説明

流体、特に食用油の質および/または劣化を測定するためのデバイス

本発明は、互いに離間した少なくとも1対の電極からなるセンサを含む、流体、特に油の質および/または劣化を測定するためのデバイスに関する。センサは測定する流体に浸漬される。電極と流体は容量素子を形成し、その静電容量は流体の誘電率に応じて変化する。センサは、誘電率を表す電気出力信号を生成することができる。本発明によるデバイスはまた、出力信号を受け取り、出力信号に基づいて流体の質および/または劣化の程度を判断することのできる処理手段を含む。本発明は電極がほぼ同一平面上に延びていること、およびその平面の両側で電極の2つの表面を流体がとり囲むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体、特に油の質および/または劣化を測定するための容量性デバイスに関する。本発明は特に、フライ油などの食用油の質および/または劣化を調理装置内で直接測定するためのこのタイプのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
食用油は調理中、特に何度も高温に加熱されると劣化することはよく知られている。このような油は一般に、食品を揚げるために180度程度の温度まで加熱される。そのような温度では重合や熱酸化など複数の化学反応が起こり、油の質が著しく変化する。これらの反応による生成物の量は法により課せられた境界値を超えてはならない。というのは、このような境界値を超えた油は食用には適さないとみなされるからである。したがって、油を交換する必要が生じたときにすぐに交換できるように、信頼できる方法で基準値を検出できるようにすることが重要である。基準値の測定は長い間料理人に委ねられており、料理人が視覚と嗅覚による点検を行った後で油がまだ食用に適するかどうかを判断していた。勿論、そのような方法は全く主観的であり、したがって信頼性は低い。
【0003】
この問題を克服するために、食用油の質および/または劣化を客観的に測定できるように、これまで当技術分野では様々なデバイスが提案されてきた。食用油の劣化は特にその熱酸化によって引き起こされ、この反応によって極性化合物が生じるので、モニタする油が誘電体を形成するコンデンサの静電容量を測定することによって、油の劣化程度が油の誘電率に相関するデバイスが想定されてきた。
【0004】
このようなデバイスは、例えば米国特許第5,818,731号に開示されている。本書はフライ用鍋などの調理装置に入れる食用油の質を測定するためのデバイスを開示している。本デバイスは、調理温度または揚げ温度の範囲内で、静電容量と油の光透過率の変化を同時にモニタする。容量測定ユニットは、測定コンデンサを形成する互いに組み合わされた2組の平行板を含む。板材の組が油に浸漬されると、油は測定ユニットの測定コンデンサの誘電体を形成し、静電容量の変化が直流の発振器ブリッジ回路によって測定される。しかしながら、このデバイスにはいくつかの欠点がある。第1の欠点は、板材の間隔が狭く、板材を油の中に入れると、毛管現象によって油が板材の間を流れにくくなることである。したがって、板材の間に存在する油の通常の変化は、誤った油劣化の測定結果をもたらすことがあり、保障されない。さらに、油の中に存在する固体粒子が板材の間で捕捉されることがあり、測定信号に悪影響を与える。また板材の間の間隔が狭いので、平行板コンデンサの構造によってこれらの空間へのアクセスがしにくくなっており、デバイスの保守作業を行うことが複雑になっていることにも留意されたい。別の欠点は、板材を使用するコンデンサが嵩張り、調理装置のかなりの空間を占めることにある。さらに、コンデンサによって形成される単一の測定センサは温度変化の影響を受けるので、誤った静電容量測定値がもたらされることがあり、そのようなエラーを補償するための手段を設けなければならなくなっている。本書で提案される解決策は、適切な処理回路に指示を与える温度センサを使用して、ソフトウェア手段によって測定される温度変化がモニタする油に関するデータを組み込んで考慮されるようにすることにある。したがって油の質が変化する、または新しい油を使用する場合、ソフトウェア手段をアップデートしなければならず、デバイスの使用が非柔軟的になっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、単純、コンパクト、かつ廉価な構造を有する、容量測定によって流体の質および/または劣化を測定するための改良されたデバイスを提供することによって、前述の従来技術の欠点を克服することである。
【0006】
本発明の主な目的はまた、容量測定センサが静電容量の変化の測定感度を高レベルに維持しながら、電極付近の測定する流体を流れやすくする構造を有する、このタイプのデバイスを提供することである。
【0007】
本発明の主な目的はまた、流体内に存在する粒子が測定コンデンサの電極間で捕捉される確率を減少させる、このタイプのデバイスを提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、保守、特に測定センサの清掃を容易にする、このタイプのデバイスを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、容量測定が温度依存性でなく、利用に高い柔軟性を維持するこのタイプのデバイス、すなわち、デバイスを性質の異なる流体に使用しようとするとき処理回路のソフトウェア手段を体系的にアップデートする必要のない、このタイプのデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって本発明は、測定する流体に浸漬され互いに離間した少なくとも1組の電極を含み、電極と流体が容量測定素子を形成し、その静電容量が流体の誘電率の関数として変化する、流体、特に油の質および/または劣化を測定するためのデバイスに関する。センサは、誘電率を表す電気出力信号を生成する。デバイスは、出力信号を受け取る処理手段をさらに含み、出力信号に基づいて流体の質および/または劣化の程度を測定することが可能である。このデバイスは、電極がほぼ同一平面で延び、かつ流体が平面の両側で電極の両面を浸漬することを特徴とする。
【0011】
これらの特徴のおかげで、測定する流体は容量測定素子の電極の両側を簡単にすばやく流れることができる。したがって、電極付近に存在する流体は常に入れ替わり、デバイスが全体としての流体の質の向上を表している間は、デバイスによって測定される測定値の信頼性と精度が向上する。さらにこの構造によって、容量素子の間隙内に粒子が捕捉される危険性が大幅に低減される。本発明によるデバイスの別の利点は、間隙へのアクセスが容易であり、そのためセンサの保守作業が簡単になることである。また、測定電極の左右両面が流体に浸漬されているので、高レベルの測定感度を実現することが可能であることにも留意されたい。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、センサはさらに、基準流体に浸され互いに離間した少なくとも1組の基準電極を含み、基準電極と流体が基準容量測定素子を形成し、その静電容量が基準流体の誘電率の関数として変化する基準容量素子を含み、基準容量素子は基準誘電率を処理手段に送ることが可能であり、処理手段が基準信号を出力信号と比較するように配置されている。
【0013】
したがって、基準容量素子は常時「新品の」、すなわち言い換えれば劣化していない基準流体の誘電特性を測定し、容量測定素子によって生成された誘電率の値と比較することが可能な、流体の基準誘電率の値を供給することができる。また、2つのセンサを使用することによって温度変化による誘電率の変動を避けることができる。
【0014】
測定デバイスが調理油の入ったバットを含む調理装置と関連付けられるとき、容量測定素子を食品を揚げるためのフライ油に浸漬させることができ、基準容量素子は調理油と同じ特性を有するが調理油から遮断された密閉空間に入れられた別の基準食用油に浸漬させる。
【0015】
好ましくは、基準食用油の入った密閉空間は調理油と熱接触する。基準食用油は、勿論定期的に交換することができ、例えば1日1回、または劣化していない油の基準誘電率の値を明確に規定するために必要であれば継続的に交換することができる。この交換は自動でも手動でも行うことができる。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、以下の添付の図面を参照して、非限定的な例を使用して述べられた本発明による測定デバイスの好ましい実施形態の説明を読めば明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
最初に図1を参照すると、全体的に参照番号1で示すが、流体、特に油の質および/または劣化を測定するための容量デバイスの第1の実施形態が示されている。
【0018】
以下の説明は、油を入れて通常約200度まで加熱することのできるバットを含む調理装置において、食品を揚げるために使用される食用油などの質および/または劣化を測定するデバイス1の適用例についてなされることに留意されたい。
【0019】
測定デバイス1は、流体F(図2)に浸漬される互いに離間した1対の電極4、6を有するセンサ2を含む。流体Fは例えば、食用としてまだ適当かどうかを判断するために質および/または劣化を測定しようとするフライ用鍋の油である。電極4、6は油Fとともに、容量測定素子EFMを形成し、その静電容量が油の誘電率の関数として変化する。油が劣化すると、現れる極性化合物の量が増加し、それにより誘電率が上昇する。したがって、容量測定素子EFMの静電容量の上昇を測定することによって、油の質および/または劣化程度を判断することができる。このようにセンサ2、より具体的にはその容量素子EFMは幅広い温度範囲、特に20度から200度の間で、油の誘電率を表す電気出力信号を生成することができる。
【0020】
電極対の各電極4、6は、互いにほぼ平行な複数の歯4a、6aを有し基部4b、6bから延びる櫛の形状をしている。電極4、6は互いに対して、一方の電極4の歯4aが他方の電極6の歯6aと噛み合うように配置されている。したがって、電極4の歯はほぼ同一平面上に配置されている。
【0021】
この点について、例えば電極4、6は同一の平板を適切な方法で切断して形成され、板材は取扱い時に電極がその形状を維持するのに十分な剛性のものとすることに留意されたい。説明した例では、電極は0.1mmから3mmの間の厚さを有する板材で食品用鋼材(18−10カーボン系オーステナイト鋼)から製造される。他の種類の食品用鋼材、例えばZ7CN18−09、Z3CND18−12−02、Z6CNDT17−12、Z7CNU16−04も使用することができる。板材はレーザビームを使用して切断され、電極の歯の間に10nmから1mmの間の間隙を形成することができる。間隙Eが狭いほど、容量素子の感度は高くなることは明らかである。代替実施形態では、例えば、金、プラチナなどの層で被覆した基板など、導電物質で被覆した基板で形成された電極を想定することができる。
【0022】
図示された実施形態では、電極4、6が絶縁基板8に固定され、位置合わせ手段10とともに電極を互いに固定位置に保持している。より具体的には、電極4、6は各基部4b、6bから延びる固定突出部によって、適切な手段、例えばねじなどによって、基板に互いに固定される。位置合わせ手段10は、例えば基板8に打ち込まれ、この目的のために電極4、6の穴と協働する位置決めピンを含む。
【0023】
基板8は、測定電極4、6の領域に面する、すなわち電極4の歯4aと電極6の歯6aの間の空間によって形成される間隙に面する、中央開口12を有するフレームの形状である。この形状のおかげで、測定する流体は、この場合は油であるが、電極の平面の両側で電極4、6の両面を浸漬させ、電極4、6の歯4a、6a付近を循環できるようになっている。
【0024】
容量素子EFMが金属フレームCMに囲まれていることに留意されたい。この金属フレームは、外部の電気障害に対して保護スクリーンを形成し、それにより測定中のそのような障害の影響が低減される。このフレームは一般に金属製の格子で形成される。
【0025】
基板8は、好ましくは20度から200度を含む温度に耐え、低い熱膨張係数を有する材料、例えばセラミック材料などで製造される。ただし、測定デバイスの予想される適用例に適合可能な、他のどのような絶縁材料から製造することもできる。例えば前述の温度範囲で安定する必要のある食品への適用では、基板8をテフロン(登録商標)などのフッ素系高分子から製造することもできる。
【0026】
着想の目的で、本出願人は厚さ0.8mm程度のステンレス鋼製の電極4、6を使用して、確定的な試験を行った。電極4は9つの歯を含み、電極6は8つの歯を含み、それぞれ100μmの18の間隙を保ち、歯の幅は1mm程度である。基板はセラミック材料製であり、外面は5×5cm2で厚さ0.6mm程度である。
【0027】
油とともに電極4、6によって規定される容量測定素子EFMの静電容量は、例えば、当業者には周知でありマイクロコントローラ18と関連付けられたアナログ静電容量/電圧変換機16を含む処理手段14によって測定される。例として、Xemics社から発売された基準XE2004を備えた静電容量/電圧変換回路を使用することができる。
【0028】
電極4、6は回路16の入力に接続され、容量測定素子の静電容量を表すアナログ電圧信号Svを送る。信号Svは、マイクロコントローラ18の入力に送られ、信号Svはデジタル信号SNに変換される。一般には、Motorola社から発売されている68HC11で参照されるマイクロコントローラを使用することができる。次いでマイクロコントローラの出力におけるデジタル信号は、例えば液晶ディスプレイまたはLEDディスプレイの形態で製造された表示手段20に送られる。このディスプレイは例えば油の誘電率を表すデジタルの値を表示する。代替実施形態によれば、このデジタル値は適切な方法で処理して油中で計測された極性化合物の比率を示すことができる。
【0029】
図2を参照すると、測定デバイス1の容量測定素子EFMを、検査する食用油が入った従来の調理装置24のバット22内に配置する方法が示されている。処理手段14と表示手段20はこの図では省略されている。これらの手段は例えば、調理装置に関連するがバット22とは別の容器内に配置される。調理装置は勿論、加熱手段(図示せず)と関連付けられる。この実施形態では、基板8に固定された掛止手段26によって容量測定装置がバット22の側壁の上縁部から懸架され側壁にほぼ平行に延びている。
【0030】
図3では2つの曲線C1およびC2が示されており、それぞれが新品と中古の同じ油に対する装置1の容量測定素子の静電容量Cの変化を、温度Tの関数としてそれぞれ表している。「中古油」とは、調理に数回使用された油を意味する。曲線C1は、電極3、4を新しい油に浸漬したときの容量測定素子の静電容量の変化を示し、曲線C2は、電極3、4を中古の油に浸漬したときの容量測定素子の静電容量の変化を示す。これらの2つの曲線は、温度の関数として一般に同じように進み、特に所与の温度において、新品油と中古油について測定した静電容量の間の差異はほぼ一定であることに留意されたい。その結果、容量素子EFMの静電容量測定値によって、幅広い温度範囲で新しい油と中古油を容易に区別することができる。
【0031】
ここで図4を参照すると、本発明による測定デバイスの第2の実施形態を見ることができる。上述したものと同一の素子が同じ参照番号によって示されている。このデバイスはまた、調理装置24のバット22に入った食用油Fの質および/または劣化の測定への適用の範囲内で説明される。
【0032】
この実施形態では、センサ2は測定する油に浸漬された容量測定素子EFMに加えて、測定する油とは別の密閉空間内に配置した基準油Frefに浸漬した基準容量素子を含む。基準油は、測定する油の新品と同じ特徴を有する油である。基準容量素子EFRの構造は、好ましくは容量測定素子EFMの構造と同一とするが、必須ではない。したがって基準容量素子EFRは、電極4ref、6refが基準油Frefと組み合わされて形成される。このように基準容量素子EFRは、基準油の誘電率を表す基準信号を生成することができ、そのような信号を、処理手段26によって容量測定素子からの測定出力信号と比較することができる。容量測定素子と基準容量素子の処理手段26への接続が図4に概略的に示されている。この例では、処理手段26は一般に3つの入力およびマイクロコントローラ28に接続された1つのアナログ電圧出力を備えた容量/電圧変換機27を含み、マイクロコントローラは表示手段30に接続されている。容量素子EFMとEFRそれぞれの第1の電極6、4refは、変換機の第1の共通入力に接続され、容量素子EFM、EFRそれぞれの第2の電極4、6refは、容量/電圧変換機の第2、第3の入力にそれぞれ接続される。例として、Xemics社から発売された基準XE2004の容量/電圧変換機27を使用することができ、マイクロコントローラ28は第1の実施形態と関連して述べたのと同じタイプのものとすることができる。
【0033】
図示された実施形態では、基準容量素子EFRと測定容量素子EFMは、調理装置24のバット22内に配置されている。基準容量素子EFRは測定する油に浸漬された密閉空間32内に配置され、密閉空間32は、中に入っている基準油がバット24内に入っている測定する油と混ざらないように水密に密封される。測定容量素子EFMは、測定する油に浸漬されるようにするために、例えば側面が格子で形成され開口的に作用する密閉空間34内に配置される。このような壁面を使用することにより測定容量素子EFMの電極を保護するフィルタを形成し、それにより、測定の妨げとなることのある油内に浮遊する固体粒子が電極と接触しないようにする。勿論、別の変形例ではこれらの壁面を省略することも可能である。
【0034】
密閉空間32の壁面と開口的に作用する密閉空間34の壁面はそれぞれ、外部の電気干渉に対する保護金属フレームまたはスクリーンを形成しており、それにより測定中のそのような干渉による影響を低減することが可能になっていることに留意されたい。
【0035】
利便性のために、密閉空間32、34は互いに固定され、調理装置24のバット22に固定される単一の構造物36を形成している。好ましくは図4に示すように、容量素子はそれぞれの密閉空間内で絶縁支持体が基板と協働することによって固定される。
【0036】
基準油の入った密閉空間32は、開口部をキャップまたは蓋(図示せず)によって水密に密封することのできる充填チャネル38を含む。図示されていない変形例によれば、密閉空間32はさらに底部に配置される排出手段を含むことができる。
【0037】
構造物36は、バットの内側垂直壁22a付近に有利に配置され、測定を行いながらも食品調理のために空けた十分な空間が残されていることに留意されたい。
【0038】
構造物36はさらに、壁面22aに固定された補助掛止手段42a、42bと協働する掛止手段40a、40bを1つの側壁上に含む。図示された実施形態では、掛止手段40、補助掛止手段42はそれぞれ、対となって協働する2つの掛止具40a、40b、42a、42bを含む。構造物36はまた、バット22内部に取外し可能に懸架することもできる。この構造物36の取外し可能なアセンブリによって密閉空間32の充填と排液、さらには容量素子EFM、EFRの保守作業が容易になる。さらに構造物36の構造は単純であり、特に、どのような作動機構部品も含まないので信頼性が非常に高い。
【0039】
この実施形態では、2つの容量素子とバット外側に配置された処理手段26の間の電気接続が、掛止具40a、40b、42a、42bを通して実施されている。したがって、掛止具40a、40bは、容量素子EFM、EFRに接続された補助接触パッド44a、44bを含む。掛止具42a、42bは、処理手段26に接続された補助接触パッド46a、46bを含み、構造物36がバット22内に懸架されると、接触パッド44a、44bに接触する。接触パッド44a、44bと容量素子の電気接続は、密閉空間32の壁を通してワイヤを水密に通すことによって達成される。同様に、パッド46a、46bと処理手段の電気接続はバット22の壁を通してワイヤを水密に通すことによって達成される。勿論、変形例によれば、容量素子と処理回路の間の様々な接続をバット22の懸架手段から独立させ、表示手段30を含む、または含まないことのできる個別の容器に直接接続することができ、任意の調理装置から独立した携帯型測定ユニットを形成することもできる。
【0040】
図5は、本発明による測定デバイスの第2の実施形態の変形例を示し、デバイスが基準油を交換するためのシステムと関連付けられている。交換システムは、バット22の外側に配置される新しい油の入った容器48を含む。容器48は密閉空間32の入口開口部に管によって接続され、管にはポンプPとソレノイド・バルブEV1が配置されている。密閉空間32は、ソレノイド・バルブEV2を備えバット22に開口している管に、入口開口部を介して接続される。したがって、使用した基準油をバット22に再注入し再使用することができる。
【0041】
ポンプPと2つのソレノイド・バルブEV1、EV2は、好ましくはバット22の外側に置かれ、温度の影響から保護されることに留意されたい。
【0042】
また、変形例ではポンプは省略することもでき、容器48はソレノイド・バルブが開いたとき、測定する油が基準油の入った密閉容器内に上がってこないように十分な高さに置かれることにも留意されたい。
【0043】
この交換システムは、ポンプとソレノイド・バルブを制御するために自動的にプログラムされた手段に有利に関連付けることができる。これらの手段は一般にはマイクロコントローラの形をとる。このタイプのシステムにより測定デバイスの使用が簡単になる。
【0044】
図6は、図5に図示された実施形態の変形例を示し、容器48は密閉空間32の入口開口部に管52によって直接接続される。密閉空間32は、入口開口部によってバット22の1つの壁を通過する管に接続され、バット22の外側に配置された回収タンク50に開口している。容器48は好ましくは、滴下タイプのフロー制御デバイス54aによって管52に接続された水密の袋で形成され、密閉空間32の入口開口部も同じタイプのフロー制御デバイス54bに関連付けられている。勿論、2つのフロー制御デバイスのフローレートは同一であり、有利には密閉空間32の容量を毎日交換できるように調整することができる。本実施形態の別の利点は、基準油が酸素から常時遮断されることである。
【0045】
本変形例の利点は、どのような作動機構部品も含まないので信頼性が向上し保守が簡単であることにある。
【0046】
第2の実施形態による測定デバイスを使用すると、容量素子が配置された測定する油とほぼ同じ温度の新しい油に浸漬された基準容量素子が、2つの容量素子がホイートストーン・ブリッジに配置されることによって、油の劣化によって起こるこれらの素子の誘電率の変化を温度変動によって起こる変化と区別することを可能にしている。このタイプのブリッジ配列は例えば、J.Phys.E:Scientific Instruments 19:897 906(1986)に発表された、Willem Chr. Heerens著「Application of capacitance techniques in sensor design」というタイトルの記事に述べられており、参照によって本出願に援用する。
【0047】
添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から逸脱せずに、ここで説明した実施形態に当業者には明らかな様々な修正および/または改良を行うことができることが理解されよう。特に、測定する流体の入ったバット内に容量素子をどのような方向にも配置できることが想定される。
【0048】
単一の構造物36を図7に示す構成に従うようにすることも想定することができ、図では密閉空間32、34がよりコンパクトに配置され、容量素子EFMおよびEFRを示すために密閉空間の壁は省略されている。
【0049】
また、第2の実施形態では、接続の数を制限するために両方の容量素子が共通の電極を有することも想定することができる。
【0050】
言うまでもなく、これまで述べた本発明による測定デバイスは、食用油を測定するための適用例に限定されるものではなく、誘電率の上昇が質および/または劣化を表すどのような流体の質および/または劣化を測定するために使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明による測定デバイスの第1の実施形態の概略図である。
【図2】図1に示す測定デバイスが固定された従来の調理装置のバットの概略的な断面図であり、図1の線II−IIに沿った断面で部分的に示され、処理手段が省略された図である。
【図3】容量素子が新しい油および使用済み油に浸漬されているときの、本発明による測定デバイスの容量素子の静電容量の変化を温度の関数として表すグラフである。
【図4】本発明の第2の実施形態による測定デバイスが固定された従来の調理装置のバットの断面の概略的な斜視図である。
【図5】本発明による測定デバイスの第2の実施形態の変形を示す図である。
【図6】図5に示す実施形態の変形を示す図である。
【図7】本発明によるデバイスの容量素子のための支持構造の実施形態の一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体、特に油の質および/または劣化を測定するためのデバイスであって、
測定する流体に浸漬される互いに離間した少なくとも1対の電極を含み、前記電極および前記流体が測定容量素子を形成し、その静電容量が前記流体の誘電率の関数として変化するセンサを含み、
前記センサが前記誘電率を表す電気出力信号を生成することができ、処理手段が前記出力信号を受け取り前記出力信号に基づいて前記流体の質および/または劣化の程度を判断することができ、
前記電極がほぼ同一平面上に延び、かつ前記平面の両側で前記電極の2つの表面を前記流体がとり囲むことを特徴とする、測定デバイス。
【請求項2】
前記センサがさらに、基準流体に浸漬される互いに離間した少なくとも1対の基準電極を含み、
前記電極および前記基準流体が基準測定容量素子を形成し、その静電容量が前記基準流体の誘電率の関数として変化する基準容量素子を含み、
前記基準容量素子が前記基準誘電率を表す基準信号を前記処理手段に送ることができ、かつ前記処理手段が前記出力信号を前記基準信号と比較するために配置されることを特徴とする請求項1に記載の測定デバイス。
【請求項3】
前記基準容量素子の電極がほぼ同一の面に延び、かつ前記平面の両側で前記電極の両側が前記流体に浸漬されることを特徴とする請求項2に記載の測定デバイス。
【請求項4】
前記基準流体が、密閉空間内で測定する流体から遮断され、それと熱接触して配置され、基準流体が測定する流体とほぼ同一の温度になることを特徴とする請求項2または3に記載の測定デバイス。
【請求項5】
前記基準流体の入った前記密閉空間が前記基準流体の交換システムと関連していることを特徴とする請求項4に記載の測定デバイス。
【請求項6】
前記交換システムが前記密閉空間と連通する基準液体タンクを含み、かつ前記システムが前記密閉空間に入った前記基準液体を定期的に交換できるようにフロー制御手段を含むことを特徴とする請求項5に記載の測定デバイス。
【請求項7】
前記電極がそれぞれ平板によって形成されることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項8】
各電極対の各電極が、複数のほぼ平行な歯を有する櫛の形状をしており、一方の前記電極の歯が他方の前記電極の歯と噛み合っていることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項9】
前記容量素子が電磁干渉に対してスクリーンを形成する金属フレームによって囲まれていることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項10】
前記容量素子の前記電極が食品用の鋼材で製造されることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項11】
前記容量素子の前記電極が、前記電極の測定領域に面する開口を有する、電気的に絶縁された支持体によって担持されることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項12】
調理油の入ったバットおよび加熱手段を含む調理装置であって請求項1から11のいずれかに記載の測定デバイスをさらに含むことを特徴とし、前記測定容量素子が調理用流体に浸漬されるようにバット内に配置される調理装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の質および/または劣化を測定するため、食用油の質および/または劣化を測定するためのデバイスの使用であって、
前記デバイスが測定する流体に浸漬されるセンサを含み、前記センサが互いに離間しており、ほぼ同一平面に延びる少なくとも1対の電極を含み、各電極対の各電極が複数のほぼ平行な歯を有する櫛の形状をさらに有し、一方の前記電極の歯が他方の前記電極の歯と噛み合っており、前記電極と前記油が、静電容量が油の誘電率の関数として変化する測定容量素子を形成し、前記センサが前記誘電率を表す電気出力信号を生成し、処理手段が前記出力信号を受け取り、その出力信号に基づいて前記油の質および/または劣化の程度を判断し、
前記平面の両側で前記電極の両面が前記流体に浸漬され、前記油が前記平面を通過することができるデバイスの使用。
【請求項2】
前記センサがさらに、互いに離間した少なくとも1対の基準電極を含む基準容量素子を含み、前記基準容量素子が基準油に浸漬され、前記電極と前記基準流体が、静電容量が前記基準油の誘電率の関数として変化する基準容量素子を形成し、前記基準容量素子が前記基準誘電率を表す基準信号を前記処理手段に送り、かつ前記処理手段が前記出力信号を前記基準信号と比較するために配置されていることを特徴とする、前記測定デバイスの請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記基準容量素子の前記電極がほぼ同一平面に延び、かつ前記油が前記平面を通過することができるように前記基準容量デバイスの前記電極の両面が前記平面の両側で前記油に浸漬されることを特徴とする前記デバイスの請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記基準流体が前記測定する油から遮断された密閉空間に配置され、基準油が前記測定する油とほぼ同じ温度になるように前記測定する油と熱接触することを特徴とする前記デバイスの請求項2または3に記載の使用。
【請求項5】
前記基準油の入った密閉空間が前記基準油を交換するためのシステムに関連していることを特徴とする前記デバイスの請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記交換システムが前記密閉空間と連通する基準油のタンクを含み、前記密閉空間内の前記基準油の定期的な交換を可能にするように前記システムがフロー制御手段を含むことを特徴とする、前記デバイスの請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記電極がそれぞれ平板によって形成されることを特徴とする、前記デバイスの前記請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記容量素子が電磁気干渉に対するスクリーンを形成する金属フレームで囲まれることを特徴とする、前記デバイスの前記請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
前記容量素子の前記電極が食品用鋼材で製造されることを特徴とする、前記デバイスの前記請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
前記容量素子の前記電極が前記電極の測定領域に面する開口を有する、電気的に絶縁された支持体によって担持されることを特徴とする、前記デバイスの前記請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
調理油の入ったバットと加熱手段を含む調理装置であって、前記調理油の質および/または劣化を測定するデバイスをさらに含み、前記測定デバイスが互いに離間してほぼ同一平面に延びる少なくとも1対の電極を含み、各電極対の各電極が複数のほぼ平行な歯を有する櫛の形状をさらに有し、一方の前記電極の歯が他方の前記電極の歯と噛み合っており、前記電極と前記調理油が静電容量が前記油の誘電率の関数として変化する測定容量素子を形成し、前記センサが前記誘電率を表す電気出力信号を生成することができ、処理手段が前記出力信号を受け取り前記出力信号に基づいて前記油の質および/または劣化の程度を判断することができ、
前記電極の両面が前記電極の前記平面の両側で前記調理流体に浸漬され、前記調理油が前記平面を通過することができるように前記測定容量素子が前記バット内に配置される調理装置。
【請求項12】
前記センサが、互いに離間し基準流体に浸漬される少なくとも1対の電極を含む基準容量素子をさらに含むことを特徴とし、
前記電極と前記基準流体が静電容量が前記基準流体の誘電率の関数として変化する測定容量素子を形成し、前記センサが前記基準誘電率を表す電気出力信号を前記処理手段に送ることができ、かつ前記処理手段が前記出力信号を前記基準信号と比較するために配置される請求項11に記載の調理装置。
【請求項13】
前記基準容量素子の前記電極がほぼ同一平面に延び、かつ前記基準容量素子の前記電極の両側が前記基準電極の平面の両側を前記調理流体に浸漬されることを特徴とする請求項12に記載の調理装置。
【請求項14】
前記基準流体が、前記測定する調理油から遮断された密閉空間に配置され、前記基準流体が前記測定する調理流体とほぼ同じ温度になるように前記測定する調理流体と熱接触することを特徴とする請求項12または13に記載の調理装置。
【請求項15】
前記基準流体の入った前記密閉空間が前記基準流体を交換するためのシステムに関連していることを特徴とする請求項14に記載の調理装置。
【請求項16】
前記交換システムが前記密閉空間と連通する基準流体のタンクを含み、かつ前記密閉空間に入っている前記基準流体の定期的な交換を可能にするように前記システムがフロー制御手段を含むことを特徴とする請求項15に記載の調理装置。
【請求項17】
前記電極がそれぞれ平板によって形成されることを特徴とする請求項10から16のいずれかに記載の調理装置。
【請求項18】
前記容量素子が電磁気干渉に対するスクリーンを形成する金属フレームで囲まれていることを特徴とする請求項10から17のいずれかに記載の調理装置。
【請求項19】
前記容量素子の前記電極が食品用鋼材で製造されることを特徴とする請求項10から18のいずれかに記載の調理装置。
【請求項20】
前記容量素子の前記電極が、前記電極の測定領域に面するように配置された開口を有する、電気的に絶縁された支持体によって担持されることを特徴とする請求項10から19のいずれかに記載の調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−515061(P2006−515061A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566820(P2004−566820)
【出願日】平成15年12月30日(2003.12.30)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014955
【国際公開番号】WO2004/065957
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(503047928)エコール ポリテクニーク フェデラル ドゥ ローザンヌ(エーペーエフエル) (1)
【出願人】(306001725)
【Fターム(参考)】