説明

活性炭およびゼオライトを用いた水ろ過システム

1つの実施態様において、本発明は、アルミニウムで被覆された粒状活性炭および粒状ゼオライトを有する、水から汚染物質を除去するためのろ過材に関する。別の実施態様は、アルミニウムで被覆された粒状活性炭を製造する方法であって、粒状活性炭を約5と約6.8の間のpHに酸性化された1つ以上のアルミニウム塩を含む水溶液に曝すことと、この水溶液を取り除くことと、製造するアルミニウムで被覆された粒状活性炭を洗浄し乾燥させることとを含む方法に関する。さらなる実施態様は、(i)粒状活性炭および粒状ゼオライトを有する中間区域、および(ii)スクリーニング材料を有する下部バリア区域を有し、約0.5Lsec−1−2から約10Lsec−1−2の流量の水を通過させることができる、水から汚染物質を除去するためのろ過システム、このろ過システムを収容するカートリッジ、および、関連する、水から汚染物質を除去する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水から汚染物質を除去するためのろ過材、これに関連するろ過システム、このシステムを収容するろ過カートリッジ、および水から、特に、限定するものではないが、暴風雨水または流雨水から汚染物質を除去するための、関連する方法に関する。また本発明は、ろ過材の構成要素であるアルミニウムで被膜された粒状活性炭(GAC)を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
特に世界の乾燥地域において、また気候変動の影響を考慮して、水を効率的に取得し利用する必要性への意識が高まっている。特にオーストラリアにおいては、大都市用の飲料水の供給源は、主に市街地から離れた所の雨水集水地域である。この方策は、集水地域から水を必要とする人口集中地域まで水を管で供給するためのインフラストラクチャーのコストが高く付く一方で、水が飲用に適し汚染物質によって実質的に汚染されないことを保証する。しかし残念ながら、これらの集水地域から得られる水の大部分が、発電機の冷却塔用等の産業用、農業用、建物や大規模洗浄用、公園や庭への散水用、および洗濯やトイレの洗浄などの家事用に用いられ、これらの用途では、飲料水であることは必要とされていない。したがって、都市や町への水の供給に対するより持続可能な方法を実現するためには、特に非飲料用に、水の代替の供給が必要とされる。大きな可能性のあるそうした水の供給源は、家庭や商業施設の屋根からの、公道および舗装地域からの、また特に道路や駐車場等からの流雨水である。流雨水の利用は、水が利用される地域の近くで集水できるので都合がよい一方で、流雨水は汚染されやすい点で問題がある。例えば、暴風雨の流雨水は、建材からの重金属(例えば、屋根材からの銅および亜鉛)、および自動車関連の発生源からの重金属(例えば、ブレーキライニングからの銅、ニッケル、クロム、亜鉛、および鉛、摩耗タイヤからの亜鉛、自動車燃料中の触媒として利用される白金、鉛、およびロジウム)等の高濃度の重金属を含むことが多い。また、暴風雨水の流雨水は、車両燃料、排気ガス、および潤滑油に大部分が由来する炭化水素汚染の重大な原因物、土壌や分解有機物からの窒素およびリン系化合物等の栄養素、さらにはバクテリア、藻類、酵母菌、ウイルス粒子、菌類等の病原体等を含むこともある。高濃度の汚染は、特に、公園や庭での、または人やその他の動物が水に触れるかもしれない状況での、流雨水の安全な貯蔵および利用とは両立しないため、流雨水が高濃度の汚染物質を含むことがないよう保証することが望ましい。また、このような汚染は、環境、特に要注意の水路環境に放出する水にも適合しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第2,210,966号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「水溶液からアルミニウム担持カーボンへのフッ化物の吸着」Carbon、37巻(1999年)、pp.609〜617、Ramos他
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
暴風雨水または流雨水の集水に関するさらなる特別な問題は、そのタイミングと量が大きく変動することである。したがって、1つの態様において、本発明に係るろ過材は、非常に高い通過流量に対応し、長い乾燥期の後でも優れた性能を維持し(暴風雨水の流出量の変動に対応し)、さらに沈殿物、炭化水素、金属、栄養素、および病原体などの主要な暴風雨水汚染物質を対象とするように構成される。他の種類の水(すなわち、水道水または廃水)用に開発された既存の処理システムは、これらの要求を満たすことができない。
【0006】
本発明は、直面し得る特定の水処理状況に適合させることが可能なろ過材およびろ過材を含むろ過システムを提供する。例えば、処理すべき水の流量を変えることができ、また、公園や庭への散水、河川や小川への環境水流、トイレ洗浄、および衣類の洗濯、または人や動物の消費用のいずれであるかの、所望の用途に応じて、得られる処理済みの水の質を選択できるように、除去可能な汚染物質の性質を変えることができる。
【0007】
本発明のろ過材およびろ過システムを開発する際に、本発明者は、特に窒素とリンの除去に関して、ろ過材の粒状活性炭成分の水処理効率を、粒状活性炭成分をアルミニウムで被覆することにより大幅に改善できることを確認した。特許文献1には、アルミニウム塩の溶液内で処理された活性炭が飲料水からフッ化物を除去するために利用できることが開示されている。さらに、非特許文献1には、pHが3〜4の硝酸アルミニウムを含浸させた活性炭を用いて飲料水からフッ化物を除去できることが概説されている。しかし、本発明者は、アルミニウムで被覆された粒状活性炭が、水からのリンおよび窒素を除去するのに有効であるという報告も、アルミニウムで被覆された粒状活性炭を、5から6.8、好ましくは6から6.5のpHに酸性化させることにより生成した場合に特に有効であるという報告も知らない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの実施態様によると、アルミニウムで被覆された粒状活性炭および粒状ゼオライトを有する、水から汚染物質を除去するためのろ過材が提供される。
【0009】
本発明の別の実施態様によると、粒状活性炭を約5と約6.8の間のpHに酸性化された1つ以上のアルミニウム塩を有する水溶液に曝すことと、この水溶液を取り除くことと、製造するアルミニウムで被覆された粒状活性炭を洗浄し乾燥させることとを含む、アルミニウムで被覆された粒状活性炭を製造する方法が提供される。
【0010】
本発明のさらなる実施態様によると、水から汚染物質を除去するろ過システムであって、
(i)粒状活性炭および粒状ゼオライトを有する中間区域と、
(ii)スクリーニング材料を有する下部バリア区域と、
を有し、
約0.5Lsec−1−2から約10Lsec−1−2の流量の水を通過させることができるろ過システムが提供される。
【0011】
別の好ましい実施態様によると、水から汚染物質を除去するためのろ過システムを収容し、水が通過できる上面と底面を持つカートリッジであって、
ろ過システムは、
(i)粒状活性炭および粒状ゼオライトを有する中間区域と、
(ii)スクリーニング材料を有する下部バリア区域と、
を有し、
約0.5Lsec−1−2から約10Lsec−1−2の流量の水を通過させることができる、カートリッジが提供される。
【0012】
本発明のさらなる実施態様によると、ろ過システムを通して水を流すことを有する、水から汚染物質を除去する方法であって、
このろ過システムは、
(i)粒状活性炭および粒状ゼオライトを有する中間区域と、
(ii)スクリーニング材料を含む下部バリア区域と、
を有し、
上記の水は、約0.5Lsec−1−2から約10Lsec−1−2の速度で上記のろ過材を通過して流れる、方法が提供される。
【0013】
中間区域における粒状活性炭の粒状ゼオライトに対する体積比は、0.5:1と2:1の間であるのが好ましい。中間区域はさらに砂を有するのが好ましい。砂が存在する場合、砂は中間区域の全体積の約30%と約60%の間を構成しているのが好ましい。
【0014】
好ましい実施態様では、粒状活性炭はアルミニウムで被覆された粒状活性炭を有している。
【0015】
別の好ましい実施態様によると、ろ過システムは、微粒子状の汚染物質を除去するための上部沈殿物トラップをさらに有している。
【0016】
1つの態様では、カートリッジの上面は、固形物、スラッジ、および/または微粒子の粗いろ過器として働くメッシュを有している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】、粒状活性炭(G)、無煙炭(A)、バーミキュライト(V)、およびゼオライト(Z)の成分の様々な組み合わせを用いて作製したろ過材の、汚染物質である重金属および窒素の総量(TN)の除去率の棒グラフであり、GとZの調合の体積比が1:1.5で全体として最良の結果を示している。図の凡例に列記した重金属が、試験したろ過材ごとに棒グラフの左から右に同じ順番で示されている(これは色分けが不明瞭な場合に重要である)。
【図2A】本発明による概略的なろ過システムの模式図である。
【図2B】例2で参照されている低流量ろ過システムの模式図である。図2A、図2Bの両方に、任意の沈殿物トラップが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書および請求項を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単語の「comprise(有する)」あるいは「comprises」や「comprising」等の変形語は、記載された完全体またはステップ、あるいは完全体またはステップの集まりを含むことを意味するが、他の完全体またはステップ、あるいは完全体またはステップの集まりを除外するものではないと理解される。
【0019】
いかなる先の刊行物(または、それから導き出される情報)、または周知のいかなる事柄の、本明細書における参照も、その先の刊行物(または、それから導き出される情報)や周知の事柄がいかなる形態であれ本明細書で述べる試みの領域において一般的な常識の一部を形成するものと承認し、容認し、または示唆するものとして理解されるものではなく、また理解されるべきでものではない。
【0020】
広範な態様において、本発明は、重金属、炭化水素、栄養素、および病原体等の汚染物質を水から、特に流雨水または暴風雨水から除去するためのろ過材に関する。ろ過材は、粒状活性炭(GAC)、好ましくはアルミニウムで被覆された粒状活性炭(ACGAC)、および粒状ゼオライトを有しており、また砂も有していてもよい。例えば0.5〜3.5Lsec−1−2の流量の水が通過するのに適合させられた低流量型のろ過材において、ろ過材はGACおよび/またはACGACおよび粒状ゼオライトを有していてよく、また追加で砂を有していてもよい。また、例えば4〜10Lsec−1−2の流量の水が通過するのに適合させられた高流量型のろ過材において、ろ過材からは砂が排除されていてもよい。
【0021】
本発明の別の態様は、ろ過システムに関する。最も広い意味において、ろ過システムは、(上記のろ過材を有している)中間区域および下部バリア区域の2つの区域を有している。ろ過システムは、(図2Aに模式的に示すように)処理される水から微粒子の汚染物質を除去する働きをする上部沈殿物トラップを任意に有していてもよい。しかし、区域間の境界は必ずしも明確なものでなくてよく、区域間の境界では1つの区域から次の区域にかけて材料が混ざり合っていてもよいということが理解される。このことは、各区域の材料が本質的に概して粒状であるということから、容易に理解することができる。本発明のいくつかの実施形態では、お互いの側から材料を通過させないために網目が十分小さい金属、繊維、または樹脂のメッシュ等の仕切りが区域間に挿入されているが、本発明の他の実施形態では、そのような仕切りやメッシュは採用されない。これらの実施形態では、時間経過と共に、粒状材料が1つの区域から隣接する区域に、ある程度移動できる。しかし、各区域内の材料は、各区域に最初に導入されたものが支配的となることが理解される。
【0022】
このシステム全体の意図は、豪雨の最中または直後に起こり得るピーク流量の水を処理することができるようにし、一方、汚染物質を十分に除去できるように、ろ過材中の水の適切な滞留時間を生じさせるために、その構成要素の結果として、適切な流量(例えば、0.5Lsec−1−2〜10Lsec−1−2、4〜10Lsec−1・m−2(高流量の実施形態の場合)、0.5〜3.5Lsec−1−2(低流量の実施形態の場合)、2Lsec−1−2〜8Lsec−1−2、または約3Lsec−1−2〜約6Lsec−1−2)の水が通過できるようにすることである。本発明の好ましい態様において、ろ過材は、炭化水素の総量の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、97%、98%、または99%を、また重金属の少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%を、除去できるものである。同様に、ろ過材は、窒素およびリンを含有する栄養化合物の少なくとも30%を、また好ましくは少なくとも45%を、より好ましくは少なくとも50%、60%、70%、または80%を除去する。
【0023】
貯蔵すべき処理済みの水を対象とし、それが人や動物に触れ、その水が特に人や動物のために用いられるか消費される例では、病原体が不活性化されるか、または除去されることが適切である場合がある。病原体の不活性化が行われる本発明の1つの実施形態は、塩素の水溶性塩がろ過システム内に含まれている場合である。塩素塩は、システムを通過して流れる水の中にゆっくりと放出される固形物の粒子、微粒子、塊、立方体等の形態をとるのが最も好ましい。固形の塩素塩は、上部沈殿物トラップおよび/または中間区域内に、個別的な1つ以上の層として、または沈殿物トラップおよび/または中間区域を通して無作為に分布させるのが好都合である。この構成を含む場合、例えば、病原体(または実験モデルにおける病原体の標識)の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、90%、または95%、最も好ましくは少なくとも96%、97%、98%、99%、または99.9%が、ろ過システムによって、除去され不活性化される。適切な塩素塩としては、次亜塩素酸ナトリウム、トリクロロイソシアヌル酸等の塩素化イソシアヌレート、「ジクロロ」と呼ばれることがあるジクロロ−s−トリアジントリオンナトリウム(二水和物または無水物)、およびトリクロロ−s−トリアジントリオン等が挙げられる。また、水の殺菌に使用される従来のその他の塩素塩を、同様に使用することができる。
【0024】
本発明に係るろ過システムは、集水システムの構成要素であってよい。つまり、(例えば、屋根や舗装地域上の)暴風雨水または流雨水の取水、および葉、枝、ごみ、石、小石などの固形物や粒子状物質、および、よりきめの細かいろ過で汚染物質を除去するために用いられるろ過材を詰まらせ得る砂や土壌成分等の微粒子等の大まかなろ過を可能にする集水システムである。汚染物質を除去した後、水はそのまま利用可能としてもよく、または、後で利用するために、何らかの形態のタンクや格納容器に貯蔵してもよい。しかし、こうした集水システムは例としてのみ言及しているものである。なぜなら、本発明に係るろ過材およびシステムは、同様に、パイプで送られる水のろ過にも用いることができ、または、水の流れから汚染物質が効果的に除去できれば動作が改善され得る装置や機械の構成要素としても用いることも可能だからである。いくつかの例には、プール、池、または泉のろ過システム、高圧散水装置、洗車装置、ボイラー、および他の産業機械が含まれる。本発明の別の態様では、本発明に係るろ過材およびシステムは、建設現場にできるような大量のたまり水から粒子状物質およびその他の汚染物質を除去する状況で採用される。この場合、システムは運搬可能としてよく、また適切なポンプ装置を含むことも可能である。
【0025】
処理する水から粒状汚染物質を除去するのに効果的な上部沈殿物トラップは、粒状活性炭、粒状ゼオライト、および砂を有することが可能であり、またスコリア等の他の構成要素を任意に含んでいてもよい。1つの実施形態では、沈殿物トラップは、GAC、砂、およびゼオライトの別々の層を有しており、このゼオライトは、例えば、微細な(平均粒径0.5〜2mm)、中程度の(平均粒径1.6〜2mm)、粗い(平均粒径2.0〜4.0mm)、および非常に粗い(平均粒径4.0〜12mm)、互いに異なる粒径の別々の複数の層または混合体を含むことも可能であり、好ましくはこれらのそれぞれがろ過器等級であり、例えばZeolite Australia Pty社から入手可能である。
【0026】
上述のように、ろ過システムの上部沈殿物トラップおよび中間区域(ろ過材)内の材料は、本質的に概して粒状である。沈殿物トラップ内の材料は、平均粒径が0.5mm〜8mmであるのが好ましく、別の態様では、1mm〜6mmまたは2mm〜4mmである。同様に中間区域では、材料は、約0.25mm〜約4mmまたは0.25mm〜2mmの粒径を持つのが好ましく、0.5mmの平均粒径を持つのが好ましい。例えば、ろ過材中のゼオライトは、約0.5mm〜約2mmの平均粒径を持つのが好都合であり、GACは約1mm〜約4mmの粒径を持つことができ(例えば、6×12のサイズのメッシュでふるい分けられる1.68mm〜3.35mm、Activated Carbon Technologies Pty社より入手可能)、また、砂は0.25mm〜約0.5mmの平均粒径を持つことができる(例えば、30/60のサイズのメッシュでふるい分けられる0.25mm〜0.42mm、Unimin Australia社より入手可能)。
【0027】
下部バリア区域では、スクリーニング材料は、例えば、洗浄されているのが好ましい石や砂利、砕石や川の石を含んでいてよく、約1mm〜約8mmの平均粒径を持っているのが有利であり、また別の実施形態においては約2〜約6mm、好ましくは約4mmの平均粒径を持っている。下部区域におけるスクリーニング材料は、システムを通して水を通過させるが、ろ過材内に含まれるその他の材料を実質的に封じ込めるバリアとして働く。(例えば、水を所望の流量にするのに適した細孔サイズを持つ金属、樹脂、繊維製の)水透過性メッシュが、スクリーニング材料を保持するためにバリア区域の底面に設けられていてよい。スクリーニング材料は汚染物質の除去において積極的な役割を果たさないが、通過する水の中に放散され得る水溶出性の汚染物質を、スクリーニング材料が有意なレベルで含まないことが重要である。
【0028】
本発明の別の実施形態において、ろ過システムの上部沈殿物トラップは、粒状石灰を、任意選択で1つ以上の充填剤および/またはアルカリ化剤と共に、含んでいてもよい。用語「石灰」は、主にカルシウムの炭酸塩、酸化物、および水酸化物から、特に炭酸カルシウムからなる石灰岩またはチョークより一般に取り出される鉱物を、概して指している。本発明の文脈において、石灰は上記のように粒状の形態で設けられ、ろ過システムに石灰が存在することにより、病原体の除去および/または不活性化を助けることができる。理論によって束縛されることを望むものではないが、本発明者は、本発明のこの実施形態において、上部沈殿物トラップのアルカリ環境から中間区域のより中性のpHの環境に変化することが、病原体の不活性化に寄与しているものと考えている。また、上部区域における石灰の存在が、中間区域へと通過する水のpHを中性またはわずかにアルカリにやわらげ、これには、中間区域から金属が浸出するのを防ぐ効果がある。所望の平均粒径の粒状石灰は、簡単に市販で、例えば園芸用品店や大手のバルクケミカルサプライヤから入手できる。
【0029】
ろ過システムの中間区域、またはろ過材は、GAC(好ましくはACGAC)および粒状ゼオライトを有し、また砂を任意に含んでいてもよい。さらに、無煙炭、褐炭、バーミキュライト、炭化水素除去剤、および抗菌剤等の任意の構成要素を、ろ過システムに、特に中間区域内に組み込むこともできる。
【0030】
粒状活性炭および粒状ゼオライトは、物理的力または静電気力のいずれかにより炭化水素および重金属等の汚染物質を容易に吸収できる高表面積材料である。用語「ゼオライト」は、微孔性構造を持つ含水アルミノケイ酸塩の鉱物を含むように意図されている。天然のゼオライトは、火山岩および火山灰の層がアルカリ性の地下水と反応する場所で形成される。本発明で使用するのに適した粒状ゼオライトは、例えばZeolite Australia Pty社(私書箱6 Werris Creek NSW2341、オーストラリア)から調達することができる。
【0031】
活性木炭とも呼ばれる活性炭は、木炭や火山岩から取り出され、重金属、炭化水素、および栄養化合物を含む窒素やリン等の汚染物質を物理的および静電気的に吸収する非常に大きい表面積を持っている。活性炭は、酸による処理によって活性化でき、または、より多くの場合、例えば水蒸気賦活処理において、高温高圧に曝すことにより活性化できる。GACは、市販で簡単に、例えばActivated Carbon Technologies Pty社(私書箱50 Eltham 3095 ビクトリア、オーストラリア)から入手できる。また、活性炭は、木材等の様々な有機材料から得ることができ、また、しばしば、木材の切りくず、および、米、ピーナッツ、カシューナッツ、およびココナッツの殻等の廃棄された有機材料から得られる。
【0032】
本発明者は、特に、化合物を含む窒素およびリン等の栄養素の除去に関するろ過材の有効性が、GACが、ACGACを形成するようにアルミニウムで被覆されている場合に、著しく改善されることを見いだした。これは、アルミニウムが活性炭の表面上に吸収されることを意味している。また本発明者は、本発明に関して特に好ましい特性を持つACGACが、約4から約6.8のpHに酸性化された1つ以上のアルミニウム塩を含む水溶液に粒状活性炭を曝し、水溶液を除去し、そして製造するアルミニウムで被覆された粒状活性炭を洗浄し乾燥させることによって製造できることを見いだした。本発明者は、アルミニウムの吸収または被覆の処理の間、pHが低過ぎるとアルミニウムの吸収の効率が低下し、一方、高過ぎるpHで処理を行うとアルミニウムが溶液から沈殿する傾向があることに気づいた。
【0033】
例えば、GACは、pHが約4から約6.8、好ましくは約5から約6.8、より好ましくは約6から約6.5に(例えば、塩酸、硝酸、クエン酸、またはリン酸で)酸性化された蒸留水と混合することができ、その後で、アルミニウム塩と混合物が、攪拌しながら保温される。例えば、アルミニウム塩は、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム水和物、または塩化アルミニウムを有していてよい。15分〜24時間、例えば、30分から6時間、45分から3時間、または好ましくは1時間から2時間の保温期間の後、結果として生じるACGACをアルミニウム溶液から取り出すことができる。その後、蒸留水で洗浄し、例えば約40℃で一晩乾燥させるのが好ましい。
【0034】
ろ過システム内に含まれる砂は、鉱物砂、海岸砂、または川砂等の様々なものからのものとしてよいが、確実に水溶出性汚染物質を除去するように洗浄するのが好ましい。本発明の好ましい態様において、砂は、洗浄された川砂、またはUnimin Australia社から市販で入手できるUnimin特製砂30/60である。
【0035】
必須ではないが、中間区域の構成要素は、本発明のろ過材内に含められる前に、緊密に混合されることが好ましい。本発明の1つの実施形態では、中間区域における粒状活性炭の粒状ゼオライトに対する(体積)比は、約0.5:1と2:1の間であり、例えば0.6:1、0.8:1、1:1、1.4:1、または1.8:1である。中間区域は、さらに砂を含むことができ、砂が存在する場合、砂は、好ましくは中間区域の全体積の約30%から約60%を構成し、例えば約37.5%、40%、45%、50%、55%、または60%を構成している。
【0036】
また本発明は、その範囲内に、微粒子、炭化水素、重金属、栄養素、および病原体のうちの1つ以上を除去することによって水を浄化する方法であって、本明細書で述べるように水をろ過システムに曝す工程を含み、好ましくはその水は約0.5Lsec−1−2〜約10Lsec−1−2の流量でろ過システム内を流れる、方法を含む。好ましくは、この流量は、約1Lsec−1−2から約8Lsec−1−2で、より好ましくは約2Lsec−1−2から約6Lsec−1−2である。
【0037】
本発明の1つの実施形態では、ろ過材および/またはろ過システムは、水処理装置内に取り付けることができるバルク材料として設けられ、一方、別の形態では、ろ過システムはカートリッジ内に設けられる。こうしたカートリッジは、水を通過させることができる上面と底面を持つろ過システム用の容器を形成している。例えば、輸送の際に、ろ過材が移動しないことを保障するために、カートリッジは底面用および/または上面用の脱着可能なカバーを含んでいてよい。別の実施形態では、カートリッジを輸送用の樹脂フィルム内に密封してもよい。また、1つの態様において、カートリッジの上面は、使用時に例えば固形物、スラッジ、および/または微粒子の粗いろ過器の働きをする(例えば、金属、樹脂、繊維の)メッシュを有している。このメッシュは、粒状物質、固形物、スラッジ等で詰まった場合に、容易に洗浄または交換することができる。
【0038】
本発明は、例としてのみ説明されており、これに対するここでの開示に基づいて当業者に明らかな修正および/または変更は、本発明の精神および範囲内に含まれるものであることが理解されるべきである。
【0039】
ここで本発明を、次の限定を伴わない例を参照しながら、さらに説明する。
【0040】

例1−ろ過材の分析
無煙炭、褐炭、粒状活性炭、清潔な川砂、バーミキュライト、パーライト、ゼオライト、および庭用堆肥の8つのろ過材を分析用に選んだ。
【0041】
かなりの降雨事象が始まった際に、未処理の暴風雨水を近代的な不浸透性の立体駐車場から流雨水として収集した。ろ過済み(0.45μmのろ過器に通したもの)と未ろ過の両方で汚染負荷の高いものと低いものとの4つの暴風雨水溶液を準備した。バッチ平衡法を用いた吸収テストの結果から効能を比較した。吟味した主要な汚染物質は、窒素の総量、リンの総量、浮遊固形物の総量、および重金属(Cd,Cr,Cu,Fe,Mn,Ni,Pb,Zn)である。テストしたろ過材の内、最も優れた吸収能力を持っていたのは、効果の下がる順に、粒状活性炭(G)、無煙炭(A)、バーミキュライト(V)、およびゼオライト(Z)であった。
【0042】
この調査の第2段階を、上記の4つのろ過材の11の組み合わせで実施した。第1段階と同様の方法論を用いた。図1に示すように、最も完全に汚染物質が除去された組み合わせは、粒状活性炭とゼオライトとを同じ割合にしたもの(G2Z2)であることが分かった。この組み合わせで、試験した重金属の85%、および窒素の総量の最大62%が除去された。
【0043】
例2−ろ過システムの構成要素
高流量ろ過システム:深さ50mmのスクリーニング材料(すなわち、砕石)、深さ380mmの50%(全て容量パーセントで示す)のGAC、50%のゼオライト、その後、深さ200mmの沈殿物トラップ(深さ20mmの50%のGACと50%のゼオライト、深さ45mmのゼオライト、深さ45mmの中程度のゼオライト、深さ45mmの粗いゼオライト、および深さ45mmの非常に粗いゼオライト)
【0044】
低流量ろ過システム(殺菌無し):深さ50mmのスクリーニング材料(すなわち、砕石)、深さ250mmの25%のGAC、25%のゼオライト、50%の砂、その後、深さ200mmの沈殿物トラップ(深さ20mmの25%のGAC、25%のゼオライト、50%の砂、深さ45mmのゼオライト、深さ45mmの中程度のゼオライト、深さ45mmの粗いゼオライト、および深さ45mmの非常に粗いゼオライト)。この実施形態を図2Bに模式的に示す。
【0045】
低流量ろ過システム(殺菌有り):深さ50mmのスクリーニング材料(すなわち、砕石)、深さ250mmの25%のGAC、25%のゼオライト、50%の砂、その後、深さ200mmの沈殿物トラップ(深さ20mmの25%のGAC、25%のゼオライト、50%の砂、深さ45mmのゼオライト、深さ45mmの中程度のゼオライト、深さ45mmの粗いゼオライト、および深さ45mmの非常に粗いゼオライト)。塩素キューブが、沈殿物トラップの構成要素内の、ゼオライトの深さ60mm以内の位置に配置されている。この塩素キューブは、1辺が30mmであり、沈殿物トラップ内に130個/mの割合で配置されている。
【0046】
別の実施形態では、上記の各ろ過システムのGACは、ACGACに置き換えられている。
【0047】
例3−ろ過材の分析
人工的な暴風雨水に対して例2(ACGACではなくGACを使用)の高流量ろ過システムを使用して、以下の水分析結果を得た。暴風雨水池沈殿物と、塩素を除去した水道水とを混ぜることにより人工的な暴風雨水を作製し、これに、典型的な暴風雨水の質の濃度に合うように、実験室グレードの化学薬品および微生物を注ぎ足した。
【0048】
表1は、処理済みの水中のTSS=浮遊固形物の総量、TP=リンの総量、TN=窒素の総量、および重金属の減少率を示している。表2は、処理済みの水中の特定の微生物の減少率を示している。
【表1】

【表2】

【0049】
予備的な結果によって、TPの除去率は、GACの代わりにACGACを用いた場合にはるかに高くなることが示されている。また、低流量ろ過システムで、高流量ろ過システムで観察されるよりも高い除去率が得られる。低流量ろ過システムでACGACを用いた予備的な試験により、リンの除去率が(平均で)70%前後に上昇することが示された。
【0050】
低流量ろ過システムで殺菌を用いた場合、微生物の除去率は、大腸菌で>99.99%、f−RNAファージで>99.8%、ウェルシュ菌で99.92%に上昇した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムで被覆された粒状活性炭および粒状ゼオライトを有する、水から汚染物質を除去するためのろ過材。
【請求項2】
アルミニウムで被覆された粒状活性炭の粒状ゼオライトに対する体積比が、約0.5:1と2:1の間である、請求項1に記載のろ過材。
【請求項3】
さらに砂を有する、請求項1または請求項2に記載のろ過材。
【請求項4】
前記砂は、ろ過材の全体積の約30%と約60%の間を構成している、請求項3に記載のろ過材。
【請求項5】
前記砂は、ろ過材の全体積の約37.5%を構成している、請求項3に記載のろ過材。
【請求項6】
アルミニウムで被覆された粒状活性炭を製造する方法であって、粒状活性炭を約5から約6.8の間のpHに酸性化された1つ以上のアルミニウム塩を有する水溶液に曝すことと、前記水溶液を取り除くことと、製造する前記アルミニウムで被覆された粒状活性炭を洗浄し乾燥させることと、を有する方法。
【請求項7】
前記水溶液は、約6と約6.5の間のpHに酸性化される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アルミニウム塩は、硫酸アルミニウムである、請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
水から汚染物質を除去するためのろ過システムであって、
(i)粒状活性炭および粒状ゼオライトを有する中間区域と、
(iii)スクリーニング材料を有する下部バリア区域と、
を有し、
約0.5Lsec−1−2から約10Lsec−1−2の流量の水を通過させることができるろ過システム。
【請求項10】
前記中間区域における粒状活性炭の粒状ゼオライトに対する体積比が、約0.5:1と2:1の間である、請求項9に記載のろ過システム。
【請求項11】
前記中間区域は、さらに砂を有する、請求項9または請求項10に記載のろ過システム。
【請求項12】
前記砂は、前記中間区域の全体積の約30%と約60%の間を構成している、請求項11に記載のろ過システム。
【請求項13】
前記粒状活性炭は、アルミニウムで被覆された粒状活性炭を有する、請求項9から12のいずれか1つに記載のろ過システム。
【請求項14】
微粒子状の汚染物質を除去するための上部沈殿物トラップをさらに有する、請求項9〜13のいずれか1つに記載のろ過システム。
【請求項15】
前記沈殿物トラップは、スコリア、粒状活性炭、粒状ゼオライト、および砂のうち1つ以上を有する、請求項14に記載のろ過システム。
【請求項16】
さらに水溶性塩素塩の細粒を有する、請求項9〜15のいずれか1つに記載のろ過システム。
【請求項17】
前記水溶性塩素塩の細粒は、前記沈殿物トラップおよび/または前記中間区域内に設けられている、請求項16に記載のろ過システム。
【請求項18】
水から汚染物質を除去するためのろ過システムを収容し、水が通過できる上面および底面を持つカートリッジであって、
前記ろ過システムは、
(i)粒状活性炭および粒状ゼオライトを有する中間区域と、
(iii)スクリーニング材料を有する下部バリア区域と、
を有し、
約0.5Lsec−1−2から約10Lsec−1−2の流量の水を通過させることができるカートリッジ。
【請求項19】
前記カートリッジの上面は、固形物、スラッジ、および/または微粒子の粗いろ過器として働くメッシュを有する、請求項18に記載のカートリッジ。
【請求項20】
前記中間区域は、さらに砂を有する、請求項18または請求項19に記載のカートリッジ。
【請求項21】
前記粒状活性炭は、アルミニウムで被覆された粒状活性炭を有する、請求項18〜20のいずれか1つに記載のカートリッジ。
【請求項22】
前記ろ過システムは、微粒子状の汚染物質を除去するための上部沈殿物トラップをさらに有する、請求項18から21のいずれか1つに記載のカートリッジ。
【請求項23】
水から汚染物質を除去する方法であって、
(i)粒状活性炭および粒状ゼオライトを有する中間区域と、
(iii)スクリーニング材料を有する下部バリア区域と、
を有するろ過システムに前記水を通過させることを含み、
前記水は約0.5Lsec−1−2から約10Lsec−1−2の流量で前記ろ過材を通過する、方法。
【請求項24】
前記中間区域は、さらに砂を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記粒状活性炭は、アルミニウムで被覆された粒状活性炭を有する、請求項23または請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ろ過システムは、微粒子状の汚染物質を除去するための上部沈殿物トラップをさらに有する、請求項23から25のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2013−501603(P2013−501603A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524058(P2012−524058)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001036
【国際公開番号】WO2011/017768
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(512035158)ウォーター ハーべスティング テクノロジーズ プロプライエタリー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】WATER HARVESTING TECHNOLOGIES PTY LTD
【住所又は居所原語表記】35 Kinross Street,Bendigo,Victoria 3550,Australia
【Fターム(参考)】