説明

活性エネルギー線硬化型インキ印刷方法

【課題】黄、紅、藍、墨、緑の5色からなる活性エネルギー線硬化型インキ組成物であって、高彩度の色再現性に優れた活性エネルギー線硬化型インキ組成物の提供。
【解決手段】黄インキ、紅インキ、藍インキ、緑インキのうちいずれか2つ、3つ又は4つ、ならびに墨インキを使用する活性エネルギー線硬化型インキの印刷において、黄、紅、藍、緑の4色がジスアゾイエロー系化合物を顔料成分とする黄インキと、ローダミン系染料の金属レーキ化合物を顔料成分とする紅インキと、フタロシアニン系化合物を顔料成分とする藍インキと、ハロゲン化フタロシアニン系化合物を顔料成分とする緑インキとの組み合わせからなる活性エネルギー線硬化型インキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黄、紅、藍、墨、緑の5色からなる活性エネルギー線硬化型インキ組成物であって、高彩度の色再現性に優れた活性エネルギー線硬化型インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
90年代より始まったIT革命は、印刷現場を取り巻く環境を著しくデジタル化の方向へと導いてきており、このデジタル化によって、従来の印刷方式のワークフロー(撮影・ポジ・スキャン・データ・デザイン・EPS・面付け・フィルム・刷版・印刷)が多段階式過程であったのに対し、デジタルカメラによる撮影・DTP・CTP・印刷とその過程を飛躍的に短縮することに成功した。それによって、入稿データの「RGB」化が標準化しつつあり、取り扱われるデータがより色再現領域の広いものへとシフトしつつあるのが現状である。
【0003】
しかし、現在主流となっている黄、紅、藍、墨のプロセス4色(CMYK)からなる平版オフセット印刷では、減色混合による色相となるため、色を重ねるごとに色相に濁りが生じ、必然的に色再現領域がRGBのそれよりも狭いものとなりデジタルデータと印刷物との間の色再現性の差異が問題となっていった。特に、印刷の最終色として印刷されることが一般的な黄インキが不透明であると黄かぶり現象を起こし、下刷りのインキ各色へ与える影響が大きい為、黄インキはできる限り透明であることが望ましく、他の色と刷り重ねた時に、濁りのない二次色、三次色が得られることが望ましい。
【0004】
これを解決する手段として、一般の平版オフセット印刷においては、特許文献1では高彩度の印刷システムとして6〜7色のインキセットを使用する印刷方法が確立され、それぞれの特定した色相を持つインキセットを用いる印刷方法として、プロセス4色に橙、緑を加えた6色(ヘキサクロム印刷)やプロセス4色に橙、緑、紫を加えた7色(ハイファイ印刷)等が確立されている。また、ヘキサクロムインキに代表されるように、一次色のみならず、二次色、三次色の濁りを抑え、色再現領域を広げる手段として一部の色に蛍光顔料を含有させる等の手法もとられるが、印刷適性の劣化(転移不良、光沢低下等)や耐光性不足による印刷物の褪色等のデメリットもある。更に、使用するインキの色数が6色、7色となり、印刷機の胴数が6胴以上の高価な多色印刷機を必要とする事に加え、それと同数の多色分解した版数が必須条件となり、新たに始めるには巨額な設備投資と、色調管理の複雑化などで本システムを用いるには限られた範囲に止まっている。また、同様の試みは近年、紫外線硬化型インキでも検討されている。
【特許文献1】特開2001−260516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の技術における問題点を解決する為になされたものであり、その課題とするところは、ISO規格のジャパンカラー準拠インキよりも再現可能な演色領域(ガモット)に優れる黄、紅、藍、墨のプロセス4色に、更に緑インキを追加し、5色印刷を行うことで、「RGB」の色再現領域により近い色領域を再現可能にする活性エネルギー線硬化型インキを提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般的に、色再現領域を広げるためには、各色の理想的な分光反射率曲線に近づける必要がある。
【0007】
すなわち、人が色を認識する波長領域は400nm〜700nmの光(この波長を可視光線という)において、各インキの反射スペクトルは、黄インキでは、500nm〜700nmの波長領域での反射率が100%、400nm〜500nmの波長領域での反射率が0%であり、紅インキでは、400nm〜500nm、600nm〜700nmの波長領域での反射率が100%、500nm〜600nmの波長領域での反射率が0%であり、藍インキでは、400nm〜600nmの波長領域での反射率が100%、600nm〜700nmの波長領域での反射率が0%であることが理想であると言われている(理想の分光反射率曲線を図3に示す)。
【0008】
しかし、現状使用されているプロセス4色からなる、黄、紅、藍、墨の印刷用インキ組成物の反射スペクトルは理想の反射スペクトルとはかけ離れている。完全反射しなければならない部分での不必要吸収があるためにインキの濁り成分が存在し、色再現性を狭めている。
【0009】
すなわち本発明は、黄、紅、藍、墨、緑の5色からなる活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物において、黄、紅、藍、緑の4色がジスアゾイエロー系化合物を顔料成分とする黄インキと、ローダミン系染料の金属レーキ化合物を顔料成分とする紅インキと、フタロシアニン系化合物を顔料成分とする藍インキと、ハロゲン化フタロシアニン系化合物を顔料成分とする緑インキとの組み合わせからなる活性エネルギー線硬化型インキ組成物に関するものである。
【0010】
また、本発明は、ジスアゾイエロー系化合物として、C.I.ピグメントイエロー12またはC.Iピグメントイエロー13を5〜20%含有し、L*値6.0〜8.0の墨インキ上に1.40〜2.00の範囲で刷り重ねた場合のL*値が12.0を越えない透明性を有する上記記載の黄インキに関するものである。
【0011】
また、本発明は、ローダミン系染料の金属レーキ化合物として、C.I.ピグメントレッド81またはC.Iピグメントバイオレット1を15〜30%含有する上記記載の紅インキに関するものである。
【0012】
また、本発明は、フタロシアニン系化合物として、C.I.ピグメントブルー15:3またはC.I.ピグメントブルー15:4を10〜25%且つ、C.I.ピグメントグリーン7を0.5〜2.0%含有する上記記載の藍インキに関するものである。
また、本発明はハロゲン化フタロシアニン系化合物として、C.I.ピグメントグリーン7またはC.I.ピグメントグリーン36を15〜30%含有する上記記載の緑インキに関するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明が提供する活性エネルギー線硬化型インキ組成物を用いることにより、従来黄、紅、藍、墨プロセス4色に加えて、橙、緑、紫等を加えた6色、7色印刷で表現していたRGBの色再現領域を、黄、紅、藍、墨、緑の5色で再現することが可能になる。また、本発明では、印刷物の色再現領域を向上させる手段として蛍光顔料を使用していないため、印刷適性、印刷物の経時での褪色等を劣化させることなく、高彩度の印刷物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0015】
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0016】
本発明は、顔料と、合成樹脂、光重合開始剤、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、エチレン性不飽和二重結合を有するオリゴマーとを必要に応じて、アルミキレート等の顔料分散剤、耐摩擦剤等の補助剤を加え混合することで得られる黄、紅、藍、墨の4色からなる活性エネルギー線硬化型インキであって、ISO規格のジャパンカラー標準用紙、例えば三菱製紙(株)製「特菱アート両面四六版/110kg」に印刷し、黄、紅、藍の各色をグレタグマクベスD196濃度計にて測定した際の濃度値が、黄が1.40〜1.44、紅が1.52〜1.56、藍が1.63〜1.67、更に緑が藍濃度として1.60〜2.70の濃度範囲内(基準濃度値)であるときに単色及び各単色の刷り重ねのL*a*b*表色系による色度、及びC値が、黄インキで、L*:84〜92、好ましくは85〜90、a*:−3〜−11、好ましくは−4〜−9、b*:90〜100、好ましくは93〜99、C:92〜100、紅インキで、L*:48〜55、好ましくは49〜54、a*:77〜85、好ましくは78〜83、b*:−14〜−20好ましくは−16〜−20、C:80〜86、藍インキで、L*:52〜58、好ましくは52〜57、a*:−38〜−43、好ましくは−39〜−42、b*:−46〜−54、好ましくは−47〜−52、C:61〜66、緑インキでL*:50〜65、好ましくは50〜62、a*:−70〜−85、好ましくは−70〜−82、b*:−3〜5、好ましくは−3〜−3、C:70〜82、更には、紅インキ×黄インキの刷り重ねで、L*:50〜55、a*:69〜74、b*:54〜59、C:87〜94、藍インキ×紅インキの刷り重ねで、L*:17〜23、a*:51〜46、b*:−71〜−76、C:85〜91、藍インキ×緑インキの刷り重ねで、L*:33〜43、a*:−58〜−73、b*:−15〜−30、C:67〜73、黄インキ×緑インキの刷り重ねで、L*:46〜60、a*:−73〜−85、b*:40〜57、C:90〜95の範囲になることを特徴とする。
【0017】
さらに、これら(a)黄、(b)紅、(c)藍のそれぞれで単色100%ベタ刷り部分の分光反射曲線の反射スペクトルが、下記範囲条件をみたすインキに関する。
【0018】
(a)黄が、400nm〜700nmの波長領域において、全反射を100%としたときの相対反射強度が、400nm〜480nmの波長領域で0〜10%、550nm〜700nmの波長領域で80〜100%の反射スペクトルを有することを特徴とする黄インキ。
【0019】
(b)紅が、400nm〜700nmの波長領域において、全反射を100%としたときに、400nm〜500nmの波長領域での最大反射率が35%〜100%、500nm〜560nmの波長領域での反射率が0〜10%、630nm〜700nmの反射率が70%〜100%の反射スペクトルを有することを特徴とする紅インキ。
【0020】
(c)藍が、400nm〜700nmの波長領域において、全反射を100%としたときに、400nm〜530nmの波長領域の最大反射率が50〜100%、600nm〜700nmの反射率が0〜10%の反射スペクトルを有することを特徴とする藍インキ。
【0021】
色再現領域の表現方法としては、XYZ表色系(CIE1931表色系)、X10Y10Z10表色系(CIE1964表色系)、L*a*b*表色系(CIE1976)、ハンターLab表色系、マンセル表色系、L*u*v*表色系(CIE1976)等挙げられる。
L*a*b*表色系では、色相に関係なく比較できる明るさの度合いとして「明度」をL*で表現し、L*が大きくなるほど色が明るく、小さくなるほど暗くなることを示している。
【0022】
また、各色によって異なる「色相」をa*、b*の値で示し、a*は赤(+)から緑(−)方向、そしてb*は黄(+)から青(−)方向を示し、各方向とも絶対値が大きくなるに従って色鮮やかになり、0に近づくに従ってくすんだ色になることを示している。これによって一つの色を、L*、a*、b*を用いて数値化することが可能となる。また「明度」「色相」とは別に、鮮やかさの度合いを数値化する方法として「彩度(C)」があり、以下の計算式にて求めることができる。
【0023】
【数1】

【0024】
Cに関しても同様に、絶対値が大きくなるに従って色鮮やかになり、値が小さくなるにつれてくすんだ色になることを示している。
【0025】
一つの印刷物(印刷物以外のカラースペースも含む)で表現できる全ての色再現領域を演色領域(ガモット)と呼ぶが、ガモットを表す最も簡便な方法として、a*を横軸、b*縦軸とした2次元空間に、単色ベタ部(黄、紅、藍)、及び、単色ベタ刷り重ね部(黄×紅、紅×藍、藍×黄)計6色のa*対b*の値を、プロットした六角形の面積で表現することが可能である。ガモットの面積が広い程、色再現領域が広いことを示している。
【0026】
本発明で使用される黄インキに関し、L*値12.0〜14.0の範囲内で印刷した墨インキ上に、濃度1.40〜2.00の範囲で刷り重ねした場合のL*値が17を超えない透明性を有していれば、二次色、三次色の重ね刷りをした際の下刷りインキへの影響が少なく、良好な色再現領域を得ることができる。更には、補色としてC.I.ピグメントイエロー83を上記黄顔料の0.5〜10%、好ましくは2〜5%加えて使用することも可能である。
【0027】
本発明で使用される紅顔料としては、ローダミンB、ローダミン3G、ローダミン6Gなどのローダミン系染料のモリブデン、タングステン金属レーキ化合物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、補色としてC.I.ピグメントレッド48:1を上記紅顔料の0.01〜0.10%、好ましくは0.01〜0.05%加えて使用することも可能である。
【0028】
本発明で使用する藍顔料である銅フタロシアニン系化合物は、結晶多型(同質異晶)を示す物質であり、その結晶構造の違いによってα、β、γ、ε、π、τ、ρ、χ、R型などに分類されるが、結晶安定性、分散性が優れているβ型を使用することが好ましい。
【0029】
本発明においては、上記銅フタロシアニン化合物に対し、フタロシアニン分子のベンゼン環上の水素原子をハロゲン化合物で置換したハロゲン化銅フタロシアニン化合物を5〜15%より好ましくは8〜11%加えて使用することにより、藍インキ単色の色再現領域を損なうことなく、黄及び紅インキと刷り重ねた際の緑及び紫の色再現領域を広げることが可能になる。
【0030】
墨顔料としては、カーボンブラック、例えばC.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
【0031】
緑顔料としては、ハロゲン化されたフタロシアニン系化合物が挙げられる。最も多く使われているものは塩素化銅フタロシアニンであり、他に、塩素の代わりに臭素化したものや塩素と臭素を含むもの、また、銅を含まないものなどがある。具体的にはC.I.ピグメントグリーン7またはC.I.ピグメントグリーン36をインキの全重量に対して15〜30%好ましくは16〜25%含有することが好ましい。更に、これらの顔料は単独で用いても良いし、2種類以上組み合わせて用いることもできる。
【0032】
本発明に用いられる合成樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、石油樹脂、尿素樹脂、ブタジエンーアクリルニトリル共重合体のような合成ゴム等が挙げられる。これらの樹脂は、その中の1種または2種以上を用いることができる。何れもエチレン性不飽和ニ重結合を有するモノマー可溶である樹脂が用いられる。
【0033】
本発明において、モノマーとは単官能または多官能の(メタ)アクリレート類をいい、これらを適宜用いることでインキ組成物の粘度を調節することが出来る
本発明において使用されている オリゴマーとしてはアルキッドアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタン変性アクリレート等が使用されている
活性エネルギー線硬化型インキにはその硬化作用を促す成分として1種もしくは2種以上の光重合開始剤を適宜添加することができる。
【0034】
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ビス−2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンジル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。光重合開始剤と併用して、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、ペンチル4−ジメチルアミノベンゾエート等の光促進剤を使用してもよい。
【0035】
補助剤としては、例えば、耐摩擦剤、ブロッキング防止剤、スベリ剤、スリキズ防止剤としては、カルナバワックス、木ろう、ラノリン、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックス、フィッシャートロプスワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックスなどの合成ワックス、シリコーン添加剤、レベリング剤、体質等を適宜使用することができる。
【0036】
本発明における活性エネルギー線硬化型インキは、通常の印刷インキと同様に公知の印刷方法、例えばオフセット印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷にて印刷することができる。
【0037】
本発明で使用する活性エネルギー線としては、紫外線、電子線が挙げられる。しかし、これに限定される必要はない。
【実施例】
【0038】
次に具体例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら記載実施例に限定されるものではない。なお、以下の記述の部は重量部、%は重量%を表す。
(ワニス製造例)
ワニス製造例
ダップトートDT170(東都化成(株)製)30部を90℃〜100℃に加熱したDPHA(日本化薬(株)製)70部に投入し90℃〜100℃で1時間加熱溶解させ、ワニスを得た。
(黄インキ実施例)
顔料としてC.I.ピグメントイエロー176(Permanent Yellow GRX86 Clariant社製)を用い、表1の配合比率で分散粒子系測定機(グラインドメーター)で7.5ミクロン以下になるまで3本ロールを用いて練肉し、黄インキ1を得た。
【0039】
顔料としてC.I.ピグメントイエロー13(ZAY−452 大日精化工業(株)製)を用い、表1の配合比率で分散粒子系測定機(グラインドメーター)で7.5ミクロン以下になるまで3本ロールを用いて練肉し、黄インキ2を得た。
(紅インキ実施例)
顔料としてC.I.ピグメントレッド81/C.I.ピグメントホワイト21(ファーナルローズトーナー170 有本化学工業(株)製)、C.I.ピグメントレッド81/C.I.ベーシックレッド12(Pink MP−617 有本化学工業(株)製)、C.I.ピグメントレッド48:1(LIONOL RED 2BFG3300 東洋インキ製造(株)製)を用い、表1の配合比率で分散粒子系測定機(グラインドメーター)で7.5ミクロン以下になるまで3本ロールを用いて練肉し、紅インキ1を得た。
(藍インキ実施例)
顔料としてC.I.ピグメントブルー15:3(LIONOL BLUE FG7351 東洋インキ製造(株)製)、C.I.ピグメントグリーン7(LIONOL GREEN YS−2A 東洋インキ製造(株)製)を用い、表1の配合比率で分散粒子系測定機(グラインドメーター)で7.5ミクロン以下になるまで3本ロールを用いて練肉し、藍インキ1を得た。
(緑インキ実施例)
顔料としてC.I.ピグメントグリーン7(LIONOL GREEN YS−2A 東洋インキ製造(株)製)を用い、表1の配合比率で分散粒子系測定機(グラインドメーター)で7.5ミクロン以下になるまで3本ロールを用いて練肉し、緑インキ1を得た。
(比較例)
比較インキとしてここでは最も一般的な当社紫外線硬化型インキであるFDカルトンACE各色を用いた。
【0040】
【表1】


黄インキの透明性の評価については、以下の試験法で評価した。
L*値6.0〜8.0の範囲内で印刷した墨インキ上に、濃度1.50〜2.00の範囲で黄インキを刷り重ねし、L*を測定した。結果を表3に示す。
【0041】
実施例の黄インキは、濃度値を2.00まで上げてもL*が12.0を越えず、下刷りの墨インキに影響を与え難く、透明性に優れているといえる(L*は値が小さいほど黒く、大きくなるほど白くなることを示している)。
【0042】
一方、比較例はL*が高く、上刷りの黄インキが不透明であるために下刷りの墨インキの黒さを阻害してしまっていることがわかる。
(印刷評価試験)
上記実施例及び比較例のインキについて、下記印刷条件の下、黄、紅、藍、緑の各ベタ濃度値を、黄:1.40〜1.44、紅:1.52〜1.56、藍:1.63〜1.67、緑:1.90〜1.94(藍濃度として)の範囲内で印刷し、印刷物の評価を実施した。尚、墨インキは、高濃度タイプの紫外線硬化型印刷インキを使用し、濃度値1.45〜2.15の範囲内で印刷した。
【0043】
印刷条件
印刷機 :ハイデルベルグスピードマスター 菊全4色機(ハイデルベルグジャパン(株))
用紙 :特菱アート両面 110Kg(三菱製紙(株))
湿し水 :アストロマーク3((株)日研化学研究所)2.0%水道水溶液
印刷速度:10000枚/時
濃度 :グレタグマクベスD196にて印刷物の単色(黄、紅、藍、墨、緑)ベタ部の濃度値を測定。
【0044】
印刷物評価結果を図1および図2に表す。また、単色ベタ部及び重ね刷り部のL*a*b*測定値を表2に表す。
【0045】
【表2】

【0046】
【表3】


この結果より、ISO規格のジャパンカラー標準用紙、例えば三菱製紙(株)製「特菱アート両面四六半/110kg」に、黄、紅、藍、緑の各濃度値を、黄が1.40〜1.44、紅が1.52〜1.56、藍が1.63〜1.67、緑:1.90〜1.94(藍濃度として)の範囲内で印刷した場合に、本発明のインキを用いて得られた印刷物の演色領域(ガモット)は、一般的なISO規格のジャパンカラー準拠インキならびに一般的な紫外線硬化型インキを用いて得られた演色領域(ガモット)を包含するかたちで、より広い面積を有することから、より広い色再現領域を有することがわかる。
【0047】
また、得られた分光反射率曲線を図4に示す。比較例の従来インキに比べ、実施例のインキの方が理想の分光反射率曲線に近くなっており、完全反射しなければならない部分の不必要吸収が少なくなっている。そのため、インキの濁り成分が減少し、色彩度を表すC値が高くなっている(表2)。
【産業上の利用可能性】
【0048】
したがって、本発明により、ジャパンカラーの色域を包含すると共に、従来の紫外線硬化型インキでは再現できなかった色再現領域を再現することを可能にし、より広範囲の演色領域を表現することが可能な活性エネルギー線硬化型インキを提供することができる。

【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】「印刷物評価結果(実施例1、比較例)を示した図である。」
【図2】「印刷物評価結果(実施例2、比較例)を示した図である。」
【図3】「理想の分光反射曲線(黄、紅、藍)を示した図である。」
【図4】「実施例および比較例で得られた分光反射曲線(黄、紅、藍)を示した図である。」

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黄インキ、紅インキ、藍インキ、緑インキのうちいずれか2つ、3つ又は4つ、ならびに墨インキを使用する活性エネルギー線硬化型インキの印刷において、黄、紅、藍、緑の4色がジスアゾイエロー系化合物を顔料成分とする黄インキと、ローダミン系染料の金属レーキ化合物を顔料成分とする紅インキと、フタロシアニン系化合物を顔料成分とする藍インキと、ハロゲン化フタロシアニン系化合物を顔料成分とする緑インキとの組み合わせからなる活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【請求項2】
ジスアゾイエロー系化合物として、C.I.ピグメントイエロー12またはC.Iピグメントイエロー13を5〜20%含有し、L*値6.0〜8.0の墨インキ上に濃度1.40〜2.00の範囲で刷り重ねた場合のL*値が12.0を超えない透明性を有する請求項1記載の黄インキ。
【請求項3】
ローダミン系染料の金属レーキ化合物として、C.I.ピグメントレッド81またはC.Iピグメントバイオレット1を15〜30%含有する請求項1記載の紅インキ。
【請求項4】
フタロシアニン系化合物として、C.I.ピグメントブルー15:3またはC.I.ピグメントブルー15:4を10〜25%且つ、C.I.ピグメントグリーン7を0.5〜2.0%含有する請求項1記載の藍インキ。
【請求項5】
ハロゲン化フタロシアニン系化合物として、C.I.ピグメントグリーン7またはC.I.ピグメントグリーン36を10〜30%含有する請求項1記載の緑インキ。
【請求項6】
(a)黄、(b)紅、(c)藍のそれぞれで単色100%ベタ刷り部分の分光反射曲線の反射スペクトルにおいて、
(a)黄が、400nm〜700nmの波長領域において、全反射を100%としたときの相対反射強度が、400nm〜480nmの波長領域で0〜10%、550nm〜700nmの波長領域で80〜100%の反射スペクトルを有し、
(b)紅が、400nm〜700nmの波長領域において、全反射を100%としたときに、400nm〜500nmの波長領域での最大反射率が35%〜100%、500nm〜560nmの波長領域での反射率が0〜10%、630nm〜700nmの反射率が70%〜100%の反射スペクトルを有し、
(c)藍が、400nm〜700nmの波長領域において、全反射を100%としたときに、400nm〜530nmの波長領域の最大反射率が50〜100%、600nm〜700nmの反射率が0〜10%の反射スペクトルを有する各インキを使用することを特徴とする、請求項1の印刷方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−255132(P2008−255132A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95306(P2007−95306)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】