説明

流体ポンプ組み付け装置および流体ポンプ組み付け方法

【課題】ポンプシャフトの回転により流体を圧送する流体ポンプおよび伝達部材を被固定物に容易に組み付けることが可能な流体ポンプ組み付け装置および流体ポンプ組み付け方法を提供する。
【解決手段】吸入口27および吐出口28が形成された本体21および本体21に回転可能に軸支されたポンプシャフト24を具備し、ポンプシャフト24が回転することにより吸入口27から吸入したオイル1を吐出口28から吐出して圧送するオイルポンプ20、およびポンプシャフト24に回転駆動力を伝達するポンプギヤ30をクランクケース10に組み付ける組み付け装置100に、クランクケース10に固定されたオイルポンプ20の吸入口27にオイル1を供給することにより本体21の内部にオイル1を充填するポンプ110と、本体21の内部にオイル1を充填した状態で吸入口27および吐出口28を閉塞する栓141・142と、を具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被固定物に流体ポンプを組み付ける技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、潤滑用のオイルをエンジンの内部で循環させるためのオイルポンプをエンジンに設ける技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載のオイルポンプはポンプシャフトを具備し、当該ポンプシャフトが回転駆動されることによりオイルを圧送する構造を有する。
特許文献1に記載のオイルポンプのポンプシャフトは、エンジンのクランクシャフトの回転を複数のギヤ(ドライブギヤ、ドリブンギヤ、ポンプギヤ)を介してポンプシャフトに伝達することにより回転駆動される。
【0004】
特許文献1に記載の如きオイルポンプをエンジンに組み付ける場合、通常はまずオイルポンプをエンジンのクランクケースに固定し、次にオイルポンプのポンプシャフトにポンプギヤを固定する。このとき、ポンプギヤはポンプシャフトに回転駆動力を伝達する部材であることから、ポンプシャフトに相対回転不能に固定される必要がある。
【0005】
ポンプギヤとポンプシャフトとを相対回転不能に固定する一般的な方法としては、ポンプシャフトの外周面の先端部に平行な一対の平面(二面幅)を形成するとともにポンプギヤに当該一対の平面に係合する形状の孔を形成し、当該孔にポンプシャフトの先端部を嵌装する方法が挙げられる。
このとき、ポンプシャフトの回転方向における位相とポンプギヤの回転方向における位相とを合わせる必要がある。
【0006】
しかし、オイルポンプの周囲に他の部品が密集して組み付けられている場合、あるいはオイルポンプが組み付けられるクランクケース自身の形状が複雑な場合、作業者の手が当該他の部品あるいはクランクケースに干渉し、作業者が手でポンプシャフトを押さえて回転不能に保持することができない。
従って、作業者は上記の場合にはポンプギヤのみを手で持ってポンプシャフトに押し込むことにより、ポンプギヤの孔にポンプシャフトを嵌装していた。
【0007】
しかし、上記方法では、特にポンプギヤに形成された孔が作業者が手で持つ方の端部まで貫通していない場合にはポンプギヤおよびポンプシャフトの回転方向における位相を目視で把握することが困難であり、ポンプシャフトの回転方向における位相とポンプギヤの回転方向における位相とを合わせることが困難である。
また、無理にポンプギヤをポンプシャフトに押しつけて回転させた場合、ポンプギヤに当接したポンプシャフトがポンプギヤと共に回転してしまうため、結局は両者の回転方向における位相を合わせることが困難である。
このように、オイルポンプの周囲に他の部品が密集して組み付けられている場合、あるいはオイルポンプが組み付けられるクランクケース自身の形状が複雑な場合には、ポンプギヤの孔にポンプシャフトを嵌装することが困難である。
【0008】
従来、二つの歯車の回転方向における位相を合わせ、互いに噛合した状態で被固定物に組み付ける方法としては、特許文献2に記載の方法が知られている。
しかし、特許文献2に記載の方法は回転軸が互いにオフセットされた二つの歯車を被固定物に組み付けるものであり、回転軸が同軸(一直線)となる二つの機械要素の位相を合わせて組み付ける用途に特許文献2に記載の方法を適用することは実質的に不可能である。
【特許文献1】特開2004−11575号公報
【特許文献2】特開昭61−274828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、ポンプシャフトの回転により流体を圧送する流体ポンプおよびポンプシャフトに回転駆動力を伝達する伝達部材を被固定物に容易に組み付けることが可能な流体ポンプ組み付け装置および流体ポンプ組み付け方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、
吸入口および吐出口が形成された本体および前記本体に回転可能に軸支されたポンプシャフトを具備し、前記ポンプシャフトが回転することにより前記吸入口から吸入したオイルを前記吐出口から吐出して圧送する流体ポンプ、および前記ポンプシャフトに回転駆動力を伝達する伝達部材を被固定物に組み付ける流体ポンプ組み付け装置であって、
前記被固定物に固定された流体ポンプの吸入口または吐出口のいずれかに流体を供給することにより前記本体の内部に前記流体を充填する流体充填部と、
前記本体の内部に前記流体を充填した状態で前記吸入口および吐出口を閉塞する閉塞部と、
を具備するものである。
【0012】
請求項2においては、
吸入口および吐出口が形成された本体、前記本体に回転可能に軸支されるポンプシャフトおよび前記本体と前記ポンプシャフトとの間に配置されるシール部材を具備し、前記ポンプシャフトが回転することにより前記吸入口から吸入したオイルを前記吐出口から吐出して圧送するとともに前記吸入口から吸入したオイルの圧力により前記シール部材が弾性変形して前記本体および前記ポンプシャフトに密着する流体ポンプ、および前記ポンプシャフトに回転駆動力を伝達する伝達部材を被固定物に組み付ける流体ポンプ組み付け装置であって、
前記被固定物に固定された流体ポンプの吸入口または吐出口のいずれかに流体を供給することにより前記流体ポンプの本体の内部に前記流体を充填する流体充填部と、
前記本体の内部に充填された流体が前記本体の外部に移動しない状態で当該流体に圧力を付与する圧力付与部と、
を具備するものである。
【0013】
請求項3においては、
吸入口および吐出口が形成された本体および前記本体に回転可能に軸支されたポンプシャフトを具備し、前記ポンプシャフトが回転することにより前記吸入口から吸入したオイルを前記吐出口から吐出して圧送する流体ポンプ、および前記ポンプシャフトに回転駆動力を伝達する伝達部材を被固定物に組み付ける流体ポンプ組み付け装置であって、
前記被固定物に固定された流体ポンプの吸入口または吐出口のいずれかに流体を供給することにより前記ポンプシャフトを回転させるシャフト回転部を具備するものである。
【0014】
請求項4においては、
吸入口および吐出口が形成された本体および前記本体に回転可能に軸支されたポンプシャフトを具備し、前記ポンプシャフトが回転することにより前記吸入口から吸入したオイルを前記吐出口から吐出して圧送する流体ポンプ、および前記ポンプシャフトに回転駆動力を伝達する伝達部材を被固定物に組み付ける流体ポンプ組み付け方法であって、
前記流体ポンプを前記被固定物に固定する流体ポンプ固定工程と、
前記吸入口または吐出口のいずれかに流体を供給することにより前記本体の内部に前記流体を充填する流体充填工程と、
前記本体の内部に前記流体を充填した状態で前記吸入口および吐出口を閉塞する閉塞工程と、
前記伝達部材を前記ポンプシャフトに相対回転不能に嵌装する嵌装工程と、
を具備するものである。
【0015】
請求項5においては、
吸入口および吐出口が形成された本体、前記本体に回転可能に軸支されるポンプシャフトおよび前記本体と前記ポンプシャフトとの間に配置されるシール部材を具備し、前記ポンプシャフトが回転することにより前記吸入口から吸入したオイルを前記吐出口から吐出して圧送するとともに前記吸入口から吸入したオイルの圧力により前記シール部材が弾性変形して前記本体および前記ポンプシャフトに密着する流体ポンプ、および前記ポンプシャフトに回転駆動力を伝達する伝達部材を被固定物に組み付ける流体ポンプ組み付け方法であって、
前記流体ポンプを前記被固定物に固定する流体ポンプ固定工程と、
前記吸入口または吐出口のいずれかに流体を供給することにより前記流体ポンプの本体の内部に前記流体を充填する流体充填工程と、
前記本体の内部に充填された流体が前記本体の外部に移動しない状態で当該流体に圧力を付与する圧力付与工程と、
前記伝達部材を前記ポンプシャフトに相対回転不能に嵌装する嵌装工程と、
を具備するものである。
【0016】
請求項6においては、
吸入口および吐出口が形成された本体および前記本体に回転可能に軸支されたポンプシャフトを具備し、前記ポンプシャフトが回転することにより前記吸入口から吸入したオイルを前記吐出口から吐出して圧送する流体ポンプ、および前記ポンプシャフトに回転駆動力を伝達する伝達部材を被固定物に組み付ける流体ポンプ組み付け方法であって、
前記流体ポンプを前記被固定物に固定する流体ポンプ固定工程と、
前記吸入口または吐出口のいずれかに流体を供給することにより前記ポンプシャフトを回転させ、回転している前記ポンプシャフトに前記伝達部材を押しつけることにより前記伝達部材を前記ポンプシャフトに相対回転不能に嵌装する嵌装工程と、
を具備するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、ポンプシャフトの回転により流体を圧送する流体ポンプおよびポンプシャフトに回転駆動力を伝達する伝達部材を被固定物に容易に組み付けることが可能である、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下では、本発明に係る流体ポンプ組み付け装置の第一実施形態である組み付け装置100の説明に先立ち、図1を用いて組み付け装置100による組み付けの対象であるクランクケース10、オイルポンプ20およびポンプギヤ30について説明する。
【0019】
クランクケース10は本発明に係る被固定物の実施の一形態である。
クランクケース10はエンジンを構成する部材の一つであり、当該エンジンのクランクシャフトを収容するとともに回転可能に軸支する。
クランクケース10には吸入側経路11および吐出側経路12が形成される。
なお、本発明に係る被固定物は本実施形態のクランクケース10に限定されず、「流体ポンプが固定される対象となる物」を広く含む。
【0020】
オイルポンプ20は本発明に係る流体ポンプの実施の一形態であり、クランクケース10の内部に貯留されたオイルを圧送してクランクケース10の内部に収容された部材(例えば、クランクシャフト、軸受け、ギヤ等)に供給し、当該部材を潤滑する。
オイルポンプ20は内接形ギヤポンプであり、主として本体21、内接歯車22、外接歯車23、ポンプシャフト24およびシールリング25を具備する。
【0021】
「流体ポンプ」は流体を圧送する装置を広く含む。流体ポンプの具体例としてはピストンポンプ、ベーンポンプ、ギヤポンプ(外接形ギヤポンプおよび内接形ギヤポンプを含む)、ネジポンプ等が挙げられる。
「流体」は流動性を有する液体、気体またはこれらの混合物を広く含む。流体の具体例としては、液体では水、アルコール、オイル等が挙げられ、気体では空気、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。
【0022】
本体21は本発明に係る本体の実施の一形態であり、オイルポンプ20の主たる構造体を成す部材である。本体21はベース21aおよびカバー21bを有する。
ベース21aは本体21の下半部を成す略円盤形状の部材である。ベース21aには吸入口27および吐出口28が形成される。
カバー21bは本体21の上半部を成す略円盤形状の部材である。カバー21bの中央部には軸支孔29が形成される。
【0023】
内接歯車22はリング状の部材であり、その内周面に複数の歯が形成される。内接歯車22はベース21aおよびカバー21bで挟まれる位置に配置される。
【0024】
外接歯車23は内接歯車22に噛合する歯車である。外接歯車23は本体21および内接歯車22に囲まれる空間(より詳細には、ベース21aの上面、カバー21bの下面および内接歯車22の内周面に囲まれる空間)に収容される。
【0025】
ポンプシャフト24は本発明に係るポンプシャフトの実施の一形態であり、略円柱形状の部材である。ポンプシャフト24は、カバー21bに形成された軸支孔29に貫装されることにより、ポンプシャフト24の中途部においてカバー21bに回転可能に軸支される。
ポンプシャフト24の下端部(ベース21aの内部に没入している方の端部)には外接歯車23が相対回転不能に固定される。
ポンプシャフト24の上端部(ベース21aの外部に突出している方の端部)には互いに平行な一対の平面である係合面24a・24aが形成される。
【0026】
シールリング25は本発明に係るシール部材の実施の一形態であり、本体21とポンプシャフト24との間に配置される部材である。
シールリング25はリング状の部材であり、ポンプシャフト24に外嵌されてポンプシャフト24の外周面の中途部に当接するとともに、カバー21bに形成された軸支孔29の内周面に当接する。
このように、シールリング25はポンプシャフト24の外周面と軸支孔29の内周面との隙間を通じて本体21の外部にオイルが漏洩することを防止する。
また、シールリング25は吸入口27から吸入したオイル(本体21の内部に収容されたオイル)の圧力により弾性変形し、本体21(より詳細には軸支孔29の内周面)およびポンプシャフト24に密着する(より強く当接する)ようにその形状が定められる。
【0027】
図1に示す如く、オイルポンプ20がクランクケース10に固定されたとき、本体21を構成するベース21aおよびカバー21bはクランクケース10に相対移動不能かつ相対回転不能に固定され、内接歯車22はベース21aおよびカバー21bに対して相対回転可能に支持される。また、ポンプシャフト24の上端部(ベース21aの外部に突出している方の端部)はクランクケース10から突出している。
さらに、クランクケース10に固定されたオイルポンプ20の吸入口27は吸入側経路11の一端に接続され、クランクケース10に固定されたオイルポンプ20の吐出口28は吐出側経路12の一端に接続される。
【0028】
ポンプギヤ30は本発明に係る伝達部材の実施の一形態であり、エンジンが発生する回転駆動力をポンプシャフト24に伝達する部材である。
本実施形態のポンプギヤ30の外周面には他のギヤと噛合する複数の歯が形成される。ポンプギヤ30の下端面の中央には嵌合孔31が形成される。嵌合孔31の内周面には互いに平行な一対の平面である係合面31a・31aが形成される。また、ポンプギヤ30の下端部にはフランジ部32が形成され、さらにフランジ部32の周縁部から延びる形で筒部33が形成される。
【0029】
図1に示す如く、クランクケース10にオイルポンプ20およびポンプギヤ30が組み付けられたとき、ポンプシャフト24の上端部はポンプギヤ30の嵌合孔31に嵌合し、ポンプシャフト24の上端部に形成された係合面24a・24aはそれぞれ嵌合孔31の内周面に形成された係合面31a・31aに当接する。その結果、ポンプギヤ30はポンプシャフト24に相対回転不能に嵌装される。
また、筒部32の内周面とクランクケース10との間には軸受け40が介装され、ポンプギヤ30は軸受け40を介してクランクケース10に回転可能に軸支される。
【0030】
クランクケース10を構成部材の一つとするエンジンが駆動すると、エンジンの回転駆動力がポンプギヤ30を介してポンプシャフト24に伝達され、ポンプギヤ30およびポンプシャフト24が相対回転不能に(一体的に)回転する。
その結果、オイルポンプ20は吸入側経路11を経てクランクケース10の内部に貯留されたオイルを吸入し、吐出口28から吐出し、吐出側経路12を経てクランクケース10の内部の各所に圧送する。
【0031】
本実施形態のポンプギヤ30は外周面に複数の歯が形成された歯車であるが、本発明に係る伝達部材はこれに限定されない。
例えば、伝達部材がスプロケット、プーリあるいはシャフトであっても良い。
【0032】
本実施形態ではポンプシャフト24の上端部に係合面24a・24aが形成され、ポンプギヤ30の嵌合孔31の内周面には係合面31a・31aが形成され、係合面24a・24aと係合面31a・31aとが当接することによりポンプギヤ30がポンプシャフト24に相対回転不能に嵌装される構成としたが、本発明における伝達部材がポンプシャフトに相対回転不能に嵌装される構成はこれに限定されない。
例えば、ポンプシャフトの先端部および伝達部材に形成された嵌合孔の内周面にスプライン、セレーションあるいはキー溝を形成し、伝達部材がポンプシャフトに相対回転不能に嵌装される構成としても良い。
【0033】
以下では、図2から図4を用いて本発明に係る流体ポンプ組み付け装置の第一実施形態である組み付け装置100の装置構成について説明する。
【0034】
図2に示す組み付け装置100はクランクケース10にオイルポンプ20およびポンプギヤ30を組み付ける装置である。
組み付け装置100は主としてポンプ110、オイルパン120、吸入配管131、圧送配管132、戻り配管133および栓141・142を具備する。
【0035】
ポンプ110は本発明に係る流体充填部の実施の一形態である。
本実施形態のポンプ110はいわゆるベーンポンプであり、吸入ポート111および吐出ポート112を有する。ポンプ110は吸入ポート111から吸入したオイル1を吐出ポート112から吐出することにより、オイル1を圧送する。
本実施形態のポンプ110はベーンポンプであるが、本発明に係る流体充填部はこれに限定されない。例えば、ピストンポンプ等他の形式のポンプを本発明に係る流体充填部として用いても良い。
【0036】
オイル1は本発明に係る流体の実施の一形態であり、オイルポンプ20が組み付けられたクランクケース10を構成部材とするエンジンの潤滑油として用いられるオイルと同じ種類のオイルである。
本実施形態では、オイルポンプ20およびポンプギヤ30を組み付けた後にオイルポンプ20の内部を清掃する労力を軽減するために、オイルポンプ20が設けられるエンジン使用時にオイルポンプ20が圧送するオイル(エンジンの内部を潤滑するオイル)と同種のオイル1を「流体」として用いたが、これに限定されるものではない。例えば、オイル1に代えて水、圧縮空気等を「流体」として用いても良い。
【0037】
オイルパン120は上面が開口した容器であり、オイル1が貯留される。
【0038】
吸入配管131、圧送配管132および戻り配管133は、ポンプ110により圧送されるオイル1の循環経路を形成する配管である。
吸入配管131の一端はポンプ110の吸入ポート111に接続される。吸入配管131の他端はオイルパン120に挿入され、オイルパン120に貯留されたオイル1に浸漬される。
圧送配管132の一端はポンプ110の吐出ポート112に接続され、圧送配管132の他端は吸入側経路11に接続される。
戻り配管133の一端は吐出側経路12に接続され、戻り配管133の他端はオイルパン120に挿入される。
【0039】
栓141・142は本発明に係る閉塞部の実施の一形態であり、本体21の内部にオイル1を充填した状態で吸入口27および吐出口28を閉塞するものである。
【0040】
以下では、図2から図6を用いて本発明に係る流体ポンプ組み付け方法の第一実施形態について説明する。
本発明に係る流体ポンプ組み付け方法の第一実施形態は「組み付け装置100を用いてオイルポンプ20およびポンプギヤ30をクランクケース10に組み付ける方法」であり、図6に示す如く、流体ポンプ固定工程S1100、流体充填工程S1200、閉塞工程S1300および嵌装工程S1400を具備する。
【0041】
流体ポンプ固定工程S1100はオイルポンプ20をクランクケース10に固定する工程である。
流体ポンプ固定工程S1100では、以下の(11−1)から(11−3)の作業が順に行われる(図2参照)。
(11−1)作業者が圧送配管132の他端を吸入側経路11の端部に接続する。
(11−2)作業者が戻り配管133の一端を吐出側経路12の端部に接続する。
(11−3)作業者がオイルポンプ20をクランクケース10に固定する。
上記(11−1)から(11−3)の作業の順序は相互に入れ替え可能である。
本実施形態では作業者が上記(11−1)から(11−3)を手作業で行う構成としたが、これらの作業を適宜自動化(機械化)することも可能である。
流体ポンプ固定工程S1100が終了したら、流体充填工程S1200に移行する。
【0042】
流体充填工程S1200は吸入口27にオイル1を供給することにより本体21の内部にオイル1を充填する工程である。
流体充填工程S1200では、作業者がポンプ110を作動させる。
図3に示す如く、ポンプ110が作動すると、オイルパン120に貯留されたオイル1は吸入配管131を経て吸入ポート111からポンプ110の内部に吸入される。
ポンプ110の内部に吸入されたオイル1は吐出ポート112から吐出され、圧送配管132、吸入側経路11を経て圧送され、オイルポンプ20の吸入口27に供給される。
オイルポンプ20の吸入口27に供給されたオイル1はオイルポンプ20の本体21の内部(本実施形態の場合、ベース21aの上面、カバー21bの下面および内接歯車22の内周面に囲まれる空間)に充填され、オイルポンプ20の吐出口28に到達する。また、このときポンプシャフト24が回転する。
オイルポンプ20の吐出口28に到達したオイル1は、吐出口28、吐出側経路12および戻り配管133を経てオイルパン120に戻される。
このように、ポンプ110は、クランクケース10に固定されたオイルポンプ20の吸入口27にオイル1を供給することにより、本体21の内部にオイル1を充填する。
流体充填工程S1200が終了したら、閉塞工程S1300に移行する。
【0043】
閉塞工程S1300は本体21の内部にオイル1を充填した状態で吸入口27および吐出口28を閉塞する工程である。
閉塞工程S1300では、以下の(13−1)から(13−3)の作業が順に行われる(図4参照)。
(13−1)作業者がポンプ110を停止させる。
(13−2)作業者が本体21の内部にオイル1が充填された状態で圧送配管132の他端を吸入側経路11の端部から取り外し、吸入側経路11の端部に栓141を嵌装する。
(13−3)作業者が本体21の内部にオイル1が充填された状態で戻り配管133の一端を吐出側経路12の端部から取り外し、吐出側経路12の端部に栓142を嵌装する。
【0044】
上記(13−1)から(13−3)の作業が行われると、吸入口27および吐出口28は閉塞され、本体21の内部に充填されたオイル1が封入された状態(本体21の内部に充填されたオイル1が吸入口27および吐出口28から外部に移動できない状態)となる。
その結果、本体21の内部に充填されたオイル1によりポンプシャフト24の回転が規制される。
閉塞工程S1300が終了したら、嵌装工程S1400に移行する。
【0045】
嵌装工程S1400はポンプギヤ30をポンプシャフト24に相対回転不能に嵌装する工程である。
嵌装工程S1400では、以下の(14−1)から(14−2)の作業が順に行われる(図5参照)。
(14−1)作業者が軸受け40をクランクケース10に取り付ける。
(14−2)作業者がポンプギヤ30をポンプシャフト24に嵌装するとともに、軸受け40を介してクランクケース10に軸支させる。
【0046】
(14−2)において、作業者はポンプギヤ30の嵌合孔31の端部をポンプシャフト24の上端部に当接させつつポンプギヤ30を回転させることにより、ポンプシャフト24の上端部に形成された一対の係合面24a・24aと嵌合孔31の内周面に形成された係合面31a・31aとを互いに当接した状態とし、ポンプシャフト24の上端部を嵌合孔31に嵌合させる。
このとき、先の閉塞工程S1300において本体21の内部に充填されたオイル1によりポンプシャフト24の回転が規制された状態が保持されていることから、ポンプシャフト24がポンプギヤ30と共に回転することが無く、容易にポンプシャフト24の上端部を嵌合孔31に嵌合することが可能である。
【0047】
以上の如く、組み付け装置100は、
吸入口27および吐出口28が形成された本体21および本体21に回転可能に軸支されたポンプシャフト24を具備し、ポンプシャフト24が回転することにより吸入口27から吸入したオイル1を吐出口28から吐出して圧送するオイルポンプ20、およびポンプシャフト24に回転駆動力を伝達するポンプギヤ30をクランクケース10に組み付ける流体ポンプ組み付け装置であって、
クランクケース10に固定されたオイルポンプ20の吸入口27にオイル1を供給することにより本体21の内部にオイル1を充填するポンプ110と、
本体21の内部にオイル1を充填した状態で吸入口27および吐出口28を閉塞する栓141・142と、
を具備する。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、本体21の内部に封入されたオイル1によりポンプシャフト24の回転が規制されるため、ポンプギヤ30をポンプシャフト24に容易に嵌装することが可能であり、ひいてはオイルポンプ20およびポンプギヤ30をクランクケース10に容易に組み付けることが可能である。
【0048】
本実施形態では吸入口27にオイル1を供給することにより本体21の内部にオイル1を充填する構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、流体ポンプの吐出口に流体を供給することにより本体の内部に流体を充填する構成としても良い。
【0049】
本実施形態では栓141・142により吸入口27および吐出口28を閉塞する構成としたが、本発明はこれに限定されない。
例えば、図7に示す如く、圧送配管132の中途部に開閉弁151を設けるとともに戻り配管133の中途部に開閉弁152を設け、開閉弁151および開閉弁152を閉じることにより吸入口27および吐出口28を閉塞する構成としても良い。この場合、開閉弁151および開閉弁152が本発明に係る閉塞部材の実施の一形態に相当する。
【0050】
以上の如く、本発明に係る流体ポンプ組み付け方法の第一実施形態は、
吸入口27および吐出口28が形成された本体21および本体21に回転可能に軸支されたポンプシャフト24を具備し、ポンプシャフト24が回転することにより吸入口27から吸入したオイル1を吐出口28から吐出して圧送するオイルポンプ20、およびポンプシャフト24に回転駆動力を伝達するポンプギヤ30をクランクケース10に組み付ける流体ポンプ組み付け方法であって、
オイルポンプ20をクランクケース10に固定する流体ポンプ固定工程S1100と、
吸入口27にオイル1を供給することにより本体21の内部にオイル1を充填する流体充填工程S1200と、
本体21の内部にオイル1を充填した状態で吸入口27および吐出口28を閉塞する閉塞工程S1300と、
ポンプギヤ30をポンプシャフト24に相対回転不能に嵌装する嵌装工程S1400と、
を具備する。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、本体21の内部に封入されたオイル1によりポンプシャフト24の回転が規制されるため、ポンプギヤ30をポンプシャフト24に容易に嵌装することが可能であり、ひいてはオイルポンプ20およびポンプギヤ30をクランクケース10に容易に組み付けることが可能である。
【0051】
以下では、図8から図10を用いて本発明に係る流体ポンプ組み付け装置の第二実施形態である組み付け装置200の装置構成について説明する。
【0052】
図8に示す組み付け装置200はクランクケース10にオイルポンプ20およびポンプギヤ30を組み付ける装置である。
組み付け装置200は主としてポンプ210、オイルパン220、吸入配管231、圧送配管232、戻り配管233および栓242を具備する。
なお、オイルパン220、吸入配管231、圧送配管232、戻り配管233は、それぞれ図2に示す組み付け装置100におけるオイルパン120、吸入配管131、圧送配管132、戻り配管133と略同じ構成であることから説明を省略する。
【0053】
ポンプ210は本発明に係る流体充填部の実施の一形態である。
本実施形態のポンプ210はいわゆるベーンポンプであり、吸入ポート211および吐出ポート212を有する。ポンプ210は吸入ポート211から吸入したオイル1を吐出ポート212から吐出することにより、オイル1を圧送する。
また、ポンプ210と栓242を合わせたものは本発明に係る圧力付与部の実施の一形態であり、本体21の内部に充填されたオイル1が本体21の外部に移動しない状態でオイル1に圧力を付与する。
このように、本実施形態のポンプ210は、本発明に係る流体充填部としての機能と、本発明に係る圧力付与部の一部としての機能と、を兼ねる。
【0054】
本実施形態のポンプ210はベーンポンプであるが、本発明に係る流体充填部および圧力付与部はこれに限定されない。例えば、ピストンポンプ等他の形式のポンプを本発明に係る流体充填部および流体充填部(の一部)として用いても良い。
【0055】
栓242は本体21の内部にオイル1を充填した状態で吐出口28を閉塞する。
【0056】
以下では、図8から図12を用いて本発明に係る流体ポンプ組み付け方法の第二実施形態について説明する。
本発明に係る流体ポンプ組み付け方法の第二実施形態は「組み付け装置200を用いてオイルポンプ20およびポンプギヤ30をクランクケース10に組み付ける方法」であり、図12に示す如く、流体ポンプ固定工程S2100、流体充填工程S2200、圧力付与工程S2300および嵌装工程S2400を具備する。
【0057】
流体ポンプ固定工程S2100はオイルポンプ20をクランクケース10に固定する工程である。
流体ポンプ固定工程S2100では、以下の(21−1)から(21−3)の作業が順に行われる(図8参照)。
(21−1)作業者が圧送配管232の他端を吸入側経路11の端部に接続する。
(21−2)作業者が戻り配管233の一端を吐出側経路12の端部に接続する。
(21−3)作業者がオイルポンプ20をクランクケース10に固定する。
上記(21−1)から(21−3)の作業の順序は相互に入れ替え可能である。
本実施形態では作業者が上記(21−1)から(21−3)を手作業で行う構成としたが、これらの作業を適宜自動化(機械化)することも可能である。
流体ポンプ固定工程S2100が終了したら、流体充填工程S2200に移行する。
【0058】
流体充填工程S2200は吸入口27にオイル1を供給することにより本体21の内部にオイル1を充填する工程である。
流体充填工程S2200では、作業者がポンプ210を作動させる。
図9に示す如く、ポンプ210が作動すると、オイルパン220に貯留されたオイル1は吸入配管231を経て吸入ポート211からポンプ210の内部に吸入される。
ポンプ210の内部に吸入されたオイル1は吐出ポート212から吐出され、圧送配管232、吸入側経路11を経て圧送され、オイルポンプ20の吸入口27に供給される。
オイルポンプ20の吸入口27に供給されたオイル1はオイルポンプ20の本体21の内部(本実施形態の場合、ベース21aの上面、カバー21bの下面および内接歯車22の内周面に囲まれる空間)に充填され、オイルポンプ20の吐出口28に到達する。また、このときポンプシャフト24が回転する。
オイルポンプ20の吐出口28に到達したオイル1は、吐出口28、吐出側経路12および戻り配管233を経てオイルパン220に戻される。
このように、ポンプ210は、クランクケース10に固定されたオイルポンプ20の吸入口27にオイル1を供給することにより、本体21の内部にオイル1を充填する。
流体充填工程S2200が終了したら、圧力付与工程S2300に移行する。
【0059】
圧力付与工程S2300は本体21の内部に充填されたオイル1が本体21の外部に移動しない状態でオイル1に圧力を付与する工程である。
圧力付与工程S2300では、以下の(23−1)から(23−3)の作業が順に行われる(図10参照)。
(23−1)作業者がポンプ210を停止させる。
(23−2)作業者が本体21の内部にオイル1が充填された状態で戻り配管233の一端を吐出側経路12の端部から取り外し、吐出側経路12の端部に栓242を嵌装する。
(23−3)作業者がポンプ210を再度作動させる。
【0060】
上記(23−1)から(23−3)の作業が行われると、本体21の内部に充填されたオイル1が封入された状態(本体21の内部に充填されたオイル1が吸入口27および吐出口28から外部に移動できない状態)となり、本体21の内部に充填されたオイル1によりポンプシャフト24の回転が規制される。
また、本体21の内部に充填されたオイル1にはポンプ210による圧力が付与され、当該圧力によりシールリング25が弾性変形し、シールリング25は本体21およびポンプシャフト24に密着する。その結果、ポンプシャフト24の回転が更に強固に規制される。
圧力付与工程S2300が終了したら、嵌装工程S2400に移行する。
【0061】
嵌装工程S2400はポンプギヤ30をポンプシャフト24に相対回転不能に嵌装する工程である。
嵌装工程S2400では、以下の(24−1)から(24−2)の作業が順に行われる(図11参照)。
(24−1)作業者が軸受け40をクランクケース10に取り付ける。
(24−2)作業者がポンプギヤ30をポンプシャフト24に嵌装するとともに、軸受け40を介してクランクケース10に軸支させる。
【0062】
(24−2)において、作業者はポンプギヤ30の嵌合孔31の端部をポンプシャフト24の上端部に当接させつつポンプギヤ30を回転させることにより、ポンプシャフト24の上端部に形成された一対の係合面24a・24aと嵌合孔31の内周面に形成された係合面31a・31aとを互いに当接した状態とし、ポンプシャフト24の上端部を嵌合孔31に嵌合させる。
このとき、先の圧力付与工程S2300において本体21の内部に充填されたオイル1によりポンプシャフト24の回転が強固に規制された状態が保持されていることから、ポンプシャフト24がポンプギヤ30と共に回転することが無く、容易にポンプシャフト24の上端部を嵌合孔31に嵌合することが可能である。
【0063】
以上の如く、組み付け装置200は、
吸入口27および吐出口28が形成された本体21、本体21に回転可能に軸支されたポンプシャフト24および本体21とポンプシャフト24との間に配置されるシールリング25を具備し、ポンプシャフト24が回転することにより吸入口27から吸入したオイル1を吐出口28から吐出して圧送するとともに吸入口27から吸入したオイル1の圧力によりシールリング25が弾性変形して本体21およびポンプシャフト24に密着するオイルポンプ20、およびポンプシャフト24に回転駆動力を伝達するポンプギヤ30をクランクケース10に組み付ける流体ポンプ組み付け装置であって、
クランクケース10に固定されたオイルポンプ20の吸入口27にオイル1を供給することにより本体21の内部にオイル1を充填するポンプ210と、
本体21の内部に充填されたオイル1が本体21の外部に移動しない状態でオイル1に圧力を付与する圧力付与部(ポンプ210と栓242を合わせたものが圧力付与部に相当する)と、
を具備する。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、本体21の内部に封入されたオイル1によりポンプシャフト24の回転が強固に規制されるため、ポンプギヤ30をポンプシャフト24に容易に嵌装することが可能であり、ひいてはオイルポンプ20およびポンプギヤ30をクランクケース10に容易に組み付けることが可能である。
【0064】
本実施形態では栓242により吐出口28を閉塞する構成としたが、本発明はこれに限定されない。
例えば、図13に示す如く、戻り配管233の中途部に開閉弁252を設け、開閉弁252を閉じることにより吐出口28を閉塞する構成としても良い。この場合、ポンプ210および開閉弁252を合わせたものが本発明に係る圧力付与部材の実施の一形態に相当する。
【0065】
以上の如く、本発明に係る流体ポンプ組み付け方法の第二実施形態は、
吸入口27および吐出口28が形成された本体21、本体21に回転可能に軸支されたポンプシャフト24および本体21とポンプシャフト24との間に配置されるシールリング25を具備し、ポンプシャフト24が回転することにより吸入口27から吸入したオイル1を吐出口28から吐出して圧送するとともに吸入口27から吸入したオイル1の圧力によりシールリング25が弾性変形して本体21およびポンプシャフト24に密着するオイルポンプ20、およびポンプシャフト24に回転駆動力を伝達するポンプギヤ30をクランクケース10に組み付ける流体ポンプ組み付け方法であって、
オイルポンプ20をクランクケース10に固定する流体ポンプ固定工程S2100と、
吸入口27にオイル1を供給することにより本体21の内部にオイル1を充填する流体充填工程S2200と、
本体21の内部に充填されたオイル1が本体21の外部に移動しない状態でオイル1に圧力を付与する圧力付与工程S2300と、
ポンプギヤ30をポンプシャフト24に相対回転不能に嵌装する嵌装工程S2400と、
を具備する。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、本体21の内部に封入されたオイル1によりポンプシャフト24の回転が強固に規制されるため、ポンプギヤ30をポンプシャフト24に容易に嵌装することが可能であり、ひいてはオイルポンプ20およびポンプギヤ30をクランクケース10に容易に組み付けることが可能である。
【0066】
以下では、図14を用いて本発明に係る流体ポンプ組み付け装置の第三実施形態である組み付け装置300の装置構成について説明する。
【0067】
図14に示す組み付け装置300はクランクケース10にオイルポンプ20およびポンプギヤ30を組み付ける装置である。
組み付け装置300は主としてポンプ310、オイルパン320、吸入配管331、圧送配管332および戻り配管333を具備する。
なお、オイルパン320、吸入配管331、圧送配管332、戻り配管333は、それぞれ図2に示す組み付け装置100におけるオイルパン120、吸入配管131、圧送配管132、戻り配管133と略同じ構成であることから説明を省略する。
【0068】
ポンプ310は本発明に係るシャフト回転部の実施の一形態である。
本実施形態のポンプ310はいわゆるベーンポンプであり、吸入ポート311および吐出ポート312を有する。ポンプ310は吸入ポート311から吸入したオイル1を吐出ポート312から吐出することにより、オイル1を圧送する。
【0069】
本実施形態のポンプ310はベーンポンプであるが、本発明に係るシャフト回転部はこれに限定されない。例えば、ピストンポンプ等他の形式のポンプを本発明に係るシャフト回転部として用いても良い。
【0070】
以下では、図14から図17を用いて本発明に係る流体ポンプ組み付け方法の第三実施形態について説明する。
本発明に係る流体ポンプ組み付け方法の第三実施形態は「組み付け装置300を用いてオイルポンプ20およびポンプギヤ30をクランクケース10に組み付ける方法」であり、図17に示す如く、流体ポンプ固定工程S3100および嵌装工程S3200を具備する。
【0071】
流体ポンプ固定工程S3100はオイルポンプ20をクランクケース10に固定する工程である。
流体ポンプ固定工程S3100では、以下の(31−1)から(31−3)の作業が順に行われる(図14参照)。
(31−1)作業者が圧送配管332の他端を吸入側経路11の端部に接続する。
(31−2)作業者が戻り配管333の一端を吐出側経路12の端部に接続する。
(31−3)作業者がオイルポンプ20をクランクケース10に固定する。
上記(31−1)から(31−3)の作業の順序は相互に入れ替え可能である。
本実施形態では作業者が上記(31−1)から(31−3)を手作業で行う構成としたが、これらの作業を適宜自動化(機械化)することも可能である。
流体ポンプ固定工程S3100が終了したら、嵌装工程S3200に移行する。
【0072】
嵌装工程S3200はポンプギヤ30をポンプシャフト24に相対回転不能に嵌装する工程である。
嵌装工程S3200では、以下の(34−1)から(34−3)の作業が順に行われる(図15および図16参照)。
(34−1)作業者が軸受け40をクランクケース10に取り付ける。
(34−2)作業者がポンプ310を作動させる。
(34−3)作業者がポンプギヤ30をポンプシャフト24に嵌装するとともに、軸受け40を介してクランクケース10に軸支させる。
【0073】
(34−2)においてポンプ310が作動すると、オイルパン320に貯留されたオイル1は吸入配管331を経て吸入ポート311からポンプ310の内部に吸入される。
ポンプ310の内部に吸入されたオイル1は吐出ポート312から吐出され、圧送配管332、吸入側経路11を経て圧送され、オイルポンプ20の吸入口27に供給される。
オイルポンプ20の吸入口27に供給されたオイル1はオイルポンプ20の本体21の内部に充填され、オイルポンプ20の吐出口28に到達する。また、このときポンプシャフト24が回転する。
オイルポンプ20の吐出口28に到達したオイル1は、吐出口28、吐出側経路12および戻り配管333を経てオイルパン320に戻される。
このように、ポンプ310は、クランクケース10に固定されたオイルポンプ20の吸入口27にオイル1を供給することにより、ポンプシャフト24を回転させる。
【0074】
(34−3)において、作業者はポンプギヤ30を手で持って回転不能に保持しつつポンプギヤ30の嵌合孔31の端部をポンプシャフト24の上端部に押しつける。
このとき、ポンプシャフト24は(34−2)から引き続き回転しているため、作業者がポンプギヤ30の嵌合孔31の端部をポンプシャフト24の上端部に押しつけた状態をしばらく保持していれば、ポンプシャフト24の上端部に形成された一対の係合面24a・24aと嵌合孔31の内周面に形成された係合面31a・31aとが互いに平行となった時点でポンプギヤ30がポンプシャフト24に嵌装されることとなる。
ポンプシャフト24の回転速度は、作業者が手作業でポンプギヤ30をポンプシャフト24に嵌装する場合には、例えば1rpm程度の緩やかな速度であることが望ましい。
【0075】
以上の如く、組み付け装置300は、
吸入口27および吐出口28が形成された本体21および本体21に回転可能に軸支されたポンプシャフト24を具備し、ポンプシャフト24が回転することにより吸入口27から吸入したオイル1を吐出口28から吐出して圧送するオイルポンプ20、およびポンプシャフト24に回転駆動力を伝達するポンプギヤ30をクランクケース10に組み付ける流体ポンプ組み付け装置であって、
クランクケース10に固定されたオイルポンプ20の吸入口27にオイル1を供給することによりポンプシャフト24を回転させるポンプ310を具備する。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、本体21の内部に供給されたオイル1によりポンプシャフト24が回転するため、ポンプギヤ30をポンプシャフト24に押しつけた状態をしばらく保持していれば自ずとポンプギヤ30およびポンプシャフト24の回転方向における位相が一致し、ポンプギヤ30をポンプシャフト24に容易に嵌装することが可能であり、ひいてはオイルポンプ20およびポンプギヤ30をクランクケース10に容易に組み付けることが可能である。
【0076】
以上の如く、本発明に係る流体ポンプ組み付け方法の第三実施形態は、
吸入口27および吐出口28が形成された本体21および本体21に回転可能に軸支されたポンプシャフト24を具備し、ポンプシャフト24が回転することにより吸入口27から吸入したオイル1を吐出口28から吐出して圧送するオイルポンプ20、およびポンプシャフト24に回転駆動力を伝達するポンプギヤ30をクランクケース10に組み付ける流体ポンプ組み付け方法であって、
オイルポンプ20をクランクケース10に固定する流体ポンプ固定工程S3100と、
吸入口27にオイル1を供給することによりポンプシャフト24を回転させ、回転しているポンプシャフト24にポンプギヤ30を押しつけることによりポンプギヤ30をポンプシャフト24に相対回転不能に嵌装する嵌装工程S3200と、
を具備する。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、本体21の内部に供給されたオイル1によりポンプシャフト24が回転するため、ポンプギヤ30をポンプシャフト24に押しつけた状態をしばらく保持していれば自ずとポンプギヤ30およびポンプシャフト24の回転方向における位相が一致し、ポンプギヤ30をポンプシャフト24に容易に嵌装することが可能であり、ひいてはオイルポンプ20およびポンプギヤ30をクランクケース10に容易に組み付けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】クランクケースにオイルポンプおよびポンプギヤを組み付けた状態を示す側面断面図。
【図2】流体ポンプ固定工程が終了した時点における本発明に係る流体ポンプ組み付け装置の第一実施形態を示す側面断面図。
【図3】流体充填工程が終了した時点における本発明に係る流体ポンプ組み付け装置の第一実施形態を示す側面断面図。
【図4】閉塞工程が終了した時点における本発明に係る流体ポンプ組み付け装置の第一実施形態を示す側面断面図。
【図5】嵌装工程が終了した時点における本発明に係る流体ポンプ組み付け装置の第一実施形態を示す側面断面図。
【図6】本発明に係る流体ポンプ組み付け方法の第一実施形態を示すフロー図。
【図7】本発明に係る流体ポンプ組み付け装置の第一実施形態の別実施形態を示す側面断面図。
【図8】流体ポンプ固定工程が終了した時点における本発明に係る流体ポンプ組み付け装置の第二実施形態を示す側面断面図。
【図9】流体充填工程が終了した時点における本発明に係る流体ポンプ組み付け装置の第二実施形態を示す側面断面図。
【図10】圧力付与工程が終了した時点における本発明に係る流体ポンプ組み付け装置の第二実施形態を示す側面断面図。
【図11】嵌装工程が終了した時点における本発明に係る流体ポンプ組み付け装置の第二実施形態を示す側面断面図。
【図12】本発明に係る流体ポンプ組み付け方法の第二実施形態を示すフロー図。
【図13】本発明に係る流体ポンプ組み付け装置の第二実施形態の別実施形態を示す側面断面図。
【図14】流体ポンプ固定工程が終了した時点における本発明に係る流体ポンプ組み付け装置の第三実施形態を示す側面断面図。
【図15】嵌装工程の途中の時点における本発明に係る流体ポンプ組み付け装置の第三実施形態を示す側面断面図。
【図16】嵌装工程が終了した時点における本発明に係る流体ポンプ組み付け装置の第三実施形態を示す側面断面図。
【図17】本発明に係る流体ポンプ組み付け方法の第三実施形態を示すフロー図。
【符号の説明】
【0078】
1 オイル(流体)
10 クランクケース(被固定物)
20 オイルポンプ(流体ポンプ)
21 本体
24 ポンプシャフト
27 吸入口
28 吐出口
30 ポンプギヤ(伝達部材)
100 組み付け装置(流体ポンプ組み付け装置)
110 ポンプ(流体充填部)
141 栓(閉塞部)
142 栓(閉塞部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入口および吐出口が形成された本体および前記本体に回転可能に軸支されたポンプシャフトを具備し、前記ポンプシャフトが回転することにより前記吸入口から吸入したオイルを前記吐出口から吐出して圧送する流体ポンプ、および前記ポンプシャフトに回転駆動力を伝達する伝達部材を被固定物に組み付ける流体ポンプ組み付け装置であって、
前記被固定物に固定された流体ポンプの吸入口または吐出口のいずれかに流体を供給することにより前記本体の内部に前記流体を充填する流体充填部と、
前記本体の内部に前記流体を充填した状態で前記吸入口および吐出口を閉塞する閉塞部と、
を具備する流体ポンプ組み付け装置。
【請求項2】
吸入口および吐出口が形成された本体、前記本体に回転可能に軸支されるポンプシャフトおよび前記本体と前記ポンプシャフトとの間に配置されるシール部材を具備し、前記ポンプシャフトが回転することにより前記吸入口から吸入したオイルを前記吐出口から吐出して圧送するとともに前記吸入口から吸入したオイルの圧力により前記シール部材が弾性変形して前記本体および前記ポンプシャフトに密着する流体ポンプ、および前記ポンプシャフトに回転駆動力を伝達する伝達部材を被固定物に組み付ける流体ポンプ組み付け装置であって、
前記被固定物に固定された流体ポンプの吸入口または吐出口のいずれかに流体を供給することにより前記流体ポンプの本体の内部に前記流体を充填する流体充填部と、
前記本体の内部に充填された流体が前記本体の外部に移動しない状態で当該流体に圧力を付与する圧力付与部と、
を具備する流体ポンプ組み付け装置。
【請求項3】
吸入口および吐出口が形成された本体および前記本体に回転可能に軸支されたポンプシャフトを具備し、前記ポンプシャフトが回転することにより前記吸入口から吸入したオイルを前記吐出口から吐出して圧送する流体ポンプ、および前記ポンプシャフトに回転駆動力を伝達する伝達部材を被固定物に組み付ける流体ポンプ組み付け装置であって、
前記被固定物に固定された流体ポンプの吸入口または吐出口のいずれかに流体を供給することにより前記ポンプシャフトを回転させるシャフト回転部を具備する流体ポンプ組み付け装置。
【請求項4】
吸入口および吐出口が形成された本体および前記本体に回転可能に軸支されたポンプシャフトを具備し、前記ポンプシャフトが回転することにより前記吸入口から吸入したオイルを前記吐出口から吐出して圧送する流体ポンプ、および前記ポンプシャフトに回転駆動力を伝達する伝達部材を被固定物に組み付ける流体ポンプ組み付け方法であって、
前記流体ポンプを前記被固定物に固定する流体ポンプ固定工程と、
前記吸入口または吐出口のいずれかに流体を供給することにより前記本体の内部に前記流体を充填する流体充填工程と、
前記本体の内部に前記流体を充填した状態で前記吸入口および吐出口を閉塞する閉塞工程と、
前記伝達部材を前記ポンプシャフトに相対回転不能に嵌装する嵌装工程と、
を具備する流体ポンプ組み付け方法。
【請求項5】
吸入口および吐出口が形成された本体、前記本体に回転可能に軸支されるポンプシャフトおよび前記本体と前記ポンプシャフトとの間に配置されるシール部材を具備し、前記ポンプシャフトが回転することにより前記吸入口から吸入したオイルを前記吐出口から吐出して圧送するとともに前記吸入口から吸入したオイルの圧力により前記シール部材が弾性変形して前記本体および前記ポンプシャフトに密着する流体ポンプ、および前記ポンプシャフトに回転駆動力を伝達する伝達部材を被固定物に組み付ける流体ポンプ組み付け方法であって、
前記流体ポンプを前記被固定物に固定する流体ポンプ固定工程と、
前記吸入口または吐出口のいずれかに流体を供給することにより前記流体ポンプの本体の内部に前記流体を充填する流体充填工程と、
前記本体の内部に充填された流体が前記本体の外部に移動しない状態で当該流体に圧力を付与する圧力付与工程と、
前記伝達部材を前記ポンプシャフトに相対回転不能に嵌装する嵌装工程と、
を具備する流体ポンプ組み付け方法。
【請求項6】
吸入口および吐出口が形成された本体および前記本体に回転可能に軸支されたポンプシャフトを具備し、前記ポンプシャフトが回転することにより前記吸入口から吸入したオイルを前記吐出口から吐出して圧送する流体ポンプ、および前記ポンプシャフトに回転駆動力を伝達する伝達部材を被固定物に組み付ける流体ポンプ組み付け方法であって、
前記流体ポンプを前記被固定物に固定する流体ポンプ固定工程と、
前記吸入口または吐出口のいずれかに流体を供給することにより前記ポンプシャフトを回転させ、回転している前記ポンプシャフトに前記伝達部材を押しつけることにより前記伝達部材を前記ポンプシャフトに相対回転不能に嵌装する嵌装工程と、
を具備する流体ポンプ組み付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−287475(P2009−287475A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141525(P2008−141525)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】