説明

注型機の吐出方法

【課題】注型機の吐出停止中に液垂れを生じるのを防ぐ。
【解決手段】供給バルブ11a、11bによる液状原料の混合室2への供給を停止し、その停止動作に連動して、ヘッド部の混合室3内のゴムバルブ4の空気室6に圧縮空気を供給する。ゴムバルブ4の縮径によって混合室3の内容積を縮小後、元の内容積に復元させることで吐出を停止し、吐出停止中の液垂れを防ぐ。注型済成形型と未注型成形型を交換する際の液垂れに起因する欠陥のないポリウレタン成形品を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の液状原料を混合して成形型に吐出する注型機において、吐出停止中の液垂れを防止することのできる注型機の吐出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、複写機やプリンター等の電子写真方式による画像形成装置(電子写真装置)では、ソリッド状ポリウレタンからなるクリーニングブレードや、フォーム状ポリウレタンからなる現像剤供給ローラ等のポリウレタン成形品が使用されている。これら部品の生産には注型機が使用され、複数の主として液状の原料を混合室に供給し、混合室内のロータで撹拌混合し、混合物を吐出して成形型に注型する。次に吐出を停止して成形型を交換し、再度成形型に混合物を注型する。成形型に注型された混合物は加熱硬化させて成形型から脱型する。これらの工程を繰返すことにより連続的にポリウレタン成形品を製造する。
【0003】
近年の電子写真装置は、印字画像のさらなる高精細化、カラー化が進展しており、ポリウレタン成形品に対する高品質化の要請も一段と厳しくなっている。
【0004】
従来の注型機の吐出方法には、液状原料の供給バルブを操作して液状原料の混合室内への供給を停止することで、混合室からの混合液の吐出を停止するものがある(特許文献1参照)。
【0005】
また、混合室出口(吐出口)に供給バルブと同様の円筒バルブを使用し強制的に混合物の吐出を停止するものがある。
【特許文献1】特開平5−84435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の注型機の吐出方法では、例えば、原料が、主としてポリイソシアネート、ポリオール及びその他からなるソリッド状ポリウレタンを成形する場合、以下のような未解決の課題がある。すなわち、液状原料を混合室で撹拌混合し、混合物を吐出して成形型に注型する際、供給バルブを操作して液状原料の供給を停止しても、ポリイソシアネートとポリオールが混合室内で発熱反応するため熱膨張を生じ、開放状態の吐出口から混合物の一部が液垂れする。
【0007】
また、液状原料がポリイソシアネート、ポリオール、発泡剤及びその他からなるフォーム状ポリウレタンを成形する場合は、液状原料の供給を停止しても、ポリイソシアネートとポリオールとの発熱反応に加えて、混合物が発泡することによる体積膨張を生じる。このために、開放状態の吐出口から混合物の一部が液垂れする。ソリッド状及びフォーム状ポリウレタンに拘わらず、この混合物の液垂れによる落下物が成形型に付着すると、事前に成形型に塗布された離型剤がこの落下物を覆い、後に吐出される混合物との境界に離型層が形成される。そして、加熱硬化後境界から剥離したり、成形品表面に液垂れが付着したりと、成形品の不良の原因となる。また、成形装置の冶工具に付着し装置の稼動率を低下させる等の重大な影響を及ぼす。
【0008】
円筒バルブのような機械式バルブを混合室の吐出口近傍に配置する場合は、混合室からの液垂れは防止できるが、混合室内で混合物が前述のように体積膨張を生じるため、混合室内の内圧力が上昇し、混合物が円筒バルブの摺動部に滲入して反応硬化する。その結果、円筒バルブの摺動部が固着して動作不良が発生するため、長期間の使用に耐えるものではなかった。
【0009】
本発明は、このような従来の方法が有していた未解決の課題を解決するものであり、吐出停止後の液垂れを簡単な構成で確実に防止することのできる注型機の吐出方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の注型機の吐出方法は、複数の原料を混合して成形型に吐出する注型機の吐出方法において、前記原料を原料供給手段によって混合室へ供給し、混合して成形型に吐出する工程と、前記原料供給手段による前記混合室への原料供給を停止する工程と、前記混合室への原料供給の停止に連動する内容積変化手段によって、前記混合室の内容積を縮小する工程と、前記混合室の内容積を前記内容積変化手段によって縮小前の状態に復元することで、前記成形型への吐出を停止する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
注型機による液垂れのない混合物の間欠吐出が可能となる。また、硬化する混合物内で摺動する機械式バルブ機構を必要としないため、長期間安定した間欠吐出が可能となる。
【0012】
成形型及び成形装置の冶工具に液垂れが付着しないため、液垂れ起因の不良品の発生を回避できる。また、装置の治工具を頻繁に清掃する必要もない。
【0013】
このような吐出方法を、高品質な電子写真装置用のポリウレタン成形品の製造に適用することで、高い生産性を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、一実施形態による注型機の吐出方法を示すもので、この注型機は、混合室の内部には供給される液状原料を攪拌する混合室2と、混合室2で攪拌された液状原料が供給される混合室3を備えている。液状原料は、混合室2の内部においてロータ1により攪拌される。注型機の先端部分に形成された混合室3には、混合室3の内容積を空気圧によって膨脹・縮小するゴムバルブ(内容積変化手段)4、外筒5、空気室6、空気継手7、吐出口8を備えている。
【0016】
複数の液状原料(原料)は図示しないポンプにより流路10a、10bに圧送され、それぞれ、供給バルブ(原料供給手段)11a、11b、流路12a、12b、オリフィス13a、13bを介して混合室2へ供給される。供給された液状原料は、主軸14に固定され、主軸14を中心に回動するロータ1によって撹拌混合され、吐出口8から図示しない成形型に注型される。
【0017】
注型後、供給バルブ11a、11bを操作し液状原料の供給を停止すると同時に、空気継手7より圧縮空気を空気室6へ供給する。ゴムバルブ4は、空気圧により縮径方向に力を受けて、図1の(a)に示す状態から(b)に示すように弾性変形し、ロータ先端軸1aに当接する。これによって、ヘッド部の混合室3の内容積が減少(縮小)した分の混合液がさらに吐出される。
【0018】
次に、空気室6の圧縮空気を排気すると、ゴムバルブ4はゴム弾性により、混合室3の縮小前の元の形状に復元し、混合室3の内容積が減少した分に相当する空間を吐出口8の近傍に確保できる。このため、ポリウレタン等の混合物の反応熱による体積膨張や、フォーム状ポリウレタンの発泡開始による体積膨張が生じたとしても前記空間に吸収できる。したがって、一定時間混合物の吐出を停止しても、液垂れを生じることはない。なお、注型機の混合室を構成するロータ部及びヘッド部の混合室2、3は、オリフィス13a、13bから供給された液状原料を連続的に混合しながら吐出口8まで流動させる。
【0019】
液垂れを防止するに必要な空間量は、混合物の粘度、混合物の体積膨張量、混合物の吐出速度、吐出口の口径等により変化する。
【0020】
注型が完了した成形型は、混合物が加熱硬化した後脱型し、ポリウレタン成形品を得る。この吐出方法を、電子写真装置用のポリウレタン成形品の製造方法に適用すれば、高品質な電子写真用部材を製造することができる。
【0021】
図2は、円筒形状の弾性体であるゴムバルブ4のみを拡大して示すもので、その材料は、混合物に侵されず適度のゴム弾性と耐久性が有ればよい。例えばシリコンゴム、フッ素ゴム等が好適である。ゴムバルブ4の軸端には、空気室6の空気を外部に漏らさないためのシール部4aを設ける。
【0022】
混合室の内容積変化手段は、円筒形状のゴムバルブ4に限らず、図3の(a)に示すダイアフラム24や、(b)に示すベローズ34を用いてもよい。
【0023】
ダイアフラム24を使用する方法は、ロータ内蔵軸1bを、ロータ1の軸方向に移動可能にダイアフラム24を介してロータ1に結合し、ロータ内蔵軸1bを駆動手段(不図示)により押し下げることで混合室3の内容積を縮減(縮小)する。その後、ロータ内蔵軸1bの位置を復元することで混合室3の内容積を拡大する。ダイアフラム24は円盤状のバネ性を有する、例えばリン青銅、ステンレス等金属板やポリカーボネート等樹脂板の円盤に同心円状の凹凸を付けたものを用いる。あるいは、伸縮性を有するシリコンゴム、フッ素ゴム等のシート材でもよい。
【0024】
ベローズ34を使用する方法は、ロータ内蔵軸1bをロータ1の軸方向に移動可能にベローズ34を介してロータ1に結合し、ロータ内蔵軸1bを駆動手段(不図示)により押し下げることで混合室3の内容積を縮減する。その後、ロータ内蔵軸1bの位置を復元することで混合室3の内容積を拡大する。ベローズ34は円筒状のバネ性を有する、例えばリン青銅やステンレス等金属パイプやポリカーボネート等樹脂パイプの周方向の凹凸を付けたものを用いる。あるいは、伸縮性を有するシリコンゴム、フッ素ゴム等の円筒でもよい。
【0025】
なお、液状原料の混合室への供給を停止し、停止動作に連動して混合室の内容積を縮減後復元させることで混合室の内容積を変化させる方法に限定するものではない。液状原料の混合室への供給を停止させなくても、内容積変化手段による混合室の内容積の変化量と、内容積を変化させた後の混合物の供給量に混合物の熱膨張等の増加分を加えた容積量が均衡するまでは、混合物の吐出を停止し液垂れを防止できる。したがってこの間に成形型を交換すればよい。
【0026】
また、図4に示すように、シャッタ15を矢印方向に駆動する注型機では、液状原料の供給停止後、シャッタ15を上方に移動させ、吐出口8の下に位置させる。これによって、吐出口8から液垂れが有ったとしても、シャッタ15より下方に落下するのを回避することができる。
【実施例1】
【0027】
ソリッド状ポリウレタンを使用する電子写真装置用クリーニングブレードを図1の装置を用いて製造した。複数の原料として、1,4ブタンジオール(1,4−BD)とトリメチロールプロパン(TMP)その他触媒等の混合液をA液とし、ポリエステルジオールとジフェニルメタンジイソシアネ―ト(MDI)を調製したウレタンプレポリマーをB液とした。A液を40℃、B液を80℃に温度調整して、50℃に温度調整した混合室に供給した。ロータで撹拌混合しつつヘッド部の吐出口から、板金をセットした120℃に加熱された成形型に注型した。所定注型量から、混合室の内容積をシリコンゴム製のゴムバルブの縮径により変化させたときの変化容積(変化量)を差引いた量に達したとき、供給バルブによる原料供給を停止し、空気室に0.1Mpaの圧縮空気を0.2秒間加えて、ゴムバルブを縮径した。その結果、混合室の内容積が減少し、減少した内容積に相当する混合物が追加吐出されて成形型に注型された。次に、空気室への圧縮空気の供給を停止し、空気室を大気開放することでゴムバルブを縮径以前の状態に復元した。
【0028】
この動作で混合物の吐出は停止し、吐出口の近傍に配置した未注型成形型と注型済成形型を0.5秒以内に交換して、供給バルブを操作し液状原料を供給することで、混合物の注型を再び開始したところ、成形型交換の際の混合物の液垂れは生じなかった。これは、ゴムバルブの操作による混合室の内容積の減少による混合物の追加吐出量は約0.2ccであり、混合室内に追加吐出量に相当する分だけ混合物の収容量が増加し、混合物の膨張等の液垂れ要因を吸収したためであると考えられる。注型済成形型を混合物もろとも120℃に加熱後、脱型し、液垂れ起因の欠陥のないクリーニングブレード成形品を得た。
【0029】
比較のために、混合物の吐出停止を供給バルブのみで実施したところ、毎回1〜3滴の液垂れが発生した。
【0030】
ゴムバルブは、付加型液状シリコンゴム(東レ・ダウコーニングシリコーン社製)をバルブ成形型に注入して120℃に加熱硬化後脱型し、200℃で2時間二次硬化させることで作成した。ゴムバルブの物性は硬度40度(JISA硬度計)であり、ゴムバルブの外周軸方向の端部には空気室の空気を外部に漏らさないためのシール部を設けて、加圧時に空気室から圧縮空気が漏れるのを防止した。
【0031】
図2に示すゴムバルブに代えて、図3に示すダイアフラム又はベローズを用いても同様の効果を奏した。
【実施例2】
【0032】
図4に示す装置は、吐出口8の下方に、矢印方向に往復移動するシャッタ15を配設したものである。この装置を用いて、実施例1と同じ液状材料によってポリウレタン成形品を製造した。A、B両液を混合室2に供給し、混合室3を経て吐出口8から成形型に注型した後、供給バルブ12a、12bを操作して混合室2への液状材料の供給を停止し、この動作に連動して、シャッタ15を仰角30°の方向に移動させ、吐出口8の下に配置した。吐出口8から落下する混合物はシャッタ15で受けることができ、成形型や注型機の冶工具等に落下はなかった。
【実施例3】
【0033】
図1の装置を用いて、円筒状の軟質ポリウレタンフォームを芯金外周に形成してなる電子写真用トナー供給ローラを製造した。ポリエーテルポリオール、整泡剤、触媒、発泡剤を調整してA液とし、トリレンジイソシアネート(TDI)とジフェニルメタンジイソシアネト(MDI)を所定の割合に調整しB液とし、A、B両液を27℃に温度調整し、混合室内で撹拌混合した。中心に芯金をセットし65℃に温度調整された円筒状の成形型に所定量注型し、65℃で5分間加熱し、脱型後、ロールクラッシングを施し連続気泡化した。成形型交換中の液垂れ起因の欠陥のないトナー供給ローラ成形品を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1を示すもので、(a)は注型機の主要部を示す断面図、(b)は混合室の内容積を縮減した状態を示す図である。
【図2】ゴムバルブのみを拡大して示す断面図である。
【図3】ダイアフラム及びベローズを示す断面図である。
【図4】実施例2を説明する図である。
【符号の説明】
【0035】
1 ロータ
1a ロータ先端軸
1b ロータ内蔵軸
2、3 混合室
4 ゴムバルブ
5 外筒
8 吐出口
11a、11b 供給バルブ
15 シャッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の原料を混合して成形型に吐出する注型機の吐出方法において、
前記原料を原料供給手段によって混合室へ供給し、混合して成形型に吐出する工程と、
前記原料供給手段による前記混合室への原料供給を停止する工程と、
前記混合室への原料供給の停止に連動する内容積変化手段によって、前記混合室の内容積を縮小する工程と、
前記混合室の内容積を前記内容積変化手段によって縮小前の状態に復元することで、前記成形型への吐出を停止する工程と、を有することを特徴とする注型機の吐出方法。
【請求項2】
複数の原料を混合して成形型に吐出する注型機の吐出方法において、
前記原料を原料供給手段によって混合室へ供給し、混合して成形型に吐出する工程と、
前記混合室への原料供給を停止することなく、内容積変化手段によって前記混合室の内容積を縮小する工程と、
前記混合室の内容積を前記内容積変化手段によって縮小前の状態に復元することで、前記成形型への吐出を停止する工程と、を有することを特徴とする注型機の吐出方法。
【請求項3】
複数の原料を混合して成形型に吐出する注型機の吐出方法において、
前記原料を原料供給手段によって混合室へ供給し、混合して成形型に吐出する工程と、
前記原料供給手段による前記混合室への原料供給を停止する工程と、
前記混合室への原料供給の停止に連動して前記注型機の吐出口の下へシャッタを駆動することで、前記成形型への吐出を停止する工程と、を有することを特徴とする注型機の吐出方法。
【請求項4】
前記内容積変化手段は、前記混合室に配置された円筒形状の弾性体を空気圧によって
膨脹・縮小させることで、前記混合室の内容積を変化させることを特徴とする請求項1又は2記載の注型機の吐出方法。
【請求項5】
前記混合室には前記原料を攪拌するロータが配置されており、前記内容積変化手段は、前記ロータに配設されたダイアフラム又はベローズを駆動手段により変形させることで、前記混合室の内容積を変化させることを特徴とする請求項1又は2記載の注型機の吐出方法。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか1項記載の注型機の吐出方法を用いた電子写真装置用のポリウレタン成形品の製造方法であって、前記注型機の吐出を停止している間に、注型済成形型と未注型成形型を交換する工程を有することを特徴とする電子写真装置用のポリウレタン成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−12409(P2009−12409A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179173(P2007−179173)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】