説明

流れ管理システムを備えた電気化学電池

電気化学電池は、負荷に接続されたときにアノードとして動作して燃料を酸化するように構成された燃料電極を含む。電極ホルダが、上記燃料電極を保持するための空洞と、該空洞の一方の側において該空洞に接続され、該空洞にイオン伝導性媒質を供給するように構成された、少なくとも1つの入口と、上記空洞の前記少なくとも1つの入口とは反対の側において該空洞に接続され、上記イオン伝導性媒質が前記空洞から流出することを可能にするように構成された、少なくとも1つの出口と、を含む。複数のスペーサが、互いに距離をおいた関係により、上記燃料電極及び上記空洞を横切って延びて、上記空洞に複数の流路を定める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願に対する参照
本出願は、2009年10月8日に出願された米国仮特許出願第61/249,917号からの優先権の利益を請求するものであり、この出願の全内容が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本出願は、一般的には電気化学電池に関し、より特定的には金属空気電池に関する。
【背景技術】
【0003】
燃料として金属を用いた電気化学電池が知られている。かかるデバイスの例としては、例えば、その全内容が本明細書に組み入れられる米国特許第7,276,309号、第6,942,105号、第6,911,274号及び第6,787,260号に示されている。これらの従来技術に係る実施形態の問題点を簡単なリストとして示すと、アノード領域及びカソード領域に沈殿した反応生成物が蓄積すること、固体粒子燃料の供給に関連した問題、まだ酸化していない燃料の近くにある酸化した燃料の濃度が高いことに起因して、燃料の正味酸化のレートが低いこと、がある。
【0004】
金属空気電池は、通常、金属燃料が酸化される場所であるアノードと、周囲空気からの酸素が還元される場所である空気吸入式(air breathing)電極と、酸化/還元したイオンの反応を支持するための電解質と、を含む。
【0005】
本出願は、また、電池を充電又は再充電する間に、燃料粒子、及び/又は、沈殿物を含みうる流体の流れを管理する効率的かつ改善された方法を提供することを意図したものである。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様によれば、燃料電極と、該燃料電極から距離をおいて配置された酸化電極と、これらの電極に接触するイオン伝導性媒質と、を含む電気化学電池が提供される。上記燃料電極及び上記酸化電極は、放電の間において、上記燃料電極において金属燃料を酸化し、上記酸化電極において酸化剤を還元して、負荷に印加するための放電電位差を上記燃料電極と上記酸化電極との間に発生させる、ように構成される。この電気化学電池は、また、上記燃料電極を保持するための空洞と、該空洞の一方の側において該空洞に接続され、該空洞にイオン伝導性媒質を供給するように構成された、少なくとも1つの入口と、上記空洞の前記少なくとも1つの入口とは反対の側において該空洞に接続され、上記イオン伝導性媒質が上記空洞から流出することを可能にするように構成された、少なくとも1つの出口と、を備えた電極ホルダを含む。この電気化学電池は、また、互いに距離をおいた関係により上記燃料電極及び上記空洞を横切って延びて該空洞に複数の流路を定める複数のスペーサであって、上記イオン伝導性媒質が、上記少なくとも1つの入口を介して各流路に流入し、上記燃料電極を横切り、上記少なくとも1つの出口を介して上記流路から流出するようになっている、複数のスペーサを含む。
【0007】
本発明の一態様によれば、電気化学電池のための燃料電極を製造する方法が提供される。上記燃料電極は、複数の透過性の電極ボディと、該複数の透過性の電極ボディの間に延びる実質的に平行な複数のスペーサと、を含む。この方法は、各々が、互いに実質的に平行な2つの製造スペーサにより定められる複数の空洞に材料を注入する段階であって、隣接する上記複数の透過性の電極ボディが、これらの間にある上記製造スペーサを用いて実質的に互いに平行にかつ互いに距離をおいて保持されており、上記複数の透過性の電極ボディが上記複数の空洞の中に延びるようにする、段階と、上記材料を硬化させて上記燃料電極の上記実質的に平行なスペーサを形成する段階と、上記製造スペーサから上記透過性の電極ボディを分離して、上記透過性の電極ボディと上記材料から形成された上記実質的に平行なスペーサとが単一の一体的なユニットとなる段階と、を含む。
【0008】
本発明の一態様によれば、電気化学電池を充電する方法が提供される。この電気化学電池は、燃料電極と、該燃料電極から距離をおいて配置された酸化電極と、充電電極と、これらの電極に接触するイオン伝導性媒質と、を具備する。上記燃料電極及び上記酸化電極は、放電の間において、上記燃料電極において金属燃料を酸化し、上記酸化電極において酸化剤を還元して、負荷に印加するための放電電位差を上記燃料電極と上記酸化電極との間に発生させる、ように構成される。上記燃料電極及び上記充電電極は、再充電の間において、電源から上記燃料電極と上記充電電極との間に再充電電位差を印加されることにより、上記燃料の還元可能な種を還元して上記燃料を上記燃料電極の上に電着させ、上記酸化剤の酸化可能な種を酸化する、ように構成される。この電気化学電池は、また、上記燃料電極を保持するための空洞と、該空洞の一方の側において該空洞に接続され、該空洞にイオン伝導性媒質を供給するように構成された、少なくとも1つの入口と、上記空洞の上記少なくとも1つの入口とは反対の側において該空洞に接続され、上記イオン伝導性媒質が上記空洞から流出することを可能にするように構成された、少なくとも1つの出口と、を備えた電極ホルダを含む。この電気化学電池は、また、互いに距離をおいた関係により上記燃料電極及び上記空洞を横切って延びて該空洞に複数の流路を定める複数のスペーサであって、上記イオン伝導性媒質が、上記少なくとも1つの入口を介して各流路に流入し、上記燃料電極を横切り、上記少なくとも1つの出口を介して上記流路から流出するようになっている、複数のスペーサを含む。この方法は、還元可能な種を含む上記イオン伝導性媒質を上記少なくとも1つの入口を通して上記流路に流入させる段階と、上記充電電極をアノードとして機能させ上記燃料電極をカソードとして機能させて、上記充電電極と上記燃料電極との間に電流を印加して、上記還元可能な燃料種が、還元され、上記燃料電極において酸化可能な形により燃料として電着されるようになっている段階と、上記電流を除去して上記充電を切断する段階と、を含む。
【0009】
本発明の他の様々な態様が、以下の詳細な説明、添付した図面及び添付した特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
以下、本発明の様々な実施形態が、対応する参照符号が対応する構成要素を示す添付した図面を参照して、単に例示として説明される。
【0011】

【図1】図1は、2つの電気化学電池を含む電気化学電池システムを示す断面図である。
【0012】
【図2】図2は、図1の電気化学電池システムの分解図である。
【0013】
【図3】図3は、図1の電気化学電池のうちの一方の電極ホルダを示す。
【0014】
【図4】図4は、図3の電極ホルダであって、第1の電極とこの電極ホルダに接続された複数のスペーサを保持する電極ホルダを示す。
【0015】
【図5】図5は、図4の複数のスペーサのうちの1つのスペーサをさらに具体的に示す。
【0016】
【図6】図6は、図5のスペーサと図3の電極ホルダとの間の接続をさらに具体的に示す。
【0017】
【図7】図7は、図3の電極ホルダにより部分的に定められる流動化ゾーンをさらに具体的に示す。
【0018】
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係る電気化学電池と外部の負荷と電源との間における電気的接続を模式的に示す。
【0019】
【図9】図9は、本発明の一実施形態に係る電気化学電池と外部の負荷と電源との間における電気的な接続を模式的に示す。
【0020】
【図10】図10は、本発明の一実施形態に係る別の電気化学電池の一部分の一実施形態を示す。
【0021】
【図11】図11は、図10の「詳細A」部分を示す。
【0022】
【図12】図12は、図11のXII-XII線に沿った電極の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る2つの電気化学電池を含む電気化学電池システムを示す。図示のように、各電池10は、第1の電極12と、この第1の電極12から距離をおいて配置された第2の電極14と、を含む。第1の電極12は、電極ホルダ16によって支持されている。この電気化学システム100は、また、図1に示すように、このシステム100の一方の側において電気化学電池10を覆うために用いられるカバー19を含む一方、これら電極ホルダ16のうちの一方が、このシステム100のうちの反対の側を覆うように用いられる。
【0024】
一実施形態では、第1の電極12は、電池10が後に詳述するような放電モード、すなわち、電気発生モードにおいて動作するときに、アノードとして機能する金属燃料電極である。一実施形態では、第1の電極12は、後に詳述するような、電着(electrodepositing)により、又は、他の方法により、電池10において循環するイオン伝導性媒質から金属燃料の粒子又はイオンを捕捉して保持することが可能な組成(formation)により形成されたスクリーン(screen)といったような、透過性(permeable)電極ボディ12aを含むことができる。
【0025】
例えば、第1の電極12、この電極12の透過性電極ボディ12a、及び、第2の電極14を含む、電池10の構成要素は、ニッケル若しくはニッケル合金(ニッケル−コバルト、ニッケル−鉄、ニッケル−銅(すなわちモネル)又は超合金)、胴若しくは胴合金、真鍮、青銅、又は、任意の他の好適な金属により限定されることなくこれにより構成された、任意の好適な構造又は構成を有するものとすることができる。一実施形態では、触媒フィルム(catalyst film)が、第1の電極12及び/又は酸化体電極14に付与され、また、上述した材料のうちの幾つかにより形成されうる高表面材料を有することができる。一実施形態では、触媒フィルムは、熱スプレー、プラズマスプレー、電着、又は、任意の他の粒子被覆方法により形成することが可能なものである。
【0026】
燃料は、鉄、亜鉛、マグネシウム又はリチウムといったような金属とすることができる。金属という用語は、電極ボディに収集されたときに、原子、分子(金属水素化物を含む)及び合金のいずれかの形態をとる、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド、アクチナイド及び遷移金属に限定されずこれらを含む、周期表において金属としてみなされるすべての元素を包含するように解釈されるものである。しかしながら、本発明は、特定の燃料に限定されるように意図されたものではなく、他の燃料を用いてもよい。燃料は、イオン伝導性媒質に懸濁した粒子として電池10に供給されるものであってもよい。幾つかの実施形態では、金属水素化物燃料が電池10において用いられうる。
【0027】
イオン伝導性媒質は水溶液であってもよい。好適な媒質には、例えば、硫酸、燐酸、トリフリン酸、硝酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸カリウム又は塩化リチウムを含む水溶液が含まれる。媒質は、また、非水溶媒又はイオン溶液を用いることができる。本明細書において記載された非限定的な実施形態では、媒質は、水性の水酸化カリウムである。一実施形態では、イオン伝導性媒質は、電解質を含みうる。例えば、引用によりその全内容が本明細書に組み入れられる2010年5月10日に出願された米国特許出願第12/776,962号に記載されたように、従来の液体又は半固体の電解質溶液が用いられ、又は、室温のイオン溶液が用いられる。一実施形態では、電解質が半固体である場合には、多孔質固体電解質膜(すなわち、疎性構造(loose structure))が用いられうる。
【0028】
第1の電極12がアノードとして作用するときに、燃料が第1の電極12において酸化され、第2の電極14がカソードとして作用するときに、酸素といったような酸化剤が第2の電極14において還元され、これは、後に詳述するように、電池10が負荷に接続され放電モードすなわち電気生成モードにある場合のことである。放電モードの間に生ずる反応は、副産物、例えば、還元可能な燃料種(reducible fuel species)を含む沈殿物をイオン伝導性媒質に生成しうる。例えば、燃料が亜鉛であるような実施形態では、酸化亜鉛が、副産物沈殿物/還元可能な燃料種として生成されうる。酸化した亜鉛又は他の金属は、また、沈殿物(例えば、亜鉛酸塩が燃料に残存する電気分解された還元可能な燃料種でありうる)を形成することなく、電解質溶液により保持され、電解質溶液を用いて酸化され、又は、電解質溶液に溶媒和されうる。後に詳述する充電モードの間には、還元可能な燃料種、例えば、酸化亜鉛が、逆に還元され、充電モードの間にカソードとして機能する第1の電極12の上に、燃料、例えば亜鉛として堆積される。充電モードの間には、第2の電極14及びこれとは別体の後述する充電電極70のうちのいずれかが、アノードとして機能する。放電モードと充電モードとの切換えについては、後に詳細に説明する。
【0029】
電極ホルダ16が、第1の電極12が保持される空洞18を定める。電極ホルダ16は、また、電池10のための入口20及び出口22を定める。入口20は、イオン伝導性媒質が電池10に入り、及び/又は、電池10を介して再循環することを可能にするように、構成される。入口20は、入口チャネル24を介して空洞18に接続され、出口22は、出口チャネル26を介して空洞18に接続されうる。図3に示すように、入口チャネル24及び出口チャネル26は、各々、イオン伝導性媒質が流れることが可能な蛇行した経路を形成しうる。入口チャネル24により定められた蛇行した経路は、好ましくは、媒質の流れが停滞しうる、又は、媒質における粒子が集まりうる、急な(sharp)角を含まない。後に詳細に説明するように、チャネル24、26の長さは、流れるように直列接続された複数の電池の間に増加したイオン抵抗(ionic resistance)をもたらすように設計可能なものである。
【0030】
各電池10について、透過性の(permeable)シール部材17が、電極ホルダ16及び/又はカバー19における密封表面の間に適当に結合されて、少なくとも第1の電極12を空洞18の中に封入している。シール部材17は、また、入口チャネル24及び出口チャネル26を覆う。シール部材17は、非伝導性であり電気化学的に不活性であって、好ましくは、イオン伝導性媒質の横方向の伝達を許すことなく、イオン伝導性媒質に対して直交する方向に(すなわちイオン伝導性媒質の厚み方向に)透過である。これにより、イオン伝導性媒質は、シール部材17に浸透することができ、反対の側における第2の電極14に対するイオン伝導性を可能にして、電池10から横方向に外側にイオン伝導性媒質を「運ぶこと」(wicking)なく、電気化学的な反応を支持することができる。シール部材17に対する好適な材料の幾つかの例は、EPDM及びTEFLON(登録商標)である。
【0031】
図示した実施形態では、空洞18は、第1の電極12の形状に実質的に合致する、略矩形状又は正方形状の断面を有する。空洞18の一方の側、具体的には、入口チャネル24に接続された空洞18の一方の側は、複数の流動化ゾーン28であって、各々が、複数の空洞入口34を含む多岐管(manifold)を介して入口チャネル24に接続された複数の空洞入口34を含み、これにより、イオン伝導性媒質及び任意の燃料粒子、沈殿物又は還元可能な燃料種が空洞18に入ったときに、イオン伝導性媒質及び燃料が流動化ゾーン28に入るようになっている。図7にさらに具体的に示されているように、各流動化ゾーン28は、2つの表面30、32により部分的に定められており、これら2つの表面30、32は、互いに対して角度が付けられているが互いに接触せず、これによって、入口34から流動化ゾーン28の中心にまで延びる軸に関して広がる表面を定めるようになっている。図示した実施形態では、表面30、32は、図3に示すように、入口34に対して開いた開放底面を有する実質的に「V」字を形成している。図示した実施形態は、表面30、32が比較的に直線であるように示しているが、これらの表面は、入口34から広がる限りにおいて、湾曲していても又は部分的に湾曲していてもよい。
【0032】
流動化ゾーン28は、粒子を有するイオン伝導性媒質が入口チャネル24を介して空洞18に流入したときに、これらの粒子がイオン伝導性媒質の中において流動化されるように、構成されており、これにより、イオン伝導性媒質が第1の電極12に接触したときに、これら粒子がよりイオン伝導性媒質の中に一様に分散することが可能になっている。このことは、図7に示すように、V字状の流動化ゾーン28の開放底面が下方に向くように、電気化学電池10が配向されているときに、特に有利である。これは、重力が、粒子を入口チャネル24と出口チャネル26との間における空洞18の入口端に蓄積せしめる傾向があるからである。イオン伝導性媒質の中の粒子を流動化させることにより、及び、後に詳述するように空洞18全体に圧力の低下(pressure drop)を与えることにより、粒子は、空洞18全体にわたってより一様に流れ、空洞18の入口端における蓄積を実質的に少なく又はなくすことができる。これにより、第1の電極12の表面全体に粒子をより一様に分散させることにより、電池10の効率を向上させることができる。
【0033】
図4に示すように、各々が互いに距離をおいて配置された関係により第1の電極12を横切って延びる複数のスペーサ40が電極ホルダ16に接続されて、第1の電極12が電極ホルダ16及び第2の電極14に関して一定の位置を維持して保持されうるようになっている。一実施形態では、第1の電極12は、複数のスペーサ40の複数の組により分離されうる図2に示すような複数の透過性の電極ボディ12a−12cを含むことができ、これにより、電極ボディ12a−12cを互いに電気的に分離するために、スペーサ40の各組が、隣接する複数の電極ボディの間に配置されるようになっている。隣接する複数の電極ボディの間におけるスペーサ40の各組内において、複数のスペーサ40が、後に詳述するようないわゆる「流路(flow lanes)」42をそれら複数のスペーサ40の間に形成するような配置関係により配置されている。流路42は、立体的な(3次元の)ものであり、スペーサ40の高さに実質的に等しい高さを有する。一実施形態では、これらのスペーサは、これらの流路に対応する複数の切り欠き(cut-outs)を有する単体フレームにより提供されうるものである。一実施形態では、これらの流路は、泡形又は蜂巣形の構造であってイオン伝導性媒質がこの構造を通って流れることを可能にする構造を含むことができる。一実施形態では、これらの流路は、これらの流路を通るイオン伝導性媒質の流れを乱す(disrupt)ように構成された複数のピンのアレイを含むことができる。一実施形態では、電池のフレーム、スペーサ、流路及び/又は他の構成要素は、射出成形により形成されたプラスチック、又は、後に詳述するような化学プロセスを用いて形成されたエポキシ/絶縁材料により定められうる。図示した実施形態は、いかなる意味においても限定することを意図したものではない。
【0034】
一実施形態では、透過性の電極ボディ12a−12cは、実質的に同一のサイズを有することができる。一実施形態では、透過性の電極ボディは、異なるサイズを有することによって、引用によりその全内容が本明細書に組み入れられる2010年6月24日に出願された米国仮特許出願第61/358,339号に記載されたように、段のある足場(stepped scaffold)構成を用いることができる。
【0035】
スペーサ40は、非伝導性であり電気化学的に不活性であって、電池10における電気化学的反応に関して不活性となっている。好ましくは、スペーサ40は、電極ホルダ16に接続されたときに張力を生じて、これにより、第1の電極12、又は、電極ボディ12a−12cのうちの1つを押圧して、電極ホルダ16に関して平らな関係により第1の電極12又はこの第1の電極12のボディを保持するように、スペーサ40の大きさが決められる。スペーサ40は、このスペーサ40を張力を生じた状態により電極ホルダ16に接続されるようにする、ポリプロピレン、ポリエチレン、ノリル、フルオロポリマ等といったようなプラスチック材料により形成されうる。
【0036】
図5に示した実施形態では、各スペーサは、細長い中央部分44と、各端部における形成された接続部分46と、を有する。これら形成された接続部分46は、図6に示すように、電極ホルダ16において実質的に類似した形状を有する開口48により保持される。図示した実施形態では、形成された接続部分46及び開口48は、実質的に三角形状を有するが、ここで示された形状は、いかなる意味においても限定を意図したものではない。実質的に三角形の形状が、スペーサ40の細長い部分44の両側における表面50であって、電極ホルダ16における対応する表面52に接触するように構成された表面50を形成する。表面50及び表面52は、スペーサ40の細長い部分44の主軸MAに関して角度が付されたものとなっており、スペーサ40における張力はこの主軸MAに沿ったものとなるので、その張力により生成される力は、同一の面積を有する円形状又は正方形状を有する形成された部分に比べて、より大きな表面に伝えられうる。
【0037】
一旦、スペーサ40が端部における部分46を介して電極ホルダ16に接続されると、流路42は、ホルダ16の空洞18を横切って定められる。スペーサ40は、1つの流路42aを複数のスペーサ40のうちの1つにより分離された隣接する流路42bから本質的に密封するように構成されており、これにより、イオン伝導性媒質は、全体的に、実質的に1つの方向に流れるように案内されるようになっている。具体的には、イオン伝導性媒質は、全体的に、入口チャネル24から出口チャネル26に向かって第1の電極12を横切って第1の方向FDに流れうる。適切な圧力の低下が入口チャネル24と流動ゾーン28との間に生成され、これにより、イオン伝導性媒質の流れが実質的に上方向であって重力に反するように電池10が配向されているときであっても、イオン伝導性媒質が空洞18を横切って出口チャネル26に流れうるようになっている。一実施形態では、イオン伝導性媒質は、また、 may also permeate through the 第2の方向SDにおいて、第1の電極12、すなわち、個々の透過性の電極ボディ12a−12cを通って浸透し、第1の電極12、すなわち、透過性の電極ボディ12a−12cの反対側にある流路に至る。
【0038】
図8に示すように、第1の電極12は外部の負荷Lに接続されており、これにより、燃料が第1の電極12において酸化されたときに燃料により放出される電子が、外部の負荷Lに流れるようになっている。外部の負荷Lは、引用によりその全内容が本明細書に組み入れられる2009年4月9日に出願された米国特許出願第12/385,489号に詳細に記載されているように、透過性の電極ボディ12a−12cの各々に並列に接続されうる。
【0039】
第2の電極14は、この第2の電極14が外部の負荷Lに接続され、電池10が放電モードで動作するときに、カソードとして機能する。第2の電極14は、カソードとして機能するときに、外部の負荷Lから電子を受け取り、第2の電極14に接触する酸化剤を還元する、ように構成されている。一実施形態では、第2の電極14は、空気吸入式(air breathing)電極により構成され、酸化剤は、周囲の空気における酸素により構成される。
【0040】
酸化剤は、受動型伝達システムにより第2の電極14に伝達されうる。例えば、周囲空気に存在する酸素が酸化剤である場合には、カバー19における溝54、及び、電気化学電池システム100の中央に設けられた電極ホルダ16における溝56により与えられる開口といったような、電池における開口を介して、単に第2の電極14を周囲空気に曝すことにより、酸素を第2の電極14に十分に拡散/浸透させることができる。他の適切な酸化剤を用いることができ、本明細書における記載した実施形態は、酸化剤として酸素を用いることに限定されるものではない。外周ガスケット15が、第2の電極14の外周と、カバー19又は電極ホルダ16との間に適切に配置されて、イオン伝導性媒質が第2の電極14の周りから漏れて空気に曝すための溝54、56における領域に至ることを防止することができる。
【0041】
他の実施形態では、送風機(air blower)といったようなポンプが、圧力下において第2の電極14に酸化剤を伝えるために用いられうる。酸化剤源は、酸化剤の抑制した(contained)源でありうる。同様に、酸化剤が周囲空気からの酸素であるときには、酸化剤源は、受動型であろうと能動型(例えばポンプ及び送風機等)であろうと、空気が第2の電極14に流れることを可能にする、伝達システムとして広く解釈されうる。このように、「酸化剤源」という用語は、抑制した(contained)酸化剤、及び/又は、周囲空気から第2の電極14に対して受動的に又は能動的に酸素を伝達するための構成を包含するように意図されたものである。
【0042】
外部の負荷Lにより取り出すことが可能な電気は、第2の電極14における酸化剤が還元されたときに生成される一方、第1の電極12における燃料は、酸化されて酸化された形態となる。一旦、第1の電極12において燃料が全体的に酸化されると、又は、酸化が燃料電極の不活性化(passivation)に起因して阻まれると、電池10の電位が使い果たされる。スイッチ60が第2の電極14と負荷Lとの間に配置されることによって、第2の電極14が、必要に応じて、負荷Lに接続され負荷Lから切断されるようにすることができる。
【0043】
放電モードの間及び静止(開回路)時間期間の間において水素の放出を制限又は抑えるために、そのような反応を阻止すべく塩を加えることができる。錫、鉛、銅、水銀、インジウム、ビスマスといった塩、又は、高い水素過電位を有する他の材料を用いることができる。また、酒石酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、アンモニウムといった塩、又は、他の水素放出抑制添加物を付加することができる。一実施形態では、水素の放出を抑えるために、Al/Mgといったような金属燃料合金を用いることができる。
【0044】
電池10における燃料が全体的に酸化された後、又は、酸化した燃料イオンを還元して燃料に戻すことにより電池10内に燃料を再生成することが望まれるときにはいつでも、第1の電極12及び第2の電極14が、図8に示すように、適切なスイッチ62を用いて、外部の負荷Lから切断され電源PSに接続されるものとすることができる。電源PSは、第1の電極12と第2の電極14との間に電位差を付与することにより電池10を充電するように構成されており、これにより、燃料の還元可能な種が、還元され、透過性の電極ボディ12a−12cの上に電着し、対応する酸化反応が第2の電極14において発生し、これは通常酸素を放出する酸化可能な種の酸化であり、電池10からオフガス(off-gassed)されうるものである。引用によりその全内容が本明細書に組み入れられる2009年4月9日に出願された米国特許出願第12/385,489号に詳細に記載されているように、透過性の電極ボディ12aといったような透過性の電極ボディのうちの1つのみが電源PSに接続されることによって、燃料が、この透過性の電極ボディの上に還元し、連続的に、透過性の電極ボディ12b−12cの上に次々に成長する。スイッチ62は、電池10がいつ放電モード及び充電モードにおいて動作するのかを制御することができる。
【0045】
開位置と閉位置との間においてスイッチ62の動作を制御するために、任意の適当な制御メカニズムが用いられうる。例えば、開位置に向かって付勢されたリレースイッチが、電源に接続され充電が開始したときにこのリレースイッチを閉じる誘導性コイルとともに、用いられうる。さらには、透過性の電極ボディ12a−12cに個別に接続することを可能にするより複雑なスイッチが用いられて、負荷との接続/負荷からの切断、並びに、電極ボディ同士の接続及び切断をもたらすことができる。
【0046】
図9は、第2の電極14ではなく、第3の電極70が、充電電極として機能するように設けられた実施形態を示す。図2に示すように、第3の電極70と第2の電極14との間にスペーサ72及びシール部材17が配置されるように、第3の電極70が、第1の電極12と第2の電極14との間に配置されるものとすることができる。スペーサ72は、非伝導性であり、開口を有し、この開口を通ってイオン伝導性媒質が流れることができる。
【0047】
図8に関して上述した実施形態では、上述したように、第2の電極14が、電力生成/放電の間においてカソードとして機能し、充電の間においてアノードとして機能する。図9においては、充電の間には、負荷が、第1の電極12の透過性の電極ボディ12a−12cの各々、及び、第3の電極70に並列に接続される。電流生成の間には、第1の電極12において燃料が酸化されて電子が生成され、この電子は、負荷Lに電力を与えるべく伝えられた後、酸化剤の還元のために第2の電極14に伝えられる(後に詳細に説明するように)。
【0048】
本発明の様々な実施形態のいずれにおいても、カソード電位を1つのボディのみに印加してボディごとの連続的な成長を生成するのではなく、カソード電位を第1の電極12のすべてのボディ電極12a−12cに印加することもできる。1つの端子から生ずる連続的な成長は、より高い密度をもたらすので、有利である。具体的には、予め接続した複数の電極ボディにおける成長は、各ボディが連続的な成長により次々接続されるにつれて、継続する。すべての電極ボディが同一の電位を受けると、成長は、充電電極の間に短絡が発生するまで起こるに過ぎない。ここで、充電電極とは、図8の実施形態における第2の電極14、及び、図9の実施形態における第3の電極70、並びに、充電電極に最も近い電極ボディである。よって、この方法により、より早く、より密度の低い成長を実行することが可能であり、これは、特定の充電要求に応じて変更可能なものである。
【0049】
図8及び図9に示した実施形態は、いかなる意味においても限定するものとして考えるべきものではなく、電池10が充電可能となるようにどのように構成されるのかについての非限定的な例として与えられたものである。例えば、引用によりその全内容が本明細書に組み入れられる、2009年9月18日に出願された米国仮特許出願第61/243,970号、及び、2010年9月17日に出願された米国特許出願第12/885,268号が、電池において切り替わる充電/放電モードを備えた充電可能な電気化学電池システムの様々な実施形態を説明している。
【0050】
また、上述したスイッチの様々な実施形態(例えば、充電モード及び放電モードを可能にするためのスイッチ)のいずれもが、引用によりその全内容が本明細書に組み入れられる2010年9月16日に出願された米国特許出願第61/383,510号に記載された連続的なものといったような、動的に変化する酸素を放出する(すなわち、充電する)電極/燃料電極を有する複数の電気化学電池とともに用いられうる。例えば、米国仮特許出願第61/383,510号に記載されたように、各電池10は、また、複数の電極ボディに関連付けられた、その電池10に専用の複数のスイッチを有して、連続的な燃料成長を可能する。
【0051】
例えば、一実施形態では、充電の間において、各電池10の充電電極は、次の電池10の第1の電極12に結合されうる。一実施形態では、充電の間において、第1の電極12の第1の電極ボディ12aがカソード電位を有し、残りの電極ボディ、及び/又は、別の充電電極が、アノード電位を有するものとすることができる。このような実施形態では、第1の電極12の連続的な燃料成長の間には、燃料は、カソード電位を有する第1の電極ボディ12aにおいて成長し、アノード電位を有する隣接する電極ボディ12bとともに短絡を生じさせる。隣接する電極ボディ12bは、この後、アノード電位のソースから切断され、これにより、電気的な接続により、隣接する電極ボディ12bは、また、カソード電位を有する。このプロセスは、さらなる成長が不可能となる(すなわち、カソード電位が、アノード電位を有する最後の電極ボディ、又は、別の充電電極と短絡する)まで、残りの電極ボディについても継続されうる。複数の電極ボディを互いに接続/切断するために、及び/又は、複数の電極ボディをカソード電位のソース又はアノード電位のソースに接続/切断するために、複数のスイッチが用いられうる。よって、連続的な燃料成長を有するこのような実施形態では、充電電極は、第1の電極12とは別の充電電極であり、又は、少なくとも、第1の電極12の隣接する電極ボディであるか、アノード電位を有する他のすべての電極ボディでありうる。別言すれば、充電電極は、別の充電電極、カソード電位を有する少なくとも1つの電極ボディに隣接して配置されたアノード電位を有する1つの電極ボディ、及び/又は、カソード電位を有する少なくとも1つの電極ボディに隣接して配置されたアノード電位を有する電極ボディ群でありうる。
【0052】
このように、充電電極は、その用語が本出願のより広い態様において用いられているように、アノード充電という役割を果たすに過ぎない静的な又は個別の電極である必要は必ずしもなく(そうであってもよいが)、時には、アノード電位が印加される燃料電極内における1又は複数のボディでありうる。よって、動的という用語は、充電の間において、充電電極として機能し、かつ、アノード電位を受ける物理的な1又は複数の構成要素が、変化しうる、という事実を意味するために用いられる。
【0053】
放電の間において、電池10の第2の電極14は、次の電池10の第1の電極12に作動的に接続されるものとすることができ、燃料の消費は、複数の電極ボディによりなされる(複数の電極ボディの間における電気的接続は燃料成長によってなされる)。電池10が適当に又は他の理由により機能しない場合、電池10はまた、米国特許出願第12/885,268号に記載されたように、バイパス切替構成を用いてバイパスされうる。
【0054】
また、幾つかの実施形態では、複数の電池が「2重電池(bi-cells)」として設計されうる。この用語は、燃料電極の両端にある1対の空気電極を意味する。放電の間において、これらの空気電極は、ほぼ同一のカソード電位にあり、燃料電極は、アノード電位にある。通常は、1対の個別の充電電極が、空気電極と燃料電極との間にあるイオン伝導性媒質の中に配置されうる。充電の間において、充電電極は、ほぼ同一のアノード電位にあり、燃料電極は、カソード電位にある(或いはまた、上述したように、充電電極が動的に充電される)。よって、空気電極は、共通の端子を共有することができ、燃料電極は、専用の端子を有し、充電電極はまた共通の端子を共有することができる。したがって、電気化学的にいえば、このような2重電池は、単一電池として捉えることができる(2重電池内では、両方向の燃料成長といったような電池の特定の特徴によって、1つの2重電池は、複数の特定の目的のための2つの電池として考えられるが、しかしながら、モード放電及び接続管理のためのより高いレベルにおいては、これらの特徴は、関連の薄いものであり、1つの2重電池は、単一の電池として考えることが可能なものである)。一実施形態において、1対の空気電極は、第2の電極14に対応し、燃料電極は、第1の電極12に対応し、1対の充電電極は、第3の電極70に対応しうる。
【0055】
図4に戻り、イオン伝導性媒質は、第1の電極12を通過した後、電極ホルダ16の空洞18の出口36と出口22とに接続された出口チャネル26に流入しうる。出口22は、イオン伝導性媒質が電池10において再循環されるような実施形態では、入口20に接続され、又は、複数の電池10が流動的に直列に接続されているときには、後に詳述するように、隣接する電池の入口に接続されうる。一実施形態では、出口22は、電池10において使用されたイオン伝導性媒質を収集するために容器に接続されうる。
【0056】
図1及び図2に示した複数の電池10は、流動的に直列に接続されうる。直列に接続された複数の電池の実施形態についての詳細は、引用によりその全内容が本明細書に組み入れられる、2008年12月5日に出願された米国仮特許出願第61/193,540号、及び、2009年12月4日に出願された米国特許出願第12/631,484号において説明されている。第1の電池10の出口22は、第2の電池10の入口20に流動的に接続され、第2の電池10の出口22は、第3の電池の入口20に接続されるものとすることができ、以下同様である。図1及び図2の実施形態は、2つの電池10を示しているが、さらなる電池が、重ねられ、図示した電池に流動的に接続されうる。上述し、さらに図3及び図4に示された、入口チャネル24及び出口チャネル26により生成された曲がりくねった蛇行した経路に起因して、チャネル24、26を介したイオン伝導性媒質のための流路の長さは、電池10の各々における第1の電極12と第2の電極14との間における距離よりも長い。これにより、流動的に接続された複数の電池の間には、個々の電池10内におけるイオン抵抗よりも大きなイオン抵抗が形成される。これにより、2008年12月5日に出願された米国仮特許出願第61/193,540号、及び、2009年12月4日に出願された米国特許出願第12/631,484号において説明されているように、複数の電池100のスタックの内部イオン抵抗損失を低減又は最小化することができる。
【0057】
動作時には、既に金属燃料が堆積している第1の電極12が負荷Lに接続され、第2の電極14が負荷Lに接続される。イオン伝導性媒質が、正の圧力の下、入口20に入り、入口チャネル24及び空洞18の入口34を通って流れ、流路42の流動化ゾーン28に流入する。イオン伝導性媒質は、スペーサ40の細長い中央部分44により定められた流路42において透過性の電極ボディ12a−12cを横切って流れる。イオン伝導性媒質は、また、第1の電極12の透過性の電極ボディ12a−12cを通って浸透しうる。イオン伝導性媒質は、同時に第1の電極12及び第2の電極14に接触し、これにより、燃料が酸化し電子を負荷Lに伝えることを可能にする一方、酸化剤は、負荷Lにより第2の電極14に伝えられる電子を介して、第2の電極14において還元される。イオン伝導性媒質が流路42を通過した後、イオン伝導性媒質が、空洞18の出口36を介して空洞18から流出し、出口チャネル26を通って電池10の出口22から流出する。
【0058】
電池10の電位が使い果たされたときには、又は、他の理由により電池10を充電することが望まれるときには、第1の電極12が電源PSの負の端子に接続され、充電電極、すなわち、図8に示した実施形態では第2の電極14、及び、図9に示した実施形態では第3の電極70が、電源PSの正の端子に接続される。充電モード又は再充電モードでは、第1の電極12がカソードになり、充電電極14、70がアノードになる。第1の電極12に電子を供給することにより、燃料イオンが、還元され燃料に入り、透過性の電極ボディ12a−12cの上に再度堆積しうる一方、イオン伝導性媒質が、放電モードに関連して上述したものと同様の動作により、電池10を循環する。
【0059】
流路42は、方向性(directionality)、一様な流れのパターン、さらには、第1の電極12を横切るイオン伝導性媒質の伝達をももたらす。流動化ゾーン28は、粒子、及び、電池10の放電モードの間にイオン伝導性媒質内に形成された粒子を攪拌し、これらの粒子がイオン伝導性媒質から出て空洞の底部に定着することを防止し、これにより、これらの粒子は、イオン電導性媒質とともに第1の電極12を横切って流れることができる。また、流路42は、これらの粒子が定着すること、及び/又は、電極を覆うことをも防止する。電池10が充電モードにあるときには、粒子による第1の電極12を横切った伝達が改善されることにより、第1の電極12の上により一様に還元した燃料が堆積することが可能となり、これにより、第1の電極12における燃料の密度が改善され、電池10の容量及びエネルギー密度が増加し、したがって、電池10のサイクル寿命を高めることができる。また、粒子の伝達及び反応副産物を制御する能力を有することにより、第1の電極12の上に副産物が早期に不活性化/堆積することが防止されうる。不活性化は、燃料の利用性を低下させること、及び、サイクル寿命を縮めることに繋がりうることであって、望ましくないものである。
【0060】
図10〜図12は、本発明の別の実施形態に係る電気化学燃料電池110を示す。図10〜図12に示された電池110は、第1の電極、スペーサ及び電極ホルダを除いて、上述した電池10と略同一の特徴を含むものである。したがって、以下、これらの特徴のみについて詳細に説明する。例えば、図10に示すように、電池110は、電極ホルダ116の空洞118に配置された第1の電極112を含み、第1の電極112が、電極ホルダ116、及び、第1の電極112において流路142を形成する複数のスペーサ140より支持されるようになっている。
【0061】
一実施形態では、第1の電極112は、電池110が後述するような放電モードすなわち電気生成モードにおいて動作するときに、アノードとして機能する金属燃料電極である。一実施形態では、第1の電極112は、図12に示すように、複数の透過性の電極ボディ112a−112fを含みうる。各電極ボディは、電着により、又は、他の方法により、電池110において循環するイオン伝導性媒質から金属燃料の粒子又はイオンを捕捉して保持することが可能な組成(formation)により形成されたスクリーン(screen)を含むことができる。
【0062】
各々が互いに距離をおいて配置された関係により第1の電極112を横切って延びる複数のスペーサ140が電極ホルダ116に接続されて、第1の電極112が電極ホルダ116及び第2の電極(図10〜図12には示されていない)に関して一定の位置を維持して保持されうるようになっている。図12に示されたような浸透性の電極ボディ112a−112fは、複数のスペーサ140の複数の組により分離されて、スペーサ140の各組が隣接する複数の電極ボディの間に配置され、電極ボディ112a−112fを互いに電気的に分離するようになっている。隣接する複数の電極ボディの間におけるスペーサ140の各組内において、複数のスペーサ140が、いわゆる「流路(flow lanes)」142をそれら複数のスペーサ140の間に形成するような配置関係により配置されている。スペーサ140は、非伝導性であり電気化学的に不活性であって、電池110における電気化学的反応に関して不活性となっている。スペーサ140は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等といったような適当なプラスチック材料により形成されうる。上述した流路42と同様に、流路142は、図12に示すように、立体的な(3次元の)ものであり、スペーサ140の高さに実質的に等しい高さを有する。
【0063】
図示した実施形態では、空洞118が、第1の電極112の形状に実質的に合致する略正方形状を有する。空洞118の一方の側又は一端が、複数の空洞入口134を介して入口チャネル124に接続されている。入口チャネル124は、入口120であってこの入口120を通ってイオン伝導性媒質が電池110に入るための入口120に接続されている。各空洞入口134は、図11に示すように、実質的に、対応する1つの流路に合わせて配向されている。イオン伝導性媒質は、流路142を通過した後、図10に示されているように、空洞出口136を介して空洞118から出ることができる。
【0064】
透過性のボディ112a−112f及びスペーサ140は、第1の電極112が電極ホルダ116に配置される前に、単一のユニットとして形成されうる。換言すれば、図12に示す第1の電極は、任意の適当な製造プロセスを用いて単一のユニットとして形成されうる。例えば、一実施形態では、所望される流路142のサイズと実質的に同じサイズである複数の製造スペーサ(図示せず)が、隣接する透過性のボディ112a−112fの間に配置されて、実質的に並行に距離をおいた関係により、隣接する透過性の電極ボディ112a−112fを保持することができる。同一の隣接する透過性の電極ボディの間に配置される複数の製造スペーサは、好ましくは、実質的に、互いに平行であって、電極ボディ112a−112fに沿って等しい距離がおかれたものであり、同一の電極ボディの両側に配置された複数の製造スペーサは、好ましくは、実質的に互いに合せて配向される。電極ボディ112a−112f及び製造スペーサが、任意の適当な手段により、一定の位置を維持し、一緒に保持された後、スペーサ140について用いられるべき適当な材料が、複数の製造スペーサの間に、かつ、透過性の電極ボディ112a−112fを横切って、注入されうる。その材料が硬化した後、製造スペーサが第1の電極112から除去されて、図12に示すような単一の電極足場(scaffold)ユニット112が形成される。
【0065】
一実施形態では、製造スペーサが金型の部分となるように、射出金型が製造されうる。透過性の電極ボディ112a−112fを収容するためのスロット(slots)が形成され、スペーサ140のための体積を定める空洞もまた形成されうる。電極ボディ112a−112fの各々が、隣接するボディに対して平行に距離をおいた関係により金型に挿入された後、スペーサ140のために用いられるべき材料が空洞に注入されて、スペーサ140が形成されうる。その材料が金型の中において冷却された後、第1の電極112が、透過性の電極ボディ112a−112f及びスペーサ140を含む単一のユニットとして、金型から取り出されうる。スペーサ140が、電極ボディ112a−112fの上にかつこれらのボディを横切って一体的に形成されて、電極ボディ112a−112fを含む第1の電極112が単一のユニットとなることを可能にする、任意の適当な製造方法が用いられうる。説明してきた方法は、いかなる意味においても限定的なものとして意図されたものではない。
【0066】
上述した透過性の電極ボディ12a−12cと同様に、一実施形態では、透過性の電極ボディ112a−112fは、実質的に同一のサイズを有することができる。一実施形態では、透過性の電極ボディ112a−112fは、異なるサイズを有して、2010年6月24日に出願された米国仮特許出願第61/358,339号に記載されたように、段のある足場(stepped scaffold)構成を用いることができる。
【0067】
本発明の様々な実施形態は、上述したように放電モードの間において生成され、逆に、再充電の間に還元され燃料として電着される、反応副産物の管理に限定されるものではない。実際には、本発明の様々な実施形態は、還元可能な燃料種が、反応副産物とは異なったものであって、反応副産物とは別に供給される、ような場合にも用いられうる。本発明の様々な実施形態は、イオン伝導性媒質の第1の電極を横切る一様な流れパターン、さらには、第1の電極を構成する透過性の電極ボディの間にイオン伝導性媒質を伝えること、を提供するものであり、これにより、上述した電気化学電池及びシステムの効率を向上させることができる。
【0068】
本明細書において複数の電極について言及したが、幾つかの実施形態における様々な構造は、1又はそれ以上の電極として、デバイスの動作モードに依存して、異なる態様で機能することができるものである、ということを理解されたい。例えば、酸化電極が充電電極として2重機能性のものであるような幾つかの実施形態では、同一の電極構造が、放電の間には酸化電極として作用し、充電の間には充電電極として作用する。同様に、充電電極が動的充電電極であるような実施形態では、燃料電極のすべてのボディが放電の間には燃料電極として作用するが、充電の間には、それらボディのうちの1又はそれ以上のボディが、電着した燃料を受け取ることにより燃料電極として作用し、それらボディのうちの1又はそれ以上の他のボディが、充電電極として作用して酸化剤(例えば酸素)を放出し、燃料電極が、電着成長がそれらボディのうちのさらに多くのボディに繋がるにつれて、成長する。このように、電極に対する参照は、特別な電極構造及び機能的な役割のうちのいずれかとして表現上定義されるものであり、多数の電極機能を可能にする構造は、電池の異なる複数の動作モードの間において役割を果たしうる(したがって、同一の多機能性の構造は、この理由により、多数の電極を満たすものとして考えられる)。
【0069】
上述した様々な実施形態は、専ら本発明の構造的及び機能的な原理を示すために与えられたものであって、限定的なものとして意図されたものではない。例えば、本発明は、異なる燃料、異なる酸化剤、異なる電解質、及び/又は、異なる全体的な構造的構成又は材料を用いて、実施することが可能なものである。このように、本発明は、添付した特許請求の範囲の思想及び範囲内にある、あらゆる修正、代用、変更及び均等物を包含するように意図されたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電極と、
該燃料電極から距離をおいて配置された酸化電極と、
これらの電極に接触するイオン伝導性媒質と、
を具備し、
前記燃料電極及び前記酸化電極が、放電の間において、前記燃料電極において金属燃料を酸化し、前記酸化電極において酸化剤を還元して、負荷に印加するための放電電位差を前記燃料電極と前記酸化電極との間に発生させる、ように構成されており、
さらに、
前記燃料電極を保持するための空洞と、該空洞の一方の側において該空洞に接続され、該空洞にイオン伝導性媒質を供給するように構成された、少なくとも1つの入口と、前記空洞の前記少なくとも1つの入口とは反対の側において該空洞に接続され、前記イオン伝導性媒質が前記空洞から流出することを可能にするように構成された、少なくとも1つの出口と、を備えた電極ホルダと、
互いに距離をおいた関係により前記燃料電極及び前記空洞を横切って延びて該空洞に複数の流路を定める複数のスペーサであって、前記イオン伝導性媒質が、前記少なくとも1つの入口を介して各流路に流入し、前記燃料電極を横切り、前記少なくとも1つの出口を介して前記流路から流出するようになっている、複数のスペーサと、
を具備する電気化学電池。
【請求項2】
さらに充電電極を具備し、
前記燃料電極及び前記充電電極が、再充電の間において、電源から前記燃料電極と前記充電電極との間に再充電電位差を印加されることにより、前記燃料の還元可能な種を還元して前記燃料を前記燃料電極の上に電着させ、前記酸化剤の酸化可能な種を酸化する、ように構成されている、請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項3】
前記充電電極が、(a)酸化電極、(b)前記酸化電極から距離をおいて配置された第3の電極、及び、(c)前記燃料電極の一部、からなる群から選択されたものである、請求項2に記載の電気化学電池。
【請求項4】
前記燃料電極が距離をおいた関係にある複数の透過性の電極ボディを含み、
前記充電電極が、再充電の間に、前記透過性の電極ボディのうちの少なくとも幾つかの電極ボディを含む動的充電電極である、請求項3に記載の電気化学電池。
【請求項5】
各スペーサが、該スペーサの両端において、張力を生じた状態により前記電極ホルダに取り付けられて、前記燃料電極を前記電極ホルダに固定している、請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項6】
各スペーサが、細長い中央部分と、該細長い中央部分の各端部における形成された端部部分と、を含み、
前記電極ホルダが、前記スペーサの前記形成された端部部分に対応する複数の形成された開口を含んで、各スペーサの端部が前記電極ホルダにおける前記形成された開口により保持されることができるようになっている、請求項5に記載の電気化学電池。
【請求項7】
前記形成された端部部分及び前記形成された開口が実質的に三角形状を有する、請求項6に記載の電気化学電池。
【請求項8】
前記少なくとも1つの入口が複数の入口を含み、
前記少なくとも1つの出口が複数の出口を含み、
前記複数の入口のうちの1つの入口、及び、前記複数の出口のうちの1つの出口が各流路に関連付けられて、前記イオン伝導性媒質が、前記関連付けられた入口を介して各流路に流入し、前記燃料電極を横切って、前記関連付けられた出口を介して前記流路から流出するようになっている、請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項9】
前記空洞が、各流路の入口において広がる表面を含み、
該広がる表面が、前記流路における粒子が該流路に流入するイオン伝導性媒質とともに流動化される空間を部分的に定める、請求項8に記載の電気化学電池。
【請求項10】
前記入口が、前記電極ホルダの入口チャネルと前記流路との間に圧力の低下をもたらすように構成される、請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項11】
前記燃料電極が、距離をおいた関係にある複数の透過性のボディを含み、
前記複数のスペーサが、前記複数の透過性のボディの間に設けられて、前記イオン伝導性媒質が、前記透過性のボディを通って浸透し、前記流路における前記透過性のボディを横切って流れる、請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項12】
各流路が、立体的なものであって、前記流路を定める前記スペーサと実質的に等しい高さを有する、請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項13】
放電の間に酸化された前記燃料が、前記イオン伝導性媒質の中に酸素を形成する、請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項14】
各スペーサが前記燃料電極の中に又は該燃料電極の上に成形される、請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項15】
前記燃料電極が、距離をおいた関係にある複数の透過性のボディを含み、
前記複数のスペーサが、前記複数の透過性のボディの中に又は該複数の透過性のボディの上に成形されて、該複数の透過性のボディが距離をおいた関係により保持され、前記イオン伝導性媒質が前記複数の透過性のボディを通って浸透し、かつ、前記流路における前記複数の透過性のボディを横切って流れることができるようになっている、請求項14に記載の電気化学電池。
【請求項16】
複数の透過性の電極ボディと該複数の透過性の電極ボディの間に延びる実質的に平行な複数のスペーサとを含む、電気化学電池のための燃料電極を製造する方法であって、
各々が、互いに実質的に平行な2つの製造スペーサにより定められる複数の空洞に材料を注入する段階であって、隣接する前記複数の透過性の電極ボディが、これらの間にある前記製造スペーサを用いて実質的に互いに平行にかつ互いに距離をおいて保持されており、前記複数の透過性の電極ボディが前記複数の空洞の中に延びるようにする、段階と、
前記材料を硬化させて前記燃料電極の前記実質的に平行なスペーサを形成する段階と、
前記製造スペーサから前記透過性の電極ボディを分離して、前記透過性の電極ボディと前記材料から形成された前記実質的に平行なスペーサとが単一の一体的なユニットとなる段階と、
を含む方法。
【請求項17】
前記複数の空洞が金型の中に形成される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記製造スペーサが前記金型の一体的な部品である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記製造スペーサが個々の部品である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
燃料電極と、
該燃料電極から距離をおいて配置された酸化電極と、
充電電極と、
これらの電極に接触するイオン伝導性媒質と、
を具備し、
前記燃料電極及び前記酸化電極が、放電の間において、前記燃料電極において金属燃料を酸化し、前記酸化電極において酸化剤を還元して、負荷に印加するための放電電位差を前記燃料電極と前記酸化電極との間に発生させる、ように構成されており、
前記燃料電極及び前記充電電極が、再充電の間において、電源から前記燃料電極と前記充電電極との間に再充電電位差を印加されることにより、前記燃料の還元可能な種を還元して前記燃料を前記燃料電極の上に電着させ、前記酸化剤の酸化可能な種を酸化する、ように構成されており、
さらに、
前記燃料電極を保持するための空洞と、該空洞の一方の側において該空洞に接続され、該空洞にイオン伝導性媒質を供給するように構成された、少なくとも1つの入口と、前記空洞の前記少なくとも1つの入口とは反対の側において該空洞に接続され、前記イオン伝導性媒質が前記空洞から流出することを可能にするように構成された、少なくとも1つの出口と、を備えた電極ホルダと、
互いに距離をおいた関係により前記燃料電極及び前記空洞を横切って延びて該空洞に複数の流路を定める複数のスペーサであって、前記イオン伝導性媒質が、前記少なくとも1つの入口を介して各流路に流入し、前記燃料電極を横切り、前記少なくとも1つの出口を介して前記流路から流出するようになっている、複数のスペーサと、
を具備する電気化学電池を充電する方法であって、
還元可能な種を含む前記イオン伝導性媒質を前記少なくとも1つの入口を通して前記流路に流入させる段階と、
前記充電電極をアノードとして機能させ前記燃料電極をカソードとして機能させて、前記充電電極と前記燃料電極との間に電流を印加して、前記還元可能な燃料種が、還元され、前記燃料電極において酸化可能な形により燃料として電着されるようになっている段階と、
前記電流を除去して前記充電を切断する段階と、
を含む方法。
【請求項21】
前記充電電極が、(a)前記酸化電極、(b)該酸化電極から距離をおいて配置された第3の電極、及び、(c)前記燃料電極の一部分、からなる群から選択されたものである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記燃料電極が距離をおいた関係にある複数の透過性の電極ボディを含み、
前記充電電極が、再充電の間に、動的充電電極であって、前記透過性の電極ボディのうちの少なくとも幾つかの電極ボディを含む、請求項21に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2013−507741(P2013−507741A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533370(P2012−533370)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/052099
【国際公開番号】WO2011/044528
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(511261400)フルイディック,インク. (3)
【氏名又は名称原語表記】FLUIDIC,INC.
【住所又は居所原語表記】8455 North 90th Street, Suite 4,Scottsdale, Arizona  85258 United States of America
【Fターム(参考)】