説明

洗濯乾燥機

【課題】高湿な空気を室内に排気しなくても消費電力が低減でき、かつ、衣類のしわが少なく仕上がりの良い乾燥工程を備えた洗濯乾燥機を提供する。
【解決手段】乾燥時に内部が乾燥室となる外槽と、前記外槽内に回転自在に配置され洗濯物を収容する内槽と、前記内槽を駆動するモータと、前記外槽を支持し外装を成す筐体と、前記内槽に温風を送風する送風手段と、送風する空気を加熱する加熱手段を備えた洗濯乾燥機において、前記送風手段による風量Q(m3/min)と前記内槽内へ吹き出される空気の風速v(m/s)の積が90以上120以下となるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類の洗濯から乾燥まで行える洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯から乾燥までを連続して行える洗濯乾燥機による衣類の乾燥は、送風ファンと熱源により高温・低湿度の空気を作り、これを洗濯槽内に吹込み、衣類の温度を高くし、衣類から水分を蒸発させ、蒸発した水分を機外へ排出することにより行う。蒸発した水分の除去方法としては、そのまま洗濯乾燥機外へ排出する排気方式(常に新しい空気を供給)と蒸発した水分を冷やし結露させて水分を除去する除湿方式(同じ空気を循環させる)がある。
【0003】
前者に関する技術として、下記特許文献1がある。この特許文献1には、温風による乾燥運転の終了に続いて、送風手段の送風による冷却運転を実行するとともに、空気排出手段の排気弁を開放し密閉空間内の空気を外部に排出することが記載されている。
【0004】
後者に関する技術として、下記特許文献2には、強制乾燥時には、排気ダクトが閉鎖状態のときに送風器とヒータと除湿器を運転し、余熱乾燥時には、排気ダクトを閉鎖状態から開放状態に切換え、ヒータを運転状態から運転停止状態に切換えることが記載されている。
【0005】
また、下記特許文献3には、還流空気を、熱交換器を介さずに直接乾燥機外へ排出し、かつ新しい空気を吸い込んで前記ドラム内へ送り込む手段を有することが記載されている。
【0006】
一方で、乾燥においては、乾燥終了時の衣類のしわが少ないことによる仕上がりのよさも求められる。これに関する技術として、下記特許文献4がある。この特許文献4には、風量は0.8m3/min以上であり、風速は風量に応じて設定されることが記載されている。
【0007】
更に、風量制御に関する技術として、下記特許文献5がある。この公報には、ファン駆動電動機を回転数制御して乾燥の3期間のおのおのに対応した最適の熱風風量と精度の温度を効果的に制御して供給することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−104715号公報
【特許文献2】特開2008−110135号公報
【特許文献3】実開平3−128094号公報
【特許文献4】特開2009−72500号公報
【特許文献5】特開昭62−44299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、洗濯物に吹き付けた後の温風空気をそのまま排気する従来技術では、時間短縮と使用水量や消費電力の低減を図ることはできるが、乾燥機または洗濯乾燥機周囲の室内に高湿な空気をそのまま排気してしまい、室内の環境を悪化させてしまう。
【0010】
また、仕上がりのみを重視して、温風の風速と風量を設定する従来技術では、しわを少なくできるものの、乾燥の消費電力量を削減することへの考慮はあまりなされていない。
【0011】
そこで本発明は、高湿な空気を室内に排気しなくても消費電力が低減でき、かつ、衣類のしわが少なく仕上がりの良い乾燥工程を備えた洗濯乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
乾燥時に内部が乾燥室となる外槽と、前記外槽内に回転自在に配置され洗濯物を収容する内槽と、前記内槽を駆動するモータと、前記外槽を支持し外装を成す筐体と、前記内槽に温風を送風する送風手段と、送風する空気を加熱する加熱手段を備えた洗濯乾燥機において、前記送風手段による風量Q(m3/min)と前記内槽内へ吹き出される空気の風速v(m/s)の積が90以上120以下となるようにした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、温風から衣類への伝熱に最適な風速と風量、循環空気と送風路との熱交換を促す風量と、しわを伸ばすのに効果的な風速と風量とを両立できる。これにより、しわを伸ばして乾燥仕上がりを保持しつつ、衣類からの蒸発と送風経路内での凝縮とのバランスの最適化により、乾燥消費電力量を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例に係るもので洗濯乾燥機の斜視図を示す。
【図2】本発明の第1の実施例に係るもので乾燥工程前半のヒータ加熱時の洗濯乾燥機の模式図を示す。
【図3】本発明の第一の実施例に係るもので乾燥工程前半の循環空気フローと一部切断して内部構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施例に係るもので乾燥工程後半の送風排気時の洗濯乾燥機の模式図を示す。
【図5】本発明の第1の実施例に係るもので乾燥工程の運転パターンを示す。
【図6】本発明の第1の実施例に係るもので風量Q(m3/min)×風速v(m/s)の違いに対する乾燥性能結果を示す。
【図7】本発明の第1の実施例に係るもので風量Q(m3/min)×風速v(m/s)の違いに対する乾燥仕上がりの一例を示す。
【図8】本発明の第1の実施例に係るもので洗濯乾燥機の制御装置のブロック図を示す。
【図9】本発明の第1の実施例に係るもので洗濯乾燥機の制御処理プログラムのフローチャートを示す。
【図10】本発明の第2の実施例に係るもので吹出しノズル部の拡大図を示す。
【図11】本発明の第3の実施例に係るもので吹出しノズル部の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の第1の実施例に係るもので、洗濯乾燥機の斜視図を示す。ベース1の上部には鋼板と樹脂成形品で組合わされて構成された外枠2が載せられている。外枠2の正面には洗濯物30を出し入れするドア3と前面カバー22及び背面には背面カバー23が設けられている。
【0017】
また、図2に示す通り、本実施例のドラム式洗濯乾燥機は、上述の外枠2等により外装を成す筐体と、この筐体に支持されて乾燥時に内部が乾燥室となる外槽20と、この外槽20内に回転自在に配置され洗濯物30を収容する内槽(回転ドラム29)を備えている。そして、回転ドラム29に温風を送風して乾燥対象物である洗濯物30から水分を蒸発させ、その蒸気を含んだ空気を外槽20、送風ダクト40を通過させる間に上記外槽20、送風ダクト40と熱交換させて、蒸気の一部を結露させて除湿する。図2は、このような洗濯乾燥機において、循環加熱乾燥工程時の温風の流れを示した断面図である。また、図3は循環加熱乾燥工程時の空気フローを、筐体の一部を切断して内部構造を示したものに、矢印にて示した斜視図である。
【0018】
まず、洗濯乾燥機の概略構造および洗濯脱水工程について簡単に説明する。外枠2の内側には外槽20が備えられる。外槽20は下部の複数個のサスペンション21により支持されている。外槽20の内側にある回転ドラム29にはドア3を開けて投入された洗濯物30があり、回転ドラム29の開口部の外周には脱水時の洗濯物30のアンバランスによる振動を低減するための流体バランサー31が設けられている。また、回転ドラム29の内側には洗濯物30を掻き揚げる複数個のリフター33が設けられている。回転ドラム29は回転ドラム用金属製フランジ34に連結された主軸35を介してドラム駆動用モータ36に直結されている。外槽20の開口部には弾性体からなるゴム系のパッキン38が取付けられている。このパッキン38は外槽20内とドア3との水密性を維持する役割をしている。これにより、洗い,すすぎ及び脱水時の水漏れの防止が図られている。回転ドラム29は、側壁に遠心脱水および通風用の多数の小孔(図示せず)を有する。外槽20の底壁に開口した排水孔37は、排水弁8を介して排水ホース9に接続する。またオーバーフローホース17はドラム背面の送風ダクト40に取り付けられており、排水弁8手前で排水孔37からのホースと合流させる。即ち、排水弁8が開となれば、排水ホース9と連通される構成となっている。
【0019】
乾燥装置6は、送風手段として、回転ドラム29内の洗濯物30に温風を導く送風ダクト40、ファン49及び吹出しノズル11と、加熱手段として、送風する空気を加熱するヒータ50を備えている。この乾燥装置6は、外槽20から離して外枠2に固定(図示せず)されている。ヒータ50の出口と吹出しノズル11は外槽20の最上面から中心までの間に、且つ外槽20の中心より前面の位置に設け、柔軟構造のベローズ4が外槽20に対し略垂直に接続して外槽20の振動を吸収している。排水孔37,ファン49の吸気口及び吐出口には温度センサ(図示せず)が設けてある。
【0020】
このように構成したドラム式洗濯乾燥機は、まず、洗濯工程においては、回転ドラム29内に洗濯物30を投入し、排水弁8を閉じた状態で給水して外槽20に洗濯水を溜め、回転ドラム29を回転させて洗濯物30を洗濯する。ドラム式洗濯乾燥機の場合、ドラムの回転に伴って、リフター33により洗濯物30をドラム頭頂部に持ち上げた後、重力によりドラム底部に落とすたたき洗いが主流となる。また、オーバーフローホース17が送風ダクト40に接続されているため、場合によっては送風ダクト40のオーバーフローホース17の位置まで洗濯水は流入してくる。また洗濯工程中に、送風ダクト40内のリントを洗い流すために、送風ダクト40上部に設けた注水具(図示せず)より送風ダクト40内に注水する場合もある。外槽20背面部と送風ダクト40底部をつなぐジャバラホース52ならびに外槽側取付部56に、送風ダクト40から外槽20の背面部に向かって下り傾斜をつけてあるため、流入してきた水は、洗濯終了時には、速やかに外槽20から排水口を通して機外へ排水される。
【0021】
次に、脱水工程においては、排水弁8を開いて外槽20内の洗濯水を排水した後、回転ドラム29を回転させて遠心脱水する。脱水時の水の一部が送風ダクト40側に巻き上げられてきても、外槽20背面部と送風ダクト40底部をつなぐジャバラホース52ならびに外槽側取付部56に、送風ダクト40から外槽20背面部に向かって下り傾斜をつけてあるため、速やかに外槽20側に戻すことができる。高速脱水に至ると、外槽20にも振動が伝わり、外槽20自身も僅かながら振動する。送風ダクト40は筐体に固定されているため、外槽20背面部と送風ダクト40底部をつなぐジャバラホース52が連動して、振動の一部を吸収する。
【0022】
乾燥工程の前半では、図2に示したように、ヒータ50により加熱して温風となった空気を回転ドラム29内へ吹出しノズル11の出口11aを通して送風して、洗濯物30と熱交換させるとともに洗濯物30から水分を蒸発させる。蒸発した水分を含んで高湿となった空気を、送風ダクト40を通してファン吸込口に導き、再びファン出口に設けたヒータ62により必要に応じて加熱して回転ドラム29内へ送風する。送風路内に送風路外の空気を吸気するために開閉可能な吸気手段としての吸気弁13は、送風ダクト40の壁面の一部を形成して、送風ダクト40の内と外を隔離した全閉状態としている。回転ドラム29出口の高湿な空気は、外槽20及び送風ダクト40を通るときに、外槽20及び送風ダクト40とも熱交換して、飽和蒸気圧が下がる分の水分を外槽20及び送風ダクト40の壁面において凝縮させる。
【0023】
本発明では、ドラム入口における風量Q(m3/min)×風速v(m/s)の値を限定している。なお、風量Q(m3/min)は、ファン49の排気または吸気風量であり、風速v(m/s)はこの風量Q(m3/min)を吹出しノズル11の出口11aの面積(mm2)と60(s)で除した平均風速を用いている。高い風速を得るには、ある程度の風量が必要となるが、風速と風速を適度なものとすることで、循環時の空気からダクトへの伝熱性能も確保され、外枠2内から機外へ熱を捨てずに筐体内に熱をためつつ、効率よく循環空気を除湿できる。また、ヒータ50の入力は洗濯乾燥機全体の消費電力を15(A)に抑えるために、約1〜1.2(kW)としている。ファン49の断熱圧縮による昇温が大きければ、これよりもヒータ50の入力は低くてもよい。本実施例ではファン49による圧力上昇が約6000(Pa)であるため、断熱圧縮による温度上昇は約5(℃)となる。また、ファン49の回転数を制御する場合は、洗濯乾燥機全体の入力が所望の入力以下となるような制御をかけてもよい。本実施例では、吹出しノズル11の出口11aを252(mm2)として、風量Q(m3/min)×速v(m/s)を、1.5(m3/min)×83(m/s)=104としている。送風ダクト40内で凝縮した水分は、やがてダクト底部からジャバラホース52に溜まってくるが、送風ダクト40から外槽20の背面部に向かって下り傾斜をつけてあるため、凝縮水も外槽20を介して排水孔37付近まで移送できる。
【0024】
乾燥工程の後半では、吸気弁13および排水弁8を開く。図4に、乾燥工程後半における洗濯乾燥機内の空気の流れを示す。ファン49の吸込側にある吸気弁13を開くことにより、送風ダクト40の外の筐体内空気を吸い込み、回転ドラム29内へ送風する。この図4では、吸気弁13は送風ダクト40内の風路を大略(漏えいレベルは無視)完全に塞ぐように、吸気弁13を送風ダクト40内側に折り曲げるように開いている(吸気弁13自体は全開状態)。よって回転ドラム29から押し出される全ての空気は、排水孔37もしくはオーバーフローホース17を介して排水ホース9を通り、排水トラップ10の水封じを破って排水口39に排出される。一般的な排水トラップの場合、水封じ高さは50〜80(mm)程度あるため、水封じを破るには排水ホース9側の圧力は約1000(Pa)以上必要となる。また、排水口39からの臭気を抑えるため、水封じを破った後も高い圧力(所定以上の圧力)を確保する必要があり、排水ホース9排気による送風排気工程中は、高い圧力を保つようにファン49を制御する。前述のように回転ドラム29からの排気は、排水孔37から排水弁8までの接続ホースと、オーバーフローホース17とを通して排気させる。
【0025】
一方、主に筐体底部から筐体内に導かれる吸気は、筐体上部にある吸気孔18までの間に、回転ドラム駆動用モータ36やファンモータ51の周囲を通されるため、高温となって吸気弁13から送風路内に取り込まれる。このため通常は、ファン49出口に設けてあるヒータ50は通電する必要はない。回転ドラム29からオーバーフローホース17を通して排水弁から排気する排気経路内に、外槽20背面部の外槽側取付部56とジャバラホース52が含まれるが、外槽20の背面部から送風ダクト40に対しては上り傾斜となり、排気の送風ダクト40への流入角は、90度よりも大きい鈍角となり、排気経路の風路損失を減らすことができる。
【0026】
図5は、本実施例における乾燥工程の運転パターンと回転ドラム29に送り込む温風温度の変化を模式的に示したものである。
【0027】
乾燥工程前半では、空気を、回転ドラム29と送風ダクト40の間でファン49により循環させる。このときファン49出口に設けたヒータ50に通電し、吹出しノズル11から回転ドラム29へ吹き出す温風温度を確保する。温風は、回転ドラム29内で衣類30と熱交換し、その熱の一部で蒸発した水分を含むことにより、高湿となる。高湿となった空気は回転ドラム29から外槽20、送風ダクト40を介してファン49の吸い込みに戻される。このとき、外槽20や送風ダクト40による冷却で、露点以下となる場合は、外槽20、送風ダクト40の内壁で凝縮し、除湿される。これにより、外槽20や送風ダクト40は循環空気とともに序々に温度が上がり、循環系にも熱を蓄えることができる。
【0028】
乾燥工程の後半では、ファン49の吸込側にある吸気弁13を開くことにより、送風ダクト40外の筐体内空気を吸い込み、回転ドラム29内へ送風する。吸気弁13が送風ダクト40内の風路(図示せず)を妨げるため、回転ドラム29内が昇圧し、オーバーフローホース17と排水ホース9を介して、回転ドラム29内空気が排水口39へ排気される。吸気弁13の開閉割合により、一部循環させることも可能であるが、本実施例では全閉のため、ヒータ50は通電せず、ファンモータ51やドラム駆動用モータ36の排熱により温められた筐体内空気がファン49の断熱圧縮を伴って温風として回転ドラム29内に送られる。このため温風温度は、吸気弁13を開けた直後は排熱も十分に取り込めるので高いが、時間経過とともに低下し、乾燥終盤では外気温度付近まで低下する。
【0029】
本実施例では吸気弁13を前述のような略全開として、風量の略全量を周囲外気と入れ替えている。前述のように送風ダクト40内の送風路(図示せず)を完全に遮断するため、外槽20内の圧力が上がり、ファン49の回転数を乾燥前半の全風量循環時と同値に保っても、風量は0.9(m3/min)に低下する。これに伴って風速v(m/s)は63(m/s)となり、風量Q(m3/min)×風速v(m/s)=60となる。仮に吸気弁13を、送風ダクト40内側に折り曲げる角度θ(図4記載)を全開時よりも小さく開く半開状態とし、循環風量の一部だけを周囲外気と入れ替える場合は、外槽20内の圧力は上がらず、全循環時に対して風速も低下しない。仕上がりに対しては循環風量の一部を入れ替えるほうが若干優位であるが、循環空気からの除湿が不十分となり、消費電力量の低減には向かない。したがって本実施例では、仕上がりを確保するため、しわの取りやすい乾燥前半(水分を多く含む)では、風量Q(m3/min)×風速v(m/s)の値を大きくし(例えば90以上120以下)、乾燥後半では風量Q(m3/min)×風速v(m/s)の値を抑えて(例えば42以上66以下)消費電力量を低減させている。
【0030】
尚、「乾燥前半」と「乾燥後半」とは、乾燥工程全体の時間の半分から前と後をそれぞれ指すものに限られない。すなわち、送風路内と回転ドラム29内の間で空気を循環させる第1の乾燥工程と、その後に行われる、吸気手段により吸気した送風路外の空気を排気する第2の乾燥工程であれば良く、それぞれ時間の配分は、衣類の量や布質に応じて変えるべきである。
【0031】
乾燥終了後は、排水口39側の圧力より排水ホース9側の圧力を高く保ちながら水封じを破らない圧力レベルまでファン49の回転数を下げて、給水電磁弁28を開いて流し、排水トラップ10の水封じを回復させて乾燥工程終了となる。このように、乾燥終了後に、排水ホース9側の圧力を所定以上に保ちながら排水ホース9を経由して排水孔37に水を供給することにより、排水口39からの臭気を抑えながら排水トラップ10の水封じを回復させることができる。なお、この排水トラップ10の回復は、排水ホース9側の圧力を高く保っていれば、(排水ホース排気の)乾燥運転の最後又は乾燥運転の終了後のいずれでも良い。
【0032】
図6は、ドラム容積約87(L)、負荷6(kg)においての乾燥性能評価を示す。なお、乾燥前半の循環工程は25(min)、ヒータ50の入力を約1200(w)とした。図6(a)において、横軸には乾燥度100%時の乾燥所要時間、縦軸には乾燥度100%時の乾燥消費電力量をとり、加熱循環時の風量Q(m3/min)×風速v(m/s)の違いによる傾向を示したものである。ここでいう風速とは前述のように、風量Q(m3/min)を吹出しノズル11の出口11aの面積(mm2)と60(s)で除した平均風速を用いている。即ちファンから送られてくる風量をノズル断面で除したいわば平均風速の値を指す。また乾燥度は、完全に乾燥させた布本来の質量を試験終了後の布の質量で除した値を百分率表示したものである。
【0033】
図6(a)において、同じ風量Q(m3/min)×風速v(m/s)に対して乾燥時間と乾燥電力量が関数となるのは、乾燥工程の後半における送風排気工程での風量設定の違いによる。送風排気工程での風量が小さいほど乾燥に要する時間は伸びるが、電力量は少なくて済む。例えば、本実施例では前述のように乾燥工程の後半では、吸気弁13を全開として、風量Qを0.9(m3/min)とし、これに伴って風速v(m/s)は63(m/s)となり、風量Q(m3/min)×風速v(m/s)を60に調整した。乾燥度100%の乾燥時間は160(min)となる(図中A点)。さらに乾燥消費電力量を低減するために風量Qを0.8(m3/min)とした場合、風速vは53(m/s)となり、風量Q(m3/min)×風速v(m/s)=42となる乾燥時間は180(min)かかるが、消費電力量は風量Qを0.9(m3/min)に対してさらに約3%下げられる(図中B点)。一方、風量Qを1.0(m3/min)とした場合、風速vは66(m/s)となり、風量Q(m3/min)×風速v(m/s)=66となる乾燥時間は140(min)に短縮できるが、消費電力量は風量Qを0.9(m3/min)に対して約3%悪化してしまう(図中C点)。したがって、吸気弁13を全開にした状態での乾燥運転における風量Qは、布量や布質などから意図した乾燥所要時間と消費電力量のバランスにより定めるのが好ましい。
【0034】
図6(b)には、乾燥時間を160(min)とした場合の加熱循環時の風量Q(m3/min)×風速v(m/s)に対する乾燥電力量の傾向も示してある。本図から、吸気弁13を全閉としたときのQ(m3/min)×風速v(m/s)は、90以上120以下の範囲が乾燥電力量を少なくするのに好ましい運転であることがわかる。
【0035】
また、図7は、加熱循環時の風量Q(m3/min)×風速v(m/s)の違いに対する衣類仕上がり状態の一例を示す図である。図7(a)はQ(m3/min)×風速v(m/s)≒100の仕上がり状態、図7(b)はQ(m3/min)×風速v(m/s)≒73のときの仕上がり状態を示している。この図からわかるように、加熱循環時の風量Q(m3/min)×風速v(m/s)が、90〜120の範囲から大きく外れると、最終的な仕上がりも悪化することがわかる。
【0036】
冷却水や低温熱媒体を使わずに、空気循環のみで加熱しながら乾燥させる場合は、温風から衣類への伝熱とその熱の一部を使っての衣類からの水分蒸発、空気を循環させる送風路などに熱を与えつつ露点に達した場合の壁面凝縮による除湿により、乾燥性能が左右される。回転ドラム29内への吹き出し風速v(m/s)は大局的には温風から衣類への熱伝達性能に影響を及ぼす。一方、風量Q(m3/min)は大局的には、温風から衣類へ与える熱量と衣類から蒸発する蒸気移送量に影響を与える。このため、乾燥を促進させるには、どちらもある程度の物理量を確保すべきである。しかしながら、どちらかの物理量がある程度以上に大きくなり、バランスが崩れても乾燥は促進されず、与えた入力の増加に対して乾燥速度は上がらない。
【0037】
例えば、吹き出し風速v(m/s)が大きく風量Q(m3/min)が少なめであると、前述の熱伝達性能は上がるが、風量Q(m3/min)により運び去る湿度(蒸発水分)に限界が生じるため、蒸発が抑えられてしまう。また、風量Q(m3/min)が少なめであると送風路の風速v(m/s)が低くなるため、壁面凝縮も抑えられる。一方、風量Q(m3/min)が多めで吹き出し風速v(m/s)が少なめでは、温風から衣類への伝熱性能が促進せず、衣類からの蒸発水分が風量Q(m3/min)に対して少なめとなり、空気湿度を比較的低いまま循環させることになり、効率が悪くなる。湿度が低いと送風路での熱交換においても露点以下とはならず、凝縮による水分除去も進まない。よって、ドラム容積約55(L)〜95(L)、送風路長600(mm)〜800(mm)に対しては、風量Q(m3/min)×風速v(m/s)が90〜120が好ましい。ここで、駆動源となるファン49は、このような風量と風速を発生させる回転数付近で、最高効率となるようなものが良い。
【0038】
図8は、洗濯乾燥機の制御装置41のブロック図である。26はマイクロコンピュータで、各スイッチ24,24a,24bに接続される操作ボタン入力回路25や水位センサ44,温度センサ45と接続され、使用者のボタン操作や洗濯工程,乾燥工程での各種情報信号を受ける。マイクロコンピュータ26からの出力は、駆動回路5に接続され、給水電磁弁28,排水弁8,モータ26,ファン49,ヒータ62,吸気弁13などに接続され、これらの開閉や回転,通電を制御する。また、使用者に洗濯機の動作状態を知らせるための7セグメント発光ダイオード表示器7や発光ダイオード15,ブザー19に接続される。マイクロコンピュータ26は、電源スイッチ47が押されて電源が投入されると起動し、図9に示すような洗濯および乾燥の基本的な制御処理プログラムを実行する。
【0039】
ステップS101
洗濯乾燥機の状態確認及び初期設定を行う。
【0040】
ステップS102
操作パネル48の表示器7を点灯し、操作ボタンスイッチ24bからの指示入力にしたがって洗濯/乾燥コースを設定する。指示入力がない状態では、標準の洗濯/乾燥コースまたは前回実施の洗濯/乾燥コースを自動的に設定する。例えば、操作ボタンスイッチ24aを指示入力された場合は、乾燥の高仕上げコースを設定する。
【0041】
ステップS103
操作パネル48のスタートスイッチ24からの指示入力を監視して処理を分岐する。
【0042】
ステップS104
洗濯を実行する。洗濯は洗い,中間脱水,すすぎ,最終脱水を順次実行するが、通常のドラム式洗濯乾燥機と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0043】
ステップS105
洗濯乾燥コースが設定されているかどうかを確認して処理を分岐する。洗濯コースのみが設定されている場合は、運転を終了する。
【0044】
ステップS106
洗濯乾燥コースが設定されている場合は、温風脱水を実行する。温風脱水は、ファン49を低速回転で運転し、ヒータ50に通電して温風を回転ドラム29内に吹込み衣類の温度を上昇させる。同時に、回転ドラム29を高速で回転させ温まった衣類から効果的に水分を脱水する(温度が上がると水の粘性が低下するため効率よく脱水できる)。本実施の形態例では、ファン49の回転数を毎分11000回転程度に設定している。これは、許容電流値(15A)を超えないようにするためである。洗濯から脱水までに送風ダクト40に流入した水は、外槽20背面部に向かって下り傾斜をなすジャバラホース52及び外槽側取付部56を通して速やかに排水孔20から機外へ除去できるため、乾燥時の熱損失を低減できる。
【0045】
ステップS107
乾燥運転1を実行する。ファン49は低速回転、ヒータ50は通電し、回転ドラム29の正逆回転を繰り返し、回転ドラム29内の衣類の位置を入れ替えながら、高温の温風を衣類に吹き付ける。このとき送風ダクト40内で高湿空気から除湿された凝縮水は、送風ダクト40底部から外槽20背面部に向かって下り傾斜をなすジャバラホース52及び外槽側取付部56を通して速やかに排水孔37近まで除去できるため、凝縮水が温風に対して熱損失となることを回避できる。
【0046】
ステップS108
乾燥開始からの経過時間が規定の時間になったかどうかを確認して処理を分岐する。
【0047】
ステップS109
乾燥開始から規定の時間が経過した場合、もしくは中間温度と初期温度の差が規定の温度より大きくなった場合、洗濯物の乾燥度が(=乾布の質量/湿布の質量)が0.90〜0.95と判断し、ヒータ50をOFF、給気弁13を開き、ファン49を高速回転して洗濯物30の水分を排水ホース9から排水口39に排出する。外槽20背面部から送風ダクト40に対しては上り傾斜となっているため、送風ダクト40流入部の風路損失を小さくできる。
【0048】
ステップS110
外槽下部排水口温度T1aと外気温度T2aを測定する(初期温度の設定)。
【0049】
ステップS111
乾燥開始からの経過時間が規定の時間になったかどうかを確認して処理を分岐する。
【0050】
ステップS112
終了判定のための外槽下部排水口温度T1bと外気温度T2bを測定する。
【0051】
ステップS113
排気開始からの経過時間が規定の時間になったかどうかを確認して処理を分岐する。
【0052】
ステップS114
外槽下部排水口温度と外気温度の各々中間温度と終了判定温度との差を求め(ΔT1=T1a−T1b,ΔT2=T2a−T2b)、さらにそれらの温度差(ΔT1−ΔT2)が規定温度以上であるかどうかを確認して処理を分岐する。
【0053】
ステップS115
排気開始から規定の時間が経過した場合、もしくは中間温度と終了温度の差が規定の温度より大きくなった場合、洗濯物の乾燥度が(=乾布の質量/湿布の質量)が1.0以上となり乾燥が終了したと判断し、排水口39側の圧力より排水ホース9側の圧力を高く保ちながら水封じを破らない圧力レベルまでファン49の回転数を下げて給水電磁弁28を開いて冷却水を流し、排水トラップ10の水封じを回復させる。
【0054】
ステップS116
給水電磁弁28を開いてからの経過時間が規定の時間になったかどうかを確認して処理を分岐する。
【0055】
ステップS117
水位センサ44の圧力が規定の圧力になったかどうかを確認して処理を分岐する。
【0056】
ステップS118
給水電磁弁28を開いてから規定の時間が経過した場合、もしくは水位センサ44の圧力が規定の圧力より大きくなった場合、排水トラップ10の水封じが回復したと判断し、ファン49を停止、ドラム駆動用モータ36を停止、給気弁13を閉じ、給水電磁弁28を閉じて乾燥工程が終了する。
【0057】
このように構成した洗濯乾燥機は、ファン49へ吸い込まれる筐体内部空気を補うために、外部空気を筐体内に取り込んで、筐体内において外槽20,ドラム駆動用モータ36,ファン49などの排熱により温める。直接外部空気を吸い込んだ場合と比較して乾燥工程の消費電力量全体の約7%を削減できる。また、外部空気を吸い込んでも排水ホース9より洗濯物30の水分を排水口39に排出するため室内の環境を悪化させることはない。
【0058】
また、外槽20背面部と送風ダクト40底部をつなぐジャバラホース52の外槽側取付部56に、洗乾機設置面に対して、外槽20から送風ダクト40に向けて上り傾斜を持たせてある。さらに、外槽20背面部の前記取付部位置よりも送風ダクト40底部の取付部位置を高くして、ジャバラホース52にも傾斜をつけた構造とすることにより、洗濯から脱水までの残水の送風経路からの除去による熱損失、さらには排気工程時の風路損失を低減できる。
【0059】
図10は本発明における第2の実施例のノズル部53の拡大図を示したものである。本実施例では、ノズル部53内に仕切り板55を設け、仕切り板で二分された風路の一方の入口にダンパ54を設けた構成となっている。省エネを重視した運転では、図10(a)のように、ダンパ54を閉じて、風量Q(m3/min)を吹出しノズル11の出口11aの面積(mm2)と60(s)で除した平均風速v(m/s)とQ(m3/min)の積が90〜120となるようにし、仕上がりを重視する運転の場合には、風量・風速ともにより大きいほうが好ましいため、図10(b)に示すように、ダンパ54を開けて、風量Q(m3/min)を吹出しノズル11の出口11aと11bを合わせた面積(mm2)と60(s)で除した平均風速v(m/s)とQ(m3/min)の積をより大きなものとする。以上のような構成とすることにより、仕上がり状態をさらに良くするような運転も選択することができる。また、ダンパ54を設けずに、ノズル部53自体を複数個設けて、通風数を調整する方式においても、本質的には変わらない。
【0060】
図11は本発明における第3の実施例のノズル部53の拡大図を示したものである。本実施例では、吹出しノズル11の出口11aの断面を円もしくは略楕円とした構成としている。このような構成とすることにより、吹出しノズルの出口11aでの平均風速は変えずに、ノズル中央での局所的な風速を上げることができるため、衣類からの乾燥をより促進させることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 ベース
2 外枠
3 ドア
4 ベローズ
5 駆動回路
6 乾燥装置
7 表示器
8 排水弁
9 排水ホース
10 排水トラップ
11 吹出しノズル
11a,11b 吹出しノズルの出口
12 循環空気
13 吸気弁
14 筐体内部空気
15 発光ダイオード
16 外部空気
17 オーバーフローホース
18 吸気孔
19 ブザー
20 外槽
21 サスペンション
22 前面カバー
23 背面カバー
24,24a,24b スイッチ
25 操作ボタン入力回路
26 マイクロコンピュータ
27 フィルタダクト
28 給水電磁弁
29 回転ドラム
30 洗濯物
31 流体バランサー
32 モータ固定具
33 リフター
34 金属製フランジ
35 主軸
36 ドラム駆動用モータ
37 排水孔
38 パッキン
39 排水口
40 送風ダクト
41 制御装置
42 吸気口
43 ベース部
44 水位センサ
45 温度センサ
46 振動センサ
47 電源スイッチ
48 操作パネル
49 ファン
50 ヒータ
51 ファンモータ
52 ジャバラホース
53 ノズル部
54 ダンパ
55 仕切り板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥時に内部が乾燥室となる外槽と、前記外槽内に回転自在に配置され洗濯物を収容する内槽と、前記内槽を駆動するモータと、前記外槽を支持し外装を成す筐体と、前記内槽に温風を送風する送風手段と、送風する空気を加熱する加熱手段を備えた洗濯乾燥機において、前記送風手段による風量Q(m3/min)と前記内槽内へ吹き出される空気の風速v(m/s)の積が90以上120以下となるようにしたことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項2】
請求項1において、送風路内に送風路外の空気を吸気するために開閉可能な吸気手段を備え、前記送風路内と前記内槽内の間で空気を循環させる乾燥工程と、前記吸気手段により吸気した前記送風路外の空気を排気する乾燥工程を有することを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項3】
請求項1において、送風路内に送風路外の空気を吸気するために開閉可能な吸気手段を備え、前記送風路内と前記内槽内の間で空気を循環させる第1の乾燥工程と、第1の乾燥工程の後に行われ、前記吸気手段により吸気した前記送風路外の空気を排気する第2の乾燥工程を有し、前記第1の乾燥工程中に前記風量Q(m3/min)と前記風速v(m/s)の積が90以上120以下となるようにし、前記第2の乾燥工程中に前記風量Q(m3/min)と前記風速v(m/s)の積が42以上66以下となるようにしたことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項4】
請求項1において、前記送風手段からの空気を前記内槽内の衣類に当てるためのノズル部を複数備え、前記風量Q(m3/min)と前記風速v(m/s)の積を調整できるようにしたことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項5】
請求項1において、前記送風手段からの空気を前記内槽内の衣類に当てるためのノズル部が仕切りによって複数の風路に区分けされ、前記風量Q(m3/min)と前記風速v(m/s)の積を調整できるようにしたことを特徴とする洗濯乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−85778(P2013−85778A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230257(P2011−230257)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】