる。プリズムの入口面および出口面は、金属表面における入射角度64.8°の場合に光源ビームに対して直角になるよう特注研磨されている(米国ワシントン州ポールズボ、Matthew’s Optical社による)。SPR光学アセンブリからの反射光は結像レンズ(上記Edmund Industrial Optics社製)を通ってCCD検出器(カナダ国バーナビー自治区、Qlmaging、Retiga EX社製)に合焦画像を形成する。試料照査エリアは円形で、直径が約16nmである。データ収集は、Labview6.1(米国テキサス州オースチン、National Instruments社製)を用いて自社で書き込んだソフトウェアによって行う。
【0076】
中心波長と共に入射光強度が変化する光源と干渉フィルタの組合せを使用すると、s偏光信号によるp偏光信号の正規化が必要になる。さらに、干渉フィルタの偏光従属性透過効果は、フィルタの回転角度が大きいと顕著になる。透過p偏光波と比べて、傾斜角度が大きくなるに従って、透過s偏光波の強度は低下し、中心波長は短波長側へずれる。その結果、フィルタの回転角度が大きい場合は、正規化画像にはこの効果に対する補正係数が参入されていなければならない。表面プラズモン形成がないときにフィルタを透過するp偏光波およびs偏光波の強度を測定することにより、補正係数を求めた。(p偏光波の強度)/(s偏光波の強度)の比自体を用いて干渉フィルタの偏光従属性透過効果を補正した。屈折率の各測定値を補正係数で割って偏光従属性透過効果を補正した。
【0077】
図6は、取り込んだSPR画像を光干渉フィルタを透過する光の偏光従属透過に関して補正する補正曲線を示すグラフである。図6の菱形のデータポイントは、表面プラズモンがないときに、10の異なるフィルタ回転角度におけるp偏光波の強度の和をs偏光波の強度の和で割った値を示す。補正手順におけるばらつきを予測するために、データは光源ビームの5つの異なる領域から取得した。図6に示すグラフの各データポイントは、平均400画素からなる。データポイントの誤差は、回転角度が24°より小さい場合の≦1%から回転角度36°における6%まで、フィルタの傾斜角度につれて増加する。異なる実験ラン間の変動は、すべてのフィルタ傾斜角度について≦0.6%と著しく小さい。また、図6には、データから得られた3次多項式の補正曲線も示されている。このグラフから明らかなように、回転角度が25°以下のときの補正係数は小さいが(1.3以下)、そこから回転角度が大きくなると、36°における2.3まで急速に増大する。
【0078】
3層フレネルモデルを用いて、1×10−6〜1×10−2の4オーダーにわたって広がるプローブ領域の屈折率に対して、一例のSPRセンサの予測応答を計算した。これらの計算では、水の基底屈折率を約850nmの光で1.328に等しいと仮定した。試料の屈折率変化に対するSPRセンサの期待応答(予測応答)を図7に示す。図7に示すデータは、実験で測定した本発明のフィルタの透過帯域が約10nmに等しいことを考慮したものである。菱形の各データポイントは、試料の所与の屈折率変化に対する最適中心撮像波長での試料の当該所与の屈折率変化に対する計測器の期待応答に対応している。正方形のデータポイントは、853nmという単一の中心波長設定における計測器の期待応答に対応する。このSPRセンサは、最大約3×10−3の屈折率変化までは線形応答を示す(ちなみに、ウシ血清アルブミンタンパクの単分子層のAu(金)表面への吸着は、約1×10−3の屈折率変化に対応する)。また、ここで、853nmの単一中心波長でデータを収集する時のセンサ応答への影響にも留意するべきである。図8は、最適中心撮像波長を水の基底屈折率に対する屈折率の変化の関数として示すグラフである。853nmの撮像波長は、約1×10−3の屈折率変化に対してのみ最適である。しかしながら、<1×10−3の屈折率変化に対しては、853nmの中心波長で測定される応答は最適中心撮像波長で予測される応答に近い。これより大きい屈折率変化に対しては、853nmの中心撮像波長で測定される応答は最適中心撮像波長で予測されるより著しく小さく、0.01の試料の屈折率変化に対して最大約10%減少する。
【0079】
この一例のSPRセンサの実験応答を一連の低濃度スクロース(米国ミズーリ州セントルイス、Sigma−Aldrich Inc.社製)溶液を用いて調べた。これらの各スクロース溶液の屈折率を屈折計(米国ペンシルバニア州アイビーランド、Milton Roy Company社製)で測定した。このシステムは、標準サイズのソーダ石灰ガラス製顕微鏡スライド(米国ニューハンプシャー州ハンプトン、Fisher Scientific社製)をNanostripTM溶液で洗浄した後、これに1nmのCr膜および450nmのAu膜を成膜したものを使用する。撮像システムで使用する前に、Au被膜スライドを30%過酸化水素、水酸化アンモニウム、およびddI水(脱イオン蒸留水)の1:1:5溶液で洗浄した。次に、これらのスライドを、暗くした窒素雰囲気中で0.2ミリモルのエチレングリコール末端チオール溶液中に24〜72時間浸漬して、無付着性(non−fouling)の自己集積化単分子膜(単分子層)を形成した。図9は、種々の屈折率を持つ溶液の一連の正規化画像を示す。これらのすべての画像は中心撮像波長約850nmで撮影したものである。画像A乃至Dは、屈折率がそれぞれ1.3338、1.3343、1.3346、および1.3354の溶液を使ったフローリアクタの同じフ領域を示している。各スクロース溶液を導入した後、リアクタおよび系をddI水で洗い流した。各ddI水洗後の領域における信号を分析したところ、非特異性の吸着はほとんど示されず、信号の変動は≦7%であった。図10は、一例のSPRセンサの実験応答をプロットしたグラフである。図示のように、この系の応答は、屈折率の変化が<3×10−3の範囲では線形性を持つ。
【0080】
この一例のSPRセンサの検出限界をddI水の試料を用いて調べた。画像は2秒間隔、露出時間1.2秒で約3分間の時間にわたって撮影した。p偏光画像をs偏光画像で正規化して、s偏光画像および100画素のエリアについて平均したデータを使用する反射率を得た。水の試料は、標準偏差0.13%の反射率50%を示した。その結果、この計測器の検出限界はこの標準偏差の約4倍、すなわち0.5%である。この反射率は、約5×10−5という検出可能な屈折率変化の下限に対応する。
【0081】
100画素を超える平均を取ることによっては、信号についてもSPRセンサの時間的変化に関して正規化しない限り、それ以上の信号対雑音比の増加は得られなかった。しかしながら、適切な基準正規化によれば、SNR(信号対雑音比)は、予期通り、信号強度の2乗に従って増加する。図11は、SNR比を補正前(A、下側のグラフ)および補正後(B、上側のグラフ)の両方のSPRデータについて平均した画素数の関数として示すグラフである。データは、2秒間隔で撮影した100の一連の光源ビーム画像(露出時間800ミリ秒)で構成したものである。詳しく言うと、本発明の信号強度が10倍増加すると、SNRは10倍増加し、あるいは検出限界が約5×10−6になる。その上、SNRは、光源の光強度を大きくするハードウェアの修正をシステムに加えることによって、さらに増加した。
【0082】
(実施例2:金薄膜表面上におけるチオール干渉縞およびウシ血清アルブミンタンパクのSPR画像)
本発明のSPR撮像デバイスの感度および空間分解能を評価するために、一例のSPRセンサによってチオールの干渉縞のSPR画像を得た。金薄膜表面(Fisher Scientific社製の標準の顕微鏡スライドに約1nmのCr膜および約45nmのAu膜を電子線成膜したもの)にポリジメチルシロキサン(PDMS)スタンピング法を用いてチオールの干渉縞を形成した。ここで使用したスタンピング法は、PDMSスタンプから金薄膜表面への物質移動が最小限になるよう、また表面上にチオールの1層の単分子層が形成されるよう最適化した。画像はすべてp偏光波の光で撮影した。図12は、光干渉フィルタの傾斜角度をいくつか変えて得たチオールおよび水の干渉縞の一連の画像を示す。図12Aは、中心波長857nmに対応し、図12Bは、中心波長852nmに対応し、図12Cは、中心波長845nmに対応し、図12Dは中心波長830nmに対応し、そして図12Eは中心波長814nmに対応している。ヘキサデカンチオール層が画像の明領域に対応し、水層が暗領域に対応する。スタンプとの接触により形成された方形の領域のサイズは約500μm×212μmである。図12A乃至12Eから明らかなように、フィルタがこの試料の最適位置から外れる向きに傾斜するにつれて、屈折率が異なる領域間のコントラストは減少する。図12Aに示すように、本発明のSPRセンサは、いくつかの屈折率を持つプローブ領域について高い光学的品質の画像を生成することができる。
【0083】
この一例のSPRセンサの場合、方位分解能の上限は約50μm以下であることが実験約に確認された。図13は、最小フィーチャサイズが約100nm(A、左側)および約50nm(B、右側)のチオールの干渉縞の画像を示す。この画像は1次元について0.43倍に縮小したものである。表面プラズモンの伝播方向では、方位分解能の下限は>50μmであることが確認された。このことは、近赤外域におけるAu上の周知の表面プラズモン伝播長さに合致する。
【0084】
図14A乃至Dは、金の表面に吸着されたウシ血清アルブミン(BSA)タンパク質の画像を示す。これらの画像はすべて、中心波長約853nmのp偏光波の光で撮影した。図14Aの画像は、水のバックグラウンド(RIwaterは約850nmの光で約1.328)におけるリアクタの小さな領域を示している。図14Bは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の2mg ml−1BSA溶液を用いた場合のリアクタの同じ領域の画像を示す。図14Cは、水をリアクタ内に圧送して未結合タンパク質をすべて除去した後における水バックグラウンドの同じ領域の画像を示す。図14Dは、図14Aの画像と図14Cの画像との減法処理の結果得られた差画像を示す。この屈折率の変化は、タンパク質のAu表面上への吸着によるものである(水中のBSAの単分子層の場合、RIは約1.331である)。この屈折率の変化は約26%の反射率の変化に相当する。これらの測定結果は、本発明のSPRセンサが、プローブ領域におけるタンパク質の吸着による屈折率変化を高感度で検出できるということを示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、多色光源とSPR光学アセンブリとの間に選択調整可能な波長セレクタを配設した本発明のSPR撮像デバイスの概略側面図である。
【図2】図2は、SPR光学アセンブリと検出器との間に選択調整可能な波長セレクタを配設した本発明のSPR撮像デバイスの概略側面図である。
【図3】図3は、光干渉フィルタよりなる選択調整可能な波長セレクタの一例の概略側面図である。図3に示すように、光干渉フィルタは入射面に直角な回転軸の回りに選択回転可能である。
【図4】図4は、約850nm(塗りつぶした菱形)と約880nm(菱形)の垂直入射中心波長を持つ2つの干渉フィルタの中心波長を傾斜角度の関数としてプロットしたグラフである。
【図5】図5は、クレッチュマンSPR構成に基づく一例のSPR撮像デバイスの写真である。
【図6】図6は、取り込んだSPR画像を光干渉フィルタを透過する光の偏光従属性透過に関して補正する補正曲線を示すグラフである。
【図7】図7は、試料の屈折率の変化に対する一例のSPR撮像デバイスの期待応答を示すグラフである。
【図8】図8は、最適中心撮像波長を水の基底屈折率に対する屈折率の変化の関数として示すグラフである。
【図9】図9は、本発明の一例のセンサで測定したある範囲の種々の屈折率を持つスクロース溶液の一連の正規化画像を示す。
【図10】図10は、一例のSPRセンサの実験応答をプロットしたグラフである。図示のように、この系の応答は、屈折率の変化が3×10−3より小さい範囲では線形性を持つ。
【図11】図11は、信号対雑音比を補正前(A、下側のグラフ)および補正後(B、上側のグラフ)の両方のSPRデータについて平均した画素数の関数として示すグラフである。
【図12】図12は、光干渉フィルタの傾斜角度をいくつか変えて得たチオールおよび水の干渉縞の一連の画像を示す。図12Aは、中心波長857nmに対応し、図12Bは、中心波長852nmに対応し、図12Cは、中心波長845nmに対応し、図12Dは、中心波長830nmに対応し、図12Eは、中心波長814nmに対応している。
【図13】図13AおよびBは、それぞれ、本発明の一例のSPRセンサで生成された最小フィーチャサイズ約100μm(図13A、左側の写真)および最小フィーチャサイズ約50μm(図13B、右側の写真)のチオールの干渉縞画像を示す。
【図14】図14A乃至Dは、金の表面に吸着されたウシ血清アルブミン(BSA)タンパクの画像を示す。図14Aの画像は、水バックグラウンドのリアクタの小さな領域を示す。図14Bは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中2mg ml−1のBSA溶液を用いたリアクタの同じ領域の画像を示す。図14Cは、水バックグラウンドを用いたリアクタにポンプで、水を通してすべての未結合タンパク質を取り除いた後のリアクタの同じ領域の画像を示す。図14Dは、図14Aの画像と図14Cの画像との減法処理の結果得られた差画像を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ領域の屈折率を検出するための表面プラズモン共振センサであって、
入射光伝播軸沿いに伝播する光を発生する多色光源と、
該多色光源との光伝達関係にあって該光の偏光状態を選択するための偏光子と、
該多色光源との光伝達関係にあって誘電体層、誘電体試料層および該誘電体層と該誘電体試料層との間に位置する導電層よりなる光学アセンブリであって、該光で照光すると反射光伝播軸沿いに伝播する光を発生し、該導電膜近傍の該誘電体試料層の一部が該プローブ領域をなす、光学アセンブリと、
該光学アセンブリとの光伝達関係にあって該反射光伝播軸沿いに伝播する該光を検出することにより該プローブ領域の屈折率を検出するための検出器と、
該光源と該検出器との間の光路中に配設されて、該誘電体試料層と接触する該導電層の表面に表面プラズモンを発生させるよう選択される透過波長分布を持つ光を透過させるための選択調整可能な波長セレクタと、
を備えた、表面プラズモン共振センサ。
【請求項2】
前記光学アセンブリと前記検出器との間に位置して反射光伝播軸沿いに伝播する前記光を集光し、かつ反射光伝播軸沿いに伝播する該光を該検出器に合焦するための集光・合焦素子をさらに備えた、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項3】
前記多色光源と前記光学アセンブリとの間に位置して該多色光源からの光を平行光線にするためのコリメーション光学素子をさらに備えた、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項4】
前記コリメーション光学素子が、各々前記多色光源と前記光学アセンブリとの間に位置する第1のレンズ、ピンホール、および第2のレンズを含む、請求項3記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項5】
前記選択調整可能な波長セレクタが前記光学アセンブリと前記検出器との間に配設されている、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項6】
前記選択調整可能な波長セレクタが前記多色光源と前記光学アセンブリとの間に配設されている、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項7】
前記選択調整可能な波長セレクタが光干渉フィルタである、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項8】
前記光干渉フィルタがファブリ−ペロのエタロンである、請求項7記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項9】
前記光干渉フィルタが線形可変干渉フィルタである、請求項7記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項10】
前記光干渉フィルタが前記入射光伝播軸に直角な軸の回りに回転調整可能であり、該光干渉フィルタの回転によって透過波長分布が選択調整される、請求項7記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項11】
前記光干渉フィルタの回転によって透過波長分布の中心波長が選択調整される、請求項10記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項12】
透過波長分布の前記中心波長が次式によって与えられ、
【化1】

式中、λcenterは透過波長分布の該中心波長、θtiltは傾斜角度、λcenter(0)は反射または入射光伝播軸に関する垂直入射での中心波長、nは光干渉フィルタの屈折率である、請求項11記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項13】
前記光干渉フィルタが前記反射光伝播軸に直角な軸の回りに回転調整可能であり、該光干渉フィルタの回転によって透過波長分布が選択調整される、請求項7記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項14】
前記光干渉フィルタの回転によって透過波長分布の中心波長が選択調整される、請求項13記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項15】
透過波長分布の前記中心波長が次式によって与えられ、
【化2】

式中、λcenterは透過波長分布の該中心波長、θtiltは傾斜角度、λcenter(0)は反射または入射光伝播軸に関する垂直入射での中心波長、nは光干渉フィルタの屈折率である、請求項14記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項16】
前記光干渉フィルタが前記入射光伝播軸に直角な軸の回りに回転調整可能であり、該光干渉フィルタの回転によって、該光干渉フィルタの透過を実質的に阻止される波長分布が選択調整される、請求項7記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項17】
前記光干渉フィルタが前記反射光伝播軸に直角な軸の回りに回転調整可能であり、該光干渉フィルタの回転によって、該光干渉フィルタの透過を実質的に阻止される波長分布が選択調整される、請求項7記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項18】
前記光干渉フィルタが実質的に互いに平行な第1および第2の端部を有し、該第1の端部が0°〜約35°にわたって選択される傾斜角度を有する、請求項7記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項19】
前記透過波長分布が中心波長により特徴づけられ、該中心波長が約65nm幅の範囲にわたって同調可能である、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項20】
前記透過波長分布が帯域幅により特徴づけられ、該帯域幅が約1nm〜約100nmの範囲から選択される値を有する、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項21】
前記選択調整可能な波長セレクタがモノクロメータを含む、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項22】
前記選択調整可能な波長セレクタがスペクトロメータを含む、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項23】
前記選択調整可能な波長セレクタがプリズムを含む、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項24】
前記選択調整可能な波長セレクタが回折格子を含む、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項25】
前記検出器が電荷結合素子である、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項26】
前記誘電体層が第1の屈折率を有し、前記誘電体試料層が該第1の屈折率より小さい第2の屈折率を有し、前記入射光伝播軸沿いに伝播する前記光が前記光学アセンブリとの相互作用によって全反射させられる、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項27】
前記誘電体層がプリズムである、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項28】
前記光学アセンブリに作用関係をもって接続されていて試料を前記プローブ領域に導入するためのフローセルをさらに備えた、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項29】
前記誘電体材料層が前記フローセルにより供給される試料である、請求項28記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項30】
前記導電層が金薄膜である、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項31】
前記第1の屈折率の層および前記導電層がウェーブガイドを含む、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項32】
前記第1の屈折率の層および前記導電層が光ファイバを含む、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項33】
表面プラズモン撮像デバイスを備えた、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項34】
前記光源がインコヒーレント光源である、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項35】
前記光学アセンブリに作用関係をもって接続されていて試料を前記プローブ領域に導入するためのマイクロ流体フローセルをさらに備えた、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項36】
前記第2の層と接触する前記導電層の前記表面が前記マイクロ流体フローセルの一側面を含む、請求項35記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項37】
前記導電層の前記表面が、選択結合親和性が得られるように改変される、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項38】
前記誘電体試料層と接触する前記導電層の前記表面が、選択吸着特性が得られるように改変される、請求項1記載の表面プラズモン共振センサ。
【請求項39】
プローブ領域の屈折率を検出する方法であって、
多色光源からの光を偏光子に通すことによって、入射光伝播軸沿いに伝播する光を発生させるステップと、
誘電体層、誘電体試料層および該誘電体層と該誘電体試料層との間に位置する導電層からなる光学アセンブリへ該光を導くことによって、反射光伝播軸沿いに伝播する光を発生させるステップであって、該導電層近傍の該誘電体試料層の部分が該プローブ領域をなす、ステップと、
該光を該光源と検出器との間の光路中に配設された選択調整可能な波長セレクタに通すステップと、
該光を該検出器で検出することによって、該プローブ領域の該屈折率を検出するステップと、
該誘電体試料層と接触する該導電層の表面に表面プラズモンを発生させるように選択される波長分布を持つ光を透過させるよう該選択調整可能な波長セレクタを調整する調整ステップと
を包含する、方法。
【請求項40】
前記調整ステップが前記選択調整可能な波長セレクタを透過する前記透過波長分布を意図的に変化させるステップを包含する、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記調整ステップが、
光をして第1の波長分布を持つ前記選択調整可能な波長セレクタを透過させることによって前記プローブ領域の第1の画像を生成するステップと、
光をして第2の波長分布を持つ該選択調整可能な波長セレクタを透過させることによって該プローブ領域の第2の画像を生成するステップと、
該第1と第2の画像のスペクトル品質を比較するステップと、
該選択調整可能な波長セレクタが透過させる前記入射光の波長分布を選択して該画像のスペクトル品質を改善するステップと
を包含する、請求項39記載の方法。
【請求項42】
前記選択調整可能な波長セレクタが前記光源と前記光学アセンブリとの間に配設されている、請求項39記載の方法。
【請求項43】
前記選択調整可能な波長セレクタが前記光学アセンブリと前記検出器との間に配設されている、請求項39記載の方法。
【請求項44】
前記選択調整可能な波長セレクタが光干渉フィルタである、請求項39記載の方法。
【請求項45】
前記光干渉フィルタがファブリ−ペロのエタロンである、請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記調整ステップが、前記光干渉フィルタを前記入射光伝播軸に直角な軸の回りに回転させ、該光干渉フィルタの回転によって透過光の波長分布が選択調整される、請求項44記載の方法。
【請求項47】
前記調整ステップが、前記光干渉フィルタを前記反射光伝播軸に直角な軸の回りに回転させ、該光干渉フィルタの回転によって透過光の波長分布が選択調整される、請求項44記載の方法。
【請求項48】
前記調整ステップが、前記光干渉フィルタを前記入射光伝播軸に直角な軸の回りに回転させ、該光干渉フィルタの回転によって、該光干渉フィルタの透過を実質的に阻止される波長分布が選択調整される、請求項44記載の方法。
【請求項49】
前記調整ステップが、前記光干渉フィルタを前記反射光伝播軸に直角な軸の回りに回転させ、該光干渉フィルタの回転によって、該光干渉フィルタの透過を実質的に阻止される波長分布が選択調整される、請求項44記載の方法。
【請求項50】
前記光を偏光子に通すステップが、前記入射光伝播軸沿いに伝播するp偏光状態を持つ光を発生させる、請求項39記載の方法。
【請求項51】
前記入射光伝播軸沿いに伝播する前記光が前記光学アセンブリとの相互作用によって全反射させられる、請求項39記載の方法。
【請求項52】
前記多色光源からの光を平行光線にするステップをさらに包含する、請求項39記載の方法。
【請求項53】
前記反射光伝播軸沿いに伝播する前記光を前記検出器に合焦するステップをさらに包含する、請求項39記載の方法。
【請求項54】
前記光が電磁スペクトルの近赤外域の波長を有する、請求項39記載の方法。
【請求項55】
前記光学アセンブリが、前記プローブ領域と作用関係をもって接続されていて化学種を該プローブ領域に送給するためのフローセルをさらに具有する、請求項39記載の方法。
【請求項56】
化学種を前記フローセルに通して流すことによって前記プローブ領域の組成を変化させるステップをさらに包含する、請求項55記載の方法。
【請求項57】
化学種を前記フローセルに通して流すことによって前記プローブ領域の屈折率を変化させるステップをさらに包含する、請求項55記載の方法。
【請求項58】
化学種を前記フローセルに通して流すことによって前記プローブ領域の厚さを変化させるステップをさらに包含する、請求項55記載の方法。
【請求項59】
前記フローセルがマイクロ流体フローセルである、請求項55記載の方法。
【請求項60】
プローブ領域の画像を生成する方法であって、
多色光源からの光を偏光子に通すことによって、入射光伝播軸沿いに伝播する光を発生させるステップと、
誘電体層、誘電体試料層および該誘電体層と該誘電体試料層との間に位置する導電層からなる光学アセンブリへ該光を導くことによって、反射光伝播軸沿いに伝播する光を発生させるステップであって、該導電層近傍の該誘電体試料層の部分が該プローブ領域をなす、ステップと、
該光を該光源と検出器との間の光路中に配設された選択調整可能な波長セレクタに通すステップと、
該光を該検出器で検出することによって、該プローブ領域の該画像を生成するステップと、
該誘電体試料層と接触する該導電層の表面に表面プラズモンを発生させるように選択される波長分布を持つ光を透過させるよう、該選択調整可能な波長セレクタを調整するステップと
を包含する、方法。
【請求項61】
前記検出器が電荷結合素子である、請求項60記載の方法。
【請求項62】
プローブ領域の屈折率を検出する方法であって、
多色光源からの光を偏光子に通すことによって、入射光伝播軸沿いに伝播する光を発生させるステップと、
誘電体層、誘電体試料層および該誘電体層と該誘電体試料層との間に位置する導電層からなる光学アセンブリへ該光を導くことによって、反射光伝播軸沿いに伝播する光を発生させるステップであって、該導電層近傍の該誘電体試料層の部分が該プローブ領域をなす、ステップと、
該光を該光源と検出器との間の光路中に配設された選択調整可能な波長セレクタに通すステップであって、該誘電体試料層と接触する該導電層の表面に表面プラズモンを発生させるよう選択される波長分布を持つ入射光を透過するよう該選択調整可能な波長セレクタを調整するステップと、
該光を該検出器で検出することによって、少なくとも1つの基準測定値を生成するステップと、
該光を該検出器で検出することによって、少なくとも1つの分析測定値を生成するステップと、
該基準測定値と該分析測定値とを比較して該プローブ領域の屈折率の変化を検出するステップと
を包含する、方法。
【請求項63】
前記光学アセンブリが、化学種を該プローブ領域に導入するためのフローセルをさらに具有する、請求項62記載の方法。
【請求項64】
化学種を前記プローブ領域に導入するステップをさらに包含する、請求項63記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−504105(P2006−504105A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548550(P2004−548550)
【出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2003/034265
【国際公開番号】WO2004/040717
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(504216387)ユニバーシティ オブ ワシントン (2)
【Fターム(参考)】