説明

泥土の袋詰め脱水用袋及び袋詰め脱水処理方法

【課題】 袋体内に充填された泥土をより速やかに脱水することが可能な袋詰め脱水用袋を提供すること。
【解決手段】 袋詰め脱水用袋1は、透水性を有する布帛からなり、その内部に泥土30を注入するための注入口2aを有する袋体2と、袋体2内にその内部空間を横切るように配設され、且つ、袋体2内に開口するスリット3bを有する筒状排水材3と、袋体2の注入口2aと筒状排水材3の内部とを連通させる連通材4とを備えている。そのため、袋体2内に充填された泥土30から、筒状排水材3を介して袋体2の表面まで水分が排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高含水比の泥土を注入して袋詰め脱水を行う際に使用される泥土の袋詰め脱水用袋及びその袋詰め脱水処理方法に関し、特に、環境汚染物質を含有する泥土の脱水に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
河川、湖沼、海洋などで浚渫された高含水比の泥土の脱水処理としては、布帛等からなり透水性を有する袋体に、高含水比泥土をポンプ等により圧送して充填してから、袋体を一定期間放置する、いわゆる、袋詰め脱水処理が広く採用されている(例えば、特許文献1参照)。このようにして脱水された処理土は、袋詰め状態で盛土や埋土として積み重ねられたり、あるいは、覆土などとして有効利用される。
【0003】
【特許文献1】特許第2535302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の袋詰め脱水処理では、袋体内に充填された泥土は、その水分が袋体の表面から蒸発することにより脱水されるが、この袋体内の中心付近に位置しており袋体の表面から離れた泥土の水分は蒸発しにくいために、脱水処理が完了するまでに長い時間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、袋体内に充填された泥土をより速やかに脱水することが可能な袋詰め脱水用袋を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
第1の発明の泥土の袋詰め脱水用袋は、高含水比の泥土を注入して袋詰め脱水を行うための袋であって、透水性を有する布帛からなり、その内部に泥土を注入するための注入口を有する袋体と、前記袋体内にその内部空間を横切るように配設され、且つ、前記袋体内に開口する開口部を有する筒状排水材と、前記袋体の注入口と前記筒状排水材の内部とを連通させる連通材とを備えていることを特徴とするものである。
【0007】
この袋詰め脱水用袋は、袋体内に高含水比の泥土が充填された後、泥土が十分に脱水されるまで一定期間放置される。ここで、袋体の内部空間の中心付近に位置する泥土は、袋体の表面から離れているために、表面付近の泥土と比べて脱水されにくい。しかし、この第1の発明の脱水用袋においては、袋体内にその内部空間を横切るように筒状排水材が配設されているため、袋体内に泥土が充填された状態で、その中心付近の泥土から水分が筒状排水材を伝って袋体の表面へ移動し、外部へ排出されるため、脱水時間が短縮される。
【0008】
また、筒状排水材は袋体内に開口する開口部を有し、この筒状排水材の内部は、連通材を介して袋体の注入口と連通しているため、注入口から注入された泥土は、連通材及び筒状排水材を通って、筒状排水材の開口部から袋体内に充填される。そのため、袋体内に泥土が注入されていくにつれ、筒状排水材の内部にも泥土が充填されて膨張することになり、筒状排水材がその外側の泥土により押し潰されることなく袋体内で筒状に保持されるので、筒状排水材が袋体の内面に押しつけられることがない。従って、袋体内の泥土に含まれる水分が筒状排水材を伝ってスムーズに表面まで移動するため、脱水時間がさらに短縮される。
【0009】
また、注入された泥土は袋体の内面に直接注入されず、連通材の内部及び筒状排水材の内部を経由して袋体の中に充填される。このため、注入された泥土の流れに乱れが発生せず、袋体の内面に形成された泥膜が破壊されないので、袋詰め脱水においてしばしば見られる注入開始直後の排出水の濁り(初期濁り)を効果的に抑えることができ、環境汚染物質を含有するような泥土の脱水に特に有効である。また、注入された泥土は、筒状排水材の中を通過する間に濾過されるので、これによっても濁りが除去される。
【0010】
第2の発明の泥土の袋詰め脱水用袋は、前記第1の発明において、前記連通材は、前記筒状排水材の一端部においてこの筒状排水材の内部と連通しており、前記開口部は前記筒状排水材の他端部に形成されていることを特徴とするものである。従って、注入口から連通材を介して筒状排水材の一端部内に流入した泥土は、この筒状排水材の内部を通って、他端部に形成された開口部から袋体内に流れる。そのため、袋体内に泥土が注入されていくにつれ、筒状排水材の内部に確実に泥土が充填されることから、筒状排水材が泥土により押し潰されることがなく筒状に保持され、袋体の中心付近の泥土に含まれる水分が筒状排水材を介してよりスムーズに袋体の表面へ移動し、外部へ排出される。
【0011】
第3の発明の泥土の袋詰め脱水用袋は、前記第1又は第2の発明において、前記袋体は、一方向に長い形状に形成されており、前記筒状排水材は、前記袋体の内部空間の中心付近を通って袋体の長手方向に延びていることを特徴とするものである。従って、袋体内に泥土が充填されて膨張した状態で、表面から最も離れた位置にある袋体の中心付近の泥土に含まれる水分が、筒状排水材を介して袋体の表面へ確実に移動し、外部へ排出される。また、袋体内で筒状排水材が短手方向に延びるように配設された場合と比べて、筒状排水材の長さが長くなるため、袋体内のより広い範囲の泥土から水分を表面まで移動させて排出することができるようになる。
【0012】
第4の発明の泥土の袋詰め脱水用袋は、前記第3の発明において、前記筒状排水材の長さは、泥土が充填された状態の前記袋体の長手方向の長さに略等しいことを特徴とするものである。そのため、袋体内に泥土が充填されたときには、袋体内部に配設された筒状排水材は袋体の長手方向に直線的に張った状態となるため、泥土に含まれる水分が筒状排水材を伝って確実に袋体の表面まで移動していく。
【0013】
第5の発明の泥土の袋詰め脱水用袋は、前記第1〜第4の何れかの発明において、前記袋体が、複数本の経糸とこれら経糸に対してスパイラル状に連続して織り込まれた緯糸からなる継ぎ目のない筒状織物からなることを特徴とするものである。縫製からなる既存の袋体では、ポンプの注入圧力が袋体に作用しない範囲の高さまで(充填された泥土の自重による引張力のみが脱水用袋に作用している範囲内で)しか充填作業を行えないが、この第5の発明の袋体はその耐圧力が高いために、ポンプ等の注入圧力が作用しても袋体は容易に破断せず、袋体が泥土の注入圧力により膨張して張った状態となるまで泥土を充填できる。このため、脱水用袋1つあたりの泥土の充填量を増やすことができる。さらに、泥土が充填されて膨張した脱水用袋内の泥土には高い圧力が作用しているため、この状態で放置されたときに泥土からの脱水が促進される。
【0014】
第6の発明の袋詰め脱水処理方法は、前記第1〜第5の何れかの袋詰め脱水用袋を用いて高含水比の泥土の袋詰め脱水処理を行う方法であって、前記注入口から前記連通材の内部及び前記筒状排水材の内部を経由して前記袋体内に泥土を注入して、前記袋詰め脱水用袋内に泥土を充填し、この袋詰め脱水用袋を放置することにより、その内部に充填された泥土の脱水を行うことを特徴とするものである。
【0015】
注入口から注入された泥土は、連通材及び筒状排水材を通って、筒状排水材の開口部から袋体内に充填される。そのため、袋体内に泥土が注入されていくにつれ、筒状排水材の内部にも泥土が充填されて膨張することになり、筒状排水材がその外側の泥土により押し潰されることなく袋体内で筒状に保持されるので、筒状排水材が袋体の内面に押しつけられることがない。従って、袋体内の泥土に含まれる水分が筒状排水材を伝ってスムーズに表面まで移動するため、脱水時間がさらに短縮される。また、注入された泥土は袋体の内面に直接注入されず、連通材の内部及び筒状排水材の内部を経由して袋体の中に充填される。このため、注入された泥土の流れに乱れが発生せず、袋体の内面に形成された泥膜が破壊されないので、袋詰め脱水においてしばしば見られる注入開始直後の排出水の濁り(初期濁り)を効果的に抑えることができ、環境汚染物質を含有するような泥土の脱水に特に有効である。また、注入された泥土は、筒状排水材の中を通過する間に濾過されるので、これによっても濁りが除去される。
【0016】
第7の発明の袋詰め脱水処理方法は、前記第5の発明の袋詰め脱水用袋を用いて高含水比の泥土の袋詰め脱水処理を行う方法であって、前記袋体内に泥土を注入し、その注入圧力により袋体が膨張するまで前記袋詰め脱水用袋内に泥土を充填し、この袋詰め脱水用袋を放置することにより、その内部に充填された泥土の脱水を行うことを特徴とするものである。本発明の袋体の耐圧力は通常の縫製等により作製されたものよりも高いために、ポンプ等の注入圧力が作用しても袋体は容易に破断せず、袋体が泥土の注入圧力により膨張して張った状態となるまで泥土を充填できる。このため、脱水用袋1つあたりの泥土の充填量を増やすことができる。さらに、泥土が充填されて膨張した脱水用袋内の泥土には高い圧力が作用しているため、この状態で放置されたときに泥土からの脱水が促進される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図1〜図5を参照して説明する。
図1、図2に示すように、本実施形態の泥土の袋詰め脱水用袋1(以下、脱水用袋1という)は、その内部に泥土を注入するための注入口2aを有する袋体2と、この袋体2内にその内部空間を横切るように配設された筒状排水材3と、袋体2の注入口2aと筒状排水材3の内部とを連通させる筒状の連通材4とを有する。
【0018】
袋体2は、その両端部が夫々縫製により閉塞された、透水性を有する筒状織物10(布帛)からなり、その筒長方向(図2の左右方向)に長い形状に形成されている。この筒状織物10は、複数本の並列した経糸と、これらの経糸に対してスパイラル状に連続して織り込まれた緯糸からなる、継ぎ目のない筒状織物である。そのため、この袋体2は高い破断圧力を有しており、後述のように袋体2内にポンプ等の注入手段により泥土を加圧注入して膨張させても、袋体2が容易に破断しない。また、この袋体2は、その内部に泥土が充填されたときに(図5参照)、その短手方向(径方向)に膨張し、これによって、その長手方向(筒長方向)に収縮する。図1、図2に示すように、袋体2を構成する筒状織物10の一方の端部は折り曲げられた状態で縫製されており、この端部には、棒状の吊り具20が挿通される筒状の吊り部2bが形成されている。また、袋体2の上部の略中央部には注入口2aが形成されており、この注入口2aにおいて袋体2に後述の連通材4が接続されている。
【0019】
筒状排水材3は筒状に丸められた不織布からなり、図2に示すように、膨張状態の袋体2内において、その内部空間の中心付近を通って袋体2の長手方向(図2の左右方向)に延びるように配設されている。この筒状排水材3の長さは、泥土が充填された膨張状態の袋体2の長手方向の長さに略等しくなっており、筒状排水材3の両端部は、夫々、閉塞された状態で袋体2の両端部の内面に縫製等により固定されている。従って、袋体2内に泥土が充填されて、袋体2が短手方向に膨張するとともに長手方向に収縮したときには、その内部の筒状排水材3は袋体2の長手方向に直線的に張った状態となる(図5参照)。また、筒状排水材3の一端部(図2における左端部)には、次述の連通材4の端部が挿入されるスリット3aが形成されている。一方、筒状排水材3の他端部(図2における右端部)には、袋体2内へ開口するスリット3b(開口部)が形成されている。
【0020】
図2、図3に示すように、筒状の連通材4は、小径部11aとこの小径部11aから径が拡大しながら延びる径拡大部11bとを有する、異径筒状織物11からなる。そして、この連通材4は、その径拡大部11bにおいて袋体2の注入口2aに縫製により接続されている。このように、連通材4は、径拡大部11bにおいて袋体2の注入口2aに接続されているため、この連通材4と袋体2との接続状態が自然なものとなり、後述のように、袋体2内に泥土30が注入されて袋体2が膨張するときに、袋体2が局所的に膨張することがない。
【0021】
一方、小径部11aは、内側に折り返されて袋体2の内部に入り込んでいる。そして、小径部11aが折り返されて形成された折り返し部4aは、袋体2の注入口2aから上方へ突出しており、この折り返し部4aには泥土注入用の注入ホース21(図4参照)が挿入される。また、小径部11aの端部は、スリット3aから筒状排水材3の一端部(図2の左端部)内に挿入されている。さらに、図2、図3に示すように、筒状排水材3内に入り込んだ小径部11aの端部にはスリット4bが形成されており、このスリット4bを介して連通材4と筒状排水材3とが連通している。また、小径部11aの先端部は、袋体2を形成する筒状織物10の、吊り部2bと反対側の端部と一緒に縫製されて、先端が閉塞された状態で固定されている。そして、この連通材4を介して袋体2の注入口2aと筒状排水材3の内部とが連通した状態となっている。
【0022】
次に、この脱水用袋1を用いた高含水比の泥土30の袋詰め脱水処理について説明する。
まず、図4に示すように、折り返し部4aの内部に注入ホース21を挿入し、この注入ホース21から袋体2内に泥土30を注入していく。ここで、泥土30が注入されて袋体2が膨張したときに、注入ホース21が押し上げられることがないように、注入ホース21により袋体2を少し吊り上げて、袋体2の内部に空間が生じている状態で泥土30を注入することが好ましい。
【0023】
このとき、図4に示すように、注入ホース21から注入された泥土30は、連通材4を通ってスリット4bから筒状排水材3の一端部(図2の左端部)内に流入する。さらに、この泥土30は、筒状排水材3内を通って他端部(図2の右端部)に形成されたスリット3aから袋体2内へ流れ込み、袋体2の内部に泥土30が堆積していく。そして、泥土30は袋体2の下部から徐々に充填され、注入圧力により袋体2はその短手方向(径方向)に膨張するとともに、長手方向(筒長方向)に収縮する。
【0024】
このように、注入された泥土は袋体2の内面に直接注入されず、連通材4の内部及び不織布からなる筒状排水材3の内部を経由して袋体2の中に充填されていく。そのため、注入された泥土の流れに乱れが発生せず、袋体2の内面に形成された泥膜が破壊されることがないので、特に注入初期において袋体2から排出される水の濁り(初期濁り)を効果的に抑えることができ、環境汚染物質を含有するような泥土の脱水にも有効である。また、注入された泥土30は、筒状排水材3内を通過する間に濾過されるので、これによっても濁りが除去される。
【0025】
この泥土30の注入中、筒状排水材3の内部に泥土30が充填されて、筒状排水材3が膨張していく。ここで、前述したように、筒状排水材3の長さは、泥土30が充填されて径方向に膨張した状態での、袋体2の長手方向長さに略等しい。そのため、筒状排水材3の内部に泥土30が充填されていくと、図5に示すように、筒状排水材3は、袋体2の長手方向に張った状態で筒状に保持され、袋体2の内面に押しつけられたり、周囲の泥土30に押し潰されることがない。
【0026】
さらに、袋体2内に泥土30を注入していくと、図5に示すように、袋体2の上部まで堆積してきた泥土30が、折り返し部4a及び袋体2の内部に入り込んだ小径部11aの一方側(図5における小径部11aの右側の空間)に集中して充填される。すると、袋体2内に入り込んだ小径部11aがこの泥土30により圧迫されて袋体2の内面に押しつけられ、小径部11aが閉塞される。従って、泥土30が袋体2内に充填された後に、連通材4の折り返し部4aから外部へ泥土30が逆流しないようになる。尚、泥土30を袋体2内に充填した後に、袋体2を圧縮しながら、注入ホース21側から連通材4の内部を減圧することにより、小径部11aをその周囲の泥土30によりさらに確実に押し潰して完全に閉塞することが好ましい。
【0027】
このようにして袋体2内に泥土30を充填した後に、その泥土30を脱水するために、脱水用袋1を一定期間放置する。ここで、袋体2内の泥土30は、袋体2の表面から離れた中心付近に位置している部分ほど、その水分が袋体2の表面まで移動しにくく、外部へ排出されにくいため、脱水に時間がかかる。しかし、本実施形態の脱水用袋1においては、図5に示すように、泥土30が充填された膨張状態の袋体2内には、その内部空間の中心付近を横切る筒状排水材3が袋体2の長手方向に延びた状態で配設されている。そのため、袋体2内の中心付近に位置する泥土30の水分は筒状排水材3を伝って袋体2の表面まで速やかに移動し、外部へ排出される。この場合には、泥土中の水分が短時間で袋体2の表面へ移動して外部へ排出されるため、脱水時間が短縮される。また、膨張した袋体2内の泥土には高い注入圧力が作用しているため、袋体2が放置されたときの泥土からの脱水が促進される。
【0028】
また、前述したように、泥土30の注入中に筒状排水材3内にも泥土30が充填されて、筒状排水材3は、泥土30に押し潰されることなく、袋体2内でその長手方向に張った状態で筒状に保持されるので、筒状排水材3が袋体2の内面に押しつけられたりすることがない。そのため、袋体2内の泥土30に含まれる水分は、筒状排水材3を伝ってスムーズに袋体2の表面まで移動するため、脱水時間がさらに短縮される。
【0029】
さらに、本実施形態の脱水用袋1では、筒状排水材3は袋体2内の内部空間の中心付近を通ってその長手方向に延びている。この場合には、筒状排水材3が短手方向に延びている場合と比べて筒状排水材3の長さが長くなるため、袋体2内のより広い範囲の泥土30から筒状排水材3を伝って水分が表面へ排出されることになり、泥土30の脱水がさらに効率よく行われる。
【0030】
尚、図5に示すように、泥土30の脱水がほぼ完了した状態の脱水用袋1は、扁平な断面形状を有し、安定性がよいため、この脱水用袋1を土嚢などに利用することができる。この場合には、図1に示すように、脱水用袋1を、吊り部2bに挿通された吊り具20を介してクレーン等により引き上げることにより、所定の場所へ運搬することが可能である。
【0031】
次に、本実施形態の脱水用袋1による効果を、具体的に検証した実施例について説明する。
本実施例においては、まず、袋体2として、直径1.0m、長さ2.5mで、ポリエステル繊維製の目付527g/m2、内容積1.3m3の筒状織物10からなるものを使用する。筒状織物10は、前述の通り円周方向に継ぎ目のない筒状織物であって、この筒状織物10からなる袋体2は、0.1MPaという高い耐圧力を有している。また、筒状排水材3としては、直径約50cm、厚さ2mm、長さ2.2mで、目付165g/m2の不織布を筒状に丸めたものを使用した。尚、この筒状排水材3の長さは、袋体2が膨張してその長さ方向に収縮したときの長さにほぼ一致している。さらに、連通材4としては、小径部11aの径が100mm、径拡大部11bの最大径が200mmのものを使用した。
【0032】
ここで、縫製により筒状に作製された既存の脱水用袋はその耐圧力が低いため、泥土注入時の破断を防ぐために、ポンプの注入圧力が袋体に作用しない範囲の高さまで(充填された泥土の自重による引張力のみが脱水用袋に作用している範囲内で)しか充填作業を行えない。例えば直径1.0mの袋体の場合、50cm程度の高さまでしか充填できない(充填量 約1.2m3)ことがわかっている。しかし、前述の袋体2は0.1MPaもの高い耐圧力を有しているため、注入圧0.03〜0.05MPaで泥土を注入したところ、直径1.0mの袋では、泥土が充填された直後の膨張状態で袋体2の高さが90cm程度(充填量 約1.3m3)に達していたが、袋体2には破断等の問題は全く見られなかった。このことから、既存の同一寸法の袋よりも1袋あたりの充填量を増やせる(本実施例では、約1割増し)ことが実証された。
【0033】
また、袋体2内に泥土を充填してから脱水が終了するまでの時間(袋体高さがほぼ一定となるまでの時間)を、筒状排水材3がない場合と筒状排水材3がある場合でそれぞれ測定して比較した結果を図6に示す。図6に示すように、筒状排水材3がない場合では、袋体2の高さがほぼ一定の高さ(約470mm程度)となるまでに約15日かかるのに対して、筒状排水材3がある場合では約5日しかかかっておらず、筒状排水材3を設けることにより、排水性能が格段に向上することが実証された。
【0034】
さらに、泥土の注入中において袋体2からの排出される排水の濁度を、筒状排水材3がない場合と筒状排水材3がある場合でそれぞれ測定して比較した結果を図7に示す。図7に示すように、筒状排水材3がある場合では、筒状排水材3がない場合に比べて、特に、充填開始から1時間経過するまでに排出される排水の濁度がかなり小さくなっている。このことから、筒状排水材3を設けることにより、排水の初期濁りを抑制する機能が向上することが実証された。
【0035】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
1]前記実施形態の脱水用袋1においては、連通材4の一端部(小径部11a)が袋体2内に折り返されているが、図8に示す脱水用袋31のように、連通材34が、折り返されることなく袋体2の注入口2aに接続されていてもよい。この場合でも、袋体2内に入り込んだ連通材34の部分は袋体2内の泥土により圧迫されるため、袋体2からの泥土の逆流はある程度防止される。
【0036】
2]連通材の端部が筒状排水材3の内部に挿入されている必要は必ずしもなく、図9に示す脱水用袋41のように、連通材44が、穴3aを介して筒状排水材3の内部に連通した状態で、筒状排水材3に縫製等により直接接続されていてもよい。
【0037】
3]筒状排水材と、連通材や袋体の内部を連通させる連通部は、前記実施形態のスリット3a,3b(図2参照)で構成されている必要は必ずしもなく、例えば、スリットよりも大きく開口した略円形状の穴であってもよい。この場合には、連通材4から筒状排水材3を介して袋体2内へ泥土を注入しやすくなる。
【0038】
4]筒状排水材3は、袋体2内でその長手方向に延びている必要は必ずしもなく、例えば、短手方向に延びていてもよいし、あるいは、袋体2内を斜めに横切るように延びていてもよい。但し、袋体2の表面から離れた位置にあるほど泥土は脱水されにくいため、筒状排水材3は、泥土が充填された膨張状態の袋体2内において、その内部空間の中心付近を通るように配設されていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係る袋詰め脱水用袋の斜視図である。
【図2】図1のII-II線断面図である。
【図3】連通材の平面図である。
【図4】袋体へ泥土を注入している途中の状態を示す図である。
【図5】袋体への泥土の注入が完了した状態を示す図である。
【図6】筒状排水材がある場合と筒状排水材がない場合における脱水時間の測定結果を示すグラフである。
【図7】筒状排水材がある場合と筒状排水材がない場合における排水濁度の測定結果を示すグラフである。
【図8】変更形態の袋詰め脱水用袋の図2相当の断面図である。
【図9】別の変更形態の袋詰め脱水用袋の図2相当の断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 袋詰め脱水用袋
2 袋体
2a 注入口
3 筒状排水材
3b スリット
4 連通材
30 泥土
31 袋詰め脱水用袋
34 連通材
41 袋詰め脱水用袋
44 連通材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高含水比の泥土を注入して袋詰め脱水を行うための袋であって、
透水性を有する布帛からなり、その内部に泥土を注入するための注入口を有する袋体と、
前記袋体内にその内部空間を横切るように配設され、且つ、前記袋体内に開口する開口部を有する筒状排水材と、
前記袋体の注入口と前記筒状排水材の内部とを連通させる連通材と、
を備えていることを特徴とする泥土の袋詰め脱水用袋。
【請求項2】
前記連通材は、前記筒状排水材の一端部においてこの筒状排水材の内部と連通しており、前記開口部は前記筒状排水材の他端部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の泥土の袋詰め脱水用袋。
【請求項3】
前記袋体は一方向に長い形状に形成されており、
前記筒状排水材は、前記袋体の内部空間の中心付近を通って袋体の長手方向に延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の泥土の袋詰め脱水用袋。
【請求項4】
前記筒状排水材の長さは、泥土が充填された状態の前記袋体の長手方向の長さに略等しいことを特徴とする請求項3に記載の泥土の袋詰め脱水用袋。
【請求項5】
前記袋体が、複数本の経糸とこれら経糸に対してスパイラル状に連続して織り込まれた緯糸からなる継ぎ目のない筒状織物からなることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の泥土の袋詰め脱水用袋。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の袋詰め脱水用袋を用いて高含水比の泥土の袋詰め脱水処理を行う方法であって、
前記注入口から前記連通材の内部及び前記筒状排水材の内部を経由して前記袋体内に泥土を注入して、前記袋詰め脱水用袋内に泥土を充填し、
この袋詰め脱水用袋を放置することにより、その内部に充填された泥土の脱水を行うことを特徴とする袋詰め脱水処理方法。
【請求項7】
請求項5に記載の袋詰め脱水用袋を用いて高含水比の泥土の袋詰め脱水処理を行う方法であって、
前記袋体内に泥土を注入し、その注入圧力により袋体が膨張するまで前記袋詰め脱水用袋内に泥土を充填し、
この袋詰め脱水用袋を放置することにより、その内部に充填された泥土の脱水を行うことを特徴とする袋詰め脱水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−272077(P2006−272077A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92567(P2005−92567)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000112196)株式会社ピーエス三菱 (181)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】