説明

洗浄装置

【課題】本発明は、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを洗浄するための洗浄装置(1)に関する。
【解決手段】細胞運搬マイクロカプセルが、製品容器(2)において、冷蔵用バッファ溶液または凍結用バッファ溶液中に保存されている。細胞運搬マイクロカプセルを洗浄するための洗浄用溶液を貯蔵するため、貯蔵容器(6)が設けられている。貯蔵容器(6)が、製品容器(2)へと接続されている。さらに製品容器(2)は、廃棄物容器(10)へと接続されている。細胞運搬マイクロカプセルを洗浄するとき、細胞運搬マイクロカプセルを洗浄すべく洗浄用溶液が貯蔵容器(6)から製品容器(2)へと移され、その後に廃棄物容器へと移される。洗浄済みの細胞運搬マイクロカプセルを、さらなる使用のためにカートリッジへと移すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置に関し、とくには細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを洗浄するための洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞運搬マイクロカプセルは、とりわけ、欧州特許出願公開554 352号明細書および欧州特許出願公開第222 718号明細書に記載され、その内容は、ここでの言及によって本明細書に取り入れられたものとする。マイクロカプセルは、ガラス、その他の酸化ケイ素、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリペンテン、アクリロニトリド・ポリマー、ナイロン、アミラーゼ、コラーゲン、多糖類、およびマグネタイト・ビーズで製作することができ、あるいはゲルまたはゼラチンで形成することができる。典型的な大きさは、10から500μmである。これらのマイクロカプセルは、マイクロカプセル上またはマイクロカプセル内に細胞を植え付けるために使用される。そのようなマイクロカプセルは、医療処置のために、例えば脳などの繊細な組織へと埋め込まれるために使用することができる。
【0003】
米国特許第4,435,505号明細書には、血液サンプルを処理するための装置が知られている。この装置は、底壁を有する上部チャンバを備えており、この底壁の中央には、下垂する注ぎ口が形成されている。上部チャンバの上壁には、導入管が直立して設けられており、溶解用の溶液を含んでいる可撓バッグへとつながる可撓プラスチック管に接続されている。さらなる直立した導入管が、培地を含んでいるさらなる可撓バッグへとつながるさらなる可撓プラスチック管へと接続されている。上部チャンバの下方には、円筒形の底部チャンバが、上部チャンバの内容物を受け取るように設けられている。上部チャンバから下部チャンバへの内容物の移動を促進するため、底部チャンバへ真空を加えることが可能である。
【0004】
欧州特許出願公開第608 153号明細書には、とくにはADN原形質の抽出のため、反応物質を自動的に加えるための装置が記載されている。反応容器へ、別の容器から反応物質が加えられ、さらに他の容器から培養物が加えられる。培養物がフィルタ媒体へと付着することがないよう、乱流が望まれている。反応物質を、フィルタ媒体を通って直接押し込むため、ピストンが設けられている。
【0005】
米国特許第6,103,271号明細書には、球状多層マイクロカプセルを形成するための装置および方法が記載され、この球状多層マイクロカプセルは親水性および疎水性の液体層を交互に有し、これらの液体層は柔軟で半透過性の親水性または疎水性の外膜で囲まれ、拡散速度を制御すべく調整することができる。せん断の少ない混合、および液体−液体の拡散プロセスが、使用されている。マイクロカプセルが形成され、洗浄され、フィルタ処理されている。
【0006】
典型的な例は、神経細胞またはニューロン状細胞あるいは網膜色素上皮細胞が固着したゼラチン球である。網膜色素上皮細胞が、球状の架橋ゼラチン・マイクロ担体からなる細胞運搬マイクロカプセルへと付着または固着した場合、用語「スフェラミン(Spheramine(登録商標))」が使用される。
【0007】
スフェラミン(登録商標)は、きわめて繊細な製品である。細胞を担持している細胞運搬マイクロカプセルは、機械的にきわめて不安定である。大きなせん断力がスフェラミン(登録商標)に加わると、細胞が細胞運搬マイクロカプセルから脱落する可能性があり、そのような製品は無価値となり、たとえこのような無価値となった製品を移植しても、スフェラミン(登録商標)はその機能を失う。したがって、せん断力を加えるいかなる処理も、回避されなければならない。
【0008】
細胞運搬マイクロカプセル、そして特にスフェラミン(登録商標)は、−196℃で保存される。この冷却処理を切り抜けるため、細胞を保持している細胞運搬マイクロカプセルを、特有の凍結用バッファ溶液内に保たなければならない。しかしながら、この凍結用バッファ溶液はきわめて有毒である。したがって、−196℃で保存されていた細胞運搬マイクロカプセルが、使用および患者への適用のための準備において再び温められる場合、凍結用バッファ溶液は、細胞運搬マイクロカプセルを洗浄することによって速やかに取り除かれなければならない。
【0009】
他の選択肢として、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを、2から8℃で冷蔵用バッファ溶液中に保つことが可能である。しかしながら、この冷蔵用バッファ溶液も有毒である。したがって、細胞運搬マイクロカプセルを患者へと適用する前に、やはり洗浄を行わなければならない。
【0010】
以下では、両方の選択肢について、用語「保存用バッファ溶液」を使用する。
【0011】
今までのところ、保存用バッファ溶液中に保存され、細胞を保持している細胞運搬マイクロカプセルが、チューブの中へと配置され、洗浄用の溶液がピペットによって加えられ、チューブが注意深く攪拌され、あるいは振動させられ、細胞運搬マイクロカプセルが沈殿するのをまつ。メニスカス、すなわちチューブ内の液体表面が残りのスラリーの上部にちょうど触れるまで、液体がチューブから取り除かれる。新たな洗浄用溶液が加えられ、上記手順が繰り返される。
【0012】
これは、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを洗浄するためには、遅々とした厄介な方法であり、洗浄液を除去するのが困難である。手順を高速化するために遠心分離機を使用することが試みられている。しかしながら、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルに作用するせん断力が、強すぎることが明らかになっている。細胞が、細胞運搬マイクロカプセルから脱落してしまう。
【0013】
さらに重要なことには、チューブおよびピペットが「医療品」ではない。それらは、直接の医療への適用が承認されていない。シリンジのみが、医療品として認められている。しかしながら、シリンジの使用は、さらに面倒である。さらに、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルがチューブ内に保たれ、ピペットまたはシリンジにて処置される際に、マイクロカプセルは大気へと暴露されることになる。これは、汚染の危険に大いにつながり、認容できるものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを洗浄するための洗浄装置であって、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを迅速に、無菌で、細胞運搬マイクロカプセルを損傷させることなく洗浄することができるよう、洗浄をより効率的かつ円滑に行うことができる洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを洗浄するための請求項1に記載の洗浄装置によって解決される。
【0016】
洗浄装置の好ましい発展形態が、従属請求項に定められている。
【0017】
本発明の洗浄装置は、洗浄が連続的に行われるため、上述した方法に比べてはるかに効率的であるという利点を有している。この洗浄装置は、遠心分離を必要とせず、したがって細胞運搬マイクロカプセルが損傷することがないという大きな利点を有している。この洗浄装置は、無菌化が可能であるという利点を有している。大気への暴露の時間を、最小限にすることができる。したがって、医療の用途における無菌性の喪失を最小限にすることができる。本発明の洗浄装置は、チューブから液体を取り除くという困難な工程を容易にすることができ、製品喪失の恐れが少なくなるという利点を有している。
【0018】
次に、本発明を、添付の図面を参照してさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の第1の実施形態
以下では、図1を参照して本発明の洗浄装置1の第1の実施形態を説明する。洗浄装置1は、製品容器2を中央ユニットとして有している。製品容器2は、最大数ヵ月にのぼる範囲の長期にわたって、スフェラミン(登録商標)などの細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを保存するために使用される。製品容器2は、−196℃の凍結用バッファ溶液または冷蔵用バッファ溶液(保存用バッファ溶液)中に、細胞運搬マイクロカプセルを入れるのに適合している。このような低い温度に耐えるため、製品容器2は、成型によってポリオレフィンで形成され、あるいはガラスで形成されている。シリンジ、とくにシリコーンを含まないシリンジを使用することも可能である。
【0020】
製品容器2は、使用時の状態において、上端に導入口3を有しており、下部に第1の排出口4を有している。さらに、製品容器2の下部には、後に詳述される第2の排出口5が設けられている。
【0021】
洗浄装置1は、細胞運搬マイクロカプセルの洗浄用溶液を収容するための貯蔵容器6を備えている。貯蔵容器は、ポリオレフィンまたはガラスで製作されている。洗浄用溶液は、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを洗浄するのに適しており、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルの用途に対して、いかなる危険性も呈さない。洗浄用溶液は、典型的には、ハンクス平衡塩溶液(Hanks Balanced Salt Solution(HBSS))である。貯蔵容器は、排出口7を有している。貯蔵容器の排出口7が、チューブ8によって製品容器の導入口3につながっている。
【0022】
貯蔵容器6の内部には、洗浄用溶液を、貯蔵容器6から排出口7を通り、製品容器2の導入口3を通って製品容器へと排出するため、プランジャ9が設けられている。
【0023】
洗浄装置1は、廃棄物容器10を有している。廃棄物容器10は、導入口11を有している。廃棄物容器10の導入口11は、チューブ12によって製品容器の第1の排出口4へと接続されている。チューブ12のうちの製品容器2の排出口4に面する方の端部には、フィルタ13が設けられている。フィルタ13は、50μm未満、好ましくは20から40μm、さらに好ましくは30μmの孔サイズを有している。孔サイズは、マイクロカプセルの大きさに依存して決定される。
【0024】
使用のための状態において、廃棄物容器10は、必要に応じてフィルタ14が挿入される開口を上部に有している。フィルタ14は、0.1μmから1.0μm、好ましくは0.15から0.3μm、さらに好ましくは0.2μmの孔サイズを有している。フィルタ14は、廃棄物容器10の通気のために機能する。
【0025】
貯蔵容器6は、製品容器2から取り外すことが可能である。廃棄物容器10は、製品容器2から取り外すことが可能である。
【0026】
チューブと容器との間の接続のために、典型的にはルアー(Luer)接続が使用される。
【0027】
一変形例によれば、製品容器2と廃棄物容器10とが、ユニットとして形成される。そのような場合、チューブ12は不要である。フィルタ13は、製品容器2と廃棄物容器10との間の接続部に設けられる。
【0028】
以下で、図1の洗浄装置1の動作方法を、簡単に説明する。製品容器2が、長期保存の間または輸送の間、細胞を保持している細胞運搬マイクロカプセルを保存するために使用される。そのような場合、細胞を保持している細胞運搬マイクロカプセルが、それぞれ凍結用バッファ溶液または冷蔵用バッファ溶液中に保たれる。どちらの種類のバッファ溶液も、保存用バッファ溶液と称される。凍結用バッファ溶液としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)の溶液が好ましい。冷蔵用バッファ溶液としては、典型的には、ウシ胎仔血清(FCS)を含んでいる溶液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、またはダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Media)が使用される。どちらの種類の溶液も、使用に先立って、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルから取り除かなければならない。したがって、製品容器2が、貯蔵容器6および廃棄物容器10へと接続される。貯蔵容器6は、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを使用する際に妨げにならない洗浄用溶液を保存している。使用の際の状態において、プランジャ9が、洗浄用溶液を貯蔵容器6から製品容器2へと排出するべく、下方へと動かされる。洗浄用溶液が、実質的に層流で製品容器2を通って流れ、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルへせん断力を及ぼすことなく細胞運搬マイクロカプセルを清浄化する。洗浄用溶液が、自身と一緒に保存用バッファ溶液を運ぶ。洗浄用溶液が、フィルタ13を通って廃棄物容器10へと流れ、廃棄物容器10内の空気をフィルタ14を通して排出する。フィルタ13は、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルが通過してしまうのを防止するのに充分に小さい孔を有する。したがって、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルは、清浄化された状態で製品容器2内に保たれる。洗浄用溶液の流れは、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルになんら損傷をもたらさないように、調節することができる。
【0029】
細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルの洗浄の後、清浄化された細胞運搬マイクロカプセルを、製品容器2の第2の排出口5を通って取り出すことができる。
【0030】
本発明の第2の実施形態
以下では、図2を参照して第2の実施形態である洗浄装置15を説明する。
【0031】
第2の実施形態である洗浄装置15は、洗浄用容器16が追加で設けられている点で、第1の実施形態の洗浄装置1と相違している。以下の説明においては、洗浄装置15のうち、第1の実施形態の洗浄装置1と同じ部分については、繰り返すことはしない。
【0032】
洗浄装置15は、ただ1つの排出口18を有する製品容器17を有している。ただ1つの排出口18は、チューブ20を介して洗浄用容器16の導入口19に接続されている。一方、洗浄用容器16は、第1の実施形態の製品容器2の第1の排出口4に相当する第1の排出口21を有している。第2の実施形態の洗浄用容器16の第1の排出口21には、その特性が第1の実施形態のフィルタ13に相当するフィルタ22が設けられている。洗浄用容器16の第1の排出口21は、第1の実施形態と同様、パイプ12を介して廃棄物容器10に接続されている。
【0033】
洗浄用容器16は、第2の排出口23を有している。洗浄用容器16の第2の排出口23は、チューブ、ホース、または類似物25を介してカートリッジ24に接続可能である。カートリッジ24は、清浄化または洗浄された細胞運搬マイクロカプセルを受け取るように機能する。カートリッジ24は、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルが適用されるときに使用される。
【0034】
図2においては、チューブ25が或る程度の長さを有している。しかしながら、カートリッジ24を洗浄用容器16へと直接取り付けることも可能である。
【0035】
第1の変形例
第2の実施形態の第1の変形例によれば、カートリッジ24が、使用のための状態において、上側でオーバーフロー・チューブ26に接続されており、さらにオーバーフロー・チューブ26が、廃棄物容器10へと接続されている。オーバーフロー・チューブ26は、余分な製品をカートリッジ24から廃棄物容器10へと案内するためのものである。
【0036】
第2の変形例
第2の実施形態の第2の変形例によれば、貯蔵容器6と製品容器17とを接続しているチューブ8と、製品容器17と洗浄用容器16とを接続しているチューブ20との間に、追加のバイパス27が接続されている。追加のバイパス27は、洗浄用容器16における洗浄を強化する必要があるように見受けられる場合に、洗浄用溶液を貯蔵容器6から洗浄用容器16へと直接案内するように機能する。
【0037】
第3の変形例
第2の実施形態の第3の変形例によれば、洗浄用容器16に追加のプランジャ28が設けられる。洗浄用容器16の追加のプランジャ28により、清浄化された細胞運搬マイクロカプセルを、洗浄用容器16からカートリッジ24へ輸送するのが容易になる。
【0038】
図4aから4dに示されているように、種々の形状の追加のプランジャ28a、28b、28c、および28dを使用することができる。プランジャ28cが、図3に示されているプランジャ28に相当する。しかしながら、図3に示したのとは異なる底部を有する洗浄用容器の場合、その底部の形状に相補的に対応し、追加のプランジャは、図4a、4b、および4dに示されているような形状を有することができる。これにより、洗浄用容器16をきわめて効率的に空にすることができる。
【0039】
ここで、第2の実施形態の洗浄装置の動作方法を、図5aから5eを参照しつつ説明する。図5aに示されているように、貯蔵容器6が、洗浄用溶液で満たされている。製品容器17の底部が、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルで満たされ、細胞運搬マイクロカプセルは、保存用バッファ溶液中に分布している。細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルが、−196℃の凍結用バッファ溶液中に保持されている場合には、凍結用バッファ溶液を前もって解凍しなければならない。
【0040】
図5bに示されているように、貯蔵容器6のプランジャまたはピストン9が、洗浄用溶液を貯蔵容器6から排出するべく下方へと動かされる。同時に、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルが、製品容器17から洗浄用容器16へと排出される。図5cから見て取れるように、保存用バッファ溶液も、まずは製品容器17から洗浄用容器16へと移され、その後に廃棄物容器10へと移される。貯蔵容器6の洗浄用溶液が、洗浄用容器16において細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを洗浄するために使用される。洗浄用溶液は、保存用バッファ溶液と一緒に廃棄物容器10へと移される。
【0041】
図5dに見て取ることができるように、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを受け取るためのカートリッジ24が、洗浄用容器16の第2の排出口23へと接続される。
【0042】
最後に、図5eに見て取ることができるように、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルが、チューブまたはホース25を介して洗浄用容器16から排出される。その後、カートリッジ24は、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを、意図する目的のために適用する準備ができる。細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを、洗浄用容器16から排出するのが、追加のプランジャ28によって、補助されてもよい。簡略化のため、プランジャ28は図5aから5eには示されていない
【0043】
図2には示されていないが、貯蔵容器6を製品容器17に接続するチューブ8は、製品容器17内に含まれている空気を逃がすことができるよう、製品容器17と貯蔵容器6との間に通気装置を備えてもよい。
【0044】
本発明の第3の実施形態
以下では、図6aから6dを参照して第3の実施形態である洗浄装置29を説明する。
【0045】
第3の実施形態である洗浄装置29は、製品容器31にプランジャ30が設けられている点で、第1の実施形態の洗浄装置1と相違している。以下の説明においては、洗浄装置29のうち、第1の実施形態の洗浄装置1と同じ部分については、繰り返すことはしない。
【0046】
貯蔵容器6が、チューブ32を介して製品容器31に接続されている。チューブ32は、プランジャ30より下流で製品容器31に接続されている。製品容器31は、底部側に排出口33を有している。排出口33は、チューブ35によってカートリッジ34に接続されている。他の特徴は、第1の実施形態と同じである。
【0047】
以下で、第3の実施形態の洗浄装置29の動作を、一連の図6a、6b、6c、および6dを使用して説明する。
【0048】
最初に、図6aに示されているように、貯蔵容器6が、細胞運搬マイクロカプセル用の洗浄用溶液で満たされる。製品容器31は、凍結用バッファ溶液または冷蔵用バッファ溶液(保存用バッファ溶液)中のスフェラミン(登録商標)などの細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルで満たされている。
【0049】
その後に、図6bに示されているように、洗浄用溶液を貯蔵容器6から製品容器31へと排出し、次いで製品容器31およびフィルタ13を通って廃棄物容器10へと排出するために、プランジャ9が使用される。これにより、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルが、貯蔵容器6の洗浄用溶液によって洗浄される。洗浄プロセスの終わりにおいて、製品容器31は、洗浄済みの細胞運搬マイクロカプセルおよび残余の洗浄用溶液で満たされている。
【0050】
その後に、製品容器31のプランジャ30が動かされ、製品容器31内の残余の洗浄用溶液が廃棄物容器10へと排出される。この除去の工程が終わると、図6cに示されているように、すべての洗浄用溶液が製品容器31から除去され、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルのみが、製品容器31内に残る。
【0051】
その後に、細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルが製品容器31からカートリッジ34へ取り出されるのを助けるため、プランジャ30が製品容器31の端部までさらに動かされ、全ての細胞運搬マイクロカプセルが、図6dに示されているようにカートリッジ34へと移される。
【0052】
図6aから6dにおいては、チューブ35により、製品容器31の排出口がカートリッジ34に接続されている。しかしながら、カートリッジ34は製品容器31に近接して設けることができ、とくにはカートリッジ34を製品容器31に直接設けることができる。その場合、チューブ35は不要である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の洗浄装置の第1の実施形態を示している。
【図2】本発明の洗浄装置の第2の実施形態を示している。
【図3】洗浄用容器にプランジャが追加されている第2の実施形態の洗浄装置を示している。
【図4a】洗浄用容器内のプランジャについて、種々のプランジャ形状を示している。
【図4b】洗浄用容器内のプランジャについて、種々のプランジャ形状を示している。
【図4c】洗浄用容器内のプランジャについて、種々のプランジャ形状を示している。
【図4d】洗浄用容器内のプランジャについて、種々のプランジャ形状を示している。
【図5a】第2の実施形態による洗浄装置にて細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを洗浄する種々の工程を示している。
【図5b】第2の実施形態による洗浄装置にて細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを洗浄する種々の工程を示している。
【図5c】第2の実施形態による洗浄装置にて細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを洗浄する種々の工程を示している。
【図5d】第2の実施形態による洗浄装置にて細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを洗浄する種々の工程を示している。
【図5e】第2の実施形態による洗浄装置にて細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを洗浄する種々の工程を示している。
【図6a】第3の実施形態による洗浄装置にて細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを洗浄する種々の工程を示している。
【図6b】第3の実施形態による洗浄装置にて細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを洗浄する種々の工程を示している。
【図6c】第3の実施形態による洗浄装置にて細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを洗浄する種々の工程を示している。
【図6d】第3の実施形態による洗浄装置にて細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを洗浄する種々の工程を示している。
【符号の説明】
【0054】
1…洗浄装置、AF
2…製品容器
3…製品容器2の導入口
4…製品容器2の第1の排出口
5…製品容器2の第2の排出口
6…貯蔵容器
7…貯蔵容器6の排出口
8…製品容器2と貯蔵容器6との間のチューブ
9…貯蔵容器6内のプランジャ
10…廃棄物容器
11…廃棄物容器10の導入口
12…製品容器2と廃棄物容器10との間のチューブ
13…製品容器2の排出口のフィルタ
14…廃棄物容器10の排出口のフィルタ
15…洗浄装置2、AF
16…洗浄用容器
17…製品容器
18…製品容器17の排出口
19…洗浄用容器16の導入口
20…製品容器17と洗浄用容器16との間のチューブ
21…洗浄用容器16の第1の排出口
22…洗浄用容器16の排出口のフィルタ
23…洗浄用容器16の第2の排出口
24…カートリッジ
25…洗浄用容器16とカートリッジ24との間のチューブ、ホース
26…カートリッジ24のオーバーフロー・チューブ
27…製品容器17用の追加のバイパス・チューブ
28…洗浄用容器16内の追加のプランジャ
29…洗浄装置3、AF
30…製品容器31内のプランジャ
31…製品容器
32…貯蔵容器6と製品容器31との間のチューブ
33…製品容器31の排出口
34…カートリッジ
35…製品容器31とカートリッジ34との間のチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを洗浄するための洗浄装置(1)であって、
細胞運搬マイクロカプセルを保存溶液中に保存し、かつ前記細胞運搬マイクロカプセルを洗浄する製品容器(2)であって、導入口(3)と第1の排出口(4)とを有している製品容器(2)、および
洗浄用溶液を貯蔵する貯蔵容器(6)であって、製品容器(2)の導入口(3)に接続された排出口(7)を有している貯蔵容器(6)
を備える洗浄装置。
【請求項2】
請求項1において、洗浄用溶液を貯蔵容器(6)から製品容器(2)へと排出する第1のプランジャ(9)が貯蔵容器(6)に設けられている洗浄装置。
【請求項3】
請求項1または2において、製品容器(2)の第1の排出口(4)に接続されて、使用済の洗浄用溶液を製品容器(2)から受け取る導入口(11)を有する廃棄物容器(10)を備える洗浄装置。
【請求項4】
請求項3において、廃棄物容器(10)が、フィルタ(13)を介して製品容器(2)へと接続されており、
フィルタ(13)が、好ましくは50μm未満、さらに好ましくは約20から約40μm、最も好ましくは約30μmの孔サイズを有している洗浄装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項において、製品容器(2)が、カートリッジ(24)に接続されて、細胞運搬マイクロカプセルを受け取る第2の排出口(5)を有している洗浄装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項において、保存溶液および細胞運搬マイクロカプセルを製品容器(2)から排出する第2のプランジャ(30)が製品容器(2)に設けられている洗浄装置。
【請求項7】
細胞を運搬している細胞運搬マイクロカプセルを洗浄するための洗浄装置(15)であって、
導入口(3)と排出口(18)とを有し、細胞運搬マイクロカプセルを保存溶液中に保存する製品容器(17)、
製品容器(17)の導入口(3)に接続された排出口(7)を有し、洗浄用溶液を貯蔵する貯蔵容器(6)、および
保存溶液中の細胞運搬マイクロカプセルを受け取り、かつ細胞運搬マイクロカプセルを洗浄する洗浄用容器(16)を備え、
前記洗浄用容器(16)は導入口(19)を有しており、前記洗浄用容器(16)はその導入口(19)が製品容器(17)の排出口(18)に接続されている洗浄装置(15)。
【請求項8】
請求項7において、洗浄用溶液を貯蔵容器(6)から製品容器(17)へと排出する第1のプランジャ(9)が貯蔵容器(6)に設けられている洗浄装置。
【請求項9】
請求項7または8において、洗浄用容器(16)が第1の排出口(21)を有しており、
前記洗浄用容器(16)は、その第1の排出口(21)が廃棄物容器(10)の導入口(11)に接続されている洗浄装置。
【請求項10】
請求項9において、廃棄物容器(10)が、フィルタ(22)を介して洗浄用容器(16)に接続されており、
フィルタ(22)が、好ましくは50μm未満、さらに好ましくは約20から約40μm、最も好ましくは約30μmの孔サイズを有している洗浄装置。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか一項において、洗浄用容器(16)が、細胞運搬マイクロカプセルを受け取るカートリッジ(24)に接続される第2の排出口(23)を有している洗浄装置。
【請求項12】
請求項7から11のいずれか一項において、洗浄用容器(16)がその上部に、細胞運搬マイクロカプセルを、細胞運搬マイクロカプセルを受け取るカートリッジ(24)に排出する第3のプランジャ(28)を有しており、
そのプランジャ(28)が、洗浄用容器(16)の底部の形状に対応する底部の形状を有している洗浄装置。
【請求項13】
請求項7から12のいずれか一項において、保存溶液および細胞運搬マイクロカプセルを製品容器(17)から排出する第2のプランジャ(30)が製品容器(17)に設けられている洗浄装置。
【請求項14】
請求項7から13のいずれか一項において、貯蔵容器(6)を洗浄用容器(16)に接続するバイパス・チューブ(27)が設けられている洗浄装置。
【請求項15】
請求項3から14のいずれか一項において、カートリッジ(24)を廃棄物容器(10)に接続するオーバーフロー・チューブ(26)が設けられている洗浄装置。
【請求項16】
請求項3から15のいずれか一項において、廃棄物容器(10)が、フィルタ(14)を備える通気用の開口を有しており、
前記フィルタ(14)が、好ましくは0.1から1.0μm、さらに好ましくは約0.15から約0.3μm、最も好ましくは約0.2μmの孔サイズを有している洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【公表番号】特表2008−510458(P2008−510458A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526396(P2007−526396)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008993
【国際公開番号】WO2006/018312
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(507053666)シェリング・アクチエンゲゼルシャフト (1)
【氏名又は名称原語表記】SCHERING AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】