説明

活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置

【課題】記録媒体の熱変形を抑止しながらコンパクトかつ安価な装置構成で生産性を高めることができる活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置を得る。
【解決手段】活性エネルギー硬化インクを記録媒体11に向けて吐出するインクジェットヘッド13と、記録媒体11に活性エネルギーを照射する活性エネルギー照射手段15と、記録媒体11を搬送する記録媒体搬送手段とを有する活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置において、活性エネルギー照射手段15が、回転多面反射体19と、複数の光照射手段25,27,29とを備え、光照射手段25,27,29のそれぞれが、回転駆動される回転多面反射体19に向けて照射し反射した光を、各隣接するライン状記録ヘッド間の位置P1,P2,P3で記録媒体11へそれぞれ走査しつつ照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線などの活性エネルギーにより硬化するインクを使用して、インクジェットにより記録媒体上へ画像形成を行う活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線、電子線などの活性エネルギーにより硬化するインクをインクジェットヘッドを用いて記録媒体上に吐出し、エネルギー照射によりインクを硬化して画像形成を行なうインクジェット装置は、環境に優しい、種々の記録媒体に高速で記録できる、高精細画像が得られる、などの特徴を有している。特に紫外線硬化型インクを用いた装置は光源の扱いやすさなどの観点から開発が進んでいる。
【0003】
この種のインクジェット記録装置では、一般に高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等のハイパワーの光源を用いて短時間に活性エネルギーを発生させてインク硬化を進めている。また、生産性を高める目的で、記録媒体の幅一杯に記録可能なライン状記録ヘッドを設けた構成で、記録媒体がこのヘッドの下を通過するのみで記録を完了させる所謂シングルパスヘッド装置も考案されている。
【0004】
このシングルパスヘッド装置でカラー印刷を行う場合には、色数分のライン状記録ヘッドが記録媒体の搬送方向に沿って平行に並設される。そして、各色ヘッドの搬送方向下流側にはそれぞれ光照射手段を配設し、異なるインク色間の混ざりを防止することが図られている(特許文献1参照)。
【0005】
ところが、このインクジェット記録装置では、ハイパワーの光源を用いるため、記録媒体が熱収縮したり、硬化に伴うインク体積の収縮により記録媒体が変形したりするとともに、硬化後のインク膜特性の劣化が生じやすく、かつプリンタの省電力化の観点からも好ましくなかった。また、特許文献1に開示される画像記録装置は、各色ヘッド毎の搬送方向下流側に光照射手段をそれぞれ配設するため、装置が大型化したり、紫外線光源の価格が高いため、装置コストの増大を招請する問題があった。
これに対し、例えば特許文献2に開示されるインクジェットプリンタは、多面体よりなる反射手段を介して光の走査によりインク着弾面に光照射することで、小出力の光源でもインク硬化を可能にし、記録媒体の変形を抑制しつつ、画像記録速度の短縮を可能にしている。
【特許文献1】特開2004−314586号公報
【特許文献2】特開2004−142189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このインクジェットプリンタは、反射手段を介してインク着弾面に光照射することから、色数のライン状記録ヘッドを記録媒体搬送方向に複数配置したカラー印刷用のインクジェット記録装置に適用した場合、反射手段から各色ヘッド近傍の露光部位置までの距離がそれぞれ異なるため、例えば反射手段からの距離が大きい露光位置では走査速度が速くなり、露光スポットの移動速度が高速となる。このように露光スポットの移動速度に各色ヘッド毎でばらつきが生じれば、露光量が不均一となり、画像品位を低下させる問題があった。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、熱収縮により変形しやすい記録媒体であっても、変形を抑止しながらコンパクトかつ安価な装置構成で生産性を高めることができる活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置を得ることにある。また、その第2の目的は、均一な露光を可能にすることにより高品位な画像が形成できる活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 活性エネルギーにより硬化可能なインクを画像信号に基づき記録媒体に向けて吐出するインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドにより記録された記録媒体に対して前記活性エネルギーを照射する活性エネルギー照射手段と、前記記録媒体を該インクジェトヘッドと対向する位置で搬送する記録媒体搬送手段と、を有する活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドが、前記記録媒体の最大記録幅以上の記録が可能なライン状記録ヘッドを前記記録媒体搬送手段の搬送方向に沿って複数有し、前記活性エネルギー照射手段が、回転多面反射体と、複数の光照射手段とを備え、前記光照射手段のそれぞれが、回転駆動される前記回転多面反射体に向けて照射し反射した光を、各隣接する前記ライン状記録ヘッド間の位置で前記記録媒体へそれぞれ走査しつつ照射することを特徴とする活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置。
【0009】
この活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置によれば、ライン状記録ヘッドの数と同数の光照射手段によって、回転駆動される回転多面反射体に向けて照射され反射された光が、各隣接するライン状記録ヘッド間の位置で記録媒体へそれぞれ照射され、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等のハイパワーの光源を用いて一括してインクを硬化させる必要がなく、熱収縮により変形しやすい記録媒体であっても、変形が抑止される。また、各色ヘッド毎に高圧水銀ランプ等のハイパワーの光照射手段をそれぞれ配設する必要がなく、コンパクトかつ安価な装置構成で生産性が高められる。
【0010】
(2) 前記ライン状記録ヘッドがそれぞれ異なる記録色毎に設けられたことを特徴とする(1)項記載の活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置。
【0011】
この活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置によれば、記録色毎にライン状記録ヘッドを設けることで、記録媒体に多色のカラー記録が可能となる。
【0012】
(3) 前記回転多面反射体から前記ライン状記録ヘッド間の位置の記録媒体までの距離の増加に応じて、前記光照射手段の出力を増加させることを特徴とする(1)項又は(2)項記載の活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置。
【0013】
この活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置によれば、活性エネルギーの照射の際、回転多面反射体からライン状記録ヘッドまでの距離に応じて露光スポットの走査速度が変化し、その結果、一走査回数での露光量は減少するが、回転多面反射体からライン状記録ヘッドまでの距離に応じて活性エネルギーの出力強度を増加させることで、走査速度が変化しても、露光量を適宜増加させることができ、距離に依存しない均一な露光が可能となり、高品位な画像が形成できるようになる。
【0014】
(4) 前記光照射手段の出力強度は、前記記録媒体への積分照射量が各ライン状記録ヘッドそれぞれで略等しくなる強度であることを特徴とする(3)項記載の活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置。
【0015】
この活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置によれば、光照射手段の出力強度を記録媒体への積分照射量を略等しくするように設定することで、記録媒体の単位面積当たりの照射量が略一定になり、インクの硬化を均等にすることができ、異なるインク同士が混ざることが確実に防止される。
【0016】
(5) 前記搬送方向の最終段における前記ライン状記録ヘッドよりも搬送方向下流側に、最終露光用活性エネルギー照射手段が設けられたことを特徴とする(1)項〜(4)項のいずれか1項記載の活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置。
【0017】
この活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置によれば、回転多面反射体によって光が、隣接する各色毎のヘッド間における記録媒体へ照射され、異なるインク同士の混ざりを防止する仮硬化が行われた後、記録媒体搬送方向の最終段において、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の最終露光用活性エネルギー照射手段によってインクの本硬化が行われ、混ざり合うことなく完全硬化した安定形成画像が確実に得られる。
【0018】
(6) 前記活性エネルギー照射手段が、前記搬送方向の最終段における前記ライン状記録ヘッドよりも搬送方向下流側へ前記活性エネルギーを照射することを特徴とする(1)項〜(4)項のいずれか1項記載の活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置。
【0019】
この活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置によれば、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等のハイパワー光源が用いられず、全てのインク硬化が、回転多面反射体に向けて照射された光を走査する光照射手段により行われ、従来のハイパワー光源によって生じていた散乱光によるインク固着が軽減される。
【0020】
(7) 前記活性エネルギーが、紫外線レーザ光を含むことを特徴とする(1)項〜(6)項のいずれか1項記載の活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置。
【0021】
この活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置によれば、光源寿命の長い紫外線レーザ光が用いられることで、装置のメンテナンスが軽減される。
【0022】
(8) 前記活性エネルギー照射手段が、単一の光源からの光を所望の強度で分光する分光手段を有し、複数の異なる出力強度で前記光を前記回転多面反射体に照射することを特徴とする(7)項記載の活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置。
【0023】
この活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置によれば、光源を単一にすることで、紫外域レーザー等の高価な活性エネルギー照射手段を複数用いる必要が無く、装置コストの低減が可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置によれば、活性エネルギー照射手段が、回転多面反射体と、複数の光照射手段とを備え、光照射手段のそれぞれが、回転駆動される回転多面反射体に向けて照射し反射した光を、各隣接するライン状記録ヘッド間の位置で記録媒体へそれぞれ走査しつつ照射するので、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等のハイパワーの光源を用いて活性エネルギーを発生させてインクを硬化させる必要がなく、熱収縮により変形しやすい記録媒体であっても、変形を抑止しながらコンパクトかつ安価な装置構成で生産性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置の好適な実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置の原理を表す構成要部の斜視図、図2は記録媒体までの距離の増加に応じて出力の増加される光が照射される回転多面反射体の側面図、図3は記録媒体までの異なる距離毎の露光スポット移動速度の差異を表した模式図である。
活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置(以下、単に「インクジェット記録装置」とも称す。)は、活性エネルギーにより硬化可能なインクを画像信号に基づき記録媒体11に向けて吐出するインクジェットヘッド13と、インクジェットヘッド13により記録された記録媒体11に対して活性エネルギーを照射する活性エネルギー照射手段15と、記録媒体11をインクジェトヘッド13と対向する位置で搬送する記録媒体搬送手段17(図5参照)とを前提の構成要素として有する。
【0026】
そして、インクジェット記録装置は、インクジェットヘッド13が、記録媒体11の最大記録幅以上の記録が可能なライン状記録ヘッドを記録媒体搬送手段17の搬送方向に沿って複数有している。インクジェット記録装置では、4個のインクジェットヘッド13K,13M,13C,13Yのそれぞれから各色(ブラック;K、マゼンタ;M、シアン;C、イエロー;Y)の活性エネルギー硬化型インクが記録媒体11の上に吐出される。つまり、ライン状記録ヘッド(インクジェットヘッド13)がそれぞれ異なる記録色毎に設けられ、記録媒体11に多色のカラー記録が可能となっている。
【0027】
活性エネルギー照射手段15は、一つの回転多面反射体19を備え、回転駆動されるこの回転多面反射体19に向けて照射され反射した光を、各隣接するライン状インクジェットヘッド13K,13M,13C,13Y間の位置P1,P2,P3で、記録媒体11へそれぞれ走査しつつ照射するようになっている。
【0028】
活性エネルギー照射手段15は、複数の光源である光照射手段25,27,29を有する。活性エネルギー照射手段15は、単一の回転多面反射体19に対して、複数の光照射手段25,27,29を有することで、光学系が単純な構造で構成可能となり、光学調整の手間が軽減されるとともに、光の伝搬ロス(複雑な光学系による光の吸収や拡散)がなくなり、高強度な光の出力が容易となっている。
【0029】
光照射手段25,27,29から出射される光は、紫外線レーザ光を含む。このように、光源寿命の長い紫外線レーザ光が用いられることで、装置のメンテナンスが軽減可能となっている。
【0030】
図2に示すように、活性エネルギー照射手段15では、回転多面反射体19が、一軸で駆動モータ31によって駆動される。したがって、回転多面反射体19に、入射角・反射角θ1,θ2,θ3で入射・反射した光照射手段25,27,29からの紫外線レーザ光BM1,BM2,BM3は、図1に示した位置P1,P2,P3に照射されるようになっている。このように、回転多面反射体19が一軸で配置されることにより、回転多面体の駆動系が簡略化されコストを下げられるとともに、各インクジェットヘッド13K,13M,13C,13Yとの位置合わせが簡単となり、光学系の調整が容易となっている。
【0031】
ここで、光照射手段25,27,29は、回転多面反射体19から各インクジェットヘッド13K,13M,13C,13Y間の位置P1,P2,P3の記録媒体11までの距離の増加に応じて、出力が増加設定されている。すなわち、光照射手段25,27,29から出射される紫外線レーザ光は、BM1<BM2<BM3の大小関係となっている。インクジェット記録装置では、図3に示すように、光照射の際、回転多面反射体19から位置P1,P2,P3までの距離に応じて露光スポットの走査速度v1,v2,v3が変化する。そのため、一走査回数での露光量は減少するが、回転多面反射体19から位置P1,P2,P3までの距離に応じて光の出力強度を増加させることで、走査速度が変化しても、露光量を適宜増加させることができ、距離に依存しない均一な露光が行えるようになっている。
【0032】
また、光照射手段25,27,29の出力強度は、記録媒体11への積分照射量が各位置P1,P2,P3でそれぞれ略等しくなる数であることが望ましい。光照射手段25,27,29の出力強度を記録媒体11への積分照射量を略等しくするように設定することで、記録媒体11の単位面積当たりの照射量が略一定になり、インクの硬化を均等にすることができ、異なるインク同士が液状で混ざることが確実に防止される。ここで積分照射量が略等しくなるとは、各フルラインヘッドから吐出されたインクの硬化具合が略等しくなることを意味し、例えばラジカル系UVインクのように低強度の光に対しては感度が低下する、いわゆる光照度不軌特性を有するインクでは、それを考慮して照射量をあわせることが必要である。
【0033】
ここで、図4は、図1に示した記録装置に設けられたLDの発光出力を制御する光出力制御回路の模式図である。図4に示すように、活性エネルギー照射手段15は、LDの発光光量を調整することで、常に安定して一定強度の光を供給することができるようになっている。これにより、前述の記録媒体11への積分照射量を正確に均一化することが可能となる。
具体的には、図1にも示すように、活性エネルギー照射手段15において、光照射手段25(27又は29)からの入射光は、コリメータレンズ33により平行光になり、結像光学系の不図示のシリンドリカルレンズを経てスポット形状が整えられ、回転する回転多面反射体19に入射する。光路を曲げられた回転多面反射体19の反射光は、fθレンズ35、シリンドリカルレンズ37(39は図4から削除してください)からなる結像光学系を透過し、ミラー41で反射されて記録媒体11の画像形成面に走査される。
【0034】
一方、インデックスミラー43による反射光は、図4に示すように、結像レンズ45を介して光量を検知する検知手段である光量検知センサ47に入射する。光量検知センサ47での検知データは、検知した光量に基づいて照射光量を演算する制御部21に送られる。制御部21によって演算されたデータは、照射光量を制御する光量制御手段である光量コントローラ23に入力され、光量コントローラ23はそのデータに基づいて光照射手段25を制御して、必要な照射光となるように光量調整を行う。
【0035】
この例では、光照射手段25を例に説明したが、同様の光量調整が光照射手段27,29によっても適宜行われる。これにより、記録媒体11の単位面積当たりの照射量が略一定となるように、それぞれの光照射手段25,27,29の出力強度が設定されるようになっている。
【0036】
光量調整され均一光となった入射光は、インクジェット記録装置全体として次のようにして照射光量が制御される。即ち、1回の光走査に基づいて照射される光が何回照射されたかを制御部21が駆動モータ31からの信号を受けてカウントし、その照射回数により、インクが硬化するのに必要な光を照射したか否かを判断し、必要な光を照射していない場合は、記録媒体搬送手段17による記録媒体11の搬送速度を遅らせて、必要な光を記録媒体11に与えながら搬送動作を実施する。
【0037】
また、インクジェット記録装置では、搬送方向の最終段におけるインクジェットヘッド13Yよりも搬送方向下流側には、図1に示す最終露光用活性エネルギー照射手段51が設けられた構成となっている。本インクジェット記録装置では、回転多面反射体19と光照射手段25,27,29とによって光が、隣接する各色毎のインクジェットヘッド13K,13M,13C,13Y間における記録媒体11へ照射され、異なるインク同士の混ざりを防止する一部硬化が行われた後、記録媒体搬送方向の最終段において、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の最終露光用活性エネルギー照射手段51によってインクの本硬化が行われる。これにより、インクが流動して混ざり合うことなく完全硬化した安定形成画像が確実に得られることとなる。
【0038】
次に、上記の活性エネルギー照射手段15を備えたインクジェット記録装置の具体的な構成例を以下に説明する。
図5は本発明に係る活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置の第1の実施形態の構成概略図である。
図5に示すように、インクジェット記録装置100の筐体61内には、同一サイズのシート状の記録媒体11を複数枚重ねて収納する記録媒体収納部63と、この収納部63から記録媒体11を取り出す搬送部65と、搬送部65により搬入された記録媒体11を記録位置範囲で保持しつつ搬送を行う記録媒体搬送手段17と、記録媒体搬送手段17で保持移送されている記録媒体11に対してインクジェット画像記録走査と紫外光照射定着(本実施形態では紫外光利用)とを行う画像記録部67と、画像記録部67で記録済みとなった記録媒体11が送出されるトレイ69とが備えられている。
【0039】
記録媒体収納部63では、記録媒体11を収納する収納カセット71がインクジェット記録装置100の筐体61下部で着脱自在に配置され、入れ替えにより異なるサイズの記録媒体11を供給することができる。この記録媒体収納部63は複数カセットを装着する構成とすることもできる。搬送部65では、筐体61にセットされた収納カセット71内の記録媒体11の挿入方向先端部に当接するフィードローラ73が備えられ、さらに、フィードローラ73により繰り出された記録媒体11を記録媒体搬送手段17へ搬送する搬送ローラ対75,77が備えられている。
【0040】
記録媒体搬送手段17では、3つのベルトローラ79a,79b,79cに張架駆動される搬送ベルト81が備えられている。搬送ベルト81は上流ベルトローラ79bから下流ベルトローラ79c方向へ駆動され、記録媒体11は上流ベルトローラ79bと下流ベルトローラ79cとの間で搬送ベルト81上に戴置搬送される。上流ベルトローラ79bと下流ベルトローラ79cとのほぼ中間位置が画像記録位置81Pとされている。
【0041】
画像記録部67では、ヘッドユニット83がそのインク吐出部先端を画像記録位置81Pで搬送ベルト81に向けて備えられている。このヘッドユニット83には不図示のヘッドドライバが接続されてインク各色の吐出量を制御する。そして、これらヘッドユニット83にはインク供給部87がインク供給のために接続されている。画像記録部67には上記した活性エネルギー照射手段15が設けられ、ヘッドユニット83の各インクジェットヘッド13K,13M,13C,13Yの間の位置P1,P2,P3に紫外線照射を行うようになっている。また、ヘッドユニット83の下流には最終露光用活性エネルギー照射手段51が配置される。
【0042】
最終露光用活性エネルギー照射手段51では、インク硬化のために強力な光を使用するため筐体61内の温度が上昇する。これを抑えるため、排気冷却部89が筐体61内上部に配置されている。最終露光用活性エネルギー照射手段51から発生したオゾンを集めると共に記録媒体11に吐出されたインクから発生する臭気もここに集めて酸化分解処理(脱臭処理)し、無臭のガスとして排気冷却部89の排気ファンにより活性炭フィルターを介して機外の大気中に放出される。
【0043】
記録媒体11が搬送ベルト81から離される位置(本実施形態では下流ベルトローラ79c位置)の搬送方向下流側には剥離爪91が配置され、剥離爪91の先端は下流ベルトローラ79c付近で記録媒体11の搬送ベルト81からの剥離を促す。トレイ69は搬送ベルト81から剥離された記録媒体11を収容する。
前述の記録媒体収納部63の他の構成として、ロールに巻かれた記録材料を供給するカセットとすることもできる。この場合、搬送部65の操出ローラ73に替えて、記録材料を所望の長さに切るカッターが配置される。
【0044】
次に、本実施形態の一連の動作に沿って本発明を説明する。
搬送ベルト81に保持された記録媒体11は、その先端が画像記録位置81Pに到達した時点で、搬送ベルト81による搬送に供される。画像記録部67のヘッドユニット83は搬送ベルト81の幅方向に渡ってインク吐出口を有しており、搬送ベルト81の走査タイミングに合わせて画像記録走査を行う。この際、不図示のヘッドドライバには画像データが入力され、インク供給部87からインクを導き、ヘッドユニット83からのインク吐出量を制御する。静電吸着による均一な力によりヘッドユニット83先端と記録媒体11との距離は常に一定となり高画質な画像形成がなされる。
【0045】
ヘッドユニット83では、図1に示したように、回転多面反射体19によって反射された光が、各隣接するインクジェットヘッド13K,13M,13C,13Y間の位置で記録媒体11へそれぞれ照射される。これにより、熱収縮により変形しやすい記録媒体11であっても、変形が抑止される。また、従来構成のように、各色ヘッド毎に高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の光照射手段をそれぞれ配設する必要がなく、コンパクトかつ安価な装置構成で生産性が高められるようになっている。
【0046】
そして、搬送方向の最終段におけるインクジェットヘッド13Yよりも搬送方向下流側には、最終露光用活性エネルギー照射手段51が設けられ、記録媒体搬送方向の最終段において、最終露光用活性エネルギー照射手段51によってインクの本硬化が行われることで、各色のインクが流動により混ざり合うことなく完全硬化した安定形成画像が確実に得られることとなる。
【0047】
最終露光用活性エネルギー照射手段51の搬送方向下流側に配置された下流ベルトローラ79c近傍には、前述のように、記録媒体11が搬送ベルト81から離される位置で剥離爪91により記録媒体11を搬送ベルト81から剥離し、記録媒体11はトレイ69上へ送出される。
【0048】
下流ベルトローラ79c位置を過ぎた搬送ベルト81にはクリーニングローラ93が接触回転している。このクリーニングローラ93の表面は粘着性があり、埃・インクかすなどを搬送ベルト81から取り除き、次の画像記録に備える。このクリーニングローラ93以外にもクリーニング手段は提案されており、これ以外でも不織布によるふき取りなどが可能である。
【0049】
なお、インク供給経路としては、インク供給部87の各カートリッジ95からインク供給経路97が導出されるように接続される。さらに、各インク供給経路97は、バルブユニット99を介して、ヘッド側インク供給経路101に繋がり、ヘッドユニット83の各インク用ヘッドに接続されている。一方、バルブユニット99からはポンプユニット103へのインク経路が分岐し、バルブユニット99及びポンプユニット103によりインク循環部を形成している。そして、インク循環部のポンプユニット103からはインク還流経路105が各カートリッジ95に接続されている。
【0050】
以上説明したように、上記のインクジェット記録装置100によれば、回転多面反射体によって反射された光が、強度を調整しつつ各隣接するインクジェットヘッド13K,13M,13C,13Y間の位置P1,P2,P3で記録媒体11へそれぞれ走査しつつ照射されるため、異なるインク同士の混ざりを防止する一部硬化が、コンパクトかつ安価な装置構成で行える。また、一度にまとめてインクを硬化させる場合と比較して、段階的に仮硬化を行うため、熱収縮により変形しやすい記録媒体11であっても、その変形が抑止される。もって、安定した良好な画像形成を生産性を高めつつ行うことができる。
【0051】
次に、第2の実施形態を説明する。
図6は移動型プラテンを備えた第2の実施形態の構成概略図である。
図6に示すように、移動型プラテン111は記録媒体11を記録搬送時に支持する。移動型プラテン111は平板状であり、記録媒体11の最大サイズより若干大きい寸法に設定されて、記録媒体全体を支持することが好ましい。この移動型プラテン111の記録材料支持面に対する裏面には、ボールナット113がブラケット115により固定されている。このボールナット113を貫通するボールねじ軸117がその長手方向を記録媒体11の搬送方向と平行にして配置される。ボールナット113はボールねじ軸117と歯合し、ボールねじ軸117の回転Rに従動して、記録媒体搬送方向の前後移動Xに規制される。
【0052】
ボールねじ軸117の搬送方向下流端には従動タイミングプーリ119が配置される。また、移動型プラテン111の下方には駆動モータ121が配置される。この駆動モータ121により回転駆動される駆動タイミングプーリ123と従動タイミングプーリ119との間にタイミングベルト125が張架されて回転駆動を伝える。駆動モータ121により回転は従動タイミングプーリ119を回転させ、ボールねじ軸117を回転させる。この回転は最終的にボールナット113により記録媒体搬送方向直線移動に転換される。そして、移動型プラテン111は図に実線で示す初期位置と一点鎖線で示す最下流位置との間を往復する構成となっている。
【0053】
さらに、移動型プラテン111の記録媒体戴置面には複数の吸気孔(図示せず)が配置される。これら吸気孔はプラテン内部の配管と接続されて、さらに、移動型プラテン111の下部に備えられた吸気管(図示せず)に接続される。この吸気管は移動型プラテン111下方に配置された吸気部(図示せず)に接続され、この吸気部の駆動により、移動型プラテン111に戴置された記録媒体11を吸着する。
【0054】
移動型プラテン111の初期位置と移動方向最下流位置との中間付近で且つその上方には、画像記録部67が配置されている。画像記録部67では、ヘッドユニット83がそのインク吐出噴射部先端を移動型プラテン111の初期位置と下流位置との中間付近に向けて備えられている。このヘッドユニット83には不図示のヘッドドライバが接続されてインク各色の吐出量を制御する。そして、これらヘッドユニット83にはインク供給部87がインク供給のために接続されている。画像記録部67には上記した活性エネルギー照射手段15が設けられ、ヘッドユニット83の各インクジェットヘッド13K,13M,13C,13Yの間の位置P1,P2,P3に紫外線照射を行うようになっている。また、ヘッドユニット83の下流には最終露光用活性エネルギー照射手段51が配置される。
【0055】
なお、インク供給経路としては、インク供給部87の各カートリッジ95からインク供給経路97が導出されるように接続される。さらに、各インク供給経路97は、バルブユニット99を介して、ヘッド側インク供給経路101に繋がり、ヘッドユニット83の各インク用ヘッドに接続されている。一方、バルブユニット99からはポンプユニット103へのインク経路が分岐し、バルブユニット99及びポンプユニット103によりインク循環部を形成している。そして、インク循環部のポンプユニット103からはインク還流経路105が各カートリッジ95に接続されている。
【0056】
次に、この第2の実施形態の動作を説明する。
まず、本実施形態の場合、記録媒体11は必要に応じて一枚毎に記録装置に人の手によって供給される。人の手によって供給される記録媒体11は、初期位置にある移動型プラテン111上へ戴置される。移動型プラテン111はその上に記録媒体11全体が完全に戴置されるまで停止状態を維持する。
【0057】
画像記録装置に設けられた画像記録開始ボタン(図示せず)により画像記録が開始されると、遅くともこのタイミングで、吸気部が駆動され、移動型プラテン111に戴置された記録媒体11が吸着される。また、このタイミングで駆動モータ121による移動型プラテン111の移動のための駆動が開始される。ここで、駆動モータ121の回転力は、駆動タイミングプーリ123、タイミングベルト125、従動タイミングプーリ119と伝達され、ボールねじ軸117を回転させる。この回転はボールナット113により下流方向直線移動に転換される。
【0058】
そして、移動型プラテン111が初期位置から最下流位置(一点鎖線で表示)まで移動される。この時に画像記録部67による画像記録が開始される。つまり、ボールナット113は画像記録用の速度で移動され、共に移動する移動型プラテン111上の記録媒体11に対してヘッドユニット83により画像記録走査が実行される。このとき、回転駆動される回転多面反射体19に向けて照射され反射した光を、各隣接するインクジェットヘッド13K,13M,13C,13Y間の位置P1,P2,P3で記録媒体11へそれぞれ走査しつつ照射する。このようにして画像記録が終了の後、最下流位置(一点鎖線で表示)において、記録済みの記録媒体11はプラテン111上から人手により回収される。最下流位置(一点鎖線)の移動型プラテン111は、記録媒体11が取り除かれた後、駆動モータ121の反転駆動により初期位置に戻り、次の画像記録に備える。
【0059】
次に、第3の実施形態を説明する。
図7は単一の光源からの光を所望の強度で分光させて照射する第3の実施形態の原理図である。
この実施の形態によるインクジェット記録装置は、単一の光源である光照射手段131からの光BMを、所望の強度で分光する分光手段19A,19Bを有し、複数の異なる出力強度で光を回転多面反射体19に照射する。ここで、分光手段19A,19Bは、光照射手段131からの総光量BMのうち、BM1,BM2を反射し、残りを透過させるハーフミラーとしての構成を有している。したがって、総光量BMは、分光手段19A,19BのそれぞれでBM1,BM2の反射光となって反射された後、最終的に回転多面反射体19において残りの光量がBM3となって反射されることとなる。
この実施の形態によれば、光源を単一にすることで、紫外域レーザー等の高価な光照射手段131を複数用いる必要が無く、装置コストの低減、及び装置のさらなるコンパクト化が可能となる。
【0060】
次に、第4の実施形態を説明する。
図8は活性エネルギー照射手段が最終段記録ヘッドの搬送方向下流側へ光照射する第4の実施形態の原理を表す構成要部の斜視図である。
この実施の形態によるインクジェット記録装置は、活性エネルギー照射手段15Aが、記録媒体11の搬送方向の最終段におけるインクジェットヘッド13Yよりも搬送方向下流側へ光を照射する。すなわち、図1に示した最終露光用活性エネルギー照射手段51が省略され、代わりに第4の光照射手段141が設けられている。この第4の光照射手段141によって、最長距離となる位置P4へBM4が照射される。第4の光照射手段141は、他の位置P1,P2,P3における記録媒体11の単位面積当たりの照射量と等しくなるように、BM4の出力強度が制御部21,光量コントローラ23によって設定される。つまり、BM4>BM3>MB2>MB1の関係に設定される。
【0061】
このインクジェット記録装置によれば、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等のハイパワー光源が用いられず、全てのインク硬化が、回転多面反射体19に向けて照射された光を走査する光照射手段25,27,29,141により行われ、従来のハイパワー光源によって生じていた散乱光によるインク固着が軽減される。
【0062】
次に、第5の実施形態を説明する。
図9は固定型プラテンを備えた第6の実施形態の全体斜視図、図10は図9に示した記録装置の縦断面図である。
この実施の形態によるインクジェット記録装置は、遮光ケース151内に、表面が記録媒体11の支持面153aとなるプラテン153と、記録媒体11をプラテン153上の一方向(図10の矢印X方向)へ搬送する記録媒体搬送手段155と、プラテン153に対向配置されてプラテン153上に搬送された記録媒体11に対して紫外線エネルギーにより硬化可能なUV硬化型インクを吐出するヘッドユニット83と、ヘッドユニット83に供給するUV硬化型インクを貯留したインクカートリッジ155と、上記した活性エネルギー照射手段15とが設けられ、ヘッドユニット83の各インクジェットヘッド13K,13M,13C,13Yの間の位置P1,P2,P3に紫外線照射を行うようになっている。
【0063】
また、本実施の形態においては、遮光ケース151は、プラテン153及び記録媒体搬送手段157等を支持・収容した箱形のケース本体151aと、ヘッドユニット83が記録媒体11に対して画像記録する領域の上を覆う遮光カバー151b,151cとを備えている。ケース本体151aの下面には、当該ケース本体151aを所定の高さ位置に設定する不図示の支持脚が装備されている。
【0064】
ケース本体151aは、紫外線及び可視光線のいずれも遮光する不透明な樹脂又は金属板により形成されている。そして、遮光カバー151b,151cの内、紫外線を遮光し、かつ可視光の一部を透過して装置内、特に、画像記録位置を視認可能な紫外線遮光部を遮光カバー151bとしている。遮光ケース151は、プラテン153の支持面153aと略同一の高さ位置で、搬送方向の基端側となる位置に記録媒体11を挿入する入口159Aが装備され、搬送方向の先端側となる位置に記録媒体11を排出する出口159Bが装備されている。これらの入口159A及び出口159Bには、記録媒体11の通過に伴い、開口を自動的に開閉する開口遮蔽カーテン161が装備されている。
【0065】
開口遮蔽カーテン161は、弾性変形により前記記録媒体との密着性を維持する柔軟性とを備え、入口159A及び出口159Bの開口を通過する記録媒体11と開口の周縁との間の隙間を塞いでいる。そして、紫外線は透過しないが可視光の一部を透過して少なくとも画像記録位置を視認可能な遮光性とを具備させることができる。
【0066】
プラテン153は、逆樋状に形成され、上面が記録媒体11の支持面153aとなる。プラテン153の近傍における記録媒体搬送方向の上流側及び下流側には、記録媒体搬送手段157である二対の走査搬送ローラ対163A,163Bが配設され、操作搬送ローラ対163A,163Bは記録媒体11をプラテン153上で記録媒体搬送方向Xへ移動させる。記録媒体11は、遮光ケース151を挟んで設けられた繰り出しロール165と、巻き取りロール167とによって繰り出し、巻き取りされる。繰り出しロール165及び巻き取りロール167と操作搬送ローラ対163A,163Bとの間の記録媒体11は、適宜配設されるガイドローラ対169等によってガイドされる。
【0067】
インクカートリッジ155は、当該インクジェット記録装置で使用されるY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各UV硬化型インク毎に個別に設けられている。各インクカートリッジ155は、それぞれ独立に形成された不図示のインク供給経路によってヘッドユニット83に接続される。これらインクの種類、数に付いては、適宜選択可能である。
【0068】
以上に説明したインクジェット記録装置では、上述の各実施形態の場合と同様に、活性エネルギー照射手段15が、回転駆動される回転多面反射体19,21,23に向けて照射され反射した光を、各隣接するインクジェットヘッド13K,13M,13C,13Y間の位置P1,P2,P3で記録媒体11へそれぞれ走査しつつ照射するので、熱収縮により変形しやすい記録媒体11であっても、異色のインク同士が流動して混合することを防止しつつ、記録媒体11の変形を抑止することができる。
ここで、本発明で言う「活性エネルギー」とは、その照射によりインク組成物中において開始種を発生させうるエネルギーを付与することができるものであれば、特に制限はなく、広く、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含するものである。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点からは、紫外線及び電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。従って、本発明のインク組成物としては、紫外線を照射することにより硬化可能なインク組成物であることが好ましい。
【0069】
本発明のインクジェット記録装置において、活性エネルギーのピーク波長は、インク組成物中の増感色素の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nm、好ましくは、300〜450nm、より好ましくは、350〜450nmであることが適当である。また、本発明のインク組成物の(a)電子移動型開始系は、低出力の活性エネルギーであっても十分な感度を有するものである。従って、活性エネルギーの出力は、例えば、2,000mJ/cm以下、好ましくは、10〜2,000mJ/cm、より好ましくは、20〜1,000mJ/cm、更に好ましくは、50〜800mJ/cmの照射エネルギーであることが適当である。また、活性エネルギーは、露光面照度(被記録媒体表面の最高照度)が、例えば、10〜2,000mW/cm、好ましくは、20〜1,000mW/cm2で照射されることが適当である。
特に、本発明のインクジェット記録装置では、活性エネルギー照射が、発光波長ピークが390〜420nmであり、かつ、前記被記録媒体表面での最高照度が10〜1,000mW/cmとなる紫外線を発生する発光ダイオードから照射されることが好ましい。
【0070】
また、本発明のインクジェット記録装置では、活性エネルギーは被記録媒体上に吐出されたインク組成物に対して、例えば、0.01〜120秒、好ましくは0.1〜90秒照射することが適当である。
更に、本発明のインクジェット記録装置では、インク組成物を一定温度に加温するとともに、インク組成物の被記録媒体への着弾から活性エネルギーの照射までの時間を、0.01〜0.5秒とすることが望ましく、好ましくは0.02〜0.3秒、更に好ましくは0.03〜0.15秒である。このようにインク組成物の被記録媒体への着弾から活性エネルギーの照射までの時間を極短時間に制御することにより、着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止することが可能となる。
【0071】
なお、本発明のインクジェット記録装置を用いてカラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。このように重ねることにより、下部のインクまで活性エネルギーが到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、臭気の低減、密着性の向上が期待できる。また、活性エネルギーの照射は、全色を射出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
【0072】
本発明のインクジェットヘッドは、例えばピエゾ型のインクジェットヘッドで、1〜100pl、好ましくは、1〜30plのマルチサイズドットを例えば、320×320〜4000×4000dpi、好ましくは、400×400〜2400×2400dpiの解像度で射出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0073】
また、上述したように、本発明のインク組成物のような活性エネルギー硬化型インクは、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが望ましいことから、インク供給カートリッジからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温による温度制御を行うことが好ましい。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、或いは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0074】
また、活性エネルギー源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェットには、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。更には、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更にLED(UV−LED),LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、活性エネルギー硬化型インクジェット用放射源として期待されている。
【0075】
また、上記のように、活性エネルギー源として、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に、一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性エネルギーを放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性エネルギー源は、UV−LEDであり、特に好ましくは、350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
【0076】
〔記録媒体〕
本発明が用いる記録媒体としては、特に制限はなく、通常の非コート紙、コート紙などの紙類、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性樹脂材料或いは、それをフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルム等を挙げることができる。
その他、被記録媒体材料として使用しうるプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが挙げられる。また、金属類や、ガラス類も被記録媒体として使用可能である。
本発明のインク組成物において、硬化時の熱収縮が少ない材料を選択した場合、硬化したインク組成物と被記録媒体との密着性に優れるため、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいフィルム、例えば、熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムなどにおいても、高精細な画像を形成しうるという利点を有する。
【0077】
以下に、本発明で使用できるインク組成物に用いられる各構成成分について順次説明する。
〔インク組成物〕
本発明に用いられるインク組成物は、活性エネルギーの照射により硬化可能なインク組成物であり、例えば、カチオン重合系インク組成物、ラジカル重合系インク組成物、水性インク組成物等が挙げられる。これら組成物について以下詳細に説明する。
【0078】
(カチオン重合系インク組成物)
カチオン重合系インク組成物は、(a)カチオン重合性化合物と、(b)活性エネルギーの照射により酸を発生する化合物、(c)着色剤を含有する。所望により、紫外線吸収剤、増感剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、界面活性剤、等を含有してもよい。
以下、カチオン重合系インク組成物に用いられる各構成成分について順次説明する。
【0079】
〔(a)カチオン重合性化合物〕
本発明に用いられる(a)カチオン重合性化合物は、後述する(b)活性エネルギーの照射により酸を発生する化合物から発生する酸により重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892、同2001−40068、同2001−55507、同2001−310938、同2001−310937、同2001−220526などの各公報に記載されている、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0080】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、脂肪族エポキシドなどが挙げられる。
芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0081】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
【0082】
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等が挙げられる。その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0083】
エポキシ化合物は、単官能であっても多官能であってもよい。
本発明に用いうる単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0084】
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3',4'−エポキシ−6'−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0085】
これらのエポキシ化合物の中でも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0086】
ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0087】
ビニルエーテル化合物は、単官能であっても多官能であってもよい。
具体的には、単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0088】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0089】
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0090】
本発明におけるオキセタン化合物は、オキセタン環を有する化合物を指し、特開2001−220526、同2001−310937、同2003−341217の各公報に記載される如き、公知オキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
本発明のインク組成物に使用しうるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、インク組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後のインク組成物と被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
【0091】
このようなオキセタン環を有する化合物については、前記特開2003−341217公報、段落番号〔0021〕乃至〔0084〕に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に使用しうる。
本発明で使用するオキセタン化合物の中でも、インク組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1個有する化合物を使用することが好ましい。
【0092】
本発明のインク組成物には、これらのカチオン重合性化合物を、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよいが、インク硬化時の収縮を効果的に抑制するといった観点からは、オキセタン化合物とエポキシ化合物とから選ばれる少なくとも1種の化合物と、ビニルエーテル化合物とを併用することが好ましい。
インク組成物中の(a)カチオン重合性化合物の含有量は、組成物の全固形分に対し、10〜95質量%が適当であり、好ましくは30〜90質量%、更に好ましくは50〜85質量%の範囲である。
【0093】
[(b)活性エネルギーの照射により酸を発生する化合物]
本発明のインク組成物は、放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、適宜、「光酸発生剤」と称する。)を含有する。
本発明に用いうる光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、或いはマイクロレジスト等に使用されている光(400〜200nmの紫外線、遠紫外線、特に好ましくは、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光)、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどの照射により酸を発生する化合物を適宜選択して使用することができる。
【0094】
このような光酸発生剤としては、例えば、放射線の照射により分解して酸を発生する、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、イミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物、ジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物を挙げることができる。
【0095】
光酸発生剤としては、また、特開2002−122994公報、段落番号〔0029〕乃至〔0030〕に記載のオキサゾール誘導体、s−トリアジン誘導体なども好適に用いられる。更に、特開2002−122994公報、段落番号〔0037〕乃至〔0063〕に例示されるオニウム塩化合物、スルホネート系化合物も、本発明における光酸発生剤として、好適に使用しうる。
【0096】
(b)光酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
インク組成物中の(b)光酸発生剤の含有量は、インク組成物の全固形分換算で、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0097】
[(c)着色剤]
本発明のインク組成物は、着色剤を添加することで、可視画像を形成することができる。例えば、平版印刷版の画像部領域を形成する場合などには、必ずしも添加する必要はないが、得られた平版印刷版の検版性の観点からは着色剤を用いることも好ましい。
ここで用いることのできる着色剤には、特に制限はなく、用途に応じて公知の種々の色材、(顔料、染料)を適宜選択して用いることができる。例えば、耐候性に優れた画像を形成する場合には、顔料が好ましい。染料としては、水溶性染料及び油溶性染料のいずれも使用できるが、油溶性染料が好ましい。
【0098】
〔顔料〕
本発明に好ましく使用される顔料について述べる。
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料、又は顔料を、分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、或いは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
【0099】
本発明において使用できる有機顔料及び無機顔料の具体例としては、例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等),C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
【0100】
赤或いはマゼンタ色を呈するものとして、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G'レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0101】
青或いはシアン色を呈する顔料として、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
【0102】
緑色を呈する顔料として、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)等の如きアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料として、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料が挙げられる。
【0103】
黒色を呈する顔料として、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
【0104】
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、更に、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
【0105】
顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリアクリレート、脂肪族多価カルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、顔料誘導体等を挙げることができる。また、Zeneca社のSolsperseシリーズなどの市販の高分子分散剤を用いることも好ましい。
また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤及び分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
【0106】
インク組成物において、顔料などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分である前記(a)カチオン重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、本発明のインク組成物は、放射線硬化型のインクであり、インクを被記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このような観点から、分散媒としては、(a)カチオン重合性化合物を用い、中でも、最も粘度が低いカチオン重合性モノマーを選択することが分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
【0107】
顔料の平均粒径は、0.02〜4μmにするのが好ましく、0.02〜2μmとするのが更に好ましく、より好ましくは、0.02〜1.0μmの範囲である。
顔料粒子の平均粒径を上記好ましい範囲となるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができる。
【0108】
〔染料〕
本発明に用いる染料は、油溶性のものが好ましい。具体的には、25℃での水への溶解度(水100gに溶解する色素の質量)が1g以下であるものを意味し、好ましくは0.5g以下、より好ましくは0.1g以下である。従って、所謂、水に不溶性の油溶性染料が好ましく用いられる。
【0109】
本発明に用いる染料は、インク組成物に必要量溶解させるために上記記載の染料母核に対して油溶化基を導入することも好ましい。
油溶化基としては、長鎖、分岐アルキル基、長鎖、分岐アルコキシ基、長鎖、分岐アルキルチオ基、長鎖、分岐アルキルスルホニル基、長鎖、分岐アシルオキシ基、長鎖、分岐アルコキシカルボニル基、長鎖、分岐アシル基、長鎖、分岐アシルアミノ基長鎖、分岐アルキルスルホニルアミノ基、長鎖、分岐アルキルアミノスルホニル基及びこれら長鎖、分岐置換基を含むアリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリールアミノカルボニル基、アリールアミノスルホニル基、アリールスルホニルアミノ基等が挙げられる。
また、カルボン酸、スルホン酸を有する水溶性染料に対して、長鎖、分岐アルコール、アミン、フェノール、アニリン誘導体を用いて油溶化基であるアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基に変換することにより染料を得てもよい。
【0110】
前記油溶性染料としては、融点が200℃以下のものが好ましく、融点が150℃以下であるものがより好ましく、融点が100℃以下であるものが更に好ましい。融点が低い油溶性染料を用いることにより、インク組成物中での色素の結晶析出が抑制され、インク組成物の保存安定性が良くなる。
また、退色、特にオゾンなどの酸化性物質に対する耐性や硬化特性を向上させるために、酸化電位が貴である(高い)ことが望ましい。このため、本発明で用いる油溶性染料として、酸化電位が1.0V(vsSCE)以上であるものが好ましく用いられる。酸化電位は高いほうが好ましく、酸化電位が1.1V(vsSCE)以上のものがより好ましく、1.15V(vsSCE)以上のものが特に好ましい。
【0111】
イエロー色の染料としては、特開2004−250483号公報の記載の一般式(Y−I)で表される構造の化合物が好ましい。
特に好ましい染料は、特開2004−250483号公報の段落番号[0034]に記載されている一般式(Y−II)〜(Y−IV)で表される染料であり、具体例として特開2004−250483号公報の段落番号[0060]から[0071]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(Y−I)の油溶性染料はイエローのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
【0112】
マゼンタ色の染料としては、特開2002−114930号公報に記載の一般式(3)、(4)で表される構造の化合物が好ましく、具体例としては、特開2002−114930号公報の段落[0054]〜[0073]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0084]から[0122]に記載されている一般式(M−1)〜(M−2)で表されるアゾ染料であり、具体例として特開2002−121414号公報の段落番号[0123]から[0132]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(3)、(4)、(M−1)〜(M−2)の油溶性染料はマゼンタのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
【0113】
シアン色の染料としては、特開2001−181547号公報に記載の式(I)〜(IV)で表される染料、特開2002−121414号公報の段落番号[0063]から[0078]に記載されている一般式(IV−1)〜(IV−4)で表される染料が好ましいものとして挙げられ、具体例として特開2001−181547号公報の段落番号[0052]から[0066]、特開2002−121414号公報の段落番号[0079]から[0081]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0133]から[0196]に記載されている一般式(C−I)、(C−II)で表されるフタロシアニン染料であり、更に一般式(C−II)で表されるフタロシアニン染料が好ましい。この具体例としては、特開2002−121414号公報の段落番号[0198]から[0201]に記載の化合物が挙げられる。尚、前記式(I)〜(IV)、(IV−1)〜(IV−4)、(C−I)、(C−II)の油溶性染料はシアンのみでなく、ブラックインクやグリーンインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
【0114】
これらの着色剤はインク組成物中、固形分換算で1〜20質量%添加されることが好ましく、2〜10質量%がより好ましい。
【0115】
本発明のインク組成物には、前記の必須成分に加え、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。これらの任意成分について説明する。
[その他の成分]
以下に、必要に応じて用いられる種々の添加剤について述べる。
〔紫外線吸収剤〕
本発明においては、得られる画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%程度である。
【0116】
〔増感剤〕
本発明のインク組成物には、光酸発生剤の酸発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、必要に応じ、増感剤を添加してもよい。増感剤としては、光酸発生剤に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものであれば、何れでもよい。好ましくは、アントラセン、9,10−ジアルコキシアントラセン、ピレン、ペリレンなどの芳香族多縮環化合物、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ミヒラーケトンなどの芳香族ケトン化合物、フェノチアジン、N−アリールオキサゾリジノンなどのヘテロ環化合物が挙げられる。添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、光酸発生剤に対し0.01〜1モル%、好ましくは0.1〜0.5モル%で使用される。
【0117】
〔酸化防止剤〕
インク組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.1〜8質量%程度である。
【0118】
〔褪色防止剤〕
本発明のインク組成物には、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類、などが挙げられる。前記金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体、などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.1〜8質量%程度である。
【0119】
〔導電性塩類〕
本発明のインク組成物には、射出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
【0120】
〔溶剤〕
本発明のインク組成物には、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
【0121】
〔高分子化合物〕
本発明のインク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0122】
〔界面活性剤〕
本発明のインク組成物には、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0123】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0124】
[インク組成物の好ましい物性]
本発明のインク組成物は、射出性を考慮し、射出時の温度において、インク粘度が7〜30mPa・sであることが好ましく、更に好ましくは7〜20mPa・sであり、上記範囲になるように適宜組成比を調整し決定することが好ましい。なお、25〜30℃でのインク粘度は、35〜500mPa・s、好ましくは35〜200mPa・sである。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を防ぎ、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となり、更にインク液滴着弾時のドット滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善される。25〜30℃におけるインク粘度が35mPa・s未満では、滲み防止効果が小さく、逆に500mPa・sより大きいと、インク液のデリバリーに問題が生じる。
【0125】
本発明のインク組成物の表面張力は、好ましくは20〜30mN/m、更に好ましくは23〜28mN/mである。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点はで30mN/m以下が好ましい。
【0126】
このようにして調整された本発明のインク組成物は、インクジェット記録用インクとして好適に用いられる。インクジェット記録用インクとして用いる場合には、インク組成物をインクジェットプリンターにより被記録媒体に射出し、その後、射出されたインク組成物に放射線を照射して硬化して記録を行う。
このインクにより得られた印刷物は、画像部が紫外線などの放射線照射により硬化しており、画像部の強度に優れるため、インクによる画像形成以外にも、例えば、平版印刷版のインク受容層(画像部)の形成など、種々の用途に使用しうる。
【0127】
[ラジカル重合系インク組成物]
ラジカル重合系インク組成物は、(d)ラジカル重合性化合物、(e)重合開始剤、(f)着色剤を含有する。所望により、更に、増感色素等を含有してもよい。
以下、ラジカル重合系インク組成物に用いられる各構成成分について順次説明する。
【0128】
(d)[ラジカル重合性化合物]
ラジカル重合性化合物としては、例えば、以下に挙げるような付加重合化能なエチレン性不飽和結合を有する化合物が含まれる。
【0129】
[付加重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物]
本発明のインク組成物に用い得る付加重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、上記不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等があげられる。
【0130】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、へキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0131】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、へキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(アクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
【0132】
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネー卜等がある。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。さらに、前述のエステルモノマーの混合物もあげることができる。また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−へキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−へキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0133】
その他の例としては、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記の一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加した1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等があげられる。CH2=C(R)COOCH2CH(R')OH (A)(ただし、RおよびR'はHあるいはCH3を示す。)
また、特開昭51−37193号に記載されているようなウレタンアクリレー卜類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートをあげることができる。さらに日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ぺージ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。本発明において、これらのモノマーはプレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態で使用しうる。
【0134】
ラジカル重合性化合物の使用量はインク組成物の全成分に対して、通常1〜99.99%、好ましくは5〜90.0%、更に好ましくは10〜70%である(ここで言う%は質量%である)。
【0135】
(e)〔光重合開始剤〕
次に本発明のラジカル重合系インク組成物に使用される光重合開始剤について説明する。
本発明における光重合開始剤は光の作用、または、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、化学変化を生じ、ラジカル、酸および塩基のうちの少なくともいずれか1種を生成する化合物である。
【0136】
好ましい光重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。
【0137】
(f)[着色剤]
カチオン重合系インク組成物に記載した(c)着色剤と同じものを利用することができる。
本発明のインク組成物には、前記の必須成分に加え、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。これらの任意成分について説明する。
〔増感色素〕
本発明においては、光重合開始剤の感度を向上させる目的で、増感色素を添加しても良い。好ましい増感色素の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)。
【0138】
〔共増感剤〕
さらに本発明のインクには、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えても良い。
【0139】
この様な共増感剤の例としては、アミン類、例えばM. R. Sanderら著「JournalofPolymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0140】
別の例としてはチオールおよびスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
【0141】
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特願平6−191605号記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0142】
また、保存性を高める観点から、重合禁止剤を200〜20000ppm添加することが好ましい。本発明のインクジェト記録用インクは、40〜80℃の範囲で加熱、低粘度化して射出することが好ましく、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐためにも、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
【0143】
〔その他〕
この他に、必要に応じて公知の化合物を用いることができ、例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類等を適宜選択して用いることができる。また、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーを含有させることも好ましい。具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0144】
また、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
【0145】
また、インク色材の遮光効果による感度低下を防ぐ手段として、重合開始剤寿命の長いカチオン重合性モノマーと重合開始剤とを組み合わせ、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとすることも好ましい態様の一つである。
【0146】
[水性インク組成物]
水性インク組成物は、重合性化合物と放射線の作用によってラジカルを生成する水溶性光重合開始剤を含有する。所望により、更に、色材、等を含有してもよい。
【0147】
[重合性化合物]
本発明の水性インク組成物に含まれる重合性化合物としては、公知の水性インク組成物に含まれる重合性化合物を用いることができる。
水性インク組成物は、硬化速度、密着性、柔軟性などのエンドユーザー特性を考慮した処方を最適化するために、反応性材料を加えることができる。このような反応性材料としては、(メタ)クリレート(即ち、アクリレート及び/又はメタクリレート)モノマー及びオリゴマー、エポキサイド並びにオキセタンなどが用いられる。
アクリレートモノマーの例としては、フェノキシエチルアクリレート、オクチルデシルアクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(例えば、テトラエチレングリコールジアクリレート)、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリ(プロピレングリコール)トリアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビス(ペンタエリスリトール)ヘキサアクリレート、エトキシ化又はプロポキシ化グリコール及びポリオールのアクリレート(例えば、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート)、及びこれらの混合物が挙げられる。
アクリレートオリゴマーの例としては、エトキシ化ポリエチレングリコール、エトキシ化トリメチロールプロパンアクリレート及びポリエーテルアクリレート及びそのエトキシ化物、及びウレタンアクリレートオリゴマーが挙げられる。
メタクリレートの例としては、ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、及びこれらの混合物が挙げられる。
オリゴマーの添加量は、インク組成物全重量に対して1〜80重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。
【0148】
〔活性エネルギーの作用によってラジカルを生成する水溶性光重合開始剤〕
本発明のインク組成物に用いることができる重合開始剤について説明する。一例としては、例えば、波長400nm前後までの光重合開始剤が挙げられる。このような光重合開始剤としては、例えば、長波長領域に官能性、即ち、紫外線を受けてラジカルを生成する感受性を持つ物質である下記一般式で表される光重合開始剤(以下、TX系と略称する)が挙げられ、本発明においては、これらの中から適宜に選択して使用することが特に好ましい。
【0149】
【化1】

【0150】
上記一般式TX−1〜TX−3中、R2は−(CH2)x−(x=0または1)、−O−(CH2)y−(y=1または2)、置換若しくは未置換のフェニレン基を表わす。またR2がフェニレン基の場合には、ベンゼン環中の水素原子の少なくとも1つが、例えば、カルボキシル基若しくはその塩、スルホン酸若しくはその塩、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、炭素数1〜4のアルコキシル基、フェノキシ基等のアリールオキシ基等から選ばれる1つまたは2つ以上の基や原子で置換されていてもよい。Mは、水素原子若しくはアルカリ金属(例えば、Li、Na、K等)を表わす。更に、R3及びR4は各々独立に、水素原子、または置換若しくは未置換のアルキル基を表わす。ここでアルキル基の例としては、例えば、炭素数1〜10程度、特には、炭素数1〜3程度の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。また、これらのアルキル基の置換基の例としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、シュウ素原子等)、水酸基、アルコキシル基(炭素数1〜3程度)等が挙げられる。また、mは1〜10の整数を表わす。
【0151】
更に本発明において、下記一般式からなる光重合開始剤 Irgacure2959(商品名:Ciba Specialty Chemicals製)の水溶性の誘導体(以下、IC系と略称する)を使用することもできる。具体的には、下記式からなるIC−1〜IC−3を使用することができる。
【0152】
【化2】

【0153】
〔クリアインクとする場合の処方〕
上述した水溶性重合性化合物は、上記したような色材を含有させることなく、透明な水性インクの形態とすることで、クリアインクとすることができる。特に、インクジェット記録特性を有するように調製すれば、水性光硬化型のインクジェット記録用のクリアインクが得られる。かかるインクを用いれば、色材を含有していないので、クリアな皮膜を得ることができる。色材を含有しないクリアインクの用途としては、画像印刷への適性を被記録材に付与するためのアンダーコート用としたり、或いは、通常のインクで形成した画像の表面保護、更なる装飾や光沢付与等を目的としたオーバーコート用としての用途等が挙げられる。クリアインクには、これらの用途に応じて、着色を目的としない無色の顔料や微粒子等を分散して含有させることもできる。これらを添加することによって、アンダーコート、オーバーコートいずれにおいても、印刷物の画質、堅牢性、施工性(ハンドリング性)等の諸特性を向上させることができる。
【0154】
そのようなクリアなインクに適用する場合の処方条件としては、インクの主成分とする水溶性重合性化合物が10〜85%、光重合開始剤(例えば、紫外線重合触媒)を、上記水溶性重合性化合物100質量部に対して1〜10質量部含有され、同時に、インク100部に対して光重合開始剤が最低0.5部が含有されているように調製することが好ましい。
【0155】
〔色材含有インクにおける材料構成〕
上述した水溶性重合性化合物を色材を含有するインクに利用する場合には、含有させた色材の吸収特性に合わせて、インク中における重合開始剤と重合性物質の濃度を調節することが好ましい。前記したように、配合量としては、水或いは溶剤の量を、質量基準で、40%〜90%の範囲、好ましくは60%〜75%の範囲とする。更に、インク中における重合性化合物の含有量は、インク全量に対して、質量基準で1%〜30%の範囲、好ましくは、5%〜20%の範囲とする。重合開始剤は、重合性化合物の含有量に依存するが、概ね、インク全量に対して、質量基準で0.1〜7%、好ましくは、0.3〜5%の範囲である。
【0156】
インクの色材として顔料が使用される場合には、インク中における純顔料分の濃度は、概ね、インク全量に対して0.3質量%〜10質量%の範囲である。顔料の着色力は顔料粒子の分散状態に依存するが、約0.3〜1%の範囲であると、淡色のインクとして利用される範囲となる。また、それ以上であると、一般のカラー着色用に用いられる濃度を与える。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】図1は本発明に係る活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置の原理を表す構成要部の斜視図である。
【図2】記録媒体までの距離の増加に応じて出力の増加される光が照射される回転多面反射体の側面図である。
【図3】記録媒体までの異なる距離毎の露光スポット移動速度の差異を表した模式図である。
【図4】図1に示した記録装置に設けられたLDの発光出力を制御する光出力制御回路の模式図である。
【図5】本発明に係る活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置の第1の実施形態の構成概略図である。
【図6】移動型プラテンを備えた第2の実施形態の構成概略図である。
【図7】単一の光源からの光を所望の強度で分光させて照射する第3の実施形態の原理図である。
【図8】活性エネルギー照射手段が最終段記録ヘッドの搬送方向下流側へ光照射する第4の実施形態の原理を表す構成要部の斜視図である。
【図9】固定型プラテンを備えた第6の実施形態の全体斜視図である。
【図10】図9に示した記録装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0158】
11 記録媒体
19 回転多面反射体
13 インクジェットヘッド
13Y 最終段におけるライン状記録ヘッド
15 活性エネルギー照射手段
17 記録媒体搬送手段
19A,19B 分光手段
25,27,29 光照射手段(光源)
51 最終露光用活性エネルギー照射手段
83 ヘッドユニット(ライン状記録ヘッド)
100 活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置
131 光照射手段(単一光源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギーにより硬化可能なインクを画像信号に基づき記録媒体に向けて吐出するインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドにより記録された記録媒体に対して前記活性エネルギーを照射する活性エネルギー照射手段と、前記記録媒体を該インクジェトヘッドと対向する位置で搬送する記録媒体搬送手段と、を有する活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置において、
前記インクジェットヘッドが、前記記録媒体の最大記録幅以上の記録が可能なライン状記録ヘッドを前記記録媒体搬送手段の搬送方向に沿って複数有し、
前記活性エネルギー照射手段が、回転多面反射体と、複数の光照射手段とを備え、
前記光照射手段のそれぞれが、回転駆動される前記回転多面反射体に向けて照射し反射した光を、各隣接する前記ライン状記録ヘッド間の位置で前記記録媒体へそれぞれ走査しつつ照射することを特徴とする活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記ライン状記録ヘッドがそれぞれ異なる記録色毎に設けられたことを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置。
【請求項3】
前記回転多面反射体から前記ライン状記録ヘッド間の位置の記録媒体までの距離の増加に応じて、前記光照射手段の出力を増加させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置。
【請求項4】
前記光照射手段の出力強度は、前記記録媒体への積分照射量が各ライン状記録ヘッドそれぞれで略等しくなる強度であることを特徴とする請求項3記載の活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置。
【請求項5】
前記搬送方向の最終段における前記ライン状記録ヘッドよりも搬送方向下流側に、最終露光用活性エネルギー照射手段が設けられたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置。
【請求項6】
前記活性エネルギー照射手段が、前記搬送方向の最終段における前記ライン状記録ヘッドよりも搬送方向下流側へ前記活性エネルギーを照射することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置。
【請求項7】
前記活性エネルギーが、紫外線レーザ光を含むことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置。
【請求項8】
前記活性エネルギー照射手段が、単一の光源からの光を所望の強度で分光する分光手段を有し、複数の異なる出力強度で前記光を前記回転多面反射体に照射することを特徴とする請求項7記載の活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−210151(P2007−210151A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30989(P2006−30989)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】