説明

注出キャップ

【課題】蓋体のシール筒の外側に付着している内溶液が開蓋時に外部に漏れだすことのない注出キャップを提供する。
【解決手段】注出開口の周りに注出筒部15を立設し容器口部Cに固定保持されるキャップ本体3と、キャップ本体3に着脱自在に被せられ、該キャップ本体3に被せられた状態にて注出筒部15に内側から当接して該注出筒部15との間に全周に亘ってシール部Sを形成するシール筒24、およびシール筒24の周りを取り囲む環状側壁26を天面壁23からそれぞれ垂下する蓋体5と、を備えた注出キャップ1であって、注出筒部15の、シール部上端S1から先端を拡開させて、該注出筒部15およびシール筒24相互間に周溝28と該周溝28に繋がる液溜り部30とをそれぞれ形成し、かつ、シール筒24の外周面24aおよび、天面壁23の裏側面のうちシール筒24と環状側壁26との間に形成された環状面23aを鏡面肌でそれぞれ構成するとともに、環状側壁26の内周面をシボ肌で構成した注出キャップである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、注出筒部を有し容器の口部に装着されるキャップ本体と、該キャップ本体に被せて注出筒部を密閉する蓋体とを備える注出キャップに関し、とくに、蓋体に付着した内溶液が開蓋時に外部に漏れないようにした注出キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、醤油やドレッシング等の調味材を入れる容器には、内溶液の適量注出を可能とするためにその口部に注出キャップが装着されるが、このような注出キャップは、概して、開封前の状態にて密封される注出開口の周りに注出筒部を立設し、容器の口部に固定保持されるキャップ本体と、該キャップ本体に着脱自在に被せられ、キャップ本体に被せられた状態にて注出筒部に内側から当接して密閉するシール筒を垂下する蓋体と、を備えている。
【0003】
ところで、このような注出キャップでは、閉蓋時に容器を倒したり振ったりした場合に、注出開口から出た内溶液が蓋体の内面に付着するので、そのまま蓋体を開けると蓋体の内面に付着していた内容液が落下あるいは飛散し、容器の口部やその周りが汚れてしまうという問題があった。これに鑑み、特許文献1では、図3に示すように、蓋体101のシール筒102において、ヒンジ103に最接近する部位を含む部分に注出筒部104内に向かって延出する板状の舌片105を設けて、蓋体101のシール筒102の内側に付着した内溶液を舌片105により注出筒部104内に案内し戻すようにした技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2546137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の注出キャップでは、例えば、注出開口を通じで内溶液を注出した際に注出筒部104の先端に付着した内溶液が容器内に完全に戻らない内に蓋体101を閉めると、注出筒部104の先端に付着した内溶液が蓋体101のシール筒102の外周面と注出筒部104の上端部内周面との間に残留することとなり、この残留した内溶液が蓋体101を再度開けた際に落下、飛散するという問題があった。
【0006】
それゆえ、この発明の目的は、蓋体のシール筒の外側に付着している内溶液を容器内に回収し易くし、開蓋時に外部に漏れだすことのない注出キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の注出キャップは、注出開口の周りに注出筒部を立設し容器の口部に固定保持されるキャップ本体と、前記キャップ本体に着脱自在に被せられ、該キャップ本体に被せられた状態にて前記注出筒部に内側から当接して該注出筒部との間に全周に亘ってシール部を形成するシール筒、および前記シール筒の周りを取り囲む環状側壁を天面壁からそれぞれ垂下する蓋体と、を備えた注出キャップであって、前記注出筒部の、前記シール部上端から先端を拡開させて、該注出筒部および前記シール筒相互間に周溝と該周溝に繋がる液溜り部とをそれぞれ形成し、かつ、前記シール筒の外周面および、前記天面壁の裏側面のうち前記シール筒と前記環状側壁との間に形成された環状面を鏡面肌でそれぞれ構成するとともに、前記環状側壁の内周面をシボ肌で構成したことを特徴とするものである。
【0008】
かかる構成の注出キャップにあっては、注出筒部の、シール部上端から先端を拡開させて、キャップ本体に蓋体を被せた状態にて、注出筒部およびシール筒相互間に周溝と該周溝に繋がる液溜り部とをそれぞれ形成したことから、例えば、内溶液を注出した際に注出筒部の先端に付着した内溶液が容器内に完全に戻らない内に蓋体を閉めても、注出筒部の先端に付着した内容液はシール筒の外周面と注出筒部の内周面との間に形成された周溝を伝って液溜め部に溜められる。この際、シール筒の外周面および天面壁の環状面を鏡面肌でそれぞれ構成したことから、シール筒の外周面および天面壁の環状面に付着した内溶液はスムーズに液溜め部に導かれ、その一方で、環状側壁の内周面はシボ肌で構成したことから、環状側壁の内周面に内容液が付着した場合には、付着した内溶液をたれ難くすることができる。そして、蓋体を再度開けた際に液溜め部に溜められた内溶液は注出筒部の内側面に沿って流下し、容器内に戻される。
【0009】
したがって、この注出キャップによれば、蓋体のシール筒の外側に内溶液が付着しても付着した内溶液を容器内に確実に戻すことができるので、蓋体の開放時に内溶液が外部に漏れだすことはない。
【0010】
なお、この発明の注出キャップにあっては、前記周溝を、前記液溜り部に向けて下がり勾配に形成してなることが好ましく、これによれば、周溝内に入り込んだ内溶液をより確実かつスムーズに液溜め部に導くことができる。
【0011】
また、この発明の注出キャップにあっては、前記キャップ本体と前記蓋体とはヒンジを介して連結されてなり、前記液溜り部を前記ヒンジの設けられた側である後方側に配置してなることが好ましく、これによれば、蓋体を開放している最中にシール筒から落下した内容液をも確実に捕捉して容器内に戻すことができる。
【0012】
しかも、この発明の注出キャップにあっては、前記環状面を、前記シール筒の外周面に向けて下がり勾配に形成してなることが好ましく、これによれば、環状面に内溶液が付着した場合に、当該内溶液をシール筒の外周面に向けて流下させることができ、ひいては液溜り部に導いて開蓋時に容器内に戻すことができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、蓋体のシール筒の外側に付着している内溶液を容器内に回収し易くし、開蓋時に外部に漏れだすことのない注出キャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明にしたがう一実施形態の注出キャップを容器の口部に組み付けた状態で示す、軸方向に沿う断面図である。
【図2】(a)は図1の注出キャップにつきシール筒の外側に残留した内容液が周溝を伝って液溜り部に流入する状態を示す断面図であり、(b)は蓋体を開放し、液溜り部に溜まった内溶液が容器内に戻される状態を示す断面図である。
【図3】従来の注出キャップを説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明にしたがう実施の形態を図面に基づき説明する。ここに図1は、この発明の一実施形態の注出キャップの軸方向に沿う断面図であり、図中、符号1は、注出キャップを示し、符号Cは、容器の口部を示している。
【0016】
図1に示すように、注出キャップ1は、キャップ本体3と蓋体5とをその後方側にてヒンジ7を介して開閉自在に一体に連結したものであり、内容物の注出は、ヒンジ7に対向する前方側から行うことができるが、キャップ本体3と蓋体5とはねじを介して着脱自在に連結してもよい。
【0017】
キャップ本体3は、天板9と、天板9の周縁から垂下し容器の口部Cに外側からアンダーカット係合(嵌合)する外側壁11と、天板9から垂下し容器の口部Cに差し込まれて密に係合する内側壁13と、注出開口の周りを取り囲むように立設され、内溶液の注出を案内する注出筒部15と、注出筒部15の外側にて立設され、蓋体5が閉められた状態にて蓋体5に嵌合してその閉蓋姿勢を維持する環状突壁17とを有して構成される。また、キャップ本体3の注出開口は、注出筒部15の内側に一体成形され単一の破断予定溝mに沿って引きちぎり可能に構成された密閉壁19によって密閉され、この密閉壁19には支柱20を介してプルリング21が設けられている。なお、プルリング21の引き起こしにより引きちぎられる密閉壁19に代えてシール状の閉塞部材(図示省略)にて注出開口を密閉するようにしてもよい。
【0018】
蓋体5は、天面壁23と、この天面壁23から垂下し、蓋体5がキャップ本体3に被せられた状態にて注出筒部15に内側から当接(嵌合)して該注出筒部15との間に全周に亘ってシール部Sを形成するシール筒24と、天面壁23の周縁から垂下しシール筒24の周りを取り囲む環状側壁26と、を有して構成される。また、天面壁23の裏側面のうちシール筒24と環状側壁26との間に形成された環状面23aは、シール筒24の外周面24aに向けて下がり勾配に形成されている。
【0019】
そして、この発明にしたがう注出キャップ1では、注出筒部15の、シール部上端S1から先端を拡開させるとともにその拡開量を後端側(ヒンジ側)にて局所的に大として、蓋体5をキャップ本体3に被せた状態にて注出筒部15およびシール筒24相互間に周溝28と、該周溝28に繋がる、周溝28よりも広幅(W1<W2)の液溜り部30とをそれぞれ形成し、かつ、シール筒24の外周面24aおよび環状面23aを鏡面肌でそれぞれ構成するとともに、環状側壁26の内周面26aをシボ(凹凸)肌で構成している。ここで、鏡面肌は、既知の鏡面仕上げ処理により形成でき、シボ肌は、既知のシボ加工処理により形成することができる。シボ肌の表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))は、鏡面肌の表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))よりも大である。
【0020】
液溜り部30は、注出キャップ1の注出側とは反対側に設けることが好ましく、ここでいう「注出側」とは、注出開口あるいは注出筒部15を異形形状とすることにより注出し易い方向が特定される場合には、その方向が注出側となり、この実施形態のようにキャップ本体3と蓋体5とがヒンジ7を介して連結されている場合には、ヒンジに対向する前方側が注出側となる。よって、この実施形態では、液溜り部30をヒンジ7の位置する側である注出キャップ1の後方側に配置している。周溝28は、液溜り部30の一端から注出キャップ1の前方側を経由して液溜り部30の他端まで連続して延在する。さらに、周溝28は、液溜り部30に向けて下がり勾配に形成している(θ>0)。なお、図中、符号32は、蓋体5の前面側に設けられたリップであり、符号34は、キャップ本体3の前面側に設けられ、蓋体5を閉めた状態にてリップ32を収容するリップ収容溝である。
【0021】
上記の構成になる注出キャップ1は、注出筒部15の、シール部上端S1から先端を拡開させるとともにその拡開量を後方側にて局所的に大として、注出筒部15およびシール筒24相互間に周溝28と該周溝に繋がる液溜り部30とをそれぞれ形成したことから、例えば、図2(a)に示すように、内溶液を注出した際に注出筒部15の先端に付着した内溶液が容器内に完全に戻らない内に蓋体5を閉めても、注出筒部15の先端に付着した内容液はシール筒24の外周面と注出筒部15の内周面との間に形成された周溝28を伝って液溜め部30に溜められる。この際、シール筒24の外周面24aおよび天面壁23の環状面23aを鏡面肌でそれぞれ構成したことから、シール筒24の外周面24aおよび天面壁23の環状面23aに付着した内溶液はスムーズに液溜め部30に導かれ、その一方で、環状側壁26の内周面26aはシボ肌で構成したことから、環状側壁26の内周面26aに内容液が付着した場合には、付着した内溶液をたれ難くすることができる。そして、図2(b)に示すように、蓋体5を再度開けた際に液溜め部30に溜められた内溶液は注出筒部15の内側面に沿って流下し容器内に戻される。
【0022】
したがって、この注出キャップ1によれば、蓋体5のシール筒24の外側に内溶液が付着しても付着した内溶液を容器内に確実に戻すことができるので、蓋体5の開放時に内溶液が外部に漏れだすことはない。
【0023】
また、この実施形態の注出キャップ1によれば、周溝28を液溜り部30に向けて下がり勾配に形成したことから、周溝28内に入り込んだ内溶液をより確実かつスムーズに液溜め部30に導くことができる。
【0024】
さらに、この実施形態の注出キャップ1によれば、液溜り部30の配設位置をヒンジ7の設けられた側である後方側としたことから、液溜り部30内に溜められた内溶液に接する、シール筒24の後端部が、蓋体5を開けた際に注出筒部15から最後に離れることになるので、蓋体5を勢いよく開けてもシール筒24の上記後端部に付着した内容液が飛び散るおそれはなく、また当該後端部から落下した内容液を液溜め部30にて確実に捕捉して容器内に戻すことができる。
【0025】
しかも、この実施形態の注出キャップ1によれば、環状面23aをシール筒24の外周面24aに向けて下がり勾配に形成したことから、環状面23aに内溶液が付着した場合に、当該付着した内溶液をシール筒24の外周面に向けて流下させることができ、ひいては液溜り部30に導くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
かくして、この発明により、蓋体のシール筒の外側に付着している内溶液を容器内に回収し易くし、開蓋時に外部に漏れだすことのない注出キャップを提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0027】
1 注出キャップ
3 キャップ本体
5 蓋体
7 ヒンジ
15 注出筒部
23 天面壁
23a 環状面
24 シール筒
24a シール筒の外周面
26 環状側壁
26a 環状側壁の内周面
28 周溝
30 液溜り部
S シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注出開口の周りに注出筒部を立設し、容器の口部に固定保持されるキャップ本体と、
前記キャップ本体に着脱自在に被せられ、該キャップ本体に被せられた状態にて前記注出筒部に内側から当接して該注出筒部との間に全周に亘ってシール部を形成するシール筒、および前記シール筒の周りを取り囲む環状側壁を天面壁からそれぞれ垂下する蓋体と、を備えた注出キャップであって、
前記注出筒部の、前記シール部上端から先端を拡開させて、該注出筒部および前記シール筒相互間に周溝と該周溝に繋がる液溜り部とをそれぞれ形成し、かつ、
前記シール筒の外周面および、前記天面壁の裏側面のうち前記シール筒と前記環状側壁との間に形成された環状面を鏡面肌でそれぞれ構成するとともに、前記環状側壁の内周面をシボ肌で構成したことを特徴とする注出キャップ。
【請求項2】
前記周溝を、前記液溜り部に向けて下がり勾配に形成してなる、請求項1に記載の注出キャップ。
【請求項3】
前記キャップ本体と前記蓋体とはヒンジを介して連結されてなり、
前記液溜り部を前記ヒンジの設けられた側である後方側に配置してなる、請求項1または2に記載の注出キャップ。
【請求項4】
前記環状面を、前記シール筒の外周面に向けて下がり勾配に形成してなる、請求項1〜3の何れか一項に記載の注出キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−96809(P2012−96809A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243678(P2010−243678)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】