流体吐出装置、画像形成方法、及び、画像形成プログラム
【課題】記録媒体に形成される画像の記録開始領域における流体の濃度むらを低減させることを課題とする。
【解決手段】切断位置(ST1)で切断される記録媒体SLに画像を形成する流体吐出装置に、複数のノズル25を並べたヘッド部HE1と、前記ヘッド部HE1と前記記録媒体SLとを前記複数のノズル25が並ぶ所定の方向(Y)へ相対移動させる移動手段U1と、記録データDA1に基づいて形成される本画像IM1と、前記記録データDA1に基づかないで形成される付加画像IM2とを前記記録媒体SLに形成する画像形成手段U2とを設ける。前記画像形成手段U2は、前記記録媒体SLに形成する前記付加画像IM2の位置を、前記所定の方向(Y)において前記本画像IM1よりも下流側の位置であって、前記切断位置(ST1)でない位置にする。
【解決手段】切断位置(ST1)で切断される記録媒体SLに画像を形成する流体吐出装置に、複数のノズル25を並べたヘッド部HE1と、前記ヘッド部HE1と前記記録媒体SLとを前記複数のノズル25が並ぶ所定の方向(Y)へ相対移動させる移動手段U1と、記録データDA1に基づいて形成される本画像IM1と、前記記録データDA1に基づかないで形成される付加画像IM2とを前記記録媒体SLに形成する画像形成手段U2とを設ける。前記画像形成手段U2は、前記記録媒体SLに形成する前記付加画像IM2の位置を、前記所定の方向(Y)において前記本画像IM1よりも下流側の位置であって、前記切断位置(ST1)でない位置にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のノズルを並べたヘッド部と記録媒体とを相対移動させる流体吐出装置のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、上記流体吐出装置として、記録媒体を紙送り方向へ送りながら記録データに従ってインクジェット式記録ヘッドからインク滴(流体)を吐出して印刷を行うインクジェット式記録装置が知られている。インクジェット式記録ヘッドは、圧力発生室で加圧したインクをノズル開口から吐出する関係上、ノズル開口からの溶媒の蒸発に起因するインク粘度上昇やインク固化、ノズルへの塵埃付着や気泡混入、等によりノズルに目詰まりが生じる可能性がある。このため、インクジェット式記録装置は、非印刷領域において記録ヘッドのノズル形成面をキャッピング手段で封止し、このキャッピング手段内に吸引ポンプでインクを吸引排出し、記録ヘッドのノズル形成面をワイピング手段で払拭(ワイピング)し清掃している。また、インクジェット式記録装置は、ノズル開口から非印刷領域(フラッシング領域)にインクを吐出するフラッシング(空吐出動作)も行っている。
【0003】
また、特許文献1記載の液滴吐出装置は、色変換部で色変換され画像処理部でハーフトーン処理された各色の画像データに対して、休止期間が有るノズル内のインクの増粘による吐出不良を防止するための予備吐出を吐出させる画素を設定し、その画素の画素値を書き換えている。予備吐出を吐出させる画素は、休止期間内に間欠的に単発又は数発のインク滴が予備吐出として吐出されるように設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−80740号公報
【特許文献2】特開2009−77068号公報
【特許文献3】特開2003−274149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
記録ヘッドに対して紙送り方向に複数のノズルが並べられている場合、記録媒体に形成される画像の記録開始部に記録ヘッドがあると、形成画像の部分にあるノズルはインク吐出に使用される。一方、形成画像から外れた部分にあるノズルは、インク吐出に使用されない。インク吐出に使われなかったノズルは、インク吐出に使われたノズルと比べてインクが増粘すると推測される。従って、インク吐出に用いられなかったノズルは、紙送りにより形成画像の部分となると、増粘した濃いインクを形成画像の記録開始領域に吐出することになる。実際、記録媒体に形成される画像の記録開始領域が濃くなるという濃度むらが生じている。
【0006】
特許文献1記載の液滴吐出装置は、画像の記録開始領域における濃度むらが考慮されていない。また、特許文献1には、予備吐出を記録媒体上に記録するため予備吐出を視認されず画質の低下に影響を与えないとされる単発又は数発に限定することが示されている。しかし、画像中に予備吐出を記録することになるため、画像に粒状感が現れて画質が低下する懸念がある。また、記録ヘッドに高密度で多数のノズルが設けられる近年、ごく僅かな予備吐出では濃度むらが視認される程度には低減しない。
【0007】
なお、特許文献2,3記載の技術は、フチ無し印刷に関するものである。
特許文献2記載の画像処理装置は、記録媒体のサイズ及びはみだし量と、入力された画像のサイズとを用いて、上下方向の変倍率及び左右方向の変倍率を算出し、それぞれの変倍率に基づいて、入力された画像を上下方向及び左右方向に変倍処理し、出力画像を生成する。この出力画像の記録開始領域における濃度むらは、考慮されていない。
特許文献3記載の画像処理装置は、トリミング指定された領域より少し大きめの領域が原画像からはみ出しているか否かを判定し、はみ出している場合は、その部分を原画像から補間して補間領域のデータと合成したプリントデータを作成し、プリンターへ送信する。すなわち、補間領域のデータは、原画像のデータに依存している。この補間領域を含めた画像の記録開始領域における濃度むらは、考慮されていない。
【0008】
以上を鑑み、本発明の目的の一つは、記録媒体に形成される画像の記録開始領域における流体の濃度むらを低減させることにある。
【課題を解決するための手段及びその作用・効果】
【0009】
上記目的の一つを達成するため、本発明は、切断位置で切断される記録媒体に画像を形成する流体吐出装置であって、
複数のノズルを並べたヘッド部と、
前記ヘッド部と前記記録媒体とを前記複数のノズルが並ぶ所定の方向へ相対移動させる移動手段と、
記録データに基づいて形成される本画像と、前記記録データに基づかないで形成される付加画像とを前記記録媒体に形成する画像形成手段とを備え、
前記画像形成手段は、前記記録媒体に形成する前記付加画像の位置を、前記所定の方向において前記本画像よりも下流側の位置であって、前記切断位置でない位置にすることを態様の一つとしている。
【0010】
上記態様は、本画像の下流側の位置で付加画像を形成するためにノズルから流体が吐出するので、ノズル内の流体が増粘していても、該流体は、付加画像の形成に使用され、本画像の形成に使用されない。すなわち、付加画像を形成するときにフラッシングと同様の作用が働くので、上記態様は、記録媒体に形成される本画像の記録開始領域における流体の濃度むらを低減させることができる。
【0011】
ここで、上記流体吐出装置は、例えば、プリンター単体に設けられてもよいし、プリンターと外部装置とに跨って設けられてもよい。
ヘッド部と記録媒体とを相対移動させることは、ヘッド部と記録媒体の少なくとも一方を移動させることを意味し、不動のヘッド部に対して記録媒体を移動させること、不動の記録媒体に対してヘッド部を移動させること、ヘッド部と記録媒体の両方を移動させること、のいずれも含まれる。
上記流体は、記録媒体に画像を形成することができるものであればよく、液体や粉体等が含まれ、より具体的にはインクやトナー等が含まれる。
上記記録媒体に形成される画像は、流体の吐出によって記録媒体に形成されるものであればよく、記録媒体への流体の付着物、記録媒体に形成された凹凸、等が含まれる。また、上記記録媒体に形成される本画像は、ひとまとまりの記録データで一つのみ形成されても複数形成されてもよい。
【0012】
上記切断位置は、本画像の境界であってもよいし、本画像の境界からずれた部位でもよい。
上記記録データは、余白や所定パターン等のフチのデータが無いデータでもよいし、画像部分の周囲に設けられる余白や所定パターン等のフチのデータを有するデータでもよい。
上記付加画像には、複数色の流体を混在させて無彩色にしたグレイ画像(混合色画像)、造粘し易い色を多く使用して有彩色にした混合色画像、単色画像、等が含まれる。
【0013】
ところで、前記付加画像の前記所定の方向の長さは、前記本画像を形成するための前記相対移動の1回の移動量以上でもよい。すると、複数のノズルのうち相対移動時に所定の方向において本画像の記録開始部の前の位置から本画像の位置となるノズルから付加画像形成のために流体が吐出される。従って、この態様は、本画像の記録開始領域における流体の濃度むらをさらに低減させることができる。
【0014】
前記付加画像の前記所定の方向の長さは、前記所定の方向に並べられたノズルの列の長さ以下でもよい。すると、流体の消費量を抑えて効率よく付加画像を形成することが可能になる。
【0015】
前記本画像を形成するための前記相対移動の1回の移動量が前記所定の方向に並べられたノズルの列の長さよりも短くされる場合、前記画像形成手段は、前記付加画像の流体の記録濃度を、前記所定の方向の位置に応じて変えてもよい。
上記の場合、本画像の記録開始領域を形成するための複数のノズルには、送り前に本画像の記録開始領域を形成するために使用されたノズルと使用されなかったノズルとが混在する。従って、上記態様は、流体の消費量を抑えて効率よく付加画像を形成することが可能になる。
【0016】
さらに、前記付加画像を前記送り方向において前記本画像に近い後側領域と前記本画像から遠い前側領域とに分けたときに前記後側領域における流体の記録濃度が前記前側領域における流体の記録濃度よりも高くされてもよい。すると、さらに効率よく付加画像を形成することが可能になる。
【0017】
前記ヘッド部が前記所定の方向と交わる走査方向に走査を繰り返す場合、前記画像形成手段は、前記付加画像の流体の記録濃度を、前記走査方向の位置に応じて変えてもよい。すると、流体の消費量を抑えて効率よく付加画像を形成することが可能になる。
さらに、前記画像形成手段は、前記ヘッド部の1回の走査を前半の走査と後半の走査に分けたときに前記後半の走査における流体の吐出量を前記前半の走査における流体の吐出量よりも多くした前記付加画像を前記記録媒体に形成してもよい。
【0018】
画像を形成した前記記録媒体を排出する側の位置に前記記録媒体を前記所定の方向に送るためのローラーをさらに備える場合、前記画像形成手段は、前記記録媒体における前記付加画像の位置を、前記ローラーと接触しない位置にしてもよい。記録媒体に形成された付加画像の流体がローラーに付着しないので、ローラーを介して付加画像の流体が本画像に混入しない。
【0019】
前記画像形成手段は、前記本画像にフチを追加する場合、前記記録媒体に形成する前記付加画像の位置を、前記所定の方向において前記フチよりも下流側の位置にしてもよい。この態様は、本画像に設けられるフチのデータが記録データに含まれていない場合に本画像の記録開始領域における流体の濃度むらを低減させる好適な構成を提供することができる。
ここで、上記フチには、余白や所定パターン等が含まれる。
【0020】
上述した態様は、画像形成装置、印刷制御装置、印刷装置、例えば画像形成工程といった工程を備える画像形成方法、流体吐出方法、さらに記録工程といった工程を備える記録方法、印刷制御方法、印刷方法、例えば画像形成機能といった機能をコンピューターに実現させる画像形成プログラム、流体吐出プログラム、さらに記録機能といった機能をコンピューターに実現させる記録プログラム、印刷制御プログラム、印刷プログラム、これらのプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な媒体、等に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)プリンター(流体吐出装置)11による画像形成方法の概念を模式的に例示する図、(b)は付加画像IM2のドット配置を模式的に例示する図。
【図2】(a)はフチIM1eを有する本画像IM1に付加画像IM2を付加する様子を模式的に例示する図、(b)は付加画像IM2の送り方向Yの長さを1回の送り量y1にする様子を模式的に例示する図、(c)はバンド送り時に付加画像IM2を付加する様子を模式的に例示する図。
【図3】(a)は一実施形態に係るプリンター11を一部断面状態で模式的に例示する側面図、(b)はプリンター11の要部を模式的に例示する平面図。
【図4】ヘッド部HE1を設けたキャリッジ21の底面を例示する図。
【図5】プリンター11の構成を例示するブロック図。
【図6】印刷処理を例示するフローチャート。
【図7】付加画像IM2の記録濃度を送り方向Yの位置に応じて変える例を模式的に示す図。
【図8】付加画像IM2の記録濃度を走査方向(X)の位置に応じて変える例を模式的に示す図。
【図9】(a)はローラー35b,36bの位置を避けて形成された付加画像IM2を模式的に例示する図、(b)はローラー35b,36bの位置のインク吐出量を所定量以下に制限した付加画像IM2を模式的に例示する図。
【図10】変形例に係る印刷処理を示すフローチャート。
【図11】比較例に係る画像形成方法の概念を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1)画像形成方法の概略:
まず、図1,2,11を参照して本発明の一態様に係る画像形成方法の概略を説明する。
図1(a)に例示するように、インクジェット式のプリンター11に例示される流体吐出装置は、ヘッド部HE1と移動手段U1と画像形成手段U2を備え、切断位置で切断される記録媒体SLに画像を形成する。切断位置は、例えば、記録開始部ST1とされる。
【0023】
ヘッド部HE1は、所定の方向に複数のノズル25が並べられ、これらのノズル25からインク(流体)FL1を吐出可能である。複数のノズル25が並ぶ所定の方向は、例えば、記録媒体SLの送り方向Yとされる。移動手段U1は、ヘッド部HE1と記録媒体SLとを複数のノズル25が並ぶ所定の方向へ相対移動させる。例えば、移動手段U1は、ヘッド部HE1に対して記録媒体SLを送り方向Yへ送る。図1(a)の例では、移動手段U1は、「上流側」(図1(a)の下側)から「下流側」(図1(a)の上側)へ向けて、ヘッド部HE1に対して記録媒体SLを送り方向Yへ送る。変形例として、移動手段U1は、記録媒体SLに対してヘッド部HE1を送り方向Yへ送ってもよい。いずれの送りも、「相対移動」に含まれる。画像形成手段U2は、記録データDA1に基づいて形成される本画像IM1と、記録データDA1に基づかないで形成される付加画像IM2とを記録媒体SLに形成する。このとき、記録媒体SLに形成する付加画像IM2の位置を、所定の方向(Y)において本画像IM1よりも下流側の位置であって、切断位置(ST1)でない位置にする。記録データDA1に従って記録される本画像IM1の記録開始部ST1の前の位置に付加画像IM2を付加するようにノズル25からインクFL1を吐出して付加画像IM2とともに本画像IM1を記録媒体SLに形成する。付加画像IM2は、本画像の記録データDA1を補間して得られるような画像ではなく、記録データDA1に依存しないでノズル25からインクFL1を吐出させる画像である。ここで、移動手段U1は移動工程及び移動機能に対応し、画像形成手段U2は画像形成工程及び画像形成機能に対応している。これらの手段U1,U2は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段により構成されてもよいし、ASIC(Application Specific IC;特定用途向け集積回路)といった集積回路など基本的にハードウェア資源で構成されてもよい。
【0024】
付加画像IM2は、記録データDA1に基づかないで形成される画像である。付加画像IM2は、本画像IM1の記録開始部(切断位置)ST1の前の位置でノズル25からインクFL1を吐出させるための画像が好ましい。付加画像IM2は、図1(b)に例示するように、本画像IM1とは無関係な所定のドットパターンとされる。ここで、図1(b)のk,c,m,yは、それぞれ、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のドットDT1を示している。また、付加画像IM2は、記録媒体に付着したインクFL1が他の場所に転写されたりインクFL1の吸収により記録媒体が波打ったりしないように、本画像IM1とともに所定のインク吐出量(記録濃度)以下とされる。なお、記録媒体が波打つと、記録媒体が記録ヘッドのヘッド面等に接触し、記録画像に擦り傷が生じることがある。
図1(b)の付加画像IM2は、付加画像IM2の全画素に対してk,c,m,yのドットが25%ずつ形成されたグレイ(無彩色)画像とされ、インク吐出量が100%とされていることが示されている。むろん、付加画像は、複数色の流体(FL1)を混在させて無彩色にした混合色画像のみならず、造粘し易い色を多く使用して有彩色にした混合色画像、単色画像、等でもよい。付加画像のインク吐出量は、記録媒体に付着したインクが他の場所に転写されたり記録媒体が波打ったりしない限り1画素に2種類以上のドットを重ねることにより100%よりも大きくしてもよいし、100%よりも小さくされてもよい。
【0025】
図11は、付加画像を形成しないインクジェット式のプリンターで記録媒体SLに本画像IM1を形成する比較例を模式的に示している。
ここで、ヘッド部HE1を構成する記録ヘッド23は、主走査方向Xに主走査を繰り返しながらノズル25からインクを吐出してドットを形成し、記録媒体SLの送り方向Yへの送り(副走査)により順次、送り方向Yにずれてインクのドットを形成する。図11に示す記録ヘッド23は、全ノズル25により形成されるドットの送り方向Yのバンド幅(ノズル列の長さy2)の1/4が送り量y1とされている。パス数は、送り方向Yにおける記録媒体SL上の同じ位置で行う主走査の数を1とした主走査数を意味する。パス数1は、本画像IM1の記録開始部ST1に始まる記録開始領域AR1にドットを形成する1回目の主走査を意味し、複数のノズル25のうち送り方向Y上流側の1/4のノズル25dをインク吐出に使用して送り方向Y下流側の3/4のノズル25a〜25cをインク吐出に使用しない。パス数2は、記録媒体SLに対してさらにy1だけ相対的にずれた領域にドットを形成する2回目の主走査を意味し、上流側の1/2のノズル25c,25dをインク吐出に使用して残りのノズル25a,25bをインク吐出に使用しない。パス数3は、上流側の3/4のノズル25b〜25dをインク吐出に使用して残りのノズル25aをインク吐出に使用しない。パス数4以降は、全てのノズル25a〜25dをインク吐出に使用する。
なお、3パス終了までのようにインク吐出に一部のノズルしか使用しない処理を、上端処理とも呼ぶ。
【0026】
1パス目は、ノズル25a〜25cが使われないため、これらのノズル25a〜25cのインクが増粘すると推測される。図11中、吐出に使用されるノズルと比べてインクの増粘が予測されるノズルを黒丸で示している。2パス目は、ノズル25cから記録開始領域AR1に向かって増粘していると考えられるインクが吐出される。3パス目はノズル25bから記録開始領域AR1に向かって増粘していると考えられるインクが吐出され、4パス目はノズル25aから記録開始領域AR1に向かって増粘していると考えられるインクが吐出される。
以上より、上端処理においてインク吐出に使われなかったノズルは、インク吐出に使われたノズルと比べてインクが増粘すると推測される。実際、一般領域AR2と比べて記録開始領域AR1が濃くなるという濃度むらが生じる。
【0027】
そこで、図1(a)に示すように、本画像IM1の記録開始部ST1の前の位置に本画像IM1とは無関係の付加画像IM2を形成することにしている。ここで、ヘッド部HE1に対して送り方向Yへ並べられた複数のノズル25のいずれかが本画像IM1の記録開始部ST1に隣接する位置にあるとき、記録開始部ST1にヘッド部HE1があるといえる。記録開始部ST1は、最初に形成される本画像の記録開始部のみならず、記録媒体SLにおいて本画像間に生じる送り方向Yの余白部分の後となる本画像の記録開始部を含む。
【0028】
上記態様の画像形成方法は、本画像IM1の記録開始部ST1の前の位置で付加画像IM2を形成するためにノズル25からインクFL1が吐出するので、ノズル25内のインクFL1が増粘していても、増粘したインクFL1は、付加画像IM2の形成に使用され、本画像IM1の形成に使用されない。すなわち、付加画像IM2を形成するときにフラッシングと同様の作用が働くので、一般領域AR2と比べて記録開始領域AR1が濃くならない。従って、上記態様の画像形成方法は、記録媒体SLに形成される本画像IM1の記録開始領域AR1におけるインクFL1の濃度むらを低減させることができる。
【0029】
なお、図2(a)に示すように、本画像IM1には、余白や所定パターン等のフチ(縁)の無い画像のみならず、画像部分IM1iの周囲にフチ(例えば1〜5mm程度)を有する画像も含まれる。すなわち、記録データDA1は、フチのデータが無いデータのみならず、フチIM1eのデータを有するデータでもよい。フチIM1eがあっても、フチIM1eの前の付加画像IM2を形成するためにノズル25からインクFL1が吐出するので、記録開始領域AR1の濃度むらを低減させる効果が得られる。通常、フチIM1eの高さ(送り方向Yの長さy3)は、1回の送り量y1よりも低いため、フラッシングと同様の作用が十分に得られる。むろん、送り方向Yにノズル25が並べられたノズル列の長さy2と比べてフチの高さ(y3)は十分に低いので、フラッシングと同様の作用が維持される。ノズル列を単位とする長さy2は、複数のノズル25の送り方向Yにおける並びの長さと言い換えることができ、複数のノズル25からインク滴が吐出されたときに記録媒体SLに形成されるドットの送り方向Yの長さと言い換えることもできる。
【0030】
図2(b)に示すように、付加画像IM2の送り方向(所定の方向)Yの長さyhは、本画像IM1を形成するための記録媒体SLの1回の送り量y1でもよい。この送り量y1は、相対移動の1回の移動量である。インターレース送りの場合、送り量y1は、送り方向Yにノズル25が並べられたノズル列の長さy2よりも短くされる。バンド送りの場合、送り量y1は、ノズル列の長さy2とされる。付加画像IM2の高さ(yh)を送り量y1以上にすると、本画像IM1の記録開始領域AR1におけるインクFL1の濃度むらが効果的に低減する。
【0031】
図2(c)に示すように、付加画像IM2の送り方向(所定の方向)Yの長さyhは、送り方向Yにノズル25が並べられたノズル列の長さy2でもよい。バンド送りの場合、yh=y2とすると、本画像IM1の記録開始領域にドットを形成する1パス目の直前のパスで全ノズルからインクFL1が吐出するので、本画像IM1の記録開始領域の濃度むらが低減する。インターレース送りの場合、付加画像IM2の高さ(yh)はノズル列の長さy2よりも低くてもよい。付加画像の高さ(yh)がノズル列の長さy2よりも高いとヘッド部HE1の走査が増えることになるが、付加画像の高さ(yh)をy2以下にすることによりインクの消費量を抑えて効率よく付加画像IM2を形成することが可能になる。
【0032】
(2)プリンターに具体化した実施形態:
次に、図3〜10を参照して、本技術をインクジェット式のプリンターに具体化した実施形態を説明する。
図3(a)に示すプリンター(流体吐出装置)11は、シリアルタイプのインクジェット式の記録装置とされている。プリンター11は、長尺状のシートとされた印刷用紙である記録媒体SLが巻回されたロールRSから記録媒体SLを少しずつ送り出し搬送する搬送装置12を備えている。
【0033】
第1のモーター13により軸部材14が所定方向に回転駆動することで、ロールRSから長尺状の記録媒体SLが搬送経路に沿って送り出される。搬送装置12は、ロールRSからシート状の記録媒体SLを少しずつ送り出すための送出し部15と、この送出し部15の送り方向Y下流側に配置される搬送ローラー対16とを備えている。送出し部15は、第2のモーター18が駆動されることによって送出しローラー17aが回転しかつ従動ローラー17bが従動回転することにより、記録媒体SLを送り方向下流側へ送り出す。
【0034】
搬送ローラー対16は、搬送モーター19の駆動によって搬送ローラー16aが回転しかつ従動ローラー16bが従動回転することにより、記録媒体SLを送り方向Y下流側へ搬送する。
【0035】
長尺状の記録媒体SLの送り方向Yにおける中途位置には、記録媒体SLに対して記録を施す記録ユニット20が設けられている。送り方向Yは、主走査方向Xと直交する副走査方向である。記録ユニット20には、キャリッジ21がガイド軸22に案内されて主走査方向Xに往復移動可能な状態で設けられている。キャリッジ21は記録媒体SLと対向する部分に複数の記録ヘッド23を有している。記録ヘッド23には、プリンター11に着脱自在に装着されたカートリッジからインク(流体)FL1が供給される。キャリッジモーター24が正逆転駆動されることによってキャリッジ21は主走査方向Xに往復移動し、この移動途中で記録ヘッド23内の駆動素子PE1が駆動されることで各ノズル25から記録媒体SLの表面に向けてインク滴が噴射される。ガイド軸22とキャリッジモーター24は、ヘッド部HE1と記録媒体SLとを相対移動させる相対移動手段U11を構成する。
【0036】
キャリッジ21と共に記録ヘッド23が主走査方向Xに1回(1パス)移動して行われる1行分の印刷動作と、記録媒体SLを次行の記録位置まで搬送する搬送装置12による搬送動作とが略交互に行われることにより、記録媒体SLの表面に印刷が施される。記録ヘッド23と記録媒体SLを挟んで対向する位置には、記録媒体SLを支持する支持部材26が記録媒体SLの幅方向(主走査方向X)に沿って延びるように設けられている。
【0037】
記録ユニット20の送り方向Y下流側の切断位置では、切断用モーター32からの駆動力により切断ユニット(切断手段)30のカッター31が記録媒体SLの幅方向(主走査方向X)へ移動することにより、長尺状の記録媒体SLが本画像IM1の記録開始部ST1や記録終了部で切り離される。図3(a)に示すカッター31は、例えば1〜2mm程度の間隔を空けて平行に配置された二枚刃であり、本画像IM1の記録開始部ST1の境界部分や記録終了部の境界部分を挟む位置で境界部分を切断する。むろん、記録開始部ST1を切断することには、記録開始部ST1の境界部分を挟む切断が含まれる。
切断ユニット30の送り方向下流側には、記録媒体SLから切り離されたカットシートSCを送り方向最下流へ排出する排出ユニット34が設けられている。
【0038】
排出ユニット34は、送り方向Yに沿って配置される複数の排出ローラー対35,36を備えている。排出用モーター37が駆動されると、記録済みのカットシートSCを送り方向Yに沿った二位置で挟持しつつ図3(a),(b)に示すローラー35a,35b及びローラー36a,36bがそれぞれ回転し、カットシートSCは送り方向下流側へ排出され、排出トレイ38に積層状態に収容される。すなわち、画像を形成した記録媒体(カットシートSC)を送り方向Yに送るためのローラー35a,35b,36a,36bは、記録媒体(SC)を排出する側の位置に設けられている。
搬送ローラー対16よりも送り方向上流側には、記録媒体SLの先端を検出するための検出センサー39が設けられている。この検出センサー39からの検出信号は、プリンター11を制御するコントローラー40に出力され、記録媒体SLの搬送位置制御などに用いられる。
【0039】
図4は、ヘッド部HE1を設けたキャリッジ21の底面を例示している。ヘッド部HE1は、主走査方向Xへ複数の記録ヘッド23に分割されている。各記録ヘッド23には、主走査方向と直交する副走査方向(Y)へ複数個(例えば180個)のノズル25が所定のノズルピッチkで並んだノズル列が形成されている。図4に示すヘッド部HE1は、Kのノズル列NZk、Cのノズル列NZc、Mのノズル列NZm、Yのノズル列NZy、が配置されている。ヘッド部HE1は、主走査方向Xに主走査を繰り返しながらノズル25からインク滴を吐出してインクFL1のドットDT1を記録媒体に形成する。
【0040】
図5は、搬送装置12及びその駆動制御系を省略してプリンター11の内部構成の概略を示している。本プリンター11は、搬送装置12、搬送駆動部51及び搬送制御部65が移動手段U1を構成し、記録ユニット20及びコントローラー40が画像形成手段U2を構成している。
プリンター11の内部に設けられたコントローラー40は、I/F(インターフェイス)部41を介してホスト装置HCから印刷データである記録データDA1を受信する。この記録データDA1は、受信バッファー42を経て画像処理部44に入力される。画像処理部44は、記録データDA1に対して所定の画像処理を行う。該画像処理後の記録データDA1は、付加画像データDA2が付加され、イメージバッファー46を経てヘッド駆動部49へ送られる。記録データDA1及び付加画像データDA2は、記録媒体SLへのドットDT1の形成状態を画素毎に表すデータである。ヘッド駆動部49は、これらのデータ(DA1,DA2)に従い所定の吐出タイミングに合わせて付加画像データDA2及び記録データDA1に従い複数のノズル25からインクを吐出する。記録媒体SLには、付加画像データDA2に対応した付加画像IM2が形成され、記録データDA1に対応した本画像IM1が形成される。
【0041】
コントローラー40は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC、ROM(Read Only Memory)、不揮発性メモリー及びRAM(Random Access Memory)を有している。ROMには、画像形成プログラムを含む各種制御プログラム及び各種データなどが記憶されている。不揮発性メモリーには、ファームウェアプログラムを始めとする各種プログラム及び印刷処理に必要な各種データなどが記憶されている。RAMは、CPUの演算結果等を一時的に記憶する他、ホスト装置HCから受信した記録データDA1、記録データDA1の処理途中及び処理後のデータなどを格納するバッファーとして用いられる。
【0042】
コントローラー40は、I/F部41の他、受信バッファー42、コマンド解析部43、画像処理部44、制御部45、イメージバッファー46、不揮発性メモリー47、ヘッド駆動部49、キャリッジ駆動部50、搬送駆動部51、等を備えている。プリンター11には、ユーザーが入力操作を行うための操作部53が設けられ、操作部53の操作による入力値はI/F部41を介して制御部45に入力される。なお、コマンド解析部43、画像処理部44及び制御部45は、ROMに記憶された制御プログラムを実行するCPU(ソフトウェア)とASIC(ハードウェア)の少なくとも一方により実現されている。もちろん、各部43〜45は、ソフトウェアとハードウェアの協働により構築される以外に、ソフトウェアだけで構成されたり、ハードウェアだけで構成されたりしてもよい。受信バッファー42及びイメージバッファー46は、RAMにより構成されている。
【0043】
キャリッジ21は、キャリッジモーター24の駆動軸に連結された駆動用のプーリー55と従動用のプーリー56に巻き掛けられたタイミングベルト57の一部と固定されている。キャリッジモーター24が正逆転駆動されることにより、キャリッジ21は、正転・逆転するタイミングベルト57を介して主走査方向Xに往復移動する。キャリッジ21の移動経路の背面側の位置に設けられたリニアエンコーダー58は、一定ピッチ(例えば1/180インチ=1/180×2.54cm)毎に多数のスリットが形成されたテープ状の符号板58aと、キャリッジ21に設けられた発光素子と受光素子とを有するセンサー58bとを有している。キャリッジ21が移動するときに発光素子から出射されて符号スリットを透過した光を受光素子が受光することで、センサー58bが検出パルスを出力する。コントローラー40は、リニアエンコーダー58から入力した検出パルス(A相とB相の90度位相のずれた2つのパルス)のパルスエッジを計数するCR位置カウンターの計数値をキャリッジが反ホーム位置側へ移動するときにインクリメントし、ホーム位置側へ移動するときにデクリメントする。これにより、ホーム位置を原点とするキャリッジ21の移動位置(キャリッジ位置)が検出される。
【0044】
ホスト装置HCに記憶されているプリンタードライバーPDは、モニター表示用の表色系(例えばRGB表色系)の画像データに対し、公知の色変換処理、解像度変換処理、ハーフトーン処理及びラスタライズ処理などを行って記録データDA1を生成する機能をコンピューターに実現させる。色変換処理の際に参照される色変換テーブルには、記録媒体の単位面積当たりのインク吐出量を所定量以下に制限する対応関係が規定されている。生成される記録データDA1には、制御コマンドや印刷画像データが含まれる。ヘッダーに記述された制御コマンドは、印刷条件データ及び上記印刷画像データに基づいて作成されたもので、給紙動作、紙送り動作、排紙動作等の搬送系コマンドや、キャリッジ動作及び記録ヘッド動作(記録動作)等の印字系コマンドなどの各種コマンドからなる。
【0045】
受信バッファー42は、I/F部41を介して受信された記録データDA1が一時格納される記憶領域(格納領域)である。コマンド解析部43は、受信バッファー42から記録データDA1のヘッダーを読み出してその中の制御コマンド等を取得し、プリンター記述言語で記述された制御コマンドを解析する。コマンド解析結果は各制御部(63,64,65)に送られる。画像処理部44は、記録データDA1を受信バッファー42から一行分(主走査ライン)ずつ読み出し、所定の画像処理を行い、付加画像データDA2を付加したヘッドイメージデータをイメージバッファー46に格納する。
【0046】
フラッシング制御部61は、キャリッジ21をホームポジション等のフラッシング位置へ移動させてノズル25からインクを吐出させるフラッシング制御を行う。
クリーニング制御部62は、キャリッジ21をホームポジション(非印字領域)へ移動させキャッピング手段84及び吸引ポンプ85を動作させることによるノズル25のクリーニング制御を行う。キャッピング手段84は、直上まで移動した記録ヘッド23のノズル形成面を封止する。キャッピング手段84の下方に配置される吸引ポンプ85は、キャッピング手段84の内部空間に負圧を与える。このようにして、クリーニングが行われる。キャッピング手段84の近傍に配置されるワイピング部材は、ゴムといった弾性板等から構成され、キャリッジ21がキャッピング手段84側に移動する際に記録ヘッド23のノズル形成面を払拭する。
【0047】
ヘッド制御部63は、コマンド解析部43からのコマンド解析結果に従ってヘッド駆動部49を制御する。キャリッジ制御部64は、リニアエンコーダー58から入力されるA相・B相の二相のエンコーダーパルス信号の位相差に基づきキャリッジ21の移動方向を認識する。キャリッジ制御部64は、エンコーダーパルス信号のエッジを検出する度に、キャリッジ用のカウンターを往動時にインクリメント、復動時にデクリメントすることにより、キャリッジ21の原点位置からの移動位置を検出する。このキャリッジ21の主走査方向Xにおける位置は、キャリッジモーター24の速度制御に用いられる。搬送制御部65は、コマンド解析部43からのコマンド解析結果に従って、記録媒体SLを搬送駆動する搬送駆動部51を制御する。
【0048】
不揮発性メモリー47には、記録データDA1に依存しないでノズル25からインクFL1を吐出させる所定のドットパターン(付加画像IM2)を表す付加画像データDA2等が記憶されている。コントローラー40は、ホスト装置HCに記憶されている付加画像データDA2をホスト装置HCから受信して不揮発性メモリー47に記憶してもよい。不揮発性メモリー47には、フラッシュメモリーといった不揮発性半導体メモリー、ハードディスクといった磁気ディスク、等を用いることができる。
【0049】
ヘッド駆動部49は、内部の駆動信号生成回路により吐出波形パルスを生成する。大中小ドットなど複数の大きさのドットDT1を形成する場合には、例えば、電圧差を異ならせた複数の吐出波形パルスを生成すればよい。ヘッド駆動部49は、入力される階調値データに基づいて吐出波形パルスを記録ヘッド23内の各駆動素子PE1に印加する。図4に示すように、記録ヘッド23は、ノズル25毎に流体吐出用の駆動素子PE1を内蔵している。各駆動素子PE1のうち階調値データで非吐出の値(例えば0)以外の値(例えば1)をとる画素を打つノズルに対応する駆動素子PE1には吐出波形パルス(駆動電圧)が印加され、その駆動素子PE1に対応するノズルからインク滴が噴射される。駆動素子PE1には、ピエゾ素子といった圧電駆動素子、静電駆動素子、インクを加熱して膜沸騰による気泡(バブル)の圧力を利用してノズルから流体を吐出させるヒーター、等を用いることができる。また、記録ヘッド23には、プリンター11の温度を検出するための温度センサー(温度検出手段)23sが設けられている。この温度センサー23sの検出温度は、制御部45に読み込まれる。
【0050】
(3)印刷処理:
図6は、プリンター11で行われる印刷処理をフローチャートにより例示している。この処理は、コントローラー40が主体となって行い、ひとまとまりの印刷ジョブ(記録データDA1)の受信が開始されたときに開始し、マルチタスクにより他の処理と並列して行われる。印刷処理の開始時にヘッド部HE1をキャッピング手段84から外して印字前フラッシングを行ってもよい。印字前フラッシングは、印刷処理の直前に行われる記録前フラッシングのことである。なお、図6の処理を行うコントローラー40は、記録ユニット20とともに画像形成手段U2を構成する。
【0051】
印刷処理が開始すると、コントローラー40は、受信した記録データDA1を取得し、画像処理部44で記録データDA1に対して所定の画像処理を行って、付加画像データDA2を格納する領域を空けて画像処理後の記録データDA1をイメージバッファー46に格納する(ステップS102。以下、「ステップ」の記載を省略)。S104では、不揮発性メモリー47から付加画像データDA2を読み出して記録データDA1の前の位置に付加されるようにイメージバッファー46に格納する。ホスト装置HCから付加画像データDA2を受信した場合には、この受信した付加画像データDA2をイメージバッファー46に格納してもよい。S106では、付加画像IM2と本画像IM1の印刷を開始し、記録媒体SLを送り方向Yへ送りながら、本画像IM1の記録開始部ST1の前の位置に付加画像IM2を付加するようにノズル25からインクFL1を吐出していく。付加画像IM2を形成するために本画像の記録開始部ST1の前の位置でノズル25からインク滴が吐出するので、ノズル25内のインクFL1が増粘していても、該増粘したインクFL1は付加画像IM2の形成に使用される。すなわち、付加画像IM2を形成するときにフラッシングと同様の作用が働くので、増粘したインクFL1は本画像IM1の形成に使用されない。
【0052】
本画像IM1の記録開始部ST1が所定の切断位置になると、コントローラー40は、切断用モーター32を駆動してカッター31を主走査方向Xへ移動させ、長尺状の記録媒体SLを本画像の記録開始部ST1で切断する(S108)。本画像IM1の記録終了部が所定の切断位置になると、コントローラー40は、切断用モーター32を駆動してカッター31を主走査方向Xへ移動させ、長尺状の記録媒体SLを本画像の記録終了部で切断して(S110)、印刷処理を終了させる。
【0053】
以上説明したように、本画像の記録開始部ST1の前の位置にあるノズル25のインクFL1が増粘しても、該増粘したインクFL1が本画像IM1の形成に使用されないので、本画像IM1の記録開始領域AR1が一般領域AR2よりも濃くなるという濃度むらが抑制される。すなわち、上述した態様は、記録媒体SLに形成される本画像IM1の記録開始領域AR1におけるインクFL1の濃度むらを低減させることができる。特に、上記態様は、印字中に行われる記録時フラッシングの頻度を変えることができない流体吐出装置に好適である。
【0054】
(4)付加画像の記録濃度を送り方向の位置に応じて変える例:
図7は、付加画像IM2のインク吐出量(記録濃度)を送り方向(所定の方向)Yの位置に応じて変える例を模式的に示している。ここで、各ノズル及び各ドットDT1に付した数字は、最初に本画像の記録開始領域AR1を形成する主走査を1回目とするパス数を示している。各ドットDT1に付したa,b,c,dは、それぞれ、ノズル25a,25b,25c,25dから吐出されるインク滴により形成されるドットを示している。付加画像IM2の各領域IM2a,IM2b,IM2cは、それぞれ、1,2,3パス目で形成されるドットパターンを示している。記録ヘッド23の下に付した矢印は、記録ヘッド23の主走査の方向を示している。図7の例は、1パス目でノズル25a,25b,25cから吐出されるインク滴により1a,1b,1cのドットDT1が形成され、2パス目でノズル25a,25bから吐出されるインク滴により2a,2bのドットDT1が形成され、3パス目でノズル25aから吐出されるインク滴により3aのドットDT1が形成されることが示されている。図8も、同様である。
【0055】
図7の例は、本画像IM1から最も遠い第一領域IM2aのインク吐出量が(4/24)×100=16.7%であり、中間の第二領域IM2bのインク吐出量が(12/24)×100=50%であり、本画像IM1に最も近い第三領域IM2cのインク吐出量が(12/24)×100=100%である。従って、付加画像IM2のインク吐出量(記録濃度)は、送り方向Yの位置に応じて変わるインク吐出量とされている。
インターレース送りのように1回の送り量y1がノズル列(複数のノズル25)の長さy2よりも短い場合、本画像の記録開始領域AR1を形成するための複数のノズル25には、送り前に本画像の記録開始領域AR1を形成するために使用されたノズルと使用されなかったノズルとが混在する。従って、付加画像IM2のインク吐出量が送り方向Yの位置に応じて変わるインク吐出量とされると、インクの消費量を抑えて効率よく付加画像を形成することが可能になる。
【0056】
また、付加画像IM2を送り方向Yにおいて本画像IM1に近い後側領域AY2と本画像IM1から遠い前側領域AY1とに分けたとき、後側領域AY2におけるインク吐出量(Cay2とする)が前側領域AY1におけるインク吐出量(Cay1とする)よりも高くされている。ここで、後側領域AY2と前側領域AY1との境界は、例えば、送り方向Yにおける付加画像IM2の中間部分とすることができる。図7の例では、後側領域AY2のインク吐出量Cay2が(30/36)×100=83.3%とされ、前側領域AY1のインク吐出量Cay1が(10/36)×100=27.8%とされている。後側領域AY2のインク吐出量Cay2が前側領域AY1のインク吐出量Cay1よりも高くされると、本画像の記録開始領域AR1に近くなったときに多くのインク滴がノズル25から吐出されるので、さらに効率よく付加画像を形成することが可能になる。
【0057】
なお、図7に示すような付加画像IM2を不揮発性メモリー47に記憶させ、図6で示したような印刷処理をプリンター11で行うと、記録濃度を送り方向Yの位置に応じて変えた付加画像IM2を本画像の記録開始部ST1の前の位置に形成した記録物を得ることができる。
【0058】
(5)付加画像の記録濃度を走査方向の位置に応じて変える例:
図8は、付加画像IM2のインク吐出量(記録濃度)を走査方向(X)の位置に応じて変える例を模式的に示している。ここで、本画像IM1に最も近い第三領域IM2cについて、1,2,3パス目で形成されるドットDT1を分けて示している。図8に示すように、付加画像IM2のインク吐出量(記録濃度)は、主走査方向Xの位置に応じて変わるインク吐出量とされている。このような付加画像IM2を形成すると、インクFL1の消費量を抑えて効率よく付加画像IM2を形成することが可能になる。
【0059】
また、各パスにおいてヘッド部HE1の1回の走査を前半の走査SN1と後半の走査SN2に分けたとき、付加画像IM2は、後半の走査SN2におけるインクFL1の吐出量が前半の走査SN1におけるインクFL1の吐出量よりも多くされてもよい。ここで、前半の走査SN1と後半の走査SN2との境界は、例えば、主走査方向Xにおける付加画像IM2の中間部分とすることができる。図8の例では、記録ヘッド23が左から右へ向かう1パス目の第三領域IM2cにおいて、前半の走査SN1におけるインク吐出量が0%とされ、後半の走査SN2におけるインク吐出量が50%とされている。記録ヘッド23が右から左へ向かう2パス目の第三領域IM2cにおいても、前半の走査SN1におけるインク吐出量が0%とされ、後半の走査SN2におけるインク吐出量が50%とされている。記録ヘッド23が左から右へ向かう3パス目の第三領域IM2cにおいても、前半の走査SN1におけるインク吐出量が0%とされ、後半の走査SN2におけるインク吐出量が50%とされている。後半の走査SN2のインク吐出量が前半の走査SN1のインク吐出量よりも高くされると、本画像の記録開始領域AR1に近くなったときに多くのインク滴がノズル25から吐出されるので、さらに効率よく付加画像を形成することが可能になる。
【0060】
むろん、図8に示すような付加画像IM2を不揮発性メモリー47に記憶させ、図6で示したような印刷処理をプリンター11で行うと、記録濃度を走査方向(X)の位置に応じて変えた付加画像IM2を本画像の記録開始部ST1の前の位置に形成した記録物を得ることができる。
【0061】
(6)付加画像の記録濃度を走査方向の位置に応じて変える例:
図9(a)は、ローラー35b,36bの位置を避けて形成された付加画像IM2を模式的に例示している。ホスト装置HCから送信される記録データDA1は、プリンタードライバーPDによる色変換等の処理によって所定のインク吐出量以下となる本画像IM1を形成するデータとされる。しかし、プリンタードライバーPDによる処理が行われない付加画像データDA2は、所定のインク吐出量を超えるデータとされる可能性がある。付加画像IM2が所定のインク吐出量を超えたドットパターンとされると、記録媒体に吐出されたインクFL1が排出側のローラー35b,36bに付着して本画像IM1に転写されることが想定される。そこで、記録媒体(カットシートSC)が送り方向(所定の方向)Yへ搬送されるときにローラー35b,36bと接触しない位置に、すなわち、主走査方向Xにおいてローラー35b,36bの位置と重ならないように付加画像IM2を記録媒体SLに形成してもよい。すると、記録媒体に形成された付加画像IM2のインクFL1がローラー35b,36bに付着しないので、ローラー35b,36bを介して付加画像IM2のインクFL1が本画像IM1に混入しない。
【0062】
また、図9(b)に示す付加画像IM2のように、記録媒体(SC)が送り方向Yへ搬送されるときにローラー35b,36bと接触する領域IM2bを所定のインク吐出量以下に制限したドットパターンにしてもよい。この付加画像IM2は、ローラー35b,36bと接触しない領域IM2aが所定のインク吐出量を超えたドットパターンとされても、記録媒体に形成された付加画像IM2のインクFL1がローラー35b,36bに付着しないので、ローラー35b,36bを介して付加画像IM2のインクFL1が本画像IM1に混入しない。
【0063】
なお、図9に示すような付加画像IM2を不揮発性メモリー47に記憶させ、図6で示したような印刷処理をプリンター11で行うと、ローラー35b,36bと接触する位置を避けて付加画像IM2を形成した記録物を得ることができる。
【0064】
(7)余白等のデータの無いフチ付き本画像に付加画像を付加する例:
余白のデータは、記録データDA1に含まれている場合もあれば、記録データDA1に含まれていない場合もある。後者の場合、記録媒体を送り方向Yへ設定量送ることにより、本画像IM1の記録開始領域AR1等に余白(例えば1〜5mm程度)を追加することができる。図2(a)を参照して説明すると、本画像IM1にフチIM1eを追加する場合、本画像に追加するフチIM1eのデータと、フチIM1eの前の位置に設けられる付加画像IM2のデータとを記録データDA1に付加し、該記録データDA1に従って付加画像IM2とともにフチIM1eを追加した本画像IM1を記録媒体SLに形成してもよい。すなわち、記録媒体SLに形成する付加画像IM1の位置が、所定の方向(Y)においてフチIM1eよりも下流側の位置にされる。
【0065】
図10は、変形例に係る印刷処理をフローチャートに示している。本処理は、図6で示したS102とS104の処理の間にS202〜S204の処理が追加されている。むろん、図10の印刷処理は、コントローラー40が主体となって行い、ひとまとまりの印刷ジョブ(記録データDA1)の受信が開始されたときに開始し、マルチタスクにより他の処理と並列して行われる。なお、記録データDA1には、本画像に余白(IM1e)を追加するか否かを表す設定情報が付加されているものとする。
【0066】
印刷処理が開始すると、コントローラー40は、受信した記録データDA1を取得し、画像処理部44で記録データDA1に対して所定の画像処理を行って、画像処理後の記録データDA1をイメージバッファー46に格納する(S102)。S202では、本画像IM1に余白を設ける設定であるか否かを判断する。例えば、記録データDA1に付加されている設定情報が余白を追加することを表す情報であるか否かを判断すればよい。余白を設けない設定であれば、コントローラー40は、余白(IM1e)のデータをイメージバッファー46に格納せずに付加画像データDA2を格納して本画像の記録開始部ST1の前の位置に付加画像IM2を付加する印刷を実行し(S104〜S110)、印刷処理を終了させる。一方、余白を設ける設定であれば、コントローラー40は、本画像IM1の縁部に余白(IM1e)を追加するようにイメージバッファー46の記録データDA1に余白のデータ(例えばNullデータ)を付加する(S204)。その後、コントローラー40は、付加画像データDA2をイメージバッファー46に格納して、余白(IM1e)を追加した本画像IM1の記録開始部ST1の前の位置に付加画像IM2を付加する印刷を実行し(S104〜S110)、印刷処理を終了させる。
【0067】
以上説明したように、本画像IM1に設けられる余白のデータが記録データDA1に含まれていなくても、本画像IM1に余白が追加された上で付加画像IM2が付加される。なお、本画像に追加するフチは、余白以外にも、所定パターン等でもよい。
以上より、上記態様は、本画像IM1に設けられるフチIM1eのデータが記録データDA1に含まれていない場合に本画像の記録開始領域AR1におけるインクの濃度むらを低減させる好適な構成を提供することができる。なお、フチIM1eの幅(送り方向Yの長さy3)は、1回の送り量y1(図1(a)参照)よりも狭いため、フラッシングと同様の作用が維持される。
【0068】
(8)変形例:
上述した実施形態は、以下のような形態に変更することもできる。
上述した処理は、ホスト装置HC等、プリンターに接続される外部装置で行われてもよい。この場合、外部装置に画像形成装置が設けられ、プリンターと外部装置とに跨って流体吐出装置が設けられる。むろん、プリンターと外部装置とが協働して上述した処理を行ってもよい。この場合、プリンターと外部装置とに跨って画像形成装置及び流体吐出装置が設けられる。すなわち、プリンターと外部装置を含むシステムで本発明の流体吐出装置を構成してもよい。
上述した処理の各ステップの順番は、適宜、変更可能である。また、本画像の記録開始部でユーザー等が記録媒体を切断することを前提として、切断ユニット(切断手段)30が無く、S108,S110の処理を行わない流体吐出装置も、本発明に含まれる。
【0069】
上記付加画像は、流体吐出装置の温度に応じて変わるドットパターンとされてもよい。これにより、流体吐出装置の温度に応じたインク吐出を実現することができ、インクの消費量を適切に少なくすることが可能になる。例えば、温度センサー23sの検出温度がTE1℃以上の場合、付加画像のドットパターンをTE1℃未満の場合と比べてインク吐出量(記録濃度)の多いドットパターンとしてもよい。記録ヘッドの温度が高いほどノズル内のインクが増粘し易いため、TE1℃以上の場合に付加画像のインク吐出量を多くすることにより、本画像の記録開始領域の濃度むらを低減させることができるとともにインクの消費量を適切に少なくすることが可能になる。
【0070】
また、温度センサー23sの検出温度がTE1℃以上の場合に付加画像を本画像に付加し、TE1℃未満の場合に付加画像を付加しないようにすることも、本技術に含まれる。この技術によっても、本画像の記録開始領域の濃度むらを低減させることができるとともにインクの消費量を適切に少なくすることが可能になる。
【0071】
上記付加画像は、画像形成に関する画像形成モードに応じて変わるドットパターンとされてもよい。例えば、画像形成モードがバンド送りモードである場合にインク吐出量(記録濃度)の偏りの無い付加画像を形成し、画像形成モードがインターレースモードである場合に図7で示したように後側領域AY2のインク吐出量が前側領域AY1のインク吐出量よりも高くされた付加画像を形成してもよい。この態様は、本画像の記録開始領域の濃度むらを画像形成モードに応じて適切に低減させることができる。
【0072】
また、付加画像を付加するための画像形成モードである付加画像形成モードと、付加画像を付加しないための画像形成モードである付加画像非形成モードとを設けてもよい。付加画像形成モードであるときに付加画像を本画像に付加し、付加画像非形成モードであるときに付加画像を付加しないようにすることも、本技術に含まれる。高画質モード等を専用の付加画像形成モードの代わりにし、高速モード等を専用の付加画像非形成モードの代わりにしてもよい。これらの態様は、流体吐出装置のユーザーの好みに応じて本画像の画質を向上させたりインク消費量を少なくしたりすることができるので、利便性が向上する。
【0073】
印刷装置は、カラーのインクジェット式プリンターの他、単色機、ドットインパクト式プリンター、レーザープリンター、スキャナーや測色機といった読取手段を備える複合機、記録媒体の幅方向一杯に長く形成された印刷ヘッドに対して記録媒体を搬送して印刷を行うラインプリンター、等でもよい。記録媒体は、紙の他、樹脂シート、金属製フィルム、布、フィルム基板、樹脂基板、半導体ウェハ、光ディスクや磁気ディスクといった記憶媒体、等でもよい。記録媒体の形状は、長尺状の他、単票紙といったカットシート、立体形状、等でもよい。
【0074】
本発明を適用可能な流体吐出装置は、プリンターの他、微小量の液滴を噴射(吐出)する液体吐出ヘッド等を備える液体吐出装置等、インク以外の流体を吐出する装置でもよい。ここでいう液滴は、液体吐出装置から吐出される液体の状態を言い、粒状、涙状、糸状に尾を引くもの等を含まれる。ここでいう液体は、液体吐出装置が吐出させることができるような材料であればよく、例えば、物質が液相であるときの状態のものとして、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、等が含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子といった固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたもの等が含まれる。インクや液晶等は、液体の代表的な例である。前記インクは、一般的な水性インク及び油性インク、並びに、ジェルインク、ホットメルトインク、等の各種液体組成物を包含するものとする。液体吐出装置には、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造等に用いられる電極材や色材といった材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を吐出する装置が含まれる。また、液体吐出装置には、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出する装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する装置、捺染装置、マイクロディスペンサ、時計やカメラといった精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)等を形成するために紫外線硬化樹脂といった透明樹脂液を基板上に吐出する装置、基板等をエッチングするために酸やアルカリといったエッチング液を吐出する装置、等が含まれる。
また、流体は、非気体の流体が好ましいものの、トナー等の粉粒体でもよい。粉粒体でも、吐出しない期間が長いとノズルの目詰まりが予測されるためである。
【0075】
なお、付加画像の流体の記録濃度を送り方向や走査方向に応じて変えるのは必須ではなく、付加画像の送り方向の長さを1回の送り量以上にしたりノズル列の長さ以下にしたりするのも必須ではない。
むろん、従属請求項に係る構成要件を有しておらず独立請求項に係る構成要件のみからなる装置、方法、プログラム、等でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
【0076】
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、記録媒体に形成される本画像の記録開始領域における流体の濃度むらを低減させる技術等を提供することができる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりして本発明を実施することも可能であり、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりして本発明を実施することも可能である。従って、本発明は、上述した実施形態や変形例に限られず、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0077】
11…プリンター(流体吐出装置)、12…搬送装置、20…記録ユニット、21…キャリッジ、23…記録ヘッド、23s…温度センサー、25,25a〜25d…ノズル、30…切断ユニット(切断手段)、40…コントローラー、45…制御部、AR1…記録開始領域、AR2…一般領域、AY1…前側領域、AY2…後側領域、DA1…記録データ、DA2…付加画像データ、DT1…ドット、FL1…インク(流体)、HE1…ヘッド部、IM1…本画像、IM1e…フチ、IM1i…フチを除いた画像部分、IM2…付加画像、NZk,NZc,NZm,NZy…ノズル列、PE1…駆動素子、SL…記録媒体、SN1…前半の走査、SN2…後半の走査、ST1…記録開始部、U1…移動手段、U2…画像形成手段、X…主走査方向、Y…送り方向(所定の方向)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のノズルを並べたヘッド部と記録媒体とを相対移動させる流体吐出装置のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、上記流体吐出装置として、記録媒体を紙送り方向へ送りながら記録データに従ってインクジェット式記録ヘッドからインク滴(流体)を吐出して印刷を行うインクジェット式記録装置が知られている。インクジェット式記録ヘッドは、圧力発生室で加圧したインクをノズル開口から吐出する関係上、ノズル開口からの溶媒の蒸発に起因するインク粘度上昇やインク固化、ノズルへの塵埃付着や気泡混入、等によりノズルに目詰まりが生じる可能性がある。このため、インクジェット式記録装置は、非印刷領域において記録ヘッドのノズル形成面をキャッピング手段で封止し、このキャッピング手段内に吸引ポンプでインクを吸引排出し、記録ヘッドのノズル形成面をワイピング手段で払拭(ワイピング)し清掃している。また、インクジェット式記録装置は、ノズル開口から非印刷領域(フラッシング領域)にインクを吐出するフラッシング(空吐出動作)も行っている。
【0003】
また、特許文献1記載の液滴吐出装置は、色変換部で色変換され画像処理部でハーフトーン処理された各色の画像データに対して、休止期間が有るノズル内のインクの増粘による吐出不良を防止するための予備吐出を吐出させる画素を設定し、その画素の画素値を書き換えている。予備吐出を吐出させる画素は、休止期間内に間欠的に単発又は数発のインク滴が予備吐出として吐出されるように設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−80740号公報
【特許文献2】特開2009−77068号公報
【特許文献3】特開2003−274149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
記録ヘッドに対して紙送り方向に複数のノズルが並べられている場合、記録媒体に形成される画像の記録開始部に記録ヘッドがあると、形成画像の部分にあるノズルはインク吐出に使用される。一方、形成画像から外れた部分にあるノズルは、インク吐出に使用されない。インク吐出に使われなかったノズルは、インク吐出に使われたノズルと比べてインクが増粘すると推測される。従って、インク吐出に用いられなかったノズルは、紙送りにより形成画像の部分となると、増粘した濃いインクを形成画像の記録開始領域に吐出することになる。実際、記録媒体に形成される画像の記録開始領域が濃くなるという濃度むらが生じている。
【0006】
特許文献1記載の液滴吐出装置は、画像の記録開始領域における濃度むらが考慮されていない。また、特許文献1には、予備吐出を記録媒体上に記録するため予備吐出を視認されず画質の低下に影響を与えないとされる単発又は数発に限定することが示されている。しかし、画像中に予備吐出を記録することになるため、画像に粒状感が現れて画質が低下する懸念がある。また、記録ヘッドに高密度で多数のノズルが設けられる近年、ごく僅かな予備吐出では濃度むらが視認される程度には低減しない。
【0007】
なお、特許文献2,3記載の技術は、フチ無し印刷に関するものである。
特許文献2記載の画像処理装置は、記録媒体のサイズ及びはみだし量と、入力された画像のサイズとを用いて、上下方向の変倍率及び左右方向の変倍率を算出し、それぞれの変倍率に基づいて、入力された画像を上下方向及び左右方向に変倍処理し、出力画像を生成する。この出力画像の記録開始領域における濃度むらは、考慮されていない。
特許文献3記載の画像処理装置は、トリミング指定された領域より少し大きめの領域が原画像からはみ出しているか否かを判定し、はみ出している場合は、その部分を原画像から補間して補間領域のデータと合成したプリントデータを作成し、プリンターへ送信する。すなわち、補間領域のデータは、原画像のデータに依存している。この補間領域を含めた画像の記録開始領域における濃度むらは、考慮されていない。
【0008】
以上を鑑み、本発明の目的の一つは、記録媒体に形成される画像の記録開始領域における流体の濃度むらを低減させることにある。
【課題を解決するための手段及びその作用・効果】
【0009】
上記目的の一つを達成するため、本発明は、切断位置で切断される記録媒体に画像を形成する流体吐出装置であって、
複数のノズルを並べたヘッド部と、
前記ヘッド部と前記記録媒体とを前記複数のノズルが並ぶ所定の方向へ相対移動させる移動手段と、
記録データに基づいて形成される本画像と、前記記録データに基づかないで形成される付加画像とを前記記録媒体に形成する画像形成手段とを備え、
前記画像形成手段は、前記記録媒体に形成する前記付加画像の位置を、前記所定の方向において前記本画像よりも下流側の位置であって、前記切断位置でない位置にすることを態様の一つとしている。
【0010】
上記態様は、本画像の下流側の位置で付加画像を形成するためにノズルから流体が吐出するので、ノズル内の流体が増粘していても、該流体は、付加画像の形成に使用され、本画像の形成に使用されない。すなわち、付加画像を形成するときにフラッシングと同様の作用が働くので、上記態様は、記録媒体に形成される本画像の記録開始領域における流体の濃度むらを低減させることができる。
【0011】
ここで、上記流体吐出装置は、例えば、プリンター単体に設けられてもよいし、プリンターと外部装置とに跨って設けられてもよい。
ヘッド部と記録媒体とを相対移動させることは、ヘッド部と記録媒体の少なくとも一方を移動させることを意味し、不動のヘッド部に対して記録媒体を移動させること、不動の記録媒体に対してヘッド部を移動させること、ヘッド部と記録媒体の両方を移動させること、のいずれも含まれる。
上記流体は、記録媒体に画像を形成することができるものであればよく、液体や粉体等が含まれ、より具体的にはインクやトナー等が含まれる。
上記記録媒体に形成される画像は、流体の吐出によって記録媒体に形成されるものであればよく、記録媒体への流体の付着物、記録媒体に形成された凹凸、等が含まれる。また、上記記録媒体に形成される本画像は、ひとまとまりの記録データで一つのみ形成されても複数形成されてもよい。
【0012】
上記切断位置は、本画像の境界であってもよいし、本画像の境界からずれた部位でもよい。
上記記録データは、余白や所定パターン等のフチのデータが無いデータでもよいし、画像部分の周囲に設けられる余白や所定パターン等のフチのデータを有するデータでもよい。
上記付加画像には、複数色の流体を混在させて無彩色にしたグレイ画像(混合色画像)、造粘し易い色を多く使用して有彩色にした混合色画像、単色画像、等が含まれる。
【0013】
ところで、前記付加画像の前記所定の方向の長さは、前記本画像を形成するための前記相対移動の1回の移動量以上でもよい。すると、複数のノズルのうち相対移動時に所定の方向において本画像の記録開始部の前の位置から本画像の位置となるノズルから付加画像形成のために流体が吐出される。従って、この態様は、本画像の記録開始領域における流体の濃度むらをさらに低減させることができる。
【0014】
前記付加画像の前記所定の方向の長さは、前記所定の方向に並べられたノズルの列の長さ以下でもよい。すると、流体の消費量を抑えて効率よく付加画像を形成することが可能になる。
【0015】
前記本画像を形成するための前記相対移動の1回の移動量が前記所定の方向に並べられたノズルの列の長さよりも短くされる場合、前記画像形成手段は、前記付加画像の流体の記録濃度を、前記所定の方向の位置に応じて変えてもよい。
上記の場合、本画像の記録開始領域を形成するための複数のノズルには、送り前に本画像の記録開始領域を形成するために使用されたノズルと使用されなかったノズルとが混在する。従って、上記態様は、流体の消費量を抑えて効率よく付加画像を形成することが可能になる。
【0016】
さらに、前記付加画像を前記送り方向において前記本画像に近い後側領域と前記本画像から遠い前側領域とに分けたときに前記後側領域における流体の記録濃度が前記前側領域における流体の記録濃度よりも高くされてもよい。すると、さらに効率よく付加画像を形成することが可能になる。
【0017】
前記ヘッド部が前記所定の方向と交わる走査方向に走査を繰り返す場合、前記画像形成手段は、前記付加画像の流体の記録濃度を、前記走査方向の位置に応じて変えてもよい。すると、流体の消費量を抑えて効率よく付加画像を形成することが可能になる。
さらに、前記画像形成手段は、前記ヘッド部の1回の走査を前半の走査と後半の走査に分けたときに前記後半の走査における流体の吐出量を前記前半の走査における流体の吐出量よりも多くした前記付加画像を前記記録媒体に形成してもよい。
【0018】
画像を形成した前記記録媒体を排出する側の位置に前記記録媒体を前記所定の方向に送るためのローラーをさらに備える場合、前記画像形成手段は、前記記録媒体における前記付加画像の位置を、前記ローラーと接触しない位置にしてもよい。記録媒体に形成された付加画像の流体がローラーに付着しないので、ローラーを介して付加画像の流体が本画像に混入しない。
【0019】
前記画像形成手段は、前記本画像にフチを追加する場合、前記記録媒体に形成する前記付加画像の位置を、前記所定の方向において前記フチよりも下流側の位置にしてもよい。この態様は、本画像に設けられるフチのデータが記録データに含まれていない場合に本画像の記録開始領域における流体の濃度むらを低減させる好適な構成を提供することができる。
ここで、上記フチには、余白や所定パターン等が含まれる。
【0020】
上述した態様は、画像形成装置、印刷制御装置、印刷装置、例えば画像形成工程といった工程を備える画像形成方法、流体吐出方法、さらに記録工程といった工程を備える記録方法、印刷制御方法、印刷方法、例えば画像形成機能といった機能をコンピューターに実現させる画像形成プログラム、流体吐出プログラム、さらに記録機能といった機能をコンピューターに実現させる記録プログラム、印刷制御プログラム、印刷プログラム、これらのプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な媒体、等に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)プリンター(流体吐出装置)11による画像形成方法の概念を模式的に例示する図、(b)は付加画像IM2のドット配置を模式的に例示する図。
【図2】(a)はフチIM1eを有する本画像IM1に付加画像IM2を付加する様子を模式的に例示する図、(b)は付加画像IM2の送り方向Yの長さを1回の送り量y1にする様子を模式的に例示する図、(c)はバンド送り時に付加画像IM2を付加する様子を模式的に例示する図。
【図3】(a)は一実施形態に係るプリンター11を一部断面状態で模式的に例示する側面図、(b)はプリンター11の要部を模式的に例示する平面図。
【図4】ヘッド部HE1を設けたキャリッジ21の底面を例示する図。
【図5】プリンター11の構成を例示するブロック図。
【図6】印刷処理を例示するフローチャート。
【図7】付加画像IM2の記録濃度を送り方向Yの位置に応じて変える例を模式的に示す図。
【図8】付加画像IM2の記録濃度を走査方向(X)の位置に応じて変える例を模式的に示す図。
【図9】(a)はローラー35b,36bの位置を避けて形成された付加画像IM2を模式的に例示する図、(b)はローラー35b,36bの位置のインク吐出量を所定量以下に制限した付加画像IM2を模式的に例示する図。
【図10】変形例に係る印刷処理を示すフローチャート。
【図11】比較例に係る画像形成方法の概念を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1)画像形成方法の概略:
まず、図1,2,11を参照して本発明の一態様に係る画像形成方法の概略を説明する。
図1(a)に例示するように、インクジェット式のプリンター11に例示される流体吐出装置は、ヘッド部HE1と移動手段U1と画像形成手段U2を備え、切断位置で切断される記録媒体SLに画像を形成する。切断位置は、例えば、記録開始部ST1とされる。
【0023】
ヘッド部HE1は、所定の方向に複数のノズル25が並べられ、これらのノズル25からインク(流体)FL1を吐出可能である。複数のノズル25が並ぶ所定の方向は、例えば、記録媒体SLの送り方向Yとされる。移動手段U1は、ヘッド部HE1と記録媒体SLとを複数のノズル25が並ぶ所定の方向へ相対移動させる。例えば、移動手段U1は、ヘッド部HE1に対して記録媒体SLを送り方向Yへ送る。図1(a)の例では、移動手段U1は、「上流側」(図1(a)の下側)から「下流側」(図1(a)の上側)へ向けて、ヘッド部HE1に対して記録媒体SLを送り方向Yへ送る。変形例として、移動手段U1は、記録媒体SLに対してヘッド部HE1を送り方向Yへ送ってもよい。いずれの送りも、「相対移動」に含まれる。画像形成手段U2は、記録データDA1に基づいて形成される本画像IM1と、記録データDA1に基づかないで形成される付加画像IM2とを記録媒体SLに形成する。このとき、記録媒体SLに形成する付加画像IM2の位置を、所定の方向(Y)において本画像IM1よりも下流側の位置であって、切断位置(ST1)でない位置にする。記録データDA1に従って記録される本画像IM1の記録開始部ST1の前の位置に付加画像IM2を付加するようにノズル25からインクFL1を吐出して付加画像IM2とともに本画像IM1を記録媒体SLに形成する。付加画像IM2は、本画像の記録データDA1を補間して得られるような画像ではなく、記録データDA1に依存しないでノズル25からインクFL1を吐出させる画像である。ここで、移動手段U1は移動工程及び移動機能に対応し、画像形成手段U2は画像形成工程及び画像形成機能に対応している。これらの手段U1,U2は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段により構成されてもよいし、ASIC(Application Specific IC;特定用途向け集積回路)といった集積回路など基本的にハードウェア資源で構成されてもよい。
【0024】
付加画像IM2は、記録データDA1に基づかないで形成される画像である。付加画像IM2は、本画像IM1の記録開始部(切断位置)ST1の前の位置でノズル25からインクFL1を吐出させるための画像が好ましい。付加画像IM2は、図1(b)に例示するように、本画像IM1とは無関係な所定のドットパターンとされる。ここで、図1(b)のk,c,m,yは、それぞれ、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のドットDT1を示している。また、付加画像IM2は、記録媒体に付着したインクFL1が他の場所に転写されたりインクFL1の吸収により記録媒体が波打ったりしないように、本画像IM1とともに所定のインク吐出量(記録濃度)以下とされる。なお、記録媒体が波打つと、記録媒体が記録ヘッドのヘッド面等に接触し、記録画像に擦り傷が生じることがある。
図1(b)の付加画像IM2は、付加画像IM2の全画素に対してk,c,m,yのドットが25%ずつ形成されたグレイ(無彩色)画像とされ、インク吐出量が100%とされていることが示されている。むろん、付加画像は、複数色の流体(FL1)を混在させて無彩色にした混合色画像のみならず、造粘し易い色を多く使用して有彩色にした混合色画像、単色画像、等でもよい。付加画像のインク吐出量は、記録媒体に付着したインクが他の場所に転写されたり記録媒体が波打ったりしない限り1画素に2種類以上のドットを重ねることにより100%よりも大きくしてもよいし、100%よりも小さくされてもよい。
【0025】
図11は、付加画像を形成しないインクジェット式のプリンターで記録媒体SLに本画像IM1を形成する比較例を模式的に示している。
ここで、ヘッド部HE1を構成する記録ヘッド23は、主走査方向Xに主走査を繰り返しながらノズル25からインクを吐出してドットを形成し、記録媒体SLの送り方向Yへの送り(副走査)により順次、送り方向Yにずれてインクのドットを形成する。図11に示す記録ヘッド23は、全ノズル25により形成されるドットの送り方向Yのバンド幅(ノズル列の長さy2)の1/4が送り量y1とされている。パス数は、送り方向Yにおける記録媒体SL上の同じ位置で行う主走査の数を1とした主走査数を意味する。パス数1は、本画像IM1の記録開始部ST1に始まる記録開始領域AR1にドットを形成する1回目の主走査を意味し、複数のノズル25のうち送り方向Y上流側の1/4のノズル25dをインク吐出に使用して送り方向Y下流側の3/4のノズル25a〜25cをインク吐出に使用しない。パス数2は、記録媒体SLに対してさらにy1だけ相対的にずれた領域にドットを形成する2回目の主走査を意味し、上流側の1/2のノズル25c,25dをインク吐出に使用して残りのノズル25a,25bをインク吐出に使用しない。パス数3は、上流側の3/4のノズル25b〜25dをインク吐出に使用して残りのノズル25aをインク吐出に使用しない。パス数4以降は、全てのノズル25a〜25dをインク吐出に使用する。
なお、3パス終了までのようにインク吐出に一部のノズルしか使用しない処理を、上端処理とも呼ぶ。
【0026】
1パス目は、ノズル25a〜25cが使われないため、これらのノズル25a〜25cのインクが増粘すると推測される。図11中、吐出に使用されるノズルと比べてインクの増粘が予測されるノズルを黒丸で示している。2パス目は、ノズル25cから記録開始領域AR1に向かって増粘していると考えられるインクが吐出される。3パス目はノズル25bから記録開始領域AR1に向かって増粘していると考えられるインクが吐出され、4パス目はノズル25aから記録開始領域AR1に向かって増粘していると考えられるインクが吐出される。
以上より、上端処理においてインク吐出に使われなかったノズルは、インク吐出に使われたノズルと比べてインクが増粘すると推測される。実際、一般領域AR2と比べて記録開始領域AR1が濃くなるという濃度むらが生じる。
【0027】
そこで、図1(a)に示すように、本画像IM1の記録開始部ST1の前の位置に本画像IM1とは無関係の付加画像IM2を形成することにしている。ここで、ヘッド部HE1に対して送り方向Yへ並べられた複数のノズル25のいずれかが本画像IM1の記録開始部ST1に隣接する位置にあるとき、記録開始部ST1にヘッド部HE1があるといえる。記録開始部ST1は、最初に形成される本画像の記録開始部のみならず、記録媒体SLにおいて本画像間に生じる送り方向Yの余白部分の後となる本画像の記録開始部を含む。
【0028】
上記態様の画像形成方法は、本画像IM1の記録開始部ST1の前の位置で付加画像IM2を形成するためにノズル25からインクFL1が吐出するので、ノズル25内のインクFL1が増粘していても、増粘したインクFL1は、付加画像IM2の形成に使用され、本画像IM1の形成に使用されない。すなわち、付加画像IM2を形成するときにフラッシングと同様の作用が働くので、一般領域AR2と比べて記録開始領域AR1が濃くならない。従って、上記態様の画像形成方法は、記録媒体SLに形成される本画像IM1の記録開始領域AR1におけるインクFL1の濃度むらを低減させることができる。
【0029】
なお、図2(a)に示すように、本画像IM1には、余白や所定パターン等のフチ(縁)の無い画像のみならず、画像部分IM1iの周囲にフチ(例えば1〜5mm程度)を有する画像も含まれる。すなわち、記録データDA1は、フチのデータが無いデータのみならず、フチIM1eのデータを有するデータでもよい。フチIM1eがあっても、フチIM1eの前の付加画像IM2を形成するためにノズル25からインクFL1が吐出するので、記録開始領域AR1の濃度むらを低減させる効果が得られる。通常、フチIM1eの高さ(送り方向Yの長さy3)は、1回の送り量y1よりも低いため、フラッシングと同様の作用が十分に得られる。むろん、送り方向Yにノズル25が並べられたノズル列の長さy2と比べてフチの高さ(y3)は十分に低いので、フラッシングと同様の作用が維持される。ノズル列を単位とする長さy2は、複数のノズル25の送り方向Yにおける並びの長さと言い換えることができ、複数のノズル25からインク滴が吐出されたときに記録媒体SLに形成されるドットの送り方向Yの長さと言い換えることもできる。
【0030】
図2(b)に示すように、付加画像IM2の送り方向(所定の方向)Yの長さyhは、本画像IM1を形成するための記録媒体SLの1回の送り量y1でもよい。この送り量y1は、相対移動の1回の移動量である。インターレース送りの場合、送り量y1は、送り方向Yにノズル25が並べられたノズル列の長さy2よりも短くされる。バンド送りの場合、送り量y1は、ノズル列の長さy2とされる。付加画像IM2の高さ(yh)を送り量y1以上にすると、本画像IM1の記録開始領域AR1におけるインクFL1の濃度むらが効果的に低減する。
【0031】
図2(c)に示すように、付加画像IM2の送り方向(所定の方向)Yの長さyhは、送り方向Yにノズル25が並べられたノズル列の長さy2でもよい。バンド送りの場合、yh=y2とすると、本画像IM1の記録開始領域にドットを形成する1パス目の直前のパスで全ノズルからインクFL1が吐出するので、本画像IM1の記録開始領域の濃度むらが低減する。インターレース送りの場合、付加画像IM2の高さ(yh)はノズル列の長さy2よりも低くてもよい。付加画像の高さ(yh)がノズル列の長さy2よりも高いとヘッド部HE1の走査が増えることになるが、付加画像の高さ(yh)をy2以下にすることによりインクの消費量を抑えて効率よく付加画像IM2を形成することが可能になる。
【0032】
(2)プリンターに具体化した実施形態:
次に、図3〜10を参照して、本技術をインクジェット式のプリンターに具体化した実施形態を説明する。
図3(a)に示すプリンター(流体吐出装置)11は、シリアルタイプのインクジェット式の記録装置とされている。プリンター11は、長尺状のシートとされた印刷用紙である記録媒体SLが巻回されたロールRSから記録媒体SLを少しずつ送り出し搬送する搬送装置12を備えている。
【0033】
第1のモーター13により軸部材14が所定方向に回転駆動することで、ロールRSから長尺状の記録媒体SLが搬送経路に沿って送り出される。搬送装置12は、ロールRSからシート状の記録媒体SLを少しずつ送り出すための送出し部15と、この送出し部15の送り方向Y下流側に配置される搬送ローラー対16とを備えている。送出し部15は、第2のモーター18が駆動されることによって送出しローラー17aが回転しかつ従動ローラー17bが従動回転することにより、記録媒体SLを送り方向下流側へ送り出す。
【0034】
搬送ローラー対16は、搬送モーター19の駆動によって搬送ローラー16aが回転しかつ従動ローラー16bが従動回転することにより、記録媒体SLを送り方向Y下流側へ搬送する。
【0035】
長尺状の記録媒体SLの送り方向Yにおける中途位置には、記録媒体SLに対して記録を施す記録ユニット20が設けられている。送り方向Yは、主走査方向Xと直交する副走査方向である。記録ユニット20には、キャリッジ21がガイド軸22に案内されて主走査方向Xに往復移動可能な状態で設けられている。キャリッジ21は記録媒体SLと対向する部分に複数の記録ヘッド23を有している。記録ヘッド23には、プリンター11に着脱自在に装着されたカートリッジからインク(流体)FL1が供給される。キャリッジモーター24が正逆転駆動されることによってキャリッジ21は主走査方向Xに往復移動し、この移動途中で記録ヘッド23内の駆動素子PE1が駆動されることで各ノズル25から記録媒体SLの表面に向けてインク滴が噴射される。ガイド軸22とキャリッジモーター24は、ヘッド部HE1と記録媒体SLとを相対移動させる相対移動手段U11を構成する。
【0036】
キャリッジ21と共に記録ヘッド23が主走査方向Xに1回(1パス)移動して行われる1行分の印刷動作と、記録媒体SLを次行の記録位置まで搬送する搬送装置12による搬送動作とが略交互に行われることにより、記録媒体SLの表面に印刷が施される。記録ヘッド23と記録媒体SLを挟んで対向する位置には、記録媒体SLを支持する支持部材26が記録媒体SLの幅方向(主走査方向X)に沿って延びるように設けられている。
【0037】
記録ユニット20の送り方向Y下流側の切断位置では、切断用モーター32からの駆動力により切断ユニット(切断手段)30のカッター31が記録媒体SLの幅方向(主走査方向X)へ移動することにより、長尺状の記録媒体SLが本画像IM1の記録開始部ST1や記録終了部で切り離される。図3(a)に示すカッター31は、例えば1〜2mm程度の間隔を空けて平行に配置された二枚刃であり、本画像IM1の記録開始部ST1の境界部分や記録終了部の境界部分を挟む位置で境界部分を切断する。むろん、記録開始部ST1を切断することには、記録開始部ST1の境界部分を挟む切断が含まれる。
切断ユニット30の送り方向下流側には、記録媒体SLから切り離されたカットシートSCを送り方向最下流へ排出する排出ユニット34が設けられている。
【0038】
排出ユニット34は、送り方向Yに沿って配置される複数の排出ローラー対35,36を備えている。排出用モーター37が駆動されると、記録済みのカットシートSCを送り方向Yに沿った二位置で挟持しつつ図3(a),(b)に示すローラー35a,35b及びローラー36a,36bがそれぞれ回転し、カットシートSCは送り方向下流側へ排出され、排出トレイ38に積層状態に収容される。すなわち、画像を形成した記録媒体(カットシートSC)を送り方向Yに送るためのローラー35a,35b,36a,36bは、記録媒体(SC)を排出する側の位置に設けられている。
搬送ローラー対16よりも送り方向上流側には、記録媒体SLの先端を検出するための検出センサー39が設けられている。この検出センサー39からの検出信号は、プリンター11を制御するコントローラー40に出力され、記録媒体SLの搬送位置制御などに用いられる。
【0039】
図4は、ヘッド部HE1を設けたキャリッジ21の底面を例示している。ヘッド部HE1は、主走査方向Xへ複数の記録ヘッド23に分割されている。各記録ヘッド23には、主走査方向と直交する副走査方向(Y)へ複数個(例えば180個)のノズル25が所定のノズルピッチkで並んだノズル列が形成されている。図4に示すヘッド部HE1は、Kのノズル列NZk、Cのノズル列NZc、Mのノズル列NZm、Yのノズル列NZy、が配置されている。ヘッド部HE1は、主走査方向Xに主走査を繰り返しながらノズル25からインク滴を吐出してインクFL1のドットDT1を記録媒体に形成する。
【0040】
図5は、搬送装置12及びその駆動制御系を省略してプリンター11の内部構成の概略を示している。本プリンター11は、搬送装置12、搬送駆動部51及び搬送制御部65が移動手段U1を構成し、記録ユニット20及びコントローラー40が画像形成手段U2を構成している。
プリンター11の内部に設けられたコントローラー40は、I/F(インターフェイス)部41を介してホスト装置HCから印刷データである記録データDA1を受信する。この記録データDA1は、受信バッファー42を経て画像処理部44に入力される。画像処理部44は、記録データDA1に対して所定の画像処理を行う。該画像処理後の記録データDA1は、付加画像データDA2が付加され、イメージバッファー46を経てヘッド駆動部49へ送られる。記録データDA1及び付加画像データDA2は、記録媒体SLへのドットDT1の形成状態を画素毎に表すデータである。ヘッド駆動部49は、これらのデータ(DA1,DA2)に従い所定の吐出タイミングに合わせて付加画像データDA2及び記録データDA1に従い複数のノズル25からインクを吐出する。記録媒体SLには、付加画像データDA2に対応した付加画像IM2が形成され、記録データDA1に対応した本画像IM1が形成される。
【0041】
コントローラー40は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC、ROM(Read Only Memory)、不揮発性メモリー及びRAM(Random Access Memory)を有している。ROMには、画像形成プログラムを含む各種制御プログラム及び各種データなどが記憶されている。不揮発性メモリーには、ファームウェアプログラムを始めとする各種プログラム及び印刷処理に必要な各種データなどが記憶されている。RAMは、CPUの演算結果等を一時的に記憶する他、ホスト装置HCから受信した記録データDA1、記録データDA1の処理途中及び処理後のデータなどを格納するバッファーとして用いられる。
【0042】
コントローラー40は、I/F部41の他、受信バッファー42、コマンド解析部43、画像処理部44、制御部45、イメージバッファー46、不揮発性メモリー47、ヘッド駆動部49、キャリッジ駆動部50、搬送駆動部51、等を備えている。プリンター11には、ユーザーが入力操作を行うための操作部53が設けられ、操作部53の操作による入力値はI/F部41を介して制御部45に入力される。なお、コマンド解析部43、画像処理部44及び制御部45は、ROMに記憶された制御プログラムを実行するCPU(ソフトウェア)とASIC(ハードウェア)の少なくとも一方により実現されている。もちろん、各部43〜45は、ソフトウェアとハードウェアの協働により構築される以外に、ソフトウェアだけで構成されたり、ハードウェアだけで構成されたりしてもよい。受信バッファー42及びイメージバッファー46は、RAMにより構成されている。
【0043】
キャリッジ21は、キャリッジモーター24の駆動軸に連結された駆動用のプーリー55と従動用のプーリー56に巻き掛けられたタイミングベルト57の一部と固定されている。キャリッジモーター24が正逆転駆動されることにより、キャリッジ21は、正転・逆転するタイミングベルト57を介して主走査方向Xに往復移動する。キャリッジ21の移動経路の背面側の位置に設けられたリニアエンコーダー58は、一定ピッチ(例えば1/180インチ=1/180×2.54cm)毎に多数のスリットが形成されたテープ状の符号板58aと、キャリッジ21に設けられた発光素子と受光素子とを有するセンサー58bとを有している。キャリッジ21が移動するときに発光素子から出射されて符号スリットを透過した光を受光素子が受光することで、センサー58bが検出パルスを出力する。コントローラー40は、リニアエンコーダー58から入力した検出パルス(A相とB相の90度位相のずれた2つのパルス)のパルスエッジを計数するCR位置カウンターの計数値をキャリッジが反ホーム位置側へ移動するときにインクリメントし、ホーム位置側へ移動するときにデクリメントする。これにより、ホーム位置を原点とするキャリッジ21の移動位置(キャリッジ位置)が検出される。
【0044】
ホスト装置HCに記憶されているプリンタードライバーPDは、モニター表示用の表色系(例えばRGB表色系)の画像データに対し、公知の色変換処理、解像度変換処理、ハーフトーン処理及びラスタライズ処理などを行って記録データDA1を生成する機能をコンピューターに実現させる。色変換処理の際に参照される色変換テーブルには、記録媒体の単位面積当たりのインク吐出量を所定量以下に制限する対応関係が規定されている。生成される記録データDA1には、制御コマンドや印刷画像データが含まれる。ヘッダーに記述された制御コマンドは、印刷条件データ及び上記印刷画像データに基づいて作成されたもので、給紙動作、紙送り動作、排紙動作等の搬送系コマンドや、キャリッジ動作及び記録ヘッド動作(記録動作)等の印字系コマンドなどの各種コマンドからなる。
【0045】
受信バッファー42は、I/F部41を介して受信された記録データDA1が一時格納される記憶領域(格納領域)である。コマンド解析部43は、受信バッファー42から記録データDA1のヘッダーを読み出してその中の制御コマンド等を取得し、プリンター記述言語で記述された制御コマンドを解析する。コマンド解析結果は各制御部(63,64,65)に送られる。画像処理部44は、記録データDA1を受信バッファー42から一行分(主走査ライン)ずつ読み出し、所定の画像処理を行い、付加画像データDA2を付加したヘッドイメージデータをイメージバッファー46に格納する。
【0046】
フラッシング制御部61は、キャリッジ21をホームポジション等のフラッシング位置へ移動させてノズル25からインクを吐出させるフラッシング制御を行う。
クリーニング制御部62は、キャリッジ21をホームポジション(非印字領域)へ移動させキャッピング手段84及び吸引ポンプ85を動作させることによるノズル25のクリーニング制御を行う。キャッピング手段84は、直上まで移動した記録ヘッド23のノズル形成面を封止する。キャッピング手段84の下方に配置される吸引ポンプ85は、キャッピング手段84の内部空間に負圧を与える。このようにして、クリーニングが行われる。キャッピング手段84の近傍に配置されるワイピング部材は、ゴムといった弾性板等から構成され、キャリッジ21がキャッピング手段84側に移動する際に記録ヘッド23のノズル形成面を払拭する。
【0047】
ヘッド制御部63は、コマンド解析部43からのコマンド解析結果に従ってヘッド駆動部49を制御する。キャリッジ制御部64は、リニアエンコーダー58から入力されるA相・B相の二相のエンコーダーパルス信号の位相差に基づきキャリッジ21の移動方向を認識する。キャリッジ制御部64は、エンコーダーパルス信号のエッジを検出する度に、キャリッジ用のカウンターを往動時にインクリメント、復動時にデクリメントすることにより、キャリッジ21の原点位置からの移動位置を検出する。このキャリッジ21の主走査方向Xにおける位置は、キャリッジモーター24の速度制御に用いられる。搬送制御部65は、コマンド解析部43からのコマンド解析結果に従って、記録媒体SLを搬送駆動する搬送駆動部51を制御する。
【0048】
不揮発性メモリー47には、記録データDA1に依存しないでノズル25からインクFL1を吐出させる所定のドットパターン(付加画像IM2)を表す付加画像データDA2等が記憶されている。コントローラー40は、ホスト装置HCに記憶されている付加画像データDA2をホスト装置HCから受信して不揮発性メモリー47に記憶してもよい。不揮発性メモリー47には、フラッシュメモリーといった不揮発性半導体メモリー、ハードディスクといった磁気ディスク、等を用いることができる。
【0049】
ヘッド駆動部49は、内部の駆動信号生成回路により吐出波形パルスを生成する。大中小ドットなど複数の大きさのドットDT1を形成する場合には、例えば、電圧差を異ならせた複数の吐出波形パルスを生成すればよい。ヘッド駆動部49は、入力される階調値データに基づいて吐出波形パルスを記録ヘッド23内の各駆動素子PE1に印加する。図4に示すように、記録ヘッド23は、ノズル25毎に流体吐出用の駆動素子PE1を内蔵している。各駆動素子PE1のうち階調値データで非吐出の値(例えば0)以外の値(例えば1)をとる画素を打つノズルに対応する駆動素子PE1には吐出波形パルス(駆動電圧)が印加され、その駆動素子PE1に対応するノズルからインク滴が噴射される。駆動素子PE1には、ピエゾ素子といった圧電駆動素子、静電駆動素子、インクを加熱して膜沸騰による気泡(バブル)の圧力を利用してノズルから流体を吐出させるヒーター、等を用いることができる。また、記録ヘッド23には、プリンター11の温度を検出するための温度センサー(温度検出手段)23sが設けられている。この温度センサー23sの検出温度は、制御部45に読み込まれる。
【0050】
(3)印刷処理:
図6は、プリンター11で行われる印刷処理をフローチャートにより例示している。この処理は、コントローラー40が主体となって行い、ひとまとまりの印刷ジョブ(記録データDA1)の受信が開始されたときに開始し、マルチタスクにより他の処理と並列して行われる。印刷処理の開始時にヘッド部HE1をキャッピング手段84から外して印字前フラッシングを行ってもよい。印字前フラッシングは、印刷処理の直前に行われる記録前フラッシングのことである。なお、図6の処理を行うコントローラー40は、記録ユニット20とともに画像形成手段U2を構成する。
【0051】
印刷処理が開始すると、コントローラー40は、受信した記録データDA1を取得し、画像処理部44で記録データDA1に対して所定の画像処理を行って、付加画像データDA2を格納する領域を空けて画像処理後の記録データDA1をイメージバッファー46に格納する(ステップS102。以下、「ステップ」の記載を省略)。S104では、不揮発性メモリー47から付加画像データDA2を読み出して記録データDA1の前の位置に付加されるようにイメージバッファー46に格納する。ホスト装置HCから付加画像データDA2を受信した場合には、この受信した付加画像データDA2をイメージバッファー46に格納してもよい。S106では、付加画像IM2と本画像IM1の印刷を開始し、記録媒体SLを送り方向Yへ送りながら、本画像IM1の記録開始部ST1の前の位置に付加画像IM2を付加するようにノズル25からインクFL1を吐出していく。付加画像IM2を形成するために本画像の記録開始部ST1の前の位置でノズル25からインク滴が吐出するので、ノズル25内のインクFL1が増粘していても、該増粘したインクFL1は付加画像IM2の形成に使用される。すなわち、付加画像IM2を形成するときにフラッシングと同様の作用が働くので、増粘したインクFL1は本画像IM1の形成に使用されない。
【0052】
本画像IM1の記録開始部ST1が所定の切断位置になると、コントローラー40は、切断用モーター32を駆動してカッター31を主走査方向Xへ移動させ、長尺状の記録媒体SLを本画像の記録開始部ST1で切断する(S108)。本画像IM1の記録終了部が所定の切断位置になると、コントローラー40は、切断用モーター32を駆動してカッター31を主走査方向Xへ移動させ、長尺状の記録媒体SLを本画像の記録終了部で切断して(S110)、印刷処理を終了させる。
【0053】
以上説明したように、本画像の記録開始部ST1の前の位置にあるノズル25のインクFL1が増粘しても、該増粘したインクFL1が本画像IM1の形成に使用されないので、本画像IM1の記録開始領域AR1が一般領域AR2よりも濃くなるという濃度むらが抑制される。すなわち、上述した態様は、記録媒体SLに形成される本画像IM1の記録開始領域AR1におけるインクFL1の濃度むらを低減させることができる。特に、上記態様は、印字中に行われる記録時フラッシングの頻度を変えることができない流体吐出装置に好適である。
【0054】
(4)付加画像の記録濃度を送り方向の位置に応じて変える例:
図7は、付加画像IM2のインク吐出量(記録濃度)を送り方向(所定の方向)Yの位置に応じて変える例を模式的に示している。ここで、各ノズル及び各ドットDT1に付した数字は、最初に本画像の記録開始領域AR1を形成する主走査を1回目とするパス数を示している。各ドットDT1に付したa,b,c,dは、それぞれ、ノズル25a,25b,25c,25dから吐出されるインク滴により形成されるドットを示している。付加画像IM2の各領域IM2a,IM2b,IM2cは、それぞれ、1,2,3パス目で形成されるドットパターンを示している。記録ヘッド23の下に付した矢印は、記録ヘッド23の主走査の方向を示している。図7の例は、1パス目でノズル25a,25b,25cから吐出されるインク滴により1a,1b,1cのドットDT1が形成され、2パス目でノズル25a,25bから吐出されるインク滴により2a,2bのドットDT1が形成され、3パス目でノズル25aから吐出されるインク滴により3aのドットDT1が形成されることが示されている。図8も、同様である。
【0055】
図7の例は、本画像IM1から最も遠い第一領域IM2aのインク吐出量が(4/24)×100=16.7%であり、中間の第二領域IM2bのインク吐出量が(12/24)×100=50%であり、本画像IM1に最も近い第三領域IM2cのインク吐出量が(12/24)×100=100%である。従って、付加画像IM2のインク吐出量(記録濃度)は、送り方向Yの位置に応じて変わるインク吐出量とされている。
インターレース送りのように1回の送り量y1がノズル列(複数のノズル25)の長さy2よりも短い場合、本画像の記録開始領域AR1を形成するための複数のノズル25には、送り前に本画像の記録開始領域AR1を形成するために使用されたノズルと使用されなかったノズルとが混在する。従って、付加画像IM2のインク吐出量が送り方向Yの位置に応じて変わるインク吐出量とされると、インクの消費量を抑えて効率よく付加画像を形成することが可能になる。
【0056】
また、付加画像IM2を送り方向Yにおいて本画像IM1に近い後側領域AY2と本画像IM1から遠い前側領域AY1とに分けたとき、後側領域AY2におけるインク吐出量(Cay2とする)が前側領域AY1におけるインク吐出量(Cay1とする)よりも高くされている。ここで、後側領域AY2と前側領域AY1との境界は、例えば、送り方向Yにおける付加画像IM2の中間部分とすることができる。図7の例では、後側領域AY2のインク吐出量Cay2が(30/36)×100=83.3%とされ、前側領域AY1のインク吐出量Cay1が(10/36)×100=27.8%とされている。後側領域AY2のインク吐出量Cay2が前側領域AY1のインク吐出量Cay1よりも高くされると、本画像の記録開始領域AR1に近くなったときに多くのインク滴がノズル25から吐出されるので、さらに効率よく付加画像を形成することが可能になる。
【0057】
なお、図7に示すような付加画像IM2を不揮発性メモリー47に記憶させ、図6で示したような印刷処理をプリンター11で行うと、記録濃度を送り方向Yの位置に応じて変えた付加画像IM2を本画像の記録開始部ST1の前の位置に形成した記録物を得ることができる。
【0058】
(5)付加画像の記録濃度を走査方向の位置に応じて変える例:
図8は、付加画像IM2のインク吐出量(記録濃度)を走査方向(X)の位置に応じて変える例を模式的に示している。ここで、本画像IM1に最も近い第三領域IM2cについて、1,2,3パス目で形成されるドットDT1を分けて示している。図8に示すように、付加画像IM2のインク吐出量(記録濃度)は、主走査方向Xの位置に応じて変わるインク吐出量とされている。このような付加画像IM2を形成すると、インクFL1の消費量を抑えて効率よく付加画像IM2を形成することが可能になる。
【0059】
また、各パスにおいてヘッド部HE1の1回の走査を前半の走査SN1と後半の走査SN2に分けたとき、付加画像IM2は、後半の走査SN2におけるインクFL1の吐出量が前半の走査SN1におけるインクFL1の吐出量よりも多くされてもよい。ここで、前半の走査SN1と後半の走査SN2との境界は、例えば、主走査方向Xにおける付加画像IM2の中間部分とすることができる。図8の例では、記録ヘッド23が左から右へ向かう1パス目の第三領域IM2cにおいて、前半の走査SN1におけるインク吐出量が0%とされ、後半の走査SN2におけるインク吐出量が50%とされている。記録ヘッド23が右から左へ向かう2パス目の第三領域IM2cにおいても、前半の走査SN1におけるインク吐出量が0%とされ、後半の走査SN2におけるインク吐出量が50%とされている。記録ヘッド23が左から右へ向かう3パス目の第三領域IM2cにおいても、前半の走査SN1におけるインク吐出量が0%とされ、後半の走査SN2におけるインク吐出量が50%とされている。後半の走査SN2のインク吐出量が前半の走査SN1のインク吐出量よりも高くされると、本画像の記録開始領域AR1に近くなったときに多くのインク滴がノズル25から吐出されるので、さらに効率よく付加画像を形成することが可能になる。
【0060】
むろん、図8に示すような付加画像IM2を不揮発性メモリー47に記憶させ、図6で示したような印刷処理をプリンター11で行うと、記録濃度を走査方向(X)の位置に応じて変えた付加画像IM2を本画像の記録開始部ST1の前の位置に形成した記録物を得ることができる。
【0061】
(6)付加画像の記録濃度を走査方向の位置に応じて変える例:
図9(a)は、ローラー35b,36bの位置を避けて形成された付加画像IM2を模式的に例示している。ホスト装置HCから送信される記録データDA1は、プリンタードライバーPDによる色変換等の処理によって所定のインク吐出量以下となる本画像IM1を形成するデータとされる。しかし、プリンタードライバーPDによる処理が行われない付加画像データDA2は、所定のインク吐出量を超えるデータとされる可能性がある。付加画像IM2が所定のインク吐出量を超えたドットパターンとされると、記録媒体に吐出されたインクFL1が排出側のローラー35b,36bに付着して本画像IM1に転写されることが想定される。そこで、記録媒体(カットシートSC)が送り方向(所定の方向)Yへ搬送されるときにローラー35b,36bと接触しない位置に、すなわち、主走査方向Xにおいてローラー35b,36bの位置と重ならないように付加画像IM2を記録媒体SLに形成してもよい。すると、記録媒体に形成された付加画像IM2のインクFL1がローラー35b,36bに付着しないので、ローラー35b,36bを介して付加画像IM2のインクFL1が本画像IM1に混入しない。
【0062】
また、図9(b)に示す付加画像IM2のように、記録媒体(SC)が送り方向Yへ搬送されるときにローラー35b,36bと接触する領域IM2bを所定のインク吐出量以下に制限したドットパターンにしてもよい。この付加画像IM2は、ローラー35b,36bと接触しない領域IM2aが所定のインク吐出量を超えたドットパターンとされても、記録媒体に形成された付加画像IM2のインクFL1がローラー35b,36bに付着しないので、ローラー35b,36bを介して付加画像IM2のインクFL1が本画像IM1に混入しない。
【0063】
なお、図9に示すような付加画像IM2を不揮発性メモリー47に記憶させ、図6で示したような印刷処理をプリンター11で行うと、ローラー35b,36bと接触する位置を避けて付加画像IM2を形成した記録物を得ることができる。
【0064】
(7)余白等のデータの無いフチ付き本画像に付加画像を付加する例:
余白のデータは、記録データDA1に含まれている場合もあれば、記録データDA1に含まれていない場合もある。後者の場合、記録媒体を送り方向Yへ設定量送ることにより、本画像IM1の記録開始領域AR1等に余白(例えば1〜5mm程度)を追加することができる。図2(a)を参照して説明すると、本画像IM1にフチIM1eを追加する場合、本画像に追加するフチIM1eのデータと、フチIM1eの前の位置に設けられる付加画像IM2のデータとを記録データDA1に付加し、該記録データDA1に従って付加画像IM2とともにフチIM1eを追加した本画像IM1を記録媒体SLに形成してもよい。すなわち、記録媒体SLに形成する付加画像IM1の位置が、所定の方向(Y)においてフチIM1eよりも下流側の位置にされる。
【0065】
図10は、変形例に係る印刷処理をフローチャートに示している。本処理は、図6で示したS102とS104の処理の間にS202〜S204の処理が追加されている。むろん、図10の印刷処理は、コントローラー40が主体となって行い、ひとまとまりの印刷ジョブ(記録データDA1)の受信が開始されたときに開始し、マルチタスクにより他の処理と並列して行われる。なお、記録データDA1には、本画像に余白(IM1e)を追加するか否かを表す設定情報が付加されているものとする。
【0066】
印刷処理が開始すると、コントローラー40は、受信した記録データDA1を取得し、画像処理部44で記録データDA1に対して所定の画像処理を行って、画像処理後の記録データDA1をイメージバッファー46に格納する(S102)。S202では、本画像IM1に余白を設ける設定であるか否かを判断する。例えば、記録データDA1に付加されている設定情報が余白を追加することを表す情報であるか否かを判断すればよい。余白を設けない設定であれば、コントローラー40は、余白(IM1e)のデータをイメージバッファー46に格納せずに付加画像データDA2を格納して本画像の記録開始部ST1の前の位置に付加画像IM2を付加する印刷を実行し(S104〜S110)、印刷処理を終了させる。一方、余白を設ける設定であれば、コントローラー40は、本画像IM1の縁部に余白(IM1e)を追加するようにイメージバッファー46の記録データDA1に余白のデータ(例えばNullデータ)を付加する(S204)。その後、コントローラー40は、付加画像データDA2をイメージバッファー46に格納して、余白(IM1e)を追加した本画像IM1の記録開始部ST1の前の位置に付加画像IM2を付加する印刷を実行し(S104〜S110)、印刷処理を終了させる。
【0067】
以上説明したように、本画像IM1に設けられる余白のデータが記録データDA1に含まれていなくても、本画像IM1に余白が追加された上で付加画像IM2が付加される。なお、本画像に追加するフチは、余白以外にも、所定パターン等でもよい。
以上より、上記態様は、本画像IM1に設けられるフチIM1eのデータが記録データDA1に含まれていない場合に本画像の記録開始領域AR1におけるインクの濃度むらを低減させる好適な構成を提供することができる。なお、フチIM1eの幅(送り方向Yの長さy3)は、1回の送り量y1(図1(a)参照)よりも狭いため、フラッシングと同様の作用が維持される。
【0068】
(8)変形例:
上述した実施形態は、以下のような形態に変更することもできる。
上述した処理は、ホスト装置HC等、プリンターに接続される外部装置で行われてもよい。この場合、外部装置に画像形成装置が設けられ、プリンターと外部装置とに跨って流体吐出装置が設けられる。むろん、プリンターと外部装置とが協働して上述した処理を行ってもよい。この場合、プリンターと外部装置とに跨って画像形成装置及び流体吐出装置が設けられる。すなわち、プリンターと外部装置を含むシステムで本発明の流体吐出装置を構成してもよい。
上述した処理の各ステップの順番は、適宜、変更可能である。また、本画像の記録開始部でユーザー等が記録媒体を切断することを前提として、切断ユニット(切断手段)30が無く、S108,S110の処理を行わない流体吐出装置も、本発明に含まれる。
【0069】
上記付加画像は、流体吐出装置の温度に応じて変わるドットパターンとされてもよい。これにより、流体吐出装置の温度に応じたインク吐出を実現することができ、インクの消費量を適切に少なくすることが可能になる。例えば、温度センサー23sの検出温度がTE1℃以上の場合、付加画像のドットパターンをTE1℃未満の場合と比べてインク吐出量(記録濃度)の多いドットパターンとしてもよい。記録ヘッドの温度が高いほどノズル内のインクが増粘し易いため、TE1℃以上の場合に付加画像のインク吐出量を多くすることにより、本画像の記録開始領域の濃度むらを低減させることができるとともにインクの消費量を適切に少なくすることが可能になる。
【0070】
また、温度センサー23sの検出温度がTE1℃以上の場合に付加画像を本画像に付加し、TE1℃未満の場合に付加画像を付加しないようにすることも、本技術に含まれる。この技術によっても、本画像の記録開始領域の濃度むらを低減させることができるとともにインクの消費量を適切に少なくすることが可能になる。
【0071】
上記付加画像は、画像形成に関する画像形成モードに応じて変わるドットパターンとされてもよい。例えば、画像形成モードがバンド送りモードである場合にインク吐出量(記録濃度)の偏りの無い付加画像を形成し、画像形成モードがインターレースモードである場合に図7で示したように後側領域AY2のインク吐出量が前側領域AY1のインク吐出量よりも高くされた付加画像を形成してもよい。この態様は、本画像の記録開始領域の濃度むらを画像形成モードに応じて適切に低減させることができる。
【0072】
また、付加画像を付加するための画像形成モードである付加画像形成モードと、付加画像を付加しないための画像形成モードである付加画像非形成モードとを設けてもよい。付加画像形成モードであるときに付加画像を本画像に付加し、付加画像非形成モードであるときに付加画像を付加しないようにすることも、本技術に含まれる。高画質モード等を専用の付加画像形成モードの代わりにし、高速モード等を専用の付加画像非形成モードの代わりにしてもよい。これらの態様は、流体吐出装置のユーザーの好みに応じて本画像の画質を向上させたりインク消費量を少なくしたりすることができるので、利便性が向上する。
【0073】
印刷装置は、カラーのインクジェット式プリンターの他、単色機、ドットインパクト式プリンター、レーザープリンター、スキャナーや測色機といった読取手段を備える複合機、記録媒体の幅方向一杯に長く形成された印刷ヘッドに対して記録媒体を搬送して印刷を行うラインプリンター、等でもよい。記録媒体は、紙の他、樹脂シート、金属製フィルム、布、フィルム基板、樹脂基板、半導体ウェハ、光ディスクや磁気ディスクといった記憶媒体、等でもよい。記録媒体の形状は、長尺状の他、単票紙といったカットシート、立体形状、等でもよい。
【0074】
本発明を適用可能な流体吐出装置は、プリンターの他、微小量の液滴を噴射(吐出)する液体吐出ヘッド等を備える液体吐出装置等、インク以外の流体を吐出する装置でもよい。ここでいう液滴は、液体吐出装置から吐出される液体の状態を言い、粒状、涙状、糸状に尾を引くもの等を含まれる。ここでいう液体は、液体吐出装置が吐出させることができるような材料であればよく、例えば、物質が液相であるときの状態のものとして、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、等が含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子といった固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたもの等が含まれる。インクや液晶等は、液体の代表的な例である。前記インクは、一般的な水性インク及び油性インク、並びに、ジェルインク、ホットメルトインク、等の各種液体組成物を包含するものとする。液体吐出装置には、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造等に用いられる電極材や色材といった材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を吐出する装置が含まれる。また、液体吐出装置には、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出する装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する装置、捺染装置、マイクロディスペンサ、時計やカメラといった精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)等を形成するために紫外線硬化樹脂といった透明樹脂液を基板上に吐出する装置、基板等をエッチングするために酸やアルカリといったエッチング液を吐出する装置、等が含まれる。
また、流体は、非気体の流体が好ましいものの、トナー等の粉粒体でもよい。粉粒体でも、吐出しない期間が長いとノズルの目詰まりが予測されるためである。
【0075】
なお、付加画像の流体の記録濃度を送り方向や走査方向に応じて変えるのは必須ではなく、付加画像の送り方向の長さを1回の送り量以上にしたりノズル列の長さ以下にしたりするのも必須ではない。
むろん、従属請求項に係る構成要件を有しておらず独立請求項に係る構成要件のみからなる装置、方法、プログラム、等でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
【0076】
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、記録媒体に形成される本画像の記録開始領域における流体の濃度むらを低減させる技術等を提供することができる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりして本発明を実施することも可能であり、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりして本発明を実施することも可能である。従って、本発明は、上述した実施形態や変形例に限られず、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0077】
11…プリンター(流体吐出装置)、12…搬送装置、20…記録ユニット、21…キャリッジ、23…記録ヘッド、23s…温度センサー、25,25a〜25d…ノズル、30…切断ユニット(切断手段)、40…コントローラー、45…制御部、AR1…記録開始領域、AR2…一般領域、AY1…前側領域、AY2…後側領域、DA1…記録データ、DA2…付加画像データ、DT1…ドット、FL1…インク(流体)、HE1…ヘッド部、IM1…本画像、IM1e…フチ、IM1i…フチを除いた画像部分、IM2…付加画像、NZk,NZc,NZm,NZy…ノズル列、PE1…駆動素子、SL…記録媒体、SN1…前半の走査、SN2…後半の走査、ST1…記録開始部、U1…移動手段、U2…画像形成手段、X…主走査方向、Y…送り方向(所定の方向)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断位置で切断される記録媒体に画像を形成する流体吐出装置であって、
複数のノズルを並べたヘッド部と、
前記ヘッド部と前記記録媒体とを前記複数のノズルが並ぶ所定の方向へ相対移動させる移動手段と、
記録データに基づいて形成される本画像と、前記記録データに基づかないで形成される付加画像とを前記記録媒体に形成する画像形成手段とを備え、
前記画像形成手段は、前記記録媒体に形成する前記付加画像の位置を、前記所定の方向において前記本画像よりも下流側の位置であって、前記切断位置でない位置にする、流体吐出装置。
【請求項2】
前記付加画像の前記所定の方向の長さは、前記本画像を形成するための前記相対移動の1回の移動量以上である、請求項1に記載の流体吐出装置。
【請求項3】
前記付加画像の前記所定の方向の長さは、前記所定の方向に並べられたノズルの列の長さ以下である、請求項1又は請求項2に記載の流体吐出装置。
【請求項4】
前記本画像を形成するための前記相対移動の1回の移動量は、前記所定の方向に並べられたノズルの列の長さよりも短く、
前記画像形成手段は、前記付加画像の流体の記録濃度を、前記所定の方向の位置に応じて変える、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の流体吐出装置。
【請求項5】
前記ヘッド部は、前記所定の方向と交わる走査方向に走査を繰り返し、
前記画像形成手段は、前記付加画像の流体の記録濃度を、前記走査方向の位置に応じて変える、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の流体吐出装置。
【請求項6】
画像を形成した前記記録媒体を排出する側の位置に前記記録媒体を前記所定の方向に送るためのローラーをさらに備え、
前記画像形成手段は、前記記録媒体における前記付加画像の位置を、前記ローラーと接触しない位置にする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の流体吐出装置。
【請求項7】
前記画像形成手段は、前記本画像にフチを追加する場合、前記記録媒体に形成する前記付加画像の位置を、前記所定の方向において前記フチよりも下流側の位置にする、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の流体吐出装置。
【請求項8】
複数のノズルを並べたヘッド部と記録媒体とを前記複数のノズルが並ぶ所定の方向へ相対移動させ、切断位置で切断される前記記録媒体に画像を形成する画像形成方法であって、
記録データに基づいて形成される本画像と、前記記録データに基づかないで形成される付加画像とを前記記録媒体に形成する際に、前記記録媒体に形成する前記付加画像の位置を、前記所定の方向において前記本画像よりも下流側の位置であって、前記切断位置でない位置にする、画像形成方法。
【請求項9】
複数のノズルを並べたヘッド部と記録媒体とを前記複数のノズルが並ぶ所定の方向へ相対移動させ、切断位置で切断される前記記録媒体に画像を形成するための画像形成プログラムであって、
記録データに基づいて形成される本画像と、前記記録データに基づかないで形成される付加画像とを前記記録媒体に形成する際に、前記記録媒体に形成する前記付加画像の位置を、前記所定の方向において前記本画像よりも下流側の位置であって、前記切断位置でない位置にする機能をコンピューターに実現させる、画像形成プログラム。
【請求項1】
切断位置で切断される記録媒体に画像を形成する流体吐出装置であって、
複数のノズルを並べたヘッド部と、
前記ヘッド部と前記記録媒体とを前記複数のノズルが並ぶ所定の方向へ相対移動させる移動手段と、
記録データに基づいて形成される本画像と、前記記録データに基づかないで形成される付加画像とを前記記録媒体に形成する画像形成手段とを備え、
前記画像形成手段は、前記記録媒体に形成する前記付加画像の位置を、前記所定の方向において前記本画像よりも下流側の位置であって、前記切断位置でない位置にする、流体吐出装置。
【請求項2】
前記付加画像の前記所定の方向の長さは、前記本画像を形成するための前記相対移動の1回の移動量以上である、請求項1に記載の流体吐出装置。
【請求項3】
前記付加画像の前記所定の方向の長さは、前記所定の方向に並べられたノズルの列の長さ以下である、請求項1又は請求項2に記載の流体吐出装置。
【請求項4】
前記本画像を形成するための前記相対移動の1回の移動量は、前記所定の方向に並べられたノズルの列の長さよりも短く、
前記画像形成手段は、前記付加画像の流体の記録濃度を、前記所定の方向の位置に応じて変える、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の流体吐出装置。
【請求項5】
前記ヘッド部は、前記所定の方向と交わる走査方向に走査を繰り返し、
前記画像形成手段は、前記付加画像の流体の記録濃度を、前記走査方向の位置に応じて変える、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の流体吐出装置。
【請求項6】
画像を形成した前記記録媒体を排出する側の位置に前記記録媒体を前記所定の方向に送るためのローラーをさらに備え、
前記画像形成手段は、前記記録媒体における前記付加画像の位置を、前記ローラーと接触しない位置にする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の流体吐出装置。
【請求項7】
前記画像形成手段は、前記本画像にフチを追加する場合、前記記録媒体に形成する前記付加画像の位置を、前記所定の方向において前記フチよりも下流側の位置にする、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の流体吐出装置。
【請求項8】
複数のノズルを並べたヘッド部と記録媒体とを前記複数のノズルが並ぶ所定の方向へ相対移動させ、切断位置で切断される前記記録媒体に画像を形成する画像形成方法であって、
記録データに基づいて形成される本画像と、前記記録データに基づかないで形成される付加画像とを前記記録媒体に形成する際に、前記記録媒体に形成する前記付加画像の位置を、前記所定の方向において前記本画像よりも下流側の位置であって、前記切断位置でない位置にする、画像形成方法。
【請求項9】
複数のノズルを並べたヘッド部と記録媒体とを前記複数のノズルが並ぶ所定の方向へ相対移動させ、切断位置で切断される前記記録媒体に画像を形成するための画像形成プログラムであって、
記録データに基づいて形成される本画像と、前記記録データに基づかないで形成される付加画像とを前記記録媒体に形成する際に、前記記録媒体に形成する前記付加画像の位置を、前記所定の方向において前記本画像よりも下流側の位置であって、前記切断位置でない位置にする機能をコンピューターに実現させる、画像形成プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−240391(P2012−240391A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115476(P2011−115476)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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