説明

洗濯物干しカバー

【課題】 本発明は、雨の侵入を防止するとともに塵埃や花粉から洗濯物を守り、被乾燥物の大きさや形によらずに装着が容易で、安価な洗濯物干しカバーを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の洗濯物干しカバーは、機能性シート1にポリオレフィン系不織布を用い繊維の間隙もしくは孔が0.01μm〜1μmの範囲とし、さらに凹状のエンボスを複数設けたもので安価であり通気性を持たせたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯物を干すときに用いられる洗濯物干しカバーに関する。

【背景技術】
【0002】
従来から洗濯物を乾かすのは通常屋外で行われている。しかし、洗濯物が乾燥するまでには数時間が必要で、この間に突然の雨に曝され、せっかくの洗濯物が濡れてしまって、洗い直しを余儀なくされることも多い。
また、最近、空中を飛来する花粉や塵埃等がアレルギー症状の引き金となることが大きな社会問題となっている。こうした花粉や塵埃等が直接人体に飛来することも多いが、屋外に干した洗濯物に付着して体内に入ることも多い。また特に春には黄砂の飛来が顕著でせっかく洗濯しても汚染されるケースが目立ってきた。従来の無防備な洗濯物の干し方では花粉や塵埃等が付着するのは避けられないことであった。
【0003】
そこで、にわか雨があったときに濡れないように洗濯物カバーをかける技術が提案された(特開平7−144093号公報)。この洗濯物カバーは、密閉された第1の防水性シートの、下部に少なくとも1個の吸気口と、側面に開閉器具が取り付けられた少なくとも1個の開閉口と、上部に少なくとも1個の排気口と少なくとも1個のフック穴とを設け、排気口を第2の防水性シートで覆ったものである。
【0004】
これにより、急な雨や風、ほこりや花粉から洗濯物を守り、下着等を人目にさらすことのなく、安価な洗濯物カバーとすることができる。
【0005】
しかしこの従来の洗濯物カバーは、吸気口や開閉口、排気口、フック穴といった多数の開口が設けられた第1の防水シートを第2の防水シートで覆う必要があるため、第2の防水シートの装着が不適切な場合には雨水が簡単にシート内部に入り、逆に第2の防水シートを適切に装着した場合には湿気を排気するのが難しく、それ故乾燥効率が悪く、乾燥のため非常な時間を要するといった矛盾を抱えていた。そして、洗濯物を第1の防水シートの内部に収容するのが意外に面倒な作業であって、さらに第2の防水シートも被せるため、煩わしさは倍化するものであった。せっかくの洗濯物カバーもこうした面倒な作業のため、比較的短時間で飽きられ、使用されなくなってしまう。
【0006】
次いでこうした低い乾燥効率を上げるため、通気性を備えた乾燥用カバーが提案された(特開平9−788号公報)。この従来の乾燥用カバーは、網状のきわめて細いポリオレフィン系の繊維からなり、防水性と通気性を兼ね備えた長繊維不織布を袋状にしたもので、ベランダなど置かれた靴収納ラックなどに被せることにより、収納された靴などを直射日光に曝すことなく、その乾燥を速やかに行ったり、留め具やファスナーを設けた布団袋にして、布団を干すことができるものである。
【0007】
この従来の乾燥用カバーは、陰干しの必要がある靴や衣服等について、生地の傷みや色あせ、型崩れすることなく、天日の下で乾燥させることができる。また花粉や人体に有害な塵埃などの侵入を防止し、寝具の乾燥が衛生的に行える。さらに雨の侵入を防止し、雨の心配をせずに洗濯物を干すことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開平7−144093号公報で提案された洗濯物カバーは、雨や風、ほこりや花粉から洗濯物を守り、下着等を人目にさらすことのなく、安価な洗濯物カバーとすることができるが、多数の開口が設けられた第1の防水シートを第2の防水シートで覆う必要があるため、雨水がシート内部に入ったり、湿気を排気できずに乾燥のため非常な時間が必要になるものであった。しかも、洗濯物を収容するのが意外に面倒で、第2の防水シートも被せるためきわめて煩わしく、比較的短時間で使われなくなってしまうものであった。
【0009】
また、特開平9−788号公報で提案された乾燥用カバーは、防水性と通気性を兼ね備えた長繊維不織布を袋状にするため、陰干しの必要があるものについて生地の傷みや色あせ、型崩れすることなく乾燥させることができ、花粉や塵埃などの侵入を防止し、雨の侵入を防止することができるものであるが、袋状の乾燥用カバー内に湿った洗濯物等を収容するのはかなり面倒で、乾燥用カバーを被せる段取りのため時間がかかり、洗濯のたびに使おうとしても長続きしないものであった。通常通りの乾燥や天日干しの段取りを行って、最終段階で簡単に装着できるカバーではなかった。
【0010】
通気性を備えたため湿気を排気することはできるが、乾燥現象を支配する温度と周囲の風の流速、湿度を考えると、風はないし湿度も高いため、乾燥速度は低いものであった。
【0011】
また、従来の乾燥用カバーや洗濯物カバーでは、布団袋と吊り下げ式の物干し具、靴収容ラックで大きさや形が異なり、干す物によって別々のカバーを用意しなければならず、一家庭にいくつものカバーが必要になるのではとても普及させるのが難しいものであった。
【0012】
そこで本発明は、速やかに乾燥させることができ、雨の侵入を防止するとともに塵埃や花粉から洗濯物を守り、被乾燥物の大きさや形によらずに装着が容易で、安価な洗濯物干しカバーを提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0013】
上記問題点を解決するため本発明の洗濯物干しカバーは、防水性及び通気性を有する機能性シートにポリオレフィン系不織布で、繊維間の隙間もしくは孔が0.01μmから1μmの範囲のもので表面に凹のエンボスを複数個形成したものを採用することを特徴とする。
【0014】
これにより、洗濯物を乾燥させることができ、雨の侵入を防止するとともに花粉や黄砂から洗濯物を守り、被乾燥物の大きさや形によらずに装着が容易で、安価な洗濯物干しカバーを提供することができる。

【発明の効果】
【0015】
本発明の洗濯物干しカバーは、ポリオレフィン系不織布の防水性及び通気性を有する機能性シートを用いるから雨が降ってきても被乾燥物が濡れることはなく、被乾燥物から蒸発した湿気を帯びた空気は機能性シートを透過して排気することができる。また機能性シートには凹状のエンボスを複数個形成しているので被乾燥物と接触する部分のジメジメ感も防止できる。さらに被乾燥物を干す手順に面倒な処理が入らず、最後にシートを掛けて洗濯ばさみで留めるだけのきわめて簡単な使用方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の請求項1に記載された発明は、被乾燥物を上方から覆う防水性及び通気性を有する機能性シートであって、その機能性シートはポリオレフィン系不織布であり、繊維間の隙間または孔が0.01μmから1μmであると同時に表面に凹のエンボスを複数個形成したものである。この機能シートは被乾燥物を普通の干し方で干した後、機能性シートを上から掛けて洗濯ばさみで複数箇所を物干し竿に固定する。また物干し竿で折り返された前記機能シート同士も適当な間隔にてシート用洗濯ばさみで固定し機能シートが風などでめくれるのを防止する。被乾燥物を干す手順に面倒な処理が入らず、最後にシートを掛けて洗濯ばさみで留めるだけの、きわめて簡単な使用方法となる。通常このような方法で被乾燥物にカバーをかけると被乾燥物から発生する水蒸気がシートに付着し水滴となり被乾燥物は乾くことがでず、前記水滴によりジメジメしたものになってしてしまう。しかしながら、前記機能性シートには繊維間の隙間が0.01μmから1μmあり水蒸気は通過するので被乾燥物は乾くことになる。
また表面に凹状のエンボスを複数個形成しているので被乾燥物と機能シートが接する部分も凹状のエンボスにより全面が接することがないのでジメジメすることなく乾燥しやすくしたものである。

【0017】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における洗濯物干しカバーについて説明する。図1は本発明の実施の形態1における洗濯物干しカバーの斜視図、図2は洗濯物干しカバーの要部断面拡大斜視図、図3は洗濯物干しカバーの要部断面図、図4は洗濯物干しカバーに用いる機能シート単品の正面図である。
【0018】
図1、図2において、1は洗濯物等の被乾燥物を屋外で干すとき上方から覆うための防水性及び通気性を備えた機能性シート、2は機能性シート1の繊維間の隙間もしくは孔を模式的に示したものである。3は被乾燥物であり4は被乾燥物3から発生する水蒸気である。5は物干し竿で6は機能シート1と物干し竿5を固定する洗濯ばさみである。7は機能性シート1同士を固定するシート用洗濯ばさみである。8は機能シート1に施された凹状エンボス、9は雨滴で模式的に表したものである。機能性シート1は洗濯ばさみ6及びシート用洗濯ばさみ7により物干し竿5に対して着脱自在に構成される。
【0019】
機能性シート1は、図3示すように概ね長方形もしくは正方形等の外形形状を備えている。通常は家庭で洗濯物を干した上から被せる必要があることから、人が前記作業ができる範囲でできる限り大きい長方形もしくは正方形が望ましい。
【0020】
機能性シート1の材質としては、透気度が大きければ被乾燥物の乾きは速くなるが反面防水性の低下が発生する。防水性は一般に傘やレインコートで耐水圧500mm以上必要であると言われている。ポリオレフィン系の樹脂は安価な材料でありながら撥水性もすぐれた特徴がある。そこで耐水性500mm以上という条件を充たした連続性極細繊維に高熱を加えて結合させたポリオレフィン系不織布で、かつメッシュの大きさを平均的な孔径の大きさで表現したときには、平均孔径0.01〜1μmの範囲とするのが適当である。この機能性シート1は水濡れに強く、折り畳みを1000回以上繰り返しても防水性が損なわれることがない。
【0021】
図3に示すように、機能性シート1に降り掛かる雨水の大きさは通常100μm〜3000μm(霧雨100μm、雷雨3000μm、通常の雨は概ね2000μm)であり、機能性シート1には極微細な繊維が間隙もしくは孔径0.01μm〜1μmの孔が形成されているが、雨が降り始めても表面張力と撥水作用で防水され、雨水が機能性シート1を透過することはない。しかし、物干し竿4に掛けられた被乾燥物3から蒸発した水蒸気の大きさは4.0×10−4μm程度であるため、機能性シート1の極微細な繊維の間隙もしくは平均孔径0.01μm〜1μmの孔をきわめて容易に透過する。機能性シート1はこのような極微細繊維の間隙もしくは孔を備えることで通気性と防水性をもつことができる。
【0022】
さらに図3、図4に示すように、機能性シート1には凹状のエンボスが複数設けてあり被乾燥物3と接する部分に空隙が出来る。このために被乾燥物3と機能シート1が直接接触する面積が大幅に少なくすると共に前記空隙により被乾燥物3が乾燥する際に発生する水蒸気にたいして機能シート1の見かけ表面積は広くなっていることで乾燥が通常より促進される。
【0023】
防水性の他に重要な機能として花粉や黄砂からの洗濯物の保護がある。花粉は植物の種類により大きさが異なるが概ね20μm〜30μmであり機能性シート1の0.01μm〜1μmの孔を通過することはない。また黄砂については0.5μm〜20μmである。したがって0.5μm〜1μmの小さなサイズの黄砂は機能性シート1を通過する可能性がある。しかしながらこの範囲にある黄砂の粒径は全体からするとわずかであり、概ね通過を防止することができる。
【0024】
このように、洗濯物が乾く通気性と雨水を通さない防水性、それに花粉や黄砂から守る防塵性を達成するには機能性シート1の繊維が間隙もしくは孔が0.01μm〜1μmの範囲でなければならない。
【0025】
この機能性シート1は、洗濯物干しカバーという用途からして高価なものでは社会的な役目を果たせない。ポリオレフィン不織布の前述のような繊維が間隙もしくは孔が0.01μm〜1μmの範囲の機能シート1は安価であり、また耐汚染性も優れており物干しカバーとしてほぼ理想的なものである。
【0026】
この洗濯物干しカバーは機能シート1を適度な広さに形成したものを物干し竿5に干されている被乾燥物3の上から掛けて洗濯ばさみ6及びシート洗濯ばさみ7で固定するシンプルな使い方である。
【0027】
機能性シート1を二つ折りにしたとき、二つ折りした2つのシートの隙間があるので、この隙間からも被乾燥物3が乾燥する際に発生する水蒸気は放出されるので被乾燥物3の乾燥は隙間が大きいほど促進される。逆に外からの黄砂や花粉も侵入する。しかしながら機能性シート1全体の面積からすると隙間はわずかであり実用上問題とはならない。
【0028】
続いて、本実施の形態1の機能シート1で覆ったときの乾燥試験の結果について記載する。(表1)は乾燥試験の結果である。
【0029】
【表1】





(表1)は縦軸に乾燥度、横軸は測定時間を示したグラフで乾燥度100%が被乾燥物は一般のタオルを用いて実験し1時間毎に計測した。結果はカバー無しで日当たりのところが一番早く、カバーを掛けた時は1時間後れて乾燥した。雨が降るかもしれないリスク、花粉、黄砂から洗濯物を守ることを考慮すれば十分な性能と考えられる。
【0030】
【表2】




(表2)は(表1)と同様に縦軸に乾燥度、横軸は測定時間を示したグラフであり別の日に測定した結果である。これによればカバー無しの軒下と同じ時間に乾燥している。
【0031】
このように実施の形態1の洗濯物干しカバーは、通常の晴天下の屋外でタオルであれば3時間程度で十分に乾燥させることができ、併せて雨天になったときに雨を遮断できることが分かる。従来技術のように袋状にすると、天候と含水度によっては臭み等が発生することがあったが、本実施の形態1においては機能シート1を使うことで十分な通気性が確保され、臭気が発生しない。また通気性が確保されているが、花粉や黄砂より機能シートは小さな孔で形成されていることから前記花粉や黄砂が洗濯物に付着するのを防止することが出来る。

【産業上の利用の可能性】
【0032】
本発明の物干しカバーは雨が降ってきても被乾燥物が濡れることはなく、被乾燥物から蒸発した湿気を帯びた空気は機能性シートを透過して排気することができ、花粉や塵埃が飛来してきても内部の被乾燥物に付着するのを防ぐことができる。

【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態1における洗濯物干しカバーの斜視図
【図2】洗濯物干しカバーの要部断面拡大斜視図
【図3】洗濯物干しカバーの要部断面図
【図4】洗濯物干しカバー用の機能シート単品の正面図
【符号の説明】
【0034】
1 機能性シート
2 機能性シートの隙間及び孔の大きさ
3 被乾燥物
4 水蒸気
5 物干し竿
6 洗濯ばさみ
7 シート用洗濯ばさみ
8 凹状エンボス
9 雨滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被乾燥物を上方から覆う防水性及び通気性を有する機能性シートであって、前記機能性シートが連続性極細繊維に高熱を加えて結合させたポリオレフィン系不織布であり、繊維間の隙間もしくは孔が0.01μmから1μmの範囲にあって前記機能シートの表面に複数の凹状のエンボスを形成したことを特徴とする洗濯物干しカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−144269(P2010−144269A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320978(P2008−320978)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(502049871)
【Fターム(参考)】