説明

活性炭の製造方法及び活性炭

【課題】 従来廃棄処理されていた農水産物系廃棄物を利用して活性炭を製造し、資源を有効利用する活性炭の製造方法及び活性炭を提供する。
【解決手段】 農水産物系の有機物質を主成分とする含水率70〜80%の廃棄物に、重量比において1.5〜2.5倍の菌糸体作物の培床を混入して発酵処理し、その発酵処理後の材料を炭化・賦活する。活性炭の形状を立体成形体であるハニカム構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農水産物系の産業廃棄物を利用した活性炭の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農水産物系の有機物質を主成分とする廃棄物は、農業、畜産業、漁業、食品加工業、外食産業等から排出される他、家庭の生ゴミ等として排出されている。
これらの廃棄物は窒素、有機物の含有率が高いため肥料、飼料として再利用されるが、その全てを処理することは困難であり、大部分は廃棄処理されているのが現状である。
また、これらの有機性廃棄物はいずれも高い含水率を有しているため消却処理も困難である。そして、廃棄物の運搬,廃棄場所は環境上の問題から種々の規制がされている。
そこで、このような有機性廃棄物を発酵処理して有効利用する技術として、特開2001−321162号公報記載の技術が知られている。
【特許文献1】特開2001−321162号公報
【特許文献2】特開平5−43346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、活性炭はヤシ殻、木粉等の有機物を原材料として、水蒸気、二酸化炭素などによって賦活して製造されるが、この技術として特開平5−43346号公報記載の技術が知られている。
そして、前記農水産物系の廃棄物はヤシ殻、木粉等と同様に有機物を含有する材料である。そこで、これらの廃棄物を原料に活性炭を製造することができれば、資源を有効利用できる。
本発明は係る従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、従来廃棄処理されていた農水産物系廃棄物を利用して活性炭を製造し、資源を有効利用する活性炭の製造方法及び活性炭を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するための手段として、請求項1記載の活性炭の製造方法では、農水産物系の有機物質を主成分とする廃棄物を発酵処理し、その発酵処理後の材料を炭化・賦活することを特徴とする。
請求項2記載の活性炭の製造方法では、農水産物系の有機物質を主成分とする廃棄物に、菌糸体作物の培床を混入して発酵処理し、その発酵処理後の材料を炭化・賦活することを特徴とする。
請求項3記載の活性炭の製造方法では、農水産物系の有機物質を主成分とする含水率70〜80%の廃棄物に、重量比において1.5〜2.5倍の菌糸体作物の培床を混入して発酵処理し、その発酵処理後の材料を炭化・賦活することを特徴とする。
請求項4記載の活性炭の製造方法では、請求項1〜3いずれか記載の活性炭の製造方法において、活性炭の形状を立体成形体であるハニカム構造としている。
請求項5記載の活性炭は、請求項1〜4いずれか記載の方法によって得られる。
【発明の効果】
【0005】
本発明では、前記構成を採用することにより、以下の効果が得られる。
従来廃棄処分されていた農水産物系の廃棄物を使用するので、資源を有効利用できる。
きのこ等の菌糸体作物培床を使用するので、発酵処理が促進されると共に、培床本体は高い吸収力を備えているので、水分含量の多い廃棄物であっても水分調整がなされ、発酵・乾燥を確実に行う。
また、含水率70〜80%の廃棄物に、重量比において1.5〜2.5倍の菌糸体作物の培床を混入するので、多量の培床が集中して発酵を行うと同時に、発酵による異臭を培床が吸収する。
活性炭の原料を菌糸が分解するため、材料が細分化され、活性炭に好適な微細空隙が形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明の活性炭の製造方法は、農水産物系の有機物質を主成分とする廃棄物を発酵処理し、それを炭化・賦活することによって製造する方法である。
農水産物系の有機物質としては、家庭の生ゴミ、農業、畜産業、漁業等の一次産業廃棄物、食品加工業、外食産業等の食材廃棄物等が使用される。
【0007】
発酵処理に使用する菌体としては、きのこの栽培過程で生じる菌糸体作物培床を使用する。菌糸体作物の種類は特に限定されるものではないが、例えばきのこ、シメジ、エノキ、エリンギ、マイタケ等を使用する。
一般的にきのこ、エノキ等の容器栽培においては、空調機を利用したハウス栽培が行われるが、この栽培方法は、容器中に培床を充填し、栽培容器の上部を解放して菌床上面のみを露出させ、その他の部分は栽培容器として残し、容器内に給水しながら、菌床上面からのみ発生させる方法である。培床はふすま、米糠、豆皮、とうもろこしの芯、オガクズ粉等に菌体を植え付けて形成する。
容器栽培では、容器の上方に成長したきのこを収穫し、収穫後の容器中に培床が残されることになる。本発明はこの培床を使用するものである。
尚、培床は増殖させることも可能であり、この場合には、前記ふすま、米糠、豆皮、とうもろこしの芯、オガクズ粉等に、少量の培床を加えて温度、湿度等を好適に維持して全体に菌類を増殖させたものを使用する。
【0008】
農水産物系廃棄物の発酵に際しては、廃棄物と培床の重量比を(1:1.5)〜(1:2.5)の範囲内、好ましくは廃棄物の重量の2倍程度の培床を混合し、撹拌しながら通気性を確保して発酵させる。
発酵時には発酵物の温度が50〜70℃に達し、同時に水分が蒸発して乾燥が行われる。また、外気温の状況、発酵物の量により温度が不足する場合に、別途ヒータ等により加熱を行う。乾燥後の水分量は25〜35重量%にすることが好ましい。
本発明では、発酵により脱水作用が得られると共に、発酵時の臭気を培床が吸収するため消臭作用も発揮する。
【0009】
前記発酵処理を行った後に、発酵物をロータリキルン、定置炉等に搬入して炭化・賦活処理を行う。
炭化は不活性雰囲気下で行う。非酸化性雰囲気とは、例えば、Arガス、Heガス、Nガス、ハロゲンガス、アンモニアガス、COガス、水素ガス、あるいはこれらの混合ガス、水性ガス等をいう。炭化のための温度は、好ましくは、500℃〜1200℃、特に600〜900℃の範囲が好ましい。
【0010】
以上のようにして得られた炭素多孔体は、更に賦活処理を施して活性化する。賦活工程は、炭化工程に連続していてもよいし、炭化工程と別個の工程としてもよい。炭素多孔体の賦活は炭素多孔体を酸化性ガス、または酸化性ガスと不活性ガスとの混合気体の雰囲気下で加熱して行われる。
【0011】
重合体を賦活するための酸化性ガスとしては、公知の酸化性ガス、例えば、空気、水蒸気、炭酸ガス、水性ガス等を採用することができる。重合体を炭化、賦活して、活性炭を製造する際の温度としては、賦活ガスの種類、濃度にもよるが、通常は600ないし1200℃、好ましくは750ないし1000℃の範囲が採用される。
【実施例1】
【0012】
以下、具体的実施例を説明する。
第1実施例に係る活性炭の製造方法は家庭の生ゴミを原料として活性炭を製造する方法である。
一般家庭の含水率70%程度の生ゴミ1000gに、きのこの菌糸培床2000gを加えて混合し、数日間撹拌を行いながら、常温にて発酵させる。
発酵により重量が2200g、含水率が28%まで減少し、生ゴミに菌糸による微細空隙が形成される。
これらの材料2200gを賦活剤と共に加熱炉で炭化・賦活処理を行い活性炭660gを得た。
製造された活性炭は、直径0.4nm以下から、直径25nm以上の大小さまざまな無数の微細孔を有する多孔質状の物質であり、1g当たり1000m前後の表面積を有していた。
【実施例2】
【0013】
第2実施例に係る活性炭の製造方法は農業における廃棄果実を原料として活性炭を製造する方法である。
含水率80%程度の廃棄みかん500gに、きのこの菌糸培床1000gを加えて混合し、数日間撹拌を行いながら、常温にて発酵させる。
発酵により重量が1100g、含水率が30%まで減少し、生ゴミに菌糸による微細空隙が形成される。
これらの材料1100gを炭酸カリウムと練り合わせた。これを窒素流通下の管型反応器内で昇温速度10℃/分で800℃まで昇温し、その温度で1時間保持した。その後、窒素流通下で室温まで冷却して炭化物を取り出した。その炭化物を熱水で洗浄して330gの活性炭を得た。
【実施例3】
【0014】
第3実施例はハニカム構造体の活性炭についての製造方法である。
一般家庭の含水率70%程度の生ゴミ800gに、きのこの菌糸培床1200gを加えて混合し、数日間撹拌を行いながら、常温にて発酵させる。
発酵により重量が1400g、含水率が28%まで減少し、生ゴミに菌糸による微細空隙が形成される。
これらの材料に適量の有機質成型助剤(マンナン等)と炭化付与剤等を添加して真空押出し成型機等により所定の形状に成型し、多数の貫通孔を有するハニカム構造体に成型する。次に得られた成型体を温度70〜90℃、湿度80〜90%で乾燥させ、次いで500〜600℃の温度範囲で焼成して炭化をした後、700〜1000℃の温度で水蒸気賦活することで、細孔構造を有する活性炭ハニカム構造体が得られた。
【0015】
以上、実施例を説明したが、本発明の具体的な構成は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農水産物系の有機物質を主成分とする廃棄物を発酵処理し、その発酵処理後の材料を炭化・賦活することを特徴とする活性炭の製造方法。
【請求項2】
農水産物系の有機物質を主成分とする廃棄物に、菌糸体作物の培床を混入して発酵処理し、その発酵処理後の材料を炭化・賦活することを特徴とする活性炭の製造方法。
【請求項3】
農水産物系の有機物質を主成分とする含水率70〜80%の廃棄物に、重量比において1.5〜2.5倍の菌糸体作物の培床を混入して発酵処理し、その発酵処理後の材料を炭化・賦活することを特徴とする活性炭の製造方法。
【請求項4】
活性炭の形状を立体成形体であるハニカム構造とする請求項1〜3いずれか記載の活性炭の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の方法によって得られる活性炭。

【公開番号】特開2007−308311(P2007−308311A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136221(P2006−136221)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(506165092)
【出願人】(506166479)
【出願人】(506166181)
【Fターム(参考)】