説明

洗口液

【解決手段】(A)フッ化ナトリウム、(B)水溶性カルシウム塩、(C)水溶性マグネシウム塩を含有し、(A)成分含有量が0.04〜0.12質量%で、モル比で[(B)Caイオン]/[(A)Fイオン]が1.0〜15、[(C)Mgイオン]/[(B)Caイオン]が1.3〜3.5で、アニオン界面活性剤を含有しない洗口液。
(A)フッ化ナトリウム、(B)水溶性カルシウム塩、(C)水溶性マグネシウム塩を含有し、(A)成分含有量が0.13〜0.25質量%で、モル比で[(B)Caイオン]/[(A)Fイオン]が0.5〜6、[(C)Mgイオン]/[(B)Caイオン]が1.3〜3.5で、アニオン界面活性剤を含有しない洗口液。
【効果】本発明の洗口液は、製剤安定性に優れ、かつ初期う蝕の再石灰化の進行を顕著に促進させることが可能であり、う蝕の発症及び進行を効果的に予防できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ化ナトリウム、水溶性カルシウム塩及び水溶性マグネシウム塩を含有する洗口液であり、特にフッ化物イオン及び上記特定の金属イオンの作用によって、初期う蝕の再石灰化能が著しく向上し、う蝕の発症と進行を効果的に予防することができる洗口液に関する。
【背景技術】
【0002】
エナメル質や象牙質は、口腔内細菌により産生された酸に晒されるとミネラル成分を失い、う蝕が発症、進行する。しかし、う蝕表層に明確な欠損がなく、う蝕内部のミネラルイオンのみが溶出した初期う蝕の状態であれば、適切な口腔ケアによって初期う蝕内部にミネラルイオンが供給され、再石灰化と呼ばれる反応によって元の状態に改善することが知られている。
【0003】
この再石灰化反応を促進する技術として、一般的に、フッ化物、又はフッ化物とフッ化物の効果を高める成分とを配合した歯磨剤が好適に使用されている。
【0004】
このような技術として、例えば、ハイドロキシアパタイトやキシリトールを配合した技術(特許文献1;特開平9−175963号公報、特許文献2;特開平14−97124号公報)、パラチニットや亜鉛を配合した技術(特許文献3;特開平12−247852号公報)、カルシウムイオンやリン酸エステルを配合した技術(特許文献4;特開平11−49653号公報、特許文献5;特開平12−191486号公報)、カゼイングリコマクロペプチド化合物を配合した技術(特許文献6;特開平13−517610号公報)、カルシウムイオンと2種類のフッ化物を配合した技術(特許文献7;特開平15−238372号公報、特許文献8;特開平18−069990号公報)等が提案されている。
【0005】
しかしながら、欧米諸国の12歳児のDMFT指数(一人当たりのう蝕歯数)が1.0を下回り始めているのに比べ、日本国内のDMFTは2.44(歯科疾患実態調査;1999年)と依然高く、引き続き、う蝕予防技術の開発の推進が望まれている。
【0006】
また、歯科医師によるプロケアとしては、フッ化物イオンを放出する歯科材料技術(特許文献9;特開平14−60342号公報、特許文献10;特開平14−145715号公報、特許文献11;特開平16−67597号公報)やバーニッシュ技術(特許文献12;特開平18−16396号公報)等が提案されているが、いずれの技術も汎用的でないため、上記課題の解決に至っていない。
【0007】
このような状況の中、フッ化物が配合された歯磨剤の市場シェアが80%を超えているにも拘わらず、う蝕数が高い現状を改善する一つの手段として、厚生労働省からフッ化物を含有する洗口剤のガイドラインが発表され、より効果的なフッ化物洗口法の一層の普及が図られ始めている。
【0008】
上記フッ化物洗口法は、歯科医師の指導の下、ホームケアとプロケアの両方が可能であると共に、歯磨剤等と併用することができるため、その期待が大きい。しかし、フッ化物配合洗口液は、練歯磨剤やゲル塗布剤等と比べて粘性がほとんど無い上に、数十秒という短時間の処置であるため、有効成分であるフッ化物が口腔内に残存しにくいという課題がある。
【0009】
洗口液の技術としては、ポリオールリン酸やカルボン酸によってフッ化物をコロイド化する技術(特許文献13;特開平3−68442号公報)、フッ化カルシウム塩やフルオロリン酸カルシウム塩を懸濁する技術(特許文献14;特開平14−532375号公報)、フッ化物とリン酸塩を配合する技術(特許文献15;特開平16−161719号公報)等が提案されているが、口腔内環境に十分量のフッ化物を残存させるには至っていない。また、カルシウムイオン、リン酸イオン、フッ化物イオンを使用時に混合する技術(特許文献16;特開平13−500874号公報、特許文献17;特開平18−199702号公報)も提案されているが、この技術は剤型が複雑となり、コストが高くなると共に、混合後の成分均一性が制御できないという課題があった。
【0010】
従って、フッ化物の口腔内残存性に優れ、初期う蝕の再石灰化を効果的に向上させることができ、製剤安定性も良好な洗口液の開発が望まれる。
【0011】
【特許文献1】特開平9−175963号公報
【特許文献2】特開平14−97124号公報
【特許文献3】特開平12−247852号公報
【特許文献4】特開平11−49653号公報
【特許文献5】特開平12−191486号公報
【特許文献6】特開平13−517610号公報
【特許文献7】特開平15−238372号公報
【特許文献8】特開平18−069990号公報
【特許文献9】特開平14−60342号公報
【特許文献10】特開平14−145715号公報
【特許文献11】特開平16−67597号公報
【特許文献12】特開平18−16396号公報
【特許文献13】特開平3−68442号公報
【特許文献14】特開平14−532375号公報
【特許文献15】特開平16−161719号公報
【特許文献16】特開平13−500874号公報
【特許文献17】特開平18−199702号公報
【特許文献18】特開昭53−50344号公報
【特許文献19】特開平4−217904号公報
【特許文献20】特開平11−12143号公報
【特許文献21】特開2000−191486号公報
【特許文献22】特開2005−47903号公報
【特許文献23】特開2005−112841号公報
【特許文献24】特表2002−505261号公報
【特許文献25】特開平9−175968号公報
【特許文献26】特開平9−175971号公報
【特許文献27】特開平10−287537号公報
【特許文献28】特開平10−17447号公報
【特許文献29】特開平10−182383号公報
【特許文献30】特開2000−72638号公報
【特許文献31】特表2001−510147号公報
【特許文献32】特表10−511104号公報
【特許文献33】特開平12−504037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、初期う蝕の再石灰化を効果的に向上させることができ、製剤安定性も良好であり、う蝕の発症や進行を効果的に予防することができるフッ化物配合の洗口液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、フッ化ナトリウム由来のフッ化物イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンが特定濃度比となるように(A)フッ化ナトリウム、(B)水溶性カルシウム塩、(C)水溶性マグネシウム塩を配合することにより、1剤型でも沈殿が生じることがなく良好に安定化配合することができ、しかも、口腔内処置時には唾液と混合されることで安定性が低下するため、短時間でフッ化物と金属イオンとが歯質に作用してフッ化物の残存性を高めると共に、マグネシウムイオンが初期う蝕表層のミネラル密度の増加を制御することにより、初期う蝕の再石灰化を促進させることを見出し、本発明をなすに至った。
【0014】
なお、フッ化物とカルシウム、マグネシウム等の金属イオンとを組み合わせて配合することは公知であり、数多くの技術が提案されている。例えば、フッ化物とカルシウムイオンの組み合わせとして、アルカリ土類金属によるチューブ内部の腐食防止技術(特許文献18;特開昭53−50344号公報)、難溶性の沈殿を生じる歯科用処置材(特許文献19;特開平4−217904号公報)、再石灰化促進技術(特許文献20;特開平11−12143号公報、特許文献21;特開2000−191486号公報、特許文献22;特開2005−47903号公報、特許文献23;特開2005−112841号公報)、知覚鈍麻技術(特許文献24;特表2002−505261号公報)等が開示されている。また、フッ化物とマグネシウムイオンの組み合わせとして、抗歯石技術(特許文献25;特開平9−175968号公報、特許文献26;特開平9−175971号公報、特許文献27;特開平10−287537号公報、特許文献28;特開平10−17447号公報、特許文献29;特開平10−182383号公報)、再石灰化促進技術(特許文献30;特開2000−72638号公報)、敏感歯予防技術(特許文献31;特表2001−510147号公報)等が提案されている。
【0015】
しかしながら、上記従来技術には、本発明の構成及びその作用効果は示唆されていない。なお、従来、フッ化ナトリウムとカルシウムイオン又はマグネシウムイオンを共存させると沈殿を生じるため、通常は安定性を重視して2剤型の処置方法や非水剤、固形剤等が提案されているが、この場合は剤型が複雑となり、コストが高くなると共に、混合後の成分均一性が制御できない課題がある。
【0016】
また、マグネシウムイオンは、カルシウムイオンと同様にフッ化物と難溶性の沈殿物を形成する性質を有するが、単独かつ高濃度で存在すると、カルシウムイオンとは異なり骨や歯の石灰化を抑制する性質も有するため、通常、口腔内では歯石形成予防成分として使用されている。
【0017】
本発明によれば、上記(A)〜(C)成分を特定割合で配合することにより、上記課題をも解決して、フッ化ナトリウムとカルシウムイオン及びマグネシウムイオンを1剤型で安定化配合できると共に、この製剤が洗口時に唾液と混合されると、安定性が低下して短時間でフッ化物と金属イオン、特にカルシウムイオンとが歯質に作用してフッ化物の残存性を高め、フッ化ナトリウムとカルシウムイオンによる高い石灰化力が発揮され、更にマグネシウムイオンにより、初期う蝕表層のミネラル密度の過剰な増加を制御することで、初期う蝕内部へのミネラルイオンの透過性を確保し、高い再石灰化効果が得られるもので、本発明にかかわるこのような製剤の安定化及び高い再石灰化効果は、フッ化ナトリウム由来のフッ化物イオン、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンのいずれが欠けても達成できず、本発明の必須要件全てを満たす構成とすることによってのみ、なし得るものである。上記従来技術から、このような本発明の構成による作用効果は予想し難い。
【0018】
また、フッ化物、カルシウム、マグネシウムを含有する再石灰化技術(特許文献32;特表10−511104号公報、特許文献33;特開平12−504037号公報)等も提案されているが、後述する実施例の結果からもわかるように、本発明はこの3種の化合物を単に組み合わせただけでは達成し得ない格別の作用効果を発現するものである。
【0019】
特に、本発明においては、数十秒の口腔内処置時間内に複数の金属イオンとフッ化物イオンが十分な反応を行う必要があり、フッ化物としてこのような反応をなし得るフッ化ナトリウムが選択的に使用されるものであり、モノフルオロリン酸塩のようなフォスファターゼに依存してフリーのフッ化物イオンを放出するフッ化物イオン供給源やフッ化スズのように反応に影響を及ぼすスズイオンを含有するフッ化物イオン供給源を用いた場合には、本発明の効果は得られない。よって、本発明で用いることができるフッ化物イオン供給源はフッ化ナトリウムのみである。
【0020】
従って、本発明は、下記洗口液を提供する。
〔請求項1〕 (A)フッ化ナトリウムと、(B)水溶性カルシウム塩と、(C)水溶性マグネシウム塩とを含有し、(A)フッ化ナトリウムの含有量が製剤全体の0.04〜0.12質量%で、かつ[(B)成分のカルシウムイオン]/[(A)成分のフッ化物イオン]のモル比が1.0〜15、[(C)成分のマグネシウムイオン]/[(B)成分のカルシウムイオン]のモル比が1.3〜3.5であり、アニオン界面活性剤を含有しないことを特徴とする洗口液。
〔請求項2〕 (A)フッ化ナトリウムと、(B)水溶性カルシウム塩と、(C)水溶性マグネシウム塩とを含有し、(A)フッ化ナトリウムの含有量が製剤全体の0.13〜0.25質量%で、かつ[(B)成分のカルシウムイオン]/[(A)成分のフッ化物イオン]のモル比が0.5〜6、[(C)成分のマグネシウムイオン]/[(B)成分のカルシウムイオン]のモル比が1.3〜3.5であり、アニオン界面活性剤を含有しないことを特徴とする洗口液。
【発明の効果】
【0021】
本発明の洗口液は、製剤安定性に優れ、かつ初期う蝕の再石灰化の進行を顕著に促進させることが可能であり、う蝕の発症及び進行を効果的に予防することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の洗口液は、(A)フッ化ナトリウムと、(B)水溶性カルシウム塩と、(C)水溶性マグネシウム塩とを組み合わせて配合してなることを特徴とするものであり、歯ブラシを併用しないで適用される洗口液として調製される。
【0023】
本発明において、(A)成分のフッ化ナトリウムの配合量は、製剤全体の0.04〜0.25%(質量%、以下同様)(フッ化物イオンとして0.019〜0.11%(1.0〜6.0mmol/100g))であり、特に誤嚥の可能性のある乳幼児や永久歯エナメル質の成熟が進んでいない小児にも使用でき汎用である点、歯科専門家による推奨濃度である点から、0.04〜0.12%(フッ化物イオンとして0.019〜0.06%(1.0〜2.9mmol/100g))の範囲であることがより好ましい。また、根面が露出した高齢者やう蝕ハイリスク患者(唾液分泌が少ない、矯正している、う蝕原性菌保有率が高い、DMFTが高い、などの症状を有する者)には、再石灰化促進効果がより高い点で、0.13〜0.25%(フッ化物イオンとして0.06〜0.11%(3.0〜6.0mmol/100g))の範囲がより好ましく、さらに薬事的な点を考慮すると、0.17〜0.22%(フッ化物イオンとして0.08〜0.10%(4.0〜5.3mmol/100g))の範囲であることがより好ましい。フッ化ナトリウムの配合量が0.04%(フッ化物イオンとして0.019%(1mmol/100g))未満であると再石灰化促進効果が十分に発揮されない場合があり、フッ化ナトリウムの配合量が0.25%(フッ化物イオンとして0.11%(6mmol/100g))を超えると、金属イオンとの安定性が悪化する場合がある。
【0024】
更に、本発明では、(B)水溶性カルシウム塩と、(C)水溶性マグネシウム塩を配合する。ここで、本発明において「水溶性」とは、25℃でpH7の水100gに対して、少なくとも0.1gの溶解度を有することを意味する。
【0025】
本発明において、(B)水溶性カルシウム塩としては、例えば塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム等の無機酸のカルシウム塩、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、ギ酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム等の有機酸のカルシウム塩を使用でき、特に易溶解性及び汎用性の点で、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウムなどが好適に用いられる。なお、本発明では、上記した溶解度を有する水溶性のカルシウム塩を使用することができるもので、溶解度が上記値に満たないカルシウム塩、例えばリン酸カルシウム等の難水溶性カルシウム塩は、本発明の(B)成分には含まれない。
【0026】
また、(C)水溶性マグネシウム塩としては、上記した溶解度を有する水溶性のマグネシウム塩、例えば塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等の無機酸のマグネシウム塩、乳酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、ギ酸マグネシウム等の有機酸のマグネシウム塩を使用でき、特に易溶解性及び汎用性の点で、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウムなどが好適に用いられる。
【0027】
本発明において、(A)成分のフッ化ナトリウムの配合量が0.04〜0.12%である場合は、(A)成分のフッ化物イオンに対する(B)成分のカルシウムイオンのモル比が1.0〜15となるように、特に安定性と再石灰化効果を両立させる点でより好ましくは4〜8となるように(A)及び(B)成分を配合する。上記モル比が1未満ではフッ化物単独と比べて顕著な再石灰化効果が発揮されず、モル比が15を超える場合、安定性が低下し、十分な再石灰化効果が得られなくなる。
【0028】
前記モル比を達成するために、(B)成分の水溶性カルシウム塩の配合量は、カルシウムイオンとして製剤全体の0.04〜1.72%(1.0〜43.0mmol/100g)が好ましく、より好ましくは0.16〜0.92%(4.0〜22.9mmol/100g)である。
【0029】
また、(A)成分の配合量が0.13〜0.25%である場合は、(A)成分のフッ化物イオンに対する(B)成分のカルシウムイオンのモル比が0.5〜6となるように、特に安定性と再石灰化効果を両立させる点でより好ましくは2〜4となるように(A)及び(B)成分を配合する。上記モル比が0.5未満ではフッ化物単独と比べて顕著な再石灰化効果が発揮されず、モル比が6を超える場合、安定性が低下し、十分な再石灰化効果が得られなくなる。
【0030】
前記モル比を達成するために、(B)成分の水溶性カルシウム塩の配合量は、カルシウムイオンとして製剤全体の0.06〜1.44%(1.5〜36.0mmol/100g)が好ましく、より好ましくは、0.24〜0.96%(6.0〜24.0mmol/100g)である。
【0031】
更に、本発明の洗口液においては、(B)成分のカルシウムイオンに対する(C)成分のマグネシウムイオンのモル比が1.3〜3.5となるように、特に安定性及び再石灰化促進効果の点でより好ましくは2.0〜3.0となるように(B)及び(C)成分を配合する。上記モル比が1.3未満では安定性が悪化したり、あるいは十分な再石灰化効果が得られず、モル比が3.5を超える場合は、安定性が悪化したり、あるいは過剰のマグネシウムイオンにより再石灰化が阻害されてしまう。
【0032】
(B)成分に対する(C)成分のモル比を上記範囲にするために、上記したように(A)成分の配合量が0.04〜0.12%である洗口液においては、(B)成分の配合量がカルシウムイオンとして0.04〜1.72%(1.0〜43.0mmol/100g)であることが好適であるが、(C)成分としての水溶性マグネシウム塩の配合量は、マグネシウムイオンとして製剤全体の0.03〜3.66%(1.3〜150.6mmol/100g)が好ましく、特に再石灰化促進効果の点でより好ましくは0.05〜3.14%(2〜129.1mmol/100g)である。
【0033】
また、(B)成分に対する(C)成分のモル比を上記範囲にするために、上記したように(A)成分の配合量が0.13〜0.25%である洗口液においては、(B)成分の配合量がカルシウムイオンとして0.06〜1.44%(1.5〜36.0mmol/100g)であることが好適であるが、(C)成分としての水溶性マグネシウム塩の配合量は、マグネシウムイオンとして製剤全体の0.05〜3.06%(1.95〜126.0mmol/100g)が好ましく、特に再石灰化促進効果の点でより好ましくは0.07〜2.63%(3〜108.0mmol/100g)である。
【0034】
本発明の洗口液には、必要に応じて界面活性剤を配合することができるが、N−アシルアミノ酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等のアニオン界面活性剤は、フッ化物と金属塩の安定性を損なうため配合できない。界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアミド等のノニオン界面活性剤等が好適に使用できる。特に汎用性の点で、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル等がより好ましい。
【0035】
ノニオン界面活性剤として具体的には、アルキル鎖の炭素鎖長として炭素数が14〜18で、エチレンオキサイド平均付加モル数が15〜30のポリオキシエチレンアルキルエーテル、エチレンオキサイド平均付加モル数が50〜80のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸の炭素数が12〜18のソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸の炭素数が16〜18で、エチレンオキサイド平均付加モル数が10〜40のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等を使用できる。市販品では、ポリオキシエチレンセチルエーテルとして日本エマルジョン株式会社のEMALEX115、120、125、ポリオキシエチレンステアリルエーテルとして日本エマルジョン株式会社のEMALEX615、620、625、630、青木油脂工業株式会社のBLAUNON SR715、SR720、SR730、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油として日光ケミカルズ株式会社のNIKKOL HCO−50、HCO−60、HCO−80、日本エマルジョン株式会社のEMALEX HC−50、HC−60、HC−80、青木油脂工業株式会社のBLAUNON RCW−60、RCW−80、ソルビタン脂肪酸エステルとして日光ケミカルズ株式会社のNIKKOL SS−10V、SS−10MV、SI−15RV、SO−10V、SO−15MV、SO−30RV、日本エマルジョン株式会社のEMALEX SPO−100、SPE−100S、青木油脂工業株式会社のBLAUNON P−20、P−80、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとして日光ケミカルズ株式会社のNIKKOL TP−10V、TS−10V、TS−10MV、TI−10V、TO−10V、TO−10MV、TO−30V、日本エマルジョン株式会社のEMALEX ET−8020、ET−8040、青木油脂工業株式会社のBLAUNON ST−21、OT−21等が挙げられる。
【0036】
前記界面活性剤は、1種を単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができ、その配合量は、製剤全体の0.01〜7%が好ましく、特に使用感及び粘膜刺激低下の点でより好ましくは0.1〜5%である。
【0037】
本発明の洗口液には、上記各成分に加えて、洗口液に必要な任意成分を配合することができる。任意成分としては、例えば、粘結剤、粘稠剤、甘味剤、防腐剤、香料、薬用成分、pH調整剤、水等の溶媒を安定性及び再石灰化促進効果を損なわない範囲で配合し得る。以下に任意成分の具体例を示すが、本発明の洗口液に配合可能な成分はこれらに制限されるものではない。
【0038】
粘結剤としては、例えば、プルラン、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、通常、製剤全体に対して0.01〜2%配合することができる。
【0039】
粘稠剤としては、例えば、ソルビット、70%ソルビット、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等が挙げられ、通常、製剤全体に対して1〜50%配合することができる。
【0040】
甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジンヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、p−メトキシシンナミックアルデヒド、ソーマチン、パラチノース、エリスリトール、マルチトール等が挙げられる。
【0041】
防腐剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、エチレンジアミン四酢酸塩、塩化ベンザルコニウムなどが配合できる。
【0042】
香料としては、例えば、ペパーミント、スペアミント等の精油、レモン、ストロベリー等のフルーツ系のエッセンス、1−メントール、カルボン、オイゲノール、アネトール、リナロール、リモネン、オシメン、シネオール、n−デシルアルコール、シトロネロール、ワニリン、α−テルピネオール、サリチル酸メチル、チモール、ローズマリー油、セージ油、シソ油、レモン油、オレンジ油等の香料素材が好適である。
【0043】
更に薬用成分として、クロロヘキシジン、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛等の殺菌又は抗菌剤、縮合リン酸塩、エタンヒドロキシジホスフォネート等の歯石予防剤、トラネキサム酸、グリチルリチン2カリウム塩等の抗炎症剤、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド等のコーティング剤、デキストラナーゼ、ムタナーゼ等の酵素剤、塩化ナトリウム、乳酸アルミニウム等の収斂剤、硝酸カリウム等の知覚過敏抑制剤などを、薬剤学的に許容できる範囲で使用することができる。
【0044】
また、溶剤としてエタノール、水等を配合し得る。
【0045】
なお、これら任意成分の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲の常用量とすることができる。
【0046】
本発明の洗口液のpHは5〜8であることが好ましく、必要に応じてpH調整剤を使用してpH調整することができる。pH調整剤としては、リン酸又はその塩(リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウムなど)、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウムなど)、リンゴ酸又はその塩、グルコン酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、コハク酸又はその塩、グルタミン酸又はその塩、乳酸、塩酸、酢酸、硝酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実験例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例中の%はいずれも質量百分率を示す。
〔実験例〕
【0048】
〔実験例1〕安定性及び再石灰化評価(単純組成)
表1−1〜1−8に示す組成の処置液を調製し、下記方法で安定性及び再石灰化を評価した。
【0049】
なお、使用した原料は、フッ化ナトリウム(NaF、ステラケミファ株式会社)、モノフルオロリン酸ナトリウム(Na2PO3F、ローディア日華株式会社)、フッ化スズ(SnF2、ステラケミファ株式会社)、塩化カルシウム2水和物(CaCl2・2H2O、和光純薬工業株式会社)、塩化マグネシウム6水和物(MgCl2・6H2O、和光純薬工業株式会社)である。
【0050】
処置液の安定性評価
表1−1〜1−8に示す組成の処置液(実施例1−1〜1−24、比較例1−1〜1−18)を調製後、ポリプロピレン製の容器に入れ、恒温室(50℃)で1週間静置後の処置液中の沈殿形成の有無を目視で観察し、下記基準で評価した。なお、処置液の調製は、表1−1〜1−8に記載の各成分を所定濃度となるよう蒸留水に溶解した。結果を表1−1〜1−8に併記する。
【0051】
安定性の評価基準
沈殿形成の有無; 沈殿物なし ○
沈殿物少ない △
沈殿物多い ×
基準の具体的な定義としては、目視で沈殿物を確認できない場合を“沈殿物なし”、目視で沈殿物を確認でき、混合時に透明感のある白濁が生じる場合を“沈殿物少ない”、目視で沈殿物を十分に確認でき、混合時に透明感のない白濁が生じる場合を“沈殿物多い”とした。
【0052】
ヒトエナメル質に人工的に作製した初期う蝕の再石灰化評価
カーボランダム(HP13;株式会社松風)、ペーパーコーン(SHARP−MINI;大木化学工業株式会社)で研磨したヒト抜去歯のエナメル部分を約5mm角に切断した。2×2mmのウィンドウ部を除いてマニキュアで被覆後、脱灰液(CaCl2=12mmol/L、KH2PO4=10mmol/L、酢酸=100mmol/L、NaCl=100mmol/L、乳酸=50mmol/L;pH=4.5)に1〜2週間浸漬し、ウィンドウ部に初期う蝕を形成させた。
初期う蝕サンプルを蒸留水で洗浄後、1gの人工唾液(CaCl2=1.0mmol/L、KH2PO4=3.0mmol/L、酢酸=100mmol/L、NaCl=100mmol/L;pH=6.3)中に投入した。実施例及び比較例の処置液を常法により調製後、その2gを混合(口腔内で若干希釈される洗口液を想定)し、30秒間の処置(処置液計3g/初期う蝕サンプル3個)を行った。処置後、水分を除去して、37℃の人工唾液に浸漬した。この処置を2回/日行い、計2週間再石灰化試験を行った。
【0053】
歯の蛍光強度変化を測定することによりう蝕の定量が可能なQLF(Quantitative Light−induced Fluorescence;Inspektor Research Systems BV)システムを用いて、ΔF値(平均蛍光強度変化量)を測定後、以下の式で再石灰化率(%)を算出し、各例n=3の平均値を比較することにより、再石灰化評価を行った。結果を表1−1〜1−7に併記する。
再石灰化率(%)=〔(初期のΔF−再石灰化後のΔF)/初期のΔF〕×100
【0054】
再石灰化の評価基準
再石灰化率; 40%以上45%未満 ◎
35%以上40%未満 ○〜◎
30%以上35%未満 ○
20%以上30%未満 ●
10%以上20%未満 △
10%未満 ×
【0055】
再石灰化後の初期う蝕表層のミネラル密度評価
上記と同様の方法で処置液(実施例及び比較例)で処理して得られた再石灰化後の歯牙サンプルの一部(n=1)、及び脱灰のみ行なったサンプル(初期値;n=3)を脱水後、レジン(Rigolac 70F、Rigolac 2004;応研商事株式会社)で包埋した。包埋した歯牙サンプルを切断後、研磨し、ウィンドウ部を通る厚さ約110μmの切片を作製した。歯牙サンプルをフォトプレート上に並べ、3mA、10kVの条件でX線を照射し、微大撮影X線写真(TMR画像)を得た。画像解析装置(PIAS−V、PIAS社)を用いて、TMR画像から、再石灰化後の初期う蝕部のミネラルプロファイル(ミネラル密度に相当する曲線グラフ)を測定し、得られた各例の初期う蝕表層のミネラル密度(vol%)を比較し、下記基準で評価した。結果を表1−1〜1−8に併記する。
【0056】
表層ミネラル密度の評価基準
ミネラル密度が
10〜20% × 表層が初期値と同等
21〜25% △ 表層がほとんど再石灰化していない
26〜50% ◎ 表層が適度な速度で再石灰化し、初期う蝕内部への無機イオンの
通過を十分に確保している
51〜65% ○ 表層が適度な速度で再石灰化し、初期う蝕内部への無機イオンの
通過を確保している
66〜95% × 表層が過剰に再石灰化し、初期う蝕内部への無機イオンの通過を
阻害している
なお、×の評価が2種類あるため、表中には、ミネラル密度が10〜20%の場合は「×≦20」、ミネラル密度が66〜95%の場合は「×≧66」と記載した。
【0057】
【表1−1】

【0058】
【表1−2】

【0059】
【表1−3】

【0060】
【表1−4】

【0061】
【表1−5】

【0062】
【表1−6】

【0063】
【表1−7】

【0064】
【表1−8】

【0065】
実験例1の結果から、0.04〜0.25%のフッ化ナトリウム、水溶性カルシウム塩、水溶性マグネシウム塩を含み、[Ca]/[F]のモル比が1.0〜15(フッ化ナトリウムが0.04〜0.12%の時)、又は、[Ca]/[F]のモル比が0.5〜6(フッ化ナトリウムが0.13〜0.25%の時)であり、かつ、[Mg]/[Ca]のモル比が1.3〜3.5である洗口液には、優れた安定性が保持されると共に、初期う蝕表層の急速な石灰化を緩和することによる再石灰化促進効果が認められた。
【0066】
〔実験例2〕安定性及び再石灰化評価(製剤組成)
下記組成の洗口液を下記方法で調製し、安定性及び再石灰化を評価した。
【0067】
使用した原料は、フッ化ナトリウム(ステラケミファ株式会社)、モノフルオロリン酸ナトリウム(ローディア日華株式会社)、フッ化スズ(ステラケミファ株式会社)、塩化カルシウム2水和物(株式会社トクヤマ)、乳酸カルシウム5水和物(太平化学産業株式会社)、酢酸カルシウム1水和物(キシダ化学株式会社)、グルコン酸カルシウム1水和物(関東化学株式会社)、硝酸カルシウム4水和物(和光純薬工業株式会社)、塩化マグネシウム6水和物(馬居化成工業株式会社)、酢酸マグネシウム4水和物(関西触媒化学株式会社)、乳酸マグネシウム3水和物(和光純薬工業株式会社)である。
【0068】
洗口液の調製
洗口液の調製方法は、以下の通りである。ソルビットやグリセリン等の湿潤剤を含む精製水中に水溶性成分(フッ化ナトリウム、水溶性カルシウム塩、水溶性マグネシウム塩、pH調整剤など)を常温で完全に溶解させた後、粘結剤、ノニオン界面活性剤、保存料、着色剤、エタノール等を混合し、スリーワンモーターと回転羽根を有する撹拌機で撹拌し、均一液として洗口液を得た。
【0069】
洗口液の安定性観察
実験例1と同様に、調製した液をポリプロピレン製の容器に入れ、恒温室(50℃)で1週間静置後の洗口液中の沈殿形成の有無を目視で観察し、同様の基準で評価した。結果を表2−1〜2−3に併記する。
【0070】
ヒトエナメル質に人工的に作製した初期う蝕の再石灰化評価
実験例1と同様に、再石灰化実験を行い、QLF法により再石灰化率を算出後、同様の基準により評価を行った。結果を表2−1〜2−3に併記する。
【0071】
再石灰化後の初期う蝕表層のミネラル密度評価
実験例1と同様に、TMR法により、初期う蝕表層のミネラル密度を測定し、同様の基準により評価を行った。結果を表2−1〜2−3に併記する。
【0072】
〔実施例2−1〕
フッ化ナトリウム 0.055
酢酸カルシウム1水和物 3.08
酢酸マグネシウム4水和物 9.65
85%グリセリン 15
プロピレングリコール 2.0
サッカリンナトリウム 0.25
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 2.0
(エチレンオキサイド平均付加モル数50)
(EMALEX HC−50;日本エマルジョン株式会社)
安息香酸ナトリウム 0.4
クエン酸ナトリウム(pH調整剤) 適量
エタノール 5.0
塩化セチルピリジニウム 0.03
香料 1.0
蒸留水 残り
合計 100%
pH 6.7
【0073】
〔実施例2−2〕
フッ化ナトリウム 0.11
乳酸カルシウム5水和物 2.31
塩化マグネシウム6水和物 5.08
70%ソルビット 10
プロピレングリコール 2.5
サッカリンナトリウム 0.2
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 2.0
(エチレンオキサイド平均付加モル数20)
(NIKKOL TS−10MV;日光ケミカルズ株式会社)
エチルパラベン 0.2
塩酸(pH調整剤) 適量
トリクロサン 0.02
デキストラナーゼ 0.2
香料 1.0
蒸留水 残り
合計 100%
pH 5.5
【0074】
〔実施例2−3〕
フッ化ナトリウム 0.11
塩化カルシウム2水和物 2.94
塩化マグネシウム6水和物 8.13
85%グリセリン 10
キシリトール 5.0
プロピレングリコール 3.0
サッカリンナトリウム 0.2
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 3.5
(エチレンオキサイド平均付加モル数60)
(NIKKOL HCO−60;日光ケミカルズ株式会社)
エチルパラベン 0.2
クエン酸ナトリウム(pH調整剤) 適量
香料 1.0
蒸留水 残り
合計 100%
pH 5.7
【0075】
〔実施例2−4〕
フッ化ナトリウム 0.17
硝酸カルシウム4水和物 4.72
酢酸マグネシウム4水和物 8.58
85%グリセリン 10
プロピレングリコール 3.0
サッカリンナトリウム 0.25
ポリオキシエチレンステアリルエーテル 2.0
(エチレンオキサイド平均付加モル数25)
(EMALEX625;日光エマルジョン株式会社)
エチルパラベン 0.2
水酸化ナトリウム(pH調整剤) 適量
香料 1.0
蒸留水 残り
合計 100%
pH 6.2
【0076】
〔実施例2−5〕
フッ化ナトリウム 0.21
グルコン酸カルシウム1水和物 2.24
乳酸マグネシウム3水和物 2.56
85%グリセリン 10
キシリトール 10
プロピレングリコール 3.0
サッカリンナトリウム 0.25
モノステアリン酸ソルビタン 1.5
(NIKKOL SS−10MV;日光ケミカルズ株式会社)
安息香酸ナトリウム 0.2
クエン酸ナトリウム(pH調整剤) 適量
エタノール 5.0
デキストラナーゼ 0.2
香料 1.0
蒸留水 残り
合計 100%
pH 5.9
【0077】
〔実施例2−6〕
フッ化ナトリウム 0.21
硝酸カルシウム4水和物 3.54
塩化マグネシウム6水和物 8.13
70%ソルビット 10
キシリトール 3.0
プロピレングリコール 2.0
サッカリンナトリウム 0.25
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 3.0
(エチレンオキサイド平均付加モル数60)
(NIKKOL HCO−60;日光ケミカルズ株式会社)
安息香酸ナトリウム 0.2
乳酸(pH調整剤) 適量
エタノール 2.0
トリクロサン 0.02
香料 1.0
蒸留水 残り
合計 100%
pH 5.3
【0078】
〔比較例2−1〕
フッ化ナトリウム 0.21
85%グリセリン 15
プロピレングリコール 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 2.0
(エチレンオキサイド平均付加モル数60)
(NIKKOL HCO−60;日光ケミカルズ株式会社)
安息香酸ナトリウム 0.4
クエン酸ナトリウム(pH調整剤) 適量
香料 1.0
蒸留水 残り
合計 100%
pH 6.0
【0079】
〔比較例2−2〕
フッ化ナトリウム 0.21
塩化カルシウム2水和物 2.94
85%グリセリン 15
プロピレングリコール 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 2.0
(エチレンオキサイド平均付加モル数60)
(NIKKOL HCO−60;日光ケミカルズ株式会社)
安息香酸ナトリウム 0.4
クエン酸ナトリウム(pH調整剤) 適量
香料 1.0
蒸留水 残り
合計 100%
pH 6.0
【0080】
〔比較例2−3〕(2剤型)
液の安定性評価はそれぞれ隔離状態で行い、再石灰化評価及び初期う蝕表層のミネラル密度評価は、使用時に下記のA、Bを等量(それぞれ1g)混合した。
組成A;
フッ化ナトリウム 0.21
85%グリセリン 15
プロピレングリコール 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 2.0
(エチレンオキサイド平均付加モル数60)
(NIKKOL HCO−60;日光ケミカルズ株式会社)
安息香酸ナトリウム 0.4
クエン酸ナトリウム(pH調整剤) 適量
香料 1.0
蒸留水 残り
合計 100%
pH 5.7
組成B;
塩化カルシウム2水和物 2.94
85%グリセリン 15
プロピレングリコール 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 2.0
(エチレンオキサイド平均付加モル数60)
(NIKKOL HCO−60;日光ケミカルズ株式会社)
安息香酸ナトリウム 0.4
クエン酸ナトリウム(pH調整剤) 適量
香料 1.0
蒸留水 残り
合計 100%
pH 5.7
【0081】
〔比較例2−4〕
フッ化ナトリウム 0.21
塩化マグネシウム6水和物 4.07
85%グリセリン 15
プロピレングリコール 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 2.0
(エチレンオキサイド平均付加モル数60)
(NIKKOL HCO−60;日光ケミカルズ株式会社)
安息香酸ナトリウム 0.4
クエン酸ナトリウム(pH調整剤) 適量
香料 1.0
蒸留水 残り
合計 100%
pH 5.8
【0082】
〔比較例2−5〕
モノフルオロリン酸ナトリウム(比較品) 0.38
塩化カルシウム2水和物 2.94
塩化マグネシウム6水和物 8.13
85%グリセリン 15
プロピレングリコール 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 2.0
(エチレンオキサイド平均付加モル数60)
(NIKKOL HCO−60;日光ケミカルズ株式会社)
安息香酸ナトリウム 0.4
クエン酸ナトリウム(pH調整剤) 適量
香料 1.0
蒸留水 残り
合計 100%
pH 6.7
【0083】
〔比較例2−6〕
フッ化スズ(比較品) 0.39
塩化カルシウム2水和物 2.21
塩化マグネシウム6水和物 8.13
85%グリセリン 15
プロピレングリコール 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 2.0
(エチレンオキサイド平均付加モル数60)
(NIKKOL HCO−60;日光ケミカルズ株式会社)
安息香酸ナトリウム 0.4
水酸化ナトリウム(pH調整剤) 適量
香料 1.0
蒸留水 残り
合計 100%
pH 6.5
【0084】
〔比較例2−7〕
フッ化ナトリウム 0.055
グルコン酸カルシウム1水和物 0.31
酢酸マグネシウム4水和物 0.21
70%ソルビット 10
キシリトール 5.0
プロピレングリコール 2.0
サッカリンナトリウム 0.15
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 3.0
(エチレンオキサイド平均付加モル数50)
(EMALEX HC−50;日本エマルジョン株式会社)
メチルパラベン 0.3
エタノール 5.0
香料 1.0
蒸留水 残り
合計 100%
pH 6.0
【0085】
〔比較例2−8〕
フッ化ナトリウム 0.11
硝酸カルシウム4水和物 11.2
塩化マグネシウム6水和物 20.3
70%ソルビット 15
プロピレングリコール 1.5
サッカリンナトリウム 0.2
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 1.5
(エチレンオキサイド平均付加モル数20)
(NIKKOL TS−10MV);日光ケミカルズ株式会社)
安息香酸ナトリウム 0.3
クエン酸ナトリウム(pH調整剤) 適量
香料 1.0
蒸留水 残り
合計 100%
pH 5.7
【0086】
〔比較例2−9〕
フッ化ナトリウム 0.17
乳酸カルシウム5水和物 1.22
乳酸マグネシウム3水和物 0.90
85%グリセリン 10
プロピレングリコール 1.4
サッカリンナトリウム 0.1
ポリオキシエチレンステアリルエーテル 2.0
(エチレンオキサイド平均付加モル数25)
(EMALEX625;日光エマルジョン株式会社)
エチルパラベン 0.3
デキストラナーゼ 0.2
水酸化ナトリウム(pH調整剤) 適量
香料 1.0
蒸留水 残り
合計 100%
pH 7.2
【0087】
〔比較例2−10〕
フッ化ナトリウム 0.055
酢酸カルシウム1水和物 0.88
塩化マグネシウム6水和物 4.57
85%グリセリン 5.0
プロピレングリコール 3.0
サッカリンナトリウム 0.2
モノステアリン酸ソルビタン 1.0
(NIKKOL SS−10MV;日光ケミカルズ株式会社)
安息香酸ナトリウム 0.4
トリクロサン 0.01
塩酸(pH調整剤) 適量
エタノール 7.0
香料 1.0
蒸留水 残り
合計 100%
pH 5.5
【0088】
〔比較例2−11〕
フッ化ナトリウム 0.11
酢酸カルシウム1水和物 3.52
塩化マグネシウム6水和物 8.13
85%グリセリン 15
プロピレングリコール 2.0
サッカリンナトリウム 0.2
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
(NIKKOL SLS;日本ケミカルズ株式会社)
エチルパラベン 0.2
塩酸(pH調整剤) 適量
香料 1.0
蒸留水 残り
合計 100%
pH 5.2
【0089】
〔比較例2−12〕
フッ化ナトリウム 0.21
塩化カルシウム2水和物 2.21
酢酸マグネシウム4水和物 8.58
70%ソルビット 15
プロピレングリコール 3.0
サッカリンナトリウム 0.25
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.7
(ソイポンSLP;川研ファインケミカル株式会社)
安息香酸ナトリウム 0.2
クエン酸ナトリウム(pH調整剤) 適量
エタノール 2.0
香料 1.0
蒸留水 残り
合計 100%
pH 5.6
【0090】
【表2−1】

【0091】
【表2−2】

【0092】
【表2−3】

【0093】
実験例2の結果から、0.04〜0.12%のフッ化ナトリウム、水溶性カルシウム塩及び水溶性マグネシウム塩を含み、[Ca]/[F]のモル比が1.0〜15であり、かつ[Mg]/[Ca]のモル比が1.3〜3.5である洗口液、又は、0.13〜0.25%のフッ化ナトリウム、水溶性カルシウム塩及び水溶性マグネシウム塩を含み、[Ca]/[F]のモル比が0.5〜6であり、かつ、[Mg]/[Ca]のモル比が1.3〜3.5である洗口液は、製剤系においても優れた安定性が保持されると共に、初期う蝕表層の急速な石灰化を緩和することによる再石灰化促進効果が認められた。また、アニオン界面活性剤が配合されると、液中の各種イオンのモル比が変化するため、安定性の持続が困難であることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フッ化ナトリウムと、(B)水溶性カルシウム塩と、(C)水溶性マグネシウム塩とを含有し、(A)フッ化ナトリウムの含有量が製剤全体の0.04〜0.12質量%で、かつ[(B)成分のカルシウムイオン]/[(A)成分のフッ化物イオン]のモル比が1.0〜15、[(C)成分のマグネシウムイオン]/[(B)成分のカルシウムイオン]のモル比が1.3〜3.5であり、アニオン界面活性剤を含有しないことを特徴とする洗口液。
【請求項2】
(A)フッ化ナトリウムと、(B)水溶性カルシウム塩と、(C)水溶性マグネシウム塩とを含有し、(A)フッ化ナトリウムの含有量が製剤全体の0.13〜0.25質量%で、かつ[(B)成分のカルシウムイオン]/[(A)成分のフッ化物イオン]のモル比が0.5〜6、[(C)成分のマグネシウムイオン]/[(B)成分のカルシウムイオン]のモル比が1.3〜3.5であり、アニオン界面活性剤を含有しないことを特徴とする洗口液。

【公開番号】特開2008−156251(P2008−156251A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344605(P2006−344605)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】