説明

洗浄液生成装置

【課題】洗浄対象物に対する損傷を抑制するとともに、洗浄性の高い洗浄液を生成する装置を提供する。
【解決手段】洗浄液生成装置は、気体が過飽和に溶存している液体に、物理的刺激と電気的刺激の少なくとも一方の刺激を付与して、液体に気泡が含有された洗浄液を生成する刺激付与部1を備える。刺激付与部1は、洗浄液を吐出する吐出口2の前段に配置されている。好ましくは、気体が過飽和に溶存している液体を生成する過飽和溶存液生成機構5を備えている。物理的刺激は、振動、熱、光、撹拌、圧力変化のいずれかであってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を洗浄するための洗浄液を生成する洗浄液生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄方法といえば、薬品による化学洗浄や、物理的な洗浄が広く知られている。例えば、化学洗浄としては、洗浄性化学物質を含有する液体やアルコール等による洗浄が挙げられる。また、物理的な洗浄としては、超音波洗浄器での洗浄等が挙げられる。しかしながら、いずれの場合でも、化学的な作用又は物理的な作用が強力に働くため、洗浄対象物への損傷が懸念される。そのため、洗浄対象物に対する損傷がほとんど生じない、もしくは、軽微と考えられる場合のみにしか用いることができず、必然的に適用範囲が限定されている。そして、人体やそれに関わるものに対しては、人体に対して無害な界面活性剤を含んだ比較的弱い洗浄剤による洗浄が一般的に用いられている。また、化学的な損傷を受け易い対象物に対しては、損傷を与えないような化学物質を含んだ比較的弱い洗浄剤による洗浄が一般的に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−141505号公報
【特許文献2】特開2008−119611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、人体に対して無害な界面活性剤を含んだ洗浄剤など、温和な作用の従来の洗浄剤では、洗浄性が弱くなってしまっていた。すなわち、洗浄性と非損傷性とを両立させることは難しかった。そのため、洗浄対象物に損傷を与えず、かつ、洗浄性の高い洗浄液が求められている。
【0005】
ところで、これまで、気体を含んだ液体で洗浄する方法も知られている(例えば、特許文献1、2等参照)。しかしながら、これらの方法にあっても、非損傷性と洗浄性とをともに十分に満足させることは容易ではなかった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、洗浄対象物に対する損傷を抑制するとともに、洗浄性の高い洗浄液を生成する装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る洗浄液生成装置は、気体が過飽和に溶存している液体に、物理的刺激と電気的刺激の少なくとも一方の刺激を付与して、液体に気泡が含有された洗浄液を生成する刺激付与部を備え、前記刺激付与部は、前記洗浄液を吐出する吐出口の前段に配置されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明では、気体が過飽和に溶存している前記液体を生成する過飽和溶存液生成機構を備えていてもよい。
【0009】
本発明の好ましい態様では、前記物理的刺激が振動である。その場合、前記振動の周波数が50kHz以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の他の好ましい態様では、前記物理的刺激が熱である。
【0011】
本発明の他の好ましい態様では、前記物理的刺激が光である。
【0012】
本発明の他の好ましい態様では、前記物理的刺激が撹拌である。
【0013】
本発明の他の好ましい態様では、前記物理的刺激が圧力変化である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、気体が過飽和で溶解された液体に刺激を与えることにより、過飽和に溶存している気体を気泡化させ、その気泡により洗浄対象物から汚れを除去することができる。これにより、人体等の比較的損傷を受けやすい洗浄対象物に対して、損傷を抑制しながら、高い洗浄効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は、本発明に係る洗浄液生成装置の実施の形態の一例を示す概略図であり、(b)は、刺激付与部の概略図である。
【図2】本発明に係る洗浄液生成装置の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図3】本発明に係る洗浄液生成装置の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図4】(a)及び(b)は、本発明に係る洗浄液生成装置の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図5】過飽和溶存液生成機構の一例を示す概略図である。
【図6】(a)〜(d)は、過飽和溶存液生成機構の一部の一例を示す概略図である。
【図7】過飽和溶存液生成機構の一部の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1(a)は、洗浄液生成装置の実施の形態の一例を示す概略図である。この洗浄液生成装置は、液体に物理的刺激と電気的刺激の少なくとも一方の刺激を付与する刺激付与部1を備えている。刺激付与部1は、取液部4と吐出口2とを結ぶ管体3に設けられている。管体3は、取液部4から取り入れた液体を吐出口2に向けて送出する管であり、配管などによって構成されている。配管の材料は、金属などの無機材料であってもよいし、プラスチックやゴムなどの有機材料であってもよい。管体3は、パイプやホースなどで構成されてもよい。液体の流れる方向は、取液部4、刺激付与部1、吐出口2、の順となっており、刺激付与部1は、液体の流れ方向において吐出口2の前段(上流)に配置され、また、取液部4よりも後段(下流)に配置されている。このように、吐出口2の前段に刺激付与部1が配置されていると、吐出する上流において適宜のタイミングで刺激を付与することができるため、気泡が発生した洗浄液が洗浄対象物に衝突するまでの時間を調節することができ、洗浄力を調節することができる。
【0017】
図1(a)の形態では、取液部4から、気体が過飽和に液体に溶存された過飽和溶存液が装置内に取り入れられる。そして、刺激付与部1において、過飽和溶存液に刺激が付与されると、過飽和溶存液中の飽和濃度を超えて溶存していた気体が気泡となって液体中に発生する。このように、液体に気泡が含有されたものが洗浄液Aとなる。そして、刺激付与部1によって生成された洗浄液Aは、管体3を通って下流に流れ、吐出口2から外部に吐出される。このように、過飽和溶存液に刺激が付与され、気体が気泡として発生した液体を洗浄液Aとして用いるものである。そして、この洗浄液Aは、気泡の作用により優れた洗浄性を発揮する。また、損傷性の高い薬品や化学物質などを不要にすることができ、洗浄対象物に対する損傷を抑制して、洗浄することができる。
【0018】
吐出口2には、開閉弁が設けられていてもよい。それにより、必要なときに洗浄液Aの吐出をすることができる。なお、この開閉弁は、吐出口2と刺激付与部1との間の管体3に設けられていてもよい。
【0019】
図1(b)は、刺激付与部1の形態の一例である。刺激付与部1は、管体3の外面に隣接して設けられている。刺激付与部1は、オン・オフが可能であり、オンになると刺激の付与が行われ、オフになると刺激の付与が停止する。そして、刺激付与部1から物理的刺激及び電気的刺激の一方又は両方が、管体3を介して液体に与えられる。図1(b)では、液体の流れをLqで、刺激をXで表している。
【0020】
液体に与える刺激としては、振動、熱、光、撹拌、圧力変化のいずれか1つ以上であることが好ましい。これらの刺激により、過飽和溶存液中の気体から効率よく気泡を発生させることができ、高い洗浄性を得ることができる。
【0021】
振動により刺激を付与した場合、過飽和に溶存している気体が液体中に気泡として発生し、その気泡によって洗浄対象物から汚れを剥離・洗浄することができる。
【0022】
振動の周波数は、80kHz以下であることが好ましい。それにより、より多くの気泡を発生させることができ、気泡による洗浄効果を高めることができる。その観点から、振動の周波数は50kHz以下に設定することがより好ましい。それによって、さらに多くの気泡を発生させることができ、気泡による洗浄効果をさらに高めることができる。なお、周波数は100Hz以上であることが好ましい。
【0023】
振動の付与手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、超音波、電波、マイクロ波などを用いることができる。具体的には、超音波の振動により刺激を与える場合、超音波発生装置を管体3に取り付け、超音波振動子から過飽和溶存液に超音波振動を与えるようにすることができる。このとき、振動を付与された過飽和溶存液は、内部の気体が溶解できずに気泡として発生し、気泡を含有する液体となる。この液体を洗浄液として使用するのである。
【0024】
振動により刺激を付与する場合においては、管体3が金属により形成されていることが好ましい。また、振動周波数が高い場合には、金属の中でも、アルミニウムやチタンを含む金属であることが好ましい。これらの金属は伝達性が高く、過飽和溶存液に振動を効率よく付与することができる。
【0025】
熱により刺激を付与した場合、過飽和に溶存している気体が液体中に溶けきれず気泡として発生し、その気泡によって洗浄対象物から汚れを剥離し、洗浄することができる。
【0026】
熱により刺激を与える場合、ヒーターなどの加熱手段をオンにして常温常圧で製造された過飽和溶存液の温度を上昇させる。温度が上昇された過飽和溶存液においては気体が溶けきれず気泡が発生する。そして、この気泡が発生した液体を洗浄液として用い、洗浄を行うものである。
【0027】
加熱温度としては、気泡の発生量に合わせて適宜に設定し得るものであるが、例えば、急激に比較的大量の気泡を発生させる場合は、過飽和溶存液を10〜30℃程度以上に上昇するように加熱することができる。
【0028】
光により刺激を付与した場合、液体中の任意の領域にのみ瞬時に気泡を発生させたり、液体が衝突する任意の部分のみに気泡を発生させたりすることができ、洗浄性を高めたい領域に効率よく気泡を発生させることができ、洗浄効果を高めることができる。
【0029】
光としては、可視光でも、赤外光でも、紫外光であってもよい。例えば、光照射器を管体3に取り付け、光照射器の発光部を管体3内に配置したりして、光照射器の発光部から過飽和溶存液に光を照射することができる。このとき、光が照射された過飽和溶存液は光エネルギーによって気体が溶けきれずに気泡が発生する。そして、この気泡が発生した液体を洗浄液として用い、洗浄を行うものである。
【0030】
撹拌により刺激を付与した場合、過飽和に溶存している気体が液体中に気泡として発生し、その気泡によって洗浄対象物から汚れを剥離し、洗浄することができる。
【0031】
撹拌としては、スクリュー機構などを用いることができ、管体3内にスクリュー機構などの撹拌手段を設けることにより撹拌による刺激を過飽和溶存液に与えることができる。スクリュー機構などの場合、過飽和溶存液を送りながら連続的に撹拌により刺激を加えることができる。このとき、撹拌された過飽和溶存液は撹拌による刺激によって気体が溶けきれなくなり気泡が発生する。そして、この気泡が発生した液体を洗浄液として用い、洗浄を行うものである。
【0032】
圧力変化による刺激は、加圧であってもよいし、減圧であってもよい。気泡の発生のためには減圧であることが好ましい。そして、減圧による圧力変化の場合、過飽和に溶存している気体が液体中に溶けきれず気泡として発生し、その気泡によって洗浄対象物から汚れを剥離し、洗浄することができる。
【0033】
圧力変化としては、常圧で流れる過飽和溶存液の圧力を常圧よりも高くしたり(加圧)、低くしたり(減圧)して、刺激を与えることができる。すなわち、圧力が変化された過飽和溶存液は液体中の気体が溶けきれなくなって気泡が発生する。そして、この気泡が発生した液体を洗浄液として用い、洗浄を行うものである。圧力変化としては、例えば、液体の圧力が+0.01MPa以上になるように加圧したり、又は、液体の圧力が−0.01MPa以下になるように減圧したりすることができる。また、これらの加圧と減圧とを交互に変動させたりして圧力変化を与えてもよい。
【0034】
電気的刺激としては、電圧の印加が挙げられる。その場合、電圧が印加された過飽和溶存液は液体中の気体が溶けきれなくなって気泡が発生する。そして、この気泡が発生した液体を洗浄液として用い、洗浄を行うものである。
【0035】
洗浄液は、過飽和溶存液に刺激を付与することによって生成される。過飽和溶存液とは、気体が飽和溶解濃度を超える濃度で液体に含有されている液体のことである。
【0036】
一般に、気体が液体に溶解する現象は知られているが、その飽和溶解濃度は水に二酸化炭素が溶解する場合などを除いて多くない。そして、多量の気体を液体の中に存在させることはできず、気体が液中に存在する上限の量は飽和溶解濃度と考えられている。しかしながら、ある一定条件のもとで生成された気体の混合液においては、気体が液体に飽和溶解濃度を超えて溶解し存在することが知られている。上記の洗浄液生成装置では、この気体が液体に過飽和で溶存した液体を洗浄液の生成に用いるものである。
【0037】
洗浄液においては、過飽和に溶存されていた気体が刺激により気泡となって液体中に発生している。この気泡は、気体の集合であり、洗浄作用を有する。この気泡の洗浄力により、洗浄対象物に損傷を与えず、洗浄を行うことができる。
【0038】
このように、過飽和溶存液及び洗浄液は、気体と液体とにより構成される。
【0039】
過飽和溶存液を構成する液体としては、水が好ましい。すなわち、この場合、洗浄液は、水による液体と気泡で構成された洗浄水となる。水を用いることにより、特別な液体を用いることなく簡単に過飽和溶存液を得て、洗浄液を生成することができる。また、水は入手が容易であり、安価であるので低コストで簡単に洗浄液を生成することができる。また、水は人体に安全であるので安全性の高い洗浄液を得ることができるものである。また、水は化学作用が温和であり、洗浄対象物への損傷を抑制することができる。ここで、液体に水が含まれていればよく、液体が水のみからなっていてもよいし、水が他の成分を溶解させて水溶液の状態になっていてもよい。なお、水としては純度の高い水に限られることはなく、水道水、井戸水、地下水、河川や池の水などをはじめ、洗浄に用いることが可能なあらゆる水を使用することができる。
【0040】
過飽和溶存液を構成する気体としては、特に限定されるものではなく、種々の気体を用いることが可能である。例えば、オゾン、塩素、二酸化塩素などの殺菌性の気体や、水素などの還元力のある気体を始め、二酸化炭素、空気、酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、メタン、プロパン、ブタンなどの気体を単一で又は混合して用いることができる。
【0041】
気体として好ましいものの一つは、殺菌性のある気体であり、特に、オゾンが好ましい。殺菌性の気体を気泡として発生させることにより、気泡自体の洗浄・殺菌作用に加えて、殺菌性の気体で菌を殺菌することができるので、殺菌性の高い洗浄液を得ることができる。
【0042】
また、気体として二酸化炭素を用いることも好ましい。それにより、二酸化炭素の強い発泡作用を洗浄に利用して高い洗浄性能を得ることが可能になる。二酸化炭素を含んだ液体、例えば炭酸水は、炭酸ガスの発泡作用で洗浄することが知られている。しかしながら、上記の洗浄液によれば、通常の炭酸水の二酸化炭素の量をはるかに超える多量の二酸化炭素を気泡として発生させることができる。そして、多量の気泡を発泡させた洗浄液にすることで洗浄性能を高めることができるものである。
【0043】
また、気体として窒素又はアルゴンを用いることも好ましい。窒素、アルゴンといった不活性ガスの気体で洗浄することにより、洗浄対象物の微生物などを不活化して洗浄することができる。すなわち、不活性ガスにより菌などを窒息させて菌の活性を抑制するので雑菌の繁殖を防止できるものである。また、不活性なので使用しても安全であり、また、配管等の金属の腐食がない洗浄液を得ることができる。
【0044】
また、気体として酸素又は空気を用いることも好ましい。その場合、気泡中に含まれる多量の酸素で洗浄することができるので、活性の高い洗浄液を得ることができるものである。すなわち、洗浄対象物に接触させた際に、多量の酸素が供給されて酸素が汚れや微生物に働きかけるため、化学活性を利用して洗浄することができるものである。そして、気体として空気を用いた場合には、ボンベなどの特殊な機器を用いることなく過飽和溶存液及び洗浄液を得ることができるものであり、空気に含まれる酸素を利用して洗浄することができるので、簡単で安価に洗浄性能の高い洗浄液を得ることができるものである。
【0045】
洗浄液による洗浄は、そのまま洗浄対象物に向けて接触させてもよいし、洗浄液を入れた容器に洗浄対象物を浸漬させるようにしてもよい。このように、洗浄液を洗浄対象物に接触させる方法としては、噴射、噴霧、浸漬、塗布などの適宜の方法を採用することができる。
【0046】
図2は、洗浄液生成装置の実施の形態の他の一例を示す概略図である。この装置では、上記の構成に加えて、さらに過飽和溶存液生成機構5を備えている。過飽和溶存液生成機構5は、気体が過飽和に溶存している液体を生成するものである。過飽和溶存液生成機構5は、取液口4と刺激付与部1とを結ぶ管体3に設けられており、取液口4よりも後段(下流)に配置され、刺激付与部1よりも前段(上流)に配置されている。この装置では、取液部4は、水道配管や液体貯留槽などの液体供給源から液体を取り入れる管体3の入口となる。このように、過飽和溶存液生成機構5を備えることにより、過飽和溶存液を得た後、連続的に洗浄液を生成することができ、必要なときに必要な量の洗浄液を生成することが可能になる。
【0047】
図3は、洗浄液生成装置の実施の形態の一例であり、連続式(流水式)の洗浄液生成装置の一例である。この装置では、連続的に液体が過飽和溶存液生成機構5に送られ、過飽和溶存液生成機構5で生成した過飽和溶存液は刺激付与部1によって刺激が与えられて、洗浄液が連続して生成される。そして、得られた洗浄液は連続的に洗浄対象物に接触させることが可能である。この形態によれば、連続式(流水式)でオンラインでの洗浄液の生成が可能となり、欲しい時に欲しい量だけ洗浄液を生成することが可能になる。
【0048】
図4(a)及び(b)は、洗浄液生成装置の実施の形態のさらに他の一例であり、バッチ式の洗浄液生成装置の一例である。
【0049】
図4(a)では、過飽和溶存液生成機構5によって生成された過飽和溶存液は、出液管7から貯液部6に貯液される。貯液された過飽和溶存液は必要なときに管体3を通って吐出口2の方へ流される。その際、管体3に設けられた刺激付与部1により、過飽和溶存液に刺激が与えられて気泡が発生し、洗浄液となって吐出される。このように、この形態では、貯液部6により貯液した過飽和溶存液から洗浄液を生成することにより、必要な時に大量の洗浄液を一度に生成することができる。
【0050】
図4(b)では、過飽和溶存液生成機構5によって生成された過飽和溶存液は、出液管7から貯液部6に貯液される。この貯液部6には、刺激付与部1が設けられている。そして、洗浄液生成の際には、刺激付与部1から貯液部6に溜められた過飽和溶存液に対して刺激が付与される。そして、刺激が与えられた過飽和溶存液は、気泡が発生して洗浄液となる。洗浄液は管体3を通して吐出口2から吐出される。このように、この形態では、貯液部6で貯液されている過飽和溶存液から洗浄液を生成することにより、必要な時に大量の洗浄液を一度に生成することができる。なお、この形態にあっては、貯液部6に洗浄対象物を浸漬させて洗浄を行ってもよい。
【0051】
洗浄液による洗浄の作用の一例を説明する。以下の作用は、考えられえる作用の一例であり、本発明がこれに限定されるものでないのは言うまでもない。
【0052】
吐出された洗浄液は、洗浄対象物の表面の微細な汚れの集合体と接触する。洗浄液には気泡が含まれているため、この気泡の押し出し効果や、気泡と汚れの吸着作用により汚れが除去される。さらに、洗浄液が気体の過飽和状態の液体であるため、接触後も、汚れと液体の界面において多くの分子サイズの気体の気泡が微細気泡として発生する。この新たに発生した微細気泡においても、微細気泡の押し出し効果や、微細気泡と汚れの吸着作用により更に汚れを微細粒子化し分散させる。
【0053】
例えば、汚れが油脂であった場合、気体を親油性の高い酸素にし、油脂界面に酸素の微細気泡を接触させれば、酸素の気泡の押しのけ効果で油脂を移動させ、且つ、酸素と油脂が吸着し酸素が洗浄対象物から汚れを奪い取り、大きな洗浄効果を発揮することができる。
【0054】
従来、発泡により洗浄させることは知られているが、上記の洗浄液では、特に、過飽和溶存液を用いることで、大量の気泡を作用させることができるとともに、汚れと液体界面に分子サイズ(ナノメータサイズ)の微細気泡を発生させることができ、微小な汚れまで除去することが可能なものである。また、気体が過飽和状態の液体が汚れの界面全体で発泡現象を起こすことができるため、これまでの洗浄に比べて、非常に高い洗浄効果が得られる。
【0055】
また、吐出口2から洗浄対象物に向けて洗浄液を噴射してもよい。この場合、洗浄液が洗浄対象物の表面の汚れに衝突し、この衝撃作用によって汚れを粉砕、除去することができる。そして、上記の洗浄液では、気泡が大量に含まれるとともに気体が過飽和に液体に溶存しているので、汚れに衝突した際に、洗浄対象物が振動し、また、液体に衝撃波が発生することにより、汚れを分散または剥ぎ取ることができる。すなわち、洗浄液は気体が過飽和となっていることにより、噴射されて洗浄対象物に衝突した時の衝撃によって、液体内部に発泡現象が起こり、微細気泡が発生して衝撃作用の効果を高めることができるのである。
【0056】
図1の形態における取液部4に送り出す過飽和溶存液を製造する機構、及び、図2〜4の形態における過飽和溶存液生成機構5としては、過飽和溶存液を製造する装置などを利用することができ、その装置としては、特に限定されるものではない。
【0057】
図5は、過飽和溶存液生成機構5の一例である過飽和溶存液生成装置5aを示す概略図である。
【0058】
図5の過飽和溶存液生成装置5aは、液体を圧送して連続的に過飽和溶存液を製造するものである。過飽和溶存液生成装置5aは、気体供給部12と、加圧混合部11と、気体分離部13と、減圧部14とを備えている。気体供給部12は、取液部4から流れてきた液体に気体を供給するものである。加圧混合部11は、気体が供給された液体を加圧し液体中の気体を過飽和に溶解させて加圧状態の過飽和溶存液を生成するものである。気体分離部13は、過飽和溶存液から、加圧混合部11で溶けきれなかった気体を分離するものである。減圧部14は、加圧状態の過飽和溶存液を、過飽和状態を維持し気泡を崩壊させることなく大気圧まで減圧するものである。減圧部14から流出された過飽和溶存液は、管体3を通して刺激付与部1の設けられた下流側に送られる。
【0059】
気体供給部12は、液体が流れる管体3などに接続されることにより液体に気体を供給して注入するものであり、図示の形態では加圧混合部11の前段において接続される気体配管などにより構成されている。そして、例えば気体として空気を注入する場合には、一端を大気中に開放させた管体の他端を加圧混合部11の上流の管体3に接続して気体供給部12を形成することができる。あるいは気体として、オゾン、二酸化炭素、酸素、窒素、アルゴン等を供給する場合には、これらの気体を封入したボンベなどを管体3に接続して気体供給部12を形成することができる。また、オゾンを供給する場合は、気体供給部12をオゾン発生機に接続し、空気から生成したオゾンを供給するようにしてもよい。気体供給部12の接続位置は、図示のように加圧混合部11の前段の管体3に接続してもよく、加圧混合部11に直接接続してもよい。
【0060】
加圧混合部11は、上流から送られてきた液体を圧送するとともにこの液体に注入された気体と液体を混合し、加圧により気体を液体に過飽和に溶解させるものである。加圧混合部11としては、流路の断面積変化などで撹拌力を与えるもので構成することもできるし、また液体が撹拌された状態で管体3を流れているのであれば単に管体3で構成することもできる。図示の形態では、加圧混合部11はポンプで構成して設けてある。気体と液体の加圧及び混合をポンプにより行った場合、液体を急激に加圧・混合することができるので、気体を過飽和に液体に溶解させることができる。加圧混合部11内においては液体と気体が高圧条件で混合される。それにより、気体が強い圧力で液体中に押し込まれ飽和溶解濃度以上に液体に溶存することができる。なお、加圧混合部11は、ポンプに限られるものではなく、ベンチュリ管などで構成してもよい。
【0061】
気体分離部13は、加圧混合部11による加圧で溶解しなかった気体を取り除くものであり、気体配管などで構成することができる。気体を分離することにより、過飽和溶存液の過飽和状態をより安定な状態にすることができる。気体の除去は、浮力で上昇した気体を上部から取り除くようにすることができる。
【0062】
減圧部14は気体が混合された液体の圧力を、過飽和溶存状態を維持したまま徐々に大気圧まで減圧させるものである。上記のようにして加圧により気体と混合された液体は、高圧な状態にありそのまま大気圧下にある外部に排出されると、急激な圧力低下によって、過飽和溶存液中の気体が液体から排出されるおそれがあり、またキャビテーションが発生することがある。そこで、減圧部14を設け、加圧された状態の気液混合液を送り出す際に、減圧部14で大気圧まで徐々に減圧をした後に吐出するようにしているものである。
【0063】
減圧部14としては、図6(a)〜(d)のような構成などにすることができる。図6(a)では、流路断面積が段階的に徐々に小さくなる流路を形成する管体3により、減圧部14が構成されている。図6(b)では、流路断面積が連続的に徐々に小さくなる流路を形成する管体3により、減圧部14が構成されている。図6(c)では、加圧された液体が流路6内を流れる圧力損失により高圧状態(P)の気液混合液の圧力を徐々に低下させて(P、P、・・・)大気圧(P)まで減圧するように流路長さ(L)が調整された流路を形成する管体3により、減圧部14が構成されている。図6(d)では、管体3に設けられた複数の圧力調整弁15により、減圧部14が構成されている。
【0064】
例えば図6(a)又は(b)のような減圧部14を用いた場合、減圧部14よりも上流側の管体3を内径20mmにし、減圧部14を、流路長さが約1cm〜10mで、内径が20mmから4mmにまで徐々に小さくなることにより流路断面積が小さくなる管体3により構成することができる。なお、減圧部14は、入口内径/出口内径=2〜10程度に設定したり、1cmあたりの内径減少値を1〜20mm程度に設定したりすることができる。
【0065】
減圧された液体は管体3を通って下流に送られる。なお、その際、図7のように、刺激付与部1と減圧部14との間における管体3の長さを延長し、刺激付与部1と減圧部14との間に、加圧混合部11における液体の押し込み圧を十分に確保するための延長管体16を設けることもできる。すなわち、減圧部14を含めた全体の圧力損失を算出し、加圧混合部11からの押し込み圧によって加圧混合部11内で液体と気体を加圧するのに必要な圧力と、全体の圧力損失との差を算出し、さらにこの差の圧力損失が生じるように減圧部14の下流の管体3の長さを調整した延長管体16を管体3に付加するようにしてもよい。このように延長管体16を設ければ過飽和溶存状態を安定化させたまま過飽和溶存液を刺激付与部1まで送り出すことができるものである。
【0066】
なお、加圧混合部11よりも下流側の管体3は内径2〜50mm程度に形成することができる。それにより、比較的太い流路断面積で過飽和溶存液を送出することができ、細路により管体3を構成する場合のような配管の詰まりを防止することができる。
【0067】
上記の過飽和溶存液生成機構5aでは、過飽和溶存液を効率よく連続的に生成することができる。そして、得られた過飽和溶存液を適時に刺激付与部1に送り出し、刺激を付与することにより洗浄液を得ることができる。
【0068】
本実施形態の洗浄液生成装置によれば、効率よく洗浄液を生成し、生成された洗浄液により優れた洗浄効果を発揮することができるものである。そして、得られた洗浄液、特に、水と気泡とが混合した洗浄水は、人体などの生体の洗浄への適用や、洗濯機、便器洗浄など電化製品への応用や、電子部品の洗浄などへの応用が可能である。
【符号の説明】
【0069】
A 洗浄液
1 刺激付与部
2 吐出口
3 管体
4 取液部
5 過飽和溶存液生成機構
6 貯液部
7 取入部
11 加圧混合部
12 気体供給部
13 気体除去部
14 減圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が過飽和に溶存している液体に、物理的刺激と電気的刺激の少なくとも一方の刺激を付与して、液体に気泡が含有された洗浄液を生成する刺激付与部を備え、前記刺激付与部は、前記洗浄液を吐出する吐出口の前段に配置されていることを特徴とする、洗浄液生成装置。
【請求項2】
気体が過飽和に溶存している前記液体を生成する過飽和溶存液生成機構を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の洗浄液生成装置。
【請求項3】
前記物理的刺激が振動であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の洗浄液生成装置。
【請求項4】
前記振動の周波数が50kHz以下であることを特徴とする、請求項3に記載の洗浄液生成装置。
【請求項5】
前記物理的刺激が熱であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の洗浄液生成装置。
【請求項6】
前記物理的刺激が光であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の洗浄液生成装置。
【請求項7】
前記物理的刺激が撹拌であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の洗浄液生成装置。
【請求項8】
前記物理的刺激が圧力変化であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の洗浄液生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−213703(P2012−213703A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80270(P2011−80270)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】