説明

波長選択スイッチ

【課題】温度変化が起きて分散素子の分散特性が変化したとしても、正確なスイッチングができる波長選択スイッチを提供する。
【解決手段】基板を備えた波長選択スイッチであって、基板上に、波長選択スイッチ内に波長多重された光を入射させる少なくとも一つの入力部と、入力部からの光を受光し、光を分散させる分散素子と、分散素子によって分散された光を波長ごとに集光する集光要素と、集光要素からの波長ごとの光を波長ごとに独立に偏向可能な、複数の偏向素子を有する光偏向部材と、光偏向部材によって偏向された波長ごとの光を受光する出力部と、分散素子、集光要素、及び光偏向部材の少なくともひとつを駆動させる駆動機構と、を備え、駆動機構による駆動は、分散素子の場合は基板に対して垂直な軸の周りの回転駆動であり、集光要素もしくは光偏光部材の場合は基板に対して波長分散方向の並進である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長選択スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には光アドドロップ多重化装置という名称で、波長選択スイッチの基本的な構成が開示されている。
【0003】
ここで、波長選択スイッチとは、ROADM(大容量ネットワークに用いられる、波長多重化された光信号を、光信号のまま分岐/挿入が行えるシステムや技術)におけるノードにおかれるデバイスであって、波長多重されている光信号の伝送経路の切換えを波長ごとに行うスイッチである。
【0004】
各ノードでは波長選択スイッチによって、波長多重された光信号から任意の波長の光信号を取り出すことや、波長多重された光信号に任意の波長の光を混ぜることが可能である。この光スイッチにおいては分散素子として回折格子が用いられている。
【0005】
また、特許文献2においては、光分散装置であって、分散素子として回折素子を備え、回折素子は温度に対して鈍感で、出射角度が変化しないものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3937403号明細書
【特許文献2】特表2003−509714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2では、温度変化によって分散特性が変化することを課題としてあげ、その対策を行っている。特許文献2では温度変化によって分散特性が変化することの原因を回折格子の本体の熱膨張に求めているが、大気の屈折率の変化や、分散素子内を光線が通る場合には温度変化による分散素子自身の屈折率の変化が、分散特性の変化の主たる原因となりうる場合も多い。分散特性が変化すると、波長選択スイッチ内のそれぞれの偏向素子が受け持つ周波数帯域が、温度変化により変化するという不都合が起こる。
【0008】
特に高い屈折率を持つ材料を分散素子に使用している場合は分散特性の変化が大きい。このような理由で従来の波長選択スイッチでは、温度変化に対する安定した分散特性を持つことは困難であった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その課題は、温度変化が起きて分散素子の分散特性が変化したとしても、正確なスイッチングができる波長選択スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る波長選択スイッチは、基板を備えた波長選択スイッチであって、基板上に、波長選択スイッチ内に波長多重された光を入射させる少なくとも一つの入力部と、入力部からの光を受光し、光を分散させる分散素子と、分散素子によって分散された光を波長ごとに集光する集光要素と、集光要素からの波長ごとの光を波長ごとに独立に偏向可能な、複数の偏向素子を有する光偏向部材と、光偏向部材によって偏向された波長ごとの光を受光する出力部と、分散素子、集光要素、及び光偏向部材の少なくともひとつを駆動させる駆動機構と、を備え、駆動機構による駆動は、分散素子の場合は基板に対して垂直な軸の周りの回転駆動であり、集光要素もしくは光偏光部材の場合は基板に対して波長分散方向の並進であることを特徴としている。
【0011】
本発明に係る波長選択スイッチにおいては、すべてのνiL≦ν≦νiH−1、T<T<Tに対して次式(1)が成り立つことが好ましい。
【0012】
【数1】

【0013】
ただし、
νはグリッド周波数、
νiLは使用帯域の最低グリッド周波数、
νiHは同最高グリッド周波数、
iL、i、iHはiL≦i≦iHを満たす整数、
ν<νi+1
Tは温度、
は使用温度の範囲の最低温度、
は使用温度の範囲の最高温度、
<T<T
S(νi,T)は温度Tのときに周波数νの光の主光線と光偏向部材と重なる面との交点、であり、
、Sの2点間距離を次式(2)で表す。
【0014】
【数2】

【0015】
本発明に係る波長選択スイッチにおいては、装置内の温度を測定する測温部と、測温部から温度情報を受け取り、温度情報に基づく駆動量で駆動機構を駆動させる制御系と、を備えることが好ましい。
【0016】
本発明に係る波長選択スイッチにおいては、駆動機構が、温度変化によってそれ自体が伸縮する伸縮部材を含んでいることが好ましい。
【0017】
本発明に係る波長選択スイッチにおいては、すべてのνiL≦ν≦νiH−1、T<T<Tに対して次式(3)が成り立つことが好ましい。
【0018】
【数3】

【0019】
ただし、
θ(νi,T)は温度Tのときに周波数νの光の偏光素子による偏向角である。
【0020】
本発明に係る波長選択スイッチにおいては、装置内の温度を測定する測温部と、測温部から温度情報を受け取り、温度情報に基づく駆動量で駆動機構を駆動させる制御系と、を備えることが好ましい。
【0021】
本発明に係る波長選択スイッチにおいては、駆動機構が、温度変化によってそれ自体が伸縮する伸縮部材を含んでいることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る波長選択スイッチは、温度変化が起きて分散素子の分散特性が変化したとしても、正確なスイッチングができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる波長選択スイッチの構成例を示す図である。
【図2】第1実施形態のグレーティングの構成例を示す平面図である。
【図3】第1実施形態のMEMSミラーアレイの構成を示す斜視図である。
【図4】2つの信号光の距離について説明する図である。
【図5】第1実施形態にかかる波長選択スイッチの構成例を示すブロック図である。
【図6】第1実施形態の駆動機構の構成を示す図である。
【図7】第1実施形態の波長選択スイッチの動作の流れを示すフローチャートである。
【図8】第1実施形態のピエゾ素子の駆動制御値を温度に対応させて示した表である。
【図9】第2実施形態の駆動機構の構成を示す図である。
【図10】(a)は、常温における駆動機構の状態を示す図、(b)は常温よりも高い温度になったときの入射光線のアレイ方向のシフトを示す図、(c)は常温よりも高い温度になったときのMEMSミラーアレイのアレイ方向のシフトを示す図である。
【図11】第2実施形態の変形例に係る駆動機構の構成を示す図である。
【図12】第3実施形態の駆動機構の構成を示す図である。
【図13】(a)は、常温における駆動機構の状態を示す図、(b)は常温よりも高い温度になったときの入射光線のアレイ方向のシフトを示す図、(c)は常温よりも高い温度になったときのMEMSミラーアレイのアレイ方向のシフトを示す図である。
【図14】第4実施形態の回転機構の構成を示す図である。
【図15】温度変化に対する、第4実施形態のグレーティングによる偏向角の変化を示す図である。
【図16】(a)は、常温における回転機構の状態を示す図、(b)は常温よりも高い温度になったときの偏向角の変化を示す図、(c)は常温よりも高い温度になったときの台座409の回転を示す図である。
【図17】第5実施形態の回転機構の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る波長選択スイッチの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0025】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る波長選択スイッチの構成及び常温における動作について説明する。図1は、第1実施形態にかかる波長選択スイッチの構成例を示す図である。
第1実施形態の波長選択スイッチ100は、いわゆる透過型の波長選択スイッチである。この波長選択スイッチ100は、基板109の上に、複数の光ファイバからなるファイバアレイ101と、マイクロレンズアレイ102と、グレーティング103と、レンズ104と、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)モジュールであるMEMSミラーアレイ105と、を備えている。
【0026】
ファイバアレイ101(入力部、出力部)内の各光ファイバと、マイクロレンズアレイ102内の各マイクロレンズは対になっており、これらの対がアレイ状に配置されている。ファイバアレイ101は光入出力ポートとして機能する。その光ファイバのひとつ(以下、「第1の光ファイバ」という。)から、波長多重された信号光が、グレーティング103に向けて出射される。光ファイバから出射した光は、マイクロレンズアレイ102で平行光束に変換される。
【0027】
マイクロレンズアレイ102から出射した光は、グレーティング103(分散素子)に入射する。グレーティング103は、波長多重光を帯状に分散する。
レンズ104はグレーティング103によって分散された光を、光偏向部材であるMEMSミラーアレイ105の波長ごとの所定位置に導く。
【0028】
グレーティング103は、例えば、頂角34度のシリコンプリズムに反射型グレーティングGが形成されている、いわゆるイマージョン・グレーティングである(図2)。グレーティング103の回折面112はシリコンで満たされおり、1mmあたり2500本の溝が形成されている。ここで、図2は、グレーティングの構成例を示す平面図である。図2の例において、頂角αのグレーティング103の入射面111への光線の入射角及び出射角はβであり、屈折角はθである。
【0029】
MEMSミラーアレイ105(光偏向部材)は、グレーティング103で帯状に分散された光の波長に対応して波長分散方向に並ぶように配置された、複数のマイクロミラーMのアレイ(図3)を有する。また、MEMSミラーアレイ105には後述する駆動機構108がついている。
【0030】
図3は、MEMSミラーアレイ105の構成を示す斜視図である。
マイクロミラーMは、図3に示すように、それぞれのミラーがローカルのx軸とy軸の周りに回転が可能で、主にy軸に関する回転により、入射した光を入射方向とは異なる方向へ反射する。
【0031】
ミラーアレイの複数のマイクロミラーにより、入射方向とは異なる、同じ方向(A)に反射された光は、レンズ104によりグレーティング103上に統合され、回折後は再び多波長成分の同一光束となる。これに対して、異なるマイクロミラーにより、入射方向ともAとも異なる方向に反射された光は、レンズ104によりグレーティング103上にリレーされ、回折されるが、Aの方向に反射された光とは統合されない。
これらの光はファイバアレイ101の入力ポート以外の、異なるファイバに入射する。
【0032】
このように、第1の光ファイバから出射した多波長成分の光は、波長ごとにMEMSミラーアレイのそれぞれのミラーMの傾き角により選択的に他のファイバに入射させることができる。
【0033】
なお、この実施形態ではひとつの光入力ポートから複数の光出力ポートへの結合に関して説明したが、複数の光入力ポートからひとつの光出力ポートへの結合を行うことも可能である。
【0034】
第1実施形態において、ファイバアレイ101は波長選択スイッチ内に波長多重された光を入射させる入力部、グレーティング103はファイバアレイ101からの光を受光し、光を分散させる分散素子、レンズ104は分散された波長ごとに光を集光する集光要素、MEMSミラーアレイ105はレンズ104からの光を、波長ごとに独立に偏向可能な光偏向部材、ファイバアレイ101はMEMSミラーアレイ105からの光を受光する出力部である。
【0035】
次に、温度が変化した場合の動作について説明する。
波長選択スイッチは、温度が変化した場合に光学特性が変化する。光学特性の変化の主な原因はグレーティング103のイマージョン媒質の屈折率変化である。これ以外の原因としては、例えば、グレーティング103の線膨張と、レンズ104の屈折率変化と、グレーティング103、レンズ104、またはMEMSミラーアレイ105の温度変化に伴う基板109に対する位置ズレと、がある。
【0036】
グレーティング103のイマージョン媒質に用いているシリコンは、温度変化に対する屈折率変化が通常の光学ガラスに比べて数十倍になる。したがって、ファイバアレイ101の第1の光ファイバから出射した光がグレーティング103を透過した後に向かう方向が常温とは異なり、この光がMEMSミラーアレイ105と当たる位置も常温のときとは異なってしまう。
【0037】
つづいて、温度変化があった場合の隣り合う2つの信号光の距離に関して説明する。図4は、2つの信号光の距離について説明する図である。ここで、νはグリッド周波数、νiLは使用帯域の最低グリッド周波数、νiHは同最高グリッド周波数、iL、i、iHはiL≦i≦iHを満たす整数、ν<νi+1、Tは温度、Tは使用温度範囲の最低温度、Tは使用温度範囲の最高温度、T<T<T、S(νi,T)は温度Tのときに周波数νの光の主光線と前記光偏向部材と重なる面との交点、である。
【0038】
2点S、Sの2点間距離を次式(2)で表すと、使用温度範囲の最低温度Tにおける、離散化した隣り合う信号波長がMEMSミラーアレイと交わる2点間距離は次式(4)で表される。
【0039】
【数4】

【0040】
【数5】

【0041】
また、温度が最低温度Tから温度T(T<T)に変化した場合の最低グリッド周波数νiLの光とグリッド周波数νの光とのスポット間距離(図4のA10)の変化は次式(5)で表される。
【0042】
【数6】

【0043】
温度が変化するたびに、上式(5)を上式(4)で割った比が十分に小さいように、すなわち次式(1)が成り立つように、
【0044】
【数7】

【0045】
MEMSミラーアレイ105の全体を基板109に対して動かして、最低グリッド周波数νiLの光の位置にMEMSミラーアレイ105の端のミラーを合わせれば、グリッド周波数νの光は最低温度Tのときと同じミラーの同じ位置のごく近くに当たることとなる。
【0046】
これが、次式(6)、(7)で示す範囲内のグリッド周波数νi、温度Tに対して成り立つように、光学系を設計しておくことが好ましい。
νiL≦ν≦νiH−1 ・・・(6)
<T<T ・・・(7)
このような光学系に対し、MEMSミラーアレイ105の全体を使用温度に対応して適切に動かせば、各信号光はそれぞれの波長に対応したMEMSミラーアレイ105でスイッチングされる位置に来ることになる。
【0047】
次に、MEMSミラーアレイ105の制御機構106及び駆動機構108について図5および図6を参照して説明する。
図5は第1実施形態にかかる波長選択スイッチ100の構成例を示すブロック図である。図6は第1実施形態の駆動機構108の構成を示す図である。
【0048】
まず、図5にてMEMSミラーアレイ105の駆動機構108と制御機構106の構成を説明する。
波長選択スイッチ100は、ファイバアレイ101側から順に、マイクロレンズアレイ102、グレーティング103、温度センサ107、レンズ104、MEMSミラーアレイ105、温度に応じて伸縮するピエゾ素子141、及び制御機構106を備える。
【0049】
温度センサ107は、波長選択スイッチ100の内部の温度、特にグレーティング103の近くの温度を監視し、温度に応じてMEMSミラーアレイ105の位置をピエゾ素子141により制御するために、グレーティング103の温度変化を検出する。MEMSミラーアレイ105には、駆動機構108としてのピエゾ素子141が接続されており、MEMSミラーアレイ105をアレイが並んでいる方向へ動かす。
【0050】
制御機構106は、温度センサ107での検出値に基づいて、ピエゾ素子141の駆動量をLUT(Look Up Table)133から参照し、ピエゾ素子141の駆動制御を行う。
制御機構106は、温度センサ107の出力を温度値としてモニタする温度モニタ135と、温度モニタ135の温度値を保存、記録するためのメモリ134と、ピエゾ素子141を駆動するためのドライバ回路132と、任意の温度に対してピエゾ素子141を駆動するドライバ回路132の制御値が記録されているLUT133と、温度モニタ135の温度値とメモリ134に記録された温度値とを比較しLUT133にて参照しドライバ回路132に制御信号を出力するCPU131と、を備える。
【0051】
図6を用いて駆動機構108の構成を説明する。MEMSミラーアレイ105は、保持部材143の内部において、アレイ方向(アレイが並ぶ方向)に摺動可能に配置されている。MEMSミラーアレイ105のアレイ方向の一端には、ピエゾ素子141の一端が固定され、他端には、弾性部材142(例えばバネ)の一端が固定されている。ピエゾ素子141の他端は保持部材143の内壁に固定され、弾性部材142の他端も保持部材143の内壁に固定されている。ピエゾ素子141及び弾性部材142の固定は、例えば接着によって行う。これにより、ピエゾ素子141、MEMSミラーアレイ105、及び弾性部材142は、MEMSミラーアレイ105のアレイ方向(アレイが並ぶ方向)に沿って並び、MEMSミラーアレイ105は、ピエゾ素子141の伸縮に応じて摺動する。
【0052】
次に第1実施形態の波長選択スイッチ100の動作について図7を用いて説明する。図7は第1実施形態の波長選択スイッチ100の動作の流れを示すフローチャートである。図8は、ピエゾ素子141の駆動制御値を温度に対応させて示した表である。
【0053】
LUT133には、例えば図8のような、各温度に対するドライバ制御値がリファレンスとして取得されている。図8において、例えば温度Txの時の駆動制御値として0xXXXXが格納されている。ここで、「0xXXXX」は6桁の16進数を示している。
以下の説明において、メモリ134には、温度値Tyが格納されており、初期値はTy=0としている。また、温度モニタ135の温度値は、Txとする。
【0054】
波長選択スイッチ100の内部の温度は温度モニタ135で取得し、CPU131により波長選択スイッチ100の内部の温度変化を監視している。
まず、CPU131は、温度モニタ135の温度値Txを読み取る(ステップS101)。次に、CPU131は、読み取ったTxと、メモリ134に格納されている温度値Tyと、の比較を行う(ステップS102)。
【0055】
比較の結果、Tx=Tyであれば(ステップS103でT)、温度変化が起こるまでステップS101からS103までを繰り返す。
【0056】
これに対して、比較の結果、Tx≠Tyであれば(ステップS103でF)、メモリ134内のTyの値をTxに書き換える(ステップS104)。次に、CPU131は、LUT133を参照し、Txに対応するドライバ回路132の制御値0xXXXXを取得する(ステップS105)。さらに、CPU131は、取得した制御値を制御信号としてドライバ回路132に出力する(ステップS106)。
【0057】
つづいて、ドライバ回路132は、制御値0xXXXXに対応した電圧をピエゾ素子141に印加する(ステップS107)。これにより、ピエゾ素子141が駆動し、MEMSミラーアレイ105は、温度Tx時の位置に移動する(ステップS108)。
【0058】
以後、温度変化が起こるまで上述のステップS101からS103までを繰り返し、Tx≠Tyを検出する(ステップS103でF)たびに、上記ステップS104からS108を実行する。
【0059】
以上の動作により、波長選択スイッチ100内で温度変化が起きると、MEMSミラーアレイ105が移動してその位置を変更することができる。したがって、温度変化が起きて分散素子の分散特性が変化したとしても、正確なスイッチングができる。
【0060】
なお、第1実施形態の波長選択スイッチ100では、MEMSミラーアレイ105をアレイ方向に駆動するためにピエゾ素子141を用いているが、ピエゾ素子141に代えて、モーター付マイクロメータや他のアクチュエータなどの駆動手段を用いることもできる。
【0061】
また、MEMSミラーアレイ105を基板109に対して波長分散方向に並進駆動することに代えて、又は、並進駆動することに加えて、レンズ104を波長分散方向に並進駆動させてもよい。レンズ104の並進駆動は、例えば、上述のMEMSミラーアレイ105の並進駆動と同様にピエゾ素子141を用いた駆動機構で行うことができる。
【0062】
また、第1実施形態の波長選択スイッチ100では、CPU131、LUT133、及びメモリ134を用いてMEMSミラーアレイ105の駆動量に相当するドライバ回路132の制御値を参照しているが、LUT133を用いずに温度から制御値を換算しても良い。例えば、LUT133ではなく温度に対するドライバ回路132の制御値を換算する換算式をメモリ134にあらかじめ保存しておき、受信した温度に応じて換算式を基に制御値を算出しても良い。
【0063】
第1実施形態波長選択スイッチ100においては、駆動量を参照する制御機構106を有するため、経年変化などによってMEMSミラーアレイ105と各波長光との位置ズレ量が変化したとしても、テーブルの書き換えやプログラムの修正を行うことにより駆動量を変化させやすい。
【0064】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態の駆動機構の構成を示す図である。第2実施形態の波長選択スイッチは、第1実施形態に対し、制御機構106と温度センサ107がなく、MEMSミラーアレイ105の駆動機構108として伸縮部材201を用いている(図9)。以下の説明では、第1実施形態と構成が異なる駆動機構について説明し、それ以外の構成についての詳細な説明は省略する。
【0065】
MEMSミラーアレイ105は、ケース部材203内に収容され、ケース部材203は、MEMSミラー保持部材202内に保持されている。ケース部材203の外面には、MEMSミラー保持部材202の内壁207と接触する突起部203aと、MEMSミラー保持部材202の内壁207にあってケース部材203と対向する内壁204と接触する突起部203b、203cが設けられている。
【0066】
伸縮部材201は、MEMSミラーアレイ105への入射光の波長分散方向(アレイ方向、図9の左右方向)にのみ伸縮するように、一方がMEMSミラーアレイ105と連結され、他方がMEMSミラー保持部材202と連結されている。
伸縮部材201は、例えば、線膨張係数の大きなアルミで構成されており、温度変化に伴って伸縮する。
【0067】
以上の構成により、温度変化に伴い、MEMSミラーアレイ105は、MEMSミラー保持部材202に対して摺動しつつ、伸縮部材201の伸縮量分だけ位置を変化することが可能となる。すなわち、MEMSミラーアレイ105への入射光の光学系の波長分散方向に位置を変更することが可能となる。
【0068】
第2実施形態の駆動機構の動作について、図10を用いて説明する。図10(a)は、常温における駆動機構の状態を示す図、(b)は常温よりも高い温度になったときの入射光線のアレイ方向のシフトを示す図、(c)は常温よりも高い温度になったときのMEMSミラーアレイ105のアレイ方向のシフトを示す図である。
【0069】
図10(a)に示す例では、常温において、入射光線がMEMSミラーアレイ105の各ミラーに入射するように設定している。
これに対して、周辺雰囲気が変化し、波長選択スイッチ内の温度が上昇していくと、グレーティング103の屈折率変化等により、MEMSミラーアレイ105への入射光線が、波長分散方向へシフトしていく(図10(b))。
【0070】
一方、伸縮部材201は、温度変化による伸縮量を、同じ温度変化による入射光線のシフト量に対応させている。このため、温度上昇に伴って伸縮部材201が所定量伸縮し、これにより、MEMSミラーアレイ105は、入射光線のシフト分に対応する量E21だけ位置を変更する(図10(c))。図10では温度が上昇する場合を示しているが、温度が下降した場合も上昇時とは逆方向に同様である。
尚、駆動機構の動作を分かりやすく説明するために、図10(b)と図10(c)を別々に記載しているが、実際には、伸縮部材201の伸縮と入射光線のシフトは同時に進行しており、MEMSミラーアレイ105が所望の位置へ移動する際に、遅れが生じるわけではない。
【0071】
なお、伸縮部材201と、MEMSミラー保持部材202及びケース部材203と、のそれぞれの波長分散方向の境界は、固定されずに当接されていてもよい。この場合、例えば、図11に示すように、伸縮部材201の両端が、MEMSミラー保持部材202の内壁205、及びケース部材203の一端にそれぞれ当接しているとともに、緩衝部材212及び弾性部材211が、ケース部材203の、伸縮部材201と相対する他端に連結している。緩衝部材212としては、例えばダンパーがあり、弾性部材211としては、例えば第1実施形態の弾性部材142と同様のバネを用いる。また、緩衝部材212及び弾性部材211は、MEMSミラー保持部材202の内壁であって内壁205に対向する内壁206に連結されている。ここで、図11は、第2実施形態の変形例に係る駆動機構の構成を示す図である。
【0072】
第2実施形態の波長選択スイッチによれば、第1実施形態における、駆動機構108と制御機構106からの配線、測温部(温度センサ107及び温度モニタ135)、及び、制御機構106が不要であるため、波長選択スイッチ全体を簡略化できる。
なお、その他の構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。
【0073】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態の駆動機構の構成を示す図である。
第3実施形態の波長選択スイッチは、第2実施形態に対し、伸縮部材301の伸縮方向と、MEMSミラーアレイ105の移動方向と、の関係が異なる。別言すれば、第2実施形態では、伸縮部材201の伸縮方向が、MEMSミラーアレイ105の移動方向上にあったが、第3実施形態では、両者の方向が互いに一定の角度(例えば90度)をなしている。
【0074】
第3実施形態では、第1実施形態の波長選択スイッチ100に対して、ピエゾ素子141及び弾性部材142に代えて伸縮部材301及び弾性部材311をそれぞれ備え、さらに、緩衝部材312を有している。
【0075】
MEMSミラーアレイ105は、ケース部材303内に収容され、ケース部材303は、MEMSミラーアレイ105がアレイ方向に移動可能に、MEMSミラー保持部材302内に保持されている。ケース部材303の外面には、MEMSミラー保持部材302の内壁と接触する突起部303aと、MEMSミラー保持部材302の内壁と接触する、突起部303b、303cが設けられている。ケース部材303のアレイ方向の一端には、伸縮部材301の下端面301cが当接する接触端面303dが設けられている。下端面301c及び接触端面303dはいずれも平面である。伸縮部材301の下端面301cとケース部材303の接触端面303dは、アレイ方向に対して一定の角度をなして互いに当接するように形成されている。
【0076】
伸縮部材301の上端はMEMSミラー保持部材302の内壁305に固定されている。また、伸縮部材301の外面には、MEMSミラー保持部材302の内壁304と接触する突起部301a、301bが設けられている。
【0077】
伸縮部材301は、MEMSミラーアレイ105への入射光線の波長分散方向(図12の左右方向)にのみ伸縮が反映されるよう、一端がMEMSミラーアレイ105と当接し、他方が、MEMSミラー保持部材302の内壁304と連結されている。さらに、伸縮部材301は、その伸縮方向が、波長分散方向と一定の角度を持って配されるよう構成されている。
【0078】
弾性部材311及び緩衝部材312は、波長分散方向にそれぞれ伸縮するよう、一方をMEMSミラーアレイ105と連結もしくは当接されており、他方を、MEMSミラー保持部材302の左側内壁306と連結もしくは当接されるよう構成されている。
【0079】
伸縮部材301は、例えば、線膨張係数の大きなアルミなどで構成されており、温度変化に伴って伸縮する。よって、温度変化に伴い、MEMSミラーアレイ105は、MEMSミラー保持部材302に対し、伸縮部材301の伸縮量分に比例して位置を変化することが可能となる。すなわち、MEMSミラーアレイ105は、波長分散方向に線形に位置を変更することが可能となる。
【0080】
尚、MEMSミラーアレイ105と伸縮部材301の当接部を曲線(曲面)形状とすると、温度変化に伴う、MEMSミラーアレイ105の、波長分散方向の位置変化を非線形とすることが可能となる。
【0081】
本構成の動作について、図13を用いて説明する。図13(a)は、常温における駆動機構の状態を示す図、(b)は常温よりも高い温度になったときの入射光線のアレイ方向のシフトを示す図、(c)は常温よりも高い温度になったときのMEMSミラーアレイのアレイ方向のシフトを示す図である。
【0082】
図13(a)の状態から、周辺雰囲気が変化し、温度が上昇していくと、グレーティング103の屈折率変化等で、MEMSミラーアレイ105への入射光線が、波長分散方向(図12、13の左右方向)へシフトしていく(図13(b))。
【0083】
一方、伸縮部材301は、温度変化による伸縮量が最適化されている。具体的には、温度変化による入射光線のシフト量(図13(b))と、MEMSミラーアレイ105の移動量と、が対応するように、伸縮部材301の線膨張係数から求められる伸縮量が最適化されている。これにより、温度上昇に伴い、MEMSミラーアレイ105は、入射光線のシフト分に対応する量E31だけ位置を変更する(図13(c))。図13では温度が上昇する場合を示しているが、温度が下降した場合も上昇時とは逆方向に同様である。
尚、駆動機構の動作を分かりやすく説明するために、図13(b)と図13(c)を別々に記載しているが、実際には、同時に進行しており、MEMSミラーアレイ105が所望の位置へ移動する際に、遅れが生じるわけではない。
【0084】
以上の説明ではケース部材303の接触端面303d及び伸縮部材301の下端面301cを平面としてMEMSミラーアレイ105の波長分散方向への移動量の変化を線形としたが、接触端面303d及び下端面301cを互いに当接可能な曲面形状とすれば、MEMSミラーアレイ105の波長分散方向への移動量を非線形にすることも可能である。
【0085】
第3実施形態の波長選択スイッチにおいては、線形の伸縮部材の伸縮により非線形の運動が可能となる。
なお、その他の構成、作用、効果については、第1実施形態又は第2実施形態と同様である。
【0086】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態に係る波長選択スイッチについて説明する。図14は、第4実施形態の回転機構(駆動機構)の構成を示す図である。この回転機構は、グレーティング403の向きを変えるためのものである。第4実施形態に係る波長選択スイッチは、第1実施形態に係る波長選択スイッチ100からMEMSミラーアレイ105の駆動装置108、温度センサ107、制御機構106を省き、第1実施形態のグレーティング103と同様の構成のグレーティング403に対して、図14に示す回転機構を取り付けたものである。なお、常温時において、グレーティング403の配置は第1の実施形態と同様であり、装置全体の動作も同様である。
【0087】
図15は、温度変化に対する、グレーティング403による偏向角の変化を示す図である。
グレーティング403への入射光線L41の出射光線のなす角を偏向角とし、温度Tのときに周波数νの光のグレーティング403による偏向角をθ(νi,T)とする。
【0088】
温度が変化したときはグレーティング403の光学特性が変わる。主な原因はグレーティング403のイマージョン媒質の屈折率変化である。このため、グレーティング403に対し入射角が同じであっても出射角が変化する。すなわちT≠Tのときθ(νi,T)≠θ(νi,)となる。
【0089】
しかし、温度Tのときにグレーティング403をある角度Δθ(T)だけ回転させることによりθ(νi,T)=θ(νi,)とすることはできる。T<T<TのそれぞれのTに対するグレーティング403の回転Δθ(T)を与えることにより、すべてのνiL≦ν≦νiH−1に対して次式(3)が成り立つようにすれば、温度範囲T<T<Tにおいて、それぞれの周波数νの光の偏向角はほとんど変わらないと言える。
【0090】
【数8】

【0091】
なお、式(3)の分子は図15の角度A40に対応し、式(3)の分母は図15の角度A41に対応する。
また、分散素子が2以上の部材に分かれているときは、それらを一体とみなして入射角と出射角を定義する。また、回転させる部材はそのうちの少なくともひとつでよい。
【0092】
グレーティング403の回転機構の構成について、図14を参照しつつ説明する。
図14に示す回転機構は、台座409と、伸縮部材408と、弾性部材411と、緩衝部材412と、を有している。
【0093】
台座409は、上面として、軸409dを中心とする円形の平面形状を備える。軸409dは、台座409の平面内で互いに垂直な2つの軸409b、409cのそれぞれに直交する。台座409の円形平面の外周からは、軸409c方向に延びる腕部409aが形成されている。台座409は、不図示の軸部材によって、基板109(図1)に対し、波長分散方向にも光軸方向にも垂直(図14の紙面に垂直)な軸409dに関し、回転可能に軸支されている。また、台座409の上面には、グレーティング403が固定保持される。
【0094】
伸縮部材408は、柱状の部材であって、その軸方向の一端は、台座409の軸409cに連結もしくは当接されている。また、伸縮部材408の軸方向の他端は、基板109に固定された基部410に連結もしくは当接されている。伸縮部材408と、基部410及び軸409cと、がそれぞれ連結もしくは当接する位置を結ぶ直線は、台座409を回転可能に軸支されている軸409dを通らないよう構成されている。別言すると、伸縮部材408の軸方向は、軸409dと交差していない。
【0095】
伸縮部材408は、例えば、線膨張係数の大きなアルミなどで構成されており、温度変化に伴って伸縮する。よって、温度変化に伴い、グレーティング403は、基部410、413に対し、波長分散方向にも光軸方向にも垂直な軸409dに関して、角度を変更することが可能となる。
【0096】
弾性部材411は、例えばバネであり、一端が台座409の軸409cに連結もしくは当接されており、他端が、基板109に固定された基部413に連結もしくは当接している。したがって、弾性部材411と伸縮部材408は、台座409の軸409cを挟んで相対するように配置されている。
【0097】
緩衝部材412は、例えばダンパーであり、弾性部材411と同様に、一端が台座409の軸409cに連結もしくは当接され、他端が、基部413に連結もしくは当接しており、台座409の軸409cを挟んで伸縮部材408と相対するように配置されている。
【0098】
本構成の動作について、図16を用いて説明する。図16(a)は、常温における回転機構の状態を示す図、(b)は常温よりも高い温度になったときの偏向角の変化を示す図、(c)は常温よりも高い温度になったときの台座409の回転を示す図である。
【0099】
図16(a)に示す常温状態では、マイクロレンズアレイ102からの入射光は、グレーティング403の斜面上であって軸409dと一致する点で分散され、レンズ104側へ出射される。図16(a)の常温状態から、周辺雰囲気が変化し、温度が上昇していくと、グレーティング403の屈折率変化等で、レンズ104へ向かう光線のグレーティング403からの出射角度も変化する(図16(b))。このためファイバアレイ101から来た光線と、MEMSミラーアレイ105に向かう光線のなす角、つまり偏向角が減少する。
【0100】
第4実施形態の波長選択スイッチでは、温度変化による、偏向角の変化量と伸縮部材408の線膨張係数から求められる伸縮量と、を互いに対応させている。具体的には、偏向角の変化量に対応した量E41だけ伸縮部材408が基部413側に伸張し、これにより台座409が軸409dの周りを回転する。これにより、回折面403aに対するマイクロレンズアレイ102からの光の入射角が減少する(図16(c))。したがって、温度上昇に伴い、グレーティング403は、偏向角の変化分を補正するだけ入射光に対する角度を変更することができる。
つまり、図16(a)と図16(c)において、偏向角は等しくなる。また、温度が下降した場合も上昇時とは逆方向に同様である。
尚、回転機構の動作を分かりやすく説明するために、図16(b)と図16(c)を別々に記載しているが、実際には、同時に進行しており、グレーティング403が所望の位置へ移動する際に、遅れが生じるわけではない。
【0101】
第4実施形態の波長選択スイッチでは、台座409の回転中心である軸409dから、伸縮部材408と台座409の軸409cとが互いに当接する位置までの距離を適切に設定することにより、所望の回転量を得ることができる。
【0102】
また、伸縮部材408は、第1実施形態のピエゾ素子141のように制御可能な駆動手段を設けたものであってもよい。その場合は温度センサ107と制御機構106も備えることが好ましい。制御機構106に含まれるCPU131、LUT133、メモリ134を用いて分散素子の回転駆動量に相当するドライバ回路132の制御値を参照してもよいし、LUT133を用いずに温度から制御値を換算しても良い。
なお、その他の構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。
【0103】
(第5実施形態)
図17を参照して、第5実施形態に係る波長選択スイッチについて説明する。図17は、第5実施形態の回転機構(駆動機構)の構成を示す図である。
第5実施形態の波長選択スイッチは、第4実施形態に対し、グレーティング503の向きを変える回転機構の構成が異なる。
【0104】
グレーティング503は、第4実施形態のグレーティング403と同様の構成である。図17に示す回転機構は、台座509と、伸縮部材511と、を有している。
台座509は、基板109(図1)に固定された基部510に対し、波長分散方向にも光軸方向にも垂直(図17の紙面に垂直)な軸509aに関し、回転可能に軸支されている。台座509は、上面として、軸509aを中心とする円形の平面形状を備える。台座509の上面には、グレーティング503が保持される。
【0105】
伸縮部材511は、例えば、渦巻きバネであって、台座509の軸509a側から外周側へ発条状に配置される。さらに、伸縮部材511は、台座509の上面に設けた溝(不図示)内に摺動可能に保持され、軸509a側の一端は台座509に固定され、他端は基部510に固定されている。
【0106】
伸縮部材511は、例えば、線膨張係数の大きなアルミ材などで構成されており、温度変化に伴って伸縮する。したがって、温度変化に伴って伸縮部材511が溝内で伸縮すると、伸縮に対応して台座509が軸509aの周りを回転し、グレーティング503は、基部510に対し、軸509aに関して、角度を変更することが可能となる。
この構成によれば、第4実施形態の伸縮部材408よりも、伸縮部材511の方が台座509の回転量を大きくしやすい。
【0107】
第5実施形態の波長選択スイッチにおいては、伸縮部材511の巻き数を適切に設定することによって、所望の回転量を得ることができる。
なお、伸縮部材511は、第1実施形態のように制御可能な駆動手段を設けたものであってもよい。
【0108】
また、MEMSミラーアレイ105の波長分散方向への移動とグレーティング103の角度の変更が同時に起こるようになっていてもかまわない。
なお、その他の構成、作用、効果については、第4実施形態と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上のように、本発明に係る波長選択スイッチは、温度変化が起きても正確なスイッチングが求められる波長選択スイッチに有用である。
【符号の説明】
【0110】
100 波長選択スイッチ
101 ファイバアレイ
102 マイクロレンズアレイ
103 グレーティング
104 レンズ
105 MEMSミラーアレイ
106 制御機構
107 温度センサ
108 駆動機構
109 基板
111 入射面
112 回折面
132 ドライバ回路
133 LUT
134 メモリ
135 温度モニタ
141 ピエゾ素子
142 弾性部材
143 保持部材
201 伸縮部材
202 MEMSミラー保持部材
203 ケース部材
204、205、206、207 内壁
211 弾性部材
212 緩衝部材
301 伸縮部材
302 MEMSミラー保持部材
303 ケース部材
303d 接触端面
304、305、306 内壁
311 弾性部材
312 緩衝部材
403 グレーティング
408 伸縮部材
409 台座
409a 腕部
409b、409c、409d 軸
410 基部
411 弾性部材
412 緩衝部材
413 基部
503 グレーティング
509 台座
509a 軸
510 基部
511 伸縮部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を備えた波長選択スイッチであって、
前記基板上に、
前記波長選択スイッチ内に波長多重された光を入射させる少なくとも一つの入力部と、
前記入力部からの前記光を受光し、前記光を分散させる分散素子と、
前記分散素子によって分散された光を波長ごとに集光する集光要素と、
前記集光要素からの前記波長ごとの光を波長ごとに独立に偏向可能な、複数の偏向素子を有する光偏向部材と、
前記光偏向部材によって偏向された前記波長ごとの光を受光する出力部と、
前記分散素子、前記集光要素、及び前記光偏向部材の少なくともひとつを駆動させる駆動機構と、を備え、
前記駆動機構による駆動は、前記分散素子の場合は前記基板に対して垂直な軸の周りの回転駆動であり、前記集光要素もしくは前記光偏光部材の場合は前記基板に対して波長分散方向の並進であることを特徴とする波長選択スイッチ。
【請求項2】
すべてのνiL≦ν≦νiH−1、T<T<Tに対して次式(1)が成り立つことを特徴とする請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【数1】

ただし、
νはグリッド周波数、
νiLは使用帯域の最低グリッド周波数、
νiHは同最高グリッド周波数、
iL、i、iHはiL≦i≦iHを満たす整数、
ν<νi+1
Tは温度、
は使用温度の範囲の最低温度、
は使用温度の範囲の最高温度、
<T<T
S(νi,T)は温度Tのときに周波数νの光の主光線と前記光偏向部材と重なる面との交点、であり、
、Sの2点間距離を次式(2)で表す。
【数2】

【請求項3】
装置内の温度を測定する測温部と、
前記測温部から温度情報を受け取り、温度情報に基づく駆動量で前記駆動機構を駆動させる制御系と、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の波長選択スイッチ。
【請求項4】
前記駆動機構が、温度変化によってそれ自体が伸縮する伸縮部材を含んでいることを特徴とする請求項2に記載の波長選択スイッチ。
【請求項5】
すべてのνiL≦ν≦νiH−1、T<T<Tに対して次式(3)が成り立つことを特徴とする請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【数3】

ただし、
θ(νi,T)は温度Tのときに周波数νの光の前記偏光素子による偏向角である。
【請求項6】
装置内の温度を測定する測温部と、
前記測温部から温度情報を受け取り、温度情報に基づく駆動量で前記駆動機構を駆動させる制御系と、
を備えたことを特徴とする請求項5に記載の波長選択スイッチ。
【請求項7】
前記駆動機構が、温度変化によってそれ自体が伸縮する伸縮部材を含んでいることを特徴とする請求項6に記載の波長選択スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−185971(P2011−185971A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47818(P2010−47818)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】