説明

洗濯耐久性に優れた含フッ素共重合体

【課題】繊維織物等の基材に対して、洗濯耐久性を維持しながら、優れた撥油性、防汚性および汚れ脱離性を付与する。
【解決手段】(a) フルオロアルキル基を有する含フッ素単量体、
(b) ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、
(c) アセトアセチル基を有する単量体、および
(d) カチオン供与基を有する単量体
を必須成分とする含フッ素共重合体。
単量体(a)が、次式のものであることが好ましい。
CH2=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf (1)
[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子などであり; Yは、−O−または−NH−であり; Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基または環状脂肪族基などであり; Rfは、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品などの被処理物品に優れた撥油性、防汚性、汚れ脱離性を付与し、かつ撥油性、防汚性および汚れ脱離性の洗濯耐久性に優れた含フッ素共重合体およびそれの組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維織物等に撥水撥油性を付与し、かつ繊維に付着した汚れを洗濯などにより除去しやすくする防汚加工剤として、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(以下、フッ素含有化合物ともいう)と親水性基含有化合物との含フッ素共重合体が知られている(特開昭53−134786号公報、同59−204980号公報、同62−7782号公報参照)。
【0003】
しかしながら、これらの含フッ素共重合体で処理された繊維織物等は必ずしも、洗濯耐久性において満足と言えるものではなく、また、しつこい汚れ(例えば、使用済みエンジンオイル等の廃油)に対しては十分かつ満足できる汚れ脱離性を付与できない傾向にある。
十分な汚れ脱離性を得るには、撥油性とflip-flop性が重要とされ、空気中ではパーフルオロアルキル基(以下、Rf基と略す)が表面に配向し、高い撥油性を示しながら、水中ではこれとは逆に、Rf基が後退し、親水性基が表面に配向して、汚れが落ちやすくなるとされている。Flip-flop性とは、空気中と水中で環境に応じて表面分子構造が変化する性質であり、Shermanらによって提唱されている。[P.Sherman, S.Smith, B,Johannessen, Textile Research Journal,39,499(1969)]
Rf基は鎖長が短いとRfの結晶性の低下とともに撥油性も低下する傾向にあり、油汚れで被処理物品が汚染しやすくなる。このため、Rf基の炭素数は実質的に8以上のものが使用されてきた。(特開昭53−134786号公報、特開2000−290640号公報参照)
【0004】
特表2004−526042(WO02/090402に対応)は、フッ素モノマー、オキシエチレン鎖含有モノマー、カチオン供与モノマーおよび第4モノマーであるN−ヒドロキシアルキルアクリルアミドおよび/またはオキシエチレン鎖含有ジ(メタ)アクリレートからなる含フッ素ポリマーを開示している。
米国特許6326447は、フッ素モノマー、カチオン供与モノマー、および第3モノマーであるグリシジル(メタ)アクリレートおよび/または3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートからなる含フッ素ポリマーを開示している。
WO2005/090423(EP1728806A1に対応)は、フッ素モノマー、オキシアルキレン鎖含有モノマーおよびカチオン供与モノマーからなる含フッ素ポリマーを開示している。
しかし、特表2004−526042、米国特許6326447およびWO2005/090423に開示された含フッ素ポリマーは、撥油性、防汚性および汚れ脱離性の洗濯耐久性が低いという欠点を有する。
【0005】
さらに、最近になってテロメリゼーションによって得られる炭素数8のRf基を含有する化合物については、
Federal Register(FR Vol.68,No.73/April 16,2003[FRL-2303-8])(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoafr.pdf)や
EPA Environmental News FOR RELEASE: MONDAY APRIL 14, 2003
EPA INTENSIFIES SCIENTIFIC INVESTIGATION OF A CHEMICAL PROCESSING AID
(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoaprs.pdf) や
EPA OPPT FACT SHEET April 14, 2003(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoafacts.pdf)が、テロマーが分解または代謝により perfluorooctanoic acid(以下、「PFOA」と略す)を生成する可能性があると公表している。
EPA(米国環境保護庁)は、PFOAに対して科学的調査を強化することを発表している。(EPAレポート"PRELIMINARY RISK ASSESSMENT OF THE DEVELOPMENTAL TOXICITY ASSOCIATED WITH EXPOSURE TO PERFLUOROOCTANOIC ACID AND ITS SALTS" (http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoara.pdf) 参照)。
【0006】
【特許文献1】特開昭53−134786号公報
【特許文献2】特開昭59−204980号公報、
【特許文献3】特開昭62−7782号公報
【特許文献4】特開2000−290640号公報
【特許文献5】特表2004−526042号公報
【特許文献6】米国特許6326447号
【特許文献7】WO2005/090423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、繊維織物等の基材に対して、その中でも特に綿を中心とする天然繊維や混紡繊維において洗濯耐久性を維持しながら、優れた撥油性、防汚性、汚れ脱離性を付与する汚れ脱離剤を提供すること、更にはRf基の炭素数が8未満と従来に比較して少なくても、同様に優れた汚れ脱離剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(a) フルオロアルキル基を有する含フッ素単量体、
(b) ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、
(c) アセトアセチル基を有する単量体、および
(d) カチオン供与基を有する単量体
から誘導された繰り返し単位を必須成分として含有する含フッ素共重合体を提供する。
更に(I)前記含フッ素共重合体と(II)架橋剤を必須成分とする組成物を提供する。
本発明の含フッ素共重合体は汚れ脱離剤の活性成分として機能する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、繊維製品などに優れた撥油性と防汚性と汚れ脱離性を付与し、かつ撥油性と防汚性と汚れ脱離性の洗濯耐久性に優れた加工が可能となる。特に綿のような天然繊維またはその混紡繊維に対してはその効果が著しい。
また、含フッ素共重合体中のパーフルオロアルキル基の炭素数が8未満であっても、上記の優れた性能を有する汚れ脱離剤が得られる。
従来技術では、Rf基の炭素数が8未満の場合、汚れ脱離性が低下してしまうが、本発明によれば、炭素数8未満のRf基を有する重合性単量体を用いて、高flip-flop性と空気中での撥油性維持を両立し、優れた汚れ脱離性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の含フッ素共重合体は、
(A)前記フッ素単量体(a)から誘導された繰り返し単位及び
(B)前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(b)から誘導された繰り返し単位及び
(C) 前記アセトアセチル基を有する単量体(c)から誘導された繰り返し単位及び
(D) 前記カチオン供与基を有する単量体(d)から誘導された繰り返し単位
を必須成分として含有する含フッ素共重合体である。
更に必要により、(E)前記単量体(a)、(b)、(c)、(d)と共重合可能な不飽和二重結合を有する、単量体(a)、(b)、(c)、(d)以外の単量体(e)から誘導される繰り返し単位を有していてもかまわない。
単量体(b)、(c)、(d)および(e)は、一般に、フッ素原子を含有しない。
【0011】
繰り返し単位(A)は、
(a) 一般式:
CH2=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf (1)
[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
Yは、−O−または−NH−であり;
Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基または環状脂肪族基、
-CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または
-CH2CH(OZ1) CH2−基(但し、Z1は水素原子またはアセチル基である。)または
-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基 または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)、
Rfは、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
で示される含フッ素単量体によって構成されることが好ましい。
【0012】
含フッ素単量体(a)は、(アクリレートまたはメタクリレートの)α位がハロゲン原子などで置換されていることがある。したがって、式(1)において、Xが、炭素数2〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。
【0013】
上記式(1)において、Rf基が、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。Rf基の炭素数は、1〜10、例えば1〜8、特に1〜6、特別には4または6であってよい。Rf基の例は、−CF3、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、−CF(CF3) 2、−CF2CF2CF2CF3、−CF2CF(CF3)2、−C(CF)3、−(CF2)4CF3、−(CF2)2CF(CF3)2、−CF2C(CF3)3、−CF(CF3)CF2CF2CF3、−(CF2)5CF3、−(CF2)3CF(CF3)2、−(CF2)4CF(CF3)2、−(CF2)7CF3、−(CF2)5CF(CF3)2、−(CF2)6CF(CF3)2、−(CF2)9CF3等である。
【0014】
含フッ素単量体(a)の具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−C6H4−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2N(−CH3) SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2N(−C2H5) SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−CH2CH(−OH) CH2−Rf
【0015】
CH2=C(−H)−C(=O)−O−CH2CH(−OCOCH3) CH2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0016】
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0017】
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0018】
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)3−Rf
【0019】
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
【0020】
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
[上記式中、Rfは、炭素数1〜21、特に1〜6のフルオロアルキル基である。]
成分(a)は、2種類以上の混合物であってもよい。
単量体(a)の量は、含フッ素共重合体に対して、18〜88重量%、例えば50〜80重量%であってよい。
【0021】
成分(b)は、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよび/またはポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートであってよい。成分(b)の分子量は、200以上、例えば400以上であってよい。成分(b)の分子量の上限は、200000、特に20000であってよい。
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、一般式:
CH2=CX1C(=O)−O−(RO)n−X2 (3a)
および
CH2=CX1C(=O)−O−(RO)n−C(=O)CX1=CH2 (3b)
[式中、
1は、水素原子またはメチル基、
2は、水素原子または炭素数1〜22の不飽和または飽和の炭化水素基
Rは、炭素数2〜6のアルキレン基、
nは、2〜90の整数
である。]
で示されるものであることが好ましい。nは、特に2〜30、例えば2〜20であってよい。
【0022】
成分(b)において一般式(3a)および(3b)中のRは特にエチレン基であることが好ましい。
成分(b)において一般式(3a)および(3b)中のRは2種類以上のアルキレン基の組み合わせであっても良い。その場合、少なくともRのひとつはエチレン基であることが好ましい。Rの組合せとしては、エチレン基/プロピレン基の組合せ、エチレン基/ブチレン基の組合せが挙げられる。
成分(b)は2種類以上の混合物であっても良い。その場合は少なくとも成分(b)のひとつは一般式(3a)および(3b)中のRがエチレン基であることが好ましい。
また、成分(b)として一般式(3b)で示されるポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを使用する場合、単独で成分(b)として使用することは好ましくなく、成分(3a)と併用することが好ましい。その場合も、一般式(3b)で示される化合物は使用される成分(b)の中で30重量%未満にとどめることが好ましい。
成分(b)の量は、含フッ素共重合体中で10〜80重量%、好ましくは15〜50重量%であってよい。10〜80重量%であると、高い撥油性や汚れ脱離性が得られる。
【0023】
成分(b)の具体例は、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)9-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)9-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)5-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)9-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)23-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)90-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH(CH3)O)9-H
CH2=CHCOO-(CH2CH(CH3)O)9-H
【0024】
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH(CH3)O)9-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH(CH3)O)12-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)2-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)3-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)8-(CH2CH(CH3)O)6-CH2CH(C2H5)C4H9
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)23-OOC(CH3)C=CH2
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)20-(CH2CH(CH3)O)5-CH2-CH=CH2
【0025】
成分(c)としてはアセトアセチル基および炭素―炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。成分(c)のアセトアセチル基は被処理物との密着性に優れ、また、分子内に活性メチレン基を有することから、架橋剤(例えば、イソシアネート化合物)ともよく反応し、洗濯耐久性が向上する。成分(c)は含フッ素共重合体中、0.5〜10重量%であることが好ましい。0.5〜10重量%であると、特に、初期の汚れ脱離性及び洗濯耐久性が高くなる。
成分(c)の具体例としては例えば、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシプロピルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)メタクリルアミド、アセト酢酸ビニル、アセト酢酸アリルなどが挙げられる。アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートおよびアセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0026】
成分(d)において、カチオン供与基の例は、三級アミノ基および四級アミノ基である。
三級アミノ基において、窒素原子に結合する2つの基は、同じまたは異なって、炭素数1〜5の脂肪族基(特にアルキル基)、炭素数6〜20の芳香族基(アリール基)または炭素数7〜25の芳香脂肪族基(特にアラルキル基、例えばベンジル基(C6H5-CH2-))であることが好ましい。四級アミノ基において、窒素原子に結合する3つの基は、同じまたは異なって、炭素数1〜5の脂肪族基(特にアルキル基)、炭素数6〜20の芳香族基(アリール基)または炭素数7〜25の芳香脂肪族基(特にアラルキル基、例えばベンジル基(C6H5-CH2-))であることが好ましい。三級アミノ基および四級アミノ基において、窒素原子に結合する残りの1つの基が、炭素―炭素二重結合を有していてよい。
成分(d)としてはカチオン供与基および炭素―炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。成分(d)の化合物は含フッ素共重合体にカチオン性を付与し、それによって被処理物である繊維との親和性を向上させるのみならず、成分(c)とイソシアネート化合物との反応の際に触媒としても作用し、反応が促進され、結果として、含フッ素共重合体皮膜と被処理物との密着性が向上することで洗濯耐久性が著しく向上する。
また、含フッ素共重合体を水分散体として使用する場合、その強い親水性のため、含フッ素共重合体の水への分散を容易にし、含フッ素共重合体に自己乳化性を付与することも可能とする。
成分(d)は含フッ素共重合体中、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%であってよい。0.1〜10重量%であると、特に、初期の汚れ脱離性が高くなる。
【0027】
成分(d)の具体例としては以下の化合物を例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH2=CHCOO-CH2CH2-N(CH3)2 及びその塩(例えば酢酸塩)
CH2=CHCOO-CH2CH2-N(CH2CH3)2 及びその塩(例えば酢酸塩)
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N(CH3)2 及びその塩(例えば酢酸塩)
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N(CH2CH3)2 及びその塩(例えば酢酸塩)
CH2=CHC(O)N(H)-CH2CH2CH2-N(CH3)2 及びその塩(例えば酢酸塩)
CH2=CHCOO-CH2CH2-N(-CH3)(-CH2-C6H5) 及びその塩(例えば酢酸塩)
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N(-CH2CH3)(-CH2-C6H5)及びその塩(例えば酢酸塩)
CH2=CHCOO-CH2CH2-N+(CH3)3Cl-
CH2=CHCOO-CH2CH2-N+(-CH3)2(-CH2-C6H5)Cl-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)3Cl-
CH2=CHCOO-CH2CH(OH)CH2-N+(CH3)3Cl-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH(OH)CH2-N+(CH3)3Cl-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH(OH)CH2-N+(-CH2CH3)2(-CH2-C6H5)Cl-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)3Br-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)3I-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)3O-SO3CH3
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)(-CH2-C6H5)2Br-
【0028】
塩は、酸(有機酸または無機酸)との塩である。有機酸、例えば炭素数1〜20のカルボン酸(特に、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸)が好ましい。
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びそれらの塩が好ましい。
【0029】
本発明の含フッ素共重合体には、汚れ脱離性の耐久性向上、有機溶剤への溶解性、柔軟性の付与、被処理物への密着性などを目的として、他の単量体[成分(e)]、特に非フッ素単量体を導入してもよい。
成分(e)の共重合割合は、含フッ素共重合体に対して0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%、例えば0.1〜5重量%であってよい。また、成分(e)は2種類以上の混合物であってよい。
【0030】
成分(e)の具体例として例えば、ジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブタジエン、クロロプレン、グリシジル(メタ)アクリレート、マレイン酸誘導体、塩化ビニルのようなハロゲン化ビニル、エチレン、塩化ビニリデンのようなハロゲン化ビニリデン、ビニルアルキルエーテル、グリセロール(メタ)アクリレート、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、2−イソシアナートエチルメタクリレートのようなイソシアネート基含有(メタ)アクリレートまたはメチルエチルケトオキシム等のブロック化剤でイソシアネート基がブロックされたそれらの(メタ)アクリレートなどが例示されるが、これらに限定されるものでない。
【0031】
本発明の含フッ素共重合体の重量平均分子量は、1000〜1000000、好ましくは5000〜500000であってよい。1000〜1000000であることにより、耐久性を維持しながら高い汚れ脱離性が得られ、取り扱いが容易であるように重合体液の粘度が低い。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリスチレン換算で求めた値である。
【0032】
本発明の含フッ素共重合体(I)はそれ自体、優れた汚れ脱離剤であるが、架橋剤(II)と組み合わせて使用した場合、性能、特に洗濯耐久性が著しく向上する。
架橋剤(II)は、含フッ素共重合体(I)における活性水素と反応する基を有する化合物である。活性水素と反応する基の例は、イソシアネート基、グリシジル基、式:-CH2-O-Rで示される基(R基は水素原子または炭素数1〜10の脂肪族基(特にアルキル基))(特にメチロール基)である。架橋剤は、炭素−炭素二重結合を有しないことが好ましい。架橋剤(II)における活性水素と反応する基の数は、少なくとも2、例えば2〜5、特に2または3であってよい。
架橋剤(II)の例は、イソシアネート基および/またはブロックドイソシアネート基を有する化合物、グリシジル基を有する化合物、-CH2-O-R基を有する化合物である。
イソシアネート基を有する化合物または/およびブロックされたイソシアネート基を有する化合物の具体例としては例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体などのポリイソシアネート、ポリイソシアネートと一価アルコール、多価アルコールとの付加体、さらにポリイソシアネートをオキシム、フェノール、アルコール等でブロックしたブロックドイソシアネートなどであるがこれらに限定されるものではない。
【0033】
グリシジル基を有する化合物の具体例としては、グリコールのジグリシジルエーテル、ポリオールのジおよびポリグリシジルエーテル、ジカルボン酸のジグリシジルエステル、エピクロルヒドリンとA型、F型、S型、K型等のビスフェノ−ルとの反応生成物であるビスフェノ−ル型(A型、F型、S型、K型)ジグリシジルエ−テル樹脂や、ナフタレン型ジグリシジルエ−テル樹脂、ビフェニルジグリシジルエ−テル樹脂、ノボラック型グリシジルエ−テル樹脂等を挙げることができる。
-CH2-O-R基を有する化合物の具体例は、トリメチロールメラミン、メチロール末端の水素原子がメチル基で置換されたトリメチロールメラミン、少なくとも2つのメチロールを有するメラミン樹脂等のメラミン誘導体である。
架橋剤(II)がイソシアネートまたはメラミン類である場合に、単量体(c)におけるアセトアセチル基は、活性メチレン基およびカルボニル基という2カ所の反応位を有するので、架橋剤(II)は、アセトアセチル基を有する単量体(c)と良好に反応する。
【0034】
架橋剤(II)の使用量は含フッ素共重合体100重量部に対して3〜30重量部、好ましくは3〜15重量部であってよい。3〜30重量%であれば、充分な架橋が得られ、洗濯耐久性が向上し、硬化したコーティング皮膜が充分な柔軟性を有しており、高い汚れ脱離性が得られる。
【0035】
本発明の含フッ素共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
本発明の共重合体を得るに為の重合方法は、特に限定されず塊状重合、溶液重合、乳化重合、放射線重合などの種々重合方法を選択できるが、例えば一般的には有機溶剤を用いた溶液重合や、水または有機溶剤と水を併用する乳化重合が選定され、重合後に水で希釈したり、乳化剤を加えて水に乳化することで処理液に調製される。
有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、低分子量のポリエチレングリコールなどのグリコール類、エチルアルコール、イソプロパノールなどのアルコール類などが挙げられる。
乳化重合や重合後、乳化剤を加えて水に乳化する場合の乳化剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性の一般的な各種乳化剤が使用できる。
【0036】
重合開始剤として、例えば過酸化物、アゾ化合物または過硫酸系の化合物を使用し得る。重合開始剤は、一般に、水溶性および/または油溶性である。
油溶性重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2、4−ジメチル4−メトキシバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−イソブチロニトリル)、ベンゾイルパーオキシド、ジ−第三級−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、過ピバル酸t−ブチル等が好ましく挙げられる。
【0037】
また、水溶性重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチルアミジン2塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオナミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]硫酸塩水和物、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]塩酸塩、過硫酸カリウム、過硫酸バリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等が好ましく挙げられる。
重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲で用いられる。
また、分子量調節を目的として公知のメルカプト基含有化合物を使用してもよく、その具体例として2−メルカプトエタノール、チオプロピオン酸、アルキルメルカプタンなどが挙げられる。メルカプト基含有化合物は単量体100重量部に対して、5重量部以下、0.01〜3重量部の範囲で用いられる。
【0038】
具体的には、共重合体は、以下のようにして製造できる。
溶液重合では、重合開始剤の存在下で、単量体を有機溶剤に溶解させ、窒素置換後、例えば50〜120℃の範囲で1〜10時間、加熱撹拌する方法が採用される。重合開始剤は、一般に、油溶性重合開始剤であってよい。有機溶剤としては、単量体に不活性でこれらを溶解するものであり、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、低分子量のポリエチレングリコールなどのグリコール類、エチルアルコール、イソプロパノールなどのアルコール類などが挙げられる。
有機溶剤は単量体の合計100重量部に対して、50〜1000重量部の範囲で用いられる。
【0039】
乳化重合では、重合開始剤および乳化剤の存在下で、単量体を水中に乳化させ、窒素置換後、例えば50〜80℃の範囲で1〜10時間、撹拌して共重合させる方法が採用される。重合開始剤は、水溶性重合性開始剤および/または油溶性重合開始剤であってよい。
放置安定性の優れた共重合体水分散液を得るためには、高圧ホモジナイザーや超音波ホモジナイザーのような強力な破砕エネルギーを付与できる乳化装置を用いて、単量体を水中に微粒子化し、水溶性重合開始剤を用いて重合することが望ましい。乳化剤としては、カチオン性、アニオン性およびノニオン性の各種乳化剤を用いることができ、単量体100重量部に対して、0.5〜10重量部の範囲で用いられる。単量体が完全に相溶しない場合は、これら単量体に充分に相溶させるような相溶化剤、例えば、水溶性有機溶剤や低分子量の単量体を添加することが好ましい。相溶化剤の添加により、乳化性および共重合性を向上させることが可能である。
【0040】
水溶性有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エタノールなどが挙げられ、水100重量部に対して、1〜80重量部、例えば5〜50重量部の範囲で用いてよい。
【0041】
このようにして得られた共重合体は、必要により水や有機溶剤等に希釈または分散された後、乳濁液、有機溶剤溶液、エアゾールなどの任意の形態に調製でき、汚れ脱離剤とすることが可能である。共重合体は、汚れ脱離剤の有効成分として機能する。汚れ脱離剤は、含フッ素共重合体および媒体(特に、液状媒体)(例えば、有機溶媒および/または水)を含んでなる。汚れ脱離剤において、含フッ素共重合体の濃度は、例えば、0.01〜50重量%であってよい。
本発明の汚れ脱離剤は、含フッ素共重合体および水性媒体を含んでなることが好ましい。本明細書において、「水性媒体」とは、水のみからなる媒体、および水に加えて有機溶剤(有機溶剤の量は、水100重量部に対して、80重量部以下、例えば0.1〜50重量部、特に5〜30重量部である。)をも含有する媒体を意味する。
【0042】
本発明の共重合体は、被処理物品の種類や前記調製形態(乳濁液、有機溶剤溶液、エアゾールなど)などに応じて、任意の方法で汚れ脱離剤として被処理物品に適応され得る。例えば、水性乳濁液や有機溶剤溶液である場合には、浸漬塗布、スプレー塗布等のような被覆加工の既知の方法により、被処理物の表面に付着させ乾燥する方法が採用され得る。この際、必要ならばキュアリング等の熱処理を行っても良い。
また、必要ならば、他のブレンダーを併用することも可能である。例えば、撥水撥油剤、防シワ剤、防縮剤、難燃剤、架橋剤、帯電防止剤、柔軟剤、ポリエチレングリコールやポリビニルアルコール等の水溶性高分子、ワックスエマルション、抗菌剤、顔料、塗料などである。これらのブレンダーは被処理物、処理時に処理浴に添加して使用しても良いし、あらかじめ、可能なら、本発明の共重合体と混合して使用しても良い。
【0043】
被処理物品としては、特に限定されないが繊維製品の他、石材、フィルター(例えば、静電フィルター)、防塵マスク、ガラス、紙、木、皮革、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属および酸化物、窯業製品、プラスチック、塗面、およびプラスターなどを挙げることができる。特に繊維製品に対して有用である。繊維製品としては種々の例を挙げることができる。例えば、綿、麻、羊毛、絹などの動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維などの無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。繊維製品は、繊維、糸、布等の形態のいずれであってもよい。
【0044】
本発明においては、被処理物品を汚れ脱離剤で処理する。「処理」とは、処理剤を、浸漬、噴霧、塗布などにより被処理物に適用することを意味する。処理により、処理剤の有効成分である含フッ素共重合体が被処理物の内部に浸透するおよび/または被処理物の表面に付着する。
【実施例】
【0045】
次に、実施例、比較例及び試験例を挙げて本発明を詳しく説明する。ただし、これらの説明が本発明を限定するものでない。
以下において、部または%は、特記しない限り、重量部または重量%を表す。
【0046】
試験は以下のようにして行った。
汚れ脱離試験
汚れ脱離試験は米国のAATCC Stain Release Management Performance Test Methodに準じて行った。試験用の汚れにはコーンオイルまたはミネラルオイルまたは人工油を使用した。人工油はカーボンブラック16.7%、牛脂極度硬化油20.8%、流動パラフィン62.5%からなるダイヤペースト1gにダフニーメカニックオイル(出光興産製)100mlを加えて調製した。
水平に敷いたブロッティングペーパーの上に20cm四方の試験布を広げ、汚れとして人工油を5滴(約0.2cc)を試験布に垂らす。その上からグラッシンペーパーをかけて、さらに2268gの分銅をのせ、60秒、放置する。60秒後に分銅とグラッシングペーパーを取り除き、そのまま、室温で15分、放置する。15分経過後、試験布にバラスト布を加えて1.8kgとし、洗剤(AATCC標準のWOB洗剤)100gを使用して、AATCC標準洗濯機(米国ケンモア社製)で浴量64リットル、浴温38℃の条件で12分間洗濯し、濯いだ後、AATCC標準タンブラー乾燥機(米国ケンモア社製)で試験布を乾燥する。乾燥した試験布の残存シミ汚れの状態を判定用標準写真板と比較し、汚れ脱離性能を該当する判定級(表1参照)をもって表す。判定用標準写真板は、AATCC―TM130−2000(American Association of Textile Chemists and Colorists - Test Method 130-2000)のものを使用した。
【0047】

【0048】
撥油性試験
撥油性試験は、繊維製品を用いてAATCC―TM118−2000に準じて行った。即ち、試験布を水平に広げ、表2に示す試験溶液を数滴落し、30秒後の浸透状態で判定する。撥油性が低い場合は、空気中で油汚れが被処理物品に進入して除去困難となる為、汚れ脱離性(SR性)の試験と並び重要な評価指標となる。
【0049】

【0050】
合成例1(9FSO2PAモノマー)
3-(パーフルオロブチルスルホニル)プロピル アクリレートの合成

3-(パーフルオロブチルスルホニル)プロパノール54.4g(159mmol)、トリエチルアミン33ml(238mmol)、4-t-ブチルカテコール(0.14g)、ジクロロメタン520mlの溶液を、塩化カルシウム管装着下0℃に冷却し、アクリロイルクロリド15.5ml(191mmol)を40分要してゆっくり滴下した。室温で1時間攪拌し、15%クエン酸水600ml、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過して減圧濃縮することで、粗製のアクリル酸エステルを得た。この残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=6:1)で精製し、濃縮後の透明液体を真空乾燥することで、3-(パーフルオロブチルスルホニル)プロピル アクリレート60.0gを得た。収率95.3%。
【0051】
1H NMR(CDCl3; 内部標準TMS δppm): 6.45(dd, 1H, JAB=1.1Hz, JAX=17.3Hz, CHAHB=C), 6.12(dd, 1H, JAX=17.3Hz, JBX=10.5Hz, C=CHX), 5.95(dd, 1H, JBX=10.5Hz, JAB=1.1Hz, CHAHB=C), 4.34(t, 2H, JHH=6.0Hz, OCH2), 3.41(t, 2H, JHH=7.8Hz, CH2SO2), 2.36(tt, 2H, JHH=7.8Hz, JHH=6.0Hz, CH2CH2CH2).
19F NMR(CDCl3; 内部標準CFCl3 δppm): −81.2(m, 3F, CF3), −113.8(m, 2F, CF2SO2), −121.8(m, 2F, CF2), −126.3(m, 2F, CF2).
【0052】
以下のようにして共重合体を製造した。
実施例1
100ml4つ口フラスコに2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート(13FA) 14g、ポリエチレングリコールモノアクリレート(EO 10mol)(AE-400)4.4g、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA) 0.6g、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEM)0.4g、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)0.6g とイソプロピルアルコール 30gを仕込んで60分間窒素フローした。内温を75−80℃に昇温後、アゾビスイソブチロニトリル 0.12gを添加し、8時間反応させた。得られた重合液そのままをゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって分子量測定したところ、モノマー由来のピークがほぼ消失し、共重合体由来のピークが発生していることを確認した。また、共重合体の重量平均分子量は16000であった。(ポリスチレン換算)最後に、酢酸0.153gを加えて中和し、含フッ素共重合体の20%溶液になるように水で希釈した。
【0053】
実施例2
実施例1におけるジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEM)を2−メタクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(DQ-100)に置き換えて、実施例1と同様の重合と分析を行ない、最終的に20%の含フッ素共重合体溶液を調製した。共重合体の組成及び重量平均分子量を表3に示す。
【0054】
実施例3〜6
表 に示すモノマー組成、重量比で実施例1と同様の手順を繰り返すことで、最終的に20%の含フッ素共重合体溶液を得た。必要な場合は実施例1と同様に少量の酢酸で中和した。共重合体の組成及び重量平均分子量を表3に示す。
また、実施例4及び5については20%の含フッ素共重合体溶液を調製時に共重合体に対して1.5重量%のステアリルトリメチルアンモニウムクロライドを加えた。
【0055】
実施例7
合成例1で製造した9FSO2PAモノマーを使用し表3に示すモノマー組成、重量比で実施例1と同様の手順を繰り返すことで、最終的に20%の含フッ素共重合体溶液を得た。共重合体の組成及び重量平均分子量を表3に示す。
【0056】
実施例8〜13
表3に示すモノマー組成、重量比で実施例1と同様の手順を繰り返すことで、最終的に20%の含フッ素共重合体溶液を得た。必要な場合は実施例1と同様に少量の酢酸で中和した。共重合体の組成及び重量平均分子量を表3に示す。
【0057】
比較例1
100ml4つ口フラスコに2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート(13FA) 14g、ポリエチレングリコールモノアクリレート(EO 10mol)(AE-400)4.4g、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA) 0.6g、2−メタクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(DQ-100) 0.4g、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(TM) 0.6gとイソプロピルアルコール 30gを仕込んで60分間窒素フローした。内温を75−80℃に昇温後、アゾビスイソブチロニトリル 0.12gを添加し、8時間反応させた。得られた重合液そのままをゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって分子量測定したところ、モノマー由来のピークがほぼ消失し、共重合体由来のピークが発生していることを確認した。また、共重合体の重量平均分子量は7000であった。(ポリスチレン換算)最後に、この重合体溶液を水で希釈して20%含フッ素共重合体溶液を調製した。
【0058】
比較例2〜8
表3に示すモノマー組成、重量比で実施例1と同様の手順を繰り返すことで、共重合体溶液を得た。必要な場合は実施例1と同様に酢酸で中和した。共重合体の組成及び重量平均分子量を表3に示す。
また、比較例4については含フッ素共重合体の20%水分散液を調製時に共重合体に対して3重量%のステアリルトリメチルアンモニウムクロライドを加えた。
【0059】
試験例1
加工処理液の調製
実施例1で得られた含フッ素共重合体の20%水分散液
11.0部
NICCA Assist V2(MDI系ブロックドイソシアネート、日華化学株式会社)
0.25部
NICCA Sunmarina S-750(ポリエチレンワックス水分散体、日華化学株式会社)
1.70部
ベッカミンNS-19 (グリオキザールレジン、大日本インキ化学株式会社)
8.0部
ベッカミンX-80 (グリオキザールレジン用触媒、大日本インキ化学株式会社)
2.4部
水道水 76.65部
【0060】
上記の割合で実施例1で得られた含フッ素共重合体溶液とブロックドイソシアネート等の薬剤を水で希釈し、加工処理液を調製した。このようにして得られた処理液に、100%綿ツイル布を浸漬し、ロールで絞ってウエットピックアップが60mass%となるようにした。次いで、布を160℃で3分間、乾燥、熱処理することにより、汚れ脱離剤処理を完了した。これらの布について汚れ脱離性と撥油性を測定した。結果を表5に示す。
また、洗濯耐久性を評価する目的で被処理布をAATCC法に準じ、浴温40℃で1回あたりの洗濯時間が12分(すすぎ等の時間は含まず)のノーマルコンディションで洗濯し、タンブラー乾燥を行い、これを1サイクルとし、このサイクルを繰り返し行った被処理布についても汚れ脱離性と撥油性を測定した。
結果を表5に示す。
【0061】
試験例2〜13及び比較試験例1〜8
含フッ素共重合体の20%水分散液をそれぞれ実施例2〜14及び比較例1〜7で得られたものに変更する以外は、試験例1と同様の手順で処理液を調製、布処理し、汚れ脱離性、撥油性を測定した。
結果を表5に示す。
【0062】

【0063】

【0064】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) フルオロアルキル基を有する含フッ素単量体、
(b) ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、
(c) アセトアセチル基を有する単量体、および
(d) カチオン供与基を有する単量体
から誘導された繰り返し単位を必須成分として含有する含フッ素共重合体。
【請求項2】
単量体(a)が、一般式:
CH2=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf (1)
[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
Yは、−O−または−NH−であり;
Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基または環状脂肪族基、
-CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または
-CH2CH(OZ1) CH2−基(但し、Z1は水素原子またはアセチル基である。)または
-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基 または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)、
Rfは、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
で示される含フッ素単量体である請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項3】
単量体(a)において、フルオロアルキル基(Rf基)がパーフルオロアルキル基である請求項2に記載の含フッ素共重合体。
【請求項4】
単量体(a)において、フルオロアルキル基(Rf基)が炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基である請求項2に記載の含フッ素共重合体。
【請求項5】
単量体(b)が一般式:
CH2=CX1C(=O)−O−(RO)n−X2 (3a)
および
CH2=CX1C(=O)−O−(RO)n−C(=O)CX1=CH2 (3b)
[式中、
1は、水素原子またはメチル基、
2は、水素原子または炭素数1〜22の不飽和または飽和の炭化水素基、
Rは、炭素数2〜6のアルキレン基、
nは、2〜90の整数
である。]
で示される少なくとも一種である請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項6】
単量体(c)がアセトアセチル基および炭素―炭素二重結合を有する化合物である請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項7】
単量体(c)がアセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシプロピルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)メタクリルアミド、アセト酢酸ビニルおよびアセト酢酸アリルからなる群から選択されたものである請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項8】
単量体(d)がカチオン供与基および炭素―炭素二重結合を有する化合物である請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項9】
単量体(d)において、カチオン供与基が三級アミノ基および四級アミノ基である請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項10】
単量体(d)が、
CH2=CHCOO-CH2CH2-N(CH3)2 及びそれの酸との塩
CH2=CHCOO-CH2CH2-N(CH2CH3)2 及びそれの酸との塩
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N(CH3)2 及びそれの酸との塩
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N(CH2CH3)2 及びそれの酸との塩
CH2=CHC(O)N(H)-CH2CH2CH2-N(CH3)2 及びそれの酸との塩
CH2=CHCOO-CH2CH2-N(-CH3)(-CH2-C6H5) 及びそれの酸との塩
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N(-CH2CH3)(-CH2-C6H5)及びそれの酸との塩
CH2=CHCOO-CH2CH2-N+(CH3)3Cl-
CH2=CHCOO-CH2CH2-N+(-CH3)2(-CH2-C6H5)Cl-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)3Cl-
CH2=CHCOO-CH2CH(OH)CH2-N+(CH3)3Cl-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH(OH)CH2-N+(CH3)3Cl-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH(OH)CH2-N+(-CH2CH3)2(-CH2-C6H5)Cl-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)3Br-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)3I-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)3O-SO3CH3
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)(-CH2-C6H5)2Br-
からなる群から選択されたものである請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項11】
含フッ素共重合体において、共重合体中、単量体(a)の量が、18〜88重量%であり、単量体(b)の量が、10〜80重量%であり、単量体(c)の量が0.5〜10重量%であり、単量体(d)の量が0.1〜10重量%である、 請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項12】
含フッ素共重合体の重量平均分子量が、1000〜1000000である請求項1に記載の含フッ素共重合体。

【公開番号】特開2013−60608(P2013−60608A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−911(P2013−911)
【出願日】平成25年1月8日(2013.1.8)
【分割の表示】特願2008−556055(P2008−556055)の分割
【原出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】