説明

流体供給装置

【課題】2種類の流体を貯留した第1及び第2貯留タンクを取り違えることなく、対応した供給経路に確実に取り付けるようにする。
【解決手段】第1貯留タンク550のタンク本体551を、第2貯留タンク580のタンク本体581よりも大きくまたは小さくし、第2貯留タンク580の挿入部582を、第1貯留タンク550の挿入部552よりも小さくまたは大きくし、第1及び第2受け体560,590の上側受け部561,591及び下側受け部562,592を、各貯留タンク550,580のタンク本体551,581及び挿入部552,582の大きさに対応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二種類の流体をそれぞれ供給する流体供給装置であって、特に、次亜塩素酸塩水溶液と塩酸水溶液を混合して、食品等の殺菌に用いられる弱酸性塩素水を製造する弱酸性塩素水製造装置に適用される2流体混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、食品等の殺菌対象物を殺菌する殺菌剤としては、次亜塩素酸ナトリウム水溶液といった次亜塩素酸塩水溶液が一般的に使用されている。この次亜塩素酸塩水溶液は、水素イオン指数(以下「pH」という)が比較的高く(例えばpH8以上)、その状態で使用される場合が多いが、pHが高いと、遊離塩素として次亜塩素酸イオンの存在率が高くなり、この場合の殺菌力は、比較的弱い。
【0003】
そのため、次亜塩素酸塩水溶液に、より強い殺菌力を発揮させるには、pHを低くして、次亜塩素酸の存在率を高めることが望ましいが、このpHが低過ぎると(例えばpH4以下の場合)、有毒な塩素ガスが多量に発生するため、好ましくない。
【0004】
したがって、塩素ガスの発生を抑制しながらも、高い殺菌力を発揮させるには、次亜塩素酸塩水溶液のpHを6程度の弱酸性の状態になるように調節するのが望ましい。例えば、この次亜塩素酸塩水溶液のpHの調節には、塩酸水溶液が用いられる。次亜塩素酸塩水溶液に塩酸水溶液を混合してpHを調節するには、希釈水を供給する供給経路に次亜塩素酸塩水溶液と塩酸水溶液を混合してスタティックミキサーで混合・希釈する手法が一般的である。このようにすることで、所定のpHに調整された、殺菌効果の高い弱酸性塩素水が生成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、希釈水の供給経路に次亜塩素酸塩水溶液と塩酸水溶液を注入して混合・希釈させた場合、局部的に濃度の高い次亜塩素酸塩水溶液と濃度の高い塩酸水溶液とが接触し、これによって、有毒な塩素ガスが発生するおそれがある。したがって、次亜塩素酸塩水溶液と塩酸水溶液を段階的に希釈することにより、塩素ガスの発生を抑制することが必要になるが、その際に、塩酸水溶液を貯留する第1貯留タンクと、次亜塩素酸塩水溶液を貯留する第2貯留タンクとを取り違えることなく、各溶液を供給する供給経路に確実に取り付けることが肝要になる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、二種類の流体を貯留する第1及び第2タンクを取り違えることなく、対応した供給経路に確実に取り付けるようにした流体供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、タンク本体551,581、該タンク本体551,581の底部の流出孔552a,582aに設けられる開閉弁553,583、及び、該開閉弁553,583を囲むように、タンク本体551,581の底部に形成される挿入部552,582を有し、二種類の流体が個別に貯留される第1及び第2貯留タンク550,580と、タンク本体551,581が挿脱される上側受け部561,591、挿入部552,582が挿脱される下側受け部562,592、及び、開閉弁553,583を押し開けるように、下側受け部562,592内に設けられる突起563,593を有する第1及び第2受け体560,590と、該各受け体560,590に取り付けられた貯留タンク550,580の流体を流出孔552a,582aを通って下流側に流通させるための第1及び第2供給経路3,5とを備えた流体供給装置であって、前記第1貯留タンク550は、第2貯留タンク580のタンク本体581とはその外形が異なるタンク本体551を有すると共に、第2貯留タンク580の挿入部582とはその外形が異なる挿入部552を有し、前記各受け体560,590は、各貯留タンク550,580のタンク本体551,581及び挿入部552,582の外形に対応する上側受け部561,591及び下側受け部562,592を有することを特徴とする。
【0008】
この場合、第1貯留タンク550のタンク本体551の外形を、第2貯留タンク580のタンク本体581に対して異なるようにしたので、タンク本体551,581の取り違えを防止できるようになる。さらに、第1貯留タンク550の挿入部552の外形を、第2貯留タンク580の挿入部582に対して異なるようにしたので、タンク本体551,581を万が一取り違えたとしても、受け体560,590に挿入できないようになっている。即ち、二重の防止構造となっているので、タンク本体551,581を取り違えることなく確実に受け体560,590に挿入できるようになる。なお、ここでいう「外形」とは、大きさ及び形状の少なくとも一方をいう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1貯留タンクのタンク本体の外形を、第2貯留タンクのタンク本体に対して異なるようにすると共に、第1受け体に挿入される第1貯留タンクの挿入部の外形を、第2貯留タンクの挿入部に対して異なるようにして、さらに、各受け体の上側受け部及び下側受け部を、各貯留タンクのタンク本体及び挿入部の外形に対応するようにしたので、タンク本体を取り違えることを防止できると共に、対応した受け体に確実に挿入することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る弱酸性塩素水製造装置のフロー図。
【図2】弱酸性塩素水製造装置の要部の拡大図。
【図3】塩酸水溶液を貯留する第1貯留タンクを示す拡大図。
【図4】次亜塩素酸塩水溶液を貯留する第2貯留タンクを示す拡大図。
【図5】第1貯留タンクを、第1受け体を介して第1供給容器に取り付けた状態を示す拡大図。
【図6】第2貯留タンクを、第2受け体を介して第2供給容器に取り付けた状態を示す拡大図。
【図7】(a),(b)は、第1貯留タンクの変形例で、断面が四角形の第1貯留タンクを示す正面図及び平面図。
【図8】(a),(b)は、第2貯留タンクの変形例で、断面が円形の第2貯留タンクを示す正面図及び平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る流体供給装置につき、一実施形態として、二流体混合装置の一態様である弱酸性塩素水製造装置を例にとって図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1、図2に示す弱酸性塩素水製造装置1は、次亜塩素酸塩水溶液、塩酸水溶液を希釈水で希釈し、希釈された次亜塩素酸塩水溶液と塩酸水溶液を混合・希釈させて所定のpHの弱酸性塩素水を製造するものである。本実施形態では、次亜塩素酸塩水溶液として所定濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液が用いられる。次亜塩素酸塩水溶液のpH調節剤として用いられる塩酸水溶液の原液には、所定の重量パーセント濃度のものが用いられる。この塩酸水溶液は、有機物の影響を受けない点で特に有用である。なお、本実施形態において、「弱酸性」とはpH5〜7の範囲をいう(pH7は厳密に言えば、中性だが、ここでは「弱酸性」として取り扱うこととする)。
【0013】
弱酸性塩素水製造装置1は、希釈水を供給する主供給経路2と、塩酸水溶液を希釈する希釈水が供給される第1供給経路3と、第1供給経路3に塩酸水溶液を供給する供給装置(以下「第1供給装置」という)4と、次亜塩素酸塩水溶液を希釈する希釈水が供給される第2供給経路5と、第2供給経路5に次亜塩素酸塩水溶液を供給する供給装置(以下「第2供給装置」という)6と、第1供給経路3と第2供給経路5を合流させるとともに、第1供給経路3で希釈された塩酸水溶液と第2供給経路5で希釈された次亜塩素酸塩水溶液とを混合させて希釈することにより、所定の水素イオン指数の弱酸性塩素水を生成する第3供給経路7と、第1供給装置4、第2供給装置6を制御する制御装置8等を備えている。
【0014】
主供給経路2には、送水ポンプ21、流量調整弁(例えばニードル弁)22、流量計23、圧力計24が設けられており、希釈水は送水ポンプ21によって主供給経路2の下流に送水され、その希釈水の流量、圧力を、流量計23、圧力計24で測定できるようになっている。主供給経路2の下流側には、第1供給経路3と第2供給経路5が分岐して設けられている。
【0015】
第1供給経路3には、第1供給装置4から供給される塩酸水溶液を注入するための第1注入口31と、第1供給装置4から供給された塩酸水溶液を希釈水と混合して希釈する第1混合希釈部(リアクションタンク)32と、第1供給経路3を流れる塩酸水溶液(希釈水を含む)の流量を調整する第1流量調整弁(例えばニードル弁)33が設けられている。
【0016】
第1混合希釈部32は、その内径が第1供給経路3の内径よりも大きくなっており、その中途部に複数の貫通孔34aを有する板部材(邪魔板)34が設けられている。これにより、第1混合希釈部32の板部材34よりも上流側の部分には、第1混合希釈部32内に流入した塩酸水溶液と希釈水に対する流量抵抗を生じさせて、塩酸水溶液と希釈水とを混合させる領域(以下「第1反応領域」という)35が形成される。
【0017】
また、第1混合希釈部32は、板部材34より下流側の部分に、板部材34の貫通孔34aを通過して拡散した塩酸水溶液と希釈水をさらに均一に希釈させる領域(以下「第1安定領域」という)36が形成されている。第1供給経路3に供給された希釈水と塩酸水溶液は、板部材34による流量抵抗によって第1反応領域35で所定時間混合され、板部材34の貫通孔34aを通過することによって、第1安定領域36内に拡散し、この第1安定領域36を通過することによって均一に希釈され、所定濃度に希釈された塩酸水溶液となる。
【0018】
第1流量調整弁33は、第1混合希釈部32の下流側に設けられており、この第1流量調整弁33を操作することにより、第1混合希釈部32内の圧力を調整するとともに、第1混合希釈部32によって希釈された塩酸水溶液、または、第1混合希釈部32に流入する前の希釈水の流量を調節できるようになっている。
【0019】
第2供給経路5には、第2供給装置6から供給される次亜塩素酸塩水溶液を注入する第2注入口41と、第2供給装置6から供給された次亜塩素酸塩水溶液と希釈水とを混合して希釈する第2混合希釈部(リアクションタンク)42と、第2供給装置6を流れる次亜塩素酸塩水溶液(希釈水を含む)の流量を調整する第2流量調整弁(例えばニードル弁)43が設けられている。
【0020】
第2混合希釈部42は、第1混合希釈部32と同様に、その内径が第2供給経路5の内径よりも大きくなっており、その中途部に複数の貫通孔44aを有する板部材(邪魔板)44が設けられている。これにより、第2混合希釈部42の板部材44よりも上流側の部分には、第2混合希釈部42内に流入した次亜塩素酸塩水溶液と希釈水に対する流量抵抗を生じさせて、塩酸水溶液と希釈水とを混合させる領域(以下「第2反応領域」という)45が形成される。
【0021】
また、第2混合希釈部42は、板部材44より下流側の部分に、板部材44の貫通孔44aを通過して拡散した塩酸水溶液と希釈水をさらに均一に混合させる領域(以下「第2安定領域」という)46が形成されている。第2供給経路5に供給された希釈水と塩酸水溶液は、板部材44による流量抵抗によって第2反応領域45で所定時間混合され、板部材44の貫通孔44aを通過することによって、第2安定領域46内に拡散し、この第2安定領域46を通過することによって、均一に希釈されて所定濃度に希釈された次亜塩素酸塩水溶液となる。
【0022】
第2流量調整弁43は、第2混合希釈部42の下流側に設けられており、この第2流量調整弁43を操作することにより、第2混合希釈部42の内部圧力を調節するとともに、第2混合希釈部42によって希釈された次亜塩素酸塩水溶液、または、第2混合希釈部42に流入する前の稀釈水の流量を調節できるようになっている。
【0023】
第1供給経路3と第2供給経路5の間には、差圧計51が設けられている。この差圧計51は、第1供給経路3の第1注入口31よりも上流側の位置と、第2供給経路5の第2注入口41よりも上流側の位置との間に設けられており、この位置を流れる希釈水の圧力の差を測定するものである。
【0024】
第1供給装置4は、塩酸水溶液を貯留する第1貯留部55と、この第1貯留部55に貯留された塩酸水溶液を第1供給経路3に送る第1注入ポンプ56を備える。また、第2供給装置6は、次亜塩素酸塩水溶液を貯留する第2貯留部58と、この第2貯留部58に貯留された次亜塩素酸塩水溶液を第2供給経路5に送る第2注入ポンプ59を備える。
【0025】
ここで、第1及び第2貯留部55,58の構成について図3〜図6を参照して詳細に説明する。第1貯留部55は、図3及び図5に示すように、所要の薬液、即ち塩酸水溶液が貯留される第1貯留タンク550と、該第1貯留タンク550を着脱自在に受ける第1受け体560と、該第1受け体560が着脱自在に装着される共に、第1貯留タンク550の塩酸水溶液を受容する第1供給容器570とで構成されている。
【0026】
第1貯留タンク550は、塩酸水溶液を収容するためのタンク本体551と、該タンク本体551の底部開口から外方に延出して形成される環状の雄ねじ551aと、該雄ねじ551aに螺着する雌ねじからなる挿入部としての蓋体552と、該蓋体552の中央に形成される流出孔552aと、該流出孔552aに設けられる開閉弁553と、蓋体552の底部外面、即ち該流出孔552aの周縁部の外面に形成される環状の口部554と、蓋体552の底部内面、即ち流出孔552aの周縁部の内面に、口部554と同心状に形成された、後述する開閉弁553の環状の弁座553cと、タンク本体551の上部に、両側に跨るように設けられた取手555とを備えている。そして、蓋体(以下、挿入部という)552の外周面が開閉弁553の外側を囲むように位置し、蓋体552よりも口部554の方が外方に突出している。
【0027】
開閉弁553は、流出孔552aに挿通されると共に、往復動自在に設けられる弁棒553aと、該弁棒553aの先端部側に嵌挿され、弁棒553aを出方向に付勢するバネ553bと、弁棒553aの基端部に固着され、弁座553cに接離するフッ素ゴムで構成されるパッキン553dとを有している。
【0028】
第1受け体560は、有底筒状を呈しており、タンク本体551の外径に対応するように、内径の大きさがそれぞれ設定されている。具体的には、後述する、外径の大きいタンク本体581に合わせた内径の第2受け体590と同様の受け体560を使用しており、外径の小さいタンク本体551が挿脱される第1受け体560には、環状の調整部材561aが挿入されて、タンク本体551の外径に合わせて内径が調整されている。また、第1受け体560の上側部の側壁は、タンク本体551を受ける上側受け部561となっている。この上側受け部561の開口端部は、第1供給容器570の開口端部よりも突出しており、タンク本体551を充分に支持できる高さを有している。また、第1受け体560の側壁の下部及び底壁の周縁部に環状の下側受け部562が設けられている。この下側受け部562は、タンク本体551の挿入部552の高さよりも大きく、且つ、口部554の開口端面が底部に当接する高さになるように設定されている。即ち、タンク本体551が直立した状態で挿入支持されるように構成されている。また、底壁の中央部に、開閉弁553の弁棒553aを押し開くための柱状の突起563が直立して設けられている。この突起563は、弁棒553aの先端部を流出孔552aの近傍位置にまで押し上げて、パッキン553dの周縁部を環状の弁座553cから離脱させる高さを有している。また、突起563の周縁部に複数の連通孔564,…が放射状に形成されている。この連通孔564,…は、下側受け部562の内径よりも小さく、流出孔552a、口部554の内部空間、挿入部552と受け体560の底部との空間、第1供給容器570の下側部の空間に連通している。
【0029】
第1供給容器570は、上側部に、第1受け体560が装着される環状の装着部571と、下側部に、側壁の下側部と底壁とで形成される空間(受容部)572とを備えている。そして、第1供給容器570の底壁は、中央部に向かうにしたがって緩やかに傾斜するテーパ面となっている。また、底部中央に形成された吐出孔573に継ぎ手574を介してポンプ56が接続され、該ポンプ56が第1供給経路3に接続されている。つまり、第1供給容器570に受容された塩酸水溶液は、第1供給経路3に吐出される。
【0030】
第2貯留部58は、前記第1貯留部55の構成と略同様であり、異なる点のみを図4及び図6を参照して説明する。第2貯留タンク580のタンク本体581の外径が、第1貯留タンク550のタンク本体551よりも大きく、タンク本体581の挿入部としての蓋体582の外径が、第1貯留タンク550の挿入部552よりも小さくなっている。また、第2受け体590の上側受け部591に、第2タンク本体581が直接挿入され、調整部材が不要になっている。第2受け体590の下側受け部592の内径、及び連通孔594の開口面積が、第2タンク本体581の蓋体(以下、挿入部という)582の外径に合わせて小さくなっている。
【0031】
ここで、同様に構成されている各部材の説明は省略するが、第2貯留部58の符号と各部名称を整理しておく。符号580は第2貯留タンク、581はタンク本体、581aは雄ねじ、582は挿入部、582aは流出孔、583は開閉弁、583aは弁棒、583bはバネ、583cは弁座、583dはパッキン、584は口部、585は取手、590は第2受け体、591は上側受け部、592は下側受け部、593は突起、594は連通孔、600は第2供給容器、601は装着部、602は受容部、603は吐出孔、604は継ぎ手である。
【0032】
つぎに、第1及び第2貯留タンク550,580を、第1及び第2供給容器570,600に装着された第1及び第2受け体560,590に挿脱する態様について説明する。まず、各受け体560,590に各貯留タンク550,580が挿入されていない状態において、各貯留タンク550,580の取手555,585を把持して、各受け体560,590の上側受け部561,591に沿って各タンク本体551,581を挿入すると、各タンク本体551,581が直立した状態で挿入されると共に、各タンク本体551,581の挿入部552,582が受け体560,590の下側受け部592の空洞部に挿入される。この際、各タンク本体551,581が各受け体560,590に挿入された状態においては、各タンク本体551,581の上部が各受け体560,590の上面開口部よりも突出する一方、各受け体560,590の突起563,593が弁棒553a,583aをバネ553b、583bに抗して押し上げて、弁座553c,583cからパッキン553d,583dが離脱すると共に、各タンク本体551,581の口部554,584の開口端部が各受け体560,590の底部に当接する。これによって、弁座553c,583cの開口部、流出孔552a,582a、口部554,584の開口部、流出孔552a,582aが連通することになり、その結果として、各タンク本体551,581と各供給容器570,600の下側部とが連通することになる。つまり、第1タンク本体551に貯留されている塩酸水溶液と、第2タンク本体581に貯留されている次亜塩素酸塩水溶液が、第2受け容器600の下側部に受容されることになる。そして、ポンプ56,59の駆動によって、各供給容器570,600に受容された流体が第1及び第2供給経路3,5に供給される。
【0033】
そして、大径のタンク本体581を有する第2貯留タンク580を、第1受け体560に誤って挿入しようとしても、第1受け体560の上側受け部591の開口径が第2タンク本体581の外径よりも小さいため、挿入できない。これと同様に、小径の第1タンク本体551を有する第1貯留タンク550を、第2受け体590に挿入しようとしても、第2タンク本体581の外径と第1受け体560の上側受け部561の開口径との相違により挿入することができない。
【0034】
また、各受け体560,590からタンク本体551,581を引き出すと、タンク本体551,581が受け体560,590の上側受け部561,591に沿って直立した状態で引き出されると共に、突起563,593によって押し開いていた弁棒553a,583aがバネ553b、583bの弾性付勢によって進出方向に付勢されるようになり、パッキン553d,583dが弁座553c,583cに圧接して、弁座553c,583cの開口部が閉塞され、各貯留タンク550,580に貯留された塩酸水溶液及び次亜塩素酸塩水溶液の流出が阻止される。
【0035】
こうすることで、希釈された塩酸水溶液と次亜塩素酸塩水溶液を、後述する下流側の第3供給経路7で混合して、段階的に希釈することができ、濃度の高い次亜塩素酸塩水溶液と、濃度の高い塩酸水溶液とが接触することがなくなり、弱酸性塩素水は、塩素ガスの発生を抑制できるものになる。以下、第3供給経路7について詳細に説明する。
【0036】
第3供給経路7には、流量抵抗を生じさせて、第1混合希釈部32で希釈された塩酸水溶液と第2混合希釈部42で希釈された次亜塩素酸塩水溶液とを混合して希釈することにより、所定のpHの弱酸性塩素水を生成する第3混合希釈部61と、第3混合希釈部61によって生成された弱酸性塩素水の流量を調整する第3流量調整弁(例えばニードル弁)62が設けられている。
【0037】
第3混合希釈部61は、その内径が第3供給経路7の内径よりも大きくなっており、その中途部に複数の貫通孔63aが形成された板部材63が設けられている。これにより、第3混合希釈部61の板部材63よりも上流側の部分には、第3混合希釈部61内に流入した次亜塩素酸塩水溶液と希釈水に対する流量抵抗を生じさせて、塩酸水溶液と希釈水とを混合させる領域(以下「第3反応領域」という)64が形成される。
【0038】
また、第3混合希釈部61は、板部材63より下流側の部分に、板部材63の貫通孔63aを通過して拡散した塩酸水溶液と希釈水をさらに均一に希釈させる領域(以下「第3安定領域」という)65が形成されている。所定濃度に希釈されて第3供給経路7に供給された塩酸水溶液と次亜塩素酸塩水溶液は、板部材63による流量抵抗によって第3反応領域64で所定時間混合され、板部材63の貫通孔63aを通過することによって、第3安定領域65内に拡散し、この第3安定領域65を通過することによって、均一に希釈されて所定のpHに調整された弱酸性塩素水となる。
【0039】
第3流量調整弁62は、第3混合希釈部61の下流側に設けられており、この第3流量調整弁62を操作することにより、第3混合希釈部61の圧力を調整するとともに、第3混合希釈部61で生成された弱酸性塩素水の流量を調整できるようになっている。
【0040】
なお、第1混合希釈部32、第2混合希釈部42、第3混合希釈部61の内部圧力は、第1流量調整弁(圧力調整弁)33、第2流量調整弁(圧力調整弁)43、第3流量調整弁(圧力調整弁)62を操作することにより、いずれも0.2Mpa以上に保たれている。
【0041】
制御装置8は、第1供給装置4の第1注入ポンプ56を制御するコントローラ(以下「第1コントローラ」という)71と、第2供給装置6の第2注入ポンプ59を制御するコントローラ(以下「第2コントローラ」という)72、主供給経路2の流量計23のデータを取り込んで、その値を第2コントローラ72に送信する流量指示計73と、第3供給経路7から供給される弱酸性塩素水の温度を表示する温度指示計74、弱酸性塩素水のpHを表示するpH指示調節計75、弱酸性塩素水の塩素濃度を表示する塩素濃度指示計76、記録計77等を備えている。
【0042】
制御装置8は、予め設定された所定のpHの弱酸性塩素水を製造すべく、第1供給装置4と第2供給装置6を制御する。すなわち、制御装置8は、流量比例制御によって第1供給経路3に供給すべき塩酸水溶液、および第2供給経路5に供給すべき次亜塩素酸塩水溶液の量を決定する。具体的には、制御装置8は、流量計23で測定された希釈水の流量データを流量指示計73で読み取り、第2コントローラ72は、流量指示計73から送られた流量データを基に、この流量データに比例した、第1供給経路3に供給されるべき次亜塩素酸塩水溶液の量を決定する。そして、第2コントローラ72から第2供給装置6の第2注入ポンプ59を作動させて決定された量の次亜塩素酸塩水溶液を第2供給経路5に送る。
【0043】
そして、第1コントローラ71は、第2コントローラ72で決定された次亜塩素酸塩水溶液の量に応じて第1供給経路3に供給されるべき塩酸水溶液の量を決定する。なお、この塩酸水溶液の量は、次亜塩素酸塩水溶液の量に比例するものである。さらに、第1コントローラ71は、第1供給装置4の第1注入ポンプ56を作動させて決定された量の塩酸水溶液を第2供給経路5に送る。以上により、第2供給装置6は、流量計23で測定された希釈水の流量に応じた量の次亜塩素酸塩水溶液を供給するように制御され、第1供給装置4は、第2供給装置6から供給される次亜塩素酸塩水溶液の量に応じた量の塩酸水溶液を供給するように制御される。
【0044】
第3供給経路7の第3混合希釈部61の下流側には、温度センサ80、pHセンサ81、塩素濃度センサ82が設けられており、制御装置8の温度指示計74は、温度センサ80によって測定された温度データを指示し、pH指示調節計75は、pHセンサ81によって測定された弱酸性塩素水のpH値を指示し、塩素濃度指示計76は、塩素濃度センサ82によって測定された弱酸性塩素水の塩素濃度を指示するようになっている。記録計77は、温度指示計74、pH指示調節計75、塩素濃度指示計76で指示された値を記録するようになっている。
【0045】
以下、弱酸性塩素水製造装置1を使用して弱酸性塩素水を製造する方法を説明する。
【0046】
弱酸性塩素水製造装置1は、送水ポンプ21を作動させることにより、希釈水を主供給経路2から第1供給経路3、第2供給経路5へと送水する。主供給経路2を流れる希釈水は第1供給経路3と第2供給経路5とに分流(分岐)され、それぞれの供給経路を流れる。
【0047】
第2供給装置6は、制御装置8に制御されて、必要な次亜塩素酸塩水溶液を、第2注入口41を介して第2供給経路5に供給する。第1供給装置4は、制御装置8に制御されて、第2供給装置6から供給される次亜塩素酸塩水溶液の量に応じた塩酸水溶液を、第1注入口31を介して第1供給経路3に供給する。
【0048】
第1供給経路3に供給された塩酸水溶液は希釈水とともに第1混合希釈部32に流入する。そして、第1混合希釈部32で塩酸水溶液と希釈水とが混合され、均一に希釈化された所定濃度の塩酸水溶液が生成される。第2供給経路5に供給された次亜塩素酸塩水溶液は、希釈水とともに第2混合希釈部42に流入する。そして第2混合希釈部42で次亜塩素酸塩水溶液と希釈水が混合され、均一に希釈化された所定濃度の次亜塩素酸塩水溶液が生成される。
【0049】
第1供給経路3で希釈された塩酸水溶液と、第2供給経路5で希釈された次亜塩素酸塩水溶液は、第3供給経路7で合流するとともに第3混合希釈部61に流入する。次亜塩素酸塩水溶液と塩酸水溶液は、第3混合希釈部61で均一に混合して希釈化され、所定のpHの弱酸性塩素水となる。この弱酸性塩素水は、第3供給経路7から、例えば食品等の洗浄槽等の供給対象に供給される。
【0050】
上記構成の弱酸性塩素水製造装置1によれば、第1供給経路3の第1混合希釈部32によって塩酸水溶液と希釈水を混合して均一に希釈するとともに、第2供給経路5の第2混合希釈部42によって次亜塩素酸塩水溶液と希釈水を混合して均一に希釈して、希釈された塩酸水溶液と次亜塩素酸塩水溶液を第3供給経路7の第3混合希釈部61で混合して希釈することによって、塩酸水溶液と次亜塩素酸塩水溶液は段階的に希釈され、均一でムラのない弱酸性塩素水として生成される。これにより、弱酸性塩素水は、局部的に濃度の高い次亜塩素酸塩水溶液と濃度の高い塩酸水溶液とが接触することがなく、したがって、塩素ガスの発生を抑制できるものになる。
【0051】
また、第1注入口31、第2注入口41よりも上流側で第1供給経路3と第2供給経路5の間に差圧計51を設けることによって、第1供給経路3と第2供給経路5の圧力差が生じた場合に、第1供給経路3の第1流量調整弁33又は第2供給経路5の第2流量調整弁43を操作することによって、圧力差をなくすことで、第1供給経路3と第2供給経路5を流れる希釈水の流量を均等にできる。
【0052】
また、第1混合希釈部32の中途部に板部材(邪魔板)34を設けることによって、この板部材34の上流側の第1反応領域35に流量抵抗(圧力抵抗)を生じさせ、第1反応領域35に流入した塩酸水溶液と希釈水とを一定時間混合させ、さらに、これらを板部材34の貫通孔34aを通過させて第1安定領域36に拡散させることによって、塩酸水溶液は、ムラなく均一に希釈されることになる。
【0053】
同様に、第2混合希釈部42の中途部に板部材(邪魔板)44を設けることによって、この板部材44の上流側の第2反応領域45に流量抵抗(圧力抵抗)を生じさせ、第2反応領域45に流入した次亜塩素酸塩水溶液と希釈水とを一定時間混合させ、さらに、これらを板部材44の貫通孔44aを通過させて第2安定領域46に拡散させることによって、次亜塩素酸塩水溶液は、ムラなく均一に希釈されることになる。
【0054】
同様に、第3混合希釈部61の中途部に板部材(邪魔板)63を設けることによって、この板部材63の上流側の第3反応領域64に流量抵抗を生じさせ、第3反応領域64に流入した塩酸水溶液と次亜塩素酸塩水溶液とを一定時間混合させ、さらに、これらを板部材63の貫通孔63aを通過させて第3安定領域65に拡散させることによって、塩酸水溶液と次亜塩素酸塩水溶液はムラなく均一に混合・希釈され、塩素ガスの発生しにくい弱酸性塩素水が生成される。
【0055】
また、主供給経路2に流量計23を設け、制御装置8によって、流量計23で測定された希釈水の量に応じた(比例した)量の次亜塩素酸塩水溶液を供給するように第2供給装置6を制御するとともに、第2供給装置6から供給される次亜塩素酸塩水溶液の量に応じた(比例した)量の塩酸水溶液を供給するように第1供給装置4を制御することにより、所定の濃度でかつ所定のpHの弱酸性塩素水を確実に生成できる。
【0056】
なお、本発明は上記の実施形態に限らず、種々の変更・変形が可能である。例えば、前記実施形態の場合、タンク本体551,581の形状については特に限定していないが、タンク本体5510の形状を、断面が非円形(図7(a),(b)参照)または円形とし、タンク本体5810の形状を、断面が円形(図8(a),(b)参照)または非円形とするようにしてもよい。要は、タンク本体551,581の外形、即ち大きさ及び形状の少なくとも一方が異なるようにすればよい。但し、図7及び図8において、開閉弁5530,5830の構成は図3及び図4と同一である。また、挿入部552,582の形状を、断面が非円形または円形とするようにしてもよい。この場合も、タンク本体551,581と同様に、外形、即ち大きさ及び形状の少なくとも一方が異なるようにすればよい。また、タンク本体551,581及び挿入部552,582の外面に、凹凸嵌合させるための凹部又は凸部を形成し、その数によって、第1及び第2貯留タンク550,580の取り違えを防止するようにしてもよい。
【0057】
また、前記実施形態の場合、挿入部552,582と流出孔552a,582aとの位置をタンク本体551,581の底部中央に配置するようにしたが、挿入部552,582を両側に、流出孔552a,582aを中央にそれぞれ異なる位置に配置するようにしてもよい。
【0058】
また、前記実施形態の場合、2流体混合装置を例にとって説明したが、それぞれの流体を個別に供給する装置にも適用できることは言うまでもない。
【0059】
また、前記実施形態の場合、第1受け体560の上側受け部561に調整部材561aを設けるようにしたが、第1貯留タンク550のタンク本体551の外径に対応した受け体を使用するようにしてもよい。つまり、第1及び第2受け体560,590を個別に作製するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…弱酸性塩素水製造装置、2…主供給経路、3…第1供給経路、4…第1供給装置、5…第2供給経路、6…第2供給装置、7…第3供給経路、8…制御装置、31…第1注入口、32…第1混合希釈部、33…第1流量調整弁、34…板部材、34a…貫通孔、41…第2注入口、42…第2混合希釈部、43…第2流量調整弁、44…板部材、55,58…第1及び第2貯留部、56,59…注入ポンプ、550,580、5500,5800…第1及び第2貯留タンク、551,581、5510,5810…タンク本体、551a,581a…雄ねじ、552,582、5520,5820…蓋体(挿入部)、552a,582a、5520a,5820a…流出孔、553,583、5530,5830…開閉弁、553a,583a、5530a,5830a…弁棒、553b,583b、5530b,5830b…バネ、553c,583c、5530c,5830c…弁座、553d,583d、5530d,5830d…パッキン、554,584、5540,5840…口部、555,585、5550,5850…取手、560,590…第1及び第2受け体、561,591…上側受け部、561a…調整部材、562,592…下側受け部、563,593…突起、564,594…連通孔、570,600…第1及び第2供給容器、571,601…装着部、572,602…受容部、573,603…吐出孔、574,604…継ぎ手、61…第3混合希釈部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク本体(551,581)、該タンク本体(551,581)の底部の流出孔(552a,582a)に設けられる開閉弁(553,583)、及び、該開閉弁(553,583)を囲むように、タンク本体(551,581)の底部に形成される挿入部(552,582)を有し、二種類の流体が個別に貯留される第1及び第2貯留タンク(550,580)と、タンク本体(551,581)が挿脱される上側受け部(561,591)、挿入部(552,582)が挿脱される下側受け部(562,592)、及び、開閉弁(553,583)を押し開けるように、下側受け部(562,592)内に設けられる突起(563,593)を有する第1及び第2受け体(560,590)と、該各受け体(560,590)に取り付けられた貯留タンク(550,580)の流体を流出孔(552a,582a)を通って下流側に流通させるための第1及び第2供給経路(3,5)とを備えた流体供給装置であって、
前記第1貯留タンク(550)は、第2貯留タンク(580)のタンク本体(581)とはその外形が異なるタンク本体(551)を有すると共に、第2貯留タンク(580)の挿入部(582)とはその外形が異なる挿入部(552)を有し、
前記各受け体(560,590)は、各貯留タンク(550,580)のタンク本体(551,581)及び挿入部(552,582)の外形に対応する上側受け部(561,591)及び下側受け部(562,592)を有することを特徴とする流体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−45823(P2011−45823A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195598(P2009−195598)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000229760)株式会社タクミナ (25)
【Fターム(参考)】