活性薬輸送システム
【課題】細胞膜または脂質二重層を通して生物学的活性薬を送達する方法の提供。
【解決手段】a)天然のコンホメーション状態、変性コンホメーション状態、及び、コンホメーション的に天然及び変性状態の中間にあり天然状態に変換可能な中間コンホメーション状態で存在しうる生物学的活性薬を準備し、b)この生物学的活性薬を複合体形成摂動剤に曝露して、該生物学的活性薬を可逆的に中間状態に変換させて送達可能な超分子複合体を形成し、c)膜または二重層を前記超分子複合体に曝露し、生物学的活性薬を膜または二重層を通して送達する工程からなる。この摂動剤は、約150から約600ダルトンの分子量を持ち、少なくとも1つの疎水性部位と少なくとも1つの親水性部位を有する。上記(a)及び(b)の工程からなる経口投与可能な生物学的活性薬の調製方法も、経口送達用組成物と同様に提供する。
【解決手段】a)天然のコンホメーション状態、変性コンホメーション状態、及び、コンホメーション的に天然及び変性状態の中間にあり天然状態に変換可能な中間コンホメーション状態で存在しうる生物学的活性薬を準備し、b)この生物学的活性薬を複合体形成摂動剤に曝露して、該生物学的活性薬を可逆的に中間状態に変換させて送達可能な超分子複合体を形成し、c)膜または二重層を前記超分子複合体に曝露し、生物学的活性薬を膜または二重層を通して送達する工程からなる。この摂動剤は、約150から約600ダルトンの分子量を持ち、少なくとも1つの疎水性部位と少なくとも1つの親水性部位を有する。上記(a)及び(b)の工程からなる経口投与可能な生物学的活性薬の調製方法も、経口送達用組成物と同様に提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性薬、特に生物学的活性薬を、細胞膜または脂質二重層を横切って送達するための方法及び組成物に関する。これらの方法及び組成物は、製薬製剤を不利な環境を通して体内の特定の位置に送達するように、活性薬を標的に送達することができる。
【背景技術】
【0002】
活性薬を、例えばヒトの器官や腫瘍などの目的とする標的に送達するための従来の手段は、生物学的、化学的、及び物理的障害物の存在によってしばしば制限されることがあった。典型的には、これらの障害物は、送達が通過しなければならない環境、送達する標的の環境、または標的そのものによって与えられていた。
【0003】
生物学的活性薬は、特にこのような障害物の影響を受けやすい。多くの生物学的活性薬についての循環系への経口送達は、もし、ある種の生物学的活性薬に対して比較的不透過性であるが、経口経路を通して活性薬が循環系に到達するためには横切らなければならない皮膚、脂質二重層、及び種々の生体器官膜などの物理的障害物が無い場合は、動物への投与経路の選択肢である。さらに、経口送達は胃腸(GI)管のpH変化、並びに、口腔及びGI管に存在する強力な消化酵素といった化学的障害によって邪魔される。
【0004】
カルシトニン及びインシュリンは、この分野での有効な経口経路送達システムの設計において直面する問題を例示する。カルシトニン及びインシュリンの医学的性質は、多くの技術によって容易に変化させることができるが、それらの物理化学的性質及び酵素消化の受け易さは、商業的に実行可能な送達システムの設計から除外されている。経口投与には典型的に受け入れられない多くの試薬のうちの他のものは、シトキン(例えば、インターフェロン、IL−2など)といったタンパク質;エリスロポイエチン、多糖類、特に、ムコ多糖であり、ヘパリン、ヘパリノイド、抗生物質、及び他の有機物質を含むがこれらに限定されない。また、これらの試薬は、即座に不活性になる、即ち、GI管内で酸加水分解、酵素等によって分解される。
【0005】
バイオテクノロジーは、多くの他の化合物の生成を可能にし、それらの多くは世界中で臨床に使用されている。しかし、これらの化合物の現在の投与形態は、ほとんどが注射によるものである。これらの化合物の経口投与が多くの場合に好ましいにもかかわらず、これらの試薬はGI管内の種々の酵素やpH変化の影響を受けやすく、一般的には、細胞膜が典型的に構成される脂質二重層を十分に透過することができない。従って、この活性薬は、活性薬がその生物学的効果を発揮することが望まれる標的に経口送達することができなかった。
【0006】
典型的には、薬物設計は、製薬化合物の生化学的性質、及び、特にそれらの治療作用に最初に焦点が当てられる。第2の設計の焦点は、活性薬をその生物学的標的に送達する必要性に向けられる。このことは、ヒト及び他の動物に経口投与するための薬物及び他の生物学的活性薬に当てはまる。しかしながら、投与、特に経口投与後に、該化合物の治療的タイターが適当な解剖学的部位即ち区画に到達することを確実にする送達システムが無かったため、数千の治療的化合物は廃棄された。さらに、現存する治療用化合物の多くは、それらの投与形態の束縛から、許容された徴候に使用されている。また、それら以外の付加的な臨床的徴候にも有効である多くの治療的試薬は、それらを適切な量で適当な生物学的標的に送達する実際の方法論が存在する場合は既に採用されている。
【0007】
タンパク質などの活性薬の細胞間及び細胞内送達に有効な性質が得られたとしても、この成功は薬物設計に生かされていなかった。現実に、タンパク質などの活性薬の送達可能なコンフォメーションは、天然の状態におけるコンフォメーションとは異なる。さらに、自然な送達システムは、しばしば送達に続くタンパク質の天然状態への帰還に作用する。タンパク質がリボゾームによって合成されると、それらは、例えば信号ペプチド及び/またはチャペロニン(chaperonin)といった種々の機構によって適当な細胞オルガネラに往復運転される。Gething,M-J., Sambrook,J.,Nature,355,1992,33-45。信号ペプチドまたはチャペロニンのいずれかの多くの機能の一つは、タンパク質の天然状態への前成熟折り畳みを阻害することである。天然状態は、通常最も低い自由エネルギーを持つ3次元状態として記述される。タンパク質を部分的に折り畳みしない状態に保持するため、信号ペプチドまたはチャペロニンは、タンパク質が適当なオルガネラに到達するまで、タンパク質が種々の細胞膜を横切ることを可能にする。次いで、チャペロニンはタンパク質から分離され、信号ペプチドはタンパク質から解離され、タンパク質が天然状態に折り畳みすることができるようにされる。タンパク質が細胞膜を通過することができるのは、少なくとも一部は、部分的に折り畳みしない状態にあることの結果であることは良く知られている。
【0008】
タンパク質折り畳みの今日の概念は、天然状態から完全に変性した状態への変換において、多数の不連続なコンフォメーションが存在することを示唆している。Baker,D.,Agard,D.A.,Biochemistry,33,1994,7505-7509。タンパク質折り畳みの骨格モデルは、折り畳みの初期段階においては、二次構造単位であるタンパク質のドメインが形成され、次いで最終的折り畳みによって天然状態になることを示唆している。Kim,P.S.,Baldwin,R.L.,Annu.Rev.Biochem.,59,1990,631-660。これらの速度論的中間体に加えて、多くの細胞機能にとって平衡中間体が重要であることがわかった。Bychkova,V.E.,Berni,R.,等,Biochemistry,31,1992,7566-7571,及び Sinev,M.A.,Razgulyaev,O.I.,等,Eur.J. Biochem.,1989,180,61-66。チャペロニンについてのデータは、それらが、タンパク質を部分的に天然状態ではないコンフォメーションに保持する作用があることを示している。さらに、部分的に折り畳まれていないタンパク質は、膜を通過できるが、天然状態、特に大きな粒状タンパク質は、膜を通過しにくいか全く通過しないことが示された。Haynie,D.T.,Freire,E.,Proteins: Structure, Function and Genetics,16,1993,115-140。
同様に、上記の平衡中間体を伴ってコンフォメーション変化を受けないインシュリンなどのリガンドは、それらの機能を失う。Hua,Q.X.,Ladbury,J.E.,Weiss,M.A.,Biochemistry,1993,32,1433-1442; Remington,S.,Wiegand,G., Huber,R.,1982,158,111-152; Hua,Q.X.,Shoelson,S.E.,Kochoyan,M., Weiss,M.A.,Nature,1991,354,238-241。
【0009】
ジフテリア毒素及びこれら毒素の研究は、ジフテリア毒素がその細胞レセプターに結合した後、エンドサイトーシスされるが、このエンドサイトーシス小胞において、酸性pH環境に曝露されることを示している。酸性pHは、毒素分子に構造変化を誘起し、膜挿入及び細胞質ゾルへの位置変化(translocation)の原動力を与える。Ramsay,G.,Freire,E.,Biochemistry,1990,29,8677-8683,及びSchon,A.,Freire,E.,Biochemistry,1989,28,5019-5024 参照。同様に、コレラ毒素は、エンドサイトーシスに続いてコンフォメーション変化を受け、分子が核膜を透過するのを可能にする。Morin,P.E.,Diggs,D.,Freire,E.,Biochemistry,1990,29,781-788 参照。
【0010】
先に設計された送達システムは、送達のための間接的または直接的な試みをいずれかを用いる。間接的試みは、薬物を敵対する環境から保護することを目指す。例として、腸被覆(enteric coatings)、リポソーム、微小球、マイクロカプセルがある。colloidal drug systems,1994,ed.Jorg Freuter,Marcel Dekker,Inc.; U.S.Patent No.4,239,754; Patel,等,(1976),FEBS Letters,Vol.62, pg.60; 及び Hashimoto,等,(1979),Endocrinology Japan,Vol.26,pg.337 参照。これらの試みは全て間接的であり、その設計原理は薬物には向けられず、例えば、敵対環境の薬物への接触及び破壊を防止するといった、薬物が生物学的活性を発揮する標的までの経路で薬物が通過しなければならない環境に対する保護に向けられている。
【0011】
直接的な試みは、プロドラッグの製造といった、薬物と修飾物との共有結合に基づいている。Balant,L.P.,Doelker,E.,Buri,P.,Eur.J.Drug Metab.And Pharmacokinetics,1990,15(2),143-153。結合は、通常は、pH変化や特定の酵素への曝露などの所定の条件下で開裂するように設計される。薬物と修飾物との共有結合は、本質的に新たな分子を生成するが、それらは、変化したlogP等の新たな性質及び/または新たな螺旋コンフィギュレーションを持つ。この新たな分子は、異なる溶解性を持ち、酵素分解を受けにくい。このタイプの方法の例は、ポリエチレングリコールとタンパク質との共有結合である。Abuchowski, A.,Van Es,T.,Palczuk,N.C.,Davis,F.F.,J.Biol.Chem.,1977,252,3578。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、(1)システムが、毒性となる量のアジュバントまたは阻害剤を必要とすること、(2)好ましく低い分子量のコルゴ(corgos)即ち活性薬が、入手できないこと、(3)システムの安定性が悪く、シェルフライフが不十分であること、(4)システムの調製が困難であること、(5)システムが活性薬(コルゴ)を保護しないこと、(6)システムが活性薬を悪い方向に変化させること、または、(7)システムが活性薬の吸着を推進しないことによって、従来の送達システムの広い範囲の用途は除外されている。
【0013】
この分野では、簡単で低価格の送達システムであって、調製が容易であり、特に、経口経路で投与すべき製薬製剤の場合に、広い範囲の活性薬を目的とする標的に送達できる送達システムを未だに必要としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、細胞膜または脂質二重層を通して生物学的活性薬を送達する方法を開示する。この方法は、
(a)天然のコンホメーション状態、変性コンホメーション状態、及び、コンホメーション的に天然及び変性状態の中間にあり天然状態に変換可能な中間コンホメーション状態で存在しうる生物学的活性薬を準備し、
(b)この生物学的活性薬を複合体形成摂動剤(complexing perturbant)に曝露して、該生物学的活性薬を可逆的に中間状態に変換させて送達可能な超分子複合体(supramolecular complex)を形成し、そして、
(c)前記膜または二重層を、前記超分子複合体に曝露して、前記生物学的活性薬を前記膜または二重層を通して送達する工程を含む。
【0015】
この摂動剤は、約150から約600ダルトンの分子量を持ち、少なくとも1つの疎水性部位と少なくとも1つの親水性部位を有する。この超分子複合体は、前記生物学的活性薬に非−共有結合で複合体形成した摂動剤を含有する。本発明では、生物学的活性薬は摂動剤と相互作用した後は微小球を形成しない。
【0016】
また、上記の工程(a)及び(b)からなる経口投与可能な生物学的活性薬の調製方法も考慮する。
【0017】
変形実施態様において、経口送達用組成物が提供される。この組成物は、
(a)下記(b)と非共有結合で複合体形成した中間コンホメーション状態の生物学的活性薬、
(b)約150から約600ダルトンの分子量を持ち、少なくとも1つの疎水性部位と少なくとも1つの親水性部位を有する複合体形成摂動剤を含み、
前記中間コンホメーション状態は、天然のコンホメーション状態及び変性コンホメーション状態の中間にあり、前記天然状態に変換可能であって、前記組成物は微小球ではない。
【0018】
さらに、細胞膜または脂質二重層を通して送達可能であり、前記膜または二重層を通過した後に生物学的に活性となる模倣物(mimetic)を調製する方法も考慮する。天然のコンホメーション状態、変性コンホメーション状態、及び、コンホメーション的に天然及び変性状態の中間にあり天然状態に変換可能な中間コンホメーション状態で存在しうる生物学的活性薬を複合体形成摂動剤に曝露して、該生物学的活性薬を可逆的に中間状態に変換させて送達可能な超分子複合体を形成する。この摂動剤は、約150から約600ダルトンの分子量を持ち、少なくとも1つの疎水性部位と1つの親水性部位を有する。この超分子複合体は、前記生物学的活性薬に非−共有結合で複合体形成した摂動剤を含有し、生物学的活性薬は摂動剤と相互作用した後は微小球を形成しない。超分子複合体の模倣物を調製する。
【0019】
さらにまた、細胞膜または脂質二重層を通して送達可能であり、前記膜または二重層を通過した後に生物学的に活性となる薬剤を調製する方法を提供する。天然のコンホメーション状態、変性コンホメーション状態、及び、コンホメーション的に天然及び変性状態の中間にあり天然状態に変換可能な中間コンホメーション状態で存在しうる生物学的活性薬を複合体形成摂動剤に曝露して、該生物学的活性薬を可逆的に中間状態に変換させる。薬剤、前記中間状態の模倣物を調製する。
【0020】
〔発明の詳細な説明〕
生物学的な生物は、細胞膜または脂質二重層で互いに分離された水性区画からなると言うことができる。活性薬、特に製薬または治療用活性薬は、水性環境において1つの溶解度を有し、疎水性環境においては全く異なる溶解度を有する。典型的には、投与部位から病原部位などの標的部位への活性薬の送達は、活性薬の溶解度が変化する細胞膜または脂質二重層を通した活性薬の送達を必要とする。さらに、活性薬の経口送達は、酵素分解、pH変化などに抗する能力を必要とする。これらの障害は、投与部位と標的との間で、活性薬の生物学的活性の部分的または全体的な低下をもたらす。従って、治療反応のような正当な反応を生ずるのに必要な量の活性薬だけでは、標的に到達しないかもしれない。従って、活性薬は、到達のため、そして膜または脂質二重層を通過するための何らかの助けを必要とする。
【0021】
本発明は、活性薬と複合体形成摂動剤から可逆的に非共有結合で複合体形成した超分子によって、活性薬送達に有効である。結果として、活性薬の三次元構造またはコンフォメーションが変化するが、活性薬分子の化学組成は変化しない。この(組成ではなく)構造の変化は、活性薬に、膜または脂質二重層を通過し、酵素分解などに抗するのに適当な溶解性(logP)を付与する。通過とは、実際に細胞膜または脂質二重層を透過するか否かに係わらず、細胞膜または脂質二重層の一方の側から反対側へ(例えば、細胞の外部から内部へ、またはその逆へ)送達することを意味する。さらに、活性薬の摂動剤中間体状態または超分子自身は、模倣物製造のテンプレートとして用いることができ、この模倣物は細胞膜または脂質二重層を通って送達可能である。細胞膜または脂質二重層を通過した後、活性薬は、天然状態への変換により、または中間状態で得られる生物学的活性または生体適合性を保持することにより、生物学的活性及び生体適合性を有する。模倣物は、細胞膜または脂質二重層を通過した後、同様に作用する。
【0022】
〔活性薬〕
活性薬の天然コンフォメーション状態は、最も低い自由エネルギー(ΔG)を持つ三次元状態として典型的に記述される。それは、生物学的活性薬に帰する生物学的活性の全ての補体のように、活性薬がその薬に帰する活性の完全な補体を有する状態である。
【0023】
変性コンフォメーション状態は、活性薬が二次または三次構造を持たない状態である。
【0024】
中間コンフォメーション状態は、天然及び変性状態の間に存在する。特に活性な薬は、1またはそれ以上の中間状態を有する。本発明で達成される中間状態は、構造的かつエネルギー的に、天然状態とも変性状態とも異なっている。本発明で有用な活性薬は、天然コンフォメーション状態から中間コンフォメーション状態に変換可能であり、天然状態に戻すこともできる。即ち、可逆的に変換可能であって、活性薬が標的に到達するとき、例えば、経口送達された薬物が循環系に到達したときに、活性薬は生物学的、製薬的、または治療的に重要な設計された生物学的活性補体を保持し、回復し、または獲得する。好ましくは中間状態の約−20kcal/molから約20kcal/molの範囲、さらに好ましくは、約−10kcal/molから約10kcal/molの範囲である。
【0025】
例えばタンパク質の場合、中間状態は重要な二次構造、かなり大きな疎水性コアの存在による重要な緻密性(compactness)、及び天然折り畳みを記憶した(reminiscent)三次構造を有するが、天然状態の充填を示す必要はない。天然状態と中間状態との間の自由エネルギーの差(ΔG)は比較的小さい。従って、天然状態と、変換可能な可逆的中間状態との平衡定数は1に近い(実験条件による)。中間状態は、例えば、示差熱量分析(DSC)、等温的定熱量分析(ITC)、天然勾配ゲル、NMR、蛍光等によって確認することができる。
【0026】
如何なる理論にもよらないが、本出願人は、中間状態の物理化学は、タンパク質性活性薬に関する以下の説明で理解されるものと思う。タンパク質は適当な中間コンフォメーション状態で存在でき、それは構造的かつエネルギー的に、天然状態とも変性状態とも異なる。任意のタンパク質の任意のコンフォメーション本来の安定性は、コンフォメーションについてのギブスの自由エネルギーに反映される。単量体のタンパク質の状態のギブスの自由エネルギーは、熱力学的に以下の式で表される。
【数1】
ここで、Tは温度、TRは参照温度、ΔHO(TR)及びTΔSO(TR)は参照温度におけるこの状態の相対的エンタルピー及びエントロピー、そして、ΔCpOはこの状態の相対的熱容量を示す。全ての相対的熱力学的パラメータを説明するために、天然状態を参照状態として選択するのが好ましい。
【0027】
そのタンパク質に許容される全ての状態統計的重量の和は、分配関数Qで定義される。
【数2】
【0028】
式(2)は、次のようにも書ける。
【数3】
【0029】
ここで、第2項は、変換中に集団化した全ての中間体を含む。式(3)の第1項及び第3項は、各々、天然及び変性状態の統計的重量である。ほとんどの条件下で、タンパク質構造は、2状態変換関数で近似できる。
【数4】
【0030】
Tanford,C.,Advances in Protein Chemistry,1968,23,2-95 参照。天然と変性状態の中間にあるタンパク質のコンフォメーションは、例えば、NMR、熱量分析、及び蛍光で検出できる。Dill,K.A.,Shortle,D.,Rev.Biochem.,60, 1991,795-825。
【0031】
全ての熱力学的パラメータは、分配関数で表される。特に、i状態にある分子の集団は、式(5)で表される。
【数5】
【0032】
従って、ギブスの自由エネルギーの計算を可能にする式(1)の適当な項の測定は、設定した実験条件において、集団化した任意の中間体がどの程度重要かを決定することができる。これは、中間体が薬物送達で果たすいえくわりを示している。中間体の集団化が多いほど、送達は有効になる。
【0033】
本発明で用いるのに好適な活性薬は、生物学的活性薬及び化学的活性薬であり、香料及び例えば化粧品のような他の活性薬を含むが、これらに限定されない。
【0034】
生物学的活性薬はペストシド(pestcides)、製薬剤、及び治療剤を含むがこれらに限定されない。例えば、本発明で用いるのに好適な生物学的活性薬は、ペプチド、特に小さなペプチド、ホルモン、特にそれ自身は胃腸粘膜を通過しない及び/または胃腸管の酸または酵素による化学的開裂を受けないホルモン、多糖類、特にムコ多糖類の混合物、炭水化物、脂質、またはそれらの組合せを含むがそれらに限定されない。さらなる例は、ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、インターフェロン、インターロイキン−1、インシュリン、ヘパリン、特に低分子量ヘパリン、カルシトニン、エリスロポイエチン、心房性ナトリウム排泄増加因子(atrial naturetic factor)、抗原、モノクローナル抗体、ソマトスタチン、副腎皮質刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、オキシトシン、バソプレッシン、クロモリンナトリウム(ナトリウムまたは時ナトリウムクロモグリカート)、バンコマイシン、デフェロキサミン(DFO)、抗−微生物、しかし抗菌剤に限られない、またはこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。
【0035】
本発明の方法及び組成物は、1以上の活性薬の組合せでもよい。
【0036】
〔摂動剤〕
本発明での摂動剤は、2つの目的を持つ。第1の実施態様では、活性薬は摂動剤と接触し、活性薬を天然状態から中間送達可能状態に可逆的に変換する。摂動剤は活性薬と非共有結合で複合体形成し、細胞膜または脂質二重層を透過または横切ることにできる超分子複合体を形成する。この超分子複合体は、模倣物のテンプレートとして用いることが出来、それ自身送達組成物として使用することができる。実際に、摂動剤は、活性薬を送達可能な中間状態に固定する。摂動剤は循環系における希釈等によって超分子複合体から放出され、活性薬は天然状態に戻る。好ましくは、これらの摂動剤は、少なくとも1つの親水性部分(即ち、カロキシラート基のように、容易に水に溶解する部分)、及び、少なくとも1つの疎水性部分(即ち、例えばベンゼン基のように、有機溶媒に容易に溶解する部分)を備え、約150から600ダルトン、最も好ましくは約200から500ダルトンの分子量を有する。
【0037】
複合体形成摂動剤分子は、線状、非線状、及び環状プロテイノイドを含むタンパク質、修飾(アシル化またはスルホン化)アミノ酸、ポリアミノ酸、及びペプチド、修飾アミノ酸、ポリアミノ酸、またはペプチド誘導体(ケトンまたはアルデヒド)、ジケトピペラジン/アミノ酸構造体、カルボン酸、及び下記で議論する種々の他の摂動剤を含むがこれらに限定されない。
【0038】
また、如何なる理論にもよらないが、出願人は、非共有結合複合体形成は、水素結合、疎水性相互作用、静電相互作用、及びファンデルワールス相互作用を含むがこれらに限られない分子間力に影響されると思量する。任意の与えられた活性薬/摂動剤超分子複合体について、結合を維持するいくつかの上記の力が存在する。
【0039】
活性薬と摂動剤の間の結合定数Kaは、下記の式(6)で定義される。
【数6】
【0040】
解離定数Kdは、Kaの逆数である。よって、所定温度での摂動剤と活性薬の間の結合定数の測定は、分子ギブス自由エネルギーを産し、結合によるエンタルピー及びエントロピー効果の決定ができる。これらの実験的測定は、例えば、NMR、蛍光、熱量分析を用いて行える。
【0041】
この仮説は、タンパク質に次いて以下のように説明できる。
折り畳まれていないタンパク質は、種々のコンフォメーション状態の間に存在する平衡に従って記述できる。例えば、
【数7】
ここで、Nは天然状態、Iは中間状態、Dは変性状態、k1及びk2は、各々の速度定数である。K1及びK2は各々の平衡定数である。従って、
【数8】
【数9】
これは、中間状態の分配関数の増加が、活性薬送達の能力に正の衝撃を有するべきことを示唆している。
(10)
【0042】
複合体形成は可逆的でなければならないので、Kaによって測定される摂動剤と活性薬の複合体形成は、薬剤を循環系/または標的まで確実に送達するのに十分強くなくてはならず、摂動剤の脱離が適時に起こらずに、活性薬が天然に戻って所定の効果を生ずることが無いほど強くてはいけない。
【0043】
第2の実施態様では、摂動剤は活性薬を中間状態に可逆的に変換させ、その状態のコンフォメーショオンを模倣物の調製用のテンプレートとして使用できるようにする。この目的のためには、摂動剤は活性薬と複合体形成する必要はないが、してもよい。従って、上記の複合体形成摂動剤に加えて、例えば、強酸、洗浄剤、といった活性薬または環境のpHを変化させる摂動剤、活性薬のイオン強度を変化せる摂動剤、例えば塩素酸グアニジン等の他の試薬、及び温度を、活性薬の変換に用いることができる。超分子複合体または中間状態は、模倣物設計のテンプレートとして使用できる。
【0044】
〔複合体形成摂動剤〕
アミノ酸は、本発明で有用な複合体形成摂動剤の多くを調製するのに用いられる基本的材料である。アミノ酸は少なくとも1つのフリーなアミノ基を有するカルボン酸であり、天然及び合成アミノ酸を含む。本発明で用いるのに好適なアミノ酸はα−アミノ酸であり、最も好ましいのは天然のα−アミノ酸である。多くのアミノ酸及びアミノ酸エステルが、Aldorich Chemical Co.(Milwaukee,WI,USA); Sigma Chemical Co.(St.Louis,MO,USA); Fluka Chemical Corp.(Ronkonkoma,NY,USA)等の市販元から入手可能である。
【0045】
本発明で用いるのに好適だがそれらに限定されない代表的アミノ酸は以下の式で表される。
【化1】
ここで、R1は水素、C1−C4アルキル、またはC2−C4アルケニル;
R2はC1−C24アルキル、C2−C24アルケニル、C3−C10シクロアルキル、フェニル、ナフチル、(C1−C10アルキル)フェニル、(C2−C10アルケニル)フェニル、(C1−C10アルキル)ナフチル、(C2−C10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1−C10アルキル)、フェニル(C2−C10アルケニル)、ナフチル(C1−C10アルキル)、またはナフチル(C2−C10アルケニル)であり、R2はC1−C4アルキル、C2−C4アルケニル、C1−C4アルコキシ、−OH、−SH、−CO2R3、C3−C10シクロアルキル、C3−C10シクロアルケニル、3−10の環原子を有しヘテロ原子がN、O、Sまたはそれらの組合せであるヘテロ環、アリール,(C1−C10アルキル)アリール、アリール(C1−C10アルキル)、またはこれらの組合わせで任意に置換されていてもよく、R2は、酸素、窒素、硫黄、またはこれらの組合せで分断されていてもよく、R3は水素、C1−C4アルキル、またはC2−C4アルケニルである。
【0046】
本発明でアミノ酸またはペプチドの成分として用いるのに好ましい天然アミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、シトルリン、システイン、シスチン、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、オルニチン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタマート、フェニルグリシン、またはO−ホスホセリンである。
【0047】
好ましいアミノ酸は、アルギニン、ロイシン、リシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、バリン、及びフェニルグリシンである。
【0048】
本発明で用いるのに好ましい非天然アミノ酸は、β−アラニン、α−アミノブチル酸、γ−アミノブチル酸、γ−(アミノフェニル)ブチル酸、α−アミノイソブチル酸、シトルリン、ε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、β−アスパラギン酸、アミノ安息香酸、アミノフェニル酢酸、アミノフェニルブチル酸、γ−グルタミン酸、システイン(ACM)、ε−リシン、ε−リシン(A−Fmoc)、メチオニンスルホン、ノルロイシン、ノルバリン、オルニチン、d−オルニチン、p−ニトロ−フェニルアラニン、ヒドロキシプロリン、1,2,3,4,−テトラヒドロキノリン−3−カルボン酸、及びチオプロリンである。
【0049】
ポリアミノ酸は、ペプチド、または、エステル、無水物即ち無水物結合で結合し得る他の基からなる結合で結合した2またはそれ以上のアミノ酸である。特に、非天然ポリアミノ酸、及び非天然ヘテロポリアミノ酸、混合アミノ酸を挙げることができる。
【0050】
ペプチドは、ペプチド結合で結合した2以上のアミノ酸である。ペプチドは、2つのアミノ酸を持つジペプチドから数百のアミノ酸を持つポリペプチドまで変化できる。Walker,Chambers Biological Dictionary,Cambridge,England: Chambers Cambridge,1898,215 頁参照。特に、非天然ペプチド、特に混合アミノ酸の非天然ペプチドを挙げることができる。特にジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、及びペンタペプチド、中でも好ましいペプチドはジペプチド及びトリペプチドである。ペプチドは、ホモ及びヘテロペプチドを含み、天然アミノ酸、合成アミノ酸、及びそれらの組合せを含むことができる。
【0051】
〔プロテイノイド複合体形成摂動剤〕
プロテイノイドは、アミノ酸の合成ポリマーである。プロテイノイドは、好ましくはアミノ酸混合物から調製し、最も好ましくは熱縮合ポリマーである。これらのポリマーは、配向性またはランダムポリマーである。プロテイノイドは、線形、分岐、または環状プロテイノイドであり、ある種のプロテイノイドは、他の線形、分岐、または環状プロテイノイドの単位となる。
【0052】
特に、ジケトピペラジンを挙げることができる。ジケトピペラジンは、6員環化合物である。環は2つの窒素原子を含み、2つの炭素原子において2つの酸素原子で置換されている。好ましくは、カルボニル基は、環の1位と4位にある。
これらの環は、任意に、かつ頻繁にさらに置換されている。
【0053】
ジケトピペラジン環系は、アミノ酸またはアミノ酸誘導体の熱重合または縮合で生成される。(Gyore,J.; Ecet M.Proceedings Fourth ICTA(Thermal Analysis),1974,2,387-394(1974))。これらの6員環系は、線形ペプチドから、さらなる鎖成長に先だってまたは直接に主に分子内環形成によって生成する(Reddy, A.V.,Int.J.Peptide Protein Res.,40,472-476(1992); Mazurov,A.A.,Int.J.Peptide Protein Res.,42,14-19(1993))。
【0054】
ジケトピペラジンは、Katchlski,J.Amer.Chem.Soc.,68,879-880(1946)に記載されたようにアミノ酸エステルの環状二量化によって、ジペプチド誘導体の環化によって、または、Koppel,J.Org.Chem.,33(2),862-864(1968)に記載されたように、アミノ酸誘導体と高沸点溶媒の熱脱水によって形成される。
【0055】
ジケトピペラジンの典型的な合成においては、アミノ酸ベンジルエステルのCOOH基が第1段階で活性化されて保護エステルを形成する。アミンは脱保護されて第2段階の二量化を介して環化し、ジケトピペラジンのジエステルとなる。
最後に、COOH基が脱保護されたジケトピペラジンとなる。
【0056】
ジケトピペラジンは、典型的にはα−アミノ酸から形成される。好ましくは、ジケトピペラジンのα−アミノ酸は、グルタミン酸、アスパラギン酸、チロシン、フェニルアラニン、及びこれらの光学異性体からの誘導体である。
特に挙げられるジケトピペラジンは以下の式で表される。
【化2】
【0057】
ここで、R4、R5、R6及びR7は、独立に、水素、C1−C24アルキル、C1−C24アルケニル、フェニル、ナフチル、(C1−C10アルキル)フェニル、(C1−C10アルケニル)フェニル、(C1−C10アルキル)ナフチル、(C1−C10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1−C10アルキル)、フェニル(C1−C10アルケニル)、ナフチル(C1−C10アルキル)、及びナフチル(C1−C10アルケニル)であり、R4、R5、R6及びR7は独立かつ任意に、C1−C4アルキル、C1−C4アルケニル、C1−C4アルコキシ、−OH、−SH、及びCO2R8、またはこれらの組合せで置換されていてもよく、R8は水素、C1−C4アルキル、またはC1−C4アルケニルであり、R4、R5、R6、及びR7は独立かつ任意に、酸素、窒素、硫黄またはこれらの組合せで分断されていてもよい。
【0058】
フェニルまたはナフチル基は、任意に置換されていてもよい。好ましくは、置換基の例はC1−C6アルキル、C1−C6アルケニル、C1−C6アルコキシ、−OH、−SH、またはCO2R9であって、R9は水素、C1−C6アルキルまたはC1−C6アルケニルであるが、これらに限定されない。
【0059】
好ましくは、R6及びR7は独立に、水素、C1−C4アルキルまたはC1−C4アルケニルである。特に、好ましい複合体形成摂動剤であるジケトピペラジンを挙げることができる。これらのジケトピペラジンは、R4、R5、R6及びR7が水素である未置換のジケトピペラジン、及び、環の窒素原子の一方または両方で置換された、モノまたはジ−N−置換体を含む。特に、窒素原子の一方または両方がメチル基で置換された置換ジケトピペラジンを挙げることができる。
【0060】
特に、次の式で表されるジケトピペリジンを挙げることができる。
【化3】
ここで、R10及びR11は、独立に、水素、C1−C24アルキル、C1−C24アルケニル、フェニル、ナフチル、(C1−C10アルキル)フェニル、(C1−C10アルケニル)フェニル、(C1−C10アルキル)ナフチル、(C1−C10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1−C10アルキル)、フェニル(C1−C10アルケニル)、ナフチル(C1−C10アルキル)、及びナフチル(C1−C10アルケニル)であるが、R10とR11の両方が同時に水素とはならず、R10及びR11は独立かつ任意に、C1−C4アルキル、C1−C4アルケニル、C1−C4アルコキシ、−OH、−SH、及びCO2R12、またはこれらの組合せで置換されていてもよく、R12は水素、C1−C4アルキル、またはC1−C4アルケニルであり、R10及びR11は独立かつ任意に、酸素、窒素、硫黄またはこれらの組合せで分断されていてもよい。
【0061】
フェニルまたはナフチル基は、任意に置換されていてもよい。好ましくは、置換基の例はC1−C6アルキル、C1−C6アルケニル、C1−C6アルコキシ、−OH、−SH、またはCO2R13であって、R13は水素、C1−C6アルキルまたはC1−C6アルケニルであるが、これらに限定されない。R10とR11の一方が水素であるとき、ジケチピペラジンはモノ−炭素−(C)−置換である。R10もR11も水素でないときは、ジケトピペラジンはジ−炭素−(C)−置換である。
【0062】
好ましくは、R10、R11、またはR10とR11の両方が、少なくとも1つの官能基を含み、この官能基は分子の特性反応を負う非炭化水素部分である。単純な官能基はヘテロ原子であり、ハロゲン、酸素、硫黄、窒素等を含むがこれらに限られず、炭素に単結合または多重結合で結合している。他の官能基は、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミン基、置換アミン基等を含むがこれらに限定されない。
【0063】
好ましいジケトピペラジンは、環の1または2の炭素が官能基で置換され、少なくとも1つのカルボキシル基を含むものである。
【0064】
〔アミノ酸/ジケトピペラジン複合体形成摂動剤〕
ジケトピパレジンは、付加的なアミノ酸と重合して少なくとも1つのアミノ酸、そのエステルまたはアミド、及び好ましくは互いに共有結合した少なくとも1つのジケトピペラジンを含む。
【0065】
ジケトピペラジンが付加的アミノ酸と重合するとき、1以上のR基は少なくとも1つの官能基を含み、官能基は分子の特性反応を負う非炭化水素部分である。
【0066】
単純な官能基はヘテロ原子であり、ハロゲン、酸素、硫黄、窒素等を含むがこれらに限られず、アルキル基の炭素に単結合または多重結合で結合している。他の官能基は、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミン基、置換アミン基等を含むがこれらに限定されない。
【0067】
本発明のアミノ酸/ジケトピペラジン複合体形成摂動剤の好ましい成分であるジケトピペラジンを挙げることができる。このような好ましいジケトピペラジンは、環の1または2の炭素が官能基で置換され、少なくとも1つのカルボキシル基を含むものである。
【0068】
最も好ましいのは、アミノ酸/ジケトピペラジン複合体形成摂動剤のジケトピペラジンが、環化してジケトピペラジンを形成するL−グルタミン酸及びL−アスパラギン酸のような反応性アミノ酸から調製される。
【0069】
ジケトピペラジンは、ビス−カルボン酸プラットホームを生成し、それは他のアミノ酸とさらに縮合して摂動剤を形成する。典型的には、ジケトピペラジンは、1以上のアミノ酸と、ジケトピペラジンのR基の官能基を介して反応して共有結合する。これらの独特な系は、ジケトピペラジンのキラル成分によって付与されるシス−幾何異性体によって(LAnnom,H.K.,Int.J.Peptide Protein Res.,28,67-78(1986))、末端アミノ酸の構造を系統的に変換する機会を提供するが、その配向は非環状模倣物に比較して固定される(Fusaoka,Int.J.Peptide Protein Res.,34,104-110(1989))。Lee,B.H.,J.Org.Chem.,49,2418-2423(1984); Buyle,R.Helv.Chim.Acta,49,1425,1429(1966)も参照。糖業者に知られた他の重合方法を、それ自体、アミノ酸/ジケトピペラジン重合にも使用できる。
【0070】
アミノ酸/ジケトピペラジン摂動剤は、上記のように、同一または異なる1以上のアミノ酸、並びに同一または異なるジケトピペラジンを含む。
【0071】
これらのアミノ酸/ジケトピペラジン摂動剤のエステル及びアミド誘導体も本発明では、有用である。
【0072】
〔修飾アミノ酸複合体形成摂動剤〕
修飾したアミノ酸、ポリアミノ酸、またはペプチドは、アシル化またはスルホン化され、アミノ酸アミド及びスルホンアミドを含む。
【0073】
〔アシル化アミノ酸複合体形成摂動剤〕
特に以下の式出表されるアシル化アミノ酸を挙げることができる。
【化4】
ここで、Arは置換または非置換フェニルまたはナフチルであり、
【化5】
ここで、R15は、C1−C24アルキル、C1−C24アルケニル、フェニル、ナフチル、(C1−C10アルキル)フェニル、(C1−C10アルケニル)フェニル、(C1−C10アルキル)ナフチル、(C1−C10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1−C10アルキル)、フェニル(C1−C10アルケニル)、ナフチル(C1−C10アルキル)、及びナフチル(C1−C10アルケニル)であり、R15は任意に、C1−C4アルキル、C1−C4アルケニル、C1−C4アルコキシ、−OH、−SH、及びCO2R5、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロ環アルキル、アルカリール、ヘテロアリール、ヘテロアルカリール、またはこれらの組合せで置換されていてもよく、
R17は水素、C1−C4アルキル、またはC1−C4アルケニルであり、
R15は任意に、酸素、窒素、硫黄またはこれらの組合せで分断されていてもよく、そして、
R16は、水素、C1−C4アルキル、またはC1−C4アルケニルである。
【0074】
特に、下記の式で表されるものを挙げることができる。
【化6】
ここで、R18は(i)C3−C10シクロアルキルであり、任意にC1−C7アルキル、C2−C7アルケニル、C1−C7アルコキシ、ヒドロキシ、フェニル、フェノキシ、またはCOR21で置換されていてもよく、R1は水素、C1−C4アルキル、またはC2−C4アルケニルであるか、または、
(ii)C3−C10シクロアルキルで置換されたC1−C6アルキルであり、R20は、C1−C24アルキル、C1−C24アルケニル、C3−C10シクロアルキル、C3−C10シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、(C1−C10アルキル)フェニル、(C2−C10アルケニル)フェニル、(C1−C10アルキル)ナフチル、(C2−C10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1−C10アルキル)、フェニル(C2−C10アルケニル)、ナフチル(C1−C10アルキル)、またはナフチル(C2−C10アルケニル)であり、
R20は任意に、C1−C4アルキル、C1−C4アルケニル、C1−C4アルコキシ、−OH、−SH、及びCO2R22、C3−C10シクロアルキル、C3−C10シクロアルケニル、3−10の環原子を有するヘテロ環であって、ヘテロ原子の1以上がN、S、Oまたはこれらの組合せ、アリール(C1−C10アルキル)アリール、アリール(C1−C10アルキル)またはこれらの組合せで置換されていてもよく、R20は任意に、酸素、窒素、硫黄またはこれらの組合せで分断されていてもよく、R22は水素、C1−C4アルキル、またはC1−C4アルケニルである。
【0075】
いくつかの好ましいアミノ酸は、サリチロールフェニルアラニン及び以下の式で表される化合物を含む。
【0076】
【化7】
【0077】
【化8】
【0078】
【化9】
【0079】
【化10】
【0080】
【化11】
【0081】
【化12】
【0082】
【化13】
【0083】
【化14】
【0084】
【化15】
【0085】
【化16】
【0086】
【化17】
【0087】
【化18】
【0088】
【化19】
【0089】
特に、以下の式で表される化合物を挙げることができる。
【化20】
【0090】
ここで、Aは、Tyr、Leu、Arg、またはCitであり、
任意に、AがTyr、Arg、TrpまたはCitであるとき、Aは2以上の官能基でアシル化されている。
【0091】
好ましい化合物は、AがTyrであるもの、AがTyrかつ2官能基でアシル化されたもの、AがTrp、AがTrpかつ2官能基でアシル化されたもの、AがCitであるもの、AがCitかつ2官能基でアシル化されたものである。
【0092】
以下の式で表される化合物を特に挙げることができる。
【化21】
ここで、AはArgまたはLeuであり、AがArgであるとき、Aは任意に2以上の官能基でアシル化されており、
【化22】
ここで、AはLeuまたはフェニルグリシンであり、
【化23】
ここで、Aはフェニルグリシンであり、そして、
【化24】
ここで、Aはフェニルグリシンである。
【0093】
アシル化アミノ酸は、単一アミノ酸、2以上のアミノ酸の混合物、またはアミノ酸エステルとアミノ酸に存在するフリーアミノ部位と反応してアミドを形成するアミン修飾剤から調製される。
【0094】
好ましくは、アシル化アミノ酸を調製するために有用なアシル化剤の例は、
【化25】
で表される酸塩化物アシル化剤を含むがこれらに限定されない。ここで、R23は、調製される修飾アミノ酸に適当な基であり、例えば、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、または芳香族、特にメチル、エチル、シクロヘキシル、シクロフェニル、フェニル、またはベンジルであるがこれらに限定されず、Xは脱離基である。典型的な脱離基は、塩化物、臭化物及びヨウ化物などのハロゲンであるがこれらに限定されない。
【0095】
アシル化剤の例は、塩化アセチル、塩化プロピル、塩化シクロヘキサノイル、塩化シクロペンタノイル及び塩化シクロヘプタノイル、塩化ベンゾイル、塩化ヒプリル等に限られないハロゲン化アシル、並びに、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水シクロヘキサン酸、無水安息香酸、無水ヒプリル酸等の無水物を含む。好ましいアシル化剤は、塩化ベンゾイル、塩化ヒプリル、塩化アセチル、塩化シクロヘキサノイル、塩化シクロペンタノイル、及び塩化シクロヘプタノイルを含む。
【0096】
アミン基も、アミノ酸、特にフェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシン等の親水性アミノ酸のカルボジイミド誘導体を用いたカルボン酸との反応によって修飾することができる。さらなる例は、ジシクロヘキシルカルボジイミド等を含む。
【0097】
アミノ酸が多官能性であるとき、即ち、−OH、NH2または−SH基を1以上有するとき、その1以上の官能基をアシル化して、例えば、エステル、アミド、またはチオエーテル結合を形成してもよい。
【0098】
例えば、多数アシル化されたアミノ酸の調製において、アミノ酸は、例えば水酸化ナトリウムまたはカリウム等の金属水酸化物のアルカリ溶液に溶解し、アシル化剤を添加する。反応時間は約1時間から約4時間であり、好ましくは約2から2.5時間である。混合物の温度は、一般的には約5℃から約70℃、好ましくは約10℃から約50℃に維持する。アミノ酸のアミノ基1当量当たりに用いるアルカリの量は、通常は約1.25molから約3mol、好ましくはNH2基1当量当たり約1.5molから2.25molである。反応溶液のpHは、通常は、約pH8から約pH13、好ましくは約pH10から約pH12である。アミノ酸の量に応じて用いるアミノ修飾剤の量は、アミノ酸のフリーNH2基もモル数に基づく。一般に、アミノ修飾剤は、アミノ酸の全フリーNH2基の1モル当量当たり、約0.5から約2.5モル当量、好ましくは約0.75から約1.25モル当量である。
【0099】
修飾アミノ酸形成反応は、濃塩酸等の適当な酸で混合物のpHを約2から約3まで調製することによって停止する。混合物は室温で分離し、上方の透明層と下方のオフホワイト沈殿物を生成する。上層を廃棄し、濾過及びデカンテーションによって修飾アミノ酸を回収する。残った修飾アミノ酸は、次いで水と混合する。不溶性物質を濾過で取り除き、濾過物を真空乾燥する。修飾アミノ酸の収率は、一般的に約30%から60%であり、通常は約45%である。本発明は、例えばジアシル化、トリアシル化といった多数アシル化されたアミノ酸も考慮する。
【0100】
アミノ酸エステルまたはアミドが出発物質である場合、ジメチルホルムアミドまたはピリジンなどの適当な溶媒に溶解し、約5℃から約70℃、好ましくは約25℃の温度で、約7から約24時間の間、アミノ修飾剤と反応させる。アミノ酸エステルに対して用いるアミノ修飾剤の量は、アミノ酸について上気したのと同様である。
【0101】
その後、反応溶媒を負圧で除去し、任意に、修飾アミノ酸を適当なアルカリで加水分解してエステルまたはアミド官能性を除去してもよい。例えば、1Nの水酸化ナトリウムを用い、約50℃から約80℃で、好ましくは約70℃で、エステル基が加水分解されたフリーなカルボキシル基を有する修飾アミノ酸が生成されるのに充分な時間処理する。加水分解混合物は、次いで室温に冷却して、例えば25%塩酸水溶液でpHが約2から約2.5となるまで酸性化する。修飾アミノ酸、溶液から沈降し、濾過、デカンテーションなどの従来の手段で回収する。
【0102】
修飾アミノ酸は、酸沈降、再結晶、または固体カラム支持体上での分離によって精製してもよい。分離は、酢酸/ブタノール/水を移動相として用いたシリカゲル、アルミナ等の適当なカラム支持体上、トリフルオロ酢酸/アセトニトリル混合物を移動相とする反転相カラム支持体、及び水を移動相とするイオン交換クロマトグラフィーで行うことができる。修飾アミノ酸は、メタノール、ブタノールまたはイソプロパノールなどの低級アルコール抽出で無機塩を除去して精製してもよい。
【0103】
修飾アミノ酸は、一般にアルカリ水溶液(pH>9.0)に可溶であり、エタノール、n−ブタノール及びトルエン/エタノールの1:1(v/v)溶液に一部溶解し、中性の水に不溶である。アミノ酸誘導体の例えばナトリウム塩等のアルカリ金属塩は、一般に約pH6−8の水に可溶である。
【0104】
ポリアミノ酸またはペプチドにおいて、1以上のアミノ酸を修飾(アシル化)してもよい。修飾ポリアミノ酸及びペプチドは、1以上のアシル化アミノ酸を含んでよい。線状ポリアミノ酸及びペプチドは、一般的にはただ1つのアシル化アミノ酸を含むが、他のポリアミノ酸及びペプチドのコンフィギュレーションは、1以上のアシル化アミノ酸を含む。ポリアミノ酸及びペプチドは、アシル化アミノ酸と重合可能であり、重合の後アシル化してもよい。
【0105】
特に次の化合物を挙げることができる。
【化26】
【0106】
〔スルホン化アミノ酸複合体形成摂動剤〕
スルホン化修飾アミノ酸、ポリアミノ酸、及びペプチドは、少なくとも1つのアミン基を、少なくとも1つのフリーなアミン基と反応するスルホン化剤でスルホン化して修飾する。
【0107】
特に、以下の式の化合物を挙げることができる。
【化27】
Ar−Y−(R24)n−OH LVここで、Aは置換または非置換のフェニルまたはナフチルであり、
【化28】
ここで、R25は、C1−C24アルキル、C1−C24アルケニル、フェニル、ナフチル、(C1−C10アルキル)フェニル、(C1−C10アルケニル)フェニル、(C1−C10アルキル)ナフチル、(C1−C10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1−C10アルキル)、フェニル(C1−C10アルケニル)、ナフチル(C1−C10アルキル)、及びナフチル(C1−C10アルケニル)であり、
R25は任意に、C1−C4アルキル、C1−C4アルケニル、C1−C4アルコキシ、−OH、−SH、及びCO2R27、またはこれらの組合せで置換されていてもよく、
R27は水素、C1−C4アルキル、またはC1−C4アルケニルであり、
R25は任意に、酸素、窒素、硫黄またはこれらの組合せで分断されていてもよく、そして、
R26は、水素、C1−C4アルキル、またはC1−C4アルケニルである。
【0108】
好ましくは、スルホン化アミノ酸を調製するのに有用なスルホン化剤の例は、式R28−SO2−Xを有するスルホン化剤であり、R28はアルキル、アルケニル、シクロアルキルまたは芳香族に限られない調製される修飾アミノ酸に適当な基であり、Xは上述のような脱離基であるが、これらに限定されない。スルホン化剤の1つの例は塩化ベンゼンスルホニルである。
【0109】
修飾ポリアミノ酸及びペプチドは、、1以上のスルホン化アミノ酸を有する。
線状ポリアミノ酸及びペプチドは、一般的にはただ1つのスルホン化アミノ酸を含むが、他のポリアミノ酸及びペプチドのコンフィギュレーションは、1以上のスルホン化アミノ酸を含む。ポリアミノ酸及びペプチドは、スルホン化アミノ酸と重合可能であり、重合の後スルホン化してもよい。
【0110】
〔修飾アミノ酸誘導体複合体形成摂動剤〕
修飾アミノ酸、ポリアミノ酸、またはペプチド誘導体は、少なくとも1つのアルデヒドまたはケトンに変換したアシル末端を有し、少なくとも1つのフリーなアミン基が、存在する少なくとも1つのフリーなアミン基と反応するアシル化剤でアシル化されたアミノ酸、ポリアミノ酸、またはペプチドである。
【0111】
アミノ酸、ポリアミノ酸、ペプチド誘導体は、アミノ酸エステルまたはペプチドを適当な還元剤で還元することにより容易に調製される。例えば、アミノ酸、ポリアミノ酸、またはペプチドの無水物は、R.Chen,Biochemistry,1979,18, 921-926 に記載されているように調製できる。アミノ酸、ポリアミノ酸、またはペプチドのケトンは、Organic Synthesis,Col.Vol.IV,Wiley,(1963),5頁に記載された方法によって調製できる。アシル化については既に述べた。
【0112】
例えば、誘導体は、単一のアミノ酸、ポリアミノ酸またはペプチド誘導体、または2以上のアミノ酸、ポリアミノ酸またはペプチド誘導体の混合物を、アシル化剤または誘導体に存在するアミノ部分と反応してアミドを形成するアミン修飾剤と反応させて調製される。アミノ酸、ポリアミノ酸、またはペプチドは、修飾してから誘導してもよく、誘導してから修飾しても良く、修飾と誘導を同時にしてもよい。当業者に知られた望まない副反応を避けるために保護基を用いてもよい。
【0113】
修飾ポリアミノ酸またはペプチド誘導体では、1以上のアミノ酸が誘導体化(アルデヒドまたはケトン)及び/または修飾(アシル化)されてもよいが、少なくとも1つの誘導体及び少なくとも1つの修飾がなければならない。
【0114】
特に、修飾アミノ酸誘導体、N−シクロヘキサノイル−Phe−アルデヒド、N−アセチル−Phe−アルデヒド、N−アセチル−Tyr−ケトン、N−アセチル−Lys−ケトン及びN−アセチル−Leu−ケトン、及びN−シクロヘキサノイルフェニル−アラニン−アルデヒドを挙げることができる。
【0115】
〔カルボン酸複合体形成摂動剤〕
種々のカルボン酸及びコレラのカルボン酸の塩が、複合体形成摂動剤として使用できる。これらのカルボン酸は以下の式で表される。
【化29】
ここで、R29は、C1−C24アルキル、C2−C24アルケニル、C3−C10シクロアルキル、C3−C10シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、(C1−C10アルキル)フェニル、(C2−C10アルケニル)フェニル、(C1−C10アルキル)ナフチル、(C2−C10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1−C10アルキル)、フェニル(C2−C10アルケニル)、ナフチル(C1−C10アルキル)、及びナフチル(C2−C10アルケニル)であり、R29は任意に、C1−C10アルキル、C2−C10アルケニル、C1−C4アルコキシ、−OH、−SH、及びCO2R30、C3−C10シクロアルキル、C3−C10シクロアルケニル、3−10の環原子を持つヘテロ環アルキルであってヘテロ原子がN、O、S、またはこれらの組合せであるもの、アリール、(C1−C10アルキル)アリール、アリール(C1−C10)アルキル、またはこれらの組合せで置換されていてもよく、R29は任意に、酸素、窒素、硫黄またはこれらの組合せで分断されていてもよく、そして、R30は、水素、C1−C4アルキル、またはC2−C4アルケニルである。
【0116】
好ましいカルボン酸は、シクロヘキサンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘプタンカルボン酸、ヘキサン酸、3−シクロヘキサンプロピオン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸、1,2−シクロヘキサン時カルボン酸、1,3−シクロヘキサン時カルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1−アダマンタンカルボン酸、フェニルプロピオン酸、アジピン酸、シクロヘキサンペンタン酸、シクロヘキサンブタン酸、ペンチルシクロヘキサン酸。2−シクロペンタンヘキサン酸、シクロヘキサンペンタン酸、ヘキサンジオイック酸、シクロヘキサンブタン酸、及び(4−メチルフェニル)シクロヘキサン酢酸である。
【0117】
〔複合体形成摂動剤の他の例〕
ここで記載する超分子複合体を形成できる全ての複合体形成摂動剤が本発明の範囲に入り、複合体形成摂動剤の他の例は、2−カルボキシメチル−フェニルアラニン−ロイシン;2−ベンジルケイヒ酸、アクチノニン、フェニルスルホニルアミノフェニルブタン酸を含むが、これらに限定されない。
【化30】
【0118】
〔模倣物〕
本発明の範囲内にある模倣物は、元のものと構造的及び/または機能的に等価な構造体である。超分子複合体及び活性薬の可逆的に送達可能な中間状態の構造的及び/または化学機能的模倣物は、適当な化学的及び/または構造的性質を有する非−ペプチド模倣物が調製できる場合は、ペプチドである必要はない。しかし、好ましい模倣物はペプチドであり、超分子または中間状態とは異なる一次構造を有するが、超分子複合体または中間状態と同じ二次構造及び三次構造を有する。模倣物は、天然状態または中間状態の活性薬または超分子複合体より生物学的活性は小さいが、模倣物は、例えば経口送達の可能性の向上といった天然の状態が有しない他の重要な性質を具備する。
【0119】
このような模倣物を調製する方法は、例えば以下の文献に記載されている。
Yamazaki,Chirality,3: 268-276(1991); Wiley,Peptidomimetics Derivered From Natural Products,Medicinal Research Reviews,Vol.13,No.3,327-384(1993),Gurrath,Eur.J.Biochem,210,991-921(1992),Yamazaki,Int.J.Peptide Protein Res.,37,364-381(1991),Bach,Int.J.Peptide Protein Res.,38,314-323(1991),Clark,J.Med.Chem.32,2026-2038(1989),Portoghese,L.Med.Chem.,34,(6)1715-1720(1991),Zhou,J.Immunol.,149,(5),1763-1769(1992,9,1),Holzman,J.Protein Chem.,10,(5),553-563(1991),Masler,Arch.Insect Biochem.and Physiol.,22,87-111,(1993),Saragovi,Biotechnology,10,(1992,6),Olmsteel,J.Med.Chem.,36(1),179-180(1993),Malin,Peptides,14,47-51(1993),及び Kouns,Blood,80(10),2539-2537(1992),Tanaka,Biophys.Chem.,50,48-61(1994),DeGrado,Science,243,(1989,2,3),Regan,Science,241,976-978(1988,8,19),Matouscek,Nature,340,120126(1989,7,13),Parker,Peptide Research,4(6),347-354(1991),Parker,Peptide Research,4(6),355-363(1991),Federov,J.Mol.Biol.,225,927-931(1992),Ptitsyn,Biopolymers,22,15-25(1983),Ptitsyn,Protein Engineering,2(6),443-447(1989)。
【0120】
例えば、タンパク質構造は構成アミノ酸の分子間−及び分子内−相互作用によって決定される。αヘリックスにおいて、ヘリックスの第1及び第4のアミノ酸は、非共有結合で互いに相互作用する。このパターンは、最初の4個及び最後の4個のアミノ酸を除く全てのヘリックスを通じて繰り返される。さらに、アミノ酸の側鎖は、互いに相互作用する。例えば、フェニルアラニンのフェニル側鎖は、そのフェニルアラニンがヘリックス中に存在するときには溶媒に曝されないであろう。
【0121】
このフェニルアラニンの相互作用がヘリックスの安定性に寄与するのであれば、フェニルアラニンをアラニンに置換することはヘリックスを乱して、タンパク質のコンフォメーションを変化させる。
【0122】
従って、最初に、どのアミノ酸の側鎖が溶媒に曝され、そしてそれにより生来の状態の安定化に寄与することから除外されるかを、例えばスキャンニング突然変異誘発法によって決定することによって、模倣体を作り出すことができる。それらと同じ格好でアミノ酸置換基を有する突然変異体を作り出し、置換されたアミノ酸が生来に近いものよりもより中間体に近いタンパク質コンフォメーションを付与するようにすることができる。適切な構造が合成されたことの確認は、スペクトル法及びその他の分析法によってもたらされる。
【0123】
〔送達組成物〕
上述の超分子複合体を含む送達組成物は、典型的には摂動剤を活性薬に混合して調製される。成分は、投与前に調製でき、投与の直前にも調製できる。
【0124】
本発明の送達組成物は、1以上の酵素阻害剤を含んでもよい。このような酵素阻害剤はアクチノニンまたはその誘導体を含むがそれらに限定されない。これらの化合物は以下の構造を有する。
【化31】
【化32】
【0125】
これらの化合物の誘導体は、U.S.Patant No.5,206,384 に開示されている。アクチノニン誘導体は次の構造を有する。
【化33】
ここで、R31は、カルボキシアミド、ヒドロキシアミノカルボニル及びアルコキシカルボニル基から選択されるスルホキシメチルまたはカルボキシまたは置換カルボキシ基であり、R32はヒドロキシ、アルコキシ、ヒドロキシアミノ、またはスルホキシアミノ基である。他の酵素阻害剤は、アプロチニン(Trasylol)及びボーマンーバーク阻害剤を含むが、これらに限定されない。
【0126】
本発明の送達組成物は、1以上の賦形剤、希釈剤、崩壊剤、潤滑剤、柔軟剤、着色剤、または投与溶媒(dosing vehicle)を含んでもよい。好ましい投与単位は、経口投与量単位である。最も好ましい投与形態単位は、錠剤、カプセル、または液体であるが、これらに限定されない。投与量単位は、生物学的、製薬的、または治療的に有効量の活性薬を含有し、多数回投与形態単位で、合計が投与されるようにしてもよい。投与形態は、この分野での従来方法によって調製できる。
【0127】
本発明は、生物学的活性薬を、トリ等の動物、霊長類、特にヒトなどの哺乳類、及び昆虫に投与するのに有効である。このシステムは、活性薬が標的領域(活性薬が送達されるべき領域)に到達するまでに出会う環境、投与される動物の身体の条件によって破壊または活性低下するような化学的及び生物学的活性薬の送達に特に有利である。特に、本発明は、特に通常は経口送達不可能な活性薬の経口投与に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0128】
〔好ましい実施態様の説明〕
以下の実施例は本発明を例示するが、何ら限定はしない。全ての部及び比率は、特に断らない限り重量%である。
【0129】
[実施例1] α-インターフェロン未変性ゲル
未変性勾配ゲル(Pharmacia)に、647μg/mlのα-インターフェロン(Intron-A-Schering Plough)および増化した量(10−500mg/ml)の摂動剤(perturbant)(ベンゼンスルホニルクロリドで修飾されたL-バリン、L-ロイシン、L-フェニルアラニン、L−リシンおよびL-アルギニンの混合物)(バリン−7.4%、ロイシン−16.5%、フェニルアラニン−40.3%、リシン−16.2%およびアルギニン19.6%)とを流した。充填用6/4コーム(comb)を用いて、ゲルに4μlの材料を充填した。
【0130】
結果は、図1に示されている。
レーン1=高分子量マーカー(Bio-Rad)−1:20希釈w/dH2O−(5μl->100μl)。
レーン2=α-インターフェロンA(647μg/ml)対照5μl+5μlブロモフェノールブルー(BPB)−(1.29μg充填)。
レーン3=α-インターフェロン+摂動剤(10mg/ml)−50μlα-インターフェロン+50μlBPB=100μl(1.29μg充填)。
レーン4=α-インターフェロン+摂動剤(50mg/ml)−50μlα-インターフェロン+50μlBPB=100μl(1.29μg充填)。
レーン5=α-インターフェロン+摂動剤(100mg/ml)−50μlα-インターフェロン+50μlBPB=100μl(1.29μg充填)。
レーン6=α-インターフェロン+摂動剤(500mg/ml)−5μlα-インターフェロン+5μlBPB=10μl(1.29μg充填)。
【0131】
[実施例1A] α-インターフェロン未変性勾配ゲル
摂動剤を、3000分子量遮断フィルターを通して分画された、グルタミン酸、アスパラギン酸、チロシンおよびフェニルアラニン(Glu−Asp−Tye−Phe)の温度凝縮産物に置換して実施例1の方法を行った。
【0132】
結果は図2に示されている。
サンプル
レーン1=高分子量マーカー(Bio-Rad)。
レーン2=α-インターフェロンA(647μg/ml)-5μl+5μlBPB 対照。
レーン3=α-インターフェロン+摂動剤(10mg/ml)−50μl+50μlBPB=100μl。
レーン4=α-インターフェロン+摂動剤-50μl+50μlBPB=100μl。
レーン5=α-インターフェロン+摂動剤(100mg/ml)−50μlイントロンA+50μlBPB=100μl。
レーン6=α-インターフェロン+摂動剤(500mg/ml)−5μlイントロンA+50μlBPB=100μl。
【0133】
実施例1および1Aは、α-インターフェロンのみ(図1および2のレーン2)が、適切な分子量(約19000ダルトン)にバンドを提示したことを表している。固定された濃度のα-インターフェロンに対して、添加された摂動剤の量が各レーン毎に増加するにつれ、α-インターフェロンは、高いと言うよりは、より低い分子量へと移動する。実施例1の摂動剤に見られる変化は、実施例1Aの摂動剤に見られるものより明らかである。これは、α-インターフェロンの構造が二つの異なる摂動剤によって変化したことを示している。これは、もし構造が変化していなかったら、活性剤と摂動剤の複合体としてより高い分子量へとシフトするからである。
【0134】
[実施例2]α-インターフェロンと摂動剤のラットへの経口投与
オスのSprague-Dawleyラット(平均体重は約250mg)を、寝具のない金網の上で夜通し絶食させた。投与する前に、皮下にケタミン/トラジン(thorazine)の組み合わせを注入して動物を麻酔した。実施例1に基づいて調製した組成物の投与溶液を、500μg/kgで、投与溶液を含む1ccのシリンジに取り付けられた10−12cmのゴム製カテーテルを介して経口栄養摂取的(via oral gavage)に投与した。血液サンプルは、所望の時間に尾の静脈から採取した。血清を調製し、アッセイするまで−70℃に凍結させた。血清サンプルをELISAでアッセイした(Biosource International,Camarillo,CA,Cytoscreen Immunoassay KitTM,Catalog #ASY-05 for human IFN-α)。
【0135】
結果は図3に示されている。
【0136】
[実施例2A]α-インターフェロンと摂動剤のラットへの経口投与
実施例1Aに基づいて調製した組成物の78μg/kgの投与溶液に置換して、実施例2の方法を行った。結果は図3に示されている。
【0137】
[比較例2*]α-インターフェロンのラットへの経口投与
摂動剤を含まない100μg/kgのα-インターフェロンを実施例2の方法に基づいて投与した。
結果は、図3に示されている。
【0138】
[実施例3]サケカルシトニンおよび摂動剤のラットへの経口投与
実施例1の摂動剤を蒸留水で戻し、HClもしくはNaOHでpHを7.2−8.0に調節した。サケカルシトニン(sCt(salmon calcitonin))をクエン酸ストック溶液(0.085N)に溶かし、摂動剤溶液と組み合わせて最終的な投与溶液を得た。摂動剤とSCtの終濃度は、それぞれ400mg/mlと5μg/mlであった。
【0139】
結果は以下の表1に示されている。
【0140】
体重が100−150gの24時間絶食したオスのSprague-Dawleyラットを、ケタミンで麻酔した。経口栄養摂取的に、800mg/kgの摂動剤と10μg/kgのsCtのビヒクルの投与溶液を投与した。投与溶液を10cmのゴム製カテーテルを用いて投与した。投与から1時間後に、ラットに、1.5mg/kgのトラジンと44mg/kgのケタミンを筋肉注射した。投与から1、2、3および4時間後に、ラットの尾の動脈から血液サンプルを採取し、シグマ診断キット(Catalog #587-A,Sigma Chemical Co,St.Louis,MO)を用いて血清カルシウム濃度を調べた。結果は図4に示されている。
【0141】
[実施例3A]
サケカルシトニンおよび摂動剤のラットへの経口投与 摂動剤として塩化シクロヘキサノイルで修飾されたL-チロシンに置換して、実施例3の方法を行った。
結果は図4に示されている。
【0142】
[比較例3* ]
摂動剤を含まないサケカルシトニン(10μg/kg)を、実施例3の方法に基づいてラットに投与した。
結果は図4に示されている。
【0143】
[実施例4]等温下の滴定熱量測定
2.4mMの実施例1の摂動剤と0.3mMのsCtの投与組成物を調製し、等温下の滴定熱量測定(isothermal titration calorimetry)をpH6.5とpH4.5で行った。pH6.5のバッファーは30mMHepes−30mMNaClであり、pH4.5のバッファーは30mM酢酸ナトリウム−30mMNaClであった。
全ての実験は、滴下シリンジ中の8.0mM摂動剤と熱量計セル中の1.0mMカルシトニンを用いて30℃で行った。全ての実験において、摂動剤の15x10μlの増加量を、滴下と滴下の間に2分間の平衡化を行いながら、10秒ずつ添加した。
結果は、滴下用シリンジに摂動剤(8mM)を入れ、当量の増量をpH4.5バッファー(sCt含まず)に添加した実験と、摂動剤を滴下用シリンジに入れ、10μlの増量をpH6.5バッファー(sCt含まず)に添加した実験で確認された。滴定曲線はこれらの実験からは得られず、この結果は、摂動剤の混合および/または希釈による熱は無視してよいことを示した。それゆえ、実験的等温式は、バックグラウンドを引くことによって補正されなかった。
【0144】
結果は以下の表1に示されている。
【0145】
[実施例4A]
実施例1Aの摂動剤を置換して、実施例4の方法を行った。結果は、摂動剤を滴下用シリンジに入れ、当量の増量をpH4.5バッファー(sCt含まず)に添加した実験で確認された。
実施例1Aの摂動剤を置換して、実施例4の方法を行った。結果は、摂動剤を滴下用シリンジに入れ、当量の増量をpH4.5バッファー(sCt含まず)に添加した実験で確認された。
結果は、以下の表1に示されている。
【0146】
【表1】
1 熱量測定実験は、本質的に、You, J.L., Scarsdale, J.N., とHarris, R. B., J. Prot. Chem. 10: 301-311, 1991; You, Junling, Page, Jimmy D., Scarsdale, J. Neel, Colman, Robert W., とHarris, R. B., Peptides 14: 867-876, 1993; Tyler-Cross, R., Sobel, M., Soler, D.F., とHarris, R. B., Arch. Biochem. Biophys. 306: 528-533, 1993; Tyler-Cross, R., Sobel, M., Marques, D., とHarris, R. B., Protein Science 3: 620-627, 1994. に詳説されているようにして行った。
【0147】
[実施例5]α-インターフェロンのGuHCl変性
pH7.2の20mMリン酸ナトリウムバッファー中の9.1mg/mlのα-インターフェロン(Schering Plough Corp.)のストック溶液を調製した。リン酸ナトリウムバッファーと10Mグアニジンヒドロクロリド(GuHCl)(Shigma Chemical Co.-St.Louis,MO)ストック溶液でα-インターフェロンを希釈することによって、種々の濃度のGuHClで200μg/ml濃度のα-インターフェロンとなるようにサンプルを調製した。測定の前に室温で約30分間インキュベーションすることによって、希釈サンプルを平衡化した。
蛍光の測定は、日立F−4500を用いて25℃で行った。タンパク質トリプトファン蛍光は、298nmの励起波長と343nmの発光波長で観察された。
ANS(1−アニリノナフタレン−8−スルホナート)蛍光は、355nmの励起波長と530nmの発光波長で観察された。全ての蛍光測定において、5nm励起および発光の両方のために5nmのスペクトルバンドパス(spectral bandpass)を選択した。
結果は図5に示されている。
【0148】
[実施例6]α-インターフェロン形状におけるGuHClの濃度効果
GuHClの5Mストック溶液を、20mMリン酸ナトリウム、pH7.2バッファーを用いて調製した。希釈後、ストック溶液のpHをチェックし、濃塩酸で調節した。最終的な溶液の濃度を調べるために、Yasuhiko NozakiによるMethod in Enzymology,Vol.6,第43頁に記載された屈折率を用いた。
α-インターフェロンストック(9.1mg/ml)を十分な量のGuHClと混合して、以下の表1Aの濃度を得た。
【0149】
【表2】
【0150】
示差走査熱量測定法(DSC)を行い、その結果は図6に示されている。
【0151】
[実施例7]内在性トリプトファン蛍光で測定されるイントロンAのpH滴定
pH7.2の20mMリン酸ナトリウムバッファー(Schering Plough Corp.)中に9.1mg/mlのα-インターフェロンのストック溶液を調製した。以下のバッファー:pH2および12のグリシン、pH3、4、5、7のリン酸ナトリウムおよびpH8のホウ酸を用いて種々のpH値で緩衝化された溶液中に200μg/mlの濃度までα-インターフェロンを希釈することによりサンプルを調製した。これらのバッファーを、Gerald D.Fasman,1990により編集されたPractical Handbook of Biochemistry and Molecular Biologyに記載されている通りに調製した。希釈サンプルを、測定前に室温で約30分間インキュベートすることによって平衡化した。
蛍光を実施例5の方法に基づいて測定した。結果は図7に示されている。
【0152】
[実施例8] ANS蛍光によって測定されたインシュリンのpH滴定
1mlの脱イオン水に2mgのインシュリンを溶解することによって、ストック溶液を調製した。10mlの脱イオン水に10mgを溶かして1−アニリノナフタレン−8−スルホナート(ANS)ストック溶液を調製した。以下のバッファー:pH2および12のグリシン、pH3、4、5、7のリン酸ナトリウムおよびpH8のホウ酸を用いて種々のpH値で緩衝化された溶液中に200μg/mlの濃度までインシュリンを希釈することによりサンプルを調製した。これらのバッファーを、Gerald D.Fasman,1990により編集されたPractical Handbook of Biochemistry and Molecular Biologyに記載されている通りに調製した。最終的なANS濃度は90μg/mlであった。希釈サンプルを、測定前に室温で約30分間インキュベートすることによって平衡化した。
蛍光を実施例5の方法に基づいて測定した。結果は図8に示されている。
【0153】
[実施例9] pH2および7.2におけるα-インターフェロンの円偏光二色性スペクトルの可逆性
α-インターフェロンの円偏光二色性スペクトルをpH7.2で引き起こした。次いで、溶液のpHをpH2に再調節し、サンプルを再度スキャンした。次いで、サンプル溶液を7.2に再調節して、再度スキャンした。
α-インターフェロンの濃度は9.2μMすなわち0.17848mg/mlであった([IFN]ストック=9.1mg/ml)。使用したバッファーは、pH7.2の20mMリン酸ナトリウムと、pH2.0の20mMグリシンであった。
pH7.2への転換により、天然構造が完全に回復し、中間状態の可逆性を示した。天然の状態と中間の状態との間のエネルギー差が小さいと思われる。
結果は図9Aと9Bに示されている。
【0154】
[実施例10] 7.2におけるα-インターフェロンの円偏光二色性スペクトル −pH依存性
種々のpHにおけるα-インターフェロンの規則的な二次構造の程度を、遠UVレンジにおける円偏光二色性(CD)測定により調べた。インターフェロンストックの大きな希釈ファクター(〜50倍)により、サンプルを適切なpHにした。α-インターフェロンの濃度は9.2μMすなわち0.17848mg/mlであった([IFN]ストック=9.1mg/ml)。使用したバッファーは、pH6.0および7.2の20mMリン酸ナトリウム;pH3.0、4.0、4.5、5.0そして5.5のNaAc;並びに、pH2.0の20mMグリシンであった。
【0155】
二次構造の内容を、CD曲線を4つの主要構造部:すなわちα-ヘリックス、β-シート、ターン、およびランダムコイルに分けるいくつかの適切なプログラムを用いて評価した。これらのプログラムの二つには、分析のためのCD装置が備えられている。第一のプログラムは7つの対照タンパク質:すなわち、ミオグロビン、リゾザイム、パパイン、チトクロムC、ヘモグロビン、リオヌクレアーゼAおよびキモトリプシンを用いている。第二のプログラムは、Yang.REF参照ファイルを用いている。
【0156】
第三のプログラムCCAFASTは、コンベックス・コンストレイント・アルゴリズム(Convex Constraint Algorithm)を用いており、“コンベックス・コンストレイント・アルゴリズムを用いたタンパク質の円偏光二色性スペクトル分析:実践ガイド(Analysis of Circular Dichroism Spectrum of Proteins Using the Convex Constraint Algorithm: A Practical Guide)”(A.Perczel,K.ParkとG.D.Fasman(1992)Anal.Biochem.203:83-93)。に記載されている。
【0157】
pHボリューム(2.0−7.2)の範囲中の遠UVスキャンのデコンボリューションは、pH3.5における二次構造の顕著な圧縮を示す。近UVスキャンは、3次構造充填の崩壊を示唆し、遠UVスキャンは、このpHにおいてまだ重要な二次構造があることを示唆する。
【0158】
結果は図10に示されている。
【0159】
[実施例11] インシュリンと濃度を増加したGuHClのDSC
DSCを、50mMリン酸バッファー、pH7.5中の6mg/mlインシュリン(分子量が6000と仮定すれば0.83mM)を用いて行った。各サーモグラムは、0.6Mグアニジン−リン酸バッファー溶液のバックグラウンドを引くことによって補正した。
インシュリンを50mMリン酸バッファー、pH7.5中に濃縮ストック溶液として新鮮に調製し、適切な分注量をバッファーに希釈し、2ミクロンPTFEフィルターで濾過し、少なくとも20分間脱気した。
スキャニング熱量測定(scanning calorimetry)を、50mMリン酸バッファー、pH7.51ミリリットル当たり5mg0.83mMブタインシュリンを用いて行った。全てのサーモグラムは、1℃/分のアップスケールモードで操作された(90℃まで)DA2データ獲得システムを備えたMicrocal MC-2スキャニング熱量測定計で行われ、データポイントは20分毎に集められた。全てのスキャンは、活性剤に観察されたトランジションより少なくとも20度低いところから開始された。全てのサーモグラムは、ベースラインを引いて補正され、高分子の濃度が正常化された。Johns Hopkins Biocalorimetry Centerの方法に基づき、例えばRamsayら.Biochemistry(1990)29: 8677-8693; Schonら.Biochemistry(1989)28: 5019-5024(1990)29: 781-788を参照。DSCデータ分析ソフトウェアは、熱誘導高分子融解プロファイルの統計力学的デコンボリューションに基づいている。
GuHClの構造に与える効果は、各溶液を、5Mストック溶液から0.5−2Mの範囲の濃度に希釈された変性剤を含有する、リン酸バッファー、pH7.5に調製したDSC実験で評価された。
結果は以下の表2に示されている。
【0160】
【表3】
【0161】
[実施例12] インシュリンのDSCスペクトルに対するイオン強度の効果
6mg/mlのインシュリン(50mMリン酸バッファー中に0.83mM、pH7.5、0.25、0.5もしくは1.0MのNaClを含む)を含有するサンプルを用いた。サーモグラムを実施例11の方法に従って行い、上述したように0.5MのNaCl−リン酸バッファーブランクを差し引くことによって補正した。
イオン強度の増加が構造に与える効果を、NaClを0.25−3Mの範囲の濃度で含むように各溶液を調製したDSC実験で評価した。
結果は、以下の表3に示されている。
【0162】
【表4】
【0163】
[実施例12A] rhGhのDSCスペクトルに与えるイオン強度の効果
インシュリンに代えて、0.5もしくは1.0MのNaClを含む50mMのリン酸バッファー、pH7.5中の5mg/mlの組換えヒト成長ホルモン(rhGh)(HGHのM22128に基づいて225μM)を用いて実施例11の方法を行った。サーモグラムは、0.5MNaCl−リン酸バッファーブランクを差し引くことによって補正された。
結果は以下の表4に示されている。
【0164】
【表5】
【0165】
[実施例13] rhGHのDSCスペクトルに対するpHの影響
5mg/mlのrhGhをバッファーに溶解した(分子量を20000と仮定すれば50mMリン酸バッファー中に0.17mM)。溶液のpHを所望の値に調節し、全ての曲線を、ベースラインを差し引いて補正した。
pH値が2.0〜6.0の範囲のリン酸バッファーに各溶液を調製した実施例11の方法に基づくDSCによって、構造に対するpHの効果を評価した。
結果を以下の表5に示す。
【0166】
【表6】
【0167】
[実施例14] rhGhのDSCスペクトルに与えるGuHClの影響
最初のスキャンをGuHClの非存在下で10mg/mlで行った(分子量を20000と仮定して0.33mM)。次いで、rhGhの濃度を、種々の濃度のGuHClを含む50mMリン酸バッファー、pH7.5中に5mg/ml(0.17mM)となるまで下げた。サーモグラムを、0.5Mのグアニジン−リン酸バッファー溶液のバックグラウンドを差し引くことによって補正した。サーモグラムを0.5MのNaCl−リン酸バッファーブランクを差し引くことによって補正した。スキャンを、実施例11の方法に従って行った。
結果を以下の表6に示す。
【0168】
【表7】
【0169】
[実施例15] α-インターフェロンのコンホメーションのpH依存性
α-インターフェロンストック(9.1mg/ml)を0.6mg/mlの濃度までバッファーで希釈した。サンプルをバッファー(バッファーに対するα-インターフェロンの体積比は1:4000)で夜通し透析した。吸光計数が与えられていないので、使用したサンプルの濃度を、透析前後のサンプルの吸収スペクトルを比較することによって決定した。それぞれのpHに対して、既知の濃度の未透析のα-インターフェロンの吸収を280nmで測定した。透析後、タンパク質の欠失、希釈等を説明するために再度吸収を読み取った。バッファーの状態とα-インターフェロンの濃度は以下の通りである。
pH3.0:バッファー − 20mM NaAc。 [IFN]=0.50mg/ml;
pH4.1:バッファー − 20mM NaAc。 [IFN]=0.53mg/ml;
pH5.0:バッファー − 20mM NaAc。 [IFN]=0.37mg/ml;
pH6.0:バッファー − 20mM リン酸ナトリウム。 [IFN]=0.37mg/ml;
pH7.2:バッファー − 20mM リン酸ナトリウム。 [IFN]=0.
48mg/ml。
【0170】
実施例11の方法に基づいてDSCスキャンを行った。室温であらゆるpHに対して、澄んだ透明なα-インターフェロン溶液が得られたが、温度スキャン後、pH5.0と6.0において沈殿の顕著な兆候が見られた。
結果を以下の表7に示す。
【0171】
【表8】
【0172】
[実施例16] α-インターフェロンのコンホメーションに与えるGuHClの濃度の影響
GuHCl/α-インターフェロンサンプルを、実施例6の方法に基づいて調製した。DSCスキャンを、実施例11の方法に基づいて行った。
結果を以下の表8に示す。
【0173】
【表9】
【0174】
実施例5−16は、イオン強度、グアニジンヒドロクロリド濃度、およびpHが、活性剤のTmに変化をもたらすことを示し、コンホメーションの変化を示唆する。これは、蛍光分光法によって確認された。可逆的中間体のコンホメーション状態は、模倣物(mimetics)を調製するための鋳型として用いることができる。
【0175】
[実施例17] α-インターフェロン中間体状態模倣物の調製
α-インターフェロンの中間体コンホメーション状態を調べた。中間体状態の2次構造および3次構造を備えたペプチド模倣物を調製した。
【0176】
[実施例18] インシュリン中間体状態模倣物の調製
α-インターフェロンをインシュリンに換えて実施例17の方法を行った。
【0177】
[実施例19] rhGh中間体状態模倣物(Intermediate State Mimetics)の調製
α-インターフェロンを組換えヒト成長ホルモンに換えて実施例17の方法を行った。
【0178】
[実施例20] α-インターフェロン模倣物のin vivo投与
実施例17の方法で調製した模倣物を実施例2の方法に基づいてラットに投与した。
【0179】
[実施例21] インシュリン模倣物のin vivo投与
実施例18の方法に基づいて調製した模倣物に換えて実施例20の方法を行った。
【0180】
[実施例22] rhGH模倣物のin vivo投与
実施例19の方法に基づいて調製した模倣物に換えて実施例19の方法を行った。
【0181】
[実施例24] 内在性トリプトファン蛍光によって測定されたα-インターフェロンの滴定
pH7.2における20mMリン酸ナトリウムバッファー中の9.1mg/mlα-インターフェロンのストック溶液を調製した。800mgの摂動剤(塩化シクロヘキサノイルでアシル化されたL-アルギニン)を2mlの20mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7)に溶かして、摂動剤のストック溶液を調製した。
α-インターフェロンを、リン酸ナトリウムバッファーと種々の摂動剤濃度の摂動剤ストック溶液で希釈することによってサンプルを調製した。希釈されたサンプルを、測定の前に室温で約30分間インキュベートすることによって平衡化させた。
α-インターフェロンの内在性トリプトファン残基の蛍光を、実施例5の方法に基づいて測定した。摂動剤は蛍光を含んでいなかった。
結果は実施例11に示されている。
【0182】
[実施例25] ラットへの摂動剤とα-インターフェロンのin vivo投与
α-インターフェロン(1mg/kg)と混合された実施例24の摂動剤(800mg/kg)を含む投与溶液を、実施例2の方法に基づいてラットに投与した。
結果は図12に示されている。
【0183】
[比較例25*]
実施例25の方法に基づいて、α-インターフェロン(1mg/kg)をラットに投与した。血清サンプルを、実施例25の方法に基づいて回収およびアッセイした。
結果は図12に示されている。
【0184】
[実施例26] α-インターフェロンと摂動剤の示差走査熱量測定法
摂動剤結合DSCをpH7.2の20mMリン酸ナトリウムバッファーを用いて行った。摂動剤ストック溶液を調製するために乾燥摂動剤を秤量した。α-インターフェロンストックをバッファーに希釈した。全体のセットに対して同じ活性濃度を備えるように、α-インターフェロン溶液は、実験の前に透析しなかった。
DSCサーモグラムを、0.64mg/mlの濃度のα-インターフェロンと5、10、25および100mg/mlの摂動剤濃度の摂動剤(>98%に精製されたフェニルスルホニル-パラ-アミノ安息香酸(スペクトルの作製の前に逆相クロマトグラフィーで調べた))を用いて引き起こした。DSCを、データの自動収集用のIBM PCに連結したDASM−4示差走査熱量測定計で行った。スキャン速度は、60℃/hであった。
結果は、以下の表9と実施例13に示されている。
【0185】
[比較例26*]α-インターフェロンの示差走査熱量測定法
実施例26の方法を、摂動剤を含まないα-インターフェロンに置き換えて行った。結果は以下の表9と実施例13示されている。
【0186】
【表10】
【0187】
摂動剤の添加濃度が0−100mg/mlの範囲をとるDSCスキャンは、濃度に依存して生じるα-インターフェロンの誘導されたコンホメーション変化を示す。100mg/mlの摂動剤では、サーモグラムが、α-インターフェロンCp対Tm曲線が平らな線であることを示唆した。100mg/mlの摂動剤で得られた平らなCp対Tm曲線は、α-インターフェロン分子内の疎水性残基が溶剤に曝されるようになったことを示唆する。摂動剤が、濃度に依存して、α-インターフェロンの構造を変化し得ることは明らかである。
【0188】
[実施例27]透析実験 − 摂動剤と複合体を形成する可逆性
9.1mg/mlの濃度のα-インターフェロンストック溶液を、α-インターフェロンが0.6mg/mlの濃度になるまでバッファーで希釈した。実施例26の方法に従ってDSCを行った。
結果は図14A示されている。
【0189】
α-インターフェロン(0.6mg/ml)と実施例26の摂動剤(100mg/ml)を溶液のCpに明らかな変化を示さずに混合した。次いで、この溶液を、リン酸バッファーで夜通し透析し、サーモグラムを行った。結果は図14Bに示されている。
【0190】
透析サンプルは、本質的に、摂動剤を添加する前と同じ様なTmとCp対Tm曲線の下側面積を備えていた。このことは、摂動剤がタンパク質にコンホメーション変化を誘導するだけでなく、この過程が可逆的ことを示した。希釈は、活性剤から摂動剤を解離させるに十分な推進力であった。
【0191】
[実施例28] 摂動剤とα-インターフェロンDSC
GuHClを実施例26の摂動剤に換えて実施例6の方法を行った。
結果は図15に示されている。
α-インターフェロンの平衡変性(equilibrium denaturation)のDSC実験は、分子の中間体コンホメーションの存在を示唆する。ΔH対Tmプロットは、各セットの実験条件におけるα-インターフェロンに占有された中間体コンホメーションのエネルギー学を示す。
【0192】
[実施例29] ラットへの摂動剤およびα-インターフェロンのin vivo投与 実施例4の摂動剤(800mg/kg)とα-インターフェロン(1mg/kg)の投与溶液を、実施例2に従ってラットに投与した。血清サンプルを収集し、実施例2の方法に従ってELISAでアッセイした。
結果は図16に示されている。
【0193】
[比較例29*]ラットへのα-インターフェロンのin vivo投与
摂動剤を含まないα-インターフェロン(1mg/kg)を、実施例29の方法に従ってラットに投与した。血清サンプルを収集し、実施例29の方法に従ってアッセイした。
結果は図16に示されている。
【0194】
図16は、摂動剤と混合した活性剤を動物に経口投与した場合に、α-インターフェロンの顕著な血清力価が全身的な循環において検出できたこと、およびα-インターフェロンが十分に活性を有することを示唆している。誘導されたα-インターフェロンが十分に活性を備えていたという確認データは、イントロンの天然コンホメーションに特異的なエピトープを認識し得るモノクローナル抗体を利用した商業的なELISAキットによって血清をアッセイしたこと、およびELISAによって測定された力価と関連したイントロンの力価を決定する細胞変性効果アッセイを用いて血清をさらにアッセイしたこと(データ示さず)を含んでいた。それゆえ、摂動剤を用いた場合の結果として生じたコンホメーション変化は可逆的な変化であった。
【0195】
[実施例30] α-インターフェロンにおける摂動剤濃度依存変化
摂動剤をシクロヘキサノイルフェニルグリシンに換えて、実施例26の方法を行った。
結果を以下の表10と図17に示す。
【0196】
【表11】
【0197】
シクロヘキサノイルフェニルグリシンは、濃度依存性のα-インターフェロンにおけるコンホメーション変化を誘導した。
【0198】
[実施例31] ラットへの摂動剤およびα-インターフェロンのin vivo投与
実施例30の摂動剤(800mg/kg)とα-インターフェロン1(mg/kg)を含む投与溶液を、実施例2の方法に基づいてラットに投与した。血清サンプルを回収して、実施例2の方法に従ってELISAによってアッセイした。
結果は図18に示されている。
【0199】
[比較例31*]ラットへの摂動剤およびα-インターフェロンのin vivo投与
摂動剤を含まないα-インターフェロン(1mg/kg)を、実施例2の方法に基づいてラットに投与した。血清サンプルを回収して、実施例2の方法に従ってELISAによってアッセイした。
結果は図18に示されている。
【0200】
[実施例32] 摂動剤およびα-インターフェロンDSC
実施例6の方法を、GuHClを実施例30の摂動剤に換えて行った。
結果は図19に示されている。
【0201】
△H対Tmプロットは、5および25mg/ml以下のシクロヘキサノイルフェニルグリシン摂動剤で安定なα-インターフェロンの平衡中間体コンホメーションの存在を示唆する。
【0202】
[実施例33] 摂動剤を含むα-インターフェロンの等温下の滴定熱量測定
α-インターフェロンと複合体を形成する摂動剤の等温下の滴定熱量測定を、二つの異なるpHで25℃で行った。用いたバッファーは、pH7.2では20mMリン酸ナトリウムであり、pH3.0では20mMNaAcであった。α-インターフェロン溶液を、適切なpHに達するように実験の前に透析した。乾燥摂動剤を秤量し、透析して希釈した。
ITCをMicroCal OMEGA滴定熱量測定計で行った(MicroCal Inc.-Northampton,MA)。データポイントを2秒ごとに収集したが、濾過はしなかった。1.3625mlセルに配されたα-インターフェロン溶液を、濃縮された摂動剤溶液で満たされた250μlのシリンジを用いて滴定した。ある量の滴定剤(titrant)を、55回までの注入で3−5分毎に注入した。
二つの溶液の混合熱を補正するための対照実験は、反応セルが活性剤を含まないバッファーで満たされていること以外は同様にして行われた。
データの分析は、Johns Hopkins University Biocalorimetry Centerで開発されたソフトウェアを用いて行われた。
pH7.2における滴定は、実施例30の摂動剤(50mg/ml=191.6mM(MW261))とα-インターフェロン(1.3mg/ml=0.067mM(MW19400))の2μlを53回注入することを含む。
結果は図20に示されている。
【0203】
曲線適応(curve fitting)は、多重独立部位(multiple independent sites)を示した。
n(1)=121.0354 n=#完成された摂動剤分子
△H(1)=58.5932cal/モル摂動剤
log10Ka(1)=2.524834 Ka=結合定数
x軸ユニットは、mM表示されたキャリアーの濃度である。
y軸ユニットは、カロリー表示された熱/注入を示す。
pH3では、複合が負のエンタルピーをもたらした。
【0204】
[比較例33*]摂動剤の等温下の滴定熱量測定
活性剤を含まない実施例30の摂動剤(50mg/ml=191.6mM)[IFN]=0mgの2μlを53回注入して行った。
実施例33と比較例33は、α-インターフェロンが正のエンタルピーを備え、結合定数(Kd 10-3M)を備えることを示している。
【0205】
[実施例34] α-インターフェロンと摂動剤複合体の等温下の滴定熱量測定
実施例30の摂動剤を実施例26の摂動剤に換えて、実施例33の方法を行った。
pH7.2における滴定は、摂動剤(50mg/ml=181mM(FW277))
とα-インターフェロン(2.31mg/ml=0.119mM(MW19400))の5μlを55回注入することを2回繰り返すことを含む。
結果は図21に示されている。
【0206】
曲線適応は、多重独立部位を示した。
n(1)=55.11848 n=#複合摂動剤分子
△H(1)=−114.587cal/モル摂動剤
log10Ka(1)=2.819748 Ka=結合定数
x軸ユニットは、mM表示されたキャリアーの濃度である。
y軸ユニットは、カロリー表示された熱/注入を示す。
【0207】
pH3では、α-インターフェロンに対する摂動剤の複合形成により、溶液から複合体が沈降した。この工程で生じた熱効果のために、複合パラメーターを測定することは不可能であった。
【0208】
[比較例34*]摂動剤の等温下の滴定熱量測定
活性剤を含まないpH7.2のリン酸ナトリウム20mMリン酸ナトリウム中の実施例26の摂動剤(50mg/ml=181mM)の5μlを55回注入して実施例34の方法を行った。
α-インターフェロンと複合した実施例26の摂動剤は、負のエンタルピーをもたらし、実施例30の摂動剤とα-インターフェロンとの結合定数と比較可能な結合定数をもたらした。
実施例33および34は、活性剤と摂動剤との複合がより強力になり、活性剤の中間状態が熱力学的により安定になれば、活性剤の生物利用能がより良好になることを示している。
それゆえ、活性剤と摂動剤に対して△H対Tm曲線をプロットすることによって、Tmの広範囲においてエンタルピーの変化をほとんどあるいは全く示さない摂動剤が、より好ましい摂動剤であろう。より優れた状態に中間状態を安定化する摂動剤が、より効率的な活性剤の送達をもたらすと考えられる。
【0209】
[実施例35] α-インターフェロンを用いた△H対Tmプロットに対する3種の摂動剤の効果の比較
0.5mg/mlのα-インターフェロンと(1)ベンゾイル=パラ-アミノフェニル酪酸(benzoyl para-amino phenylbutyric acid)、(2)実施例30の摂動剤、あるいは(3)実施例26の摂動剤とを混合したものを用いて、実施例26の方法に基づいてDSC実験を行った。
ベンゾイル=パラ-アミノフェニル酪酸は、バッファー状態ではほとんど溶けなかった。室温で溶液が透明を保つ最大濃度は〜8mg/mlであった。それゆえ、用いられた摂動剤の濃度は、2、4および6mg/mlであった。結果は図22および23に示されている。
図22の点線は、線最小自乗(the linear least squares)を示し、その回帰式(the regression equation)は図22の上に記載されている。
【数10】
図22および23は、ベンゾイル=パラ-アミノフェニル酪酸が、実施例30および26の摂動剤よりも容易にα-インターフェロンのコンホメーション変化を生じ得ること、並びに、このような変化は、実施例26の摂動剤よりも実施例30の摂動剤により容易にもたらされ得ることを示す。
【0210】
[実施例36]α-インターフェロンと複合形成の等温下の滴定熱量測定
摂動剤ベンゾイル=パラ-アミノフェニル酪酸(7.5mg/ml=24.59mM、(FW305))とα-インターフェロン(2.5mg/ml=0.129mM(MW19400))の5μlを40回注入して、実施例33の方法に基づいてITCを行った。
結果は図24に示されている。
曲線適応は、多重独立部位を示した。
n(1)=23.69578 n=#複合摂動剤分子
△H(1)=791.5726cal/モル摂動剤
log10Ka(1)=3.343261 Ka=結合定数
x軸は、mM表示されたキャリアーの濃度を示す。
y軸は、カロリー表示された熱/注入を示す。
【0211】
[比較例36*]
活性剤を含まない、pH7.2の20mMリン酸ナトリウムバッファー中の摂動剤ベンゾイル=パラ-アミノフェニル酪酸(7.5mg/ml=24.59mM)の5μlを40回注入して、実施例36の方法に基づいてITCを行った。
実施例35の摂動剤の見かけの解離定数は、pH7の実施例30の摂動剤(10-4M)より大きい。
それゆえ、ベンゾイル=パラ-アミノフェニル酪酸はα-インターフェロンとより強力に複合体を形成し、未変性の安定な可逆的中間体コンホメーション状態をより低い摂動剤濃度で誘導する。
【0212】
[実施例37−39] 種々の摂動剤とα-インターフェロンの比較によるin vivoの薬物動態学
実施例26の摂動剤(800mg/kg)(1)、実施例30の摂動剤(800mg/kg)(2)、もしくはベンゾイル-パラ-アミノフェニル酪酸(300mg/kg)(3)と1mg/kgのα-インターフェロンを含む投与溶液を、実施例2の方法に従ってラットに投与した。血清サンプルを収集し、実施例2の方法に従ってELISAでアッセイした。
結果は図25に示されている。
【0213】
[比較例37*] α-インターフェロンのin vivo薬物動態学
摂動剤を含まないα-インターフェロンを実施例37の方法に従ってラットに投与した。血清サンプルを収集して、実施例2の方法に従ってELISAでアッセイした。
結果を図25に示す。
【0214】
実施例35−39は、in vivoでの効能がin vitroモデルで正確に予想できたことを示している。
【0215】
[実施例40−42] 下垂体を切除したラットにおけるrhGhと種々の摂動剤の比較によるin vivo薬物動態学
rhGh(1mg/kg)と混合した摂動剤サリチロイル(salicyloyl)クロリド修飾L−フェニルアラニン(1.2g/kg)(40)、フェニルスルホニル=パラ-アミノ安息香酸(1.2g/kg)(41)、もしくは塩化シクロヘキサノイル修飾L−チロシン(1.2g/kg)(42)を含む投与溶液を実施例2の方法に従ってラットに投与した。
ラットは、Loughna,P.T.ら,Biochem.Biophys.Res.Comm.Jan.14,1994,198(1),97-102の方法に基づいて下垂体を切除したした。血清サンプルをELISA(Medix Biotech,Inc.,Foster City,CA,HGH Enzyme Immunoassay Kit)でアッセイした。
結果は図26に示されている。
【0216】
[実施例43−45] 種々の摂動剤を用いたpH7.5および4.0におけるrhGHの等温下の滴定熱量測定
種々の摂動剤と複合体を形成するrhGhの能力を、通常は30℃で平衡化してMicrocal Omega滴定装置を用いてITCで評価した。熱量計のサンプルセルを、pH7.5もしくは4.0の50mMリン酸バッファー中に調製された脱気したrhGH(通常は0.25mM)で満たした。摂動剤(塩化シクロヘキサノイル修飾L−チロシン(a)、サリチロイル修飾L−フェニルアラニン(b)、もしくはフェニルスルホニルパラアミノ安息香酸(c))を1mM(pH7.5用)と2.5mM(pH4.0用)に滴下シリンジに移した。20〜25回の10μlの注入を、注入の間隔を2分として、急速混合(400rpm)溶液に調製した。
熱量計サンプルセルに配された摂動剤の初濃度は、各摂動剤に対して200の式量を仮定した。各溶液のpHを、溶解した後にチェックしたが、pHの調節は必要なかった。全ての実験を30℃で行った。滴下シリンジに配されたrhGhの初濃度は、rhGhについて分子量20000と仮定した。各溶液のpHを溶解後にチェックしたが、pHの調節は必要なかった。
反応熱を、観察されたピークの積分によって決定した。混合および希釈の熱を補正するために、試験摂動剤もしくはrhGhの一定分量をバッファー溶液のみに添加して同じ条件下で対照実験も行った。放出された熱の合計量を、等温式を作製するために全体の摂動剤濃度に対してプロットした。等温式から、一セットの独立摂動剤複合部位を有する超分子複合体において複合した摂動剤について記載された結合等式に対して結合等温式を曲線適合させることによって、結合定数(KA,M)、エンタルピー変化(△H、kcal/mol)、エントロピー変化(△S(eu)、およびN、並びに複合体を形成した超分子複合体の当量当たりに複合した摂動剤分子の化学量論が決定された。製造者のソフトウェアに供給されている非線形最小自乗アルゴリズムを用いて、データをデコンボリュート(deconvoluted)した。
結果は以下の表11に示す。
【0217】
【表12】
【0218】
pH7.5における正の△S値は、このpHにおける複合体形成が構造変化を引き起こすことを示している。
【0219】
[実施例46および47] α-インターフェロンと摂動剤を用いたパンクレアチン阻害アッセイ
パンクレアチン活性のアッセイを、以下のようにして準備した:α-インターフェロンの0.1mlのストック溶液(9.1mg/ml、20mM NaH2PO4、pH7.2)(Schering-Plough Corp.)を、2.5mlの、pH7.0の5mMのNaH2PO4中のフェニルスルホニル−パラ−アミノ安息香酸摂動剤(46)もしくはシクロヘキサノイルフェニルグリシン摂動剤(47)(200mg/ml)に添加した。37℃で30および60分間インキュベーションし、0.1mlのUSPパンクレアチン(20mg/ml)(Sigma Chemical Co.)を添加した。その時点において、0.1mlの一定分量を取りだした。酵素反応を、プロテアーゼインヒビター(アプロチニン(Aprotinin)とBowman-Birkインヒビター(BBI)、各々2mg/ml)を添加して停止させ、完全なままのα-インターフェロンを定量するために5倍に希釈した。Butyl C-4カートリッジ(3.0x0.46cm、Rainin)を使用し、かつ220nmにおけるUV検出を組み合わせた0.1%TFA/水と0.1%TFA中の90%ACNとの間の勾配溶出を用いた逆相HPLCを用いて、α-インターフェロンを分離および定量した。0分におけるα-インターフェロンを、パンクレアチンの添加の前の一定分量から定量し、100%とした。
結果は図27に示されている。
【0220】
実施例46および47は、両方の超分子複合体が酵素分解に対抗したことを示す。しかしながら、さらなる試験においては、酵素インヒビターの能力と薬物送達能力との間に何の関係も示さなかった。
【0221】
[実施例48] pH5.0におけるヘパリンのDSC
pH5.0におけるヘパリンのDSCサーモグラムを、摂動剤としてpH、GuHCl、およびイオン強度を用いた実施例11の方法に基づいて行った。
サーモグラムをヘパリン.05M NaCl−リン酸バッファーブランクを引くことによって補正したが、各ブランクは、各NaCl濃度について使用しなかった。
結果は以下の表12−14と図28に示されている。
【0222】
【表13】
【0223】
【表14】
【0224】
【表15】
【0225】
これらのデータは、非タンパク質性活性剤が摂動剤に応じてコンホメーションを変化させ得ることを示している。
【0226】
[実施例49] ヘパリンと摂動剤のカラムクロマトグラフィー
以下の材料を用いた:
カラム: 10mmx30cm、低圧、ガラスカラム Pharmacia w/調節可能なベッドボリューム。使用したベッドボリュームは、0.8Mpaの圧力で22cmであった。
パッキング: リンカー分子を具備しないセファロース(Sepharose)CL−6Bに共有結合したヘパリン。
セファロース分画レンジ:10000−4000000。
ヘパリン密度は、Pharmacia Q.C.Departmentに従って2mg/ccであった。
【0227】
条件: 移動相はpH7.4の67mMリン酸バッファー。
流速は1.5ml/分アイソクラティック(isocratic)。
流動時間は45分。
サンプル検出は、Perkin Elmer屈折率検出装置を用いた。
【0228】
カラムが完全であることをプロタミンを注入し、かつ1時間以上の保持時間を観察することによって確認した。空いた容量を、水を注入し、溶出時間を測定することによって調べた。
【0229】
以下の表15の各摂動剤(5mg)を、1mlの移動相に個別に溶解し、カラムに注入した(100μl)。溶出時間を測定した。K’値を以下の式を用いて決定した:
【数11】
結果を、各摂動剤間、および図29における各in ivo性能で比較した。この図のK’値(遅延度)は、ヘパリン−セファロースカラムから得られたK’値からセファロースカラムから得られたK’値を差し引くことによって補正されている。
【0230】
【表16】
【0231】
[実施例50] ラットへのヘパリンの経口投与
実施例2の方法に従って、以下の表16の投与溶液をラットに投与した。血液を採取し、活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time)(APTT)をHenry,J.B.,Clinical Diagnosis and Management by Laboratory Methods,W.B.Saunders,1979の記載に従って行った。
結果は図29および30に示されている。
【0232】
図29は、モデルに予想されるように、ヘパリンへの結合が強くなればなるほど、APTTが上昇することを示している。このデータは、K’値が0.2以下では活性がほとんどないことを示唆している。K’値>0.2では、活性は顕著である。
このデータは、セファロースカラムそのものに対するヘパリンセファロースカラムの遅延と、APTTの上昇として測定されるin vivo活性の増大との間の関係を示唆している。特に、最も強力にヘパリンに結合するプロタミンは経口的な生物利用能を全く持たない(K’=3.68)。このことは、結合強度と解離能力を備えたコンホメーション変化とのバランスを取ることにより、薬物の生物学的活性の完全な補足を最適化することを示している。
【0233】
【表17】
【0234】
全ての特許、出願、試験方法、およびここに言及した刊行物は、参照としてここに援用する。
本願発明の多くの変更は、上記の詳細な開示を考慮して当業者に示唆されるであろう。例えば、経口薬剤送達は、血液に胃腸管のルーメンを横切ることを必要とする。これは、これらの解剖学上の区画を分けるいくつかの細胞性脂質二重層を横切る結果として起こる。
活性剤と摂動剤の複合体化および活性剤のコンホメーションの変化が、摂動剤もしくは活性剤のみのものとは異なる可溶性および空間におけるコンホメーション等の物理化学的特性を備えた超分子複合体を作製する。これは、血液脳関門、および目、膣、直腸等の膜等の別の膜を横切るこの特性の利点を得ることができることを示唆する。このような修飾の全ては、クレームの範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0235】
【図1】図1は、α−インターフェロン(IFN)及び修飾アミノ酸複合体形成摂動剤の天然の勾配ゲルを示す図である。
【図2】図2は、α−インターフェロン及び熱凝縮複合体形成摂動剤の天然の勾配ゲルを示す図である。
【図3】図3は、複合体形成摂動剤有りまたは無しでα−インターフェロンを経口投与した後の血清α−インターフェロンレベルを示すグラフである。
【図4】図4は、複合体形成摂動剤有りまたは無しでサケ(salmon)カルシトニンを経口投与したラットにおけるカルシウムレベルを示すグラフである。
【図5】図5は、α−インターフェロンの塩酸グアニジン(GuHCl)誘発変性を示すグラフである。
【図6】図6は、α−インターフェロンのコンフォメーションに対するGuHClの濃度効果を示すグラフである。
【図7】図7は、α−インターフェロンのpH変性を示すグラフである。
【図8】図8は、インシュリンのpH変性を示すグラフである。
【図9A】図9Aは、α−インターフェロンの円二色性スペクトルの可逆性を示すグラフである。
【図9B】図9Bは、α−インターフェロンの円二色性スペクトルの可逆性を示すグラフである。
【図10】図10は、α−インターフェロンの円二色性スペクトルを示すグラフである。
【図11】図11は、α−インターフェロンと複合体形成摂動剤の固有トリプトファン蛍光を示すグラフである。
【図12】図12は、複合体形成摂動剤有りまたは無しでα−インターフェロンを経口投与した後の血清α−インターフェロンレベルを示すグラフである。
【図13】図13は、α−インターフェロン及び複合体形成摂動剤の示差熱量分析を示すグラフである。
【図14A】図14A及び14Bは、複合体形成摂動剤による変形の可逆性を示すグラフである。
【図14B】図14A及び14Bは、複合体形成摂動剤による変形の可逆性を示すグラフである。
【図15】図15は、α−インターフェロンに対する複合体形成摂動剤の影響を示すグラフである。
【図16】図16は、複合体形成摂動剤有りまたは無しでα−インターフェロンを経口投与した後の血清α−インターフェロンレベルを示すグラフである。
【図17】図17は、α−インターフェロンのコンフィギュレーションに対する複合体形成摂動剤の濃度効果を示すグラフである。
【図18】図18は、複合体形成摂動剤有りまたは無しで経口投与した後の血清α−インターフェロンレベルを示すグラフである。
【図19】図19は、α−インターフェロンに対する複合体形成摂動剤の影響を示すグラフである。
【図20】図20は、α−インターフェロン及び複合体形成摂動剤の等温滴定熱量分析を示すグラフである。
【図21】図21は、α−インターフェロン及び複合体形成摂動剤の等温滴定熱量分析を示すグラフである。
【図22】図22は、α−インターフェロンに対する複合体形成摂動剤の影響を示すグラフである。
【図23】図23は、α−インターフェロンに対する複合体形成摂動剤の濃度効果を示すグラフである。
【図24】図24は、α−インターフェロン及び複合体形成摂動剤の等温滴定熱量分析を示すグラフである。
【図25】図25は、複合体形成摂動剤とともに経口投与した後の血清α−インターフェロンレベルを示すグラフである。
【図26】図26は、複合体形成摂動剤と混合した組み換えヒト成長ホルモンのインビボの薬物速度論を示すグラフである。
【図27】図27は、α−インターフェロン及び複合体形成摂動剤での膵臓阻害アッセイを示すグラフである。
【図28】図28は、pH5.0におけるヘパリンのDSCの影響を示すグラフである。
【図29】図29は、ヘパリンでのインビボ投与実験からのAPTTピーク値に対する発育不全の程度を示すグラフである。
【図30】図30は、複合体形成摂動剤有り及び無しでのヘパリンの経口投与の後のラットにおける凝固時間を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性薬、特に生物学的活性薬を、細胞膜または脂質二重層を横切って送達するための方法及び組成物に関する。これらの方法及び組成物は、製薬製剤を不利な環境を通して体内の特定の位置に送達するように、活性薬を標的に送達することができる。
【背景技術】
【0002】
活性薬を、例えばヒトの器官や腫瘍などの目的とする標的に送達するための従来の手段は、生物学的、化学的、及び物理的障害物の存在によってしばしば制限されることがあった。典型的には、これらの障害物は、送達が通過しなければならない環境、送達する標的の環境、または標的そのものによって与えられていた。
【0003】
生物学的活性薬は、特にこのような障害物の影響を受けやすい。多くの生物学的活性薬についての循環系への経口送達は、もし、ある種の生物学的活性薬に対して比較的不透過性であるが、経口経路を通して活性薬が循環系に到達するためには横切らなければならない皮膚、脂質二重層、及び種々の生体器官膜などの物理的障害物が無い場合は、動物への投与経路の選択肢である。さらに、経口送達は胃腸(GI)管のpH変化、並びに、口腔及びGI管に存在する強力な消化酵素といった化学的障害によって邪魔される。
【0004】
カルシトニン及びインシュリンは、この分野での有効な経口経路送達システムの設計において直面する問題を例示する。カルシトニン及びインシュリンの医学的性質は、多くの技術によって容易に変化させることができるが、それらの物理化学的性質及び酵素消化の受け易さは、商業的に実行可能な送達システムの設計から除外されている。経口投与には典型的に受け入れられない多くの試薬のうちの他のものは、シトキン(例えば、インターフェロン、IL−2など)といったタンパク質;エリスロポイエチン、多糖類、特に、ムコ多糖であり、ヘパリン、ヘパリノイド、抗生物質、及び他の有機物質を含むがこれらに限定されない。また、これらの試薬は、即座に不活性になる、即ち、GI管内で酸加水分解、酵素等によって分解される。
【0005】
バイオテクノロジーは、多くの他の化合物の生成を可能にし、それらの多くは世界中で臨床に使用されている。しかし、これらの化合物の現在の投与形態は、ほとんどが注射によるものである。これらの化合物の経口投与が多くの場合に好ましいにもかかわらず、これらの試薬はGI管内の種々の酵素やpH変化の影響を受けやすく、一般的には、細胞膜が典型的に構成される脂質二重層を十分に透過することができない。従って、この活性薬は、活性薬がその生物学的効果を発揮することが望まれる標的に経口送達することができなかった。
【0006】
典型的には、薬物設計は、製薬化合物の生化学的性質、及び、特にそれらの治療作用に最初に焦点が当てられる。第2の設計の焦点は、活性薬をその生物学的標的に送達する必要性に向けられる。このことは、ヒト及び他の動物に経口投与するための薬物及び他の生物学的活性薬に当てはまる。しかしながら、投与、特に経口投与後に、該化合物の治療的タイターが適当な解剖学的部位即ち区画に到達することを確実にする送達システムが無かったため、数千の治療的化合物は廃棄された。さらに、現存する治療用化合物の多くは、それらの投与形態の束縛から、許容された徴候に使用されている。また、それら以外の付加的な臨床的徴候にも有効である多くの治療的試薬は、それらを適切な量で適当な生物学的標的に送達する実際の方法論が存在する場合は既に採用されている。
【0007】
タンパク質などの活性薬の細胞間及び細胞内送達に有効な性質が得られたとしても、この成功は薬物設計に生かされていなかった。現実に、タンパク質などの活性薬の送達可能なコンフォメーションは、天然の状態におけるコンフォメーションとは異なる。さらに、自然な送達システムは、しばしば送達に続くタンパク質の天然状態への帰還に作用する。タンパク質がリボゾームによって合成されると、それらは、例えば信号ペプチド及び/またはチャペロニン(chaperonin)といった種々の機構によって適当な細胞オルガネラに往復運転される。Gething,M-J., Sambrook,J.,Nature,355,1992,33-45。信号ペプチドまたはチャペロニンのいずれかの多くの機能の一つは、タンパク質の天然状態への前成熟折り畳みを阻害することである。天然状態は、通常最も低い自由エネルギーを持つ3次元状態として記述される。タンパク質を部分的に折り畳みしない状態に保持するため、信号ペプチドまたはチャペロニンは、タンパク質が適当なオルガネラに到達するまで、タンパク質が種々の細胞膜を横切ることを可能にする。次いで、チャペロニンはタンパク質から分離され、信号ペプチドはタンパク質から解離され、タンパク質が天然状態に折り畳みすることができるようにされる。タンパク質が細胞膜を通過することができるのは、少なくとも一部は、部分的に折り畳みしない状態にあることの結果であることは良く知られている。
【0008】
タンパク質折り畳みの今日の概念は、天然状態から完全に変性した状態への変換において、多数の不連続なコンフォメーションが存在することを示唆している。Baker,D.,Agard,D.A.,Biochemistry,33,1994,7505-7509。タンパク質折り畳みの骨格モデルは、折り畳みの初期段階においては、二次構造単位であるタンパク質のドメインが形成され、次いで最終的折り畳みによって天然状態になることを示唆している。Kim,P.S.,Baldwin,R.L.,Annu.Rev.Biochem.,59,1990,631-660。これらの速度論的中間体に加えて、多くの細胞機能にとって平衡中間体が重要であることがわかった。Bychkova,V.E.,Berni,R.,等,Biochemistry,31,1992,7566-7571,及び Sinev,M.A.,Razgulyaev,O.I.,等,Eur.J. Biochem.,1989,180,61-66。チャペロニンについてのデータは、それらが、タンパク質を部分的に天然状態ではないコンフォメーションに保持する作用があることを示している。さらに、部分的に折り畳まれていないタンパク質は、膜を通過できるが、天然状態、特に大きな粒状タンパク質は、膜を通過しにくいか全く通過しないことが示された。Haynie,D.T.,Freire,E.,Proteins: Structure, Function and Genetics,16,1993,115-140。
同様に、上記の平衡中間体を伴ってコンフォメーション変化を受けないインシュリンなどのリガンドは、それらの機能を失う。Hua,Q.X.,Ladbury,J.E.,Weiss,M.A.,Biochemistry,1993,32,1433-1442; Remington,S.,Wiegand,G., Huber,R.,1982,158,111-152; Hua,Q.X.,Shoelson,S.E.,Kochoyan,M., Weiss,M.A.,Nature,1991,354,238-241。
【0009】
ジフテリア毒素及びこれら毒素の研究は、ジフテリア毒素がその細胞レセプターに結合した後、エンドサイトーシスされるが、このエンドサイトーシス小胞において、酸性pH環境に曝露されることを示している。酸性pHは、毒素分子に構造変化を誘起し、膜挿入及び細胞質ゾルへの位置変化(translocation)の原動力を与える。Ramsay,G.,Freire,E.,Biochemistry,1990,29,8677-8683,及びSchon,A.,Freire,E.,Biochemistry,1989,28,5019-5024 参照。同様に、コレラ毒素は、エンドサイトーシスに続いてコンフォメーション変化を受け、分子が核膜を透過するのを可能にする。Morin,P.E.,Diggs,D.,Freire,E.,Biochemistry,1990,29,781-788 参照。
【0010】
先に設計された送達システムは、送達のための間接的または直接的な試みをいずれかを用いる。間接的試みは、薬物を敵対する環境から保護することを目指す。例として、腸被覆(enteric coatings)、リポソーム、微小球、マイクロカプセルがある。colloidal drug systems,1994,ed.Jorg Freuter,Marcel Dekker,Inc.; U.S.Patent No.4,239,754; Patel,等,(1976),FEBS Letters,Vol.62, pg.60; 及び Hashimoto,等,(1979),Endocrinology Japan,Vol.26,pg.337 参照。これらの試みは全て間接的であり、その設計原理は薬物には向けられず、例えば、敵対環境の薬物への接触及び破壊を防止するといった、薬物が生物学的活性を発揮する標的までの経路で薬物が通過しなければならない環境に対する保護に向けられている。
【0011】
直接的な試みは、プロドラッグの製造といった、薬物と修飾物との共有結合に基づいている。Balant,L.P.,Doelker,E.,Buri,P.,Eur.J.Drug Metab.And Pharmacokinetics,1990,15(2),143-153。結合は、通常は、pH変化や特定の酵素への曝露などの所定の条件下で開裂するように設計される。薬物と修飾物との共有結合は、本質的に新たな分子を生成するが、それらは、変化したlogP等の新たな性質及び/または新たな螺旋コンフィギュレーションを持つ。この新たな分子は、異なる溶解性を持ち、酵素分解を受けにくい。このタイプの方法の例は、ポリエチレングリコールとタンパク質との共有結合である。Abuchowski, A.,Van Es,T.,Palczuk,N.C.,Davis,F.F.,J.Biol.Chem.,1977,252,3578。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、(1)システムが、毒性となる量のアジュバントまたは阻害剤を必要とすること、(2)好ましく低い分子量のコルゴ(corgos)即ち活性薬が、入手できないこと、(3)システムの安定性が悪く、シェルフライフが不十分であること、(4)システムの調製が困難であること、(5)システムが活性薬(コルゴ)を保護しないこと、(6)システムが活性薬を悪い方向に変化させること、または、(7)システムが活性薬の吸着を推進しないことによって、従来の送達システムの広い範囲の用途は除外されている。
【0013】
この分野では、簡単で低価格の送達システムであって、調製が容易であり、特に、経口経路で投与すべき製薬製剤の場合に、広い範囲の活性薬を目的とする標的に送達できる送達システムを未だに必要としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、細胞膜または脂質二重層を通して生物学的活性薬を送達する方法を開示する。この方法は、
(a)天然のコンホメーション状態、変性コンホメーション状態、及び、コンホメーション的に天然及び変性状態の中間にあり天然状態に変換可能な中間コンホメーション状態で存在しうる生物学的活性薬を準備し、
(b)この生物学的活性薬を複合体形成摂動剤(complexing perturbant)に曝露して、該生物学的活性薬を可逆的に中間状態に変換させて送達可能な超分子複合体(supramolecular complex)を形成し、そして、
(c)前記膜または二重層を、前記超分子複合体に曝露して、前記生物学的活性薬を前記膜または二重層を通して送達する工程を含む。
【0015】
この摂動剤は、約150から約600ダルトンの分子量を持ち、少なくとも1つの疎水性部位と少なくとも1つの親水性部位を有する。この超分子複合体は、前記生物学的活性薬に非−共有結合で複合体形成した摂動剤を含有する。本発明では、生物学的活性薬は摂動剤と相互作用した後は微小球を形成しない。
【0016】
また、上記の工程(a)及び(b)からなる経口投与可能な生物学的活性薬の調製方法も考慮する。
【0017】
変形実施態様において、経口送達用組成物が提供される。この組成物は、
(a)下記(b)と非共有結合で複合体形成した中間コンホメーション状態の生物学的活性薬、
(b)約150から約600ダルトンの分子量を持ち、少なくとも1つの疎水性部位と少なくとも1つの親水性部位を有する複合体形成摂動剤を含み、
前記中間コンホメーション状態は、天然のコンホメーション状態及び変性コンホメーション状態の中間にあり、前記天然状態に変換可能であって、前記組成物は微小球ではない。
【0018】
さらに、細胞膜または脂質二重層を通して送達可能であり、前記膜または二重層を通過した後に生物学的に活性となる模倣物(mimetic)を調製する方法も考慮する。天然のコンホメーション状態、変性コンホメーション状態、及び、コンホメーション的に天然及び変性状態の中間にあり天然状態に変換可能な中間コンホメーション状態で存在しうる生物学的活性薬を複合体形成摂動剤に曝露して、該生物学的活性薬を可逆的に中間状態に変換させて送達可能な超分子複合体を形成する。この摂動剤は、約150から約600ダルトンの分子量を持ち、少なくとも1つの疎水性部位と1つの親水性部位を有する。この超分子複合体は、前記生物学的活性薬に非−共有結合で複合体形成した摂動剤を含有し、生物学的活性薬は摂動剤と相互作用した後は微小球を形成しない。超分子複合体の模倣物を調製する。
【0019】
さらにまた、細胞膜または脂質二重層を通して送達可能であり、前記膜または二重層を通過した後に生物学的に活性となる薬剤を調製する方法を提供する。天然のコンホメーション状態、変性コンホメーション状態、及び、コンホメーション的に天然及び変性状態の中間にあり天然状態に変換可能な中間コンホメーション状態で存在しうる生物学的活性薬を複合体形成摂動剤に曝露して、該生物学的活性薬を可逆的に中間状態に変換させる。薬剤、前記中間状態の模倣物を調製する。
【0020】
〔発明の詳細な説明〕
生物学的な生物は、細胞膜または脂質二重層で互いに分離された水性区画からなると言うことができる。活性薬、特に製薬または治療用活性薬は、水性環境において1つの溶解度を有し、疎水性環境においては全く異なる溶解度を有する。典型的には、投与部位から病原部位などの標的部位への活性薬の送達は、活性薬の溶解度が変化する細胞膜または脂質二重層を通した活性薬の送達を必要とする。さらに、活性薬の経口送達は、酵素分解、pH変化などに抗する能力を必要とする。これらの障害は、投与部位と標的との間で、活性薬の生物学的活性の部分的または全体的な低下をもたらす。従って、治療反応のような正当な反応を生ずるのに必要な量の活性薬だけでは、標的に到達しないかもしれない。従って、活性薬は、到達のため、そして膜または脂質二重層を通過するための何らかの助けを必要とする。
【0021】
本発明は、活性薬と複合体形成摂動剤から可逆的に非共有結合で複合体形成した超分子によって、活性薬送達に有効である。結果として、活性薬の三次元構造またはコンフォメーションが変化するが、活性薬分子の化学組成は変化しない。この(組成ではなく)構造の変化は、活性薬に、膜または脂質二重層を通過し、酵素分解などに抗するのに適当な溶解性(logP)を付与する。通過とは、実際に細胞膜または脂質二重層を透過するか否かに係わらず、細胞膜または脂質二重層の一方の側から反対側へ(例えば、細胞の外部から内部へ、またはその逆へ)送達することを意味する。さらに、活性薬の摂動剤中間体状態または超分子自身は、模倣物製造のテンプレートとして用いることができ、この模倣物は細胞膜または脂質二重層を通って送達可能である。細胞膜または脂質二重層を通過した後、活性薬は、天然状態への変換により、または中間状態で得られる生物学的活性または生体適合性を保持することにより、生物学的活性及び生体適合性を有する。模倣物は、細胞膜または脂質二重層を通過した後、同様に作用する。
【0022】
〔活性薬〕
活性薬の天然コンフォメーション状態は、最も低い自由エネルギー(ΔG)を持つ三次元状態として典型的に記述される。それは、生物学的活性薬に帰する生物学的活性の全ての補体のように、活性薬がその薬に帰する活性の完全な補体を有する状態である。
【0023】
変性コンフォメーション状態は、活性薬が二次または三次構造を持たない状態である。
【0024】
中間コンフォメーション状態は、天然及び変性状態の間に存在する。特に活性な薬は、1またはそれ以上の中間状態を有する。本発明で達成される中間状態は、構造的かつエネルギー的に、天然状態とも変性状態とも異なっている。本発明で有用な活性薬は、天然コンフォメーション状態から中間コンフォメーション状態に変換可能であり、天然状態に戻すこともできる。即ち、可逆的に変換可能であって、活性薬が標的に到達するとき、例えば、経口送達された薬物が循環系に到達したときに、活性薬は生物学的、製薬的、または治療的に重要な設計された生物学的活性補体を保持し、回復し、または獲得する。好ましくは中間状態の約−20kcal/molから約20kcal/molの範囲、さらに好ましくは、約−10kcal/molから約10kcal/molの範囲である。
【0025】
例えばタンパク質の場合、中間状態は重要な二次構造、かなり大きな疎水性コアの存在による重要な緻密性(compactness)、及び天然折り畳みを記憶した(reminiscent)三次構造を有するが、天然状態の充填を示す必要はない。天然状態と中間状態との間の自由エネルギーの差(ΔG)は比較的小さい。従って、天然状態と、変換可能な可逆的中間状態との平衡定数は1に近い(実験条件による)。中間状態は、例えば、示差熱量分析(DSC)、等温的定熱量分析(ITC)、天然勾配ゲル、NMR、蛍光等によって確認することができる。
【0026】
如何なる理論にもよらないが、本出願人は、中間状態の物理化学は、タンパク質性活性薬に関する以下の説明で理解されるものと思う。タンパク質は適当な中間コンフォメーション状態で存在でき、それは構造的かつエネルギー的に、天然状態とも変性状態とも異なる。任意のタンパク質の任意のコンフォメーション本来の安定性は、コンフォメーションについてのギブスの自由エネルギーに反映される。単量体のタンパク質の状態のギブスの自由エネルギーは、熱力学的に以下の式で表される。
【数1】
ここで、Tは温度、TRは参照温度、ΔHO(TR)及びTΔSO(TR)は参照温度におけるこの状態の相対的エンタルピー及びエントロピー、そして、ΔCpOはこの状態の相対的熱容量を示す。全ての相対的熱力学的パラメータを説明するために、天然状態を参照状態として選択するのが好ましい。
【0027】
そのタンパク質に許容される全ての状態統計的重量の和は、分配関数Qで定義される。
【数2】
【0028】
式(2)は、次のようにも書ける。
【数3】
【0029】
ここで、第2項は、変換中に集団化した全ての中間体を含む。式(3)の第1項及び第3項は、各々、天然及び変性状態の統計的重量である。ほとんどの条件下で、タンパク質構造は、2状態変換関数で近似できる。
【数4】
【0030】
Tanford,C.,Advances in Protein Chemistry,1968,23,2-95 参照。天然と変性状態の中間にあるタンパク質のコンフォメーションは、例えば、NMR、熱量分析、及び蛍光で検出できる。Dill,K.A.,Shortle,D.,Rev.Biochem.,60, 1991,795-825。
【0031】
全ての熱力学的パラメータは、分配関数で表される。特に、i状態にある分子の集団は、式(5)で表される。
【数5】
【0032】
従って、ギブスの自由エネルギーの計算を可能にする式(1)の適当な項の測定は、設定した実験条件において、集団化した任意の中間体がどの程度重要かを決定することができる。これは、中間体が薬物送達で果たすいえくわりを示している。中間体の集団化が多いほど、送達は有効になる。
【0033】
本発明で用いるのに好適な活性薬は、生物学的活性薬及び化学的活性薬であり、香料及び例えば化粧品のような他の活性薬を含むが、これらに限定されない。
【0034】
生物学的活性薬はペストシド(pestcides)、製薬剤、及び治療剤を含むがこれらに限定されない。例えば、本発明で用いるのに好適な生物学的活性薬は、ペプチド、特に小さなペプチド、ホルモン、特にそれ自身は胃腸粘膜を通過しない及び/または胃腸管の酸または酵素による化学的開裂を受けないホルモン、多糖類、特にムコ多糖類の混合物、炭水化物、脂質、またはそれらの組合せを含むがそれらに限定されない。さらなる例は、ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、インターフェロン、インターロイキン−1、インシュリン、ヘパリン、特に低分子量ヘパリン、カルシトニン、エリスロポイエチン、心房性ナトリウム排泄増加因子(atrial naturetic factor)、抗原、モノクローナル抗体、ソマトスタチン、副腎皮質刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、オキシトシン、バソプレッシン、クロモリンナトリウム(ナトリウムまたは時ナトリウムクロモグリカート)、バンコマイシン、デフェロキサミン(DFO)、抗−微生物、しかし抗菌剤に限られない、またはこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。
【0035】
本発明の方法及び組成物は、1以上の活性薬の組合せでもよい。
【0036】
〔摂動剤〕
本発明での摂動剤は、2つの目的を持つ。第1の実施態様では、活性薬は摂動剤と接触し、活性薬を天然状態から中間送達可能状態に可逆的に変換する。摂動剤は活性薬と非共有結合で複合体形成し、細胞膜または脂質二重層を透過または横切ることにできる超分子複合体を形成する。この超分子複合体は、模倣物のテンプレートとして用いることが出来、それ自身送達組成物として使用することができる。実際に、摂動剤は、活性薬を送達可能な中間状態に固定する。摂動剤は循環系における希釈等によって超分子複合体から放出され、活性薬は天然状態に戻る。好ましくは、これらの摂動剤は、少なくとも1つの親水性部分(即ち、カロキシラート基のように、容易に水に溶解する部分)、及び、少なくとも1つの疎水性部分(即ち、例えばベンゼン基のように、有機溶媒に容易に溶解する部分)を備え、約150から600ダルトン、最も好ましくは約200から500ダルトンの分子量を有する。
【0037】
複合体形成摂動剤分子は、線状、非線状、及び環状プロテイノイドを含むタンパク質、修飾(アシル化またはスルホン化)アミノ酸、ポリアミノ酸、及びペプチド、修飾アミノ酸、ポリアミノ酸、またはペプチド誘導体(ケトンまたはアルデヒド)、ジケトピペラジン/アミノ酸構造体、カルボン酸、及び下記で議論する種々の他の摂動剤を含むがこれらに限定されない。
【0038】
また、如何なる理論にもよらないが、出願人は、非共有結合複合体形成は、水素結合、疎水性相互作用、静電相互作用、及びファンデルワールス相互作用を含むがこれらに限られない分子間力に影響されると思量する。任意の与えられた活性薬/摂動剤超分子複合体について、結合を維持するいくつかの上記の力が存在する。
【0039】
活性薬と摂動剤の間の結合定数Kaは、下記の式(6)で定義される。
【数6】
【0040】
解離定数Kdは、Kaの逆数である。よって、所定温度での摂動剤と活性薬の間の結合定数の測定は、分子ギブス自由エネルギーを産し、結合によるエンタルピー及びエントロピー効果の決定ができる。これらの実験的測定は、例えば、NMR、蛍光、熱量分析を用いて行える。
【0041】
この仮説は、タンパク質に次いて以下のように説明できる。
折り畳まれていないタンパク質は、種々のコンフォメーション状態の間に存在する平衡に従って記述できる。例えば、
【数7】
ここで、Nは天然状態、Iは中間状態、Dは変性状態、k1及びk2は、各々の速度定数である。K1及びK2は各々の平衡定数である。従って、
【数8】
【数9】
これは、中間状態の分配関数の増加が、活性薬送達の能力に正の衝撃を有するべきことを示唆している。
(10)
【0042】
複合体形成は可逆的でなければならないので、Kaによって測定される摂動剤と活性薬の複合体形成は、薬剤を循環系/または標的まで確実に送達するのに十分強くなくてはならず、摂動剤の脱離が適時に起こらずに、活性薬が天然に戻って所定の効果を生ずることが無いほど強くてはいけない。
【0043】
第2の実施態様では、摂動剤は活性薬を中間状態に可逆的に変換させ、その状態のコンフォメーショオンを模倣物の調製用のテンプレートとして使用できるようにする。この目的のためには、摂動剤は活性薬と複合体形成する必要はないが、してもよい。従って、上記の複合体形成摂動剤に加えて、例えば、強酸、洗浄剤、といった活性薬または環境のpHを変化させる摂動剤、活性薬のイオン強度を変化せる摂動剤、例えば塩素酸グアニジン等の他の試薬、及び温度を、活性薬の変換に用いることができる。超分子複合体または中間状態は、模倣物設計のテンプレートとして使用できる。
【0044】
〔複合体形成摂動剤〕
アミノ酸は、本発明で有用な複合体形成摂動剤の多くを調製するのに用いられる基本的材料である。アミノ酸は少なくとも1つのフリーなアミノ基を有するカルボン酸であり、天然及び合成アミノ酸を含む。本発明で用いるのに好適なアミノ酸はα−アミノ酸であり、最も好ましいのは天然のα−アミノ酸である。多くのアミノ酸及びアミノ酸エステルが、Aldorich Chemical Co.(Milwaukee,WI,USA); Sigma Chemical Co.(St.Louis,MO,USA); Fluka Chemical Corp.(Ronkonkoma,NY,USA)等の市販元から入手可能である。
【0045】
本発明で用いるのに好適だがそれらに限定されない代表的アミノ酸は以下の式で表される。
【化1】
ここで、R1は水素、C1−C4アルキル、またはC2−C4アルケニル;
R2はC1−C24アルキル、C2−C24アルケニル、C3−C10シクロアルキル、フェニル、ナフチル、(C1−C10アルキル)フェニル、(C2−C10アルケニル)フェニル、(C1−C10アルキル)ナフチル、(C2−C10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1−C10アルキル)、フェニル(C2−C10アルケニル)、ナフチル(C1−C10アルキル)、またはナフチル(C2−C10アルケニル)であり、R2はC1−C4アルキル、C2−C4アルケニル、C1−C4アルコキシ、−OH、−SH、−CO2R3、C3−C10シクロアルキル、C3−C10シクロアルケニル、3−10の環原子を有しヘテロ原子がN、O、Sまたはそれらの組合せであるヘテロ環、アリール,(C1−C10アルキル)アリール、アリール(C1−C10アルキル)、またはこれらの組合わせで任意に置換されていてもよく、R2は、酸素、窒素、硫黄、またはこれらの組合せで分断されていてもよく、R3は水素、C1−C4アルキル、またはC2−C4アルケニルである。
【0046】
本発明でアミノ酸またはペプチドの成分として用いるのに好ましい天然アミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、シトルリン、システイン、シスチン、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、オルニチン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタマート、フェニルグリシン、またはO−ホスホセリンである。
【0047】
好ましいアミノ酸は、アルギニン、ロイシン、リシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、バリン、及びフェニルグリシンである。
【0048】
本発明で用いるのに好ましい非天然アミノ酸は、β−アラニン、α−アミノブチル酸、γ−アミノブチル酸、γ−(アミノフェニル)ブチル酸、α−アミノイソブチル酸、シトルリン、ε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、β−アスパラギン酸、アミノ安息香酸、アミノフェニル酢酸、アミノフェニルブチル酸、γ−グルタミン酸、システイン(ACM)、ε−リシン、ε−リシン(A−Fmoc)、メチオニンスルホン、ノルロイシン、ノルバリン、オルニチン、d−オルニチン、p−ニトロ−フェニルアラニン、ヒドロキシプロリン、1,2,3,4,−テトラヒドロキノリン−3−カルボン酸、及びチオプロリンである。
【0049】
ポリアミノ酸は、ペプチド、または、エステル、無水物即ち無水物結合で結合し得る他の基からなる結合で結合した2またはそれ以上のアミノ酸である。特に、非天然ポリアミノ酸、及び非天然ヘテロポリアミノ酸、混合アミノ酸を挙げることができる。
【0050】
ペプチドは、ペプチド結合で結合した2以上のアミノ酸である。ペプチドは、2つのアミノ酸を持つジペプチドから数百のアミノ酸を持つポリペプチドまで変化できる。Walker,Chambers Biological Dictionary,Cambridge,England: Chambers Cambridge,1898,215 頁参照。特に、非天然ペプチド、特に混合アミノ酸の非天然ペプチドを挙げることができる。特にジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、及びペンタペプチド、中でも好ましいペプチドはジペプチド及びトリペプチドである。ペプチドは、ホモ及びヘテロペプチドを含み、天然アミノ酸、合成アミノ酸、及びそれらの組合せを含むことができる。
【0051】
〔プロテイノイド複合体形成摂動剤〕
プロテイノイドは、アミノ酸の合成ポリマーである。プロテイノイドは、好ましくはアミノ酸混合物から調製し、最も好ましくは熱縮合ポリマーである。これらのポリマーは、配向性またはランダムポリマーである。プロテイノイドは、線形、分岐、または環状プロテイノイドであり、ある種のプロテイノイドは、他の線形、分岐、または環状プロテイノイドの単位となる。
【0052】
特に、ジケトピペラジンを挙げることができる。ジケトピペラジンは、6員環化合物である。環は2つの窒素原子を含み、2つの炭素原子において2つの酸素原子で置換されている。好ましくは、カルボニル基は、環の1位と4位にある。
これらの環は、任意に、かつ頻繁にさらに置換されている。
【0053】
ジケトピペラジン環系は、アミノ酸またはアミノ酸誘導体の熱重合または縮合で生成される。(Gyore,J.; Ecet M.Proceedings Fourth ICTA(Thermal Analysis),1974,2,387-394(1974))。これらの6員環系は、線形ペプチドから、さらなる鎖成長に先だってまたは直接に主に分子内環形成によって生成する(Reddy, A.V.,Int.J.Peptide Protein Res.,40,472-476(1992); Mazurov,A.A.,Int.J.Peptide Protein Res.,42,14-19(1993))。
【0054】
ジケトピペラジンは、Katchlski,J.Amer.Chem.Soc.,68,879-880(1946)に記載されたようにアミノ酸エステルの環状二量化によって、ジペプチド誘導体の環化によって、または、Koppel,J.Org.Chem.,33(2),862-864(1968)に記載されたように、アミノ酸誘導体と高沸点溶媒の熱脱水によって形成される。
【0055】
ジケトピペラジンの典型的な合成においては、アミノ酸ベンジルエステルのCOOH基が第1段階で活性化されて保護エステルを形成する。アミンは脱保護されて第2段階の二量化を介して環化し、ジケトピペラジンのジエステルとなる。
最後に、COOH基が脱保護されたジケトピペラジンとなる。
【0056】
ジケトピペラジンは、典型的にはα−アミノ酸から形成される。好ましくは、ジケトピペラジンのα−アミノ酸は、グルタミン酸、アスパラギン酸、チロシン、フェニルアラニン、及びこれらの光学異性体からの誘導体である。
特に挙げられるジケトピペラジンは以下の式で表される。
【化2】
【0057】
ここで、R4、R5、R6及びR7は、独立に、水素、C1−C24アルキル、C1−C24アルケニル、フェニル、ナフチル、(C1−C10アルキル)フェニル、(C1−C10アルケニル)フェニル、(C1−C10アルキル)ナフチル、(C1−C10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1−C10アルキル)、フェニル(C1−C10アルケニル)、ナフチル(C1−C10アルキル)、及びナフチル(C1−C10アルケニル)であり、R4、R5、R6及びR7は独立かつ任意に、C1−C4アルキル、C1−C4アルケニル、C1−C4アルコキシ、−OH、−SH、及びCO2R8、またはこれらの組合せで置換されていてもよく、R8は水素、C1−C4アルキル、またはC1−C4アルケニルであり、R4、R5、R6、及びR7は独立かつ任意に、酸素、窒素、硫黄またはこれらの組合せで分断されていてもよい。
【0058】
フェニルまたはナフチル基は、任意に置換されていてもよい。好ましくは、置換基の例はC1−C6アルキル、C1−C6アルケニル、C1−C6アルコキシ、−OH、−SH、またはCO2R9であって、R9は水素、C1−C6アルキルまたはC1−C6アルケニルであるが、これらに限定されない。
【0059】
好ましくは、R6及びR7は独立に、水素、C1−C4アルキルまたはC1−C4アルケニルである。特に、好ましい複合体形成摂動剤であるジケトピペラジンを挙げることができる。これらのジケトピペラジンは、R4、R5、R6及びR7が水素である未置換のジケトピペラジン、及び、環の窒素原子の一方または両方で置換された、モノまたはジ−N−置換体を含む。特に、窒素原子の一方または両方がメチル基で置換された置換ジケトピペラジンを挙げることができる。
【0060】
特に、次の式で表されるジケトピペリジンを挙げることができる。
【化3】
ここで、R10及びR11は、独立に、水素、C1−C24アルキル、C1−C24アルケニル、フェニル、ナフチル、(C1−C10アルキル)フェニル、(C1−C10アルケニル)フェニル、(C1−C10アルキル)ナフチル、(C1−C10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1−C10アルキル)、フェニル(C1−C10アルケニル)、ナフチル(C1−C10アルキル)、及びナフチル(C1−C10アルケニル)であるが、R10とR11の両方が同時に水素とはならず、R10及びR11は独立かつ任意に、C1−C4アルキル、C1−C4アルケニル、C1−C4アルコキシ、−OH、−SH、及びCO2R12、またはこれらの組合せで置換されていてもよく、R12は水素、C1−C4アルキル、またはC1−C4アルケニルであり、R10及びR11は独立かつ任意に、酸素、窒素、硫黄またはこれらの組合せで分断されていてもよい。
【0061】
フェニルまたはナフチル基は、任意に置換されていてもよい。好ましくは、置換基の例はC1−C6アルキル、C1−C6アルケニル、C1−C6アルコキシ、−OH、−SH、またはCO2R13であって、R13は水素、C1−C6アルキルまたはC1−C6アルケニルであるが、これらに限定されない。R10とR11の一方が水素であるとき、ジケチピペラジンはモノ−炭素−(C)−置換である。R10もR11も水素でないときは、ジケトピペラジンはジ−炭素−(C)−置換である。
【0062】
好ましくは、R10、R11、またはR10とR11の両方が、少なくとも1つの官能基を含み、この官能基は分子の特性反応を負う非炭化水素部分である。単純な官能基はヘテロ原子であり、ハロゲン、酸素、硫黄、窒素等を含むがこれらに限られず、炭素に単結合または多重結合で結合している。他の官能基は、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミン基、置換アミン基等を含むがこれらに限定されない。
【0063】
好ましいジケトピペラジンは、環の1または2の炭素が官能基で置換され、少なくとも1つのカルボキシル基を含むものである。
【0064】
〔アミノ酸/ジケトピペラジン複合体形成摂動剤〕
ジケトピパレジンは、付加的なアミノ酸と重合して少なくとも1つのアミノ酸、そのエステルまたはアミド、及び好ましくは互いに共有結合した少なくとも1つのジケトピペラジンを含む。
【0065】
ジケトピペラジンが付加的アミノ酸と重合するとき、1以上のR基は少なくとも1つの官能基を含み、官能基は分子の特性反応を負う非炭化水素部分である。
【0066】
単純な官能基はヘテロ原子であり、ハロゲン、酸素、硫黄、窒素等を含むがこれらに限られず、アルキル基の炭素に単結合または多重結合で結合している。他の官能基は、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミン基、置換アミン基等を含むがこれらに限定されない。
【0067】
本発明のアミノ酸/ジケトピペラジン複合体形成摂動剤の好ましい成分であるジケトピペラジンを挙げることができる。このような好ましいジケトピペラジンは、環の1または2の炭素が官能基で置換され、少なくとも1つのカルボキシル基を含むものである。
【0068】
最も好ましいのは、アミノ酸/ジケトピペラジン複合体形成摂動剤のジケトピペラジンが、環化してジケトピペラジンを形成するL−グルタミン酸及びL−アスパラギン酸のような反応性アミノ酸から調製される。
【0069】
ジケトピペラジンは、ビス−カルボン酸プラットホームを生成し、それは他のアミノ酸とさらに縮合して摂動剤を形成する。典型的には、ジケトピペラジンは、1以上のアミノ酸と、ジケトピペラジンのR基の官能基を介して反応して共有結合する。これらの独特な系は、ジケトピペラジンのキラル成分によって付与されるシス−幾何異性体によって(LAnnom,H.K.,Int.J.Peptide Protein Res.,28,67-78(1986))、末端アミノ酸の構造を系統的に変換する機会を提供するが、その配向は非環状模倣物に比較して固定される(Fusaoka,Int.J.Peptide Protein Res.,34,104-110(1989))。Lee,B.H.,J.Org.Chem.,49,2418-2423(1984); Buyle,R.Helv.Chim.Acta,49,1425,1429(1966)も参照。糖業者に知られた他の重合方法を、それ自体、アミノ酸/ジケトピペラジン重合にも使用できる。
【0070】
アミノ酸/ジケトピペラジン摂動剤は、上記のように、同一または異なる1以上のアミノ酸、並びに同一または異なるジケトピペラジンを含む。
【0071】
これらのアミノ酸/ジケトピペラジン摂動剤のエステル及びアミド誘導体も本発明では、有用である。
【0072】
〔修飾アミノ酸複合体形成摂動剤〕
修飾したアミノ酸、ポリアミノ酸、またはペプチドは、アシル化またはスルホン化され、アミノ酸アミド及びスルホンアミドを含む。
【0073】
〔アシル化アミノ酸複合体形成摂動剤〕
特に以下の式出表されるアシル化アミノ酸を挙げることができる。
【化4】
ここで、Arは置換または非置換フェニルまたはナフチルであり、
【化5】
ここで、R15は、C1−C24アルキル、C1−C24アルケニル、フェニル、ナフチル、(C1−C10アルキル)フェニル、(C1−C10アルケニル)フェニル、(C1−C10アルキル)ナフチル、(C1−C10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1−C10アルキル)、フェニル(C1−C10アルケニル)、ナフチル(C1−C10アルキル)、及びナフチル(C1−C10アルケニル)であり、R15は任意に、C1−C4アルキル、C1−C4アルケニル、C1−C4アルコキシ、−OH、−SH、及びCO2R5、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロ環アルキル、アルカリール、ヘテロアリール、ヘテロアルカリール、またはこれらの組合せで置換されていてもよく、
R17は水素、C1−C4アルキル、またはC1−C4アルケニルであり、
R15は任意に、酸素、窒素、硫黄またはこれらの組合せで分断されていてもよく、そして、
R16は、水素、C1−C4アルキル、またはC1−C4アルケニルである。
【0074】
特に、下記の式で表されるものを挙げることができる。
【化6】
ここで、R18は(i)C3−C10シクロアルキルであり、任意にC1−C7アルキル、C2−C7アルケニル、C1−C7アルコキシ、ヒドロキシ、フェニル、フェノキシ、またはCOR21で置換されていてもよく、R1は水素、C1−C4アルキル、またはC2−C4アルケニルであるか、または、
(ii)C3−C10シクロアルキルで置換されたC1−C6アルキルであり、R20は、C1−C24アルキル、C1−C24アルケニル、C3−C10シクロアルキル、C3−C10シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、(C1−C10アルキル)フェニル、(C2−C10アルケニル)フェニル、(C1−C10アルキル)ナフチル、(C2−C10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1−C10アルキル)、フェニル(C2−C10アルケニル)、ナフチル(C1−C10アルキル)、またはナフチル(C2−C10アルケニル)であり、
R20は任意に、C1−C4アルキル、C1−C4アルケニル、C1−C4アルコキシ、−OH、−SH、及びCO2R22、C3−C10シクロアルキル、C3−C10シクロアルケニル、3−10の環原子を有するヘテロ環であって、ヘテロ原子の1以上がN、S、Oまたはこれらの組合せ、アリール(C1−C10アルキル)アリール、アリール(C1−C10アルキル)またはこれらの組合せで置換されていてもよく、R20は任意に、酸素、窒素、硫黄またはこれらの組合せで分断されていてもよく、R22は水素、C1−C4アルキル、またはC1−C4アルケニルである。
【0075】
いくつかの好ましいアミノ酸は、サリチロールフェニルアラニン及び以下の式で表される化合物を含む。
【0076】
【化7】
【0077】
【化8】
【0078】
【化9】
【0079】
【化10】
【0080】
【化11】
【0081】
【化12】
【0082】
【化13】
【0083】
【化14】
【0084】
【化15】
【0085】
【化16】
【0086】
【化17】
【0087】
【化18】
【0088】
【化19】
【0089】
特に、以下の式で表される化合物を挙げることができる。
【化20】
【0090】
ここで、Aは、Tyr、Leu、Arg、またはCitであり、
任意に、AがTyr、Arg、TrpまたはCitであるとき、Aは2以上の官能基でアシル化されている。
【0091】
好ましい化合物は、AがTyrであるもの、AがTyrかつ2官能基でアシル化されたもの、AがTrp、AがTrpかつ2官能基でアシル化されたもの、AがCitであるもの、AがCitかつ2官能基でアシル化されたものである。
【0092】
以下の式で表される化合物を特に挙げることができる。
【化21】
ここで、AはArgまたはLeuであり、AがArgであるとき、Aは任意に2以上の官能基でアシル化されており、
【化22】
ここで、AはLeuまたはフェニルグリシンであり、
【化23】
ここで、Aはフェニルグリシンであり、そして、
【化24】
ここで、Aはフェニルグリシンである。
【0093】
アシル化アミノ酸は、単一アミノ酸、2以上のアミノ酸の混合物、またはアミノ酸エステルとアミノ酸に存在するフリーアミノ部位と反応してアミドを形成するアミン修飾剤から調製される。
【0094】
好ましくは、アシル化アミノ酸を調製するために有用なアシル化剤の例は、
【化25】
で表される酸塩化物アシル化剤を含むがこれらに限定されない。ここで、R23は、調製される修飾アミノ酸に適当な基であり、例えば、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、または芳香族、特にメチル、エチル、シクロヘキシル、シクロフェニル、フェニル、またはベンジルであるがこれらに限定されず、Xは脱離基である。典型的な脱離基は、塩化物、臭化物及びヨウ化物などのハロゲンであるがこれらに限定されない。
【0095】
アシル化剤の例は、塩化アセチル、塩化プロピル、塩化シクロヘキサノイル、塩化シクロペンタノイル及び塩化シクロヘプタノイル、塩化ベンゾイル、塩化ヒプリル等に限られないハロゲン化アシル、並びに、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水シクロヘキサン酸、無水安息香酸、無水ヒプリル酸等の無水物を含む。好ましいアシル化剤は、塩化ベンゾイル、塩化ヒプリル、塩化アセチル、塩化シクロヘキサノイル、塩化シクロペンタノイル、及び塩化シクロヘプタノイルを含む。
【0096】
アミン基も、アミノ酸、特にフェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシン等の親水性アミノ酸のカルボジイミド誘導体を用いたカルボン酸との反応によって修飾することができる。さらなる例は、ジシクロヘキシルカルボジイミド等を含む。
【0097】
アミノ酸が多官能性であるとき、即ち、−OH、NH2または−SH基を1以上有するとき、その1以上の官能基をアシル化して、例えば、エステル、アミド、またはチオエーテル結合を形成してもよい。
【0098】
例えば、多数アシル化されたアミノ酸の調製において、アミノ酸は、例えば水酸化ナトリウムまたはカリウム等の金属水酸化物のアルカリ溶液に溶解し、アシル化剤を添加する。反応時間は約1時間から約4時間であり、好ましくは約2から2.5時間である。混合物の温度は、一般的には約5℃から約70℃、好ましくは約10℃から約50℃に維持する。アミノ酸のアミノ基1当量当たりに用いるアルカリの量は、通常は約1.25molから約3mol、好ましくはNH2基1当量当たり約1.5molから2.25molである。反応溶液のpHは、通常は、約pH8から約pH13、好ましくは約pH10から約pH12である。アミノ酸の量に応じて用いるアミノ修飾剤の量は、アミノ酸のフリーNH2基もモル数に基づく。一般に、アミノ修飾剤は、アミノ酸の全フリーNH2基の1モル当量当たり、約0.5から約2.5モル当量、好ましくは約0.75から約1.25モル当量である。
【0099】
修飾アミノ酸形成反応は、濃塩酸等の適当な酸で混合物のpHを約2から約3まで調製することによって停止する。混合物は室温で分離し、上方の透明層と下方のオフホワイト沈殿物を生成する。上層を廃棄し、濾過及びデカンテーションによって修飾アミノ酸を回収する。残った修飾アミノ酸は、次いで水と混合する。不溶性物質を濾過で取り除き、濾過物を真空乾燥する。修飾アミノ酸の収率は、一般的に約30%から60%であり、通常は約45%である。本発明は、例えばジアシル化、トリアシル化といった多数アシル化されたアミノ酸も考慮する。
【0100】
アミノ酸エステルまたはアミドが出発物質である場合、ジメチルホルムアミドまたはピリジンなどの適当な溶媒に溶解し、約5℃から約70℃、好ましくは約25℃の温度で、約7から約24時間の間、アミノ修飾剤と反応させる。アミノ酸エステルに対して用いるアミノ修飾剤の量は、アミノ酸について上気したのと同様である。
【0101】
その後、反応溶媒を負圧で除去し、任意に、修飾アミノ酸を適当なアルカリで加水分解してエステルまたはアミド官能性を除去してもよい。例えば、1Nの水酸化ナトリウムを用い、約50℃から約80℃で、好ましくは約70℃で、エステル基が加水分解されたフリーなカルボキシル基を有する修飾アミノ酸が生成されるのに充分な時間処理する。加水分解混合物は、次いで室温に冷却して、例えば25%塩酸水溶液でpHが約2から約2.5となるまで酸性化する。修飾アミノ酸、溶液から沈降し、濾過、デカンテーションなどの従来の手段で回収する。
【0102】
修飾アミノ酸は、酸沈降、再結晶、または固体カラム支持体上での分離によって精製してもよい。分離は、酢酸/ブタノール/水を移動相として用いたシリカゲル、アルミナ等の適当なカラム支持体上、トリフルオロ酢酸/アセトニトリル混合物を移動相とする反転相カラム支持体、及び水を移動相とするイオン交換クロマトグラフィーで行うことができる。修飾アミノ酸は、メタノール、ブタノールまたはイソプロパノールなどの低級アルコール抽出で無機塩を除去して精製してもよい。
【0103】
修飾アミノ酸は、一般にアルカリ水溶液(pH>9.0)に可溶であり、エタノール、n−ブタノール及びトルエン/エタノールの1:1(v/v)溶液に一部溶解し、中性の水に不溶である。アミノ酸誘導体の例えばナトリウム塩等のアルカリ金属塩は、一般に約pH6−8の水に可溶である。
【0104】
ポリアミノ酸またはペプチドにおいて、1以上のアミノ酸を修飾(アシル化)してもよい。修飾ポリアミノ酸及びペプチドは、1以上のアシル化アミノ酸を含んでよい。線状ポリアミノ酸及びペプチドは、一般的にはただ1つのアシル化アミノ酸を含むが、他のポリアミノ酸及びペプチドのコンフィギュレーションは、1以上のアシル化アミノ酸を含む。ポリアミノ酸及びペプチドは、アシル化アミノ酸と重合可能であり、重合の後アシル化してもよい。
【0105】
特に次の化合物を挙げることができる。
【化26】
【0106】
〔スルホン化アミノ酸複合体形成摂動剤〕
スルホン化修飾アミノ酸、ポリアミノ酸、及びペプチドは、少なくとも1つのアミン基を、少なくとも1つのフリーなアミン基と反応するスルホン化剤でスルホン化して修飾する。
【0107】
特に、以下の式の化合物を挙げることができる。
【化27】
Ar−Y−(R24)n−OH LVここで、Aは置換または非置換のフェニルまたはナフチルであり、
【化28】
ここで、R25は、C1−C24アルキル、C1−C24アルケニル、フェニル、ナフチル、(C1−C10アルキル)フェニル、(C1−C10アルケニル)フェニル、(C1−C10アルキル)ナフチル、(C1−C10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1−C10アルキル)、フェニル(C1−C10アルケニル)、ナフチル(C1−C10アルキル)、及びナフチル(C1−C10アルケニル)であり、
R25は任意に、C1−C4アルキル、C1−C4アルケニル、C1−C4アルコキシ、−OH、−SH、及びCO2R27、またはこれらの組合せで置換されていてもよく、
R27は水素、C1−C4アルキル、またはC1−C4アルケニルであり、
R25は任意に、酸素、窒素、硫黄またはこれらの組合せで分断されていてもよく、そして、
R26は、水素、C1−C4アルキル、またはC1−C4アルケニルである。
【0108】
好ましくは、スルホン化アミノ酸を調製するのに有用なスルホン化剤の例は、式R28−SO2−Xを有するスルホン化剤であり、R28はアルキル、アルケニル、シクロアルキルまたは芳香族に限られない調製される修飾アミノ酸に適当な基であり、Xは上述のような脱離基であるが、これらに限定されない。スルホン化剤の1つの例は塩化ベンゼンスルホニルである。
【0109】
修飾ポリアミノ酸及びペプチドは、、1以上のスルホン化アミノ酸を有する。
線状ポリアミノ酸及びペプチドは、一般的にはただ1つのスルホン化アミノ酸を含むが、他のポリアミノ酸及びペプチドのコンフィギュレーションは、1以上のスルホン化アミノ酸を含む。ポリアミノ酸及びペプチドは、スルホン化アミノ酸と重合可能であり、重合の後スルホン化してもよい。
【0110】
〔修飾アミノ酸誘導体複合体形成摂動剤〕
修飾アミノ酸、ポリアミノ酸、またはペプチド誘導体は、少なくとも1つのアルデヒドまたはケトンに変換したアシル末端を有し、少なくとも1つのフリーなアミン基が、存在する少なくとも1つのフリーなアミン基と反応するアシル化剤でアシル化されたアミノ酸、ポリアミノ酸、またはペプチドである。
【0111】
アミノ酸、ポリアミノ酸、ペプチド誘導体は、アミノ酸エステルまたはペプチドを適当な還元剤で還元することにより容易に調製される。例えば、アミノ酸、ポリアミノ酸、またはペプチドの無水物は、R.Chen,Biochemistry,1979,18, 921-926 に記載されているように調製できる。アミノ酸、ポリアミノ酸、またはペプチドのケトンは、Organic Synthesis,Col.Vol.IV,Wiley,(1963),5頁に記載された方法によって調製できる。アシル化については既に述べた。
【0112】
例えば、誘導体は、単一のアミノ酸、ポリアミノ酸またはペプチド誘導体、または2以上のアミノ酸、ポリアミノ酸またはペプチド誘導体の混合物を、アシル化剤または誘導体に存在するアミノ部分と反応してアミドを形成するアミン修飾剤と反応させて調製される。アミノ酸、ポリアミノ酸、またはペプチドは、修飾してから誘導してもよく、誘導してから修飾しても良く、修飾と誘導を同時にしてもよい。当業者に知られた望まない副反応を避けるために保護基を用いてもよい。
【0113】
修飾ポリアミノ酸またはペプチド誘導体では、1以上のアミノ酸が誘導体化(アルデヒドまたはケトン)及び/または修飾(アシル化)されてもよいが、少なくとも1つの誘導体及び少なくとも1つの修飾がなければならない。
【0114】
特に、修飾アミノ酸誘導体、N−シクロヘキサノイル−Phe−アルデヒド、N−アセチル−Phe−アルデヒド、N−アセチル−Tyr−ケトン、N−アセチル−Lys−ケトン及びN−アセチル−Leu−ケトン、及びN−シクロヘキサノイルフェニル−アラニン−アルデヒドを挙げることができる。
【0115】
〔カルボン酸複合体形成摂動剤〕
種々のカルボン酸及びコレラのカルボン酸の塩が、複合体形成摂動剤として使用できる。これらのカルボン酸は以下の式で表される。
【化29】
ここで、R29は、C1−C24アルキル、C2−C24アルケニル、C3−C10シクロアルキル、C3−C10シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、(C1−C10アルキル)フェニル、(C2−C10アルケニル)フェニル、(C1−C10アルキル)ナフチル、(C2−C10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1−C10アルキル)、フェニル(C2−C10アルケニル)、ナフチル(C1−C10アルキル)、及びナフチル(C2−C10アルケニル)であり、R29は任意に、C1−C10アルキル、C2−C10アルケニル、C1−C4アルコキシ、−OH、−SH、及びCO2R30、C3−C10シクロアルキル、C3−C10シクロアルケニル、3−10の環原子を持つヘテロ環アルキルであってヘテロ原子がN、O、S、またはこれらの組合せであるもの、アリール、(C1−C10アルキル)アリール、アリール(C1−C10)アルキル、またはこれらの組合せで置換されていてもよく、R29は任意に、酸素、窒素、硫黄またはこれらの組合せで分断されていてもよく、そして、R30は、水素、C1−C4アルキル、またはC2−C4アルケニルである。
【0116】
好ましいカルボン酸は、シクロヘキサンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘプタンカルボン酸、ヘキサン酸、3−シクロヘキサンプロピオン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸、1,2−シクロヘキサン時カルボン酸、1,3−シクロヘキサン時カルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1−アダマンタンカルボン酸、フェニルプロピオン酸、アジピン酸、シクロヘキサンペンタン酸、シクロヘキサンブタン酸、ペンチルシクロヘキサン酸。2−シクロペンタンヘキサン酸、シクロヘキサンペンタン酸、ヘキサンジオイック酸、シクロヘキサンブタン酸、及び(4−メチルフェニル)シクロヘキサン酢酸である。
【0117】
〔複合体形成摂動剤の他の例〕
ここで記載する超分子複合体を形成できる全ての複合体形成摂動剤が本発明の範囲に入り、複合体形成摂動剤の他の例は、2−カルボキシメチル−フェニルアラニン−ロイシン;2−ベンジルケイヒ酸、アクチノニン、フェニルスルホニルアミノフェニルブタン酸を含むが、これらに限定されない。
【化30】
【0118】
〔模倣物〕
本発明の範囲内にある模倣物は、元のものと構造的及び/または機能的に等価な構造体である。超分子複合体及び活性薬の可逆的に送達可能な中間状態の構造的及び/または化学機能的模倣物は、適当な化学的及び/または構造的性質を有する非−ペプチド模倣物が調製できる場合は、ペプチドである必要はない。しかし、好ましい模倣物はペプチドであり、超分子または中間状態とは異なる一次構造を有するが、超分子複合体または中間状態と同じ二次構造及び三次構造を有する。模倣物は、天然状態または中間状態の活性薬または超分子複合体より生物学的活性は小さいが、模倣物は、例えば経口送達の可能性の向上といった天然の状態が有しない他の重要な性質を具備する。
【0119】
このような模倣物を調製する方法は、例えば以下の文献に記載されている。
Yamazaki,Chirality,3: 268-276(1991); Wiley,Peptidomimetics Derivered From Natural Products,Medicinal Research Reviews,Vol.13,No.3,327-384(1993),Gurrath,Eur.J.Biochem,210,991-921(1992),Yamazaki,Int.J.Peptide Protein Res.,37,364-381(1991),Bach,Int.J.Peptide Protein Res.,38,314-323(1991),Clark,J.Med.Chem.32,2026-2038(1989),Portoghese,L.Med.Chem.,34,(6)1715-1720(1991),Zhou,J.Immunol.,149,(5),1763-1769(1992,9,1),Holzman,J.Protein Chem.,10,(5),553-563(1991),Masler,Arch.Insect Biochem.and Physiol.,22,87-111,(1993),Saragovi,Biotechnology,10,(1992,6),Olmsteel,J.Med.Chem.,36(1),179-180(1993),Malin,Peptides,14,47-51(1993),及び Kouns,Blood,80(10),2539-2537(1992),Tanaka,Biophys.Chem.,50,48-61(1994),DeGrado,Science,243,(1989,2,3),Regan,Science,241,976-978(1988,8,19),Matouscek,Nature,340,120126(1989,7,13),Parker,Peptide Research,4(6),347-354(1991),Parker,Peptide Research,4(6),355-363(1991),Federov,J.Mol.Biol.,225,927-931(1992),Ptitsyn,Biopolymers,22,15-25(1983),Ptitsyn,Protein Engineering,2(6),443-447(1989)。
【0120】
例えば、タンパク質構造は構成アミノ酸の分子間−及び分子内−相互作用によって決定される。αヘリックスにおいて、ヘリックスの第1及び第4のアミノ酸は、非共有結合で互いに相互作用する。このパターンは、最初の4個及び最後の4個のアミノ酸を除く全てのヘリックスを通じて繰り返される。さらに、アミノ酸の側鎖は、互いに相互作用する。例えば、フェニルアラニンのフェニル側鎖は、そのフェニルアラニンがヘリックス中に存在するときには溶媒に曝されないであろう。
【0121】
このフェニルアラニンの相互作用がヘリックスの安定性に寄与するのであれば、フェニルアラニンをアラニンに置換することはヘリックスを乱して、タンパク質のコンフォメーションを変化させる。
【0122】
従って、最初に、どのアミノ酸の側鎖が溶媒に曝され、そしてそれにより生来の状態の安定化に寄与することから除外されるかを、例えばスキャンニング突然変異誘発法によって決定することによって、模倣体を作り出すことができる。それらと同じ格好でアミノ酸置換基を有する突然変異体を作り出し、置換されたアミノ酸が生来に近いものよりもより中間体に近いタンパク質コンフォメーションを付与するようにすることができる。適切な構造が合成されたことの確認は、スペクトル法及びその他の分析法によってもたらされる。
【0123】
〔送達組成物〕
上述の超分子複合体を含む送達組成物は、典型的には摂動剤を活性薬に混合して調製される。成分は、投与前に調製でき、投与の直前にも調製できる。
【0124】
本発明の送達組成物は、1以上の酵素阻害剤を含んでもよい。このような酵素阻害剤はアクチノニンまたはその誘導体を含むがそれらに限定されない。これらの化合物は以下の構造を有する。
【化31】
【化32】
【0125】
これらの化合物の誘導体は、U.S.Patant No.5,206,384 に開示されている。アクチノニン誘導体は次の構造を有する。
【化33】
ここで、R31は、カルボキシアミド、ヒドロキシアミノカルボニル及びアルコキシカルボニル基から選択されるスルホキシメチルまたはカルボキシまたは置換カルボキシ基であり、R32はヒドロキシ、アルコキシ、ヒドロキシアミノ、またはスルホキシアミノ基である。他の酵素阻害剤は、アプロチニン(Trasylol)及びボーマンーバーク阻害剤を含むが、これらに限定されない。
【0126】
本発明の送達組成物は、1以上の賦形剤、希釈剤、崩壊剤、潤滑剤、柔軟剤、着色剤、または投与溶媒(dosing vehicle)を含んでもよい。好ましい投与単位は、経口投与量単位である。最も好ましい投与形態単位は、錠剤、カプセル、または液体であるが、これらに限定されない。投与量単位は、生物学的、製薬的、または治療的に有効量の活性薬を含有し、多数回投与形態単位で、合計が投与されるようにしてもよい。投与形態は、この分野での従来方法によって調製できる。
【0127】
本発明は、生物学的活性薬を、トリ等の動物、霊長類、特にヒトなどの哺乳類、及び昆虫に投与するのに有効である。このシステムは、活性薬が標的領域(活性薬が送達されるべき領域)に到達するまでに出会う環境、投与される動物の身体の条件によって破壊または活性低下するような化学的及び生物学的活性薬の送達に特に有利である。特に、本発明は、特に通常は経口送達不可能な活性薬の経口投与に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0128】
〔好ましい実施態様の説明〕
以下の実施例は本発明を例示するが、何ら限定はしない。全ての部及び比率は、特に断らない限り重量%である。
【0129】
[実施例1] α-インターフェロン未変性ゲル
未変性勾配ゲル(Pharmacia)に、647μg/mlのα-インターフェロン(Intron-A-Schering Plough)および増化した量(10−500mg/ml)の摂動剤(perturbant)(ベンゼンスルホニルクロリドで修飾されたL-バリン、L-ロイシン、L-フェニルアラニン、L−リシンおよびL-アルギニンの混合物)(バリン−7.4%、ロイシン−16.5%、フェニルアラニン−40.3%、リシン−16.2%およびアルギニン19.6%)とを流した。充填用6/4コーム(comb)を用いて、ゲルに4μlの材料を充填した。
【0130】
結果は、図1に示されている。
レーン1=高分子量マーカー(Bio-Rad)−1:20希釈w/dH2O−(5μl->100μl)。
レーン2=α-インターフェロンA(647μg/ml)対照5μl+5μlブロモフェノールブルー(BPB)−(1.29μg充填)。
レーン3=α-インターフェロン+摂動剤(10mg/ml)−50μlα-インターフェロン+50μlBPB=100μl(1.29μg充填)。
レーン4=α-インターフェロン+摂動剤(50mg/ml)−50μlα-インターフェロン+50μlBPB=100μl(1.29μg充填)。
レーン5=α-インターフェロン+摂動剤(100mg/ml)−50μlα-インターフェロン+50μlBPB=100μl(1.29μg充填)。
レーン6=α-インターフェロン+摂動剤(500mg/ml)−5μlα-インターフェロン+5μlBPB=10μl(1.29μg充填)。
【0131】
[実施例1A] α-インターフェロン未変性勾配ゲル
摂動剤を、3000分子量遮断フィルターを通して分画された、グルタミン酸、アスパラギン酸、チロシンおよびフェニルアラニン(Glu−Asp−Tye−Phe)の温度凝縮産物に置換して実施例1の方法を行った。
【0132】
結果は図2に示されている。
サンプル
レーン1=高分子量マーカー(Bio-Rad)。
レーン2=α-インターフェロンA(647μg/ml)-5μl+5μlBPB 対照。
レーン3=α-インターフェロン+摂動剤(10mg/ml)−50μl+50μlBPB=100μl。
レーン4=α-インターフェロン+摂動剤-50μl+50μlBPB=100μl。
レーン5=α-インターフェロン+摂動剤(100mg/ml)−50μlイントロンA+50μlBPB=100μl。
レーン6=α-インターフェロン+摂動剤(500mg/ml)−5μlイントロンA+50μlBPB=100μl。
【0133】
実施例1および1Aは、α-インターフェロンのみ(図1および2のレーン2)が、適切な分子量(約19000ダルトン)にバンドを提示したことを表している。固定された濃度のα-インターフェロンに対して、添加された摂動剤の量が各レーン毎に増加するにつれ、α-インターフェロンは、高いと言うよりは、より低い分子量へと移動する。実施例1の摂動剤に見られる変化は、実施例1Aの摂動剤に見られるものより明らかである。これは、α-インターフェロンの構造が二つの異なる摂動剤によって変化したことを示している。これは、もし構造が変化していなかったら、活性剤と摂動剤の複合体としてより高い分子量へとシフトするからである。
【0134】
[実施例2]α-インターフェロンと摂動剤のラットへの経口投与
オスのSprague-Dawleyラット(平均体重は約250mg)を、寝具のない金網の上で夜通し絶食させた。投与する前に、皮下にケタミン/トラジン(thorazine)の組み合わせを注入して動物を麻酔した。実施例1に基づいて調製した組成物の投与溶液を、500μg/kgで、投与溶液を含む1ccのシリンジに取り付けられた10−12cmのゴム製カテーテルを介して経口栄養摂取的(via oral gavage)に投与した。血液サンプルは、所望の時間に尾の静脈から採取した。血清を調製し、アッセイするまで−70℃に凍結させた。血清サンプルをELISAでアッセイした(Biosource International,Camarillo,CA,Cytoscreen Immunoassay KitTM,Catalog #ASY-05 for human IFN-α)。
【0135】
結果は図3に示されている。
【0136】
[実施例2A]α-インターフェロンと摂動剤のラットへの経口投与
実施例1Aに基づいて調製した組成物の78μg/kgの投与溶液に置換して、実施例2の方法を行った。結果は図3に示されている。
【0137】
[比較例2*]α-インターフェロンのラットへの経口投与
摂動剤を含まない100μg/kgのα-インターフェロンを実施例2の方法に基づいて投与した。
結果は、図3に示されている。
【0138】
[実施例3]サケカルシトニンおよび摂動剤のラットへの経口投与
実施例1の摂動剤を蒸留水で戻し、HClもしくはNaOHでpHを7.2−8.0に調節した。サケカルシトニン(sCt(salmon calcitonin))をクエン酸ストック溶液(0.085N)に溶かし、摂動剤溶液と組み合わせて最終的な投与溶液を得た。摂動剤とSCtの終濃度は、それぞれ400mg/mlと5μg/mlであった。
【0139】
結果は以下の表1に示されている。
【0140】
体重が100−150gの24時間絶食したオスのSprague-Dawleyラットを、ケタミンで麻酔した。経口栄養摂取的に、800mg/kgの摂動剤と10μg/kgのsCtのビヒクルの投与溶液を投与した。投与溶液を10cmのゴム製カテーテルを用いて投与した。投与から1時間後に、ラットに、1.5mg/kgのトラジンと44mg/kgのケタミンを筋肉注射した。投与から1、2、3および4時間後に、ラットの尾の動脈から血液サンプルを採取し、シグマ診断キット(Catalog #587-A,Sigma Chemical Co,St.Louis,MO)を用いて血清カルシウム濃度を調べた。結果は図4に示されている。
【0141】
[実施例3A]
サケカルシトニンおよび摂動剤のラットへの経口投与 摂動剤として塩化シクロヘキサノイルで修飾されたL-チロシンに置換して、実施例3の方法を行った。
結果は図4に示されている。
【0142】
[比較例3* ]
摂動剤を含まないサケカルシトニン(10μg/kg)を、実施例3の方法に基づいてラットに投与した。
結果は図4に示されている。
【0143】
[実施例4]等温下の滴定熱量測定
2.4mMの実施例1の摂動剤と0.3mMのsCtの投与組成物を調製し、等温下の滴定熱量測定(isothermal titration calorimetry)をpH6.5とpH4.5で行った。pH6.5のバッファーは30mMHepes−30mMNaClであり、pH4.5のバッファーは30mM酢酸ナトリウム−30mMNaClであった。
全ての実験は、滴下シリンジ中の8.0mM摂動剤と熱量計セル中の1.0mMカルシトニンを用いて30℃で行った。全ての実験において、摂動剤の15x10μlの増加量を、滴下と滴下の間に2分間の平衡化を行いながら、10秒ずつ添加した。
結果は、滴下用シリンジに摂動剤(8mM)を入れ、当量の増量をpH4.5バッファー(sCt含まず)に添加した実験と、摂動剤を滴下用シリンジに入れ、10μlの増量をpH6.5バッファー(sCt含まず)に添加した実験で確認された。滴定曲線はこれらの実験からは得られず、この結果は、摂動剤の混合および/または希釈による熱は無視してよいことを示した。それゆえ、実験的等温式は、バックグラウンドを引くことによって補正されなかった。
【0144】
結果は以下の表1に示されている。
【0145】
[実施例4A]
実施例1Aの摂動剤を置換して、実施例4の方法を行った。結果は、摂動剤を滴下用シリンジに入れ、当量の増量をpH4.5バッファー(sCt含まず)に添加した実験で確認された。
実施例1Aの摂動剤を置換して、実施例4の方法を行った。結果は、摂動剤を滴下用シリンジに入れ、当量の増量をpH4.5バッファー(sCt含まず)に添加した実験で確認された。
結果は、以下の表1に示されている。
【0146】
【表1】
1 熱量測定実験は、本質的に、You, J.L., Scarsdale, J.N., とHarris, R. B., J. Prot. Chem. 10: 301-311, 1991; You, Junling, Page, Jimmy D., Scarsdale, J. Neel, Colman, Robert W., とHarris, R. B., Peptides 14: 867-876, 1993; Tyler-Cross, R., Sobel, M., Soler, D.F., とHarris, R. B., Arch. Biochem. Biophys. 306: 528-533, 1993; Tyler-Cross, R., Sobel, M., Marques, D., とHarris, R. B., Protein Science 3: 620-627, 1994. に詳説されているようにして行った。
【0147】
[実施例5]α-インターフェロンのGuHCl変性
pH7.2の20mMリン酸ナトリウムバッファー中の9.1mg/mlのα-インターフェロン(Schering Plough Corp.)のストック溶液を調製した。リン酸ナトリウムバッファーと10Mグアニジンヒドロクロリド(GuHCl)(Shigma Chemical Co.-St.Louis,MO)ストック溶液でα-インターフェロンを希釈することによって、種々の濃度のGuHClで200μg/ml濃度のα-インターフェロンとなるようにサンプルを調製した。測定の前に室温で約30分間インキュベーションすることによって、希釈サンプルを平衡化した。
蛍光の測定は、日立F−4500を用いて25℃で行った。タンパク質トリプトファン蛍光は、298nmの励起波長と343nmの発光波長で観察された。
ANS(1−アニリノナフタレン−8−スルホナート)蛍光は、355nmの励起波長と530nmの発光波長で観察された。全ての蛍光測定において、5nm励起および発光の両方のために5nmのスペクトルバンドパス(spectral bandpass)を選択した。
結果は図5に示されている。
【0148】
[実施例6]α-インターフェロン形状におけるGuHClの濃度効果
GuHClの5Mストック溶液を、20mMリン酸ナトリウム、pH7.2バッファーを用いて調製した。希釈後、ストック溶液のpHをチェックし、濃塩酸で調節した。最終的な溶液の濃度を調べるために、Yasuhiko NozakiによるMethod in Enzymology,Vol.6,第43頁に記載された屈折率を用いた。
α-インターフェロンストック(9.1mg/ml)を十分な量のGuHClと混合して、以下の表1Aの濃度を得た。
【0149】
【表2】
【0150】
示差走査熱量測定法(DSC)を行い、その結果は図6に示されている。
【0151】
[実施例7]内在性トリプトファン蛍光で測定されるイントロンAのpH滴定
pH7.2の20mMリン酸ナトリウムバッファー(Schering Plough Corp.)中に9.1mg/mlのα-インターフェロンのストック溶液を調製した。以下のバッファー:pH2および12のグリシン、pH3、4、5、7のリン酸ナトリウムおよびpH8のホウ酸を用いて種々のpH値で緩衝化された溶液中に200μg/mlの濃度までα-インターフェロンを希釈することによりサンプルを調製した。これらのバッファーを、Gerald D.Fasman,1990により編集されたPractical Handbook of Biochemistry and Molecular Biologyに記載されている通りに調製した。希釈サンプルを、測定前に室温で約30分間インキュベートすることによって平衡化した。
蛍光を実施例5の方法に基づいて測定した。結果は図7に示されている。
【0152】
[実施例8] ANS蛍光によって測定されたインシュリンのpH滴定
1mlの脱イオン水に2mgのインシュリンを溶解することによって、ストック溶液を調製した。10mlの脱イオン水に10mgを溶かして1−アニリノナフタレン−8−スルホナート(ANS)ストック溶液を調製した。以下のバッファー:pH2および12のグリシン、pH3、4、5、7のリン酸ナトリウムおよびpH8のホウ酸を用いて種々のpH値で緩衝化された溶液中に200μg/mlの濃度までインシュリンを希釈することによりサンプルを調製した。これらのバッファーを、Gerald D.Fasman,1990により編集されたPractical Handbook of Biochemistry and Molecular Biologyに記載されている通りに調製した。最終的なANS濃度は90μg/mlであった。希釈サンプルを、測定前に室温で約30分間インキュベートすることによって平衡化した。
蛍光を実施例5の方法に基づいて測定した。結果は図8に示されている。
【0153】
[実施例9] pH2および7.2におけるα-インターフェロンの円偏光二色性スペクトルの可逆性
α-インターフェロンの円偏光二色性スペクトルをpH7.2で引き起こした。次いで、溶液のpHをpH2に再調節し、サンプルを再度スキャンした。次いで、サンプル溶液を7.2に再調節して、再度スキャンした。
α-インターフェロンの濃度は9.2μMすなわち0.17848mg/mlであった([IFN]ストック=9.1mg/ml)。使用したバッファーは、pH7.2の20mMリン酸ナトリウムと、pH2.0の20mMグリシンであった。
pH7.2への転換により、天然構造が完全に回復し、中間状態の可逆性を示した。天然の状態と中間の状態との間のエネルギー差が小さいと思われる。
結果は図9Aと9Bに示されている。
【0154】
[実施例10] 7.2におけるα-インターフェロンの円偏光二色性スペクトル −pH依存性
種々のpHにおけるα-インターフェロンの規則的な二次構造の程度を、遠UVレンジにおける円偏光二色性(CD)測定により調べた。インターフェロンストックの大きな希釈ファクター(〜50倍)により、サンプルを適切なpHにした。α-インターフェロンの濃度は9.2μMすなわち0.17848mg/mlであった([IFN]ストック=9.1mg/ml)。使用したバッファーは、pH6.0および7.2の20mMリン酸ナトリウム;pH3.0、4.0、4.5、5.0そして5.5のNaAc;並びに、pH2.0の20mMグリシンであった。
【0155】
二次構造の内容を、CD曲線を4つの主要構造部:すなわちα-ヘリックス、β-シート、ターン、およびランダムコイルに分けるいくつかの適切なプログラムを用いて評価した。これらのプログラムの二つには、分析のためのCD装置が備えられている。第一のプログラムは7つの対照タンパク質:すなわち、ミオグロビン、リゾザイム、パパイン、チトクロムC、ヘモグロビン、リオヌクレアーゼAおよびキモトリプシンを用いている。第二のプログラムは、Yang.REF参照ファイルを用いている。
【0156】
第三のプログラムCCAFASTは、コンベックス・コンストレイント・アルゴリズム(Convex Constraint Algorithm)を用いており、“コンベックス・コンストレイント・アルゴリズムを用いたタンパク質の円偏光二色性スペクトル分析:実践ガイド(Analysis of Circular Dichroism Spectrum of Proteins Using the Convex Constraint Algorithm: A Practical Guide)”(A.Perczel,K.ParkとG.D.Fasman(1992)Anal.Biochem.203:83-93)。に記載されている。
【0157】
pHボリューム(2.0−7.2)の範囲中の遠UVスキャンのデコンボリューションは、pH3.5における二次構造の顕著な圧縮を示す。近UVスキャンは、3次構造充填の崩壊を示唆し、遠UVスキャンは、このpHにおいてまだ重要な二次構造があることを示唆する。
【0158】
結果は図10に示されている。
【0159】
[実施例11] インシュリンと濃度を増加したGuHClのDSC
DSCを、50mMリン酸バッファー、pH7.5中の6mg/mlインシュリン(分子量が6000と仮定すれば0.83mM)を用いて行った。各サーモグラムは、0.6Mグアニジン−リン酸バッファー溶液のバックグラウンドを引くことによって補正した。
インシュリンを50mMリン酸バッファー、pH7.5中に濃縮ストック溶液として新鮮に調製し、適切な分注量をバッファーに希釈し、2ミクロンPTFEフィルターで濾過し、少なくとも20分間脱気した。
スキャニング熱量測定(scanning calorimetry)を、50mMリン酸バッファー、pH7.51ミリリットル当たり5mg0.83mMブタインシュリンを用いて行った。全てのサーモグラムは、1℃/分のアップスケールモードで操作された(90℃まで)DA2データ獲得システムを備えたMicrocal MC-2スキャニング熱量測定計で行われ、データポイントは20分毎に集められた。全てのスキャンは、活性剤に観察されたトランジションより少なくとも20度低いところから開始された。全てのサーモグラムは、ベースラインを引いて補正され、高分子の濃度が正常化された。Johns Hopkins Biocalorimetry Centerの方法に基づき、例えばRamsayら.Biochemistry(1990)29: 8677-8693; Schonら.Biochemistry(1989)28: 5019-5024(1990)29: 781-788を参照。DSCデータ分析ソフトウェアは、熱誘導高分子融解プロファイルの統計力学的デコンボリューションに基づいている。
GuHClの構造に与える効果は、各溶液を、5Mストック溶液から0.5−2Mの範囲の濃度に希釈された変性剤を含有する、リン酸バッファー、pH7.5に調製したDSC実験で評価された。
結果は以下の表2に示されている。
【0160】
【表3】
【0161】
[実施例12] インシュリンのDSCスペクトルに対するイオン強度の効果
6mg/mlのインシュリン(50mMリン酸バッファー中に0.83mM、pH7.5、0.25、0.5もしくは1.0MのNaClを含む)を含有するサンプルを用いた。サーモグラムを実施例11の方法に従って行い、上述したように0.5MのNaCl−リン酸バッファーブランクを差し引くことによって補正した。
イオン強度の増加が構造に与える効果を、NaClを0.25−3Mの範囲の濃度で含むように各溶液を調製したDSC実験で評価した。
結果は、以下の表3に示されている。
【0162】
【表4】
【0163】
[実施例12A] rhGhのDSCスペクトルに与えるイオン強度の効果
インシュリンに代えて、0.5もしくは1.0MのNaClを含む50mMのリン酸バッファー、pH7.5中の5mg/mlの組換えヒト成長ホルモン(rhGh)(HGHのM22128に基づいて225μM)を用いて実施例11の方法を行った。サーモグラムは、0.5MNaCl−リン酸バッファーブランクを差し引くことによって補正された。
結果は以下の表4に示されている。
【0164】
【表5】
【0165】
[実施例13] rhGHのDSCスペクトルに対するpHの影響
5mg/mlのrhGhをバッファーに溶解した(分子量を20000と仮定すれば50mMリン酸バッファー中に0.17mM)。溶液のpHを所望の値に調節し、全ての曲線を、ベースラインを差し引いて補正した。
pH値が2.0〜6.0の範囲のリン酸バッファーに各溶液を調製した実施例11の方法に基づくDSCによって、構造に対するpHの効果を評価した。
結果を以下の表5に示す。
【0166】
【表6】
【0167】
[実施例14] rhGhのDSCスペクトルに与えるGuHClの影響
最初のスキャンをGuHClの非存在下で10mg/mlで行った(分子量を20000と仮定して0.33mM)。次いで、rhGhの濃度を、種々の濃度のGuHClを含む50mMリン酸バッファー、pH7.5中に5mg/ml(0.17mM)となるまで下げた。サーモグラムを、0.5Mのグアニジン−リン酸バッファー溶液のバックグラウンドを差し引くことによって補正した。サーモグラムを0.5MのNaCl−リン酸バッファーブランクを差し引くことによって補正した。スキャンを、実施例11の方法に従って行った。
結果を以下の表6に示す。
【0168】
【表7】
【0169】
[実施例15] α-インターフェロンのコンホメーションのpH依存性
α-インターフェロンストック(9.1mg/ml)を0.6mg/mlの濃度までバッファーで希釈した。サンプルをバッファー(バッファーに対するα-インターフェロンの体積比は1:4000)で夜通し透析した。吸光計数が与えられていないので、使用したサンプルの濃度を、透析前後のサンプルの吸収スペクトルを比較することによって決定した。それぞれのpHに対して、既知の濃度の未透析のα-インターフェロンの吸収を280nmで測定した。透析後、タンパク質の欠失、希釈等を説明するために再度吸収を読み取った。バッファーの状態とα-インターフェロンの濃度は以下の通りである。
pH3.0:バッファー − 20mM NaAc。 [IFN]=0.50mg/ml;
pH4.1:バッファー − 20mM NaAc。 [IFN]=0.53mg/ml;
pH5.0:バッファー − 20mM NaAc。 [IFN]=0.37mg/ml;
pH6.0:バッファー − 20mM リン酸ナトリウム。 [IFN]=0.37mg/ml;
pH7.2:バッファー − 20mM リン酸ナトリウム。 [IFN]=0.
48mg/ml。
【0170】
実施例11の方法に基づいてDSCスキャンを行った。室温であらゆるpHに対して、澄んだ透明なα-インターフェロン溶液が得られたが、温度スキャン後、pH5.0と6.0において沈殿の顕著な兆候が見られた。
結果を以下の表7に示す。
【0171】
【表8】
【0172】
[実施例16] α-インターフェロンのコンホメーションに与えるGuHClの濃度の影響
GuHCl/α-インターフェロンサンプルを、実施例6の方法に基づいて調製した。DSCスキャンを、実施例11の方法に基づいて行った。
結果を以下の表8に示す。
【0173】
【表9】
【0174】
実施例5−16は、イオン強度、グアニジンヒドロクロリド濃度、およびpHが、活性剤のTmに変化をもたらすことを示し、コンホメーションの変化を示唆する。これは、蛍光分光法によって確認された。可逆的中間体のコンホメーション状態は、模倣物(mimetics)を調製するための鋳型として用いることができる。
【0175】
[実施例17] α-インターフェロン中間体状態模倣物の調製
α-インターフェロンの中間体コンホメーション状態を調べた。中間体状態の2次構造および3次構造を備えたペプチド模倣物を調製した。
【0176】
[実施例18] インシュリン中間体状態模倣物の調製
α-インターフェロンをインシュリンに換えて実施例17の方法を行った。
【0177】
[実施例19] rhGh中間体状態模倣物(Intermediate State Mimetics)の調製
α-インターフェロンを組換えヒト成長ホルモンに換えて実施例17の方法を行った。
【0178】
[実施例20] α-インターフェロン模倣物のin vivo投与
実施例17の方法で調製した模倣物を実施例2の方法に基づいてラットに投与した。
【0179】
[実施例21] インシュリン模倣物のin vivo投与
実施例18の方法に基づいて調製した模倣物に換えて実施例20の方法を行った。
【0180】
[実施例22] rhGH模倣物のin vivo投与
実施例19の方法に基づいて調製した模倣物に換えて実施例19の方法を行った。
【0181】
[実施例24] 内在性トリプトファン蛍光によって測定されたα-インターフェロンの滴定
pH7.2における20mMリン酸ナトリウムバッファー中の9.1mg/mlα-インターフェロンのストック溶液を調製した。800mgの摂動剤(塩化シクロヘキサノイルでアシル化されたL-アルギニン)を2mlの20mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7)に溶かして、摂動剤のストック溶液を調製した。
α-インターフェロンを、リン酸ナトリウムバッファーと種々の摂動剤濃度の摂動剤ストック溶液で希釈することによってサンプルを調製した。希釈されたサンプルを、測定の前に室温で約30分間インキュベートすることによって平衡化させた。
α-インターフェロンの内在性トリプトファン残基の蛍光を、実施例5の方法に基づいて測定した。摂動剤は蛍光を含んでいなかった。
結果は実施例11に示されている。
【0182】
[実施例25] ラットへの摂動剤とα-インターフェロンのin vivo投与
α-インターフェロン(1mg/kg)と混合された実施例24の摂動剤(800mg/kg)を含む投与溶液を、実施例2の方法に基づいてラットに投与した。
結果は図12に示されている。
【0183】
[比較例25*]
実施例25の方法に基づいて、α-インターフェロン(1mg/kg)をラットに投与した。血清サンプルを、実施例25の方法に基づいて回収およびアッセイした。
結果は図12に示されている。
【0184】
[実施例26] α-インターフェロンと摂動剤の示差走査熱量測定法
摂動剤結合DSCをpH7.2の20mMリン酸ナトリウムバッファーを用いて行った。摂動剤ストック溶液を調製するために乾燥摂動剤を秤量した。α-インターフェロンストックをバッファーに希釈した。全体のセットに対して同じ活性濃度を備えるように、α-インターフェロン溶液は、実験の前に透析しなかった。
DSCサーモグラムを、0.64mg/mlの濃度のα-インターフェロンと5、10、25および100mg/mlの摂動剤濃度の摂動剤(>98%に精製されたフェニルスルホニル-パラ-アミノ安息香酸(スペクトルの作製の前に逆相クロマトグラフィーで調べた))を用いて引き起こした。DSCを、データの自動収集用のIBM PCに連結したDASM−4示差走査熱量測定計で行った。スキャン速度は、60℃/hであった。
結果は、以下の表9と実施例13に示されている。
【0185】
[比較例26*]α-インターフェロンの示差走査熱量測定法
実施例26の方法を、摂動剤を含まないα-インターフェロンに置き換えて行った。結果は以下の表9と実施例13示されている。
【0186】
【表10】
【0187】
摂動剤の添加濃度が0−100mg/mlの範囲をとるDSCスキャンは、濃度に依存して生じるα-インターフェロンの誘導されたコンホメーション変化を示す。100mg/mlの摂動剤では、サーモグラムが、α-インターフェロンCp対Tm曲線が平らな線であることを示唆した。100mg/mlの摂動剤で得られた平らなCp対Tm曲線は、α-インターフェロン分子内の疎水性残基が溶剤に曝されるようになったことを示唆する。摂動剤が、濃度に依存して、α-インターフェロンの構造を変化し得ることは明らかである。
【0188】
[実施例27]透析実験 − 摂動剤と複合体を形成する可逆性
9.1mg/mlの濃度のα-インターフェロンストック溶液を、α-インターフェロンが0.6mg/mlの濃度になるまでバッファーで希釈した。実施例26の方法に従ってDSCを行った。
結果は図14A示されている。
【0189】
α-インターフェロン(0.6mg/ml)と実施例26の摂動剤(100mg/ml)を溶液のCpに明らかな変化を示さずに混合した。次いで、この溶液を、リン酸バッファーで夜通し透析し、サーモグラムを行った。結果は図14Bに示されている。
【0190】
透析サンプルは、本質的に、摂動剤を添加する前と同じ様なTmとCp対Tm曲線の下側面積を備えていた。このことは、摂動剤がタンパク質にコンホメーション変化を誘導するだけでなく、この過程が可逆的ことを示した。希釈は、活性剤から摂動剤を解離させるに十分な推進力であった。
【0191】
[実施例28] 摂動剤とα-インターフェロンDSC
GuHClを実施例26の摂動剤に換えて実施例6の方法を行った。
結果は図15に示されている。
α-インターフェロンの平衡変性(equilibrium denaturation)のDSC実験は、分子の中間体コンホメーションの存在を示唆する。ΔH対Tmプロットは、各セットの実験条件におけるα-インターフェロンに占有された中間体コンホメーションのエネルギー学を示す。
【0192】
[実施例29] ラットへの摂動剤およびα-インターフェロンのin vivo投与 実施例4の摂動剤(800mg/kg)とα-インターフェロン(1mg/kg)の投与溶液を、実施例2に従ってラットに投与した。血清サンプルを収集し、実施例2の方法に従ってELISAでアッセイした。
結果は図16に示されている。
【0193】
[比較例29*]ラットへのα-インターフェロンのin vivo投与
摂動剤を含まないα-インターフェロン(1mg/kg)を、実施例29の方法に従ってラットに投与した。血清サンプルを収集し、実施例29の方法に従ってアッセイした。
結果は図16に示されている。
【0194】
図16は、摂動剤と混合した活性剤を動物に経口投与した場合に、α-インターフェロンの顕著な血清力価が全身的な循環において検出できたこと、およびα-インターフェロンが十分に活性を有することを示唆している。誘導されたα-インターフェロンが十分に活性を備えていたという確認データは、イントロンの天然コンホメーションに特異的なエピトープを認識し得るモノクローナル抗体を利用した商業的なELISAキットによって血清をアッセイしたこと、およびELISAによって測定された力価と関連したイントロンの力価を決定する細胞変性効果アッセイを用いて血清をさらにアッセイしたこと(データ示さず)を含んでいた。それゆえ、摂動剤を用いた場合の結果として生じたコンホメーション変化は可逆的な変化であった。
【0195】
[実施例30] α-インターフェロンにおける摂動剤濃度依存変化
摂動剤をシクロヘキサノイルフェニルグリシンに換えて、実施例26の方法を行った。
結果を以下の表10と図17に示す。
【0196】
【表11】
【0197】
シクロヘキサノイルフェニルグリシンは、濃度依存性のα-インターフェロンにおけるコンホメーション変化を誘導した。
【0198】
[実施例31] ラットへの摂動剤およびα-インターフェロンのin vivo投与
実施例30の摂動剤(800mg/kg)とα-インターフェロン1(mg/kg)を含む投与溶液を、実施例2の方法に基づいてラットに投与した。血清サンプルを回収して、実施例2の方法に従ってELISAによってアッセイした。
結果は図18に示されている。
【0199】
[比較例31*]ラットへの摂動剤およびα-インターフェロンのin vivo投与
摂動剤を含まないα-インターフェロン(1mg/kg)を、実施例2の方法に基づいてラットに投与した。血清サンプルを回収して、実施例2の方法に従ってELISAによってアッセイした。
結果は図18に示されている。
【0200】
[実施例32] 摂動剤およびα-インターフェロンDSC
実施例6の方法を、GuHClを実施例30の摂動剤に換えて行った。
結果は図19に示されている。
【0201】
△H対Tmプロットは、5および25mg/ml以下のシクロヘキサノイルフェニルグリシン摂動剤で安定なα-インターフェロンの平衡中間体コンホメーションの存在を示唆する。
【0202】
[実施例33] 摂動剤を含むα-インターフェロンの等温下の滴定熱量測定
α-インターフェロンと複合体を形成する摂動剤の等温下の滴定熱量測定を、二つの異なるpHで25℃で行った。用いたバッファーは、pH7.2では20mMリン酸ナトリウムであり、pH3.0では20mMNaAcであった。α-インターフェロン溶液を、適切なpHに達するように実験の前に透析した。乾燥摂動剤を秤量し、透析して希釈した。
ITCをMicroCal OMEGA滴定熱量測定計で行った(MicroCal Inc.-Northampton,MA)。データポイントを2秒ごとに収集したが、濾過はしなかった。1.3625mlセルに配されたα-インターフェロン溶液を、濃縮された摂動剤溶液で満たされた250μlのシリンジを用いて滴定した。ある量の滴定剤(titrant)を、55回までの注入で3−5分毎に注入した。
二つの溶液の混合熱を補正するための対照実験は、反応セルが活性剤を含まないバッファーで満たされていること以外は同様にして行われた。
データの分析は、Johns Hopkins University Biocalorimetry Centerで開発されたソフトウェアを用いて行われた。
pH7.2における滴定は、実施例30の摂動剤(50mg/ml=191.6mM(MW261))とα-インターフェロン(1.3mg/ml=0.067mM(MW19400))の2μlを53回注入することを含む。
結果は図20に示されている。
【0203】
曲線適応(curve fitting)は、多重独立部位(multiple independent sites)を示した。
n(1)=121.0354 n=#完成された摂動剤分子
△H(1)=58.5932cal/モル摂動剤
log10Ka(1)=2.524834 Ka=結合定数
x軸ユニットは、mM表示されたキャリアーの濃度である。
y軸ユニットは、カロリー表示された熱/注入を示す。
pH3では、複合が負のエンタルピーをもたらした。
【0204】
[比較例33*]摂動剤の等温下の滴定熱量測定
活性剤を含まない実施例30の摂動剤(50mg/ml=191.6mM)[IFN]=0mgの2μlを53回注入して行った。
実施例33と比較例33は、α-インターフェロンが正のエンタルピーを備え、結合定数(Kd 10-3M)を備えることを示している。
【0205】
[実施例34] α-インターフェロンと摂動剤複合体の等温下の滴定熱量測定
実施例30の摂動剤を実施例26の摂動剤に換えて、実施例33の方法を行った。
pH7.2における滴定は、摂動剤(50mg/ml=181mM(FW277))
とα-インターフェロン(2.31mg/ml=0.119mM(MW19400))の5μlを55回注入することを2回繰り返すことを含む。
結果は図21に示されている。
【0206】
曲線適応は、多重独立部位を示した。
n(1)=55.11848 n=#複合摂動剤分子
△H(1)=−114.587cal/モル摂動剤
log10Ka(1)=2.819748 Ka=結合定数
x軸ユニットは、mM表示されたキャリアーの濃度である。
y軸ユニットは、カロリー表示された熱/注入を示す。
【0207】
pH3では、α-インターフェロンに対する摂動剤の複合形成により、溶液から複合体が沈降した。この工程で生じた熱効果のために、複合パラメーターを測定することは不可能であった。
【0208】
[比較例34*]摂動剤の等温下の滴定熱量測定
活性剤を含まないpH7.2のリン酸ナトリウム20mMリン酸ナトリウム中の実施例26の摂動剤(50mg/ml=181mM)の5μlを55回注入して実施例34の方法を行った。
α-インターフェロンと複合した実施例26の摂動剤は、負のエンタルピーをもたらし、実施例30の摂動剤とα-インターフェロンとの結合定数と比較可能な結合定数をもたらした。
実施例33および34は、活性剤と摂動剤との複合がより強力になり、活性剤の中間状態が熱力学的により安定になれば、活性剤の生物利用能がより良好になることを示している。
それゆえ、活性剤と摂動剤に対して△H対Tm曲線をプロットすることによって、Tmの広範囲においてエンタルピーの変化をほとんどあるいは全く示さない摂動剤が、より好ましい摂動剤であろう。より優れた状態に中間状態を安定化する摂動剤が、より効率的な活性剤の送達をもたらすと考えられる。
【0209】
[実施例35] α-インターフェロンを用いた△H対Tmプロットに対する3種の摂動剤の効果の比較
0.5mg/mlのα-インターフェロンと(1)ベンゾイル=パラ-アミノフェニル酪酸(benzoyl para-amino phenylbutyric acid)、(2)実施例30の摂動剤、あるいは(3)実施例26の摂動剤とを混合したものを用いて、実施例26の方法に基づいてDSC実験を行った。
ベンゾイル=パラ-アミノフェニル酪酸は、バッファー状態ではほとんど溶けなかった。室温で溶液が透明を保つ最大濃度は〜8mg/mlであった。それゆえ、用いられた摂動剤の濃度は、2、4および6mg/mlであった。結果は図22および23に示されている。
図22の点線は、線最小自乗(the linear least squares)を示し、その回帰式(the regression equation)は図22の上に記載されている。
【数10】
図22および23は、ベンゾイル=パラ-アミノフェニル酪酸が、実施例30および26の摂動剤よりも容易にα-インターフェロンのコンホメーション変化を生じ得ること、並びに、このような変化は、実施例26の摂動剤よりも実施例30の摂動剤により容易にもたらされ得ることを示す。
【0210】
[実施例36]α-インターフェロンと複合形成の等温下の滴定熱量測定
摂動剤ベンゾイル=パラ-アミノフェニル酪酸(7.5mg/ml=24.59mM、(FW305))とα-インターフェロン(2.5mg/ml=0.129mM(MW19400))の5μlを40回注入して、実施例33の方法に基づいてITCを行った。
結果は図24に示されている。
曲線適応は、多重独立部位を示した。
n(1)=23.69578 n=#複合摂動剤分子
△H(1)=791.5726cal/モル摂動剤
log10Ka(1)=3.343261 Ka=結合定数
x軸は、mM表示されたキャリアーの濃度を示す。
y軸は、カロリー表示された熱/注入を示す。
【0211】
[比較例36*]
活性剤を含まない、pH7.2の20mMリン酸ナトリウムバッファー中の摂動剤ベンゾイル=パラ-アミノフェニル酪酸(7.5mg/ml=24.59mM)の5μlを40回注入して、実施例36の方法に基づいてITCを行った。
実施例35の摂動剤の見かけの解離定数は、pH7の実施例30の摂動剤(10-4M)より大きい。
それゆえ、ベンゾイル=パラ-アミノフェニル酪酸はα-インターフェロンとより強力に複合体を形成し、未変性の安定な可逆的中間体コンホメーション状態をより低い摂動剤濃度で誘導する。
【0212】
[実施例37−39] 種々の摂動剤とα-インターフェロンの比較によるin vivoの薬物動態学
実施例26の摂動剤(800mg/kg)(1)、実施例30の摂動剤(800mg/kg)(2)、もしくはベンゾイル-パラ-アミノフェニル酪酸(300mg/kg)(3)と1mg/kgのα-インターフェロンを含む投与溶液を、実施例2の方法に従ってラットに投与した。血清サンプルを収集し、実施例2の方法に従ってELISAでアッセイした。
結果は図25に示されている。
【0213】
[比較例37*] α-インターフェロンのin vivo薬物動態学
摂動剤を含まないα-インターフェロンを実施例37の方法に従ってラットに投与した。血清サンプルを収集して、実施例2の方法に従ってELISAでアッセイした。
結果を図25に示す。
【0214】
実施例35−39は、in vivoでの効能がin vitroモデルで正確に予想できたことを示している。
【0215】
[実施例40−42] 下垂体を切除したラットにおけるrhGhと種々の摂動剤の比較によるin vivo薬物動態学
rhGh(1mg/kg)と混合した摂動剤サリチロイル(salicyloyl)クロリド修飾L−フェニルアラニン(1.2g/kg)(40)、フェニルスルホニル=パラ-アミノ安息香酸(1.2g/kg)(41)、もしくは塩化シクロヘキサノイル修飾L−チロシン(1.2g/kg)(42)を含む投与溶液を実施例2の方法に従ってラットに投与した。
ラットは、Loughna,P.T.ら,Biochem.Biophys.Res.Comm.Jan.14,1994,198(1),97-102の方法に基づいて下垂体を切除したした。血清サンプルをELISA(Medix Biotech,Inc.,Foster City,CA,HGH Enzyme Immunoassay Kit)でアッセイした。
結果は図26に示されている。
【0216】
[実施例43−45] 種々の摂動剤を用いたpH7.5および4.0におけるrhGHの等温下の滴定熱量測定
種々の摂動剤と複合体を形成するrhGhの能力を、通常は30℃で平衡化してMicrocal Omega滴定装置を用いてITCで評価した。熱量計のサンプルセルを、pH7.5もしくは4.0の50mMリン酸バッファー中に調製された脱気したrhGH(通常は0.25mM)で満たした。摂動剤(塩化シクロヘキサノイル修飾L−チロシン(a)、サリチロイル修飾L−フェニルアラニン(b)、もしくはフェニルスルホニルパラアミノ安息香酸(c))を1mM(pH7.5用)と2.5mM(pH4.0用)に滴下シリンジに移した。20〜25回の10μlの注入を、注入の間隔を2分として、急速混合(400rpm)溶液に調製した。
熱量計サンプルセルに配された摂動剤の初濃度は、各摂動剤に対して200の式量を仮定した。各溶液のpHを、溶解した後にチェックしたが、pHの調節は必要なかった。全ての実験を30℃で行った。滴下シリンジに配されたrhGhの初濃度は、rhGhについて分子量20000と仮定した。各溶液のpHを溶解後にチェックしたが、pHの調節は必要なかった。
反応熱を、観察されたピークの積分によって決定した。混合および希釈の熱を補正するために、試験摂動剤もしくはrhGhの一定分量をバッファー溶液のみに添加して同じ条件下で対照実験も行った。放出された熱の合計量を、等温式を作製するために全体の摂動剤濃度に対してプロットした。等温式から、一セットの独立摂動剤複合部位を有する超分子複合体において複合した摂動剤について記載された結合等式に対して結合等温式を曲線適合させることによって、結合定数(KA,M)、エンタルピー変化(△H、kcal/mol)、エントロピー変化(△S(eu)、およびN、並びに複合体を形成した超分子複合体の当量当たりに複合した摂動剤分子の化学量論が決定された。製造者のソフトウェアに供給されている非線形最小自乗アルゴリズムを用いて、データをデコンボリュート(deconvoluted)した。
結果は以下の表11に示す。
【0217】
【表12】
【0218】
pH7.5における正の△S値は、このpHにおける複合体形成が構造変化を引き起こすことを示している。
【0219】
[実施例46および47] α-インターフェロンと摂動剤を用いたパンクレアチン阻害アッセイ
パンクレアチン活性のアッセイを、以下のようにして準備した:α-インターフェロンの0.1mlのストック溶液(9.1mg/ml、20mM NaH2PO4、pH7.2)(Schering-Plough Corp.)を、2.5mlの、pH7.0の5mMのNaH2PO4中のフェニルスルホニル−パラ−アミノ安息香酸摂動剤(46)もしくはシクロヘキサノイルフェニルグリシン摂動剤(47)(200mg/ml)に添加した。37℃で30および60分間インキュベーションし、0.1mlのUSPパンクレアチン(20mg/ml)(Sigma Chemical Co.)を添加した。その時点において、0.1mlの一定分量を取りだした。酵素反応を、プロテアーゼインヒビター(アプロチニン(Aprotinin)とBowman-Birkインヒビター(BBI)、各々2mg/ml)を添加して停止させ、完全なままのα-インターフェロンを定量するために5倍に希釈した。Butyl C-4カートリッジ(3.0x0.46cm、Rainin)を使用し、かつ220nmにおけるUV検出を組み合わせた0.1%TFA/水と0.1%TFA中の90%ACNとの間の勾配溶出を用いた逆相HPLCを用いて、α-インターフェロンを分離および定量した。0分におけるα-インターフェロンを、パンクレアチンの添加の前の一定分量から定量し、100%とした。
結果は図27に示されている。
【0220】
実施例46および47は、両方の超分子複合体が酵素分解に対抗したことを示す。しかしながら、さらなる試験においては、酵素インヒビターの能力と薬物送達能力との間に何の関係も示さなかった。
【0221】
[実施例48] pH5.0におけるヘパリンのDSC
pH5.0におけるヘパリンのDSCサーモグラムを、摂動剤としてpH、GuHCl、およびイオン強度を用いた実施例11の方法に基づいて行った。
サーモグラムをヘパリン.05M NaCl−リン酸バッファーブランクを引くことによって補正したが、各ブランクは、各NaCl濃度について使用しなかった。
結果は以下の表12−14と図28に示されている。
【0222】
【表13】
【0223】
【表14】
【0224】
【表15】
【0225】
これらのデータは、非タンパク質性活性剤が摂動剤に応じてコンホメーションを変化させ得ることを示している。
【0226】
[実施例49] ヘパリンと摂動剤のカラムクロマトグラフィー
以下の材料を用いた:
カラム: 10mmx30cm、低圧、ガラスカラム Pharmacia w/調節可能なベッドボリューム。使用したベッドボリュームは、0.8Mpaの圧力で22cmであった。
パッキング: リンカー分子を具備しないセファロース(Sepharose)CL−6Bに共有結合したヘパリン。
セファロース分画レンジ:10000−4000000。
ヘパリン密度は、Pharmacia Q.C.Departmentに従って2mg/ccであった。
【0227】
条件: 移動相はpH7.4の67mMリン酸バッファー。
流速は1.5ml/分アイソクラティック(isocratic)。
流動時間は45分。
サンプル検出は、Perkin Elmer屈折率検出装置を用いた。
【0228】
カラムが完全であることをプロタミンを注入し、かつ1時間以上の保持時間を観察することによって確認した。空いた容量を、水を注入し、溶出時間を測定することによって調べた。
【0229】
以下の表15の各摂動剤(5mg)を、1mlの移動相に個別に溶解し、カラムに注入した(100μl)。溶出時間を測定した。K’値を以下の式を用いて決定した:
【数11】
結果を、各摂動剤間、および図29における各in ivo性能で比較した。この図のK’値(遅延度)は、ヘパリン−セファロースカラムから得られたK’値からセファロースカラムから得られたK’値を差し引くことによって補正されている。
【0230】
【表16】
【0231】
[実施例50] ラットへのヘパリンの経口投与
実施例2の方法に従って、以下の表16の投与溶液をラットに投与した。血液を採取し、活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time)(APTT)をHenry,J.B.,Clinical Diagnosis and Management by Laboratory Methods,W.B.Saunders,1979の記載に従って行った。
結果は図29および30に示されている。
【0232】
図29は、モデルに予想されるように、ヘパリンへの結合が強くなればなるほど、APTTが上昇することを示している。このデータは、K’値が0.2以下では活性がほとんどないことを示唆している。K’値>0.2では、活性は顕著である。
このデータは、セファロースカラムそのものに対するヘパリンセファロースカラムの遅延と、APTTの上昇として測定されるin vivo活性の増大との間の関係を示唆している。特に、最も強力にヘパリンに結合するプロタミンは経口的な生物利用能を全く持たない(K’=3.68)。このことは、結合強度と解離能力を備えたコンホメーション変化とのバランスを取ることにより、薬物の生物学的活性の完全な補足を最適化することを示している。
【0233】
【表17】
【0234】
全ての特許、出願、試験方法、およびここに言及した刊行物は、参照としてここに援用する。
本願発明の多くの変更は、上記の詳細な開示を考慮して当業者に示唆されるであろう。例えば、経口薬剤送達は、血液に胃腸管のルーメンを横切ることを必要とする。これは、これらの解剖学上の区画を分けるいくつかの細胞性脂質二重層を横切る結果として起こる。
活性剤と摂動剤の複合体化および活性剤のコンホメーションの変化が、摂動剤もしくは活性剤のみのものとは異なる可溶性および空間におけるコンホメーション等の物理化学的特性を備えた超分子複合体を作製する。これは、血液脳関門、および目、膣、直腸等の膜等の別の膜を横切るこの特性の利点を得ることができることを示唆する。このような修飾の全ては、クレームの範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0235】
【図1】図1は、α−インターフェロン(IFN)及び修飾アミノ酸複合体形成摂動剤の天然の勾配ゲルを示す図である。
【図2】図2は、α−インターフェロン及び熱凝縮複合体形成摂動剤の天然の勾配ゲルを示す図である。
【図3】図3は、複合体形成摂動剤有りまたは無しでα−インターフェロンを経口投与した後の血清α−インターフェロンレベルを示すグラフである。
【図4】図4は、複合体形成摂動剤有りまたは無しでサケ(salmon)カルシトニンを経口投与したラットにおけるカルシウムレベルを示すグラフである。
【図5】図5は、α−インターフェロンの塩酸グアニジン(GuHCl)誘発変性を示すグラフである。
【図6】図6は、α−インターフェロンのコンフォメーションに対するGuHClの濃度効果を示すグラフである。
【図7】図7は、α−インターフェロンのpH変性を示すグラフである。
【図8】図8は、インシュリンのpH変性を示すグラフである。
【図9A】図9Aは、α−インターフェロンの円二色性スペクトルの可逆性を示すグラフである。
【図9B】図9Bは、α−インターフェロンの円二色性スペクトルの可逆性を示すグラフである。
【図10】図10は、α−インターフェロンの円二色性スペクトルを示すグラフである。
【図11】図11は、α−インターフェロンと複合体形成摂動剤の固有トリプトファン蛍光を示すグラフである。
【図12】図12は、複合体形成摂動剤有りまたは無しでα−インターフェロンを経口投与した後の血清α−インターフェロンレベルを示すグラフである。
【図13】図13は、α−インターフェロン及び複合体形成摂動剤の示差熱量分析を示すグラフである。
【図14A】図14A及び14Bは、複合体形成摂動剤による変形の可逆性を示すグラフである。
【図14B】図14A及び14Bは、複合体形成摂動剤による変形の可逆性を示すグラフである。
【図15】図15は、α−インターフェロンに対する複合体形成摂動剤の影響を示すグラフである。
【図16】図16は、複合体形成摂動剤有りまたは無しでα−インターフェロンを経口投与した後の血清α−インターフェロンレベルを示すグラフである。
【図17】図17は、α−インターフェロンのコンフィギュレーションに対する複合体形成摂動剤の濃度効果を示すグラフである。
【図18】図18は、複合体形成摂動剤有りまたは無しで経口投与した後の血清α−インターフェロンレベルを示すグラフである。
【図19】図19は、α−インターフェロンに対する複合体形成摂動剤の影響を示すグラフである。
【図20】図20は、α−インターフェロン及び複合体形成摂動剤の等温滴定熱量分析を示すグラフである。
【図21】図21は、α−インターフェロン及び複合体形成摂動剤の等温滴定熱量分析を示すグラフである。
【図22】図22は、α−インターフェロンに対する複合体形成摂動剤の影響を示すグラフである。
【図23】図23は、α−インターフェロンに対する複合体形成摂動剤の濃度効果を示すグラフである。
【図24】図24は、α−インターフェロン及び複合体形成摂動剤の等温滴定熱量分析を示すグラフである。
【図25】図25は、複合体形成摂動剤とともに経口投与した後の血清α−インターフェロンレベルを示すグラフである。
【図26】図26は、複合体形成摂動剤と混合した組み換えヒト成長ホルモンのインビボの薬物速度論を示すグラフである。
【図27】図27は、α−インターフェロン及び複合体形成摂動剤での膵臓阻害アッセイを示すグラフである。
【図28】図28は、pH5.0におけるヘパリンのDSCの影響を示すグラフである。
【図29】図29は、ヘパリンでのインビボ投与実験からのAPTTピーク値に対する発育不全の程度を示すグラフである。
【図30】図30は、複合体形成摂動剤有り及び無しでのヘパリンの経口投与の後のラットにおける凝固時間を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞膜または脂質二重層を通して生物学的活性薬を輸送する方法であって、
(a)天然のコンホメーション状態、変性コンホメーション状態、及び、コンホメーション的に天然及び変性状態の中間にあり天然状態に変換可能な中間コンホメーション状態で存在しうる生物学的活性薬を準備し、
(b)この生物学的活性薬を複合体形成摂動剤(complexing perturbant)に曝露して、該生物学的活性薬を可逆的に中間状態に変換させて輸送可能な超分子複合体(supramolecular complex)を形成し、 前記摂動剤は、約150から約600ダルトンの分子量を持ち、少なくとも1つの疎水性部位と少なくとも1つの親水性部位を有し、 前記超分子複合体は、前記生物学的活性薬に非−共有結合で複合体形成した摂動剤を含有し、 前記生物学的活性薬は摂動剤と相互作用した後は微小球を形成せず、
(c)前記膜または二重層を、前記超分子複合体に曝露して、前記生物学的活性薬を前記膜または二重層を通して輸送することからなる方法。
【請求項2】
(d)前記摂動剤を前記超分子複合体から除去して、前記生物学的活性薬を天然状態に変換することをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記工程(d)が、前記超分子複合体を希釈することからなる請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記中間状態が、約−20kcal/molから約20kcal/molの範囲のΔGを有する請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記生物学的活性薬が、ペプチド、ムコ多糖、炭水化物、脂質、殺虫殺そ剤、またはこれらの組合せからなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的活性薬が、ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、インターフェロン、インターロイキンII、インシュリン、ヘパリン、カルシトニン、エリスロポイエチン、心房性ナトリウム排泄増加因子(atrial naturetic factor)、抗原、モノクローナル抗体、ソマトスタチン、副腎皮質刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、オキシトシン、バソプレッシン、クロモリンナトリウム、バンコマイシン、デフェロキサミン(DFO)、またはこれらの組合せからなる群から選択される請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記摂動剤が、
(a)プロテイノイド;
(b)アシル化アミノ酸;
(c)アシル化ポリアミノ酸;
(d)スルホン化アミノ酸;
(e)スルホン化ポリアミノ酸;
(f)アミノ酸のアシル化アルデヒド;
(g)アミノ酸のアシル化ケトン;
(h)ポリアミノ酸のアシル化アルデヒド;
(i)ポリアミノ酸のアシル化ケトン;
(j)R−CO2Hの構造を有するカルボン酸であり、
式中、RはC1からC24のアルキル、C2からC24のアルケニル、C3からC10のシクロアルキル、C3からC10のシクロアルケニル、フェニル、ナフチル、(C1からC10アルキル)フェニル、(C2からC10アルケニル)フェニル、(C1からC10アルキル)ナフチル、(C2からC10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1からC10アルキル)、フェニル(C2からC10アルケニル)、ナフチル(C1からC10アルキル)、及びナフチル(C2からC10)アルケニルであり;
Rは、C1からC10のアルキル、C2からC10のアルケニル、C1からC4のアルコキシ、−OH、−SH、−CO2R1、C3からC10シクロアルキル、C3からC10のシクロアルケニル、3−10の環原子を有するヘテロ環であってヘテロ原子が1以上のN、O、Sまたはこれらの組合せであるヘテロ環、アリール、(C1からC10アルキル)アリール、アリール(C1からC10アルキル)、またはこれらの組合せで任意に置換されていてもよく、
Rは酸素、窒素、イオウ、またはこれらの組合せで中断されていてもよく、
R1は水素、C1からC4アルキル、またはC2からC4アルケニルである;
またはこれらの塩、
からなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項8】
経口投与可能な生物学的活性薬の調製方法であって、
(a)天然のコンホメーション状態、変性コンホメーション状態、及び、コンホメーション的に天然及び変性状態の中間にあり天然状態に変換可能な中間コンホメーション状態で存在しうる生物学的活性薬を準備し、そして、
(b)この生物学的活性薬を複合体形成摂動剤に曝露して、該生物学的活性薬を可逆的に中間状態に変換させて輸送可能な超分子複合体を形成し、
前記摂動剤は、約150から約600ダルトンの分子量を持ち、少なくとも1つの疎水性部位と少なくとも1つの親水性部位を有し、
前記超分子複合体は、前記生物学的活性薬に非−共有結合で複合体形成した摂動剤を含有し、
前記生物学的活性薬は摂動剤と相互作用した後は微小球を形成しない調製方法。
【請求項9】
前記中間状態が、約−20kcal/molから約20kcal/molの範囲のΔGを有する請求項8記載の調製方法。
【請求項10】
前記生物学的活性薬が、ペプチド、ムコ多糖、炭水化物、脂質、殺虫殺そ剤、またはこれらの組合せからなる群から選択される請求項8記載の調製方法。
【請求項11】
前記生物学的活性薬が、ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、インターフェロン、インターロイキンII、インシュリン、ヘパリン、カルシトニン、エリスロポイエチン、心房性ナトリウム排泄増加因子、抗原、モノクローナル抗体、ソマトスタチン、副腎皮質刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、オキシトシン、バソプレッシン、クロモリンナトリウム、バンコマイシン、デフェロキサミン(DFO)、またはこれらの組合せからなる群から選択される請求項10記載の調製方法。
【請求項12】
前記摂動剤が、
(a)プロテイノイド;
(b)アシル化アミノ酸;
(c)アシル化ポリアミノ酸;
(d)スルホン化アミノ酸;
(e)スルホン化ポリアミノ酸;
(f)アミノ酸のアシル化アルデヒド;
(g)アミノ酸のアシル化ケトン;
(h)ポリアミノ酸のアシル化アルデヒド;
(i)ポリアミノ酸のアシル化ケトン;
(j)R−CO2Hの構造を有するカルボン酸であり、
式中、RはC1からC24のアルキル、C2からC24のアルケニル、C3からC10のシクロアルキル、C3からC10のシクロアルケニル、フェニル、ナフチル、(C1からC10アルキル)フェニル、(C2からC10アルケニル)フェニル、(C1からC10アルキル)ナフチル、(C2からC10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1からC10アルキル)、フェニル(C2からC10アルケニル)、ナフチル(C1からC10アルキル)、及びナフチル(C2からC10)アルケニルであり;
Rは、C1からC10のアルキル、C2からC10のアルケニル、C1からC4のアルコキシ、−OH、−SH、−CO2R1、C3からC10シクロアルキル、C3からC10のシクロアルケニル、3−10の環原子を有するヘテロ環であってヘテロ原子が1以上のN、O、Sまたはこれらの組合せであるヘテロ環、アリール、(C1からC10アルキル)アリール、アリール(C1からC10アルキル)、またはこれらの組合せで任意に置換されていてもよく、
Rは酸素、窒素、イオウ、またはこれらの組合せで中断されていてもよく、
R1は水素、C1からC4アルキル、またはC2からC4アルケニル、またはこれらの塩である;
からなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項13】
経口送達用組成物であって、 (a)下記(b)と非共有結合で複合体形成した中間コンホメーション状態の生物学的活性薬、 (b)約150から約600ダルトンの分子量を持ち、少なくとも1つの疎水性部位と少なくとも1つの親水性部位を有する複合体形成摂動剤を含み、 前記中間コンホメーション状態は、天然のコンホメーション状態及び変性コンホメーション状態の中間にあり、前記天然状態に変換可能であって、前記組成物は微小球ではない経口送達用組成物。
【請求項14】
前記生物学的活性薬が、ペプチド、ムコ多糖、炭水化物、脂質、殺虫殺そ剤、またはこれらの組合せからなる群から選択される請求項13記載の経口送達用組成物。
【請求項15】
前記生物学的活性薬が、ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、インターフェロン、インターロイキンII、インシュリン、ヘパリン、カルシトニン、エリスロポイエチン、心房性ナトリウム排泄増加因子、抗原、モノクローナル抗体、ソマトスタチン、副腎皮質刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、オキシトシン、バソプレッシン、クロモリンナトリウム、バンコマイシン、デフェロキサミン(DFO)、またはこれらの組合せからなる群から選択される請求項14記載の経口送達用組成物。
【請求項16】
前記摂動剤が、
(a)プロテイノイド;
(b)アシル化アミノ酸;
(c)アシル化ポリアミノ酸;
(d)スルホン化アミノ酸;
(e)スルホン化ポリアミノ酸;
(f)アミノ酸のアシル化アルデヒド;
(g)アミノ酸のアシル化ケトン;
(h)ポリアミノ酸のアシル化アルデヒド;
(i)ポリアミノ酸のアシル化ケトン;
(j)R−CO2Hの構造を有するカルボン酸であり、
式中、RはC1からC24のアルキル、C2からC24のアルケニル、C3からC10のシクロアルキル、C3からC10のシクロアルケニル、フェニル、ナフチル、(C1からC10アルキル)フェニル、(C2からC10アルケニル)フェニル、(C1からC10アルキル)ナフチル、(C2からC10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1からC10アルキル)、フェニル(C2からC10アルケニル)、ナフチル(C1からC10アルキル)、及びナフチル(C2からC10)アルケニルであり;
Rは、C1からC10のアルキル、C2からC10のアルケニル、C1からC4のアルコキシ、−OH、−SH、−CO2R1、C3からC10シクロアルキル、C3からC10のシクロアルケニル、3−10の環原子を有するヘテロ環であってヘテロ原子が1以上のN、O、Sまたはこれらの組合せであるヘテロ環、アリール、(C1からC10アルキル)アリール、アリール(C1からC10アルキル)、またはこれらの組合せで任意に置換されていてもよく、
Rは酸素、窒素、イオウ、またはこれらの組合せで中断されていてもよく、
R1は水素、C1からC4アルキル、またはC2からC4アルケニル、またはこれらの塩である;
からなる群から選択される請求項13記載の経口送達用組成物。
【請求項17】
投与単位製剤であって、
(A) 請求項13記載の組成物、及び、
(B) (a)賦形剤 (b)希釈剤 (c)崩壊剤 (d)潤滑剤 (e)柔軟剤 (f)着色剤 (g)投与溶媒 (h)上記の組合せ
を含有する製剤。
【請求項18】
細胞膜または脂質二重層を通して生物学的活性薬を輸送可能であり、前記膜または二重層を通過した後に生物学的に活性となる薬剤を調製する方法であって、
(a)天然のコンホメーション状態、変性コンホメーション状態、及び、コンホメーション的に天然及び変性状態の中間にあり天然状態に変換可能な中間コンホメーション状態で存在しうる生物学的活性薬を準備し、
(b)この生物学的活性薬を複合体形成摂動剤に曝露して、該生物学的活性薬を可逆的に中間状態に変換させて輸送可能な超分子複合体を形成し、
前記摂動剤は、約150から約600ダルトンの分子量を持ち、少なくとも1つの疎水性部位と少なくとも1つの親水性部位を有し、
前記超分子複合体は、前記生物学的活性薬に非−共有結合で複合体形成した摂動剤を含有し、
前記生物学的活性薬は摂動剤と相互作用した後は微小球を形成せず、
(c)前記超分子複合体の模倣物(mimetic)を調製することからなる方法。
【請求項19】
前記生物学的活性薬がペプチドであり、前記模倣物がペプチド模倣物である請求項18記載の方法。
【請求項20】
細胞膜または脂質二重層を通して生物学的活性薬を輸送可能であり、前記膜または二重層を通過した後に生物学的に活性となる薬剤を調製する方法であって、
(a)天然のコンホメーション状態、変性コンホメーション状態、及び、コンホメーション的に天然及び変性状態の中間にあり天然状態に変換可能な中間コンホメーション状態で存在しうる生物学的活性薬を準備し、
(b)この生物学的活性薬を複合体形成摂動剤に曝露して、該生物学的活性薬を可逆的に中間状態に変換させ、
(c)前記中間状態の模倣物を調製することからなる方法。
【請求項21】
前記摂動剤が、pH変動剤、イオン強度変動剤、または塩酸グアニジンである請求項20記載の方法。
【請求項22】
請求項8記載の方法で調製した経口投与可能な生物学的活性薬の模倣物(mimetic)を含む経口送達組成物。
【請求項23】
天然のコンホメーション状態、変性コンホメーション状態、及び、コンホメーション的に天然及び変性状態の中間にあり天然状態に変換可能な中間コンホメーション状態を有するペプチド性生物学的活性薬の中間コンホメーション状態のペプチド模倣物を含有する経口送達組成物。
【請求項1】
細胞膜または脂質二重層を通して生物学的活性薬を輸送する方法であって、
(a)天然のコンホメーション状態、変性コンホメーション状態、及び、コンホメーション的に天然及び変性状態の中間にあり天然状態に変換可能な中間コンホメーション状態で存在しうる生物学的活性薬を準備し、
(b)この生物学的活性薬を複合体形成摂動剤(complexing perturbant)に曝露して、該生物学的活性薬を可逆的に中間状態に変換させて輸送可能な超分子複合体(supramolecular complex)を形成し、 前記摂動剤は、約150から約600ダルトンの分子量を持ち、少なくとも1つの疎水性部位と少なくとも1つの親水性部位を有し、 前記超分子複合体は、前記生物学的活性薬に非−共有結合で複合体形成した摂動剤を含有し、 前記生物学的活性薬は摂動剤と相互作用した後は微小球を形成せず、
(c)前記膜または二重層を、前記超分子複合体に曝露して、前記生物学的活性薬を前記膜または二重層を通して輸送することからなる方法。
【請求項2】
(d)前記摂動剤を前記超分子複合体から除去して、前記生物学的活性薬を天然状態に変換することをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記工程(d)が、前記超分子複合体を希釈することからなる請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記中間状態が、約−20kcal/molから約20kcal/molの範囲のΔGを有する請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記生物学的活性薬が、ペプチド、ムコ多糖、炭水化物、脂質、殺虫殺そ剤、またはこれらの組合せからなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的活性薬が、ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、インターフェロン、インターロイキンII、インシュリン、ヘパリン、カルシトニン、エリスロポイエチン、心房性ナトリウム排泄増加因子(atrial naturetic factor)、抗原、モノクローナル抗体、ソマトスタチン、副腎皮質刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、オキシトシン、バソプレッシン、クロモリンナトリウム、バンコマイシン、デフェロキサミン(DFO)、またはこれらの組合せからなる群から選択される請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記摂動剤が、
(a)プロテイノイド;
(b)アシル化アミノ酸;
(c)アシル化ポリアミノ酸;
(d)スルホン化アミノ酸;
(e)スルホン化ポリアミノ酸;
(f)アミノ酸のアシル化アルデヒド;
(g)アミノ酸のアシル化ケトン;
(h)ポリアミノ酸のアシル化アルデヒド;
(i)ポリアミノ酸のアシル化ケトン;
(j)R−CO2Hの構造を有するカルボン酸であり、
式中、RはC1からC24のアルキル、C2からC24のアルケニル、C3からC10のシクロアルキル、C3からC10のシクロアルケニル、フェニル、ナフチル、(C1からC10アルキル)フェニル、(C2からC10アルケニル)フェニル、(C1からC10アルキル)ナフチル、(C2からC10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1からC10アルキル)、フェニル(C2からC10アルケニル)、ナフチル(C1からC10アルキル)、及びナフチル(C2からC10)アルケニルであり;
Rは、C1からC10のアルキル、C2からC10のアルケニル、C1からC4のアルコキシ、−OH、−SH、−CO2R1、C3からC10シクロアルキル、C3からC10のシクロアルケニル、3−10の環原子を有するヘテロ環であってヘテロ原子が1以上のN、O、Sまたはこれらの組合せであるヘテロ環、アリール、(C1からC10アルキル)アリール、アリール(C1からC10アルキル)、またはこれらの組合せで任意に置換されていてもよく、
Rは酸素、窒素、イオウ、またはこれらの組合せで中断されていてもよく、
R1は水素、C1からC4アルキル、またはC2からC4アルケニルである;
またはこれらの塩、
からなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項8】
経口投与可能な生物学的活性薬の調製方法であって、
(a)天然のコンホメーション状態、変性コンホメーション状態、及び、コンホメーション的に天然及び変性状態の中間にあり天然状態に変換可能な中間コンホメーション状態で存在しうる生物学的活性薬を準備し、そして、
(b)この生物学的活性薬を複合体形成摂動剤に曝露して、該生物学的活性薬を可逆的に中間状態に変換させて輸送可能な超分子複合体を形成し、
前記摂動剤は、約150から約600ダルトンの分子量を持ち、少なくとも1つの疎水性部位と少なくとも1つの親水性部位を有し、
前記超分子複合体は、前記生物学的活性薬に非−共有結合で複合体形成した摂動剤を含有し、
前記生物学的活性薬は摂動剤と相互作用した後は微小球を形成しない調製方法。
【請求項9】
前記中間状態が、約−20kcal/molから約20kcal/molの範囲のΔGを有する請求項8記載の調製方法。
【請求項10】
前記生物学的活性薬が、ペプチド、ムコ多糖、炭水化物、脂質、殺虫殺そ剤、またはこれらの組合せからなる群から選択される請求項8記載の調製方法。
【請求項11】
前記生物学的活性薬が、ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、インターフェロン、インターロイキンII、インシュリン、ヘパリン、カルシトニン、エリスロポイエチン、心房性ナトリウム排泄増加因子、抗原、モノクローナル抗体、ソマトスタチン、副腎皮質刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、オキシトシン、バソプレッシン、クロモリンナトリウム、バンコマイシン、デフェロキサミン(DFO)、またはこれらの組合せからなる群から選択される請求項10記載の調製方法。
【請求項12】
前記摂動剤が、
(a)プロテイノイド;
(b)アシル化アミノ酸;
(c)アシル化ポリアミノ酸;
(d)スルホン化アミノ酸;
(e)スルホン化ポリアミノ酸;
(f)アミノ酸のアシル化アルデヒド;
(g)アミノ酸のアシル化ケトン;
(h)ポリアミノ酸のアシル化アルデヒド;
(i)ポリアミノ酸のアシル化ケトン;
(j)R−CO2Hの構造を有するカルボン酸であり、
式中、RはC1からC24のアルキル、C2からC24のアルケニル、C3からC10のシクロアルキル、C3からC10のシクロアルケニル、フェニル、ナフチル、(C1からC10アルキル)フェニル、(C2からC10アルケニル)フェニル、(C1からC10アルキル)ナフチル、(C2からC10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1からC10アルキル)、フェニル(C2からC10アルケニル)、ナフチル(C1からC10アルキル)、及びナフチル(C2からC10)アルケニルであり;
Rは、C1からC10のアルキル、C2からC10のアルケニル、C1からC4のアルコキシ、−OH、−SH、−CO2R1、C3からC10シクロアルキル、C3からC10のシクロアルケニル、3−10の環原子を有するヘテロ環であってヘテロ原子が1以上のN、O、Sまたはこれらの組合せであるヘテロ環、アリール、(C1からC10アルキル)アリール、アリール(C1からC10アルキル)、またはこれらの組合せで任意に置換されていてもよく、
Rは酸素、窒素、イオウ、またはこれらの組合せで中断されていてもよく、
R1は水素、C1からC4アルキル、またはC2からC4アルケニル、またはこれらの塩である;
からなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項13】
経口送達用組成物であって、 (a)下記(b)と非共有結合で複合体形成した中間コンホメーション状態の生物学的活性薬、 (b)約150から約600ダルトンの分子量を持ち、少なくとも1つの疎水性部位と少なくとも1つの親水性部位を有する複合体形成摂動剤を含み、 前記中間コンホメーション状態は、天然のコンホメーション状態及び変性コンホメーション状態の中間にあり、前記天然状態に変換可能であって、前記組成物は微小球ではない経口送達用組成物。
【請求項14】
前記生物学的活性薬が、ペプチド、ムコ多糖、炭水化物、脂質、殺虫殺そ剤、またはこれらの組合せからなる群から選択される請求項13記載の経口送達用組成物。
【請求項15】
前記生物学的活性薬が、ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、インターフェロン、インターロイキンII、インシュリン、ヘパリン、カルシトニン、エリスロポイエチン、心房性ナトリウム排泄増加因子、抗原、モノクローナル抗体、ソマトスタチン、副腎皮質刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、オキシトシン、バソプレッシン、クロモリンナトリウム、バンコマイシン、デフェロキサミン(DFO)、またはこれらの組合せからなる群から選択される請求項14記載の経口送達用組成物。
【請求項16】
前記摂動剤が、
(a)プロテイノイド;
(b)アシル化アミノ酸;
(c)アシル化ポリアミノ酸;
(d)スルホン化アミノ酸;
(e)スルホン化ポリアミノ酸;
(f)アミノ酸のアシル化アルデヒド;
(g)アミノ酸のアシル化ケトン;
(h)ポリアミノ酸のアシル化アルデヒド;
(i)ポリアミノ酸のアシル化ケトン;
(j)R−CO2Hの構造を有するカルボン酸であり、
式中、RはC1からC24のアルキル、C2からC24のアルケニル、C3からC10のシクロアルキル、C3からC10のシクロアルケニル、フェニル、ナフチル、(C1からC10アルキル)フェニル、(C2からC10アルケニル)フェニル、(C1からC10アルキル)ナフチル、(C2からC10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1からC10アルキル)、フェニル(C2からC10アルケニル)、ナフチル(C1からC10アルキル)、及びナフチル(C2からC10)アルケニルであり;
Rは、C1からC10のアルキル、C2からC10のアルケニル、C1からC4のアルコキシ、−OH、−SH、−CO2R1、C3からC10シクロアルキル、C3からC10のシクロアルケニル、3−10の環原子を有するヘテロ環であってヘテロ原子が1以上のN、O、Sまたはこれらの組合せであるヘテロ環、アリール、(C1からC10アルキル)アリール、アリール(C1からC10アルキル)、またはこれらの組合せで任意に置換されていてもよく、
Rは酸素、窒素、イオウ、またはこれらの組合せで中断されていてもよく、
R1は水素、C1からC4アルキル、またはC2からC4アルケニル、またはこれらの塩である;
からなる群から選択される請求項13記載の経口送達用組成物。
【請求項17】
投与単位製剤であって、
(A) 請求項13記載の組成物、及び、
(B) (a)賦形剤 (b)希釈剤 (c)崩壊剤 (d)潤滑剤 (e)柔軟剤 (f)着色剤 (g)投与溶媒 (h)上記の組合せ
を含有する製剤。
【請求項18】
細胞膜または脂質二重層を通して生物学的活性薬を輸送可能であり、前記膜または二重層を通過した後に生物学的に活性となる薬剤を調製する方法であって、
(a)天然のコンホメーション状態、変性コンホメーション状態、及び、コンホメーション的に天然及び変性状態の中間にあり天然状態に変換可能な中間コンホメーション状態で存在しうる生物学的活性薬を準備し、
(b)この生物学的活性薬を複合体形成摂動剤に曝露して、該生物学的活性薬を可逆的に中間状態に変換させて輸送可能な超分子複合体を形成し、
前記摂動剤は、約150から約600ダルトンの分子量を持ち、少なくとも1つの疎水性部位と少なくとも1つの親水性部位を有し、
前記超分子複合体は、前記生物学的活性薬に非−共有結合で複合体形成した摂動剤を含有し、
前記生物学的活性薬は摂動剤と相互作用した後は微小球を形成せず、
(c)前記超分子複合体の模倣物(mimetic)を調製することからなる方法。
【請求項19】
前記生物学的活性薬がペプチドであり、前記模倣物がペプチド模倣物である請求項18記載の方法。
【請求項20】
細胞膜または脂質二重層を通して生物学的活性薬を輸送可能であり、前記膜または二重層を通過した後に生物学的に活性となる薬剤を調製する方法であって、
(a)天然のコンホメーション状態、変性コンホメーション状態、及び、コンホメーション的に天然及び変性状態の中間にあり天然状態に変換可能な中間コンホメーション状態で存在しうる生物学的活性薬を準備し、
(b)この生物学的活性薬を複合体形成摂動剤に曝露して、該生物学的活性薬を可逆的に中間状態に変換させ、
(c)前記中間状態の模倣物を調製することからなる方法。
【請求項21】
前記摂動剤が、pH変動剤、イオン強度変動剤、または塩酸グアニジンである請求項20記載の方法。
【請求項22】
請求項8記載の方法で調製した経口投与可能な生物学的活性薬の模倣物(mimetic)を含む経口送達組成物。
【請求項23】
天然のコンホメーション状態、変性コンホメーション状態、及び、コンホメーション的に天然及び変性状態の中間にあり天然状態に変換可能な中間コンホメーション状態を有するペプチド性生物学的活性薬の中間コンホメーション状態のペプチド模倣物を含有する経口送達組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2007−153907(P2007−153907A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29752(P2007−29752)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【分割の表示】特願平8−514159の分割
【原出願日】平成7年10月24日(1995.10.24)
【出願人】(503179908)エミスフェアー・テクノロジーズ・インク (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【分割の表示】特願平8−514159の分割
【原出願日】平成7年10月24日(1995.10.24)
【出願人】(503179908)エミスフェアー・テクノロジーズ・インク (3)
【Fターム(参考)】
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