説明

洗浄方法、洗浄装置及びパーティクル除去システム

【課題】微細プローブ(微細ピンセット)を用いて被処理物からパーティクルを除去した後のパーティクルを保持した微細プローブ洗浄を効率よく確実に行う。
【解決手段】微細プローブ2のパーティクルを保持した部分2Aのみを、微細口10から洗浄処理部9に挿入し、洗浄処理部9の洗浄液あるいはエアロゾルによって、微細プローブ2からパーティクルを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な針などのプローブを用いてパーティクル(微細異物)を除去した後の、プローブからパーティクルを除去するための洗浄方法及び洗浄装置に関する。
さらに、本発明は、パーティクルが付着した被処理物の洗浄と、その後の上記プローブの洗浄を連続して行えるパーティクル洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においてシリコンウェーハあるいは液晶基板、フォトマスク等に付着したパーティクルを除去する方法として、様々な洗浄方法が提案されてきた。半導体製造工程では、通常、アンモニアと過酸化水素水の混合液中でMHzの周波数の超音波をかけながら除去する方法が知られている。また、ブラシによる処理や高圧水を吹き付ける方法などが用いられている。さらに液体(洗浄液)を使用せずに微細な針を用いて、個々にパーティクルを拾い上げる方法が提案されている。
【0003】
この微細な針などプローブを用いてパーティクルを除去する方法では、一旦、プローブに拾い上げたパーティクルを次の除去作業に支障がないように、プローブからパーティクルを除去する必要がある。プローブからパーティクルを除去する方法として、静電気を用いて除去する方法、粘着物に接触させる方法などが提案されている。
また、プローブの一種である微細なピンセットを用いた方法では、FIB(Focused Ion Beam)を用いてエッチングする方法が知られている。
【0004】
特許文献1、2、3、4には、液体を使わずに、微細な針等を用いてウェーハ表面に付着しているパーティクルを除去する方法が提案されている。
【特許文献1】特開昭63−266832号公報
【特許文献2】特許2831607号公報
【特許文献3】特開平7−335345号公報
【特許文献4】特開平8−254817号公報
【特許文献5】特開平7−195046号公報
【特許文献6】特開平6−260464号公報
【特許文献7】特開平8−250475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下に、微細針形状のプローブにより物理的にパーティクルを除去する方法の問題点について説明する。
上記特許文献1では、パーティクルを弾き飛ばす方法が記載されている。しかし、パーティクルが微細な場合、付着表面へのパーティクルの付着力はファンデルワールス引力などに由来して強いため、日常生活におけるゴミを掃き取るように除去することはできない。また下地の構造に接触した場合には構造にダメージが入る可能性が高い。さらに、微細なパーティクルが付着表面から除去された場合にも、パーティクルは除去機構に付着しやすく、付着したままであると、次の除去動作時に被処理表面に再付着してしまう問題があり、パーティクル除去機構に付着したパーティクルの確実な除去方法が必要となる。
【0006】
特許文献2においては、パーティクルに接近させたプローブに静電気を印加して、付着表面からパーティクルを非接触で除去し、プローブにトラップ(付着)させるようにしている。プローブに付着したパーティクルは、クリーニングするとしており、実施例では、静電気を用いてプローブからパーティクルを反発させて、濾過板に引き付ける例示しかない。しかしながら、特に微細なパーティクルの場合、付着したパーティクルを付着表面やプローブから静電気のみで除去することは容易ではない。
【0007】
同時に、針先に静電気(特許文献5参照)を持たせたり、粘着物質(特許文献6、特許文献7参照)を付着させて置いたりなどが提案されている。例えば針先に静電気を印加する方法では、パーティクルとウェーハ表面を結合している力(ファンデルワールス力)が通常の静電気力よりも非常に強いために、それを上回る大きな静電気を印加することが必要である。その場合、基板との間において放電現象が発生したり、針が基板に静電気力で張り付いてしまったりなど、実際には、不可能な場合が多い。また、粘着物質を介在させる方法において、大きなパーティクルであれば付着させることは可能であると思われるが、1μm以下の小さなパーティクルに関して有効性は定かではない。更に、被処理表面への粘着剤の残留防止や一旦付着させたパーティクルを針先から除去することは容易ではなく、粘着物質に対する溶剤等を用いて除去する必要があると考えられ、更に、洗浄後、再度プローブに粘着物質を付着させる必要がある。
【0008】
表面に付着しているパーティクルを確実に保持し、除去する方法として上記した方法以外では、微細なピンセットを用いた方法が知られている。この方法は、ピンセットによって物理的にパーティクルを保持するため、保持力が強く、強固に表面に付着しているパーティクルであっても確実に除去することができ、有効性が高い。しかしながら、ピンセットに保持した微細なパーティクルは、ピンセットを開いて保持力を無くしてもピンセットから脱離しないため、何らかの方法でピンセットからパーティクルを除去する必要があることは、同様に問題点として存在する。
【0009】
ピンセットからパーティクルを除去する方法として、FIB(Focused Ion Beam)を用いてエッチング除去する方法があるが、FIBは高真空中で行う必要があり、大気中で微細なピンセットを用いてパーティクルを取り除く場合、大気中から真空中にピンセットを入れなくてはならず、簡便ではなく、時間もかかり、更に、装置も高価になってしまう問題がある。
【0010】
また、複数のピンセットを用意して取り替えながら使う方法も考えられるが、微細なパーティクルを除去するためには、ピンセットの形状精度が良く、位置調整などを正確に行う必要があり実現的ではない。また、ピンセットが安価には作製できないため使い終わったピンセットは、最終的には異物を除去し再利用するために何かしらの方法で付着した異物を除去する必要がある。
【0011】
このように、微細なピンセットを含めて、プローブ先端を効率よく確実に洗浄する従来技術が無い。また、パーティクルを保持した微細なプローブ先端部分のみを、その場で洗浄処理する方法が望まれている。
【0012】
本発明は、上述の点に鑑み、パーティクルを保持したプローブ先端部分を効率よく確実に洗浄できる洗浄方法及び洗浄装置を提供するものである。
更に、本発明は、プローブを用いて被処理物に付着しているパーティクルの除去、洗浄及びパーティクルを保持したプローブ先端部分の洗浄を効率よく確実に行えるパーティクル除去システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る洗浄方法は、微細プローブのパーティクルを保持した部分のみを、微細口から洗浄処理部に挿入し、洗浄処理部の洗浄液によって、微細プローブからパーティクルを除去することを特徴とする。
【0014】
本発明の洗浄方法では、微細プローブのパーティクルを保持した部分のみを微細口に挿入し、洗浄処理部の洗浄液により、微細プローブからパーティクルを除去することにより、外部に影響を与えずに微細プローブの洗浄が行われる。
【0015】
本発明に係る洗浄方法は、微細プローブのパーティクルを保持した部分のみを、微細口から洗浄処理部に挿入し、洗浄処理部のエアロゾルによって、微細プローブからパーティクルを除去することを特徴とする。
【0016】
本発明の洗浄方法では、微細プローブのパーティクルを保持した部分のみを微細口に挿入し、洗浄処理部のエアロゾルにより、微細プローブからパーティクルを除去することにより、外部に影響を与えずに微細プローブの洗浄が行われる。
【0017】
本発明に係る洗浄方法は、被処理物に付着されたパーティクルを微細プローブにより除去し、パーティクルを保持した状態の微細プローブを可動して、微細プローブのパーティクルを保持した部分のみを微細口から洗浄処理部に挿入し、洗浄処理部で前記微細プローブから前記パーティクルを除去することを特徴とする。
【0018】
本発明の洗浄方法では、微細プローブを用いて被処理物のパーティクル除去、洗浄と、パーティクルを保持した微細プローブの先端部分のパーティクル除去、洗浄がその場で行える。
【0019】
本発明に係る洗浄装置は、被処理物に付着したパーティクルを除去する微細プローブと、微細プローブのパーティクルを保持した部分のみが挿入される微細口を有し、微細プローブからパーティクル除去を行う洗浄処理部とを有して成ることを特徴とする。
【0020】
本発明の洗浄装置では、被処理物からパーティクルを除去した微細プローブが、そのパーティクルを保持した部分のみを微細口に挿入して洗浄処理部でパーティクル除去が行われる。微細プローブからのパーティクル除去処理では、微細口の内部で行われるので、外部に影響を与えることがない。
【0021】
本発明に係るパーティクル除去システムは、可動自在の微細プローブと、被処理物が配置され、微細プローブにより被処理物に付着したパーティクルを除去する第1の洗浄処理部と、微細プローブに保持されたパーティクルを除去する第2の洗浄処理部と、第1の洗浄処理部と第2の洗浄処理部を分離し、微細プローブのパーティクルを保持した部分のみが挿入される微細口を有した隔壁とを有し、第1の洗浄処理と第2の洗浄処理が連続に行われるようにして成ることを特徴とする。
【0022】
本発明のパーティクル除去システムでは、隔壁を挟んで、第1の洗浄処理部において被処理物に付着されたパーティクルを微細プローブにより除去し、その後、微細プローブのパーティクルを保持した部分のみを隔壁の微細口に挿入して第2の洗浄処理部でパーティクルを除去する洗浄が行われる。このように、その場で第1の処理と第2の処理が連続して行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る洗浄方法及び洗浄装置によれば、パーティクルを保持した微細プローブの部分(いわゆる先端部分)を効率よく確実に洗浄することができる。
【0024】
本発明に係る洗浄方法によれば、被処理物、及び被処理物から除去したパーティクルを保持した微細プローブの部分(いわゆる先端部分)の洗浄を効率よく確実に行うことができる。
【0025】
本発明に係るパーティクル除去システムによれば、被処理物に付着しているパーティクルの除去と、その後のパーティクルを保持したプローブ先端部分の洗浄とを、連続して効率よく確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施の形態は、微細なプローブの先端部分(いわゆるパーティクルを保持した部分)のみが挿入可能な微細な開口部を有した隔壁によって、被処理物の表面から微細プローブを用いてパーティクルを除去する機構部(第1の洗浄部)と、微細プローブの先端部分をクリーニングする機構部(第2の洗浄部)とを分離し、プローブの先端部分のみをクリーニングする機構部へ挿入した状態でプローブ先端部分のパーティクル除去処理を必要に応じて行う機構、いわゆるパーティクル除去システムを構成する。
【0027】
また、本発明の実施の形態は、微細なプローブの先端部分のみが挿入可能な微細な開口部を有した準密閉化された洗浄処理容器を用意し、その容器にプローブ先端部分のみを挿入した状態でプローブ先端部分のパーティクルの除去処理を行うことで、プローブ先端部分のみを必要に応じて洗浄処理するように成す。このとき、洗浄に用いる方法としては、液体を用いた方法、エアロゾル(1流体、2流体など)を用いた方法を用いることができる。
【0028】
液体を用いて洗浄処理を行う場合には、開口部の材質に対して洗浄に使用する液体の接触角が大きくなるように、開口部の材料と洗浄液との組合せを選ぶ。このような組合せを選ぶことで、開口部を十分狭くすると開口部がどのような方向を向いていても、例えば鉛直下向きに開口していても、開口部から液体が流れ出ない状態を実現できる。この状態で、開口部からパーティクルが付着した(パーティクルを保持した)微細なプローブ先端部分のみを挿入することで液体によるプローブ先端部分の洗浄が可能となる。
【0029】
エアロゾルを用いて洗浄処理を行う場合には、微細な開口部を有した準密閉化された洗浄処理容器で処理することで、エアロゾル処理に起因するガス、液体、固体などの飛散を防止すると共に、洗浄処理容器内部を外部に対して低い圧力とすることができる。これによって、開口部から洗浄処理に用いるエアロゾルを含んだガスなどの多量な噴出を抑制する。
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0031】
図1に、本発明に係るパーティクル除去システム(装置)と共に、その微細プローブ先端部分の洗浄方法に適用される洗浄装置の第1実施の形態の概略構成を示す。
【0032】
本実施の形態に係るパーティクル除去システムは、被処理物の表面に付着したパーティクル(微細異物)を微細プローブで摘まみ上げて除去し、その後、微細プローブの先端部分に保持したパーティクルを洗浄してパーティクルを除去する一連の動作を行う洗浄システムである。本例では、被処理物として半導体ウェーハを対象とした場合である。
【0033】
本実施の形態に係るパーティクル除去システム(装置)1は、微細プローブである微細ピンセット2を備えたプローブ機構部3と、被処理物(いわゆる被洗浄処理物)である例えば半導体ウェーハ6の表面に付着されたパーティクルを微細プローブ2で除去し洗浄する第1の洗浄機構部7と、半導体基板6の表面からパーティクルを除去した後の微細プローブ2の先端部分に保持されたパーティクルを除去する第2の洗浄機構部9とを備えて成る。
【0034】
第1の洗浄処理機構部7と第2の洗浄処理機構部9とは、上位概念として、微細ピンセット2のパーティクルを保持した先端部分2Aのみが挿入可能とされた微細な開口部10を有する隔壁11によって分離される。プローブ機構部3は、第1の洗浄処理機構部7と第2の洗浄機処理構部9との間に配置される。
【0035】
本実施の形態において、プローブ機構部3は、回動、X−Y平面内での移動を可能にした移動機構5と、移動機構5に可動可能に取付けられたアーム4と、アーム4の先端に取付けられたプローブとなる微細ピンセット2とから構成される。この微細ピンセット2は、第1の洗浄処理機構7に載置された半導体ウェーハ6の表面と、第2の洗浄処理機構部9における微細開口部10との間を、自在に移動できるように成される。
【0036】
第1の洗浄処理機構部7は、洗浄処理されるべき半導体ウェーハ6を載置固定し、X−Y−Z方向(横、縦、高さ)方向、R(回転)、T(傾斜)可能なステージ8を有して成る。
【0037】
第2の洗浄処理機構部9は、図1に示すように、微細プローブ2の先端部分2Aのみが挿入可能な微細な開口部10を有する準密閉化された洗浄容器13内に洗浄に供する洗浄液(例えば薬液)14を満たして構成される。ここでは、洗浄容器13の一方の側壁に微細プローブ2の先端部分2Aが挿入される開口部10が設けられており、この開口部10を有する一方の側壁が上記の隔壁11に対応する。
【0038】
準密閉化された洗浄容器13は、洗浄液14が循環されるように環状に形成され、一種の環状に形成された配管として構成される。この洗浄容器13の循環途上に洗浄液14を収容した洗浄液タンク15と、循環ポンプ16と、フィルタ17が設けられる。洗浄液14は、図示しないが温度調節機を用いて、所定の温度に保たれるように制御される。また、同様に図示していないが、洗浄液に薬剤を用いたときの薬液調合や、洗浄液の廃液機構が設けられ、調液、廃液など薬液の交換が行える構成が取られる。
【0039】
第2の洗浄処理機構部9では、洗浄液タンク15に溜まっている洗浄液の薬液14の一部が、循環ポンプ16によって吸引され、フィルタ17を通過して微細な開口部10のある流路を通過して薬液タンク15に戻るように、すなわち循環するように構成される。
【0040】
図1では、循環ポンプ16は開口部10より下流側、従って洗浄液タンク15の上流側に配置され、フィルタ17は開口部10の上流側に設けられる。なお、必要に応じて洗浄液タンク15の下流側にも洗浄液を押し出すためのポンプ19を設けることができる。
【0041】
微細開口部10が形成された側壁11、特に開口部では、少なくとも微細開口内面の材料および表面状態が、使用する洗浄液との接触角が大きくなるように構成される。更に開口部10の大きさを調整することで、洗浄液の表面張力によって、メニスカスが形成され、微細開口部10から洗浄液が漏れ出ないように構成される。この構成については詳しく後述する。ここで、開口部10の形状は、円形でなくとも良く、その他、楕円形や矩形などでも良い。
【0042】
開口部10の内壁の材質としては、テフロン系の材料やテフロンコーティングを用いることができる。洗浄液としては、純水の他に、ゼータ電位をコントロールしてパーティクルの再付着を防止したり、除去効率を向上させるためにアンモニア水や、アンモニアと過酸化水素水の混合液などのアルカリ性水溶液、界面活性剤や、エッチング作用のある希フッ酸など、その他、有機系洗浄剤などを用いることができる。
【0043】
一方、微細ピンセット2による半導体ウェーハ6表面からのパーティクルの除去処理後に、直ぐに第2の洗浄処理機構部9において微細ピンセット2の洗浄処理を行うことが効率的である。そのため、第1の洗浄処理機構部7及び第2の洗浄処理機構部9は、微細ピンセット2の移動距離が短くできるパネル除去処理作業領域の近くに設けることが好ましい。
【0044】
次に、図1の装置1を用いて、半導体ウェーハ6の表面のパーティクル洗浄及び微細ピンセット2に付着したパーティクルを除去する方法を、その動作と共に説明する。
ここでは、大気圧中で処理することとし、微細ピンセット2の制御やパーティクルの観察には光学顕微鏡を用いる場合について説明する。
【0045】
(1) 半導体ウェーハ6は処理するために、第1の洗浄処理機構部7におけるステージ、すなわちX−Y−Z(横、縦、高さ)方向、R(回転)、T(傾斜)の可能なステージ8上に設置される。
【0046】
(2) 次に、予め測定して得られているパーティクル座標を基に、半導体ウェーハ6上のパーティクル位置に観測系(図示していない)が来るようにステージ8を移動する。
【0047】
(3) 次に、観察系から得られる情報を基に、半導体ウェーハ6の位置制御、及び微細ピンセット2の位置制御を行い、半導体ウェーハ6表面に付着しているパーティクル21に微細ピンセット2を接近させる。そして、図3に示すように、半導体ウェーハ6表面上の構造にダメージを与えないように、パーティクル21を微細ピンセット2で保持した後、微細ピンセット2を半導体ウェーハ6の表面に対して相対的に引き離して、半導体ウェーハ6表面のパーティクル21を取り除く。
【0048】
(4) 次に、パーティクルを保持(すなわちパーティクルが付着)した微細ピンセット2を移動機構5及びアーム4により移動し、微細ピンセット2の先端部分、すなわちパーティクルを保持した先端部分2Aを、図4に示すように、第2の洗浄処理機構部9の微細な開口部10に挿入する。先端部分2Aが洗浄液14中に入るまで挿入し、微細ピンセット2の先端部分2Aを開く(図4参照)。
【0049】
(5) 微細ピンセット2の先端部分2Aを所要の時間、洗浄液14に挿入して処理することにより、先端部分2Aに保持されていたパーティクル21は、洗浄液14により除去される。所要の時間処理した後、微細ピンセット2の先端部分2Aを第2の洗浄処理機構部9の開口部10から引き出し、微細ピンセット2の先端部分2Aの洗浄を完了する。
【0050】
このとき、微細ピンセット2の先端部分2Aの洗浄液14に対する接触角を高くしておくことにより、微細ピンセット2を開口部10よりの引き出し動作後に、微細ピンセット2に洗浄液が残留しないようにできる。すなわち微細ピンセット2の材質や表面処理と洗浄液の種類を適当に選ぶことで、引き出す動作後に微細ピンセット2に洗浄液が残留しない。
【0051】
(6) 上記工程(2)に戻り、半導体ウェーハ6表面上のパーティクル除去を繰り返す。
【0052】
(7) 半導体ウェーハ6上の目的のパーティクル除去が全て終了したら、半導体ウェーハ6を取り出し、処理を終了する。
【0053】
ここで、開口部10から洗浄液14が漏れ出ないための条件について、説明する。
図1、図2の液体を用いて洗浄する方法において、開口部10の大きさは、近似的に次の数1で求めることができる。
【0054】
液体の表面張力:γ、接触角:θ、密度:ρとして、図5Aに示すように、開口を直径Rの円形とした細管31が液体32中に挿入された場合を考える。重力加速度:gとして細管31内部の気相の侵入深さ:hは、数1で表される。
ただし、疎水性表面としてcosθ<0である。
【0055】
【数1】

【0056】
これは、細管31内部の液体32の表面張力が水深Hの水圧に等しいことを示しており、図5Bのように横に倒した状態においても、細管31部分に加わる水圧が同じであれば、同様のことが成り立ち、細管31より内部の液体32は流れ出ない。更に、下向きに開口部があっても液体は流れ出ない。
【0057】
また、細管31の液体32への挿入深さがhより短い(浅い)場合には、気液界面は細管31の端に形成される。
【0058】
図2の実施の形態において、開口部に加わる水圧は、開口部10を基準(0)にしたときの液体14の最大高さによって決まるので、上記のhより小さければ、液体14が流れ出さないことになる。また、液体の循環のためにポンプで水圧を高める場合は、その最大圧力を水圧に置き換えて考えればよいことになる。例えば、逆に、液体の流れを作るための循環ポンプ16が吸引式であれば、つまり、図1に示すように、開口10部分の流路では負圧になるようなポンプ16であれば、液体14は減圧されるようになるため、開口部10からは液体14は流れ出さない方向になる。ただし、この場合は外気を吸入しないように調整する必要がある。
【0059】
具体的な値としては、上記数1に用いる洗浄液と開口10部分の材質から決まる値を代入して高低差hと開口系Rとの関係を求め、hを代入することで液体が流れ出さない最大の開口系を求めることができる。
【0060】
例えば開口部10の材質がPTFE(四フッ化エチレン樹脂:テフロン樹脂)の場合、水に対する接触角θは114度(cosθ=−0.406)、水の表面張力γは72×10-3〔Nml〕、密度1として水の流れ出ない口径の閾値は、R=5.96/h〔μm〕(但し、ここではhは〔m〕の単位)で表される。
つまり、水の高低差hが10cm(=0.1m)の場合、開口径Rは59μm程度まで設定することができ、開口部は直径59μmまで広げることができる。
【0061】
実際の装置では、水圧がかからないように設置することになるため、液体の流路を略水平に設置することが望ましい。水圧を決める高低差はほぼ配管13の径程度となるので、微細ピンセット2の先端部分2Aを洗浄するためのものであるので、大きくとも内径10mm程度と考えると、0.6mm径の開口まで許される計算になる。
【0062】
上述の第1実施の形態によれば、被処理部の半導体ウェーハ6表面に付着したパーティクルを微細ピンセット2により除去、洗浄した後、そのパーティクルが保持された微細ピンセット先端部分2Aのみを、その洗浄装置、すなわち第2の洗浄処理機構部9に挿入することにより、効率よく確実に微細ピンセット先端部分からパーティクルを除去することができる。すなわち、微細ピンセットを含めて、効率よく確実に洗浄することができる。
【0063】
微細ピンセット2の先端部分2Aのみが挿入可能な微細な開口部10を有した準密閉化された洗浄処理容器13を設け、この洗浄処理容器13に微細ピンセット2の先端部分2Aのみを挿入した状態で先端部分2Aのパーティクル除去処理を行うので、微細ピンセット先端部分2Aのみを洗浄することができる。
【0064】
微細な開口部10からは洗浄液14が漏れ出ないので、洗浄液が外部に影響を与えることがない。
微細な開口部10の内壁材料に洗浄液に対して接触角が高くなる材質、すなわち疎水性の材質を用い、洗浄液の表面張力を利用して、開口部10の大きさを決めることで、開口部10からの洗浄液の漏出を防ぐことができる。
特に、洗浄液を循環させ、且つ開口部10の下流に循環ポンプ16を配置することにより、開口部10の領域の洗浄液はポンプ16により吸引されるようにして流れるので、負圧領域が形成されて、より洗浄液が漏れ出しにくくなる。
【0065】
本実施の形態によれば、被処理物である半導体ウェーハ6表面の洗浄を行う第1の洗浄処理機構部7と、半導体ウェーハ6表面のパーティクルを微細ピンセット2にて除去した後の、パーティクルを保持した微細ピンセット先端部分2Aの洗浄を行う第2の洗浄処理機構部9とを互いに近くに配置することにより、微細ピンセット2により半導体ウェーハ6表面のパーティクルを除去すると共に、その場で微細ピンセット先端部分2Aの洗浄処理を行うことができる。パーティクル除去システムの簡素化を図ることができる。
【0066】
第1の洗浄処理機構部7と第2の洗浄処理機構部9とが、微細ピンセット2の先端部分2Aのみが挿入される微細な開口部10を有する隔壁11により分離されているので、第2の洗浄処理機構部9の洗浄液が第1の洗浄処理機構部7に対して悪影響を及ぼすことがない。
【0067】
次に、上述の第1実施の形態における変化例(他の実施の形態)について説明する。
【0068】
〔変化例1−1〕
本例は、音波振動を付加して構成する。洗浄液により微細ピンセット2の先端部分2Aの洗浄処理中に超音波やMHzの音波振動を付加して、パーティクルの除去力を高めるようにしても良い。例えば、図1に示すように、洗浄容器13の外側の一部に超音波発振器18が設けられる。この超音波発振器18により、開口部10に挿入された微細ピンセット先端部分2Aを洗浄する洗浄液14に対して超音波振動が付加され、パーティクルの除去力が向上する。
【0069】
〔変化例1−2〕
本例は、リンス機能を追加して構成する。パーティクル21が付着された微細ピンセット2の洗浄処理後の洗浄液成分の残留に問題がある場合は、図1と同じ第2の洗浄処理機構部9を並列に設置し、一方を洗浄処理用とし、他方をリンス処理用として構成することができる。すなわち、一方の第2の洗浄処理機構部は、洗浄液で洗浄処理できるようにし、他方の第2の洗浄処理機構部は、リンス用の液体(純水や溶媒)でリンス処理できるようにし、洗浄処理後に微細ピンセット先端部分2Aを差し替えてリンス処理するようにしても良い。
また、図1の配管13に切換バルブを付加して、リンス液を流せるようにしても良い。さらに、洗浄液となる薬液として複数のものを用い、複数回の処理を行っても良い。
【0070】
〔変化例1−3〕
本例は、開口部付近に排気口を設置するように構成する。洗浄液成分が揮発する場合、開口部の近傍に排気口(吸入口)を設置し、ガス成分による悪影響を避けるため、発生したガスを排気するようにしてもよい。またこのとき、同時に、空気や窒素ガスなどを積極的に供給して、発生したガスの排気を効率よく行うようにしてもよい。
【0071】
〔変化例1−4〕
本例は、洗浄処理中に微細ピンセットの開閉及び揺動を行うようにする。すなわち、洗浄処理中に微細ピンセット2を開閉及び揺動、回転運動を行ってもよい。
【0072】
〔変化例1−5〕
本例は、洗浄液の流速を脈動させる。洗浄処理中に洗浄液を脈動することで微細ピンセット先端部分の洗浄効果を向上させるようにしてもよい。
【0073】
〔変化例1−6〕
本例では、開口部の位置を選択することができる。図1、図2では、微細ピンセット2を挿入する微細な開口部10を横方向に設けたが、開口部を例えば下向きに開口するようにしてもよく、360度どの方向でもよい。また、微細な開口部10は、1つ以上存在しても良い。複数の開口部10がある場合、半導体ウェーハ上の処理位置から最短距離の開口部で処理することで、微細ピンセット2の移動時間を短縮することができる。
【0074】
〔変化例1−7〕:処理液の異なる洗浄機構部を複数用いる方法
本例では、処理液の異なる洗浄処理機構部を複数用いる方法である。変化例1−2では、微細ピンセットの先端部分を洗浄するための洗浄液を切り換えて複数回処理をするとした。これに対して、異なる洗浄液(リンス液を含めて)で処理できる複数の洗浄処理機構部を用意しておき、微細ピンセットをそれぞれの微細な開口部に挿入することで異なる薬液による処理を行うようにしても良い。
【0075】
図6に、本発明に係るパーティクル除去システム(装置)と共に、その微細プローブ先端部分の洗浄方法に適用される洗浄装置の第2実施の形態の概略構成を示す。本例では、被処理物として半導体ウェーハを対象とした場合である。
【0076】
なお、図6では、微細プローブに付着されたパーティクルを除去する第2の洗浄処理機構部32のみを示し、その他の、微細プローブである微細ピンセット3と、被処理物(いわゆる被洗浄処理物)である半導体ウェーハ表面に付着されたパーティクルを微細ピンセット3で除去、洗浄する第1の洗浄処理機構部7は、図1と同様の構成であるので、省略した。
【0077】
本実施の形態に係るパーティクル除去システム(装置)30は、第1実施の形態と同様に、図示しないが、微細プローブである微細ピンセット2を備えたプローブ機構部3と、被処理物(いわゆる被洗浄処理物)である例えば半導体ウェーハ6の表面に付着されたパーティクルを微細プローブ2で除去し洗浄する第1の洗浄機構部7と、半導体基板6の表面からパーティクルを除去した後の微細プローブ2の先端部分に保持されたパーティクルを除去する、図6に示す第2の洗浄機構部31とを備えて成る。
【0078】
第1の洗浄処理機構部7と第2の洗浄処理機構部31とは、上位概念として、微細ピンセット2のパーティクルを保持した先端部分2Aのみが挿入可能とされた微細な開口部32〔32A,32B〕を有する隔壁33〔33A,33B〕によって分離される。
【0079】
本実施の形態においても、図示しないが前述の第1実施の形態と同様に、プローブ機構部3は、回動、X−Y平面内での移動を可能にした移動機構5と、移動機構5に可動可能に取付けられたアーム4と、アーム4の先端に取付けられたプローブとなる微細ピンセット2とから構成される。この微細ピンセット2は、第1の洗浄処理機構7に載置された半導体ウェーハ6の表面と、第2の洗浄処理機構部9における微細開口部10との間を、自在に移動できるように成される。
【0080】
第1の洗浄処理機構部7は、洗浄処理されるべき半導体ウェーハ6を載置固定し、X−Y−Z方向(横、縦、高さ)方向、R(回転)、T(傾斜)可能なステージ8を有して成る。
【0081】
そして、本実施の形態に係る洗浄装置、すなわち第2の洗浄処理機構部31は、エアロゾルを用いた洗浄処理機構部であり、図6及び図7に示すように、微細ピンセット2の先端部分2Aのみが挿入される微細な開口部32〔32A,32B〕を有した準密閉化された洗浄容器34内に洗浄に供するエアロゾルが供給されるように構成される。すなわち、洗浄容器34内には開口部32の近傍に対応してエアロゾルの噴出用ノズル35が配置される。
【0082】
洗浄容器34は、図6及び図7に示すように、隔壁33Aに微細ピンセット2の先端部分2Aが挿入される微細な開口部32Aを有し、内部にノズル35を配置してエアロゾルを含むガスが噴射し、その後、排気口を通して排気される第1の流路部36と、この第1の流路部36の外側に形成され、隔壁33Bに開口部32Aと対応する位置に微細な開口部32Bを有した第2の流路部37とを形成して構成される。この第2の流路37は、ノズル35から噴射されたエアロゾルを含んだガスの一部が開口部32Aを通して外部(即ち、半導体ウェーハ側)に漏れ出るのを抑制するためのもので、外部に対して低圧にして排気するように構成される。第2の流路37に漏れたガスは排気口を通して排気されるようになされている。
【0083】
一方、液化ガス、本例では液化二酸化炭素を収容した液化ガスボンベ38が配置され、この液化ガスボンベ38が主配管39を介して第1の流路36内に配置されたノズル35に連結される。主配管39の途上にはボンベ38からの液体二酸化炭素の温度、圧力を調節するための温度調節器41及び圧力調節器42が配置される。
【0084】
この第2の洗浄処理機構部31では、液化ガスボンベ38からの液体二酸化炭素が温度調節器41で予め温度調節され、また圧力調節器42で圧力調節されて、配管40を通してノズル35より噴出する。ノズル35からでた液体二酸化炭素は、噴霧されて微細な液滴となると同時に液体の一部が気化し断熱膨張するために液体が冷却され、固体状(エアロゾル)になる。エアロゾルは、気体中に分散している液体または固体の微粒子をいう。分散している物質が液体のときは霧、固体のときは煙であるが、この区別は厳密なものではない。一方、配管43を通った液体二酸化炭素は圧力調節器44により、ガス化されて、第1の流路36に供給され、一方向に流れて排気口から排気されるようになされる。
【0085】
次に、図6の装置30を用いて、半導体ウェーハ6の表面のパーティクル洗浄及び微細ピンセット2に付着したパーティクルを除去する方法を、その動作と共に説明する。
ここでは、大気圧中で処理することとし、微細ピンセット2の制御やパーティクルの観察には光学顕微鏡を用いる場合について説明する。
【0086】
(1) 半導体ウェーハ6は処理するために、図示しない第1の洗浄処理機構部7におけるステージ、すなわちX−Y−Z(横、縦、高さ)方向R(回転)、T(傾斜)の可能なステージ8上に設置される。
【0087】
(2) 次に、予め測定して得られているパーティクル座標を基に、半導体ウェーハ6上のパーティクル位置に観測系(図示していない)が来るようにステージ8を移動する。
【0088】
(3) 次に、観察系から得られる情報を基に、半導体ウェーハ6の位置制御、及び微細ピンセット2の位置制御を行い、半導体ウェーハ6表面に付着しているパーティクルに微細ピンセット2を接近させる。そして、前述の図3に示すように、半導体ウェーハ6表面上の構造にダメージを与えないように、パーティクル21を微細ピンセット2で保持した後、微細ピンセット2を半導体ウェーハ6の表面に対して相対的に引き離して、半導体ウェーハ6表面のパーティクルを取り除く。
【0089】
(4) 次に、パーティクルを保持(すなわちパーティクルが付着)した微細ピンセット2を、前述の図1で示した移動機構5及びアーム4により移動し、微細ピンセット2の先端部分、すなわちパーティクルを保持した先端部分2Aを、図7に示すように、第2の洗浄処理機構部31の微細な開口部32〔32A,32B〕に挿入する。先端部分2Aが処理領域である第1の流路36に入るまで挿入し、微細ピンセット2の先端部分2Aを開く。
【0090】
(5) 微細ピンセット2の先端部分2Aが挿入されると、ノズル35から微細ピンセットの先端部分2Aに向って液体二酸化炭素を噴出する。このとき、予め温度調節、圧力調節されノズル35から噴出した液体二酸化炭素は、前述したように固体状(エアロゾル)になる。この固体化した二酸化炭素は噴出の勢い(速度)を保ったまま、微細ピンセット先端部分2Aに付着したパーティクル21や微細ピンセット先端部分2Aに衝突し、その衝突によって微細ピンセット先端部分2Aのパーティクル21を除去する。
【0091】
除去されたパーティクルは、二酸化炭素の流れに乗って排気口側に流れて行くため、微細ピンセット2への再付着はなく、排気口を通って外部に排出される。排気量を十分に大きくすることで、例えば微細ピンセット先端部分2Aを挿入している微細な開口部32〔33A,33B〕から外に二酸化炭素が漏洩しない程度に排気風量を取ることで、半導体ウェーハ処理部である第1の洗浄処理機構部7への影響を無くすことができる。
【0092】
所定時間の処理を行い、微細ピンセット先端部分2Aを第2の洗浄処理機構部31の微細な開口部32〔33A,33B〕から引き出し、微細ピンセット先端部分2Aの洗浄を終了する。
【0093】
(6) 上記(2)の工程に戻り、半導体ウェーハ6の表面上のパーティクル除去を繰り返す。
【0094】
(7) 半導体ウェーハ6の表面上の目的のパーティクル除去が全て終了したら、半導体ウェーハ6を取出し、洗浄処理を終了する。
【0095】
上述の第2実施の形態によれば、被処理部の半導体ウェーハ6表面に付着したパーティクルを微細ピンセット2により除去、洗浄した後、そのパーティクルが付着された微細ピンセット先端部分2Aのみを、その洗浄装置、すなわち第2の洗浄処理機構部31に挿入することにより、効率よく確実に微細ピンセット先端部分からパーティクルを除去することができる。すなわち、微細ピンセットを含めて、効率よく確実に洗浄することができる。
【0096】
微細ピンセット2の先端部分2Aのみが挿入可能な微細な開口部32を有した準密閉化された洗浄処理容器34を設け、この洗浄処理容器34に微細ピンセット2の先端部分2Aのみを挿入した状態で先端部分2Aのパーティクル除去処理を行うので、微細ピンセット先端部分2Aのみを洗浄することができる。
【0097】
微細な開口部32からはエアロゾルを含むガスが漏れ出ないので、洗浄液が外部に影響を与えることがない。主たる処理部、すなわち第1の流路36の外側に第2の流路37が設けられているので、第1の流路36の開口部32Aから漏れ出たエアロゾルを含むガスは第2の流路37を通り排出口より外部に排出されるので、開口部32の漏出を防ぐことができる。
【0098】
本実施の形態によれば、被処理物である半導体ウェーハ6表面の洗浄を行う第1の洗浄処理機構部7と、半導体ウェーハ6表面のパーティクルを微細ピンセット2にて除去した後の、パーティクルを保持した微細ピンセット先端部分2Aの洗浄を行う第2の洗浄処理機構部31とを互いに近くに配置することにより、微細ピンセット2により半導体ウェーハ6表面のパーティクルを除去すると共に、その場で微細ピンセット先端部分2Aの洗浄処理を行うことができる。パーティクル除去システムの簡素化を図ることができる。
【0099】
第1の洗浄処理機構部7と第2の洗浄処理機構部31とが、微細ピンセット2の先端部分2Aのみが挿入される微細な開口部32を有する隔壁33〔33A,33B〕により分離されているので、第2の洗浄処理機構部31の洗浄液が第1の洗浄処理機構部7に対して悪影響を及ぼすことがない。
【0100】
次に、上述の第2実施の形態における変化例(他の実施の形態)について説明する。
【0101】
〔変化例2−1〕
本例は、液体二酸化炭素のノズルの後よりガス流を流す機構を設ける。すなわち、ノズル35の後より、乾燥空気や窒素ガス、二酸化炭素ガスなどを流して、エアロゾルの流れを調整するようにしてもよい。また、生成したエアロゾルの速度を更に高めるために、高速のガスを流すようにしてもよい。
ガス流を流す機構としては、例えば、図6に示すように、主配管39から分岐して第1の流路36に連結した分岐配管43を設け、この分岐配管43を介して二酸化炭素ガス流をノズル35の後方から流すように構成することができる。この場合、分岐配管43の途上に圧力調節器44が配置され、液体二酸化炭素をガス化する。
【0102】
エアロゾルを含むガスにより微細ピンセット2の先端部分2Aに保持されているパーティクルは除去されるが、エアロゾルを含むガスが乱流を起こした場合には、除去されたパーティクルが戻る恐れがあるも、配管43からの一方向に流れるガス流が供給されることにより、確実にパーティクルは排気口より除去される。
この一方向に流すガスは、上記したように、空気、窒素ガスなどの他のガスでも構わないが、図6に示すように、分岐配管43を設けて、同じ液体二酸化炭素を利用してガス流を形成すれば、より装置の簡素化が図れる。
【0103】
〔変化例2−2〕
本例は、第2の洗浄処理機構部31の処理部内壁、すなわち流路36、37の内壁や微細ピンセットを加熱する機構を付加した構成を設ける。二酸化炭素のエアロゾル洗浄処理を行うと、断熱膨張によって温度が低下する。このため、処理部の温度が低下して、環境中に水分(湿度)があると水が結露したり氷となる。これらは流路36、37を遮ったり、微細ピンセット2に付着したり、また半導体ウェーハ上に落下するなどの悪影響を及ぼす可能性がある。
【0104】
これらを防止するため、処理前後や処理中に温度が低下する洗浄機能部分や微細ピンセットを加熱する機構を設けてもよい。また、変化例2−1のように、ガスを流す場合、壁面付近を流れるガスの温度を高くしておくようにしてもよい。更に、外部環境にさらに洗浄機構外壁への結露などを防ぐために、外壁を含めて加温、温度調節することが好ましい。
【0105】
〔変化例2−3〕
本例は、開口部付近への排気口を設置する。処理条件によっては、微細開口から二酸化炭素エアロゾルの漏洩が発生する可能性がある。このため、開口部付近に排気口を設けるようにしても良い。
【0106】
〔変化例2−4〕
本例は、洗浄中に微細ピンセットの開閉及び揺動等を行うようにする。満遍なく微細ピンセットの先端部分全周を洗浄処理するためには、洗浄処理中に微細ピンセットを開閉及び揺動、回転運動を行っても良い。
【0107】
〔変化例2−5〕
本例は、二酸化炭素以外のガスを使用することができる。第2実施の形態では、二酸化炭素のエアロゾルを用いて処理するとしたが、他の低沸点の物質を用いたエアロゾル洗浄を行ってもよい。例えばアルゴンや窒素などを用いても良い。この場合、噴霧する液体物質の温度や圧力を制御すると同時に、処理機構内部の圧力を必要に応じて低下させておく方が良い。また、それらの混合物を用いても良い。
【0108】
〔変化例2−6〕
本例は、2流体洗浄を利用する。第2実施の形態では、常温常圧ガス状の物質を用い、1流体(1種類の物質)のエアロゾル状態を用いたが、2流体(2種類の物質)を用いた方法でも良い。ここで言う2種類とは、常温常圧で一種類がガス状態、もう一種類が液体状態の物質である。例えば、純水を高圧の窒素で噴霧する方法などを用いる。この場合、処理後に残留する水分(液体成分)があるときは、乾燥させるためのガス(窒素ガスやアルコール蒸気など)による処理など乾燥処理を行うことが望ましい。
【0109】
〔変化例2−7〕
本例は、第1実施の形態と第2実施の形態を組み合わせて処理するようにしても良い。
【0110】
上述した本発明の実施の形態によれば、微細なプローブである微細ピンセットの洗浄空間を小さくすることで、パーティクルを保持した微細ピンセットの洗浄処理機構部9、31を小さくすることができ、設置自由度が高くなる。したがって、この洗浄処理機構部9を被処理物の洗浄装置、すなわち洗浄処理機構部7と組み合わせることが可能になり、その場で微細ピンセット先端部分を洗浄することができる。
【0111】
洗浄処理機構部9、31の微細な開口部10、33から微細ピンセット先端部分のみを挿入することにより、微細ピンセット先端部分のみを洗浄することができる。このことによって、例えば、微細ピンセットの根元の機構部や微細ピンセットの移動機構への洗浄処理によるダメージや腐食などの悪影響を防止することができる。
【0112】
微細ピンセット先端部分の洗浄処理空間と、通常の空間すなわち被処理物の洗浄処理空間が微細な開口部のみで繋がっているので、洗浄液や洗浄ガスなどの通常の空間への流出を低減することができる。
【0113】
上例では、本発明を、半導体ウェーハ表面の洗浄に適用した場合であるが、その他、フォトマスク、液晶基板、その他の被処理物の洗浄にも適用するものである。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明に係るパーティクル除去システム及び、微細プローブ先端部分の洗浄方法に適用される洗浄装置の第1実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】図1の要部の拡大図である。
【図3】第1実施の形態において、被処理物からのパーティクル除去の説明に供する要部の拡大図である。
【図4】第1実施の形態において、微細プローブ先端部分からのパーティクル除去の説明に供する要部の拡大図である。
【図5】A,B 微細開口部から洗浄液が漏れ出ないための説明に供する説明図である。
【図6】本発明に係るパーティクル除去システム及び、微細プローブ先端部分の洗浄方法に適用される洗浄装置の第2実施の形態を示す要部の概略構成図である。
【図7】第2実施の形態において、微細プローブ先端部分からのパーティクル除去の説明に供する要部の拡大図である。
【符号の説明】
【0115】
1、30・・パーティクル除去システム、2・・微細プローブ(微細ピンセット)、3・・プローブ機構部、4・・アーム、6・・被処理物、7・・第1の洗浄処理機構部、8・・ステージ、9、31・・第2の洗浄処理機構部、10・・開口部、11、33・・隔壁、13、34・・準密閉容器、14・・洗浄液、15・・洗浄液タンク、16・・循環ポンプ、17・・フィルタ、18・・超音波発振子、19・・ポンプ、21・・パーティクル、35・・ノズル、36・・第1の流路、37・・第2の流路、39、43・・配管、41・・温度調節器、42・・圧力調節器、44・・圧力調節器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細プローブのパーティクルを保持した部分のみを、微細口から洗浄処理部に挿入し、
前記洗浄処理部の洗浄液によって、前記微細プローブから前記パーティクルを除去する
ことを特徴とする洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄液の表面張力を利用して、前記微細口から前記洗浄液が漏れ出ない状態で前記パーティクルを除去する
ことを特徴とする請求項1記載の洗浄方法。
【請求項3】
微細プローブのパーティクルを保持した部分のみを、微細口から洗浄処理部に挿入し、
前記洗浄処理部のエアロゾルによって、前記微細プローブから前記パーティクルを除去する
ことを特徴とする洗浄方法。
【請求項4】
被処理物に付着されたパーティクルを微細プローブにより除去し、
前記パーティクルを保持した状態の前記微細プローブを可動して、
前記微細プローブのパーティクルを保持した部分のみを微細口から洗浄処理部に挿入し、
前記洗浄処理部で前記微細プローブから前記パーティクルを除去する
ことを特徴とする洗浄方法。
【請求項5】
被処理物に付着したパーティクルを除去する微細プローブと、
前記微細プローブのパーティクルを保持した部分のみが挿入される微細口を有し、前記微細プローブから前記パーティクル除去を行う洗浄処理部とを有して成る
ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄処理部に洗浄液が収容されて成る
ことを特徴とする請求項5記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記微細口は、疎水性材料で形成され、前記洗浄液の表面張力を利用して前記洗浄液が漏れ出ない大きさに設定されて成る
ことを特徴とする請求項6記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記洗浄処理部にエアロゾル供給手段を有して成る
ことを特徴とする請求項5記載の洗浄装置。
【請求項9】
可動自在の微細プローブと、
被処理物が配置され、前記微細プローブにより被処理物に付着したパーティクルを除去する第1の洗浄処理部と、
前記微細プローブに保持された前記パーティクルを除去する第2の洗浄処理部と、
前記第1の洗浄処理部と前記第2の洗浄処理部を分離し、前記微細プローブのパーティクルを保持した部分のみが挿入される微細口を有した隔壁とを有し、
第1の洗浄処理と第2の洗浄処理が連続に行われるようにして成る
ことを特徴とするパーティクル除去システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−21729(P2008−21729A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190634(P2006−190634)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】