説明

活性エネルギー線架橋型接着剤

【課題】一層の接着剤層を介するのみでポリエステルまたはアラミドをベースとする被着体との密着性及び被着体とゴムとの接着性を改善すると共に、接着作業性を改良した活性エネルギー線架橋型接着剤、接着方法及びそれを用いたゴム物品を提供する。
【解決手段】 (a)重量平均分子量500〜100,000の共役ジエン系オリゴマーと、その100質量部当り、(b)特定の重合性化合物(メタ)アクリル系モノマーを5〜500質量部の割合、(c)活性エネルギー線重合性化合物を50〜1000質量部の割合で含み、かつ、硬化助剤としてメルカプト基を2個有する化合物を0.1〜10質量部の割合で含有することを特徴とする活性エネルギー線架橋型接着剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線架橋型接着剤に関し、さらに詳しくは、一層の接着剤層を介するのみでポリエステルまたはアラミドをベースとする被着体との密着性及び被着体とゴムとの接着性を改善すると共に接着作業性を改良した活性エネルギー線架橋型接着剤、接着方法及びそれを用いたゴム物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゴムは高伸長、低弾性率を有する材料であるが、その特徴を生かして実用に供するために、プラスチックス等の他の材料と複合することが行われている。そして、ゴムと被着体とをゴム加硫の際に接着し両者を一体化することにより、接着面の形状が複雑なものにも容易、簡便に適用できるので、係る目的で種々の接着剤組成物が用いられている。
さらに、近年は、環境保護のため、無溶剤の接着剤組成物あるいは接着剤組成物を固体化させる接着工程において接着層に溶剤が取り込まれる接着剤組成物が開発されている。
例えば、特許文献1では、紫外線、可視光線、電子線等の放射線の照射あるいは熱等の外的エネルギーにより重合できる単量体を含む接着剤組成物を用い、接着剤の被覆時は液状で被着体表面に空隙による接着不良が生じにくく、接着処理時に単量体を重合させることで、接着層を網状架橋化できる接着方法が開示されている。
また、特許文献2及び3においては、前記の接着方法をさらに改良し、接着剤組成物を被着体上に塗布した後、該接着剤組成物を紫外線、可視光線あるいは電子線等の放射線で網状化し、さらに、未加硫ゴムを圧着させながら加熱することにより、ゴムから接着剤層に硫黄が移行し、硫黄架橋反応に伴う強固な接着が得られる接着方法を開示している。
【0003】
また、優れた接着力を得るためには被着体表面の少なくとも一部に活性エネルギー線架橋型接着剤組成物からなる第一接着剤層(アンダーコート層)を形成し、該接着剤層の表面に活性エネルギー線を照射した後その上に、前記第一接着層とゴム層との接着に優れた活性エネルギー線架橋型接着剤組成物からなる第二接着剤層を塗膜し、該接着剤層の表面に活性エネルギー線を照射した後、該接着剤層の表面に未加硫ゴム組成物シートを圧着しながら加硫処理することによって被着体とゴム層との接着が行なわれる。
この場合、特にポリエステルまたはアラミドをベースとする被着体は分子構造的に緻密であり、かつ官能基が少ないために、ゴムへの接着性が乏しく、アンダーコート層と被着体との密着性が低く、被着体とアンダーコート層の界面で剥離が発生する場合がある。被着体としてポリエステルまたはアラミドを用いた場合は、上述のように二層の接着層が必要であり、接着作業が煩雑となる。従って一層の接着剤を使用するのみで被着体であるポリエステル等とゴムとの更なる接着性の向上が望まれている。
【0004】
【特許文献1】特開昭55−145768号公報
【特許文献2】国際公開2002/094962号パンフレット
【特許文献3】特開2005−247954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況下で、一層の接着剤層を介するのみでポリエステルまたはアラミドをベースとする被着体との密着性及び被着体とゴムとの接着性を改善すると共に、接着作業性を改良した活性エネルギー線架橋型接着剤、接着方法及びそれを用いたゴム物品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有する両末端にメルカプト基を持つ化合物を特定量、接着剤層を形成する接着剤に配合することによってその目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1) (a)重量平均分子量500〜100,000の共役ジエン系オリゴマーと、その100質量部当り、(b)一般式(I)
【化1】

[式中、Xは含窒素複素環式基、A、A'及びA"は単結合あるいは、−O−、−S−、−NH−結合、R1は水素又はメチル基、R2は炭素数1〜12の二価の炭化水素基、R3、R'3及びR"3は単結合、あるいはヘテロ原子を介してXに結合してもよい炭素数1〜12の炭化水素基を示し、nは1〜3の整数、kは0〜2の整数、lは0〜2整数でありn+k+l≦1〜3であることを示す。]で表される構造を有する重合性化合物(メタ)アクリル系モノマーを5〜500質量部の割合、(c)活性エネルギー線重合性化合物を50〜1000質量部の割合で含み、かつ、硬化剤として(d)一般式(II)
【化2】

[式中、Bは炭素数2〜10のアルカンジイル基、R4、R5は少なくとも一方が炭素数1〜10のアルキル基で、残りが水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基、mは0〜2の整数、nは0又は1の整数]で表されるメルカプト基を2個有する化合物を0.1〜10質量部の割合で含有することを特徴とする活性エネルギー線架橋型接着剤、
(2) (a)成分の共役ジエン系オリゴマーが(メタ)アクリロイル基をもつ官能基を少なくとも1つ末端に有する変性共役ジエン系オリゴマーである上記(1)の活性エネルギー線架橋型接着剤、
(3) (c)成分が、(メタ)アクリル系モノマー及び/又はオリゴマーである上記(1)の活性エネルギー線架橋型接着剤、
(4) (c)成分が、単官能(メタ)アクリル系モノマー、2官能(メタ)アクリル系モノマー及び3官能以上の(メタ)アクリレート系のモノマーの中から選ばれた少なくとも一種である上記(3)に記載の活性エネルギー線架橋型接着剤、
(5) 被着体表面の少なくとも一部を請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤で被覆して接着剤層を形成し、該接着剤層に活性エネルギー線を照射した後、未加硫ゴムを該接着剤層に圧着しながら加硫処理し、被着体とゴムとを接着剤を介して接着することを特徴とする、ゴムと被着体との接着方法、
(6) 被着体がポリエステル系樹脂からなるものである上記(5)のゴムと被着体との接着方法、
(7) ポリエステル系樹脂がポリエチレンテレフタレートである上記(6)のゴムと被着体との接着方法、
(8) 未加硫ゴムがジエン系ゴムである上記(5)〜(7)いずれかの接着方法、
(9) 未加硫ゴムの加硫剤が硫黄である上記(5)〜(8)いずれかの接着方法、
(10) 上記(5)〜(9)いずれかの接着方法により得られたことを特徴とするゴム補強材、
(11) 上記(10)のゴム補強材を用いて製造されたことを特徴とするゴム物品、及び
(12) 上記(11)のゴム補強材を用いて製造されたことを特徴とするタイヤ、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、一層の接着剤層を介するのみでポリエステルまたはアラミドをベースとする被着体との密着性及び被着体とゴムとの接着性を改善すると共に、接着作業性を改良した活性エネルギー線架橋型接着剤、接着方法及びそれを用いたゴム物品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[活性エネルギー線架橋型接着剤]
本発明の上記接着剤は、必須成分として(a)重量平均分子量500〜100,000の共役ジエン系オリゴマー、(b)特定の重合性化合物(メタ)アクリル系モノマー、(c)特定の活性エネルギー線重合性化合物及び硬化助剤として(d)特定の両末端にメルカプト基を有する化合物を要する。
特に、被着体とゴムとの間に硬化助剤として(d)成分を接着剤に配合した一層の接着剤層を用いることによって、被着体との密着性を大幅に改善することができ、さらにゴムとの接着力を向上させることができる。
以下、上記必須成分について詳細に説明をする。
【0009】
<(a)成分:共役ジエン系オリゴマー>
(a)成分としての共役ジエン系オリゴマーは、共役ジエン単独重合体、共役ジエン共重合体、及びこれらの変性重合体を含む。共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられ、中でも1,3−ブタジエンが好ましい。共役ジエン共重合体としては、共役ジエン−芳香族ビニル共重合体が好ましい。芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン,α−メチルスチレンなどが挙げられ、中でもスチレンが好ましい。
また、これら共役ジエン系オリゴマーの主鎖は、硫黄と架橋反応の架橋部位となりやすい、アリル位に水素原子を有する炭素−炭素二重結合を、分子鎖内の単位として含むことが好ましい。本発明における上記共役ジエン系オリゴマーとしては、ポリイソプレン,ポリブタジエン,スチレン−ブタジエン共重合体,イソプレン−ブタジエン共重合体などが挙げられる。
【0010】
(a)成分の共役ジエン系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、接着剤の粘度が高くなり過ぎて加工困難にならない限りその上限に特に制限はないが、500〜100,000が好ましい。上記範囲内にあれば、接着剤の塗布が困難になることがなく、圧着した未加硫ゴムを加硫したときに充分な接着力が得られる。
また、上記(a)成分の共役ジエン系オリゴマーは、接着剤を配合する温度において液状、特に0℃以下でも液状であると作業性及び接着剤の混合工程が容易で好ましく、また50℃以上の温度でも液状でかつ蒸気圧が小さいことが好ましい。接着剤を配合する温度において液状でなくても、接着剤において上記(a)成分の共役ジエン系オリゴマーが液状になれば特に制限されない。
【0011】
さらに、(a)成分の共役ジエン系オリゴマーは、共役ジエン系重合体の末端にラジカル重合性の不飽和二重結合を有する官能基を導入した変性重合体を好ましく用いることができる。このような官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、アリル基などが挙げられる。変性重合体としては、ブタジエン重合体の末端に、(メタ)アクリロイル基、又は(メタ)アクリロイルオキシ基を導入したものが特に好ましい。このような変性重合体は市販品あるいは試供品として入手可能である。
市販品としては、例えばアクリロイル基(CH2=CHCO−)をブタジエン重合体の末端に導入したアクリル化ポリブタジエンとして、大阪有機化学工業(株)製の商標「BAC45」(ポリブタジエン部位のMw=2800,粘度=3.4Pa・s,ケン化価=約49)などが挙げられる。
また、例えば、下記化学式

で表されるメタクリル化ポリブタジエンとして、Ricon Resins INC.製の商標「RIACRYL3100」(Mw=5100,メタクリロイル(オキシ)基の個数=2/分子鎖);同社製の商標「RIACRYL3500」(Mw=6800,メタクリロイル基の個数=9/分子鎖);同社製の商標「RIACRYL3801」(Mw=3200,メタクリロイル(オキシ)基の個数=8/分子鎖)などが挙げられる。
(a)成分の共役ジエン系オリゴマーは、上記したものを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。接着剤中の(a)成分の共役ジエン系重合体の含有量は、15〜50質量%が好ましく、15〜35質量%がより好ましい。
【0012】
<(b)成分:重合性化合物(メタ)アクリル系モノマー>
(b)成分の重合性化合物である(メタ)アクリレートモノマーは、下記一般式(I)
【化3】

(式中、Xは含窒素複素環式基、A、A'及びA"は単結合あるいは、−O−、−S−、−NH−結合、R1は水素又はメチル基、R2は炭素数1〜12の二価の炭化水素基、R3、R'3及びR"3は単結合、あるいはヘテロ原子を介してXに結合してもよい炭素数1〜12の炭化水素基、nは1〜3の整数を示す。)で表される構造を有する。
一般式(I)において、Xで表される含窒素複素環式基は、後述の電子対供与性の含窒素複素環式化合物由来の基である。また、R2で表される炭素数1〜12の二価の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基、炭素数6〜12のアリレーン基、炭素数7〜12のアラルキレン基を挙げることができる。
ここで、アルキレン基としては、炭素数2〜5の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、例えばエチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基などが挙げられる。炭素数5〜12のシクロアルキレン基としては、例えばシクロペンチレン基、各種シクロへキシレン基が、炭素数6〜12のアリーレン基としては、各種フェニレン基、各種トリレン基等が、炭素数7〜12アラルキレン基としては、例えば各種ベンジレン基、各種フェネチレン基等が挙げられる。
これらの中で、炭素数2〜5の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基が好ましい。
3、R'3及びR"3のうち炭素数1〜12の二価の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基、炭素数6〜12のアリレーン基、炭素数7〜12アラルキレン基を挙げることができる。
ここで、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種へキシレン基などが挙げられる。炭素数6〜12のアリレーン基、及び炭素数7〜12のアラルキレン基は、前記R2の場合と同様である。
一般式(I)で示される重合性化合物のA、A'及びA"は、−O−が好ましく、R1は高い光硬化性を示す観点から水素原子であることが好ましい。
【0013】
次に、一般式(I)で表される重合性化合物は、 下記一般式(III)
【化4】

(式中、Xは含窒素複素環式基、R3は単結合、あるいはヘテロ原子を介してXに結合してもよい炭素数1〜12の炭化水素基、D、D'及びD"は水酸基、メルカプト基、アミノ基又はカルボキシル基、nは1〜3の整数、kは0〜2の整数、lは0〜2整数でありn+k+l≦1〜3であることを示す。)で表される複素環式化合物と、下記一般式(IV)
【化5】

(式中、R6は水素原子又はメチル基、R7は炭素数1〜12の二価の炭化水素基を示す。)で表されるイソシアネート基含有アクリル系化合物とを反応させることによって得ることができる。
前記一般式(III)で表される含窒素複素環式化合物(a)は電子対供与性の塩基性化合物であって、不対電子を有する窒素原子を含む化合物であれば特に制限はなく、酸素、硫黄などの他のヘテロ原子を含んでよい。また、単環式化合物であって複環式化合物であってもよい。
【0014】
単環式で窒素のみを含有する含窒素複素環式化合物としては、アジリン、アゼート、アゼチジン、1H−ピロール、2H−ピロール、ピロリジン、2−イミダソリン、3−イミダソリン、1,2,3−トリアゾール、ピラゾール、イミダゾール、1−ピラゾリン、3−ピラゾリン、ピペリジン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,5トリアジン、1,2,4トリアジン、1H−アゼピン、2H−アゼピン、3H−アゼピン、4H−アゼピン、等が挙げられる。
【0015】
また、複環式で窒素のみを含有する含窒素複素環式化合物としては、インドール、ベンズイミダゾ−ル、プリン、カルバゾール、β−カルボリン、キノリン、イソキノリン、シノリン、ペテリジン、アクリジン、フェナトリジンリン、キノキサリン、フタラジン等が挙げられる。
【0016】
単環式で窒素およびその他のヘテロ原子を含有する含窒素複素環式化合物としては、3−オキサゾリン、2−オキサゾリン、4−オキサゾリン、オキサゾール、イソオキサゾール、1,3,4オキサジアゾール、1,4−オキサジン、モルホリン、2−チアゾリン、3−チアゾリン、4−チアゾリン、1,2,3−チアジオソール、チアゾール、イソチアゾール、1,4−チアジン、1,4チアザン等が挙げられる。
【0017】
複環式で窒素およびその他のヘテロ原子を含有する含窒素複素環式化合物としては、
ベンズオキサゾール、1H−Furo[3,4−c]ピラゾール、フェノキサジン、ベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0018】
また、一般式(IV)で表されるイソシアネート基含有アクリル系化合物のイソシアネート基と反応させるために、一般式(III)で示される含窒素複素環式化合物は、Dとして活性水素を有する水酸基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基等の少なくともいずれか1つの官能基が導入されている必要がある。上記官能基とイソシアネートは夫々次のような反応が行なわれ、1分子内に光重合可能な(メタ)アクロイル基と電子対供与性の塩基性化合物である含窒素複素環式基を持った本発明の化合物を得ることができる。
イソシアネートは、通常、常温・常圧で容易に種々の活性水素を有する官能基と反応する。上記官能基の中で水酸基が好ましい。また、官能基は通常、R3を介して含窒素複素環に結合していることが好ましいが、上記官能基が直接含窒素複素環と結合していてもよい。中でも、R3、R'3及びR"3はメチレン基又はエチレン基であることが好ましい。
【0019】
水酸基が導入された含窒素複素環式化合物としては、例えば、2−ピリジルメタノール、3−ピリジルメタノール、4−ピリジルメタノール、2−クロロ−5−ヒドロキシメチルピリジン、2−ヒドロキシピリジンメタノール、4−メチル−5−(2−ヒドロキシエチル)チアゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、2−ブチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、4−メチル−5−ヒドロキシピリジン、8−ヒドロキシキノリン、4−ヒドロキシピペリジンなどが挙げられる。中でも4−ピリジルメタノールが好ましい。
【0020】
また、アミノ基が導入された含窒素複素環式化合物としては、3−アミノメチルピリジン、2−アミノ−5−アミノメチルピリジン、3−アミノメチル−6−クロロピリジン、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2−アミノ−4,6−ジメトキシピリジン、2−アミノチアゾール等が挙げられる。
さらに、メルカプト基が導入された含窒素複素環式化合物としては、2−メルカプトベンズイミダゾール、メルカプトベンズチアゾール等があげられる。
【0021】
また、カルボキシル基が導入された含窒素複素環式化合物としては、2−ピリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、2,3−ピリジンジカルボン酸、キノリンカルボン酸、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、2,4−ジアルキルイミダゾール−5−ジチオカルボン酸等が挙げられる。
水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の複数の官能基が導入された含窒素複素環式化合物としては、4−ヒドロキシピリジン−2,6−ジカルボン酸、6−ヒドロキシニコチン酸アミド、6−アミノニコチン酸等があげられる。
【0022】
前記一般式(III)で示されるイソシアネート基含有アクリル系化合物の具体的な例として、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、3−アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、3−メタクロイルオキシプロピルイソシアネートなどが挙げられる。これらの中で2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクロイルオキシエチルイソシアネートは昭和電工社製の商品名「カレンズAO1」及び「カレンズMO1」として入手することができる。
これらイソシアネート基を有する(メタ)アクリルモノマーの配合量は前記官能基を有する含窒素複素環式化合物に対して1倍当量〜3倍当量が好ましく、さらに好ましくは1倍当量〜1.5倍当量である。
【0023】
さらに、触媒として(R82Sn[OC(=O)R92で代表されるスズ化合物を前記オリゴマーに対して0.001〜1質量%加えることによって反応時間を短縮することができ好ましい。ここでR6は炭素数1〜6のアルキル基、または置換基を有してもよいフェニル基で、R7は炭素数1〜23のアルキル基を表す。触媒の代表的な例としてジ−n−ブチルスズジラウレートが挙げられる。
なお、反応に用いられる溶媒としては不活性であれば特に制約はないが。トルエン、キシレン等が取り扱い上好ましい。
尚、反応温度は、通常室温〜100℃、反応時間は、通常5分〜10時間程度で行なわれる。
以上の工程を経て、1分子内に光重合可能な(メタ)アクロイル基と電子対供与性の塩基性化合物である含窒素複素環式基を持った(b)成分の重合性化合物である(メタ)アクリレートモノマーを得ることができる。(b)成分は、前記(a)成分100質量部当り、5〜500質量部の割合で配合することが必要であり、好ましくは、25〜35質量部の範囲で配合することが望ましい。
1分子内に光重合可能な(メタ)アクロイル基と電子対供与性の塩基性化合物である含窒素複素環式基を持った(b)成分を上記範囲で用いた接着剤は、光重合性が改善されると共に、接着剤に活性エネルギー線を照射した後、これを未加硫ゴムと圧着して加硫することにより、ゴムと被着体との間に優れた接着力が得られる。
【0024】
<(c)成分:活性エネルギー線重合性化合物>
(c)成分の活性エネルギー線重合性化合物は、(c−1)種々の表面特性を有する被着体とゴムとの接着性を改良するために被着体との溶解度パラメーター(SP値)調整剤として、(c−2)接着剤の塗布作業を容易にするために粘度調整剤として、(c−3)接着力を向上させるために架橋性アクリレートとして用いられる。
(c)成分の活性エネルギー線重合性化合物としては(メタ)アクリル系モノマー及び/又はオリゴマーであることが好ましい。
前記アクリル系オリゴマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、シリコーンアクリレート系などが挙げられる。ここで、ポリエステルアクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシアクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシアクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができ、ポリオールアクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0025】
また、アクリレート系オリゴマーとしては、前述の(a)成分のポリブタジエンオリゴマーの側鎖にアクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエンアクリレート系オリゴマーの他に、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンアクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂アクリレート系オリゴマーなどがある。
アクリレート系オリゴマーの重量平均分子量は、GPC法で測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の値で、好ましくは500〜100,000、より好ましくは1,000〜70,000さらに好ましくは3,000〜40,000の範囲で選定される。
これらのオリゴマーはその用途について限定はないが特に(c−1)成分として、種々の表面特性を有する被着体とゴムとの接着性を改良するために用いられる。このような特性を有する活性エネルギー線重合性化合物は上記オリゴマーに限定されず(メタ)アクリル系モノマーの中から選択して用いることができる。
【0026】
本発明において、分子構造的に緻密であり、かつ官能基が少ない、ポリエステルまたはアラミドをベースとする被着体とゴムとの接着性を接着剤層一層のみで改善するためには
特に(c−1)成分の活性エネルギー線重合性化合物としてエポキシ基含有オリゴマー及びビスフェノ−ル化合物を接着剤に配合することが好ましい。
【0027】
<エポキシ基含有オリゴマー>
エポキシ基含有オリゴマーとしては、加熱により架橋し、接着剤に延性と強靭性とを付与できるものであれば特に制限はなく、例えば、フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物にエポキシ基又は(メタ)アクリル基を導入したノボラック型フェノール類樹脂などが好ましく、具体的には、エポキシノボラックアクリレート(商標「ENA」:香川ケミカル(有)製)、エポキシ基とカルボキシ基を含むノボラックアクリレート(商標「ENC」:香川ケミカル(有)製)などが挙げられる。
【0028】
エポキシ基含有オリゴマーは、光重合性官能基を有する希釈剤と併用することが好ましい。このような希釈剤としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリルモノマー;ポリオール化合物と有機ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるポリウレタン(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。なかでも、(メタ)アクリルモノマーが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレートがより好ましい。イソボルニル(メタ)アクリレートは、商標「IBXA」:共栄社化学(株)製などの市販品として入手することができる。希釈剤は、上記したものを単独で又は2種以上を混合して用いることができる
【0029】
接着剤中のエポキシ基含有オリゴマーと希釈剤との合計含有量は、5〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましく、10〜20質量%がさらに好ましい。また、エポキシ基含有オリゴマーと希釈剤との質量比は、20:80〜80:20が好ましく、30:70〜70:30の範囲がより好ましい。
【0030】
<ビスフェノール化合物>
ビスフェノール化合物としては、ビスフェノール骨格を有するものであれば特に制限はないが、下記一般式(V)で表されるビスフェノール骨格を有することが好ましい。
【0031】
【化6】

【0032】
式中、R10、R11は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、複数のR10、R11は同じでも異なっていてもよい。当該アルキル基は直鎖でも分岐でもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、イミノ基、アミド基、カルボキシル基などが挙げられる。R7としては、水素原子、メチル基が好ましい。
【0033】
さらに、ビスフェノール化合物としては、上記のビスフェノール骨格を有する、下記一般式(VI)で表される化合物が好ましい。
【0034】
【化7】

【0035】
式中、R13は炭素数2〜5のアルカンジイル基を示し、複数のR13は同じでも異なっていてもよい。当該アルカンジイル基は直鎖でも分岐でもよく、置換基を有していてもよい。q及びtは各々独立して1〜5の整数を示し、1〜3が好ましく、q+t=4であることが好ましい。また、R12は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し及びsは1〜3の整数である。
【0036】
上記一般式(VI)で表されるビスフェノール化合物は、市販のものを用いてもよく、エトキシ化ビスフェノールFジアクリレート(商標「KAYARAD R−712」:日本化薬(株)製)、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(商標「KAYARAD R−551」:同社製)、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(商標「SR−348」,商標「SR−480」,商標「SR9036」:いずれもSARTOMER社製)、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(商標「ビームセット750」:荒川化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0037】
ビスフェノール化合物は、上記したものを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。接着剤中のビスフェノール化合物は、接着性の観点から、1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。
【0038】
<粘度調整剤>
(c−2)成分の粘度調整剤としては、紫外線又は放射線照射によりラジカル重合が可能な官能基を1又は2個有する単官能又は2官能性液状化合物であることが好ましい。このような化合物としては、分子中にアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を1又は2個有するポリオキシアルキレン誘導体が好ましい。
単官能のアクリル系モノマーとしては、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートなどのアクリレート類が挙げられる。
2官能のアクリル系モノマーとしては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0039】
このような粘度調整剤は市販品として入手可能であり、単官能の化合物としては、例えば、式

で表されるフェノキシポリエチレングリコールモノアクリレート(新中村化学工業(株)製;商標「AMP−60G」,商標「APG−400」),テトラヒドロフルフリルモノアクリレート(SARTOMER社製,商標「SR−285」),イソオクチルモノアクリレート(SARTOMER社製,商標「SR−440」)などが挙げられる。また、2官能の低分子化合物としては例えば、

(式中、m+n=7)で表されるポリプロピレングリコールジアクリレート(新中村化学工業(株)製,商標「APG−400」),ポリプロピレングリコールジメタクリレート(同社製,商標「9PG」)などが挙げられる。
さらに、加工上必要に応じて、ラジカル反応性を有する低粘度液体を適宜混合することもできる。
粘度調整剤は、上記したものを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。接着剤中の粘度調整剤の含有量は、接着剤の良好な塗工性を確保する観点から、3〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましい。
尚、接着剤の好ましい粘度は、2000mPa・s以下である。
【0040】
<架橋性アクリレート>
(c−3)架橋性アクリレートは、紫外線又は放射線照射により架橋するものであれば制限ないが、紫外線又は放射線照射により架橋可能な官能基を1分子中に3個以上、好ましくは3〜8個を有する化合物である。当該官能基としては、(メタ)アクリロイル基、及び下記一般式(VII):
【0041】
【化8】

【0042】
〔式中、R12、R13及びtは前記と同じである。〕で表される官能基が好ましく、なかでも一般式(VII)で表される官能基がより好ましい。
(メタ)アクリロイル基を3個以上有する架橋性アクリレートとしては、例えば、3価以上の多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのエステルが挙げられる。当該多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが好ましく用いられる。また、一般式(VII)で表される官能基を3個以上有する化合物は、市販品として入手可能なものとして、例えば、式

ペンタエリスリトールポリエトキシアクリレート(商標「KAYARAD THE−330」:日本化薬(株)製)、ペンタエリスリトールポリプロポキシアクリレート(商標「KAYARAD TPA−320」,商標「KAYARAD TPA−330」:いずれも日本化薬(株)製)や、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(商標「ビームセット700」:荒川化学工業(株)製)、ペンタエリスリトールポリアクリレート(商標「ビームセット710」:同社製)などが挙げられる。
【0043】
架橋性アクリレートは、上記したものを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。接着剤中の架橋性アクリレートの含有量は、良好な接着力を得る観点から、5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましい。
【0044】
本発明の接着剤は、(c)成分の活性エネルギー線重合性化合物を共役ジエン系オリゴマー100質量部に対して、50〜1000質量部の割合で含む必要がある。好ましくは、200〜300質量部の範囲である。
活性エネルギー線重合性化合物を上記範囲にて含むことによって、接着剤が液状であることを維持し被着体への塗布性に優れると共に、良好な接着性を得ることができる。
【0045】
<d成分:両末端にメルカプト基を有する化合物>
さらに本発明の接着剤は、硬化助剤として(d)成分である一般式(II)
【0046】
【化9】

【0047】
[式中、Bは炭素数2〜10のアルカンジイル基、R4、R5は少なくとも一方が炭素数1〜10のアルキル基で、残りが水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基、mは0〜2の整数、nは0又は1の整数]で表される両末端にメルカプト基を有する化合物を共役ジエン系オリゴマー100質量部に対して0.1〜10質量部の割合で含有することが必要である。(d)成分の含有量を上記範囲にすることによってポリエステル等の被着体との密着性を改善すると共に、酸素による硬化阻害を抑制するなど、本発明の優れた効果を奏することができる。
【0048】
本発明においては、メルカプト基含有カルボン酸と2価のアルコール類のエステルであるのが好ましい。
HO−B−OHの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2ブタンジオール、1,3ブタンジオール、2,3ブタンジオール、テトラメチレングリコール、1,6ヘキサンジオール、1,8オクタンジオール等が挙げられる。
【0049】
(d)成分の具体的な例としては、エチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、プロピレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、1,4ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、オクタンジオールビス(3−メルカプトブチレート)、エチレングリコールビス(2−メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールビス(2−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(2−メルカプトプロピオネート)、オクタンジオールビス(2−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトイソブチレート)、プロピレングリコールビス(3−メルカプトイソブチレート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトイソブチレート)、オクタンジオールビス(3−メルカプトイソブチレート)、エチレングリコールビス(2−メルカプトイソブチレート)、プロピレングリコールビス(2−メルカプトイソブチレート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビス(2−メルカプトイソブチレート)、オクタンジオールビス(2−メルカプトイソブチレート)、エチレングリコールビス(4−メルカプトバレレート)、プロピレングリコールビス(4−メルカプトイソバレレート)、ジエチレングリコールビス(4−メルカプトバレレート)、ブタンジオールビス(4−メルカプトバレレート)、オクタンジオールビス(4−メルカプトバレレート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトバレレート)、プロピレングリコールビス(3−メルカプトバレレート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトバレレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトバレレート)、オクタンジオールビス(3−メルカプトバレレート)等が例示される。
これらの(d)成分は単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
本発明の活性エネルギー線架橋型接着剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、密着性向上のための、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系炭化水素、ロジン誘導体等の各種粘着付与剤、チタンブラック等の着色剤、シリカ等の無機充填材を添加することができる。
【0051】
<光重合開始剤>
本発明の活性エネルギー線架橋型接着剤は、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤は、活性エネルギー線として、紫外線、可視光線などの活性光を使用する場合に用いられる。
光重合開始剤としては、2,4−ジエチルチオキサントン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル類(ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが例示される)、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジル、ジアセチル、ジフェニルスルフィド、エオシン、チオニン、9,10−アントラキノン、2−エチル−9,10−アントラキノンなどが挙げられる。なかでも、2,4−ジエチルチオキサントン(例えば商標「KAYACURE DETX−S」:日本化薬(株)製)やp−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル(商標「KAYACURE DMBI」同社製)が好ましい。
【0052】
光重合開始剤は、上記したものを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。共役ジエン系重合体(a)100質量部あたり、0.1〜10質量部配合することが好ましい。
【0053】
<被着体>
本発明において、ゴムと接着される被着体の材質は特に限定されるものでないが、熱可塑性プラスチックスが好ましい。熱可塑性プラスチックスとしては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン;ポリカーボネート、ポリアクリレート、ABS樹脂等のスチレン系樹脂;塩化ビニル樹脂などが挙げられるが、これらの中では、機械的強度が高く、かつ通常の方法ではゴムとの接着が比較的困難なポリエステルが特に好ましい。
また、本発明で用いられるプラスチック被着体の形態は、フイルム、繊維、不織布、モノフィラメントコード、マルチフィラメントコードのいずれでもよく、押出成形品や射出成形品でもよい。
【0054】
[接着方法]
本発明の接着剤を用いた接着方法においては、先ず被着体表面の少なくとも一部、例えばシート状被着体の一方の面に、浸漬、はけ塗り、流延、噴霧、ロール塗布、ナイフ塗布などにより上記接着剤の塗膜を形成する。かかる被着体表面は、予め電子線、マイクロ波、コロナ放電、プラズマ処理等の前処理加工されたものでもよい。接着剤層の厚みは0.5〜50μmが好ましく、1〜10μmが特に好ましい。
次に、このようにして形成された接着剤層は、活性エネルギー線が公知の方法にて照射される。ここで、活性エネルギー線とは、紫外線、可視光レーザー等の可視光線の活性光をいう。電子線、α線等の荷電粒子線、非荷電粒子線である中性子線やX線、ガンマ線等の電離放射線は本発明に係る活性エネルギー線には含まれない。活性エネルギー線の中では、紫外線が好ましい。一般に、紫外線照射の場合、照射量は100〜3000mJ/cm2であり、照射時間は1〜30秒である。活性エネルギー線照射は、空気雰囲気下で行ってもよいが、照射効果を低下させないために、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等が好ましく、取り扱いの簡便さ、コスト等から窒素が特に好ましい。
次いで、未加硫ゴム組成物シートを接着剤層に好ましくは0.5〜5MPaの圧力で圧着しながら好ましくは140〜190℃で好ましくは10〜30分間加熱することにより、接着剤組成物の共役ジエン系重合体(a)とゴムとの間で共加硫反応が生じ、接着剤組成物とゴムとの間の強力な接着力が得られる。
【0055】
[未加硫ゴム]
<ゴム成分>
本発明において用いられるゴム成分は特に限定されるものではなく、例えば天然ゴム;ポリイソプレン合成ゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)等の共役ジエン系合成ゴム;エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)、ポリシロキサンゴムなどか挙げられるが、これらの中では天然ゴム及び共役ジエン系合成ゴムが好ましい。また、ゴムは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
<加硫系>
これらのゴムの加硫は、例えば硫黄;テトラメチルチラリウムジスルフィド、ジペンタメチレンチラリウムテトラサルファイドなどのチラリウムポリサルファイド化合物;4,4−ジチオモルフォリン;p−キノンジオキシム;p,p’−ジベンゾキノンジオキシム;環式硫黄イミド;過酸化物を加硫剤として行うことができるが、好ましくは硫黄である。
また、ゴムには、前記の配合成分以外に通常ゴム業界で用いられるカーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム等の充填剤加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤などの各種配合剤を、適宜配合することができる。さらに、各種材質の粒子、繊維、布などとの複合体としてもよい。
【実施例】
【0057】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
下記の方法により、活性エネルギー線反応性架橋型接着剤を調整し、ゴムと被着体との複合体を作成し、各テストを行った。
【0058】
実施例1ならびに比較例1、2及び3
実施例1
第1表に示す配合組成にしたがって接着剤を調製し、硬化助剤として昭和電工社製カレンズ「MT BD1」[1,4−ビス(3−メルカプトブチルオキシ)ブタン]を接着剤組成物に添加した。一方、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート基材(厚さ100μm)のコロナ放電処理面に対し、1分間オゾン処理を行った。このポリエチレンテレフタレート被着体のオゾン処理面に第1表に示す実施例1の接着剤をバーコーター#3で厚さ10μmに塗工しメタルハライドランプ(3kW)を装備した紫外線照射装置にて1000mJ/cm2の紫外線を照射し、硬化塗膜を調製した。
【0059】
比較例1
第1表に示す配合組成にしたがって接着剤を調製し、硬化助剤を配合しなかった以外は実施例と同様に行い、硬化塗膜を調製した。
【0060】
比較例2
第1表に示す配合組成にしたがって接着剤を調製し、硬化助剤として昭和電工社製カレンズ「MT PE1」[ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)]を接着剤組成物に添加したこと以外は実施例1と同様に行い、硬化塗膜を調製した。
【0061】
比較例3
第1表に示す配合組成にしたがって接着剤を調製し、硬化助剤として昭和電工社製カレンズ「MT NR1」[1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H)−トリオン]を接着剤組成物に添加したこと以外は実施例1と同様に行い、硬化塗膜を調製した。
【0062】
(1)ポリエステルコードゴム複合体
連続工程において、撚り構造が1500d/2、下撚り数が39回/10cm、上撚り数が39回/10cmのポリエチレンテレフタレート製のタイヤコードを表1に示す組成の接着剤に浸漬し、スクィールロールを通過させて過剰の接着剤を除去した後、UV照射(1000mJ/cm2)により硬化させて接着剤を形成した。
接着剤層を形成したポリエチレンテレフタレートコードを表2に示される配合組成の未加硫ゴムシート(厚さ2.3mm)に埋め込み、圧力1.5MPa、加硫温度160℃、加硫時間20分で加硫しポリエステルコードゴム複合体を得た。
【0063】
(2)ポリエステルコード−ゴム複合体の接着性評価
上記ポリエステルコードゴム複合体からポリエステルコードを引き起こし、ゴムとポリエステルコード剥離試験(T型、180℃剥離、引張速度300mm/min)を行い剥離強度(N/本)を求めた評価結果を第1表に示す。
【0064】
(3)ポリエチレンテレフタレート基材への密着性評価方法
密着性についてはJIS K5400碁盤目セロファンテープ試験により評価した。実施例1及び比較例1〜3で調製した、ポリエチレン基材上の硬化塗膜(接着剤)にカッターナイフで1mm間隔の切り込みを入れ、セロファンテープを貼り付けた後、剥離し、剥離数/全碁盤目数(100個)で比較した。評価結果を第1表に示す。
【0065】
合成例1(ピリジンメタクリレートの合成)
コンデンサーを具備する500mlの丸底フラスコに、溶媒としてトルエン250gを仕込み、4−ヒドロキシメチルピリジン(東京化成工業(株)製)0.005gを溶解させた。次いで、2−メタリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名「カレンズMOI」:昭和電工(株)製)142.3gを加えた。スターラー付ウォーターバス中で、65℃の温度で加熱攪拌を1.5時間行った。加熱攪拌後、冷却し、減圧蒸留によりトルエンを除去することで、ピリジンメタクリレート239.7gを得た。
【0066】
【表1】

*1.共役ジエン系オリゴマー:アクリル化ポリブタジエン(商標「BAC45」:大阪有機化学工業(株)製,ポリブタジエンブイの重量平均分子量:2800,粘度:3.4Pa・s,ケン価化:約49)
*2.重合成化合物:ピリジンメタクリレート(合成例にて合成したものを用いた。)
*3.エポキシ含有オリゴマー:エポキシノボラックアクリレート(商標「ENA」:香川ケミカル(有)製)
*4.希釈剤:イソボルニルアクリレート(商標「IBXA」:共栄社化学(株)製)
*5.ビスフェノール化合物:エトキシ化ビスフェノールFジアクリレート(商標「KAYARAD R−712」:日本化薬(株)製)
*6.粘度調整剤:フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート(商標「AMP−60G」:新中村化学工業〔株〕製)
*7.粘度調整剤:ポリプロピレングリコールジアクリレート(商標「APG−400」:新中村化学工業(株)製)
*8.架橋性アクリレート:ペンタエリスリトールポリエトキシアクリレート(商標「KAYARAD THE−330」:日本化薬(株)製)
*9.硬化助剤:1,4−ビス(3−メルカプトブチルオキシ)ブタン(商標「カレンズMT BD1」:昭和電工(株)製)
*10.硬化助剤:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(商標「カレンズMT PE1」:昭和電工(株)製)
*11.硬化助剤:1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H)−トリオン(商標「カレンズMT NR1」:昭和電工(株)製)
*12.光重合開始剤:2,4−ジエチルチオキサントン(商標「KAYACURE DETX−S」:日本化薬(株)製)
表1から実施例1で得られた接着剤は、被着体との密着性、接着性ともに優れた性能を有していることがわかる。
【0067】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の活性エネルギー線架橋型接着剤は、一層の接着剤層を介するのみでポリエステルまたはアラミドをベースとする被着体との密着性及び被着体とゴムとの接着性を改善すると共に、接着作業性を改良した活性エネルギー線架橋型接着剤、接着方法及びそれを用いたゴム物品を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)重量平均分子量500〜100,000の共役ジエン系オリゴマーと、その100質量部当り、(b)一般式(I)
【化1】

[式中、Xは含窒素複素環式基、A、A'及びA"は単結合あるいは、−O−、−S−、−NH−結合、R1は水素又はメチル基、R2は炭素数1〜12の二価の炭化水素基、R3、R'3及びR"3は単結合、あるいはヘテロ原子を介してXに結合してもよい炭素数1〜12の炭化水素基を示し、nは1〜3の整数、kは0〜2の整数、lは0〜2の整数でありn+k+l≦1〜3であることを示す。]で表される構造を有する重合性化合物(メタ)アクリル系モノマーを5〜500質量部の割合、(c)活性エネルギー線重合性化合物を50〜1000質量部の割合で含み、かつ、硬化助剤として(d)一般式(II)
【化2】

[式中、Bは炭素数2〜10のアルカンジイル基、R4、R5は少なくとも一方が炭素数1〜10のアルキル基で、残りが水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基、mは0〜2の整数、nは0又は1の整数]で表されるメルカプト基を2個有する化合物を0.1〜10質量部の割合で含有することを特徴とする活性エネルギー線架橋型接着剤。
【請求項2】
(a)成分の共役ジエン系オリゴマーが(メタ)アクリロイル基をもつ官能基を少なくとも1つ末端に有する変性共役ジエン系オリゴマーである請求項1に記載の活性エネルギー線架橋型接着剤。
【請求項3】
(c)成分が、(メタ)アクリル系モノマー及び/又はオリゴマーである請求項1に記載の活性エネルギー線架橋型接着剤。
【請求項4】
(c)成分が、単官能(メタ)アクリル系モノマー、2官能(メタ)アクリル系モノマー及び3官能以上の(メタ)アクリレート系のモノマーの中から選ばれた少なくとも一種である請求項3に記載の活性エネルギー線架橋型接着剤。
【請求項5】
被着体表面の少なくとも一部を請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤で被覆して接着剤層を形成し、該接着剤層に活性エネルギー線を照射した後、未加硫ゴムを該接着剤層に圧着しながら加硫処理し、被着体とゴムとを接着剤を介して接着することを特徴とする、ゴムと被着体との接着方法。
【請求項6】
被着体がポリエステル系樹脂からなるものである請求項5に記載のゴムと被着体との接着方法。
【請求項7】
ポリエステル系樹脂がポリエチレンテレフタレートである請求項6に記載のゴムと被着体との接着方法。
【請求項8】
未加硫ゴムがジエン系ゴムである請求項5〜7のいずれかに記載の接着方法。
【請求項9】
未加硫ゴムの加硫剤が硫黄である請求項5〜8のいずれかに記載の接着方法。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれかに記載の接着方法により得られたことを特徴とするゴム補強材。
【請求項11】
請求項10に記載のゴム補強材を用いて製造されたことを特徴とするゴム物品。
【請求項12】
請求項11に記載のゴム補強材を用いて製造されたことを特徴とするタイヤ。

【公開番号】特開2009−256465(P2009−256465A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106937(P2008−106937)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】