説明

流体ダンパー装置

【課題】本発明は、小型化、少量生産に適し、従来のダンパー性能と同等のリニア型性能を得られる流体ダンパー装置を提供する。
【解決手段】本発明の流体ダンパー装置1は、作動流体2が充填されたシリンダー室5内に配置した片ロッド3付きピストン4の受圧面積が非対称であるダンパー本体6と、ピストン4の受圧面積の相違を補正する補助シリンダー13と、前記シリンダー室5内のピストン4両側の押圧側圧力室5a、引張側圧力室5bに接続管11a、11bを用いて外部接続した逆止弁8、絞り弁9の直列管路の二組逆並列管路構成からなり、前記ピストン4の押圧時、引張時各々において作動流体2が流れる各絞り弁9の開度調整により押圧時、引張時のダンパー本体6の減衰力を同一又は任意の減衰力値に調整する減衰力調整手段7と、を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型化、少量生産に適し、従来のダンパー性能と同等のリニア型性能を得られる新規な流体ダンパー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車、車両、工作機械等に一般的に使用されているオイルダンパー91の基本構造は、図15に示すように、シリンダー92の中に調圧弁93を備えたピストン94とピストンロッド95を入れ込み、シリンダー92内にはオイル96を充填する。
図15に示す例は両ロッドタイプで、ピストンロッド95の伸縮時とも速度に比例した同一の減衰力を発生し、基本特性はリニア型となる。
【0003】
但し、伸縮時の減衰力が異なっても、機能的に問題が無い場合や敢えて必要とするときには片ロッドタイプを採用する場合もあり、この場合も、速度に比例した減衰力を発生する。また、両タイプとも速度に対してはリニア特性以外に絞り孔のほかに圧力制御弁を内蔵することによりノンリニア特性とすることも可能である。
【0004】
次に、図16は構造物の制震用に使用されているオイルダンパー101を示すものである。この場合はオイルダンパー91の構造に加えて更にリリーフ弁102を設け、通常は上記オイルダンパー91と同一特性であるが任意に設定できる一定速度以上では減衰力はリリーフ弁102からオイル96を逃がすことにより力の増大を抑制する特性となっている。
【0005】
上記分野に適用されているオイルダンパーは、量産が見込める自動車や車両等専用用途で設計製作されたものを基本としている。上記分野では中・小型軽量から大型まで使用されているが、設計の基本は上記通り車両の乗り心地や耐久性向上であり、その構造は相当に複雑で、かつ、部品点数が多い。
したがって、上記以外の適用対象物本来の目的に合うようにするには開発費用もかかり、また多品種少量生産には不向きである。
【0006】
更に、製作後の減衰力の調整は困難であるため、例えば免震・制震(振)などに適用する場合対象構造物の設計値を基にオイルダンパーを設計製作することになるので、対象構造物完成後には大部分の場合当初目論んだ振動特性と乖離することが多く、このためオイルダンパーの減衰力を外部から容易に調整し得るようにすることが必要となる。
【0007】
また、通常使用されるオイルダンパーの特性は、大きく分けてリニア型とバイリニア型に分かれるが、例えばリニア型の場合、押し、引きでロッド分の面積に差が出るため減衰力にも差が出る。そこで、ロッドをストローク分まで長くして面積差が生じない両ロッドタイプが使用される。しかしこの場合には、オイルダンパーの長さは当然長くなり、コストアップを招き、取り付け部分に大きなスペースが必要となる。
【0008】
次に、制振(震)装置について考察すると、構造物が地震・風等の大きな振動外力、或いは交通振動や工事振動または歩行振動等常時発生する中小振動外力等を受けた時の安全性や居住性の対策・改善、あるいは振動を嫌う工場、例えば半導体生産・研究設備や精密加工工場湯等に対して生産性向上として用いられる振動制御としての制振(震)装置は神戸地震の後特によく使用されている。
【0009】
通常使用される制振(震)装置の代表的なものとしては、主に高層構造物や戸建住宅等に用いられる振動エネルギーを吸収する制震ブレースダンパー、高層構造物や戸建住宅そして橋梁等に用いられるマスダンパー(TMD、AMD)等がある。
【0010】
これらの製品の中に使用される減衰装置としては以下のものが多く活用されている。すなわち、粘性減衰型として、オイルを使用した減衰装置(オイルダンパー)や粘性体・粘弾性体を使用した減衰装置、履歴減衰型として、鋼材の弾塑性を利用した減衰装置や摩擦・材料の内部摩擦を利用した減衰装置等である。
【0011】
通常制振(震)装置は、構造物の設計段階から検討されることが一般的である。したがって装置の仕様は設計値を基にして決めることになる。
【0012】
しかしながら、実際に施工された構造物の殆どは、特に剛性や減衰定数等は設計値と大きく異なることもある。このような場合振動制御として設置された制振(震)装置は構造物の諸定数と異なるため効果を発揮することができなくなる。
【0013】
したがって、制振(震)装置を実際に構造物に設置した後に再度調整することになり、大概の場合制振(震)装置の剛性や減衰定数を調整し初期の効果を得られるようにすることが一般的である。
【0014】
特に、制振(震)装置の減衰定数を調整する場合、その調整方法は例えば、オイルダンパーの数量の追加或いは削減又は取り付け角度の調整等による場合が多い。
【0015】
例えば、当初設計段階の固有振動数が1.5Hzであったものが、施工後の計測で3.0Hzになった場合、減衰係数で2倍、最大振動速度で2倍になるので、減衰力に換算すると4倍になることになる。したがって、設計段階では1本でよかったものが4本必要になる。
【0016】
しかし、現状においては、
1.数量の変更等では調整できる範囲が小さい。
2.アナログ的に調整することができない(一般的には連続的減衰係数を調整できない)。
3.また、オイルダンパーを追加する場合には追加コストが発生する。
4.更に、オイルダンパーを追加する場合には装置の中に余分なスペースが必要となる。
等大きな問題となる。
【0017】
また、最悪の場合、減衰装置を交換しなければならなくなる時も生じ、オイルダンパーの設計製作、取り付け工程を考慮すると大幅に納期が遅延する。
【0018】
この例では、機械稼動時に発生する振動を地盤に伝えなくするために防振装置を設置する。この場合もエネルギーを吸収するために減衰装置を装着するが、この減衰力も防振効果と機械の動撓みに関係するので本発明の応用として現場で調整できることは効率的である。
更に、現在使用されている制振(震)装置用としての粘性減衰型ダンパーの構造は自動車、工作機械、航空機用等で使用されているものと基本的な構造は同じであり、部品の点数も多く複雑になっている。この理由は大量に生産する必要のある自動車用のショックアブソーバ専門メーカーが製作していることである。
【0019】
しかしながら、部品点数が大きく複雑な構造を持っていることは地震や台風等の大きな振動入力に対してロバスト性に問題があり損傷する場合もある。
【0020】
更に、地震や風、或いは交通振動や歩行振動等の制御は構造物の安全性や居住性等の向上のため非常に重要であるが、従来設置されている装置は性能や価格に問題がある。
【0021】
特許文献1には、片ロッド型でシリンダー内に磁性流体を内装し、シリンダーの外周に磁石を配置して磁力により減衰力の調整を行うようにしたダンパーが提案されている。しかし、このダンパーは、磁性流体や磁石を使用する構成であり、従来のダンパー性能と同等のリニア型性能を得ることは容易ではない。
【特許文献1】特開2005−291338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明が解決しようとする問題点は、小型化、少量生産に適しコストの軽減、既製の油圧シリンダーを用いるほか、少しの改造により開発費用の軽減を図ることができ、かつ、従来のダンパー性能と同等のリニア型性能を得られるダンパー装置が存在しない点である。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の流体ダンパー装置は、作動流体が充填されたシリンダー室内に配置した片ロッド付きピストンの前記作動流体に対する受圧面積が非対称であるダンパー本体と、補助シリンダー室内に補助ピストン及び補助片ロッドを備え、補助シリンダー室の補助片ロッド側受圧室を前記シリンダー室の片ロッド側である引張側圧力室に連通させ、補助ピストンの前記補助片ロッド側の受圧面積を前記シリンダー室内に配置した片ロッドの断面積と等しくし、補助シリンダー室における補助ピストンの他面側に外気に連通する空気室を設け、補助片ロッドを前記片ロッドと連動させた補助シリンダーと、前記シリンダー室内のピストン両側の押圧側圧力室、引張側圧力室に外部接続した逆止弁、絞り弁の直列管路の二組逆並列管路構成からなり、前記ピストンの押圧時、引張時各々において作動流体が流れる各絞り弁の開度調整により押圧時、引張時のダンパー本体の減衰力を前記ダンパー本体のピストンと補助シリンダーの補助ピストンとの連動動作下で同一又は任意の減衰力値に調整する減衰力調整手段と、を有することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載の発明によれば、ダンパー本体のピストンと補助シリンダーの補助ピストンとの連動動作下で減衰力調整手段によりピストンの両側の受圧面積の非対称性を容易に補正でき、小型化、少量生産に適しコスト、開発費用の軽減を図ることができ、かつ、従来のダンパー性能と同等のリニア型性能を得られる流体ダンパー装置を提供できる。
【0025】
請求項2記載の発明によれば、ダンパー本体のピストンと補助シリンダーの補助ピストンとの連動動作下で減衰力調整手段によりピストンの両側の受圧面積の非対称性を容易に補正し、押圧時、引張時のダンパー本体の減衰力を同一の減衰力値に調整でき、小型化、少量生産に適しコスト、開発費用の軽減を図ることができ、かつ、従来のダンパー性能と同等のリニア型性能を得られる流体ダンパー装置を提供できる。
【0026】
請求項3、4記載の発明によれば、絞り弁の弁開度をメカニカルに調整して減衰力を速度入力に対応させることができ、また押圧動作時、引張動作時各々において、ダンパー本体のピストンと補助シリンダーの補助ピストンとの連動動作下で絞り弁の弁開度の相違を補正して減衰力を的確に調整でき、更に小型化、少量生産に適しコスト、開発費用の軽減を図ることができる流体ダンパー装置を提供できる。
【0027】
請求項5記載の発明によれば、両ロッド型の構成で、遠隔位置から電動絞り弁の弁開度を調整することが可能であり、また、機構が簡略で故障の少ない流体ダンパー装置を提供できる。
【0028】
請求項6記載の発明によれば、ダンパー本体のピストンと補助シリンダーの補助ピストンとの連動動作下で可変調整絞り弁の弁開度を調整することで、弁開度の変化に応じた振動入力(振動速度)−減衰力特性をナログ的に、かつ、リニアに変化することが可能な流体ダンパー装置を提供できる。
【0029】
請求項7記載の発明によれば、請求項6記載の発明の効果に加え、ピストンの焼き付き防止、片ロッドとシリンダー室との焼き付き防止及び摩擦低減を図ることができる流体ダンパー装置を提供できる。
【0030】
請求項8記載の発明によれば、ダンパー本体のピストンと補助シリンダーの補助ピストンとの連動動作下で片ロッドに対する振動入力に追従して遠隔にて振動制御ができることになりセミアクティブダンパーとして活用できる流体ダンパー装置を提供できる。
【0031】
請求項9記載の発明によれば、請求項8記載の発明の効果に加え、ピストンの焼き付き防止、片ロッドとシリンダー室との焼き付き防止及び摩擦低減を図ることができる流体ダンパー装置を提供できる。
【0032】
請求項10記載の発明によれば、請求項7記載の発明の流体ダンパー装置を複数用い、構造物の制振(震)装置として使用する場合、振動体相互の相対変形、相対速度を制御し、従来実現されている方法よりも高性能、低価格の振動制御を実現できる流体ダンパー装置を提供できる。
【0033】
請求項11記載の発明によれば、請求項9記載の発明の流体ダンパー装置を複数用いて、請求項9記載の発明と同様な効果を発揮させることができ、セミアクティブダンパーとして活用できる流体ダンパー装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明は、少量生産に適しコストの軽減、既製の油圧シリンダーを用いるほか、少しの改造により開発費用の軽減を図ることができ、かつ、従来のダンパー性能と同等のリニア型性能を得られるダンパー装置を提供するという目的を、作動流体が充填されたシリンダー室内に配置した片ロッド付きピストンの前記作動流体に対する受圧面積が非対称であるダンパー本体と、補助シリンダー室内に補助ピストン及び補助片ロッドを備え、補助シリンダー室の補助片ロッド側受圧室を前記シリンダー室の片ロッド側である引張側圧力室に連通させ、補助ピストンの前記補助片ロッド側の受圧面積を前記シリンダー室内に配置した片ロッドの断面積と等しくし、補助シリンダー室における補助ピストンの他面側に外気に連通する空気室を設け、補助片ロッドを前記片ロッドと連動させた補助シリンダーと、前記シリンダー室内のピストン両側の押圧側圧力室、引張側圧力室に外部接続した逆止弁、絞り弁の直列管路とからなり、前記ピストンの押圧時、引張時各々において作動流体が流れる各絞り弁の開度調整により押圧時、引張時のダンパー本体の減衰力を前記ダンパー本体のピストンと補助シリンダーの補助ピストンとの連動動作下で同一の減衰力値に調整する減衰力調整手段と、を有する構成により実現した。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明の実施例に係る流体ダンパー装置について図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1に係る流体ダンパー装置1を示すものであり、この流体ダンパー装置1は、作動流体(例えば油)2が充填されたシリンダー室5内に、片ロッド3を一体的に設けたピストン4を押圧側、引張側に摺動可能に配置した例えば市販の2ポート型のダンパー本体6を有している。
前記ピストン4の作動流体2に対する受圧面積は、片ロッド3を設けていることからピストン4の両側の押圧側圧力室5a側と、引張側圧力室5b側とで非対称となっている。
【0037】
本実施例1において、ピストン4の押圧方向を実線矢印で示し、引張方向を点線矢印で示して以下の説明を行う。
【0038】
前記流体ダンパー装置1は、前記ダンパー本体6に補助シリンダー13を外部接続している。すなわち、補助シリンダー13は、補助シリンダー室19内に補助ピストン13a及び補助片ロッド13bを備え、補助シリンダー室19の補助片ロッド側受圧室18を引張側圧力室連結配管14を介して前記シリンダー室5の片ロッド3側である引張側圧力室5bに連通させている。
また、前記補助シリンダー室19における補助ピストン13aの他面側に通気孔17を経て外気に連通する空気室16を設け、補助片ロッド13bを前記片ロッド3と双方連結ブラケット15を介して連結し、前記片ロッド3と補助片ロッド13bとが連動して移動するように構成している。
【0039】
ここで、前記ダンパー本体6の片ロッド3と、補助シリンダー13の補助片ロッド13bとの関連について説明する。片ロッド3を備えたダンパー本体6においては、図3に示すように、ピストン4に対してその片面に片ロッド3を取り付けた構造であるため、ピストン4の両面の作動流体2に対する受圧面積が相違する。
すなわち、ピストン4の他面の受圧面積をA1、ピストン4の片ロッド3側の受圧面積をA2、ピストン4の直径をd1、片ロッド3の直径をd2とするとき、受圧面積A1=πd1/4、受圧面積A2=πd1/4−πd2/4となり、A1>A2であることは明らかである。
【0040】
そこで、補助シリンダー13における補助ピストン13aの補助片ロッド側受圧室18に臨む受圧面積A3(図1に示す)をπd2/4(片ロッド3の断面積)となるように設定することで、前記ピストン4と補助ピストン13aとを連動しつつ移動させるとき、ピストン4の片ロッド3側の受圧面積A2は等価的にA‘2=πd1/4=A1となり、この結果、ダンパー本体6は、片ロッド3を備える構成でありながら、あたかも両ロッドを備えたダンパー本体6と同等となって、受圧面積の非対称性は解消される。
【0041】
すなわち、前記ダンパー本体6は、全長は片ロッドシリンダとして同じストロークであっても、両ロッドシリンダよりも短く構成でき、受圧面積が同一であるという両ロッドシリンダとして機能させることが可能となる。
【0042】
前記流体ダンパー装置1は、更に、減衰力調整手段7をダンパー本体6に接続している。すなわち、減衰力調整手段7は、前記シリンダー室5内におけるピストン4の両側の押圧側圧力室5a、引張側圧力室5bに外部接続した二組の逆止弁8、絞り弁9の直列管路10a、10bを逆並列接続し、これらを接続管11a、11bを用いて前記押圧側圧力室5a、引張側圧力室5bに各々接続している。
前記2個の逆止弁8の流れ方向の流量抵抗(クラッキング抵抗)は最小のものを選定する。なお、図1中、12は作動流体2の封入用の盲プラグ、3a、5cは接続具である。
【0043】
本実施例1に係る流体ダンパー装置1において、前記片ロッド3が速度入力を受けて前記ダンパー本体6のピストン4と補助シリンダー13の補助ピストン13aとの連動動作下で押圧方向に変位するとき、押圧側圧力室5a内の作動流体2はピストン4に押され、減衰力調整手段7に流入するが、図1において上段の逆止弁8によりその流れが阻止されるので前記作動流体2は接続管11aから図1において下段の絞り弁9、逆止弁8、更に接続管11bを経て引張側圧力室5b内に流入する。
【0044】
逆に、前記片ロッド3が引っ張られ前記ダンパー本体6のピストン4と補助シリンダー13の補助ピストン13aとの連動動作下で押圧引張方向に変位するとき、引張側圧力受室5b内の作動流体2はピストン4に押され、減衰力調整手段7に流入するが、図1において下段の逆止弁8によりその流れが阻止されるので前記作動流体2は接続管11bから図1において上段の絞り弁9、逆止弁8、更に接続管11aを経て押圧側圧力室5a内に流入する。
【0045】
このようなピストン4の押圧動作時、引張動作時の各々に対応して、作動流体2が流れる各絞り弁9の開度調整を適正に行うとともに、かつ、前記補助シリンダー13による受圧面積の相違の解消動作と相俟ってピストン4の両側の受圧面積の非対称性を補正し、この流体ダンパー装置1の速度入力−減衰力特性を、図2に実線で示すように押圧動作時、引張動作時ともに理想性能、又は理想性能に近似した性能、又は、押圧時、引張時それぞれ個別に減衰力を調整することができる。更に、図2において、点線で示すようにこの流体ダンパー装置1の速度入力−減衰力特性を任意の特性にすることも可能である。
【0046】
また、本実施例1に係る流体ダンパー装置1における減衰力調整手段7は、従来公知の油圧ダンパーのピストンに設けられるオリフィスと同等に機能する。
【0047】
次に、図4を参照して本実施例1に係る流体ダンパー装置1の変形例である流体ダンパー装置1Aについて説明する。
【0048】
図4に示す流体ダンパー装置1Aは、実施例1に係る流体ダンパー装置1と略同様な構成であるが、前記減衰力調整手段7に替えて、前記シリンダー室5内におけるピストン4の両側の押圧側圧力室5a、引張側圧力室5bに外部接続した逆止弁8、絞り弁9の直列管路10aを有する減衰力調整手段7Aを備えたことが特徴である。前記逆止弁8、絞り弁9は接続管11a、11bを用いて前記押圧側圧力室5a、引張側圧力室5bに各々接続している。前記逆止弁8の流れ方向の流量抵抗(クラッキング抵抗)は最小のものを選定する。
【0049】
この変形例の流体ダンパー装置1Aによれば、基本的に実施例1に係る流体ダンパー装置1と同様な作用、効果を奏するとともに、流体ダンパー装置1の場合と同様、前記補助シリンダー13を備えることからピストン4の非対称性が解消され、前記ピストン4の押圧時、引張時とも同一の速度入力に対して同一減衰力を得るのであれば1個の逆止弁8及び1個の絞り弁9を用いた構成で済み、構成の簡略化が図ることができる。
【0050】
すなわち、受圧面積が非対称性のシリンダーであれば同一速度入力に対して同一減衰力を得るためにはピストン押圧時、引張時に各々個別に絞り弁、逆止弁、配管を設けることが必須となるが、変形例の流体ダンパー装置1Aによれば、かかる煩雑な構造が不必要となる。
【0051】
(実施例2)
図5は、本発明の実施例2に係る流体ダンパー装置21を示すものであり、本実施例2に係る流体ダンパー装置21において、実施例1の流体ダンパー装置1と同一の機能を有するものには同一の符号を付して示す。
【0052】
本実施例2に係る流体ダンパー装置21は、実施例1の場合と同様な構成のダンパー本体6及び補助シリンダー13と、このダンパー本体6に接続した減衰力調整手段22とを有している。
【0053】
前記減衰力調整手段22は、図5に示すように、前記シリンダー室5内におけるピストン4の両側の押圧側圧力室5a、引張側圧力室5bに外部接続した絞り弁23を含む作動流体管路20と、前記押圧側圧力室5a、引張側圧力室5b間に差圧導入管26a、26bを介して接続され、前記押圧側圧力室5a、引張側圧力室5b間の作動流体2の差圧により回動(全270度)するロータ24を内蔵したロータハウジング25と、前記ロータ24の回動に連動して変位し前記絞り弁23の弁開度を変化させ前記ピストン4の受圧面積差を補正して押圧時、引張時のダンパー本体6の減衰力を調整する微調整可能な絞り弁調整体27と、この絞り弁調整体27の回動位置を規制する各々位置調整可能な一対のストッパ28a、28bとを具備している。
【0054】
すなわち、前記減衰力調整手段22は、一端側を前記ロータ24の回転軸部と同軸とし、他端側を前記絞り弁調整体27に連結した連結片29を具備し、前記片ロッド3の押圧動作時にはロータ24を時計方向に回動させ、ロータ24とともに回動する前記連結片29を介して絞り弁調整体27を図3に示す矢印a方向に変位させて絞り弁23の弁開度を調整するように構成している。
【0055】
また、前記片ロッド3の引張動作時にはロータ24を反時計方向に回動させ、前記ロータ24とともに回動する前記連結片29を介して絞り弁調整体27を図3に示す矢印b方向に変位させて絞り弁23の弁開度を調整するように構成している。
【0056】
本実施例2に係る流体ダンパー装置21によれば、上述した構成としたことにより、この流体ダンパー装置21の片ロッド3に対する速度入力に対して前記ロータ24が前記押圧側圧力室5a、引張側圧力室5b間の作動流体2の差圧により時計方向又は反時計方向に回動し、このロータ24に連動して前記絞り弁調整体27が絞り弁23の弁開度をメカニカルに調整するので、絞り弁調整体27の位置を微調整することで、前記補助シリンダー13による受圧面積の相違の解消動作と相俟ってピストン4の両側の受圧面積の非対称性を補正し、流体ダンパー装置21の減衰力を速度入力に対応するよう調整することが可能となる。
【0057】
また、前記ストッパ28a、28bの位置を微調整することにより、前記片ロッド3の押圧動作時、引張動作時各々において、僅かに生じる前記絞り弁調整体27の位置の相違、すなわち、前記絞り弁23の弁開度の相違を補正することができる。
【0058】
なお、本実施例2に係る流体ダンパー装置21における速度入力に対する追随速度は10Hzが限界と想定されるが、高周波の場合は一般的には小振幅であり、高周波の速度入力に対する応答が必ずしも充分でなくても当初の設定値近傍の減衰力を確保できる。
【0059】
また、本実施例2に係る流体ダンパー装置21における減衰力調整手段22は、従来公知の油圧ダンパーのピストンに設けられるオリフィスと同等に機能する。
【0060】
(実施例3)
図6は、本発明の実施例3に係る流体ダンパー装置31を示すものであり、この流体ダンパー装置31は、作動流体(例えば油)2が充填されたシリンダー室32内に配置したピストン33の両側にロッド34、35を設け、作動流体2に対する受圧面積を対称とした例えば市販のダンパー本体36を備えた両ロッド型の構成としている。
【0061】
また、本実施例3に係る流体ダンパー装置31は、前記ダンパー本体36に減衰力調整手段37を接続している。この減衰力調整手段37は、前記ダンパー本体36の一方の圧力室32aへ作動流体2の供給を行う供給管路38に接続した作動流体2の供給、遮断を行う作動流体開閉弁39と、前記ダンパー本体36の他方の圧力室32bと、前記供給管路38との間に接続した作動流体循環機構部40と、電動絞り弁制御部47とを有している。
【0062】
前記作動流体循環機構部40は、4個の逆止弁42、43、44、45及び電動絞り弁(例えば比例電磁式絞り弁)46のブリッジ状の組み合わせ管路により構成している。
【0063】
すなわち、前記ピストン33に対してロッド35を介して速度入力が作用しロッド34、35が縮む方向(図3において実線矢印方向)に変位するとき、一方の圧力室32aから流出する作動流体2が供給管路38から逆止弁42、電動絞り弁46、逆止弁43を経て他方の圧力室32bへ流れるように、また、また、前記ロッド34、35が伸びる方向(図3において点線矢印方向)に変位するとき、他方の圧力室32bから流出する作動流体2が前記逆止弁44、電動絞り弁46、逆止弁45、供給管路38を経て一方の圧力室32aに流れるように前記逆止弁42、43及び前記逆止弁44、45の向きを設定している。
【0064】
このような構成により、一般的には可逆流れが不可の電動絞り弁46には、前記ロッド34、35の伸縮両動作時とも同一方向に作動流体2が流れるようになっている。
【0065】
前記4個の逆止弁42乃至45の流れ方向の流量抵抗(クラッキング抵抗)は最小のものを選定する。
【0066】
本実施例3に係る流体ダンパー装置31は、更に、前記ピストン33の伸び縮み双方向とも同一入力速度に対して同一減衰力となるように前記電動絞り弁46の弁開度を遠隔位置から調整する電動絞り弁制御部47と、前記他方の圧力室32bから流出する作動流体2の圧力を目視により判定する圧力計48と、前記他方の圧力室32bに接続した開閉弁49とを具備している。なお、図4において、35aは接続具である。
【0067】
本実施例3によれば、上述した構成としたことにより、両ロッド型の構成で前記電動絞り弁46に前記ロッド34、35の伸縮両動作時とも同一方向に作動流体2を流しつつ電動絞り弁制御部47により遠隔位置から電動絞り弁46の弁開度を調整することが可能であり、また、機構が簡略で故障の少ない流体ダンパー装置31を提供することができる。
【0068】
また、本実施例3に係る流体ダンパー装置31における減衰力調整手段37は、従来公知の油圧ダンパーのピストンに設けられるオリフィスと同等に機能する。
【0069】
(実施例4)
図7乃至図9を参照して実施例4に係る流体ダンパー装置51について説明する。
本実施例4に係る流体ダンパー装置51は、作動流体2が充填されたシリンダー室55内に、片ロッド53を一体的に設けたピストン54を押圧側、引張側に摺動可能に配置した例えば市販のダンパー本体56を有している。また、前記シリンダー室55内におけるピストン54の両側の押圧側圧力室55a、引張側圧力室55bに連通するように外部接続したバイパス管路57とを具備し、このバイパス管路57の途中に可変調整絞り弁58を接続して構成した減衰力調整手段60を具備している。なお、図5中、53a、55cは接続具である。
また、本実施例4に係る流体ダンパー装置51は、実施例1に係る流体ダンパー装置1の場合と同様な補助シリンダー13を備えている。
【0070】
前記ピストン54の外周には、シリンダー室55の壁面との焼き付き防止用の微小幅のV形溝(ラビリンス)54aを設け、また、前記片ロッド53とシリンダー室55を構成する端部プレート55dとの摺動部分には、作動流体漏れ防止、焼き付き防止及び摩擦低減用の例えばテフロン(登録商標)に二流化モリブデンを充填して形成したシール部材59を配置している。
【0071】
本実施例4に係る流体ダンパー装置51によれば、前記片ロッド53に振動入力が入力された場合、前記補助シリンダー13による受圧面積の相違の解消動作と相俟ってピストン4の両側の受圧面積の非対称性を補正されるとともに、片ロッド53は図5において下方に変位し、これに伴いシリンダー室55の中に充填された作動流体2は前記バイパス管路57を通って引張側圧力室55b側へ移動する。
【0072】
このとき、前記可変調整絞り弁58の弁開度を調整し、可変調整絞り弁58における作動流体2の通過流量と、前記押圧側圧力室55a、引張側圧力室55b間の差圧とが比例的に変化するよう設定することで、流体ダンパー装置51の弁開度の変化に応じた振動入力(振動速度)−減衰力特性を図8に示すようにアナログ的に、かつ、リニアに変化することが可能となる。
【0073】
また、本実施例4に係る流体ダンパー装置51によれば、構造物の制振(震)装置として使用する場合、構造物の設計段階で決めた制振(震)装置の仕様が実際の施工後に変化しても、当初設置された一本の流体ダンパー装置51でも大幅な(減衰力で5倍程度も可能)減衰定数の調整がアナログ的に可能であるので、本数の追加、削減或いは取り付け角度の調整等も必要無くなるという利点もある。
【0074】
更に、本実施例4に係る流体ダンパー装置51によれば、シリンダー室55のシリンダー径とバイパス管路57の内径の比を最適に選ぶことにより、適当な流量抵抗が得られることになり、等価質量も期待でき、構造物振動時において制振(震)装置の応答変位の減少も期待できる。
【0075】
図9は、本実施例4に係る流体ダンパー装置51の応用例である流体ダンパー装置51Aを示すものであり、この流体ダンパー装置51Aは、流体ダンパー装置51と同様な補助シリンダー13を備え、かつ、前記可変調整絞り弁58の替わりに電動可変調整絞り弁(例えば比例電磁式絞り弁)61を用いた減衰力調整手段60Aを具備するとともに、電動可変調整絞り弁61の弁開度を、前記ダンパー本体56の減衰力が振動入力−応答間の目標値となるように自動制御する制御部62を接続したことが特徴である。この流体ダンパー装置51Aによれば、前記補助シリンダー13による受圧面積の相違の解消動作と相俟ってピストン4の両側の受圧面積の非対称性を補正されるとともに、前記片ロッド53に対する振動入力に追従して振動制御ができることになりセミアクティブダンパーとして活用できる。
【0076】
したがって、構造物の制振(震)装置として使用する場合、構造物の振動に関する諸定数が時々刻々変化しても流体ダンパー装置51Aの減衰係数がそれに伴い変化し効果的に作動する制振(震)装置として機能させることができる。
【0077】
更に、流体ダンパー装置51Aは、図示しないがセンサーで計測された振動値をコンピュータ制御機器と連動させ電動可変調整絞り弁61を制御してその開閉を行うことにより、振動のセミアクティブ制御が可能となり、従来例より高性能の振動制御が可能な流体ダンパー装置51Aとすることができる。
【0078】
(実施例5)
図10を参照して実施例5に係る流体ダンパー装置71について説明する。
【0079】
本実施例5に係る流体ダンパー装置71は、上述した実施例4の流体ダンパー装置51(補助シリンダー13を除く)を複数(2個)を組み合わせ、各流体ダンパー装置51、51の押圧側圧力室55a、引張側圧力室55bを相互に配管接続し、補助シリンダー13を除した簡潔なダンパシステムを構築したことが特徴である。
すなわち、一方の流体ダンパー装置51の押圧側圧力室55aと、他方の流体ダンパー装置51の引張側圧力室55bとを接続管72を用いて接続し、同様に一方の流体ダンパー装置51の引張側圧力室55bと、他方の流体ダンパー装置51の押圧側圧力室55aとを接続管73を用いて接続している。
【0080】
この流体ダンパー装置71によれば、構造物の制振(震)装置として使用する場合、振動体相互の相対変形、相対速度を制御し、従来実現されている方法よりも高性能、低価格の振動制御を実現できる流体ダンパー装置71とすることができる。
上述した図7に示す流体ダンパー装置51A(補助シリンダー13を除く)を複数(2個)を組み合わせて、流体ダンパー装置71と同様な構成とすることもでき、この場合も構造物の制振(震)装置として使用することで、振動体相互の相対変形、相対速度を制御し、従来実現されている方法よりも高性能、低価格の振動制御を実現でき、また、セミアクティブダンパーとして活用できる。
【0081】
次に、図11乃至図14を参照して前記流体ダンパー装置71の具体的使用例について説明する。
【0082】
図11は前記流体ダンパー装置71を構造物である一組の連結ビル81、82の制震用として使用した例を示し、図12は前記流体ダンパー装置71を構造物である戸建住宅83の一つの壁面84に対する制震用のブレースダンパーとして使用した例を示すものである。
【0083】
また、図13は前記流体ダンパー装置71を例えば精密機械等の対象物85の免震用として使用した例を示し、図14は前記流体ダンパー装置71を建造物等の床86の制振用として使用した例を示す。
【0084】
これら各々の場合において、従来実現されている方法よりも高性能、低価格の振動制御を実現できる流体ダンパー装置71として機能させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、免震・制震及び防振関係等振動により安全性、居住性、生産性に影響を受ける土木建築構造物や機械製造・生産設備そして半導体製造・生産設備等の種々の分野に広範に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施例1に係る流体ダンパー装置を示す配管構成図である。
【図2】本実施例1に係る流体ダンパー装置の速度入力−減衰力特性を示す図である。
【図3】本実施例1に係る流体ダンパー装置を構成するピストンの受圧面積の説明図である。
【図4】本実施例1に係る流体ダンパー装置の変形例を示す配管構成図である。
【図5】本発明の実施例2に係る流体ダンパー装置を示す配管構成図である。
【図6】本発明の実施例3に係る流体ダンパー装置を示す配管構成図である。
【図7】本発明の実施例4に係る流体ダンパー装置を示す配管構成図である。
【図8】本施例4に係る流体ダンパー装置の振動速度−減衰力特性を示す図である。
【図9】本発明の実施例4に係る流体ダンパー装置の変形例を示す配管構成図である。
【図10】本発明の実施例5に係る流体ダンパー装置を示す配管構成図である。
【図11】本発明の実施例5の流体ダンパー装置の連結ビルへの適用例を示す概略図である。
【図12】本発明の実施例5の流体ダンパー装置の戸建住宅への適用例を示す概略図である。
【図13】本発明の実施例5の流体ダンパー装置の免震装置としての使用例を示す概略図である。
【図14】本発明の実施例5の流体ダンパー装置の床への適用例を示す概略図である。
【図15】従来のオイルダンパーの一例を示す概略断面図である。
【図16】従来のオイルダンパーの他例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0087】
1 流体ダンパー装置
1A 流体ダンパー装置
2 作動流体
3 片ロッド
4 ピストン
5 シリンダー室
5a 押圧側圧力室
5b 引張側圧力室
6 ダンパー本体
7 減衰力調整手段
7A 減衰力調整手段
8 逆止弁
9 絞り弁
10a 直列管路
10b 直列管路
11a 接続管
11b 接続管
12 盲プラグ
13 補助シリンダー
13a 補助ピストン
13b 補助ロッド
14 引張側圧力室連結配管
15 双方連結ブラケット
16 空気室
17 通気孔
18 補助ロッド側受圧室
19 補助シリンダー室
20 作動流体管路
21 流体ダンパー装置
22 減衰力調整手段
23 絞り弁
24 ロータ
25 ロータハウジング
26a 差圧導入管
26b 差圧導入管
27 弁調整体
28a ストッパ
28b ストッパ
29 連結片
31 流体ダンパー装置
32 シリンダー室
32a 押圧側圧力室
32b 引張側圧力室
33 ピストン
34 ロッド
35 ロッド
36 ダンパー本体
37 減衰力調整手段
38 供給管路
39 作動流体開閉弁
40 作動流体循環機構部
42 逆止弁
43 逆止弁
44 逆止弁
45 逆止弁
46 電動絞り弁
47 電動絞り弁制御部
48 圧力計
49 開閉弁
51 流体ダンパー装置
51A 流体ダンパー装置
53 片ロッド
54 ピストン
54a V形溝
55 シリンダー室
55a 押圧側圧力室
55b 引張側圧力室
56 ダンパー本体
57 バイパス管路
58 可変調整絞り弁
59 シール部材
60 減衰力調整手段
60A 減衰力調整手段
61 電動可変調整絞り弁
62 制御部
71 流体ダンパー装置
72 接続管
73 接続管
81 連結ビル
82 連結ビル
83 戸建住宅
84 壁面
85 対象物
86 床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が充填されたシリンダー室内に配置した片ロッド付きピストンの前記作動流体に対する受圧面積が非対称であるダンパー本体と、
補助シリンダー室内に補助ピストン及び補助片ロッドを備え、補助シリンダー室の補助片ロッド側受圧室を前記シリンダー室の片ロッド側である引張側圧力室に連通させ、補助ピストンの前記補助片ロッド側の受圧面積を前記シリンダー室内に配置した片ロッドの断面積と等しくし、補助シリンダー室における補助ピストンの他面側に外気に連通する空気室を設け、補助片ロッドを前記片ロッドと連動させた補助シリンダーと、
前記シリンダー室内のピストン両側の押圧側圧力室、引張側圧力室に外部接続した逆止弁、絞り弁の直列管路の二組逆並列管路構成からなり、前記ピストンの押圧時、引張時各々において作動流体が流れる各絞り弁の開度調整により押圧時、引張時のダンパー本体の減衰力を前記ダンパー本体のピストンと補助シリンダーの補助ピストンとの連動動作下で同一又は任意の減衰力値に調整する減衰力調整手段と、
を有することを特徴とする流体ダンパー装置。
【請求項2】
作動流体が充填されたシリンダー室内に配置した片ロッド付きピストンの前記作動流体に対する受圧面積が非対称であるダンパー本体と、
補助シリンダー室内に補助ピストン及び補助片ロッドを備え、補助シリンダー室の補助片ロッド側受圧室を前記シリンダー室の片ロッド側である引張側圧力室に連通させ、補助ピストンの前記補助片ロッド側の受圧面積を前記シリンダー室内に配置した片ロッドの断面積と等しくし、補助シリンダー室における補助ピストンの他面側に外気に連通する空気室を設け、補助片ロッドを前記片ロッドと連動させた補助シリンダーと、
前記シリンダー室内のピストン両側の押圧側圧力室、引張側圧力室に外部接続した逆止弁、絞り弁の直列管路とからなり、前記ピストンの押圧時、引張時各々において作動流体が流れる各絞り弁の開度調整により押圧時、引張時のダンパー本体の減衰力を前記ダンパー本体のピストンと補助シリンダーの補助ピストンとの連動動作下で同一の減衰力値に調整する減衰力調整手段と、
を有することを特徴とする流体ダンパー装置。
【請求項3】
作動流体が充填されたシリンダー室内に配置した片ロッド付きピストンの前記作動流体に対する受圧面積が非対称であるダンパー本体と、
補助シリンダー室内に補助ピストン及び補助片ロッドを備え、補助シリンダー室の補助片ロッド側受圧室を前記シリンダー室の片ロッド側である引張側圧力室に連通させ、補助ピストンの前記補助片ロッド側の受圧面積を前記シリンダー室内に配置した片ロッドの断面積と等しくし、補助シリンダー室における補助ピストンの他面側に外気に連通する空気室を設け、補助片ロッドを前記片ロッドと連動させた補助シリンダーと、
前記シリンダー室内のピストン両側の押圧側圧力室、引張側圧力室に外部接続した絞り弁を含む作動流体管路と、前記押圧側圧力室、引張側圧力室間に接続され前記押圧側圧力室、引張側圧力室間の作動流体の差圧により回動するロータと、このロータの回動に連動して変位して前記絞り弁の弁開度を変化させて前記ピストンの受圧面積差を補正して押圧時、引張時のダンパー本体の減衰力を前記ダンパー本体のピストンと補助シリンダーの補助ピストンとの連動動作下で調整する絞り弁調整体とを具備する減衰力調整手段と、
を有することを特徴とする流体ダンパー装置。
【請求項4】
作動流体が充填されたシリンダー室内に配置した片ロッド付きピストンの前記作動流体に対する受圧面積が非対称であるダンパー本体と、
補助シリンダー室内に補助ピストン及び補助片ロッドを備え、補助シリンダー室の補助片ロッド側受圧室を前記シリンダー室の片ロッド側である引張側圧力室に連通させ、補助ピストンの前記補助片ロッド側の受圧面積を前記シリンダー室内に配置した片ロッドの断面積と等しくし、補助シリンダー室における補助ピストンの他面側に外気に連通する空気室を設け、補助片ロッドを前記片ロッドと連動させた補助シリンダーと、
前記シリンダー室内のピストン両側の押圧側圧力室、引張側圧力室に外部接続した絞り弁を含む作動流体管路と、前記押圧側圧力室、引張側圧力室間に接続され前記押圧側圧力室、引張側圧力室間の作動流体の差圧により回動するロータと、このロータの回動に連動して回動変位し前記絞り弁の弁開度を変化させ押圧時、引張時のダンパー本体の減衰力を前記ダンパー本体のピストンと補助シリンダーの補助ピストンとの連動動作下で調整する絞り弁開度調整体と、この絞り弁調整体の回動位置を規制する位置調整可能なストッパとを具備する減衰力調整手段と、
を有することを特徴とする流体ダンパー装置。
【請求項5】
作動流体が充填されたシリンダー室内に配置した両ロッド付きピストンの前記作動流体に対する受圧面積が対称であるダンパー本体と、
前記ダンパー本体の一方の圧力室へ作動流体の供給を行う供給管路に接続した作動流体の供給、遮断を行う作動流体開閉弁と、
前記ダンパー本体の他方の圧力室と、前記供給管路との間に接続した4個の逆止弁及び電動絞り弁の組み合わせからなり、電動絞り弁に対する作動流体の流れが前記ピストンの伸び縮み双方向とも同一方向となるように配管した作動流体循環機構部と、前記ピストンの伸び縮み双方向とも同一入力速度に対して同一減衰力または押圧時、引張時における減衰力を電気信号により、任意に設定可能なように前記電動絞り弁の開度を調整する電動絞り弁制御部とを具備する減衰力調整手段と、
を有することを特徴とする流体ダンパー装置。
【請求項6】
作動流体が充填されたシリンダー室内に配置した片ロッド付きピストンの前記作動流体に対する受圧面積が非対称であるダンパー本体と、
補助シリンダー室内に補助ピストン及び補助片ロッドを備え、補助シリンダー室の補助片ロッド側受圧室を前記シリンダー室の片ロッド側である引張側圧力室に連通させ、補助ピストンの前記補助片ロッド側の受圧面積を前記シリンダー室内に配置した片ロッドの断面積と等しくし、補助シリンダー室における補助ピストンの他面側に外気に連通する空気室を設け、補助片ロッドを前記片ロッドと連動させた補助シリンダーと、
前記シリンダー室内のピストン両側の押圧側圧力室、引張側圧力室に連通するように外部接続した可変調整絞り弁を含むバイパス管路を具備し、前記可変調整絞り弁の開度調整により前記片ロッドの押圧引張両方向とも同一又は任意の減衰力となるように前記ダンパー本体のピストンと補助シリンダーの補助ピストンとの連動動作下で作動流体の流れを調整する減衰力調整手段と、
を有することを特徴とする流体ダンパー装置。
【請求項7】
作動流体が充填されたシリンダー室内に配置した片ロッド付きピストンの前記作動流体に対する受圧面積が非対称であるダンパー本体と、
補助シリンダー室内に補助ピストン及び補助片ロッドを備え、補助シリンダー室の補助片ロッド側受圧室を前記シリンダー室の片ロッド側である引張側圧力室に連通させ、補助ピストンの前記補助片ロッド側の受圧面積を前記シリンダー室内に配置した片ロッドの断面積と等しくし、補助シリンダー室における補助ピストンの他面側に外気に連通する空気室を設け、補助片ロッドを前記片ロッドと連動させた補助シリンダーと、
前記シリンダー室内のピストン両側の押圧側圧力室、引張側圧力室に連通するように外部接続した可変調整絞り弁を含むバイパス管路を具備し、前記可変調整絞り弁の開度調整により前記片ロッドの押圧引張両方向とも同一又は任意の減衰力となるように前記ダンパー本体のピストンと補助シリンダーの補助ピストンとの連動動作下で作動流体の流れを調整する減衰力調整手段と、
を有するとともに、
前記ピストンの外周に焼き付き防止用のV形溝を設け、前記片ロッドとシリンダーとの摺動部分に焼き付き防止及び摩擦低減用のシール部材を配置したことを特徴とする流体ダンパー装置。
【請求項8】
作動流体が充填されたシリンダー室内に配置した片ロッド付きピストンの前記作動流体に対する受圧面積が非対称であるダンパー本体と、
補助シリンダー室内に補助ピストン及び補助片ロッドを備え、補助シリンダー室の補助片ロッド側受圧室を前記シリンダー室の片ロッド側である引張側圧力室に連通させ、補助ピストンの前記補助片ロッド側の受圧面積を前記シリンダー室内に配置した片ロッドの断面積と等しくし、補助シリンダー室における補助ピストンの他面側に外気に連通する空気室を設け、補助片ロッドを前記片ロッドと連動させた補助シリンダーと、
前記シリンダー室内のピストン両側の押圧側圧力室、引張側圧力室に連通するように外部接続した電動可変調整絞り弁を含むバイパス管路と、この電動可変調整絞り弁の弁開度を、前記ダンパー本体の減衰力が入力−応答間の目標値となるように前記ダンパー本体のピストンと補助シリンダーの補助ピストンとの連動動作下で自動制御する制御部と、を具備する減衰力調整手段と、
を有することを特徴とする流体ダンパー装置。
【請求項9】
作動流体が充填されたシリンダー室内に配置した片ロッド付きピストンの前記作動流体に対する受圧面積が非対称であるダンパー本体と、
補助シリンダー室内に補助ピストン及び補助片ロッドを備え、補助シリンダー室の補助片ロッド側受圧室を前記シリンダー室の片ロッド側である引張側圧力室に連通させ、補助ピストンの前記補助片ロッド側の受圧面積を前記シリンダー室内に配置した片ロッドの断面積と等しくし、補助シリンダー室における補助ピストンの他面側に外気に連通する空気室を設け、補助片ロッドを前記片ロッドと連動させた補助シリンダーと、
前記シリンダー室内のピストン両側の押圧側圧力室、引張側圧力室に連通するように外部接続した電動可変調整絞り弁を含むバイパス管路と、この電動可変調整絞り弁の弁開度を、前記ダンパー本体の減衰力が入力−応答間の目標値となるように前記ダンパー本体のピストンと補助シリンダーの補助ピストンとの連動動作下で自動制御する制御部と、を具備する減衰力調整手段と、
を有するとともに、
前記ピストンの外周に焼き付き防止用のV形溝(ラビリンス)を設け、前記片ロッドとシリンダーとの摺動部分に焼き付き防止及び摩擦低減用のシール部材を配置したことを特徴とする流体ダンパー装置。
【請求項10】
作動流体が充填されたシリンダー室内に配置した片ロッド付きピストンの前記作動流体に対する受圧面積が非対称であるダンパー本体と、前記シリンダー室内のピストン両側の押圧側圧力室、引張側圧力室に連通するように外部接続した可変調整絞り弁を含むバイパス管路を具備し、前記可変調整絞り弁の開度調整により前記片ロッドの押圧引張両方向とも同一又は任意の減衰力となるように作動流体の流れを調整する減衰力調整手段と、を有するとともに、前記ピストンの外周に焼き付き防止用のV形溝を設け、前記片ロッドとシリンダーとの摺動部分に焼き付き防止及び摩擦低減用のシール部材を配置した流体ダンパー装置を複数個用い、
各流体ダンパー装置の押圧側圧力室、引張側圧力室を相互に配管接続したことを特徴とする流体ダンパー装置。
【請求項11】
作動流体が充填されたシリンダー室内に配置した片ロッド付きピストンの前記作動流体に対する受圧面積が非対称であるダンパー本体と、前記シリンダー室内のピストン両側の押圧側圧力室、引張側圧力室に連通するように外部接続した電動可変調整絞り弁を含むバイパス管路と、この電動可変調整絞り弁の弁開度を、前記ダンパー本体の減衰力が入力−応答間の目標値となるように自動制御する制御部と、を具備する減衰力調整手段と、を有するとともに、前記ピストンの外周に焼き付き防止用のV形溝(ラビリンス)を設け、前記片ロッドとシリンダーとの摺動部分に焼き付き防止及び摩擦低減用のシール部材を配置した流体ダンパー装置を複数個用い、
各流体ダンパー装置の押圧側圧力室、引張側圧力室を相互に配管接続したことを特徴とする流体ダンパー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−115144(P2009−115144A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286669(P2007−286669)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(501253280)
【出願人】(505242862)
【出願人】(506356542)
【出願人】(591167898)ヤクモ株式会社 (18)
【Fターム(参考)】