説明

洗浄装置

【課題】 洗浄サイクルタイムを一定にでき、かつ洗浄効果を上げることができる洗浄装置を提供する。
【解決手段】 ノズルを回転させて洗浄液を噴射するタービン式の洗浄装置であって、洗浄液が流入するヘッドパイプ3入口と、洗浄液の圧力を駆動源としてノズル19を回転させるタービン5との間に、タービン5の回転調整を行う専用のインレットコア4を設けるとともに、ノズルロータ17とノズル19との間に整流格子として二段式ずれ格子18を装着したことを特徴とする。専用のインレットコアを装着することで、タービンの回転速度を一定とし、洗浄サイクルタイムを一定にできる。また、洗浄効果を上げるために、整流格子として働くスタビライザに二段式ずれ格子を装着することで整流を細分化し、直進棒流性能を向上させて洗浄効果を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばタンクや容器の内面を洗浄する洗浄装置に係り、特に流体の圧力を駆動源としてノズルを回転させて洗浄水を噴射する液圧三次元回転式の洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば食品用の醸造タンク、蒸留釜、貯槽、飲料タンクなどや、化学用の反応器、貯槽、容器、混合槽、薬液タンクなどの産業の分野において、それらタンクや容器等の内面を洗浄する洗浄装置として、タービン式と呼ばれる自動回転洗浄装置が用いられている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1に記載されている洗浄装置では、高圧水を噴射するノズルを回転させながらノズルハウジングを自転させることにより、タンクや容器内に均一に高圧水の噴射を行って洗浄する。
【0003】
タービン式の洗浄装置では、内部に駆動用ノズルを設け、洗浄水の一部を駆動用ノズルから噴射して羽根車を回し、これを歯車列により減速伝達して回転数を制御し、所望の回転を得ている。そして、噴射水量や角度を調整したり、洗浄装置の内部に溜まった水の排水量を絞ったりすることによりノズルの回転数を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−68182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したタービン式の洗浄装置においては、タンクや容器内をむらなく洗浄するためには、ノズルの回転数を制御し、回転数を安定させることが必要となる。
【0006】
しかしながら、従来のタービン式の洗浄装置で用いられているノズルは、一定圧力の下で洗浄サイクルがノズルオリフィス径により異なるため、洗浄時間にバラツキが生ずるという課題があった。また、限られた寸法で製作するため、流路内で乱流が起こることにより噴射棒流も捌けぎみになり、十分な洗浄力が得られなかった。
【0007】
これに加えて、駆動の回転数を調整するためには、噴射水量の大、小に応じた最適なノズルの選定が必要となり、回転効率の一番良い噴射位置に設置するために角度の調整も必要になる。
【0008】
しかも、タービン式では、洗浄水の一部を駆動源として利用するため、タービンを駆動させるノズルのオリフィス径が小さいことから、水中のゴミ等による目詰まりを頻繁に起こし、ノズルの回転不良を招くという問題があった。
【0009】
この問題を解決するために、洗浄装置の内部に水中のゴミ等の異物を除去するためのフィルタを設けることも考えられるが、洗浄装置の構造が複雑になるという課題があった。
【0010】
本発明は上記のことに鑑み提案されたもので、その目的とするところは、洗浄サイクルタイムを一定にでき、かつ洗浄効果を上げることができる洗浄装置を提供することにある。
【0011】
また、駆動に関する調整を不要にできる洗浄装置を提供することにある。
【0012】
更に、洗浄装置の構造の複雑化を招くことなく、ノズルの目詰まりによるノズルの回転不良を防止できる洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に係る本発明の洗浄装置は、ノズルを回転させて洗浄液を噴射するタービン式の洗浄装置であって、洗浄液が流入するヘッドパイプ3入口と、洗浄液の圧力を駆動源としてノズル19を回転させるタービン5との間に、タービン5の回転調整を行う専用のインレットコア4を設けるとともに、ノズルロータ17とノズル19との間に整流格子として二段式ずれ格子18を装着したことを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る本発明の洗浄装置は、洗浄液の圧力を駆動源としてノズルを回転させて洗浄水を噴射する液圧三次元回転式の洗浄装置であって、ヘッドパイプ3入口から一定圧力で供給される洗浄液の流量を制御することにより、タービン5の回転調整を行う専用のインレットコア4と、前記インレットコア4を介して洗浄液が供給されて回動されるタービン5と、前記タービン5を駆動した洗浄液が流入するチャンバー1bと、このチャンバー1bで方向転換された洗浄液がノズルクラッチ15を介して供給され、洗浄液を二方向に分岐するノズルロータ17と、前記ノズルロータ17に供給されて二方向に分岐された洗浄液を噴出するノズル19と、前記ノズルロータ17と前記ノズル19との間に設けられ、洗浄液の流れを整える二段式ずれ格子18とを具備することを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の洗浄装置において、前記インレットコア4は、中央部にタービンシャフト6が貫挿される軸穴4aが形成され、この軸穴4aの周りに洗浄液を通過させる複数の斜孔4b−1〜4b−6が形成された短円柱状であることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1または2記載の洗浄装置において、前記インレットコア4は、中央部にタービンシャフト6が貫挿される軸穴4aが形成され、この軸穴4aの周りに洗浄液を通過させる複数の貫通孔4c−1〜4c−7が形成された短円柱状であることを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4いずれか1項記載の洗浄装置において、前記二段式ずれ格子は、5枚羽根構造の第1、第2の整流格子18−1、18−2を回転軸方向にずらして連結配置したものであることを特徴とする。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項5記載の洗浄装置において、前記第1、第2の整流格子18−1、18−2の回転軸に対して72°の角度でそれぞれ配置された羽根を、回転軸方向から見て各羽根相互を36°の角度に連結配置したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1乃至6に係る本発明によれば、タービンの回転調整を行う専用のインレットコアを装着することで、タービンの回転速度を一定とし、洗浄サイクルタイムを一定にできる。また、整流格子として働くスタビライザとして二段式ずれ格子を装着することで整流を細分化し、直進棒流性能を向上させて洗浄効果を高めることができる。
【0020】
また、専用のインレットコアでタービンの回転調整を行い、インレットコアにおける洗浄液の通過径を、洗浄装置の噴射ノズル径以上の大きなサイズにできるため、目詰まりのない構造となる。
【0021】
更に、専用インレットコアを装着することで、タービンと噴射量とのバランスを取ることができるので、駆動に関する調整を不要にできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例に係る洗浄装置における流体の流れを示す断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る洗浄装置を示しており、(a)図は洗浄装置の断面図、(b)図は(a)図のA−A線矢示断面図である。
【図3】本発明の実施例に係る洗浄装置を示しており、(a)図は図2(a)のB−B線矢示断面図、(b)図は図2(a)のC−C線矢示断面図である。
【図4】図1乃至図3に示した洗浄装置におけるインレットコアの構成例を示しており、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のD−D線矢示断面図である。
【図5】図1乃至図3に示した洗浄装置におけるインレットコアの他の構成例を示しており、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のE−E線矢示断面図である。
【図6】図1乃至図3に示した洗浄装置におけるタービンの構成例を示しており、(a)図は斜視図、(b)図は回転軸方向の断面図、(c)図は上面図、(d)図は側面図である。
【図7】二段式ずれ格子の構成例を示しており、(a)図は整流格子の回転軸方向から見た正面図、(b)図は(a)図の側面図、(c)図は二段式ずれ格子の斜視図、(d)図は(c)図の二段式ずれ格子を回転軸方向から見た正面図、(e)図は(c)図の二段式ずれ格子を回転軸と直交する方向から見た側面図である。
【図8】ノズルオリフィス径別のインレットコア角度と本体の回転速度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態に係る洗浄装置は、洗浄サイクルタイムを一定とするために、洗浄液の流入口であるヘッドパイプ入口とその内側に設けられた回動自在なタービンとの間に、タービンの回転調整を行う専用のインレットコアを装着することでタービンの回転速度を一定とし、かつ洗浄効果を上げるために、ノズルロータとノズルとの間に、洗浄液整流用の整流格子として、外側および内側にそれぞれ配置する格子相互の位置をずらした二段式ずれ格子を装着することで整流を細分化し、直進棒流性能を向上させて洗浄効果を高めるものである。
【0024】
すなわち、タービンを回すための専用ノズルを持たない駆動方式とし、タービンを一定回転で回転させるための専用インレットコアを装着して駆動するようにしている。そして、上記専用インレットコアにて駆動タービンの回転調整を行う。
【0025】
また、インレットコアにおける洗浄液の通過径を、洗浄装置のノズルオリフィス径以上の大きなサイズにすることで目詰まりのない構造となる。更に、専用インレットコアを装着することで、駆動タービンと噴射量バランスを取るので、駆動に関する調整が不要にできる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0027】
[洗浄装置の構成]
図1は、本発明の実施例に係る洗浄装置における流体の流れを示す断面図である。図2(a)、(b)及び図3(a)、(b)はそれぞれ、本発明の実施例に係る洗浄装置の各部の断面図である。図2(a)は洗浄装置の断面図、図2(b)は図2(a)のA−A線矢示断面図である。また、図3(a)は図2(a)のB−B線矢示断面図であり、図3(b)は図2(a)のC−C線矢示断面である。
【0028】
この洗浄装置は、液圧三次元回転式と呼ぶもので、流体(洗浄液)の圧力を駆動源として利用し、外側にノズル部を取り付けたハウジング(ボディ)を自転させつつ、ノズル部を自転面に対し直交方向に回転させることにより、ノズルを三次元回転させて洗浄水を噴射するものである。
【0029】
図2(a)、(b)に示すように、この洗浄装置は、図示の状態において、ボディ1の外側面に回転ノズル部1aが回転自在に装着された構成になっている。内部は中空状をなし、かつ底部が開口した上記ボディ1の上部には、ほぼ円筒状をなすヘッドパイプ3が設けられている。ヘッドパイプ3はそのほぼ中央部外周にスラスト軸受23が設けられ、ボディ1に対し回動自在に装着されている。換言すると、ヘッドパイプ3側が固定状態とすると、ボディ1側が回転自在となる。このボディ1の底部の開口部分には、ボトムカバー2が六角穴付ボタンボルト9−9a、9−9b、9−9cにより装着されている。また、ボディ1の内部中央付近には、チャンバー1bを形成するための隔壁1cが設けられている。
【0030】
上記ヘッドパイプ3の内側下部には回転自在なタービン5が収容され、このタービン5の上部にタービン回転調整用のインレットコア4が配置されている。上記タービン5は回転自在なタービンシャフト6の外周に装着されており、このタービンシャフト6の上部にインレットコア4が設けられている。このインレットコア4は、タービンシャフト6に対し固設されている。
【0031】
すなわち、上記タービンシャフト6の上端には、軸受ブッシュ29とE形止め輪9−3が装着されている。また、上記インレットコア4が内設された上記ヘッドパイプ3の側壁に、セットスクリュー9−10aが外側から内側に向かってねじ込まれてインレットコア4が固定されている。インレットコア4は、軸受ブッシュ29、E形止め輪9−3及びセットスクリュー9−10aにより、タービンシャフト6に着脱自在に設けられている。一方、上記タービンシャフト6の下端近傍の外周部には、後述する軸付ウォームギア11(図3(b))に駆動を伝えるウォームギア6dが設けられており、タービンシャフト6の下端はスラスト軸受27と軸受ボール9−8によってボトムカバー2に回動自在に軸支されている。
【0032】
上記タービンシャフト6は、ヘッドパイプ3の中央部に位置し、かつヘッドパイプ3の中央部の小径の円筒部3a内に非接触で貫通しており、また、円筒部3aを介しボディ1内の隔壁1cを貫通しており、円筒部3aの下部外周に設けられたヘッドパイプナット10と隔壁1cの中央部との間に、スラスト軸受24が介在されている。また、隔壁1cの下面側には、ボディ側平ギア8がスラストボール9−7を介在して、ヘッドパイプナット10によりボディ1が回動自在となるように取り付けられている。このヘッドパイプナット10は、セットスクリュー9−10bにより固定されている。
【0033】
図3(a)、(b)に示すように、ボディ1の下部には、上記タービンシャフト6と直交する方向に、軸付ウォームギア11が設けられている。この軸付ウォームギア11には、タービンシャフト6のウォームギア6dからウォームホイル9aを介して回転が伝えられる。軸付ウォームギア11の一端にはワッシャー31を介してフランジブッシュ9−1aが装着され、他端にはスラストワッシャー28を介してフランジブッシュ9−2aが装着されている。
【0034】
上記ウォームホイル9aの回転は、ウォームホイル9bを介してピニオンギア12に伝達される。このピニオンギア12の下端は、ワッシャー31とフランジブッシュ9−1bを介してボトムカバー2に装着されている。このピニオンギア12が回動すると、ノズル側平ギア13が駆動されてノズル部1aが回動駆動される。
【0035】
ノズル部1aは、ギアカバー16と六角穴付ボタンボルト9−9により上記ボディ1のチャンバー1b側面にノズルクラッチ15を介在して装着されている。このノズル部1aは、ベアリングリテーナ7、スラスト軸受25、26によりタービンシャフト6と直交する方向に回動自在に装着されている。上記ノズル部1aは、ノズルロータ17の両端に一対のノズル19が装着されて構成され、ノズルロータ17とノズル19との接合部近傍にそれぞれ二段式ずれ格子(整流格子)18が設けられている。
【0036】
[インレットコアの構成例1]
図4(a)、(b)はそれぞれ、ノズルオリフィス径φが7mmと8mm用のインレットコア4の構成例を示している。(a)図に示すように、中央部にタービンシャフト6が貫挿される軸穴4aが形成され、この軸穴4aの周りに洗浄液を通過させる好ましくは6個の円形斜孔4b−1〜4b−6が形成された短円柱状になっている。
【0037】
上記のような構成において、例えば各斜孔4b−1〜4b−6は、反時計方向に10°ずつ傾きを加えて配置されており、これよって、本例の構成では流体の流れを反時計方向に設定する。
【0038】
[インレットコアの構成例2]
図5(a)、(b)はそれぞれ、ノズルオリフィス径φが9mmと10mm用のインレットコア4の他の構成例を示している。(a)図に示すように、中央部にタービンシャフト6が貫挿される軸穴4aが形成され、この軸穴4aの周りに洗浄液を通過させる7個の円形貫通孔4c−1〜4c−7が形成された短円柱状になっている。これらの貫通孔4c−1〜4c−7は、インレットコア4の表面に対して垂直な方向に形成されている。
【0039】
[タービンの構成例]
図6(a)〜(d)はそれぞれ、タービン5の構成例を示している。図示するように、中央部にタービンシャフト6が貫挿される軸穴6aが形成された中空円筒形の本体6bに、好ましくは6枚の羽根6c−1〜6c−6が取り付けられた構造になっている。これらの羽根6c−1〜6c−6は、本体6bの中心軸に対して45°程度の傾きを持って取り付けられており、水流を効果的にキャッチできるように構成している。
【0040】
[二段式ずれ格子の構成例]
図7(a)〜(e)はそれぞれ、二段式ずれ格子18の構成例を示している。(a)図及び(b)図に示すように、好ましくは5枚羽根構造の2つの整流格子18−1、18−2を、回転軸に設けた結合部18aにより、(c)図及び(e)図に示すように回転軸方向にずらして連結配置した構成になっている。すなわち、一段の場合には回転軸方向に対して72°の角度で配置される羽根を、回転軸方向にずらして配置することで(d)図に示すように、回転軸方向から見た時に各羽根相互が36°の角度になるように連結配置されている。
【0041】
[流体の流れについて]
次に、上記のような構成において、図1により流体の流れについて説明する。図1に矢印Fで示すように、一定圧力で供給された流体(洗浄液、例えば水)は、ヘッドパイプ3の入口より供給され、インレットコア4を通ってタービン5へと流れ、タービン5を回転させながらヘッドパイプ3の底部の開口3bを通過し、チャンバー1bへと流れ込む。この流体はチャンバー1bにおいて直角方向、すなわちノズル部1a方向に向かい、ノズルクラッチ15を介してノズルロータ17へと流れ込む。チャンバー1bでの流体の流れは、ボディ1を回転させる駆動力となる。そして、上記ノズルロータ17内で、流れは対称に二方向に分かれ、ノズル19内に装着された二段式ずれ格子(整流格子)18を通り、ノズルオリフィスへと流れてタンクまたは容器の内面に向かって縮流噴射される。
【0042】
[ノズル駆動について]
図1に示したように、一定圧力で供給された流体は、ヘッドパイプ3の入口より供給され、速度調整用のインレットコア4を通り、一定速度でタービン5を回転させる。このタービン5は、タービンシャフト6に装着されている。タービンシャフト6の下端近傍には、駆動力を伝えるウォームギア6dが形成されており、縦方向の回転は軸付ウォームギア11に装着されているウォームホイル9aに伝達されて横方向の回転に変換される。
【0043】
また、その回転は縦方向のピニオンギア12に装着されているウォームホイル9bに伝達され、ピニオンギア12を回転させる。ピニオンギア12はノズル本体を回転させるボディ側平ギア8と、ノズルに装着されているノズルロータ17を動かすノズル側平ギア13に同時に駆動力を伝えて一定周期で駆動する。
【0044】
[タービンの回転速度調整]
タービンの回転速度は、例えば供給圧力0.3MPaにおいて、本体の回転が約2r.p.m(1分間に2回転)になるよう、インレットコア4にて調整されている。
【0045】
タービン速度は、6枚羽根の傾き角度(本体中心軸に対し45°の傾き)からなるタービン5とインレットコア4の通過流入バランスにある。図4に示したようにインレットコア4に流入角度を与え、タービン羽根通過の際に、流れ衝撃力(インパクト)を与えることで、図8に示すようなノズルオリフィス径別インレットコア角度(本体中心軸に対する角度)と本体回転速度(r.p.m)の関係を得た。
【0046】
図8から明らかなように、ノズルオリフィス径が7mm、8mm、9mm、10mmと大きくなるにしたがって回転速度(r.p.m)が高くなり、インレットコア角度(°)が大きくなるにしたがって回転速度(r.p.m)も高くなる。そして、例えば、インレットコア角度が0°では、ノズルオリフィス径7mm=1.25程度、8mm=1.7程度、9mm=1.9程度、10mm=2.2程度である。これに対し、インレットコア角度が45°では、ノズルオリフィス径7mm=2.0程度、8mm=2.3程度、9mm=3.0程度、10mm=3.3程度になる。このように、ノズルオリフィス径とインレットコア角度を選択的に設定することで、タービン5の回転速度を調整できる。
【0047】
[直進棒流の性能向上]
従来の整流格子(スタビライザ)と異なり、洗浄力を向上するために二段式ずれ格子18とし、整流を細分化することで、より整流効果を高くして直進棒流性能を上げることができる。
【0048】
従来の整流格子(スタビライザ)は、2枚、3枚、4枚羽根の格子が一般的であるが、図7に示したように羽根を5枚(72°間隔)に細分化している。そして、その格子を二段構成とし、羽根を回転軸方向に36°ずらして組み付けているので、流体の流れは実際には10枚羽根の格子相当に細分化されたことになる。
【0049】
すなわち、流体は上流の一段目の5枚羽根に流入し、乱流を整流へと変え、下流の二段目では一段目で整流しきれなかった流れを更に細分化して流れを整え、オリフィスへと流れてタンクや容器内へ縮流噴射される。本発明者等の実験によると、二段式ずれ格子(二段式のスタビライザ)を設けた場合、水流の直進性が向上することにより、スタビライザがない場合に比べて、測定距離1mにおいて3%〜10%インパクト(対象物へ当たる衝撃力)が強くなった。
【0050】
なお、10枚羽根構造の格子では格子自体での圧力損失が大きくなるので、本発明では5枚羽根構造の整流格子を二段重ねにすることで、この圧力損失を低減している。
【0051】
[格子細分化での目詰まり対策]
二段重ねにした整流の格子は、目詰まりを配慮し、10枚羽根格子の異物通過最大径以上の隙間を整流格子二段重ねの中間に取っている。これによって、一段目の整流格子を通過した異物は一端下流の二段目の整流格子の羽根には衝突するが、移動空間があるため、流れに沿って異物は二段目の整流格子の羽根の間を通過する。
【0052】
上述したように、本実施例によれば、洗浄サイクルタイムを一定にでき、かつ洗浄効果を上げることができる。また、駆動に関する調整を不要にできる。更に、洗浄装置の構造の複雑化を招くことなく、ノズルの目詰まりによるノズルの回転不良を防止できる。
【0053】
しかも、本発明の実施例に係る洗浄装置は、ノズル部の全長が長く洗浄水の直進性に優れているため、低圧でも強力なインパクトで汚れを落とすことができる。また、緻密なノズル軌跡により高い洗浄効果が得られる。更に、狭いスペースにも設置でき、持ち運び、据え付けも容易にできる。加えて、完全にオイルレスの水潤滑構造で、メンテナンス性にも優れている。
【0054】
以上実施の形態と実施例を用いて本発明の説明を行ったが、本発明は上記実施の形態や実施例に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上記実施の形態と実施例には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば実施の形態と実施例に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題の少なくとも一つが解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果の少なくとも一つが得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0055】
1 ボディ
1a ノズル部
1b チャンバー
1c 隔壁
2 ボトムカバー
3 ヘッドパイプ
3a ヘッドパイプの小径円筒部
3b ヘッドパイプの底部開口
4 インレットコア
4a 軸穴
4b−1〜4b−6 斜孔
4c−1〜4c−7 貫通孔
5 タービン
6 タービンシャフト
6a 軸穴
6b 本体
6c−1〜6c−6 羽根
6d ウォームギア
7 ベアリングリテーナ
8 ボディ側平ギア
9a、9b ウォームホイル
9−1a、9−1b、9−2a、9−2b フランジブッシュ
9−3 E形止め輪
9−7 スラストボール
9−8 軸受ボール
9−9、9−9a、9−9b、9−9c 六角穴付ボタンボルト
9−10a、9−10b、9−11a、9−11b セットスクリュー
10 ヘッドパイプナット
11 軸付ウォームギア
12 ピニオンギア
13 ノズル側平ギア
15 ノズルクラッチ
16 ギアカバー
17 ノズルロータ
18 二段式ずれ格子
18a 結合部
18−1、18−2 整流格子(スタビライザ)
19 ノズル
22 ワッシャー
23、24、25、26、27 スラスト軸受
28 スラストワッシャー
29 軸受ブッシュ
31 ワッシャー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを回転させて洗浄液を噴射するタービン式の洗浄装置であって、
洗浄液が流入するヘッドパイプ(3)入口と、洗浄液の圧力を駆動源としてノズル(19)を回転させるタービン(5)との間に、タービン(5)の回転調整を行う専用のインレットコア(4)を設けるとともに、ノズルロータ(17)とノズル(19)との間に整流格子として二段式ずれ格子(18)を装着したことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
洗浄液の圧力を駆動源としてノズルを回転させて洗浄水を噴射する液圧三次元回転式の洗浄装置であって、
ヘッドパイプ(3)入口から一定圧力で供給される洗浄液の流量を制御することにより、タービン(5)の回転調整を行う専用のインレットコア(4)と、
前記インレットコア(4)を介して洗浄液が供給されて回動されるタービン(5)と、
前記タービン(5)を駆動した洗浄液が流入するチャンバー(1b)と、
このチャンバー(1b)で方向転換された洗浄液がノズルクラッチ(15)を介して供給され、洗浄液を二方向に分岐するノズルロータ(17)と、
前記ノズルロータ(17)に供給されて二方向に分岐された洗浄液を噴出するノズル(19)と、
前記ノズルロータ(17)と前記ノズル(19)との間に設けられ、洗浄液の流れを整える二段式ずれ格子(18)と
を具備することを特徴とする洗浄装置。
【請求項3】
前記インレットコア(4)は、中央部にタービンシャフト(6)が貫挿される軸穴(4a)が形成され、この軸穴(4a)の周りに洗浄液を通過させる複数の斜孔(4b−1〜4b−6)が形成された短円柱状であることを特徴とする請求項1または2記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記インレットコア(4)は、中央部にタービンシャフト(6)が貫挿される軸穴(4a)が形成され、この軸穴(4a)の周りに洗浄液を通過させる複数の貫通孔(4c−1〜4c−7)が形成された短円柱状であることを特徴とする請求項1または2記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記二段式ずれ格子は、5枚羽根構造の第1、第2の整流格子(18−1、18−2)を回転軸方向にずらして連結配置したものであることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記第1、第2の整流格子(18−1、18−2)の回転軸に対して72°の角度でそれぞれ配置された羽根を、回転軸方向から見て各羽根相互を36°の角度に連結配置したものであることを特徴とする請求項5記載の洗浄装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−250182(P2012−250182A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125031(P2011−125031)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000107767)スプレーイングシステムスジャパン株式会社 (17)
【Fターム(参考)】