説明

洗車排水の処理方法およびその装置

【課題】洗浄排水による腐敗および臭気の発生を低減し得る洗車排水の処理方法およびその装置の提供。
【解決手段】(a) 粉末状珪藻土の懸濁液を濾過装置のフィルタ表面にコートして珪藻土層を形成し、
(b) 該珪藻土層の表面に粉末状活性炭の懸濁液をコートして活性炭層を形成し、
(c) このようにして形成された2層よりなる濾過助材層を通して洗車排水を濾別し、
(d) 得られる濾液を紫外線殺菌装置に送って殺菌処理に供し、
(e) このようにして殺菌された洗浄液を洗車に供し、かつ
(f) 洗車廃液を前記濾過助材層を備えたフィルタを有する濾過装置に循環することを特徴とする洗車方法およびその装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車場で発生した機械油、ワックス等の油分、泥、砂、界面活性剤等を含む洗車排水を、天然素材を用いた濾過装置により処理し、洗浄用水として再利用する洗車排水の処理方法およびリサイクルされた水から異臭の発生を防止する洗車排水の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水資源の有効利用への関心がますます高まっている現在、水の再利用技術への期待が大きくなっている。洗車場においては、大量の水道水を利用しており、その排水を充分処理しないまま下水道に排出しているため、洗車における節水への要望および水質汚染への懸念が高まっている。
【0003】
そこで、洗車排水を処理し、その処理水を洗車用水として再利用することにより、上記課題を解決しようとする試みがなされている。洗車排水処理等の方法としては、特許文献1に記載された砂濾過装置、凝集沈殿処理、生物処理、オゾン処理、電気分解処理、中空糸膜分離等の方法による洗車排水の処理方法が知られている。しかしながら、該方法および装置では、機械油、ワックス等の油分、泥、砂、界面活性等を含む洗車排水等は濾過装置により除去することができるが、洗浄用水を循環すると、微生物が増殖して臭気が強くなるという問題点があった。
【0004】
また、特許文献1で用いられる濾過装置においては、例えばスプリング式フィルタの表面に形成される珪藻土および活性炭よりなる濾過助材層が、その粘着性のために逆洗時に該フィルタ表面にねばりついて剥離が困難であるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−101981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、洗浄排水による下水や環境の汚染を低減することを可能にする洗車方法およびその装置を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、洗車排水による腐敗および臭気の発生を低減し得る洗車排水の処理方法およびその装置を提供することにある。
【0008】
本発明のさらなる他の目的は、洗車装置または洗車場から発生した油分(機械油、ピッチ、ワックス等)、界面活性剤、土砂(土、砂等)等を含有する洗車排水を、有効活用して高度処理してリサイクルした水を用いた洗車方法およびその装置を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、フィルタ表面に形成されている濾過助材層が逆洗時にその表面に付着することのない洗車方法およびその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記(1)〜(8)により達成される。
【0011】
(1) (a) 粉末状珪藻土の懸濁液を濾過装置のフィルタ表面にコーティングして珪藻土層を形成し、
(b) 該珪藻土層の表面に粉末状活性炭の懸濁液をコーティングして活性炭層を形成し、
(c) このようにして形成された2層よりなる濾過助材層を通して洗車排水を濾別し、
(d) 得られる濾液を紫外線殺菌装置に送って殺菌処理に供し、
(e) このようにして殺菌された洗浄液を洗車に供し、かつ
(f) 洗車廃液を前記濾過助材層を備えたフィルタを有する濾過装置に循環することを特徴とする洗車方法。
【0012】
(2) (g) 前記工程(d)において得られた殺菌洗浄液の一部を光触媒殺菌処理に供したのち、前記紫外線殺菌装置に循環してなる前記(1)に記載の方法。
【0013】
(3) 洗車排水は、油水分離を行なって油分を除去したのち、(c)の工程に送られてなる前記(1)または(2)に記載の方法。
【0014】
(4) 該濾過助材層の濾過効率が低下したら逆洗法により該濾過助材層を除去してなる前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の方法。
【0015】
(5) 該逆洗は、上部より圧縮空気を圧入して行われる前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の方法。
【0016】
(6) 該逆洗は、主濾過器内のフィルタの外側の水の存在下に圧縮空気を該フィルタの内側より間欠的に圧入することにより行われる前記(5)に記載の方法。
【0017】
(7) (a) 洗車排水分離槽と、
(b) 少なくとも1個の粉末状珪藻土および粉末状活性炭の分散させるための懸濁液槽と、
(c) 該珪藻土層を形成してなるフィルタ表面および該珪藻土層の表面に活性炭層を形成してなるフィルタを備えた主濾過槽と、
(d) 該主濾過槽で得られる濾過液を貯蔵殺菌するための紫外線殺菌装置と、
(e) 該殺菌された洗浄液を用いる洗車装置とよりなる
ことを特徴とする洗車装置。
【0018】
(8) (f) さらに、上記工程(d)で得られた紫外線殺菌洗浄液の一部を殺菌処理に供するための光触媒殺菌装置を設けてなる前記(7)に記載の装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以上のごとき構成を有するものであるから、環境に優しく、かつ、洗車効果に優れた洗車方法およびその装置を提供できる。また、本発明によれば、洗浄液は循環使用できるので、下水や環境の汚染を低減することを可能にする。さらに、本発明によれば、洗車排水により異臭発生を防止することができる。また、本発明によれば、濾過助材層として、フィルタ側に珪藻土層を、またその上に活性炭層を設けるので、このようにして形成された濾過助材層が逆洗時に剥離しやすくなる。さらに、本発明によれば、紫外線殺菌装置により殺菌処理された洗車に直接使用されなかった一部の洗浄液を光触媒殺菌処理することにより、防臭効果がさらに優れることになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による洗車方法およびその装置の一実施例の概略を示すフローシートである。
【図2】本発明において使用されるスプリングフィルタにおける濾過助材の付着する前の状態を示す断面図である。
【図3】本発明において使用されるスプリングフィルタにおける濾過助材の付着する前の状態を示す断面図である。
【図4】本発明において使用されるスプリングフィルタにおける濾過助材の付着する前の状態を示す断面図である。
【図5】本発明において使用されるスプリングフィルタの逆洗時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
つぎに、図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。すなわち、図1は、本発明による洗車方法およびその装置の一実施例の概略を示すフローシートである。
【0022】
なお、本発明により洗浄されるべき「車」とは、乗用車、バス、トラック等の自動車、オートバイ等の二輪自動車、電車、汽車等の車両を指すものであるが、以下、主として乗用車を例にとって説明する。
【0023】
(1) 前処理工程
後述する洗車工程等から得られる泥、砂、その他の固形分を分離するための分離槽1より主要な固形分が沈降分離されたのち、ポンプ2により導管3を経て、洗車排水等の油水混合物4は、第1の前処理濾過器(固形分分離器)5に送られ、さらに含有されている固形分等が分離除去される。この第1の前処理濾過器5は如何なる形式のものでもよいが、一例を挙げると、例えばバッグフィルタや糸巻型等があり、そのメッシュ幅(開口幅)は、5〜25μm、好ましくは10〜25μmである。すなわち、5μm未満では、目詰まりがはやくなり、一方、25μmを越えると、リーク量が多くなるからである。
【0024】
ついで、得られる濾過液は、導管6を経て第2の前処理濾過器(油水分離器)7に送られる。例えば、前記濾過液は、導管6の下部ノズル8により前記第2の前処理濾過器7の下部より導入され、該第2の前処理濾過器7中を上昇する間に、該濾過器7に充填されている粒状吸油材(図示せず)より油分、界面活性剤、エマルション等の油性成分が吸着除去され、水性成分11は溢流9させて原水タンク10へ送られる。
【0025】
この第2の前処理濾過器7には、例えば、平均相当直径5〜30mm、好ましくは10〜20mmの粒状吸油材が充填されている。このような粒状吸油材としては、種々のものがあるが、一例を挙げると、例えば、粘土またはけい石を焼成して得られる無機質連続多孔性の吸油性セラミックスである。このような吸油性セラミックスとしては、種々あるが、一例を挙げると、例えばフィルトン形式FA−4(フィルトン株式会社商品名)等がある。
【0026】
なお、吸着飽和状態となったら、マンホール12より除去し、新しいものと取換えればよく、飽和状態の吸油セラミックスは焼成することにより再生することができる。
【0027】
(2) 濾過助材懸濁液の調製
水、例えば、水道水あるいは処理水14は、第1の濾過助材懸濁液槽13へ供給されるとともに、第1のマンホール15より珪藻土等が供給されて、攪拌機16で攪拌下に懸濁分散され、ついで導管17を経て原水タンク10へ送られる。この懸濁液13aは、ポンプ18および導管19を経て、例えば自重で主濾過装置20へ送られて、後述するように、フィルタの表面にプリコートされる。この珪藻土の平均粒径は5〜50μm、好ましくは20〜40μmである。すなわち、5μm未満の平均粒径の珪藻土では、後述するようにスプリングフィルタ28よりリークする恐れがあり、一方、50μmを越える平均粒径の珪藻土では、目詰まりするおそれがあるからである。
【0028】
ついで、上記濾過助材である珪藻土が所定量プリコーティングされて作業が終了したら、第2の濾過助材懸濁液槽23へ導管22を経て、水、例えば、水道水あるいは処理水が供給されるとともに第2のマンホール24より粉末状活性炭が供給されて、攪拌機25で攪拌下に懸濁分散させ、ついで、この懸濁液23aは、導管26を経て、例えば自重で原水タンク10へ送られる。この粉末状活性炭の平均粒径は100〜500μm、好ましくは200〜300μmである。すなわち、100μm未満の活性炭では、スプリングフィルタ28よりリークする恐れがあり、一方、500μmを越える粒径の活性炭では、スプリングフィルタへのコーティングがうまくゆかない恐れがあるからである。
【0029】
(3) 主濾過器
主濾過器20としては種々のものがあるが、一例を挙げると、例えばスプリングフィルタ式のものがある。該スプリングフィルタ28の概略は、図1に示すように容器27内に少なくとも供給された液はスプリングの表面に濾過助材層にブリッジングにより形成される濾過壁を通過して内部へ入り、その一端から濾液が排出するような構造となっている。
【0030】
このスプリングフィルタ式の主濾過器20における濾過助材のコーティングについて、図2〜5を参照しながら説明する。すなわち、図2は、濾過助材が全く付着していない状態である。このような清浄な少なくとも1体のスプリングフィルタ28を保持収納している主濾過器20(図示せず)内に、例えば下部よりまず珪藻土の懸濁液を原水タンク10よりポンプ18および導管19を経て図1に示すように導入すると、珪藻土懸濁液はスプリング部28を通過して上方へ流通し、その間にスプリング部28の表面にブリッジング現象により珪藻土が堆積して図3に示すように第1の濾過膜層(珪藻土層)29を形成する。その間、珪藻土を堆積したのちの濾液は導管31を経て原水タンク10へ循環される。
【0031】
この第1の濾過膜層29が所定の厚みに達したら、作業を中止する。この膜厚の予測は種々の方法でできるが、例えばスプリングフィルタ28に供給されるべき珪藻土量を中止した時の珪藻土量の差を供給量の体積とし、これをスプリングフィルタ部の面積で除すれば、厚みが得られる。
【0032】
つぎに、同様に下部より活性炭の懸濁液23aは、原水タンク10からポンプ18および導管19を経て、主濾過器20へ送られる。主濾過器20へ送られた活性炭の懸濁液23aは、スプリングフィルタ28の珪藻土層29面を通過して濾液は、導管31を経て原水タンク10へ循環される。その間に、活性炭は、図4に示すように珪藻土層29の表面に堆積して活性炭層30を形成する。なお、該活性炭層30の厚みは、珪藻土層の場合と同様である。また、このような厚みの測定を繰り返していけば、経験則により時間によって測定可能である。
【0033】
前記珪藻土層29の厚みは0.5〜1mm、好ましくは0.5〜0.7mmであり、活性炭層30の厚みは、0.3〜0.7mm、好ましくは0.3〜0.4mmである。すなわち、珪藻土層29の厚みが0.5mm未満では、厚みが薄いので濾過が不充分であり、一方、その厚みが1mmを越えると、濾過が不充分であるからである。
【0034】
また、活性炭層30の厚みが、0.3mm未満では、濾過が不充分であり、一方、0.7mmを越えると、逆洗が不足し、ランニングコストが増大するからである。さらに珪藻土層29と活性炭層30との厚みの比は、珪藻土類29の厚みについては活性炭層3の厚み6:4〜8:3、好ましくは7:3〜2:1である。すなわち、活性炭層30の厚みが8:3未満では、洗剤等がとれなくて透明にならないからであり、一方、6:4を越えると、目詰まりを起こしやすく、また逆洗し難いからである。
【0035】
(4) 濾過助剤層の剥離防止
珪藻土層29および活性炭層30よりなる二重の濾過助材層が図4に示すように形成されたら、活性炭懸濁液23aの循環を停止する。ついで、原水タンク10内の水性成分11をポンプ18および導管19を経て、主濾過器20へ供給する。供給された水性成分11は、主濾過器20内のスプリングフィルタの前記二重の濾過助材層29、30を通過し、油分その他の成分が濾別されて導管32を経て、後述する紫外線殺菌装置(処理水タンク)37を経て安全フィルタ33へ送られる。この場合、該処理水タンクが、仮りに満水になれば、弁60が閉まり、濾過水が止まる恐れがあるので、その場合には逆圧で濾過助材層が剥離する恐れがある。したがって、その濾過水停止に備えて濾過水を、導管31により原水タンク10に循環させるのが好ましい。あるいは、主濾過器20の作動時に、常にその一部を原水タンク10に循環させておくことも望ましい。
【0036】
(5) 主濾過器の逆洗
主濾過器20の濾過助材層29、30により不純物が充分除去されて、その濾過能力が低下したら、ポンプ18の作動を停止し、逆洗作業を開始する。
【0037】
この逆洗は、図1に示すように、コンプレッサ34より導管35を経て圧縮空気を送りスプリングフィルタ28の外側から洗浄するとともに、逆に切り換えて導管36を経て圧縮空気を送りスプリングフィルタ28の内側より洗浄を行なう(図5参照)。剥離した珪藻土等の濾過助材は、導管37より排出されて汚泥受槽42に受取られ、その水分は導管38により分離槽1に送られ、一方、固形分は排出口39より系外に除去される。また、空気は排出口40より系外へ排出され、一方、液分は導管41を経て汚泥受槽42で受取られる。
【0038】
また、主濾過器20により濾別された水性成分(濾液)は、紫外線殺菌装置(処理タンク)37へ直接送ってもよいが、固形分等が混入する虞れがあるので、第1の安全フィルタ33を経ても良い。
【0039】
第1の安全フィルタ33としては種々のものがあるが、一例を挙げると、例えば、バックフィルタ式のもので、その網目(開口間隔)は、0.22〜10μm、好ましくは0.5〜5μmである。
【0040】
(6) 紫外線殺菌装置(処理水タンク)
第1の安全フィルタ33から排出された濾液は導管34を経て紫外線殺菌装置(処理タンク)37へ送られる。この紫外線殺菌装置37には、例えば少なくとも1個の紫外線殺菌ランプ37a、37bが設けられている。この第1の紫外線殺菌装置37で殺菌された洗浄液42はポンプ43および導管44を経て洗浄液タンク45へ送られる。また洗浄液42は、必要によりその一部は導管46を経て光触媒殺菌装置47に送られる。
【0041】
(7) 光触媒殺菌装置
この光触媒殺菌装置47は、光触媒チタンアパタイト薄膜を内面に被覆するか、あるいはガラス粒状物に被覆するか、あるいは多孔性セラミックに吸収着するか、あるいはこれらの組合わせよりなり、該容器内に紫外線殺菌ランプ48を設けてなるものである。すなわち、例えば容器内に必要により、特許第3,928,596号に記載されるようにカルシウムハイドロキシアパタイトのCaの一部をTiで置換した化学構造を有する光触媒が樹脂材料に直接混練されてなる樹脂組成物を被覆してなるものである。
【0042】
ここで殺菌された洗浄液は、さらに必要により第2の安全フィルタ49で濾過されたのち、紫外線殺菌器(処理水タンク)37へ送られる。この紫外線殺菌装置(処理水タンク)37で処理水が殺菌処理されるのは、処理液の循環が繰り返されると、雑菌の増殖がなくなり、臭気がなくなるからである。同様に第2の殺菌装置47でも雑菌の増殖および臭気の発生を防止するためである。この第2の安全フィルタ49では、非常時に微粒子状物が濾別される。
【0043】
なお、前記洗浄液の一部は、さらに導管62、36、32を経て主濾過装置20洗浄時の逆洗水として使用される(図5参照)。このとき同時に導管51から圧縮空気が導入される。
【0044】
(8) 洗浄液タンク
紫外線殺菌装置37で得られた洗浄液42は、ポンプ43および導管44を経て洗浄液タンク45へ送られる。ここでも、必要により紫外線殺菌ランプ52が用いられて洗浄液中の雑菌の増殖および臭気の発生を防止する。その洗浄液タンク45には、洗車機の使用が多くなって水量が不足する場合、導管53を経て水、例えば水道水が供給される。
【0045】
(9) 洗車
この洗浄液42は、ポンプ54および導管55を経て洗車機56に送られ、自動車57の洗浄に使用される。洗車排水は洗車排水収集床58に集められたのち、導管59を経て分離槽1に循環される。
【0046】
また、紫外線殺菌装置37で得られる洗浄液42は、光触媒殺菌装置47に循環されることなく、導管62、36、32を経て導管51より送給される圧縮空気とともに主濾過槽20へ送って、逆洗浄に使用してもよい。
【0047】
(10) 主濾過器の逆洗
主濾過器20の濾過効率が低下してきたら、ポンプ18を停止して原水タンク10内の水性成分11の供給を停止する。ついで、ポンプ34より導管36より圧縮空気をスプリングフィルタ28内に圧入することによりスプリングフィルタ表面に形成されている濾過助材層を剥離する。この場合、該スプリングフィルタ外側に水が存在する状態で、圧縮空気を圧入および1.5秒間の停止を繰り返すことにより、該濾過助材の部分的剥離による空気の逃げがなくなり、均一な剥離が可能になる。
【実施例】
【0048】
つぎに、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0049】
実施例
図1に示すごとき洗車装置において、自動車57を洗浄したのちの洗車排水を、洗車排水収集床58より導管59を経て分離槽1に集められた。ここで、固形分を沈降させて上澄み液を溢液させて次の槽へこのような操作を繰り返して最後の槽から固形分をほぼ除去した油水混合物4を、ポンプ2および導管3を経て網目開き10μmの第1の前処理濾過器5に送って濾過に供し、10μmより大きい平均粒径の固形物を除去した。ついで、この濾過液を導管6を経て第2の前処理濾過器7に送った。
【0050】
この第2の前処理濾過器7には、平均相当直径10〜20mmの多孔性の吸油性セラミックス(フィルトンFA−4、フィルトン株式会社商品名)を充填しあり、下部から供給された油水混合物中の油分は、ここで吸着除去された。
【0051】
一方、水道水14が第1の濾過助材懸濁液槽13へ供給されるとともに、第1のマンホール15より珪藻土(平均粒径20〜40μm、中央シリカ株式会社製600H)4,200gが供給されて、攪拌機16で攪拌下に懸濁分散され、ついで導管17を経て原水タンク10へ送られた。この珪藻土懸濁液13aは、ポンプ18および導管19を経てスプリングフィルタ28を30本備えた主濾過器20へ30回に分けて送られた。
【0052】
このようにして、図2の状態から図3に示す状態となって、珪藻土が、主濾過器のスプリングフィルタ28の表面にブリッジングにより付着して珪藻土槽29を形成し、濾過液はスプリングフィルタ28内部へ移行したのち、導管31より原水タンク10へ循環させた。珪藻土層の厚みが約0.5mmになったら操作を中止した。
【0053】
ついで、水道水14が第2の濾過助材懸濁液槽23へ供給されるとともに、第2のマンホールより平均粒径0.25mmの活性炭粉末(クラレケミカル株式会社製、PK−D)2,100gが供給されて、攪拌機25で攪拌下に懸濁分散され、ついで導管26を経て原水タンク10へ送られた。この活性炭懸濁液は、ついでポンプ18および導管19を経て主濾過器20へ送られた。
【0054】
このようにして、図4に示すように、珪藻土層29の上に活性炭層30が形成され、濾過液は前記同様にスプリングフィルタ28内部へ移行したのち、導管31より原水タンク10へ循環された。活性炭層の厚みが0.3mmになったら操作を中止した。
【0055】
つぎに、第2の前処理濾過器7より溢流してきた原水タンク10内の水性成分11をポンプ18および導管18を経て主濾過器20へ供給して濾別し、あるいはコーティング時にかつその一部は導管31により原水タンク10へ循環された。この濾別により油分、その他の成分が除去され、導管32を経て安全フィルタ33に送られた。60分間後に主濾過器20の濾過能力が低下したので、ポンプ18の作動を停止し、逆洗作業を行なった。逆洗操作により剥離した珪藻土の濾過助材は、導管37より汚泥受槽42で受取られ、固液分離後水分のみが導管38により分離槽1に送られた。
【0056】
その濾液は、導管34により紫外線殺菌装置(処理水タンク)37へ送られ、40ワットの紫外線殺菌ランプ2個で殺菌に供された。ここで殺菌された洗浄液42は、ポンプ43および導管44を経て洗浄液タンク45へ送られた。ここでも、必要により紫外線殺菌ランプ52を用いて殺菌し、ついで、洗車機56を経て自動車57が洗浄された。その洗液は、導管59を経て分離槽1に送られた。
【0057】
洗浄液42の一部は、導管46を経て光触媒殺菌装置47に送られて殺菌処理されたのち、必要により安全フィルタ49を経て紫外線殺菌装置37に循環された。
【0058】
以上の実験操作における各工程での処理水の状態は、表1に示すとおりであった。なお、各箇所は、図1に示す位置である。
【0059】
【表1】

【符号の説明】
【0060】
1・・・分離槽、
5・・・第一の前処理濾過器、
7・・・第二の前処理濾過器、
10・・・原水タンク、
13,23・・・懸濁槽、
20・・・主濾過器、
37・・・紫外線殺菌装置、
45・・・洗浄液タンク、
47・・・光触媒殺菌装置、
56・・・洗車機、
57・・・自動車、
58・・・洗車排水収集床。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 粉末状珪藻土の懸濁液を濾過装置のフィルタ表面にコーティングして珪藻土層を形成し、
(b) 該珪藻土層の表面に粉末状活性炭の懸濁液をコーティングして活性炭層を形成し、
(c) このようにして形成された2層よりなる濾過助材層を通して洗車排水を濾別し、
(d) 得られる濾液を紫外線殺菌装置に送って殺菌処理に供し、
(e) このようにして殺菌された洗浄液を洗車に供し、かつ
(f) 洗車廃液を前記濾過助材層を備えたフィルタを有する濾過装置に循環することを特徴とする洗車方法。
【請求項2】
(g) 前記工程(d)において得られた殺菌洗浄液の一部を光触媒殺菌処理に供したのち、前記紫外線殺菌装置に循環してなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
洗車排水は、油水分離を行なって油分を除去したのち、(c)の工程に送られてなる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
該濾過助材層の濾過効率が低下したら逆洗法により該濾過助材層を除去してなる請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
該逆洗は、上部より圧縮空気を圧入して行われる請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
該逆洗は、主濾過器内のフィルタの外側の水の存在下に圧縮空気を該フィルタの内側より間欠的に圧入することにより行われる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(a) 洗車排水分離槽と、
(b) 少なくとも1個の粉末状珪藻土および粉末状活性炭の分散させるための懸濁液槽と、
(c) 該珪藻土層を形成してなるフィルタ表面および該珪藻土層の表面に活性炭層を形成してなるフィルタを備えた主濾過槽と、
(d) 該主濾過槽で得られる濾過液を貯蔵殺菌するための紫外線殺菌装置と、
(e) 該殺菌された洗浄液を用いる洗車装置とよりなる
ことを特徴とする洗車装置。
【請求項8】
(f) さらに、上記工程(d)で得られた紫外線殺菌洗浄液の一部を殺菌処理に供するための光触媒殺菌装置を設けてなる請求項7に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−96126(P2012−96126A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243110(P2010−243110)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(594199407)株式会社オスモ (10)
【Fターム(参考)】