活性マトリクス電気化学堆積による、ヘッドガスケット上における局部的なストッパの製作
内燃機関(20)用のガスケット(32)を作成するための方法は、電気化学的堆積のプロセスを通じて金属ガスケット本体(40)上にほぼ環状のストッパ(38)を形成するステップを含む。電解槽には、カソードを形成するガスケット本体(40)が備え付けられる。選択された電極(70)に送出される電気エネルギを経時的に選択的に変化させることにより、輪郭成形された圧縮面(42)を有するストッパ(38)が形成される。金属イオンが豊富な電解質(48)を、電極間の間隙を通じて高速度でポンプ送出する。PCコントローラ(82)は、或る時点において或る持続時間にわたり、選択された電極(70)をONにスイッチングし、これにより、電解質(48)内の金属イオンは、ガスケット本体(40)上に還元または堆積し、柱または層の形状で、圧縮面(42)についての目標の表面プロファイル(106)に近似する3次元構造に構築される。3次元構造を構築するためのこの方法は、シリンダヘッドガスケット(32)以外の加工物にも適用され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
この発明は一般に、電気化学堆積(ECD)のための方法および装置に関する。この発明は、より具体的には、静的でかつ汎用形状のアノードアレイから限りなく多様な形状学的輪郭を作成する、アレイ状マルチ電極ECD装置および方法、より一層具体的には、ECDプロセスを用いてMLSガスケット上に輪郭成形されたストッパを製作することに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術
製造される製品によっては、極めて薄く、高精度で、輪郭成形された構造を金属加工物上に必要とするものがある。一例として、内燃機関の加圧室を封止するために使用されるもの等の金属ガスケットは一般に、形状学的に輪郭成形されたストッパを含み、過剰な圧縮を予めかけることなく、均一な応力分布、平坦な接触部、および気密封止を提供する。また、均一な応力分布により故障率が下がり、ガスケットの寿命が延びる。形状学的に輪郭成形されたストッパの製作は、どのような先行技術のプロセスによっても、極めて難しいものである。最も一般的には、鋳造工程を用いて、極めて薄いストッパの特徴上にプロファイルを生成し、これは通常、60から150マイクロメートルの範囲である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、鋳造の結果には問題があることが多い。なぜなら、この極めて薄い層のプロファイルに過剰な変形および応力が加わるためである。
【0004】
このガスケットストッパの例は、精度よく輪郭成形された特徴を金属加工物上に生成することが求められる無数の産業用途の1つに過ぎない。したがって、加工物上に3次元の形状学的特徴を形成する、改良された製造プロセスが必要とされる。形成工具と加工物との間にどのような種類の回転運動または相対運動をも必要としない、このようなプロセスの実施が望ましい。また、プログラマブルな制御を通じて限りなく多様な輪郭成形プロファイルを生成するように適合され、かつ、広く多様性を有する、このようなプロセスを開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
この発明は、静的かつ汎用でマルチセグメント化された電極アレイを用いて、電気化学堆積の作用を通じて加工物上に3次元構造を構築するための方法を企図する。この方法は、各々が活性端を有する複数のアノード電極を提供するステップと、当該複数の電極を規則的なアレイ状に支持するステップと、各電極を互いに電気的に絶縁するステップと、各電極に電気回路を設けて個々のアノードを形成するステップと、上に構築されるべき作業面を有するカソード工作物を提供するステップと、その作業面が電極の活性端に対して対向しかつ間隔のあいた関係にある状態で、加工物を支持するステップと、作業面と活性端との間の空間を通じて金属イオンが豊富な電解質を流通させるステップと、電解質内の金属イオンを作業面上に3次元構造として還元または堆積させるために、特定の電極に送出される電気エネルギを選択的に変化させるステップと、電気化学堆積工程を通じて、互いに固定された関係、かつ、工作物に対して固定された関係で、すべての電極の活性端を支
持するステップとを含む。
【0006】
この発明の別の局面によると、マルチセグメント化された電極アレイを用いて、電気化学堆積の作用を通じて加工物上に3次元構造を構築するための方法は、各々が活性端を有する複数のアノード電極を提供するステップと、当該複数の電極を規則的なアレイ状に支持するステップと、各電極を互いに電気的に絶縁するステップと、各電極に個々の電気回路を設けるステップと、上に構築されるべき作業面を有するカソード工作物を提供するステップと、その作業面が電極の活性端に対して対向しかつ間隔のあいた関係にある状態で、工作物を支持するステップと、作業面と活性端との間の空間を通じて金属イオンが豊富な電解質を流通させるステップと、電解質内の金属イオンを作業面上に3次元構造として還元または堆積させるために、特定の電極に送出される電気エネルギを選択的に変化させるステップと、電気絶縁体で作業面の一部をマスキングして、作業面の選択領域上における金属イオンの堆積を防止するステップとを含む。
【0007】
この発明は、活性マトリクス電気化学堆積のプロセスを用いて、工作物上に形状学的に輪郭成形された構造を形成するための、極めて正確であってノンインパクト方式の技術を提供する。このプロセスは、エネルギ効率がよく、節約志向であり、極めて正確な構造をもたらす。このプロセスは、コンピュータまたは他のデジタル処理制御装置を使用することにより、プログラムされた制御に容易に適合させることができる。
【0008】
この発明のさらに別の局面によると、内燃機関内のシリンダヘッドとブロックとの間の締付け保持を得るための種類のガスケットを作成するための方法が提供される。この方法は、作業面を有するシート状の金属ガスケット本体を提供するステップと、当該ガスケット本体に少なくとも1つのシリンダボア開口部を形成するステップと、複数の電極を規則的なアレイ状に支持するステップと、各電極を互いに電気的に絶縁するステップと、各電極に電気回路を設けて個々のアノードを形成するステップと、その作業面が電極に対して対向しかつ間隔のあいた関係にある状態で、ガスケット本体を支持するステップと、ガスケット本体に電気回路を設けてカソードを形成するステップと、作業面と電極との間の空間を通じて金属イオンが豊富な電解質を流通させるステップと、複数の電極とガスケット本体との間に電位を生じて電解質内の金属イオンを作業面上に還元または堆積させることにより、シリンダボアの周囲にほぼ環状のストッパを形成するステップと、電極に送出される電気エネルギを経時的に選択的に変化させることにより、ストッパ上に輪郭成形された圧縮面を形成するステップとを含む。
【0009】
形状学的に輪郭成形されたストッパを有するガスケットを作成するための方法は、従来の鋳造プロセスに対する経済的な代替例を提供し、極めて微細な品質制御をもたらす。さらに、この電極アレイ工具を生産するための費用は、この用途のために鋳造工具を生産するための費用よりも大幅に低い。ガスケット本体上に形状学的ストッパを直接形成することにより、レーザ溶接または他の取付けプロセスが不要となり、別の利点が認められる。さらに、鋼板消費量を実質的に削減することができる。加えて、異なる種類の金属イオンで電解質を濃縮することにより、工業合金を使用する機会が与えられる。
【0010】
この発明のこれらの特徴、他の特徴、および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面とともに考察すると、より容易に理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
好ましい実施例の詳細な説明
いくつかの図面に亘り、同じ番号が同じまたは対応する部品を示す図面を参照すると、内燃機関の代表的な例が、図1において20で包括的に示される。このエンジン20は、エンジンブロック26内に形成されたシリンダボア24内で往復運動を行なうように支持
されたピストン22を含むことが示される。シリンダヘッド28は、ブロック26に対向し、シリンダボア24を封鎖して、加圧室を形成する。スパークプラグ30または他の点火装置をこの加圧室に関連付けて点火を開始することができる。当然ながら、圧縮点火エンジンは、これとは異なる態様で構成されてよい。32で包括的に示されるシリンダヘッドガスケットは、シート状の金属本体40を有し、シリンダヘッド28とブロック26との間に位置決めされて、それらの間のガス気密封止を完全なものとする。間隔をあけた位置にボルト34または他の締結要素を計画的に配置して、分散した締付け荷重をかける。ボルト34は、ガスケット本体40内の対応する穴35を通る。
【0012】
図2に示す例示的なシリンダヘッドガスケット32は、関連付けられたエンジンのシリンダボアに対応する、間隔をあけて配置された4つの開口部36を含む。開口部36の数、サイズ、および配置は、エンジンの用途ごとに異なる。一般に、ストッパ38は、各開口部36を取り囲み、ガスケット32の最も厚い部分に相当する。わずかに間隔をあけて配置された用途では、隣接するストッパ38が、内部開口部36と内部開口部36との間で交差し得る。ストッパ38の目的とは、すべての圧縮応力を、シリンダボア24の周囲の良好に規定された領域に集中させ、それにより、過剰な圧縮を予めかけなくても、ガスケット32の封止効果を高めることである。この発明のストッパ38は、電気化学堆積技術により形成され、ここでは、金属イオンを電解質から還元させて、所望の位置にのみ、かつ、所望の厚さでのみ、ガスケット本体40上に堆積させる。
【0013】
次に図3を参照すると、ガスケット本体40の一部と共に、ストッパ38の極めて誇張した図が示される。ストッパ38の上側圧縮面42は、周囲のボルト34の相対位置および予測される締付け荷重に対応するように、意図的に輪郭成形される。シリンダヘッド28の柔軟性、ボルト34の伸張、ストッパ周囲の可変の熱膨張、およびストッパ38の圧縮率等の局面を考慮して、仕様通りにトルクを与えたボルト34によりシリンダヘッド28がブロック26上の定位置に固着されるとストッパ38において実質的に均等な応力分布が生じるように、圧縮面42上に理論上の輪郭が形成される。この均等な応力分布は、ガスケット32とそれぞれブロック26およびシリンダヘッド28との間の均一な封止に結び付く。図3に示す輪郭は極めて誇張して示されているが、この輪郭の変化は、実際には、肉眼で容易に認識することができない。一般に、ストッパ38において所望の均一な応力分布を得るのに必要とされるプロファイルの高さの変動は、約60−150マイクロメートルにすぎないことが考えられる。
【0014】
図4−図7は、本明細書においてガスケットストッパ38として例示される3次元構造を作成するために使用される電気化学堆積装置およびプロセスを示す。このプロセスによると、金属ガスケット本体40が圧板44上に配設される。圧板44は、液体電解質48で充填された電解質タンク46に浸漬され得る。本体40の一部をマスキングして、ストッパ38に指定された領域以外の領域に金属イオンが不本意に堆積することを防止する。この場合、マスクは、内側障壁50と外側障壁52とを含む。この例において、内側障壁50は、ほぼ円板形状であり得、形成されるべきストッパ38の内側境界を規定する環状の外側縁端54を有する。好ましくは、内側障壁50には中央開口56が設けられ、これを通じて電解質が流通し得る。外側障壁52は、内側障壁50の外側縁端54に対向する環状の内側縁端58を有する。内側縁端58と外側縁端54との間の空間は、ガスケット本体40の意図される領域を露出し、その領域上に、ストッパ38が後に形成される。外側障壁52は、ほぼ均一な高さの複数の直立パッド60を含んでもよい。パッド60は2つの機能をもたらす。第1に、パッド60の上部は、対向する工具の部品が当接するスペーサとして働く。第2に、パッド60とパッド60との間の間隙により、電解質は、当該電解質の流れの好ましい方向に依存して、電極間区域を横切って流通することができる。
【0015】
圧板44は、ボルト穴35または他のいくつかの特徴によりガスケット本体40をアラ
イメントするための1つ以上の位置決めピン62を含んでもよい。この位置決めピン62は、64で包括的に示される、マルチセグメント化された電極アレイもアライメントする。電極アレイ64の絶縁体68に形成された位置決め穴66は、位置決めピン62を受ける。この発明の好ましい実施例において、電極アレイ64は、規則的に間隔をあけて配置され、個々に絶縁され、本体40の作業面上に形成されるべきストッパ38の環状の形状に対応する環状パターンに配置された、複数の電極70を含む。したがって、位置決めピン62は、位置決め穴66に位置合せされると、それぞれ活性端72を有する個々の電極70を、ガスケット本体40の作業面に対して対向する関係に、かつ、ストッパ38が形成されるべき、内側障壁50と外側障壁52との間に作成されるチャネルの真上に、厳密にアライメントする。
【0016】
次に図4を参照すると、電極アレイ64の概略表示が、電解質タンク46内の液体電解質48に部分的に浸漬されていることが示される。個々の電極70、または電極のグループ70は、スイッチングユニット76に導電ワイヤ74を介して接続される。次いで、このスイッチングユニット76は、電源ユニット78の正側に電気的に接続される。電源ユニット78の負側は、ガスケット本体40または圧板44に直接接続され、このガスケット本体40または圧板44は、電解槽のカソード部として機能する。電極70は、電解槽のアノード部を構成する。電源78に通電すると、スイッチングユニット76は、個々の電極70のいずれか1つまたはすべてに対して電気回路を完成させる。このことが生じると、「ON」にスイッチングされた電極70の活性端72と、シリンダヘッドガスケット32の導電金属本体40との間に電位差が生じる。液体電解質48内の金属イオンは、電界の影響を受けて溶液から還元または析出し、電解槽のカソード部の上に堆積する。したがって、これらの金属イオンは、ガスケット本体40の上側作業面上に3次元構造として蓄積する。
【0017】
どの電極70をONおよびOFFにスイッチングするかを選択的に経時的に変化させることにより、堆積された金属イオンの輪郭成形されたプロファイルがガスケット本体40の作業面上に成長または構築され得る。ストッパの圧縮面42の特定のプロファイルを予め定めて、プロファイルデータ80として、グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)82を有するPCコントローラに入力することができる。GUIは、ユーザと通信するソフトウェアである。このGUIは、モニタだけでなく、キーボード、PCハードウェア、およびソフトウェアも含む。PCコントローラ82は、PCIインターフェイス84または他のインターフェイスを介し、パルス電源78およびスイッチングユニット76を機能的に制御し、それにより、個々の電極70は、電気化学堆積プロセス中の適切な時点において、通電および通電遮断され得、すなわち、ONおよびOFFにスイッチングされ得る。
【0018】
電源78は、スイッチングユニット76とともに、必要とされる局所的なイオン堆積の量に従って局所化され得る一時的な電界を生成する。1つの手法によると、ストッパ38のプロファイルを生成するために、局所的な電界の振幅を変化させることができ、または代替的に、異なる場所において印加時間を変えることができる。プロセス制御を詳細に説明するための例として、パルスECDを取り上げる。なぜなら、パルスECDは、微細な粒径を生じ、直接的なデジタル制御を可能にするためである。パルスECDは、ストッパ38の可変の高さを得るために、均一な電気パルスを印加して、印加時間のみを変える。PCコントローラ82は、PCIインターフェイス84を介してすべてのスイッチを制御し、それにより、ストッパ38のプロファイルは、完全にプログラム可能となる。パルス制御のため、PCコントローラ82とパルス電源78との間にも通信が生じる。
【0019】
好ましくは、液体電解質48は、図4において最もよく示されるように、タンク46を再循環する。ここで、使用済みの電解質は、導管86を介してタンク46から排出される
。タンク46から流出するこの流れは、電解質の温度およびその濃度を緩衝するための貯蔵タンク88に方向付けられる。電解質48はその後、ポンプ92の影響下においてフィルタ90を通過する。電解質48は、ここから、イオン補給および調整のための補給ユニット94に方向付けられる。電気化学堆積プロセス中に電解質内の金属イオンが消費されるため、イオンの補給が必要とされる。電極70が不溶性である場合、電解質を交換することなく、消費したイオンを追加することができる。補給ユニット94に追加するための金属イオンを製造する、多数の方法が存在する。たとえば、金属酸化物を導入して対応する酸と反応させ、それにより、別個のタンクにおいて水と金属塩とを生成することができる。代替的には、膜を適用して2つの電解槽を分離し、関係のないイオンを導入することなく、所望の食塩水を生成することができる。または、大きくかつ可溶性の反応面、たとえば大きなシート構造または櫛型構造を有するさらに別のアノードを導入することができる。
【0020】
補給ユニット94において、金属イオンの濃度は、pHおよび他のイオンとともに監視される。消費可能な化学物質および他の必要な処理剤が、それに応じて追加される。さらに、このユニット94において不純物を抽出することができる。次に、処理されて補給された電解質48を、ポンプ96を介してポンプ送出して電解質タンク46に戻す。図4に示す配置において、ポンプ96は、電解質を、内側障壁50を通る開口56内に経路指定する。当然ながら、電解質タンク46内への多数の入口点を示すことができ、これらの入口点は、特定の用途の構成に依存する。この例において、電解質48は、開口56から、ガスケット本体40と電極アレイ64との間の隙間の空間内に進入する。電解質48の流れは、所望の圧力および流量において、電極間の間隙を通って半径方向外側に広がり、スペーサパッド60とスペーサパッド60との間から退出する。逆の流れの方向および他の流れの計画も可能である。好ましい実施例において、電極間の間隙、すなわち、ガスケット本体40と電極70の活性端72との間の空間は、0.4−3.0mmの幅の範囲を有する。高い堆積率を得るために、高速の電解質対流が適用される。電解質の流量は0.5−4.0m/sに設定され、これは、先行技術の電気化学堆積プロセスを実施する対流速度よりもはるかに高速である。
【0021】
ONにスイッチングされた電極70の直下の電解質の流れ48内の金属イオンは、内側障壁50と外側障壁52との間の溝内部において還元を経て、ガスケット表面、すなわち作業面上に堆積する。還元は、直接隣接するアノード部、すなわち電極70がONにされない限り生じない。これこそ、ガスケット32の本体40上における金属粒子の堆積を局所化させるために使用されるメカニズムである。アノード、すなわち電極70上において、酸化により、酸素ガスおよび/または金属イオンが生じる。不溶性アノードの場合、たとえば、チタンまたは他の耐電解性かつ導電性材料で形成されたアノードの場合、酸素ガスのみが生成され、電解質48から還元した金属イオンがユニット94において補給されなければならない。
【0022】
図8および図9は、電極が、可溶性であって、電解質48に含まれる金属イオンに類似するか、または同一の材料で構成される、代替的な手法を示す。したがって、液体電解質48から金属イオンが還元するのに伴い、これらのイオンは、電極の溶解作用により、すぐに補給される。具体的に、好ましい実施例からさまざまな構成要素および特徴を区別するためにダッシュ記号が使用される図8において、電極ワイヤ74′は、電極70′に接合し、電極70′は、アノードボックス100′内に含まれる複数の金属粒子98′からなる。前面の不溶性金属スクリーン102′は、金属粒子98′がボックス100′から落下することを防止するが、電解質との接触は可能にする。粒子98′は、不溶性のスクリーン102′を介して金属イオンに酸化される。ばね71′の力を受けて、後列の粒子98′は、前方の粒子が溶解した後に、前列に押し出される。ボックス100′は、ほぼ空になった時点において新規の金属粒子98′で充填される。したがって、電極70′の
活性端72′は、アノード材料が可溶性である場合も、常に一定の場所を有する。
【0023】
図9は、別の可溶性電極の手法を表わす。ここでは、好ましい実施例の特徴からさまざまな特徴を区別するために二重ダッシュが使用される。図9において、可溶性のアノード、または電極70″は、細長いスティック状のワイヤを構成する。電極70″は、ガイドブッシュ104″内に保持され得る。この場合、細長い電極70″は、その前方の活性端72″が酸化中に浸食されるのに伴なって供給される。ほぼ一定のアノード位置、すなわち、活性端72″の位置が、定期的な供給により維持され得る。電極70″の断面は、電極の所望の空間を充たすために、円形、矩形、または他の構成であってよい。当初の前面の場所からのわずかな後退は、ワイヤの供給と、浸食の増加とにより補償され得る。浸食の増加は、電圧および/または時間を増大させることにより実現され、電圧および/または時間は、PCコントローラにより制御される。フィードワイヤ74″は、電極70″に対する摺動接触界面により概略的に示されており、それにより、電極70″を前進させて浸食を補償する間、導電性を維持する。当然ながら、可溶性電極の場合、他の技術および配置が可能である。
【0024】
イオンの補給が補給ユニット94を介して行なわれるか、または可溶性電極70′、70″を介して行なわれるかに関係なく、堆積される材料は、ニッケル、鉄、および作業面上に電気化学的に堆積することが可能なさまざまな合金を含み得る。堆積される構造の機械的特性は、工業合金を用いることによって改善され得る。
【0025】
図10−図14は、ガスケットストッパ38の引き続き例示的な状況で提示される、輪郭成形された任意のトポグラフィを生成するのに使用されるデジタルプロセスを、より具体的に扱う。次に図10および図11を具体的に参照すると、柱状化プロセスが示される。この柱状化プロセスは、圧縮面42上における表面の分割を一層少なくする傾向により所望されることが考えられる。この場合、PCコントローラ82を介してプログラムが設定され、スイッチングユニット76内で実施されるスイッチングパターンを制御する。プログラムは、目標とするプロファイルの形状寸法に対応するデータファイル80および他のプロセス仕様に従って稼働する。この図面において、電極70は、小さなブロックとして概略的に示される。網掛けのないブロックは、「OFF」にスイッチングされた電極を表わし、一方で、網掛けされたブロックは、「ON」にスイッチングされた電極70を表わし、それにより、電源78から正の電位が送出される。
【0026】
図11は、1つまたは多数のパルスを含む9個の時間期間にわたるスイッチングパターンのシーケンスを表わし、当該1つまたは多数のパルスは、ストッパ38の圧縮面42上に輪郭成形されたプロファイルを形成する。結果的に得られる階段状のプロファイルは、理論上の、または目標とする表面プロファイル106にほぼ近似する。目標とするプロファイル106は、電極70の幅に応じた均一なセクションに分割される。次に、プログラミングされた各セクションについての形状学的設計から、スイッチパターンおよび浸食時間が計算される。図11は、多数のステップを含む堆積プロセスを例示する。電気化学的堆積プロセスの開始時には、2つの隣接する電極70のみがONにスイッチングされ、その直下に第1の柱(1)の最初の部分を形成する。第2の時間期間(2)には、5個の電極70がONにスイッチングされ、したがって、新規の柱と、以前の柱の上にさらなる柱とを構築する。このシーケンスは、プロファイルデータ80を通じて最初に入力されたプログラムから決定される、異なる柱についての堆積の持続時間と共に進行する。堆積の持続時間およびスイッチングパターンは、共に変化して、作業面上に3次元プロファイルを生成する。例示的なストッパ38の場合、電極70は環状の1列に配置され、3次元パターンが、この環状アレイを追従する。当業者は、電極70をマトリクス構成に配置し、それにより、静的かつ汎用でマルチセグメント化された電極アレイ64を通じて、任意の3次元構造が得られることを認識するであろう。
【0027】
図12および図13は、スイッチングパターンの論理が柱ではなく層を設けるように設計された代替的な堆積計画を表わす。この場合、均一な厚さまたはさまざまな厚さの層(1)−(9)がスイッチングパターンにおいて堆積され、このスイッチングパターンは、図10および図11に示したものとほぼ反対である。同様の結果が得られるが、最も幅の広い底部層(1)が最初に敷設され、最も幅の狭い上部層(9)が最後に敷設される。PCコントローラ82がプロファイルの設計に従い、線上のより多くのスイッチをOFFにするほど、異なる領域の幅が狭くなる。PCコントローラ82は、最後の層(9)が堆積された後に、すべてのスイッチをオフにして電源78を遮断する。
【0028】
次に図14を参照すると、カソードマトリクスの分割、すなわち、電極70の寸法上の品質と、層の厚さとを所定のパラメータに従って基本的に決定する規則が示される。図14は、以下の可変パラメータを使用する。
【0029】
プロファイルの許容値−a、
サイクル時間−T、
最大プロファイル傾き−ρ、
浸食率−v、
堆積層の総数(すなわち、堆積期間)−n、
アノードセクションの幅−w、および
層の厚さ−h。
【0030】
図14にも示されるこれらのパラメータを用いて、最悪の場合のシナリオの以下の基準が満たされなければならない。
【0031】
【数1】
【0032】
所定のパラメータは、プロファイルの精密度(a)、変化率、および処理率の要件を含む。3つの条件が、最小の要件に対して満たされなければならない。第1の条件(電極70の最大幅)に反すると、プロファイルの傾斜が最も大きな場合の許容差を満たすことのできない、極めて大きなアノードセクションが生じる。この第1の条件によると、水平線に対して傾きが0に等しい場合、分割は必要とされない。なぜなら、0の傾きに対し、最大分割幅が無限であるためである。一方、曲線が或る位置において垂直方向の線に出会う場合、最大分割幅は許容差の領域(a)と同じぐらい小さくなければならない。第2の条件(最大層厚さ)に反すると、やはり、所定の許容差(a)に反してしまう。第3の条件(最小層厚さ)に反すると、全体のプロセスのサイクル時間の要件を満たすのに時間がかかりすぎるプロセスが生じる。これらの3つの条件は、最悪の場合のシナリオを決定する。安全係数を提示して、実際の分割幅および層厚さを求めることができる。最大分割幅(w)は、アノードマトリクスに対する重要な仕様となる。分割しすぎると、配列状アノー
ドの製造コストが上昇する。一方、最大幅wよりも粗い分割は、精密度の仕様を満たすことができない。層厚さ(h)およびプロファイルの設計を鑑みて、データファイル80が生成され、デジタル化プロセスを制御することができる。データファイル80は、層の数、堆積時間、および電極70のスイッチングパターンを含む、各層についての情報を含む。堆積時間は層の厚さを決定する。スイッチングパターンは、或る振幅におけるプロファイルの範囲に依存する。
【0033】
アノードおよびプロファイルを均一のセクションに適切に分割した後に、各プログラムセクションについての形状学的設計から、スイッチングパターンおよび浸食時間を次に求める。これらは、柱状化プロセス(図10−図11)または層化プロセス(図12−図13)のいずれが使用されるかにより、幾分異なるものの、同様の態様で行なわれる。
【0034】
この発明の好ましい実施例を内燃機関20用のガスケット32を作成するプロセスを介して説明してきたが、当業者は、プログラム可能スイッチングユニット76およびパルス電極78を介して作動するマルチセグメント化された電極アレイ64を用いて、作業面上に限りなく多様な3次元構造を作成できることを認識するであろう。上述の基準が満たされる限りは、PCコントローラ82に入力するプロファイルデータ80を変更することにより、および、アノードマトリクス64のサイズおよび解像度を拡張することにより、ほぼどのような3次元の形状をも得ることができる。したがって、静的かつ汎用でマルチセグメント化された電極アレイを用いて、電気化学堆積の作用を通じ、工作物上に3次元構造を構築するためのこの方法は、あらゆる用途のためのあらゆる分野に使用することができ、シリンダヘッドガスケット32上のストッパ38の製造に限定されない。
【0035】
この発明の多くの変更および変形が、上記の教示に照らして可能であることは明らかである。したがって、前掲の請求項の範囲内において、この発明が、具体的に記載した態様以外の態様で実施され得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】シリンダヘッドとブロックとの間に締付け保持を得るために設置されたガスケットを示す、内燃機関の簡略部分断面図である。
【図2】例示的なシリンダヘッドガスケットの平面図である。
【図3】その圧縮面の、輪郭成形されたプロファイルを強調するために、そのストッパを極めて誇張した寸法で示す、ガスケットの部分斜視図である。
【図4】プログラミングされた制御を介して工作物上に3次元構造を構築するための方法および装置の概略図である。
【図5】この発明に従った活性マトリクス電気化学的堆積工具の簡略斜視図である。
【図6】図5に示す工具の分解図である。
【図7】活性マトリクス電気化学的堆積工具内に保持された加工物と、工作物と電極との間の空間を通過する電解質の流れとを示す、拡大部分断面図である。
【図8】電極の代替的な実施例の拡大断面図である。
【図9】第2の代替的な電極設計の拡大断面図である。
【図10】間隔のあいた2つの形状学的構造の、作業面上における形成を誇張した形で示す図であり、金属イオンが電界の影響下において電解質から還元している図である。
【図11】選択電極に通電して電気化学的堆積の作用により形状学的輪郭を形成する、時間シーケンスを示す図である。
【図12】図10と同様の図であるが、輪郭プロファイルが層で生成される代替的な通電シーケンスを示す図である。
【図13】図11と同様の時間シーケンスの図であるが、図12の電極スイッチングシーケンスを示す図である。
【図14】電気化学的堆積により形成されるべき、目標となる任意のプロファイルを示す図であり、この発明のためのデジタル化規則を説明するために、寸法値が可変の記号で特定される図である。
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
この発明は一般に、電気化学堆積(ECD)のための方法および装置に関する。この発明は、より具体的には、静的でかつ汎用形状のアノードアレイから限りなく多様な形状学的輪郭を作成する、アレイ状マルチ電極ECD装置および方法、より一層具体的には、ECDプロセスを用いてMLSガスケット上に輪郭成形されたストッパを製作することに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術
製造される製品によっては、極めて薄く、高精度で、輪郭成形された構造を金属加工物上に必要とするものがある。一例として、内燃機関の加圧室を封止するために使用されるもの等の金属ガスケットは一般に、形状学的に輪郭成形されたストッパを含み、過剰な圧縮を予めかけることなく、均一な応力分布、平坦な接触部、および気密封止を提供する。また、均一な応力分布により故障率が下がり、ガスケットの寿命が延びる。形状学的に輪郭成形されたストッパの製作は、どのような先行技術のプロセスによっても、極めて難しいものである。最も一般的には、鋳造工程を用いて、極めて薄いストッパの特徴上にプロファイルを生成し、これは通常、60から150マイクロメートルの範囲である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、鋳造の結果には問題があることが多い。なぜなら、この極めて薄い層のプロファイルに過剰な変形および応力が加わるためである。
【0004】
このガスケットストッパの例は、精度よく輪郭成形された特徴を金属加工物上に生成することが求められる無数の産業用途の1つに過ぎない。したがって、加工物上に3次元の形状学的特徴を形成する、改良された製造プロセスが必要とされる。形成工具と加工物との間にどのような種類の回転運動または相対運動をも必要としない、このようなプロセスの実施が望ましい。また、プログラマブルな制御を通じて限りなく多様な輪郭成形プロファイルを生成するように適合され、かつ、広く多様性を有する、このようなプロセスを開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
この発明は、静的かつ汎用でマルチセグメント化された電極アレイを用いて、電気化学堆積の作用を通じて加工物上に3次元構造を構築するための方法を企図する。この方法は、各々が活性端を有する複数のアノード電極を提供するステップと、当該複数の電極を規則的なアレイ状に支持するステップと、各電極を互いに電気的に絶縁するステップと、各電極に電気回路を設けて個々のアノードを形成するステップと、上に構築されるべき作業面を有するカソード工作物を提供するステップと、その作業面が電極の活性端に対して対向しかつ間隔のあいた関係にある状態で、加工物を支持するステップと、作業面と活性端との間の空間を通じて金属イオンが豊富な電解質を流通させるステップと、電解質内の金属イオンを作業面上に3次元構造として還元または堆積させるために、特定の電極に送出される電気エネルギを選択的に変化させるステップと、電気化学堆積工程を通じて、互いに固定された関係、かつ、工作物に対して固定された関係で、すべての電極の活性端を支
持するステップとを含む。
【0006】
この発明の別の局面によると、マルチセグメント化された電極アレイを用いて、電気化学堆積の作用を通じて加工物上に3次元構造を構築するための方法は、各々が活性端を有する複数のアノード電極を提供するステップと、当該複数の電極を規則的なアレイ状に支持するステップと、各電極を互いに電気的に絶縁するステップと、各電極に個々の電気回路を設けるステップと、上に構築されるべき作業面を有するカソード工作物を提供するステップと、その作業面が電極の活性端に対して対向しかつ間隔のあいた関係にある状態で、工作物を支持するステップと、作業面と活性端との間の空間を通じて金属イオンが豊富な電解質を流通させるステップと、電解質内の金属イオンを作業面上に3次元構造として還元または堆積させるために、特定の電極に送出される電気エネルギを選択的に変化させるステップと、電気絶縁体で作業面の一部をマスキングして、作業面の選択領域上における金属イオンの堆積を防止するステップとを含む。
【0007】
この発明は、活性マトリクス電気化学堆積のプロセスを用いて、工作物上に形状学的に輪郭成形された構造を形成するための、極めて正確であってノンインパクト方式の技術を提供する。このプロセスは、エネルギ効率がよく、節約志向であり、極めて正確な構造をもたらす。このプロセスは、コンピュータまたは他のデジタル処理制御装置を使用することにより、プログラムされた制御に容易に適合させることができる。
【0008】
この発明のさらに別の局面によると、内燃機関内のシリンダヘッドとブロックとの間の締付け保持を得るための種類のガスケットを作成するための方法が提供される。この方法は、作業面を有するシート状の金属ガスケット本体を提供するステップと、当該ガスケット本体に少なくとも1つのシリンダボア開口部を形成するステップと、複数の電極を規則的なアレイ状に支持するステップと、各電極を互いに電気的に絶縁するステップと、各電極に電気回路を設けて個々のアノードを形成するステップと、その作業面が電極に対して対向しかつ間隔のあいた関係にある状態で、ガスケット本体を支持するステップと、ガスケット本体に電気回路を設けてカソードを形成するステップと、作業面と電極との間の空間を通じて金属イオンが豊富な電解質を流通させるステップと、複数の電極とガスケット本体との間に電位を生じて電解質内の金属イオンを作業面上に還元または堆積させることにより、シリンダボアの周囲にほぼ環状のストッパを形成するステップと、電極に送出される電気エネルギを経時的に選択的に変化させることにより、ストッパ上に輪郭成形された圧縮面を形成するステップとを含む。
【0009】
形状学的に輪郭成形されたストッパを有するガスケットを作成するための方法は、従来の鋳造プロセスに対する経済的な代替例を提供し、極めて微細な品質制御をもたらす。さらに、この電極アレイ工具を生産するための費用は、この用途のために鋳造工具を生産するための費用よりも大幅に低い。ガスケット本体上に形状学的ストッパを直接形成することにより、レーザ溶接または他の取付けプロセスが不要となり、別の利点が認められる。さらに、鋼板消費量を実質的に削減することができる。加えて、異なる種類の金属イオンで電解質を濃縮することにより、工業合金を使用する機会が与えられる。
【0010】
この発明のこれらの特徴、他の特徴、および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面とともに考察すると、より容易に理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
好ましい実施例の詳細な説明
いくつかの図面に亘り、同じ番号が同じまたは対応する部品を示す図面を参照すると、内燃機関の代表的な例が、図1において20で包括的に示される。このエンジン20は、エンジンブロック26内に形成されたシリンダボア24内で往復運動を行なうように支持
されたピストン22を含むことが示される。シリンダヘッド28は、ブロック26に対向し、シリンダボア24を封鎖して、加圧室を形成する。スパークプラグ30または他の点火装置をこの加圧室に関連付けて点火を開始することができる。当然ながら、圧縮点火エンジンは、これとは異なる態様で構成されてよい。32で包括的に示されるシリンダヘッドガスケットは、シート状の金属本体40を有し、シリンダヘッド28とブロック26との間に位置決めされて、それらの間のガス気密封止を完全なものとする。間隔をあけた位置にボルト34または他の締結要素を計画的に配置して、分散した締付け荷重をかける。ボルト34は、ガスケット本体40内の対応する穴35を通る。
【0012】
図2に示す例示的なシリンダヘッドガスケット32は、関連付けられたエンジンのシリンダボアに対応する、間隔をあけて配置された4つの開口部36を含む。開口部36の数、サイズ、および配置は、エンジンの用途ごとに異なる。一般に、ストッパ38は、各開口部36を取り囲み、ガスケット32の最も厚い部分に相当する。わずかに間隔をあけて配置された用途では、隣接するストッパ38が、内部開口部36と内部開口部36との間で交差し得る。ストッパ38の目的とは、すべての圧縮応力を、シリンダボア24の周囲の良好に規定された領域に集中させ、それにより、過剰な圧縮を予めかけなくても、ガスケット32の封止効果を高めることである。この発明のストッパ38は、電気化学堆積技術により形成され、ここでは、金属イオンを電解質から還元させて、所望の位置にのみ、かつ、所望の厚さでのみ、ガスケット本体40上に堆積させる。
【0013】
次に図3を参照すると、ガスケット本体40の一部と共に、ストッパ38の極めて誇張した図が示される。ストッパ38の上側圧縮面42は、周囲のボルト34の相対位置および予測される締付け荷重に対応するように、意図的に輪郭成形される。シリンダヘッド28の柔軟性、ボルト34の伸張、ストッパ周囲の可変の熱膨張、およびストッパ38の圧縮率等の局面を考慮して、仕様通りにトルクを与えたボルト34によりシリンダヘッド28がブロック26上の定位置に固着されるとストッパ38において実質的に均等な応力分布が生じるように、圧縮面42上に理論上の輪郭が形成される。この均等な応力分布は、ガスケット32とそれぞれブロック26およびシリンダヘッド28との間の均一な封止に結び付く。図3に示す輪郭は極めて誇張して示されているが、この輪郭の変化は、実際には、肉眼で容易に認識することができない。一般に、ストッパ38において所望の均一な応力分布を得るのに必要とされるプロファイルの高さの変動は、約60−150マイクロメートルにすぎないことが考えられる。
【0014】
図4−図7は、本明細書においてガスケットストッパ38として例示される3次元構造を作成するために使用される電気化学堆積装置およびプロセスを示す。このプロセスによると、金属ガスケット本体40が圧板44上に配設される。圧板44は、液体電解質48で充填された電解質タンク46に浸漬され得る。本体40の一部をマスキングして、ストッパ38に指定された領域以外の領域に金属イオンが不本意に堆積することを防止する。この場合、マスクは、内側障壁50と外側障壁52とを含む。この例において、内側障壁50は、ほぼ円板形状であり得、形成されるべきストッパ38の内側境界を規定する環状の外側縁端54を有する。好ましくは、内側障壁50には中央開口56が設けられ、これを通じて電解質が流通し得る。外側障壁52は、内側障壁50の外側縁端54に対向する環状の内側縁端58を有する。内側縁端58と外側縁端54との間の空間は、ガスケット本体40の意図される領域を露出し、その領域上に、ストッパ38が後に形成される。外側障壁52は、ほぼ均一な高さの複数の直立パッド60を含んでもよい。パッド60は2つの機能をもたらす。第1に、パッド60の上部は、対向する工具の部品が当接するスペーサとして働く。第2に、パッド60とパッド60との間の間隙により、電解質は、当該電解質の流れの好ましい方向に依存して、電極間区域を横切って流通することができる。
【0015】
圧板44は、ボルト穴35または他のいくつかの特徴によりガスケット本体40をアラ
イメントするための1つ以上の位置決めピン62を含んでもよい。この位置決めピン62は、64で包括的に示される、マルチセグメント化された電極アレイもアライメントする。電極アレイ64の絶縁体68に形成された位置決め穴66は、位置決めピン62を受ける。この発明の好ましい実施例において、電極アレイ64は、規則的に間隔をあけて配置され、個々に絶縁され、本体40の作業面上に形成されるべきストッパ38の環状の形状に対応する環状パターンに配置された、複数の電極70を含む。したがって、位置決めピン62は、位置決め穴66に位置合せされると、それぞれ活性端72を有する個々の電極70を、ガスケット本体40の作業面に対して対向する関係に、かつ、ストッパ38が形成されるべき、内側障壁50と外側障壁52との間に作成されるチャネルの真上に、厳密にアライメントする。
【0016】
次に図4を参照すると、電極アレイ64の概略表示が、電解質タンク46内の液体電解質48に部分的に浸漬されていることが示される。個々の電極70、または電極のグループ70は、スイッチングユニット76に導電ワイヤ74を介して接続される。次いで、このスイッチングユニット76は、電源ユニット78の正側に電気的に接続される。電源ユニット78の負側は、ガスケット本体40または圧板44に直接接続され、このガスケット本体40または圧板44は、電解槽のカソード部として機能する。電極70は、電解槽のアノード部を構成する。電源78に通電すると、スイッチングユニット76は、個々の電極70のいずれか1つまたはすべてに対して電気回路を完成させる。このことが生じると、「ON」にスイッチングされた電極70の活性端72と、シリンダヘッドガスケット32の導電金属本体40との間に電位差が生じる。液体電解質48内の金属イオンは、電界の影響を受けて溶液から還元または析出し、電解槽のカソード部の上に堆積する。したがって、これらの金属イオンは、ガスケット本体40の上側作業面上に3次元構造として蓄積する。
【0017】
どの電極70をONおよびOFFにスイッチングするかを選択的に経時的に変化させることにより、堆積された金属イオンの輪郭成形されたプロファイルがガスケット本体40の作業面上に成長または構築され得る。ストッパの圧縮面42の特定のプロファイルを予め定めて、プロファイルデータ80として、グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)82を有するPCコントローラに入力することができる。GUIは、ユーザと通信するソフトウェアである。このGUIは、モニタだけでなく、キーボード、PCハードウェア、およびソフトウェアも含む。PCコントローラ82は、PCIインターフェイス84または他のインターフェイスを介し、パルス電源78およびスイッチングユニット76を機能的に制御し、それにより、個々の電極70は、電気化学堆積プロセス中の適切な時点において、通電および通電遮断され得、すなわち、ONおよびOFFにスイッチングされ得る。
【0018】
電源78は、スイッチングユニット76とともに、必要とされる局所的なイオン堆積の量に従って局所化され得る一時的な電界を生成する。1つの手法によると、ストッパ38のプロファイルを生成するために、局所的な電界の振幅を変化させることができ、または代替的に、異なる場所において印加時間を変えることができる。プロセス制御を詳細に説明するための例として、パルスECDを取り上げる。なぜなら、パルスECDは、微細な粒径を生じ、直接的なデジタル制御を可能にするためである。パルスECDは、ストッパ38の可変の高さを得るために、均一な電気パルスを印加して、印加時間のみを変える。PCコントローラ82は、PCIインターフェイス84を介してすべてのスイッチを制御し、それにより、ストッパ38のプロファイルは、完全にプログラム可能となる。パルス制御のため、PCコントローラ82とパルス電源78との間にも通信が生じる。
【0019】
好ましくは、液体電解質48は、図4において最もよく示されるように、タンク46を再循環する。ここで、使用済みの電解質は、導管86を介してタンク46から排出される
。タンク46から流出するこの流れは、電解質の温度およびその濃度を緩衝するための貯蔵タンク88に方向付けられる。電解質48はその後、ポンプ92の影響下においてフィルタ90を通過する。電解質48は、ここから、イオン補給および調整のための補給ユニット94に方向付けられる。電気化学堆積プロセス中に電解質内の金属イオンが消費されるため、イオンの補給が必要とされる。電極70が不溶性である場合、電解質を交換することなく、消費したイオンを追加することができる。補給ユニット94に追加するための金属イオンを製造する、多数の方法が存在する。たとえば、金属酸化物を導入して対応する酸と反応させ、それにより、別個のタンクにおいて水と金属塩とを生成することができる。代替的には、膜を適用して2つの電解槽を分離し、関係のないイオンを導入することなく、所望の食塩水を生成することができる。または、大きくかつ可溶性の反応面、たとえば大きなシート構造または櫛型構造を有するさらに別のアノードを導入することができる。
【0020】
補給ユニット94において、金属イオンの濃度は、pHおよび他のイオンとともに監視される。消費可能な化学物質および他の必要な処理剤が、それに応じて追加される。さらに、このユニット94において不純物を抽出することができる。次に、処理されて補給された電解質48を、ポンプ96を介してポンプ送出して電解質タンク46に戻す。図4に示す配置において、ポンプ96は、電解質を、内側障壁50を通る開口56内に経路指定する。当然ながら、電解質タンク46内への多数の入口点を示すことができ、これらの入口点は、特定の用途の構成に依存する。この例において、電解質48は、開口56から、ガスケット本体40と電極アレイ64との間の隙間の空間内に進入する。電解質48の流れは、所望の圧力および流量において、電極間の間隙を通って半径方向外側に広がり、スペーサパッド60とスペーサパッド60との間から退出する。逆の流れの方向および他の流れの計画も可能である。好ましい実施例において、電極間の間隙、すなわち、ガスケット本体40と電極70の活性端72との間の空間は、0.4−3.0mmの幅の範囲を有する。高い堆積率を得るために、高速の電解質対流が適用される。電解質の流量は0.5−4.0m/sに設定され、これは、先行技術の電気化学堆積プロセスを実施する対流速度よりもはるかに高速である。
【0021】
ONにスイッチングされた電極70の直下の電解質の流れ48内の金属イオンは、内側障壁50と外側障壁52との間の溝内部において還元を経て、ガスケット表面、すなわち作業面上に堆積する。還元は、直接隣接するアノード部、すなわち電極70がONにされない限り生じない。これこそ、ガスケット32の本体40上における金属粒子の堆積を局所化させるために使用されるメカニズムである。アノード、すなわち電極70上において、酸化により、酸素ガスおよび/または金属イオンが生じる。不溶性アノードの場合、たとえば、チタンまたは他の耐電解性かつ導電性材料で形成されたアノードの場合、酸素ガスのみが生成され、電解質48から還元した金属イオンがユニット94において補給されなければならない。
【0022】
図8および図9は、電極が、可溶性であって、電解質48に含まれる金属イオンに類似するか、または同一の材料で構成される、代替的な手法を示す。したがって、液体電解質48から金属イオンが還元するのに伴い、これらのイオンは、電極の溶解作用により、すぐに補給される。具体的に、好ましい実施例からさまざまな構成要素および特徴を区別するためにダッシュ記号が使用される図8において、電極ワイヤ74′は、電極70′に接合し、電極70′は、アノードボックス100′内に含まれる複数の金属粒子98′からなる。前面の不溶性金属スクリーン102′は、金属粒子98′がボックス100′から落下することを防止するが、電解質との接触は可能にする。粒子98′は、不溶性のスクリーン102′を介して金属イオンに酸化される。ばね71′の力を受けて、後列の粒子98′は、前方の粒子が溶解した後に、前列に押し出される。ボックス100′は、ほぼ空になった時点において新規の金属粒子98′で充填される。したがって、電極70′の
活性端72′は、アノード材料が可溶性である場合も、常に一定の場所を有する。
【0023】
図9は、別の可溶性電極の手法を表わす。ここでは、好ましい実施例の特徴からさまざまな特徴を区別するために二重ダッシュが使用される。図9において、可溶性のアノード、または電極70″は、細長いスティック状のワイヤを構成する。電極70″は、ガイドブッシュ104″内に保持され得る。この場合、細長い電極70″は、その前方の活性端72″が酸化中に浸食されるのに伴なって供給される。ほぼ一定のアノード位置、すなわち、活性端72″の位置が、定期的な供給により維持され得る。電極70″の断面は、電極の所望の空間を充たすために、円形、矩形、または他の構成であってよい。当初の前面の場所からのわずかな後退は、ワイヤの供給と、浸食の増加とにより補償され得る。浸食の増加は、電圧および/または時間を増大させることにより実現され、電圧および/または時間は、PCコントローラにより制御される。フィードワイヤ74″は、電極70″に対する摺動接触界面により概略的に示されており、それにより、電極70″を前進させて浸食を補償する間、導電性を維持する。当然ながら、可溶性電極の場合、他の技術および配置が可能である。
【0024】
イオンの補給が補給ユニット94を介して行なわれるか、または可溶性電極70′、70″を介して行なわれるかに関係なく、堆積される材料は、ニッケル、鉄、および作業面上に電気化学的に堆積することが可能なさまざまな合金を含み得る。堆積される構造の機械的特性は、工業合金を用いることによって改善され得る。
【0025】
図10−図14は、ガスケットストッパ38の引き続き例示的な状況で提示される、輪郭成形された任意のトポグラフィを生成するのに使用されるデジタルプロセスを、より具体的に扱う。次に図10および図11を具体的に参照すると、柱状化プロセスが示される。この柱状化プロセスは、圧縮面42上における表面の分割を一層少なくする傾向により所望されることが考えられる。この場合、PCコントローラ82を介してプログラムが設定され、スイッチングユニット76内で実施されるスイッチングパターンを制御する。プログラムは、目標とするプロファイルの形状寸法に対応するデータファイル80および他のプロセス仕様に従って稼働する。この図面において、電極70は、小さなブロックとして概略的に示される。網掛けのないブロックは、「OFF」にスイッチングされた電極を表わし、一方で、網掛けされたブロックは、「ON」にスイッチングされた電極70を表わし、それにより、電源78から正の電位が送出される。
【0026】
図11は、1つまたは多数のパルスを含む9個の時間期間にわたるスイッチングパターンのシーケンスを表わし、当該1つまたは多数のパルスは、ストッパ38の圧縮面42上に輪郭成形されたプロファイルを形成する。結果的に得られる階段状のプロファイルは、理論上の、または目標とする表面プロファイル106にほぼ近似する。目標とするプロファイル106は、電極70の幅に応じた均一なセクションに分割される。次に、プログラミングされた各セクションについての形状学的設計から、スイッチパターンおよび浸食時間が計算される。図11は、多数のステップを含む堆積プロセスを例示する。電気化学的堆積プロセスの開始時には、2つの隣接する電極70のみがONにスイッチングされ、その直下に第1の柱(1)の最初の部分を形成する。第2の時間期間(2)には、5個の電極70がONにスイッチングされ、したがって、新規の柱と、以前の柱の上にさらなる柱とを構築する。このシーケンスは、プロファイルデータ80を通じて最初に入力されたプログラムから決定される、異なる柱についての堆積の持続時間と共に進行する。堆積の持続時間およびスイッチングパターンは、共に変化して、作業面上に3次元プロファイルを生成する。例示的なストッパ38の場合、電極70は環状の1列に配置され、3次元パターンが、この環状アレイを追従する。当業者は、電極70をマトリクス構成に配置し、それにより、静的かつ汎用でマルチセグメント化された電極アレイ64を通じて、任意の3次元構造が得られることを認識するであろう。
【0027】
図12および図13は、スイッチングパターンの論理が柱ではなく層を設けるように設計された代替的な堆積計画を表わす。この場合、均一な厚さまたはさまざまな厚さの層(1)−(9)がスイッチングパターンにおいて堆積され、このスイッチングパターンは、図10および図11に示したものとほぼ反対である。同様の結果が得られるが、最も幅の広い底部層(1)が最初に敷設され、最も幅の狭い上部層(9)が最後に敷設される。PCコントローラ82がプロファイルの設計に従い、線上のより多くのスイッチをOFFにするほど、異なる領域の幅が狭くなる。PCコントローラ82は、最後の層(9)が堆積された後に、すべてのスイッチをオフにして電源78を遮断する。
【0028】
次に図14を参照すると、カソードマトリクスの分割、すなわち、電極70の寸法上の品質と、層の厚さとを所定のパラメータに従って基本的に決定する規則が示される。図14は、以下の可変パラメータを使用する。
【0029】
プロファイルの許容値−a、
サイクル時間−T、
最大プロファイル傾き−ρ、
浸食率−v、
堆積層の総数(すなわち、堆積期間)−n、
アノードセクションの幅−w、および
層の厚さ−h。
【0030】
図14にも示されるこれらのパラメータを用いて、最悪の場合のシナリオの以下の基準が満たされなければならない。
【0031】
【数1】
【0032】
所定のパラメータは、プロファイルの精密度(a)、変化率、および処理率の要件を含む。3つの条件が、最小の要件に対して満たされなければならない。第1の条件(電極70の最大幅)に反すると、プロファイルの傾斜が最も大きな場合の許容差を満たすことのできない、極めて大きなアノードセクションが生じる。この第1の条件によると、水平線に対して傾きが0に等しい場合、分割は必要とされない。なぜなら、0の傾きに対し、最大分割幅が無限であるためである。一方、曲線が或る位置において垂直方向の線に出会う場合、最大分割幅は許容差の領域(a)と同じぐらい小さくなければならない。第2の条件(最大層厚さ)に反すると、やはり、所定の許容差(a)に反してしまう。第3の条件(最小層厚さ)に反すると、全体のプロセスのサイクル時間の要件を満たすのに時間がかかりすぎるプロセスが生じる。これらの3つの条件は、最悪の場合のシナリオを決定する。安全係数を提示して、実際の分割幅および層厚さを求めることができる。最大分割幅(w)は、アノードマトリクスに対する重要な仕様となる。分割しすぎると、配列状アノー
ドの製造コストが上昇する。一方、最大幅wよりも粗い分割は、精密度の仕様を満たすことができない。層厚さ(h)およびプロファイルの設計を鑑みて、データファイル80が生成され、デジタル化プロセスを制御することができる。データファイル80は、層の数、堆積時間、および電極70のスイッチングパターンを含む、各層についての情報を含む。堆積時間は層の厚さを決定する。スイッチングパターンは、或る振幅におけるプロファイルの範囲に依存する。
【0033】
アノードおよびプロファイルを均一のセクションに適切に分割した後に、各プログラムセクションについての形状学的設計から、スイッチングパターンおよび浸食時間を次に求める。これらは、柱状化プロセス(図10−図11)または層化プロセス(図12−図13)のいずれが使用されるかにより、幾分異なるものの、同様の態様で行なわれる。
【0034】
この発明の好ましい実施例を内燃機関20用のガスケット32を作成するプロセスを介して説明してきたが、当業者は、プログラム可能スイッチングユニット76およびパルス電極78を介して作動するマルチセグメント化された電極アレイ64を用いて、作業面上に限りなく多様な3次元構造を作成できることを認識するであろう。上述の基準が満たされる限りは、PCコントローラ82に入力するプロファイルデータ80を変更することにより、および、アノードマトリクス64のサイズおよび解像度を拡張することにより、ほぼどのような3次元の形状をも得ることができる。したがって、静的かつ汎用でマルチセグメント化された電極アレイを用いて、電気化学堆積の作用を通じ、工作物上に3次元構造を構築するためのこの方法は、あらゆる用途のためのあらゆる分野に使用することができ、シリンダヘッドガスケット32上のストッパ38の製造に限定されない。
【0035】
この発明の多くの変更および変形が、上記の教示に照らして可能であることは明らかである。したがって、前掲の請求項の範囲内において、この発明が、具体的に記載した態様以外の態様で実施され得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】シリンダヘッドとブロックとの間に締付け保持を得るために設置されたガスケットを示す、内燃機関の簡略部分断面図である。
【図2】例示的なシリンダヘッドガスケットの平面図である。
【図3】その圧縮面の、輪郭成形されたプロファイルを強調するために、そのストッパを極めて誇張した寸法で示す、ガスケットの部分斜視図である。
【図4】プログラミングされた制御を介して工作物上に3次元構造を構築するための方法および装置の概略図である。
【図5】この発明に従った活性マトリクス電気化学的堆積工具の簡略斜視図である。
【図6】図5に示す工具の分解図である。
【図7】活性マトリクス電気化学的堆積工具内に保持された加工物と、工作物と電極との間の空間を通過する電解質の流れとを示す、拡大部分断面図である。
【図8】電極の代替的な実施例の拡大断面図である。
【図9】第2の代替的な電極設計の拡大断面図である。
【図10】間隔のあいた2つの形状学的構造の、作業面上における形成を誇張した形で示す図であり、金属イオンが電界の影響下において電解質から還元している図である。
【図11】選択電極に通電して電気化学的堆積の作用により形状学的輪郭を形成する、時間シーケンスを示す図である。
【図12】図10と同様の図であるが、輪郭プロファイルが層で生成される代替的な通電シーケンスを示す図である。
【図13】図11と同様の時間シーケンスの図であるが、図12の電極スイッチングシーケンスを示す図である。
【図14】電気化学的堆積により形成されるべき、目標となる任意のプロファイルを示す図であり、この発明のためのデジタル化規則を説明するために、寸法値が可変の記号で特定される図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静的かつ汎用でマルチセグメント化された電極アレイを用いて、電気化学的堆積の作用を通じて工作物上に3次元構造を構築するための方法であって、前記方法は、
各々が活性端を有する複数のアノード電極を提供するステップと、
前記複数の電極を規則的なアレイ状に支持するステップと、
各電極を互いに電気的に絶縁するステップと、
各電極に電気回路を設けて個々のアノードを形成するステップと、
上に構築されるべき作業面を有するカソード工作物を提供するステップと、
その作業面が前記電極の前記活性端に対して対向しかつ間隔のあいた関係にある状態で、加工物を支持するステップと、
前記作業面と前記活性端との間の空間を通じて金属イオンが豊富な電解質を流通させるステップと、
前記電解質内の金属イオンを前記作業面上に3次元構造として還元または堆積させるために、特定の電極に送出される電気エネルギを選択的に変化させるステップと、
電気化学的堆積工程を通じて、互いに固定された関係、かつ、前記工作物に対して固定された関係で、すべての前記電極の前記活性端を支持するステップとを含む、方法。
【請求項2】
電解質を流通させる前記ステップは、毎秒0.5から4メートルの電解質流量を維持するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電解質を流通させる前記ステップは、前記電解質を再循環させるステップを含み、さらに、前記作業面上に堆積された金属イオンの損失分を補償するために、前記電解質に金属イオンを補給するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記補給するステップは、前記作業面と前記活性端との間の前記空間の電解質上流に金属イオンを追加するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記補給するステップは、前記アノードから金属イオンを溶解するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記アノードから金属イオンを溶解する前記ステップは、多孔性の膜の後ろにアノードペレットを格納するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アノードから金属イオンを溶解する前記ステップは、前記作業面に向けて前記アノードを独自に移動させるステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記補給するステップは、前記作業面と前記活性端との間の前記空間の電解質上流に金属イオンを追加するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記再循環させるステップは、前記電解質から不純物をフィルタ除去するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記電気エネルギを選択的に変化させる前記ステップは、局所的なエネルギ場の振幅を変化させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記電気エネルギを選択的に変化させる前記ステップは、局所的なエネルギ場の持続時間を変化させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
電気絶縁体で前記作業面の一部をマスキングして、前記作業面の選択領域上における前
記金属イオンの堆積を防止するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
マルチセグメント化された電極アレイを用いて、電気化学的堆積の作用を通じて加工物上に3次元構造を構築するための方法であって、前記方法は、
各々が活性端を有する複数のアノード電極を提供するステップと、
前記複数の電極を規則的なアレイ状に支持するステップと、
各電極を互いに電気的に絶縁するステップと、
各電極に独立した電気回路を設けるステップと、
上に構築されるべき作業面を有するカソード加工物を提供するステップと、
その作業面が前記電極の前記活性端に対して対向しかつ間隔のあいた関係にある状態で、前記加工物を支持するステップと、
前記作業面と前記活性端との間の空間を通じて金属イオンが豊富な電解質を流通させるステップと、
前記電解質内の金属イオンを前記作業面上に3次元構造として還元または堆積させるために、特定の電極に送出される電気エネルギを選択的に変化させるステップと、
電気絶縁体で前記作業面の一部をマスキングして、前記作業面の選択領域上における前記金属イオンの堆積を防止するステップとを含む、方法。
【請求項14】
電解質を流通させる前記ステップは、毎秒0.5から4メートルの電解質流量を維持するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
電解質を流通させる前記ステップは、前記電解質を再循環させるステップを含み、さらに、前記作業面上に還元して堆積した金属イオンの損失分を補償するために、前記電解質に金属イオンを補給するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記補給するステップは、前記作業面と前記活性端との間の前記空間の電解質上流に金属イオンを追加するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記補給するステップは、前記アノードから金属イオンを溶解するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記アノードから金属イオンを溶解する前記ステップは、多孔性の膜の後ろにアノードペレットを格納するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アノードから金属イオンを溶解する前記ステップは、前記作業面に向けて前記アノードを独自に移動させるステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記補給するステップは、前記作業面と前記活性端との間の前記空間の電解質上流に金属イオンを追加するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記再循環させるステップは、前記電解質から不純物をフィルタ除去するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記電気エネルギを選択的に変化させる前記ステップは、局所的なエネルギ場の振幅を変化させるステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記電気エネルギを選択的に変化させる前記ステップは、局所的なエネルギ場の持続時間を変化させるステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
電気化学的堆積工程を通じて互いに固定された関係、かつ、前記工作物に対して固定さ
れた関係で、すべての前記電極の前記活性端を支持するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
内燃機関内のシリンダヘッドとブロックとの間に締付け保持を得るための種類のガスケットを作成するための方法であって、前記方法は、
作業面を有するシート状の金属ガスケット本体を提供するステップと、
前記ガスケット本体に少なくとも1つのシリンダボア開口部を形成するステップと、
複数の電極を規則的なアレイ状に支持するステップと、
各電極を互いに電気的に絶縁するステップと、
各電極に電気回路を設けて個々のアノードを形成するステップと、
その作業面が前記電極に対して対向しかつ間隔のあいた関係にある状態で、前記ガスケット本体を支持するステップと、
前記ガスケット本体に電気回路を設けてカソードを形成するステップと、
前記作業面と前記電極との間の空間を通じて金属イオンが豊富な電解質を流通させるステップと、
複数の前記電極と前記ガスケット本体との間に電位を生じて前記電解質内の金属イオンを前記作業面上に還元または堆積させることにより、前記シリンダボアの周囲にほぼ環状のストッパを形成するステップと、
前記電極に送出される電気エネルギを経時的に選択的に変化させることにより、前記ストッパ上に輪郭成形された圧縮面を形成するステップとを含む、方法。
【請求項26】
電気絶縁体で前記作業面の一部をマスキングして、前記作業面の選択領域上における前記金属イオンの堆積を防止するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
電解質を流通させる前記ステップは、毎秒0.5から4メートルの電解質流量を維持するステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
ほぼ環状のストッパを形成する前記ステップを通じて、互いに固定された関係、かつ、前記ガスケット本体に対して固定された関係で、前記電極を支持するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記電気エネルギを選択的に変化させる前記ステップは、局所的なエネルギ場の振幅を変化させるステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記電気エネルギを選択的に変化させる前記ステップは、局所的なエネルギ場の持続時間を変化させるステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項1】
静的かつ汎用でマルチセグメント化された電極アレイを用いて、電気化学的堆積の作用を通じて工作物上に3次元構造を構築するための方法であって、前記方法は、
各々が活性端を有する複数のアノード電極を提供するステップと、
前記複数の電極を規則的なアレイ状に支持するステップと、
各電極を互いに電気的に絶縁するステップと、
各電極に電気回路を設けて個々のアノードを形成するステップと、
上に構築されるべき作業面を有するカソード工作物を提供するステップと、
その作業面が前記電極の前記活性端に対して対向しかつ間隔のあいた関係にある状態で、加工物を支持するステップと、
前記作業面と前記活性端との間の空間を通じて金属イオンが豊富な電解質を流通させるステップと、
前記電解質内の金属イオンを前記作業面上に3次元構造として還元または堆積させるために、特定の電極に送出される電気エネルギを選択的に変化させるステップと、
電気化学的堆積工程を通じて、互いに固定された関係、かつ、前記工作物に対して固定された関係で、すべての前記電極の前記活性端を支持するステップとを含む、方法。
【請求項2】
電解質を流通させる前記ステップは、毎秒0.5から4メートルの電解質流量を維持するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電解質を流通させる前記ステップは、前記電解質を再循環させるステップを含み、さらに、前記作業面上に堆積された金属イオンの損失分を補償するために、前記電解質に金属イオンを補給するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記補給するステップは、前記作業面と前記活性端との間の前記空間の電解質上流に金属イオンを追加するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記補給するステップは、前記アノードから金属イオンを溶解するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記アノードから金属イオンを溶解する前記ステップは、多孔性の膜の後ろにアノードペレットを格納するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アノードから金属イオンを溶解する前記ステップは、前記作業面に向けて前記アノードを独自に移動させるステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記補給するステップは、前記作業面と前記活性端との間の前記空間の電解質上流に金属イオンを追加するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記再循環させるステップは、前記電解質から不純物をフィルタ除去するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記電気エネルギを選択的に変化させる前記ステップは、局所的なエネルギ場の振幅を変化させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記電気エネルギを選択的に変化させる前記ステップは、局所的なエネルギ場の持続時間を変化させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
電気絶縁体で前記作業面の一部をマスキングして、前記作業面の選択領域上における前
記金属イオンの堆積を防止するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
マルチセグメント化された電極アレイを用いて、電気化学的堆積の作用を通じて加工物上に3次元構造を構築するための方法であって、前記方法は、
各々が活性端を有する複数のアノード電極を提供するステップと、
前記複数の電極を規則的なアレイ状に支持するステップと、
各電極を互いに電気的に絶縁するステップと、
各電極に独立した電気回路を設けるステップと、
上に構築されるべき作業面を有するカソード加工物を提供するステップと、
その作業面が前記電極の前記活性端に対して対向しかつ間隔のあいた関係にある状態で、前記加工物を支持するステップと、
前記作業面と前記活性端との間の空間を通じて金属イオンが豊富な電解質を流通させるステップと、
前記電解質内の金属イオンを前記作業面上に3次元構造として還元または堆積させるために、特定の電極に送出される電気エネルギを選択的に変化させるステップと、
電気絶縁体で前記作業面の一部をマスキングして、前記作業面の選択領域上における前記金属イオンの堆積を防止するステップとを含む、方法。
【請求項14】
電解質を流通させる前記ステップは、毎秒0.5から4メートルの電解質流量を維持するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
電解質を流通させる前記ステップは、前記電解質を再循環させるステップを含み、さらに、前記作業面上に還元して堆積した金属イオンの損失分を補償するために、前記電解質に金属イオンを補給するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記補給するステップは、前記作業面と前記活性端との間の前記空間の電解質上流に金属イオンを追加するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記補給するステップは、前記アノードから金属イオンを溶解するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記アノードから金属イオンを溶解する前記ステップは、多孔性の膜の後ろにアノードペレットを格納するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アノードから金属イオンを溶解する前記ステップは、前記作業面に向けて前記アノードを独自に移動させるステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記補給するステップは、前記作業面と前記活性端との間の前記空間の電解質上流に金属イオンを追加するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記再循環させるステップは、前記電解質から不純物をフィルタ除去するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記電気エネルギを選択的に変化させる前記ステップは、局所的なエネルギ場の振幅を変化させるステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記電気エネルギを選択的に変化させる前記ステップは、局所的なエネルギ場の持続時間を変化させるステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
電気化学的堆積工程を通じて互いに固定された関係、かつ、前記工作物に対して固定さ
れた関係で、すべての前記電極の前記活性端を支持するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
内燃機関内のシリンダヘッドとブロックとの間に締付け保持を得るための種類のガスケットを作成するための方法であって、前記方法は、
作業面を有するシート状の金属ガスケット本体を提供するステップと、
前記ガスケット本体に少なくとも1つのシリンダボア開口部を形成するステップと、
複数の電極を規則的なアレイ状に支持するステップと、
各電極を互いに電気的に絶縁するステップと、
各電極に電気回路を設けて個々のアノードを形成するステップと、
その作業面が前記電極に対して対向しかつ間隔のあいた関係にある状態で、前記ガスケット本体を支持するステップと、
前記ガスケット本体に電気回路を設けてカソードを形成するステップと、
前記作業面と前記電極との間の空間を通じて金属イオンが豊富な電解質を流通させるステップと、
複数の前記電極と前記ガスケット本体との間に電位を生じて前記電解質内の金属イオンを前記作業面上に還元または堆積させることにより、前記シリンダボアの周囲にほぼ環状のストッパを形成するステップと、
前記電極に送出される電気エネルギを経時的に選択的に変化させることにより、前記ストッパ上に輪郭成形された圧縮面を形成するステップとを含む、方法。
【請求項26】
電気絶縁体で前記作業面の一部をマスキングして、前記作業面の選択領域上における前記金属イオンの堆積を防止するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
電解質を流通させる前記ステップは、毎秒0.5から4メートルの電解質流量を維持するステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
ほぼ環状のストッパを形成する前記ステップを通じて、互いに固定された関係、かつ、前記ガスケット本体に対して固定された関係で、前記電極を支持するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記電気エネルギを選択的に変化させる前記ステップは、局所的なエネルギ場の振幅を変化させるステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記電気エネルギを選択的に変化させる前記ステップは、局所的なエネルギ場の持続時間を変化させるステップを含む、請求項25に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2009−531551(P2009−531551A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503208(P2009−503208)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/064991
【国際公開番号】WO2007/112380
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/064991
【国際公開番号】WO2007/112380
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]