説明

流体を分離する方法および流体を分離できる装置

ウィック構造および気体流路を有する、積層で多層の凝縮器を開示する。動作時に、流体混合物は、流体入口(2)を通ってヘッダ4に入り、そこで気体流路(6および6')に分配される。クーラントは、冷却水路層(10)の細長いクーラントスロット(8)を通過する。クーラントスロット(8)を囲む材料は冷却水路壁である。流体混合物が気体流路(6および6')を通過する際、流体からの熱は、一次熱交換面(13)を通じて除去され(この表面は冷却水路壁の外面でもある)、流体混合物から液体が凝縮され、ウィック(11)内を流れ、任意のポア・スロート(12)を通って液体流路14に入る。この図は分解図であり、ウィックとポア・スロートとの分離状態を示しているが、典型的な動作では、任意のポア・スロートがウィックに接触する必要がある。この装置は、重力の影響下で動作することができるが、通常、吸引が行われて液体が液体出口(16)を通して引き出される。複数の液体流路を有する装置では、任意のフッタ(図示せず)が複数の液体流路からの流れを運ぶことができる。気体流路からの気体は、任意の気体フッタを通過して気体出口(20)から出る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、流体を分離する方法に関する。本発明は、流体を分離することのできる装置に関する。
【0002】
本発明は、米国エネルギー省によって認められた契約DE-AC0676RLO1830の下で政府の支援を得て実施されたものである。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
関連出願
35 U.S.C. sect. 119(e)によれば、本出願は、2003年1月27日に出願された米国特許仮出願第60/443,070号および2003年3月3日に出願された第60/451,880号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0004】
序論
凝縮および相分離は、環境生命維持システムおよび宇宙服における水管理のような宇宙用途を含む多くの工程の重要なユニット動作である(LangeおよびLin、1998年)。他の例として、液体炭化水素を燃料電池用の水素含有ガスに転換する燃料電池用の燃料プロセッサは大量の水を使用する(Flynnら、1999年)。ただし、純水は、燃料電池に結合されたときに生成される。水を回復し再生する能力は、燃料電池システムにおいて、特に輸送用途および可搬用途で消耗品の量を減らすために重要である。これらの用途のどちらでも、ハードウェアのサイズおよび重量は重要な検討事項である。さらに、液体ではなく気体で冷却する能力は重要な利点である。小形凝縮器の第3の用途は、兵士および緊急作業員用の可搬冷却システムである。
【0005】
100ミクロンから数ミリメートルの間の最小寸法を有する流路を用いて小形装置において相分離を行うことができる(Wegengら、2001年)。さらに、流体力学上の力および毛管力は、重力に対して優勢であり(TeGrotenhuisおよびStenkamp、2001年)、したがって、このような装置が重力および向きとは無関係に動作できることが分かっている。無重力状態の相分離用の他のいくつかの技術が開発されており、その多くは回転装置または渦流形装置である(Dean、1991年)。
【0006】
小形熱交換機の開発は十分に確立された分野であり(KaysおよびLondon、1984年、Webb、1994年)、水力直径を小さくし、拡張された表面を付加し、混合を誘発させることによって熱交換を向上させる多くの技術が生まれている。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
第1の局面では、本発明は、以下の要素、すなわち、第1の冷却水路(cooling channel)と、第1の冷却水路に隣接する第1の気体流路(gas flow channel)と、ウィックを含む液体流路(liquid flow path)と、第2の気体流路と、第2の気体流路に隣接する第2の冷却水路とをこの順番に含む凝縮器を提供する。
【0008】
本発明は、第1の混合物が第1の局面の凝縮器の第1の気体流路に入る流体を分離する工程も提供する。
【0009】
他の局面では、本発明は、冷却水路と、冷却水路に隣接する気体流路と、ウィックを含む液体流路とを含み、液体流路が気体流路に隣接する凝縮器を提供する。冷却水路は、冷却水路壁によって形成される。この凝縮器は、20℃の周囲空気が840cm/sの表面速度で流路を通過させられ、空気中に40.0モル%の水蒸気を含む供給流が気体流路の入口の所を表面速度1700cm/sで通過させられるときに、冷却水路を通る周囲空気流の圧力の低下が水柱4インチ(10cm)以下であり、以下のうちの少なくとも1つが得られ、すなわち、(1)冷却水路を形成する壁の体積を含む、冷却水路と気体流路とを合わせた体積から算出されたエネルギー密度が少なくとも2.0 W/cm3であるか、または(2)冷却水路および気体流路を形成する材料の重量から算出された比エネルギーが少なくとも1000W/kgであるか、または(3)全平均伝熱係数が気体流路と冷却水路との間の一次伝熱領域に基づいて少なくとも500W/cm2Kであるか、または(4)供給流中の水蒸気の少なくとも70%が液体として凝縮されるような高エネルギー密度定常性能を有する。凝縮器を特徴付ける特性は、定常状態で測定される。
【0010】
他の局面では、本発明は、水を凝縮する方法であって、水蒸気を含む流体混合物を凝縮器内の気体流路内に流す段階と、液体流路内に液体を形成する段階と、周囲空気を冷却水路を通過させ、水柱4インチ(10cm)の圧力降下を冷却水路を通して生じさせる段階とを含む。凝縮器は、冷却水路壁によって形成された冷却水路と、冷却水路に隣接する気体流路と、気体流路に隣接する液体流路とを有する。気体流路と冷却水路との間に一次伝熱面がある。この方法は、以下の少なくとも1つを含み、すなわち、(1)冷却水路を形成する壁の体積を含む、冷却水路と気体流路とを合わせた体積から算出されたエネルギー密度が少なくとも2.0 W/cm3であるか、または(2)冷却水路および気体流路を形成する材料の重量から算出された比エネルギーが少なくとも1000W/kgであるか、または(3)全平均伝熱係数が気体流路と冷却水路との間の一次伝熱領域に基づいて少なくとも500W/cm2Kであるか、または(4)供給流中の水蒸気の少なくとも70%が液体として凝縮される。
【0011】
特性および実験結果は、好ましい実施形態の説明および実施例の節に開示されている。あるいはまたはさらに、本発明の工程および装置は、記載される特性および結果を特徴とする。たとえば、本発明の方法は、ポア・スロート利用度、熱流束、伝熱係数、および供給流中の水蒸気の関数としてのエネルギー密度または比出力に関して説明することができる。同様に、本発明の装置は、実施例に記載された条件に従って試験された場合、ポア・スロート利用度、熱流束、伝熱係数、および供給流中の水蒸気の関数としてのエネルギー密度または比出力の値を特徴とするものとして説明することができる。
【0012】
本発明は、本明細書に記載された凝縮器のうちのどれかを組み込んだシステムも提供する。たとえば、本発明は、凝縮器が燃料電池、燃焼器(好ましくはマイクロチャネル燃焼器)、または燃料プロセッサ(水蒸気改質ユニット)の出口に連結されたシステムを含む。同様に、本発明のいくつかの方法はこのようなシステムの機能、たとえば、燃料電池の流出液からの液体の回復や、燃焼反応からの水の回復、または燃料プロセッサからの水の回復を実行する。
【0013】
いくつかの好ましい態様では、本明細書で説明する凝縮器、方法、およびシステムはいずれも重力に依存する。
【0014】
様々な局面および態様における本発明は、高速質量移動、高伝熱速度、低コスト、耐久性、小さい空間における気体−液体および流体の効率的な分離、低プロファイル機器、および宇宙用途のような無重力状態で働くユニット工程動作を含む多数の利点をもたらすことができる。本発明は、流量が少ないか、またはサイズが問題になる用途でも有利であり、この例には、分析システム、生物学的用途、廃水浄化、空間用途における尿などの回復および再利用が含まれる。
【0015】
用語説明
「漏出圧力」は、湿潤流体を第2の流体によって多孔構造から変位させずに多孔構造全体にわたって維持することのできる最大圧力差である。
【0016】
「取込み構造」は、ウィックへの液体の移動を助ける、気体流路内に(少なくとも部分的に)配置された構造である。
【0017】
「装置体積」は、流路、ヘッダ、およびシムを含む装置の全体積を指す。
【0018】
「フロー・マイクロチャネル」は、装置の通常の動作時に流体が流れるマイクロチャネルを指す。
【0019】
「流体混合物」は、1つが(少なくとも部分的に)液体流路内の液体相を形成する少なくとも2つの構成要素を含む。通常、流体混合物は、凝縮可能な構成要素(ガス状水など)および凝縮不能な構成要素(N2など)を含むが、流体混合物は、気体(N2など)および懸濁液滴(水滴など)で構成してもよい。
【0020】
「気体流路」は、取込み構造を含んでも含まなくてもよい。いずれの場合も、気体流路は、液体が優先的に液体流路に移動するように隣接する液体流路内より少ないウイッキング材料を含む。
【0021】
「重力に依存しない」かまたは「向きに依存しない」装置または方法は、無重力状態で、または重力場に対する任意の向きでうまく機能する。液体流を毛管力を介して移動させることによってこの動作モードが使用可能になる。
【0022】
「積層装置」は、少なくとも2つの異なる層を有する装置であり、これらの少なくとも2つの異なる層が、伝熱、凝縮などのユニット動作を実行することができ、2つの異なる層がそれぞれ、層を通る流体流を有することができる装置である。本発明では、積層装置は流体媒体中の繊維の束ではない。
【0023】
「液体」は、適切な動作条件の下でウィック内で液相である物質である。
【0024】
「液体流路」は、装置の動作時に液体が流れるウィックまたは開放流路またはポア・スロート、またはウィック、ポア・スロート、および開放流路の組合せである。
【0025】
「マイクロチャネル」は、少なくとも1つの寸法が5mm以下の寸法である流路を指す。マイクロチャネルの長さは、流体が通常の動作時に、壁に当たる前に流れることのできる最も遠い方向として定義される。幅および深さは、長さに垂直であると共に互いに垂直であり、図示の態様では、幅はシムまたは層の平面内で測定される。
【0026】
「マイクロコンポーネント」は、動作時に、ユニット工程動作の一部であり、1mm以下の寸法を有する構成要素である。
【0027】
「ポア・スロート」は、ポア・スロートが通常の動作条件であるときに含まれる湿潤流体を変位させないように非湿潤流体が制限されるように、最大孔寸法を有する多孔構造を指す。
【0028】
「滞留時間」は、流体が所与の使用体積を占有する時間を指す。
【0029】
「表面速度」は、流体の体積流速を、流体が利用できる総流れ面積で割った値として算出される。
【0030】
「ユニット工程動作」は、流体流の化学的または物理的特性が修正される動作を指す。ユニット工程動作(ユニット動作とも呼ぶ)は、流体流の温度、圧力、または組成の修正を含んでよい。
【0031】
「ウィッキング領域」は、ウィックによって占有される体積、または溝付きマイクロチャネル表面などのウイッキング表面である。
【0032】
「使用体積」は、装置の総流路体積を指し、ヘッダならびに固体シム材料および端板材料を除く。
【0033】
発明の好ましい態様の説明
積層キャピラリ駆動流体分離装置および好ましい動作条件の一般的な特徴は、以下に完全に再現するのと同様に参照として本明細書に組み入れられる米国特許出願第20020144600A1号に開示されている。
【0034】
図1に凝縮器の断面概略図が示されている。動作時に、流体混合物は、流体入口2を通ってヘッダ4に入り、そこで気体流路6および6'に分配される。クーラントは、冷却水路層10の細長いクーラントスロット8を通過する。クーラントスロットを囲む材料は冷却水路壁である。流体混合物が気体流路を通過する際、流体からの熱は、一次熱交換面13を通じて除去され(この表面は冷却水路壁の外面でもある)、流体混合物から液体が凝縮され、ウィック11内を流れ、任意のポア・スロート12を通って液体流路14に入る。この図は分解図であり、ウィックとポア・スロートとの分離状態を示しているが、典型的な動作では、任意のポア・スロートがウィックに接触する必要がある。この装置は、重力の影響下で動作することができるが、通常、吸引が行われて液体が液体出口16を通して引き出される。複数の液体流路を有する装置では、任意のフッタ(footer)(図示せず)が複数の液体流路からの流れを運ぶことができる。気体流路からの気体は、任意の気体フッタを通過して気体出口20から出る。
【0035】
図1の装置は1つの構成のみを示しているが、多数の変形態様が本発明の範囲内であることを理解されたい。たとえば、複数の気体出口があってよく、気体出口にポア・スロートがあってよい。図示の装置では、クーラントスロット8は気体出口まで延びているが、好ましい態様では、クーラントスロット(またはより一般的には、クーラント用の流路)は気体出口まで延びず、出口より前の点22の所の端部まで延びる。この構成は、気体出口の近くの凝縮を抑制し、したがって、気体出口への液体漏出の可能性を低くする。いくつかの好ましい態様では、クーラント流路は、隣接する気体流路6の長さの少なくとも10%である気体出口からの距離で終わる。
【0036】
好ましい態様では、凝縮器は、薄板を積み重ねることによって作られた積層装置である。このような装置は、米国特許出願第20020144600A1号に記載された積層構成と同様に配管を設けてよい。
【0037】
本発明の装置では、一次伝熱面は、熱交換器と気体流路との間の壁である。熱交換器の流路間の壁は、熱交換フィンとして働き、したがって、拡張された伝熱面積を形成することができる。熱交換器内の壁は構造上の支持を与えることもできる。熱交換器流路の最適なアスペクト比および各熱交換器流路間にある熱交換器内の壁の厚さは、材料の熱伝導率と、クーラント側の対流伝熱係数に依存している。いくつかの好ましい実施形態では、熱交換器内の流体流用の流路は、スロット間の壁厚さが20μm未満であり、好ましくは流路幅が15μmから50μmであり、流路高さ(流れに垂直な方向、積層装置では積層方向)と流路幅(高さおよび流れに垂直な寸法)の好ましい比が少なくとも2で、より好ましくは少なくとも4である。
【0038】
クーラント流路を通って流れるクーラント流体は液体(たとえば、水)であっても気体であってもよい。いくつかの態様では、ファンまたはブロアーが気体をクーラント流路を通して移動させる。本発明のいくつかの好ましい態様では、熱交換流体として気体を使用することが望ましい。この場合、伝熱抵抗の大部分は熱交換流路で生じる可能性がある。さらに、用途は熱交換流体の圧力降下の影響を受けることがある。一例として、自動車燃料プロセッサにおいて複数の流れから水を回復し、燃料電池で使用できる水素含有気体流を生成することが挙げられる。ブロアーまたはファンから与えられる周囲空気流は最も好都合な熱交換流体である。この場合、ブロアーまたはファンから与えられる圧力ヘッドは制限される。このような用途では、熱交換流路内の伝熱面が拡張された構成が好ましい。
【0039】
ウィックおよび任意のポア・スロートおよび任意の取込み構造の存在は、本発明の複数の態様に共通である。ウィックは、毛管力によって湿潤流体を優先的に保持する材料であり、液体が毛管流によって移動する複数の連続的な流路がウィックに存在する。流路は、規則的な形状であっても不規則な形状であってもよい。液体は乾燥したウィックを通って移動することができ、一方、吸引のような圧力差をウィックの一部に加えることによって、液体含有ウィック中の液体を輸送することができる。ウィック内の毛管孔径は、液体の接触角度および装置内の所望の圧力勾配、ならびに液体の表面張力に基づいて選択することができる。好ましくは、動作中のウィック全体にわたる圧力差は、漏出圧力、すなわち、気体がウィックに侵入して液体を変位させる点より低く、これによってウィックから気体が排除される。
【0040】
液体は、表面力、すなわち湿潤性のためにウィック内に滞留し、界面張力によってそこに保持される。フラッディングは、ウィックにおける湿潤相に関する装置の流容量を超えるために起こり、流容量は、流体特性、ウィックの孔構造、流れの断面積、流れ方向におけるウィックの圧力降下によって決定される。
【0041】
ウィックは、ウィックによって輸送されるようになっている液体に応じて異なる材料で作ることができる。ウィックは、一様な材料であっても、材料の混合物であっても、複合材料であっても、勾配材料であってもよい。たとえば、ウィックは、液体を所望の方向に排水するのを助けるように孔径または湿潤性によって勾配を設けることができる。本発明で使用するのに適したウィック材料の例には、焼結された金属、金属スクリーン、金属発泡体、セルロース系繊維を含むポリマー繊維、またはその他の湿潤多孔材料を含む。ウィック材料の毛管孔径は、好ましくは10nmから1mmの範囲であり、より好ましくは100nmから0.1mmの範囲であり、これらのサイズは走査型電子顕微鏡(SEM)によって観測されるウィックの断面における最大孔径である。いくつかの好ましい態様では、ウィックはマイクロチャネル構造であり、またはマイクロチャネル構造を含む。マイクロチャネルは任意の長さを有してよく、好ましくは、マイクロチャネルは深さが1マイクロメートルから1000マイクロメートル(μm)で、より好ましくは10μmから500μmである。好ましくは、マイクロチャネルは幅が1μmから1000μmで、より好ましくは10μmから100μmである。好ましい態様では、マイクロチャネルはマイクログルーブ、すなわち、溝の頂部から底部までの幅が一定であるかまたは小さくなるマイクロチャネルである。他の態様では、マイクロチャネルは、液体を輸送できるようにより大きい直径を有する孔の口部を形成する。
【0042】
ウィッキング材料については、高い流量を得て、しかもウィックに沿った顕著な圧力降下をサポートする(孔径が大きくなるにつれて最大圧力降下が小さくなる)ように高い浸透性および小孔構造を有する材料を提供することが目標である。液相質量移動が処理スループットを制限する装置では、ウィック材料の厚さは工程を向上させるうえでも重要である。ウィックの厚さは、好ましくは500マイクロメートル(μm)未満、より好ましくは100μm未満であり、いくつかの態様では50μmから150μmの間である。
【0043】
ウィックを有する装置の動作では、ウィックをフラッディングさせてはならず、好ましくは乾燥させない。湿潤または飽和ウィックは、吸引によって発生する低圧などの低圧ゾーンにキャピラリによって液体を効果的に輸送する。液体出口にポア・スロートを付加して液体出口からの気体流を防止することができる。
【0044】
穴あき箔および穴あき/展開箔は、流体分離装置内のウィックおよび/または取込み構造として使用されたときに優れた結果をもたらす。特に好ましい箔は、Delker Corporationから市販されているUltraThin MicroGrid Precision-Expanded Foilsである。このような材料は平坦化形態および三次元展開形態に作られる。このような材料は、従来のワイヤ・メッシュ・スクリーンと同様であるが、材料を引っ張りつつ穴のアレイを打ち抜くことによって単一の薄板から作られる。平坦化形態では、穴はダイヤモンドのアレイである。展開形態では、フィラメントが規則的な四面体構成になる。
【0045】
平坦な箔および展開箔をどちらも、単一シートとして、および複数の積み重ねられたシートとしてウィッキング特性について試験し、さらに固体裏当てシートを付けた状態または付けない状態でウィッキング特性について試験した。一般に、ウィッキング特性は、従来の織りスクリーンを含む、試験された他の材料(後述のフレネルレンズを除く)よりずっと優れている。質的には、Delker箔は、試験された他の規則的または無作為な多孔構造より1桁高いウィッキング率を有するようである。さらに、Delker材料は、0.0015インチ(1.5ミル)ほどの薄い様々な厚さで、銅、アルミニウム、ニッケルを含む様々な金属で作ることができる。
【0046】
フレネル・レンズは、ウィックの他の好ましい形態である。深さが100μm未満で、好ましくは50μmから100μmであるマイクロチャネルを有するウィックは高速の質量移動を推進する。
【0047】
ウィックは、グリーン状態のセラミック・テープにセラミック溝を切削することによって形成することもできる。このようなウィックは、たとえば、開口部の幅が100ミクロンより小さい、深さが50ミクロン未満の溝を備えてよい。セラミック・ウィックは、高い表面エネルギーを有し、化学的に不活性であり、高い温度安定性を有する。他の材料選択肢には、ボンディング工程時にぴったりと接触して配置され、合金、化合物、または金属溶液を形成するように組み合わされる2つ以上の金属から形成される金属間化合物が挙げられる。好ましい金属間化合物は、セラミック材料によく似た特性を有する。工学構造の利点は、液相での質量移動のために長さスケールが微細に制御されることであり、これは、気体吸収や蒸留のような質量移動制限用途に望ましい。
【0048】
好ましい態様では、ウィッキング/ポア・スロート構造は、分離された液体相用の流路を形成する。装置の動作を最適化するには2つの機構、すなわち、ウィッキング機構と気体を排除する機構が望ましい。ウィッキング機構は、出口に流容量を与えるように高い浸透性を有しつつ、優先的な吸着を生じさせるように、液体に対して濡れる多孔構造によって実現される。第2の機構は、液体出口流路への気体流の侵入を防止する機構であり、ポア・スロートを用いて実現することができる。液体の最大孔径、接触角度、および表面張力によって決定されるポア・スロートの泡立ち点は、気体出口と液体出口との間の最大許容圧力差を決定する。ウィックおよびポア・スロートは、高い十分な泡立ち点を与えるのに十分な高いウィッキング流容量および十分な小さい孔を有する適切な構造が利用可能な場合、同じ構成要素または構造で実施することができる。ウィックとポア・スロートの両方を有する装置では、ポア・スロートは流体流に対する比較的大きい抵抗を有する。
【0049】
ウィックは、好ましくは動作時に乾燥させない。これは、ウィックを通して気体が逃げる可能性があるからである。乾燥を避ける1つの手法は、ウィック構造より小さい孔径を有する多孔構造のような、ウィック構造に毛管接触し、非湿潤相が流量制限装置から湿潤相を変位できないように吸着圧力の大きさを制限する流量制限装置を付加することである。この種の制限装置は、ポア・スロートとも呼ばれる。好ましい態様では、ウィックと液体流路との間および/または液体出口の所にポア・スロートが設けられる。いくつかの実施形態では、ウィックは、気体流路から流体を輸送する働きをし、かつ気体の侵入を防止し、したがって、ウィックとポア・スロートの2つの目的を満たすように小さい孔径を有してよい。
【0050】
ポア・スロートは、動作時にポア・スロート全体にわたる最大圧力差よりも大きい泡立ち点を有する。これによって、(表面張力、湿潤性、および接触角度に依存して)毛管力によってポア・スロートに気体が侵入することが無くなる。ポア・スロートは、液体出口を密封し、したがって、ポア・スロートの周りにシールを設けるか、またはポア・スロートが出口を覆い、気体がポア・スロートをバイパスするのを防止すべきである。ポア・スロートは、好ましくは、ポア・スロート全体にわたる圧力降下が所与の値のときにポア・スロートを通る液体流量を最大にするように非常に薄い。いくつかの態様では、ポア・スロートは、ウィックの孔径の2分の1未満の孔径を有し、ウィックの厚さの50%以下の厚さを有し、これらの態様のいくつかでは、ポア・スロートは孔径がウィックの孔径の20%以下である。好ましくは、ポア・スロートは、ウィッキング材料と毛管接触し、ウィックとポア・スロートとの間に気体が閉じ込められ出口を遮断するのを防止する。
【0051】
取込み構造を気体流路内に(少なくとも部分的に)ウィックに液体接触するように挿入することができる。取込み構造は、気体流から液体を除去する(取り込む)のを助ける。取込み構造の一例は、ウィックから突き出る円錐体であり、液体は、円錐体上で凝縮しウィック内に移動することができる。この取込み構造の一例は、参照として本明細書に組み込まれる米国特許第3,289,752号に示されている。他の取込み構造には、逆円錐体、孔径がウィックに向かって大きくなる孔径勾配を有する液体−非湿潤多孔構造、市販のデミスタや繊維媒体に見られるように孔径がウィックおよび繊維に向かって小さくなる孔径勾配を有する液体−湿潤多孔構造が含まれる。分散した液体粒子を取り込む機構には、(障害物の周りの流れによる)衝突、ブラウン取込み(高表面積構造における長い滞留時間)、重力、遠心力(流れにおける高曲率)、または流れ場に対するエーロゾル粒子運動を誘発する、電場や音場などの取込み場が含まれる。
【0052】
取込み構造は構造要素として有用である場合もある。気体流路内のポア・スロートの上方にワイヤ・メッシュ・スクリーンを配置することができ、したがって、装置がボルト留めされた場合、スクリーンは、裏側のゴム・ガスケットを密封し、かつゴム・ガスケットと反対側の壁との間にシールを形成するように、ポア・スロートに力を与える。多流路マイクロチャネル装置を組み立てる1つの手段は、シールを形成するガスケットによって交互に異なる層のサンドイッチ構造を形成する。この状況では、気体流路内の取込み構造を圧縮してスタック全体にわたる力を発生させ、それによって必要なシールを形成することができる。
【0053】
取込み構造の他の用途は伝熱を向上させることである。取込み構造は、高い熱伝導性を有する場合、伝熱用の拡張表面として働くことができる。これは、冷却中の気体流の少なくとも一部の凝縮のように伝熱が重要である場合に有利である。取込み構造は、一次伝熱領域に熱接触することによって、流れる気体流からの熱除去を推進する。気体流は次に一次領域に導かれ、その後伝熱流体に導かれる。さらに、取込み構造上で凝縮を起こすことができ、凝縮の熱を取込み構造によって導くことができる。
【0054】
展開形態(四面体に構成されたフィラメント)の多孔箔の他の用途は取込み構造としての用途である。流れ抵抗が低いことは取込み構造の望ましい属性であり、Delker展開スクリーンの規則的な開放構造(10AL16-125Pおよび5Cu14-125Pなど)は、対流に対する圧力降下が少ない。Delker箔は従来の織りスクリーンよりも浸透率が1桁から2桁高い。さらに、アルミニウム、銅、および他の金属形態は、比較的高い熱伝導率を有し、かつ伝熱を向上させる。したがって、四面体に構成されたフィラメントは、取込み構造としての顕著な利点をもたらす。
【0055】
装置のスループットを制限することのできる因子は、ウィッキングの流容量である。この多孔構造は、次式として定義される浸透率係数を特徴とする。

上式で、Qは、ΔPの圧力降下が与えられたときの、厚さhの多孔媒体の断面積Aを通る流体の体積流量である。次に、液体の粘度およびポア・スロート構造全体にわたる圧力差から、所与の実験についてポア・スロート最大液体流容量Qptを算出する。次に、ポア・スロート最大流容量に対する割合としての回復された液体の体積流量によって装置性能を特徴付けることができる。本発明では、ポア・スロート最大流容量に対する割合としての回復された液体の体積流量は、好ましくは30%以下で、より好ましくは10%以下である。
【0056】
他の考えられる制限因子は、ヤング−ラプラス式から算出されるポア・スロートの泡立ち点で起こる可能性のあるポア・スロートへの気体の侵入である。

上式で、θは、液体とポア・スロートとの間の後退接触角度(液体がポア・スロート材料を横切って後退することを意味する)であり、rpは最大孔半径である。
【0057】
クーラント流路を気体流路から分離する壁が一次伝熱面であるので、液体が一次伝熱面から液体流路内のウィックに流れるのを助ける構造を設けると有利である場合がある。取込み構造または他の輸送構造を用いて液体流路への流路を設けることができる。「輸送構造」は、液体流路から、(1)一次伝熱面、または(2)一次伝熱面の近くの点への気体流路内まで延びており、したがって、一次伝熱面上で凝縮された液体はこの構造に沿って液体流路に流れ込むことができる。
【0058】
本質的に平面状の気体流路を有する装置では、一次伝熱面上で凝縮された液体が、次に液体流路内のウィックに接触しウィックに流れ込むある流れ条件の下で気体流路の側部に押し込まれる(米国特許出願第20020144600A1号におけるSuratmann数の議論を参照されたい)。いくつかの好ましい態様では、一次伝熱面と液体流路内のウィックとの間の距離は、5mm以下で、より好ましくは2mm以下である。いくつかの態様では、一次伝熱面の面積が、気体流路の反対側にあるウィックの幾何学的表面積の25%以内になるように、伝熱用の面積とウィック表面積との釣り合いがとられる。好ましい態様では、冷却用の面積を制限することによって、気体流路の端部からの液体漏出が抑制または防止される。したがって、いくつかの好ましい態様では、クーラント流路(クーラントを運ぶ冷却水路層の体積)が気体流路の端部まで延びず、いくつかの好ましい態様では、クーラント流路は、気体流路に連結された気体出口に最も近い気体流路の長さの少なくとも10%(いくつかの態様では20%)にわたって隣接しない。
【0059】
他の任意の特徴は、熱交換表面に隣接する気体流路壁の湿潤性を低減させるかまたはこの気体流路壁を非湿潤性にして液体膜を形成できないようにすることである。これは、たとえば、凝縮相に対して湿潤性を低減させるかまたは非湿潤性である材料(たとえば、水が凝縮相である材料)でこの壁を作るかまたはコーティングすることによって実現することができる。液体膜の抵抗を無くすことによって、伝熱係数がかなり大きくなる。
【0060】
表面13からウィック表面11までの気体流路6の高さは、好ましくは10μmから5mm、より好ましくは100μmから1mmである。流路の高さは、好ましくは、伝熱および質量移動ならびに全体的な装置サイズが良好になるように低くし、場合によってはより少ない流量またはより大きい圧力降下との釣合いをとる。相分離を効率的にするには、露出されるウィックの表面積と気体流路の体積との比を高くすることが望ましい。好ましくは、この比は1cm2:1000cm3であり、いくつかの態様では5:10である。いくつかの好ましい態様では、気体流路は実質的に同じ長さであり、液体流路は気体流路より少なくとも10%短い。
【0061】
図示の態様は、クーラント流路を短くしクーラント流圧力降下を低減させる直交流形熱交換を示している。しかし、いくつかの好ましい態様では、熱交換機を通る流れは、逆流およびより高い伝熱効果が得られるように(熱交換流体が気体流路内の正味流体流と逆の方向に流れるように)90°回転させられる。本明細書で説明するすべての装置と同様に、多数の層に対してシムを繰り返すことができ、いくつかの態様では、装置は、2個から1000個、または少なくとも4個の反復熱交換ユニットを含み、反復ユニットは(流体輸送のウィックおよび機能を含む)流体分離用のシムおよび熱交換用のシムを含んでいる。
【0062】
いくつかの好ましい態様には、並行して動作する複数の気体流路がある。この構成によって、スループットを高めることができ、表面積/体積比が高くなり効率が向上する。いくつかの好ましい態様では、2個から600個の別々の気体流路、より好ましくは少なくとも3個の気体流路、いくつかの態様では3個から40個の気体流路を有するように層が積み重ねられる。並列構成の代わりに、各流路を直列に連結しより長い流路を形成することができる。
【0063】
いくつかの好ましい態様では、クーラント流路を通るクーラントの正味流れは、気体流路を通る気体の正味流れに対する直交流であり、この構成では、気体流路の長さは好ましくは、クーラント流路の(クーラントの正味流れの方向での)長さよりも少なくとも2倍長く、いくつかの態様では少なくとも5倍長い。この構成では圧力降下が低減する。直交流が存在するかどうかにかかわらず、いくつかの好ましい態様では、クーラント流路における圧力降下は、水柱4インチ(10cm)以下であり、いくつかの態様では、水柱2インチ(5cm)以下である。
【0064】
本発明のいくつかの好ましい態様の他の利点は、気体流路および/または液体流路が流体分離領域内で本質的に平面であってよいことである。この構成では、極めて高く一様な質量・熱移動速度が可能になる。いくつかの好ましい態様では、気体流路および/または液体流路は、(正味気体流に垂直な)高さの寸法よりも少なくとも10倍大きい幅および長さの寸法を有している。特に好ましい態様では、装置は、平面状のシム(プレート)を積み重ね、積み重ねられたシム同士を接着することによって作られる。好ましくは、シムは厚さが1cm未満であり、より好ましくは厚さが5mm未満である。
【0065】
気体出口への液体の漏出を防止する効果は、2つの無次元パラメータ、すなわち、気体および液体のレイノルズ数とSuratmann数との比である。両方の相についてのレイノルズ数は、単一相についての空間速度に基づいて算出される。Suratmann数は、Su=σDhρ LLとして定義され、この場合、σは気体−液体界面張力であり、Dhは水力直径であり、ρLは液体相密度であり、μ Lは液体相速度である。この2つのパラメータは、文献では、環状流からスラグ流への遷移がマイクログラビティにおけるパイプ輸送のどこで起こるかを示すものとして識別されている。Jayawardena, S., V. Balakotaiah, and L.C. Witte, "Flow Pattern Transition Maps for Microgravity Two-Phase Flows", AlChEJ., 43(6), 1637-1640, 1997を参照されたい。装置は、スラグ流方式よりも環状流方式の方がうまく動作する。というのは、環状流では、液体が隅部および壁に押し込まれ、気体流路からウィック構造に排水できるからである。気体流路内の条件は好ましくは、ReGS/ReLSが約(4500)・(Su)-.67より大きく、いくつかの態様では、ReGS/ReLSの範囲が(4600〜10,0000)・(Su)-.67の範囲内であることである。
【0066】
好ましい態様では、気相は気体出口に連続的に連結され、液相は液体流路から液体出口に連続的に連結されている。気体出口の所の相の連続性は、気体流液体流の形状、総流量、および比と、上述のReGS/ReLSおよびSuratmann数の依存性によって反映される流体物性とによって得られる。第2の所望の条件は、流れ面積、流体物性、および材料の浸透率の影響を受ける十分なウィッキング容量である。
【0067】
ウィック内の余分な流容量に関する要件と気体流路における連続的な相の確立との間に逆の関係が発見されている。所与の気体・液体流量の場合、装置のスループットを最大にしつつ、レイノルズ数とSuratmann数の値との比を考慮した流体の流量、形状、および物性による決定に応じて流路内の流れにおいて連続的な相(たとえば、環状相や層状相)を実現するように、流路のサイズおよび数を設計することができる。
【0068】
いくつかの好ましい態様では、本発明の装置は、以下の実施例の節に記載された測定値のいずれかを特徴とする。たとえば、いくつかの好ましい態様では、装置は、20℃の空気が表面速度2100cm/sで冷却水路を通過させられ、空気中に40.0モル%の水蒸気を含む供給流体が表面速度630cm/sで気体流路に入るときに、冷却水路を形成する壁の体積を含め、冷却水路と気体流路の体積を合わせた体積から算出されるエネルギー密度が、少なくとも1W/cm3、より好ましくは少なくとも4W/cm3で、いくつかの態様では1W/cm3から5W/cm3の間になるような、高エネルギー密度性能を有している。(上記でエネルギー密度について説明したのと同じ体積の)材料の重量を用いた場合、比伝熱出力密度は少なくとも1000W/kg、より好ましくは少なくとも3000W/kgで、いくつかの態様では約1000W/kgから約4000W/kgの間である。一次伝熱面積(冷却水路を気体流路から分離する壁の面積)に基づく熱流束および全平均伝熱係数は、それぞれ少なくとも1W/cm2および500W/cm2・Kで、より好ましくはそれぞれ少なくとも3W/cm2および800W/cm2・Kである。いくつかの態様では、熱流束は約1W/cm2から5W/cm2の間であり、全平均伝熱係数は約500W/cm2・Kから1000W/cm2・Kの間である。さらに、冷却流の圧力の低下は好ましくは、水柱10インチ(25cm)、より好ましくは水柱4インチ(10cm)であり、いくつかの態様では、水柱1インチ(2.5cm)から水柱5インチ(13cm)の間である。複数の反復ユニットを有する装置では、いくつかまたはすべての反復ユニットにわたってこれらの特性を平均することができる。本発明のいくつかの態様では、冷却水路に入るクーラントの温度は少なくとも15℃である。冷却流の圧力低下は、気体流路に隣接するクーラント流路の開始部分から気体流路に隣接するクーラント流路の終了部分まで測定すべきである。同様に、装置は、いずれかの測定値(または測定値の少なくとも30%、あるいは測定値の約40%から測定値の約100%まで)を特徴とすることができる。当業者は、これらの説明に記載されたパラメータを考慮して、性能を(日常的な実験を通じて)実施例の節に記載された性能を上回るように最適化することができる。
【0069】
実施例
実施例1
マイクロチャネル凝縮器は、凝縮物を別個の液体流として収集し装置から除去する一体化された相分離機を有する直交流形空冷熱交換器である。
【0070】
この装置は、積み重ねられた構成要素の組立体である。スタックの概略分解図が図1に示されている。空気流を冷却するスロットを含む熱交換要素が底部にある。分離機要素は、熱交換器要素上に配置され、それらの間にガスケットが設けられ、それによって凝縮流用の流路が形成されている。第2のガスケットおよび凝縮要素が分離機上に配置され、第2の1組の凝縮流路が形成されている。蒸気と凝縮不能な気体との混合物が、一方の端部にあるヘッダ領域に送り込まれ、一方の側の熱交換要素および他方の側のウィッキング構造によって形成されたマイクロチャネルのアレイに分配される。熱交換機要素の垂直スロットを通る送風逆流が、気体混合物を冷却し、マイクロチャネルを通って流れる蒸気を凝縮する。この目的は、凝縮物を隣接するウィッキング構造に吸着させ、伝熱抵抗を増大させる凝縮表面上の液体膜の堆積を妨げることである。この構成の前提条件は、装置を適切な流れ方式で動作させることによって(TeGrotenhuis and Stenkamp, 2001)、液体が流れる気体に同伴することによって気体出口への液体の漏出を引きこすことなく液体を凝縮表面からウィックまで効果的に輸送できることである。
【0071】
凝縮マイクロチャネル同士の間に配置された液体分離機は、2つのウィッキング構造と液体流路で構成されている。凝縮物はウィックを通ってポア・スロート窓まで流れ、ポア・スロート窓は、液体の流れを可能にするが、気体が液体収集流路に流れ込むのを妨げる。液体流路の一方の端部に連結されたチューブは、凝縮物を装置から除去するのを可能にする。
【0072】
スタックはハウジング内でわずかに圧縮され、凝縮流路が密封される。ハウジングは冷却空気流を供給するブロアに連結されている。供給高温流、気体出口流、および液体凝縮物出口にも別個の連結部が設けられている。まず熱交換局面について説明し、次に一体化された相分離機について説明する。
【0073】
熱交換要素はアルミニウムであり、重量が23.5gである。冷却は、幅0.024インチ(0.61mm)、高さ0.100インチ(2.5mm)、長さ1.2インチ(3.05cm)の142個のスロットを通る空気流によって行われる。各スロットは、冷却側熱交換を向上させる熱交換フィンとして働く幅0.010インチ(0.25mm)の壁によって分離されている。算出されたフィン効果は99%である。逆流装置は、冷却空気流における水柱10インチ未満(2.5kPa)の圧力降下によって動作してファンまたはブロアの使用を容易にするように構成されている。
【0074】
熱交換機の凝縮側用の流路は、凝縮要素および凝縮要素上に積み重ねられた分離機要素上に配置されたリッジで形成されたマイクロチャネルである。各流路は、深さが0.020インチ(0.5mm)、幅が0.170インチ(4.3mm)、長さが5.7インチ(14.5cm)である。凝縮熱交換用の合計で10個のマイクロチャネル用の各凝縮要素によって形成された5つの流路がある。凝縮流路を分離するリッジは、構造的なものであり、高温側熱交換をそれほど向上させない。高温流は、装置の一方の端部の所の入口ヘッダにハーフパイプT字管を通して導入され、凝縮されていない気体が反対側のヘッダに収集され、第2のハーフパイプT字管を通ってヘッダから出る。
【0075】
高温側を低温側から分離する壁は、一次熱交換領域を形成し、厚さが0.020インチ(0.5mm)である。凝縮側の総一次熱交換面積は62.2cm2である。44cm2の冷却側の一次面積は、フィンによって410cm2まで大きくなる。
【0076】
相分離機は、2組の凝縮流路間に配置されている。液体流路は、焼結されたステンレス・スチールで作られたポア・スロート材料によって凝縮流路から分離されている。分離機は、凝縮流路に面する各側に1インチ x 0.5インチ(2.5cm x 1.3cm)の3つのポア・スロート窓を有している。ポア・スロート材料は、凝縮相に対して湿潤性を有し、液体出口を気体出口よりも低い圧力に維持することによって起こる、凝縮流路から気体流路までの凝縮物流を可能にする。ポア・スロートを通って液体流路内に至る気体の侵入は毛管力によって妨げられ、それによって相分離が推進される。ポア・スロートは、浸透性と、漏出圧力、すなわち、気体が液体をポア・スロートから変位させる圧力差を特徴とする。分離機内の厚さ0.0279μmのポア・スロート材料の平均測定浸透率は6x10-10cm2であり、ブレークルスー圧力は水柱約17インチ(4.4kPa)である。
【0077】
相分離は、凝縮流路に隣接する相分離機の表面上に吸着材料(繊維店で購入できる綿布)を配置することによってさらに向上する。吸着材料の目的は、凝縮物を流路から局所的に収集しポア・スロート窓に導くことであり、凝縮物は、ポア・スロート窓を通って液体流路まで流れ、その後装置から出る。
【0078】
部分凝縮器および相分離機の性能をNASAのKC-135低重力航空機上で試験した。試験は、航空機が1分から1.5分おきに放物線飛行を行い、それによって通常0.04g未満であり約20秒持続する短期間の低重力が得られたときに行った。航空機が方向転換する1分間から3分間の休止によって分離された約10回の数セットの放物線飛行を行った。典型的には、所与の飛行中に40回の放物線飛行を行った。
【0079】
小さなブロアの吸引側をハウジングの冷却排出部に連結することによって冷却空気流を実現した。凝縮器とブロアとの間に配置された玉形弁を用いて冷却空気流を調整した。差圧変換器を用いてキャビン圧力に対するブロアの入口での吸引圧力を測定し、この特定の装置から得られたブロア曲線から空気流量を求めた。凝縮器から出る冷却空気の温度を、流入冷却空気と同様にK型熱電対を用いて測定した。
【0080】
ピストンポンプによって温度調節式マイクロチャネル蒸発器への水を計量して過熱流を生成し、次に、過熱流を質量流量コントローラからの空気流と混合した。過熱流が、ヒートトレースを用いた混合後、装置に入る前に、追加的な熱を付加した。K型熱電対を装置のヘッダに挿入し入口温度を監視した。圧力変換器を用いて入口圧力を測定した。
【0081】
凝縮されていない気体流の温度を出口ヘッダ内のK型熱電対によって測定し、水を充填された管路によって出口配管内のT字管に連結された圧力変換器によって圧力を測定した。同様に、水出口流の温度および圧力も監視した。気体流出流と液体流出流の両方が、ビデオ・カメラの下方に配置された透明の配管を通過し、気体流への液体の漏出および液体流への気体の漏出を記録した。両方の流れはその後、2つの流れ間の圧力差を調整するのに用いられる手動の背圧弁を通過した。これによってポア・スロート全体にわたる圧力差を調整することができた。
【0082】
背圧弁の下流側に三方電磁弁を用いて気体流および液体流を2つの収集容器間を流動させた。低重力実験間に両方の流れを収集容器に流動させた。gレベルを事前に設定された値、通常0.2gよりも低下させると、流れを2つのサンプル・ジャーに向けるように電磁弁が作動する2秒前からタイマがカウントダウンを開始した。サンプル・ジャーにはそれぞれ、実験中に流れから水を収集するために事前に重量を測定された積層吸着材料が含まれていた。gレベルが0.3gを超えると、電磁弁が自動的に停止して流れを収集容器に戻した。実験間にサンプルを充填し、個々のプラスチック・バックに格納し、飛行後に重量を測定し、実験中の各流れ内の平均水流量の測定値を得た。
【0083】
簡単に言えば、実験中の視覚観察、出口管路のビデオ・テープ記録の検討、およびサンプルを用いた水収支によって相分離効果を判定した。測定された温度、圧力、および流量を用いて低温流と高温流の両方について熱収支も算出した。
【0084】
結果および分析
4回の低重力飛行に凝縮器/分離機を搭載したが、最初の飛行では、動作上の難点のために有用なデータは得られなかった。他の3回の飛行では、高温供給流の様々な流量、入口温度、および水蒸気留分でデータを収集した。後述のように、相分離効果を評価し、熱収支分析によって熱交換機性能を評価した。
【0085】
相分離
相分離の目的は、凝縮物出口流への気体の漏出を妨げつつ、流動する気体流からすべての液体凝縮物を収集して除去することである。低重力実験中に凝縮物流への気体の漏出はほとんど起こらなかった。入口と液体出口との間の圧力差を漏出圧力4.4kPaよりも低く維持するかぎり、流出液内に気体は観測されなかった。いくつかの実験では、圧力差が漏出圧力を超えても液体流への気体漏出は起こらなかった。さらに、気体がポア・スロートを横切って液体流に漏出したときに、液体出口温度をわずかに上昇させるなど、単に動作パラメータを修正することによって相分離を復元することができた。
【0086】
気体出口への液体漏出は、低重力実験中により頻繁に起こった。ただし、液体の完全な分離は、空気流が5SLPMのときに10mL/minもの高い凝集率で起こった。空気気体率が11SLPMに上昇すると、6mL/minもの多量の凝縮物を気体流路から完全に除去することができた。
【0087】
ポア・スロート流容量は、マイクロチャネル相分離機の動作において重要なパラメータであることが分かっている(TeGrotenhuis and Stenkamp, 2001)。ポア・スロート容量はダーシーの式から以下のように算出される。

上式で、QPTは、ΔPの圧力降下が与えられたときに浸透率Kおよび厚さhを有する多孔媒体の面積Aを通る粘度μを有する流体の最大流量である。ポア・スロート容量は、入口と液体出口との間の圧力差と、気体出口と液体出口との間の圧力差との平均を用いて所与の実験について算出される。
【0088】
凝縮率は水収支によって算出される。出口温度および圧力での飽和を仮定した場合に気体流に残存する水蒸気の量が水供給率から引き算され、凝縮率が得られる。凝縮率とポア・スロート容量との比はポア・スロート利用度と定義される。マイクロチャネル相分離機における従来の研究によって、液体漏出の発生とポア・スロート利用度に相関があることが分かっている。
【0089】
まとめられた液体漏出の結果が、すべての低重力実験について図2に示されている。通常、ポア・スロート利用度が25%に達したときでも空気流量が5SLPM以下のときは凝縮物の漏出は起こらなかった。11SLPMまでのより高い空気流量では、液体漏出に一貫性がなく、ポア・スロート利用度が5%より低くても漏出が起こった。
【0090】
気体流サンプルで検出された液体の量は、空気流量がより低く5SLPMおよび7SLPMのときに最小であった。最大値は水供給率の3%に過ぎなかった。空気流量が8SLPMのとき、気体サンプルで測定された液体は液体供給率の13%に達し、8SLPMを超えると、液体漏出が水供給率の40%に近くなった。したがって、相分離は、より低い気体速度で非常に有効であるが、速度が高くなるにつれて徐々に不安定になっていく。図3に示されているように、液体同伴が気体出口温度の影響を受けやすいことも分かった。所与の空気流量では、気体出口への液体漏出の尤度は、流出気体の温度が高くなるにつれて高くなった。
【0091】
熱交換
熱交換効果は、高温流と低温流の両方に対して熱収支を実行することによって分析される。冷却空気流によって得られる熱の量は、温度上昇と、ブロア全体にわたる圧力上昇を用いたブロア曲線から求められるモル流量とから算出される。凝縮流から伝達される熱の量は、凝縮の潜熱と顕熱損失との和である。潜熱率は、気体出口温度および圧力での飽和空気を仮定して、水供給率と気体流に残存している水蒸気との差として算出される凝縮率から算出される。顕熱損失は、凝縮物を水および/または気体出口の温度まで冷却すると共に、出口気体流を気体出口温度まで冷却することによって求められる。高温流の熱デューティと冷却流のデューティとの差は、周囲熱損失とみなされる。
【0092】
凝縮器ハウジングは、システムに大きな熱質量を与え、立上げ時および動作条件が変更されたときに長い温度過渡状態を生じさせる。航空機の離陸時にはシステムを動作させることができず、飛行持続時間が限られており、実験の頻度が指定されているため、凝縮器を単なる見掛けの定常モードで動作させた。これは、周囲熱損失傾向で最もはっきりと分かる。たとえば、飛行3の最初の4回の実験は、高温供給流体の温度および組成が同じであることを含む同じ動作条件で行われたが、周囲熱損失は高温流熱デューティの83%から61%に低減し、一方、気体出口温度は20℃から30℃に上昇した。このことは、多くの熱が冷却システムではなくハウジングに伝達されたことを示している。他の場合には、水供給率が低下したときに周囲熱損失が負になった。このことは、ハウジングが冷却されたことを示している。すべての低重力実験についての平均算出熱損失は、冷却デューティの30%であった。
【0093】
ハウジングの熱質量によって生じる長時間の過渡状態にかかわらず高温流熱損失を用いて装置の伝熱特性を評価した。図4に示されているように、高温流熱デューティを一次熱交換表面積で割り算することによって算出された平均熱流束を、凝縮供給混合物中のいくつかの供給空気流について、高温供給流体中の水のモル%に対してプロットした。平均熱流束は1W/cm2からほぼ7W/cm2までの範囲である。
【0094】
入口気体温度および出口気体温度を用いて平均熱流束を直交流熱交換のLMTDで割り算することによって平均全伝熱係数Umを算出した。平均全伝熱係数は、図5を見ると分かるように供給流体の含水率の関数であることが分かっている。分縮器ではこうなることが予想される。というのは、凝縮流のエントロピーは温度の一次関数ではないからである。露点よりも高いとき、勾配は気体流の熱容量に等しくなる。露点よりも低いとき、凝縮成分の潜熱はエントロピー変化を支配し、温度に対するエントロピーの勾配が大幅に大きくなる。さらに、露点よりも低いときには勾配は一定にならない。これは、凝縮率が温度の減少関数であるからである。
【0095】
装置の伝熱産出能力が図6に示されている。熱エネルギーおよび比出力は、高温流熱デューティと伝熱構成要素(図1には2つの凝縮要素しか示されていない)およびガスケットのサイズおよび重量とを用いて算出される。2つのアルミニウム凝縮要素の体積は35cm3であり、質量は52gである。熱流束と同様に、伝熱エネルギー密度および比出力は供給流体の含水率に依存する。前者は2W/cm3から12W/cm3の間の範囲であり、後者は1200W/kgから8000W/kgの範囲である。これらの値は、体積が24cm3であり質量が160gである分離機をサイズおよび重量に加えた場合には小さくなる。しかし、分離機はステンレススチールで作られており、これをアルミニウムで作った場合には重量を50gに減らすことができる。腐食用途のようにアルミニウムが適切ではないときには、より重量の軽い他の材料を用いて重量を減らしてよい。
【0096】
考察
マイクロチャネル分縮器による相分離は、特に気体速度が低いときには良好に行われた。高温流中の供給空気流は、気体出口への液体の漏出の発生に対する影響が最大であった。凝縮は、冷却水路に隣接する気体流路の一方の側で起こるが、反対側では、吸着剤材料に取り込まれ、ポア・スロートを通して除去される。この場合、凝縮物は、気体が流路に沿って流れている間、マイクロチャネルの凝縮側から吸着剤側に移動する必要がある。この結果、液体は、有効に吸収できるようになる前に、気体に同伴するかまたは気体に掃引されて気体出口の方へ移動する可能性がある。この可能性は、気体流量が増大すると共に高くなる。
【0097】
マイクロチャネル相分離試験では、ポア・スロート流容量またはポア・スロート利用度に対する強い依存性が示されている(TeGrotenhuis and Stenkamp, 2001)。この依存性は、これらの試験の結果では有意の因子ではなかった。実験では、ポア・スロート利用度が25%もの高い利用度であるときには液体の漏出が起こらず、一方、ポア・スロート利用度が2%よりも低いときに漏出が起こった。ポア・スロート容量はこの装置の性能を制限するものではないように思われ、ウィックへの凝縮物の輸送および/またはウィックを通ってポア・スロート窓に至る凝縮物の流れのような他の物理工程によって液体流容量が制限されたことが分かる。
【0098】
一方、気体出口温度は液体漏出の発生に影響を与えたらしい。液体は、出口温度が上昇すると気体流中に見られるようになった。これは、装置の出口端部で凝縮率が高くなるためである。気体出口温度が高くなるにつれて、温度駆動力が大きくなり、それによって熱流束が増大する。出口近くの熱流束が増大すると、出口近くの凝縮物産出量が多くなる。さらに、温度の増分変化当たりに生じる凝縮物の量は、温度が低くなると少なくなり、40℃から35℃までよりも30℃から25℃までの方が凝縮物が少なくなる。このため、気体出口温度が高くなるにつれて出口近くの凝縮物産出量が多くなる。気体出口の近くで産出される凝縮物が増えると、凝縮物が気体流路から出る前に気体流から凝縮物を除去する必要が増す。したがって、気体出口温度が上昇するにつれて液体漏出の問題がより深刻になる。
【0099】
空冷分縮に関する平均全伝熱係数は500〜2000W/m2Kに達した。これらの値は、空気側熱交換のための大きな拡張表面積を形成し、アルミニウムを用いることによって高いフィン効果を得、非常に小さな水力直径を実現してクーラント側の対流伝熱係数を大きくすることによって得られた。これによって、伝熱出力密度が10W/cm3を超え、比出力が5000W/kgを超えた。気体熱交換器によってこのようなハードウェア産出能力レベルを実現する能力は、サイズおよび重量が重要である多数の用途を有する。
【0100】
結論
相分離機能が組み込まれたマイクロチャネル分縮器を、NASAの低重力搭載KC-135航空機で首尾よく試験した。空気と水蒸気の混合物を70℃〜95℃の温度で送り、空冷直交流熱交換器で40℃よりも低い温度まで冷却した。結果として得られた凝縮物は、無重力状態で動作条件の範囲にわたって気体流から首尾よく分離された。
【0101】
気体出口への凝縮物の漏出は、凝縮流流量がより多いときに起こる傾向があり、気体出口温度の影響も受けた。分離機の流容量は有意の因子ではなかった。
【0102】
空気側伝熱抵抗は、拡張表面を使用し、かつミニチャネルを用いることにより水力直径を小さくすることによって小さくなり、伝熱エネルギー密度が10W/cm3を超え、比出力が5000W/kgを超えた。これは7W/cm2に近い熱流束に対応する。
【0103】
分縮熱交換器の両側にマイクロチャネルを使用すると、サイズおよび重量が重要である小形システムに顕著な利点がもたらされる。さらに、相分離機能を組み込み重力とは無関係に動作する能力は、特に宇宙用途に重要な機能である。
【0104】
実施例2
第2の実施例も直交流空冷マイクロチャネル分縮器であった。この装置は、流体を、ウィック構造を通して、出口気体ヘッダ内に配置されたポア・スロート構造まで移動させるのに重力を用いる点が異なっていた。この装置は、熱交換要素、気体流路、およびウィック構造のスタックで構成されていた。スタックの底部は、実施例1に記載された熱交換要素の1つであり、図1に示されているスタックの底部および頂部に示されている。熱交換要素の頂面は、深さが0.020インチ(0.05mm)であり一方のヘッダから他方のヘッダまで延びる5つの流路を有している。熱交換器要素上に、周囲を延びるガスケットを配置した。ヘッド同士の間を延び、5つの流路を実質的に覆い、それによって気体流の流路を形成するウィック構造が、ガスケット内に配置されている。ウィック構造は、一体構造を形成するようにすべてが縫い合わされたDelker展開金属スクリーン、綿布材料、および第2のDelkerスクリーン層から成っている。
【0105】
第1のウィック構造上に第2の熱交換要素が配置されている。この第2の熱交換要素は、深さが0.020インチ(0.05cm)の流路が両側に形成され、冷却流スロットの高さが0.200インチ(0.51cm)、すなわち、第1の熱交換要素の高さの2倍であり、伝熱用の拡張表面積が2倍になるという点を除いて、第1の熱交換要素と同様である。第2の伝熱要素上に別のガスケットおよびウィック構造を配置し、次に、第2の熱交換要素と同じ寸法を有する第3の熱交換要素を配置した。第3の熱交換要素上に第3のガスケットおよびウィック構造が配置されている。最後に、第3のガスケットおよびウィック上に第4の熱交換要素が配置されている。第4の熱交換要素は、第1の熱交換要素と同じ寸法を有するが、反転されている。完全なスタックは、合計で4つの熱交換要素、3つのウィック構造、および並列凝縮流路の6つのアレイを有している。構成要素の順序は以下のとおりであり、すなわち、冷却水路、気体流路、ウィック構造、気体流路、冷却水路、気体流路、ウィック構造、気体流路、冷却水路、気体流路、ウィック構造、気体流路、冷却水路の順である。スタック全体がハウジング内に配置され圧縮されて、クーラント流路からの凝縮(気体)流路が密封される。
【0106】
気体入口ヘッダを頂部に配置し、気体出口ヘッダを底部に配置して、この装置を垂直方向に動作させた。出口気体ヘッダにポア・スロート構造が挿入されている。気体流の冷却時に形成される凝縮物は、ウィック構造に吸収され、下向きにウィック構造を通ってポア・スロート構造上まで流れる。凝縮物の同伴を防止しつつ気体を装置から流出させる様々な構造を気体出口ヘッダ内に配置することができる。ハウジングおよびポア・スロート構造を貫通するチューブによって液体出口が設けられている。液体出口は、気体出口よりも低い圧力に維持され、凝縮物を気体流から分離された流れとして除去する。
【0107】
凝縮流中の空気供給流量が標準的な毎分32リットルおよび48リットル(SLPM)であるときに測定されたこの装置の性能が図7、8、および9に示されている。空気流量32SLPMの場合の実験データの動作条件を変動させ、クーラント入口温度を19℃から25.5℃の範囲とし、クーラント表面速度を715cm/sから840cm/sの範囲とした。凝縮流の入口温度は48℃から93℃の範囲であり、入口での凝縮流表面速度は900cm/sから1350cm/sの範囲であった。総伝熱量は100Wから540Wの範囲であり、水回復率は64%から85%の間であり、全平均伝熱係数は340W/m2・Kから1000W/m2・Kの範囲であった。凝縮流における空気流が48SLPMであるとき、クーラント入口温度は19℃から25℃の範囲であり、クーラント空気表面速度は730〜840cm/sであった。凝縮流の入口温度は56℃から87℃の範囲であり、入口での凝縮流表面速度は1400cm/sから1700cm/sの範囲であった。総伝熱量は180Wから480Wの範囲であり、水回復率は61%から76%の間であり、全平均伝熱係数は530W/m2・Kから800W/m2・Kの範囲であった。
【0108】
32SLPM供給空気流量でのある実験では、20℃で表面速度840cm/sでクーラント空気を送った。凝縮流は77℃で表面速度1350cm/sで流入し、凝縮流は40モル%の水で構成されていた。気体流は55℃で流出し、水柱19インチ(48cm)の圧力降下が起こった。これは、520Wの熱デューティおよび73%の水凝縮を表す。クーラントも55℃で流出し、水柱2.1インチ(5.3cm)の圧力降下が起こった。全平均伝熱係数は990W/ m2・Kと算出され、2000W/kgの比伝熱出力密度および3.1W/cm2の出力密度が実現された。
【0109】
48SLPM空気流量での第2の実験では、16℃で表面速度840cm/sでクーラント空気を送った。凝縮流は84℃で表面速度1700cm/sで流入し、凝縮流は28.5モル%の水で構成されていた。気体流は48℃で流出し、水柱27インチ(69cm)の圧力降下が起こった。これは、480Wの熱デューティおよび70%の水凝縮を表す。クーラントも48℃で流出した。全平均伝熱係数は795W/ m2・Kと算出され、1800W/kgの比伝熱出力密度および2.9W/cm2の出力密度が実現された。
【0110】
実施例の装置の理論的なモデルは用いて、図7、8、および9に示されている各実験データ・ポイントの動作条件での性能を予測した。図7、8、および9に示されている二次方程式への理論予想値の最小2乗フィットによってトレンドラインを得て、実際の性能が予想された性能を概ね上回ることを示した。理論モデルは、凝縮流における熱および質量伝達効果を考慮したColbum-Hougen (1934)に基づく局部伝熱モデルの数値積分である。さらに、このモデルは、空気側伝熱抵抗、壁抵抗、および考えられる凝縮物膜抵抗を考慮している。2つの流れが混合されず対称的である直交流熱交換器にeps-NTU方法(Rohsenow, et al., 1998)を用いて局部伝熱効果を判定する。
【0111】
用語
A ポア・スロート面積、m2
K 浸透率、m2
h ポア・スロート厚さ、m
QPT ポア・スロート流容量、L/s
ΔP ポア・スロート全体にわたる圧力差、Pa
μ 凝縮物速度、ポアズ
【0112】
参考文献

【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】相分離機の分解断面概略図である。
【図2】液体漏出が起こった場合(○)と起こらなかった場合(×)との、実施例1の装置における様々な凝縮流空気流量およびポア・スロート利用度における結果をまとめた図である。
【図3】液体漏出が起こった場合(○)と起こらなかった場合(×)との、実施例1の装置における様々な凝縮流空気流量および気体出口温度における結果をまとめた図である。
【図4】実施例1の装置における11SLPM(+)、10SLPM(◇)、9SLPM(△)、8SLPM(×)、7SLPM(○)、および5SLPM(■)の凝縮流流量での供給時の平均熱流束と含水率との関係を示すプロットである。
【図5】実施例1の装置における11SLPM(+)、10SLPM(◇)、9SLPM(△)、8SLPM(×)、7SLPM(○)、および5SLPM(■)の凝縮流流量での供給時の平均全伝熱係数と含水率との関係を示すプロットである。
【図6】実施例1の装置における11SLPM(+)、10SLPM(◇)、9SLPM(△)、8SLPM(×)、7SLPM(○)、および5SLPM(■)の凝縮流流量での供給時の熱エネルギー密度および比出力と含水率との関係を示すプロットである。
【図7】回復された含水率と、32SLPM(●)および48SLPM(■)の凝縮流流量での実施例2の装置の流体入口に入る流体の含水率との関係を示すプロットであり、トレンドラインは、32SLPM空気流(---)および48SLPM空気流(−)の両方について、実験データを生成したのと同じ動作条件での予想性能値によって示されている。
【図8】比出力と、32SLPM(●)および48SLPM(■)の凝縮流流量での実施例2の装置の流体入口に入る流体の含水率との関係を示すプロットであり、トレンドラインは、32SLPM空気流(---)および48SLPM空気流(−)の両方について、実験データを生成したのと同じ動作条件での予想性能値によって示されている。
【図9】平均熱流束と、32SLPM(●)および48SLPM(■)の凝縮流流量での実施例2の装置の流体入口に入る流体の含水率との関係を示すプロットであり、トレンドラインは、32SLPM空気流(---)および48SLPM空気流(−)の両方について、実験データを生成したのと同じ動作条件での予想性能値によって示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の要素を記載された順番に含む、凝縮器:
第1の冷却水路;
第1の冷却水路に隣接する第1の気体流路;
ウィックを含む液体流路;
第2の気体流路;および
第2の気体流路に隣接する第2の冷却水路。
【請求項2】
液体流路が、第1のウィックと第2のウィックとの間に挟まれた開放液体流路を含む、請求項1記載の凝縮器。
【請求項3】
凝縮器が積層装置であり、第1の冷却水路、第1の気体流路、液体流路、第2の気体流路、および第2の冷却水路は本質的に平面状である、請求項1記載の凝縮器。
【請求項4】
第1の気体流路と液体流路との間に配置された第1のポア・スロート、および、第2の気体流路と液体流路との間に配置された第2のポア・スロートをさらに含む、請求項1記載の凝縮器。
【請求項5】
以下の要素を記載された順番にさらに含む、請求項2記載の凝縮器:
第2の冷却水路に隣接する第3の気体流路;
ウィックを含む第2の液体流路;
第4の気体流路;および
第4の気体流路に隣接する第3の冷却水路。
【請求項6】
凝縮器は積層装置であり、
第1、第2、第3、および第4の気体流路に連結されたヘッダに連結された液体入口、
第1、第2、第3、および第4の気体流路に連結されたフッタに連結された気体出口、ならびに、
液体流路に連結された液体出口をさらに含む、請求項5記載の凝縮器。
【請求項7】
以下を含む、請求項5記載の凝縮器であって、流体が、ウィックを通過せずに、少なくとも1つの流体入口を通って凝縮器に入り、気体流路を通過し、少なくとも1つの気体出口を通って凝縮器から出ることができる凝縮器:
第1、第2、第3、および第4の気体流路に連結された少なくとも1つの流体入口:ならびに
第1、第2、第3、および第4の気体流路に連結された少なくとも1つの気体出口。
【請求項8】
以下を含む、請求項2記載の凝縮器であって、
第1の気体流路が、第1の長さを有し、
第1の冷却水路が、第1の気体流路に隣接するクーラント流路を含み、第1の気体流路の一部は、クーラント流路のどの部分よりも第1の長さの少なくとも10%気体出口に近く、
第1のウィックの一部が、クーラント流路を含む第1の冷却水路のどの領域よりも気体出口に近い、凝縮器:
第1の気体流路に連結された気体出口;および
流体が、ウィックを通過せずに、1つの流体入口を通って凝縮器に入り、第1の気体流路を通過し、気体出口を通って凝縮器から出ることができるように、第1の気体流路に連結された、流体入口。
【請求項9】
少なくとも2つの成分を含む流体が、第1の温度で流路入口を通って装置に流入し、
流体入口が、第1の気体流路に連結され、
第1の気体流路が、気体を含み、
第1のウィックが、液体を含み、
第1の冷却水路が、第2の温度でクーラントを含み、
第2の温度が、第1の温度よりも低い、請求項2記載の凝縮器。
【請求項10】
装置は、20℃の周囲空気が表面速度840cm/sで冷却水路を通過させられ、空気中に40.0モル%の水蒸気を含む供給流が入口での表面速度1700cm/sで気体流路を通過させられるときに、冷却水路を通る周囲空気流の圧力の低下が水柱4インチ(10cm)以下になるように高エネルギー密度定常性能を有し、
第1の冷却水路が、冷却水路壁によって形成され、
第1の冷却水路を形成する壁の体積を含む、第1の冷却水路と第1の気体流路を合わせた体積から算出されるエネルギー密度が、少なくとも2.0W/cm3であり、
供給流内の水蒸気の少なくとも50%が、液体流路に流入する液体に凝縮される、請求項1記載の凝縮器。
【請求項11】
第1の気体流路が、マイクロチャネルである、請求項2記載の凝縮器。
【請求項12】
第1のウィックが、100nmから0.1mmの範囲のキャピラリ孔径を有する、請求項2記載の凝縮器。
【請求項13】
請求項1記載の凝縮器の第1の気体流路に流体混合物を流す段階を含む、流体を分離する工程。
【請求項14】
凝縮器が、液体出口および気体出口を含み、
流体混合物が、ウィック内の液体である第1の成分、および、工程中に実質的に気体のままである第2の成分を含み、
工程中の条件が、気体レイノルズ数と液体レイノルズ数の比、すなわちReGS/ReLSが約(4500)・(Su)-0.67より大きくなるような条件であり、
第1の成分を液体出口を通して除去する段階、ならびに
第2の成分を気体出口を通して除去する段階を含む、請求項13記載の工程。
【請求項15】
気体レイノルズ数と液体レイノルズ数の比、すなわちReGS/ReLSが、凝縮率に基づく液体レイノルズ数で約(4600〜100,000)・(Su)-0.67の範囲である、請求項14記載の工程。
【請求項16】
流体混合物が、本質的に2つの成分から成る、請求項14記載の工程。
【請求項17】
一方の成分が、液体水を含む、請求項16記載の工程。
【請求項18】
冷却水路壁によって形成される冷却水路、
冷却水路に隣接する気体流路、
ウィックを含み、気体流路に隣接する液体流路、および
気体流路と冷却水路との間の、領域を有する一次伝熱面を含む、凝縮器であって、
20℃の周囲空気が表面速度840cm/sで冷却水路を通過させられ、空気中に40.0モル%の水蒸気を含む供給流が気体流路の入口で表面速度1700cm/sで気体流路を通過させられるときに、冷却水路を通る周囲空気流の圧力の低下が水柱4インチ(10cm)以下であり、以下のうちの少なくとも1つであるように、装置が高エネルギー密度定常性能を有する、凝縮器:
(1)冷却水路を形成する壁の体積を含む、冷却水路と気体流路とを合わせた体積から算出されたエネルギー密度が少なくとも2.0 W/cm3である;
(2)冷却水路および気体流路を形成する材料の重量から算出された比エネルギーが少なくとも1000W/kgである;
(3)全平均伝熱係数が気体流路と冷却水路との間の一次伝熱面の面積に基づいて少なくとも500W/cm2・Kである;もしくは
(4)供給流中の水蒸気の少なくとも70%が液体に凝縮する。
【請求項19】
凝縮器が、液体流路および気体流路が実質的に平面状である積層装置であり、
液体流路および冷却水路は、気体流路の両側に配置される、請求項18記載の凝縮器。
【請求項20】
気体流路、および冷却水路が、マイクロチャネルである、請求項18記載の凝縮器。
【請求項21】
以下をさらに含む、請求項18記載の凝縮器:
気体流路に隣接する液体流路の側の反対側である液体流路の側に配置される第2の気体流路;および
第2の気体流路に隣接する第2の冷却水路。
【請求項22】
冷却水路を形成する壁の体積を含む、冷却水路と気体流路を合わせた体積から算出されるエネルギー密度が、少なくとも2.0W/cm3であり、
供給流中の水蒸気の少なくとも50%が、液体流路に流れ込む液体に凝縮する、請求項18記載の凝縮器。
【請求項23】
請求項1に記載された構造を含む、請求項22記載の凝縮器。
【請求項24】
水蒸気を含む流体混合物を凝縮器内の気体流路内に流す段階、
液体流路内に液体を形成する段階、および
水柱4インチ(10cm)以下の冷却水路を通る圧力降下で周囲空気を冷却水路を通過させる段階を含む、水を凝縮する方法であって、
凝縮器が、冷却水路壁によって形成される冷却水路、冷却水路に隣接する気体流路、気体流路に隣接する液体流路、および、気体流路と冷却水路との間の、領域を有する一次伝熱面を含み、以下の少なくとも1つである、方法:
(1)冷却水路を形成する壁の体積を含む、冷却水路と気体流路とを合わせた体積から算出されたエネルギー密度が少なくとも2.0 W/cm3である;
(2)冷却水路および気体流路を形成する材料の重量から算出された比エネルギーが少なくとも1000W/kgである;
(3)全平均伝熱係数が気体流路と冷却水路との間の一次伝熱領域に基づいて少なくとも500W/cm2・Kである;または、
(4)供給流中の水蒸気の少なくとも70%が液体として凝縮される。
【請求項25】
流体混合物中の水蒸気の少なくとも60%が、凝縮されて液体になる、請求項24記載の方法。
【請求項26】
液体流路が、ウィックおよび開放液体流路を含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
流体混合物が、燃料電池からの流出液を含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
流体混合物中の水蒸気の65%から85%が、凝縮されて液体になる、請求項25記載の方法。
【請求項29】
周囲空気が15℃以上であり、流路に入る流体混合物が50モル%以下の水を含む、請求項25記載の方法。
【請求項30】
請求項2に記載の凝縮器に連結された出口を含む燃料電池を含む、システム。
【請求項31】
クーラントが、冷却水路に連結されたブロアまたはファンによって移動させられる、請求項9記載の凝縮器。
【請求項32】
請求項1に記載の凝縮器を含む、重力独立システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2006−516478(P2006−516478A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503074(P2006−503074)
【出願日】平成16年1月26日(2004.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/002254
【国際公開番号】WO2004/067138
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(504267013)バッテル メモリアル インスティチュート (8)
【Fターム(参考)】