説明

活性香気成分を保護し、この持続性を増大するための活性香気成分製剤方法

本発明は、活性香気成分を保護し、前記活性成分の蒸発過程を遅らせるために、活性香気成分を製剤する新規な方法に関する。この方法は、前記活性成分を捕捉するために、pH5超を有し、疎水性基を含有するアクリル増粘エマルションを使用することを含む。本発明はまた、このように製剤化された活性成分の種々の実施形態:前記活性成分と増粘エマルションの水中混合物、酸性化後の前記活性成分と前記ポリマーの固体粒子の分散体、および水を除去した後に得られる乾燥固体粒子に関する。本発明はさらに、活性成分を保護し、この蒸発速度を遅らせるための、これらの種々の製剤の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚、または布地(例えば洗濯用粉末の場合)もしくは壁(例えば塗料の場合)などの他の支持体に適用されたときに活性香気成分を保護するため、およびこれらの適用後に前記活性成分の進行性放出を制御するための活性香気成分を製剤する新規な方法に関する。この方法は、pH5超で疎水性基を含有する水溶性アクリルエマルションを使用することに依存する。これらのエマルションは、活性香気成分の放出速度を低下させながら、これらの環境からの保護を促進するために、活性香気成分がカプセル化によって捕捉されることを可能にし、これにより香料の有効性を増大させる(残留現象)。
【背景技術】
【0002】
活性香気成分:本発明において、この用語は、検出可能な嗅覚活性を有する任意の物質を指す。表現を簡潔にするために、本出願は短縮した表現「活性成分」を用いて「活性香気成分」を指すことがある。
【0003】
香料:本発明において、この用語は、少なくとも1種の活性香気成分を含有する任意の製剤を指す。
【0004】
HASE:疎水性アルカリ膨潤性エマルションのアングロサクソン語の頭字語。この用語は、アクリル(メタクリル)酸、これらの酸のエステル、および疎水性モノマーをベースとするアクリル増粘剤を指す。
【0005】
香料を与える様式は多様である。しかしながら、初期の香料製剤レベル、ならびにこれを適用する表面レベルで香料の性能を改善することは当業者にとって相当な制約である。香料製剤に含有される活性香料成分は、化学的に不安定であり、外部ストレス(酸化など)に弱いことが証明できる。
【0006】
さらに、香料の残留の改善、即ち活性香料成分の蒸発を遅らせることは、幾つかの理由で大きな課題である。毒物学的レベルでは、これらの分子は多量に拡散されたとき、ヒトに有害な影響を与え得る(リナロールは歩行失調を引き起こすことがあり、アンブレットムスクは神経損傷を起こすことがある)。経済的な観点では、これらの有機組成物は揮発性で、一般に非常にコストがかかる。商業的な観点では、消費者は購入した香料が長期の香気効果を発揮することを求めるであろう。このように技術的に言えば、香料は100種を超える活性香気成分を含有するため、多数の異なる化学構造の保護および徐放を可能にする手段を有することは非常に重要である。
【0007】
最後に、液体香料製剤(オードトワレなど)および固形香料製剤(香りを徐放する香料入り塗料フィルムなど)の両方において、この残留を増大しながら、活性成分を保護することは重要である。従って、本出願が提起する技術的問題は、固体または液体形態において残留が増大され、外部ストレスから保護された活性香気成分を提供する可能性であると要約できる。
【0008】
数年間、発明者らは、活性香気成分の残留を改善しながら、これらを保護するように、活性香気成分をカプセル化することを試みてきた。現在、3つのカプセル化技法が知られており、これらはβ−シクロデキストリンの実施、シリコーンエマルションの使用、および有機ポリマーを用いるカプセル化である。
【0009】
第1の種類は、デンプンの酵素分解によって得られる天然宿主分子であるβ−シクロデキストリンを用いる。β−シクロデキストリンはグルコースの環状オリゴマーの形態で生じ、包接複合体を形成するように宿主分子を受容できる空洞の存在が特徴であり、この機構によってβ−シクロデキストリンは、文献EP0392606に具体的に記載されているように活性香気成分をカプセル化できる。しかしながら、β−シクロデキストリンおよび活性成分をベースとする複合体は、活性成分の徐放を可能にする障壁を構成するように、保護材料(ロウまたは脂肪アルコール)から開始する補足的な被覆段階を経なければならない。さらに、形成される包接複合体の安定性は、とりわけβ−シクロデキストリンとカプセル化される成分との親和性によって決まり、多くの成分はβ−シクロデキストリンでカプセル化できない。
【0010】
第2の方法は、水中のシリコーンエマルションを用いて活性香気成分をカプセル化することであり、これは文献US5130171に記載されている。シリコーンの高い気体透過性により、シリコーンは活性成分の分子をゆっくりと放出することができる。しかしながら、このような方法は、用いるシリコーンエマルションとカプセル化する活性成分の溶解性または適合性に依存しており、従ってすべての活性香気成分をカプセル化することはできない。
【0011】
最後に、有機ポリマーの実施に基づく第3の種類のカプセル化法がある。これらのなかで、特にコアセルベーション法があり、この方法はこのポリマーのコロイド溶液を用いて沈殿ポリマーフィルムで活性成分のエマルションを被覆することに基づくものであり、この溶液は不安定である。
【0012】
このコアセルベートと呼ばれる沈澱は、被覆される活性成分のエマルションの小滴上に吸収される。例えば文献FR2727632は、液体または固体ゲル中、ゼラチンとアラビアゴム型のコポリマーとのコアセルベーションによって得られた非硬質外被のマイクロカプセルを記載しており、これらの内容物は芳香を与えるために調製された芳香性混合物である。同様に、文献US5126061は、ゼラチンと他のポリイオン材料とのコアセルベーションによって調製された香料マイクロカプセルを記載している。
【0013】
しかしながら、コアセルベーション法は、事前にカプセル化する活性成分のエマルションを得ることが必要とされ、これはコアセルベーションに追加的な段階を構成する。さらに、水溶性活性成分はエマルションにできないため、この技法では水溶性活性成分をカプセル化できない。さらにこの方法は、コアセルベーションに用いるポリマーと活性成分の適合性に依存している。
【0014】
ポリマーの実施に基づく他のカプセル化法は重縮合である。この方法は2種のモノマーの重縮合に基づき、一方はカプセル化環境に適合し、他方はカプセル化される物質に適合する。例えば文献WO2007/004166は、活性成分を含有するポリウレタンカプセルを記載しており、これらのカプセルはポリイソシアナート化合物とジオールを含むグアニジン塩との反応によって得られる。しかしながら、この方法はイソシアナートと化学的に反応しない活性成分に限定され、従ってアルコール、アミン、または酸はカプセル化できない。
【0015】
ポリマーに基づく他のカプセル化法は、界面活性剤の存在下でフィルムを形成する方法である。この方法は、カプセル化される活性成分と適合性のポリマーを選択することに基づく。前記ポリマーのエマルションは、カプセル化される活性成分と界面活性剤の存在下、水性環境で得られる。この目的のために、文献US4803195は、セルロース系ポリマーまたはポリビニルアルコールの実施を記載しており、文献WO2005/032503は、アクリルポリマーの使用に関する。これらの手順では、界面活性剤である追加の化合物の実施という不都合が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許第0392606号
【特許文献2】米国特許出願公開第5130171号明細書
【特許文献3】仏国特許第2727632号
【特許文献4】米国特許出願公開第5126061号明細書
【特許文献5】国際公開第2007/004166号パンフレット
【特許文献6】米国特許出願公開第4803195号明細書
【特許文献7】国際公開第2005/032503号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
活性香気成分カプセル化の問題を解決して活性香気成分を有効に保護し、この残留を改善し、液体または固体形態で得ることを可能にし、当業者が提案する解決策に固有の問題を回避するために、本出願人は以下の段階を包含することを特徴とする独創的な生成方法に到達した。
【0018】
a)少なくとも1種のHASEエマルション、少なくとも1種の活性香気成分、および水を混合し、前記混合物はpH5超、好ましくは6、非常に好ましくは7を有する段階、
b)固体粒子の水中分散体を得るために、pHを5未満、好ましくは3の値に調整することによって、段階a)後に得られた混合物を場合によって沈澱させる段階、
c)水を除去することによって、段階b)後に得られた固体粒子を場合によって単離する段階。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明による方法の独創的な一態様は、会合性疎水性モノマーを有するHASE型エマルションを使用することである。このモノマーは、エマルションが十分に高いpH(>5)で中和されたとき、このようなモノマーを持たないポリマーと比べて増粘作用を強化する会合性相互作用をもたらす特性を有する。これらの疎水性基間の会合性相互作用は領域の境界を定め、これが活性成分の溶媒和枠(solvation cage)となる。本出願人の功績の1つは、pH5超において、HASE型エマルションを経て水構造の現象を同定し使用する方法、従って溶液に溶解した活性成分を自然に保護する方法を知ったことである。
【0020】
HASE型エマルションのこのような使用は、本出願人等が現在知るかぎり、塗装適用(文献FR2693203、FR2872815、およびFR2633930参照)、さらにコンクリート分野(未公開の仏国特許出願、出願番号FR0700086参照)に広く記載されている対象の新規な使用である。さらにこれらの技術分野は、本発明に関する分野とは非常にかけ離れており、前述の文献は当業者を本発明に導き得る開示も指示も与えていない。
【0021】
この結果として、本発明による方法の段階a)を実現した後、活性成分分子が溶媒和枠に捕捉された混合物を得る。得られた製剤を支持体(皮膚、布地、壁など)に適用および乾燥した後であっても、活性成分は乾燥中に形成されたポリマーフィルムに捕捉されたままであり、従ってフィルムを通して拡散することにより、活性成分の蒸発速度は遅くなる。
【0022】
本発明の方法の第1の変形において、段階a)後に得られた混合物を酸性化する段階b)を実施することもできる。このpHの低減はポリマー構造の崩壊を誘発し、このようにしてポリマーと活性成分からなる固体粒子の水中分散体を得る。活性成分は捕捉されたままであり、これらは依然として保護されており、蒸発速度は低減される。
【0023】
第2の変形において、段階b)、さらに水を除去することによって段階b)後に得られた固体粒子を単離することからなる連続した段階c)を同時に実施できる。先の場合のように、活性成分は単離され、従って保護され、より緩慢に蒸発する。
【0024】
さらに、本発明による方法の他の利点は、活性香気成分を保護し、この放出を遅らせる形態で送達することであり、これは以下の3つの形態であり得る。
【0025】
生成物がpH5超で本発明による方法の混合段階のみを実現することにより調製されるとき、水溶液である液体、
生成物の調製においてさらにpHが5より低いでの沈澱段階が実施されるとき、固体粒子の水中分散体である液体、
本発明による単離段階が実施されるとき、ポリマー粒子に捕捉された活性成分の固体粒子からなる固体。
【0026】
本出願人は、本発明の単一性が特に以下の組み合わせのすべての形態の実施による本発明の3種の形態の実現において確実なものとなることを示している。
【0027】
少なくとも1種のアクリル(メタクリル)酸のコポリマー、これらの酸のエステルモノマー、および疎水性モノマー、ならびに
少なくとも1種の活性香気成分。
【0028】
最後に、本発明の他の利点は、非常に多数の活性香気成分の捕捉を実施できることである。本質的に、当業者は捕捉される活性成分に対して可能な最良の親和性を示すモノマーを同定するように選択できる、会合性モノマーの非常に大きなライブラリを入手できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第1の目的は、少なくとも1種の活性香気成分を含有する製剤を製剤する方法であって、
a)少なくとも1種のHASEエマルション、少なくとも1種の活性香気成分、および水を混合し、前記混合物はpH5超、好ましくは6、非常に好ましくは7を有するステップ、
b)固体粒子の水中分散体を得るために、pHを5未満、好ましくは3の値に調整することによって、段階a)後に得られた混合物を場合によって沈澱させるステップ、
c)水を除去することによって、段階b)後に得られた固体粒子を場合によって単離するステップを含むという事実を特徴とする方法である。
【0030】
第1の変形において、本発明による方法は、段階a)のみを実施する。
【0031】
第2の変形において、本発明による方法は、段階a)、次いで段階b)を実施する。
【0032】
第3の変形において、本発明による方法は、段階a)、次いで段階b)、次いで段階c)を実施する。
【0033】
本発明による方法はさらに、ステップa)の間、混合物のpHが有機または無機塩基によって調整されることを特徴とする。実施において、成分(活性成分、水、HASEエマルション、および無機または有機塩基)を反応器で攪拌中に添加し、これらを添加する順序は、具体的にはカプセル化される活性成分の水溶解性に基づいて当業者によって選択される。
【0034】
本発明による方法はさらに、ステップa)実施後の水性製剤の総重量に対して乾燥重量で0.1%から20%、好ましくは0.1%から10%、非常に好ましくは0.1%から5%のHASEエマルションが段階a)で得られることを特徴とする。
【0035】
本発明による方法はさらに、ステップa)実施後の水性製剤の総重量に対して乾燥重量で0.1%から20%の疎水性または親水性活性香気成分が段階a)で得られることを特徴とする。
【0036】
本発明による方法はまた、段階b)で中程度の強酸または強酸が用いられるという事実を特徴とする。
【0037】
本発明による方法はまた、HASEエマルションが、アクリル(メタクリル)酸、ならびに好ましくはアクリル(メタクリル)酸エステル、非常に好ましくはエチルアクリラート、ブチルアクリラート、メチルメタクリラート、およびこれらの混合物から選択されたアクリル(メタクリル)酸エステルである非水溶性モノマー、ならびに少なくとも1つの疎水性基を含有するモノマーの少なくとも1種のコポリマーを含有するという事実を特徴とする。
【0038】
本発明による方法はまた、少なくとも1つの疎水性基を含有する前記モノマーが、下記の一般式を有し、
【0039】
【化1】

式中、
m、n、pおよびqは整数であり、m、n、pは150未満であり、
Rは重合性ビニル官能基を有し、
およびRは同一であるかまたは異なり、水素原子またはアルキル基を表し、
R’は少なくとも6個、好ましくは少なくとも10個、非常に好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含む疎水性基であるという事実を特徴とする。
【0040】
最後に、本発明による方法は、水が段階c)で蒸発または遠心分離によって除去されるという事実を特徴とする。しかしながら、当業者は段階b)後に得られた混合物から水を除去するために、他の任意の技法を実施することができるであろう。
【0041】
本発明の他の目的は、少なくとも1種の活性香気成分を含有し、上記方法の段階a)を実施することによって得られる水性製剤で構成される。
【0042】
少なくとも1種の活性香気成分を含有するこの水性製剤は、
1.水、少なくとも1種のHASEエマルション、および少なくとも1種の活性香気成分を含有すること、ならびに
2.pH5超、好ましくは6超、非常に好ましくは7超を有することを特徴とする。
【0043】
この水性製剤はさらに、総重量に対して乾燥重量で0.1%から20%、好ましくは0.1%から10%、非常に好ましくは0.1%から5%の少なくとも1種のHASEエマルションを含有することを特徴とする。
【0044】
この水性製剤はさらに、総重量に対して乾燥重量で0.1%から20%の少なくとも1種の親水性または疎水性活性香気成分を含有することを特徴とする。
【0045】
この水性製剤はさらに、HASEエマルションが、アクリル(メタクリル)酸、ならびに好ましくはアクリル(メタクリル)酸エステル、非常に好ましくはエチルアクリラート、ブチルアクリラート、メチルメタクリラート、およびこれらの混合物から選択されたアクリル(メタクリル)酸エステルである非水溶性モノマー、ならびに少なくとも1つの疎水性基を含有するモノマーの少なくとも1種のコポリマーを含有することを特徴とする。
【0046】
この水性製剤はさらに、少なくとも1つの疎水性基を含有する前記モノマーが、下記の一般式を有し、
【0047】
【化2】

式中、
m、n、pおよびqは整数であり、m、n、pは150未満であり、
Rは重合性ビニル官能基を有し、
およびRは同一であるかまたは異なり、水素原子またはアルキル基を表し、
R’は少なくとも6個、好ましくは少なくとも10個、非常に好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含む疎水性基であることを特徴とする。
【0048】
本発明の他の目的は、水に分散された固体粒子で構成され、上記方法の沈澱段階b)を実施することによって得られる製剤にある。
【0049】
この固体粒子の水中分散体は、これを構成する固体粒子が、少なくとも1種の活性香気成分、ならびにアクリル(メタクリル)酸、好ましくはアクリル(メタクリル)酸エステル、非常に好ましくはエチルアクリラート、ブチルアクリラート、メチルメタクリラート、およびこれらの混合物から選択されたアクリル(メタクリル)酸エステルである非水溶性モノマー、および少なくとも1つの疎水性基を含有するモノマーの少なくとも1種のコポリマーを含有することを特徴とする。
【0050】
この固体粒子の水中分散体はさらに、少なくとも1つの疎水性基を含有する前記モノマーが、下記の一般式を有し、
【0051】
【化3】

式中、
m、n、pおよびqは整数であり、m、n、pは150未満であり、
Rは重合性ビニル官能基を有し、
およびRは同一であるかまたは異なり、水素原子またはアルキル基を表し、
R’は少なくとも6個、好ましくは少なくとも10個、非常に好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含む疎水性基であることを特徴とする。
【0052】
本発明の他の目的は、上記方法の沈澱ステップc)を実施することによって得られる固体粒子で構成される製剤にある。
【0053】
これらの固体粒子は、少なくとも1種の活性香気成分、ならびにアクリル(メタクリル)酸、好ましくはアクリル(メタクリル)酸エステル、非常に好ましくはエチルアクリラート、ブチルアクリラート、メチルメタクリラート、およびこれらの混合物から選択されたアクリル(メタクリル)酸エステルである非水溶性モノマー、および少なくとも1つの疎水性基を含有するモノマーの少なくとも1種のコポリマーを含有することを特徴とする。
【0054】
この製剤はさらに、少なくとも1つの疎水性基を含有する前記モノマーが、下記の一般式を有し、
【0055】
【化4】

式中、
m、n、pおよびqは整数であり、m、n、pは150未満であり、
Rは重合性ビニル官能基を有し、
およびRは同一であるかまたは異なり、水素原子またはアルキル基を表し、
R’は少なくとも6個、好ましくは少なくとも10個、非常に好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含む疎水性基であることを特徴とする。
【0056】
本発明の最後の目的は、活性香気成分を保護し、この蒸発を遅らせる2つの機能を備えた薬剤としての、少なくとも1種の活性香気成分の水性製剤、少なくとも1種の活性香気成分の固体粒子の水中分散体、および少なくとも1種の活性香気成分の固体粒子の使用である。
【実施例1】
【0057】
この実施例は、段階a)に従って活性香気成分およびHASEエマルションの水性製剤をpH5超で実現する本発明の方法を例示する。
【0058】
この実施例はまた、pHを5未満の値に低減することからなる本発明の方法の段階b)の実施を例示する。
【0059】
この実施例はまた、カプセル化活性成分の固体粒子を単離する本発明の段階c)の実施を例示する。
【0060】
従ってこの実施例はまた、本発明による製剤:段階a)後に得られる溶液、ステップb)後に得られる固体粒子の水中分散体、およびステップc)後に得られる乾燥固体粒子を完成させる3つの方法を例示する。
【0061】
段階a)の完了
対照である試験No.1から5では、ある質量の活性香気成分を水に導入するが、得られる製剤として実装される水の質量は100gである。試験した活性成分は、メントール、ハニーサックル、およびカナンガ油である。
【0062】
本発明を例示する試験No.1−2から5−2では、それぞれ試験No.1から5と同じ質量の活性成分を水に導入する。さらに、ある量のポリマー、Rheo(商標)2000の名称でCOATEX(商標)社から商品化されているHASEエマルション、ならびに5.5に等しいpHを得るためにいくらかの水酸化ナトリウム(50%溶液)を導入する。
【0063】
これらの各試験、No.1から5および1−2から5−2に関して、様々な配合の組成(g)を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
試験No.1から4に従って実現したすべての製剤は、肉眼で完全に可視である小滴を示し、活性成分は水に分散されている。
【0066】
対照的に、試験No.1−2から4−2ではすべて透明な溶液が観察され、活性香気成分の分子はポリマーによって溶媒和されており、完全に連続相に分散されている。
【0067】
段階b)の完了
試験No.1−3から5−3の各試験では、試験No.1−2から5−2にそれぞれ対応する各溶液のpHを、リン酸を加えることによって2.5に等しい値に低下させる。
【0068】
このpHの低減はポリマー構造の崩壊を誘発し、このようにしてポリマーと活性成分からなる固体粒子の水中分散体を得る。
【0069】
当業者によく知られている光拡散に基づく測定方法を用いて、固体粒子の大きさを求める。
【0070】
これらの径は以下に等しい。
試験No.1−3および2−3では280nm
試験No.3−3および4−3では1000nm
試験No.5−3では700nm
【0071】
段階c)の完了
試験No.1−3から5−3で得られた各分散体を、水の初期重量の99.5%が蒸発するのに十分な時間、温度110℃で乾燥器に入れる。
【0072】
このようにして、試験した活性香気成分を含有し、これらが嗅覚レベルで検出可能な香りを拡散できないことを実証する固体粒子が得られる。
【実施例2】
【0073】
この実施例は、段階a)に従って活性香気成分およびpH5超を有するHASE型エマルションから水性製剤を実現する本発明の方法を例示する。
【0074】
この実施例はまた、pHを5未満の値に低減することからなる本発明の方法の段階b)の実施を例示する。
【0075】
従ってこの実施例はまた、本発明による製剤:段階a)後に得られる溶液、ステップb)後に得られる固体粒子の水中分散体を完成させる2つの方法を例示する。
【0076】
段階a)の完了
対照である試験No.6から8では、ある質量の活性香気成分を水に導入するが、実装される水の質量は100gである。試験した活性成分はシトロネラールである。
【0077】
本発明を例示する試験No.6−2から8−2では、それぞれ試験No.6から8と同じ質量の活性成分を水に導入する。さらに、ある量のポリマー、Rheo(商標)3800の名称でCOATEX(商標)社から商品化されているHASEエマルション、ならびに6に等しいpHを得るためにいくらかの水酸化ナトリウム(50%溶液)を導入する。
【0078】
これらの各試験、No.6から8および6−2から8−2に関して、様々な配合の組成(g)を表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
試験No.6から8に従って実現したすべての製剤は、肉眼で完全に可視である小滴を示し、活性成分は水に分散されている。
【0081】
対照的に、試験No.6−2から8−2ではすべてゲルが観察され、活性香気成分の分子はポリマーによって溶媒和されており、連続相に分散されている。
【0082】
段階b)の完了
試験No.6−2から8−2の各試験では、試験No.1−2から3−2にそれぞれ対応する各溶液のpHを、リン酸を加えることによって4.8に等しい値に低下させる。
【0083】
このpHの低減はポリマー構造の崩壊を誘発し、このようにしてポリマーと活性成分からなる固体粒子の水中分散体を得る。
【0084】
当業者によく知られている光拡散に基づく測定方法を用いて、固体粒子の大きさを求める。
【0085】
これらの径は以下に等しい。
6−2では1800nm、7−2では650nm、および8−2では520nm
【実施例3】
【0086】
この実施例は、段階a)に従って活性香気成分およびHASEエマルションの水性製剤をpH5超で実現する本発明の方法を例示する。
【0087】
この実施例はまた、pHを5未満の値に低減することからなる本発明の方法の段階b)の実施を例示する。
【0088】
この実施例はまた、カプセル化活性成分の固体粒子を単離する本発明の段階c)の実施を例示する。
【0089】
従ってこの実施例はまた、本発明による製剤:段階a)後に得られる溶液、ステップb)後に得られる固体粒子の水中分散体、およびステップc)後に得られる乾燥固体粒子を完成させる3つの方法を例示する。
【0090】
段階a)の完了
対照である試験No.9では、ある質量の活性香気成分を水に導入するが、実装される水の質量は100gである。試験した活性成分は、オーランチオール(aurantiol)である。
【0091】
本発明を例示する試験No.9−2では、試験No.9と同じ質量の活性成分を水に導入する。さらに、ある量のポリマー、Rheotech(商標)3800の名称でCOATEX(商標)社から商品化されているHASEエマルション、ならびに5.5に等しいpHを得るためにいくらかの水酸化ナトリウム(50%溶液)を導入する。
【0092】
これらの各試験、No.9および9−2に関して、様々な配合の組成(g)を表3に示す。
【0093】
【表3】

【0094】
試験No.9では、オーランチオールは水と混和性でない小滴の形態で生じる。対照的に、試験No.9−2ではゲルが観察され、活性香気成分の分子はポリマーによって溶媒和されており、連続相に分散されている。
【0095】
段階b)の完了
試験No.9−2に対応する溶液のpHを、リン酸を加えることによって2.45に等しい値に低下させる。
【0096】
このpHの低減はポリマー構造の崩壊を誘発し、このようにしてポリマーと活性成分からなる固体粒子の水中分散体を得る。
【0097】
当業者によく知られている光拡散に基づく測定方法を用いて、固体粒子の大きさを求める。
【0098】
これらの径は約1900nmに等しい。
【0099】
段階c)の完了
この分散体を、水の初期重量の99.5%が蒸発するのに十分な時間、温度45℃で真空乾燥器に入れる。
【0100】
このようにして、試験した活性香気成分を含有する固体粒子が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の活性香気成分を含有する製剤を生成する方法であって、
a)少なくとも1種のHASEエマルション、少なくとも1種の活性香気成分、および水を混合し、前記混合物がpH5超、好ましくは6、非常に好ましくは7を有するステップと、
b)固体粒子の水中分散体を得るために、pHを5未満、好ましくは3の値に調整することによって、段階a)後に得られた混合物を場合によって沈澱させるステップと、
c)水を除去することによって、段階b)後に得られた固体粒子を場合によって単離するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
段階a)のみを実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階a)、次いで段階b)を実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
段階a)、次いで段階b)、次いで段階c)を実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップa)の間、混合物のpHが有機または無機塩基によって調整され、成分(活性成分、水、HASE型エマルション、および無機または有機塩基)を反応器で攪拌中に添加し、これらを添加する順序は、具体的にはカプセル化される該活性成分の水溶解性に基づいて当業者によって選択される、請求項1から4に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)後に得られる水性製剤の総重量に対して乾燥重量で0.1%から20%、好ましくは0.1%から10%、非常に好ましくは0.1%から5%のHASEエマルションがステップa)で実施されることを特徴とする、請求項1から5に記載の方法。
【請求項7】
ステップa)後に得られる水性製剤の総重量に対して乾燥重量で0.1%から20%の疎水性または親水性活性香気成分がステップa)で実施されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
強酸または中程度の強酸がステップb)で実施されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
HASEエマルションが、アクリル(メタクリル)酸、ならびに好ましくはアクリル(メタクリル)酸エステル、非常に好ましくはエチルアクリラート、ブチルアクリラート、メチルメタクリラート、およびこれらの混合物から選択されたアクリル(メタクリル)酸エステルである非水溶性モノマー、ならびに少なくとも1つの疎水性基を含有するモノマーの少なくとも1種のコポリマーを含有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの疎水性基を含有する前記モノマーが、下記の一般式を有し、
【化1】

式中、
m、n、pおよびqは整数であり、m、n、pは150未満であり、
Rは重合性ビニル官能基を有し、
およびRは同一であるかまたは異なり、水素原子またはアルキル基を表し、
R’は少なくとも6個、好ましくは少なくとも10個、非常に好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含む疎水性基であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
水が段階c)で蒸発または遠心分離によって除去されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1.水、少なくとも1種のHASEエマルション、および少なくとも1種の活性香気成分を含有すること、ならびに
2.pH5超、好ましくは6、非常に好ましくは7を有することを特徴とする、少なくとも1種の活性香気成分を含有する水性製剤。
【請求項13】
総重量に対して乾燥重量で0.1%から20%、好ましくは0.1%から10%、非常に好ましくは0.1%から5%のHASEエマルションを含有することを特徴とする、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
総重量に対して乾燥重量で0.1%から20%の親水性または疎水性活性香気成分を含有することを特徴とする、請求項12または13のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項15】
HASEエマルションが、アクリル(メタクリル)酸、ならびに好ましくはアクリル(メタクリル)酸エステル、非常に好ましくはエチルアクリラート、ブチルアクリラート、メチルメタクリラート、およびこれらの混合物から選択されたアクリル(メタクリル)酸エステルである非水溶性モノマー、ならびに少なくとも1つの疎水性基を含有するモノマーの少なくとも1種のコポリマーを含有することを特徴とする、請求項15から14のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項16】
少なくとも1つの疎水性基を含有する前記モノマーが、下記の一般式を有し、
【化2】

式中、
m、n、pおよびqは整数であり、m、n、pは150未満であり、
Rは重合性ビニル官能基を有し、
およびRは同一であるかまたは異なり、水素原子またはアルキル基を表し、
R’は少なくとも6個、好ましくは少なくとも10個、非常に好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含む疎水性基であることを特徴とする、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
分散体を構成する固体粒子が、少なくとも1種の活性香気成分、ならびにアクリル(メタクリル)酸、好ましくはアクリル(メタクリル)酸エステル、非常に好ましくはエチルアクリラート、ブチルアクリラート、メチルメタクリラート、およびこれらの混合物から選択されたアクリル(メタクリル)酸エステルである非水溶性モノマー、および少なくとも1つの疎水性基を含有するモノマーの少なくとも1種のコポリマーを含有することを特徴とする固体粒子の水中分散体。
【請求項18】
少なくとも1つの疎水性基を含有する前記モノマーが、下記の一般式を有し、
【化3】

式中、
m、n、pおよびqは整数であり、m、n、pは150未満であり、
Rは重合性ビニル官能基を有し、
およびRは同一であるかまたは異なり、水素原子またはアルキル基を表し、
R’は少なくとも6個、好ましくは少なくとも10個、非常に好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含む疎水性基であることを特徴とする、請求項17に記載の分散体。
【請求項19】
固体粒子が、活性香気成分、ならびにアクリル(メタクリル)酸、好ましくはアクリル(メタクリル)酸エステル、非常に好ましくはエチルアクリラート、ブチルアクリラート、メチルメタクリラート、およびこれらの混合物から選択されたアクリル(メタクリル)酸エステルである非水溶性モノマー、および少なくとも1つの疎水性基を含有するモノマーのコポリマーを含有することを特徴とする固体粒子。
【請求項20】
少なくとも1つの疎水性基を含有する前記モノマーが、下記の一般式を有し、
【化4】

式中、
m、n、pおよびqは整数であり、m、n、pは150未満であり、
Rは重合性ビニル官能基を有し、
およびRは同一であるかまたは異なり、水素原子またはアルキル基を表し、
R’は少なくとも6個、好ましくは少なくとも10個、非常に好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含む疎水性基であることを特徴とする、請求項19に記載の粒子。
【請求項21】
活性香気成分を保護し、この蒸発を遅らせる2つの機能を有する薬剤としての、請求項12から16に記載の少なくとも1種の活性香気成分の水性製剤、請求項16または17に記載の少なくとも1種の活性香気成分の固体粒子の水性分散体、および請求項19または20に記載の少なくとも1種の活性香気成分の固体粒子の使用。

【公表番号】特表2010−529225(P2010−529225A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509906(P2010−509906)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001275
【国際公開番号】WO2008/146119
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(398051154)コアテツクス・エス・アー・エス (35)
【Fターム(参考)】