説明

津波避難装置

【課題】 平時は立体駐車場として使用できることは勿論、津波襲来時には車両をはじめ近場の住民や通りすがりの人等を全て含めて自由に避難することができるとともに車椅子での避難もスロープなどを利用して無理なくできるようにした津波避難装置を提供すること。
【解決手段】 複数本の支柱と、複数階の駐車可能な床と、地盤から床に車両が登降可能とされた登降スロープとを備えたものであって、前記登降スロープは、その上り口が津波の襲来を回避できるように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、津波避難装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体駐車場は各種のものがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来抱えていた問題を解決しようとするものであり、平時は立体駐車場として使用できることは勿論、津波襲来時には車両をはじめ近場の住民や通りすがりの人等を全て含めて自由に避難することができるとともに車椅子での避難もスロープなどを利用して無理なくできるようにした津波避難装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、複数本の支柱と、複数階の駐車可能な床と、地盤から床に車両が登降可能とされた登降スロープとを備えたものであって、前記登降スロープは、その上り口が津波の襲来を回避できるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
上述したように本発明の津波避難装置は、複数本の支柱と、複数階の駐車可能な床と、地盤から床に車両が登降可能とされた登降スロープとを備えたものであって、前記登降スロープは、その上り口が津波の襲来を回避できるように構成されていることを特徴とするので、平時は立体駐車場として使用できることは勿論、津波襲来時には車両をはじめ近場の住民や通りすがりの人等を全て含めて自由に避難することができるとともに車椅子での避難もスロープなどを利用して無理なくできるようにした津波避難装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】この発明の一実施形態を示す平面図。
【図2】図1の側面図。
【図3】他の実施形態を示す平面図。
【図4】図3の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態を図1および図2に基づいて説明する。
図1および図2の実施形態は、津波避難兼用型立体駐車場に関するもので、平時は立体駐車場として使用できることは勿論、津波来襲時には車両900…をはじめ近場の住民や通りすがりの人等を全て含めて自由に避難することができるとともに車椅子での避難もスロープやエレベータ等を利用して無理なくできるようにしたものである。
【0008】
901は地盤、902はその地盤901内に埋め込み一体化されたコンクリート基礎であり、このコンクリート基礎902は、想定津波来襲高さに合わせてその上面を1m〜5m前後に高く設定して盛り上がり基礎を造成して津波から防護するとともに、特に、コンクリート基礎902上を駐車場として駐車する車両が津波で浸かったり流されたりすることを防止することができるようにすることができる。しかし、図示のようにコンクリート基礎902を低く設定した場合には津波が襲来することを前提にしてその上面を駐車場として使用せず襲来しても差し支えない他の設備とすることがある。その一方で、コンクリート基礎902を低く設定しその上面を駐車場とする場合には、3〜5mの外周防護壁を全周にわたって(一部に密閉式出入り扉付き)固定設置して津波襲来から駐車車両を守るようにすることができる。
【0009】
903は支柱で、角パイプであるが丸や他形状のパイプでもよく、また基礎から立ち上がるコンクリート支柱でもよい。同支柱903の外周には縦向きにした自然木材をぐるりに締め付け配備して木造支柱のように見せることもあり、この木造支柱は、津波とともに流れ来て衝突する漂流物をショック少なくして受け止めて支柱903をはじめ立体駐車場全体を防護する役目も持ち合わせる。この木造表装方式は、以下に述べる床やスロープなどの他の設備個所にも適用することができる。
【0010】
この立体駐車場は、複数本の支柱903…が図20の右方向にある海岸側(津波襲来側)に3本配備され、これらが奥行き方向に4列配備されて構成されている。これら支柱903間の間隔は5m・10m・15m・20m…など様々に設定される。904は2階床、905は3階床、906は屋上床をそれぞれ示し、これらの上下間隔は同じ寸法になっているとともに、これらの床904,905,906は全て駐車場として利用可能になっている。また、これらの床904,905,906の全体回りには上下の床間にわたる高さあるいはそれより少し低目に周壁907がそれぞれ設けられている。
【0011】
特に、2階の周壁907については、津波の襲来が想定される場合には、津波に耐えられる構造にする必要があるし、そのうち海岸側に向く一部前面のみを耐久壁にすることができる。
なお、同立体駐車場の海岸側の面には、立体駐車場から少し離れてコンクリート製あるいは鋼鉄製、木造製などによる予備防波堤908を固定設置してその前面を彎曲状としておくことで津波流が左右に流れるようにしてもよい。
【0012】
910は登降スロープで、できるだけ多くの人が区々な側から避難できるように2本配備してある。この登降スロープ910は、上からみるとL形になっているが、一側面のみに添うタイプにしてもよい。同登降スロープ910は、車両専用になっており、地上から2階(矢印U2)→3階(矢印U3)→屋上(矢印U4)へと登ることができるとともに各階から更に他の階へと登り換えることもできるようになっている上りスロープ911を備え、また、屋上→地上へ(矢印D)と降りることのできる下りスロープ912を併設式に備えている。上りスロープ911と下りスロープ912との間は上り下り時の逆送等による事故を避けるため路間仕切り913を設けて、上りスロープ911は上りのみ、下りスロープ912は下りのみというように分離してある。
なお、前記UはUPの略称、DはDOWNの略称である。
【0013】
また、登降スロープ910の登降口には、人が入るおそれもあるため事故防止用の自動扉を設置する。この自動扉は平時は料金を払わないと開かないようにされ津波など緊急時には料金を払うことなく開閉できるように切換制にする。
さらに、2階、3階、屋上にも同様に自動扉を設置して安全を図るようにする。その一方で、図2の右欄に示すように、車椅子も登ることのできる歩行専用スロープ914を併設することができる。この歩行専用スロープ914を避難に有利なように幅広型にした場合、同スロープ914に車両が誤って入ることを防止するため、スロープ914の入り口近くに阻止ポールなどの車両進入防止手段を車椅子の通過を許す程度で設置しておくことができる。この車両進入防止手段は、2階以上の階の出入り口付近にも設置して安全性の向上を図るようにすることができる。
【0014】
916は中央のエレベータで、このエレベータ916を使って地上1階と屋上床906との間(あるいは2階床904と屋上床906との間)を昇降可能になっている。このエレベータ916は簡易型のものでもよいが、ここでは、大型のものとし、多くの人が一度に避難できるようになっているとともに、重量の嵩む食料その他の物資も屋上などに運べるようになっている。
【0015】
また、同エレベータ916の傍を利用して避難階段917が地上1階から屋上床906へ避難できるように設けられている。この避難階段は支柱903の内部空間を利用した内ラセン階段にしてもよいし、外ラセン階段にしてもよい。また、支柱903に内ラセン階段と外ラセン階段との併設型を設けてもよい。
【0016】
屋上床906上には、緊急ヘリポート918が高床式に設置されて図1の矢印U4からの救急車が上り下りできるように救急用スロープ919が設けられている。救急車は、エレベータ916を使用して昇降可能にしてもよい。
なお、緊急ヘリポート918と屋上床906との間には、例えば、厨房や救急医療室、老人介護室などを設置することができる。これらの厨房などは緊急時は勿論のこと、緊急時と平時の双方で稼動可能にしてもよい。
また、図2の左端に仮想線で示すように、登降スロープ910の上あるいは下側にはスペースがあり、このスペースを利用して設備920を付してもよい。この設備920を利用して、例えば、津波が来た際に必要となる救助用艇などの収納庫を構成したり非常食糧用備蓄倉庫を構成してもよい。
【0017】
前記エレベータ916の内部のケージ890は、図2の下欄に示すように、その室内上側に照明器具891を装備しその下側に透光カバー892を装備するのが一般的であるが、最近の事故報告にもあるように、同エレベータ916は地震発生に伴い緊急停止したまま塔乗する人が取り残されるという事態が多発している。その場合、トイレの用に困ることが報告されている。そこで、ケージ890の照明用のスペース内に、救急セット893…を装備し、その場合、前記透光カバー892を同セット893の収納構造にして非常時に開閉可能として取り出し使用可能にしたものである。このセット893は、大小便用の各種器具は勿論のこと、酸素吸入器や緊急食料・飲料水・電池式照明器具・警報音発生器具・毛布類など必要なものを含めてできるだけ同時装備するようにする。非常時には矢印のようにカバー892を開けて収納してあったセット893を使用する。また、こうした方式はケージ890の底蓋894を開閉式にすることでそのボトム収納部895内のセットを使用可能にすることもでき、上側および底側の双方に収納することもできるし、図示はしないがケージ890の側壁内に収納することもできる。そして、ケージ890のコーナーにこうしたセットを収納しておくこともできる。なお、用済みのセット893はカバー892の完全密閉により臭いなどが閉じ込められるように配慮してもよい。前記ボトム収納部895は、既設のエレベータの底壁を改良してその底外部に収納部とするタイプと、新規のエレベータの底部に一体に収納部を構成するタイプとがある。上部の収納部892についても、既設のエレベータの照明部分を改良するタイプと、新規なエレベータの照明部分を収納兼用とするタイプとがある。
上記した案は、津波避難兼用立体駐車場においてだけでなく、一般ビルなどの建造物や一般住居用エレベータなど全てのエレベータ装置に適用がある。
【0018】
図3および図4は津波避難兼用立体駐車場についての他の実施形態を示す。地盤923上には、図示しないコンクリート基礎上に複数本の支柱924が立設され、これらの支柱924を介して2階床925、3階床926、屋上床927が構成されている。928は上りスロープで、海岸側(矢印で示す津波襲来が想定される側と一致する)を前側とすると、後側が上り口で、この上り口は車両用上り口929と歩行用上り口930の左右2連となっている。歩行用上り口930は、少し狭くしたり前記のようなポールを立設して車両bが勝手に進入しないようにしてある。一方、車両用上り口929には、避難する人a…が勝手に進入しないように図示しない自動扉(平時にのみ料金制で非常時は非料金制)を設けておいてもよい。
【0019】
この上りスロープ928は、立体駐車場の左右脇(一方脇でもよい)に添って設けられて、できるだけ図示のように海岸側である前側から後向きに下がるようにし、これにより、津波が襲来してもスロープ928を登ってゆくことを避けるようにしてある。そして、地上から2階でなく3階床926および屋上床927へと上階へ車両bを導くようにし、これにより、平時から高い3階床926や屋上床927などに駐車しておくことで、そのまま津波が襲来してきても車両bが津波によってもってゆかれたり浸水したりしないようにしてある。
【0020】
932は下りスロープで、屋上床927から地上まで車両bを導くものである。
なお、車両用上りスロープ933の3階床926への入り口付近と出口付近並びに同スロープ933の屋上床927への入り口付近には自動扉934が設けられて避難者が勝手に進入しないようにし、また歩行用上りスロープ935の3階床926への入り口付近と屋上床927への入り口付近などにはポール936を設けて車両931が進入しないように配慮してある。屋上床927から下りスロープ932への入り口付近にも同様の趣旨で自動扉934が設けられている。
また、立体駐車場の中央その他には、エレベータ937が設けられて車椅子を含む人の避難や平時に駐車場を利用した人の利用を可能とするほか、必要な物資の運搬用にも使えるようにしてある。さらに、屋上に避難した人や平時に駐車場を利用した人が降りるための階段938も付してある。
【0021】
平時は、立体駐車場として利用される。すなわち、料金を払うことで自動扉934が開き車両bは上りスロープ928に入ることができ、直ぐに高い3階床926か屋上床27に上り駐車することができる。駐車後には、エレベータ937か階段938を利用して降りることができる。
津波の襲来が警告されると、前記料金制は解除され、車両bを感知すると自動扉934は開放され自由に車両用上りスロープ933内に入ることができる。急いで避難してくる人a…は、車両用上りスロープ933側の自動扉934は閉まっているため誤って入ることはなく、その一方で歩行用スロープ930側にはポール936があるので車両bが進入してくることもない。従って、車両bは車両用上りスロープ933側へ避難する人は歩行用上りスロープ935側に間違いなく導かれることになる。歩行用上りスロープ935は車椅子と介護者も登ることができる。そして、図3のように3階床926さらには屋上床927に避難することができる。
【0022】
3階床926への入り口および屋上床927などにはポール936が立設されているので、避難してきた人は車両bによる事故に遭うことがなくなる。逆に3階床926や屋上床927に一旦避難した人は自動扉934により車両用のスロープ933、932に危なく進入することもなくなる。
【0023】
939は緊急用ヘリポートで、屋上床927上に高床式に設置され、その床下スペースを前記実施形態のように利用可能になっている。
なお、前記上りスロープ928を左右一対設ける場合、前記実施形態では一方の上り口と他方の上り口とが同じ後側に配置されていたが、一方の上り口を前側とし他方の上り口を後側とすることもある。すなわち、図3において点対称に配置することもできる。
また、1階のコンクリート基礎上と2階床上は津波襲来のことを考慮して駐車できない方式とされているが、1階については前記実施形態でも説明したように外周防護壁を設ければ駐車可能であり、また、2階については津波想定高さとの関係もあってそれより高く床を設定すれば駐車も可能である。
【0024】
さらに、前記実施形態では歩行用スロープと車両用スロープとを上り用として併設してあったが、例えば、図3の上側を歩行専用のスロープとし、下側を車両専用のスロープとする完全分離方式も可能である。
【符号の説明】
【0025】
903,924…支柱 904,905,906,925,926,927…床 901,923…地盤 900、b…車両 910,928…登降スロープ 914…歩行専用スロープ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の支柱と、複数階の駐車可能な床と、地盤から床に車両が登降可能とされた登降スロープとを備えたものであって、前記登降スロープは、その上り口が津波の襲来を回避できるように構成されていることを特徴とする津波避難装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−140842(P2012−140842A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246891(P2011−246891)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【分割の表示】特願2006−207125(P2006−207125)の分割
【原出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(503018571)有限会社フジカ (48)
【Fターム(参考)】