活性剤の送達に有用な組成物
【課題】粘膜表面を通して活性物を送達するための組成物、特に鼻腔粘膜経由で薬物送達するための粉末組成物を提供する。
【解決手段】親水性ポリマーマトリクスとして少なくとも1種の合成カルボキシル化ポリマー(特に、架橋ポリアクリル酸)および2価無機金属化合物(特に、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム)を含む粉末組成物。さらに、多糖(特に、デンプン)、活性剤(特に、インシュリンなどのポリペプチド)を含む粉末組成物。
【解決手段】親水性ポリマーマトリクスとして少なくとも1種の合成カルボキシル化ポリマー(特に、架橋ポリアクリル酸)および2価無機金属化合物(特に、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム)を含む粉末組成物。さらに、多糖(特に、デンプン)、活性剤(特に、インシュリンなどのポリペプチド)を含む粉末組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性剤送達のための組成物、並びに特に鼻腔内薬物送達のための組成物を調製する方法、およびそれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘膜付着(mucoadhesion)とも呼ばれる生体接着(bioadhesion)は、薬物の口腔内、鼻腔内および経口投与を改善するための制御された薬物送達システムの開発にとって興味あるものであった。例えば、経口および鼻腔内の空洞は、薬物送達用の都合のよい簡単に利用できる部位を形成する。
【0003】
生体接着組成物は、粘膜を介しての薬物、特に、容易に皮膚に浸透しない高分子、または経口送達には問題のあるもの(例えば、消化管中での退化、腸粘膜を通しての不良吸収)を送達するために有用であることが知られている。
【0004】
鼻粘膜は、高度血管新生化上皮層を含む。この部位は、自己薬物適用に適する便利な表面を提供し、それによって治療費を下げ、患者の薬剤服用遵守を増大させる。投与の鼻腔ルートは利点を提供するが、一方で、不利点もまたある。活性物が粘膜毛様体クリアランスに曝されて、酵素が活性剤の能力を減退させるかまたは除去し得る。
【0005】
従って、活性物の吸収を増進させ、それによって活性物の生体利用効率を増大させる組成物に対する当分野での必要性がある。本発明はこの必要性に対応するものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、粘膜、とりわけ鼻粘膜を介して薬物を送達するために有用な組成物を包含する。本発明の好ましい組成物は、親水性ポリマーマトリクスおよび2価金属無機化合物の混合物を含む粉末配合物である。本発明の実施における使用に好ましい2価金属無機化合物は、CaCO3、Ca(OH)2およびMg(OH)2などのカルシウムまたはマグネシウムの化合物である。好ましくは、その混合物は、約0.5%〜約25重量%の前記2価無機金属化合物、および99.5%〜約75重量%の前記親水性ポリマーマトリクスを含む。一つの実施態様において、親水性ポリマーマトリクスは、約95%〜約5重量%の架橋ポリ(アクリル酸)、約5%〜約95重量%のでんぷんを含む。本発明の組成物は、また、任意に、活性成分を含むことが可能である。
【0007】
本発明の別の実施態様は、活性剤送達用の組成物を調製する方法に関する。好ましい実施態様において、少なくとも1種の溶剤とポリマー混合物を含む溶液が調製され、そこでは、ポリマー混合物が少なくとも1種の合成ポリカルボキシル化ポリマー成分および少なくとも1種の多糖成分を含み、噴霧乾燥されて前記成分の混和物を形成し、さらに、またそこに組み込まれる活性剤の吸収を増大させるか、または投与の前にさらにそこに組み込まれるために有効な量の2価無機金属化合物をその均質な混合物と混ぜることにより、その溶液が乾燥されて固形物を形成する。別の実施態様において、溶剤、ポリマー混合物および2価無機金属化合物を含む溶液が調製され、そしてその溶液が噴霧乾燥されて混和物を形成する。なお別の実施態様において、溶剤、ポリマー混合物、2価無機金属化合物および活性成分(複数を含む)を含む溶液が調製され、そしてその溶液が噴霧乾燥されて混和物を形成する。
【0008】
本発明のさらに別の実施態様は、親水性ポリマーマトリクスおよび2価金属無機化合物の混合物を含む活性成分送達ビヒクル、並びに、治療剤をその必要性にある個体に投与する方法に向けられている。一つの好ましい実施態様において、その送達ビヒクルは、個体の鼻粘膜表面に適用される粉末配合物である。
【0009】
本発明の詳細な説明
驚くべきことに、CaCO3、Ca(OH)2、およびMg(OH)2などの2価無機化合物の有効量を含有する親水性送達組成物または担体組成物の使用が、活性物の生体利用効率を増大させることが見出されてきた。上皮の近くでのカルシウムまたはマグネシウムのイオンの枯渇(例えば、カルボキシル化生体接着性ポリマーによる)が、活性物質の増強された傍細胞輸送(paracellular transport)のための実現機構であることは広く信じられているので、こうした金属カチオンの添加が大きく増大された生体利用効率を提供することは、驚くべきことであり意外なことである。
【0010】
本発明は、そこに組み込まれる活性物(複数を含む)の生体利用効率を増大させる活性剤の送達用の安全な担体組成物を提供する。30%までのまたはそれを超える量の活性剤の生体利用効率の増加、一般に、少なくとも約18%以上の増加が、本発明の組成物を用いて達成され得る。
【0011】
組成物は少なくとも1種の親水性ポリマーの混合物から調製され、少なくとも1種の2価金属無機カチオンを含む。本発明は、また、薬物送達システム、薬物送達システムを調製する方法、および治療剤を個体に投与する方法を提供する。
【0012】
本明細書での使用において、溶液は、部分的な可溶化、コロイド状分散液または全体的な可溶化を意味するように意図されている。
【0013】
本明細書での使用において、固形物は、存在する約10重量%未満の溶剤を有する材料を意味するように意図され、粉末を含む。
【0014】
物理的混合物は、本明細書において、例えば、でんぷんおよびポリ(アクリル酸)のバラバラの粒子を含む混合物を指すように用いられる。
【0015】
混和物は、本明細書において、各粒子が、例えば、でんぷんおよびポリ(アクリル酸)の混合物を含むような混合物を指すように用いられる。
【0016】
本発明の組成物は、活性成分の制御された放出のために用いられる。その組成物は、活性成分の全身および局部両方の投与のために用いることが可能である。
【0017】
本発明の放出制御調製物は、治療剤の必要性のある、または望ましい個体への治療剤投与における用途を見出す。用語「個体」は、本明細書においてその最も広い意味合いで用いられ、動物(ヒト、並びに犬、猫および馬などのコンパニオンアニマルおよび牛および豚などの家畜を含む非ヒトの両方)、および植物(使用のための農業および園芸両方の用途が考えられる)を含む。
【0018】
本明細書での使用において、制御された放出は、宿主の生体系に活性成分を利用可能にするための方法および組成物を意味するように意図されている。制御された放出は、即時放出、遅延放出、および持続放出の使用を含む。「即時放出」は宿主の生体系への即時の放出を指す。「遅延放出」は、活性成分が投与後幾分かの時間遅れまで宿主に対して利用可能とならないことを意味する。「持続放出」は、一般に、それによって宿主に対する利用可能な活性成分のレベルが一定時間帯にわたり一定のレベルに維持される活性成分の放出を指す。各タイプの放出を実施する方法は変えることができる。例えば、活性成分は、物理的におよび/または化学的に界面活性剤、キレート剤等と結合され得る。あるいは、活性成分は皮膜、積層板などによりマスクされることができる。望ましい放出パターンを提供する方法にかかわらず、本発明は、一つ以上の「放出」方法および組成物を利用する制御された放出システムの送達を意図している。さらに、本発明は、放出方法および/または組成物の要素であることができる。
【0019】
本発明の組成物は、薬物などの放出制御活性成分を含むことが可能である。活性成分は先行技術において記載されているあらゆる公知の方法を用いて添加することが可能であり、こうした添加は、組成物の製造の間および/またはその後に行うことが可能である。一般的な活性成分には、薬物などの治療物質または医薬活性剤、化粧品、呼吸気分転換剤などの非治療物質、局部または全身麻酔剤または鎮痛剤、または鎮静剤、ワクチン、抗原、微生物、滅菌物質、避妊組成物、インシュリンまたはカルシトニンなどのタンパク質またはペプチド、殺虫剤、除草剤、成長ホルモンまたは種発芽ホルモンなどのホルモン、ステロイド、毒素、またはマーカー物質を挙げることが可能であるがそれらに限定されない。
【0020】
可能な活性成分の非限定一覧には、ヒドロクロロチアジド、アセタゾールアミド、アセチルサリチル酸、アロプリノール、アルプレノロール、アミロリド、抗不整脈薬、抗生物質、抗糖尿病薬、抗癲癇薬、抗凝結薬、抗かび剤、アテノロール、ベンドロフルメサイアザイド、ベンズブロマロン、ベンズチアジド、ベータメタゾン、気管支拡張薬、ブフェニン、ブルプラノロール、カルシトニン、化学療法薬、クロルジアゼポキシド、クロルクワイン、クロロ・チアシド、クロルプロマジン、クロルタリドン、クレンブテロール、クロミプラミン、クロニジン、コ−デルゴクライン、コルチゾン、デキサメタゾン、デキストロプロポキシフェン、ジアゼパム、ジアゾキシド、ジクロフェナック、ジクロフェナミド、ジギタリス配糖体、ジヒドララジン、ジヒドロエルゴタミン、ジルチアゼム、エルゴタミン、エタクリン酸、エチニルエストラジオール、エトキシゾラミド、フェノテロール、フルドロコルチゾン、フルフェナジン、フルオロセミド、ギャロップアミル、グアネチジン、ホルモン、ヒドロクロロチアジド、ヒドロコルチゾン、ヒドロフルメチアジド、インシュリン、免疫抑制薬、イブプロフェン、イミプラミン、インドメタシン、冠動脈治療薬、レボドパ、リチウム塩、マグネシウム塩、酢酸メドロキシプロゲステロン、マナジオン、メタカロン、8−メトキシソラレン、メチルクロチアジド、メチルドーパ、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、メチルチオウラシル、メチルキサンチン、メチプラノロール、硝酸ミコナゾール、モルシドミン、モルヒネ、ナプロキセン、ニセルグリン、ニフェジピン、ノルフェネフリン、オキシフェンブタゾン、パパベリン、パルメタゾン、ペントバルビタール、パーフェナジン、フェノバービタール、フェニルブタゾン、フィトメナジオン、ピレンゼピン、ポリチアジド、プラゾシン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プロベネシド、プロプラノロール、プロピルチオウラシル、レシンナミン、レセルピン、セクブタバルビタール、セコバルビタール、スピロノラクトン、スルファサラジン、サルファ剤、テストステロン、テオフィリン、チオリダジン、トリアムシノロン、トリアムテレン、トリクロロメチアジド、トリフルオペラジン、トリフルオプロマジン、抗結核薬、ベラパミル、ウイルス抑止薬、ザイトスタチックス、ブロモクリプチン、ブロモプリド、カルビドパ、カルボクロメン、キニーネ、クロルプロチキセン、シメチジン、クロフィブラット、シクリジン、デシプラミン、ジスルフィラム、ドンペリドン、ドキセピン、フェンブフェン、フルフェナム酸、フルナリジン、ゲムフィブロシル、ハロペリドール、ケトプロフェン、ラベタロール、ロラゼパム、メフェナミン酸、メルペロン、メトクロプラミド、ノルトリプチリン、ノスカピン、オクスプレノロール、オキシメトロン、ペンタゾシン、ペチジン、スタノゾロール、スリンダク、スルピリド、チオチキセンが挙げられる。
【0021】
本発明の組成物は、少なくとも1種の溶剤およびポリマー混合物(すなわち、親水性ポリマーマトリクス成分)を含む溶液を形成することにより調製することが可能である。好ましい実施態様において、ポリマー混合物は、少なくとも1種の合成ポリカルボキシル化ポリマー成分および少なくとも1種の多糖成分を含み、次に、溶液は、好ましくは、噴霧乾燥されて前記成分の混和物を形成し、さらに、またそこに組み込まれる活性剤の吸収を増大させるか、または投与前にさらにそこに組み込むために有効な量の2価無機金属化合物を、前記混和物と物理的に混合することにより、乾燥されて固形物を形成する。親水性ポリマーマトリクスを2価無機金属化合物と物理的に混合した後、分散液が作成され、中和され次に活性剤が添加される(または中和し、次に活性剤を添加することができる)。次に、分散液は凍結乾燥されて水含量を除去することができる。
【0022】
別の実施態様において、溶剤、ポリマー混合物、および2価無機金属化合物を含む溶液が調製され、そしてこの溶液が噴霧乾燥されて混和物を形成する。
【0023】
さらに別の実施態様において、溶剤、ポリマー混合物、2価無機金属化合物および活性成分(複数を含む)を含む溶液が調製され、この溶液は噴霧乾燥されて混和物を形成する。
【0024】
本発明の組成物は、鼻粘膜を介しての高分子の送達に特によく適する。
【0025】
本発明の組成物は、任意に1種以上の吸収増進剤を含有することが可能である。吸収増進剤は、少なくとも1種の溶剤、少なくとも1種の吸収増進剤、合成ポリカルボキシル化ポリマーおよび多糖の溶液を乾燥して固形組成物を形成することにより、組成物中に組み込まれる。浸透増進剤とも呼ばれる有用な吸収増進剤には、合成界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、非イオン性界面活性剤(例えば、ラウレス、ポリソルベート)、ステロイド系界面活性剤(例えば、コール酸ナトリウム)、胆汁酸塩(例えば、グリココール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム)、キレート剤(例えば、EDTA、EDTA2ナトリウム)、脂肪酸および誘導体(例えば、ミリスチン酸ナトリウム)、糖エステルとしての他のもの(例えば、パルミチン酸スクロース)、ホスファチジルコリン、アミノカプリン酸、ラウラミドプロピルベタイン、などが挙げられるがそれらに限定されない。本発明の組成物中に組み込まれる吸収増進剤の量は、一般的に、約0.001重量%〜約10重量%の範囲にある。
【0026】
本発明はでんぷんおよびポリアクリル酸を含む担体組成物に関して詳細に記載されるが、一方で、本発明がそのようには限定されないことは理解されるべきである。あらゆる親水性ポリマーマトリクスは、本発明の実施において用いることが可能である。親水性ポリマーには、ヒドロキシプロピルメチル・セルロース、ヒドロキシエチル・セルロース、ヒドロキシプロピル・セルロース、ポリビニル・ピロリドン、カルボキシメチル・セルロース、ポリビニル・アルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレン・グリコール、キサンタン・ゴム、トラガカント、グアールガム、アカシア・ゴム、アラビアゴム、ポリアクリル酸、メチルメタクリル酸コポリマー、カルボキシビニル・ポリマーおよびコポリマーおよびそれらの混合物のような水溶性および水分散性ポリマーが非限定的に挙げられる。
【0027】
本発明の組成物の調製は、少なくとも1種の溶剤、好ましくは水中の、多糖および合成ポリカルボキシル化ポリマーの溶液を混合槽中に充填し、均一に混合されるまで攪拌することにより、達成することが可能である。例えばアミオカ(AMIOCA)(登録商標)のケースにおけるように、溶液を得るために成分ポリマーおよびその溶剤(複数を含む)を加熱することが必要であるかもしれない。例えばバッチ・クッカー(batch cooker)を介して得られる部分的な溶液は、ポリカルボキシル化ポリマーと混和するための十分な溶解性がある場合に用いることが可能である。他のケースにおいて、一段で両方のポリマーを溶解し混合することは可能であり得る。ポリカルボキシル化ポリマーは、NaOHなどの塩基により中和して、当業者には明らかであろうように、粘度の変化を達成することが可能である。成分ポリマー溶液の濃度は、当業者に明白であるように、混合および次の処理のための溶解性および便利な粘度のみの考慮により決定される。
【0028】
溶液混合物中のポリマーの比は、多糖約5部(乾燥重量基準で)+ポリカルボキシル化ポリマー95部〜多糖約95部+ポリカルボキシル化ポリマー5部の範囲内にある。一つの好ましい実施態様において、溶液中のポリマー比は、多糖約25部:ポリカルボキシル化ポリマー約75部である。
【0029】
次に、混合物は、噴霧乾燥、凍結乾燥、空気乾燥、ドラム乾燥および押出しを非限定的に含む従来型の手段により乾燥されて、固形物(例えば、粉末)を提供する。乾燥工程の間に生成される固形物は、好ましくは、約10重量%未満の水分含量を有する。特に好ましい方法は、ポリマーの混和物を形成する噴霧乾燥である。
【0030】
本発明の組成物を調製するために用いられる条件が、有害な副生物をもたらし得る、望ましくない化学反応を避けるように十分に穏やかであり、且つ/または、その処理が十分に迅速である。従って、こうした成分を除去するための精製段階は全く必要とされない。
【0031】
例えば、活性成分の組み込みの前に、必要ならば、公知の手段によって担体組成物を中和することが可能である。
【0032】
本発明の合成ポリカルボキシル化ポリマーは、改質するかまたは改質しないことが可能であり、少なくとも10,000ダルトン、さらに一般的には少なくとも約100,000ダルトン、なおさらに一般的には約1,000,000ダルトンを超える重量平均分子量を有する。改質には、架橋、中和、加水分解および部分エステル化を挙げることが可能であるがそれらに限定されない。
【0033】
本発明において用いることが可能である代表的な合成ポリカルボキシル化ポリマーには、限定なしで、ポリ(アクリル酸)、架橋ポリ(アクリル酸)、長鎖アクリル酸アルキルにより改質されたポリ(アクリル酸)、長鎖アクリル酸アルキルにより改質された架橋ポリ(アクリル酸)が挙げられる。本発明の一般的な合成ポリカルボキシル化ポリマーには、アリル・スクロース、スクロースのアリルエーテル、アリルペンタエリトリトール、ペンタエリトリトールまたはジビニル・グリコールにより架橋されたアクリル酸ポリマーが挙げられる。こうしたポリマーは、商品名カルボポル(CARBOPOL)(登録商標)、ノベオン(NOVEON)(登録商標)およびペムレン(PEMULEN)(登録商標)で、米国オハイオ州、クリーブランドのノベオン社(Noveon Company)から市販されている。特に適するものには、医薬グレードのカルボポル(登録商標)971P、カルボポル(登録商標)934Pおよびカルボポル(登録商標)974Pがある。これらの例は限定するものではなく、本発明による多糖類は、事実上あらゆる合成ポリカルボキシル化ポリマーと組み合わせて用いることが可能である。
【0034】
本発明の多糖類は、植物、動物および微生物源を含む天然産物から誘導される。多糖類の例には、でんぷん、セルロースおよびガラクトマンナンなどのガムが挙げられる。多糖類でんぷんには、トウモロコシ(maize)またはコーン、ワキシーマイズ、ポテト、カサバ、タピオカおよび小麦でんぷんが挙げられる。他のでんぷんには、多様な品種の米、ワキシーライス、エンドウ豆、サゴ、オート麦、大麦、ライ麦、アマランス、サツマイモ、および従来型の植物育種から入手可能なハイブリッドでんぷん、例えば、高アミロースコーンスターチなどの40%以上のアミロース含量を有するハイブリッド高アミロースでんぷんが挙げられる。また有用なものには、高アミロースポテトおよびワキシーポテトスターチなどの遺伝子組み換えでんぷんがある。多糖類は、エーテル化、エステル化、酸加水分解、デキストリン化、架橋、予備糊化または酵素処理(例えば、アルファ−アミラーゼ、ベータ−アミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、またはグルコアミラーゼによる)などにより、改質するかまたは誘導体化することが可能である。特に好ましいものは、ワキシースターチである。本明細書において用いられる用語「ワキシー」(waxy)は、少なくとも約95重量%のアミロペクチンを含有するでんぷんを含むように意図されている。
【0035】
好ましい多糖類は、少なくとも10,000ダルトン、さらに好ましくは少なくとも約100,000ダルトン、なおさらに好ましくは約500,000ダルトンを超え、最も好ましくは約1,000,000ダルトンを超える重量平均分子量を有する。ワキシースターチの分子量は測定するには困難であるが、本発明の実施において用いることができるワキシースターチは、10,000,000ダルトン以上の重量平均分子量を有することが可能である。
【0036】
本発明は、説明の目的のために包含され、どの点からも本発明の範囲を限定しようとは意図されていない以下の実施例においてさらに説明される。
【実施例】
【0037】
実施例1
親水性ポリマーマトリクスの調製
アミオカ(登録商標)ワキシーコーンスターチ(ニュージャージー州、ブリッジウオーターのナショナル・スターチ&ケミカル社(National Starch & Chemical Company)から入手した)10重量%および水90%の混合物を、スラリーとして調製した。ジャケット冷却水での調整により温度を150℃に維持しながら、連続ジェットクッカー(jet cooker)中で2.75バールの圧力で蒸気を注入することにより、その混合物を加熱した。135℃で2時間にわたり小試料を加熱することにより測定される最終でんぷん固形物含量は、7.74%であった。
【0038】
カルボポル(登録商標)974P(B.F.グッドリッチ社(Goodrich Company)から入手した)の1%水溶液を、完全に分散されるまで連続攪拌しながら、脱イオン水にカルボポル(登録商標)を徐々に添加することにより調製した。
【0039】
でんぷん対カルボポル(登録商標)の望ましい比を得るような割合で、でんぷんおよびカルボポル(登録商標)溶液を均一に混合した。例えば、アミオカ(登録商標)溶液1085gのカルボポル(登録商標)溶液5600gとの混合は、固形物基準で計算して、アミオカ(登録商標)60%対カルボポル(登録商標)40%の比率をもたらした。その溶液混合物を水浴中で40℃に加熱し、遠心ホイール噴霧器を用いて噴霧乾燥した。乾燥中の入口温度は205℃であり、出口温度は110℃であった。得られた生成物は、アミオカ(登録商標)およびカルボポル(登録商標)の混和物を含む微細で低密度の白い粉末であった。この実施例において、試料は、アミオカ(登録商標)60%対カルボポル(登録商標)40%の比率で噴霧乾燥(spray drying)することによる調製を示すために、SD60/40と示される。以下の実施例において用いられるように、他の比率も同様に示される。
【0040】
実施例9において、でんぷんおよびカルボポル(登録商標)が固形物として配合されて物理的混合物(physical mixture)を形成する場合に、PMが前に付けられた。アミオカ(登録商標)をカルボポル(登録商標)と乾燥配合することにより、物理的混合物を調製した。
【0041】
実施例2
ペプチドおよびタンパク質の鼻腔送達
蒸留水中のNaOHによるSD25/75の分散液のpH7.4への部分中和(共混合物の部分中和は、インシュリンの変性を防止し、また炎症を誘発することなしに高レベルのカルボポルの使用を可能とする)後、粉末mg当りインシュリン1IUの比率でインシュリンを添加した。これを凍結乾燥し、次いでその粉末を63ミクロンのメッシュサイズの篩いにかけた。粉末10mgを鼻孔からウサギに投与した(n=8)。
【0042】
図1に見ることができるように、インシュリン血清濃度(Cmax)は681.0±247μIU/mlであり、tmaxは51±7分であった。絶対インシュリン生体利用効率は19.2±5.3%であると計算されたが、これは、明らかに、ペプチドおよびタンパク質が本発明の親水性マトリクス組成物から鼻粘膜を介して送達することができることを実証する。
【0043】
実施例3
親水性マトリクス中への高密度炭酸カルシウムの組み込みのインシュリン生体利用効率に与える効果
90%のSD25/75および10%のCaCO3HDの物理的混合物に基づき粉末配合物を調製した。結果を表1および図2に示す。
【表1】
【0044】
図2は、噴霧乾燥されたアミオカ(登録商標)でんぷん/カルボポル(登録商標)974Pが25/75の混合物、および(噴霧乾燥されたアミオカ(登録商標)でんぷん/カルボポル(登録商標)974P、25/75)/CaCO3HDが90/10の混合物に基づく、粉末配合物のウサギに対する鼻腔送達後のインシュリン血清濃度−時間プロフィールを示す。図2に見ることができるように、この配合物の鼻腔送達は、Cmax1267±424μIU/mlおよびtmax28.9±5.1分をもたらした。
【0045】
この実施例は、CaCO3HDが配合物中に用いられる場合に、インシュリンの計算生体利用効率は26.0±10.6%に上がったことを示す。CaCO3HDが組成物中に組み込まれた場合に、生体利用効率が上がり、Cmaxが上がり、tmaxは下がった。
【0046】
実施例4
炭酸カルシウムの密度の影響
低密度(low density)の炭酸カルシウム(CaCO3LD)を用いて、実施例3を繰り返した。図3に見ることができるように、CaCO3LDの使用は類似の生体利用効率、Cmaxおよびtmaxを有した。
【0047】
実施例5
親水性マトリクス組成物の影響
(SD25/75)/CaCO3LDが90/10の混合物の代わりに、(SD75/25)/CaCO3LDが90/10の混合物を調製し試験することを除いて、実施例4を繰り返した。結果を表2および図4に示す。
【表2】
【0048】
結果は、インシュリンの生体利用効率は類似である一方で、Cmaxの増加およびtmaxの減少があることを示す。
【0049】
実施例6
低密度炭酸カルシウムの親水性マトリクス中への組み込みのカルシトニン生体利用効率に与える効果
インシュリンをカルシトニンに置き換えることを除いて、実施例4を繰り返した。図5から、配合物中のCaCO3LDの使用がわずかに高い生体利用効率、増大したCmaxおよび類似のtmaxをもたらしたことを見ることができる。
【0050】
実施例7
異なるCa2+化合物の吸収増進に与える影響
CaCO3LDをより可溶性のCa(OH)2と置き換えることを除いて、実施例4を再度繰り返した。図6に見ることができるように、10%Ca(OH)2の90%SD25/75への添加は、(SD25/75)/CaCO3が90/10と類似の放出プロフィールを有する。
【0051】
実施例8
親水性マトリクス組成物中で用いられるCa2+イオンの比率の影響
種々の量のCa(OH)2を用いて((SD25/75)/Ca(OH)2の比が90/1、90/10、90/20および90/30)、実施例7を繰り返した。結果を表3に示す。
【表3】
【0052】
これらの結果から、最適の生体利用効率およびCmaxが90/10配合物に対して見られることが分かる。TmaxはCa(OH)2濃度が増大するにつれて減少する。
【0053】
実施例9
物理的な混合物対噴霧乾燥された混合物
SD25/75をアミオカ(登録商標)およびカルボポル(登録商標)の物理的な混合物に置き換えることを除いて、実施例7を繰り返した。物理的混合物または噴霧乾燥混合物単独を含む組成物、および(90PM25/75)/10Ca(OH)2対(90SD25/75)/10Ca(OH)2の比較を図7に示す。図7から、物理的混合物により作成された組成物がインシュリン摂取の低下を示すが、しかし、Ca(OH)2が添加される場合に類似の増進放出プロフィールが見られることが分かる。
【0054】
実施例10
他の2価金属カチオンの影響
Ca(OH)2の代わりにMg(OH)2を用いて、実施例7を繰り返した。表4に表される結果は、SD25/75へのMg(OH)2の添加が(SD25/75)/Ca(OH)2と類似の生体利用効率、Cmaxおよびtmaxを有することを示す。
【表4】
【0055】
実施例11
炭酸カルシウムの炎症ポテンシャル
処理後の粘膜からのタンパク質および酵素放出の分析は、炎症ポテンシャルの尺度を提供する。膜結合アルカリ・ホスファターゼ(ALP)の放出、およびまた細胞質ゾル内の酵素ラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)の出現は、損傷細胞から生じる。
【0056】
この実施例において、SD25/75を(SD25/75)/CaCO3LDと比較した。5日間連続して、粉末10.0mgをウサギの鼻孔中に噴霧した。投与の1時間前および1時間後にリン酸緩衝生理食塩水により鼻孔を洗浄し、膜損傷を測定するためにLDHおよびALPの量を試験した。
【0057】
図8から、両方の配合物に対してLDH活性のレベルが投与の1時間後に増大することが見られる。投与後23時間で、低下したLDH活性が見られる。SD25/75に対するLDH活性が(SD25/75)/CaCO3を用いるLDH活性よりも高いことも見られる。とりわけ、最終投与の3日後でのLDH放出は、膜損傷が可逆性であることを示す基礎のLDH放出に匹敵するものである。
【0058】
図9から、両方の配合物により、ALP活性レベルが投与の1時間後に増大することが見られる。投与の23時間後に、低下したALP活性が見られる。SD25/75に対するALP活性が(SD25/75)/CaCO3を用いるALP活性に匹敵することも見られる。最終投与の3日後でのALP放出は、膜損傷が可逆性であることを示す基礎のLDH放出に匹敵するものである。
【0059】
図10から、タンパク質放出が酵素放出に対して類似の傾向を描くことが見られる。
【0060】
実施例12
カルボポル(登録商標)974の吸収増進に与える影響
アミオカ(登録商標)/カルボポル(登録商標)噴霧乾燥混合物の代わりに純粋なアミオカ(登録商標)でんぷんを用いることを除いて、実施例4を繰り返した。図11に見ることができるように、配合物中でのCaCO3LDの使用は、類似の生体利用効率、Cmaxおよびtmaxをもたらした。
【0061】
本発明の多くの修正および変化は、当業者に明らかなように、その精神および範囲から逸脱することなくなすことができる。本明細書において記載される特定実施態様はほんの一例として提供されると共に、本発明は、こうしたクレームが権利を与える同等品の全範囲と併せて添付クレームの条件によってのみ限定されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】噴霧乾燥されたアミオカ(登録商標)/カルボボル(登録商標)974P(25/75)に基づく粉末配合物の鼻腔投与後のインシュリン血清濃度−時間プロフィールを示す。
【図2】鼻腔投与後のインシュリン生体利用効率に与えるCaCO3の影響を示すグラフである。
【図3】鼻腔投与後のインシュリン生体利用効率に与えるCaCO3の密度の影響(高密度対低密度)を示すグラフである。
【0063】
【図4】鼻腔送達後のインシュリン生体利用効率に与える、CaCO3添加の有無での、アミオカ(登録商標)/カルボボル(登録商標)974Pの異なる比(75/25対図3の25/75の比)の影響を示すグラフである。
【図5】鼻腔投与後のカルシトニン生体利用効率に与えるCaCO3の影響を示すグラフである。
【図6】鼻腔送達後のインシュリン生体利用効率に与える異なるCa2+化合物の影響を示すグラフである。
【図7】CaCO3添加の有無での、アミオカ(登録商標)/カルボボル(登録商標)974Pの噴霧乾燥混合物の代わりにアミオカ(登録商標)/カルボボル(登録商標)974Pの物理的混合物を用いる場合の、鼻腔投与後のインシュリン生体利用効率における違いを示すグラフである。
【0064】
【図8】CaCO3添加の有無での、アミオカ(登録商標)/カルボボル(登録商標)974Pの噴霧乾燥混合物に基づく粉末配合物の5日間連続した鼻腔送達の1時間前および1時間後のウサギの鼻腔における酵素(LDH)活性を示すグラフである。
【図9】CaCO3添加の有無での、アミオカ(登録商標)/カルボボル(登録商標)974Pの噴霧乾燥混合物に基づく粉末配合物の5日間連続した鼻腔送達の1時間前および1時間後のウサギの鼻腔における酵素(ALP)活性を示すグラフである。
【図10】CaCO3有無の組成物を用いる時間にわたる、CaCO3添加の有無での、アミオカ(登録商標)/カルボボル(登録商標)974Pの噴霧乾燥混合物に基づく粉末配合物の5日間連続した鼻腔送達の1時間前および1時間後のウサギの鼻腔において放出されたタンパク質濃度を示すグラフである。
【図11】吸収増進に与えるカルボボル(登録商標)974Pの影響を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性剤送達のための組成物、並びに特に鼻腔内薬物送達のための組成物を調製する方法、およびそれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘膜付着(mucoadhesion)とも呼ばれる生体接着(bioadhesion)は、薬物の口腔内、鼻腔内および経口投与を改善するための制御された薬物送達システムの開発にとって興味あるものであった。例えば、経口および鼻腔内の空洞は、薬物送達用の都合のよい簡単に利用できる部位を形成する。
【0003】
生体接着組成物は、粘膜を介しての薬物、特に、容易に皮膚に浸透しない高分子、または経口送達には問題のあるもの(例えば、消化管中での退化、腸粘膜を通しての不良吸収)を送達するために有用であることが知られている。
【0004】
鼻粘膜は、高度血管新生化上皮層を含む。この部位は、自己薬物適用に適する便利な表面を提供し、それによって治療費を下げ、患者の薬剤服用遵守を増大させる。投与の鼻腔ルートは利点を提供するが、一方で、不利点もまたある。活性物が粘膜毛様体クリアランスに曝されて、酵素が活性剤の能力を減退させるかまたは除去し得る。
【0005】
従って、活性物の吸収を増進させ、それによって活性物の生体利用効率を増大させる組成物に対する当分野での必要性がある。本発明はこの必要性に対応するものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、粘膜、とりわけ鼻粘膜を介して薬物を送達するために有用な組成物を包含する。本発明の好ましい組成物は、親水性ポリマーマトリクスおよび2価金属無機化合物の混合物を含む粉末配合物である。本発明の実施における使用に好ましい2価金属無機化合物は、CaCO3、Ca(OH)2およびMg(OH)2などのカルシウムまたはマグネシウムの化合物である。好ましくは、その混合物は、約0.5%〜約25重量%の前記2価無機金属化合物、および99.5%〜約75重量%の前記親水性ポリマーマトリクスを含む。一つの実施態様において、親水性ポリマーマトリクスは、約95%〜約5重量%の架橋ポリ(アクリル酸)、約5%〜約95重量%のでんぷんを含む。本発明の組成物は、また、任意に、活性成分を含むことが可能である。
【0007】
本発明の別の実施態様は、活性剤送達用の組成物を調製する方法に関する。好ましい実施態様において、少なくとも1種の溶剤とポリマー混合物を含む溶液が調製され、そこでは、ポリマー混合物が少なくとも1種の合成ポリカルボキシル化ポリマー成分および少なくとも1種の多糖成分を含み、噴霧乾燥されて前記成分の混和物を形成し、さらに、またそこに組み込まれる活性剤の吸収を増大させるか、または投与の前にさらにそこに組み込まれるために有効な量の2価無機金属化合物をその均質な混合物と混ぜることにより、その溶液が乾燥されて固形物を形成する。別の実施態様において、溶剤、ポリマー混合物および2価無機金属化合物を含む溶液が調製され、そしてその溶液が噴霧乾燥されて混和物を形成する。なお別の実施態様において、溶剤、ポリマー混合物、2価無機金属化合物および活性成分(複数を含む)を含む溶液が調製され、そしてその溶液が噴霧乾燥されて混和物を形成する。
【0008】
本発明のさらに別の実施態様は、親水性ポリマーマトリクスおよび2価金属無機化合物の混合物を含む活性成分送達ビヒクル、並びに、治療剤をその必要性にある個体に投与する方法に向けられている。一つの好ましい実施態様において、その送達ビヒクルは、個体の鼻粘膜表面に適用される粉末配合物である。
【0009】
本発明の詳細な説明
驚くべきことに、CaCO3、Ca(OH)2、およびMg(OH)2などの2価無機化合物の有効量を含有する親水性送達組成物または担体組成物の使用が、活性物の生体利用効率を増大させることが見出されてきた。上皮の近くでのカルシウムまたはマグネシウムのイオンの枯渇(例えば、カルボキシル化生体接着性ポリマーによる)が、活性物質の増強された傍細胞輸送(paracellular transport)のための実現機構であることは広く信じられているので、こうした金属カチオンの添加が大きく増大された生体利用効率を提供することは、驚くべきことであり意外なことである。
【0010】
本発明は、そこに組み込まれる活性物(複数を含む)の生体利用効率を増大させる活性剤の送達用の安全な担体組成物を提供する。30%までのまたはそれを超える量の活性剤の生体利用効率の増加、一般に、少なくとも約18%以上の増加が、本発明の組成物を用いて達成され得る。
【0011】
組成物は少なくとも1種の親水性ポリマーの混合物から調製され、少なくとも1種の2価金属無機カチオンを含む。本発明は、また、薬物送達システム、薬物送達システムを調製する方法、および治療剤を個体に投与する方法を提供する。
【0012】
本明細書での使用において、溶液は、部分的な可溶化、コロイド状分散液または全体的な可溶化を意味するように意図されている。
【0013】
本明細書での使用において、固形物は、存在する約10重量%未満の溶剤を有する材料を意味するように意図され、粉末を含む。
【0014】
物理的混合物は、本明細書において、例えば、でんぷんおよびポリ(アクリル酸)のバラバラの粒子を含む混合物を指すように用いられる。
【0015】
混和物は、本明細書において、各粒子が、例えば、でんぷんおよびポリ(アクリル酸)の混合物を含むような混合物を指すように用いられる。
【0016】
本発明の組成物は、活性成分の制御された放出のために用いられる。その組成物は、活性成分の全身および局部両方の投与のために用いることが可能である。
【0017】
本発明の放出制御調製物は、治療剤の必要性のある、または望ましい個体への治療剤投与における用途を見出す。用語「個体」は、本明細書においてその最も広い意味合いで用いられ、動物(ヒト、並びに犬、猫および馬などのコンパニオンアニマルおよび牛および豚などの家畜を含む非ヒトの両方)、および植物(使用のための農業および園芸両方の用途が考えられる)を含む。
【0018】
本明細書での使用において、制御された放出は、宿主の生体系に活性成分を利用可能にするための方法および組成物を意味するように意図されている。制御された放出は、即時放出、遅延放出、および持続放出の使用を含む。「即時放出」は宿主の生体系への即時の放出を指す。「遅延放出」は、活性成分が投与後幾分かの時間遅れまで宿主に対して利用可能とならないことを意味する。「持続放出」は、一般に、それによって宿主に対する利用可能な活性成分のレベルが一定時間帯にわたり一定のレベルに維持される活性成分の放出を指す。各タイプの放出を実施する方法は変えることができる。例えば、活性成分は、物理的におよび/または化学的に界面活性剤、キレート剤等と結合され得る。あるいは、活性成分は皮膜、積層板などによりマスクされることができる。望ましい放出パターンを提供する方法にかかわらず、本発明は、一つ以上の「放出」方法および組成物を利用する制御された放出システムの送達を意図している。さらに、本発明は、放出方法および/または組成物の要素であることができる。
【0019】
本発明の組成物は、薬物などの放出制御活性成分を含むことが可能である。活性成分は先行技術において記載されているあらゆる公知の方法を用いて添加することが可能であり、こうした添加は、組成物の製造の間および/またはその後に行うことが可能である。一般的な活性成分には、薬物などの治療物質または医薬活性剤、化粧品、呼吸気分転換剤などの非治療物質、局部または全身麻酔剤または鎮痛剤、または鎮静剤、ワクチン、抗原、微生物、滅菌物質、避妊組成物、インシュリンまたはカルシトニンなどのタンパク質またはペプチド、殺虫剤、除草剤、成長ホルモンまたは種発芽ホルモンなどのホルモン、ステロイド、毒素、またはマーカー物質を挙げることが可能であるがそれらに限定されない。
【0020】
可能な活性成分の非限定一覧には、ヒドロクロロチアジド、アセタゾールアミド、アセチルサリチル酸、アロプリノール、アルプレノロール、アミロリド、抗不整脈薬、抗生物質、抗糖尿病薬、抗癲癇薬、抗凝結薬、抗かび剤、アテノロール、ベンドロフルメサイアザイド、ベンズブロマロン、ベンズチアジド、ベータメタゾン、気管支拡張薬、ブフェニン、ブルプラノロール、カルシトニン、化学療法薬、クロルジアゼポキシド、クロルクワイン、クロロ・チアシド、クロルプロマジン、クロルタリドン、クレンブテロール、クロミプラミン、クロニジン、コ−デルゴクライン、コルチゾン、デキサメタゾン、デキストロプロポキシフェン、ジアゼパム、ジアゾキシド、ジクロフェナック、ジクロフェナミド、ジギタリス配糖体、ジヒドララジン、ジヒドロエルゴタミン、ジルチアゼム、エルゴタミン、エタクリン酸、エチニルエストラジオール、エトキシゾラミド、フェノテロール、フルドロコルチゾン、フルフェナジン、フルオロセミド、ギャロップアミル、グアネチジン、ホルモン、ヒドロクロロチアジド、ヒドロコルチゾン、ヒドロフルメチアジド、インシュリン、免疫抑制薬、イブプロフェン、イミプラミン、インドメタシン、冠動脈治療薬、レボドパ、リチウム塩、マグネシウム塩、酢酸メドロキシプロゲステロン、マナジオン、メタカロン、8−メトキシソラレン、メチルクロチアジド、メチルドーパ、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、メチルチオウラシル、メチルキサンチン、メチプラノロール、硝酸ミコナゾール、モルシドミン、モルヒネ、ナプロキセン、ニセルグリン、ニフェジピン、ノルフェネフリン、オキシフェンブタゾン、パパベリン、パルメタゾン、ペントバルビタール、パーフェナジン、フェノバービタール、フェニルブタゾン、フィトメナジオン、ピレンゼピン、ポリチアジド、プラゾシン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プロベネシド、プロプラノロール、プロピルチオウラシル、レシンナミン、レセルピン、セクブタバルビタール、セコバルビタール、スピロノラクトン、スルファサラジン、サルファ剤、テストステロン、テオフィリン、チオリダジン、トリアムシノロン、トリアムテレン、トリクロロメチアジド、トリフルオペラジン、トリフルオプロマジン、抗結核薬、ベラパミル、ウイルス抑止薬、ザイトスタチックス、ブロモクリプチン、ブロモプリド、カルビドパ、カルボクロメン、キニーネ、クロルプロチキセン、シメチジン、クロフィブラット、シクリジン、デシプラミン、ジスルフィラム、ドンペリドン、ドキセピン、フェンブフェン、フルフェナム酸、フルナリジン、ゲムフィブロシル、ハロペリドール、ケトプロフェン、ラベタロール、ロラゼパム、メフェナミン酸、メルペロン、メトクロプラミド、ノルトリプチリン、ノスカピン、オクスプレノロール、オキシメトロン、ペンタゾシン、ペチジン、スタノゾロール、スリンダク、スルピリド、チオチキセンが挙げられる。
【0021】
本発明の組成物は、少なくとも1種の溶剤およびポリマー混合物(すなわち、親水性ポリマーマトリクス成分)を含む溶液を形成することにより調製することが可能である。好ましい実施態様において、ポリマー混合物は、少なくとも1種の合成ポリカルボキシル化ポリマー成分および少なくとも1種の多糖成分を含み、次に、溶液は、好ましくは、噴霧乾燥されて前記成分の混和物を形成し、さらに、またそこに組み込まれる活性剤の吸収を増大させるか、または投与前にさらにそこに組み込むために有効な量の2価無機金属化合物を、前記混和物と物理的に混合することにより、乾燥されて固形物を形成する。親水性ポリマーマトリクスを2価無機金属化合物と物理的に混合した後、分散液が作成され、中和され次に活性剤が添加される(または中和し、次に活性剤を添加することができる)。次に、分散液は凍結乾燥されて水含量を除去することができる。
【0022】
別の実施態様において、溶剤、ポリマー混合物、および2価無機金属化合物を含む溶液が調製され、そしてこの溶液が噴霧乾燥されて混和物を形成する。
【0023】
さらに別の実施態様において、溶剤、ポリマー混合物、2価無機金属化合物および活性成分(複数を含む)を含む溶液が調製され、この溶液は噴霧乾燥されて混和物を形成する。
【0024】
本発明の組成物は、鼻粘膜を介しての高分子の送達に特によく適する。
【0025】
本発明の組成物は、任意に1種以上の吸収増進剤を含有することが可能である。吸収増進剤は、少なくとも1種の溶剤、少なくとも1種の吸収増進剤、合成ポリカルボキシル化ポリマーおよび多糖の溶液を乾燥して固形組成物を形成することにより、組成物中に組み込まれる。浸透増進剤とも呼ばれる有用な吸収増進剤には、合成界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、非イオン性界面活性剤(例えば、ラウレス、ポリソルベート)、ステロイド系界面活性剤(例えば、コール酸ナトリウム)、胆汁酸塩(例えば、グリココール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム)、キレート剤(例えば、EDTA、EDTA2ナトリウム)、脂肪酸および誘導体(例えば、ミリスチン酸ナトリウム)、糖エステルとしての他のもの(例えば、パルミチン酸スクロース)、ホスファチジルコリン、アミノカプリン酸、ラウラミドプロピルベタイン、などが挙げられるがそれらに限定されない。本発明の組成物中に組み込まれる吸収増進剤の量は、一般的に、約0.001重量%〜約10重量%の範囲にある。
【0026】
本発明はでんぷんおよびポリアクリル酸を含む担体組成物に関して詳細に記載されるが、一方で、本発明がそのようには限定されないことは理解されるべきである。あらゆる親水性ポリマーマトリクスは、本発明の実施において用いることが可能である。親水性ポリマーには、ヒドロキシプロピルメチル・セルロース、ヒドロキシエチル・セルロース、ヒドロキシプロピル・セルロース、ポリビニル・ピロリドン、カルボキシメチル・セルロース、ポリビニル・アルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレン・グリコール、キサンタン・ゴム、トラガカント、グアールガム、アカシア・ゴム、アラビアゴム、ポリアクリル酸、メチルメタクリル酸コポリマー、カルボキシビニル・ポリマーおよびコポリマーおよびそれらの混合物のような水溶性および水分散性ポリマーが非限定的に挙げられる。
【0027】
本発明の組成物の調製は、少なくとも1種の溶剤、好ましくは水中の、多糖および合成ポリカルボキシル化ポリマーの溶液を混合槽中に充填し、均一に混合されるまで攪拌することにより、達成することが可能である。例えばアミオカ(AMIOCA)(登録商標)のケースにおけるように、溶液を得るために成分ポリマーおよびその溶剤(複数を含む)を加熱することが必要であるかもしれない。例えばバッチ・クッカー(batch cooker)を介して得られる部分的な溶液は、ポリカルボキシル化ポリマーと混和するための十分な溶解性がある場合に用いることが可能である。他のケースにおいて、一段で両方のポリマーを溶解し混合することは可能であり得る。ポリカルボキシル化ポリマーは、NaOHなどの塩基により中和して、当業者には明らかであろうように、粘度の変化を達成することが可能である。成分ポリマー溶液の濃度は、当業者に明白であるように、混合および次の処理のための溶解性および便利な粘度のみの考慮により決定される。
【0028】
溶液混合物中のポリマーの比は、多糖約5部(乾燥重量基準で)+ポリカルボキシル化ポリマー95部〜多糖約95部+ポリカルボキシル化ポリマー5部の範囲内にある。一つの好ましい実施態様において、溶液中のポリマー比は、多糖約25部:ポリカルボキシル化ポリマー約75部である。
【0029】
次に、混合物は、噴霧乾燥、凍結乾燥、空気乾燥、ドラム乾燥および押出しを非限定的に含む従来型の手段により乾燥されて、固形物(例えば、粉末)を提供する。乾燥工程の間に生成される固形物は、好ましくは、約10重量%未満の水分含量を有する。特に好ましい方法は、ポリマーの混和物を形成する噴霧乾燥である。
【0030】
本発明の組成物を調製するために用いられる条件が、有害な副生物をもたらし得る、望ましくない化学反応を避けるように十分に穏やかであり、且つ/または、その処理が十分に迅速である。従って、こうした成分を除去するための精製段階は全く必要とされない。
【0031】
例えば、活性成分の組み込みの前に、必要ならば、公知の手段によって担体組成物を中和することが可能である。
【0032】
本発明の合成ポリカルボキシル化ポリマーは、改質するかまたは改質しないことが可能であり、少なくとも10,000ダルトン、さらに一般的には少なくとも約100,000ダルトン、なおさらに一般的には約1,000,000ダルトンを超える重量平均分子量を有する。改質には、架橋、中和、加水分解および部分エステル化を挙げることが可能であるがそれらに限定されない。
【0033】
本発明において用いることが可能である代表的な合成ポリカルボキシル化ポリマーには、限定なしで、ポリ(アクリル酸)、架橋ポリ(アクリル酸)、長鎖アクリル酸アルキルにより改質されたポリ(アクリル酸)、長鎖アクリル酸アルキルにより改質された架橋ポリ(アクリル酸)が挙げられる。本発明の一般的な合成ポリカルボキシル化ポリマーには、アリル・スクロース、スクロースのアリルエーテル、アリルペンタエリトリトール、ペンタエリトリトールまたはジビニル・グリコールにより架橋されたアクリル酸ポリマーが挙げられる。こうしたポリマーは、商品名カルボポル(CARBOPOL)(登録商標)、ノベオン(NOVEON)(登録商標)およびペムレン(PEMULEN)(登録商標)で、米国オハイオ州、クリーブランドのノベオン社(Noveon Company)から市販されている。特に適するものには、医薬グレードのカルボポル(登録商標)971P、カルボポル(登録商標)934Pおよびカルボポル(登録商標)974Pがある。これらの例は限定するものではなく、本発明による多糖類は、事実上あらゆる合成ポリカルボキシル化ポリマーと組み合わせて用いることが可能である。
【0034】
本発明の多糖類は、植物、動物および微生物源を含む天然産物から誘導される。多糖類の例には、でんぷん、セルロースおよびガラクトマンナンなどのガムが挙げられる。多糖類でんぷんには、トウモロコシ(maize)またはコーン、ワキシーマイズ、ポテト、カサバ、タピオカおよび小麦でんぷんが挙げられる。他のでんぷんには、多様な品種の米、ワキシーライス、エンドウ豆、サゴ、オート麦、大麦、ライ麦、アマランス、サツマイモ、および従来型の植物育種から入手可能なハイブリッドでんぷん、例えば、高アミロースコーンスターチなどの40%以上のアミロース含量を有するハイブリッド高アミロースでんぷんが挙げられる。また有用なものには、高アミロースポテトおよびワキシーポテトスターチなどの遺伝子組み換えでんぷんがある。多糖類は、エーテル化、エステル化、酸加水分解、デキストリン化、架橋、予備糊化または酵素処理(例えば、アルファ−アミラーゼ、ベータ−アミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、またはグルコアミラーゼによる)などにより、改質するかまたは誘導体化することが可能である。特に好ましいものは、ワキシースターチである。本明細書において用いられる用語「ワキシー」(waxy)は、少なくとも約95重量%のアミロペクチンを含有するでんぷんを含むように意図されている。
【0035】
好ましい多糖類は、少なくとも10,000ダルトン、さらに好ましくは少なくとも約100,000ダルトン、なおさらに好ましくは約500,000ダルトンを超え、最も好ましくは約1,000,000ダルトンを超える重量平均分子量を有する。ワキシースターチの分子量は測定するには困難であるが、本発明の実施において用いることができるワキシースターチは、10,000,000ダルトン以上の重量平均分子量を有することが可能である。
【0036】
本発明は、説明の目的のために包含され、どの点からも本発明の範囲を限定しようとは意図されていない以下の実施例においてさらに説明される。
【実施例】
【0037】
実施例1
親水性ポリマーマトリクスの調製
アミオカ(登録商標)ワキシーコーンスターチ(ニュージャージー州、ブリッジウオーターのナショナル・スターチ&ケミカル社(National Starch & Chemical Company)から入手した)10重量%および水90%の混合物を、スラリーとして調製した。ジャケット冷却水での調整により温度を150℃に維持しながら、連続ジェットクッカー(jet cooker)中で2.75バールの圧力で蒸気を注入することにより、その混合物を加熱した。135℃で2時間にわたり小試料を加熱することにより測定される最終でんぷん固形物含量は、7.74%であった。
【0038】
カルボポル(登録商標)974P(B.F.グッドリッチ社(Goodrich Company)から入手した)の1%水溶液を、完全に分散されるまで連続攪拌しながら、脱イオン水にカルボポル(登録商標)を徐々に添加することにより調製した。
【0039】
でんぷん対カルボポル(登録商標)の望ましい比を得るような割合で、でんぷんおよびカルボポル(登録商標)溶液を均一に混合した。例えば、アミオカ(登録商標)溶液1085gのカルボポル(登録商標)溶液5600gとの混合は、固形物基準で計算して、アミオカ(登録商標)60%対カルボポル(登録商標)40%の比率をもたらした。その溶液混合物を水浴中で40℃に加熱し、遠心ホイール噴霧器を用いて噴霧乾燥した。乾燥中の入口温度は205℃であり、出口温度は110℃であった。得られた生成物は、アミオカ(登録商標)およびカルボポル(登録商標)の混和物を含む微細で低密度の白い粉末であった。この実施例において、試料は、アミオカ(登録商標)60%対カルボポル(登録商標)40%の比率で噴霧乾燥(spray drying)することによる調製を示すために、SD60/40と示される。以下の実施例において用いられるように、他の比率も同様に示される。
【0040】
実施例9において、でんぷんおよびカルボポル(登録商標)が固形物として配合されて物理的混合物(physical mixture)を形成する場合に、PMが前に付けられた。アミオカ(登録商標)をカルボポル(登録商標)と乾燥配合することにより、物理的混合物を調製した。
【0041】
実施例2
ペプチドおよびタンパク質の鼻腔送達
蒸留水中のNaOHによるSD25/75の分散液のpH7.4への部分中和(共混合物の部分中和は、インシュリンの変性を防止し、また炎症を誘発することなしに高レベルのカルボポルの使用を可能とする)後、粉末mg当りインシュリン1IUの比率でインシュリンを添加した。これを凍結乾燥し、次いでその粉末を63ミクロンのメッシュサイズの篩いにかけた。粉末10mgを鼻孔からウサギに投与した(n=8)。
【0042】
図1に見ることができるように、インシュリン血清濃度(Cmax)は681.0±247μIU/mlであり、tmaxは51±7分であった。絶対インシュリン生体利用効率は19.2±5.3%であると計算されたが、これは、明らかに、ペプチドおよびタンパク質が本発明の親水性マトリクス組成物から鼻粘膜を介して送達することができることを実証する。
【0043】
実施例3
親水性マトリクス中への高密度炭酸カルシウムの組み込みのインシュリン生体利用効率に与える効果
90%のSD25/75および10%のCaCO3HDの物理的混合物に基づき粉末配合物を調製した。結果を表1および図2に示す。
【表1】
【0044】
図2は、噴霧乾燥されたアミオカ(登録商標)でんぷん/カルボポル(登録商標)974Pが25/75の混合物、および(噴霧乾燥されたアミオカ(登録商標)でんぷん/カルボポル(登録商標)974P、25/75)/CaCO3HDが90/10の混合物に基づく、粉末配合物のウサギに対する鼻腔送達後のインシュリン血清濃度−時間プロフィールを示す。図2に見ることができるように、この配合物の鼻腔送達は、Cmax1267±424μIU/mlおよびtmax28.9±5.1分をもたらした。
【0045】
この実施例は、CaCO3HDが配合物中に用いられる場合に、インシュリンの計算生体利用効率は26.0±10.6%に上がったことを示す。CaCO3HDが組成物中に組み込まれた場合に、生体利用効率が上がり、Cmaxが上がり、tmaxは下がった。
【0046】
実施例4
炭酸カルシウムの密度の影響
低密度(low density)の炭酸カルシウム(CaCO3LD)を用いて、実施例3を繰り返した。図3に見ることができるように、CaCO3LDの使用は類似の生体利用効率、Cmaxおよびtmaxを有した。
【0047】
実施例5
親水性マトリクス組成物の影響
(SD25/75)/CaCO3LDが90/10の混合物の代わりに、(SD75/25)/CaCO3LDが90/10の混合物を調製し試験することを除いて、実施例4を繰り返した。結果を表2および図4に示す。
【表2】
【0048】
結果は、インシュリンの生体利用効率は類似である一方で、Cmaxの増加およびtmaxの減少があることを示す。
【0049】
実施例6
低密度炭酸カルシウムの親水性マトリクス中への組み込みのカルシトニン生体利用効率に与える効果
インシュリンをカルシトニンに置き換えることを除いて、実施例4を繰り返した。図5から、配合物中のCaCO3LDの使用がわずかに高い生体利用効率、増大したCmaxおよび類似のtmaxをもたらしたことを見ることができる。
【0050】
実施例7
異なるCa2+化合物の吸収増進に与える影響
CaCO3LDをより可溶性のCa(OH)2と置き換えることを除いて、実施例4を再度繰り返した。図6に見ることができるように、10%Ca(OH)2の90%SD25/75への添加は、(SD25/75)/CaCO3が90/10と類似の放出プロフィールを有する。
【0051】
実施例8
親水性マトリクス組成物中で用いられるCa2+イオンの比率の影響
種々の量のCa(OH)2を用いて((SD25/75)/Ca(OH)2の比が90/1、90/10、90/20および90/30)、実施例7を繰り返した。結果を表3に示す。
【表3】
【0052】
これらの結果から、最適の生体利用効率およびCmaxが90/10配合物に対して見られることが分かる。TmaxはCa(OH)2濃度が増大するにつれて減少する。
【0053】
実施例9
物理的な混合物対噴霧乾燥された混合物
SD25/75をアミオカ(登録商標)およびカルボポル(登録商標)の物理的な混合物に置き換えることを除いて、実施例7を繰り返した。物理的混合物または噴霧乾燥混合物単独を含む組成物、および(90PM25/75)/10Ca(OH)2対(90SD25/75)/10Ca(OH)2の比較を図7に示す。図7から、物理的混合物により作成された組成物がインシュリン摂取の低下を示すが、しかし、Ca(OH)2が添加される場合に類似の増進放出プロフィールが見られることが分かる。
【0054】
実施例10
他の2価金属カチオンの影響
Ca(OH)2の代わりにMg(OH)2を用いて、実施例7を繰り返した。表4に表される結果は、SD25/75へのMg(OH)2の添加が(SD25/75)/Ca(OH)2と類似の生体利用効率、Cmaxおよびtmaxを有することを示す。
【表4】
【0055】
実施例11
炭酸カルシウムの炎症ポテンシャル
処理後の粘膜からのタンパク質および酵素放出の分析は、炎症ポテンシャルの尺度を提供する。膜結合アルカリ・ホスファターゼ(ALP)の放出、およびまた細胞質ゾル内の酵素ラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)の出現は、損傷細胞から生じる。
【0056】
この実施例において、SD25/75を(SD25/75)/CaCO3LDと比較した。5日間連続して、粉末10.0mgをウサギの鼻孔中に噴霧した。投与の1時間前および1時間後にリン酸緩衝生理食塩水により鼻孔を洗浄し、膜損傷を測定するためにLDHおよびALPの量を試験した。
【0057】
図8から、両方の配合物に対してLDH活性のレベルが投与の1時間後に増大することが見られる。投与後23時間で、低下したLDH活性が見られる。SD25/75に対するLDH活性が(SD25/75)/CaCO3を用いるLDH活性よりも高いことも見られる。とりわけ、最終投与の3日後でのLDH放出は、膜損傷が可逆性であることを示す基礎のLDH放出に匹敵するものである。
【0058】
図9から、両方の配合物により、ALP活性レベルが投与の1時間後に増大することが見られる。投与の23時間後に、低下したALP活性が見られる。SD25/75に対するALP活性が(SD25/75)/CaCO3を用いるALP活性に匹敵することも見られる。最終投与の3日後でのALP放出は、膜損傷が可逆性であることを示す基礎のLDH放出に匹敵するものである。
【0059】
図10から、タンパク質放出が酵素放出に対して類似の傾向を描くことが見られる。
【0060】
実施例12
カルボポル(登録商標)974の吸収増進に与える影響
アミオカ(登録商標)/カルボポル(登録商標)噴霧乾燥混合物の代わりに純粋なアミオカ(登録商標)でんぷんを用いることを除いて、実施例4を繰り返した。図11に見ることができるように、配合物中でのCaCO3LDの使用は、類似の生体利用効率、Cmaxおよびtmaxをもたらした。
【0061】
本発明の多くの修正および変化は、当業者に明らかなように、その精神および範囲から逸脱することなくなすことができる。本明細書において記載される特定実施態様はほんの一例として提供されると共に、本発明は、こうしたクレームが権利を与える同等品の全範囲と併せて添付クレームの条件によってのみ限定されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】噴霧乾燥されたアミオカ(登録商標)/カルボボル(登録商標)974P(25/75)に基づく粉末配合物の鼻腔投与後のインシュリン血清濃度−時間プロフィールを示す。
【図2】鼻腔投与後のインシュリン生体利用効率に与えるCaCO3の影響を示すグラフである。
【図3】鼻腔投与後のインシュリン生体利用効率に与えるCaCO3の密度の影響(高密度対低密度)を示すグラフである。
【0063】
【図4】鼻腔送達後のインシュリン生体利用効率に与える、CaCO3添加の有無での、アミオカ(登録商標)/カルボボル(登録商標)974Pの異なる比(75/25対図3の25/75の比)の影響を示すグラフである。
【図5】鼻腔投与後のカルシトニン生体利用効率に与えるCaCO3の影響を示すグラフである。
【図6】鼻腔送達後のインシュリン生体利用効率に与える異なるCa2+化合物の影響を示すグラフである。
【図7】CaCO3添加の有無での、アミオカ(登録商標)/カルボボル(登録商標)974Pの噴霧乾燥混合物の代わりにアミオカ(登録商標)/カルボボル(登録商標)974Pの物理的混合物を用いる場合の、鼻腔投与後のインシュリン生体利用効率における違いを示すグラフである。
【0064】
【図8】CaCO3添加の有無での、アミオカ(登録商標)/カルボボル(登録商標)974Pの噴霧乾燥混合物に基づく粉末配合物の5日間連続した鼻腔送達の1時間前および1時間後のウサギの鼻腔における酵素(LDH)活性を示すグラフである。
【図9】CaCO3添加の有無での、アミオカ(登録商標)/カルボボル(登録商標)974Pの噴霧乾燥混合物に基づく粉末配合物の5日間連続した鼻腔送達の1時間前および1時間後のウサギの鼻腔における酵素(ALP)活性を示すグラフである。
【図10】CaCO3有無の組成物を用いる時間にわたる、CaCO3添加の有無での、アミオカ(登録商標)/カルボボル(登録商標)974Pの噴霧乾燥混合物に基づく粉末配合物の5日間連続した鼻腔送達の1時間前および1時間後のウサギの鼻腔において放出されたタンパク質濃度を示すグラフである。
【図11】吸収増進に与えるカルボボル(登録商標)974Pの影響を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性ポリマーマトリクスおよび2価無機金属化合物の混合物を含む粉末組成物であって、該親水性マトリクスが少なくとも1種の合成ポリカルボキシル化ポリマーを含むものである、粉末組成物。
【請求項2】
前記金属がカルシウムまたはマグネシウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記混合物が約0.5%〜約25重量%の前記2価無機金属化合物を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記2価無機金属化合物が、CaCO3、Ca(OH)2、Mg(OH)2およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記親水性マトリクスが、約5重量%〜約95重量%の前記少なくとも1種の合成ポリカルボキシル化ポリマー、および約5重量%〜約95重量%の少なくとも1種の多糖を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
約5重量%〜約35重量%の前記少なくとも1種の多糖、および約50重量%〜約95重量%の前記少なくとも1種の合成ポリカルボキシル化ポリマーを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記多糖がでんぷんであり、前記ポリカルボキシル化ポリマーが架橋ポリ(アクリル酸)である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記でんぷんがワキシースターチである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
さらに活性剤を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
前記活性剤がポリペプチドである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1種の合成ポリカルボキシル化ポリマー成分、少なくとも1種の多糖成分、および少なくとも1種の2価無機金属化合物を含有する粉末組成物を製造する方法であって、該方法が、少なくとも1種の合成ポリカルボキシル化ポリマー成分および少なくとも1種の多糖成分を含むポリマー混合物と少なくとも1種の溶剤を含む溶液を調製すること、および次いで該溶液を乾燥して前記成分の混和物を含む固形物を形成することを含み、前記少なくとも1種の2価無機金属化合物が、乾燥する前に該溶液に添加されて前記混和物の一部であるか、または該乾燥に続いて前記混和物と物理的に混合されるものである、方法。
【請求項12】
活性成分を添加することをさらに含み、そこでは該活性成分が、乾燥前に前記溶液に添加されて前記混和物の一部となるか、または該乾燥に続いて前記混和物と物理的に混合される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマー混合物が、固形物基準で、約5重量%〜約35重量%の少なくとも1種の多糖、および約50重量%〜約95重量%の少なくとも1種の合成ポリカルボキシル化ポリマーを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記溶液が噴霧乾燥される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前期溶剤が水であり、前記多糖がでんぷんであり、そして前記ポリカルボキシル化ポリマーが架橋ポリ(アクリル酸)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法により調製された組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の組成物および活性成分を含む活性成分送達ビヒクル。
【請求項18】
前記組成物が、約75重量%〜約99.5重量%の前記ポリマーマトリクス、および約0.5%〜約25重量%の前記2価無機金属化合物を含む、請求項17に記載の送達ビヒクルであって、該ポリマーマトリクスが約75重量%〜約95重量%の架橋ポリ(アクリル酸)および約5重量%〜約25重量%のでんぷんを含むものである、送達ビヒクル。
【請求項19】
請求項1に記載の組成物および活性剤を含む薬物送達システムを施行することを含む、その必要性のある個体に治療剤を投与する方法。
【請求項20】
前記組成物が、約75重量%〜約99.5重量%の前記ポリマーマトリクスおよび約0.5%〜約25重量%の前記2価無機金属化合物を含み、該ポリマーマトリクスが約75重量%〜約95重量%の架橋ポリ(アクリル酸)および約5重量%〜約25重量%のでんぷんを含むものである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が個体の粘膜表面に適用される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が鼻粘膜に適用される、請求項21に記載の方法。
【請求項1】
親水性ポリマーマトリクスおよび2価無機金属化合物の混合物を含む粉末組成物であって、該親水性マトリクスが少なくとも1種の合成ポリカルボキシル化ポリマーを含むものである、粉末組成物。
【請求項2】
前記金属がカルシウムまたはマグネシウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記混合物が約0.5%〜約25重量%の前記2価無機金属化合物を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記2価無機金属化合物が、CaCO3、Ca(OH)2、Mg(OH)2およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記親水性マトリクスが、約5重量%〜約95重量%の前記少なくとも1種の合成ポリカルボキシル化ポリマー、および約5重量%〜約95重量%の少なくとも1種の多糖を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
約5重量%〜約35重量%の前記少なくとも1種の多糖、および約50重量%〜約95重量%の前記少なくとも1種の合成ポリカルボキシル化ポリマーを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記多糖がでんぷんであり、前記ポリカルボキシル化ポリマーが架橋ポリ(アクリル酸)である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記でんぷんがワキシースターチである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
さらに活性剤を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
前記活性剤がポリペプチドである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1種の合成ポリカルボキシル化ポリマー成分、少なくとも1種の多糖成分、および少なくとも1種の2価無機金属化合物を含有する粉末組成物を製造する方法であって、該方法が、少なくとも1種の合成ポリカルボキシル化ポリマー成分および少なくとも1種の多糖成分を含むポリマー混合物と少なくとも1種の溶剤を含む溶液を調製すること、および次いで該溶液を乾燥して前記成分の混和物を含む固形物を形成することを含み、前記少なくとも1種の2価無機金属化合物が、乾燥する前に該溶液に添加されて前記混和物の一部であるか、または該乾燥に続いて前記混和物と物理的に混合されるものである、方法。
【請求項12】
活性成分を添加することをさらに含み、そこでは該活性成分が、乾燥前に前記溶液に添加されて前記混和物の一部となるか、または該乾燥に続いて前記混和物と物理的に混合される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマー混合物が、固形物基準で、約5重量%〜約35重量%の少なくとも1種の多糖、および約50重量%〜約95重量%の少なくとも1種の合成ポリカルボキシル化ポリマーを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記溶液が噴霧乾燥される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前期溶剤が水であり、前記多糖がでんぷんであり、そして前記ポリカルボキシル化ポリマーが架橋ポリ(アクリル酸)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法により調製された組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の組成物および活性成分を含む活性成分送達ビヒクル。
【請求項18】
前記組成物が、約75重量%〜約99.5重量%の前記ポリマーマトリクス、および約0.5%〜約25重量%の前記2価無機金属化合物を含む、請求項17に記載の送達ビヒクルであって、該ポリマーマトリクスが約75重量%〜約95重量%の架橋ポリ(アクリル酸)および約5重量%〜約25重量%のでんぷんを含むものである、送達ビヒクル。
【請求項19】
請求項1に記載の組成物および活性剤を含む薬物送達システムを施行することを含む、その必要性のある個体に治療剤を投与する方法。
【請求項20】
前記組成物が、約75重量%〜約99.5重量%の前記ポリマーマトリクスおよび約0.5%〜約25重量%の前記2価無機金属化合物を含み、該ポリマーマトリクスが約75重量%〜約95重量%の架橋ポリ(アクリル酸)および約5重量%〜約25重量%のでんぷんを含むものである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が個体の粘膜表面に適用される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が鼻粘膜に適用される、請求項21に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−312629(P2006−312629A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−127593(P2006−127593)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(590000824)ナショナル スターチ アンド ケミカル インベストメント ホールディング コーポレイション (112)
【出願人】(504291007)ユニベルシテイト ゲント (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127593(P2006−127593)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(590000824)ナショナル スターチ アンド ケミカル インベストメント ホールディング コーポレイション (112)
【出願人】(504291007)ユニベルシテイト ゲント (3)
【Fターム(参考)】
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