説明

流体を特に体腔、特に胸腔に供給する及び/又はから除去するカテーテルの形をした医療装置

本発明は、流体を体腔に供給するだけでなく、特に体腔から除去もするカテーテル(3)の形をした医療装置に関する。カテーテルヘッド(1)の近位端部(4)には入口(5)を含み、該入口には、1つ又は複数の封止要素及び/又は停止要素(6、7)を備え、該入口を使用して、中空針又はベレス針(18)をカテーテル(3)に導入する。封止要素又は停止要素と、体内に挿入するカテーテルシャフト(2)領域との間の領域に、分岐連結部(8)を設け、該分岐連結部を、分岐管(9)を介して吸引ポンプ装置(10)に連結する。該分岐管(9)は吸引弁(11)に繋がり、該吸引弁によって、流体が吸引弁の方向に流れるのを可能にするが、反対方向の流れを遮断可能にする。吸引弁(11)の出口は股状領域(12)へと開口し、該領域からの一方の分岐(16)は吸引装置連結部、特に、好適にはルアーロックとして具現化する注射連結部(13)に繋がり、他方の分岐(17)は、分泌物袋連結部(14)に繋がる。分泌物袋からの逆流を遮断する逆止め弁(15)を、上記分岐(17)と分泌物袋連結部(14)との間に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を特に体腔、中でも胸腔に供給する、及び/又は特に体腔、中でも胸腔から除去するカテーテルの形をした医療装置に関し、該医療装置には、カテーテルヘッドとカテーテルシャフトがあり、該カテーテルヘッドには、近位端部に入口があり、該入口には、中空針又はベレス針をカテーテルに挿入するための1つ又は複数の封止弁及び/又は停止弁を備え、封止弁及び/又は停止弁と体内に挿入するよう設計したカテーテルシャフト部分との間の領域に分岐連結部を設け、該連結部を好適には、分岐ホースを介して、吸引ポンプ装置に連結する。
【0002】
本発明による装置を使用して、空気又は体液を、穿刺により人体から除去でき、獣医学分野でも同様な用途を見いだせるが、本明細書では、特に、人間医学における利用について説明するもので、好適用途としての可能性が、流体又は気体が胸部空間(胸腔)に蓄積した際の病理学的治療にある。
【背景技術】
【0003】
肺組織は外套のような臓側胸膜によって囲まれている。同時に、肋骨胸膜は、あばら骨の内側を覆っている。臓側胸膜と肋骨胸膜との間の空間は胸腔と呼ばれ、通常この間隙は低圧であるため、健康人では空気や流体は入っていない。
【0004】
胸水は、胸腔内液が過度に生成された際、或はリンパ排出が減少した場合、考え得る原因は様々だが、発生する。よくある原因としては悪性腫瘍があるが、負傷、炎症、心不全も、胸水の原因となることもある。20〜30mlの流体蓄積でも超音波検査によって検出できるが、胸水は徐々に発生し、その症状は大抵末期にのみ現れるため、診断時には、既に数リットルの流体が胸腔内に存在し、どの種の流体からその胸水が構成されているのか(血性、化膿性、透明性等)が不明なことが多い。胸膜穿刺診断によりこれを明確にでき、該診断では、採取した流体を化学的、細胞学的、細菌学的に検査できる。
【0005】
胸水の治療は、基本的に原因となる疾患によって異なり、大量の胸水がある場合は、蓄積した流体量を減少させるための、軽減目的の穿刺が理に叶っている。心血管への圧迫を避ける目的、及び肺水腫の危険を減らす目的で、一般的に、一度に全流体量を除去せず、大抵は100mlから最大1500mlの間の量を除去する。炎症を予防する目的、又は炎症を治療可能にする目的で、例えば、抗生物質といった薬物を、穿刺部位から胸腔に導入することもできる。(膿胸状態の)胸腔内化膿性滲出液の場合、灌注吸引ドレナージが胸腔内で必要となる可能性があり、胸腔内の固結物を、吸引手順前と吸引手順間に潅流液を導入して、緩める。
【0006】
胸膜穿刺は、大抵患者に局部麻酔をかけて経験を積んだ医師によって実施され、必要に応じて超音波検査しながら、針(又は、穿刺用カテーテル)が肋骨胸膜と臓側胸膜(胸膜間隙)との間の空間に導入される。穿刺は、一方では検査(診断用途)材料を得るのに用い、他方では、蓄積した流体を吸出(治療用途)できる。大抵、合成樹脂製チューブに入れたカニューレ又は中空針を使用し、これを2本のあばら骨の間、皮膚そして肋間筋組織を通して胸腔へと導入する。カニューレに取付けたシリンジを通して、少量の胸水を吸出し、更なる検査のために検査所に持ち込むことができる。その後、中空針を引抜き、極細ホースをそのままになっている合成樹脂製チューブに連結し、そこから滲出液を排出する。使用する連結要素は、大抵ルアーコネクタ又はルアーロックとして知られるものとするが、これはそうした連結要素が国際的に使用されており、様々な医療装置との、統一的な標準化(例えば、DIN13090、EN1707又はISO594/1において)した連結が可能になるためである。
【0007】
吸出は、シリンジを介して、或は、カテーテルに取付され、大量の液体又は気体を排出するのに特に有用な特別な低圧又はポンプシステムを通して、行うことができる。送液するのに、通常単純な吸引装置を使用し、該吸引装置は、調節可能な三方弁で基本的に構成し、弁の分岐した一方にはシリンジを、大抵ルアーロックを介して取着し、分岐した他方を、吸出した分泌物を収集する袋に繋げ、分岐した3番目を、胸膜穿刺カテーテルを介して胸腔に接続する。吸引するために、まず該弁を手動レバーで収集袋との連結を切断し、シリンジを引上げてシリンジ内に胸腔から流体を吸出するように調節する。シリンジが充填されると、弁レバーを、カテーテルとの連結を閉止するように切換え、吸出した液体を、次にシリンジを加圧して、既に弁を介してシリンジと連結してある収集袋内に押出す。こうした仕組みでは、絶えず手動で弁の切換をする必要があり、切換ミスがあると、流体が収集袋の外に吸出される、及び/又は胸腔に逆注入されることさえあり得る。
【0008】
吸出手順後に、例えば、局部麻酔薬、抗生物質、組織接着剤、殺細胞剤(細胞分裂阻害薬)又は鎮痛剤といった薬物を適宜、例えば必要であればカテーテルを通して胸腔に導入することができる。最後に、カテーテルの合成樹脂製チューブを引抜き、包帯を巻く。
【0009】
従来のカテーテルでは、しばしば別の装置をカテーテルに、個々の操作ステップ間で取着する必要があり、胸腔に空気が侵入していないかを、空気の侵入が気胸症に直結する(胸部内への気体)ため、常に確認しなければならない。様々な停止弁がこれに役立つが、その正確な操作は医師の責任となる。装置を操作するのに加えて、医師は、例えば息を止める、呼息する、吸息する際に患者に指図しなければならない。従って、使用する装置では操作ミスを防げないため、誤りは、唯一医師の技術的能力と用心で回避することになる。
【0010】
胸膜カテーテルを入れる際に起こり得る合併症として、感染症が挙げられるが、これは消毒針と良く皮膚消毒することで滅多に起こらない。その他、カテーテルを導入する際や、患者が動いたり、咳をしたりした場合に、肺が損傷する可能性もある。また、肝臓又は脾臓に対する損傷及び二次出血も起こるかもしれない。
【0011】
肺及び内臓への損傷を防ぐために、例えば、長い間当該技術分野で知られる「ベレス針」と呼ばれる穿刺用の特別な針を使用することができる。ベレス針により、硬質物質(筋肉組織、肋骨胸膜)を貫通できるが、軟質物質(臓側胸膜、肺組織)への損傷を防ぐことができる。このために、ベレス針は、鋭利な遠心端を持つ外側針(カニューレと同様の)から成り、該外側針の内径で、先端を丸くした内側の探針を延伸させる。内側探針を、先端を丸くした探針が外側針の先端から延伸するように、バネで前方に予張する。例えば、胸筋組織等の比較的硬い組織に穿刺する場合、探針先端が、バネの力に対抗して外側針内に押し戻され、それにより外側針の鋭利な端部が露出して、通常のカニューレ先端のように組織を貫通できるようになっている。針の先端が、軟質な組織に達すると、探針は自然にバネの力で再び外側針から押出され、その結果、外側針の先端から離隔して、軟質な組織を押圧して、組織を損傷しないようになっている。従来のカニューレのようにベレス針を使用可能にするために、探針を中空にして、遠位開口部を先端ではなく、先端から離れた横方向に設けるよう、設計している。
【0012】
胸膜穿刺用医療装置における、ベレス針の使用については、例えば、独逸国特許第DE693 28 254号に記載されている。また、このDE693 28 254号では、ベレス針をカテーテルから引抜くと直ぐに、空気が胸腔内に侵入するのを防ぐために、胸膜穿刺カテーテルの針の差込み口を、複数の可動部品(バネ、ボール、ピストン)から成る弁で閉止する、ボール弁も開示している。このカテーテルのヘッドには分岐があり、該分岐からホースを、上述したように、従来のやり方で三方弁を使用する吸引装置に繋いでいる。
【0013】
最近では、例えば、ゴム又は別のエラストマー等の弾性材料製の逆止弁が、次第に医療分野で使用されてきている。こうした弁は、略単体から成り、該単体には通常基本的に円筒形状の内部空洞があり、片方で楔形に先細にし、それにより該楔形の先端で、内部空洞の空間を、2枚のリップシール用リップを互いに隣接させることで、閉鎖するようにしている。これらの弁は一般的に、リップ弁と呼ばれる、或はその形状から(ダック)ビル弁と呼ばれている。こうした弁は単純な構造のため、多くの構成で利用可能であるが、先端部は必ずしも楔形とする必要はなく、モデルによっては、円錐状に先細にする、又は十字形に(プラスドライバーと同様に)設計することもできる。リップ弁は費用対効果に優れ、最小空間に嵌合でき、単純なハウジングだけを必要とし、耐腐食性、耐摩耗性、自浄作用があり、安全で、組立てが容易である。リップ弁はまた、差圧範囲を最も広く設計でき、形状や材料を変えることで特定の要求に合わせて作製できる。様々な医療分野用リップ弁のモデルを、例えば、アメリカ合衆国オハイオ州イエロースプリングス(Yellow Springs, Ohio, USA)にあるバーネイ・ラボラトリーズ・インク(Vernay Laboratories, Inc.)の製品カタログで見ることができる。
【0014】
更に、リップ弁をカテーテルの封入口として気管内チューブの分岐に配置して使用することは、国際公開第WO2006/103233号から既知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】DE693 28 254号
【特許文献2】国際公開第WO2006/103233号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、空気の胸腔への侵入を確実に防ぎつつ、現在胸膜穿刺に使用されている医療装置より使用方法が簡単で、製造の費用対効果に優れた、胸膜穿刺カテーテルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これらの課題を解決するために、分岐したホースが吸引弁に繋がり、該弁により吸引装置方向の液流は可能にするが、逆方向の流れは遮断し、該吸引弁の出口が分岐部へと開口しており、該分岐部から分岐の一方が、好適にはルアーロック、特にはシリンジ連結部として設計した吸引装置連結部と繋がり、分岐の他方が分泌物袋連結部に繋がり、この分岐と分泌物袋連結部との間には、分泌物袋からの逆流を遮断する逆止弁を配置する、本発明による装置を提案する。
【0018】
本発明により設計する医療装置は、胸腔又は別の体腔へ簡単且つ安全に穿刺可能にしながら、全治療中に空気や異物が体内に侵入するのを防ぐことができる。その上、本発明による医療装置には、現行のシステムより取扱いが複雑でなく、液体と気体の両方を吸出するのに適した、単純で効果的な吸出システムを含む。特に、医師は、吸引中に手動で弁を切換える必要がなく、それにより装置の操作ではなく、患者の治療に集中できる。また、本発明によるカテーテルでは、体腔への流体の供給も、カテーテル装置又は該装置の部品を交換する必要無く、可能である。この可能性を、例えば、吸出後に薬剤を胸腔に注入するため、又は体腔の固結物を、吸引前に灌注によって緩める灌注吸引ドレナージとして装置を使用するために、利用できる。
【0019】
有利な1実施例では、分泌物袋連結部をルアーロックとして設計でき、分泌物袋からの逆流を遮断する逆止弁を、ビル弁又はリップ弁又は膜逆止弁とすることができ、該弁をルアーロック内部に配置する。吸引弁もまた、ビル弁又はリップ弁又は膜逆止弁として設計することができる。ビル弁又はリップ弁(これらの弁は、「ダックビル弁」の名でも知られている)は、特に単純で安価な弁であり、そのため使い捨て器具での使用に適している。また、膜逆止弁も、製造費用対効果に優れており、その上極めて僅かな設置寸法という利点がある。分泌物袋連結部のルアーロックにこの弁を配置すると、特に有利な実施例が構成でき、異なる機能ユニットの数を最小にできる。
【0020】
更なる実施例では、カテーテルと吸引弁との間の分岐ホースを、ホースクランプによって好適には封止可能にすることができる。その結果、カテーテルから吸引ポンプ装置までの連結を迅速に簡単な方法で中断でき、それによりカテーテルを使用して、体内に流体を導入できるようになる。本発明の更なる実施例では、中空針又はベレス針を導入する入口には、押圧弁として設計した内向きのビル弁又はリップ弁を備えることができ、該弁は、押入れた中空針又はベレス針をシールとして、その外周と隣接させ、引抜いた該針で、通常体腔と外部との間に発生する差圧下での両方向への流体通過を遮断するものと想定する。 また、好適には手動で操作する停止弁を、カテーテルヘッドの押圧弁と分岐連結部との間に配置できる。その結果、カテーテルを挿入する役割を果たす針を、カテーテルが所定位置に留置すると直ぐに、カテーテルから容易に引抜ける。この弁によって、針入口を、空気が体内に侵入できないように、直ぐに封止する。手動で操作する停止弁は、信頼性を高めるのに有用で、例えば圧送又は吸入中に起こり得る高差圧下でも、針入口を封止できる。停止弁を開弁すると、カテーテルを介して、例えばシリンジを用いて、体腔に液体を導入できる。そのために、押圧弁は必ずしも針で貫通する必要はなく、代わりに、該弁は開弁圧を超える差圧下で開き、液体が導入可能になるため、カテーテルヘッドにルアーコネクタを介して取着したシリンジで十分事足りる。その上、この針入口の閉止は、例えばボール弁を使用する既知のシステムに比べて、技術的に簡単で、製造費用対効果に優れている。
【0021】
更なる実施例では、吸引ポンプ装置には、吸引弁、分岐部、シリンジ連結部への分岐、分泌物袋連結部への分岐、シリンジ連結部、分泌物袋連結部、及び逆止弁を含み、これらを1個の組合せ部品に統合できる。ここで、吸引ポンプ装置をT字型部品として設計し、該部品において吸引弁及び/又は逆止弁を、膜逆止弁として設計すると、特に有利である。こうしたT字型部品は、比較的僅かな個別の部品で製造でき、機械で製作する際に利点を提供するが、これは、T字型部品を射出成形法によって製造する場合に、単純な射出金型を使用し、そうした金型ではスライダ無しで処理できるからである。吸引弁及び/又は逆止弁として膜逆止弁を使用することによって、特にコンパクトな設計の吸引ポンプ装置を、達成できる。
【0022】
本発明の特別な実施例について、例示目的の図面を参照して以下説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるカテーテルを、吸引ポンプ装置を取着して、断面図で示している。
【図2】上記カテーテルを、吸引ポンプ装置を付けずに、平面図で示している。
【図3】ベレス針の先端をその内部に配置したカテーテルヘッドの針入口、及び停止弁を、断面図で示している。
【図4】本発明によるカテーテルを、分岐ホースにホースクランプを設けてこれを示している。
【図5】本発明による吸引ポンプ装置の一部を示しており、ビル弁として設計した逆止弁を分泌物袋連結部の内部に配置している。
【図6】T字型部品として設計した吸引ポンプ装置を、部分断面図で示している。
【図7】図6のT字型部品の吸入弁内で吸引弁として使用する膜逆止弁を、拡大図で示している。
【図8】概略図で膜逆止弁の機能原則を示している。
【図9】弁膜の平面図を示している。
【図10】T字型部品を有するカテーテル装置の全体を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1では、本発明による胸膜穿刺カテーテル3を、吸引ポンプ装置10と共に示しており、該装置を、分岐ホース9を介してカテーテル3と連結し、該ホースをカテーテル3の分岐連結部8から先へと繋げる。カテーテル3は、基本的にカテーテルシャフト2とカテーテルヘッド1から成り、停止弁7をカテーテルヘッドに連結し、該停止弁は開位置で、カテーテルへの針挿入を可能にし、閉位置で、カテーテルヘッドを閉止する。カテーテル3の近位端部4には、針入口5として押圧弁6を配置し、該弁については、図3において詳細断面図で詳しく表している。図3では、ベレス針18の先端を針入口5にちょうど押入れたところを示している。その際には、押圧弁によって針周辺で針を封止している。針をカテーテル3に完全に挿入した状態で、カテーテルシャフト2を周知の方法で、針の先端をカテーテルシャフト2の遠位端部から少し突出させて、体腔、特に胸腔内に押入れることができる。この手順を、例えば超音波技術やエックス線技術等の画像検査法によってモニターできるが、カテーテルシャフト2には、エックス線に対して不透明な細長片20を備え(図2)、10ミリメートル単位で印を付けて、エックス線で寸法を識別できるようにしてもよい。カテーテルシャフト2の遠位端部に、螺旋状に該シャフトの周囲に4つの出口21を設け、体腔との流体連通を向上させる。
【0025】
カテーテル3を留置し、適宜正確な位置を確認した時点で、針をカテーテルから、可撓性カテーテルシャフト2だけが患者の体内に残るようにして、引抜く。針入口5に配置する押圧弁6は、好適には、開弁圧力を十分高くして、該弁が体腔と環境との間で予想される差圧下でも依然として開弁しないようにする。その結果、針を引抜いた状態でも、該弁により、空気が体内に吸込まれるのを防止できる。これは特に胸腔治療中に重要である、というのも不十分に封止する弁では、空気の胸腔内への侵入を齎し、最悪の場合には緊張性気胸といった生命に危険を及ぼす合併症を引き起す可能性があるためである。しかしながら、経験を積んだ医師は、この状況を直ぐに特定して、阻止できる可能性が高い。
【0026】
停止弁7をカテーテルヘッド1の、針入口5と分岐連結部8との間に配置し、装置を更に安全に操作するのに役立てる。好適には、針をまず、図3に示した位置まで収縮させ、それにより停止弁7を、針18を完全に針入口5から引抜く前に、閉止できるようにする。 また、この手順で、開弁圧が低い弁を、患者に空気が侵入する潜在的危険性を無くして、使用することもできる。任意には、針入口5を、針を取外すと直ぐに、単純なキャップで閉止してもよい。
【0027】
次に、カテーテルを所定位置に留置して、針入口5を閉止すると、液体又は気体の胸腔からの吸引を開始できる。吸引ポンプ装置10をこの目的で用いる際には、吸引弁11、分岐部12、シリンジ連結部13、分泌物袋連結部14、及びこれらの間に存在させる連結用ホースで構成する。吸引ポンプ装置10をカテーテルに、分岐ホース9 を介して、分岐連結部8で接続する。シリンジ連結部13を市販の国際的に標準化されたルアーコネクタとし、該コネクタにシリンジ(図示せず)を連結し、該シリンジを吸引ポンプ装置10用「ポンプ」として機能させる。分泌物袋連結部14では、同様にルアーコネクタを介して、吸引した分泌物用の収集袋(図示せず)、又は異なる分泌物容器に連結する。更に、分泌物袋連結部14には逆止弁15も備え、該逆止弁により、分泌物が分泌物袋からカテーテル装置に逆吸引するのを防ぎ、その結果ポンプ作用を可能にもできる。
【0028】
この装置により、医師は任意の流体量を、弁を切換える必要無く、圧送可能になる。まず、シリンジ連結部13に取着した空のシリンジを引いて、分泌物をカテーテルシャフト2、分岐連結部8、分岐ホース9、及び吸引弁11を介して吸引する。逆止弁15をその際には閉止して、それによりシリンジが分泌物袋から流体を吸引できないようにする。シリンジが十分に充填されると直ぐに、医師は、再びシリンジから吸引した分泌物を押出し、その時点で吸引弁を閉止して、それにより分泌物を全く体腔内に押戻せないようにする。代わりに、分泌物袋連結部14の逆止弁15を次に開弁すると、その結果圧送した流体が収集容器に達する。この圧送ストロークを必要なだけ繰返すことができ、圧送量を、各吸引したシリンジ容量を合算して、或は袋の容量を測定する外部システムを通して、制御できる。任意には、圧送作用を例えば、シリンジではなく、圧送用バルーンによって行えるが、衛生上の理由で、使い捨てシリンジが好ましい。
【0029】
所望の流体量を圧送すると、このシステムは従来のカテーテルのように取外せる。場合によっては、しかしながら、カテーテルを取外す前に、薬剤を体腔に導入するのが、必要な及び/又は医学的に理に叶っていることがある。これも本発明によるカテーテルで、吸引ポンプ装置10をまず取外す必要なく、行うことができる。入口5を介して導入する薬剤が、カテーテルシャフト2を介して体腔に到達するのを防がず、その代わりに分岐ホース9、吸引弁11、及び逆止弁15を介して分泌袋に流入するのを防ぐのに、単純なホースクランプによって分岐ホース9を閉止すれば十分である。かかるホースクランプ19の特に単純な設計については、図4に示している。
【0030】
個々の吸引手順間で灌注液体を胸腔に導入する必要がある場合、例えば吸出前に固結物を緩めるために、分岐ホース9を封止することも必要となる。前述した両方の場合、薬剤又は灌注液体を、針入口5に挿入するシリンジ針を介してか、又は、カテーテル3の近位端部4でルアーコネクタを介して緊結可能な別の給送口を介してかのどちらかで導入できる。
【0031】
図5では、別の実施例を示しており、該実施例では、図1に示した逆止弁15の代わりに、ビル弁又はリップ弁を、分泌物袋連結部14のルアーロック内に配置している。この機能原則は上述したものと類似しており、費用対効果に優れたビル弁の利点が、分泌物袋連結部14でも現れる。
【0032】
リップ弁を使用することで柔軟性が高くなる結果、本発明による装置を使用して、体腔から液体及び気体の両方を吸出できる。
【0033】
本発明による胸膜穿刺カテーテルの吸引ポンプ装置10の更なる実施例を、図6に示す。吸引ポンプ装置10全体を、単一の極めてコンパクトな構成部品に統合して、T字型部品として設計している。T字型部品を図6では、弁と、管、連結部及び弁の経路とを示すために、部分断面図で示している。
【0034】
この実施例では、膜逆止弁を使用するが、膜逆止弁は設置寸法が僅かであるため、極めてコンパクトな構造が可能になるからである。分岐部12から開始して、シリンジ連結部13への一方向の分岐16と、分泌物袋連結部14への他方向の分岐17とで、基本的に直線横断する管を有するクロスピースを形成し、該管は逆止弁15でのみ中断する。逆止弁15を、分泌物袋連結部14前に配置し、分泌物袋の連結部14への流れを可能にする。分岐部12で、吸引弁11の弁出口25をクロスピースへと開口させる。
【0035】
膜逆止弁の構造について、図7乃至図9で例示している。図7では、閉位置での該弁の断面図を示している。この弁の閉止は、円盤形弁膜22によって行うが、該膜22を、膜22が中心部分で、弁室へと開口する弁入口24を覆うように、弁室26内部に配置する。膜22を膜の辺縁部で弁ハウジングと、例えば接着又はクランプ結合によって、図7に示したように、強固に連結できるが、浮動可能に弁室26に挿入することもできる。弁出口25の圧力が上昇すると、膜22が弁入口24の口部に対して押圧され、その結果流れが遮断される。逆に、流れ方向に対する圧力が上昇した場合、膜が弁入口24の口部からの気泡のように持ち上げられる。膜22の径方向周囲には、膜開口部23を設け、該開口部から、持ち上げられた膜で、媒体が流れて弁出口25に到達する。この開弁位置を、図8に図式的に示している。図9では、膜22について平面図で示しており、膜開口部23の径方向配列が認識できる。また、膜22の代わりに、剛性円盤を、係止時には弁入口24の口部に押圧され、開弁時には弁入口24から持上げられるように、弁室26内で浮動配置して使用することもできる。弁室と膜又は円盤を設計する際には、確実に係止円盤又は膜が弁の開位置で弁出口を被覆できないようにする必要がある。
【0036】
図10では、T字型部品として設計した吸引ポンプ装置10を有する胸膜穿刺カテーテルを示している。低圧をT字型部品で、シリンジ連結部13に取付けたシリンジを介して生成した場合、カテーテルを介して体腔から吸出した媒体を、T字型部品の線9、吸引弁11及び分岐部16を介して、シリンジに吸引する。逆止弁15により、既に分泌物袋にある媒体が、吸引ポンプ装置10に逆侵入するのを防ぐ。その後、シリンジ内に存在する媒体を、シリンジで加圧し、それによりシリンジからT字型部品のクロスピースへと移動させ、逆止弁15を介して連結部14に取着した分泌物袋に入るようにする。この状況で、吸引弁11により、媒体が、カテーテルに、また場合によっては、体腔にも逆流するのを防ぐ。
【符号の説明】
【0037】
1 カテーテルヘッド
2 カテーテルシャフト
3 カテーテル
4 近位端部
5 針入口
6 押圧弁
7 停止弁
8 分岐連結部
9 分岐ホース
10 吸引ポンプ装置
11 吸引弁
12 分岐部
13 シリンジ連結部
14 分泌物袋連結部
15 逆止弁
16 分岐
17 分岐
18 ベレス針
19 ホースクランプ
20 細長片
21 出口
22 膜
23 膜開口部
24 弁入口
25 弁出口
26 弁室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を特に体腔、特に胸腔に供給する、及び/又は、から除去するカテーテル(3)の形をした医療装置で、該医療装置には、カテーテルヘッド(1)とカテーテルシャフト(2)があり、前記カテーテルヘッド(1)には、近位端部(4)に入口があり、該入口には、中空針又はベレス針(18)を前記カテーテル(3)に挿入するための1つ又は複数の封止弁及び/又は停止弁(6、7)を備え、封止弁及び/又は停止弁と体内に挿入するよう設計した前記カテーテルシャフト(2)部分との間の領域に分岐連結部(8)を設け、該連結部を好適には、分岐ホース(9)を介して、吸引ポンプ装置(10)に連結する、前記医療装置であって、前記分岐ホース(9)は吸引弁(11)に繋がり、該吸引弁により前記吸引装置方向の液流を可能にするが、逆方向の流れは遮断し、前記吸引弁(11)の出口は分岐部(12)へと開口しており、前記分岐部から分岐の一方(16)が、好適にはルアーロック、特にシリンジ連結部(13)として設計した吸引装置連結部と繋がり、分岐の他方(17)が分泌物袋連結部(14)に繋がり、該分岐(17)と前記分泌物袋連結部(14)との間には、前記分泌物袋からの逆流を遮断する逆止弁(15)を配置すること、を特徴とする医療装置。
【請求項2】
前記分泌物袋連結部(14)をルアーロックとして設計し、前記分泌物袋からの逆流を防ぐ前記逆止弁(15)を、ビル弁又はリップ弁又は膜逆止弁とし、該弁をルアーロック内部に配置すること、を特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記吸引弁(11)を、ビル弁又はリップ弁とする、或は膜逆止弁として設計すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の医療装置。
【請求項4】
前記分岐ホース(9)を、前記カテーテル(3)と吸引弁(11)との間で、好適にはホースクランプ(19)を用いて、閉止できること、を特徴とする前請求項の1項に記載の医療装置。
【請求項5】
前記中空針又はベレス針(18)を導入する前記針入口(5)には、押圧弁(6)として設計した内向きビル弁又はリップ弁があり、該弁により、前記挿入した中空針又はベレス針(18)の周囲で隣接及び封止すると共に、引抜いた前記針で、体腔と外部との間で通常発生する差圧下での流体通過を両方向で遮断すること、を特徴とする前請求項の1項に記載の医療装置。
【請求項6】
好適には手動で操作する停止弁(7)を、前記押圧弁(6)と前記分岐連結部(8)との間に配置すること、を特徴とする請求項5に記載の医療装置。
【請求項7】
前記吸引ポンプ装置(10)には、吸引弁(11)、前記分岐部(12)、前記シリンジ連結部(13)への分岐(16)、前記分泌物袋連結部(14)への分岐(17)、前記シリンジ連結部(13)、前記分泌物袋連結部(14)、及び逆止弁(15)を含み、これらを1個の共通部品に統合すること、を特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項8】
前記吸引ポンプ装置(10)を、T字型部品として設計し、前記吸引弁(11)、及び/又は、逆止弁(15)を、膜逆止弁として設計すること、を特徴とする請求項7に記載の医療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−502013(P2011−502013A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531373(P2010−531373)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【国際出願番号】PCT/AT2008/000391
【国際公開番号】WO2009/059341
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(510121949)アロームド メディツィンテクニック ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】