説明

注入装置および医療画像システム

【課題】本発明は、画像データおよび注入データを一元的に管理し、次の検査または治療に役立てるシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】医療画像撮像装置(300)、注入装置(100)、およびデータベース(610)を保有する病院管理サーバ(600)とを備える医療画像システムであって、注入装置が、記病院管理サーバと通信し、薬液注入データを前記病院管理サーバに送信するデータ出力手段(170)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用透視撮像装置と薬液注入装置を有し、薬液が注入される患者から透視画像を撮像して表示するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、医療用透視撮像装置としては、X線CT(Computed Tomography)スキャナ、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、超音波診断装置、CTアンギオ装置、MRA(MR Angio)装置等が知られている。
【0003】
従来、医療用透視撮像装置(以下、単に撮像装置という。)により撮影された画像情報は、医師が操作する画像ビューワに表示したり、ファイリング室の画像サーバに記録したりする画像記録再生システムが実用化されている(例えば、特許文献1(特開2003−114933号公報)参照)。
【0004】
撮像装置を使用するとき、良好な透視画像を得るため、またはその他の目的のため、患者に造影剤、放射線物質、生理食塩水などの薬液を注入することがしばしば行われ、これらの薬液を自動注入するための注入装置も実用化されている。その際に使用されるシリンジ種別の取り違え防止のために、従来から、薬剤データを記憶したICチップのようなデータキャリア手段を有するシリンジとデータ受信手段を有する注入装置とを備えたシステムなどが提案されている(例えば、特許文献2(特許第3323204号公報)参照)。
【0005】
特許文献3(特開2005−198808号公報)には、注入データをコンピュータに送り、ディスプレイ上に透視画像と共に注入条件を表示するシステムが提案されている。しかし、病院の管理サーバとのデータの送受については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−114933号公報
【特許文献2】特許第3323204号公報
【特許文献3】特開2005−198808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、画像データおよび注入データを一元的に管理し、次の検査または治療に役立てるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、次の事項に関する。
【0009】
1. (i)医療画像撮像装置、および(ii)シリンダとシリンジピストンを備えたシリンジを保持して、前記シリンダに対して前記シリンジピストンを相対移動させるピストン駆動機構と、このピストン駆動機構を制御する制御機構とを備え、患者に薬液を注入する注入装置と、(iii)患者情報を保有する病院管理サーバとを備える医療画像システムにおいて、
前記注入装置は、(a)前記病院管理サーバと通信し、薬液注入データを前記病院管理サーバに送信するデータ出力手段
を有することを特徴とする医療画像システム。
【0010】
2. 前記注入装置は、(b)前記シリンジに備えられたシリンジ情報を記録しているデータキャリア手段からシリンジ情報を受け取るシリンジ情報受領手段を有し、
前記データ出力手段は、さらに前記シリンジ情報を前記病院管理サーバに送信する機能を有することを特徴とする上記1記載の医療画像システム。
【0011】
3. 前記薬液注入データが、使用した薬液に関する情報、注入量、注入時間に対して注入速度を表した注入プロファイル、および注入時間に対して注入圧力を表したプロファイルからなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする上記1または2記載の医療画像システム。
【0012】
4. 前記注入装置は、(c)前記医療画像撮像装置から少なくとも撮像条件情報を受け取る手段を有し、
前記データ出力手段は、さらに撮像条件情報を前記病院管理サーバに送信する機能を有することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の医療画像システム。
【0013】
5. 前記医療画像撮像装置がX線CT装置である場合に、撮像条件情報が、放射線量および放射線照射タイミングの少なくとも1つを含む曝射条件を含むことを特徴とする上記4記載の医療画像システム。
【0014】
6. 上記1〜5のいずれかの医療画像システムで使用される注入装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明の医療画像システムでは、注入装置から実施した注入データ、および必要により撮像装置からの撮像条件データを病院システムに簡便に送ることができるために、データを一元的に管理できる。そのため、CT画像等の透視画像に加えて、造影剤等の薬液注入条件および透視画像撮像条件等のデータのすべてを、医師が操作する画像ビューワに表示することができる。従って、前回の注入条件との比較、または次回の注入条件の決定を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の医療画像システムの1例を示す図である。
【図2】注入装置の1例の外観を示す斜視図である。
【図3】注入装置の注入ヘッドを示す斜視図である。
【図4】本発明の医療画像システムを説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の1実施形態を図面を参照して以下に説明する。図1に示すように、この透視撮像システム1000は、注入装置100と透視撮像装置であるCT装置300を有しており、この注入装置100とCT装置300とが有線または無線接続されている。CT装置300は、スキャナ本体301と制御ユニット302を有している。
【0018】
注入装置100は、例えば図2に示すように、スタンド111に連結されたアーム112の上部に注入ヘッド110が装着され、別体となっている注入制御ユニット101に、ケーブル102によって接続されている。注入制御ユニット101は、メイン操作パネル103、表示部104、さらにケーブル108で接続されたハンドユニット107等を備えている。
【0019】
この注入ヘッド110は、図3に示すように、ヘッド本体113の上面にシリンジ保持機構として、2つの凹部114が形成されており、この凹部114に2つのシリンジ200Cおよび200Pが装着される。シリンジ200C、Pは、シリンダ210とピストン220を有している。例えばシリンジ200Cには、薬液としてCT用の造影剤が充填され、シリンジ200Pには生理食塩水が充填される。ヘッド本体113に装着された2つのシリンジの先端は、連結チューブ230により接続される。また、独立に移動できるピストン駆動機構130によりそれぞれのシリンジのピストン220が押されて、造影剤の注入、生理食塩水の注入、加えて両者の同時注入が可能になる。
【0020】
ピストン駆動機構および制御機構等の一般的構成は、公知の構成を採用することができる。
【0021】
好ましい実施形態では、図3に示すように、シリンジ210は、シリンジ情報を記録しているICチップ(RFタグ)等のデータキャリア手段510が貼付または埋め込まれている。注入ヘッド110には、データキャリア手段と通信してシリンジ情報を受け取るRF通信機等のシリンジ情報受領手段520が埋め込まれている。
【0022】
図4は、この実施形態の医療画像システム全体を示すブロック図である。注入装置100は、CT装置300および病院管理サーバ600も通信可能に接続されている。
【0023】
注入装置100は、内部にデータ出力手段170を有しており、制御ユニット101または注入ヘッド110のどちらに備えられていてもよい。そして、データ出力手段170は内部的に、演算部160と通信部150を有し、通信部150を介して、病院管理サーバ600と通信する。病院管理サーバ600には、患者本人の情報を含むカルテ情報のデータベース610が保存されている。
【0024】
注入装置100のデータ出力手段170は、薬液注入を実施した後、薬液注入データを通信部150を介して、病院管理サーバ600に送信する。ここで、薬液注入データとしては、使用した薬液に関する情報(例えば、薬液の種類、濃度、製造メーカー名等)、注入量、注入時間、注入速度(特に、注入時間に対して注入速度を表した注入プロファイル)、注入圧力(特に、注入時間に対して注入圧力を表したプロファイル)等から選ばれるデータが含まれる。さらに、病院管理サーバ600は、注入データを受け取り、データベース610に記録する。一方、CT装置300にて撮像された医療画像は、注入装置を介して、または直接病院管理サーバに送られ、病院管理サーバ600は、CT検査結果をデータベース610に記録する。従って、データベース610に、CT検査結果と共に、注入条件も記録される。
【0025】
また、好ましい形態では、CT装置300から、注入装置にCT撮像条件データ(放射線量、放射線照射タイミング等の曝射条件等)が送信され、注入装置のデータ出力手段は、病院管理サーバ600に送信されるデータとして、撮像条件情報としてCT撮像条件データ(放射線量、放射線照射タイミング等の曝射条件等)も付加して送信する。CT撮像条件データは、場合によっては、CT装置300から直接病院管理サーバに送信されてもよい。また、CT画像は、CT装置から直接に病院管理サーバ600に送信されてもよいし、注入装置100のデータ出力手段を介して、注入条件等とともに病院管理サーバに送信されてもよい。
【0026】
この実施形態では、前述のとおりシリンジ情報受領手段520を有していてもよい。データキャリア手段510としては、ICチップの他、バーコード等でもよく、シリンジ情報受領手段520は対応して、ICチップと通信可能な送受信機およびバーコードリーダー等が使用される。シリンジ情報としては、シリンジの製造者、容量、製品名、ロットNo.等の他、必要により薬液の種類、濃度等の薬液情報を含む。
【0027】
これらのシリンジ情報は、演算部160に送られ、演算部では患者の検査内容と照合して、正しいシリンジか否かの判断を行う。
【0028】
注入装置100は、CT装置300と間で、CT撮像条件および薬液注入条件のデータの送受信可能であったり、さらにCT撮影時に連動して注入が可能になっていてもよい。
【0029】
以上のようなシステムによれば、注入装置100がデータ出力機能を有していることにより、注入条件が全て病院管理サーバに保存されることになる。従って、医者が診断の際に、病院管理サーバと通信可能なモニターで読影を行うとき、CT画像と共に注入条件も表示させ、確認することができる。従って、前回の注入条件との比較、または次回の注入条件の決定を容易に行うことができる。
【0030】
また、近年、社会的に医療行為の開示が求められるようになってきているが、本発明のシステムでは、検査条件の全てが病院管理サーバで一元的に管理されるので、このような要求にも容易に対応できる。
【0031】
以上、説明した中で、本発明のシステムを構成する「手段」および「部」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/F(Interface)ユニット等を有するハードウェア、これらハードウェアを動作させるためのソフトウェア、センサー等により構成され、それらは専用の機構であっても、また他の手段を兼ねていても良いし、さらにコンピュータシステム上の論理的な構成であってもよい。これらの具体的構成は、本明細書を参照することにより、当業者は容易に構成することができる。
【0032】
また、X線CT装置を例に説明したが、MRI装置、PET装置、超音波診断装置、CTアンギオ装置、MRA装置等の撮像装置でも同様に適用することができる。撮像条件情報は、その装置特有の設定条件であり、それがデータとして病院管理サーバに送られる。薬液としては、それぞれに適した造影剤、生理食塩水等である。
【0033】
また、従来から病院の管理システムとしては、外来患者の受付および会計処理を行う医療情報システム「HIS」(Hospital Information System)、および放射線部における放射線診療情報システム「RIS」(Radiology Information System)が知られており、一般に、前者は画像データのサーバ管理、受付業務、診療費等の事務処理システムであり、「RIS」は、放射線検査と診療のためのシステムである。本発明において、病院管理サーバは、これらのHIS、RIS、およびそれらを連携させた病院内情報システムのいずれかのシステムの一部であることが好ましい。
【符号の説明】
【0034】
100 注入装置
101 注入制御ユニット
102 ケーブル
103 メイン操作パネル
104 表示部
107 ハンドユニット
108 ケーブル
110 注入ヘッド
111 スタンド
112 アーム
113 ヘッド本体
114 凹部
130 ピストン駆動機構
150 通信部
160 演算部
170 データ出力手段
200C、200P シリンジ
210 シリンダ
220 ピストン
230 連結チューブ
300 CT装置
301 スキャナ本体
302 制御ユニット
510 データキャリア手段
520 シリンジ情報受領手段
600 病院管理サーバ
610 データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)医療画像撮像装置、および(ii)シリンダとシリンジピストンを備えたシリンジを保持して、前記シリンダに対して前記シリンジピストンを相対移動させるピストン駆動機構と、このピストン駆動機構を制御する制御機構とを備え、患者に薬液を注入する注入装置と、(iii)患者情報を保有する病院管理サーバとを備える医療画像システムにおいて、
前記注入装置は、(a)前記病院管理サーバと通信し、薬液注入データを前記病院管理サーバに送信するデータ出力手段
を有することを特徴とする医療画像システム。
【請求項2】
前記注入装置は、(b)前記シリンジに備えられたシリンジ情報を記録しているデータキャリア手段からシリンジ情報を受け取るシリンジ情報受領手段を有し、
前記データ出力手段は、さらに前記シリンジ情報を前記病院管理サーバに送信する機能を有することを特徴とする請求項1記載の医療画像システム。
【請求項3】
前記薬液注入データが、使用した薬液に関する情報、注入量、注入時間に対して注入速度を表した注入プロファイル、および注入時間に対して注入圧力を表したプロファイルからなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または2記載の医療画像システム。
【請求項4】
前記注入装置は、(c)前記医療画像撮像装置から少なくとも撮像条件情報を受け取る手段を有し、
前記データ出力手段は、さらに撮像条件情報を前記病院管理サーバに送信する機能を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の医療画像システム。
【請求項5】
前記医療画像撮像装置がX線CT装置である場合に、撮像条件情報が、放射線量および放射線照射タイミングの少なくとも1つを含む曝射条件を含むことを特徴とする請求項4記載の医療画像システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの医療画像システムで使用される注入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−125602(P2012−125602A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−60232(P2012−60232)
【出願日】平成24年3月16日(2012.3.16)
【分割の表示】特願2008−505163(P2008−505163)の分割
【原出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(391039313)株式会社根本杏林堂 (80)
【Fターム(参考)】