説明

活性炭およびその使用方法

【課題】安価に製造することができるうえ、ランニングコストの低減を図ることができる。
【解決手段】原料としてデーツ(ナツメヤシ)木材を使用し、好ましくは幹由来のデーツを用いることで、とくに含有油分排水の処理において、既存の活性炭よりも優れた性能を有しており、従来のヤシ殻や石炭等の活性炭P1〜P4よりも油分除去能力が略2倍以上と大きくなり、活性炭としてのランニングコストを半分以下に減少させることができる活性炭T1、T2−1、T2−2を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デーツ(ナツメヤシ)木材を原料とした活性炭およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各産業で広く用いられている活性炭の原料として、おがくず、硬質木材チップ、ピート、ヤシ殻(ココヤシの果実の殻から作製されるもの)、石炭等が知られている。そのうち効果が期待でき、広く用いられている活性炭としては、ヤシ殻や石炭である。
また、含油排水処理に用いられる油吸収材として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタンなどの疎水性ポリマーの不織布や発泡体も知られている。さらに、例えば電石材と油吸着材とが積層状態になっている油吸着材であって、乳化油を含む排水でも容易に処理することができ、処理コストの低下を可能としたものもある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64−85187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の活性炭では、以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1では、原料の電石材のコストとその調達にコストがかかるという問題があった。そして、従来の活性炭の原料のように廃棄物を有効利用することで製造コストを抑えることができ、且つより優れた油吸着能力によってランニングコストの低減できる材料が求められており、その点で改良の余地があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、安価に製造することができるうえ、ランニングコストの低減を図ることができる活性炭およびその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る活性炭は、原料にデーツが用いられていることを特徴としている。
【0007】
本発明では、とくに含有油分排水の処理において、既存の活性炭よりも優れた性能を有しており、従来のヤシ殻や石炭等の活性炭よりも油分除去能力が略2倍以上と大きくなる。そのため、活性炭としてのランニングコストを半分以下に減少させることができる。
そして、デーツが一般的なヤシ殻などの活性炭と同様の製造方法により製造することが可能であるので、特別な操作が不要となり、従来と同様の低コストでの製造を行うことができる。
また、原料となるデーツの廃材を利用することで、廃棄物処理にかかる費用を低減することも可能となる利点がある。
【0008】
また、本発明に係る活性炭では、デーツは、幹由来のものであることが好ましい。
本発明では、デーツの幹由来の活性炭が枝由来の活性炭よりも油分除去能力がより大きくなるので、ランニングコストのさらなる低下を図ることができる。
【0009】
また、本発明に係る活性炭の使用方法では、上述した活性炭の使用方法であって、有機化合物が溶解或いは散在する水、気化して存在する空気、又はガスに対して活性炭を使用することを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る活性炭の使用方法では、上述した活性炭の使用方法であって、含硫黄物質が溶解或いは散在する水、気化して存在する空気、又はガスに対して活性炭を使用することを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る活性炭の使用方法では、上述した活性炭の使用方法であって、重金属が溶解或いは散在する水、気化して存在する空気、又はガスに対して活性炭を使用することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の活性炭およびその使用方法によれば、デーツを原料とすることで、従来と同じ製造方法となり、安価に製造することができるうえ、優れた油分除去能力を発揮することが可能となるので、ランニングコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例による試験装置を模式的に示した図である。
【図2】実施例による通水試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態による活性炭およびその使用方法について、図面に基づいて説明する。
本実施の形態による活性炭は、原料としてデーツ(ナツメヤシ)木材を使用している。そして、デーツは、好ましくは幹由来のものが使用される。
この活性炭の製造方法は、例えば700〜800℃の高温により木炭状に蒸し焼する炭化を行い、例えば900〜1000℃で水蒸気や二酸化炭素、空気などのガスに反応させる賦活を行うことによる一般的な高温炭化法により製造される。
【0015】
この活性炭は、燃料油の主成分である非環系化合物(脂肪族化合物)や、ベンゼン、ナフタレンに代表される炭素環(系)化合物や、フェノールやメチレンブルーに代表される複素環(系)化合物からなる有機化合物が溶解或いは散在する水、気化して存在する空気、又はガスに対して使用することができる。これら有機化合物は、硫化水素などの含硫黄物質あっても良い。
【0016】
また、活性炭は、例えば硫化水素および硫化物、有機硫黄化合物といった含硫黄物質が溶解或いは散在する水、気化して存在する空気、又はガスに対して使用することができる。
【0017】
また、この活性炭は、重金属が溶解或いは散在する水、気化して存在する空気、又はガスに対して使用されていてもよい。具体的に重金属物質として、例えば鉛、水銀、カドミウム、クロム、亜鉛、鉄、マンガン及びその化合物が挙げられる。
【0018】
このようなデーツを原料とする活性炭では、とくに含有油分排水の処理において、既存の活性炭よりも優れた性能を有しており、従来のヤシ殻や石炭等の活性炭よりも油分除去能力が略2倍以上と大きくなる。そのため、活性炭としてのランニングコストを半分以下に減少させることができる。
【0019】
また、デーツが一般的なヤシ殻などの活性炭と同様の製造方法により製造することが可能であるので、特別な操作が不要となり、従来と同様の低コストでの製造を行うことができる。
さらに、原料となるデーツの廃材を利用することで、廃棄物処理にかかる費用を低減することも可能となる利点がある。
さらにまた、デーツを幹由来の活性炭とすることで、枝由来の活性炭よりも油分除去能力がより大きくなるので、ランニングコストのさらなる低下を図ることができる。
【0020】
上述のように本実施の形態による活性炭およびその使用方法では、デーツを原料とすることで、従来と同じ製造方法となり、安価に製造することができるうえ、優れた油分除去能力を発揮することが可能となるので、ランニングコストの低減を図ることができる効果を奏する。
【0021】
(実施例)
次に、上述した実施の形態によるデーツを原料とした活性炭の効果を裏付けるために行った実施例について以下説明する。
【0022】
本実施例では、図1に示す試験装置1を用いて含有排水処理試験を行い、デーツ由来の活性炭T1、T2−1、T2−2(図2参照)の有効性を確認した。
ここで、試験装置1は、含油排水用の溶液タンク2と、試験体となる活性炭を収容したカラム3と、含油排水をカラム3の下流側に配置されるとともにそのカラム3を通過させた溶液を溜める油除去液用タンク4と、含油排水をカラム3内に流通させるためのポンプ5と、を備えた構成となっている。
【0023】
本試験では、表1および図2に示すように、デーツを原料とした活性炭として、デーツの枝由来活性炭T1と、2つのデーツの幹由来活性炭T2−1、T2−2とを使用した。
また、比較例として、鉱物(アパタルジャイト)由来活性炭P1、石炭(カミル石炭)由来活性炭P2、有機廃棄物(油スラッジ)由来活性炭P3、および既存のヤシ殻活性炭(日本製の標準活性炭P4)の試験を行った。
なお、これら試験に用いる活性炭T1、T2−1、T2−2、P1、P2、P3、P4は、一般的な活性炭製造法にしたがって作製した。
【0024】
図1に示すカラム3において、500mg/Lの油分を含む溶液を所定の通水速度SVで通過させた結果を図2に示している。なお、SVは、1時間当たりの処理水量(m/h)/処理層の体積(m)で表示される値である。
図2は、単位活性炭あたりの排水供給量(mL/g)と、カラム出口の油分濃度(mg/L)との関係を示している。
【0025】
表1は、処理水5mg/L以下の性能を保つまでの油分吸着量を、図2に基づいて上記の単位活性炭あたりの排水供給量(mL/g)(単位活性炭に通水できる排水量)として示している。この「単位活性炭に通水できる排水量」とは、油分濃度500mg/Lの排水を水質汚濁防止法で定める5mL以下まで処理するときに、単位活性炭あたり通水できる排水量を示したものである。
【0026】
【表1】

【0027】
図2に示すように、例えばカラム出口の油分濃度が10mg/Lにおいて、比較例の活性炭P1〜P3の単位活性炭あたりの排水供給量が1000mL/g以下であり、ヤシ殻活性炭P4が略1500mL/gであるのに対して、デーツを原料とした活性炭T1、T2―1、T2−2の油分供給量は、略2600〜3200mL/gの範囲となっている。つまり、デーツ由来の活性炭T1、T2−1、T2−2は、比較例P1〜P4の略2倍と高い吸着能力であることが確認された。
とくに、デーツの幹由来活性炭T2−1、T2−2の単位活性炭あたりの排水供給量がそれぞれ略2800mL/g、略3200mL/gとなっており、排水供給量が略2600mL/gのデーツの枝由来活性炭T1よりも大きくなっている。そのため、幹由来の活性炭T2−1、T2−2は、比較例の活性炭P1〜P4の3倍程度の吸着能力を有していることを確認することができた。
【0028】
さらに、表1に示すように、各試験体における単位活性炭に通水できる排水量は、比較例の鉱物由来活性炭P1が200mL/g、石炭由来活性炭P2が200mL/g、有機廃棄物由来活性炭P3が400mL/g、およびヤシ殻活性炭P4が1200mL/gとなった。これに対して、デーツの枝由来活性炭T1が2300mL/gとなり、デーツの幹由来活性炭T2−1、T2−2がそれぞれ2500mL/g、2800mL/gとなり、比較例に比べて吸着能力の高い値となることが確認できた。
【0029】
以上、本発明による活性炭およびその使用方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、デーツを原料とした活性炭を使用する用途は任意である。
また、活性炭の原料となるデーツのナツメヤシの種類や産地に制限されることはなく、また廃棄物となったデーツである必要もない。
【符号の説明】
【0030】
1 試験装置
3 カラム
T1 デーツの枝由来活性炭
T2−1、T2−2 デーツの幹由来活性炭
P1〜P4 比較例による活性炭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料にデーツが用いられていることを特徴とする活性炭。
【請求項2】
前記デーツは、幹由来のものであることを特徴とする請求項1に記載の活性炭。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の活性炭の使用方法であって、
有機化合物が溶解或いは散在する水、気化して存在する空気、又はガスに対して前記活性炭を使用することを特徴とする活性炭の使用方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の活性炭の使用方法であって、
含硫黄物質が溶解或いは散在する水、気化して存在する空気、又はガスに対して前記活性炭を使用することを特徴とする活性炭の使用方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の活性炭の使用方法であって、
重金属が溶解或いは散在する水、気化して存在する空気、又はガスに対して前記活性炭を使用することを特徴とする活性炭の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−211026(P2012−211026A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76272(P2011−76272)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】